○島田
委員 大臣の前向きの、誠意ある答弁をいただきましたから、私はこの問題はここらで矛をおさめたいと思います。ぜひひとつ御
検討いただきたい、こう思っております。
ところで、よく
潜在生産量、これはお米を減反したりあるいは
転作させたりする場合に
政府はこれを用いるわけであります。これを長く議論する時間がもうなくなってしまいましたから、私の方からお話しさせていただいて、
考え方を後ほどお聞かせいただくことにいたします。
潜在生産量、つまりわれわれで言えば潜在
生産力、こういうふうに置きかえて
考えたいと思うのですが、この間も日経協の常務の方をこの農水で参考人として呼びました。日本の農民は勤勉で研究熱心で大変潜在力というものを強く持っていらっしゃる、これを発揮する、それが
農政である、こういうふうに言いました。ただ、私はそのことを是認しながらも、いま残念ながらわれわれの能力とか技術とかといったものを発揮する場所が与えられないために、能力として潜在化してしまっている、これはゆゆしきことなんだ。実は、日本の農民は勤勉であると幾らおだてられたって、勤勉を発揮する場所がなくなるということは大変なことなんです。そういう意味で、ただおだてにだけ乗るわけにはまいらぬと、当時私は、参考人には失礼でございますが反論をいたしました。
まさにいまの
農政は、こうした能力をますます潜在化するばかりではなくて、これを枯死せしめていくような形にしかなっていない。だから、減反が強行されてもその受けざらとなるべきものが実はなくてみんな呻吟しているのが実態だ。たとえば一万ヘクタールの水田を
転作するとすれば、これは
消費拡大とか新しい分野を開拓するといったものを除いても、あるいは農民自身の労働時間というものをさらに合理化することを前提に
考えたとしても、いまの時点ではおおよそ一万ヘクタールの投下労働時間は四百五十六万時間になるのですから、これを仮に酪農で吸収するとすれば、乳牛にして新たに三万頭必要とする。一頭
当たり四トンと見ても、牛乳の十二万トン分に相当する。この一万ヘクタールの
転作によって、酪農で受けざらをするとすればこういうものが必要になるのです。
ところが、三万頭新たに入れる器ももちろん新しくつくっていかなければならぬという問題にも突き当たるし、いま三十万トンの
生産調整が行われている上に十二万トンを引き受けなければならぬとしたら、一体どういうことになるのか。酪農の例で申し上げますとおり、いかに米の減反という問題が大きな問題として広がりを見せ、非情なまでの仕打ちにつながっていくかがこの数字でおわかりいただけると思うのです。
私はわかりやすく申し上げたので、それはみんな酪農でなんということにならぬかもしれません。しかし、仮に酪農で受けざらをつくるとすれば、こういう器がなければいけないのだ、あるいはこういう問題が解決されなければならぬのだという点では、非常にわかりやすい
説明だと私は思っていますから申し上げたのであります。
つまり、こうした点を
考えてまいりますと、私は先ほどもちょっと触れましたが、酪農というのは非常に大きな負債をしょい込んで、その負債を一日も休みなしに返していかなければならないというものが常に経営について回っている。だから、それにはいまの
生産をもっとふやしながら、何としても負債の重圧から逃れなければならぬという宿命をしょっているということなんです。
この四年間の据え置き乳価の結果は一体どういうことになったか。私は、先般大臣室に伺いましたときに、大臣に米の問題でお話ししたら、
北海道は酪農があるからなとおっしゃいました。私は実に頭にかちんと来ました。それは、この間のビートの問題のときに、酪農の問題ではなかったのですが、私が酪
農家の負債の現状をここでつぶさに数字を挙げてお話をしましたときに、大臣はそこで居眠りもなさらずにしっかりお聞きいただいていたはずであります。そういう認識があったと思っていたのに、
北海道は酪農があるから二期
転作はスムーズにいくはずだという意味のことをおっしゃったので、私はきわめて心外に思いました。そういう御認識ならもう一遍ここでやらざるを得ない。
お話を申し上げますが、実は酪
農家にだけ限定して申し上げますと、
北海道で言えば、酪農は宗谷、釧路、根室、この三大地区が代表される
地域であります。ところが、ことしの六月と昨年の六月の対比で見てまいりますと、同月比におきます組合員勘定の残高は実にほぼ倍になっているのです。つまり、倍の赤字が生じているのです。しかも、釧路管内のある農協は、これも私は調べてまいりましたが、二・三倍に達しているのです。また、本日私のところへ根室の皆さんが陳情に参りまして、細かな数字も私に示してくれました。これによりますと、五十三年三月末に一戸
当たり千七百七十八万円であった負債が、五十四年、五十五年と経過するうちに、一戸
当たり実に二千七百十万円と、わずか三年足らずで一千万円の負債をしようという結果になっている。
こういう
状況の中で、たった
一つの頼りは、繰り返して悪いですが、六十五年見通しの中で、酪農が一体どうなっていくのか、この見通しが、われわれが生きることができるか死んでしまうかの指針だ、こう思っていた。それが前段で議論を繰り返しましたような状態では、大臣として、日本の酪農なんか
一つも要らない、外国からみんな買ってくればいいのだというふうにお
考えになっているはずはないと思いますけれども、そうとも受け取れかねないようないわゆる指針のあり方だ、見通しだ。
きょうはもう時間が来ましたから、私はこれ以上
論議することはできません。まだ幾つかの
課題を残したまま質問を終わらなければなりませんので、いずれ通常国会では、何としても来年とっ初めに始まりますのが酪農、畜産の価格問題、当然
亀岡大臣の手によってこれが決定されるはずでありますから、私はそのときにしっかり議論をさせていただきます。
もう
一つつけ加えて申し上げておきますと、たった
一ついままで酪
農家の救いになっていたのは、牛肉がある一定のレベルで推移してくれたからであります。ところが、最近はまさにそれが半分以下の大暴落。そのさなかに、今度は牛肉を、十一月、十二月に事業団手持ちの放出を決定された。何たる冷たい仕打ちぞ。フローズンにしてもチルドにしてもエージドにしても大変な量、つまり一万七千五百トンも放出をする。法律のたてまえから言えば、市場が過熱状態に陥ったときにのみこれを冷やすというのがこの事業団のあり方ではないでしょうか。半分以下の大暴落をしているという中に追い打ちをかけるようにこれを放出するならば、どんな結果になるのか。肉牛
農家に限らず酪
農家の三分の二はこれで生きているのです。そうだとすれば、農林省は口でおっしゃることとやることが全く違うということになってしまう。その辺の御反省を求めながら、大臣から一言、先ほどのような誠意ある回答をいただきたい、私はこう思っております。もし回答がなければ、私は
理事からどう言われようとここでまた踏ん張って時間を精いっぱいやりますから。いかがですか。