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1980-11-04 第93回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月四日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    大原 一三君       粕谷  茂君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    倉成  正君       田名部匡省君    竹中 修一君       玉沢徳一郎君    辻  英雄君       宮崎 茂一君    角屋堅次郎君       中村  茂君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       小沢 貞孝君    榊  利夫君       中島 武敏君    河野 洋平君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         国務大臣         (内閣官房長官宮澤 喜一君         国務大臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     石川  周君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         総理府賞勲局長 小玉 正任君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 股野 景親君         大蔵省主計局主         計官      畠山  蕃君         大蔵省理財局特         別財産課長   佐藤 孝志君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     林  大幹君   小渡 三郎君     小坂善太郎君   大原 一三君     中山 正暉君   粕谷  茂君     古井 喜實君   川崎 二郎君     石井  一君   木野 晴夫君     栗原 祐幸君   渡部 行雄君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     川崎 二郎君   栗原 祐幸君     木野 晴夫君   小坂善太郎君     小渡 三郎君   中山 正暉君     大原 一三君   林  大幹君     上草 義輝君   古井 喜實君     粕谷  茂君   城地 豊司君     渡部 行雄君 十一月四日  辞任         補欠選任   田村  元君     玉沢徳一郎君   竹中 修一君     辻  英雄君   上原 康助君     中村  茂君 同日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     田村  元君   辻  英雄君     竹中 修一君   中村  茂君     上原 康助君     ————————————— 十一月四日  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二八号)  国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第三一号) 同月一日  国家公務員等退職手当法改悪阻止に関する請  願(上原康助紹介)(第七五〇号)  外地派遣旧軍属の処遇改善に関する請願愛野  興一郎紹介)(第七五一号)  同(加藤六月紹介)(第七五二号)  同(沢田広紹介)(第七五三号)  同(小沢貞孝紹介)(第七九七号)  同(北口博紹介)(第七九八号)  同(西田八郎紹介)(第七九九号)  同(村上勇紹介)(第八〇〇号)  同(山崎武三郎紹介)(第八〇一号)  同(木野晴夫紹介)(第八六七号)  同(後藤田正晴紹介)(第八六八号)  同(佐々木良作紹介)(第八六九号)  同(谷垣專一君紹介)(第八七〇号)  同(細田吉藏紹介)(第八七一号)  同(宮崎茂一紹介)(第八七二号)  北九州財務局の福岡市存置に関する請願上原  康助紹介)(第七五四号)  同(小沢和秋紹介)(第七五五号)  同(榊利夫紹介)(第七五六号)  同(瀬崎博義紹介)(第七五七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第七五八号)  同(寺前巖紹介)(第七五九号)  同(中島武敏紹介)(第七六〇号)  同(林百郎君紹介)(第七六一号)  同(藤原ひろ子紹介)(第七六二号)  同(三浦久紹介)(第七六三号)  同(山原健二郎紹介)(第七六四号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願和田耕  作君紹介)(第七九六号)  在外財産補償法的措置に関する請願木村守  男君紹介)(第八〇二号)  同(渡部行雄紹介)(第八〇三号)  同(阿部昭吾紹介)(第八七三号)  同(石原慎太郎紹介)(第八七四号)  同外一件(勝間田清一紹介)(第八七五号)  同(木村武雄紹介)(第八七六号)  同外一件(原田昇左右紹介)(第八七七号)  同(宮崎茂一紹介)(第八七八号)  同(渡部恒三紹介)(第八七九号)  新潟海運局廃止反対に関する請願岩垂寿喜  男君紹介)(第八六五号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願山崎平八郎紹介)  (第八六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 防衛問題に入ります前に、官房長官にせっかくおいでいただきましたので、時間の許す範囲でお尋ねしたいと思います。  実は、官房長官潜在的脅威の問題で御答弁をいただきたいと思いましておいでいただいたわけですが、その問題に入る前に、イランの問題と金大中氏の問題でちょっとお伺いしたいと思います。  ここ数日間イランの米大使館人質問題が非常に急速な進展を示しておりますが、大統領選絡みで非常に流動的な要素が多々ございますが、政府としては、今回の問題に対してどういう認識判断を持っておられるのか、また見通しをどういうふうに立てておられるのか、あるいはこの問題の進展いかんによっては、日本の対イラン政策に対してどういう態度をおとりになろうとしているのか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは外務当局からお答え申し上げるべきかと存じますが、基本的にイラン議会があのような決定をいたしましたことは歓迎すべき状態だと考えております。ただいまの段階は、イラン議会が提示しております条件が具体的にどのようなものであるかということにつきまして、アメリカ側がそれを正確に把握をしようと努めておる段階かと存じます。また仮に把握をいたしました後、その条件を実現いたしますために、アメリカ国内法とどのような関係に立つかといったような問題も、これから解決されなければならない問題だというふうに承知をいたしておりますが、しかし、このようなイラン議会決定が行われましたことは事態の一歩進展である、政府としてはそのように考えております。
  5. 市川雄一

    市川委員 わが国としては、人質が解放されればイランに対する経済制裁理由は消滅すると思いますが、その点を含めて今後のイラン政策についてはどういうお考えでいらっしゃいますか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 人質が全員釈放されました場合には、経済措置をとりました基本的な原因が解消するということになると思いますので、その際には、EC諸国とも緊密な連絡の上、経済措置を解除いたすことになろうと存じます。
  7. 市川雄一

    市川委員 次に、金大中氏の問題ですが、けさの新聞、きのうの報道によりますと、韓国高等軍法会議において二審の死刑判決が下った。政府は、一審の際には憂慮の念を韓国側に表明しましたが、この問題では国際世論あるいは国内世論も含めて非常に強い関心を持っておりますし、あるいは金大中氏の身の安全に対して非常に強い憂慮の念を持ちながら注目されておるわけでございますが、これに対して政府として何らかの外交措置あるいは政府意思を表明するお考えがございますか。どうですか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般第一審判決が行われました際に、日本政府としては事態の成り行きを憂慮している旨を明らかにいたしましたが、今次の判決に接しまして、かかる憂慮の念を改めて明らかにせざるを得ないと考えております。このような政府考え方は、外交ルートを通じまして韓国側にこれを伝えることになると存じます。
  9. 市川雄一

    市川委員 政府は一貫してこの問題では静観するのが望ましい、こういうことのようでございますが、金大中氏の生命人権擁護に、政府はただ静観しているだけで何らかの成算があるのか。結局は大統領による特赦が期待できるか否かというような問題にならざるを得なくなるのではないかと思います。ただ、憂慮の念を表明し静観していることが望ましいというだけで果たして金大中氏の生命人権擁護日本政府としてできるのかどうか、その点についてどうですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきまして政府としては文字どおり静観をしておるというわけではございません。ただ、政府考え方あるいは行動が表に立ちますときには、韓国民に対して内政干渉であるかのごとき誤解を与えるおそれがある、その結果は決して事態の私どもの望んでおる方向への解決に役立たないであろう、そういう配慮がございますので、きわめて注意深く行動をいたしておる。日本政府が本件につきまして大きな関心を持っておりますことは、韓国政府もよく知っておられるところであると考えます。
  11. 市川雄一

    市川委員 官房長官の時間が限られておりますので、次に、先日の委員会での朝鮮民主主義人民共和国、すなわち北朝鮮潜在的脅威と見る見ないの問題に関連いたしましてお伺いをしたいと思います。  まず、その議論の具体論に入る前に、防衛庁にお伺いしたいのですが、ある国を潜在的脅威と見る判断基準をしっかりお持ちかどうか、友好国潜在的脅威の対象から除外されるのかどうか、あるいはもっぱら非友好国に限られるのか、あるいは軍事力の大小のみでおっしゃっておられるのかどうか、こういう点を含めて防衛庁潜在的脅威とある国を見る場合の判断の基礎になっている基準というものがあるのかないのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  12. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま潜在的脅威判断基準はどうかというお尋ねでございました。もともと脅威は侵略し得る能力侵略意図が結びついて顕在化するものでありまして、この意味でのわが国に対する差し迫った脅威が現在あるとは考えておりませんが、意図というものは変化するものであり、防衛考える場合には、わが国周辺における軍事能力について配慮する必要があると考えております。潜在的脅威というものは、侵略し得る軍事能力に着目し、そのときどきの国際情勢等背景として総合的に判断して使ってきた表現でございます。いずれにせよ、潜在的脅威であると判断したからといって決して敵視することを意味するものではございません。  以上をもって、御質問に対するお答えといたします。
  13. 市川雄一

    市川委員 余り明快な見解とは思えないのですが、それはまた後でお伺いすることにしまして、官房長官、先日この北朝鮮潜在的脅威の問題で、岡崎参事官発言に対して防衛庁長官は、言葉足らずで不適当、こういうふうにおっしゃられたのですが、官房長官岡崎発言が不適当というふうに御認識されておりますか、官房長官どうですか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所属の長官であります防衛庁長官の御発言のとおりと考えております。
  15. 市川雄一

    市川委員 直属長官である防衛庁長官というおっしゃり方ですが、官房長官政府としての御認識はどうなんですか。岡崎発言というものは不適当だ、こういうふうにお考えでいらっしゃるのですか。もう一度お伺いしたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直属長官であります防衛庁長官の御判断政府としての判断だ、かように申し上げておきます。
  17. 市川雄一

    市川委員 そこで、不適当という中身ですけれども、国益に合致しない、いろいろ言われておりますが、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮潜在的脅威と見たことあるいは認識したこと、これが不適当なのか、あるいはそれを発言したことが不適当なのか、どちらですか、防衛庁長官
  18. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  朝鮮民主主義人民共和国潜在的脅威と断定したことが不適当であるという主張を私は申し上げたのでございます。
  19. 市川雄一

    市川委員 そうすると、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮潜在的脅威と見たあるいは断定したことが不適当ということは、北朝鮮潜在的脅威と見ることは誤っている、こういう意味ですか、どうですか。
  20. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先日の委員会でも申し上げましたとおり、参事官朝鮮民主主義人民共和国潜在的脅威というふうに述べましたことは、言葉足らずであり不適当であるということを私は申し上げたのでございます。
  21. 市川雄一

    市川委員 そこで、官房長官にもう一度お尋ねしたいのですが、先ほどお聞きになっていたと思いますが、日本がある国を潜在的脅威と見る判断基準というものをお尋ねしたのですけれども、どうもいままでの、脅威というのは能力意図判断するのだ、能力侵略能力で、意図というのは政策的に変わる、いまはない、だから潜在的だ、こういうことなんですけれども、これでは答えになっていないわけです。そうなりますと、能力を持った国は全部——意図は可変的なものなんですから全部潜在的脅威になってしまうという論理的に非常におかしな定義と言わざるを得ないわけです。  そこで、官房長官の時間も差し迫っておりますからお伺いしますが、ソ連潜在的脅威と見ることは国益に合致するのですか、どうですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最近ソ連軍がかなり急速に軍備増強しておることば恐らく事実でございますし、北方領土における軍備強化もその一環であろうかと思われます。したがいまして、防衛問題の専門家がそのような事実に着目しているということは職責上私は当然のことであると思いますし、またそれを潜在的な脅威であると判断を仮にしておるとすれば、そのことを何も間違っておると申し上げるつもりは私はございません。ただ、仮にそうであるといたしましても、そのような脅威を顕在化せしめないための努力外交中心として国としてはそのような努力をいたすのが当然でありますし、またいたさなければならないのでございますから、そういう立場から申しますと、あの国がどう、この国がどうと申しますことは、政府立場としては、お尋ねがあればやむを得ないことでございますけれども、それを一々言挙げすることが政府全体の立場といたしまして国益であるかどうか、そういう点は恐らくただいま御指摘の中に含まれている意味であろうと思います。むしろ国を挙げて外交中心努力して、そのような脅威を除いていくということがわが国平和外交の姿勢であろう、こういうふうに考えております。
  23. 市川雄一

    市川委員 従来政府は、わが国仮想敵国というものは想定しないのだ、あるいは三木内閣の当時は等距離外交ということを総理大臣みずからおっしゃったこともあるし、福田首相は全方位外交ということをおっしゃった。ソ連軍事的増強を図っているかどうかという次元の問題は別としまして、やはり日ソ友好親善というものは、日本にとって好むと好まざるとにかかわらず非常に重要な問題だと思うのです。それをソ連潜在的脅威潜在的脅威と言いつのることが日本国益にかなうものとは私は決して思わない。いま官房長官大分言葉を濁されながら話されておりましたが、やはり防衛庁見解政府全体の判断との間の隔たりというものをいまの答弁をお伺いしながら非常に感じたわけでございます。  そういう意味で、防衛庁長官にもう一度お尋ねしたいのですが、侵略的能力が増大すれば、意図は可変的なものであるから、いまはないにしてもいつ変わるかわからない、だから潜在的脅威だ、こういうふうにしか先ほどの見解は聞こえないわけでございます。そうなりますと中国、あえて外国の名前を言うのは非常に失礼でございますが、中国はやはり社会主義国であり、日本よりも強い武力を持って、しかも伸び率ではかなり軍事的能力を高めておる。中国はなぜ潜在的脅威ではないのですか、防衛庁長官
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一言つけ加えさせていただきたいと思いますが、先ほど私の申し上げましたこと、政府判断防衛庁判断が食い違っておる、あるいは矛盾しておるというふうに私は考えておりませんで、防衛という見地からわが国の安全を図っておられる防衛庁としての判断、またその判断に備えて施策を進めていく、これは当然のことであろうと思います。政府全体といたしましては、そのような防衛努力とともに外交その他の努力によってこの脅威を減らしていこう、これもまた当然のことであって、その間食い違いがある、矛盾があるというふうには私としては考えておりません。
  25. 市川雄一

    市川委員 食い違いがあるというふうに申し上げたというよりも開きがある。ソ連潜在的脅威と見ることは国益と合致しますかという私の質問に、官房長官は明快なお答えをまだなさっていないと思うんですね。先ほど言葉を濁された。政府トータル判断としてソ連潜在的脅威と言いつのっていくことが本当に日本国益に合致しておりますか。官房長官、どうですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 防衛庁当局がいろいろな場合を想定しいろいろな判断に立って施策を進めておられるのは、私は当然のことだと考えておりますが、政府全体として何々国が潜在的な脅威であると申しましたときに、仮に相手方がそれを自分の国を敵視しておると誤解をする可能性はございますので、なるべくならそのような誤解は与えない方がいい、こういうことだと思います。
  27. 市川雄一

    市川委員 官房長官お時間のようですから、どうもありがとうございました。  結局は、防衛庁見解能力が増大したかどうかだけで判断していらっしゃるわけですよ。そうすると、先ほどの中国の問題については防衛庁長官どうですか。
  28. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  中国潜在的脅威であるかどうかという趣旨お尋ねでございますが、その前に、先ほど私、答弁の際に、潜在的脅威というものは、侵略し得る軍事能力に着目し、そのときどきの国際情勢等背景として、総合的に判断して使ってきた表現であります、という趣旨のことを申し上げたわけでございます。  そこで、いまお尋ね中国についてでございますが、防衛庁といたしましては、中国軍の現状、両国を取り巻く国際情勢等にかんがみれば、中国潜在的脅威であるとは考えにくいと考えております。
  29. 市川雄一

    市川委員 それではお伺いしますが、ソ連潜在的脅威でなくなる条件、環境をどういうふうに判断されていますか。
  30. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  極東ソ連軍の顕著な増強が行われていることは、北方領土への地上軍部隊配備空母ミンスク等極東回航などに見られる太平洋艦隊の増強、SS20やバックファイア爆撃機配備等に示されるように客観的事実であり、わが国安全保障にとって潜在的脅威の増大であると考えております。したがいまして、極東ソ連軍が現在のような状況下でこのような軍事能力を維持している限り潜在的脅威でなくなるとは言えないものと考えております。
  31. 市川雄一

    市川委員 その問題はまた後で具体的に一つ一つお伺いしたいと思います。  極東ソ連軍強化ということを理由に挙げておられるのですが、同時に、防衛白書の問題で後でお聞きしますけれども、アメリカだって相当軍事能力を増大しているのですよ。防衛庁は何かソ連だけがやっているように書いておりますが、アメリカも相当やっておる。そういうものがなくならない限りソ連潜在的脅威は消えない。そのソ連潜在的脅威が消えない限り防衛力増強していくんだという論理になりますと、要するに、米ソの軍拡に日本がもろにそのままはまり込んでいく、こういうことなんです。これはもうどこまで行くのか一つも歯どめがない。あるいはまた国民のせっかくのコンセンサスを破壊していく。私はそういう意味で非常によくないと思うのです。  その問題はもうちょっと具体的にお伺いしますが、まずその問題に入る前に、防衛白書というのは毎年防衛庁で出しておられます。これは閣議了解を得て出されているものだと思うのですが、対外的に、防衛白書というのは防衛庁としては責任を持たない文書ですか、どうなんですか。
  32. 夏目晴雄

    夏目政府委員 防衛白書というのは、従来とも閣議に配付しまして報告しまして了承を得たものでありまして、そういう限りでは、政府部内の意思統一といいますか調整を経たものというふうに御理解いただきたいと思います。
  33. 市川雄一

    市川委員 もうちょっと確認なんですが、政府部内の意見調整を経て出たもの、したがってこれは防衛庁としては対外的には非常に責任のある文書という位置づけを持っていらっしゃるわけですね。どうですか。
  34. 夏目晴雄

    夏目政府委員 責任あるというのはどういう御趣旨かわかりませんが、合意を得た、事務的に調整を経て作成されたものであるというものでございます。
  35. 市川雄一

    市川委員 岡崎参事官に個人的な恨みがあるわけじゃないですが、どうも発言が挑戦的というか、そこでお伺いしたいのですが、十月二十一日に行われました衆議院の安全保障特別委員会岡崎参事官は、「防衛計画大綱」は閣議決定された、しかし、その「防衛計画大綱」の裏打ちになっている概念あるいは考え方と申しますか、基盤的防衛構想、この基盤的防衛構想説明防衛白書に載っておる、その説明部分閣議で採択されたものではないのだから、その説明部分に書いてあることに拘束されません、こういう趣旨見解答弁なさったわけです。あのとき時間があればもうちょっと問題にしたがったのですが、言葉じりをとらえてどうこう言うつもりは全くないのですが、中でも核心をなしているのは、「防衛計画大綱」を裏打ちしている考え方基盤的防衛構想、この基盤的防衛構想防衛庁防衛白書責任を持って説明しているわけです。しかもその説明の中に、基盤的防衛力は国際情勢が大きく変化したときに拡大していくんだ、その国際情勢の大きな変化の例として五つの項目を指摘していらっしゃる。その五項目の指摘に対しての質疑に対しては、これは単なる説明にすぎません、したがって、その五項目の中の一項目がどうなったかこうなったかということによって防衛庁大綱を見直したり何かするとかしないとかいう束縛は受けないんだ、これは私は非常に無責任答弁だと思うんですよ。違いますか。防衛庁大綱を発表して、その裏づけとしての基盤的防衛構想というものを持っている。その基盤的防衛構想を基盤的なものからさらに拡大するかどうかの判断基準として国際情勢の大きな変化というものを挙げている。その国際情勢の変化の一つの具体的指針として五項目を挙げている。その五項目のどれが変化したんだという質問に対して、答え方として先ほどのようなお答え方をする。それは閣議決定されておりません。しかもこれは五年前とおっしゃっておりますが、五十一年の防衛白書も書いてありますけれども、五十一年、五十二年、五十三年、五十四年、五十四年までちゃんと防衛白書にこのことは書いてあるのですよ。確かにことしの白書には書いてありませんよ。五十四年の白書まではこのことは書いてある。五項目、大きな国際情勢の変化の例示として。これに全く束縛されないのだということは、防衛庁が白書の中で責任を持って述べたことが、そんなことはわれわれを縛るものではない。全く無責任答弁だと私は思うのです。これは参事官じゃなくて防衛庁長官、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  36. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま防衛白書に関連していろいろお尋ねがあったわけでございます。私も当日の参事官答弁は聞いておりましたし、またその後速記録も読み直してみたのでございますが、それを取りまとめてお答え申し上げますと、おおよそ次のとおりになりはしないかと思う次第でございます。  十月二十一日の衆議院安保特別委員会における質問に係る岡崎参事官答弁は、五十二年版白書の解説は、防衛庁責任を持って作成し、閣議での了承を得たものでありますが、閣議決定をした大綱そのものとは文書の性格上異なるものであることを申し上げるとともに、いま御指摘の五条件は例示であり、たとえばという形で掲げられておりますので、それ以外にも国際情勢変化の要因はあることを申し上げたものであると考えております。
  37. 市川雄一

    市川委員 ちょっと納得しませんね。たとえばというのはわかりますよ。五十一年の白書について言ったわけじゃないでしょう、参事官は。何年度の白書なんて言っておりませんよ。私は、五十一年、五十二年、五十三年、五十四年の白書に書いてある、それを確認した前提で先日の委員会質問したのです。その答弁は、参事官は別に何年の白書がそうだったということは言ってない。しかも、こういうことを言っておるわけでしょう。「五年前の情勢について例示的に項目を挙げているわけでございます。したがいまして、」五年前と言っているけれども、五十四年の白書にも同じことが書いてある。そういう意味では五年前じゃないのです。それから「別に閣議決定もされておりません解説の条件がたとえ変わったからといって、自動的に「防衛計画大綱」を変えさせる、そういう力を持っておるものでもございませんし、また逆に申しますと、それが変わらないから変えてはいけない、そういう性質のものでもございません。」要するに防衛庁は白書の中で基盤的な防衛構想、その基盤的なものを整備するのだけれども、もしそれが前提とする国際情勢に大きな変化があった場合には、それを基盤的なものからさらに拡大するのだということをおっしゃっておる。では、どういう国際情勢の大きな変化に対応するのかというふうに質問すると、例の五項目の例示を挙げて答弁をなさるし、防衛白書にもそう書いてある。ところが白書に書いてある五項目は、単なる解説であって、これには、これが変わったからといって大綱見直しとかそういうことにならないし、また変わらないからといって大綱を見直すことはできるんだ、こういう趣旨答弁をしているわけです。防衛庁責任を持って説明をしているわけでしょう。基盤的防衛構想、その前提は国際情勢、その国際情勢が大きく変化する場合、これは変えますよ、その大きな変化とは大体こういうことを意味するんですというふうに説明しているのじゃありませんか。その説明が全く防衛庁判断を束縛しない、あるいは責任を持たなくていいもの、こういう御認識ですか、長官は。どうですか。
  38. 大村襄治

    大村国務大臣 重ねてのお尋ねでございますからお答えを申し上げます。  私は、現在の「防衛計画大綱」については、現在見直す考えはないということをしばしば国会においてお答え申し上げている次第でございます。  将来の問題につきましては、ほかの委員の御質問に対しまして、国際情勢の変化、国内世論の変化、そしてまた大綱の水準の達成、そういった事柄を念頭に置いて今後対処してまいりたいという趣旨のことを申し上げている次第でございます。将来のことについての一つのあれとしまして国際情勢という問題がある。そして現在までの白書等の解説において、国際条件の例示として五項目挙がっておったのだ、こういったことも事実でございます。  そういった考え方に基づいて、私は判断いたしているわけでございまして、五項目ももとより重要でございますが、それ以外の問題につきましても、いろいろ研究していく必要は今後あろうかと思うわけでございます。また五項目の内容につきましても、情勢の変化があるわけでございますから、そういった問題につきましても絶えず検討を続けてまいりたい、そういう気持ちでおるわけでございます。
  39. 市川雄一

    市川委員 ですから、そういう意味では岡崎参事官のこの答弁は非常に不穏当なんです。不適当な答弁ですよ、防衛庁長官防衛白書をみずから否定するような発言です。  これをなぜ問題にするかと申し上げますと、この発言そのものあるいは北朝鮮潜在的脅威と見る見ないの問題、要するに基盤的防衛構想が一定の防衛力増強に歯どめをかけているわけですよ。これはできた当時、坂田元防衛庁長官がおっしゃっておりますけれども、平和時における防衛力の限界、いわゆる差し迫った特定の国の脅威に対抗するというよりは、いわゆる平和時の警戒態勢を重視するのだ。恐らくこういうものがどうもいま防衛庁の中では邪魔になってきている。何とか外したい、こういう一連の作業が国会答弁の中でつい本音としてちらちらと出てくるのじゃないか。この辺を私たちとしては非常に心配して見ているわけですけれども、そういう立場で伺っているわけでございます。岡崎参事官答弁が非常に不適当だということを御指摘申し上げたいと思うのです。  次の質問に移りますが、……
  40. 大村襄治

    大村国務大臣 ちょっと補足させていただきたいと思います。  いま市川委員から重ねて御指摘があったわけでございますが、私ども、この五十一年に策定されました「防衛計画大綱」を現在におきましても引き続き変えないで、その範囲内で防衛力の充実を図っていきたいと考えている次第でございます。  その基礎になる考え方は、先生御指摘のとおり、限定的、小規模の侵略に対してはわが国独力をもって対処し、それを超えるものにつきましては日米安保条約の有効な運営によっていわば補完していくというのが大綱考え方でございます。その基礎に潜在的脅威に対して全く配意がなかったかと申しますと、そうではなかったのではないかと私は考えているわけでございまして、翌年の防衛白書におきましても、そういった脅威の問題につきましては相当なページ数を当てて解説もいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、現在の大綱を変える考えは持っておらないわけでございます。大綱を適切に運営してまいって、わが国防衛を確実に進めていきたいというのが私の考えでございますので、その点も御理解を賜りたいと思う次第でございます。  岡崎発言につきましては、先ほど申し上げましたように、朝鮮民主主義人民共和国潜在的脅威であると言いましたことにつきましては、言葉足らずであり、不適当であったと思いますので、この種の発言は今後しないように厳重に注意したところでございます。また防衛白書の例示の説明をしたわけでございますが、私は速記録等を見直してみまして、その趣旨においては間違ってないと思うのでございますが、聞いておりまして、言葉の使い方等につきましては、もう少し工夫した方がよいのではないかという感想は持ちましたけれども、大筋においては間違っていないと考えております。
  41. 市川雄一

    市川委員 塩田防衛局長ですか、参議院で防衛計画大綱見直しについて何か三つの条件ですか、答弁されております。確認なんですが、国際情勢の大きな変化の例示、従来の五項目に一項目プラスして、わが国周辺の軍事情勢の変化あるいは防衛計画大綱の水準の達成、三番目には国内事情、国民世論のコンセンサスあるいは財政事情という意味だろうと思いますが、こういう三つの条件を勘案してという御答弁趣旨に伺っておりますが、間違いございませんか。
  42. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのような趣旨お答えしたつもりでございます。
  43. 市川雄一

    市川委員 そうすると防衛庁長官、いままで例示は五項目だったわけです。その例示に一項目プラスしたわけでしょう。わが国周辺の軍事情勢の変化というのが入ったわけだ。いままでは五項目の例示の中にはこれは入ってなかった。朝鮮半島というのは入っていたけれども、わが国周辺の軍事情勢の変化という表現では五項目の例示には入ってなかったのです。これが入ったわけでしょう。そうですね。どうですか、防衛局長
  44. 塩田章

    ○塩田政府委員 私のその部分の言葉自体はいまちょっと覚えておりませんけれども、私が申し上げました趣旨は、五項目という例示がございますが、それだけではなくて、ほかにも国際情勢のわが国に大きな影響を及ぼすいろいろな要因はあり得ると思いましたので、五項目のみならず、ほかにもそういうわが国にとって重要な影響のある国際情勢の変化というものは、考えられる要素の中に入れるべきであるということを申し上げたつもりでございます。
  45. 市川雄一

    市川委員 要するに五項目の例示を一項目ふやしたのですよ。そうしないと、ソ連潜在的脅威というのがあの五項目の例示では当てはまらないわけです。そうでしょう。五項目の中には、ソ連潜在的脅威を言う項目がない。だからわが国周辺の軍事情勢の変化ということで、これが言ってみれば伏線ですよ。後で物を言ってくるわけですよ。この項目がソ連潜在的脅威の増大とつながって基盤的防衛構想を崩していく伏線になっているじゃありませんか。一方では、五項目というのは単なる解説にすぎません、解説として書いた五項目の情勢変化があったから大綱をどうするという束縛力は持ってないんですなんということを言いながら、また一方では、五項目に追加して六項目にしている。非常に巧妙なやり方をしていらっしゃるわけですよ。  そこで、先ほどから防衛庁長官質問してないのに質問通告を丁寧にしたせいか先の質問に答えていらっしゃるわけですけれども、そういうことをされると今後質問通告の仕方を考えなければならないわけですが、「防衛計画大綱」の裏打ちとしての基盤的防衛構想というものが一つはあるわけですが、この基盤的防衛構想では、この防衛計画大綱を発表した当時、坂田防衛庁長官長官談話を発表した。御承知かと思います。  要点としては、東西対立といった冷戦時代の考え方からは脱却する。冷戦指向ではない、冷戦から脱却したものにしていくんだということをおっしゃっている。また第二点は、特定の脅威に対抗するというよりも、平時における警戒態勢を重視するんだ。脅威対応型ではない。どこかの国の脅威がふえたからわが国防衛を直ちに増強するという、そういうものからは影響をむしろ受けないでやっていくんだ。言ってみればこういう考え方、しかも平和時における防衛力一つの限界というものを出すことによって、日本防衛力がどこまで増大されるのかという国民不安にこたえていくんだということをこの項目ではあわせておっしゃっているわけです。それから三番目には、いま申し上げた整備すべき防衛力の目標水準、いわゆる平和時の限界。それから四番目が防衛力の整備は量的増大ではなく、質の維持向上を主体とするんだ。また五番目には、高度成長から安定成長に軌道修正したわが国の経済社会体制を十分に配慮するんだ。この条件は私は変わってないと思うのですよ。こういうことを談話として発表しておられる。このいま挙げた談話の五項目、これはまさに基盤的防衛構想の核心をなしている考え方だと思うのです。こういう考え方基盤的防衛構想がつくられ、その基盤的防衛構想に裏打ちされて整備すべき目標として「防衛計画大綱」というものができた。  そこでお伺いしますが、防衛庁長官、いまの時点で「防衛計画大綱」は変える考えはないというのは先ほどから何回も伺っておりますので、そのことをお伺いしているのではありません。この「防衛計画大綱」の裏打ちになっている考え方、いわゆる基盤的防衛構想、特定の脅威に対応して防衛力増強するのではない、あるいは整備すべき防衛力の目標水準を明らかにすることによって防衛力はどこまで増強されるのかという国民の不安にこたえるのだとか、こういう非常にすぐれた、いい考え方を持っているわけですが、いまの時点で、この基盤的防衛構想について適切であったと思っているのか、あるいは基盤的防衛構想という考え方にどういう評価を持っておられますか、これをお聞きしたい。
  46. 大村襄治

    大村国務大臣 先生よく御存じのとおり、いわゆる基盤的防衛力構想とは、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援態勢を含めて、その組織及び配備において均衡のとれた体制を保有することを主眼といたしまして、平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略に対し原則として独力で対処することができ、さらに情勢に重要な変化が生じ新たな防衛力の体制が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るように配置された防衛力を保持しようとする考え方であり、このような考え方は現在でも変えておりません。
  47. 市川雄一

    市川委員 ですから、基盤的防衛構想という考え方に、いまの時点でどういう評価を持っておられるのか。簡潔にお答えください。
  48. 大村襄治

    大村国務大臣 現在においてもこれを評価し、その達成に努めているところであります。
  49. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いいたしますが、安全保障特別委員会での質疑でも、塩田防衛局長は「防衛計画大綱」もしくは基盤的防衛構想は特定の国を脅威として想定してつくられたものではありません、こういう御答弁をなさりておりますが、いかがですか。確認の意味で。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのとおりでございます。
  51. 市川雄一

    市川委員 いままで国会論議の中で「防衛計画大綱」は特定の国を脅威として想定してつくられたものではありません、こういうふうに一方では答弁なさるわけですよ。一方では、長官ソ連潜在的脅威を念頭に置いて防衛力増強を図っていくんだということをおっしゃっているわけですね。したがって、「防衛計画大綱」あるいは基盤的防衛力構想は没脅威ではないかという批判に対しては、小規模限定的侵略を想定しておりますから、脅威を全く想定しないという意味でおっしゃっているんなら、これは没脅威ではありません、こういう答弁をなさっているわけですね。私はこれはおかしいと思うのですよ。明らかにいわゆる基盤的防衛構想考え方を骨抜きして、ソ連潜在的脅威が増大したということによって将来日本防衛力をもっと増強できるような布石を打とうという意図が感じられてならない。  どういうふうにおかしいか。この三点。一つは、まず基盤的防衛構想あるいは「防衛計画大綱」は、特定の国を想定しないでつくられたというんですよ。しかし、ソ連潜在的脅威という言い方で去年の国会からですか、ことしの国会からですか、国を特定したじゃありませんか。国を特定したということ、これは大きな変化じゃありませんか。国を特定しておりませんと言いながら、今度はソ連潜在的脅威という形で国を特定したということです。また基盤的防衛構想は特定の国を脅威と想定しておりませんから、特定の国を想定してないということは、特定の国の脅威の増大から影響を受けないということですよ。想定していない以上、どこの国の脅威がどうなりましたからということからは影響を受けませんという考え方ですよ。それがソ連潜在的脅威が増大したから防衛力整備を急ぐんだということは、特定した上に、しかも特定したソ連の国の脅威の増大を理由にまたやろうということでしょう。だから、そういう意味では、細かく言えば二重の意味基盤的防衛構想を実質的になし崩し、形骸化というふうに私は見るわけでございます。この考え方は矛盾しておりませんか、どうですか。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 基盤的防衛力構想を考えたときに、特定の国を想定したものではないということはしばしば申し上げておるとおりでございます。先生もよく御存じのように、翌年の防衛白書でも説明をいたしておりますが、およそ脅威ということを全然抜きにした防衛構想というのはどこの国にもないということを言いながら、わが国の場合、基盤的防衛力構想あるいは「防衛計画大綱」を考えるに当っては、脅威というものを意図能力とに分けて説明をしております。意図は変化しやすいから云々ということで説明しております。先生よく御存じのとおりだと思いますが、その際に、意図が変化しやすいということにかんがみまして、わが国としましては、大きな準備でもって大がかりな侵攻ということを考えることは、侵攻する側にとっても容易ならざる政治的決定であるということにかんがみまして容易にできるものではないということを踏まえまして、わが国にとっては限定的かつ小規模な比較的大がかりな準備でなしに来れるものに対してはみずから防衛するだけの力を備えよう、こういうことで構想されておることはよく御存じのとおりだと思います。そういう基盤的防衛力構想を持ちまして、その後整備をしてきておりますし、そこで定められました別表の線にいま到達すべく努力をしてきておるということもしばしば私ども申し上げております。  そこで、先生御指摘のように、近年ソ連潜在的脅威の増大であるということを防衛庁はしきりに言っておる、それは防衛力増強するための布石であり、前の考え方と矛盾しないかということでございますけれども、私ども先ほどから長官お答えしましたように、「防衛計画大綱」の線に従って現在整備しておるわけでございまして、しかも現状におきまして、あの構想のもとにできた別表にさえもまだ到達していない現在の状況を考えました場合に、最近における極東におけるソ連軍増強等を潜在的脅威の増大と見ておるわけでございます。そういった国際情勢を踏まえまして、私どもはあの基盤的防衛力構想でできた「防衛計画大綱」の別表に少なくとも早く到達したいということを申し上げておるわけでございまして、それ以上の大きな防衛力云々ということを申し上げておるわけではありません。その点はぜひ御理解をいただきたいわけであります。  したがいまして、第二のお答えにも通ずるわけでございますが、基盤的防衛力の構想は、特定の国の脅威を対象にしたものではないということから申しまして、特定の国の脅威が増大をしたからといって影響は受けないではないか、あの構想というものはそういう影響を受けるという構想でないではないかということにつきましても、最初のお答えで申し上げましたように、私どもは先生の御指摘の基盤的防衛力構想によってできた「防衛計画大綱」の線に早く到達したいということを申し上げておるということでございます。
  53. 市川雄一

    市川委員 早める理由にはなりませんねということを私は申し上げておるわけです。要するに、矛盾というかおかしなことをおっしゃっておるわけですよ。特定の国を脅威として想定していないと言いながら、ソ連潜在的脅威が増大したから大綱の水準の可及的速やかな達成をしたいんだという、財政事情の厳しい中で防衛費だけ特別枠という要求の根拠にしていらっしゃるわけですから、これはやはり問題にしなければならないと思うのです。矛盾しているとぼくは思うのです。  要するに、脱脅威とか没脅威論に対しては、小規模限定的侵略を想定してつくったものだから、そういう意味では脅威に対応だ、こう答えているわけですから、これは言ってみれば一般的脅威ですよ。特定の国の脅威じゃなくて小規模限定的侵略という、どこの国からあるものか全くわからない、想定してない一般的脅威を前提につくったという意味では、確かに脅威を前提にしていますよ。しかし、特定の国の脅威を前提にはしてないという意味では、ソ連潜在的脅威が増大したということを防衛力整備早期達成の理由にすることは、基盤的防衛構想からはみ出たと言われてもしようがないんじゃないでしょうか、こう私は思います。防衛庁は周辺諸国の核兵器による脅威に対しても対処するのですか。どうですか、その点は。
  54. 塩田章

    ○塩田政府委員 その前に、一般的脅威であるということでできておるにもかかわらず、特定の国の名前を挙げて潜在的脅威を言うのは大綱からはみ出ているじゃないかということにつきましては、私どもとしては、先ほど申し上げたお答えを繰り返したいと思います。  それから、核の脅威に対して対応するのかという点でございますが、これは「防衛計画大綱」にもございますように、あるいはまた日米ガイドラインにもございますように、アメリカの核抑止力に依存するという考え方でございます。
  55. 市川雄一

    市川委員 核の脅威に対しては、日米安保条約の核のかさに依存するという御答弁ですね。しかし、ソ連潜在的脅威の事例として、あるいは極東ソ連軍増強ぶりの事例としてバックファイア戦略爆撃機、これは核弾頭搭載の爆撃機ですね。それからSS20、可動式中距離弾道弾、これは核兵器じゃありませんか。ソ連の核兵器の配置が強化されたから、ソ連潜在的脅威がその分だけ増して、能力が増して、それに対応するんだ、核兵器の脅威に対応するということじゃありませんか。どうですか、これは。
  56. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように、バックファイアの配備でありますとかSS20の配置といったようなことを私どもは最近における極東軍事情勢の変化の中で指摘をしております。そういったことが最近における潜在的脅威の増大と言っておる要因の一つであることは、先生御指摘のとおり私どもそういうことを考えて言っております。それに対しましてどう対応するかということはまた別でございまして、核に対しましていかなる対応をするかということは、アメリカの核抑止力に依存するということを申し上げているわけでございます。
  57. 市川雄一

    市川委員 要するに、核の脅威に対して核兵器を持つという意味での対応はしない、それはわかりますよ。そうじゃなくて、防衛力の、自衛隊の増強ということで対応しようとしているんじゃありませんか。対応という意味では同じじゃありませんか。その辺もおかしなことだと私は思うのですよ。  次に、防衛庁の国会答弁とか防衛白書で伺っております米ソの軍事バランスという問題でございます。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕  時間が大分差し迫ってきておりますが、五十五年版の白書、「日本防衛」、この七ページから八ページにかけて「米ソの核戦力態勢」「戦略核戦力」という項目が一つあるわけですが、これを読んでおりますと、ソ連に比べてみて米国の方が核戦力で非常に劣っている、何か米国の核のかきが非常に信頼性を失ってきたかのごとき表現が入っているわけですが、防衛庁米ソ核バランスの比較の見方、ICBM保有数をあえて偏って見ているのか、あるいは意識しないで偏って見ているのか、そういう気がしてならないわけです。その点どう認識されておりますか。ソ連だけが増強されているように書いてあるのですね。しかし、アメリカだって核戦力は維持向上しているわけですから、その辺の認識をまず……。
  58. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 最近の米ソの核バランスにつきましては、注目すべき点は明らかにソ連のICBMの数量及び精度の増強でございます。その点は白書に書いてございますけれども、全体としてアメリカの方が負けているというような印象はむしろ与えないように努力して書いたつもりでございます。実際といたしましては、これはアメリカがエッセンシャルエクイバレンス、つまり本質的に対等である、ある部分では強い部分、ある部分では弱い部分もあるけれども、本質的に対等なんだということをアメリカは言っております。防衛白書も大体その線に沿って書いてございます。
  59. 市川雄一

    市川委員 それではお伺いしますが、この七ページの記述ですと「ソ連は戦略核戦力の質的改善にも力を入れてきており、このため、大型で威力の大きい弾頭をとう載するソ連のICBMがその精度も向上してきたことにより、理論的には先制第一撃によって、米国のICBMのかなりの部分を破壊し得る能力を保有しつつあると推測される状況になってきている。」こういうふうに言っておるのですが、アメリカの核能力から見て、ソ連のICBMを破壊するアメリカ能力についてはどういうふうにごらんになっておりますか。
  60. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 アメリカのICBMがソ連のICBMのサイロを破壊する能力でございますけれども、これは命中精度におきましては、従来アメリカの方が断然すぐれておりました。ただ、先生御存じと思いますけれども、ソ連の核弾頭というのは伝統的に非常に大きな核弾頭で、ございまして、それで従来は精度がアメリカよりも劣っておりましたので、サイロのそばで破裂しても大丈夫であるということであったのでございますけれども、最近七〇年代の後半ごろからSS17、SS18、S19という新型のミサイルが大量に配備されてまいりました。アメリカの推定で、命中精度が非常に高いということになっております。それで、命中精度がアメリカと余り変わらないのではないかという……(市川委員アメリカ側を聞いておるのだ、ソ連側を聞いておるんじゃない」と呼ぶ)ああそうですか。結局比較の問題でございますけれども、核弾頭の大きさの差でございます。アメリカの場合は命中精度は高いのでございますが、核弾頭の大きさが小さいので、同じ命中精度であっても、ソ連のICBMサイロを破壊する能力アメリカの方が劣るということでございます。
  61. 市川雄一

    市川委員 おかしいと思うのですけれども……。この白書の説明ですと、いわゆる第一撃の核ミサイルの破壊能力は、ソ連能力だけ書いておるわけですよ。ソ連のICBMが大型で、しかも命中精度が改善されてきたので、アメリカの地上固定のICBMがソ連の第一撃によってかなりの部分が破壊されると推定されるに至った、こう書いておるわけですね。しかし、逆に言えば、ソ連よりずっと早くアメリカの方がソ連の固定核ミサイルを破壊する力を持っているわけですよ。そういう事実をあえて隠している。  それからもう一つは、そのことによって「現有戦力による米国の対応をより困難なものとすることが予想されるに至っている。」何となくソ連の方が優位なんだ、アメリカが劣っているんだという視点で書こうとしている。しかし、たとえばカーター政権のもとでSALTIIをまとめた首席代表のウォーンキ氏、これは外務省の招待で昨年日本へ来ておる。外務省で招待ですよ。その中でもこのウォーンキ氏ははっきり言っておりますよ。米ソのミサイル問題を論ずるときに、大半の人がICBMの数だけで論じ合っている。しかし、アメリカの核戦略は固定のICBMの攻撃からの脆弱性というものに早くから着目して、ICBMは三〇%、あとは原子力潜水艦搭載のミサイルあるいは戦略爆撃機七〇%と、とっくにそっちに重点を移してしまった。ソ連の方はむしろその技術的な能力が追いつかなかったために、どちらかというと地上ミサイルに七〇%の比率を持っているわけですよ。したがって、また別の人は、ついこの間まで米国の米軍備管理・軍縮局兵器移転部長だった人ですが、これも日本に来ました。アメリカの国防政策の宣伝のために日本に来た。それで朝日ジャーナルのインタビューの中でどう言っているかというと、アメリカは第一撃をやるつもりはないけれども、ソ連アメリカに加えることのできると同じくらいの脅威を及ぼす能力を持っておる、しかもソ連は地上配備の核戦力に七〇%依存しておりますから、もしそれを第一撃攻撃で破壊された場合は、アメリカと違って潜水艦や戦略爆撃機による核ミサイル体系が非常におくれておりますので、アメリカが攻撃を受けた場合と比較すると、ソ連の方がより大きな決定的なダメージを受けるということをここで指摘しているわけでございます。したがって、核戦力の比較はICBM、それから潜水艦、戦略爆撃機三位一体で総合的に判断すべきであって、ICBMだけを比べてとやかく言うのは非常におかしな議論だということを指摘しておりますよ。そういう観点でこの防衛白書を見ますと、明らかにICBMだけの比較ですよ。しかもアメリカの対応が困難になっておる、あたかも何かソ連が優位に立っていて米国が劣っているように見ている。先ほど申し上げたウォーンキ氏は、米国の弱さについての議論も幻想だ、こういうことも指摘しておりますよ。そういう点でこの記述というのは非常に意図的な記述。どうですか、この防衛白書ソ連能力以上にアメリカ能力もあるのですよ。そういうことは全然触れてない。
  62. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 米ソの核戦力を比較する場合に、いわゆる三本柱、ICBM、SLBM及び戦略爆撃機、この三つの戦力比較から考えなければいけない、これは先生御指摘のとおりでございます。実は、先生が御指摘のページの冒頭にまずそれが書いてございます。  それから、実はこれは最大の問題になっておりまして、数年前からソ連のICBMの精度の向上、アメリカのICBMのサイロの脆弱化、これはここ数年来の戦略問題における最大の問題になっておりまして、本年初めからのこれのアメリカ側の評価は刻々変わっておりまして、ついにこれはいろいろな表現で申しておりますけれども、最近夏に、これはブラウン長官がカウンターべーリング・ストラテジーというものを発表したときでございますけれども、ソ連はついにアメリカのICBMのサイロを破壊し得る能力を備えたか、あるいはもうほとんどそれに近い状態になったということで非常な危機感は持っております。これは現在最も大きな問題でございますので、それを真っ先に掲げたということでございまして、それはもちろんアメリカが先に攻撃をするということを考えれば、いろいろなシナリオは考えられますけれども、われわれ普通東西バランスを考えております場合は、自由民主主義諸国というものはやはり先制攻撃はしないという想定の上に立っております。その上でもって、われわれの安全が守れるかということが戦略バランスの基本になっております。
  63. 市川雄一

    市川委員 自由民主主義諸国は先制攻撃をしないということですが、しかし先制攻撃を仮に受けたとしても、いわゆる三〇%の地上固定のミサイルは破壊されるかもしれないけれども、いわゆる潜水艦搭載とか戦略爆撃機搭載の約七〇%相当の力を持った核ミサイルが残存する。それによってソ連に報復する、こういう戦略ではありませんか。ですから、単純なICBMだけの比較で、しかもソ連が優位に立ってアメリカの対応が困難だなんという書き方は、ぼくは非常に軽率だと思う。こういうものは国民の判断を誤らせる、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。それでは、たとえば核弾頭の数はどうですか。核弾頭の数では米ソを比較してどうなりますか。
  64. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 現在、米国九千二百、ソ連六千と考えております。ただし、昨年一年間でその差は千縮まっております。
  65. 市川雄一

    市川委員 SALTIIの締約時の公表された資料ですと、米国が九千二百、ソ連が五千発、約五千の開きが核弾頭ではあるわけですよ。核戦力を比較する場合に、そういうICBMの数だとか、あるいはそういうことだけで比較することは意味がない。たとえばこの核弾頭の数で比較することも意味がない。SALTII条約をカーター政権のもとで首席代表でまとめたウォーンキ氏は言っておりますが、恐らく一九八五年までにアメリカ努力すれば、この核弾頭は二万五千発を持つことができるだろう。しかし、ソ連は恐らく一九八五年までに一万八千発を持つに至るであろう。すると、米ソの差は七千発の差に開く。いま五千発の差ですが、アメリカ努力して一九八五年までに二万五千発持てば、ソ連も一万八千発持つ。五千発の開きが二千発ふえて七千発の開きになる。だけれども、そのこと自体何も意味がない、意味を持たないということを同時に指摘していますよ。言ってみれば、ソ連の人口十万以上の都市が二百四十から二百五十。一つずつの核弾頭が当たったと想定しましても、九千二百発というものはソ連の十万以上の都市を全滅させるのに何十回分の十分な数であるわけですね。そういう意味で、こういう単なる数の比較は意味をなさないということが一つ。  それからICBMだけの比較は非常に片手落ちだということ。項目として確かに三項目挙げていますよ。三本柱を挙げておりますが、結果として書かれておることはICBMの比較だけではありませんか。巡航ミサイルとか戦略爆撃機の搭載の核ミサイルの分野とか潜水艦搭載の核ミサイルの分野では、技術的にもアメリカが大きくリードしている、ソ連は非常に立ちおくれているということがいろいろな専門家から指摘をされているにもかかわらず、そういうところは全然触れないで、ただICBMのことだけしか書いてない。あるいはSS20ということは書かれておりますが、米ソの核兵器体系というものはどちらかの国が一つや二つの新しいミサイルをふやしたからどうこうというほどのなまやさしいものではない。特に米国の核兵器ミサイルは、ソ連のSS20が一つふえた、新型がふえた、だからそれに対応する新しいミサイルをつくらなければならないという、こういう発想に立っているわけではない。あえて小型化してきた。あえてICBMをつくらなかった。三本柱に分散してきた。米ソの核戦略というのは、こういう全く異なった考え方を持っているわけですよ。それをただ単純に、この防衛白書ではICBMの数の比較だけ、ただ命中精度が上がったというだけ。これはきわめて、私は防衛力増強のためにとにかくソ連を強く見せようという意図ありありの白書というふうにしか思えない。こういうことは是正していただきたいと思います。どうですか、防衛庁長官
  66. 大村襄治

    大村国務大臣 白書の記載の仕方についていろいろ御批判があったわけでございますが、私ども防衛白書の作成に当たりまして、努めて客観的な資料に基づいて一方的に偏らないように努めたつもりでございます。先生御指摘のICBM以外の潜水艦の問題あるいは空中の運搬手段の問題、総合的に判断すべきであるということにつきましても相当なページ数を充てているのでございます。七ページから数ページを充てているわけでございまして、またこういった点につきましては、米英等の各国の国防白書におきましても同様の記述がなされているということでもございまして、私どもは決して偏らないように努力しておるつもりでございます。しかし、重ねて御指摘がございましたので、今後はさらに公正な記述ができるように進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  67. 市川雄一

    市川委員 この委員会でも、機材とか兵員とか火力をただ物理的に比較をしてどうこう言うことは余り意味を持たない、そういうやり方はやめてほしいという発言が何回かございました。そういう趣旨で申し上げているわけです。  たとえば先日も、ソ連の太平洋艦隊のトン数が問題になりました。アメリカの第七艦隊との対比で第三艦隊が入ってないじゃないかということ、これなんかもいわゆる軍事専門家の間ではいろいろな意見がございますけれども、ソ連アメリカでは海軍の編成の仕方が全く違うという問題もございます。何か一説によると、ウラジオストクというのは岸壁がたくさん用意されておりませんから、港に入りますと、乗員が岸壁に上がっていくためにはタグボートとか小さい補助艇が必要になる、それに乗って上陸する、そういう隻数もソ連太平洋艦隊の隻数の中に入って計算されているのではないか、こういう指摘もあるくらいです。  時間が差し迫ってきましたから、あと海上の問題と極東の陸上兵力の問題をと思っていましたが、ちょっと聞いておきたいと思うのですが、ソ連の太平洋艦隊が七百七十隻というふうに書いておりますね。この五十五年版の防衛ハンドブックを調べてみたのですが、この七百七十隻の内訳がわからない。潜水艦百二十五、空母一、巡洋艦十、駆逐艦三十、護衛艦三十、その他約三百三十、それから補助艦艇二百四十五。七百七十のうち実質の即戦能力を持った戦闘艦、これは恐らく百七十七隻くらいじゃないかと私は思うのですよ。この数の書き方も非常に間違っていると私は思うのです。そしてアメリカの第七艦隊六十隻、こう書いてある。アメリカの第七艦隊の六十隻というのは、言ってみればまさにそのままいつでも戦闘態勢に入れる戦闘艦ですよ。そういうものと、その他なんというのでくくられるようなものが三百三十、あるいは補助艦艇が二百四十五、合わせて七百七十隻、こういう比較の仕方も、素人が読みますと何かソ連の太平洋艦隊は七百七十隻でものすごい、七百七十隻対六十隻ではこれはかなわないという感じを与える、非常に意図的な感じを受けるのです。七百七十隻について内訳が言えますか。防衛庁に資料要求したのですが出してくれなかった。ここで改めてお伺いしますが、七百七十隻の内訳が明快にお答えできますでしょうか、どうでしょうか。
  68. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 お答え申し上げます。  確かにアメリカソ連の艦隊を比較します場合に、数というのはソ連がいつでも圧倒的に多いのでございます。これはソ連海軍というのは元来伝統的に沿岸防備の軍隊でありまして、また潜水艦を中心にした艦隊でございますので、伝統的に非常に数が多いので、別にこれはことしの白書に限ったわけではございませんで、一貫してこういう数字になっております。  それで、七百七十隻、現在七百八十五隻でございますけれども、その内訳につきましては、非常に細かい点につきましては秘にわたる部分がございますけれども、申し上げますと、空母一隻、巡洋艦十二隻、駆逐艦三十隻、護衛艦三十隻、潜水艦百三十隻、哨戒艇など三百三十五隻、補助艦艇二百四十五隻、合計約七百八十五隻でございます。
  69. 市川雄一

    市川委員 哨戒艇など三百三十五、補助艦艇二百四十五の中身はどうですか。これはどんな船ですか、わかりますか。
  70. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 哨戒艇は沿岸防衛の目的が主と考えられまして、中にはオサあるいはコマというように攻撃型のミサイルを積んだ哨戒艇も含まれております。
  71. 市川雄一

    市川委員 何か余り明快な御答弁ではない。ですから、七百七十隻というのはいわゆる即戦の戦闘能力を持った船じゃないのですよ。明らかに水増ししているのですよ。第七艦隊の六十隻というのは、そういう意味では水増しがない。新兵の教育からも解放されているし、あるいは補給という問題ではハワイ司令官が全部やるわけですから、第七艦隊というのはとにかくそのまま即時出て行って戦える力ですよ。それと沿岸警備艇等も含めた、補助艇二百四十五ですか、七百七十隻、こういう比較の仕方そのものの観点が非常に意図的だということを私は申し上げているのです。もうちょっと良心的な比較をやって——グレン報告とかあるいは米議会調査局のコリンズ報告とか、かなり詳細な分析をしてますよ。プラグマティックに客観的事実を突き合わせながら、同時に評価は総合的で、しかも長期的な分析で、そういう手法を用いて米ソの極東における軍事バランスの分析を行っております。少しはそういう点を参考にされたらいかがでしょうか。しかもコリンズ報告では、米ソの軍事バランスは同盟国のいろいろな意見にもかかわらず均衡しておる、そして日本における対ソ脅威論は過剰である、これは米国の政策にとって好ましくないということを言っている。あるいはグレン報告では、日本防衛政策、防衛力増強を抑制的に控え目にやってきたことが極東の安全に寄与したと、そういう貢献も評価している。そういう意味でどうも防衛白書は一貫してアメリカ劣位、ソ連優位というふうに描き出そう描き出そう、そして防衛力増強の根拠づけをしようという余りにも露骨な感じを受けるわけです。こういうやり方は改めていただきたいというふうに思います。  ところで、自衛隊法の今回の一部改正で、横須賀を基地とする海上自衛隊……
  72. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 ちょっと大臣の発言……。(大村国務大臣「ちょっと訂正を申し上げたいのです。ちょっと資料のあれを間違えましたので」と呼ぶ)
  73. 市川雄一

    市川委員 いや、もういいです。時間が差し迫ってきておりますから、いま要望だけ申し上げて、次の質問に移らしていただきます。  潜水艦隊が新設されることがうたわれておりますが、横須賀に司令部が設けられることによりまして、要するに、横須賀における基地機能がかなり強化されるのじゃないか、横須賀、厚木とパイプが太くなって基地機能がかなり強化されるのじゃないか。あるいは将来の問題として、直ちに基地機能の強化にはつながりませんというふうにたしか説明されておりましたけれども、潜水艦を増艦してというようなお考えが本当にないのかどうか。この二点、まずお伺いをしたいと思います。
  74. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまもお話しございましたように、潜水艦隊をお認めいただければ司令部は横須賀に置きたいと考えております。しかし、現在の潜水艦の、現在十四隻でございますが、呉に八隻、横須賀に六隻という配置を変更することは考えておりませんので、若干の司令部要員が横須賀におることになりますけれども、特にこれが横須賀基地の強化といったような形につながっていくとは私ども考えておりません。  それから、将来潜水艦をふやす考えがあるかどうかという点でございますが、いま申し上げましたように現在十四隻でございますが、「防衛計画大綱」の別表では十六隻と掲げられております。私どもいずれにしましても将来の計画としまして十六隻ということは考えていきたいと思っておりますが、現在実施いたしております中期業務見積もりができ上がりました段階でも、まだ十四隻のままという段階でございます。
  75. 市川雄一

    市川委員 また問題が変わります。厚木基地へのP3Cの配備の問題なんですが、昭和四十八年十二月二十五日に行われた神奈川県、大和市、当時綾瀬町いま綾瀬市、それから防衛庁の横浜防衛施設局、この四者の申し合わせ事項「防衛庁は、五十機、二千人の規模について検討を開始し、その結論を得るまでの間約三十五機、約千五百人の規模は拡大しない。」こうあります。今回のP3Cの配備からいきますと、約三十五機、千七百五十人というふうに聞いておりますが、これは申し合わせ事項に違反するというか、申し合わせ事項の読み方そのものが約束なのかどうなのかということによって変わってきますが、はみ出ていると思うのですが、この辺はどういうふうにお考えですか。
  76. 森山武

    ○森山(武)政府委員 お答え申し上げます。  市川先生御案内のように、昭和四十六年十二月に厚木基地を海上自衛隊が最初に使用する際に地元との約束がございます。その中身といたしましては、最終的には航空機約五十機、人員約二千名で構成をするという基本的な合意がございます。その後、ただいま市川先生が御指摘になりましたように、四十八年十二月に至りまして航空集団司令部の移転の際、確かに御指摘の申し合わせ事項がございます。この申し合わせ事項に基づきまして、防衛庁側はP3Cの配備に当たりまして検討した結果、当面の結論として、昭和五十六年度において約三十五機、人員千七百五十名という結論に達したものでございます。この結論は昭和四十六年の基本的合意の内容の範囲内でございます。
  77. 市川雄一

    市川委員 それは基本的合意の枠内なんでしょうが、当面は拡大しない、こう言ったわけですね。その当面は拡大しないという方針から見ると、当面策が変化して千七百五十人に拡大してしまったわけですね。そういう意味から言うと、当面拡大しないということに対する申し合わせ事項からははみ出たと見られると思うのです。そのままずるずるいってしまうんじゃないか、こういう不安は持っているわけですね。P3Cの配備、五十六年度三機、五十七年度五機、こうなっていますが、これ以降はどうなのかということが第一点。  それから、当時の山中防衛庁長官が、四十九年一月十八日、衆議院内閣委員会においてこういう答弁をしているのです。その残りを二十機——これは十五機の誤りだと思うのです。あるいはまた五百名余りというものを入れるに際しても相談をして、どこまで地元の御要望に沿い得るか、そういう検討をいたしましょうというのですから、その申し合わせによって既定方針とは大きな変化が生じたというふうに私どもは受け取っておるわけであります。恐らくこの意味は、五十機、二千人というのは既定方針、残りの十五機あるいは五百人は事前の相談をしなくても入れることができるというものでございます。しかし、この申し合わせ事項によって、あと十五機あるいは五百名ふやすときは相談をして、地元の御要望に沿い得るかどうか御検討いたしましょうということですから、既定方針の大きな変化というふうに言っておるわけです。ですから、これはある程度束縛されるという意味のことを長官はおっしゃっているわけです。こういう趣旨から考えますと、もっともっと地元と相談してと答えているのですから、地元の要望をよく聞くという、もっと誠意のある態度が望ましいと私は思います。  そしてこのP3Cは、潜水艦攻撃用のホーミング魚雷、対潜爆弾、対潜ロケット、こういうものを装備するようになっておりますが、将来こういう弾薬庫を厚木につくるのですか。それに対する不安も厚木では持っているわけであります。いかがですか。
  78. 塩田章

    ○塩田政府委員 第一点と第三点について私からお答えいたします。  第一点の五十八年度以降、つまり今回お願いいたしております八機以降P3Cの配備計画はどうなるかという点でございます。全体でP3C四十五機の計画でございますが、いま決まっておりますのは、いまの八機を厚木に配備したいということだけでございまして、残りの点につきましては、まだどこにどういうふうに配置するか決めておりません。  それから第三点の新しい弾薬庫をつくるかどうかという点でございますが、航空基地に弾薬を配備しておくことは有事即応態勢の維持という点から必要であると考えておりますが、P3Cの配備に伴い厚木基地に新たに弾薬庫などを整備するかどうかということについては、現在のところ何も決定をいたしておりません。
  79. 市川雄一

    市川委員 施設庁長官、先ほど申し上げましたように山中防衛庁長官も、地元と相談してどこまで地元の御要望に沿い得るかということも国会で答弁なさっているわけです。しかも、いま申し上げたような弾薬庫の建設に対する不安、あるいはこの大和市、厚木周辺は、神奈川県では川崎、横浜に次ぐ人口密集地なんです。しかも、五十二年の九月には米軍機の墜落事故があった、こういう背景考えますと、地元との十分な話し合いというものを御要望したいと思うのですが、その点施設庁長官からお答えをいただきたいと思うのです。
  80. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 厚木に限りませんが、一般的に私どもは、基地の安定的使用を図るためには地域住民の方々の理解と協力が必要であるという基本的な認識を持っておるわけでございます。特に厚木につきましては、先生御指摘のとおり非常に人口が密集しておりまして都市化が進んでおる状況でございます。かねてから地元の方でいろいろな御要望があるということは十分承知をいたしておるわけでございます。  今回の件につきましては、私どもは基本的には五十機、二千人ということで御了解をいただいておるというふうに考えておるわけでございますが、基地が存在するがゆえにいろいろな影響を地域住民の方々に及ぼしていることは事実でございます。そのため、政府としては従来から、そのような影響を緩和したりあるいは防止したり、各種の施策を講じてまいったわけでございます。しかもまた、わずかではございますが、厚木につきましては整備縮小というものを図ってまいりましたし、各種の事業をやってまいりました。今回の件につきましてもいろいろな問題がございますし、地元の方々からもいろいろな御要望があろうかと思いますので、今後とも十分御要望を承りまして、私どもとしてできる限りの御協力を申し上げたいというふうに考えております。
  81. 市川雄一

    市川委員 次に、五十二年の十二月、横須賀にある米軍の三施設返還、厚木等米軍の基地機能が横須賀に集約されるかわりとして横須賀にある基地を三つ日本側に返還する、こういうことで長井住宅地区、稲岡エリア、EMクラブ、この三つの施設の返還が決まりましたが、中でも長井住宅地区の返還問題がちょっとおくれているようにお見受けするわけです。これは日米合同委員会との関係でどうなっているのか。おくれている理由はただ物理的な問題だけなのか。代替施設ができて移転が完了すれば自動的に返還されるのかどうか。したがって、その代替施設のめどとして五十六、五十七年度に完成のめどを持っているのかどうか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
  82. 森山武

    ○森山(武)政府委員 市川先生、先ほどのP3Cの配備のときに、私当面の結論を三十五機約千七百五十と申し上げましたが、約三十機約千七百五十の間違いなので、ここで訂正させていただきます。  長井住宅地区の返還につきましては、先生御指摘のとおり稲岡エリア及びEMクラブと一緒にこの長井住宅を含めまして、三施設につきましては昭和五十二年の十二月十五日移設を条件に返還するという基本的な合意が日米間で了解に達しております。それで、当庁といたしましては、地元の強い返還要望等を踏まえてこの早期実現を図っておるところでございますが、稲岡地区を最優先にしてくれというふうな横須賀市長の御要望、それからEMクラブをその次にしてくれというふうな地元側の御要望を踏まえまして、逐次移設計画を立てているところでございます。  それで、長井住宅につきましては、具体的にどういう建物を建てるかというふうなことが現在日米間で交渉中でございます。昭和五十五年度におきましてへその住宅の移設工事を進めるための必要な調査工事、それから設計を実施する計画でございます。なお、五十六年度においては実際の移設工事に着手したい。このような考えでおります。それから移設工事の現時点における計画といたしましては、私どもの腹づもりでは厳しい財政事情もございますが、昭和五十七年度中に完成させたい、このように考えております。なお、返還はその完成後になるわけでございます。
  83. 市川雄一

    市川委員 時間が来ていますが、この三施設返還に関連して、横須賀市が当時の防衛施設局に、基地集約化による市民の負担がふえるわけですから猿島もぜひ軍転法の精神にかなって市で使いたい、それを骨を折っていただきたいということを要望した。施設庁は、口頭でしたが最大限の努力をいたしましょうということのようでございますが、いま市の方でいろいろやっておりまして、すでに八月二十三日に市民参加で利用計画の策定を検討してきた市長の諮問機関の四施設利用計画協議会の猿島分科会が答申をまとめた。今後は市でこれを具体化していくわけですが、地元の要望にこたえて恐らく市は無償譲渡を望んでいるわけですが、旧軍港市転換法の精神にもちろんかなった利用計画というものを当然考えているわけですが、大蔵省として、基地集約化という状況の中でのこうした地元の要望に対して前向きに対処していただきたいと思います。大蔵省の方お見えになっておると思いますが、その点と、それから施設庁の方も当時口頭で努力しましょうとおっしゃったことの趣旨に沿って、引き続いて大蔵省の方へ働きかけをぜひお願いをしたいと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。
  84. 佐藤孝志

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  横須賀に所在します猿島の利用計画につきましては、現在地元の横須賀市でいろいろ検討中であるということを私どもは十分承知いたしております。今後横須賀市から猿島につきましての具体的な利用計画を添えました要望書が提出されますれば、その段階で十分検討いたしたいと考えております。
  85. 森山武

    ○森山(武)政府委員 防衛施設庁といたしましても、従来からの経緯にかんがみまして、ただいまの猿島の利用につきましては側面から最大限の御協力を申し上げたいと思います。
  86. 市川雄一

    市川委員 済みません、時間が来ていますが簡単に二つだけお伺いします。  比与宇の弾火薬庫を移転するやに聞いておりますが、そういう移転の計画があるのかないのか。それから、移転した後の跡地としてやはり地元に返してほしいという要望がありますが、まずこの点について、移転の計画があるのかないのか、移転するとしたら地元に返還する用意があるのかないのか。  それから、大矢部弾火薬庫は法的な保安距離を持っておりますが、非常に人口急増地でございまして、こういう急増地に弾火薬庫があることは非常に住民の不安を増大しております。住民側の要求としては、もっと安全な場所に移してほしいというかなり強い陳情が出ておりますが、この点についての見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  87. 多田欣二

    ○多田政府委員 まず比与宇の弾火薬庫でございますが、これはかねてから市側から返還の御要望が強くございまして、移転について検討していたところでございます。当初は米軍の浦郷倉庫地区というところに移転をしたいということで検討しておりましたが、日米間でいろいろ保安規則等の相違がございまして、ここはどうも移転先地になり得ないという状況になりました。その後、本年の三月、吾妻倉庫地区、海上自衛隊が共同使用することになりましたので、ここが候補地になり得ないかということで検討いたしましたが、現在までのところ保安規則その他移転候補地の一つになり得るというふうにわれわれ考えております。今後市側あるいは関係先と調整をいたしまして、その方向で市側の御計画に沿えるように最大限の努力をしたいと思っております。  それからもう一つ大矢部の弾火薬庫でございますが、これは先生御指摘のとおり大変周辺が宅地化してきております。しかし、この弾火薬庫は横須賀地区におきます海上自衛隊の重要な弾火薬庫でございまして、私どもといたしましては周辺に危険を及ぼさないよう貯蔵火薬の調整を図るなど十分な注意をいたしまして、今後とも使わせていただきたい、このように考えております。
  88. 市川雄一

    市川委員 終わります。  ありがとうございました。
  89. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 小沢貞孝君。
  90. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 午前中の時間が三十分ほどですから、事務的なことから先にお尋ねをしたいと思います。  栗栖前統幕議長が辞任したのか首になったのか知りませんが、その当時から奇襲対処の問題、これは古くて新しい問題であるわけであります。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕  そこでお尋ねしたいわけですが、昭和五十三年九月二十一日に防衛庁は奇襲についての見解を発表になっておりますが、その後奇襲対処についてはどういう研究がなされているか。いつまでにその結論を出そうとしているのか。その内容について先にお尋ねをしたいと思います。
  91. 塩田章

    ○塩田政府委員 奇襲対処の問題につきましてのお尋ねでございますが、御指摘のように五十三年九月に考え方防衛庁として発表いたしまして、それ以来研究をいたしておるわけでございますが、ちょうどそのときに一緒に発表いたしました有事法制の研究という課題もございまして、一緒に勉強をしておるわけでございます。  どういうことをやっておるかと申しますと、その後自衛隊発足当時あるいは自衛隊法ができた当時の立法作業に従事された方々あるいはそれ以外の方でも学識経験のある方々にいろいろお話を承ったり、防衛庁に来ていただいて研究会を開かしていただいたり、そういうようなことを一方でやってまいりました。また一方で外国の法制、諸外国では一体どういう扱いをしているのだろうかというようなことも勉強をしておるわけでございます。いま申し上げました点は、有事法制の方も奇襲対処の方も同じような考え方で一緒に勉強を進めておるわけであります。現在まだまとまったという段階まで至っておりませんけれども、今後引き続き現在の法律でどういう解釈ができるか、あるいはできないかといった現在の法律の解釈の詰めということも含めてさらに検討を続けていきたいというふうに考えております。
  92. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私は、いつごろまでに結論を出すか、こういうお尋ねをしているわけです。
  93. 塩田章

    ○塩田政府委員 なるべく早くとは思っておりますけれども、いまの時点でいつごろまでというめどを申し上げられる段階まで至っておりませんので御了承をいただきたいと思います。
  94. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 自衛隊法七十六条の場合に、自衛隊の出動命令はおそれのあるときにも国会の承認の前に出動できるか、こういう問題があるわけであります。このおそれの場合に国会の承認なしで出動できるかどうか、法制局からの見解お尋ねしたい。
  95. 江藤隆美

    江藤委員長 内閣法制局はまだ来てないそうです。恐縮ですが、いま連絡をとっております。
  96. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それじゃ来るまでに……。  自衛隊法九十五条で「武器等の防護のための武器の使用」が規定されているわけです。その場合に、レーダーサイトとかあるいは自衛艦、この二つが「武器等の防護のための武器の使用」、こういう中に入っていないわけです。これは大事な欠陥じゃないかと思うのですが、防衛庁どうでしょう。
  97. 夏目晴雄

    夏目政府委員 確かに御指摘のように、自衛隊法九十五条の「武器」の定義の中には船舶等は入っておりません。また、レーダーサイトも入っておりませんが、ただ、船舶のうちでも護衛艦等のように、本来的に武装しているような艦船については当然「武器」の中に含まれると私ども解釈しております。また、レーダーサイトにつきましては、御承知のように、レーダーサイトがわれわれに移管される以前にこの自衛隊法ができておりますので、レーダーサイトそのものは現在の「武器」の中に読めるかどうかというのは非常にむずかしいと思います。
  98. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 レーダーサイトというのは、いまの近代戦争にとっては最高に大切な問題なんです。にもかかわらず、自衛隊法はたしか昭和二十九年だと思います。それからもう二十六年たっているわけです。情勢がまるきり変わっちゃっているわけです。いまの答弁にもあるように、自衛隊法のできたときはそういうことを想定しておらなかった、こういうわけです。したがって、二十六年たって国際情勢から一般の情勢がまるきり変わった現時点においては、これを具体的に改正して、レーダーサイトあるいは自衛艦等も「武器等の防護のための武器の使用」に該当するように直さなければならない、こう思いますが、どうでしょう。
  99. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘のように、レーダーサイトを「武器」の中に含めることについて、われわれも望ましいとは思いますが、今後これにどういうふうに対処していくかということは自衛隊法の改正あるいは有事法制の研究等の中でそういう必要があるかどうか、私ども検討してまいりたいというふうに思っております。
  100. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 まだ法制局が参りませんから、さらに質問を続けたいと思います。  自衛隊法第百三条の問題についてですが、国有地なんかは別として、民有地などで具体的に有事に対処をする場合に民事契約等が必要になってくると思うのです。これは自衛隊法に明示してありますが、防衛出動があってから、ここにざんごうを掘らしてくれ、ここへ防空ごうをつくらしてくれということを民間の土地の所有者にお願いをしておって、自衛隊の出動命令が出てからで間に合うでしょうか。自衛隊法第百三条は検討の材料になっておりませんか。
  101. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事法制の研究につきましては、先ほど防衛局長から答弁がありましたように、私どもいま基礎的な勉強をしている段階でございますが、その中で検討の対象として、自衛隊法百三条の政令が未制定でございます。そういった中でそうしたものを優先的に取り上げる必要があるだろうということを考えておりますが、一方、いまの先生御指摘のあったような百三条に基づき民有地にざんごうその他を掘るというようなことは、当然のことながら現行法では防衛出動が下令にならないとできない問題でございます。一方民事契約によりまして、地主の承諾を得られれば、これは防衛出動下令前といえども民有地にそういった工作物を設置するようなことは当然認められますが、百三条に基づく強制的な使用というのは、防衛出動の下令がなければできないというのはあたりまえでございます。
  102. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 長官、いま二つだけ私例を挙げたわけで、自衛隊法九十五条でレーダーサイトが「武器等の防護のための武器の使用」に該当していない、これは二十六年も前のことでそういうことを想定しておらなかった、こう言う。それから二十六年前にできた自衛隊法百三条にあっても、政令がまず第一にできておらぬわけです。だから、これは絵にかいたもちの自衛隊に私たちは一生懸命に金をつぎ込んでいるようにしか見えないわけなんで、いま事務当局の答弁によれば、これも有事法制化の中で検討をしたい、こういうことのようですが、もう一回お尋ねしますが、これはいつになったらそういうことができるだろうか。片方においては、予算をとることにおいてもうあすにでも戦争があるかのごとく大変な勢いでやっておるわけだけれども、みずからやらなければならないことについてはさっぱり作業が進んでおらぬ、こういうふうにしか私たちには考えられないわけです。長官、どうでしょう。
  103. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま小沢委員が御指摘になりました九十五条の武器等防護の対象にレーダーサイトが現在入っておらないという点、あるいは百三条の政令がまだできていないというような点、これはかねて御指摘のあった点でございまして、防衛庁内部におきまして、防衛庁所管の法令を中心に鋭意検討を進めているところでございますが、まだ遺憾ながら私の手元に上がっておりません。大分日がたっておりますので、私といたしましては引き続き督励いたしまして、できる限り国会に報告できるように努めたいと考えている次第でございます。
  104. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 いまの防衛庁長官答弁についてさらに私はお尋ねをしたいと思います。これはことしの防衛白書の「防衛庁における有事法制の研究について」という中に、こういう認識に立って研究をしているようです。「防衛庁における有事法制の研究について」の四番の中に「幸い、現在の我が国をめぐる国際情勢は、早急に有事の際の法制上の具体的措置を必要とするような緊迫した状況にはなく、また、いわゆる有事の事態を招来しないための平和外交の推進」云々、こういうことを言って、後で「法制に係る研究も当然必要なことであり、むしろこの種の研究は、今日のような平穏な時期においてこそ、冷静かつ慎重に進められるべきものである」となっています。だから、この有事法制化の研究についての防衛庁の態度というものは、「我が国をめぐる国際情勢は、早急に有事の際の法制上の具体的措置を必要とするような緊迫した」情勢にはない、こういう判断に基づいて、長官の部下はいつやっているのかわからぬようなゆっくりした研究をやっているわけです。長官、この文句を直さない限り——有事あるいは奇襲に対する法制整備というものについて事務当局はやろうとは考えておらぬ。防衛白書が証明しているんだから、長官が何と言ったって事務当局はその研究に真剣に取り組もうとはしていない、こういうように見るしか見ようがないわけです。
  105. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のような文章もございますが、有事法制の研究につきましては、五十三年の九月に防衛庁といたしましては検討を開始したものでございます。それからすでに二年経過いたしておりますので、私といたしましては、関係者の研究努力の跡をさらに促進を図っていくように努めているところでございまして、決して怠けているということではございません。先生御案内のとおり、いろいろ関連部分もございまして、作業は必ずしも容易ではなかったわけでございますが、それでもかなり進行しておりますので、なお残されておる部分を促進することによって、できるだけ早く私の手元に届くように引き続き督励してまいりたいというのが実情でございます。
  106. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それでは法制局が見えたようですから、法制局にお尋ねいたします。  自衛隊法第七十六条、防衛出動について、こう書かれております。「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認」云々とありますが「を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。ただし、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができる。」こうありますが、その括弧して「(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)」となっております「おそれのある場合」にも国会の承認を得ないで出動を命ずることができますか、それをお尋ねしたいわけです。
  107. 味村治

    ○味村政府委員 先生の御指摘のとおり、七十六条の場合は武力攻撃のある場合のみならず、武力攻撃のおそれのある場合にも防衛出動を命ずることができるようになっております。そして特に緊急の必要がある場合には、国会の御承認を得ないで防衛出動を命ずることができることになっておりまして、これは武力攻撃が実際にある場合だけではなく、武力攻撃のおそれのある場合も含まれるというふうに解されるわけでございます。もちろんいずれの場合にも国会の御承認を得ないで防衛出動を命じました場合には、七十六条の二項によりまして、事後に御承認を得なければならないということになっております。
  108. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 要するに、「おそれのある場合」にも国会の承認を得ないで出動を命ずることができるわけですね。
  109. 味村治

    ○味村政府委員 御指摘のとおりでございます。
  110. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは最近の新聞ですが、奇襲対処で防衛庁見解を出しておるわけです。「防衛出動前の空白 警察的行動で応戦」する、こういう新聞の見出しです。そうすると、先ほど来答弁があるように九十五条あるいは七十六条あるいは百三条等々、この自衛隊法は欠陥だらけなのを警察行動で応戦をしよう、こういう考え方ですか。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま新聞報道で御質問があったわけでございますが、私どもそういう新聞報道にありましたような考え方をまとめたという段階に至っておりません。
  112. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 奇襲の問題だけでこれ以上こだわっていると時間がありませんので、私は防衛庁長官お尋ねしたいわけですが、先ほど来指摘しておりますように、九十五条だけでも大変な欠陥がある。百三条においても同じであります。あるいは最近新聞に伝えられるように、これは定かではありませんけれども、海外派兵についても、武器を使用しない場合には自衛隊は憲法上派遣できるが、自衛隊法にそれがうたわれていないからできないみたいな御答弁も聞いておるわけです。私は、こういう昭和二十九年といういまから三十年近く前にできた自衛隊法は、現在の情勢にかんがみて、いま二つ三つ私が挙げた点ばかりではなくして各所にそういう矛盾や問題点が出ておると思うわけです。  そこで、この自衛隊法というものを三十年近くたった今日において全面的に見直さなければならない時期に来ているのではなかろうか、私はそう思うわけです。しからば、どの項目がその法改正の対象になっておるか、あるいは研究をしておるか。その項目をひとつ挙げていただきたい。
  113. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御承知のように、有事法制の研究といいますのは、自衛隊法第七十六条におきまして防衛出動が下令されたもとにおきまして、自衛隊がいかに効率的、有効、円滑に活動できるかということに関連した法制上の諸問題を検討するわけでございまして、範囲も相当広うございます。先ほども御答弁がありましたとおり、私ども立法当時の有識者の意見を聞いたり、あるいは外国の法制を調べたりということで、現在基礎的な研究をいたしております。  一般的に申し上げて、私どもがいま検討の対象としているのは、分類を申し上げますと、まず第一は、自衛隊に関係した防衛庁所管の法令についてであろうかと思います。第二は、防衛庁以外の省庁の所管に属する法令。第三には、そのいずれともなかなか判断しがたい、たとえば国民の避難誘導に関するような問題が挙げられようかと思いますが、私どもとしては、いま第一に申し上げた防衛庁所管に係る自衛隊に関連した法令を中心に検討しているということでございまして、現在先生が御指摘になりましたいろいろな項目についても当然のことながら検討の対象になろうかというふうに思っております。
  114. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 いや、私が挙げた項目でなくて、防衛庁サイドだけの研究の中で、大きな項目はどういうことをいま研究の対象にしているかと尋ねているわけです。
  115. 夏目晴雄

    夏目政府委員 具体的に細かな点を申し上げる段階にはございませんが、先ほど申し上げた第一の分類におきましては、まず最初に申し上げられることは自衛隊法第百三条におきます政令の未整備の問題、たとえば土地の収用であるとか物資の収用あるいは従事命令の項目がございますが、これらいずれにも政令が定まりませんし、手続も決まっておりません。公用令書の交付、都道府県知事への要請の手続その他についての検討がまず第一になろうかと思います。それ以上の細かな点については、いまどういうことが挙げられるかということを申し上げるような段階にはまだございません。
  116. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 くどいようですが、長官、ただ百三条のことを具体的に研究しているだけでこの三十年近くも前にできた自衛隊法が今日の時点でいいと考えていますか。先般来国会の答弁の中でも、自衛隊法がだめだから出ていけないとかいろいろ問題が新たに出ていると思うわけです。だから防衛庁としては、三十年近くたった自衛隊法について、このところ、このところ、このところ、こういうところは研究——やれとは私も言っていない。新しい時代に全然適応していない点がたくさんあるのだから、その点の研究はしていませんかと項目を尋ねているわけです。事務当局はさっきから百三条の政令の問題だか百三条のことだけしか答弁していないようです。どうです、長官として私は答弁していただきたい。
  117. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の問題につきましては、防衛庁といたしましては勉強もし研究もいたしているわけでございます。しかしながら、法改正ということになりますと、やはり今後の国会の御論議あるいは世論の動向等を踏まえて慎重に対処しなければならない問題でございますので、いまどの事項を検討しているというようなことは申し上げかねる次第でございます。
  118. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 長官、こういうことは認めますか。三十年近くも前にできた自衛隊法は欠陥だらけだ、この点、この点、この点は法改正するか、現在の法律でやっていけるか、そういうことについて具体的に研究を命じなければならないときに際会している、私たちはそういう情勢だと考えておるわけです。だから、事務当局はさっきも読み上げたように、幸い現在の情勢は有事の際の法制の具体的な措置を必要とするような緊迫した状態でないみたいな認識に立ってやっていると思うから、長官、政治家としてどういう項目を速やかに研究をする、こういうように言わなければならないのが政治家、長官としての任務だと私は思う。どうでしょう。
  119. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  先ほど来お尋ねの有事法制につきましては、政府委員お答えしたとおりでございます。  また、先生のお尋ねの問題につきましては、有事法制に関係のある問題もあり、あるいは有事法制に直接関係のない問題も含まれているようでございますが、いずれにいたしましても、法制定以来相当長い年数がたっておりますので、現在の情勢から見まして、そういった問題を勉強もし研究もしなければならないということにつきましては私も同感でございます。ただ、法改正ということになりますと、先ほどのようなこともございますので、さらに慎重に研究を続けてまいりたいと考えている次第でございます。
  120. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 午前中の時間はこれで終わりですから、午後続けて質問させていただきます。
  121. 江藤隆美

    江藤委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  122. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小沢貞孝君。
  123. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 最初に、宮澤官房長官時間がございませんようなので、宮澤官房長官お尋ねをいたします。  総合安全保障閣僚会議を設けるというのが鈴木内閣の方針として新聞等に伝えられております。これを設けるつもりなのか。それから第二点としては、これは一体どういうことをやろうとしておるのか。官房長官にそれをまずお尋ねしたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、かねて総理大臣から申し上げておるところでございますが、広い意味での国の安全は、いわゆる狭義の防衛のみならず外交、経済協力、エネルギーあるいは食糧等々の諸施策がりっぱに行われまして初めて国の安全が確保できるわけでございます。これらのただいま申し上げましたような幾つかの問題は、おのおの現在各省庁においてその責任において行政が行われておりますが、国の安全という視点から、これらの問題を総合的にまた整合的にとらえる必要があるのではないか、そのことが国の安全に寄与する、こういう発想から総合安全保障会議を設けてはどうかということで、ただいま総理大臣の指示を受けまして、私どもで会議の構成につきまして検討を進めておるところでございます。  ただいまの段階といたしましては、これらの問題に関係のあります閣僚によりまして会議を構成すること、なお会議法律を用いず、恐らく閣議決定で設けることが適当であろうということ、並びに現在の国防会議はそのまま改組をせずに、法律に定められておるとおりのものといたしまして総合安全保障会議と並び存する、そのようなことにいたしてはいかがかと考えております。
  125. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 法律によらず閣議決定で設けようとか関係閣僚によってやる、こういうことのようですが、平和戦略についても当然そういうことが考えられるであろうし、あるいは防衛の予算問題等も考えられるであろうし、あるいは経済的防衛といいますか、食糧、エネルギー等の経済防衛的なことも考えられるであろう、こういうようにわれわれは想像されるわけですが、いまのところこの総合安全保障閣僚会議のメンバーはまだ決まっておりませんか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま幾つか例示をいたしましたような問題に直接関係のある閣僚が含まれると思っておりますけれども、どれだけのメンバー、何人で構成いたしますか、まだ決定をいたしておりません。
  127. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 法律で決まっているのに国防会議があることは御案内のとおりでありますが、この国防会議は、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、それに経済企画庁長官ですか、この四閣僚だけになっておるわけです。だから国防会議にウエートを置くならば、経済防衛等については当然農林大臣あるいはエネルギーの問題等がありますから通産大臣、そういう人も国防会議に入らなければならないのではないか、こういうようにも考えるわけです。だから国防会議の性格と総合安全保障閣僚会議の性格をどういうように性格づけるか、その辺の基本はどうなんでしょう。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来国防会議が運営されてまいりました実績を見ておりますと、防衛庁設置法第六十二条によりますと、「国防に関する重要事項を審議する」ということになっておりまして、伝統的には、この点はかなり狭くと申しますか、国防に直接関係する重要事項というふうに運営をされてまいりました。また事実問題といたしまして、たとえば「防衛出動の可否」というようなことも国防会議の審議事項の一つでございまして、場合によりましては、国防会議が余り多人数によって構成されない方が機動性があるという場合もあろうかというふうにも考えられます。したがいまして、先ほど申しましたような広い意味での国の安全に関しますテーマは、別途のもう少し多人数で構成され、当面の問題で必ずしもありませんでも、広い意味で国の安全に関する事項を自由に討議をする、そういう場所が別途にある方がいいのではないか、こういうふうに考えておりまして、そういう意味では、国防会議は従来のまま存置をして、そのように機能してもらうことがいいのではないか、こう考えておるわけでございます。
  129. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは後で防衛庁長官にも聞いた方がいいかと思いますが、スウェーデンとかスイス、そういうところの防衛を見ておりますと、トータル防衛というような言葉を使ったり、それからスウェーデン等においては民間防衛、経済防衛、心理防衛、そして狭義の意味防衛、こういう四本柱で国を挙げて防衛に参加しよう、こういうような体制ができておるわけです。私は、やはりだんだん民間防衛的なことまで考えなければならない時期が来るのではなかろうか、こういうように考えると、その主体というものは国家公安委員長がそれを担当しなければならない、こういう問題も出てくる。スウェーデンにおいては、内務省が最初担当しておったが、それが最終的には国防省がこの民間防衛の問題も扱うようなぐあいに歴史的な変遷を経てきているわけです。だから、こういうようなことを考えると、いま言う前からある国防会議の方へ国家公安委員長が参加していることが当然のような気もいたします。それから今度つくる総合安全保障閣僚会議の中に当然最初から入っておってもしかるべきだ、こういうように考えるわけです。  いずれにいたしましても、こういう総合安全保障閣僚会議の発足を契機にして、民間防衛、経済防衛あるいは心理防衛、こういうものについて検討を加えながら、片方においては国防会議強化するかあるいは総合安全保障閣僚会議の中でそういう論議をするか、いずれにいたしましても、この機会にそういう問題と取り組まなければならない、こういうように考えるわけです。どうでしょう。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま小沢委員の言われましたことは、西欧のかなりの国におきましては、いわば常識のようになっておる、そういう実情は私も存じておりますが、わが国の場合には、おのずからその辺が従来の経緯がございまして、様子がそこまでまいっておりません。民間防衛ということにつきましても、有識者がそういうことを唱えておられますものの、なかなか政府施策あるいは行政の仕組みの中へそれが入ってまいらないというのが今日までの状況であると存じます。  それで、国家公安委員長が国防会議のメンバーになるべきではないかという御指摘がございました。数年前にもそういう議論がございまして、政府としてもいっときそれがいいのではないかと考え段階もございましたが、国会における御論議等々がございまして、そのことは今日まで実は実現をいたしておらないような実情でございます。  このたび総合安全保障会議が設けられるということにつきましても、ただいま幾つかの御指摘になりましたような問題、わが国の現状からいたしますと、まずやはり外交でありますとか経済協力でありますとか、エネルギーでありますとか食糧でありますとか、そういったような問題を取り上げまして、そしてやがて時間がたちまして世論がもう少し成熟をしてまいりますと、あるいはただいま仰せられましたような問題についても議論される段階が将来あろうかと思いますが、当面はやはり世論の成熟の程度も考えながら、まず各省が現実に担当しながら、しかし防衛という、安全という視点から整合性、総合性を求められております、ただいま例示いたしましたような問題について討議を始めてもらう、そういうこととして発足をいたしてはどうかというふうに私としては考えております。
  131. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 官房長官の時間もないようですから、これ以上この問題について深追いをしようとは思いませんが、少なくとも総合安全保障閣僚会議と銘打つからには、これは経済的な問題——対外、対内あるいは外交、平和戦略の問題のみならず、やはり国内の体制も整える、こういうようなことから国家公安委員長なり、私が先ほど来提起しているような民間防衛——もう先進国においては、シェルターをつくるというようなことを国内の住宅建設や何かで義務づけているみたいなところまで、やはり国を挙げて参加しようという体制ができているわけです。だから、閣僚会議の中にだって、少なくともそういう体制を整えながら、当面何をするかということは別として、将来の展望としては、いま長官発言のように必要性があるのですから、そういうことも考慮しながらひとつ発足をさせていただきたい、こういうように考えます。  それから、これは話は変わっちゃうわけですが、今夜からですか、アメリカ大統領選、世界注視の中で投票が始まって、あしたのお昼かそのころには大勢がわかるようであります。イランにおける人質の解放等、この選挙の帰趨を決する要素はまだなかなか最終段階においてもよくわからぬようですが、カーターが再選しようとレーガンが新しく当選しようと、まず第一には、この間新聞の報道するところによれば、カーターが再選されたらば、直ちに日本アメリカとの首脳会議を開きたい、こういうことが最初のテーマ、自動車の摩擦みたいなことからどうも問題が提起されているようですが、こういう報道がされました。具体的にアメリカから政府に対してそういう要請がありましたか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 カーター大統領が遊説先においてあのような意向を表明されるかもしれないということは、その少し前に私ども聞いておったわけでございますが、ただいま両国政府の間に、いつ、どのような形で、あるいは何を主題にして首脳会談が行われるというような具体的な打ち合わせ等々は行われておりません。鈴木総理大臣としましては、先般国会におきまして一般論として、両国首脳がなるべく早くひざを交えることは、自分としても望ましいということは言われたわけでございますが、これは具体的な日取りあるいはテーマ等々を頭に置いて発言されたわけではございません。したがいまして、ただいま、せんだってのカーター大統領発言に対しまして、両国の間で具体的な準備、打ち合わせ等々は行われておりません。
  133. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 カーター当選の場合には、いままでずっと接触をしておったので、要請されたら行く、あるいはいまの御答弁の状態でいいのじゃないかと思いますが、もしレーガンが当選をするということになれば、両国間の当面の問題である経済摩擦、特に自動車、それから第二は対ソ経済措置の問題、これは外務大臣は、先般の国会の委員会答弁の中で、大統領選挙後速やかにアメリカ、西欧、日本等で話し合いをしなければならない、十二月に行くからその機会に話になるかもしれぬ、こういうような答弁があったわけです。その対ソ経済措置の問題。それから第三は、レーガンは大変タカ派のように一般的には受けとめられているが、そのレーガンが当選をした場合に、日本防衛、そういうものについてどういう要請が新たに加わってくるかということも、率直に言えば国民の関心の的であります。だから、これらの問題について、レーガン当選の場合には、日本から積極的に首脳会談を速やかに開く、こういうような要請をすべき必要に迫られるのではないか、迫られているのではないか、こう思いますが、今度はレーガンの当選の場合どうでしょう。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外務大臣の御意向を伺っておりませんので、その前提でしか申し上げることができませんが、鈴木総理大臣にとりましては、実はカーター大統領ともいまだ未見でございますので、もとより日米首脳が早い時期に会談することは望ましいことと考えられますが、ただその場合、自動車であるとかあるいは電電公社であるとか具体的な問題について首脳が会談をするということは本来望ましいことではなく、それらの問題は関係大臣あるいは外交チャンネルで交渉し処理をすべきものであると私は考えております。したがいまして、両首脳の会談がありますときは、やはり大所高所から両国間の関係あるいは国際的な問題等々が議論になるのが好ましい姿ではないかと考えております。しかし、ただいまのところ、先刻申し上げましたように、具体的な日取りあるいはスケジュール等々一切両国間で協議をいたしておりません。  現実の問題といたしまして、鈴木首相は、できますならば一月にはASEAN諸国の訪問をいたしたい、この点についてはすでにASEAN諸国を打診しつつございますので、当面それがやはり優先をするのではないだろうか、そのような日程でただいま考えております。したがいまして、日米間で両国首脳の会談について具体的な相談をただいままだいたしておらないような実情でございます。
  135. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 官房長官、私の言わんとすることは、レーガンになった場合には、ASEANの訪問よりも先の大問題だと思いますから、むしろ積極的に日本から先に接触をするようにすべきではないか、こう言っているわけで、ずばりそのことだけ。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮にロナルド・レーガン氏が当選をいたしましても、大統領に就任いたしますのは、御承知のように一月の二十日になるわけでございまして、私ども、鈴木総理大臣の東南アジア訪問は実はそれより前の時期に考えております。また、二十日過ぎますと、恐らくは通常国会再開ということになろうかと存じまして、その辺の日取りも実はわが国としてはかなりむずかしい日取りになっております。しかし、御指摘のことでございますので、その点十分に検討させていただきます。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕
  137. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 官房長官、約束の時間が終わりそうですから、後質問を聞いていただければ大変ありがたいわけですが、一つだけ要望しておきます。  官房長官は、外務大臣のときに北方領土を視察に行っていただいたのだが、現地の人は任期の終わりごろ来たと言って、どうも人気が悪いのです。その後の園田外務大臣もまた任期の終わりごろ来たと言って、これまた人気が悪いのだが、今度の伊東外務大臣は、何か着任早々来てくれて大変ありがたい、こういうようなことを言っておりました。それで、宮澤官房長官が現地を視察していただいたときは国後、択捉あるいは最近の色丹、こういうところへあれだけ強固なソ連の軍隊の配置がなかったころのことではなかろうか、こう思うわけです。そういう意味においては、この両三年大変情勢が変わってきているわけです。この間も、北方領土奪還全国大会が二回にわたって各種団体のものがあったわけですが、現地もそうですが、挙げて、これはやはり鈴木内閣北方領土にしっかり対処してもらう姿勢を示すためにも、どうしても総理がなるべく早い時期に視察してほしい、こういう強い要望がある。私は対ソ関係あるいは国内関係、いろいろ判断をしてみて、そのことが一番大切ではないか、こう思いますので、これは別に答弁は要りませんが、その点を強く要望だけしておきます。  官房長官、どうぞ。  外務省と防衛庁お尋ねしたいわけですが、先ほど申し上げたように、いよいよ今夜から投票が始まって、あしたの午後にはアメリカ大統領選の行方が決定をする、こういうことで、いま五分五分の戦いを続けておるようです。イラン人質解放も緒につきつつあるようで、これもまた選挙戦の行方に大変な影響を与えそうなんですが、この共和党、民主党両党の政策綱領あるいはレーガンやカーターのテレビ討論等を通じて、両候補の安全保障政策から対日政策にどのような差が出てくるであろうか、これをお尋ねをしたいわけです。
  138. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず両党の綱領から申し上げますと、特に対日関係でございますけれども、民主党の方は政策綱領において、今日の成熟した日米の協力関係、これを今後ともに育成していくということを表明しております。他方共和党の方は、政策綱領において、日本を米国のアジア政策の基軸と位置づけておりまして、新政権が発足した場合、これはレーガンが当選した場合でございますけれども、わが国政府と緊密な協議、連絡をとっていくというふうに表明しております。  さらに、先般ブッシュ副大統領候補が日本を訪問いたしましたときに、外務大臣並びに総理大臣と会見いたしましたが、その際にブッシュ候補が言っておりましたことは、対日政策についてアメリカは引き続き重視していく、日米間にはいろいろな問題が起きるかもしれない、しかし、絶え間ない協議を続けることによって、話し合いの中で必ず解決できると自分たちは確信している、さらに日本に対してサプライズを与えるような政策はとらないということを申しております。したがって、私たちとしては、レーガンが当選した場合も、対日政策については基本的には変更がないというふうに考えております。
  139. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  大変微妙な段階でございますので、詳しい見解を申し上げる点はいかがかと思われるわけでございますが、まあ両党の政策の面でどうかというお尋ねでございますので、これまでの資料に基づいて申し上げたいと思います。  安全保障の分野におけるレーガン候補の対日政策につきましては、大統領選挙より向こう四年間の共和党の政策指針となる政策綱領。七月十五日、共和党全国大会にて採択されたものであります。その中におきまして、日本は米国のアジア政策の支柱である、途中省略しまして、われわれは日本防衛努力の実質的増強を支持するとともに、われわれの安全保障上の目的及び地域内でのソ連の軍事的プレゼンスの増大に対してつり合いのとれたものとすることは、日米双方にとって利益となるものであることを再確認すると述べられていると承知いたしております。わが国防衛努力に期待している点ではカーター現政権と同様であると見られますが、仮にレーガン候補が大統領になられた場合、具体的な政策はどのようになるかは、現時点においては何とも申し上げかねる次第でございます。いずれにいたしましても、わが国防衛努力は、あくまでもわが国の自主的判断に基づいて実施されてしかるべきものであることは、政府が繰り返し申し上げているとおりでございます。
  140. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 SALTII批准について両候補に主張の違いがあるようであります。これは両党の政策綱領を見てもそうでありますし、この間のテレビ討論を見てもそうだと思います。ただ、アメリカの世論の動向はハト派といいますか、そういう者の声がだんだん小さくなって、これはアフガン、イラン人質問題からでしょうか、大変タカ派的な世論に変わってきたようであります。それで、どちらが当選しようとも大変憂うべきことだと私は思うのですが、米ソ間における軍拡競争が始まるような様相が見受けられるわけであります。  たとえば、レーガンはSALTIIの再交渉を鮮明にしろと言う、ソ連は再交渉拒否だと言う。したがって、SALTIIは廃案、それから軍拡競争、デタント後退、両党の政策あるいはテレビ討論から、レーガンの場合はこういうような方向をたどるように見えるわけであります。それから巡航ミサイル、MXミサイルの開発促進。カーターの方は、アフガン侵攻への報復としてみずから提起した批准をたな上げしろ、そうしておいて、みずからもまた巡航ミサイル、MXミサイルの開発促進、SALTIIについても批准を求めるような態度を示すであろうけれども、これは結局どういうことになるであろうか。こういうような様相を見ると、どちらが当選をしても軍拡競争にまっしぐらに走っていくような様相が見られるのですが、その辺の分析は外務省、防衛庁、どうでしょう。
  141. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えをいたします。  カーター、レーガン両候補とも、ソ連との軍縮交渉の必要性そのものは否定しておらないわけでございまして、適切な効力と同盟関係の維持を基礎とした米ソ間の戦略的安定の確立につきましては、根本的に差異はないとわれわれは基本的に考えておるわけでございます。ただ、具体的な政策選択は当然のことながら変わってまいるという点もあると思いますが、先ほど御指摘になりましたSALTIIの上院の批准につきましては、カーター大統領は依然として早期批准を主張しておるということでございますが、現在の上院の情勢は必ずしも早期承認を楽観せしめるものではもちろんないわけでございます。もちろんこの点は、上院の改選がございますので、その結果を見る必要があるわけでございます。レーガン候補はただいま御指摘がございましたようなことでございますが、最近では直ちにSALTIIIの協定交渉に入ることを主張し始めておりまして、若干当初のニュアンスと変わっておるわけでございますので、新大統領選出以後来年の就任式までの期間におきまして具体的政策がどうなっていくかということは、いましばらく時間を待ちながら見守っていく必要があると考えております。
  142. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 SALTIIの批准につきましては、現在のアメリカの行政府考え方は、SALTIIも核の軍備増強も両方必要である、もしSALTIIがなければ、現在よりももっと増強しないとソ連との間に十分なバランスがとれなくなるという考え方でございます。それで軍拡競争と申しましても、これはアメリカに言わせますと、ソ連が先に始めたことでございます。アメリカ軍備を削減しているときもソ連増強した、これはやむを得ず何らかの対抗措置をとらなければならないということでやっておるのでございまして、現在の状況が続くというならば、ソ連にSALTIIもやはりのんでもらって、その上でアメリカもある程度核の増強もしなければならぬ、それでやっとバランスもとれる、そういう考えでございます。そういう基本的な考え方におきましては、情勢認識については、民主党も共和党も本質的には一致していると存じます。ただ、それぞれ力点の置き方が少し違うという程度のことであると考えております。
  143. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 仮定の問題だから、私はこれ以上追及しようと思いませんが、スイング作戦について具体的にお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、伊東外務大臣が去る十月二十四日の参議院の安保特別委員会で、アメリカがスイング戦略をやっており、それへの対応が必要と述べた。これは私たちも当然そう思うわけですが、防衛庁長官、その対応をどうしたらいいか。これは外務大臣の発言をそのまま認めるかどうか。防衛庁としてはどういう対応をしようとしているか。まず第一に、それをお尋ねしたいと思うわけです。
  144. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま小沢先生御指摘の発言は、外務大臣が、わが国安全保障政策を進めていくに当たって考慮すべき国際情勢についての認識を述べた際になされたものと私は理解しておりますが、私といたしましても、この部分を含め同様の認識に立っております。すなわち、米国は中東地域における国際情勢の緊迫化に伴い、第七艦隊の一個機動部隊を派遣するなど、中東地域の平和と安全の維持に努めており、これは日本への石油ルートの確保のためには必要不可欠な措置でありますが、他方、この派遣が長引くようでありますと、わが国の安全に大きくかかわる米海軍のプレゼンスの対応、北東アジアにおける軍事バランスに影響を与えるおそれがないとは言えないと考えております。わが国といたしましては、このような情勢を念頭に置きつつも、あくまでもわが国自身の自主的判断に基づき「防衛計画大綱」に準拠して、同大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成すべく努力していきたいと考えております。
  145. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ちょっと具体的にお尋ねしたいわけですが、アメリカの極東艦隊のシンボルみたいな第七艦隊の中心である二つの空母、ミッドウェーとコーラルシー、これはいま一体どこに行っているのでしょう。いつごろどこに出かけていって、いまどこにいるのでしょう。
  146. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 ミッドウェーとコーラルシーだけの御質問でございますが、コーラルシーは六月にアメリカの西海岸に帰投しております。現在ミッドウェーとアイゼンハワーがインド洋におりまして、西太平洋にはレインジャーが来ております。
  147. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 その最後のレインジャーというのはいまどこにいますか。
  148. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 十月の中旬ごろまでスビックにおりまして、そこを出港しましていまどちらに向かっているか、ちょっと確かなことは存じません。
  149. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 一歩進めますが、これまた外務大臣の発言ですので、防衛庁長官はこういう事態を認めるかどうかと質問したいわけです。  十月二十一日の衆議院安保特別委員会で、外務大臣はこう言っているわけです。安保条約に基づいてわが国防衛に対処すべき米国の力が弱まってきた。防衛庁長官、それと同じことでいいわけですね。
  150. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありました十月二十一日の衆議院安保特別委員会における伊東外務大臣の発言は、米国のソ連に対する軍事バランスが、総合的に判断すれば依然として米国が優位を占めているものの、ソ連の一貫した軍事力増強の結果、米国の相対的軍事力が低下している事実及び米国と他の先進民主主義諸国間における相対的な経済力の変動により、米国の経済力が相対的に低下しているという事実を念頭に置いて述べられたものであり、米国の力が絶対的に見て弱まっているという認識を述べられたものではないと防衛庁は理解いたしております。
  151. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 前座がいろいろ長いのですが、それじゃ外務大臣が言ったアメリカの力が弱まってきている、こういう事実は防衛庁は認めないわけですか、認めるわけですか。簡単にイエスかノーか。
  152. 大村襄治

    大村国務大臣 重ねてお答えしておきます。  先ほど申し上げましたように、米国の相対的軍事力が低下している事実、また米国の経済力が相対的に低下しているという事実を述べられたものでありまして、米国の力が絶対的に見て弱まっているということを述べられたものではないというふうに理解いたしております。
  153. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 絶対的にはどうか知りませんが、相対的には私はやはり弱まっておる、こういう伊東外務大臣の認識どおりだと思いますし、まあ言い回しはおかしいが、防衛庁長官もそれを認めているように私は受けとめるわけです。  そうすると、防衛計画大綱が第一の前提としてきた日米安保体制、そういうものの上に乗っかってやっていこう、こういう大前提があるわけですが、その大前提が変化をしてきたことにはならないだろうか。条約上の安保体制は維持はして、継続はしているが、その安保体制の質的な面、そういう面において変化を来しておる、こういうように理解できるわけですが、どうでしょう。それでいいでしょうか。
  154. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  最近のわが国周辺の国際情勢が厳しさを増しつつあることは事実でありますが、これを踏まえてわが国はみずから防衛努力強化するとともに、日米安全保障体制の信頼性の維持及び円滑な運用体制の整備に努めているところでありまして、ただいまお尋ねの日米安全保障体制が変質したとか、そういうことはまだ起こっておらないものと考えております。
  155. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 またそれについて質問したいわけでございますが、先に進んで、また最後に質問さしてもらいます。  緊急展開部隊についてお尋ねしますが、このRDFで中東に行くのが、日本にいる部隊はどこの部隊が行くだろうか、防衛庁わかっていますか。米軍と詰めてそれを検討してありますか。
  156. 塩田章

    ○塩田政府委員 緊急展開部隊の司令官であるケリー司令官が三月四日にアメリカの上院外交委員会の聴聞会で、緊急展開部隊に加えられる海兵隊について、危機の状況とその地理的位地によって、特定地域に——事件の緊急性を要する地域でございますが、特定地域に最も近い部隊から引き抜くことが望ましいという旨を述べておりますが、いずれにしましても、在日米軍を含めまして、どのような部隊をどの程度投入するかということにつきましては、そのときの状況によるものでありまして、具体的にどの部隊が使われるかということについて、同司令官は何も述べておりません。私どもと米軍との間におきましても、そのような状況でございまして、具体的にどの部隊が投入されるかというようなことについては何も承知いたしておりません。
  157. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 そのRDFで出かけていくのは、私たちが考えても、フィリピンなどにいる米軍のほかは第七艦隊、沖繩海兵隊、こう言われている、報道されてもいるわけですが、その可能性が低いというのでしょうか。これはまだ司令官の抽象的なことしか防衛庁は確かめていないけれども、この緊急展開部隊によって日本の沖繩その他の部隊が出かけていってしまう、こういう心配はないか。具体的に防衛庁は確かめていないか、もう一回そこを念を押しておきます。
  158. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもと在日米軍との話の中でそういう話が出たことはございません。したがいまして、私の方から可能性があるだろうとかないだろうとかちょっと申し上げられる段階ではございません。
  159. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは長官、こういうことじゃないですかね。第七艦隊がスイングでみんな向こうに行ってしまう。それからRDFでみんな出かけてしまう。私は素人ですが、そうなれば、日本防衛は安保体制がどうだこうだと言ったって、現実的に空になってしまうのではないか、こういうことを言っているわけです。それについて防衛庁は全然確かめてないということは、これはことしの一月ごろの大統領教書か何かからもうずいぶん論議された問題で、一年近くたっているわけです。だから、緊急展開部隊が日本のどこからどう行ってしまうか、スイングはどうなってしまうか。そうすると、実際安保体制があったって日本に来る部隊は一体いるだろうかということは、防衛庁は苦にならないのですか。聞いたことはないわけですか。
  160. 塩田章

    ○塩田政府委員 先日来当委員会でもお答え申し上げておりますが、私ども日米ガイドラインに基づく共同作戦についての研究作業をやっておりますけれども、その中でもいまのお話のように、緊急展開部隊がどこから出ていくとか、あるいはいま御指摘ございましたように、わが国におけるアメリカの部隊が空になってしまうのではないかというようなことはございませんで、私どもは、その研究作業の過程におきましても、米軍あるいはアメリカわが国に対するコミットメントは信頼してよろしいというふうに考えておるわけであります。
  161. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 米軍の有事来援についてさらにお尋ねをしますが、そういうことはそれとしてまた問題がありますが、防衛大綱では、限定的かつ小規模なもの以上は米軍の来援に期待している、これはもう厳然たる防衛大綱だと思います。それでその中身は詰まっておるか、どういうときにどれだけの部隊がどういうように来援するかということは、中身は詰まっていますか。  それで、時間の関係でさらに私はお尋ねしますが、先般の新聞に、日米共同作戦計画は仕上げの段階、これは塩田防衛局長が発表しているようですが、この場合に、ある程度第三国の侵攻を想定している。これはまあ共同作戦計画ですから当然のことだと思います。  そこで、お尋ねをしたいことは、きょうの午前中にも質問が出ておりましたが、その第三国とは、いま脅威であるソ連軍を想定をしているか、それが第一点です。この場合、これに対応する自衛隊と米軍の規模は想定されているか。第二点です。私が言うのはその次です。そのときに米軍の具体的兵力、その米軍来援の確約、これは確信を持って来援をするという確約が一体得られての共同作戦計画であるか。これはRDFでみんな行ってしまい、スイングでみんな行ってしまっても、具体的には兵力がないというときに、図上に書いた共同作戦計画を立てても、これは絵にかいたもちじゃないかということから私はその質問をするわけです。どうです。
  162. 塩田章

    ○塩田政府委員 研究の中身がどうかということでございますが、しばしば申し上げておりますように、作業としては進捗しつつあります。研究作業としては進みつつあります。一部新聞報道で仕上げの段階というふうに出たという御指摘でございますが、まだ仕上げの段階と言うには、そこまではいっておらぬと思いますけれども、作戦計画の研究につきましては、かなり進んでおるというふうに申し上げ、それ以外の後方支援態勢、情報等につきましては、まだ必ずしも余り進んでいない、こういうことをこの間申し上げたとおりでございます。  その際に、第三国からの侵攻を想定しておるかということでございますが、これもこの間申し上げましたが、ある一定の侵攻態様というものを想定しなければ作業になりませんので、一つの設想を設けておるわけであります。  そこで、以下三点のお尋ねでございますが、第一点の、その第三国というのはソ連かというお尋ねでございますが、これもけさからしばしば申し上げておりますように、特定の国を考えておるわけではございませんで、わが国に侵攻し得るとしたらどういう規模の侵攻があるだろうかという想定をしておるだけでございまして、特定の国ということではございません。それからその際に、自衛隊並びに米軍の規模というものはある程度想定されておるのかということでございますが、これは自衛隊は御承知のとおりの現状の自衛隊の戦力でございます。米軍につきましては、いま申し上げました一定の設想を設けて研究しておりますので、その設想に応じた来援兵力が来るであろうというふうには考えておるわけであります。第三点は、アメリカの具体的兵力についてとそれがアメリカの確約なのか、本当に来援するという確約なのかというお尋ねでございますが、いま申し上げましたように、具体的兵力については、一定の設想に従った研究作業としては、一定のものを想定はしておるわけでございますが、この作業はあくまでも研究作業でございまして、これがアメリカ日本に対するコミットメントに対する確約とかといった性質のものではなくて、アメリカ日本に対する防衛義務は、やはりこういう研究作業のさらに根っこになっております安全保障体制といいますか条約といいますか、それに基づくアメリカの義務であり、この研究によって何らかの新しい確約がされたといったような性格のものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  163. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 防衛庁長官、先ほど来私は、たとえばスイングで第七艦隊もほとんどこの周辺にいなくなるほど中東なり何なりに出動してしまう、緊急展開部隊はまだ防衛庁は何も詰めてないんだから、どこからだれが行くかも詰めてないわけです。一般に報ぜられますのは、もう沖繩から行ってしまいます、何から行ってしまいます、こういうことです。だから、有事来援と言っても、それは絵にかいたもちではないか、こう私は思うわけです。これは幾ら何が条約上あったって向こうに兵力がいなければ来ようがないわけです。そこで、最近は日米共同作戦は仕上げの段階にまで来ておるという。いま聞いてみると、その共同作戦においても、これは絵にかいたもちを一生懸命で検討しているだけであって、たとえば航空攻撃を主体とする場合とか海上交通路を破壊されるような場合とか、わが国領土への着上陸を主体とする場合、こういう三つの場合について研究しているんだけれども、それは向こうに義務づけもなければ裏づけもなければ何にもない、こういうわけなんだ。一体これで大丈夫なのかね、防衛庁長官
  164. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  いわゆるスイング戦略について関連していろいろお尋ねでございましたが、そのスイング戦略と申しますのは、一般にある地域での緊急事態発生の際に、その地域に他の地域から米軍兵力の一部を振りかえるという考え方であり、またこの振りかえは東から西へということばかりでなく、西から東へもあり得るものと承知しているわけでございます。いずれにいたしましても、具体的にどうなるかということは、その場合の状況とか地域によって決まるわけでございますので、あらかじめ在日米軍なりあるいは日本周辺の米軍がどうなるかということは、いまの段階で申し上げるわけにもいかない筋合いの問題だと思うわけでございます。  ところで、これに対して日本は心配はないのか、こういうお尋ねでございますが、アメリカといたしましては、西太平洋地域における軍事力強化に努めるとともに、繰り返し日米安保条約に基づくコミットメント遵守の決意を述べているところであり、御指摘のように、スイング戦略により有事の際の米軍の来援については、日本としては懸念は持っておらないわけでございます。  なお、わが国としては、みずからの国はみずからの手で守るという決意のもとに、自主的判断に基づいてできるだけの防衛努力をしなければならないということは申すまでもないところでございまして、このようなわが国自身の防衛努力なくして、日米安保体制の信頼性の確保もあり得ないと私は考えておる次第でございます。
  165. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私と認識が大分違うのですが、もう一点だけ、具体的にこれは塩田防衛局長と大臣、両方にお尋ねいたします。  この「日米防衛協力のための指針」に基づいて日米共同作戦をいろいろ検討している、ガイドラインをつくってやっておる、こういうわけですが、先ほど申し上げたように、航空攻撃を主体とする場合、海上交通破壊を主体とする場合、それから最後にわが国領土への着上陸を主体とする場合、この三つに分けて研究をしているようですが、その最後のわが国領土への着上陸を主体とする場合、これは民間の専門的な評論家だかに聞いても、われわれが見てもそうだと思うのだけれども、この第三のわが国への領土への着上陸という場合に想定されるのは、つい最近北方四島に一個師団のソ連軍配備されたとか、水晶島に最近トンネルまでできたとか、大変緊迫したように私たちは考えるわけです。そういう場合には、道東に対して着上陸の場合の作戦を第一に考えなければならない、こう思うわけです。ところが何か道東に上陸してきたら釧路まで三日間でやられてしまうみたいなことが常識的になっているし、われわれ現に二七普通科連隊の連隊長に聞いたり第五師団に聞いてもこれは大変心もとない状態だな、こう思うわけです。だから第三のわが国土への着上陸の共同作戦の研究には、この北海道の道東におけるあたりが第一の作戦計画に立てられていなければならないと思うが、それを認めますか。そういうことをやっておりますか。そのときに来援の具体的な時間的な問題、兵力の問題、こういうことは具体的に研究をしているか、どうでしょう。
  166. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来一定の設想を設けて研究をしておるのだということを申し上げましたが、具体的に、たとえば航空攻撃の場合あるいは海上の場合あるいは着上陸の場合、三つの例をお挙げになりましたが、そのどういう場合であるとか、あるいはさらにまた着上陸の場合にどの地区でどういうふうな展開だとかいうことにつきましてのお尋ねについては、恐縮でございますが事柄の性質上どういうふうな研究をしておるかということについては差し控えさせていただきたいと思います。
  167. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間だから……。
  168. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 神田厚君。
  169. 神田厚

    ○神田委員 防衛三法の問題で質問を申し上げます。  過日御質問申し上げました中で、特にわれわれが自衛隊の欠陥是正ということを主張してまいっておりました関係上、自衛隊の具体的な欠陥についての是正の問題につきまして、あるいはこの自衛隊の具体的な欠陥について、防衛庁はどういうふうに考えているか、御質問をさせていただきたいと思っております。  まず、新聞等の報道によりまして、アメリカの方から自衛隊の具体的な欠陥の問題につきまして指摘を受けている、こういうふうな報道もされております。どのような指摘を受けておられますか。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの御指摘の点は、具体的にいつのどういう記事のものか私ども承知いたしておるわけではございませんけれども、私どもが、米側から文書によって、こういうところが欠陥ではないかというふうに指摘を受けたことはございません。もしお尋ねの点が読売新聞に報道されたものであるとすれば、それは私どもの承知する限りでは、アメリカの大使館におるある方が特定のグループの勉強会の際に講演をされたということは聞いております。恐らくそのことを文書というふうにおっしゃったのではないかと思いますが、いま申し上げましたように、私どもはこれをアメリカ政府見解として文書で受け取ったということではございませんで、いまの講演につきましては、その人の個人的見解として私どもも内容は承知いたしております。
  171. 神田厚

    ○神田委員 私どもの方での調べでは、在日米海軍の大佐であるオコンネルという人というふうに聞いておりますが、いかがでございますか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま私が申し上げたのも、その方の講演のことでございます。
  173. 神田厚

    ○神田委員 文書で正式に申し入れを受けているということではないということでございますが、その内容につきましては、防衛庁の方でも関心を持って見ているということでありますので、その点につきまして質問をいたします。  非常に質問の時間がありませんので、ひとつ簡潔に御答弁をいただきたいと思うのであります。  まず第一は、日本の自衛隊は機構上の統一性を欠いている、こういう指摘を受けております。陸海空の各幕僚長はおのおの別々に防衛庁長官に報告している。そして三自衛隊が非常にばらばらな形で行動しているようなことがあって、有事の際の能率的、効果的な、経済的な自衛隊の運用、このためには三自衛隊による効果的な演習をするような中央の計画、指揮スタッフ、こういうものをつくる必要がある、こういうふうな指摘を受けておりますけれども、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまお話がございましたように、陸海空自衛隊の指揮系統についての話が出ておったことは承知いたしております。この点につきましては、私ども、防衛庁、陸海空自衛隊及び統合幕僚会議議長、こういった現在の構成で必ずしもどこがどういうふうにばらばらであるというふうに言われておるのか承知いたしかねる点がございますけれども、きわめて重要な問題でございますので、私どもも私どもなりに関心を持っておることは事実であります。現に統合演習ということも、統合幕僚会議議長の統裁によりまして、五十四年度に実施いたしましたが、五十六年度からも毎年実施して、統合的な指揮運用といったことに円熟していく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  175. 神田厚

    ○神田委員 具体的な指摘の中で、航空自衛隊による護衛艦の防空、航空自衛隊による陸上部隊への航空支援、港湾停泊中の誘導ミサイル積載護衛艦参加の防空、陸空自衛隊合同の防空、こういうふうな形で統合演習をもう少し頻繁にしたらどうだというふうな指摘があるわけであります。  この問題は、一つにはやはり日本にさまざまな形で侵略が想定されているというときに、一体その主たる防衛に当たるのは、海上自衛隊なのか陸上自衛隊なのか航空自衛隊なのか、それぞれいろいろあるわけであります。したがいまして、そういうことも含めまして考えていく場合に、この三自衛隊がばらばらでそういうものに当たっていくのか。それともそういうさまざまな侵略の形態を想定しながらも、なおかついわゆる総合戦力としてそれに対処し得るような体制をつくっていくためには、この統合演習というものについての考え方をもう少し重要視していかなければならない、こういうふうに考えるわけでありますが、防衛庁長官はどういうふうにお考えでございますか。
  176. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、統合演習がきわめて重要であるということは、私どもも痛感しておりまして、少なくとも来年からは毎年実施したいというふうに考えておるわけでございまして、その中でもお話にございましたように、海上部隊に対して航空部隊の支援でありますとか、陸上部隊に対する航空部隊の支援でありますとか、そういうようなことを今後大いに演練していかなければならないというふうに考えております。  最後に、お話がございましたように、侵攻を受けた場合にどういう体制でいくか。これは侵攻の形態が本当にきわめて千差万別であろうと思われますので、断定的に申し上げることはできないわけでございますが、いずれにしましても、統合的な指揮運用ということの観点からの研究も大いに必要であることば御指摘のとおりでございまして、そういう意味で、私どもは先ほど申し上げましたような、まず統合演習からということで演練を重ねていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  177. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま陸海空の相互の連絡の欠けている点を是正を図るようにという御質問がございましたが、ただいま政府委員答弁しましたとおり、平時における統合訓練等を通じて陸海空緊密な連絡を図って平時から対処できるように、一層努めてまいりたいと考えております。
  178. 神田厚

    ○神田委員 中央指揮所の問題はどういうふうになっておりますか、簡単に……。
  179. 塩田章

    ○塩田政府委員 かねてから中央指揮所といいますか、中央における指揮システムのあり方について研究をいたしておりましたが、ようやく案としては成案を得ましたので、五十六年度概算要求案の中にその施設設備の建設につきまして概算要求を提案できる段階になったわけであります。いまの目標としましては、五十七年度末までにつくりまして、五十八年度には運用に入りたいというふうに考えておりますが、一部いまの予定では若干おくれる点もございますので、完全な運用としましては、五十八年度の中ごろになるのではなかろうかと思いますが、いずれにしましても、そういうスケジュールで、来年度予算をお認めいただければぜひ建設に着手したいというふうに考えておるわけであります。  なお、場所は防衛庁の現在あります六本木の敷地の中を考えております。
  180. 神田厚

    ○神田委員 中央指揮所の建物もそうでありますが、単に建物だけではなくて、それの運用その他でやはりこれから非常に大きな問題が出てくると思いますから、その時点でまた御質問をさせていただきたいと思っています。  一番大事なことは、一体、侵略の想定の中で、結局海上で、日本の国土に上陸させないでそれを阻止するのか、それとも国土戦の形で想定しているのか、そういうふうなことが非常にまだいろいろはっきりしてないのですね。したがいまして、防衛庁としては、基本的な戦略というのは、つまり海上で侵略を阻止するというふうな形でやるのか、それとも日本の国土に引き入れた形でこれを迎え撃つのか、この辺のところ基本的にはどういうふうに考えているのですか。
  181. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず私どもが一番念願しておりますことは、未然に抑止できる、未然に防止できる、これが一番いいわけでございますが、不幸にして侵略を受けることがあるとした場合に、われわれは好んで国土戦を望まないことは申し上げるまでもないわけでございまして、できれば海上で阻止したいということが私どもの当然の第一の希望でありますが、現実の問題のことを考えた場合に、やはり国土戦のことも配慮して陸上自衛隊の防衛力ということも当然考えていかなくてはならないというふうに思っておるわけでございまして、いま申し上げましたように、基本的にはまず未然に抑止される、次には本土に揚がらない段階で阻止できることが望ましいということは、当然申し上げられるわけであります。
  182. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、最後に、それでは小規模な侵略に限定しましても、現在の海上自衛隊の力あるいは航空自衛隊の力もかりまして、それで海上において、いわゆる上陸させない形でのそういうふうな抑止が働くというふうにお考えでございますか。
  183. 塩田章

    ○塩田政府委員 作戦の形態とか規模とかによりますものですから、一概に断定的に申し上げられないわけでございますが、一般的に申せば、海の上で侵攻兵力を完全に阻止するということはきわめてむずかしいのではなかろうか。最悪の場合のこともやはり考えておかなくてはいけないという一ふうに思っておるわけであります。
  184. 神田厚

    ○神田委員 自衛隊の具体的な欠陥は非常に多くあります。ちょっと時間がありませんのできょうは触れられませんが、先ほど小沢委員の方からも発言がありましたように、自衛隊法の改正そのものも含めまして、いわゆる現在の自衛隊の具体的な欠陥是正につきまして、防衛庁側ひとつもっと責任を持ってきちんと推進をしていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、最後に防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。
  185. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど小沢委員の御質問に対しましてもお答えいたしたとおりでございまして、防衛庁といたしましては、御指摘のありました問題につきましては研究、勉強を続けてまいりたいと考えておる次第でございます。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 江藤隆美

  187. 榊利夫

    ○榊委員 三日間の討議を非常に関心深く聞かしていただきましたけれども、その上に立って幾つかの問題で質問させていただきたいと思います。  最近、国際的に見ますと、アメリカの方はソ連脅威とみなす、ソ連の方はアメリカ脅威とみなして、それぞれが軍備拡張に力を入れる、対立した軍事ブロック強化軍備増強の悪循環現象というものが起こっております。そして米・イラン紛争であるとかソ連のアフガニスタン軍事介入、あるいはイラク・イラン戦争、こういったものがそれに拍車をかけております。大変憂慮される事態であります。この悪循環をどうして断つか、これがいま国際的にも非常に重要な課題であるし、私どもそういう点では軍事ブロックの解消こそが必要であるし、日本といたしましては、米ソの対立を自分のことのように錯覚してはいけないというふうに考えるわけであります。まして、一方の軍事ブロックに日本を結びつけて軍拡競争の一翼を担うということは、決して賢明ではなくて、むしろ危険性を伴うものである。こういう点では非同盟中立の方向に脱却するということが日本の平和と安全と自主独立の道だというように考えております。それは政府立場とは異なりますけれども、私どもは、このような今日の時代認識と申しますか、それから日本の真の国益、そういう立場質問したい、こう思うわけであります。  第一問でありますが、最近日本防衛力増強軍備拡張、これに対しては世界各国から警戒の声、脅威論が出ております。先日、河野さんの質問がございまして、それに対する大村長官など政府側の答弁は余りそっけないもののように思いましたので、改めて聞かしていただきたいと思いますが、ちょっとここに資料を持ってきておりますので、紹介したいと思います。  たとえば、パリ発行のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンという英字紙が、日本でゆゆしい事態が起こっておるというふうに述べております。それからロサンゼルス・タイムズが、日本はいまや世界の舞台で政治、経済、軍事の全面的役割りを探求しているというふうに述べております。シンガポールのリー・クアンユー首相は、九月十四日、日本軍事力増強に懸念を表明して、過剰反応してはならないと思うというようなことを述べております。香港のファー・イースタン・エコノミック・レビューという雑誌、これも日本が侍の刀をといでいるというようなことを述べております。特にアジア諸国という点では、かつて被侵略国になったという苦い体験を持つ国々でもございます。そういう点では、日本防衛力増強、軍拡が明らかに国際的に脅威を与えつつある。このことは、日本生存の国際的環境にとっても決して好ましいことじゃない、私はこう思うのですけれども、いかがでございましょう。
  188. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先日の当委員会における河野委員の御質問日本防衛力整備に対するアジア各国の反応につきましては、その後調査しまして、資料を提出したところでございます。いま榊委員から新しい資料についてお尋ねがございましたが、その点につきましては、政府委員からお答えさせていただきたいと思います。
  189. 榊利夫

    ○榊委員 資料の提出を求めているのじゃないのです。どうお考えなのかということを聞いているのです。
  190. 大村襄治

    大村国務大臣 その点を政府委員から答えさせます。
  191. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 日本はもちろんアジアの一国でございまして、日本安全保障を確保するに当たりまして、アジア諸国の反応というものは十分注意しながらいかなければならない、これは先日、河野議員からも御指摘のあったとおりでございまして、われわれももちろん防衛努力を始めまして以来、怠りなく各国の反応を注視しております。もちろんその中には賛成も反対もいろいろあるのでございますけれども、最近、特にここ数年間の傾向といたしまして、前は非常な危惧論が多かったのでございますけれども、最近、一つわが国が福田総理大臣のアジア訪問の際に、福田ドクトリンというものを出しました。わが国は軍事大国にはならないということを表明したこともございまして、それに対して理解を示した、それで軍事大国にならない限りにおける防衛努力については理解の目を持って見守る、あるいはむしろ歓迎すべきである、そういうような論調の方がふえてきております。これは事実であるというふうに判断してよろしいと思います。
  192. 榊利夫

    ○榊委員 賛成、反対それぞれあるでしょう。しかし、少なくともいま私が紹介したようなのは、明らかにこれは歓迎する声じゃないのです。その事実について大村長官はどう御認識なのか、どう頭に入れようとしているのか。——長官の意見を聞いているのです。
  193. 大村襄治

    大村国務大臣 ちょっと政府委員答弁させてからお答え申し上げます。
  194. 榊利夫

    ○榊委員 長官に聞いているのですよ。
  195. 江藤隆美

    江藤委員長 少し補足をして……。
  196. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 事実関係がございますので申し上げます。  いま御引用になった一つは、リー・クアンユーシンガポール首相の発言でございますけれども、これは毎日新聞編集局長との記者会見時の発言になっております。それでどういうふうに考えれば——日本は状況の変化に留意しなければならないが、過剰反応してはならないと思う、日本はその安全保障を米国との同盟関係の中に求めるべきだというのがリー・クアンユー首相の意見でございます。われわれの防衛努力と申しますのは、米国との同盟関係を重んじて、その中でわが国みずからの防衛努力強化していくということでございまして、この点につきましては、シンガポールを含めまして東南アジア諸国の懸念を揺り起こすような性質のものではない、そういうふうに考えております。
  197. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、いろいろな意見があるわけでございますが、最近における大勢におきましては、軍事大国にならないという決意のもとにおける日本の最近の防衛努力に対しましては、評価もし、期待もされる国がふえてきているように承知しているわけでございます。
  198. 榊利夫

    ○榊委員 そのことで詰めても余りいい答弁が出てきそうにないので、先に進みますけれども、つまり賛成ばかりじゃないのです。その事実はしっかりと認識していただかないと困ります。私がいま紹介した二、三の点だけでもそのことは明らかなんですから、それはやはり頭の中に入れて、少なくともそういう声が起こっていることに対しては十分な配慮をとっていかなければいけないと思うのです。このことについてはどうでしょうか、一言。
  199. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  そういった事実があるということは念頭に置いておきます。
  200. 榊利夫

    ○榊委員 それから、これまでの国会でソ連脅威論、きょうもそうでございましたけれども、あるいは北朝鮮脅威論をめぐっていろいろ論議が行われてまいりました。私どもソ連についてはアフガン撤兵を求め、歯舞、色丹、千島の全面返還を要求しておりますけれども、これはこれ、それはそれで一言質問しておきたいと思います。  政府の言うソ連脅威というのは、いまにもソ連日本に攻め込んでくるような状況だ、そういうふうに見ておられるのでしょうか。
  201. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまお話しのように、差し迫った脅威があるというふうに私ども考えておるものではないということは、かねがね申し上げておるとおりであります。
  202. 榊利夫

    ○榊委員 長官、どうですか。
  203. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま政府委員が申したとおりでございます。
  204. 榊利夫

    ○榊委員 大村長官は二十六日でしたか、NHKテレビで、ソ連米ソのデタントを廃棄して全面戦争に打って出るとか、日本に対して侵略を考えておるとか、そういうことは考えられないという趣旨のことを述べておられましたけれども、そういう考えでございましょうか。
  205. 大村襄治

    大村国務大臣 NHKの討論会の際、その趣旨のことを述べた記憶がございます。
  206. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、ソ連がいますぐ日本に攻めてくるような情勢ではない、そういう軍事情勢ではないということは、政府側もそういう認識のように見受けます。  そこで、お尋ねいたします。最近、アメリカの対日軍拡要求の背景に国際収支の赤字などがあるということ、これはいわば常識でございますけれども、一方、日本の財政危機も深刻であります。本年度の国債発行額は十四兆二千七百億。これはカナダ、フランス、西ドイツ、イギリス、この発行額を合わせたよりももっと多い額でございます。こういう状況についてはどういう御認識を持っておられるでしょうか。
  207. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  財政上の事項でございますので、私の所管ではございませんが、大蔵大臣がそういったような説明をされたのを聞いていたことはございますので、恐らくその点はそうではないかと思う次第でございます。  なお、大蔵省から来ておるようでございますので、正確なお答えを願いたいと思います。
  208. 畠山蕃

    ○畠山説明員 国債発行額につきましては、わが国は御指摘のように十四兆二千七百億円ということでございますが、この額はきわめて膨大なものでございまして、アメリカが六兆七千百億円、イギリスが三兆八千百億円、西ドイツが三兆六百億円、フランスが一兆四千五百億円でございますので、これら四カ国のトータルが十五兆三百億円でございますので、これに匹敵する額となっております。したがいまして、きわめて深刻な財政状況であるということでございます。
  209. 榊利夫

    ○榊委員 ところが防衛費の概算要求、いわゆる別枠九・七%増、二兆四千四百六十五億というふうに予定されておるわけでありますけれども、正面装備費と研究開発費の伸びというのは一八・二%ということになりますね。しかも、防衛庁は後年度負担として、つまりツケ、先取りでありますけれども、一兆五千五百億円を要求されております。これは前年比伸び率で二三・八%ということになると思います。これを埋めていく分だけでも五十七年度以降には防衛費を毎年十数%ずつ増額する必要が起こってくる、そういう計算になると思います。  ところで、五十三年中業も正面装備の経費だけで五年間に二兆八千億、こういうふうに見ますと、いまのシステム、やり方、これでいきますと、雪だるま式の防衛費増ということになるのでございます。これは軍事インフレを招くし、日本財政の一種の財政上の無間地獄とでも申しますか、それをもたらしかねないわけでありますけれども、この点はどうでしょう。どういう御認識なんですか、ちょっと大蔵省に聞いておきたい。
  210. 畠山蕃

    ○畠山説明員 防衛庁の五十六年度要求にかかります後年度負担が本庁分で二三・八%対前年増であるという点は御指摘のとおりでございます。その額で申しますと、約一兆五千億程度になっております。しかしながら、これは要求でございまして、五十五年度におきましても、実額にいたしますと、やはり同じように一兆五千億円程度、率にいたしますと六五・四%程度の要求があったものを査定いたしまして、結果的に三八・三%という伸び率になっておるわけでございます。伸び率だけから申しますと、五十五年度のおさまりの、査定後の数字を下回った伸び率にはなっておりますし、額で言いますと、五十五年度要求と匹敵する程度の要求になっておるということでございます。これを今後さらに予算編成の過程におきまして十分検討いたしまして、必要なものに限って認めてまいるというようなことになるかと存じます。したがいまして、いまおっしゃいましたように、当然にその額を前提として後年度におきます義務的な経費の積算は、ちょっと私ども現段階ではなかなかできないということでございます。一般的には、後年度負担を伴うものにつきましては、その後の後年度についてある程度の拘束性を持つということは御指摘のとおりでございますけれども、現段階では数量的にはなかなか申し上げにくいということでございます。
  211. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、これは要求であって、現段階でそのままそうなるというふうには言えない。そうしますと、別枠九・七%増というものも最終確定じゃないので、いまいろいろ研究、検討されているわけでありますけれども、それ以上の増、アップがあり得るのかあるいは減があり得るのか、その点どうですか。アップがあるのか、あるいはいまの財政状況ではなかなかむずかしいからそれを減らすということもあり得る、十月末には財政条件がわかるのでというふうなことも政府側から言われておりますけれども、現時点でどういう見解でしょう。
  212. 畠山蕃

    ○畠山説明員 御指摘にありましたとおり、九・七%は概算要求におきます要求の枠の伸び率でございます。現在鋭意査定を継続中でございますので、数字的なことは現段階ではなかなか申し上げにくいわけでございますが、それが九・七をオーバーするのか下回ることになるのかという点でございますけれども、九・七%というのは形の上ではアッパーリミットといいますか、概算要求の率でございますので、常識的に考えますと、これをアッパーリミットとして、その後どの程度下回ることになるかということが現在行われている査定作業というふうに御理解いただければよろしいかと思います。
  213. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、つまり概算要求よりも下回ってくると理解してよろしゅうございますか。いまの答弁ではそうですね。
  214. 畠山蕃

    ○畠山説明員 五十六年度の財政状況は、現在まだ必ずしも十分に出ておりませんが、きわめて厳しいものになるということは間違いのないところでございまして、防衛費が特にどうだということではなしに、一般的に申しまして九・七%という対前年度伸び率というものはなかなか大きな数字でございますので、そういうものが達成できることは困難であろうというふうに考えております。
  215. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ長官お尋ねいたしますけれども、防衛庁としてはどういうふうにその点についてはお考えでしょうか。
  216. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、防衛の必要度から各種経費を勘案し、また財政の事情も念頭に置いて二兆四千億円余の概算要求を提出したわけでございます。したがいまして、その全額の実現を期待しているわけでございます。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  217. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ次に移ってまいります。  今回の防衛庁設置法改正案では、海空自衛隊の実数を計二千三百三十一名増加するということが求められておりますが、防衛庁としては陸海空、この自衛隊のどこを重点としてこれから増強考えておられるのでしょうか。
  218. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねの点が人員の点にございますとすれば、陸上自衛隊につきましては十八万人の定数をいま動かすことは考えておりませんで、実際の充足率、現在八六%でございますが、これを上げていただきたいというふうには考えております。  海空につきましては、どこに重点をというお尋ねでございましたが、今回お願いいたしておりますものは、いずれも艦艇、航空機の就役に伴う所要人員並びに用途廃止に伴う減の要員等を勘案してお願いいたしておるものでございます。
  219. 榊利夫

    ○榊委員 今回は海空ということになっており、それがこういう数字となって求められているわけでありますが、一昨年の米国防総省の情勢報告を見ますと、ここでは特に日本の海空の強化問題に触れておりまして、対潜空軍力の強化の計画については、特に日本の自衛力の強化だけではなく、西太平洋におけるアメリカ軍事力を補完するもの、こういう叙述があります。海空強化という点で見ますと、どうも符節がちょっと合い過ぎるわけですが、これはどういうことでしょう。
  220. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本の海上自衛隊及び航空自衛隊の考え方あるいはそれと米軍との間の共同対処の考え方等につきましては「防衛計画大綱」に示してございますし、また日米ガイドラインにも日米の共同対処のあり方の基本的な考え方が示されております。私どもは、そのような考え方に従って機能する海空自衛隊でありまして、アメリカのどういう人がどういうふうにおっしゃったかわかりませんけれども、アメリカの補完という意味ではなくて、日本の海上自衛隊であり航空自衛隊であり、それぞれの防衛構想に基づいて整備していきたいというふうに考えておるわけであります。
  221. 榊利夫

    ○榊委員 アメリカのどの人がというのじゃなくて、いま紹介したように、国防総省というれっきとした政府文書でございます。そこにアメリカ軍事力を補完するもの、それを強化してほしい、こう言っておる。これが不本意だとされるならば、いや、そういう表現を使っては困るとか、そういうことを何かいままでとられたことはございますか。
  222. 塩田章

    ○塩田政府委員 何回も申し上げますように、実際に私どもいま研究作業を共同でやっておるわけでございまして、その中には、そういうふうなことでなしに、海上自衛隊について言えば、日本日本の周辺の海域を守る作戦をやり、それに対して、それを越えるものについてはアメリカが分担するという基本的な考え方でやっておりますので、いまの御指摘のようなことについて何か特段に物を言ったというようなことはございません。
  223. 榊利夫

    ○榊委員 つまり客観的に言いますと、防衛庁の方からもこういう表現について何も物を言っていらっしゃらないわけであれですけれども、アメリカがそういう日本軍事力を、アメリカを補完するもの、こういうふうな認識を持っているのだということはれっきとしてここに出ているわけでありまして、それもいろいろ肯定しにくいという面があるだろうと思います。しかし、否定されてもそうなっている、そう書かれている、そう見ているということでは、やはり客観的な事実ではないかと思うのです。そのことだけ強調しておきたいと思うのです。  そこでさらに、今度の改正案では、潜水艦隊を新編成して艦隊司令部を置く、それは横須賀の船越地区だ、こういうふうに承知しておりますが、この横須賀に司令部を置くというのは、横須賀の米第七潜水艦群司令部との緊密な連絡等々、米海軍との共同作戦に都合がいいからここに設けられるんでしょうか。
  224. 塩田章

    ○塩田政府委員 潜水艦隊は自衛艦隊の麾下部隊岐になるわけでございまして、自衛艦隊司令官の指揮を受けるということになります。米軍との関係は、そのレベルというよりももっと上のレベルで折衝なり調整なりあると思いますけれども、今度の潜水艦隊司令部を横須賀に置こうとする趣旨は、直接アメリカの潜水艦部隊との連携ということよりも、そうではなくて、自衛艦隊内における運用を考えて横須賀に考えたものでございます。
  225. 榊利夫

    ○榊委員 その上のレベルというあれじゃなくて——じゃあお聞きしますけれども、今度の潜水艦隊の柱の一つとなる第二潜水隊群ですね、これを合わせて艦隊をつくるとおっしゃっているわけですけれども、この基地はいま横須賀のどこに置かれているでしょう。どういう地区に置かれていますか。
  226. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在の第二潜水隊群司令部は横須賀にございますが、横須賀の具体の場所どこかというお尋ねでございますれば、ちょっといま調べさせていただきたいと思います。
  227. 榊利夫

    ○榊委員 調べてください。私たちが知っているところでは、アメリカ側に提供された区域の中だと思うのです。どうですか。
  228. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど大変失礼しました。横須賀市楠ヶ浦町でございまして、二4(a)によってアメリカに提供された地区というふうに聞いております。
  229. 榊利夫

    ○榊委員 そのとおりでありまして、地位協定第二条4の(a)に基づいて提供されている地区だ、こう解しております。建物はどうですか。日本のですか、米軍のですか。
  230. 多田欣二

    ○多田政府委員 米軍財産である建物を使用しております。
  231. 榊利夫

    ○榊委員 地域も米軍のいわば借用している地域、建物はアメリカの、こういうぐあいであります。したがって、国会議員でさえ仮にここを視察しようと思っても、米軍の許可なしには視察できない、防衛庁長官だって米軍の許可なしには視察できない、こうなっておるわけであります。日本の潜水隊群の基地がこういう米軍の区域内にあるとは一体どういうことでしょう。アメリカとしては、日本の潜水隊群をやはりアメリカの戦略の一翼、こうみなしているんじゃないでしょうか。どうでしょう。
  232. 塩田章

    ○塩田政府委員 たまたま御指摘のように、場所はそういうところを使っておりますけれども、そのことによって日本の潜水艦隊あるいは現在の潜水隊群が米海軍の一翼といったようなことはございません。
  233. 榊利夫

    ○榊委員 だけれども、少なくとも一般国民がこれを見まして、基地はアメリカの基地、その中に日本のが置かれている、建物もアメリカのだ、これはどこから見ましても、少なくとも独立国のそれという見方はしないと思うのですね、常識的に見まして。だからそういう点では、私はどうこうしろということじゃなくて、そういう実態になっているということ、このことを強調したいわけであります。これは当然、そうでいいのだという御認識なんでしょうか。念のためお尋ねしておきます。
  234. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  いまお尋ねの潜水隊の敷地が米軍の敷地であり建物が米軍の建物であったにいたしましても、自衛隊において使用する場合には、米軍との間に公式に協定を結んで使用するわけでございます。したがいまして、自衛隊が自由に使用できるはずでございまして、私が視察に行く場合にも、一々米軍の許可を受けてそこに行くというわけではございませんので、その点はひとつ誤解のないようにお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  235. 榊利夫

    ○榊委員 大村長官、許可なしにいらしたのですか。
  236. 大村襄治

    大村国務大臣 まだ行っておりません。
  237. 榊利夫

    ○榊委員 これは幾ら防衛庁長官だって許可なしで入れませんよ。ヘリコプターで行くのだったら別だけれども、米軍基地の中にあるのですから。要するに、そういう事態だということなんです、私が言いたいのは。もし本当に必要ならば、どうですか、基地を日本に返せというくらい言ってみたらどうですか。それもできない。この潜水隊の問題にいたしましても、やはりアメリカの戦略の一翼を担っておる、実態はそうなっているということであります。そういう点では、この新しく出されている法案についても、非常に大きな疑惑を持たざるを得ない。  あわせて一言聞いておきますけれども、曹長新設ということも出されております。ある防衛庁のOBは、これは活字がありますけれども、自衛隊を軍隊化していく、これを先行させていけば憲法改正、改憲にも好都合だというようなことを言っておられるのですね。旧軍の場合は、曹長というのは鬼の軍曹の上にいて下士官、兵を取り仕切る、こういう役目だったわけですけれども、曹長新設にそういう意味はないのでしょうか。どうでしょう。
  238. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  そういう意味はございません。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 最近、これは報道されたところでもあるのですけれども、この委員会でも明らかにされましたけれども、窃盗、飲酒運転、ひき逃げ死亡事故、銀行恐喝など自衛隊員の事故が非常に目立っております。聞いたところでは、昨年度の懲戒処分は千七百八名、二個連隊分に相当するという答弁でありましたけれども、いわゆる旧軍的な厳罰主義になっているのじゃないかという声もあるわけでありますけれども、その点はどうでしょう。どういう御認識ですか。
  240. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  御指摘のように千七百余件に及んでおりますが、その約三分の二は帰隊時間におくれたとかあるいは若干遅刻したとか、そういういわゆる部内におけるところの勤務規律違反でございます。また私用の際の車によるところの交通違反もかなりな件数に上っております。御指摘のようないわゆる破廉恥な事件、これはまことに遺憾なことでございまして、何とか指導、教養を徹底してこういう事故をなくしたいと考えておりますが、これは二百数十件ということでございます。必ずしも厳罰主義のためにこういう事故が多く出ておるということではございません。今後使命感の自覚、そういう職責の自覚ということが大事であろうと思いますので、大いに指導、教養を徹底いたしまして、この種の遺憾な事故の絶無を期したい、かように考えております。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 中期業務見積もりの問題でお尋ねいたします。  最近大村長官は、中期業務見積もりの早期達成というふうにおっしゃっています。防衛諸計画の作成等に関する訓令でも明らかですけれども、五十三年度中業というのは、「防衛力の計画的な整備、維持等を図るため、主要な事業及びそれに要する経費の概略等の見積りを行い、年度業務計画の作成等に資することを目的」として、五十五年度から五十九年度までの五年間を対象とする、そういうふうになっております。これがつくられたのは五十四年七月です。まだ一年そこそこしかたっておりません。ところが一年そこそこしかたっていないのに早くもそれを早期達成だ。どういうことですか。その間の何か事情変化があるのですか。
  242. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  中期業務見積もり、現在のものは御指摘のとおり五十四年に策定されたものでございます。期間は五十五年度から五十九年度まで予定されておるわけでございまして、年次割りはないわけでございます。中期業務見積もりは、かねてしばしば申し上げておりますとおり、防衛庁が毎年度の予算編成等の資料とするために部内限りの資料として設けたものでございます。五十五年度が一年度実現したわけでございまして、二年目の五十六年度を策定するに当たりまして、この五年間の見積もりを可及的速やかに実現できるように、必要最小限の概算要求を行ったところでございます。五十六年度の予算のできぐあい、また五十七年度以降の点もございますので、私どもとしましては、できる限り早期達成を考えながら五十六年度の概算要求をいま進めている、こういう段階でございます。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 いまのは答えになっていないと思うのです。私が聞いているのは、つくって一年そこそこだ、五年の見積もりだったはずだ、それが早期達成ということを言わなければならない、これは常識では考えられないことです。そんないいかげんなものだったかという疑問が出てまいります。どういう事情の変化があるのかということです。
  244. 大村襄治

    大村国務大臣 重ねてお答えいたします。  先ほども申し上げましたように、五十五年度から五十九年度までの見積もりでございまして、毎年度の年次割りはないわけでございます。そこで私どもといたしましては、おくれないように、できるだけ目標が早くできるように努力する。わが国周辺の最近の情勢等を念頭に置いた場合には、五年後に達成できないようでは困りますので、これをできるだけ早く整備する必要がある。特に主要装備、またこれに密接な関連を持つ後方につきましては重点的に促進を図りたい、そういう考え方に基づいて五十六年度の概算要求をしたということでございます。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 最近の情勢を念頭に置けばという答弁でございます。  それではお聞きいたしますけれども、防衛諸計画の作成等に関する訓令、これでは統合中期防衛見積もりについて、これは皆専門家ですから詳しいことは省きますが、「中期業務見積りの作成等に資することを目的」として作成する、こういうふうになっております。したがいまして、中期業務見積もりをつくるときは、当然この統合中期防衛見積もりを参考として作成されていると思います。ところが塩田防衛局長は、先日の御答弁で、この統合中期防衛見積もりについて、十月二十七日の衆議院の安保特で、東中委員に対して、内外の諸情勢の見積もりを含め重要な修正を加えていない、情勢の見積もりについて修正を加えていない、こういうふうに答弁なさっておられます。一方は情勢見積もりに修正していない。いま長官は、最近の情勢を念頭に置けばと、違うじゃありませんか。
  246. 塩田章

    ○塩田政府委員 統合中期防衛見積もりについて変更を加えてないというふうに申されましたけれども、見直し作業自体は現在統合中期防衛見積もりについても行っております。この間もお答え申し上げたと思いますが、まだ見直し作業が若干おくれておりますけれども、間もなくできると思いますが、それと並行して、統合中期防衛見積もりの見直し作業と並行して来年度の業務計画、あるいはそれの参考資料になる中期業務見積もりの見直し等もやっておるわけでございまして、統合中期防衛見積もりと関係なしに中期業務見積もりだけを見直しておるというわけではございません。
  247. 榊利夫

    ○榊委員 だとすれば、私が言っているのは、長官お尋ねしたい。塩田局長答弁は、情勢についての修正をしていない、こちらは最近の情勢を頭に置けば、こうおっしゃっておるのは、そこは違うじゃないかということをお尋ねしているのです。どういう違いなんだ。
  248. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  統合中期防衛見積もりは、どちらかと申しますと抽象的な表現を用いているわけでございまして、毎年度の中期業務見積もりの見直しや具体的なものでございます。その点で食い違いはないものと考えております。
  249. 榊利夫

    ○榊委員 だけれども、統合中期防衛見積もりは「内外の諸情勢を見積もって」云々、こうなっている。それを参考にして中業をつくられているはずです、ちゃんとそういう訓令になっているのですから。ところが、その統合見積もりについては、内外の諸情勢の基本になるところは修正していない、こういう答弁がされているわけでありまして、どちらかが間違っている。どちらがどうかということなんです。どうなんですか。
  250. 塩田章

    ○塩田政府委員 どちらかが間違っておるということではなくて、統合中期防衛見積もりの方は、当然のことながら中期業務見積もりと違いまして、具体的な整備計画とかそういうものが含まれておりませんで、主として情勢見積もりが中心になっているわけでございますが、それだけにまた抽象的な表現になっておるわけであります。それを受けて中期業務見積もりが具体的な整備見積もりをつくるわけでございますが、先ほども私が申し上げましたように統合中期防衛見積もりの方も見直しはしておるわけでございます。それでそれに応じた中期業務見積もりの方の見直しも、あるいはその見直しに基づく、先ほどから話題になっております早期達成ということもそこから出てまいっておりますので、統合中期防衛見積もりの基本的な情勢見積もりの抽象的に書いてある部分、そこを別にいま変えておるわけじゃございませんけれども、所要の見直しは行っておりますということと、それに応じた中期業務見積もりの作業をしておるということを先ほど申し上げておるわけであります。
  251. 榊利夫

    ○榊委員 いまの答弁で非常にはっきりしてきたんですけれども、当然統合中期防衛見積もりの方も見直しはしている、見直しはしているんだけれども、情勢の見積もりについて重要な変更はしていない、修正はしていない、これはこの間のとおりですね。ところが、一方大村長官の方は、最近のわが国をめぐる情勢云々、それを念頭に置けば急がなければいけないんだ、こういう御認識のように思うんです。いまの関係をそういうふうに理解してよろしゅうございますね。  そうしますと、その次の質問に移っていきたいと思いますけれども、ちょっと疑問が起こりますのは、この中期業務見積もり作成直後、つまり去年、米側も正面装備と後方の支援のバランスのとれた計画であると評価していた、こういうふうに亘理事務次官がおっしゃっているんです。去年の八月八日ですけれども、経団連の防衛生産委員会で講演されております。ところがその直後に大来さんが訪米される。それで大来・ブラウン会談がある。ブラウン氏の方から、わが国防衛費について、今後とも着実かつ顕著に増大していくことを期待する、こういう願望があった。大来外相は、それは防衛庁のことだから防衛庁に伝えます、こういうふうにして帰ってみえているわけです。その後大平・カーター会談もある。そこでまたカーター大統領から、政府部内にすでにある計画はより早く完了されるように、完了されることに対する期待が述べられている。こういうふうにいくんですけれども、こういう中で中業の早期達成ということが言われるようになってきているわけであります。そうしますと、中業の早期達成、それをめぐる情勢の変化というのは、どうもアメリカからの要求と申しますか要望と申しますか、それじゃないかと思うんですけれども、どうなんです、いまの動きから見ますと。
  252. 塩田章

    ○塩田政府委員 その前に、いま前次官の言葉を引用されまして、正面と後方とのバランスのとれた計画であるというふうに御指摘があったわけでございますが、私ども中業をつくりました場合には、当然それは一番重点に考えたことでございまして、それはそうだと思っております。  そこで、いま話題になっております早期達成というのは、いまの正面装備、後方支援態勢を十分考えた上での中期業務見積もりの中の、これは全部早期達成じゃございませんで、主要な装備費につきまして少しでも早く達成したいというふうに考えておるわけであります。  そのことにつきまして、それでは最後にお尋ねアメリカからの圧力ではないかということでございますけれども、これもしばしば長官からもお答え申し上げておりますように、最近の情勢を踏まえましてわが国が独自に判断をした。もちろん私どもアメリカのいろいろな要請があったことを否定はいたしません。対日期待表明というものがいろいろな形であったことを否定はいたしませんが、私どもの自主的な判断であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 アメリカ側から対日要望があった、それは否定しない、しかし自主的な判断だ、私はむしろ事態がそこに出ているように思うのです。早期達成にいたしましても、日本側からまずそれが出されるというよりも、アメリカ側から出ている、そしてそれに呼応するようなかっこうで自主的判断なるものが出ている、こういう経過ですね。その点では私は、先ほど質問いたしました統合中期防衛見積もりの中にあり情勢の見積もり、これについて重大な修正を加えていないということとつないでみますと、そのあたりが一層はっきりするように思うのです。私はここで細かくいつどこでということを議論するつもりはございませんけれども、やはりそういう流れは非常に重要だと思うのです。日本防衛力の問題というものをアメリカの側からいろいろ要求されて、それに対する対応が決まっていく、これだったらやはり従属じゃないか、こう言われてももう仕方がないと思うのです。ところがそういう早期達成がいま問題になっている中業について、次の五十六年中業の作成については何らかの形で国防会議に出したい、こういうふうに大村長官は述べておられますし、鈴木総理も了承されているわけでありますけれども、統中は国防会議の議題にしないのですか。中業だけですか。
  254. 大村襄治

    大村国務大臣 政府委員答弁させます。
  255. 塩田章

    ○塩田政府委員 この前長官からお答えし、総理もお認めいただいたのは、中期業務見積もりについて何らかの形で次の五六中業から国防会議の議題にするよう努めたいということをお答え申し上げたわけでございまして、統中には触れておりません。
  256. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、統中の方は、内外情勢の見積もりに対するいろいろな防衛構想や防衛体制等々、基本的な構想や重点を明らかにしていく、そういう一つの性格を持っている、中業の方は、主要な事業及びそれに要する経費の概略等の見積もり、こういうふうにいままで説明されております。そういう点ではどちらも重要な見積もり計画だろうと思うのです。ところがそれらのうち国防会議にかけたいと言っておられるのは中業のみだ。その理由はどうなんでしょうか。どうして中業だけというお考えなんでしょうか。
  257. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  中期業務見積もりの性格につきましては、先生よく御存じのとおり、防衛庁が毎年度の予算編成の作成の資料等に充てるためにみずから設けているものでございます。これにつきまして最近国会等におきましても、防衛庁限りで決定せず国防会議の議題に何らかの形でするようにした方がよいという御意見も高まってきておりますので、防衛庁といたしましても、次の中業から国防会議の議題とする方法について現在検討を進めている、こういう次第でございます。
  258. 榊利夫

    ○榊委員 ずばり聞きまして、こういうことじゃないでしょうか。いまのお答えではどうもはっきりしないのですけれども、中業の場合には、作成年度の翌々年度以降五年間を対象とするけれども、作成は三年ごとというふうになっていますね。つまり現在の中業は五十五年から五十九年までの五年の見積もりなんだけれども、五十六年に改めて五十八年から六十二年までの見積もりを作成する、こういうことで次々に、いわば前倒しをしていく。軍備増強、一種の幾何級数的にと申しますか、よく言えば、そういう点では融通無碍といいますか、伸縮自在。悪く言えば知能犯的ということになる。よくも悪くもそういうふうに非常にエスカレートできるような仕組みになっている。だから、統中と区別して中業を国防会議にかけたい、政府の計画に格上げしたい、こういうふうに思っていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども、どうですか。簡単に一言、イエスかノーか。
  259. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  手続を入念にした方がいいという声が高まってきているようでございますので、いわゆる文民コントロールの一環としてもそういった工夫を加えた方がいいのではないかと考え、その方策をいま検討いたしている次第でございます。
  260. 榊利夫

    ○榊委員 ちょっと余りお答えにならないのです。文民統制ということの側面からだけいまおっしゃいましたけれども、その中身の問題としてそういう融通無碍の中業という問題ですね。これだけを国防会議にかけて格上げをという防衛庁としてのもくろみですね。そのあたりはどうですか。率直に聞かしていただけませんか。
  261. 塩田章

    ○塩田政府委員 中期業務見積もりの三年ごとのローリングシステムについてお話がございましたが、統中につきましても、私ども同じようなやり方を考えておるわけです。そういう意味におきましては、統中も中業も変わりはございません。私どもは柔軟性を重視しておるということでございます。  ただ、それでは中業を国防会議に何らかの形でかけると言いながら統中はなぜかけないのか、こういうことになるわけでございますけれども、統合中期防衛見積もりの方は、これは中業も基本的には全く同じでございますけれども、五十一年にできた「防衛計画大綱」の線に従って整備を進めていく、現在やっているわけですが、その進めるに当たっての統合防衛見積もりをつくっておるということと、それから事柄の性質上、非常に抽象的な情勢見積もりを中心にいたしておるわけでございます。いわば防衛庁の中の各幕僚幹部が中期業務見積もりをつくるのに参考になるような情勢見積もりをつくっておるわけでございます。一方、中期業務見積もりの方は、すでに御承知のような内容でございまして、整備計画につきましても具体的に計画を持っておるわけでございまして、そういう両方の性格の違い等もございまして、今回いろいろな御議論を踏まえまして、中期業務見積もりについて、いま大臣からお答えしたような方式をとることを考えたということでございます。
  262. 榊利夫

    ○榊委員 いま柔軟性ということでお認めになりましたけれども、それと文民統制の問題とちょっと結びつけて私、質問したいことがあるのです。これまでそういう非常に柔軟性を持った中業については公表せよというふうな要求がございました。防衛庁の方では、これは内部資料だからということで閣議にも出していない、特に能力見積もりの方は極秘だということで、国会にも事業見積もりの概要と補足説明資料、これしか出ていないわけであります。それで、いまでも防衛庁は、そういう点では中業は国会はもちろん政府閣議にも提出できない機密だ、こういう御認識ですか。
  263. 塩田章

    ○塩田政府委員 区分から言いますと、機密ではなくて、能力見積もりは極秘であり、事業見積もりの方は秘ということで扱っておるわけでございますが、何回も過去において御説明しましたが、去年の七月にできましたときに「中期業務見積りについて」という公表文を発表いたしまして、私どもの中期業務見積もりの考え方、つくった経緯、その主要な内容、さらに主な項目につきましてどういうふうな考えでやっていくんだというようなことまで一応網羅的に公表をいたしまして、さらにことしの五月に、いま御指摘のさらに詳しくした補足資料を提出申し上げたわけでありまして、そういった面で十分御納得いただけるように御説明をさせていただいた、それ以上の詳しい点につきましては、事柄の性質上公表を差し控えさせていただきたいというふうに申し上げているわけであります。
  264. 榊利夫

    ○榊委員 経過としてはそういうものだろうと思います。  ところで、その考え方、主要な内容は触れている。しかし、それは少なくとも全容ではない。これまでの国会答弁の中でも何回か同趣旨答弁がなされておりますけれども、そこで一歩進めてお尋ねいたしますが、去年の七月末から八月初めにかけましたハワイでの日米安保事務レベル協議、ここで中業についてはいち早く説明されております。それから八月十六日の山下・ブラウン会談でも説明されている。特に三日間にわたるハワイでの協議では、日本側から外務省アメリカ局長防衛庁からは亘理事務次官、左近允統合幕僚会議事務局長アメリカ側からはマンスフィールド駐日大使、国務省のサリバン次官補代理、国防省のマクギファート次官補ですか、それからローソン統合参謀本部第五部長、ウィズナー太平洋軍司令官、ギン在日米軍司令官、こういうそうそうたる人々が参加されている。ここで中業の内容を説明したというふうにされておりますけれども、この三日間は、まさかアメリカ側はノンテキストで協議したわけじゃないでしょう。どうでしょうか、この点。
  265. 塩田章

    ○塩田政府委員 昨年の七月末−八月初めにかけてのハワイのことについてのお尋ねでございますが、いま御指摘のようなメンバーが出席したわけでございますが、これは毎年やっております事務レベルの協議会といいますか、そういう趣旨の会合でございまして、特定の議題でなしに、いろんな意見を交換する場でございまして、三日間にわたったことは事実でございますが、三日間にわたって中業のことばかりを説明したというわけでは決してございませんで、国際情勢についてのブリーフィング、それに対する意見の交換といったことが主体でございました。  もちろんこの席で中期業務見積もりが話題になったことはそのとおりでございます。話題になったことに応じまして説明はいたしたわけでございますけれども、そういうふうな意味合いのものであり、私どもとしましては、その次に御指摘になりました八月十六日の山下・ブラウン会談で、防衛庁としましてアメリカ説明をしたという立場をとっておるわけでございまして、ハワイの事務レベルの協議におきましては、話題になって、その話題になった限りにおいて説明をした、こういうことでございます。
  266. 榊利夫

    ○榊委員 ところが亘理さんは、さっきもちょっと触れましたように、防衛生産委員会説明で、アメリカが中業について正面装備と後方支援のバランスのとれた計画であると評価していた、こう述べているのです。正面装備と後方支援のバランスのとれた計画などという評価というのは、中業の全容を見なければ、単なる説明ではこういうことはわからないのじゃないでしょうか。どうなんでしょう。
  267. 塩田章

    ○塩田政府委員 ハワイ会談で話題になったときも、それから八月十六日に山下長官が行かれてブラウン長官に話をしましたときも、これまた何度も繰り返して申し上げておることでございますが、七月に私どもが発表いたしました「中期業務見積りについて」という公表文を用いまして説明をしたわけであります。
  268. 榊利夫

    ○榊委員 そのパンフにはこう書かれているのですね。「正面装備に関する事業については、ある程度詳細な見積りを実施しているが、その他の事業については概略の方向を見定めることに止めている。」こう書かれているのです。このパンフでは、後方支援といったことは概略しか触れられていない。だからパンフレットに基づく説明では、正面装備と後方支援のバランスのとれた計画といった評価は出てこないのですね。ここにはハワイ協議に参加された人、おられますか。どうですか。
  269. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 ただいま防衛局長が御答弁申し上げたとおりでございます。一般公表資料の概略についてたしか半日ぐらいの説明があったというふうに記憶しております。
  270. 榊利夫

    ○榊委員 半日の説明、半日といってもかなりのものがありますけれども、シュレジンジャーという元の国防長官がいますね。あの人はもっと非常に重要なことを漏らしているのです。詳しく紹介したいのですけれども、ちょっと紹介するのに時間がないので省きますけれども、要するに不十分だ、戦闘能力とか継戦能力の表題のもとに含まれる諸要素で、その中には航空機のシェルターとか航空基地の抗たん性の強化とかそういうことを言いながら、継戦能力を高めるためのこれらの戦闘準備措置を確保するには、今後四年間にわたって約三十五億ドル、各会計年度六ないし十億ドルの追加支出が必要になる、こういうふうにことしの五月八日ですけれども、日米安全保障研究センターの講演で述べておられる。こんな詳しいことは、特に戦闘能力、継戦能力云々といったことは公表文書にはないのですね。公表文書のどこにあるのですか。
  271. 塩田章

    ○塩田政府委員 正面と後方がバランスがとれたというのは、いま私が申し上げております昨年の「中期業務見積りについて」という発表の中でも、別に後方という言葉で締めくくった条項はございませんけれども、抗たん性の問題にしましても、通信体制の問題にしましても、随所で触れておるわけでございまして、そういったようなことをあわせて評価したものではないかと思います。  なお、シュレジンジャー氏が数字を挙げて指摘をしておるというお尋ねでございますけれども、先ほど先生も触れられましたように、中期業務見積もりにおきましては、積算をいたしましたのは、主要正面事業に関する経費につきまして五年間で二兆七千億とか二兆八千億とかいうことは積み上げて積算いたしておりますけれども、それ以外に別に私ども数字を持っておりませんので、いま御指摘の三十何億ドルといったようなことがどこからどういうふうな判断でシュレジンジャー氏がお出しになったのか、私どもにはわからないところであります。
  272. 榊利夫

    ○榊委員 私たちも本当にそれを見てどこから出てくるのかわからない。少なくとも公表資料から見る限りはこれは出てこない。ところが実際に出て来そうにないものがしゃべられているわけですね。そこに問題があるわけでありまして、国会にも公表されていないそういう中業の詳細な内容というものが米側に渡っている。渡っているとすれば、それ自体も大変な問題、違法になるわけでありますけれども、だれかが渡しているとすれば、国家公務員法の守秘義務にも違反するので、宮永事件みたいなことをおそれもするんですけれども、そういった内容、これは文書が渡っている渡っていないということと同時に、詳細な内容を外国に伝えること自体が、もし事実だとすれば、それは違法になると思うのですね。その点、どうでしょうか。
  273. 塩田章

    ○塩田政府委員 公務員としての守秘義務がございますから、守秘義務に違反するようなことがあれば御指摘のとおりでございます。ただ、アメリカ日本との場合、いわゆる安保体制によりまして共同対処をとるという同盟関係にございますので、いろいろそういう関係での話は当然出るわけでございますが、それにしましても、いまの守秘義務に違反ということは、これはまた別の話でございまして、守秘義務に違反するようなことがあれば、それに応じた措置がとられるべき事柄でございます。ただ、一般的に日本側とアメリカ側との間にいろいろな防衛関係者で話し合いが行われるという事実は、これはお認めいただけるんではなかろうかと思います。
  274. 榊利夫

    ○榊委員 そこは非常に微妙な表現でございますけれども、同盟関係だ、だからいろいろなことが、軍事問題がそこで話し合われる。そこでは守秘義務に問われかねないようなものも出る。確定しているわけじゃありませんよ。だから、その安保体制というものが、日米関係という点で、普通の国家である場合には考えられないような、恐らく突っ込んだ、いまの表現をかりますと、共同対処のいろいろな話がやられていることがいまの話からわかるわけですけれども、これについては十月十六日の参議院の外務委員会で、上田委員に対して伊東外相の方から極秘資料が米側に渡されたかどうか調べてみるというふうに答弁がありましたけれども、その後調査はされたんでしょうか。結果がわかっていましたらお知らせ願いたい。
  275. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 十月十六日の参議院外務委員会で、上田委員の方から本件について御質問ございまして、いろいろやりとりがございましたが、外務大臣の方から、それでは外務省としてできる限り必要であれば調査をしてみようということでございました。その後、本件について在米日本国大使館員がシュレジンジャーに直接面会いたしまして、ここに書かれているようなことについて質問いたしましたところ、シュレジンジャーの方から中業についての資料は一切見ていないということでございます。そこで、参議院外務委員会の質疑応答の中で防衛庁の方からもこのシュレジンジャーの講演に出ているような表題の資料はないということは言っておられますし、シュレジンジャー自身が中業については一切の資料を見ていないということでございますので、私たちとしては、秘密文書アメリカに渡ったということは推測できない、そういうことはないというふうに確信しております。
  276. 榊利夫

    ○榊委員 一切見ていないという彼自身が、ここに持ってきていますけれども、その中期業務見積もりについてずいぶん長く触れていますよ。見ていないでこんなことが書けるはずがないですよ。どうですか、外務省、あなた自身、シュレジンジャーのこの文章、講演、内容を読まれましたか。
  277. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私も上田委員が提示された限りにおいて読んでおります。さらにもう一つつけ加えるならば、いま榊委員が御指摘の数字でございますが、これについても、大使館員の方から質問したところ、これは自分の推測した数字であるという返答は得ております。
  278. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、推測した数字にいたしましてもずいぶん念が入った数字ですよ。相当詳細に述べております。この点では、シュレジンジャーは一切見ていない、ああそうでございますか、こういうことじゃなくて、国会でも接していない中身、内容、公表されていない中身だ。これを見ているというふうに思われる表現がたくさんあるわけでございますので、そこで引き下がるのじゃなくて、再度やはりいろいろ調査してほしいと思うのですね。どうですか、外務省としてもうそれまでですか。いかがでしょう。
  279. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちとして、調査する過程で国会で議論になったこともシュレジンジャーに伝えてございますし、先ほど申し上げましたように、シュレジンジャー自身、中業に関する資料は一切見ていないということでございますし、かつ、当時の参議院外務委員会において、防衛庁当局からの説明でも、そこの講演に出ているような表題についての資料はないということでございますので、私たちとしては、これ以上調査する計画は現在のところございません。
  280. 榊利夫

    ○榊委員 だとしますと、元国防長官という人が、こういう日本防衛の問題について中期業務見積もりが甘いとか試算が甘いとか、こうこうこういう不十分な点がある、こういうことも平気で言う。しかもそれを見ないで言う。見ないで言うのだったら、これほど無責任なことはありません。国際社会で、国家間の問題でそんなものが通用するのでしょうか。私は、本当に見ていないと言うのだったら、そういういいかげんな発言はやめなさいと言うくらいの見識があっていいと思うのです。少なくとも私は、政府としてはそれぐらいの態度はあっていいと思うのです。いかがでしょう。
  281. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来お話し申し上げておりますように、シュレジンジャー氏がどういう資料で、どういう判断をされてそういう発表をされたのか、私ども関与しないところでございますので、それ以上私どもから申し上げるとか調査するとか、そういうことは考えておらないところでございます。
  282. 榊利夫

    ○榊委員 もっと重要なことがあります。ガイドラインによる、つまり日米防衛協力の指針による日米共同作戦の実施要綱づくり、これについては前回ここでも御答弁がございましたけれども、作戦計画、後方支援、情報交換、調整機関、その他さまざまな対応策について米軍と自衛隊の制服同士で研究作業を続けているという御答弁がございました。しかも参議院の方では、日本が侵略された場合の問題のほか、日本でない、たとえば朝鮮などの極東における有事の際の問題についても研究作業をしているということを御答弁されております。こうした重大な作業が実際問題として機密として公表されておりません。国会は何ら知らない。それどころか、防衛庁の内局も参加していない。制服だけだ。しかも防衛庁長官へのその研究の報告も、ある段階に随時やりますというものであります。  大村長官お尋ねしますけれども、その実施要綱づくりの研究作業の報告をあなたはいつ受け取られましたか。
  283. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま先生から最初に、日本の区域外でも研究しておるのじゃないかというお尋ねがございましたが、ガイドラインの中の一番最後の項目にそういう研究項目があります。安保条約第六条に基づく場合の共同対処についての研究項目がありますけれども、現在はまだそこに手をつけておりません。  それから、制服が機密裏にやっておるというふうにおっしゃいますが、私どもおととしの日米ガイドライン、いわゆる指針をつくりますまでに、基本的な制約でありますとか、基本的に守るべき条件でありますとか、基本的なこういう項目についての研究をしなさいというようなことは、すべてガイドラインに示してあるわけであります。私どもがといいますか、要するに長官が示したものに従って、その中での具体的な作業を制服同士でやっておる、こういうことでございますから、作業そのものにつきましては、私ども制服にやらしておるわけであります。逐次、段階に応じて内局にも報告があることはこの間申し上げたとおりでございますが、まだ長官段階まで報告がいくほどの進度ではございませんので、長官にはガイドラインの考え方、それに基づく作業の概要についての御説明長官就任の際に申し上げてありますけれども、いまの研究作業の内容そのものについてまだ長官に御報告する段階には至っておりません。
  284. 榊利夫

    ○榊委員 いまの答弁趣旨から申しまして、それはなるほど、ガイドラインのそれに従ってでしょう。だけれども、いまの答弁で非常にはっきりしてきたのは、大村長官、就任されてもう三カ月以上になりますが、その間報告はないということでございますね。  それから、最高責任者の首相にはどれくらいの頻度で報告されているのでしょうか。たとえば大平総理は任期中に何回か報告を受けておられますか、あるいは鈴木さんは首相になられて何回ぐらい報告を受けておられますか。
  285. 塩田章

    ○塩田政府委員 その前に、いま私は安保第六条に基づく共同対処というふうに申し上げたかと思いますが、安保六条の場合は共同対処ではございませんので、その点は訂正させていただきますが、安保六条のこともガイドラインの中で研究対象になっていることは先ほど申し上げたとおりであります。  なお、各総理大臣にどの程度報告しておるかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、おととしできまして、おととしの十二月に作業に入りましてからずっと、いま申し上げましたガイドライン、指針そのものに基づきまして制服同士で研究を進めておる段階でございまして、総理大臣あるいは防衛庁長官にも、そういうことをやっておる、こういう内容でございますという報告なり御説明なりは申し上げておりますけれども、作業の中身を御報告申し上げる段階にはまだ至っていないということでございます。
  286. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、結局は、作業の中身は報告していないということです。鈴木内閣発足以来まだ一度も報告されていない。その間に研究作業だけは進んでいる。そういうことだと、総理大臣防衛庁長官も、潜越ですけれども、一種の天井さじきの奥に祭られているようなかっこうになっていまして、これではシビリアンコントロールどころか、いわゆる日米共同作戦の研究作業そのものあるいはその研究作業に基づいて何かが起こる、重大な事態が起こる、行動がやられる、そのこと自体も一つのいわば聖域と申しますかアンタッチャブル、知られないままに進んでいるということになりかねない。実際、いまの研究作業は少なくともそうなっています。これでは、国会はもちろん知らされない、憲法上もそういうことは許されない、政府もまたそのことについては知らない、そういう点ではまさに日米安保に基づく共同作戦の要綱づくりあるいは具体的なさまざまな作業といったもの、これはもう超国会、超政府、こういうふうに実際なっていると思うのです。これは非常に重要だと思う。それでいいと思っていらっしゃるのでしょうか、いかがでしょう。
  287. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度も申し上げるようで恐縮ですけれども、指針そのものをつくりますときに、その辺につきましては制服に全然任せないで、私どもが——私どもがといいますか、長官の命を受けて外務省なり私どもが参画してつくったわけでございますが、その際に、厳重なる枠組みをはめておりまして、憲法の問題、非核三原則の問題にしましても、それぞれの当該国を法律的にも予算的にも制約しないといったようないろいろな制約につきまして全部決めまして、しかもその上で作業項目も明示しまして、その中で作業をしろということを命じておるわけでございます。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕 それから先の作業は、非常に具体的な技術的な作業でございますから、それは制服同士でやりなさいということでやっておるのでございまして、シビリアンコントロールだとかそういうことには十分配慮した上での作業の進め方であると私どもは考えておるわけであります。
  288. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんのであれですが、いまの説明を聞きましても、それは大枠でしょう、指針というのは。さまざまな具体的な問題、これは技術的な問題だからといってそれに任せる、こういうかっこうになっている。ところがどうでしょう、実際戦争というのは内局でやるのじゃないのですね。たとえば軍事行動、接触が起こるとか衝突が起こるとか、これは一番先端で起こるのです。これは、それがどういうふうに進められるのかといった具体的研究でしょう。それは内局も全然参加していない。端的に言えば、防衛局長も報告があるまでは知らないままに進んでいる、こういうことだろうと思うのですよ。大筋のところ、枠といったことは、それはもちろん関係されているでしょう。それではやはり歯どめなき独走とでもいいますか、そういうことになりかねない。国家間の軍事同盟とか共同作戦とかそういったものはしばしばそういう形で進んで、実は取り返しのつかない悲劇につながっていく、実際にこういう歴史的なあれがあるわけです。御存じのとおり三国軍事同盟でもそうでしたし、満州事変が始まったり、あるいは日中戦争になったり、あるいは第二次大戦になったりといったのも、個々の問題をとってみますと、結局一番最先端の部分から始まるのです。それを追認して大戦争へ、これが大体歴史のいわば通例と言っていい。ほとんどの場合、そういう形で進んでいるのですよ。そういう点では私は、いまのこの要綱づくりの問題これが国会だけではなくて政府に対してもほとんど知らされないで制服間でどんどん進んでいる、たまたま事後報告的にやられるだけだ、これは非常に危険だということを歴史の教訓を踏まえながら言わないわけにいかないと思うのです。その点いかがでございましょう。大村長官、どういう御認識ですか。
  289. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  いわゆるガイドラインは、日米安全保障条約に基づく日米間の防衛協力のあり方について昭和五十三年十一月に日米間で合意したものであります。これはあくまでも日米防衛協力に関する主として運用面における基本的枠組みを定めたものであります。その基本的枠組みに基づいていま小委員会で作業をしているわけでございますが、私はこの基本的枠組みを外すことのないように十分注意してまいりたいと考えておるわけであります。
  290. 榊利夫

    ○榊委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、やはりこの問題は非常に重要な問題をはらんでいるということをしっかと御認識願いたい、こう思うのです。  終わります。
  291. 江藤隆美

    江藤委員長 午後五時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後四時四十六分休憩      ————◇—————     午後五時一分開議
  292. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。岩垂寿喜男君。
  293. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 鈴木総理に質問をする前に申し上げたいことがございます。  それは、臨時国会におけるあなたの憲法問題に対する御発言を承っていますと、鈴木総理は果たして国の基本法である憲法を確信を持って遵守しようとしているだろうかという疑問を打ち消すことはできません。いま安定過半数を占めた自民党内が、いわゆる改憲慎重派と積極改憲派に割れていることは私も承知しています。そして総理は、そのはざまで国民向けと自民党タカ派向けの顔をその都度使い分けて、その場をしのいでいるように思われるのは私の邪推でしょうか。それでは国民はあなたのどのお言葉があなた自身の信念なのだろうかと戸惑うのは当然だと思います。実は、総理のこのあいまいさが最近の憲法や防衛問題に関して、閣僚や政府委員の無責任発言が飛び出す一つの原因となっているように考えるのは私だけではないと思います。  国会の答弁を通して政府見解を次から次へとエスカレートさせて既成事実を積み重ね、軍事大国への道に世論誘導を図ろうとする態度をいつまでも許しておくことは非常に危険なことであります。そしてそれは国民にとっても大変不幸なことであります。その都度宮澤官房長官が釈明をしたり統一見解を出したりして火消し役を務めてみても、もはやそれらの無責任発言がひとり歩きを始め、取り返しのつかないことになりかねない状況が進行をしていることを私は心から憂慮いたします。  最近の朝日や読売や毎日新聞などが自民党の国会議員に憲法アンケートをやっていますが、それによると、積極改憲論者は党内少数派であることがはっきりしました。それだけではありません。自民党がこの十年余り憲法問題を意識的にというか、周到に回避して選挙を闘ってきたことは総理が一番知っておられることであります。これらの事実を無視して、国会で安定勢力を確保したからといって政権の立場を利用して改憲の世論を操作することは絶対に許されませんし、それは民主政治の道に背くものであります。  あなたは総理になられてからすでに四カ月、いまや自民党の総裁公選には対立候補はなく、臨時党大会を待たずして事実上二期目の総裁に選ばれました。この辺で外交防衛問題についての鈴木総理のスタンスとでも言いましょうか、あるいは鈴木ドクトリンという言葉をあえて使いたいわけですが、そういうものをあなた自身のお言葉で私は述べていただきたいと思うのであります。  私の質問時間はわずか一時間でございます。その意味では、私の主張を長々と述べるつもりはございません。私は、これまでの歴代自民党内閣防衛問題についてこれまで述べてきた、いわゆる政府見解に対する私自身の賛否の態度というのは留保しておいて、鈴木内閣になってそれが大きく変わったのか変わらないのか、あるいは変わったとすればどこがどういう理由で変わったのかということをもっぱら総理にお尋ねをしたいと思うのであります。戦争と敗戦という不幸な時代を共有した人間同士の立場から、一九四五年八月十五日以前の歴史に引き戻しかねない状況に歯どめをかけるために、どうか総理の誠意ある答弁を私は期待をしたいというふうに思います。  そこで、これはあたりまえのことなんですが、最初に二つ、三つ本論に入る前にお尋ねをしておきたいのですが、去る十月の二十二日、総理は自民党本部で鈴木内閣として——ここがちょっと問題に私は思うのですが、鈴木内閣として現行憲法の尊重、擁護と自主憲法制定の努力の両面の対応が必要になってきたと述べられたそうであります。これは自民党の二年生議員との懇談会だそうであります。これは総理・総裁の立場をそれぞれ使い分けて、実は政権の場を利用して改憲への党内体制を固めようとするものと思われてもいたし方ないお言葉遣いではないだろうかと私は思うのです。したがって、もしその点の釈明というかお言葉があるならば、それを承りながら、一体総理は、政治集団である政党の立場、総理や国務大臣立場というものを比べてみてどちらを優先なさるおつもりか、この機会にはっきり述べていただきたいと思います。これは言わずもがなのことでありますけれども、あえてお尋ねをしておきたいと思います。
  294. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 憲法に関します私の発言は、きわめて明確に申し上げておると考えております。憲法九十九条には、憲法を尊重し擁護する、そういう義務があるということを明記いたししております。私どもは、現行憲法を尊重し、あくまで擁護してまいるということを政府の基本的な姿勢として打ち出しておるわけでございます。また御承知のように、憲法九十六条におきましては、憲法自体が改定手続を規定をいたしておるわけでございまして、憲法についていろいろ議論をし、あるいは自分の考えを述べるということは、これは憲法九十九条の尊重の義務に反するものではない、これはきわめて明らかでございます。そういう点を国会の本会議並びに予算委員会等を通じまして明確にいたしたのでございます。  自由民主党におきましては、立党の政綱の中で平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、この基本的理念を堅持しつつ自主憲法の制定を進める、こういう政綱がございます。私は自由民主党の党員として、この政綱のもとに三十年余政治に携わってきておるわけでございます。  そこで、私は、自民党の若手議員の会合で、この憲法の問題についてただ情緒的にいろいろ上ずった議論をしてはいけない、十分慎重に勉強もし、検討してもらいたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。私は、あくまで平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、この世界の憲法に比べましてもすばらしい理念というものは堅持さるべきものだ、こういう前提の上に立って十分冷静に勉強しなさい、こういうことを申し上げておるところでございます。
  295. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これも実は簡単にお尋ねしますので、そうだとかそうでないとかいうお答えをいただきたいのですが、総理や国務大臣は、現行の法体系をみずから遵守し、国民にも遵守を求める立場にあるのですから、まず憲法を守る姿勢を強く示す責任があると思いますけれども、その点について御異存はございませんね。
  296. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そのとおり心得ております。
  297. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 政権の立場を利用して改憲のための世論操作と疑われるようなことはしないというふうにお約束できますか。
  298. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、いま申し上げましたように、内閣総理大臣として、政府としてあくまで尊重し擁護してまいるということに徹していきたい、こう思っております。
  299. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 民主政治といいましょうか、政党政治のルールとして、憲法改正などの場合に、総選挙で、憲法はどのようにして改正したいという、より具体的な方針や政策内容をはっきり示して国民の審判を仰ぐことが不可欠だと思いますけれども、これは民主主義のルールでございますが、総理はこの辺をどうお考えになっていらっしゃるか。
  300. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そのとおりだと考えております。
  301. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほど総理は、平和主義ということも含めて言われたのですが、総理の憲法に対する認識見解の中には、憲法の前文あるいは九条の戦争放棄も含まれていると理解してよろしいかどうか、承りたいと思います。
  302. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 憲法を尊重し擁護するということを先ほど来強調いたしました。これは九条を含め、前文も含めまして全体を尊重するという意味でございます。
  303. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自民党の一部の人々が、内閣に憲法調査会をつくるべきだということを言っていらっしゃいますけれども、総理は憲法調査会をつくる意思がないということを明言していただけますか。
  304. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は国会を通じまして、鈴木内閣においては憲法を改正する考えは持っておりません、こういうことを国民の前に明らかにいたしました。したがいまして、政府が憲法調査会を設置するということは考えておりません。
  305. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 憲法の中に、国際紛争を解決する手段として「國權の發動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する。」という立場がございますが、これは日本外交のみならず内政の基本原則として貫かれるべきだと私は思いますが、総理の見解を承っておきたいと思います。
  306. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 憲法九条につきましては、そのように考えております。
  307. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 資源や海外投資、経済水域の問題などをめぐってあるいは八〇年代には国際紛争の多発が予想されると判断せざるを得ないのですが、日本にかかわるこれらの紛争は、すべて平和的手段のみによって解決する態度を堅持なさるおつもりかどうか、決意を承りたいと思います。
  308. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 これから、いま御指摘のように資源問題にいたしましてもいろいろの問題、国際間の問題は非常に複雑になってまいります。それぞれの国の利害もまた錯綜いたしてくるわけでございます。そういう問題を処理、解決いたします場合には、あくまで平和的な手段、外交手段等によりまして、十分話し合いによって解決をしていくべきものである、わが国の憲法からいたしまして、これを武力に訴えるというようなことは許されないことである、こう考えております。
  309. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これも言わずもがなでございますが、自衛隊を国際紛争解決の手段として使用しないことを改めて御確認をいただきたいと思います。  それからもう一点、国際紛争のうち自衛権行使が認められるケースは、わが国に対する明白な侵略以外にあり得るかどうか、その点も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  310. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 国際紛争、わが国がかかわる紛争問題につきまして、自衛以外に自衛隊の力を行使するというようなことは考えておりません。  また、この国際紛争につきまして自衛隊を、武力を行使するためにこれを海外に派遣をするとか、そういうようなことはなすべきことではない、許されないことである、こう考えています。
  311. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 シーレーンの問題をめぐっていろいろ議論がございました。安全保障特別委員会などでもありました。実はこの問題、昭和四十七年ころに同じような論争があって、そのときに防衛庁の久保防衛局長は、憲法のたてまえから言えば、海外における権益を自力で擁護する発想はあり得ない、相当遠くまで有効に海上能力を維持するだけの防衛力というものは、日本としては持ち得ないと明言をし、さらに当時の増原防衛庁長官も、憲法の示す専守防衛に徹するという意味を、量的にもしっかり考え、インド洋まで伸びていくような方向はとるべきでない、武力による護衛ということ以上に外交によるそういう事態の発生防止、各国との友好関係の発展、持続、そういうことでカバーすべきであり、せざるを得ないと答えておりますが、この認識は今日も変っていないと判断をしてよろしゅうございますか。
  312. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 自衛隊を武力を行使する目的で他国の領土、領海、領空に派遣をするというようなことは憲法上許されないことでございます。いま御指摘の公海上におけるわが国の船舶の護衛、シーレーンというようなことをおっしゃいましたが、公海上におきましてわが国の船舶を保護するという目的であれば、私は憲法上許されることである、こう考えています。しかし、その範囲あるいは距離等々につきましては、おのずからわが国の海上自衛隊等の行動範囲、能力というものが限界がございます。そういう点は十分私ども配慮をしてまいる考えでございます。
  313. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そのことに関連するのですが、いま政府見解が出されている、それを大きく変えるというふうにはお考えになっていらっしゃらない、そのとおりだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  314. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま申し上げたとおりでございまして、前に政府から答弁がございましたものと変わっておりません。
  315. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自衛隊の海外派兵に法的根拠を保障するような自衛隊法の改正は行わないと断言をしていただきたいと思います。
  316. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 現在そういう検討はいたしておりません。
  317. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会における鳩山内閣の敵基地攻撃と自衛権の範囲についての政府統一見解がございます。これは総理も御存じだろうと思うのですが、これに対する賛否は別として、これ以外に他国に対して自衛権を行使することはあり得ないと、この際改めて御答弁をいただきたいと思います。
  318. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 鳩山内閣当時、政府の統一見解を発表いたしておりますが、政府としてのその見解は変わっておりません。
  319. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 非核三原則はこれからも堅持なさるおつもりだろうと私は思いますが、核防条約や原子力基本法により禁じられているもの以外についても、これはたとえばアメリカの核の持ち込みであるとか核兵器の共同使用というふうな問題点が含まれると思いますが、これは許さない、非核三原則はこれからも守っていく、このことを内外に明らかにしていただきたいと思います。
  320. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国は原子力基本法を持っております。また核不拡散条約にも調印し批准をいたしております。したがいまして、つくらず、持たずという方針に変わりはないわけでありますが、もう一つ持ち込ませずという問題がございます。これは国是として政府が非核三原則を堅持するということを世界に明らかにいたしておりますから、非核三原則は堅持してまいる、こういう考えであります。
  321. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 武器輸出禁止のいわゆる三原則がございますね。これもこれからも堅持をしていくことも当然だと思うのですが、これも御答弁を煩わしたいと思います。
  322. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 武器輸出三原則、それからさらに昭和五十一年でございましたか、方針も政府から明らかにいたしております。三原則並びに方針を誠実に守っていく考えでございます。
  323. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 わが国防衛力はどこまで大きくなるのかという、いわば際限のない増強を目指しているのではないかといった疑問に対して、昭和五十二年の防衛白書、それから五十三年の防衛白書によれば、これが実は基盤的防衛力構想の考え方を述べたくだりなんですけれども、わが国防衛のあり方をできる限り具体的に明示することが必要だというふうに指摘をして長い長い文章を書いてございます。これを私は読みませんけれども、この立場というものは変わっていないというふうに理解してよろしいかどうか。それからもう一つは、防衛力の限界として、総理は何を考えていらっしゃるか、率直な御見解をいただきたいと思います。
  324. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 国の防衛は国民の皆さんの理解と御協力がなければならないわけでございます。したがいまして、政府としては、防衛力整備につきましてはできるだけ国会にも御報告を申し上げ、また国会を通じて国民によく御理解を願うような努力をしていくという方針には変わりがございません。  現在、防衛力整備につきましては、「防衛計画大綱」というものを決定をいたしまして、そしてそれを着実に整備をしてまいるという方針をとっております。わが国は平和憲法に基づきまして、経済大国ではあるが、軍事大国にはならない、そして非核三原則はこれを堅持する、専守防衛に徹する、シビリアンコントロールを堅持していく、また近隣諸国等に脅威を与えるような防衛はしない、こういうことを明らかにいたしておるわけでございます。私どもはそういう基本的な方針に基づきまして、現在「防衛計画大綱」の線に沿って防衛計画を進めておる、こういうことでございます。
  325. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それと同じような質問なんですが「防衛力整備上の国内的諸条件への配慮」として、これも五十二年の防白、五十三年の防白に出ているのですが、経済財政上の制約、隊員確保上の制約、施設取得上の制約が指摘されていますけれども、この制約は今日も変わっていないというふうに判断してよろしいか。
  326. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 基本的には変わっておらないと認識をしております。
  327. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いままでの法体系といいましょうか、法制を変えてまで、たとえば徴兵制であるとかあるいは秘密保護法であるとか土地収用法の改正であるとか軍事特別会計というふうな形で防衛の拡充を図ることはしないとお約束いただけますか。
  328. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま御指摘がございました徴兵制の問題、これは現行憲法上許されないことでございまして、そういうことはあり得ない。なお、その他の現行法制の再検討の問題につきましては、いまのところ政府はこれに取り組んでおりません。慎重にこれは検討すべき問題である、扱うべき問題である、このように認識しております。
  329. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 慎重に検討すべきということになると、何かやるために慎重に検討するみたいに思われますが、そうではないですね。
  330. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 日本語はむずかしいわけですが、取り扱いを慎重にせにゃいかぬ、こういうことでございます。
  331. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 脅威というのは、侵略し得る能力意図に大別されて、その意図について、侵略を行うとの決断は国際政治に及ぼす影響、結果の重大さを考えるとき、政策決定者として自由自在に下し得るものではないというふうに五十二年の防衛白書に書いてございます。私もそうだろうと思うのですが、この認識に変わりはございませんか。  そして、それと関連いたしまして総理は、ソ連朝鮮民主主義人民共和国日本に対して侵略の能力意図を持っているかいないか、その判断をお示しいただきたいと思います。
  332. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国をめぐる政治的軍事的な情勢についてでございますが、近年におけるソ連の極東に対する軍事力の展開、たとえばミンスクの回航あるいはバックファイア、SS20の配備、さらに北方四島に対する軍事施設の構築、こういう問題は、やはり潜在的な脅威である、客観的に見てこう言わざるを得ないわけでございます。しかし、北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国と申しますか、それの現在の軍事力増強というものは、ソ連と比較するようなものではない、私はこのような認識を持っておるわけでございます。しかし、これに侵略の意図が加わった場合に初めて脅威が顕在化してくる、こういうことになろうかと思うのでありますが、この意図を決断するということは、これは大変なことだ、世界の平和を根底から覆すような大きな結果をもたらす、人類の大きな不幸にもつながる問題でございますから、私は政策決定者というのはそう簡単にそういう決断が下せるものではない、このように思っております。
  333. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 昨年の七月なんですが、坂田元防衛庁長官が、「ソ連中国との対立に全神経を集中している。何しろ大陸国家ですから、国境には気を使う習性が身についている。海洋を隔てて進行してくる気構えはない。中ソ対立が続く限りはこの状況は変わらないと見ていいと思っている。」そして続けて、「いま日本の周辺には大規模な水陸両用作戦を展開する戦力を持っている国はない。この情勢はここ当分変わる見通しはない。」ということを、週刊朝日でございますけれども語っております。  私は、この認識というのはきわめて冷静な判断だろうと思うのです。この点について総理のコメントをいただきたいと私は思うのです。
  334. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 それはどこかの雑誌社の書いたものですか。——それに私がコメントすることはいかがでしょうか。遠慮いたします。
  335. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほど官房長官から、ソ連を含めて潜在的脅威という言葉の使い方は国益にそぐわない面があるというようなことの御答弁がございました。いま潜在的脅威ということを、総理は客観的にという言葉を使っておられますので、それはそれなりに私も受けとめながら、言葉の使い方について慎重でなければならない、そのことをあえて私は申し上げておきたいと思うのです。とりわけ朝鮮民主主義人民共和国に対する扱いなどについても、これは総理がいま否定的な形で述べられましたから、私はそれを了としたいと思います。  軍事力による抑止というのは限定的な効果しかない。ときにはきわめて危険な結果をもたらすことにならざるを得ないということは言うまでもございません。侵略の意図を起こさせないための主要な手段というものは、非軍事的な手段だと私は思うのです。わが国の安全のための非軍事的な手段の開発について総理はどのような構想を持っているかということを伺いたいのです。ただ、それは長くなりますから、端的に言いますと、環太平洋構想というのが提起されましたね。私は、国際環境が整えば、日本や南北朝鮮ソ連を含む環日本海構想というふうなものが、日本を取り巻く国際環境、緊張緩和の上で非常に重要な問題ではないだろうかと思いますが、こういう問題意識というのは総理はお考えになりませんか。
  336. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 大平前総理が環太平洋連帯構想というものを明らかにいたしました。私もこの大平総理の考え方、これを支持し踏襲をしておるものでございます。  この環太平洋連帯構想というものは、本来開かれたものでございまして、太平洋に面する国々に、この国は入ったらいい、この国は入っちゃいけない、そういうものではない、開かれた構想であるわけでございます。そういう意味合いから、御指摘のような国々が入れるような環境条件、こういうものをじみちに積み上げていく必要がある。そうすれば、私は、環太平洋連帯構想のほかに、また日本海云々というようなものは必要はないのではないだろうか。要は、私どもは、そういうものができるような情勢、それを生み出していくように努力すべきものである、こう思っております。
  337. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その点については、日本海と太平洋は違いますものですから、太平洋というものが、それらの国を含めて開かれたものであることのための努力をし、そういう雰囲気をつくっていきたいという決意として理解をしておきたいと思うのです。  国際緊張がいろいろ取りざたされている。私はデタントの基本は崩れていないというふうに思いますが、それはそれとして、日本としていまこそ平和外交の具体的な展開が必要だと私は思うのです。そのためにはいろいろ項目はございましょう。諸国民との相互理解を進めることや、いたずらに敵対感情をあおるような宣伝を慎しむことや、文化や教育の交流や、発展途上国の経済自立への援助や、そういういろいろなことが私は重要だと思うのです。先ほど国会で取り上げられた、たとえば買春ツアーなどということも、ある意味で国際的な日本の不信を拡大していることだろうと私は思う。それらを含めて、鈴木内閣平和外交の基本方針をこの際お示しいただきたいものだ、このように思います。
  338. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国はこのように国土が狭隘であり、資源小国である。しかも一億一千万の大きな人口を抱えております。海外からすべてのエネルギーを初め原材料を輸入して、そしてこれを貿易することによって国を建てておる。こういう国柄でございますから、世界のいずれの国に比べましても、世界が平和であり、安定すること、これが一番望ましいわけでございます。したがいまして、わが国政府としましては、今日まで平和に徹し、平和外交を展開をし、いずれの国とも仲よくするという方針をとってまいりました。特にその中でも、やはりアメリカとの友好関係、緊密な関係、これを基軸といたしまして、そして同じ自由主義、民主主義を信奉するところの同じ価値観の上に立つ国々との連帯と協調、これを大事に私どもは考えてまいりました。そういう足元をしっかり踏まえながら、そして体制が違う国につきましても、相互の利益に合致する場合におきましては、ともに友好関係を結んでいくという方針をとっておるわけでございます。また発展途上国等に対しましては、できるだけ日本が経済協力、技術援助等も行いまして、そして地域にいろいろな不安定な状態が起こらないように、そういうことが私は日本が世界の平和に貢献する道である、そのような基本的な考え外交を展開しておるところでございます。
  339. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それに関連をして、イラン・イラクの紛争の問題を指摘をしておきたいと思うのですが、今日まで日本は中立、不介入の方針をとってきました。しかし、きのうきょう、いわゆる人質解放問題と関連をいたしまして、たとえば凍結の武器の供与であるとか、引き続いての部品の供給であるとかいうことになっていく、あるいはカーター大統領がイラクの侵略という言葉を使ってイラン擁護する。つまりそういう発言をしてイラン支持の態度を明らかにしたことを含めて、イランアメリカ寄りというふうにストレートになるかならないかは別として、その傾向を強めれば、反作用としてイラクはやはりソ連寄りということにならざるを得ない。またこの事態というのは、私はどうもよくわかりませんが、イラン・イラク紛争というものをますます激しくしていく。そればかりでなくて、結果的になんですけれども、湾岸諸国を含めてその戦火が広がっていく可能性というものを、私なりにも懸念をせざるを得ません。こういう状況の中で、これから日本がこの紛争に中立、不介入、こういう立場というものを堅持することが非常に重要だと思うのです。これらの措置に関連をして、その中立を貫いていかれるつもりか、あるいはその立場に立ってどんな御努力をなさるおつもりか、少しホットな問題でございますから、総理の御見解を承っておきたいと思います。
  340. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 イラン・イラクの紛争につきましては、わが国はあくまで厳正中立、不介入という方針を堅持してまいりましたし、今後もこの考え、方針に変わりがございません。またわが国としては、イランにしてもイラクにいたしましても、中東全体を考えまして石油の供給源として非常に重要な地域でもございます。早期にこの紛争が収拾、解決されることを心から期待をいたしておるわけでございます。そういう立場から今日まで、イスラム諸国の調停工作、パキスタンのハク大統領中心とするあの工作に対しましても、日本は大きな期待を寄せ、また側面からこれにできるだけの力添えを実はいたしておるわけでございます。私からも親書を送りまして、ハク大統領の御努力に敬意を表し、また励ましの言葉も送ったような次第でございます。なおまたペルシャ湾岸諸国に戦火が拡大しないように、これらの諸国が冷静に事態に対処してもらうように、それぞれに働きかけもいたしております。さらにまた国連の場におきまして、特に日本は安保理事国にもなったことでございますから、このイラン・イラクの紛争の早期解決ということに最善の努力をいたしておるところでございます。特にアメリカあるいはソ連等の超大国がこれに介入しないということがこの際一番大事なことでございますので、そういう面につきましては全力を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  341. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 日本外交路線というのは、あくまでも日本立場といいましょうか、国民の利益に立って進められるべきであることは言うまでもありませんし、実は対米外交もその例外ではないと私は思うのです。  最近、新聞やテレビを拝見しておりますと、アメリカの露骨な軍備増強要請があります。これは私は、日本はその点で自主的であるべきだ、このように思うのですが、総理はこの際、アメリカに対して何を主張なさるおつもりか、なさりたいか、この場をかりて明らかにしてほしいと思いますし、大統領選挙後の日米首脳会談が取りざたされておりますが、いろいろなことを考えてみると、早いことがいいのかどうか、私もかなり否定的な見方をせざるを得ないのですが、そんな方針といいましょうか計画について、その二つについて御答弁をいただきたいと思います。
  342. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 米国が厳しい国際政治軍事情勢に対応いたしまして、軍事力増強努力をされておる、またNATO諸国に対しても、同様の協力を要請しておるということを承知いたしております。わが国の自衛力の整備につきまして、アメリカは期待を表明されたことはございますけれども、しかし、日本が平和憲法のもとにある、軍事大国にはならない、専守防衛に徹しておる、こういうこともアメリカはよく承知をしておるわけでありまして、日本の憲法を踏み外してまで防衛力増強云々という要求はございません。私どもは世界の情勢、極東の情勢、いろいろ情勢を見ながら、また国民の皆さんの御理解を得ながら、また国会がシビリアンコントロールの中核、中枢でございますから、国会の御意見等もあるわけでございます。そういう諸般の情勢を頭に置きながら、自主的にいま防衛計画大綱の中で質的な整備を進めておる、こういう段階でございまして、アメリカの要求によってどうこうというようなものではない、あくまで日本防衛力の整備というのは、日本が自主的に決定すべきものである、こういう立場アメリカとは話し合いをしておる、こういうことでございます。  それから、大統領選挙後の日米首脳会談の問題でございますが、私は適当な機会に日米首脳会談に臨みたい、このようには考えておりますけれども、まだ具体的にいつごろ、どういう問題をもってお話し合いをするか、そういうこともまだ考えておりませんし、両政府間でそういうことについて交渉なりあるいは話し合いを進めておるというようなことも、現在のところございません。
  343. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 対ソ外交の重要性は、私が強調するまでもないところであります。大統領選挙もきょうで終わるわけでございますから、経済制裁や事務レベル協議などについて、この際、御見解をお示しいただきたいと思います。
  344. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 対ソ経済措置の問題でございますが、アフガンに対するソ連軍の軍事介入、こういうようなことから端を発しまして、アメリカ並びに西欧諸国、日本等々がこれに対して経済的な措置を講ずる、こういうことに相なったわけでございます。私は、この措置というものが円滑にかつ効果を示すためには、アメリカあるいは西欧、日本等が、本当に十分協調、連絡を保ちながら、足並みを崩さずに進めることが肝要である、このように考えております。また緩和措置を講ずるような場合におきましては、これらの国々で十分話し合いをし、一致した行動をとるべきものだ、このように考えておるわけでございます。したがいまして、いまのところ、従来の方針をここで変えるという考えは持っておりません。  さらに、日ソの問題についての基本的な私の考え方というものをこの際申し上げますと、ソ連は何といたしましても日本の隣国であり、非常に有力な国でございます。このソ連との間に友好関係を確立をする、またアフガン問題以来続けられておる状態を修復をするということは、私は両国の相互の利益になるばかりでなしに、アジアの平和と繁栄のためにも必要だ、このように基本的に認識しております。ただ、そういうことは両国が力を合わせて同じ気持ちで努力をしなければできない問題でございます。わが国だけがそういう気持ちになっても、相手方がそういう気持ちにならなくてはいけない。私は、事の起こりがアフガンに対するところのソ連の軍事介入、そういうところから問題が出ておるわけでございますから、まずそういう環境条件日本ソ連が修復できるような環境条件を、ソ連が誠意を持って努力をしてもらうことが必要だ、こう基本的に考えておるわけであります。
  345. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、ソ連がアフガンにいる限りは、日本ソ連の関係はどうも窓があかぬ、こういう感じ、そして一方でEC諸国ソ連との関係で経済制裁の網を破ってどんどんやっている、日本だけが実は取り残されているという状況は、私は大変不幸なことだと思うのです。ですから総理、私もまだお話をしたことがないので大変ぶしつけなことなのですが、日ソ円卓会議があって、たとえば自民党の赤城代議士がソ連に行かれるということを新聞で拝見をしておりますが、そういう人たちなどを通じて日本の気持ちを向こう側に伝える、そういう御努力などを求められればする、そういうことは御答弁いただけますか。
  346. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、自由民主党の有力な議員の方々がいろいろお話し合いの場を持つということは結構なことだ、こう思っております。ただ、日本が間違ったことをやっておるわけではございません、してまいったわけでもございません。やはり筋を通して、ちゃんと主張すべきことは主張して、本当にそういう前提の上に立って相互の理解、日ソの理解というものができてこそ本当の日ソの友好関係が揺るぎないものとして発展していくだろう、私はこう思うわけでございます。日本が間違ったことをしていないのに、こちらからひざを屈してへりくだっていく、そういうような行き方では、私は真の日ソの友好関係の発展にはならない、こう思っております。
  347. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一昨年の国連軍縮総会の最終文書にこういう言葉がございます。真の永続する平和と安全保障は、軍事同盟による兵器の蓄積で築き得るものでも不安定な抑止力の均衡または戦略的優位の教義で支えられるものでもない、それは国連憲章に規定されている安全保障体制の効果的な実施と、究極的には全面完全軍縮に導く国際取り決めによる兵器、軍備の実質的削減によってつくり出されると宣言しています。私は大変すばらしい宣言だと思いますが、総理は、この宣言に賛成ですか、どうですか。
  348. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、本当にりっぱな宣言であり、世界の平和のためにそうあってほしいという気持ちで賛同をいたしております。
  349. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 こうなると、社会党の非武装中立というのは非現実的だなどとは言えなくなるわけですが、それはそれとして、先ほど総理が言われましたように、日本は国連の安全保障理事会の非常任理事国に選ばれました。それから十月二十四日から国連軍縮週間が行われました。これは実は国連の軍縮特別総会で、八月六日の原爆記念日を軍縮デーにという日本の国民代表が提案をしたことがきっかけになって生まれたと言われています。そして先日、大川軍縮大使が国連の第一委員会で八二年度軍縮特別総会に日本が積極的な役割りを果たす決意を述べられております。政府はこれに向けてどんな役割りを果たす御方針か承っておきたいと思います。
  350. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 この前の国連の軍縮特別総会におきましても、当時の園田外務大臣が軍縮に対する日本考え方、不動の方針というものを鮮明にいたしました。この日本政府の方針というのは、国連の特別総会におきましても各国の共感を呼んだというぐあいに評価をされておるわけでございます。私どもは八二年の特別総会におきましても、同じような考え方でこの軍縮、特に核軍縮を推進する。これは被爆国としての立場からいたしまして、日本こそ本当に世界の国々に訴え得る立場にあると思いますので、そういう面につきましては最善の努力をいたしたい、こう考えております。
  351. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこで、具体的に提案というか、私が言うよりも十月二十七日の読売新聞の社説の中に、政府が民間団体と協力して来年の軍縮週間に世界の多くの都市で原爆展を開くことを提案いたしております。これは私はまことに時宜を得た提案だと思いますが、これは総理がやるということを言えば、それでできるわけでございますが、その点ぜひ決断をいただきたい。その点をまず提案というか要請をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。これは簡単なことなんです。予算も余り要りません。
  352. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 軍縮集会等に対しましては、講師を派遣するとか、講演に参加するとか、できるだけの協力をしたいと思っておりますが、原爆展でございますか、それにいま政府が参加するということは考えておりません。
  353. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やはり八二年の国連軍縮特別総会を盛り上げていく、そこで積極的に日本の役割りを果たすということになるとすれば、そのくらいのことは総理御決断なさった方が、日本立場から、いま申し上げた核軍縮に対する説得力などという点から考えても、非常に重要だと思いますが、もう一度ひとつ御配慮を願いたいということだけ申し上げておきたいと思います。  自民党、民社党の党首会談で、五六中業について何らかの方法で国防会議の議題とすることを検討するという合意を見ておりますが、その後の検討の経過を、これは防衛庁長官で結構ですが、お答えをいただきたいと思います。
  354. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  自民党と民社党の党首会談におきまして、次の中業の策定に当たりまして、何らかの形において国防会議の議題にすることに努めるというお話が出たということを承っております。防衛庁におきましては、その実現につきまして適正な方途を現在検討しているところでございます。
  355. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと立ち入って恐縮ですが、議題にするということは、単なる報告ではないというふうに理解していいですか。
  356. 大村襄治

    大村国務大臣 その点を含めまして、適正な方途について現在検討中でございます。
  357. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やはり政府方針に格上げするということですね、それは。その辺はどうですか。
  358. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  ただいまお答えしたとおりでございます。
  359. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも答えになっていませんけれども、検討中というのですから仕方がないでしょう。  防衛庁はナイキ、ホークの後継システムについて五十五年の防衛白書の中にも書いてございますが、調査研究ということを含めて指摘をしてございます。これは何基ぐらい導入する予定か、あるいは予算総額はどのぐらいになるか。選定のための調査団をアメリカに来年でも派遣をなさるというふうな話を薄々聞いているのですが、少しこの辺を明らかにしていただきたいと思います。
  360. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  現在、防衛庁では現有の地対空誘導弾ナイキ及び基本ホークについて性能、補給、整備性等の面で、これを今後とも長期にわたり維持することは困難であるとの理由から、後継システムの整備についての検討を進めております。このため、本年度内にも新しい地対空誘導弾システム整備についての諸外国考え等調査するため、所要の調査要員を派遣する予定であります。  お尋ねの数字の点につきましては、政府委員答弁させます。
  361. 塩田章

    ○塩田政府委員 将来、後継システムをどのくらい整備するかというお尋ねでございましたが、まだその機種でございますとか基数でございますとか、そこを想定する段階まで至っておりません。
  362. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が来ましたから、最後に総理に、これはお願いをしたいのですが、神奈川県下では逗子の池子の弾薬庫内に米軍の住宅を一千戸建設するというような方針、方針じゃなしにアメリカの意向が明らかになったり、厚木の基地へP3Cの配備が提案されたり、横須賀の第二空母母港化が問題になっています。これらの問題について、これは言うまでもないことですが地元住民、自治体の要望を十分尊重してほしいと思いますけれども、総理のこれに対する誠意のある御答弁を煩わしたいと思います。
  363. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 防衛関係の施設の整備の問題にいたしましても、その円滑な運営を図る上からいたしましても、やはり地域住民の理解と協力、また関係自治団体の御協力というものがなければできないわけでございますので、十分そういう点に配慮して進めてまいりたい、こう思ってます。
  364. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 三十秒ほどありますので、北米局長、いらっしゃいますか。——いま私、第二空母の母港化のことにちょっと触れましたが、この前も質問したことがございますけれども、私はその可能性は非常に少なくなっているというふうに判断をしたいと思うのですが、あなたの判断をお示しいただきたいと思います。
  365. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは岩垂委員もよく御承知のとおり、ことしの初めの国防教書の中で、アメリカとしては第二空母の母港化の問題を検討しているという話がございました。しかし、現在のところ、具体的な話について日本側に一切相談もございません。ですから、この段階でまだ私たちとして、そういう可能性があるとかないとかということは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、アメリカの部内で全く予備的な検討の段階というふうに承知しております。
  366. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 以上で終わります。  総理、どうもありがとうございました。
  367. 江藤隆美

    江藤委員長 鈴切康雄君。
  368. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 鈴木総理、文民統制、いわゆるシビリアンコントロールの重要さというものはいまさら申し上げるまでもないと思います。シビリアンコントロールの最高機関は国会であり、そして国会と政府のシビリアンコントロール、政府部内においても国防会議防衛庁防衛庁においても内局と外局のシビリアンコントロールという形で常に文民統制が優位な立場に立ってコントロールされております。それはとりもなおさず、かつての第二次大戦の経験から、二度と戦争への道を歩まない平和への誓いでもあり、歯どめでもあります。  そこで、国防会議の議長として、自衛隊の最高指揮官としての鈴木総理の文民統制についての基本姿勢及び心構えについて御所見を承りたいと思います。政府段階における文民統制は、制度上、運用上十分に機能をしているとの認識があるのか、改める点があればどういう点を改めなければならないのか、それについて鈴木総理の御所見を承ります。
  369. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 御指摘のとおり、文民統制はわが国防衛の最も重要な点でございます。最高指揮官であり国防会議の議長でありますものは内閣総理大臣でございますし、防衛庁長官も国会議員であり文民でございます。また重要な事項につきましては国防会議に諮りますと同時に、国会にできるだけ御報告をいたしまして、最高の文民統制としての国会の御意見、御意思というものを尊重してやっておるわけでございます。現在の国防会議並びに防衛庁長官中心とするシビリアンコントロール、こういう点は、おおむね文民統制が確保されておる、私はこのように考えております。  なお、常にこの文民統制がしっかりと運用の面におきましても生かされていくように、私どもは努力をいたしておるところでございます。
  370. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま総理大臣は、防衛庁長官は陸海空三自衛隊の武力集団の長として文民統制のかなめ的な地位にあるというふうに言われました。その長官選任に当たっての選考基準について、総理大臣はどのように御配慮されているでしょうか。またシビリアンコントロールの根幹をなす防衛庁長官の在任期間は大体平均一年未満であり、長官の補佐の政務次官もほぼ同じであるという統計が出ております。もちろん単に任期が長ければよいというものではないことは私はよく知っておりますが、このようなことでは、万一有事の際、名実ともに防衛庁長官が的確な判断とコントロールができるだろうかという危惧の念を抱かざるを得ません。防衛庁長官及び政務次官の任期と、シビリアンコントロール確保との関係についての総理の御見解をお伺いします。
  371. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 防衛庁長官がシビリアンコントロールの実質的なかなめである。したがいまして、防衛庁長官の人選については慎重の上にも慎重でなければならないという鈴切さんの御指摘は、まさにそのとおりでございます。鈴木内閣の組閣に当たりましても、そういう観点から人選を進めたような次第でございます。  なお、任期が短くて防衛庁長官が十分防衛庁を掌握できないのではないか、こういうような御指摘でございますが、これはいろいろ今日までの政治情勢、解散があったり、いろいろなことがございまして、どうしても内閣自体の任期も、せいぜい二年ぐらいというような状況下でございまして、防衛庁長官だけが何年もというわけにまいらなかったことは御承知のとおりでございます。しかし、そういう点は今後防衛庁長官の人選に十分配慮いたしまして、わが国の自衛隊を、シビリアンコントロールの中心としての防衛庁長官の任務をりっぱに果たすようにしてまいりたい、こう考えます。
  372. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は、このたび総合安全保障会議をつくる構想を明らかにされました。政府部内においては大変に意義があるというふうにおっしゃっているところもありますが、防衛庁決定をコントロールする国防会議をそのままにしての構想のようでありますけれども、それであるとするならば、総理の提唱する総合安全保障会議の存在は屋上屋になってしまうのではないかという国民的な批判もございます。国防会議は総理の諮問機関として法律事項になっておりますけれども、国防会議の審議決定を総合安全保障会議ではどのように取り扱われるお考えなのか。国防会議決定事項は直ちに閣議了解あるいは閣議決定という形になると、総理の言う非軍事的な面と軍事的な面をどのように総合的に調和をとって生かされようとされるのか、その点の絡みをお伺いをしたいと思います。  また、総合安全保障会議の持ち方についてでありますけれども、会議は定期的に行おうとしておられるのか、あるいは総理が総合調整が必要だと判断されたときに行おうとしておるのか、その点、総理としてはどういうお考えでおられるか、あわせて設置の時期、構成メンバーについてもお伺いいたします。
  373. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 今日、国際情勢、また国際経済、資源エネルギーあるいは食糧問題、いろいろの情勢が非常に厳しく相なっております。したがって、今日わが国の平和と安全を確保いたしますためには、狭い意味の直接的な防衛という側面だけでは国の安全を確保することができない。どうしても食糧の問題でありますとか、あるいはエネルギーの問題でありますとか、あるいは経済協力、外交の面の努力、そういうものを総合して、そして日本の平和と安全が確保できるようにしなければいけない。もとより各省庁におきまして政策の展開を図っておるのでありますけれども、それを総合的な安全保障政策という視点に立って、整合性を持ってその政策を進めていくということがわが国の安全と平和を確保する上から必要である、このように考えております。  なお、直接の防衛の問題、防衛計画の問題でありますとか、あるいは急迫不正の事態に対処する問題でありますとか、そういう問題につきましては国防会議がこれに当たっていかなければならないと考えております。私は、国防会議と総合安全保障の閣僚会議、両方の機能が両々相まってこの総合的安全保障政策を確保していく、こういうことにいたしたい、こう考えておるわけでございます。  それから、総合安全保障の閣僚会議のメンバーや開催、運用の面につきましては、ただいませっかく検討をいたしておりまして、近く結論を得る運びに相なっております。
  374. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる軍事的な面の国防会議決定というもの、国防会議決定し、閣議決定するという軍事的な面と非軍事的な面、これを総合調整するわけですけれども、国防会議においては、総理が国防会議の議長なのです。そこで決定されたものを非軍事的なものとどういうふうに調合するかということについては、いま御答弁がなかったわけでありますけれども、その点についてお伺いいたしますし、また総理自体はこれをどういうふうに運用するのか。たとえば定期的にやろうとか、あるいはいや私が必要なときに招集するのだとか、そのくらいの御見解は伺ってもよろしいでしょう。
  375. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 国防会議の議題、国防会議決定いたしましたものを安全保障閣僚会議にまたかける、そういうようなことはいたしません。先ほど申し上げましたように、直接的な防衛の問題については国防会議がつかさどる、周辺の問題は閣僚会議で取り扱う、そして、それを閣議におきまして両々相まって日本の安全と平和を確保する、こういうことでやってまいりたい。  なお、閣僚会議につきましては、必要に応じて随時やってまいりたいと考えております。
  376. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は、五六中業を何とか国防会議に諮りたいと言っておられます。それは国民の批判もあり、防衛庁がひとり歩きするということで、総理はそれについて国防会議に諮りたい、そのように言っております。しかし、どういう形でかけるかという構想については必ずしも明らかにしておられません。  そこで、五六中業は、論議の過程から判明したことでありますけれども、防衛庁考え方でいくと、五十八年と五十九年、六十年、六十一年、六十二年の五カ年間の中期業務の見積もりということになりますけれども、その間、三年ごとに見直しをし、その時点において中業見積もりを書き直すと防衛庁は言っております。  総理が国防会議にかける際、防衛庁考えを踏まえて行うとすると、幾つかの問題が出てまいります。そこでお聞きしたいことは、一つは、五年間の五六中業の見積もりを国防会議の議を経て政府の五年間の防衛力整備計画にしてしまうのか。二番目には、国防会議にかけるとしても、五年間の中業見積もりとしての防衛庁考え方をそのまま生かし、中業見積もりを書き直す三年間だけを国防会議決定とし、その三年間の整備計画は単年ごとのローリングシステムをとりながら、その間のフリーハンドを残すことになるのか。三番目には、五六中業そのものを国防会議の審議に供するという作業だけにとどめ、国防会議決定ということをせずに、後は防衛庁考え方に任せるということなのか、その点を明らかにしてください。
  377. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど防衛庁長官から申し上げましたように、五十六年中業の問題を国防会議の議に付して、どういう形でこれを扱うかという問題は、目下防衛庁並びに政府部内で検討中でございます。私は、「防衛計画大綱」の枠内のものではございますけれども、この中業というのは、やはり防衛力の整備上重要な問題でございますので、これを国防会議の議に付すべきものである、これがシビリアンコントロールの面からいっても大事なことだ、このように考えております。どういう内容のものにしてこれを国防会議で扱うかというのは、重ねて申し上げますが、目下防衛庁並びに政府部内で検討中でございます。
  378. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理の言っていることは、五六中業を何とか国防会議にかけたいという思いつきのような、中身がないという批判が実はあります。少なくともかけるという以上、防衛庁の内部資料ではなくして、政府段階として取り上げようとされているのか、国防会議で諮ることに意義があるのであって、必ずしも国防会議決定としないでもよいというお考えなのか、その点はいかがでしょうか。
  379. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 これは国防会議の議に付する以上は、従来の防衛庁限りのものとは違います。権威のあるものに相なるわけでございます。
  380. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのお考え方をお聞きすれば、さらに先に行きます。  中期業務見積もりは防衛庁の内部資料であって、政府防衛力整備計画として国防会議閣議決定されたものではありません。その内部資料によって、防衛庁は五十六年度の業務計画案とそれに伴う概算要求案を八月につくられました。もとより業務計画と予算案をつくられるのは防衛庁長官の専権事項であるということを十分私は知っております。しかし、今回の業務計画案の主要装備は、新しい機種を取り入れているばかりか、アメリカの要請を受けて、一年間の前倒しになっているということも防衛庁との論議で明らかになりました。とすると、C130H、短SAMの新機種選定等、装備の新型式のものについての種類及び数量等を中心とした主要事項については当然のことであり、審議の参考として、業務計画案についても国防会議に諮り、相談するなり説明するのは、シビリアンコントロールの本来のあり方であると私は思います。いまだにその手続をされておられませんし、国防会議に諮られたという形跡もございません。総理はシビリアンコントロールを重視するといったその姿勢の中にあって、その問題についてはどのようにお考えでありましょうか。
  381. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  各年度の防衛力の整備内容のうち、主要装備品の装備等主要な事項につきましては、昭和五十一年の閣議及び国防会議決定により国防会議に諮ることとされております。そこで、昭和五十六年度の防衛力整備の主要な事項についても、この決定に基づきまして、できるだけ早い機会に国防会議に諮りたいと考えており、その場合には、審議の参考として業務計画案についても必要に応じ説明してまいりたいと考えております。
  382. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理、いまお聞きになったとおり、主要事項につきまして国防会議にやはり御相談を申し上げるなり諮るということ、これは重要なシビリアンコントロールの問題だと私は思うのです。確かに解散とかあるいはまた大変に政治状況が変化したということはあるにしても、少なくとも八月に、こういう業務計画とかあるいはC130あるいは短SAMとか新しい機種ができた以上は、——昭和四十七年に、あのときに防衛庁の予算の先取りがありまして、さらにシビリアンコントロールを強化するということで内容が充実をされました。そういう意味において早くおかけになるということが必要であると私は思うのですが、総理は、早くおかけになるとするならばいつおかけになられましょうか。——総理。これは総理の問題でしょう、国防会議ですから。
  383. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 業務計画のお話のようでございますが、業務計画につきましてもできるだけ早くこれをかけるようにいたしたい、こう思っております。
  384. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは当然のことです。昨年度やはり八月か九月におかけになりました。それは、F15とかP3Cとか、そういう主要な機種を選定するということで、こういうものを新しく主要装備としてかけようということでやられたわけであります。当然そういう考え方が先行していかないと——実は予算委員会で大蔵大臣が、短SAMの欠陥を言われたときに、私はそんなのを実は初めて知りました、もしそういう欠陥があるならば、何とか見直しも考えますというような御発言をされましたが、私はやはりそういうことを諮って相談をするということは好ましいと思うわけであります。シビリアンコントロールをきかされるということであるならば、今年度まだ一度も国防会議に諮ったことはございません。ですから、一刻も早く諮られる方がよいと思います。  それから、産軍複合体とかあるいは産軍政の結合体とかいう形で、その内部からミリタリーパワーが文民政府をむしばみ、切り崩すという現象は過去諸外国にも見受けられております。わが国においても、将来そういうような懸念がないと言えないと私は思います。このところ日本の国においても、防衛産業の活発化に伴って、経済界の中にも武器輸出の規制を緩めてもらいたいという意向が強くなったと伝えられております。政府の方針は、武器輸出禁止三原則を初め武器輸出については厳しい態度で今日まで臨んでまいりました。今後も政府の武器輸出禁止に対する厳しい姿勢には変わりがないか、総理の御所見をお伺いしたい。
  385. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、武器の輸出につきましては三原則というのがございます。さらに五十一年にそれを強化いたしまして、政府が統一見解としての方針を示しております。私どもは、今後におきましてもこの三原則と方針を堅持してまいる、こういうことで進んでまいります。
  386. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁にはいわゆるマル秘文書が少し多過ぎるんじゃないかという批判があります。国会は国権の最高機関としてシビリアンコントロールの頂点にあります。その国会における審議に最大限防衛庁の資料を供さなくては、国民の正しい判断はつきかねることもまた当然であります。総理は、シビリアンコントロールの健全な機能の発展と国民の知る権利とについてどうお考えであるか。また政府外交文書の中で三十年を経過した機密文書を公開することにしております。国民が知る権利として資料公開を待ち望む声は非常に高いわけでありますが、しかし、政府の資料公開は不十分で、日米間においても政府の都合のよいものばかりの公開ではないかとの批判がありますし、資料公開の価値が非常に問われてきております。政府はこれらの資料の公開について国民の批判にどうおこたえになるつもりでしょうか。公開する資料、文書の拡大は、外交文書のみならず各省のものまでも含めるべきではないかという声もありますが、総理はどのようにこの問題に対処しようとされておりましょうか。  また、公文書の情報公開は、国民の知る権利として重要な問題と思うが、情報公開法の制定についての総理のお考え方をお聞きしたい。
  387. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 資料の公開につきましては、できるだけ国民の皆さんの知る権利を尊重いたしまして、できるだけのことをやってまいりたい、このように考えておりますが、防衛関係の問題につきましては、秘密に関するもの、国益上その方を重視しなければならない部面もあるわけでございます。資料の公開と守秘義務、その調和をどうして図るか。やはり国益の観点から機密を保持すべきだという点もございます。そういう点を十分彼此勘案をいたしまして適正に処理しなければいけない、このように考えておるわけでございます。  情報公開法の問題につきましては、非常にむずかしい問題がございます。守秘義務の問題、プライバシーの保護の問題、いろいろございますが、諸外国の例等も十分検討、研究をいたしまして、いませっかく政府部内で研究を進めておる段階でございます。
  388. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後二問だけお聞きしてやめます。  一つは、政府は昭和五十一年十月二十九日に昭和五十二年度以降に係る「防衛計画大綱」をお決めになりました。その裏づけとなった基盤的防衛構想の国際情勢の認識と現在の認識ではかなりの違いがあるということで、防衛大綱の見直しという論議がなされましたけれども、最終的には、防衛庁長官は見直さないということであったと私は思いますが、総理の認識はどうでありましょうか。防衛大綱は国防会議閣議決定によって決められたものであり、防衛にかかわる基本的な計画の大綱である以上、たとえ一部の見直しであっても見直すということになれば、国防会議あるいは閣議決定の手続が必要であると思うが、総理の見解をお伺いいたします。これが第一点であります。  第二点は、防衛関係費の概算要求の別枠問題と関連して、防衛力の歯どめがだんだんとなくなっていくのではないかと懸念されておりますが、防衛関係費の対GNP一%以内という枠については、今後とも維持していくつもりかどうか、総理のまず所見をお伺いしたい。  「防衛計画大綱」というのは五十一年の十月二十九日、そして当面の防衛力整備については直接関係がないということでありますけれども、確かに閣議決定と国防会議とでは別々に決定されております。GNP一%という防衛力整備の実施は、現在「防衛計画大綱」を満たすための防衛力整備を進めている段階である以上、無関係というわけにはいかないと私は思います。防衛庁は五三中業の五十九年度にはGNP一%に近づけたいというふうに言っております。六十年以降はGNP一%をお外しになるというお考えでしょうか、その点についてお伺いします。
  389. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 防衛力の整備の問題につきまして、基盤的防衛力を整備するという方針で今日までやってきておるわけでございます。もとよりこの基盤的防衛力の整備と申しましても、各方面の内外の情勢ということを全然考慮に入れないというものではないわけでございまして、しかし、基本的防衛力の整備という観点に立ちまして、現在の「防衛計画大綱」というものが定められておるわけでございます。今後私どもはこの「防衛計画大綱」を着実に進めてまいる考えでございます。  それから、GNPの一%以内ということを堅持するかどうか。この問題につきましては、結論から申し上げますが、私どもはGNPの一%以内で防衛費というものを考えていきたい。本来「防衛計画大綱」とGNP一%以内ということとは、直接関係のあるものではございませんけれども、私どもは、現在の財政の事情その他を勘案いたしまして、防衛予算というのは一%の範囲内で進めていきたい、こう考えております。
  390. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の質問を終わります。
  391. 江藤隆美

    江藤委員長 神田厚君。
  392. 神田厚

    ○神田委員 総理にお尋ねをいたします。  防衛三法の問題につきましては、従来わが党は、防衛庁関連法案につきましては反対の立場をとってまいりました。  その理由は、第一には、日本の置かれております国際情勢から、そういう緊張問題あるいは脅威の問題につきまして、わが党といたしましてそれを認めていくという形ではないということであり、第二番目には、シビリアンコントロール体制が非常に未成熟であったという問題がございます。さらに第三番目には、日本の平和と安全保障問題に対します国民の合意というものが形成をされていない。さらには、日本防衛につきまして  一番責任を持たなければならない政府・自民党が、この防衛問題につきまして、欠陥是正その他で非常に熱意を欠いていた。こういうような状況の中で、われわれは従来から反対をしてきたわけであります。ところが今回いろいろと情勢その他を検討しまして、国際情勢の問題、シビリアンコントロールの問題、さらには国民的な合意の問題、こういうものを含めまして、前向きにこの問題につきまして対応していかなければならない、こういうふうに考えております。  そこで、われわれは、この防衛問題につきまして、防衛関連法案につきましては是々非々の立場を今後ともとり続けていく、こういうことを前提といたしまして、御質問をしていきたいと思います。  まず第一に、平和と安全の確保につきましては、わが党はほかのどの政党に比べましても、熱心に平和と安全の確保の問題について努力をしてまいりました。さきのわが党の佐々木委員長と鈴木総理との党首会談におきまして、わが党が平和戦略というものを一番最初にこれを求めていったものは、日本にとりましていかに平和と安全の確保が大切であるかということを示したものであります。  まず総理に、この党首会談の問題につきまして御質問をいたしたいと思いますが、鈴木総理といたしましては、この党首会談の中でわれわれが示しました三つの前提、平和戦略、さらには憲法の枠の中でのいわゆる自衛力の整備、そして日本の厳しい財政事情を考慮した上での自衛力の整備、こういう三つの基本的な考え方につきましてどういうふうにお考えでございましょうか。
  393. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ここに党首会談におきまする民社党さんの御提案がございます。ただいま神田さんからお話がございましたように、第一に、「最大の安全保障は世界平和であることにかんがみ、平和戦略の推進を基本とすること。」このことをうたっております。先ほども私、御答弁を申し上げましたが、わが国の平和と安全を確保いたしますためには、単に防衛という側面だけでは十分ではない。あるいは資源の問題、エネルギーの問題、あるいは食糧の問題、そうしてそういう問題を解決をいたしますためには、何といっても平和外交の強力な展開、こういうことが必要であるわけでございます。私は、そういう意味合いから、今後それらの問題を総合的な安全保障の視点に立ちまして、整合性を持った政策の展開を図っていこう、こういう考えでございまして、この点、佐々木委員長とは基本的に認識の一致を見たわけでございます。  さらに第二は、「現行憲法は自衛力の整備を否定するものではない。したがって、現行憲法の枠内でこれを進めること。」これは私ども鈴木内閣は現行憲法をあくまで堅持していくという立場からいたしましても、わが国の自衛力の整備というものは、現行憲法の枠内でこれを進めるということは言うをまたないところでございます。  第三は、「財政事情を配慮すること。」こうございますが、防衛の問題、わが国の安全と平和を考える、そのための防衛努力をいたします場合におきましても、国民の理解と協力がなければいけない。国民的コンセンサスが必要である。そういう観点から、財政事情というものは、やはり十分考慮していかなければいけない、こういう点で、基本的な立場につきましては佐々木委員長と一致したわけでございます。
  394. 神田厚

    ○神田委員 この鈴木総理と佐々木委員長との党首会談につきましては、非常に多くの方面から反響がございます。特に中国は、新華社電の報道を伝えまして、この党首会談が防衛力問題について意見の一致を見たということにつきまして、日本の戦後政治史における画期的な出来事だ、こういう評価をしているというふうに伝えられております。この辺につきましては、総理はどういうふうにお考えでございますか。
  395. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国の基本的な問題につきまして、民社党の佐々木委員長と意見の一致を見たということは、わが国の今後の発展のためにも、安定のためにも、非常に喜ばしいことであった、このように私も評価もし、喜んでおるところでございます。どうかこの輪を各党に広げていきたいものだ、このように期待をいたしております。
  396. 神田厚

    ○神田委員 総理に御質問申し上げましたのは、中国がこういうふうな問題につきまして非常に評価をしている、各国におきましてそういう反響があるということについての感想を求めたわけでございますので、御感想がございましたらどうぞひとつ。
  397. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 各方面で評価していただいておりますことは感謝にたえません。
  398. 神田厚

    ○神田委員 それでは具体的に、内容につきまして御質問を申し上げてまいります。  先ほどもお話ししましたように、わが党は平和をとにかく確保しなければならない、こういうことで、平和戦略をどういうふうに進めていったらいいのか、つまり総理が平和戦略というのは大切だと言うのでありますけれども、それでは具体的に平和戦略というものをどんなふうに日本として進めていかなければならないか、その点を簡単で結構でございますからお答えいただきたいと思います。
  399. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、わが国の平和と安全を確保してまいりますためには、質の高い、自分の国は自分で守るんだという適正な自衛力というものを持つ必要がある。あわせて日米安全保障体制を今後とも堅持をしてまいりまして、その円滑な運用によりまして、外部からの侵略に対してこれを十分抑止をする、こういう体制をつくらなければならない。と同時に、私はもっと広い視野に立ちまして、自由主義、民主主義、自由経済体制、これを持っておりますところの共通の価値観を持っておるアメリカあるいは西欧諸国等自由主義陣営の連帯と協調を強めていく、これを基盤にして世界の平和と安定に寄与しなければいけない、このように考えます。  また、さらに日本は軍事大国にはならないのでありますが、経済大国として発展途上国等の経済開発、経済振興、繁栄につきまして、日本責任ある国際社会の一員としての役割りを果たしていきたい、こういうことが世界の平和を確保する道であり、日本の安全と平和を守るゆえんである。このような平和戦略というものを、私は、大事に考えていかなければいけない、こう思っております。
  400. 神田厚

    ○神田委員 特にわれわれが問題にしておりますのは、米ソのデタントの修復をどういうふうに日本として働きかけをして努力をしていくのか。さらに軍縮問題、特に核軍縮の推進についてはどういうふうな努力をしていくのか。さらには南北問題の解決、特に政府開発援助の充実等についてはどういうふうな形でこれをしていくおつもりなのか、こういう点をやはり詰めていかなければならないと思っておりますが、その点につきましてはどういうふうにお考えでございますか。
  401. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ちょっと聞き漏らした点がございますれば、後でまたお尋ねをいただきたいと思います。  米ソの関係、デタントの問題につきましては、私はこれが完全に崩壊をしたというぐあいには見ておりません。確かにアフガンの問題等によりまして米ソのデタントというのが冷却、後退をしたというような印象を与えてはおりますけれども、しかし、私は幕が閉ざされたものとは見ていないわけでございます。中距離ミサイルの交渉なども行われておるということでございますし、またSALTIIの問題につきましても、これを再開をしたいという考え方米ソの間にも依然として存在をしておる、こういうぐあいに私は見ておるわけでございまして、あくまで核戦争、こういうものは避けたいという共通の考え方がそこにあるわけでございますから、デタントというのは、私は今後必ず明るい方向に向くのではないかという期待を寄せておるわけでございます。  それから、さらに発展途上国等に対するところの経済協力、南北問題、こういう問題は、世界の平和と安定を図る上から非常に大事な問題でございます。南北問題に対するところの先進国首脳会議、南北サミットというようなものの開催の問題も提起されてきておるようでございます。またわが国としては、発展途上国に対するところの経済協力、援助ということにつきましては、日本の置かれておる立場、国際的な責任からいたしまして、今後積極的にこれに取り組んでまいりたい、こう思っております。
  402. 神田厚

    ○神田委員 党首会談に伴って平和戦略を中心として御質問申し上げましたが、これは党首会談をもちろん踏まえましてわれわれいろいろ検討しました結果、現在のこの防衛三法に対するわが党の態度を決めるに当たって、四つほどの具体的な問題につきましてこれを確認をいたしました。  一つは、米ソのデタントの後退、極東ソ連軍増強北方領土の軍事基地化、こういうふうな状況で、わが国を取り巻く国際情勢が大きく変化をして、これに対応するためには防衛力の整備を着実に進めることが必要である、こういうことでありました。  二つ目には、わが党が多年にわたって設置を主張してきた国会の安保特別委員会が機能し始めているとともに、さきの党首会談において中期業務見積もりが国防会議に付議されることが確認されるなど、シビリアンコントロール体制が前進をした。  三つ目には、わが党はこれまで平和と安全保障問題に対する国民的合意づくりの重要性を指摘し、そのために全力を尽くしてきたが、国際情勢の厳しさと相まって各種世論調査で明らかなとおり、いまや平和確保のための防衛力整備の必要性について国民的コンセンサスが生まれつつある。  四つ目には、さきの党首会談を通じて、防衛力整備については、平和戦略の推進、憲法の枠、財政事情の配慮、こういう三条件に立つべきだというわが党の方針につきまして政府・自民党が基本的に是認をするとともに、今後自衛隊の欠陥是正、シビリアンコントロール等の一層の前進についてわれわれの意向が反映される状況が生まれつつある。  こういう判断に立ちまして、いまこの防衛関連三法案についての審議を進めているわけであります。  しかしながら、われわれはなおこの問題につきましていろいろと政府の方に御意見を申し上げなければならないのは、先ほど話をしました防衛力の整備というのが、平和戦略の推進と現行憲法の枠とそして財政事情への配慮、これをまず基本的原則としてやっていただくということ、これにつきまして先ほど総理が、この問題につきまして基本的にそういう形でいくというふうなお話をしていただきました。  第二番目の問題としまして御質問申し上げますのは、安全保障特別委員会を機能的に運営をさせなければならない。そして形骸化している国防会議を改組、強化をしまして、総合的な立場から安全保障全般を協議する最高機関とし、いわゆるシビリアンコントロールのさらの確立を図らなければならない、こういうふうに考えておりますけれども、その点はいかがでございますか。
  403. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 神田さんは四点にわたりまして御意見の開陳がございました。その中で、米ソの関係あるいは極東に対するソ連軍事力の増強等々からいって「防衛計画大綱」を見直しをすべきではないか、こういう御提案がございましたが、この点につきましては、現在の「防衛計画大綱」はまだ未達成でございます。私どもは、この「防衛計画大綱」というものをできるだけ早く達成したい、着実に進めてまいりたいという段階でございますので、いまの時点で「防衛計画大綱」を見直しすることは考えていないわけでございます。  その他の諸点につきましては、神田さんの御主張、これは私どももそのように考えておるところでございます。
  404. 神田厚

    ○神田委員 私は、安全保障特別委員会の機能的な運営、これを常任委員会にするとか、いろいろ考えていかなければならない問題がたくさんあると思っておるのですが、時間の関係で御答弁がないようでありますので、次に進みます。  「防衛計画大綱」の問題がはからずも総理の口から出ましたが、この委員会の質疑を通しましても、基盤的防衛力構想等の問題を含めましてもどうも非常にあいまいになってきております。したがいまして、この問題につきましては、これから先もいろいろ御質問させていただきたいと思いますけれども、私はやはり「防衛計画大綱」は見直す時期に来ているという判断を持っております。防衛庁長官は「防衛計画大綱」がいわゆる潜在的脅威というものを念頭に置いてつくられたと、この前の委員会で私の質問に対して答えたのでありますけれども、それでは具体的に現在の防衛白書のどこに「防衛計画大綱」が潜在的脅威を念頭にしてつくられたということの明確な記述があるかというと、これはどこにもないわけですね。したがいまして、この「防衛計画大綱」については、基盤的防衛力構想に対する考え方も変わっているし、見直ししていかなければならないと考えておりますが、その点はいかがでございますか。
  405. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  「防衛計画大綱」は、策定されましたのが五十一年の秋でございます。その翌年の五十二年度の防衛白書を見ますと、脅威のないところには防衛はないということで、脅威の点についてかなりページ数も当てて解説をいたしておるわけでございまして、「防衛計画大綱」は必ずしも脅威を前提にしておらないということではないものと私どもは理解いたしておるわけでございます。そして最近における国際情勢の変化、いろいろ御指摘がございましたが、総理の御答弁でもありましたように、米ソ超大国の間におけるいわゆるデタントというものが崩れ去ったわけではない、差し迫った脅威が目の前にあるというわけではございません。そういった意味で、私どもは大綱を直ちに見直すことはせず、まだ大綱の線が十分実現しておりませんので、大綱の線を実現すべく充実の方向に向かって努力するということを申し上げているわけでございます。
  406. 神田厚

    ○神田委員 非常に矛盾した言い方が方々に出ておりまして、さらに潜在的脅威と顕在的脅威という問題につきましても、この前委員会質問しましたが、これも明確でない。そういうことから、私は、この問題はきょうは時間もありませんから、また後ほど質問させていただきますが、どうしても政府の言っていることに説得力がないのですね。現実から見ると、常識的には全然納得できないということを申し伝えておきたいと思います。  それで、総理にちょっとお尋ねしたいのでありますが、私は、大平内閣のときに予算委員会において、北方領土問題について当時の官房長官でありました伊東現外務大臣に対して、日本は国連の総会において外務大臣が北方領土の返還について強力に発言したことがない、これは日本として立場が非常にまずいじゃないかということを申し上げました。伊東外務大臣には今度国連におきましてそういう発言をしていただきました。さらに北方領土の視察につきましても、外務大臣が北方領土の視察をしなければいけない、とりわけ歴代の総理大臣が一度もこの北方領土についての視察をしてない、こういうことではこれから北方領土返還の日をつくったりなんかしようというときに、国民的な運動としてこれを盛り上げていくためには、どうかひとつ一回、鈴木総理は特に北方問題について御熱心であるというふうに聞いておりますから、北方領土の視察に総理みずからが行っていただけるようなお考えがおありでしょうか。私は、特に行っていただきたい、こういうふうに思っておるのですが、いかがでしょうか。
  407. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、昭和五十二年にソ連との間で二百海里問題で長期にわたる苦渋に満ちた交渉をやったことがございます。これは背後に北方四島の領土問題が絡んでおったからでございます。私はそのために交渉を中断して帰りまして、わが国も二百海里法というものを国会の御協力をいただいて二週間の間につくりました。それは当然のことながらわが国固有の領土である北方四島を抱え込んだ二百海里法であったわけでございます。したがって、ソ連の言う二百海里とわが国の二百海里法というのは、あの北方四島の沖合いではダブっておる。戦後未解決の問題というのが、一九七二年に当時の田中総理、大平外務大臣とブレジネフ書記長との間に激論が闘わされまして、最後に共同コミュニケの中に戦後未解決の問題ということで合意をした経緯がございます。そういうことから、この日ソ漁業協定の場合でもダブらせることによって、戦後未解決の問題、領土問題が解決すれば、この漁業二百海里問題もその線に沿うて改定をされる、こういうことでやったわけでございます。  そのように私は、北方四島の問題につきましては、皆さんと同じような熱意を持って今日まで努力をしてまいったものでございます。先ほど伊東外務大臣が国連の総会でこれを強調し、また帰ってまいりましてから北方四島の視察もいたしました。総務長官もやっております。私としてはこのことを大事に考えておりますが、その時期等につきましては慎重に私、これから考えてまいりたいと考えております。
  408. 神田厚

    ○神田委員 大平内閣官房長官でありました伊東官房長官に、私は、大平総理に対して、北方視察をぜひやってくれという御提言をしておきました。それを前向きに検討すると言われたまま、ああいう劇的な形で大平総理は亡くなられました。いまの御答弁を聞いておりますと、鈴木総理も北方の視察についてはこれを前向きに考える、時期等については検討さしてくれ、こういうことだというふうに考えてよろしゅうございますか。
  409. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ただいまお答えをしたとおり、時期等について慎重に考えさしていただきます。
  410. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  411. 江藤隆美

    江藤委員長 上田卓三君。
  412. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ソ連潜在的脅威だ、こういう防衛当局の見解でございますが、けさの本委員会宮澤官房長官はこのように述べておるわけであります。ソ連軍事力専門家が注目するのは当然だが、政府全体としてあの国が、この国が潜在的脅威と言うときに、相手国が日本が敵視していると誤解する可能性があり、そのような誤解は与えないようにするのが望ましい、このように発言をされておるわけでございまして、私は、宮澤長官が対ソ脅威論のそういう意味では野方図な横行を厳しく退けておる、このように受けとめたわけでございます。さらに宮澤長官は、仮に脅威があるとしても、わが国としては、その脅威を顕在化せしめない外交努力が必要なのだ、このようにも力強く説明されておるわけでございまして、この点について明確な鈴木総理大臣見解をただしたい、このように思います。
  413. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 宮澤官房長官が申し上げたとおり、仮に客観的に見て潜在的脅威とみなされるような状況がありましても、これを顕在化させないような外交努力ということが非常に大事なことだ、こう私は考えております。
  414. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 前段の問題で、いわゆる軍事力に対するそういう専門家が云々、こういうくだりは、恐らく防衛当局が仮にソ連わが国にとって潜在的脅威だということを言ったとしても、政府全体としてはそういう形で表現すべきでない、こういうように言っているのじゃなかろうか。私は、宮澤官房長官発言に見られる政府全体、内閣全体の考え方というものと、防衛当局との間にずれがあるのじゃないか、このように考えておるわけでございますので、その点についてさらにお答えいただきたいと思います。
  415. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、防衛庁の言っておることと宮澤官房長官が言っておりますこととそう大きな食い違いはない、このように思っておるわけでございます。専門家は、客観的な状況、客観的な見方から判断して潜在的脅威がそこに存在するのではないか。しかし、そういうものがあっても、仮に客観的にそういう印象を受けても、これを敵視をする、ソ連わが国が敵視をするということとは全然違います。私は、日本仮想敵国も持たないし、ソ連を敵視するなどということは政府全体としてあり得ない、このように考えております。
  416. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それはそうじゃないのですよ。あなたが、総理がおられなかったのでそうおっしゃっているのかもしれませんから、後で議事録をひもといていただいたら明らかになると思いますが、こう言っているのですよ。政府全体としてあの国が、この国が潜在的脅威と言うときに、相手国が日本が敵視していると誤解する可能性があり、そのような誤解は与えないようにするのが望ましい、こういうようにはっきりとそういう意味では明言されているわけですね。もし仮に脅威があるとしても、わが国国益からこうだというふうに最後のくだりがあるわけですから、防衛庁考え方と大きな違いがあるし、いま鈴木総理がおっしゃった考え方とも大きな違いがある、このように思っておるわけでありまして、ここで官房長官がおられるわけでもないので、さらに突っ込んだ形で申し上げませんが、そこに大きな矛盾があるということを指摘申し上げたいし、鈴木総理の考え方に大きな間違いがある、またそういうソ連潜在的脅威である、事実潜在的脅威であるというような総理の認識は、大きな過ちを犯しているものだというように断定せざるを得ない、こういうふうに思いますし、いままでの委員会討議の中でのそういう総理の発言とも若干踏み込んだ形で、私は悪くなっておるのじゃないかと言わざるを得ない、このように思うわけであります。  さらに御質問申し上げますが、一九七七年度のいわゆる防衛白書に、新たな防衛態勢への移行の五項目というものが例示があるわけで、たとえばこういう点についてと、イ、ロ、ハ、ニという形で項目が挙げられておるわけでありますが、さらに塩田防衛局長一つをつけ加えて、わが国周辺の軍事情勢の変化というものもあるのだ、こういう形で、五項目だけではなしにもう一つあるのだ、あるいはさらにつけ加えるようなそういう考え方もあるやに聞こえる発言をされておるわけでありまして、本委員会でもそういうような発言をされているところでありますが、私は、こういう発言は、ソ連潜在的脅威というものをつくり出して、でっち上げてというのですか、そういうものをことさら言うことによって、基盤的防衛力構想というものを、いまはお認めになるような発言をされておるわけでありますが、将来そういうものを否定する伏線として、そういうわが国の周辺の軍事情勢の変化という場合においては、基盤的防衛力構想を見直さなければならないという形でお考えになっておるのじゃなかろうか、こういうように考えるわけでございます。  そこで、具体的に一九七七年から今日までの間においてソ連軍事力、とりわけ極東での軍事力強化というものを、特にソ連の極東艦隊の強化というようなこともしばしば言われておるわけでありますが、その間においても日本の自衛隊というか国防力も強化されていることも事実でありますし、また同時に、アメリカにおいてもそれに見合った形の軍事力強化がなされておる、あるいは第七艦隊、あるいはその背後にあるところの第三艦隊などにおいてもやはりそれ相応の対応をされておるので、ソ連だけを見て相対的にアメリカ軍事力が低下しつつある、絶対的にはいまなお優位にあるがと、こういうような形に言われておるわけでありますが、そういう点について軍事的バランスは、少なくとも日本を取り巻くところの対ソ連アメリカとの関係において見ても、そういうような変化はないとわれわれは考えざるを得ないのですが、その点についてどうですか。
  417. 大村襄治

    大村国務大臣 ここ数年間の極東における米ソ軍事力の変化についてお尋ねがございましたので、私からお答えさせていただきます。  現在極東ソ連軍は、昭和五十二年白書で注目を要すると言っておりました軍事力増強は引き続き行われており、またベトナムの基地の常時使用等活発な活動が見られます。一方同様に注目されておりました在韓米地上軍の撤退は一九八一年まで凍結され、また極東米軍は近代化が図られているものの、当時二個空母群を西太平洋に常時プレゼンスさせていた第七艦隊は、現在では一隻となる等の状況になっております。このようなことからいたしまして、西太平洋における米ソの軍事バランスが大幅に崩れたとは言えませんが、わが国周辺の情勢は厳しさを増しているものと私たちは見ているのでございます。  なお、防衛局長が「防衛計画大綱」に言う新たな防衛力の態勢に移行するための条件として従来挙げられてきた五つの例示に加えて、わが国周辺の軍事情勢の変化を単にもう一つの例示としてつけ加えたものであると承知いたしております。
  418. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は納得できません。総理、はっきり申し上げて、確かに韓国での在韓米軍の撤退云々という発言もありました。あるいはソ連の極東における軍事力強化ということもありましょう。しかしながら、それに見合ったアメリカ軍事力強化というものもあるわけでありますから、そういう点で、客観的に見た場合に、そういう軍事バランスが大きく崩れたというように判断することは大きな間違いではないか。隣の韓国においても軍事力が逆に強化しているという面も、朝鮮民主主義人民共和国との関係があるにしても、私は決してそういうように片方だけ見るべきではない、このように考えるわけでありまして、そういう考え方に対しては全面的に否定であります。  そこで、総理は常に専守防衛に徹するとか、あるいは軍事大国にならない、こういうことをしばしば表明されておるわけであります。確認になるようでございますが、いわゆるわが国仮想敵国を持たない、あるいは全方位外交を貫く、こういうこと、あるいはその基礎になるところの基盤的防衛力構想というものは厳に守っていくという考え方であるのか、その点について明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  419. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど私、申し上げておりますように、わが国は軍事大国にはならない、あくまで専守防衛に徹する、またできるだけ各国との間に友好協力関係を発展させていきたい、このように繰り返し申し上げておるわけでございます。上田さんが、それは本当か、違うのではないかというような意味を込めての御質問でありといたしますならば、私は申し上げるのでありますけれども、ソ連日本にとりまして有力な隣国でございます。私は、わが国の平和と安全、ひいてはアジアの平和を維持いたしますためにも、日ソの友好協力関係が今後強化される、進んでいくということが不可欠の問題であるとさえ考えておるわけでございます。ただ、どうやってそのような状態をつくり出すかということは、両国の努力にまたなければならないわけでございます。私どもは、日本としてそういう気持ちで努力をいたしますが、相手のソ連側におきましてもそういう状況、条件が生まれるように御努力を願いたいものだ、このようなことを先ほど来申し上げておるところでございます。
  420. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 十月の初め、アメリカ政府は国務省と国防総省の合意を経て日本に対する軍事費増額要求を具体的に決めた、このように報道されておるわけでありますが、その要求の中心防衛費のGNP一%以上を達成することにしぼられているのではないか、このように思うわけでありまして、防衛予算の別枠問題と同じく、またしてもアメリカの圧力に屈するのではないか、こういうことで非常にわれわれは危惧をいたしておるわけであります。そういう点で、一九七六年十月の防衛費のGNP一%を超えない程度とする、こういう閣議決定は今後も絶対に守られていくのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  421. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 本来、防衛計画の推進と防衛費のGNPの一%以内ということは直接的な関係はございません。しかしながら、私どもはこの財政が非常に厳しい中で、国全体としての立場からもこの防衛予算というものを考えていかなければならないわけでございます。私は、五十一年に決定をいたしましたところのGNPの一%以内にとどめるという方針をいま変える必要はない、そういう状況にないということだけをはっきり申し上げておきたいと思います。
  422. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ソ連に対する経済措置の問題についてお聞かせいただきたいと思います。  要するに、経済措置をしている間に、特に西ドイツとかあるいはフランス、イギリスなどの西欧諸国が次から次へと大型プロジェクトを獲得しているというのですか、契約し、また契約する段階に来ておるわけでありまして、そういう意味で、十月十日伊東外相は、日本だけがばかをみるようなことはしないようにしたい、こういうことを発言されておるようでございます。措置の緩和あるいはそれの撤廃ということについてはヨーロッパ諸国とも、特にアメリカとも相談して云々というようなことがあるわけでありますが、現実にそういう足並みがそろってないということも事実でありまして、そういう事実があるにもかかわらず、いや、足並みをそろえてみんなと相談してと言うているうちに、次から次へとプロジェクトが横取りされていくという現状があるわけでありまして、私はそういう意味では納得ができないわけであります。特に来年から始まるところのソ連の第十一次の五カ年計画の関係プラントが、このままいくと根こそぎまたヨーロッパ勢にいかれてしまうというようなことになりかねないのでありますので、そういう点について、総理の明確なこれに対する考え方というものを述べていただきたい、このように思います。
  423. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 アフガンに対するソ連軍の武力介入、そういうようなことが世界の平和と安定に大きな影響があるんだ、そういうことを二度と繰り返してもらっては困る、そういうような観点から、西側陣営の特に先進諸国が協調いたしまして、対ソ経済策というものを決めて、それに取り組んでおるわけでございます。私は、日本がそれを誠実に守っておるということは、今後の国際社会における日本の信用、日本こそ信頼するに足る国である、こういう立場からいたしまして、このことは目先の利益のために変えてはいけない、このように考えておるわけでございます。いずれにしても、この経済措置を効果的なものにするためには、西側陣営の足並みをそろえなければいけない。現状をあくまで堅持するということに決定をするにしても、あるいはある程度緩和するにしても、それは話し合いによって意思統一をして、そしてその協調の上に立って足並みをそろえて進めるということでなければならないと思うわけでございまして、伊東外務大臣が当委員会で申し上げたというのは、現在の申し合わせを乱しておる国の方に足並みをそろえるという意味ではなしに、とにかく今後も西側の先進国は足並みをそろえるように協議を遂げ、十分その点の調整を図っていく必要がある、こういうことを申し上げた、私はそう理解をいたしておるわけでございます。
  424. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 だからだめなんですね。ソ連に対する経済措置をやったつもりが、結果的には日本の方が経済措置を受けておるわけでありまして、そういう点で総理のような考え方を持っておれば、ヨーロッパ諸国は喜ぶんじゃないか、こういうように思うわけであります。そういう点で、一日も早くそういう措置をやめていただきたい、本当にわが国国益というものを大事にしてもらいたい、このように思います。  次に、新聞紙上で大きな問題になっておりますナヒモフ号の財産問題でありますが、外務省は、日本海海戦でナヒモフを捕獲し、戦利品としたことは不動の事実だ、このようにおっしゃっておるようでございますが、ここに大きな本があるわけであります。これはイギリスの海軍の公式の戦史「日本海海戦」、一九二〇年に出版されたものでありますが、そこでこのように書いておるわけであります。「ナヒーモフ号を自沈させようとするならば、乗組員をナヒーモフと運命をともにさせると、日本海軍は警告したが、ロシア海軍兵士は生命をもかえりみず、ナヒーモフの名誉にかけて、キングストンバルブを開け、ナヒーモフは海底に沈んだ。船長は甲板に立ち、ロシア海軍旗が頭上にはためいた」云々、こういう形で、その当時の模様を書かれておるわけでございまして、特にこのナヒモフ号の財貨について日本海軍が、海軍戦利品取扱規程第五条に基づき国庫納入の手続をした事実はないと私は考えておるわけであります。  いずれにしても、日本側に言い分があったとしても、対ソ連との関係でもあるわけでありますから、やはりソ連に事前にそういう日本側の見解というものを明らかにする、あるいは諸外国の方々にも、このものについてはこうだという説明があってしかるべきではないか、私はいまこういうふうに思っておるわけでありますが、いずれにしても、これは大きな外交問題にも発展しつつある、こういうふうに思いますので、その点についてソ連側と十分に話し合いをするお考え方があるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  425. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ナヒモフ号に関しましてソ連側との間にいろいろやりとりをしているということは、先生御承知のとおりでございまして、最初ソ連側からナヒモフ号に対する所有権を確認すると言ってまいりましたのが十月三日でございましたか、十月二十日に私どもの方から、これは当時の帝国海軍の公式記録によりまして、ナヒモフ号は日本海軍が拿捕したのである、それで、捕獲した時点において国際法上戦利品とみなされる、戦利品についての所有権は即座にかつ無条件に捕獲した側に移る、そのような戦時国際法の規定にのっとりまして、ソ連側の主張するナヒモフ号に対する所有権は認められないという回答をいたしたわけであります。  その後、先週の金曜日でございますけれども、ソ連側から改めてソ連側の立場を申し述べてまいりましたけれども、その際、日本側の方からるる日本側の主張の根拠を述べたということはあるわけでございまして、ただいま先生の御指摘でございましたけれども、このようなことで、日本側とソ連側との間に、いろいろな資料に関する解釈も含めまして説明のやりとりがあるというのが現状でございます。
  426. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、対ソ連との関係であるわけで、そういう意味で、十分に誠意を持ってこの話し合いをしてもらいたい、こういうことを要請しておきます。  次に、関連してでございますが、賞勲局長がお見えだ、こういうふうに思うわけでありますが、まず、賞勲の具体的判断基準を決めたところの「栄典事務の手引き」によれば、刑事訴追を受けた者のほか国民感情にそぐわないような事実が新聞、週刊誌、雑誌等に報道、掲載された場合は授与しないと明記されておるようでありますが、これに間違いございませんか。
  427. 小玉正任

    ○小玉政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生お尋ねの点でございますが、私の方に、都道府県の職員並びに事務担当者の便を考えまして、「栄典事務の手引き」という冊子をこしらえてございます。この中に先生がいまおっしゃいました文言にほぼ近い内容のものが出ておりますが、それをちょっと短うございますから申し上げますが……(上田(卓)委員「結構です」と呼ぶ)それではその意味でございますが……
  428. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間がないから結構です。総理、答えてください。  そうすると、このロッキード事件の灰色高官として世間で騒がれておりますところの、また国会でも追及のあったところの、元運輸大臣の佐々木秀世氏あるいは元運輸政務次官の福永一臣氏等については、やはりこの「手引き」の中にあるところの国民感情にもそぐわず云々という意味で、栄典の授与が不適当な場合に当たるのではないか、このように考えるわけでありますが、総理の見解を明らかにしてもらいたい、このように思います。
  429. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 今回の秋の叙勲につきましては、通常の審査基準に従いまして厳格にこれを進めてまいったものでございます。賞勲局事務当局においていろいろの角度から審査をし、さらに三長官会議におきまして、これまた特に慎重にこれを取り扱ってまいったものでございます。私は、刑事訴追等にもならない、一方において国会議員として戦後の日本の復興等に貢献をされた長い功績というようなものを彼此勘案をいたしましてあのように決定がなされたということでございまして、妥当なものである、このように考えております。
  430. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今回の総理のやり方あるいは総理府の考え方というものは、「栄典事務の手引き」に完全に違反するものであり、国民の感情を逆なでするものである、国民は絶対に納得をしていない、私はこういうことを強調させていただきまして、時間が参りましたので、私の質問は終わらせていただきます。
  431. 江藤隆美

  432. 中島武敏

    中島(武)委員 突然ですが、金大中氏問題について総理にお伺いをしたいと思います。  きのう控訴審の判決がありました。再び金大中氏は死刑であります。金大中氏は、昭和四十八年八月八日、わが国から拉致されて韓国内に連れていかれました。この問題は、人権の問題としても、わが国の主権にかかわる問題としても重大な問題であります。ところが、との金大中氏に対する判決文が公表されておりません。一審の判決文だけではなくて、報道によれば、きのうの二審の判決判決文が公表されていないようであります。死刑にしておきながら、その根拠を明らかにしない、考えられないようなことが行われておるわけであります。総理、近代的な裁判で判決文を発表しないというそういう国を韓国以外に御存じでしょうか。またこの判決文を韓国政府から入手するためにどのような努力をされているか、まずこの点をお尋ねしたいと思うのであります。
  433. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 金大中氏は何者かによって日本から韓国に拉致された事情がございまして、私どもは金大中氏の身柄につきまして大きな関心を持っておるところでございます。したがって、第一審、第二審の判決で極刑の判決があったわけでございますが、日本政府としては、その判決文というものをぜひ入手したいということで、第一審判決がなされた当時からソウルの大使館を通じまして、韓国側に対してこれを再三再四にわたって要求をいたしておるところでございます。いまだそれが実現しておりませんことはまことに残念でならないわけでございます。今後とも引き続きこの点につきましては努力をしてまいる考えでございます。
  434. 中島武敏

    中島(武)委員 判決文が公表されないというような裁判を行っている国についてのお答えは直接にはありませんでしたけれども、私はそういう国を知りません。総理も恐らく知らないのではなかろうかと思うのであります。起訴状によりますと、御承知のように、金大中氏の東京における、日本における活動が国家保安法違反に問われておるわけであります。東京で、日本で韓民統の結成を行い、その議長に推されたとされている点であります。起訴状と同じように、この判決文が発表されるということになりますと、在日中の活動については責任を問わないとされましたあの政治決着を見直さざるを得なくなるような内容なので発表しないのだとしか考えることはできないのであります。おおよそ裁判で判決文を発表しないという裁判、これは尋常一様なものではありません。何か発表をするとぐあいが悪いところがあるから発表しないのだ、いま申し上げたように、政治決着を見直さざるを得ないような、そういう中身、それ以外には考えようがないわけであります。  いま総理は、重大な関心を持っているということを言われました。いままでも重大な関心あるいは憂慮の念を表明してきたわけでありますけれども、しかしまた、判決文についても強く要求するということで、向こうが、韓国が出さなければいたずらに日だけが過ぎてしまって原状回復はできない、金大中氏は死刑に追いやられる、こういう事態になるわけであります。こういう事態になるならば、私は日本政府責任も非常に重大であると思うわけであります。そこで私は、判決文を何としても発表させて、政治決着を見直すべきであると思うのであります。どうしても韓国が、全斗煥政権が判決文を発表しないというのであるならば、先ほども申し上げたように、政治決着を見直さざるを得ない、そういうことに触れる内容としか考えられないのでありまして、この問題は命にかかわる、人権にかかわる問題であり、またわが国の主権にかかわる大問題であります。そういう点から韓国政府との間のあの政治決着を見直して、そして日本金大中氏を取り戻すべきではないか、このように思うわけであります。いま日本政府がやれるすべての手を打つべきであると思うのでありますが、総理の見解はどうでしょうか。
  435. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 起訴状に述べられております点につきましては、韓国政府から公式に、背景説明の部分である、こういうように日本政府に対して回答がなされておるところでございます。  なお、判決文の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、いまだに実現しておりませんが、今後におきまして、引き続き判決文の提供、提出方について交渉を進めてまいる考えでございます。  なお、政治決着の問題につきましてお話がございましたが、金大中氏拉致事件につきましては、私どもはいま刑事事件として捜査を継続いたしておるわけでございます。いままでの調査の段階におきましては、韓国の公権力が日本の主権を侵害したという確たる証拠を掌握、把握しておらないわけでございます。この公権力がわが国の主権を侵したということが明確になった場合において、初めて政治決着の見直しということがあるわけでございますが、さようなことのない段階におきましては、政治決着の見直しということは考えておりません。
  436. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの総理のお答えは、背景説明だという韓国説明を受け入れておられるものでしょうか。奇妙な説明だと思って私どももいろいろ調べてみましたが、しかし、軍法会議法を見ましても、起訴状には起訴事実以外記載してはならないとはっきり定めておるのであります。起訴状には背景説明などというものを載せてはならない、こういうふうに韓国法律によってもなっておるのでありまして、いまの総理の御発言は、これを受け入れていらっしゃるのかどうか、この点、まずひとつ伺いたい。
  437. 江藤隆美

    江藤委員長 出席要求がなかったので出席しておりませんが、いま担当が急いでおるそうですから、しばらくその答弁は待たせていただきたいと思います。
  438. 中島武敏

    中島(武)委員 時間の点もありますので、先へ進みたいと思いますが、この際、背景説明などというようなことにごまかされることなく、そしてまた判決文を明らかにしないでこのまま死刑に追い込まれていく、政治決着見直しの機会をも失うということのないように、鈴木内閣がもしそんなことになれば、内閣責任が問われると私は思うのであります。だから、先ほど言われましたように、判決文を断固として入手する。入手できなければ、そのときにはぐあいが悪いから判決文をよこさないのだ、したがって政治決着は見直す、こういう断固たる態度で臨んでいただきたいと思うのであります。  続けて次に、憲法問題についてお尋ねします。  報道によりますと、総理は自民党の二回当選の代議士との懇談会におきまして、閣僚の憲法問題についての論議は従来とかくタブー視されていた、このタブーを破ることができた、憲法論議を通じてそれなりの成果をおさめたと評価をしておられます。  そこで、私は伺いたいのです。奥野法務大臣が憲法九条改正の発言であるとかあるいは憲法前文改正の発言であるとか、あるいはまた憲法二十条を批判する発言であるとか、こういうことを次々とやっておられるのですけれども、これは大変結構なことだ、タブーを破ったことだ、こういうふうに評価されるのでしょうか。
  439. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私が自由民主党の当選二回の諸君と懇談をいたしました際に、憲法の問題につきまして所見を求められました。その際に、この国会においては本会議並びに予算委員会において、憲法論議が七〇%くらいの時間をかけて与野党の間で論議が交わされた。この論議は大変時間をかけたけれども決してむだではなかった。ということは、憲法九十九条は憲法を尊重し、擁護する義務があるということで、鈴木内閣はこれをあくまで守りていくのだということを明らかにいたしました。さらに憲法九十六条で憲法自体が改正手続を述べておるという点からいたしましても、憲法についての意見を述べ、議論をする、主張するというようなことは、憲法の遵守義務に反するものではない、相矛盾するものではない、こういうことが国民の前に明らかになったことはある程度評価されるべきものである、こういうことを私は申し上げたわけでございます。しかし、閣僚の諸君につきましては、その立場にあるわけでございますから、その言動について憲法を冒涜をしたりあるいは憲法についていろいろ誤解を招くようなことのないように、その発言は慎重でありたい、慎重にしてほしいということも強く求めておるところでございます。
  440. 中島武敏

    中島(武)委員 直接のお答えじゃないのですけれども、奥野法務大臣の憲法問題についての発言、これはいま総理が答えられた慎重な上にも慎重という、これに欠くるものがあるのじゃないかということであります。同時に、この二回当選代議士との懇談会で、内閣として現行憲法を擁護、尊重し、他方、自民党は自民党立党以来の自主憲法制定の努力をする、両面の対応が必要になってきた、こういうふうに言っておられますが、こうなりますと、鈴木総理としましては、憲法問題に対する姿勢としては、総理としては尊重、擁護、そして総裁としては自主憲法制定に努力するということでありますか。
  441. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 前段の方はおっしゃるとおりでございます。後段の方の問題につきましては、私の真意は、自由民主党の立党以来の政綱の中に平和主義、民主主義、基本的人権の尊重ということを堅持しながら、自主憲法の制定の問題を党として進めていくのだ、こういう政綱がある。ついては、諸君はただ憲法改正というような声を大にするだけでなしに、もっと冷静にこの三原則を堅持しながらどこをどうするかということを勉強しなさい。ただ自主憲法制定という党の政綱があるからといって、いたずらにそういうことを言うようなことではいけない。いやしくも国の基本法である憲法の問題であるから、もっと慎重に、冷静に勉強をしっかりとしなければいけないよということを若い諸君に言っただけでございます。
  442. 中島武敏

    中島(武)委員 その問題については、勉強せよと言われたのだという問題については、またもう一度お尋ねしたいと思います。  一九五〇年前後の憲法改正問題についてお尋ねしたいと思います。  一九四九年三月一日のブラッドレー統合参謀本部議長のフォレスタル国防長官あての報告によりますと、日本防衛軍備を持てるように憲法の改正を進めるための方策を検討すべきである、こういう報告がなされております。また一九五〇年十二月二十八日、統合戦略調査委員会の統合参謀本部あての報告によりますと、日本軍備のためには憲法改正が必要である、憲法を改正するまで対日平和条約の交渉に着手すべきではない、こういう報告がなされております。しかし、実際には憲法を改正しないままに講和が締結されました。そして講和調印直後、一九五一年十月の下旬でありますけれども、アメリカ占領軍総司令部民政局の日本政府に対する再軍備、憲法改正に関する覚書というのが出されております。総理はこれを御存じでしょうか。
  443. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま中島さん、いろいろ米軍当局の係官等が述べられたとかあるいはそういう記録があるとかいうことをおっしゃったわけでございますけれども、アメリカ政府から日本政府に公式にそういうような要請なり意見の開陳があったということを私はまだ聞いておりません。
  444. 江藤隆美

    江藤委員長 先ほどの外務省参りましたが、いいですか。
  445. 中島武敏

    中島(武)委員 ちょっとお待ちください。  これはまだ総理は聞いておられない。私も外務省に頼んで調べてもらっている最中でありますけれども、これが明らかになればここへ提出をしていただきたいというふうに思います。  それで当時は、いま私が挙げたことだけではなくて、ダレス氏などがやってきて、再軍備、憲法改正要求をずいぶんやったことは、これはもう総理もよく御存じのことだと思います。そしてこの覚書が出されたそれ以後、憲法改正論議が大変盛んになったわけであります。自民党と改進党にも憲法調査会が発足をしました。また鳩山内閣のときに自主憲法期成議員同盟が結成されて、私もこの趣意書、規約を読みました。目的は「自主憲法推進」と非常に明快にうたっております。「もはやちゅうちょ逡巡は許されない。自主憲法実現の必要を国民に訴え、一大国民運動に盛り上げよう。」こういうふうに書かれております。私は、当時のアメリカ側からの発言というものを考え合わせたときには、自民党はいま自主憲法というふうに言っておられますけれども、しかし、実はアメリカから押しつけられた改憲運動ではないかと思うのであります。論議の域をすでに踏み越えて、運動団体になっている自主憲法期成議員同盟、これに総理も入っておられるようでありますが、私は、これは抜けるべきではないかというように思うのであります。総理の見解をお聞きしたいと思います。
  446. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 憲法問題につきましていろいろ中島さんおっしゃっているのでありますが、アメリカ政府なりそういう方面から日本の憲法改正問題というのが影響を受けたり動かされたりするものではない。これは主権者である国民全体の大多数の判断によって決まる問題でございます。私は、日本国民のそういう毅然たる自主性というものを信頼をいたしておるわけでございます。  なお、この自主憲法制定議員同盟の問題につきましては、確かに自由民主党の議員諸君が多数これに加盟をいたしております。しかし、この憲法改正問題について推進云々と言っておりますけれども、自由民主党の憲法調査会におきましても、まだ憲法のどこをどういうぐあいに改正するかという結論は何も出ておりません。いまいろいろ勉強中でございます。こういう重大な問題でありますから、総務会にかけ、党大会にかけて初めて党議としてこれが決まるわけでございます。そういうものを受けてこそ初めて議員同盟も動くことがあるわけでしょうけれども、何も固まっていないという段階で推進も何もあり得ない、それは単なる、ただ騒いでおるというだけのことにすぎないと思うわけでございます。風声鶴唳に余り気を使われないようにお願いいたします。
  447. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほどの米占領軍民政局の日本政府に対する再軍備、憲法改正に関する覚書、これはぜひ提出をしていただきたい。  それから、そういうことが提出されてくれば非常に明らかになると私は思うのでありますが、当時のことを考えてみましても、朝鮮戦争時に再軍備、憲法改正がアメリカの側から大変押しつけられた、いままた八月の末に日米安保セミナーなどが開かれて、アメリカの側から憲法の改正と軍備の大増強を要求されておるわけであります。しばしば問題になっておりますように、三原自民党安保調査会長の日米安保の双務条約的な再改定論もここでやられておるのであります。私は、こういう軍備増強、安保の再改定、そのための憲法改正、これは非常に危険な道に踏み込んでいくと思うのであります。私どもは、日本の安全は、安保条約を廃棄し、非同盟中立の道、これだけであると思っております。  時間が経過いたしておりますので、このことを申し上げ、なお法制局の方から答弁があれば伺います。
  448. 江藤隆美

    江藤委員長 さっきの外務省の答弁だけをして終わらせます。外務省アジア局股野北東アジア課長
  449. 股野景親

    股野説明員 先ほど、金大中氏の裁判にかかわります起訴状の内容について、訴因と背景説明と、こういう点の区別がはっきりしないのではないか、こういう御指摘がございましたのですが、先ほど総理からも御答弁ございましたように、この起訴状を入手するに当たりまして、わが方としてはこの点を韓国側に確認を求めたわけでございます。韓国の刑事訴訟法の解釈については、これは有権解釈をいたしますのは韓国側でございますので、私どもとしてもその韓国側の有権解釈によらざるを得ないわけでございますが、その韓国側が公式説明として、この起訴状の内容について背景説明の部分と訴因とに分かれておるんだ、こういう公式説明を私どもに対して外交チャネルを通じて行いました経緯がございますので、私どもはさように受けとめている次第でございます。
  450. 中島武敏

    中島(武)委員 終わります。
  451. 江藤隆美

    江藤委員長 河野洋平君。
  452. 河野洋平

    ○河野委員 ただいまもやりとりがありましたけれども、金大中氏の裁判について、総理も二度にわたって深い憂慮を表明されておるわけでございます。私も金大中氏の裁判の成り行きには特別な関心を持っておりまして、日本国民として、金大中氏の身柄の一日も早く自由になられることを祈っておるわけでございますが、政府におかれましても、事の経過を踏まえて強い責任を感じながらこのことに対処していただきたいと思うわけでございます。  そこで、総理は国会でも再三、現行憲法を誇りとする旨の表明がございます。その根拠は、現行憲法が持つ平和主義あるいは自由主義、基本的人権の尊重あるいは民主主義、こういったものを挙げておられるわけでございますが、先ほどの総理の御答弁の中で、鈴木総理の平和外交の基本についての御答弁の中で、価値観を共有する国との連帯あるいは体制の異なる国とも共存をしていくということを平和外交の基本にしておられるわけですが、どうも昨今の韓国の状況を見ると、自由主義、民主主義、基本的人権の尊重を基調とされる鈴木政治と価値観を共有しているとは思えない。この点についてどうお考えになりますか。
  453. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、韓国の政治の現状というものは、諸般の情勢、そういうものに対応する姿であると考えておりますが、基本的には、やはり韓国政府というものは自由陣営の一員であり、いま申し上げたような方向を目指して努力をしておる、このように考えておるわけでございます。
  454. 河野洋平

    ○河野委員 自由陣営の一員だと私も考えたいと思います。しかし、少なくとも今日の状況は、必ずしも総理がおっしゃっておられる基本的人権が尊重をされたり、民主主義が大事にされている状況と違う、そう私は認識しているのですが、もう一度お答えいただけないでしょうか。
  455. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 河野さんが御指摘になるように、過渡的に現状を見た場合に、そういうような認識、見方というものが成り立つかもしれませんが、私は、目指すものは、韓国の政治というのは自由陣営の一員としての体制をつくっていくということを目指しておるもの、このように考えておるわけでございます。
  456. 河野洋平

    ○河野委員 目指すものが自由主義陣営の一員としてというふうに認識しておられるという点については、私も合意をいたします。しかし、少なくとも今日の状況は、必ずしも、だれも異存なくそう言えるかどうかという点では見解がいろいろあるということで、ひとつ総理にもあるいはわれわれ政治に携わる人間も監視していきたい、深く注目していきたい、こういうことでこの問題は後日の議論に回しておきたいと思います。  私は余り持ち時間がありません。防衛力の整備について一、二点お伺いをいたします。  今回提案をされました防衛庁設置法等は、いずれも中業の中にあるもので、年次計画といいますか、計画を一つずつ進めていこうというものの中の一つだと理解をいたします。しばしばこの委員会でも話が出るのですが、防衛専門家としての判断というものがあって、しかし、それを超える、トータルに日本の平和とか安全を考える、そういう考え方がそれを上回ってある、これは当然ですね、シビリアンコントロールの原則から言えば当然だ。シビリアンコントロールの原則は当然あるわけですが、その前提として、防衛当局が専門家立場からさまざまな調査を行ったりさまざまな計画をおつくりになる、これもあっていいことだと私は思いますが、中期業務見積もりについて、こういうものがあるから着々とこれを具体化するためにことしも設置法を出します、来年もやります、再来年もまたやります、こういうことで果たしていいかどうかと私は考えるわけです。  その根拠は、私は、防衛力の整備は単に年次計画を着々やるというのではなくて、先ほど、これも総理が御答弁になりましたように、国民の理解と協力なくして日本の国の防衛あるいは安全の確保はできないと思うのですね。先ほど岩垂議員からも御指摘がありましたけれども、総理もお気づきだと思いますが、日本全国各地にございます基地周辺の住民との間にまだ完全な合意、理解というものが成り立ってない部分がある。先般も私はこの委員会質問させていただきましたけれども、たとえば厚木基地にP3Cを配備しようとすると、神奈川県知事からも反対の要請がある、あるいは当該市の市長からも反対の要請が出るというのが現状でございます。着々と専門家立場から防衛力を整備しようとなさることは一つ考え方でございますけれども、着々と整備をしていくためには国民の、とりわけ基地周辺住民の理解なくして進めてはいけないのではないか。恐らくこれから先潜水艦隊が編成をされて、どこにそれを配備するとかなんとか、いま直ちにということではないかもしれませんが、将来さらにそういうものが大型化されるとかあるいは大量になってくるということになれば、また母港の問題、基地の問題が議論になってくると思うのです。基地周辺住民の理解と協力が防衛計画を、整備を進めていく上に不可欠なものだと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  457. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 河野さんのおっしゃるとおりでございまして、地域住民の理解、協力、そして関係地方団体の協力と御支援、これが防衛力を整備する、またそういう施設を設け、それを円滑に運営をする、機能を発揮する、そういう大前提になるわけでございます。政府として、今日までも理解、協力を得るために努力をしてまいりましたが、まだ不十分な点が多々あったと思います。しかし、今後とも私どもは地域住民の方々の御理解を得るように、さらに一層努力をしてまいりたい、こう思っております。
  458. 河野洋平

    ○河野委員 もう一点、日本防衛力の整備についてしっかりとしておかなければならないところは、アジアの国々が日本防衛力の整備についてどれだけの理解を示すかという点だろうと思います。私がきわめて残念に思いましたことは、今回の防衛庁設置法の審議に当たって、アジアの国々が日本防衛力の整備を十分理解しているかどうかを防衛庁当局が十分に打診といいますか、調査をしておられるだろうと思って御質問をしたところ、アジアの国々の反応というものを防衛庁はほとんどとっていない。この間の委員会で御質問をしましたけれども、十分細かい答弁が戻りませんでした。委員長にお願いして資料要求をして、きょう資料を出していただいたのですが、防衛庁がお出しになった資料を見ても、たとえばASEANの国、タイでは、日本の国が将来脅威を感じさせるほどの軍事大国になると答えているのが世論調査で五五%ある。あるいはまた、これは防衛庁の資料ですけれども、インドネシアのダルヤトモ国民協議会議長の記者会見では、日本からいろいろ説明があったけれども、「同議長はASEAN諸国、とくにインドネシアに対し、日本の国防予算の動きに目を光らせるよう訴えた。」こう言っていますし、インドネシアの新聞は、駐日大使が帰国時に記者会見をしたとき、日本が東南アジア、特にASEAN諸国に対して自衛力増強につき協議することが望ましいという発言をしているなどということを記事に載せたというようなことが、防衛庁から出していただいた資料の中でも書き抜かれているわけですね。私は、少なくとも日米関係が非常に密接な連絡をとることは必要だと思います。あるいは中国ソ連日本が十分にそうした国々の考え方を知らなければならぬと思いますが、それと同じように大事なことは、アジアの小さな国々が、日本軍事力整備を脅威に感じたり、不安に感じたりするということは、十分注意をしなければならないことだと思います。  繰り返し申し上げますが、防衛庁防衛力の整備計画をおつくりになったとしても、それを着々と具体化するためには、国内においては国民、とりわけ基地周辺住民の理解、外に向かってはアジアの国々の十分な理解、そういうものなしに、専門家専門家であってもいいけれども、シビリアンコントロールする総理以下政治家の判断がとにかく年次計画を着々どんどん進めればいいんだなどという単純な発想ではなくて、そうしたことを十分配慮してやるべきだと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  459. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 その点は十分日本として注意を払っていかなければならない点だと考えております。私は、経済大国であっても軍事大国にはならない、平和憲法のもとに専守防衛に徹する、非核三原則を堅持する、シビリアンコントロールを強化していく、こういうことを繰り返し申し上げておるわけでございます。そして近隣諸国に、特にASEAN等の友好国脅威を感じさせるようなことがあってはならないわけでございます。伊東外務大臣が先般ASEAN諸国を歴訪いたしましたが、その際には、この点について十分理解をしていただくように説明もしたわけでございます。いろいろこれからもそういう点を十分注意してまいりたい。私も一月にASEAN諸国を訪問するつもりでございますから、私の考え、これを十分お話しいたしまして、御理解をいただくつもりでございます。
  460. 河野洋平

    ○河野委員 国連その他で日本が表明している軍縮に対する強い決意、そういうものを踏まえて、ASEAN歴訪の際には、ASEANの諸国に日本の真意をきちっと伝えるということをぜひお願いをして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  461. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  462. 江藤隆美

    江藤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。染谷誠君。
  463. 染谷誠

    ○染谷委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、賛成の意見を表明するものであります。  世界の平和は、現代に生を受けたわれわれに与えられた最大の課題であり、わが国は国際連合の平和維持活動を積極的に支持し、国際間の協調を図り、世界平和の実現を期しているところでありますが、現実の国際社会においては、軍縮への努力が続けられているものの、いまだにその理想を実現し得るような段階には至っておらないのであります。  むしろ、最近の国際情勢は、ソ連軍事力の急速な増強、ことに昨年末のソ連のアフガニスタンへの軍事介入等の結果、米ソのデタントにもかげりがあらわれ、国際情勢は大きく変化しつつあると言わざるを得ないと思うのであります。  また、わが国を含む世界経済全体にとって、石油資源を大きく依存している中東方面におきましては、先般イラン・イラク間に武力衝突が発生したことにより、情勢は一層流動化の度を加え、全体としてまことに厳しいものとなっております。  まさに一九八〇年代は、わが国にとっても、また世界にとっても幾多の困難な問題を抱えた試練の年代になると予想されるのであります。  このような国際環境の中にあって各国は、それぞれ格段の防衛努力を払っているのでありますが、わが国もこのような国際社会の冷厳なる事実を率直に受けとめ、現実的な防衛政策を推進しなければならないと思います。  かかる見地からわれわれは、わが自由民主党及び政府が主張し維持してきた日米安全保障体制を引き続き堅持し、日米間に築き上げられた信頼関係を一層揺るぎないものとし、わが国みずからも「防衛計画大綱」に示された防衛力の水準を可及的速やかに達成するため、所要の施策を積極的に推進していくべきであると確信するものでございます。  本改正案は、海空自衛官及び予備自衛官の増員と潜水艦隊の新編等をその内容とするものでありますが、これらはいずれも必要最小限の人員と効率的な部隊運用を確保するためのもので、妥当な措置であると考えるものであります。  もとよりわが国防衛は、ひとり自衛隊のみで事足れりとするものではありません。政府は、今後とも国民の防衛問題に対する理解と支持のもとに、自衛のための国内体制を育成するとともに、積極的に外交、経済等の面の努力を通じてアジア、ひいては世界の平和と安定に大きく貢献し、一九八〇年代の日本責任を果たしていくことを強く要望いたしまして、私の賛成の討論といたします。  終わります。(拍手)
  464. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、岩垂寿喜男君。
  465. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、日本社会党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。  昨日、十一月三日は、日本國憲法の公布の記念日でありました。憲法擁護国民連合は、三重県伊勢市で第十七回国民大会を開き、最近の政府・自民党による改憲論議を、すでに具体的な改憲作業の準備段階に入ったと見るべきであると判断し、この憲法擁護運動が迎えた最大の危機に際し、千載に悔いを残さないよう改憲阻止の運動に全力を挙げることを決議しました。この憲法擁護国民連合の代表委員である元陸軍中将遠藤三郎氏は、最近の政府軍備増強の動向に触れて次のように語っておられます。  「日本は、細長い島国で奥行きがない。これが最大の弱点なのです。仮にミサイル陣地や飛行場を敵と同数持っていたとしても、たとえばソ連のようなふところの深い国とは全く太刀打ちできない。こっちが相手をたたく前にたちまちのうちにたたかれてしまう。軍備国防上の弱点を言えというなら、これ一つで十分だろう。しかし、あえてさらに言えば、日本はますます燃えやすい国になっている。関東大地震や空襲で何万、何十万という人が火災のために死んでいる。火災に弱いという日本の都市構造は改善されたか。いやむしろ改悪された。新建材や石油を原料とする家具、衣服のたぐいは有毒ガスを発し、火災を拡大し、犠牲者を何倍にもするだろう。その上、三千万台になんなんとする自動車がガソリンを積み込んで走り回っている。日本はかちかち山のタヌキのように、火をつけたらすぐぱっと燃え上がる薪を背中にどっさり背負っているのです。核やミサイルを使わぬ限定戦争の場合はどうかだって。この人口過密の日本が戦場になったら一体どういうことになると思うか。戦場になった沖繩で、どんな悲惨なことが起こったかよく知られていることだ。が、東京が戦場になったら沖繩どころではない。それに戦争はべらぼうに油を食うのだ。工業でかせがなければやっていけないというのに、石油がなくなったら日本のほとんどの工場は全く上がったりだよ。食糧だって六〇%も外国に頼っているのだ。軍備を持つと相手に口実を与える、これは歴史が教えるところだ。口実を与えるようなことをするな。どうやったら戦争に巻き込まれずに済むかを真剣に研究せよ。軍艦に魚雷を積んだり、飛行機にミサイルを装備するなどもってのほかのことだ。」そしてさらに遠藤氏は、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」という自衛隊法第三条第一項が軍備増強の口実となっていることを指摘し、その削除が必要だと強調されておられます。  八十八歳にしてなおかくしゃくとして、日本がいかに軍備国防の不可能な国であるかを説き、非武装中立の可能性を徹底的に追及する元軍需省航空兵器総局長官言葉の正しさを、そしてそれを裏づける戦後史の重さを、いまこそ私たちはしっかりと継承しなくてはなりません。  しかし、現実政治は、この遠藤氏の主張とは全く逆な方向に進むだけでなく、歴史の教訓を拒否して新しい戦前が始まっています。ソ連朝鮮民主主義人民共和国を仮想敵視し、自衛隊の増強を図り、軍事大国へ突っ走る道は、いつか来た道です。  今回の防衛庁設置法等の一部を改正する法律案も、財政危機の中で自衛官の定数をふやして防衛力増強を図ること、潜水艦隊、航空自衛隊補給本部を新規に編成し、日米共同作戦体制を強化すること、曹長階級を設けて、自衛隊の指揮監督の体制を整備すること、予備自衛官をふやして、実質的に自衛官を増員することなどなどの点で、その階段の一つにほかならないと言わなければなりません。  私は、その危険性を強調しつつ、尊敬する遠藤三郎氏の言葉をそのまま委員各位に紹介し、反対討論を終わります。(拍手)
  466. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、鈴切康雄君。
  467. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、防衛庁設置法等改正案、いわゆる防衛三法に対し、反対の討論を行うものであります。  日本の平和憲法はその前文で、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することをうたい、第九条では戦争放棄、軍備及び交戦権の否認を規定していることは、世界のいずれの国を見てもその類例を見ない平和への宣言であると同時に、日本国民の平和を求めてやまない切なる願いであると言っても過言ではありません。  今回の防衛庁設置法等改正案は、単に装備の充実に伴う定員増と潜水艦隊の新編成及び自衛官の階級を新設するという単純なものでなくして、防衛計画大綱の基本的思想である基盤的防衛力構想を放棄して、脅威に対して所要の防衛力増強をねらいとしたものであり、それはとりも直さず政府防衛力増強路線に拍車をかけるものであります。すなわち、政府ソ連脅威を過大に宣伝し、防衛力増強を図っているとしか言いようがありません。一方、政府は、防衛庁の内部資料と言われている中期業務見積もりをアメリカの要請により一年繰り上げようとしております。またそのための防衛庁予算枠の特別扱いが着実に進められています。  われわれは、総合安全保障という幅広い視野と長期的な立場から、防衛力の位置づけと限界をどうするかという最も重要な取り組みを放置したままで、単に潜在的脅威の増大を意図的に強調して、防衛力の無制限な増強理由づけとしようとする政府考えには反対せざるを得ません。  このことは、急激に高まっている自民党内の改憲論議と相まって、きわめて危険なものであると指摘せねばなりません。  本来、総合安全保障は、軍事的な面だけを強調するのでなくして、外交、経済、食糧エネルギー、海外協力等、非軍事的な面での平和外交路線に立脚し、平和的努力の積み重ねによる相互信頼に立って国民的合意を得ることこそ、平和に立脚した安全保障政策の根幹に置かなければならないと強く主張するものであります。  私は、今回の防衛庁設置法等の改正案は、力の均衡による防衛力増強路線そのものであり、このような政府防衛政策は危険なものであり、賛成できないところであります。  以上、公明党・国民会議を代表し、木防衛庁設置法等の改正案に反対することを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  468. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、神田厚君。
  469. 神田厚

    ○神田委員 私は民社党・国民連合を代表して、いわゆる防衛三法、自衛隊法、防衛庁設置法並びに防衛庁職員給与法の一部改正について、一括して賛成の討論を行うものであります。(拍手)  わが党は、結党以来、わが国の平和と安全の確保のために責任野党の立場を貫きつつ、全力を尽くして闘ってまいりました。しかるに政府は、国民や国会に対し、わが国を取り巻く軍事情勢やわが国の自衛力の実態を率直に示そうとせず、事なかれ主義の態度をとりながら、なし崩し的に自衛力を整備してきたのであります。しかし、いまやわが国を取り巻く国際情勢はこのような対応が許されない厳しいものとなっております。われわれはいまこそ国家と国民に対する政治の責任を自覚し、防衛問題に対する不毛の議論や無責任な議論を排し、事なかれ主義の態度を改めて、現実に立脚した具体的な政策をもって防衛問題に取り組んでいかなければなりません。  わが党は今後とも責任野党の立場に立って、防衛問題について是々非々の立場を貫いていくものであります。  以下、賛成の理由を述べます。  その第一は、わが国を取り巻く国際情勢が大きく変化し、防衛力整備が急務となったことであります。  この数年来、ソ連は世界的規模で軍事力増強を図るとともに、アフガニスタンへの侵略に見られるように、軍事力背景として強引な対外進出を続けております。そのため、いまや米ソのデタントは大きく崩れ、西側自由陣営は協力してソ連の進出に対処することを迫られつつあります。  また、ソ連は極東地域においても、わが国固有の領土である北方四島のうち三島にまで軍事基地を建設したのを初め、海軍力や空軍力の大規模な増強を進めており、極東の軍事バランスは大きく変化しつつあります。  こうした事態に対処するためには、わが国としても西側自由陣営の一員としての立場を踏まえつつ、わが国の平和と安全を守るに足る防衛力の整備を着実に進めていかなければなりません。  第二は、自衛隊に対するシビリアンコントロール体制が前進したことであります。たとえば、わが党が昭和四十年以来多年にわたって設置を主張してきました国会の安全保障特別委員会がつくられ、いまだ不十分ながらも機能し始めていることであります。またさきのわが党と自民党との党首会談において、中期業務見積もりが国防会議に付議されることが確認されたことなどがその一例であります。  第三は、防衛問題に対する国民的合意が生まれつつあることであります。わが党はこれまでも防衛問題に対する国民的合意づくりの重要性を強く指摘し、そのために全力を尽くしてまいりました。しかし、いまや国際情勢の厳しさと相まって、平和確保のための防衛力整備の必要性について、国民的コンセンサスが生まれつつあります。すなわち、各種の世論調査からも明らかなように、憲法を擁護しながら現状程度の規模の自衛隊を整備し、その足らざるところは日米安保によって補いつつ、西側自由陣営の一員として、日本の平和と安全を図っていこうというのがそれであります。  第四は、防衛力整備についてのわが党の主張が、政府によって基本的に認められつつあることであります。さきの党首会談を通じて、防衛力整備については、平和戦略の推進、憲法の枠内、財政事情への配慮という三条件に立つべきであるというわが党の主張に政府・自民党が基本的に同意したことであり、今後、自衛隊の欠陥是正やシビリアンコントロール等の一層の前進について、わが党の方針が反映される状況が生まれつつあることであります。しかし、それはあくまでも防衛問題について共通の議論の場ができたということであり、個々の具体的問題については、今後建設的な議論を進めていかなければなりません。  以上が、民社党が防衛三法に対し賛成する理由でありますが、この際、私は政府に対し、防衛力整備について次の諸点に十分配慮して取り組むべきことを、改めて要望するものであります。  その第一は、防衛力整備は、前述したように、平和戦略の推進、現行憲法の枠内、財政事情への配慮を基本原則として進めることであります。  第二は、安全保障特別委員会を機能的に運営するとともに、形骸化している国防会議を改組強化し、総合的立場から安全保障全般を協議する最高機関とするなど、シビリアンコントロールの確立を図ることであります。  第三は、米ソのデタントと没脅威論を前提とした現在の「防衛計画大綱」を抜本的に見直し、脅威の実態に即したものに改めることであります。  第四は、奇襲対処能力の欠如など、各方面から指摘されている自衛隊の欠陥を是正し、質的整備を進めることであります。  政府は、以上の点に十分に配慮し、その実行を通して、わが国の平和と安全を確保するに足る適正な自衛力の整備を進めるよう強く要望し、私の賛成討論を終わるものであります。(拍手)
  470. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、榊利夫君。
  471. 榊利夫

    ○榊委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  今回の防衛庁設置法等改正案は、潜水艦隊の創設、航空自衛隊補給本部の強化など、アメリカの世界戦略、アジア戦略に基づく日米共同作戦態勢の一層の強化、このもとでの対米従属、違憲の自衛隊の増強を進める内容を持つものであり、わが党は、断じて許すことはできません。  この日米共同作戦態勢の強化、自衛隊の増強背景には、何よりもアメリカの執拗な要求があることは明らかなところであります。それは、日米軍事同盟のNATO並み攻守同盟化という要求であり、日本の自衛隊にアジア・太平洋地域での米軍の補完という、まさに危険な戦略的要求であります。これは、ことし一月の米国防報告が、ヨーロッパで対ソ戦争が起きたとき、ソ連の太平洋艦隊を封じ込めるために、日本に三海峡を封鎖することを求めてきたことが如実に示すところです。鈴木内閣が、この米国防報告の言明に抗議するどころか、これを追認する姿勢をとっていることは、憲法違反の集団自衛権行使に道を開くものであり、きわめて重大なことであります。  一九七八年に決定された日米共同作戦のガイドラインも、わが党が一貫して指摘してきたように、きわめて危険な段階に入っております。中でも重大なことは、ガイドラインの作業が秘密裏に、しかも防衛庁長官や内局さえ直接関与せず、日米の制服レベルで恒常的に、アメリカのアジア戦略を念頭に置いて行われていることです。まさにガイドラインは、米軍のイニシアチブで自衛隊が憲法をじゅうりんしてアジア・太平洋地域での共同作戦に踏み出す危険をあらわしているのであります。  こうした日米軍事同盟の攻守同盟化の要求が、現在鈴木内閣によって進められている憲法改悪のもとになっていることも明白であります。この八月に開かれた日米安保セミナーで、元防衛庁長官の三原自民党安保調査会長が、安保改定を公然と打ち出し、アメリカ側から憲法改悪を要求する発言が相次いだことは周知のとおりであります。  鈴木内閣がこれらを容認する姿勢をとっていることは、奥野法相の改憲発言の容認と相まって、鈴木首相自身が、まさに安保改定、憲法改悪を巧妙に事実上進めていくものであると言わなければなりません。  自衛隊の増強を進める「防衛計画大綱」、中期業務見積もりも、国民生活を顧みずアメリカの要求で急ピッチに進められており、これは対米従属下の軍事大国への危険な道であります。特に中期業務見積もりは、主要な内容を国会と国民にひた隠しにして防衛庁や自衛隊が思うがままに軍備増強ができるという、まさに伸縮自在の軍備増強計画であります。これを政府計画に格上げさせようとの主張は、屋上屋の軍備増強の論理であり、危険なものであります。  あわせて指摘しなければならないのは、こうした重大な内容を持つ本法案についての当委員会での審議についてであります。当初わが党は、三日間という短期間の審議ではなく、慎重に十分な時間をかけて徹底審議することを要求しました。審議の過程でも、E2C対日売り込みをめぐるニクソン大統領副補佐官リチャード・アレン氏と京都産業大学教授高瀬保氏の新たな疑惑も明るみに出ましたが、いまだに究明されていません。こうした点から見ても、当委員会での審議は不十分であると言わなければなりません。  最後に、現在何よりもわが国に求められているのは、こうした軍備増強、軍拡競争による軍事大国への道をきっぱりと断ち切り、国民を戦争に引きずり込む日米軍事同盟を廃棄し、非同盟中立の道を歩むことであるということを重ねて強調して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対する討論を終わります。(拍手)
  472. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、河野洋平君。
  473. 河野洋平

    ○河野委員 私は、新自由クラブを代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に賛成の討論を行いたいと思います。  日米安保条約の維持と節度ある防衛力の整備は、わが党の基本的な考え方でもあります。基本的な考え方をそう持っているわが党であっても、しかし、実際は今回の本法案審議に当たって賛成するのにはかなり内心じくじたるものがあります。それは、先ほど来の質疑でも申し上げましたように、防衛力の整備計画が国民の理解、とりわけ基地周辺住民の理解を十分に得ているかどうか、あるいはアジアの国々の理解を十分に得られているかどうか、若干の懸念が存在をいたします。そうした点を十分に配慮した上で、今後の防衛力の整備に当たってほしい、それが本当のシビリアンコントロールというものではないかということを、私は賛成討論の中で述べなければならないことをきわめて残念に思います。  私は、今後の防衛力整備に当たってそうした点を十分配慮されることを特につけ加えて、本法案に対する賛成討論といたします。(拍手)
  474. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  475. 江藤隆美

    江藤委員長 これより採決に入ります。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  476. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しましだ。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  477. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  478. 江藤隆美

    江藤委員長 この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大村防衛庁長官
  479. 大村襄治

    大村国務大臣 一言ごあいさつ申し上げます。  ただいま防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につきまして、慎重な御審議の結果、御可決をいただきましてまことにありがとうございます。私といたしましても、本委員会における審議の内容を十分に尊重いたしまして、防衛庁に与えられました任務の遂行に全力を尽くす所存でございます。  ありがとうございました。(拍手)
  480. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る六日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十七分散会