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1980-10-30 第93回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月三十日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    小渡 三郎君       大原 一三君    粕谷  茂君       川崎 二郎君    木野 晴夫君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    玉沢徳一郎君       角屋堅次郎君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       榊  利夫君    中島 武敏君       河野 洋平君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         国 務 大 臣         (内閣官房長官宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君  委員外出席者         外務省欧亜局東         欧第一課長   兵藤 長雄君         大蔵省主計局主         計官      畠山  蕃君         農林水産省経済         局国際部長   古谷  裕君         運輸省航空局管         制保安部長   武田  昭君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     玉沢徳一郎君 同日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     有馬 元治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島武敏君。
  3. 中島武敏

    中島(武)委員 最初に、官房長官岡崎発言についての政府統一見解の問題についてお尋ねしたいと思います。  政府統一見解が出されまして、一昨日の当委員会におきまして宮澤官房長官から発言がありました。率直に言って、この政府統一見解宮澤長官発言には非常に大きな矛盾があると思うのであります。政府統一見解岡崎発言を追認しているものと読めます。少なくとも岡崎発言を否定はしておりません。ところが官房長官発言は、これは速記から起こしたものでありますが、「防衛庁参事官が、防衛見地から見て、朝鮮民主主義人民共和国軍事力が強化されておる、それで潜在的な脅威の増大である、専門家立場として防衛の面からそういう判断を申し上げたものと考えますが、政府全体といたしましては、無論防衛も必要でございますが、外交経済文化交流その他いろいろな面で総合的に国の政策を決定するあるいは判断をいたさなければなりません。そういう立場から申し上げますならば、朝鮮民主主義人民共和国わが国に対して潜在的な脅威であるという判断を下しますことは国益に合致しない、私はさように考えております。」こう答弁をされておるわけであります。岡崎発言専門家立場からの発言である、しかし政府としては朝鮮民主主義人民共和国に対して潜在的な脅威という判断は、これは国益に合致しない、こう言っておるのでありますから、非常に大きな矛盾であると言わなくてはなりません。  そこで、私は率直に申しますけれども政府統一見解をはっきり書き改めるべきではないかというように考えますが、長官どうでしょうか。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府統一見解とおっしゃったものは、私が委員会の再開に際して読み上げましたものを言われたと思います。それから、ただいまお読み上げになりましたものは、その後に私がいわば御質問に答えてお答えを申し上げたことでございまして、両方の間に私は矛盾をしている点はないと思っております。
  5. 中島武敏

    中島(武)委員 これは非常に大きな矛盾ではありませんか。私先ほど言いましたように、最初長官がここで述べられたいわゆる政府統一見解、これは岡崎発言を追認している、これは非常にはっきりしていると思う。少なくともこれを否定しているものではありません。しかし、その次の官房長官発言は、これに対して、繰り返しますけれども国益に合致しないという政府見解を述べているわけであります。この点では非常に矛盾している。矛盾していないと言われるのは、どういう点において矛盾していないと言われるのか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 専門家立場からいろいろ研究をし考えるということは大切なことでございますし、また国会お尋ねがあればそれを政府委員としては申し上げなければならないと思います。政府が総合的に判断をいたしますときに、そういう専門家の意見はもちろん参考にいたしますが、それがそのまま政府としての判断になるわけではない。私がお答え申し上げましたのは、国益云々と申しました、そういう観点から私としてはそういうことを断定しない方がいいということをお答え申し上げたのであります。
  7. 中島武敏

    中島(武)委員 そこがおかしいじゃありませんか。いまの官房長官の話を聞いておりますと、専門家立場から専門的な発言をするのは構わない、しかし政府がそういうふうに判断をするのはよろしくない、こういう立場だと思う。つまり、岡崎参事官が述べた発言を容認していらっしゃる、かばっていらっしゃる、そういうことでありますね。  私は、内閣というのは一体原則でなければならないと思う。岡崎参事官もきわめて責任のある立場の人間であります。専門家だからこういう発言は許されるんだ、政府は違うんだ、これじゃ政府の統一的な見解とは言えないじゃありませんか。政府の統一的な見解から見て、専門家発言だけれどもこれは正しくない、こういうふうに言わなければ、野放しにしてほうっておくということは正しいことではない。だから、はっきり間違いだ、こういうふうに言うべきではありませんか。内閣一体原則からいって、私は当然そうあるべきだと思うのです。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、所属の長であるところの防衛庁長官からすでにこの委員会で御答弁をなさっていらっしゃいます。それで私はよろしいのだと思います。
  9. 中島武敏

    中島(武)委員 防衛庁長官発言したことを政府の統一的な見解として認めるということでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる岡崎発言につきまして防衛庁長官がこの委員会で所見を述べておられますので、その点はそれをもって政府見解とお考えください。
  11. 中島武敏

    中島(武)委員 そうだとするならば、この政府統一見解の中ではっきり述べるべきではないでしょうか。つまり、この委員会において宮澤官房長官から発言のあった、私たちも文書で手にしているこの政府統一見解とそれから宮澤官房長官発言大村防衛庁長官発言、こういうふうに三つあるわけであります。一体政府統一見解というのは何なのかということは、当然のことですけれどもここで問題になります。そうした場合には、やはり一番当初の官房長官発言であるいわゆる政府統一見解、これが有権的に見られるのではないかと思うのです。そういう点から言うと、三つ発言があるということではなくて、どれが統一見解なのか、ここをきちっとはっきりさせるべきではありませんか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、朝鮮民主主義人民共和国が潜在的な脅威であるかないかということにつきましては、せんだって私から、防衛面のみならず外交経済文化交流等々総合的に判断をしなければならない問題であって、そういう総合的な国の判断から言えば、これを潜在的脅威と断ずることは国益にならないと思います、そういうお答えをいたしました。この答えについては、大村防衛庁長官も同感であるということをこの委員会で述べておられます。したがいまして、この点についての政府の考え方ははっきりいたしておると思います。  次に、いわゆる岡崎発言についてどう考えるかということにつきましては、この委員会において大村防衛庁長官から、それは言葉足らずであり、不適当であったと思いますので、政府統一見解どおり今後そういうことがないように努力してまいりますと答えておられまして、この点もはっきりいたしておると思います。
  13. 中島武敏

    中島(武)委員 それは個々にはっきりしているのでありまして、政府岡崎発言についての統一見解は何かということになりますと、いろいろな経過を経て、これこれの発言があって、これこれの発言があって、これが統一見解でございますというぐらいわかりにくいことはないのです。当委員会において議論がありました。あった現在、だれが見ても政府統一見解というのは何なのかということがはっきりわかるように書き改めるべきじゃないか、そういうふうに思うのです。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 防衛庁長官並びに私からこの委員会で申し上げましたことは速記録にも載っておりまして、それをもって政府見解と御理解をいただきたいと思います。
  15. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、いまの官房長官発言責任のある発言ではありますけれども、しかし、どれが統一見解かということを言われた場合には、はっきりしていると言えばはっきりしているかもしれませんけれども、はっきりしていないと言えばはっきりしていないということになるわけでありますから、これはきちんと、これが政府統一見解であるというものを書き改めるということが必要じゃないか。つまり、当初に発言のあった統一見解、それからこの委員会の中で議論があって、発言があって、そして結論に達している。だとするならば、それをきちんと統一的に書き改めるということをやらなければならぬのであります。しかも宮澤長官は、矛盾しないのだ、こういうふうに先ほども発言しておられる。矛盾しないのだということになるならば、これはますますもってわかりにくくなってしまうのです。重ねて私はきちんと統一するべきであると思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 防衛庁長官並びに私が当委員会お答え申し上げましたことは速記録において明確でございます。それが政府統一見解である、このように御理解をいただきたいと思います。
  17. 中島武敏

    中島(武)委員 私はこの問題についてはなかなか納得しかねますが、しかし、これは押し問答になってしまいます。したがって、政府統一見解を書き改めるべきであるということをもう一度強く要求をして、次の問題に移りたいと思います。  次の問題は、のっけから大村防衛庁長官お尋ねします。  実は昨日の毎日新聞夕刊で、E2Cの売り込みに対する疑惑問題が報道されております。この毎日新聞夕刊によりますと「米ウォールストリート・ジャーナル紙は二十八日付で、レーガン共和党大統領候補外交顧問リチャードアレン氏が、日本人の大学教授タカセ・タモツ氏と協力して、七二年八月の日米首脳会談で、グラマン社早期警戒機の対日売りこみが決まるよう裏工作をした、と報道した。同紙はその裏づけとしてアレンタカセ両氏の間でかわされた「二人の共同根回しによりハワイ会談は(E2Cに関して)大きな成功となった」といった、いくつもの書簡を公表している。同報道はさらに、アレン氏がニクソン政権の一員だった時、ホワイトハウスの対日貿易政策についての会議秘密情報タカセ氏に流していたことを示す書簡類をも明らかにした。」こう報道しているわけであります。さらに詳細は「アレン氏はタカセ教授にあてた七二年十一月二日付の手紙で「(日米首脳ハワイ会談はなかなかうまくいったが、私の(E2Cに関する)メッセージは会談関係者にとって極めて有用となった、と聞いている」と述べている」あるいはまた「タカセ教授はこれに答える書簡で「会談はあなた(アレン氏)とわれわれの(E2C売りこみについての)共同根回し工作により、大きな成功となった」と述べている——などと伝えている。」このように報道しておるわけであります。  この問題は、しかし何も昨日の毎日新聞夕刊が初めて報道した問題ではありません。七二年の七月にホワイトハウス別館にチータム・グラマン・インターナショナル元社長がアレン大統領補佐官を訪問してE2C売り込み協力依頼を行ったという証言が、すでに七九年一月二十六日付の東京新聞で詳細に報道をされております。さらに、これは何もアメリカ側からだけ問題が出ているのではありません。日本側におきましては、日商岩井海部八郎ハワイ会談国防会議の前後に田中角榮を私邸に訪問したという証言を行っておるのであります。これは五十四年の二月十四日の衆議院予算委員会におけるグラマン問題の証人喚問の席上における発言であります。さらに言いますと、五十四年度の予算におきまして、E2Cに関する疑惑が非常にあったにもかかわらずE2Cを予算計上を行って、そして私ども共産党はこれの削除要求をいたしましたが、しかしこれは執行は一時凍結ということになりまして、七月十二日に凍結解除という措置がとられたわけであります。これがこのグラマン疑惑幕引き出発点になったわけであります。  いまここで、再び毎日新聞夕刊の報じるようにE2Cの疑惑が明るみに出てきているわけであります。私は、このE2Cの予算計上は当時削除すべきであったと思うのでありますが、この一連の問題については政府にも非常に重大な責任があると私は思うのであります。わが国防衛が黒い霧に包まれているというようなことは重大な問題であります。そこで、私はこの問題について直ちに調査をするべきではないかと考えるのでありますが、長官見解を伺いたいと思います。
  18. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの御質問につきましてお答え申し上げます。  まず、事実関係につきましては装備局関係事項でございますので、政府委員装備局長からお答えさせていただきます。
  19. 和田裕

    和田(裕)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、E2Cの問題につきましては、前の国会におきましてもかなり議論されたというふう  に承知しておりますところ、いま御指摘アレン氏との関係につきましては、防衛庁としてはこれに何ら関与する点がない、防衛庁としては純防衛的な見地からE2Cの購入を決定したものであるということを再三申し上げたところでございますし、またE2Cの購入につきましてはFMSを利用いたしまして買っておるということでございまして、したがいまして、その価格の内容それから購入方法等につきましてもきわめて厳正に行っておるということを申し上げてきたわけでございます。本件につきましても、そういったような観点でこの問題を受けとめておるということでございいます。
  20. 中島武敏

    中島(武)委員 このE2Cをめぐる問題、どこでこの問題が舞台としてやられたかということについては七二年夏のハワイ会談であります。この七二年夏の田中ニクソンハワイ会談、ここでロッキードトライスターだけではなくて、民間機だけではなくて軍用機についても非常に疑惑があるということが明らかになってきておるのであります。ロッキードトライスター問題、この問題はすでに公判においても出されております。ニクソン田中にロッキードよろしくと言ったという問題であります。  ところが、それだけではなくてP3C、この点についても四十七年十月九日の国防会議で、PXLはそれまで国産化方針をとっておったのですけれども、突如として当時の田中総理のツルの一声で白紙還元され、それから輸入方向が出されていったのであります。この問題については海原治氏がすでに国会において証言をしているところであります。E2Cについても同じであります。E2C、これについても、AEWは国産化方針をとっておったのですけれども、P3Cと同じように突如として白紙還元をされて、そしてこの輸入方向が出されてきたわけであります。  いま防衛庁局長でございますかからお話があったけれども、私どもは依然としてこれは重大な問題だと思っております。そして、いま新たにここに毎日新聞夕刊報道するような事実が浮かび上がってきている。そういう点では、ただ突っ張っているだけじゃなくて、わが国国防に関する重大な問題でありますから、いまこの新たな事実を前にして、もう一度しっかりと調査をすることが、必要ではないでしょうか。国民疑惑の目で見ているもとで防衛行政が行われるということは全く正しいことではありません。その点で長官どうでしょう、長官見解をお聞きしたいと思うのです。長官答弁してくださいよ。
  21. 大村襄治

    大村国務大臣 まず政府委員から。
  22. 和田裕

    和田(裕)政府委員 本件につきましては、先生御承知のとおり五十四年五月三十日衆議院航空機特別委員会におきまして刑事局長報告されておりまして、その報告内容につきましては当委員会委員に配付されているというふうに承知されますところ、関係のところをちょっと読ましていただきますと「いまだグラマン社から日商岩井にE2Cに関する販売手数料が支払われた事実がなく」云々、こういうことで、ちょっと約しますが、これに関して犯罪の容疑を認めるには至らなかったというふうな報告もございます。  いずれにいたしましても、こういった容疑につきましては、これは捜査当局のお仕事でございますので、私どもはこの席でそれにつきまして申し上げられることは、さきの答弁で申し上げましたとおり、防衛庁としてはアレン氏なる方とタカセ氏なる方の間の関係等については一切関知しておらず、純防衛的な見地から厳正に選定を行った、しかもその調達については最も厳正な方法調達を行っているということを申し上げることにとどめさしていただきたい、そういうふうに考えております。
  23. 中島武敏

    中島(武)委員 長官どうですか。長官防衛庁責任者ですよ。防衛庁責任者として、いまここに新たにE2C売り込み問題について大変具体的な疑惑が浮かび上がってきている、過去の経緯もある、現在新たな問題も出てきている、こういう中で、いまここで改めて調査をする、調べるということが必要じゃないでしょうか。国民疑惑を晴らすべきじゃないですか。もうこれは決着済みの問題だ、こういう姿勢でいま防衛庁長官が臨んでよろしいですか。長官見解をお聞きしたいと思います。
  24. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま政府委員が申し上げましたとおり、防衛庁といたしましては、この問題の処理に当たりまして厳正に処理したものと考えております。せっかくもう一度調査せよというお話でございますが、防衛庁といたしましては、さらに調査する考えは持っておりません。
  25. 中島武敏

    中島(武)委員 新たな問題が出てきているのですよ。長官よく御存じでしょう。それにもかかわらず突っぱねる。これは万人をして納得せしめませんね。国民はちっとも納得しないと思うのです。私は、長官がやはり調査をしてみる、新たな問題が出たのですから、ここではっきりやってみて、そして国民疑惑を晴らすということが必要であると思うのです。それはどうしてできないのですか。もう一回答弁を……。
  26. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  お尋ねの点につきましては、防衛庁調査権限事項かどうか、その点に疑問を持っておりますので、むしろ司法当局なり何なり権限を持っておる方の調査防衛庁としてはお任せするのが筋ではないか、さように考えた次第でございます。
  27. 中島武敏

    中島(武)委員 これは捜査権の問題ではない。捜査権の問題ではなくて、国民はこういう報道がされれば疑惑の目が防衛庁に向くことはあたりまえじゃありませんか。それに対して防衛庁長官として調査をしてみる、そして調査をして、シロならシロクロならクロ、こういうことをやるべきではありませんか。これは国民要望に対する長官としてのとるべき態度ではありませんか。
  28. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねの問題についての調査権限を持っておりますのは、防衛庁ではなくて、むしろ法務省ではないかと考えております。法務省調査されるかどうかはまた法務省の問題ではないかと思うわけでございまして、防衛庁立場におきましては、せっかくのもう一度調査せよという先生の御要望に対しまして、調査をするというお答えをいたしかねるわけでございます。
  29. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの答弁は、あれですか。私は調査権限のとを言っているのではないのです。ないのですけれども長官答弁は、法務省でこれをやってもらいたい、そういう意味ですか。
  30. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。調査するかどうかは法務省の御判断にお任せしたい、こういうのが私の答弁の趣旨でございます。
  31. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、一貫して、この権限を持って法務省調査するかしないかという問題を問題にしているのではないのです。防衛庁の問題でありますから、特にE2Cの問題です。これは防衛庁購入する飛行機なんです。その問題に非常に大きな疑惑があるという新たな事実が出てきているのですから、それに対して防衛庁長官がやるというのはあたりまえじゃないかということを申し上げているのです。しかし、どうも幾ら答弁を聞いておってもみずから進んではっきりさせるというふうには言いませんので、私は重ねてこの問題についても、長官はそういう答弁をしておるけれども、もう一回思い直して、国民疑惑を晴らすという立場に立つべきだということを要請したいと思うのであります。  同時に、委員長、私どもはいまここで防衛三法の論議をやっております。また、わが国防衛問題について、防衛行政の問題についていろいろ議論をしているわけであります。その最も重要な中身の問題として、E2C、これに黒い疑惑があるということが出てきているのでありますから、私は当委員会としてもこの問題について明確に究明をして、そしてはっきりさせるべきであるというように考えるわけであります。そういう点で私は、京都産業大学教授高瀬保氏を当委員会証人喚問をして、当委員会がこの問題の疑惑解明に当たることを要求したいと思うのであります。
  32. 江藤隆美

    江藤委員長 理事会で御相談したいと思います。質問を続けてください。
  33. 中島武敏

    中島(武)委員 では次に、日米防衛協力指針ガイドラインの問題についてお尋ねをいたします。  まず、このガイドラインが閣議了解されましてからもう約二年になります。そこで最初に私、この機構と運営の問題についてお尋ねしたいのです。日米防衛協力小委員会、この小委員会の下に作戦、情報後方支援、この三つの部会が設けられているわけですか。
  34. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘三つの部会は設けられておりましたが、五十三年十一月末の指針の決定までの作業をやったわけでございまして、現在は部会は設けられておりません。
  35. 中島武敏

    中島(武)委員 そうしますと、このガイドラインの具体化の作業はどこでやっておられるのですか。部会を設けるという形ではやっていないわけですね。
  36. 塩田章

    ○塩田政府委員 十一月末にガイドラインが決定されました後、十二月の十五日に防衛庁長官から統合幕僚会議に研究作業を進めるように命令が出まして、現在日本側では統合幕僚会議事務局が中心になりまして在日米軍司令部との間に進めておりまして、陸海空それぞれの自衛隊におきましては、在日米陸海空軍それぞれのカウンターパートで協議をしながら、統合幕僚会議がその調整をやりながら進めておる、こういうやり方をとっております。
  37. 中島武敏

    中島(武)委員 ちょっとまだわかりにくいのです。いまも言われたのは、統幕の事務局が中心になって、そして在日米軍と一緒になって作業を進めている、陸海空の三つの自衛隊は自衛隊で作業を進めている、そういうことでございますか、ちょっとわかりにくいのです。
  38. 塩田章

    ○塩田政府委員 全体を統合幕僚会議の事務局が日本側としましては統制をとって、その中でもちろん統合幕僚会議事務局と米軍司令部との間にも作業を進めておりますが、それぞれの自衛隊がそれぞれの陸海空米軍司令部との間に作業を進めておる、全体的には統合幕僚会議事務局が調整しながら進めておる、こういうことでございます。
  39. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの問題なんですけれども、そうすると、統合幕僚会議の事務局とそれから在日米軍の司令部と、これはどういうところで会合をおやりになるのですか。これは何とか委員会というような名前の組織がつくられていて、それで定期的に会合するとか、そういう作業の進め方でございますか。
  40. 塩田章

    ○塩田政府委員 別に名前をつけて組織をつくってやっておるわけではございませんで、双方の関係者が、ときには向こうに行ったり、ときにはこちらに来たりというかっこうで進めておるわけでございます。
  41. 中島武敏

    中島(武)委員 統合幕僚会議の事務局とそれから在日米軍の司令部との間では、もうかなり何回も協議をしているものですか。
  42. 塩田章

    ○塩田政府委員 作業を進めております。
  43. 中島武敏

    中島(武)委員 私がお尋ねしたのは、二年間たっていましてもまださっぱり出てきませんし、一体熱心にやっておるのだろうか、やってないのだろうか、よくわからないのですよ。そういう点では、一週間に一回ずつやっているのだとか、いやもっと頻繁にやっているのだとか、いや一月に一回くらいだとか、その辺がわからないのです。
  44. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように作業は進めておりますが、いまの具体的な回数でございますが、一週間に何回、一カ月に何回、そこまでは私承知いたしておりません。
  45. 中島武敏

    中島(武)委員 そうすると、こちらの日本側の三軍とアメリカ側の三軍が同時に協議しながらやっている、こういうことになっていますね。これは、いろいろと分科会や何か設けたり、そういうかっこうでやっているものなのでしょうか。ただ漠とばっと集まってやっているというようなものなのでしょうか。
  46. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本側は三軍ではございませんで三自衛隊でございますが、お尋ねの、いろいろな分科会とかなんとかそういうものを持っておるかということでございますが、御承知のように日米の指針の中に項目がございます。作戦計画でありますとか後方支援態勢でありますとか、そういう項目によってそれぞれの専門家が集まってやっておる、こういうことでございます。
  47. 中島武敏

    中島(武)委員 それはどれくらいの項目でございますか。いま作戦とか情報とか後方支援とか、こういう項目でやっておられる、あるいはもっと細かに、作戦なら作戦の中でも幾つもに分けて精密にやっておられる、そんなことですか。
  48. 塩田章

    ○塩田政府委員 項目といたしましては、指針の中にございますけれども、作戦計画のほかに日米の調整機関の問題、準備態勢の問題、情報交換の問題、そういったような項目がございます。その中でどういうやり方をしているか、それはそれぞれまた専門家がおりますので、会合のときにそういう人が集まってやっているということでございます。
  49. 中島武敏

    中島(武)委員 たとえば日本の航空自衛隊とそれから米軍の空軍と会議をやる、このときには内局の方は出席をしておられるものなんでしょうか。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 ガイドラインでかなり詳しく研究すべき方向を示してありますので、それから個個の具体の作業をいまやっておる段階でございますので、一々私どもが、内局の者が参加するということはいたしておりません。
  51. 中島武敏

    中島(武)委員 それじゃ専門家といいますか制服に任せているというふうに理解をしていいわけですか。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 個々の作業の中には私どもが入っておりませんが、逐次、連絡でありますとか報告でありますとか、そういうことはもちろん受けております。
  53. 中島武敏

    中島(武)委員 陸海空それぞれが、日本側なら日本側で一緒に集まってよく議論してみるとか、あるいはまた米軍の方も陸海空、日本側と一緒になって議論をするとか、そういう機会もあるわけですか。
  54. 塩田章

    ○塩田政府委員 米軍側はどうやっているかわかりませんけれども日本側は先ほど申し上げました統合幕僚会議事務局が必要に応じて作業の調整をしておるわけであります。
  55. 中島武敏

    中島(武)委員 幾らかわかったのです。私も素人ですから少しわかったという気がするのですけれども、先ほど局長は、作業はかなり進んでいるというふうに言われましたが、これはどの程度進んでいるものですか。
  56. 塩田章

    ○塩田政府委員 かなり進んでおると言いましたのは、先ほど申し上げました幾つかの項目の中の作戦計画の分野でございまして、それ以外の分野につきましてはまだ余り進んでおりません。したがいまして、全体的な作業としてはまだ余り進んでないというような段階でございます。
  57. 中島武敏

    中島(武)委員 全体としては余り進んでいない。作戦計画の方は何で先に進んでいるのでしょうか。ほかはなぜこうおくれるのですか、よくわからないのです。
  58. 塩田章

    ○塩田政府委員 実際に始めてみますと、日米間の作業に入る前、研究に入る前のいろいろな調整というのが実は案外手間がかかったわけであります。たとえて言いますと、用語一つをとりましても、お互いに考えている概念がぶつけ合ってみると違っておってみたり、そういうようなこともいろいろありますので、必ずしもスムーズにいかなかった点がございますが、その中でも作戦研究の分野につきましては双方かなり進んでおるという状態までいま来ておるわけでございますが、そのほかの分野につきましても逐次いまから進めていきたいと思っております。
  59. 中島武敏

    中島(武)委員 作業の完了はいつごろを目標とされておりますか。
  60. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま作戦計画の分野についてはかなり進んでおると申しましたが、これは計画ができるとかいうことではなくて、最初ガイドラインでよく示してありますように研究を進めていくということでございます。まとまった何らかの計画をつくり上げるということではなくて、お互いに研究を進めていくという性質のものでございます。作業としてはかなり進んでおりますけれども、いつになったらでき上がるというものではなくて、研究を続けていく、言うなればエンドレスのような形になるかと思いますが、そういう性格を持ったものでございますので、いつ幾日何々計画ができた、こういうふうなことを考えておるわけではございません。
  61. 中島武敏

    中島(武)委員 私が思っていたのとはいまの局長答弁は全然違うのです。私は素人だからそう思うのかもしれませんけれども、エンドレスつまり終わりがないわけですか。ずっと研究を続けていく、それはいつまでたってもどんどん続いていくものであって、情勢の変化や何かに対応して幾らでも続いていく、そういうふうに考えればよろしいのですか。何かまとまった計画ができ上がって報告をされるという性質のものではない、そういうふうに理解していいわけですか。
  62. 塩田章

    ○塩田政府委員 要するに研究をするということでございまして、作戦なら作戦についての研究をするというのが任務でございまして、そういう意味では具体的な、コンクリートな一つの計画をつくり上げるということを目指しておる作業ではございません。
  63. 中島武敏

    中島(武)委員 実はこれは十月二十九日付の朝日新聞でございますが、これを読みますといろいろなことが書いてあります。「「日米防衛協力のための指針」は五十三年十一月、日米両政府間で合意され、これをもとに「日本有事を想定して、地図と時計をにらみながら、兵員、兵器、弾薬などの展開、移動をシナリオ化」する日米共同作戦計画づくりが」進められている、こういう記事があるのです。  それで、いまのお話だとまだよくわからないのですけれども、何か計画をコンクリートなものにするというのじゃないんだという局長お話ですね。これによりますと、地図と時計をにらみながらシナリオ化していくんだ、こういうふうになっているのですけれども、やはり多様なシナリオの作成ということはおやりになるんじゃないのですか。
  64. 塩田章

    ○塩田政府委員 作戦計画の研究でございますから、わが国に対する侵略の態様を設想の上で、自衛隊及び米軍の作戦上の要領、これに関連した後方支援の手続、そういったようなことを研究するわけであります。
  65. 中島武敏

    中島(武)委員 そうしますと、たとえば日本に対する侵攻勢力の規模の大きさに応じてどう対応するかということで幾つかのシナリオを書く、こういうふうになるわけですか。そこのところはどうなんですか。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 侵略の態様というのは全く千差万別といいますか、いろいろな形が考えられますので、そういう意味では何らかの設想をするというふうに——一応何らかの設想をしないと作業になりませんので、そういう意味で申し上げたわけであります。
  67. 中島武敏

    中島(武)委員 これはガイドラインにも出されていることですけれども、主権侵害の態様に応じて、たとえばおそれのときですね、直接日本が攻撃をされたというのではなくて攻撃をされるおそれがあるとき、そのときにどうするかというようなシナリオといいますか、どう対応するか、そういうことも当然この中では研究されているわけでしょうか。
  68. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように、指針の中に「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」という項目がございますので、その場合についての研究も含まれるわけでございます。
  69. 中島武敏

    中島(武)委員 わが国が攻撃を受けた場合に、米軍の行動もやはりシナリオ化しているわけでしょうか。たとえば日本のどこそこが攻撃を受けた、そのときにアメリカのどの部隊がどういうふうに動くのだというようなこともおやりになっていらっしゃるのですか。
  70. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど一つの一応の設想をして研究しておるのだということを申し上げました。その点で御理解をいただきたいと思います。
  71. 中島武敏

    中島(武)委員 ちょっとくどいようなんですけれどもガイドラインの考え方というのは、日本が攻撃を受けた場合には日本は独力で守るのだということが原則になっておりますね。そして手に負えないときには米軍が来援をするということが書かれているわけですけれども、どういう段階になったらアメリカ軍は出てくるわけなんでしょうか。
  72. 塩田章

    ○塩田政府委員 そういうことをいま研究しておるわけであります。
  73. 中島武敏

    中島(武)委員 大変くどいようで恐縮な面もあるのですが、非常に大事な問題なものですから、中身をストレートには言えないだろうと思いますけれども、いろいろ聞かせてもらいたいのです。  そういうことをいま研究しておられるというのですけれども、そうすると、陸上の兵力はどれぐらい来るかとか、そういうかなり詳細な検討というようなことは、当然のことですけれどもいろいろ研究している研究の中に含まれるというふうに理解してよろしいわけですね。
  74. 塩田章

    ○塩田政府委員 いろいろな場合が考えられますので、一応の設想をして研究しておる、こういうことでございます。
  75. 中島武敏

    中島(武)委員 ガイドラインが出されたのは五十三年十一月の末です。このときの情勢と現在の情勢というものを見てみる場合に、非常に大きな変化があると思うのです。昨年の二月にイランの政変がありましたし、それからまた昨年の暮れに許すべからざるアフガン侵攻という問題も起きました。そしてまたいまはイラン・イラク戦争というものも発生しています。  それで、ガイドラインを具体化するという場合には、こういう情勢の変化というものも当然念頭に置いてといいますか、そういう情勢の変化に対してどう対応するか、こういうふうに考えて具体化の作業を策定しておられるのではないかと思いますけれども、そういうふうに理解しておいてよろしいですか。
  76. 塩田章

    ○塩田政府委員 どの情勢をというふうには申し上げられませんけれども、いろいろな情勢を考慮することは当然でございます。
  77. 中島武敏

    中島(武)委員 重ねてなんですが、今月二十四日に参議院の安保特別委員会が開かれて、ここで外務大臣が演説をして言っておられるのは、米国は中東地域における海上航行の安全等を確保するため、アジア・太平洋の米軍事力を割くことを余儀なくされている、そういう判断を示して、その状況下でわが国がなし得ることは、憲法の枠内で自衛力の整備を促進し、日米安保体制の一層の円滑な運用を図っていくことだ、こういう趣旨のことを発言しておられる。  これは何かと言えば、よく言われているスイング戦略であります。このスイング戦略を実施する  ことになれば、これはまた、いま言われておりますように日本の自衛隊をもっと強化しなければならない、こういう話が出てくるのですけれども、こういう情勢そしてまたそれに対応してアメリカのいろいろな戦略が打ち出されてくる、そのもとで日本の自衛隊がどういう役割りを果たすかという問題、こういう点は、何かくどいようなんですけれども、当然このガイドラインの研究には反映をしていると思ってよろしいわけでしょうか。
  78. 塩田章

    ○塩田政府委員 日米ガイドラインに基づく研究は、日本が侵略を受けたような事態に対しまして、御承知のように、限定、小規模であれば独力で排除する、それ以上であれば米軍の来援を得て日米共同態勢で排除する、こういう考え方に立って研究しておるわけでございます。したがいまして私どもは、その場合の日本の自衛隊の果たすべき役割り、それに対して米軍の支援の形というものはガイドラインの中に記述してございます、その線によって研究しておるわけであります。
  79. 中島武敏

    中島(武)委員 長官に伺いたいのですけれども、このガイドラインには前提条件がつけられております。「事前協議に関する諸問題、日本の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は、研究・協議の対象としない。」こういうふうに前提条件がつけられていることは御存じのとおりであります。そこで、これは前提条件ですから、いま言った事前協議に関する問題とか憲法上の制約の問題であるとかあるいはまた非核三原則ということを度外視して研究をされていると思うのです。私はそういうふうに理解をしております。そうすると、いまやられている研究というものの中には憲法や非核三原則に抵触するものも出てくるんじゃないかと思うわけであります。  たとえば、このガイドラインの中でも、アメリカは核抑止力を持ち、即応部隊を前方展開するということが非常に明快に述べられているわけです。そうすると、これは核持ち込みがやられる作戦計画があるいは出てくるかもしれない、私はわかりませんけれども。しかし、こういうふうに書かれておれば、そういうことも作戦計画の中ではいろいろと研究をされているのではないかという気がするわけであります。それから、たとえばまたアメリカの始める侵略戦争に、日本が攻撃されたという口実で自衛隊をアメリカの軍事作戦に参加させる段取りというものがあるいは出てきているかもしれない、こういういろいろな問題、こういうときに長官はどういうふうに対処しようとしておられるか、この点を伺いたいのです。
  80. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  確かに先生指摘のように、前提条件として「事前協議に関する諸問題、日本の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は、研究・協議の対象としない。」とはっきりうたっておるわけでございます。この前提条件は守っていかなければならないものと私は考えておるわけでございます。お尋ねの具体的な点につきましては政府委員をして答弁させます。
  81. 中島武敏

    中島(武)委員 いや長官、違うのですよ。前提条件をしっかり守っていくというふうにいま答えられましたけれども、この前提条件をしっかり守れば、実際には核持ち込みというようなこともやられるかもしれない、あるいは憲法の制約を取り払う、たな上げしていろいろやる、そういう研究が出されてくるかもしれない。そうすると、それに対して長官はどういうふうに対処されるつもりか、こういうふうにお聞きしたのです。
  82. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの点につきましては政府委員答弁させます。
  83. 塩田章

    ○塩田政府委員 核抑止力につきましては米国に依存するという立場をとっておりますけれども、いまもお話がございましたように、非核三原則はもう前提条件になっておるわけであります。非核三原則の中には、御承知のように持ち込ませずも入っておるわけでございます。ですから、先生の御指摘の核を持ち込まれるのじゃないかというようなことは、初めから前提条件で外しておるわけでございますから御心配ないわけであります。  また、アメリカが始めた侵略戦争の場合に云々というお言葉もございました。具体的にどういうケースを想定しておられるのかわかりませんが、私どもは、先ほどから申し上げておりますように、日本が侵略された場合に、日本が独力で排除する以上の必要がある場合、米軍との共同作戦についての研究をしておるわけであります。
  84. 中島武敏

    中島(武)委員 何か前提条件についての見解が百八十度違うようであります。この「研究・協議の対象としない。」ということで私が受け取っておる考え方は、いろいろと情勢に対応し、また攻撃を受けた場合にどうするかということを研究するというときには、この憲法上の問題、事前協議の問題あるいは非核三原則のことなどはちょっと構っちゃおられない、だからいろいろの必要なことを全部やる、こういうふうに私は受け取っておるわけであります。  ところが、いまのお話の前提は、むしろこういうことは研究するまでもない、もう大前提としてあるのだという考えでありますけれども、そこは非常に見解が違うのです。違うのですけれども、いろいろ研究されたものが統幕事務局に取りまとめられる。先ほどのお話ではエンドレスで——報告があるのかどうか、そこのところを最初お尋ねしておきます。そうでないと、私の言っている意味がはっきりしなくなるかもしれませんから。
  85. 塩田章

    ○塩田政府委員 コンクリートなプランをつくるのではないという意味では、エンドレスに研究作業は続けていきますということを申し上げました。そのいろいろな段階で長官報告する時期は当然あるわけでございます。
  86. 中島武敏

    中島(武)委員 長官報告されるときがあるわけですね。そのときに長官はその中身を見て、さっき局長が言ったようなことは言われているけれども、しかしこの点は憲法に違反するあるいは非核三原則に違反するとか事前協議の問題が抜けてしまっておるとかいう場合には、長官としてはどう対処されるか、私が聞いております意味はこういうことであります。
  87. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど読み上げました前提条件を素直に読みますと、非核三原則を日本は守っているのですから、それに合致しないようなことは研究・協議の対象としないというのが素直な受けとめ方ではないかと私は思っておるわけでございます。先生は、そうでない、こう言われるわけでございますが、私はこれを読んでみまして、先生のような受け取り方をされるのはちょっとどうかなという気がしているわけでございます。したがいまして私といたしましては、そういったような研究の結果が私のところに出されるようなことはまずないものと考えております。
  88. 中島武敏

    中島(武)委員 この点はかみ合わないわけであります。私は率直に申せば、ガイドラインの具体化というのは非常に危険な作業の進行だと思っています。また、日本有事とかあるいは極東有事ということを口実にして自衛隊をアメリカの軍事作戦計画に参加させる具体的な取り決めなんじゃないか、研究なんじゃないかというふうに思っているわけであります。しかも日本の軍事的な責任分担というものを明らかにする、そういう性質のものだと思うのです。だから私は、これは日本の有事対処という口実で実は日本を戦争に巻き込む大変危険なものだと思っております。日本の安全を本当に守ろうということのためには、安保条約を廃棄する以外にはないという見解ですけれども、しかし、この問題についてこれ以上議論をすることは、時間の関係もありますし、別の機会に譲りたいというように思います。  では、引き続き別のことについて質問いたします。六月十日にF104自衛隊機が那覇空港に着陸ミスを犯した、この問題とスクランブルの問題についてお尋ねをしたいわけです。  最初に、運輸省の方来ておられるかと思いますが、お尋ねしようと思います。この事件というのは、沖繩県民にとっては非常に衝撃的な事件でして、沖繩県民だけではなくて、私どもも新聞の報道を見て非常に大きな衝撃を受けたわけであります。この問題について、どのような事故であったのかということについてちょっと最初お尋ねしたいと思うのです。これは運輸省ではなくて、自衛隊の方だとおっしゃるのでございますね。防衛庁の方にお尋ねしたいと思います。
  89. 石崎昭

    ○石崎政府委員 事故の概要について御説明いたします。  この事故は、本年六月十日、航空自衛隊の南西航空混成団に所属いたしますF104Jが同じ型の他の僚機一機とともに対領空侵犯措置のために六時二十分ごろ那覇飛行場を緊急発進しまして、任務を終了した後、七時十七分ごろ那覇飛行場に着陸したのであります。ところが滑走路をオーバーランいたしまして、滑走路の端から約三百メートルの地点で機体が折れて炎上いたしました、こういう事故でございます。その結果、不幸にして同機の操縦者である黒田幸次三尉が八時五分ごろ病院に収容されましたけれども死亡したということであります。  以上が事故の概要であります。
  90. 中島武敏

    中島(武)委員 この事故報告は、調査委員会を設けて調査をやっているわけでしょうか。  それからもう一つは、大変大きな衝撃的な事件でありましたし、調査結果について私は公表するべきだと思うのですけれども、その点ちょっと伺いたいのです。
  91. 石崎昭

    ○石崎政府委員 もちろん調査委員会を設けて事故の調査をいたしました。調査の結果のあらましは次のようなことでございます。  着陸した航空機が十分にスピードを落としていなかった、そのために、滑走路で着陸拘束装置、バリアと申しますひっかけてとめる装置、これによっておりてきた飛行機を捕捉することができなかった、それで滑走路をオーバーランしたということであります。それで操縦者が死亡しておりますので、最終的なところはもう推定するしかありませんけれども、機体の損傷とか滑走路の状況とかそういうものを調査した結果、着陸後の減速が不十分であってスピードが出たまま滑走路を行ってしまった、こういうことが調査の結果わかっております。
  92. 中島武敏

    中島(武)委員 この事故が起きたときに、記者会見などをしてきちんと調査結果を発表されましたか。
  93. 石崎昭

    ○石崎政府委員 いま申し上げましたようなことについては、そういう機会に説明してあります。
  94. 中島武敏

    中島(武)委員 緊急発進のために飛び立ったF104という話でしたが、このスクランブルをかけた相手の飛行機はどんな飛行機だったわけでありますか。
  95. 塩田章

    ○塩田政府委員 スクランブルをかけた場合の対象機につきましては、個別には申し上げることは部隊運用の細部にわたりますので差し控えておるわけでございますけれども、いま御指摘の飛行機について申し上げますと、アエロフロートのIL62という飛行機に対してスクランブルしたものでございます。
  96. 中島武敏

    中島(武)委員 運輸省にお尋ねします。  これはフライトプランが出されている飛行機だと聞いておりますが、そうでしょうか。
  97. 武田昭

    ○武田説明員 お答え申し上げます。  該当のソ連の航空機は、その飛行に関しましては、国際固定テレタイプ通信網を通じまして、その飛行についての通報がなされております。
  98. 中島武敏

    中島(武)委員 どのようなフライトプランが出されていたのか、特に経路、これについてちょっとわかりやすいように御説明をいただきたいのです。
  99. 武田昭

    ○武田説明員 ソ連のアエロフロート機の飛行の内容につきましては、通報によりますと、経路につきましては日本海から対馬海峡を通りまして九州の西側、さらには沖繩の西側の海上に至る、そういう経路が通報されております。
  100. 中島武敏

    中島(武)委員 私がいただいておる、これがいまお話をいただいたフライトプランに示されている経路だと思います。日本側がフライトプランを受け取る、そうすると、これは自衛隊の方には自動的に知らされるという仕組みになっているんじゃないでしょうか。
  101. 武田昭

    ○武田説明員 お答え申し上げます。通報されました内容につきましては運輸省から防衛庁の方に通報されることになっております。
  102. 中島武敏

    中島(武)委員 防衛庁お尋ねしたいのです。  この飛行機、先ほど局長の言われましたアエロフロートIL62、このIL62に対しまして最初にスクランブルをかけたのは自衛隊のどこの部隊でしょうか。
  103. 塩田章

    ○塩田政府委員 個々の対象機につきましてどの基地から発進させたかというお尋ねのようですが、そういう点につきましては公表を控えさせていただきたいと思います。
  104. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほどのお話でもわかっておりますように、南西航空混成団の八三航空隊、これがスクランブルをかけたというのは先ほど言われたとおりであります。しかし、それぞれの方面隊によって受け持ちの空域というのがありますね。そうすると、私が思い浮かぶ疑問は、南西航空団が最初にスクランブルをかけたのだろうかという気がするわけなんです。といいますのは、日本海の方からずっと来るわけですね。そうすると……(「来る方が悪い」と発言する者あり)来る方が悪いと言ったって民間機ですよ、フライトプランの出されている。それに対してスクランブルをかけるというのは、正式な言葉は私はよくわかりませんけれども、守備範囲がいろいろあるわけですから、だから常識的に考えて一体どこの部隊からかけたのかなということが知りたいわけなんです。
  105. 塩田章

    ○塩田政府委員 当該機につきましてスクランブルをかけたのは南西航空団の飛行機が最初ではないということだけ申し上げたいと思います。
  106. 中島武敏

    中島(武)委員 では西部航空方面隊の築城から飛び立っているというふうに理解をしてもよろしいと思うのですが、小松からもスクランブルをかけておられますか。
  107. 塩田章

    ○塩田政府委員 その点は、先ほど申し上げましたように、どこからということは差し控えさせていただきたいと思います。
  108. 中島武敏

    中島(武)委員 南混団はどこからどこまで追跡をしたのでしょうか。先ほどの局長報告によりましても約一時間飛んでいるわけですね。発進をしてから帰投するまで約一時間ありますね。そうすると、これは一体どこからどこまで追跡、アエロフロート機にくっついて走っておるものだろうかということが知りたいわけです。
  109. 塩田章

    ○塩田政府委員 私はまだ一時間ぐらい飛んだという報告を申し上げておりませんが、那覇の基地の飛行機でございますから、那覇の周辺といいますか沖繩の周辺の空域であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  110. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほどの御説明で、六月十日六時二十分に発進をして、それから同日七時十七分に帰着をしたとあなた言ったじゃありませんか。あなたじゃなくたって、防衛庁からちゃんといま報告受けたばかりですよ。それは局長とぼけて言ってくれちゃ困る。だからこれは約一時間なんです。約一時間というと相当、F104のスピードという問題もありますしあるいはアエロフロートのスピードという問題もありますけれども、しかしアエロフロートのスピードということを考えますと、これは何かこのアエロフロート機から離れてどこかよそで遊んで走っておったということじゃなかろうと思うのです。やはりくっついておったのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、その点を私お尋ねしたのです。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 スクランブルをかけました飛行機は、対象機を発見いたしました後必要な監視といいますか領空侵犯にならないような監視活動は続けるわけでございます。それが発進しましてから帰るまで約一時間であった、こういうことでございます。
  112. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、これまた本当に素人でよくわからないからちょっと伺うのです。アエロフロート機は相当なスピードで走っているわけです。キロ数に直すと時速八百五十二キロメートルですけれども、そうすると一時間といいますとこの八百五十二キロ、行って帰ってくるという問題がありますから必ずしもそのとおりではありませんけれども、しかし相当な距離を走っているものだということが思われるわけです。その点ではかなり遠くまで行くのだなということが一つわかります。  それからお尋ねしたいのは、スクランブルをかけて、いま監視活動をすると言われましたけれども、先ほど二機で上がったと言われましたが、二機で上がってどんなことをやるわけでありますか。
  113. 塩田章

    ○塩田政府委員 監視活動といいましても、具体的には並行して飛んでいるわけでございますが、いまの約一時間といううちの前後の飛行その他を除きまして、並行して監視活動をしておった時間は三分の一でございます。
  114. 中島武敏

    中島(武)委員 これはいま局長は推測で言われたのじゃないでしょうね。そうだったということで言われたのでしょうか、三分の一というのは。
  115. 塩田章

    ○塩田政府委員 約三分の一でございます。
  116. 中島武敏

    中島(武)委員 それにしても、三分の一としましても相当な距離であることはもう間違いない。  それで先ほどの局長答弁によりますと、南混団以前にもう一つスクランブルをかけているというところがあるわけですね。そうすると、これも伺いたいのですけれども、どういうふうになっているんでしょうか。こちらの部隊が築城から上がっていく。それからこっちは那覇から上がる。この間の連絡ですね、これをちゃんと連絡連係の指導をされる、指示をするのはどこがおやりになるのでしょうか。
  117. 塩田章

    ○塩田政府委員 上級機関である方面隊でございますけれども、その辺の具体的な指示あるいは連絡の仕方等につきましてはまさに部隊運用の問題でございますので、詳しい点は答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  118. 中島武敏

    中島(武)委員 アエロフロート、ソ連の民間機でしかもフライトプランも出されている。そしてそのフライトプランは自衛隊の方でもわかっているという飛行機ですね。これに対してスクランブルをかけるというのは、何でスクランブルをかけられたんでしょうか。私らにしてみますと非常に疑問に感じるんです。フライトプランは出されている、自衛隊はそのことがわかっている、そしてその飛行機は民間機だというのに対して、よくわからない、何で緊急発進をする必要があるんだろうかという気持ちであります。
  119. 塩田章

    ○塩田政府委員 対領侵措置の根拠規定であります八十四条では、わが国の領空に侵犯した対象機といたしましては軍用機であるか民間機であるかを問うておるわけではございません。民間機であっても軍用機であっても、わが国の領空侵犯機に対しては対処することになっております。  御指摘の飛行機は、おっしゃいますように飛行プランを運輸省から私どもいただいておるわけでございますが、わが国の領空を通過することについては私ども許可を与えておるわけでありませんし、また向こうも領空を通過するようなコースではございません。したがいまして、私どもは領空侵犯のおそれがあるということで一応スクランブルをかけておるわけでございます。御承知のように、わが国の周辺に非常に領空の狭いところがございます。このアエロフロートの飛行機は、飛行プランは通告しておりますけれども、航空路でないところを有視界飛行によって飛んでおる飛行機でございまして、そういう意味で大変領空侵犯のおそれがある飛行機でございます。そういう意味で私どもはスクランブルをしておるわけであります。
  120. 中島武敏

    中島(武)委員 八十四条は領空侵犯されたときのことが載っているわけで、いま局長はおそれの話をされました。八十四条の読み方はおそれの場合を含めるわけですか。
  121. 塩田章

    ○塩田政府委員 領空侵犯措置そのものは侵犯されたときに行うわけでありますが、飛行機でございますから、侵犯したと思ってそれから上がっていったのでは間に合わないわけでございます。おそれがある場合にはスクランブルはかけるわけでございます。しかし領空侵犯しない限りは何ら措置はいたしません。そういう関係になっておるわけでございます。
  122. 中島武敏

    中島(武)委員 わが国には領空の狭いところがある、だから侵犯のおそれがある、局長はそういうふうに答弁されたんですけれども、狭いところがあるというのはどこのことですか。
  123. 塩田章

    ○塩田政府委員 狭いとか広いとかといろいろ幅はございますけれども、一番狭いところと言えば対馬海峡なんか一番狭いわけでございます。それから、いま話題になっている飛行機でいいますと、対馬海峡を通りました後沖繩の本島と宮古島の間を通るわけでございますが、まあそこも対馬海峡に比べれば大分広いわけでございますけれども、天候その他の状況によって、とにかく有視界飛行をやっておるものですからやはり侵犯のおそれがあるというふうに私どもは見ておるわけでございます。
  124. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの話はどうもいただけないのです。対馬海峡はなるほど狭い。狭いからおそれがある。先ほどおそれの問題について説明があて、ちょっとよくわからぬ点もありますけれども、しかし、まあそういうことも百歩譲って認めるとしても、対馬海峡は狭いが、それからはるか洋上を行くのです。私のもらっている経路によりますとこれは東シナ海のど真ん中ですよ。琉球列島と中国との間、少しは琉球列島寄りに線が走っていますけれども、しかしもう本当にはるかかなたですね。わが領空などととてもとても呼べるようなところでないところを飛ぶわけであります。しかもスクランブルをかけてみたら、これは軍用機か民用機か、どこを向いて飛ぶのかということは一目でわかるわけであります。対馬海峡を過ぎた。対馬海峡を過ぎたらもう洋々たる洋上を飛んでいるわけであります。  しかし先ほどのお話からわかりますことは、これに対してもずっと二機で監視活動ですね、ずっとついていくわけでしょう。私はなぜこの必要があるのかというのがわからない。領空侵犯のおそれがもう解除されてしまうのです。何もないのですから。対馬海峡は狭いことは認めましょう。しかし過ぎてしまえば広々としている。広々としているところで、しかも民間機だということはスクランブルをかけたら一目でわかるわけです、行って見るのですから。軍用機民間機かの区別はつけないのだ、なるほどという気もします。しかし行って見ればはっきりわかるわけです。それで通過してしまう。それでもなおかつ延々と追尾して監視活動をやるというのは私はわからない。間違いじゃないかとさえ思います。
  125. 塩田章

    ○塩田政府委員 東シナ海の真ん中の方までとおっしゃいましたけれども、確かに対馬海峡を出た後東シナ海に入るわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように沖繩本島と宮古島の間で東に出るわけでございます。その回る地点がございます。飛行機の航路として回るこの地点などはそのまま進めば当然わが国の領空に入る地点でございます。そういうところを回りながら今度は東シナ海から太平洋の方に出ていって、そこでまた右に曲がって南の方に行く、こういうコースをとっておるわけでございまして、私どもは、そういったコースから、また現に通報されておりますコースから見まして必ずしもそのとおり飛んでおるわけでもございませんので、先ほど来申し上げておるようにスクランブルをかけておるわけであります。
  126. 中島武敏

    中島(武)委員 対馬海峡を過ぎてからは——対馬海峡を過ぎるのはいわば一瞬ですよ。非常に短い時間です。それからははるか洋上を飛んでいくのです。それからまた曲がるわけですね。しかし、これは先ほど局長認めておられるように狭いと言えば狭いという理屈もつくかもしれませんけれども、これは相当広いのですよ。私はスクランブルというものについての考え方が何か変わったのじゃないかとさえ思うのです。スクランブルというのは領空侵犯されたときあるいは仮におそれを含むとしましてもおそれがあるとき。ところがこの飛行機ははるか洋上を、しかも琉球列島に並行して行くのですから領空侵犯なんという気配は全くない。しかも民間機だ。全部わかっていてずっと追跡をしていく。これは大変な威嚇じゃありませんか。相手は民間機だ。一体どこまで接近しているのですか。私がいままで理解しておったスクランブル規定をずいぶんと逸脱してしまっているような気がしてならないわけであります。こんなことは法的に許されるのかどうか。八十四条のスクランブル規定からこのようなことは許されないのじゃないかと私は思います。
  127. 塩田章

    ○塩田政府委員 対馬海峡に比べれば広いことは間違いございませんけれども、先ほど申し上げましたように、この飛行機は有視界飛行をやっている飛行機でございまして、しかも飛行機のスピードは違うございますから、おそれなしとはしないと私どもは思っておるわけでございます。そういう意味で、対馬海峡よりは広いのですけれども、やはりスクランブルする必要がある、おそれがあるというふうに考えておるわけであります。
  128. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、いまの答弁はむちゃだと思う。仮に局長の言うように狭いところを認めたにしても、それは一瞬であって実際にはそうじゃないのです。しかも民間機で並行して飛んでいるのですよ。こっち向いて、領空侵犯なんというのじゃないですよ。そういうのにスクランブルをかけるのは、私はスクランブル規定を変えたのかと思う。領空侵犯のおそれがどこにあるのですか。ちっともわからない。幾ら説明されたって、領空侵犯のおそれなんてありはしないじゃないですか。はるか洋上ですよ。そんなところにスクランブルかけて一時間も、追尾しておった実際の時間は三分の一だと言うのですけれども、そんなことがずっとやられるということは理解できない。そんなことがまかり通っていいのですか。  しかも外国の飛行機で民間機で、それに対しておそれなんというのは、いまの局長の説明からいったって、おそれが感じられるということを強いて言ったって、実際問題として二カ所ですよ。その間は延々たる洋上じゃありませんか。それに二機ががっちりくっついて、どうやっていくのですか。これは物すごい軍事的な威嚇になりませんか。私は、こういうのははいそうですかというふうには言えない。むしろスクランブル規定は変わっているのじゃないか、あるいは逸脱してやっているのじゃないかということさえ思います。
  129. 塩田章

    ○塩田政府委員 六月十日の飛行機の例ではございませんけれども、同じアエロフロートの同じコースを飛ぶ飛行機が対馬海峡を出た後わが国の領空を侵犯した実際の例がございました。八月十八日でございます。そういうことも実例としてございまして、あくまでも有視界飛行であり、先生広いとおっしゃいますけれどもわが国の島はたくさんいろいろございまして、その間を速いスピードで、しかも有視界飛行で過ぎていくわけですから、おそれなしとは言えないと私どもは考えておるわけでございます。
  130. 中島武敏

    中島(武)委員 八月十八日の例は、これは五島列島でしょう。対馬海峡を抜けたすぐのところですよ。いま五島列島とは言われなかったと思いますけれども、対馬海峡を抜けたすぐのところです。違うのですよ、このアエロフロート機は。局長、わかっていてそういうことを言うのは改めてもらいたいと私は思うな。こんなむちゃなことが許されたら大問題じゃないかと思いますよ。  私は、そのことを重ねて指摘しながら、もう一つ聞きたいのです。それは、南混団でスクランブルはことしに入って何回かけられておりますか。
  131. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十五年は八月末までで五十回ございます。
  132. 中島武敏

    中島(武)委員 この五十回の相手飛行機はどこの国の飛行機ですか。
  133. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、対象機の一つ一つにつきましては公表は控えさせていただきたいと思います。
  134. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、当委員会から委員派遣として南西航空混成団を訪ねたことがあります。そのときに私は倉林幕僚長に尋ねたのです。そうしましたら、倉林幕僚長の言われるのには、相手機はソ連機だ、そのほとんど全部は民間機である、軍用機はほとんど出てきませんと、非常にはっきりと言っておられるのです。これを認められますか。
  135. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、一つ一つの対象機が何であったかを申し上げることは差し控えさせていただきますが、相当数が御指摘のような飛行機であるということは申し上げられます。
  136. 中島武敏

    中島(武)委員 いま局長も認められましたように、この五十回の中身というのは、実際にはほとんど民間機ばかりという内容なんですね。私は防衛白書を読んだのです。この防衛白書を読みますと、「昭和五十四年度中の航空自衛隊の緊急発進回数は六百三十六回であり、このうちの約八五%がソ連航空機の接近飛行に対するものである。」というふうに書いてあるのです。  私は、この南西航空混成団の幕僚長の話を聞いて、この数の中にはずいぶんと——八五%はソ連だと言っているけれども、しかし実際の中身は民間機じゃないかということを非常に痛切に感じたのです。いかにもスクランブルの相手の八五%はソ連機だというふうに統計的に言っている。ところが、実際に打ち割ってみればかなりの程度民間機だ。これはいわば対ソ脅威論を非常にあおるものともなるんじゃないだろうか。  あるいはまた、この回数ですけれども、これも先ほど言いましたように、リレー式にスクランブルをかけているということになりますと、回数はどんどんふえるのです。ふえるのですけれども、実際には飛行機は一機だということになるのです。築城から上がった、那覇から上がったということになれば、これで二回と、こうなりますね。だからずいぶんと数というものは、そういう点からいいましても、中身を知らない人がこれを読めば、わあソ連というのはすさまじいというふうに受け取るのは常識的だと思います。しかし中身はいま申し上げたとおりなんです。  私は、そういう点ではもっときちんとした書き方をするべきじゃないか、はっきり言えば、こういうのはきちんと訂正する。訂正というのは、数が間違っているということではございませんけれども、内訳をはっきりさせるという、それだけの親切さがあっていいのじゃないかという気がするのです。これは長官お尋ねしたいのです。
  137. 塩田章

    ○塩田政府委員 その前に私からお答えいたしますが、いま民間機が相当含まれているんじゃないかというお話がございましたが、いまのアエロフロートのハバロフスク−ベトナム間の飛行はことしの三月から始まったものでございまして、いま御指摘防衛白書の中に民間機が、いまのものが入っているわけではございません。  それからまた、一般的に民間機は単にフライトプランがわかっているというだけではなくて、実際にわが国の領空を通過することを許可しております。また、計器飛行で定められた航空路を飛んでおるというものについては何もスクランブルをしておるわけではございませんので、一般的には民間機を含んでいないというふうに御理解いただきたいわけです。いまのケースはことしになってから始まったケースであります。
  138. 中島武敏

    中島(武)委員 なるほど、いまのお話はそのとおりであります。しかし、南西航空混成団がことしの一月から八月までの数字として約五十回、こういうふうに発表しているものの中身は他とは違うということであります。私はそういう点では、この六百何回というのがストレートに間違いだ、こういうことを申し上げたんじゃないのです。そうではなくて、やはりこういう数字を発表するときにはもっと親切な発表の仕方というものが、注釈をきちんと加えて発表するということが必要なんじゃないか。そうでなければ、防衛白書全体の中を通じても明らかなように、大変対ソ脅威論がしばしば方々に出てくるわけであります。それを裏づける一つの資料として受け取られるということになるのでありますから、私はそういう点では、これからの問題としてはきちんとやはりそうした態度をとっていただきたいということを申し上げたいわけであります。
  139. 塩田章

    ○塩田政府委員 緊急発進の回数が御指摘のように対象機の機数と一致しない、それより上回る、これはそのとおりでございます。であれば、防衛白書にそこを書いた方がいいではないかという御指摘でございますけれども、緊急発進の回数をずっと従来書いてきておりますものですから、ことしの白書につきましてもそうしたわけでございますが、なお今後についてそういう注釈を加えるなり何なりした方がいいではないかという御指摘については、私ども検討はしてみたいとは思います。
  140. 中島武敏

    中島(武)委員 時間でもありますから最後に長官お尋ねします。  お聞きになっていてわかりますように、領空侵犯のおそれがない民間機に対してもスクランブルをかける、はっきり民間機であるということが確認されて、そしてはるか洋上を飛んでいくというのに対してさえもスクランブルをかけるということになりますと、私はこれは非常に重大な問題だと思うのです。スクランブル規定からも逸脱しているのじゃないかとさえ思います。こういう点で、先ほど局長答弁がありましたけれども長官はどう考えられるか、そしてしかも外国の飛行機に対してかける問題でありますから、これは外交問題についても考慮しなければならないと思います。そういう点で防衛庁長官としてどう考えるのかということを最後に伺って、私の質問を終わります。
  141. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  自衛隊の対領空侵犯措置は自衛隊法八十四条に基づいて実施されておるわけでございまして、防衛庁といたしましては、その実施に当たりましては厳重に管理いたして、法律の規定が適正に実施されるように絶えず努めておるところでございます。ただいま御指摘の点につきましては、今後におきましても一層その励行を期してまいりたいと考えておるわけでございます。
  142. 中島武敏

    中島(武)委員 終わります。
  143. 江藤隆美

    江藤委員長 午後二時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後二時五十八分開議
  144. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河野洋平君。
  145. 河野洋平

    ○河野委員 防衛庁設置法について若干の質疑をさせていただきたいと思いますが、まず最初防衛問題についての基本的な防衛庁長官初め防衛庁当局の御認識をお尋ねをしたいと思うのです。  最近世間一般には軍拡の風潮があるとか、一方で軍縮論というものもあるわけでございますが、防衛庁長官防衛哲学の中に軍縮論というものについてどういう位置づけをしておられるか。恐らく防衛庁長官のお気持ちが軍備拡張、いわゆる軍拡論だとは私は思わない。軍拡論だとは思っておりませんが、軍縮について防衛庁長官はどうお考えになっていらっしゃるか、基本的な認識を伺いたいと思います。
  146. 大村襄治

    大村国務大臣 軍縮についての防衛庁の考え方を問うというお尋ねでございますが、もとよりわが国といたしましては、憲法の理念からいたしましても平和を願っているわけでございます。世界の現実におきましては核保有国を初め大きな軍備が行われていることは現実でございますが、その間におきましてもいろいろ軍縮をやっていこうという試みも行われておるのでございまして、わが国といたしましても、国連を初めこういった軍縮の努力につきましてはできるだけ協力していかなければいけない、そういう立場にあるものと理解をいたしておるわけでございます。
  147. 河野洋平

    ○河野委員 昭和五十三年国連軍縮特別総会において、園田外務大臣は一般演説を行っている。そこで、わが国は軍縮の分野ではきわめて先進的な立場にあるとの誇りを持っております、こう園田大臣は国連で演説をしているわけですね。この軍縮について先進的立場に立つことに誇りを持っているという外務大臣の昭和五十三年の国連での演説を大臣はどう評価されますか。
  148. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  外務大臣の御答弁であり、外務省の所管ではないかと思うのでございますが、趣旨におきましては同感でございます。
  149. 河野洋平

    ○河野委員 その当時の新聞記事には世界各国、たしか百三十数カ国が参加したまれに見るりっぱな総会だと書かれたと思いますが、この国連総会における園田大臣の発言防衛庁及び防衛庁長官が同感だとおっしゃるとなると、今回の防衛庁設置法とはどういう関係になりますか。
  150. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたように、軍縮の意義、その趣旨等においてわが国が園田外務大臣のお述べになったような立場にあることはそのとおりでございますけれども防衛庁といたしましては、憲法の自衛権の範囲で許されます防衛力の整備につきまして、現実の防衛力の整備の問題につきましては、私どもかねてから「防衛計画の大綱」に従って整備をしていきたいと申し上げておるところでございますが、そういった線で今回の防衛三法を御提案申し上げているわけでございます。
  151. 河野洋平

    ○河野委員 憲法の許す範囲内で現実的に防衛力の整備をしよう——私は新自由クラブという政党に所属をしている。新自由クラブという政党は、日本の国の安全、日本の国の防衛のために所要の手順を踏んで防衛力を整備していくということには賛成なんです。日米安保条約を維持していくこともわれわれは大事なことだと思いますし、防衛力を整備するということも大事なことだと思っております。しかし、それと同様に世界に向かって軍縮について先進的役割りを果たす、それについて誇りを持っているのだと述べられた園田大臣の演説は、私は非常に高く評価している。この軍縮について先進的な役割りを果たすのだということは政治の非常に基本的な議論ですね。防衛庁が憲法の範囲内で何とか大綱に従って着々やるのだという防衛の技術論と違う。政治哲学として軍縮論というものを一つの大きな日本の政治の中核に据えているよということを五十三年に言っているわけです。世界に向かって約束をしている、表明をしている。そういう表明をしながら、一方でとにかく憲法の許す範囲内で防衛計画は着々とやるのですというのと少し違いがあるのではないか。ただ、外務大臣はああおっしゃっておられるけれども私らは私らで予定どおりずっといくのですよということをさらっと言っているだけで、一体日本の政治というものはいいのだろうか。  私がここで申し上げたいと思いますことは、シビリアンコントロールという問題について少し皆さんのお考えを伺っておきたい。文民統制、こう言われるシビリアンコントロールというものが本当にいま有効に動いているとお考えになりますか。どなたでも結構ですが、お答えください。
  152. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのシビリアンコントロールがわが国の場合有効に働いていると考えるかどうかという趣旨のお尋ねであったと思うのでございますが、申し上げるまでもなくシビリアンコントロールの趣旨は政治の軍事に対する優先である、かつて戦前のわが国に見られたように統帥権が独立して政治のコントロールの外に置かれるというような状態を再び招いてはいけない、こういうことにあると思うのでございます。そういう意味におきまして、現在法律、予算等すべて国会のコントロールのもとに置かれておりますし、また防衛行政に関する範囲のものにつきましては最高の指揮官は内閣総理大臣であり、その下でこれを取りまとめるのは防衛庁長官でございます。そして防衛行政の基本にかかわるような問題はすべて防衛庁の内局において責任を持って管理しておるという状態でございますので、そういう意味合いにおきましては、わが国において文民コントロールというものは実現されておるものと私は考えておる次第でございます。
  153. 河野洋平

    ○河野委員 事務局に伺いますが、シビリアンコントロールをやっているのは何もわが国だけじゃないと思いますね。アメリカ、ソ連、中国、韓国、西ドイツ、イギリス、フランス、この中でシビリアンコントロールが行われている国はどことどこですか。
  154. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまいろいろ国の名前をお挙げになりましたけれども、私の理解するところでは、それぞれの国においてそれぞれの考え方でシビリアンコントロールという趣旨をどうやって生かすかということで工夫しながらやっておられるのではないかというふうに理解しております。
  155. 河野洋平

    ○河野委員 他国のことをあれこれするのは大変恐縮なので、もし御無礼があったら委員長お許しをいただきたいと思いますが、できるだけ気をつけてしゃべるつもりでおります。韓国という国はシビリアンコントロールの国でしょうか、どうでしょうか、お答えをいただきたい。
  156. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的に国の名前を挙げてのお尋ねでございますけれども、この場でお答えすることは差し控えた方がよろしいのじゃないかと思いますが、いずれにしましてもいま戒厳令という状態にあるというふうには承知いたしております。
  157. 河野洋平

    ○河野委員 現在は非常に特殊な状況にあるということは私も認識しております。私は、シビリアンコントロールというのは非常に耳ざわりがいいし、理論的には正しい、しかし実際にシビリアンがコントロールするということができるのかどうなのかという現実の問題について少しお尋ねをしたい。何といっても強大な火力を持って戦うために訓練を受けている大きな集団を文民が統制するということが現実の問題として完全に統制し切ることが可能だとお考えになっていらっしゃいますか。
  158. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの問題につきましては、憲法の趣旨からいたしましても可能ならしめなければならない、かように考えておるわけでございます。
  159. 河野洋平

    ○河野委員 当然憲法の精神から言っても何から言っても、ならしめなければならない問題はたくさんあるわけです。ただ、防衛問題ではよく皆さんもおっしゃるように、そうであればそれは理想だけれども現実はそんなものじゃないんだという議論がよくあるじゃありませんか。同じことを私は申し上げている。もし御無礼があったら委員長取り消さしていただきますけれども、私は、韓国はりっぱなシビリアンコントロールの国だと思っていたのです。しかし、そのシビリアンコントロールの国がある日突然軍事クーデターによってひっくり返っちゃうことがあるのですね。これはシビリアンコントロールもくそもない。シビリアンがコントロールしていると思ったら、軍隊が蜂起して政治体制まで全部ひっくり返して、そして軍事政権をつくるということはあるわけですね。そういう現実が隣国であったわけでしょう。シビリアンコントロールというと、何か外と戦うのにブレーキを踏む、あるいはアクセルを踏むということだけをお考えになっていらっしゃるかもしれないけれども、国内的な行動についても完全にシビリアンというものがコントロールできるのかできないのかという問題を少し真剣に考えてみたいと思うのです。これは事務局で結構ですから、今日のシビリアンコントロールのシステムで、完全に日本の自衛力というものがコントロールできますか。
  160. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生も御指摘になっておりますように、基本的にきわめてむずかしい問題であるからこそまた大事な問題だというふうにわれわれも思っているわけでございます。いまの日本の体制でシビリアンコントロールが本当にできるのかということでございますが、先ほど大臣もお答えいたしましたように、現実にもできておりますし、今後ともそれを確保していきたいという決意で私どもはおるわけでございます。
  161. 河野洋平

    ○河野委員 余り人づてに聞いた話などを信用してこういう権威ある場で議論をするということははばからなければならぬと思いますけれども、先般のミグ戦闘機が函館空港へ来たときに、北海道の自衛隊の方々がどういうふうに行動をなさったか、その行動について実際にシビリアンコントロールのコントロール下で行動されたものかどうかとか、いろいろな議論があちこちであることは事実ですね。そういうことを聞くにつけて、いまの日本のシビリアンコントロールのシステムというものがもっと研究され、改良、改善されていく必要があるのじゃないか。いや世界的にどこを見ても理論的に組織的にこれ以上のものはありませんよとお答えになればそれで済んじゃうかというと、私はそうじゃないと思うのです。防衛庁設置法あるいは予算の中で、これだけの火力を増強いたします、これだけの機材をふやします、これだけの人間を多くします、こういう配置転換、展開をいたしますということで、どんどん拡大したさまざまな火力、機材、人員、そういうものの中で、シビリアンコントロールのシステムだけはずっと以前から同じ仕組みだ、同じシステムだ、いや仕組みは同じでいいんだ、これで全部統括できるからいいんだ——私は、どうもそこのところはもう少しお考えになるべきじゃないかと思うのです。だんだん火力も強くなる、大きくなる、そういう中でもっと日本のシビリアンコントロールというものは強化充実されていく必要があるのじゃないか。いま防衛庁で、シビリアンコントロールの現在の仕組みを改良改善、強化充実していくアイデアがありますか。
  162. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように大変重要な大事な問題でございますから、常に戒心をしていかなければならないという意味において全く先生の御趣旨に同感でございます。そういう意味では、私どもも怠ることなく戒心していかなければならないと思っております。ただ、具体的にいまの制度のどこかを変える構想があるかというお尋ねでございますけれども、そういう意味では具体的にいまどこかを変えようという案を持っているわけではございません。
  163. 河野洋平

    ○河野委員 シビリアンコントロールを充実させていく一つの手だては、立法府である国会に安保特別委員会なんかをつくるというのは一つのシビリアンコントロールの改善と考えていいのでしょう、せっかく立法府で委員会などをおつくりになったんですから。その立法府がつくった委員会に本当のシビリアンコントロールの意義あらしめるようなデータを提出するなり討議をお願いするなりという努力は、防衛庁はもっと積極的にやる必要があるんじゃないだろうかというふうに私は思っているわけでございます。  私は、いま軍備拡張とかマスコミがいろいろ表現をしておられる、そのマスコミの表現は、全くないところにああいう表現をしているとは思いません。世界的な風潮であるかもしれないし、あるいは国内的なさまざまな風潮であるかもしれない。しかしそういう風潮に乗って、人によっては防衛庁がそういう風潮をつくっているんじゃないかという人もいますけれども、私はそうは思いません。いずれにしても、さまざまな表現に乗っかって、機材、火力、人員、そういったものの拡張だけを考えるというようなことは厳に戒めるべきものじゃないか。むしろそうした充実をしていくならば、一方でシビリアンコントロールあるいは民間人が一体何を望み、何を求めているかということをもっと積極的に聞いていく態度、姿勢、仕組み、そういうものに十分な配慮を払ってしかるべきじゃないだろうかというふうに考えております。これは私は申し上げるだけ申し上げておきます。  その次に、国際情勢について各国の兵力がどうなったというさまざまな御説明がございました。船を何トン持っておる、どれだけの兵員がおる、そういう比較があって軍事バランスが崩れてどちらが優位になったとかどちらがどうなったとかという御議論をずいぶん伺いました。しかし、本格的な軍事力のバランス、戦闘力のバランス、この前岡崎さんは可動力とおっしゃっておられたのですが、そういう戦闘力のバランスというものは何も機材、火力だけの評価でできるものじゃないと思いますね。鉄砲を何丁持っておる、船が何トン分ある、鉄砲の弾が何発ある、その数だけ比較してどっちが強いかなんという議論は本当の正しい議論じゃないと思いますが、いかがですか。
  164. 塩田章

    ○塩田政府委員 いろいろな各国の比較におきまして本当の意味の戦闘力バランスは、機材とか装備とかそういったものの比較だけではないではないかという点につきましては、私ども全く同感でございます。そのほかにいろいろな要素があるだろうと思います。国民の気持ちの問題もございます。あるいは隊員の士気といいますか質の良質性とか、そういう問題も非常に大きな要素であろうと思います。そのほかにまた同盟国との関係というような問題も一つの要素であろうと思います。そういうようなことがいろいろございますので、おっしゃる趣旨には全く賛成でございますが、比較する場合によく装備あるいは火力、そういったものが数字的にあらわされて比較されるという面が多いことはこれまた事実でございまして、おっしゃいますように本当の戦闘力はもっとほかにいろいろな要素があるということは全く同感でございます。
  165. 河野洋平

    ○河野委員 朝鮮半島の軍事バランスについても、兵員が何人いるからとか、どれだけ戦車の数がふえたからとか、そういう議論が全く意味がないとは言いません。全く意味がないとは言いませんけれども、それを根拠にして全体的な判断を下す。これは軽率だ。まあ岡崎発言についてはもう大体決着がついたようですから、私はこれはもうとやかく言いません。言いませんが、しかし岡崎発言というものは、あの発言はもう明らかに軽率、言葉足らずだったということを大臣までおっしゃっているのですから、あの問題についてはとやかく言いませんが、やはりあの問題をこれから先の一つの教訓にして、余り軽率に、兵隊が何人いて軍艦が何トンあるからどっちが強そうだとか、軍事バランスが崩れたとか崩れないとかという議論はするべきじゃない。いまお答えがあったように、確かに意欲の問題とか士気の問題というのは計量化できないから、比較しにくいからなかなかそれは比較できないんで、強いて比較をするならこれだよというのはわかりますよ。わかりますけれども、それはもうどうしても何かの形で数量的に比較をしなければならぬときにするべきであって、それは軍事評論家とおっしゃる方々とか、何か書き物で飯を食っている方々がざらざらざらざら書き並べて比較をなさるのは結構だけれども、少なくとも日本の安全を担う、防衛を担う方々が、そんな軽率なことで、どこが強いとか強くないとかいう議論はなさるべきじゃない。これはひとつ長官、これから先もそういう議論じゃなくて、もっと高い見地からの判断をするように防衛庁内部を指導していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  166. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  十月二十七日の岡崎参事官発言は、前にも申し上げましたとおり、言葉足らずであり不適当であったと思います。  ただいま先生が御指摘になりましたように、狭い意味の軍事力のみならず、その他の要素、あるいは政治、経済、文化等の広い、高い角度から判断を下すべきものと私は考えておりまして、今後また防衛庁内をその方向で指導してまいりたいと考えております。
  167. 河野洋平

    ○河野委員 シビリアンコントロールというのですから、長官のそうした指導力をぜひひとつお願いをしたいと思います。  さてそこで、意思とか意欲とか士気とかいう問題になりました。これはなかなか計量化しにくい。表現しにくい。表現するとすると非常に情緒的な表現しかできない問題になって、なかなかむずかしい議論なわけですけれども、しかしこれは大事な問題ですね。日本の防衛力というものを質的に高めていかなければいけない。これは私は合意いたします。しかし、その質的に高める努力をしていくといろんな問題が出てくる。たとえば例のグレン報告なんかを見ても、実に日本の防衛力についての問題点を指摘していますね。これから日本が防衛努力をしていこうと思えば、一つはマンパワーの問題、つまり人間の問題で相当な問題にぶつかるだろう、さらに土地の制約というものは日本の防衛にとって非常にむずかしい問題になるだろう。経済的な問題その他もグレン報告は触れているわけですけれども、このマンパワーの問題と土地の問題というのは、非常に大事な問題だと私は思うのですね。  特にこの防衛問題は、いま防衛庁設置法で人員をふやそう、潜水艦隊を編成しようとか、いろいろ提案をしておられるわけですけれども、いろいろな機材を今度予算化してお買いになるわけですけれども、そういうものが非常に効率的に効果的に動かせるかどうかというのは、基地の問題がきわめて重要だと思うのですね。お金を出せば飛行機を買ってくることができる。船を買ってくることもできる。いろいろな道具を買ってくることができる。しかし、どれだけたくさん飛行機を買ってきても、その飛行機を飛ばす飛行場というものは簡単に手に入るか、あるいはその飛行機が訓練をするスペースというのは十分に日本で調達できるのか、さまざまなネックがあるわけでございます。大きな船を買ってきて領海を守ろうというお気持ちから計画を立てて、先ほどお話しのように、計画どおり買うよと言って、その計画どおりに機材は買ってきたけれども、買ってきた機材をちゃんとここへ据えつけて、そこからうまく飛び出す、そこを母港にしてうまく利用ができるか、うまくいくかどうかということになると、これはなかなかむずかしいと思うのですね。けさの新聞にもちょっと出ておりましたが、神奈川県の長洲知事さんが、昭和五十六年度からP3Cを厚木航空基地に配備するということの通知を受けた。通知は受けたけれども、これは困ると神奈川県知事が総理大臣、防衛庁長官防衛施設庁長官あてに、厚木飛行場の海上自衛隊の対潜哨戒機P3C問題についての要請という要請書を出したということがけさの新聞に出ていました。  日本の国の安全のために、日本の国の防衛のために知恵をしぼっていろいろやっておられるけれども防衛庁の皆さんが一生懸命知恵をしぼって、国費を使って飛行機を買ってくる、何を買ってくる、しかし、その飛行機を飛ばそうということになると、基地周辺は必ずしも好意的にそれを迎え入れるということになっていないんじゃないか。全部とは言いませんよ。あるいは全部かもしらぬけれども、少なくとも私がけさ見た新聞には、地元の県知事さんは、これは困ると言っていますね。県知事さんのみならず、地元の周辺の自治体の人たちからもいろいろ不安が訴えられている。こうした事実があるかどうか、もしそういう要請書が来ているとすれば、それに対してどういうふうに対処しておられるか。これは施設庁でしょうか、それとも防衛庁でしょうか、どなたか担当者からお答えをいただきたい。
  168. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生いま御質問の厚木基地に対しますP3Cの配備の問題でございますが、御指摘のとおり、十月十三日に横浜の防衛施設局長の名前をもって、神奈川県知事と大和市、それから綾瀬市の両市長あてに文書を送付いたしました。  その要旨でございますが、現在厚木に配備されておりますP2JあるいはS2F、それの交代機といたしましてP3Cを配備をいたしたい、それで、それに伴います関連施設の整備を行う必要があるということで、その計画についてお知らせをいたしますと同時に、従来から私どもがやっております周辺の生活環境の整備等従来どおり整備をする所存であるので、理解、協力をお願いしたい、こういう趣旨のものを送付申し上げたわけでございます。  私ども防衛上必要な措置だというふうに考えておりますけれども、地元におきまして種々御論議があることはよく承知をいたしております。したがいまして、周辺に与えますいろいろな影響の緩和あるいは軽減ということについて従来同様に私ども努力をしてまいりたいというふうに考えておりますので、地元の方々に対しましても、本件については十分御理解を賜って御協力をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  169. 河野洋平

    ○河野委員 非常に抽象的で、とにかく頼むよ、こういうふうにしか聞こえないわけですけれども、とにかく頼むよと言うだけでは、これはちょっと、そうですが、それじゃそうしましょうというふうなわけにはなかなかいかないと思うのですね。私は細かいことを十分知らずにお尋ねをするわけですけれども、もともとP3Cをお買いになったときに、最初から厚木基地などにそれを配備するという前提でP3Cをお買いになっていますか。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 P3Cは全部で四十五機お願いしたいと思っておるわけですけれども、もちろん四十五機の配備先等についてはまだ決めておりません。ただ、いま御指摘最初に入ってきます八機、五十六年度の三機、五十七年度の五機、これにつきましては厚木にお願いをいたしたいというふうにいま考えておるわけでございます。  それでは、最初からそうであったのかということでございますが、P3Cのような新しい高度な機能を持った飛行機でございますものですから、いわゆる全面的な部隊運用の前に、やはり要員の訓練でございますとかいろいろなものが必要になってまいります。そういったものを持っておる基地というのはやはりおのずから限定されてまいりますものですから、そういう意味では、具体的に決めておったわけではありませんが、厚木あたりは有力な候補地として考えておったということでございます。
  171. 河野洋平

    ○河野委員 たまたま問題が厚木ということなので少し話が進むのですが、厚木でも青森でも北海道でもどこでもいいのですけれども最初からここに配備するのだ、ここ用の機材を買うのだというときには、許される範囲内で事前に地元に、こういうものを買ってきて配備するつもりだ、いままで地元にはP2Jですかあったわけですから、このP2Jはもう限度に来ているから更新しなければいけないとかなんとか、そういう理由が添えられていたというふうに聞いておりますけれども、ここにはこういうふうにするのだよということがなぜ事前に——何も事前協議とかなんとかしかつめらしいことを言うのじゃないのですよ。そこまで申し上げるつもりはありませんけれども、少なくとも地元、厚木なら厚木には市街地の真ん中、つまり住宅密集地の真ん中にあの基地がなっちゃった。ということになれば、その住宅密集地域の中に配備する機材なのだから、そういうときには、よりこういう点に配慮した機材にしようとか、そうでないものにしようとか、あるいはそこはやめようとか、そういう議論というものは全然ないのですか。私は、どこが大事でどこが大事でない、どこの基地は非常に安全度が高くなければいけなくて、どこはいいかげんでいいなんということを言っているのじゃありませんよ。そういう意味で申し上げているのじゃないけれども、少なくとも広々とした十分なスペースを持っている地域と市街地の真ん中にある地域とでは、おのずから機材の配置についても少し配慮があってしかるべきじゃないのか、まあ、そんなにもみ手すり手でお願いしますという筋のものじゃないやとおっしゃるかもしれないけれども、少なくとも日本の防衛、日本の安全のために皆さんが御協力になる以上は、それは住民の人たちの理解と協力なくして日本の安全とか防衛というのはできないでしょう。いや、おまえらいろいろ勝手なことを言うけれども、いざとなったらおれらだけが守るんだからちょっとはおれらの言うことを聞けなんというようなことにはならぬのでしょう。もともと防衛庁の姿勢というものはやはり地元の人たちの理解と協力なくして日本の防衛はむずかしいという基本的な姿勢でおられるなら、こういう機材をどこにどう配備するかというようなことはもう少し配慮があってしかるべきじゃないのかというふうに思うのですけれども、その点。  それからもう少し、施設庁さんもせっかくお見えなら、神奈川県の知事さんからの要請に対して、少なくともこういうことぐらいは考えたいと思うんだというようなことはありませんか。
  172. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 いま先生お話しの御意見は十分承らしていただきましたけれども、現実の問題として、かなり先のことを予測いたしまして機種の交代ということを地元の方にお話をするということは、私ども現実の仕事をする上においては大変むずかしい問題がいろいろございますので、将来私どもが対処します上において先生の御意見を念頭に置いてやってまいりたいというふうに考えております。  それから、P3Cの配備についての市長の方からの意見は、私直接まだ市長さんにお会いいたしておりませんし、市長御自身がどういうお考えであるかということを機会があれば直接でもお伺いをして、十分その要望に耳を傾けたいというふうに考えております。
  173. 河野洋平

    ○河野委員 施設庁はずいぶん長い間基地問題で苦労をしてこられて、さまざまな地域でさまざまな問題に対処してこられた。なかなか御努力も多いと思うのです。しかし、これだけ長い年月をかけて依然としてまだ細かい配慮がなかなか行き届かないというのはきわめて遺憾ですね。  私はもう一度防衛庁に伺いたいと思うのですが、日本の防衛力整備について、防衛庁御当局は少しアメリカの気持ちをそんたくすることに重きを置き過ぎていやしませんか。アメリカは日米安保条約があって、日本とアメリカとはお互いに日本の安全のためにやろうというのですから、日米関係の連絡が密だということはよくわかります。しかし、今回の防衛力の整備その他いろいろ防衛庁がデモンストレーションをなさったりアドバルーンをお揚げになったりいろいろされる。それらについてアメリカはなかなか好感を持って迎えている部分がある。しかし一方で、言ってみれば日本のそういうはしゃぎぐあいについて、どうも日本は少しはしゃぎ過ぎじゃないかとまゆを曇らせているアジアの国々があるということをどのくらい御認識しておられますか。これはそういう国がある。実際に幾つかコメントがある。どの程度認識しておられますか。
  174. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 かつてそういうような批判があったという資料を若干持っておりますけれども、最近の資料は私は気づいたものはございませんです。
  175. 河野洋平

    ○河野委員 防衛庁設置法をお出しになる防衛庁答弁としてははなはだ不十分な答弁じゃありませんか。防衛力の整備をしようというときに、白米関係の連絡だけが十分で、日本の防衛力が整備されていくことについて懸念を表明したり不安に思ったりしている国々がアジアの地域にあるかどうか丹念に調べるのは当然の責務じゃありませんか。聞いてないというのはどこですか。ありませんならありませんとおっしゃればいいんだ。もう一回答弁してください。
  176. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 最近のことを申し上げましたけれども、去年の夏ごろに取りまとめたものがございまして、それで、東南アジア、韓国、中国それからオセアニア諸国その他の日本の軍備に関しますいろいろなコメントを総合いたしまして、日本の軍備の強化に期待する意見の方がこれを抑えようとする意見よりも多いという結論に達しております。
  177. 河野洋平

    ○河野委員 その答弁は納得できません。少なくともこの国会にこういう法案を提出なさる防衛庁が、昨年の取りまとめなどをそんな言い方で説明をして、大体抑えようとするよりうれしがっている方が多いらしいなどと言うことは、少し無責任じゃありませんか。もう少しちゃんと各国の反応ぶりを明確におっしゃる必要があると思いますが……。
  178. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 先生の御質問のようなことはこの半年間の正式のコメントとしては伺ったことはないのでございますけれども、私の記憶にある事実としましては、昨年の暮れだと思いますが、伍修権が中曽根議員に、GNPの二%くらい使ってもいいのではないかという発言をしたという記憶がございます。昨年の夏まではちょっと取りまとめたことがございますけれども、それ以外私ども最近の情報を持っておりません。
  179. 河野洋平

    ○河野委員 私は、岡崎さんの答弁はもう求めません。ああいう不まじめな態度で答弁をされることははなはだ不愉快です。ああいう答弁ではみんな納得しないと思いますよ。私が申し上げているのは、日本の防衛力の整備充実というものがあれば、それについて不安を持たれる国があるだろうというのは、日本より大きな国が不安を持つはずはないじゃないですか。そういうときに中国などを引き合いに出して、中国は不安じゃないと言ったなどというような答弁は、それ自体ふざけていませんか。そういうことを言っているのじゃないのですよ。日本の国の防衛力の整備について、東南アジアの国々、開発途上国、そういう言い方がよくなければ発展途上国、そういう国々の中でどうも不安があると表明している国がいろいろあるのです。アメリカは評価するかもしれません。中国は評価するかもしれません。しかしそうでない、十分な力をまだ持たない、日本が余り強大な力を持つことは心配だなと思っているアジアの国国がある。  私はきょう外務省においでをいただかなかったものですから、外務省の御答弁がいただけないのはやむを得ませんが、少なくとも日本の防衛力の整備についてそういう細かい配慮というものがなければならぬ。アメリカと十分連絡をとって、アメリカが結構だと言ったからといってやる。日米関係をうまくやるということは大事なことです。日米関係が非常にスムーズな関係であるということは大事なことです。しかし一方で、このことばかりに傾斜していってアジアの国々との関係がぎくしゃくしてくるということを日米関係をスムーズにするための対価として支払っていいかどうか刀長官、どうですか。日米関係をスムーズにすることは大事なことだ、それは私も認めます。しかし、そのためにアジアの国々との関係が悪くなるということを支払っていいかどうか、答弁してもらいたい。
  180. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  アジアに位するわが国といたしましては、東南アジアの国々の世論なり動向なりに十分留意する必要があるという御指摘の点につきましてはそのとおりではないかと思うわけでございます。ただいま参事官答弁しました点は、かつてはそういう意見があったが、最近の情勢は大分変わってきているのではないかという趣旨の答弁を申し上げたと思うのでありますが、なおその点につきましては各国の状況をよく調査もし、また防衛庁だけでできない点は外務省にも相談して、そういった点はよく把握してまいりたいと考えておる次第でございます。
  181. 河野洋平

    ○河野委員 長官の御答弁は大分岡崎さんの答弁よりいいですな。少なくともアジアに位置する日本の国がこれから先もっとアジアの国々の気持ちを大事にしていく、そういう姿勢が一番大事だ、私はそう思いますよ。どうも防衛庁の中には潜在的脅威論なんというのを唱えて敵をいっぱいつくって、敵をいっぱいつくると自分たちがたくさん機材や火力が買えるのではないかなんという変な下心を持った人がいるといけないから、長官ひとつがんばってもらいたいと思うのですね。  そこで委員長、大変恐縮ですが、後ほどもちろん理事会でお諮りをいただきたいのですが、日本の防衛力の充実整備について、アジアの国々がどういう反応を示しているかということを外務省を通じてでもいいと思いますし、防衛庁がそういう能力があれば防衛庁からでも結構でございますが、ひとつ資料として出していただきたい。これは時間的になかなか、委員会審議の問題もあるかもしれませんが、願わくば当法案採決までに出せれば一番いいし、出せなくても後々までの参考資料に各国の反応を調べた資料をひとつ出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  182. 江藤隆美

    江藤委員長 防衛、外務両省と相談いたしまして資料を取りまとめて、理事会報告を求めて御相談申し上げたいと思います。
  183. 河野洋平

    ○河野委員 お取り計らいをいただければ大変ありがたいと思います。  その際、防衛庁も、各国の国防大臣が喜んでいるなんという資料じゃだめですよ。もうちょっと各国の民衆がどういうふうに考えているかということがつかめるような資料、データが欲しいですね。これはなかなかむずかしいかもしれないけれども、それぞれの国には新聞とかいろいろ世論を代弁するようなものもあるでしょうから、できるだけ自分に都合のいい資料を集めようなどというこそくなことを思わないで、各国が日本をどう考え、日本の防衛力整備をどういうふうに受けとめているかということをひとつ出していただきたいと思います。  そこで、今度の法案の中に予備自衛官を増員するというのがありますね。二千人増員なさるということが書いてあるのですが、現在の予備自衛官は一体どういう状況になっているか、御説明願えますか。これはどなたでも結構です。
  184. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように、現在予備自衛官二千人の増員をお願いいたしております。これは五十四年度分千名、五十五年度分千名ということで現在二千名お願いいたしておりますが、その以前の段階、つまり現在の段階で申し上げますと、予備自衛官は三万九千六百人でございます。そのうち三万九千人が陸上自衛隊の予備自衛官、六百人が海上自衛隊の予備自衛官ということになっております。
  185. 河野洋平

    ○河野委員 予備自衛官の存在というのは非常に重要な存在だろうというふうに思っているのですが、予備自衛官というのは一体何人くらいいま必要か。今度の法案では二千人の増員を言っておられるわけですが、将来像としてたとえば現有自衛隊員の五〇%くらいとか、そういうパーセンテージでもいいし具体的な人数でも結構ですが、もしお示しいただけるならお示しいただきたい。
  186. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在の私どもが持っております計画としましては、中期業務見積もりというのがございまして、その中期業務見積もりの予備自衛官に関する計画としましては、陸上自衛隊につきまして四万五千人までお願いをしたい。それから海上が二千百人、航空に千五百人、合計四万八千六百人、中期業務計画の中でお願いをいたしたいと考えております。
  187. 河野洋平

    ○河野委員 予備自衛官の質が年々低下している、そういう評価にはどうお答えになりますか。
  188. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  まず、予備自衛官の充足状況でございますが、五十四年度末には一〇〇%となっておりましたが、九月末現在九五・四%、三万七千七百七十八名でございます。質につきましては、御承知のように予備自衛官の採用対象が士長以下の者については三十七歳未満、それ以上の三曹以上及び尉官につきましては、当該階級の自衛官の停年の年齢に二歳を加えた範囲内で採用をいたしておるところでございますが、予備自衛官の質について、こういう採用上の制約はございますけれども、いまのところおおむね質、量ともにほぼ良質の、私どもの期待しておる範囲の者を招集、採用し得ていると思います。むしろ問題は、その訓練の問題の方にあろうかと考えております。
  189. 河野洋平

    ○河野委員 おっしゃるとおりだと思うのですね。私は大変悪い表現をして、質なんというようななかなか説明のしにくい表現をして御答弁がなかなかしにくかったと思うのですが、いずれにせよ、予備自衛官というものは年々訓練状況その他が、充足率が下がってくるのに比例して、どうも訓練が甘くなっているんじゃないか。一年間に五日間呼び出してけいこをつける。ちょっとけいこをつけると、日ごろやりつけないことをやっているから体が痛くなる。まあ、御苦労さん、あしたはお話だけにしましょうというようなことになっておるのじゃないかという説などありましてね。この防衛白書を拝見しますと、予備自衛官の訓練は五日程度がよかろう、こうみんながアンケートに答えている。皆さんは、みんなのアンケートでそうなっておるからこれでいいだろう、こういうことのようですけれども、これは受けている人に聞けば大体いままでどおりでいいじゃないかということになるのですけれども、予備自衛官とはいえ、予備自衛官に対して防衛庁が支払っている手当というのですか、一人当たり年間幾らですか。
  190. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  昨年の改正によりまして、従来予備自衛官は月額二千円をいただいておりましたのが三千円ということになりましたので、三万六千円ちょうだいいたしております。
  191. 河野洋平

    ○河野委員 月々三千円ということで、年に五日間呼び出して訓練して、そしてそれが三万九千人いる。もう二千人ふやしてということなんですけれども、どうもぼくら聞いていて、予備自衛官という制度は大事な制度だと思うのですよ。予備自衛官という制度は大事な制度だということはよくわかるのですけれども、月三千円の手当で一年間に五日だけ呼び出して訓練をして、それで大丈夫かなという気がどうもするんですけれどもね。五日間の訓練、まあいろいろ訓練なさる先生によっては違うのかもしれないけれども、大体こういうことを訓練しているのだという大ざっぱなカリキュラムがありますか。
  192. 石崎昭

    ○石崎政府委員 五日間の訓練でどういうことをやっているかといいますと、一つは精神教育、これは自衛官としての使命感を高めるような訓育ということになります。それから武器の訓練、これは小銃の射撃の復習、それから体育、これは文字どおり体を鍛えることでございます。そのほか職種等の訓練ということで、いろいろな特殊な職種の部隊の最近の状況を理解させるため、武器や何かいろいろ進歩いたしますからそういうものに合わせるための教育をやる。そのほかいろいろな若干のものがございますけれども、主なものは以上のようなことでございます。
  193. 河野洋平

    ○河野委員 予備自衛官側のアンケート調査を拝見をすると、大体訓練は五日ぐらいが、現行が適当だということを答えておられるわけですけれども、その予備自衛官を指導するといいますか、訓練する側から見ると、現行程度で十分であるというふうにお考えですか。
  194. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  法の定めによりますと年二十日以内ということになっておりますのですが、実は就職をした先の会社等におきまして、たとえば有給休暇が二十日間程度である場合、これをフルに予備自衛官としての訓練に使うことはなかなか困難でございまして、そういう社会的な制約のため現行の五日間ということになっておりまして、これが十分であるということは私どもは申し上げかねるわけでございますが、この五日間の訓練の中で、本来予備自衛官に期待されておるところの任務、すなわち有事の際招集に応じ、かつ軽普通科連隊の要員として勤務し得る程度の訓練は何とかこの五日間でやってまいりたい、かように考えております。決して十分と考えておりません。
  195. 河野洋平

    ○河野委員 先ほどから申し上げておりますように、日本の防衛力の整備のためには、ただ単にお金をつぎ込んで機材、火力を買ってくればいいということではない。土地の問題、つまり基地供与、提供してくださる方々との精神的なあるいは本当の意味の理解度、協力度というものを深めていくことが大事だ。しかし、それはいま必ずしも非常にスムーズにいっていない。そうですね。それはそういう認識でいいですか。いやそんなことはない、非常にスムーズにいっているよとおっしゃるのか、ちょっとそこのところを確認してもらいましょう。
  196. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 スムーズにというのがどういう程度のものをスムーズにというふうにおっしゃるのか、その辺がはっきりいたしませんけれども、私どもとしては、限られたいろいろな法律や予算の制約のもとで地元の方々の理解と協力を得べく努力をいたしておりますし、かつて十年前ぐらいの時代と比較をいたしますれば、これはかなり理解と協力をいただいておるというふうに考えております。
  197. 河野洋平

    ○河野委員 過去との比較で大分理解をされてきた、これは防衛庁、自衛隊に対する国民理解度も相当進んだんですから、それは過去との比較なら相当進んだと考えていいと思いますね。ただし、一方でやはり何といいますか、総論は賛成だけれども、各論については、とにかく防衛力の整備は大事だけれども、わが家の隣にそういうのがあるのはちょっと困るなあという感じというものは、やはりなくなっていないと思うのです。  それからさらに、基地周辺が都市化がどんどん進むということもあって、都市化が進んでくれば、理論的にはわかっていても、それは騒音が出てくるとかあるいは墜落事故による不安が払拭できないとか、そういうことからくる問題があるわけでしょう。どうも皆さんがお買い求めになろうとしている機材はだんだん大型化していく。そういう大型化していく機材がちゃんと基地周辺の住民に受け入れられるかどうかという問題は、まだこれから先も続くだろうと思うのですね。非常に大ざっぱに言えば、どうもそれは日本の狭隘な国土というところから始まるのかもしれませんけれども、もっと言えば、皆さん方が考えておられる防衛問題の計画を進めようというスピードと住民感情、つまり住民の理解度のスピードと必ずしもいま一致してない。  そこで、日本の国における防衛力整備はどの程度が適切かと言えば、これは国民理解する範囲内の防衛力整備でなければ適切とは言えないと思いますね。いや国民はその日その日のことしか考えないから、おれたちはやはり国際状況も考えているし、何年先のことまで考えているから、それは押さえつけてでもやっちゃうよ、これはそうはいかないでしょう。つまり、先ほどお話があったように、シビリアンコントロールの問題もあれば、なかなかそうはいかないということになると、中業前倒しとかいろいろ議論はあるけれども、それからアメリカはアメリカでいろいろと希望は述べるけれども、しかし何といっても日本の防衛力整備のスピードは、日本の国民の大多数が求める方向、日本の国民が納得をする、つまり日本の国民理解の進んでいくスピードに合わさなければやれないだろう、そう思いますが、長官どうですか。
  198. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの問題につきまして、飛行場なり訓練場を設定する場合に、国民理解が得られる範囲内でなければ防衛力の整備は実現できないのではないか、そのお言葉はよくわかるわけでございますが、反面、わが国防衛力の整備を図る場合にやはりそのときどきの必要な最小限度というものがございます。そして先生よく御存じのとおり、飛行機や機械等も日進月歩の状況でございます。もとより専守防衛を基本方針としますわが国といたしましては、急にそう大型化するということはないと思うのであります。しかし、若干ずつ滑走路を延ばさなければいかぬとかいろいろな必要性が出てくることは否めないわけでございます。その点、住民の理解との関係をどう調和するか、そのことにつきまして、防衛庁といたしましてはこれまでも非常に苦労してきたわけでございますが、先生指摘のとおり、都市周辺におきましては過密化が一層増大しているという点からしまして、この点には一層注意して、住民の理解を得られるように、さらにさらに努力をしていかなければならないと考えておるわけでございます。  ただいま御指摘のありました厚木の問題につきましても、やはり新しい代替の飛行機の必要性、配備計画、性能、安全性、騒音度の状況並びに関連施設の整備計画等についていろいろ秘密事項もあろうかと思うのでありますが、差し支えのない限りやはり地元の御理解を得て、できるだけ理解を高めることによって必要な工事等ができるように、さらに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  199. 河野洋平

    ○河野委員 日本の防衛力を整備していく一番基本としての防衛哲学みたいなものは、力に対して力で守るということではなくて、やはり終局的には軍縮という理想を持ち続けながら、一方で現実に対応するために時に防衛力の質的充実を図っていく必要も出てくる。その場合には国民理解国民の協力が得られるというのがその限界である。国民理解も協力も得られないのに防衛庁だけが必要だと主張して機材を買って、その機材を振り回して効果が上がるかというと、やはりそうはいかないわけですから、国民理解し得る範囲内が日本の防衛力整備の限界なんだろう。そしてそれをシビリアンコントロールという形で仕組みをつくっていくということに私はなるのだろうと思いますから、とりわけ基地周辺の人たちの理解と協力が得られるように、これはせっかく御努力をいただきたいというふうにお願いをしておきます。  どうもあっちこっち飛んで恐縮ですが、その土地の問題と、もう一つは先ほどから申し上げているマンパワーの問題。そのマンパワーの問題は、私は予備自衛官のことを非常に気にして申し上げたのは、日本の社会は終身雇用制ですから、終身雇用制の社会構造の中で若い一時期自衛隊にいるということが、その終身雇用制の中で将来の人生の設計上なかなかうまくいかない。自衛隊で一生懸命がんばって、年齢的にもあるいはここまでがんばったんだから次の世代に渡そうというので自衛隊をやめ、そういう人が一般社会、一般社会という言葉も余りよくないのかもしれませんけれども、自衛隊から出て終身雇用制の社会構造の中へすぱっとうまく入っていけない場合があるのじゃないか。ですから、私は防衛庁当局におかれても待遇の問題、待遇というのは特にやめた後、残りの人生がうまくいけるように、つまりそういう配慮、そういうことなんかはうんと気を使ってあげてほしい。そういうことでないと、私はマンパワーの利用なんというのもうまくいかないだろうと思うのです。しかも、自衛隊をやめて出てきた人は非常に有能だ、多くの民間企業が喜んで迎え入れる、そういう状況にでもならないと、日本は非常にすぐれたマンパワーを有しているにもかかわらず、防衛庁あるいは自衛隊だけは人間の問題でずっと苦労しちゃう。一〇〇%というわけにはなかなかいかないのかもしれませんけれども、一〇〇%に近い充足率をなかなか見ないということじゃ心細いわけです。陸上自衛隊もなかなか充足率が高まらぬそうですけれども、いま現役の人たちあるいは予備自衛官の人たちの充足率が必ずしも高まらない。予備自衛官の充足率は九五%というのはまあまあなんですか。陸上自衛隊ですね、少し充足率が低いのは。これもまあまあでしょうか、あるいは低いならなぜ低いのか、ちょっとお答えを願いたい。
  200. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  自衛官の募集につきましては、先生指摘のとおり若年労働者の需給関係が大変逼迫しておりますので、募集に種々の努力を要することは御指摘のとおりでございます。  現在どの程度の充足率かと申し上げますと、今年度の自衛官の補充計画は平均充足率、陸上自衛隊は八六%、海上自衛隊及び航空自衛隊九六%を目標として現在のところ欠員補充を行っております。  九月末現在の数字を申し上げます。陸上自衛隊においては定員十八万人に対しまして十五万四千七百九十名。欠員二万五千二百十名で充足率は八六%、ほぼ計画を達成いたしております。海上自衛隊につきましては、定員四万二千二百七十八人に対しまして現員四万五百四名、欠員千七百七十四人で充足率が九五・八%。航空自衛隊につきましては定員四万五千四百九十二人に対しまして現員四万三千五百三人、欠員千九百八十九人で充足率は九五・六%、ほぼ計画を達成しておるという状況でございます。  ちなみに五十四年度採用者総数は二万五百三十四名に対しましてほぼ二倍の応募者がございました。一番問題の二等陸海空士につきましては、若干の欠員があるという状況でございます。  なお五十六年度につきましては、陸上自衛隊の平均充足率を今年度八六%と申し上げましたが、これを八六・四%に引き上げていただきたい。海空につきましては、前年同様九六%ということでお願いをしている次第でございます。
  201. 河野洋平

    ○河野委員 先ほどからのお話を伺うと、それぞれ必ずしも一〇〇%の充足率ではない、むしろ欠員の数字と今度の防衛庁設置法でふやしたいとおっしゃる数字とを絡めてみてもそう違わないんじゃないかと思うのです。海上自衛隊、航空自衛隊で定員をこれだけずつ上げてほしいと今度の設置法で出しているんだけれども、その数字以上の欠員ですね。  予備自衛官について見ても三万九千六百人が定員なんだけれども、いまおよそ二千人欠員があります、こうおっしゃる。法案にはもう二千人定員をふやしたい、こうおっしゃる。定員をふやしたいとおっしゃる数字と現在欠員だという数字が奇妙に合う。これは偶然なんでしょうけれども、どうも奇妙に合う。多少こだわって、もう一回予備自衛官について伺いますが、予備自衛官はもう二千人定員をふやしたいとおっしゃる。仮に法案が通って二千人ふえた、そうするとあと四千人急いで充足をさそうというお考えですか。
  202. 塩田章

    ○塩田政府委員 予備自衛官の場合、二千人お認めいただければいまの欠員とで合わせて四千人という御指摘でございますが、先ほどの海空も私は同じだと思うのですけれども、九六%前後の充足率ということは、実際問題といたしましては年度を通じましてずっと平均していくわけでございますから、人事を運営していく上においては私どもは実質的にはやはり一〇〇%の充足であると考えていいというぐらいのレベルでございまして、それから先は人事運用上そのぐらいの幅は欲しいというような実態でございます。
  203. 河野洋平

    ○河野委員 いろいろお伺いをしてまいりましたが、大変しつこくて恐縮ですけれども、私はもう一度長官に、わが国防衛の最高——最高じゃない、二番目かな、防衛責任ある立場にお立ちの長官に、ひとつ軍縮ということをまじめに考えてほしい。それはただ単に言葉、表現、それは理想だけれども、なかなかそうはいかないよなんという程度の言葉遣いではなくて、もっとまじめに真剣に軍縮というものを考えてもらいたいということを特にお願いしたいと思うのです。冒頭に申し上げたように長官が軍拡論者だと私は決して思いません。しかし、こうやって設置法を出してこられて多少なりとも兵員の増加をしよう、こうおっしゃる。ちょっと伺いますが、来年もまた防衛庁設置法をお出しになる気がありますか。
  204. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十六年度もことしと同じように艦艇、航空機の就役に伴って人員の増減をいたしました結果、差し引き要増員分を持っておりますので、五十六年度も防衛庁設置法をぜひ通していただくようにお願いしたいと思っておるわけであります。
  205. 河野洋平

    ○河野委員 防衛庁設置法をことし臨時国会でこういうかっこうで審議をして、来年また防衛庁設置法を出してくる、私はちょっとおかしいと思いますね。少なくとも兵員の増加その他について防衛庁設置法にそういうものを盛り込まれるなら、今度はやはり計画どおりの充足ができるとか、あるいは国際環境が変わるとかなんとかいうことでないと、いま議論をしているのは五十五年の秋のセッションで、来年はまた別の防衛庁設置法を上乗せして出すのですということになると、先ほどの防衛庁長官の軍縮についてのお考えはいささかあやしくなりますな。長官、もう一回軍縮について御答弁願いましょう。
  206. 大村襄治

    大村国務大臣 軍縮については先ほど申し上げましたように、国連その他の軍縮の努力に防衛庁といたしましても協力してまいらなければならないと考えておるわけでございます。  そこで、お尋ねの定員の増加との関係でございますが、私ども防衛庁といたしましては、また防衛庁設置法に基づきます任務を達成するためには、必要最小限の増員が必要であるというふうに考えまして、その必要な分を各年度の法律案として提出しておる分が過去において二年分、今回御審議を願っておるわけであります。来年度につきましては概算要求中ですから何とも申し上げられる段階ではございませんが、この概算要求が認められればまたそれに関連する増員も提案する必要が生じてくるかもしれない、さように考えておるわけでございます。  また、現在の自衛官の定数は先生御存じのとおり陸海空それぞれ法律で決まっておりますので、これまでの予算で認められました艦艇や航空機が就役してまいりますと、一方廃止になる分は差し引いて純増分の増員をお認め願いませんと、せっかく予算で認められました艦艇や飛行機が円滑に可動しないという心配があるわけでございます。そういった点も考慮いたしまして、今国会におきましては二年分の増員をぜひひとつお認め願いたいというふうに考えておるわけでございます。
  207. 河野洋平

    ○河野委員 質問を終わるに当たって、もう一度だけ長官に国連における園田大臣の演説は決して忘れてほしくない。わが国は軍縮の分野できわめて先進的な立場にあるとの誇りを持っているという、このわが国はというのは日本の国のことなんだということは、長官、決して忘れてほしくない。きわめて先進的な立場にあるという誇りを忘れてもらっては困る。  それから、繰り返し申し上げますが、日米関係をスムーズに運ぶことは重要です。これは認めます。しかし、それと同時にアジアの地域の人たちとの仲をもっと大事にしてもらいたい。この問題がちゃんとしなければ、日本にとってゆゆしい問題になると私は思っているわけであります。と同時に、国民理解国民の望む範囲内において防衛力は整備されるべきものだ。それを超えて、国民理解も協力も得られないのに防衛庁だけが機材をせがむようなことは許されるべきではない。国民理解と協力なくして日本の安全、防衛というものはできると思わないから、こういうことをあえて申し上げるわけでございます。  長時間、質問時間をお与えいただいて、委員長ありがとうございました。  以上で、私の質問は終わりにいたします。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕
  208. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 角屋堅次郎君。
  209. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本委員会に提案をされております防衛三法に関連をいたしまして、若干の質問をいたしたいと思うわけでございます。  きょうは、総合安全保障といったような立場も含めて、防衛庁長官以外に内閣官房長官、外務大臣、通産大臣の御出席を要請しておったわけでございますが、それぞれ、通産大臣の場合は外国に出られるというふうなことがあったり、外務大臣は大切なお客さんがおいでになっておるというふうな日程の関係等もありましたので、閣僚としては直接防衛責任の衝に当たられる大村防衛庁長官、いま申しました各省の関係はそれぞれ問題を少し狭めまして、出席者の対応に応じた形で御質問をさせていただきながら問題の中心に入っていきたいと考えております。  そこで、外務省と防衛庁関係以外の他省から御出席になっておる政府委員関係は、質問の順序としては少しく中ごろにしたいわけでありますが、御出席のそれぞれの委員関係もありますから、まずそれから入りたいというふうに考えます。  御案内のとおり、大平前総理は選挙中に急逝されたわけでございますが、大平内閣当時、大平総理は中長期の展望に向けて各方面からの意見を聞く。そして問題別にそういうものを検討してもらおうということで、大平総理の政策研究会というのを昨年の一月に発足をさせ、そして九つの研究グループに分けて、それぞれ検討願ったことは御案内のとおりでございます。一つは文化の時代研究グループ、一つは田園都市構想研究グループ、一つは家庭基盤充実研究グループ、一つは環太平洋連帯研究グループ、そしてここで関連して問題になります総合安全保障研究グループ、そして次には対外経済政策研究グループ、また文化の時代の経済運営研究グループ、科学時代の科学技術の史的展開研究グループ、多元化社会の生活関心研究グループ、こういう大平さんらしい、総合的な二十一世紀を展望しながら、当面こういった問題を基礎にして、どう内政、外交をやっていくかという立場でそれぞれメンバーを集め、検討願ったという経緯だと承知しております。  そこで、本委員会の当面の問題に関連をいたしましては、申すまでもなく総合安全保障研究グループが七月二日に報告書として出したこれが関連をしてくるわけでございます。  鈴木内閣の発足に当たりまして、鈴木総理は、大平内閣の従来とってきたそれを継承しながら、そして内外政策に対応してこれを発展させようという立場をとっておられる、そういうふうに理解をいたしますので、まず報告書と関連しながら安全保障問題、その中で特に取り上げておりますのは「安全保障政策の総合的性格」、「状況と課題」、「いくつかの具体的考察」として「日米関係」、「自衛力の強化」、「対中・対ソ関係」、「エネルギー安全保障」、「食糧安全保障」、「大規模地震対策」、こういった問題を「いくつかの具体的考察」として取り上げられておるわけですが、安全保障の中で関連して重要な問題として「エネルギー安全保障」、「食糧安全保障」の問題についてまず若干お尋ねをいたしたいと考えております。  そこで「エネルギー安全保障」の問題については、ここでは「安価で豊富な石油を前提とした時代は終わり、再生可能エネルギーの本格的利用は二十一世紀になると予想されることから、中・長期的なエネルギー危機の現実性はかなり高い。」こういうふうに述べながら、いろいろなことを敷衍して触れ、そして二番目として、「短期的エネルギー危機は、戦争、内乱などの政治的理由、油田事故、タンカー衝突などの物理的理由、売買契約の不調などの経済的理由によって発生すると見られる。」こういったことにも触れておるわけでありますが、申し上げるまでもなくわが国の原油はほとんど国内供給ができない。ほとんどそれこそ九八%も九%も外国に依存をしなきゃならぬという現状にあるわけでございますが、この機会に通産省の方から、原油の地域、国別の輸入の現状、これはもう細々したことは要らないのでありまして、中東地域とか南方地域とかアメリカ地域とか共産圏とかアフリカ地域とか、大別で結構であります。  また、中東地域におけるイラン・イラクの戦争、あるいは中東地域における数年来出てまいっております産油国の対応等から見て、日本の今日の原油の輸入の変化あるいは今後の対応といったような問題について簡潔に御説明を願いたいと思います。同時に、中東地域に今日以上の危機が発展をしてまいるというふうな不幸な事態になった場合においては、今日一体どういう対応を検討されておるのか、こういった問題についても、大臣御出席でありませんけれども、それぞれ担当のところにおけるいろいろな検討の問題として触れて御答弁を願いたいと考えております。
  210. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  まず、現在の日本の原油輸入の地域別の割合でございますけれども、ごく最近の時点で申し上げますと、中東地域が約七割でございます。それから南方地域が約二割、それから……(角屋委員「数字は、資料があるならちょっと言ってください」と呼ぶ)それでは数字を申し上げますと、ごく最近、ことしの七—九月期で申し上げますと、中東地域で七二・三%、南方地域で一九・三%、アメリカ地域で二・八%、共産圏、これはソ連、中国でございますが、三・七%、アフリカ地域二%という状況でございます。ごく最近の数字はそういうことでございますけれども、五十一年ごろと比べますと、五十一年ごろは中東地域が約八割、七九・五%でございました。したがって、中東地域からの輸入の割合はだんだん下がってきておるという状況でございます。  それで、現在イラン・イラク紛争の問題があるわけでありますけれども、現在のところ、私ども判断では、日本の原油の消費水準が非常に落ちておるということあるいは備蓄レベルが九月末現在で大体百十一日くらいございます。あるいは世界の原油需給がそれほどタイトでないというようなことから、イラン・イラク紛争が仮に不幸にしてここしばらく続いたといたしましても、わが国の原油需給については特段の問題はないと思っておるわけでございますけれども先生指摘のように、中東地域に七割依存しておるということで、ホルムズ海峡を通過してくるのが、要するに七割ぐらいということでございます。そういうことから申しまして、原油、石油といった面からの供給の安定というものは考えていかなければいけないと思っておるわけです。  そのために、安全保障という観点から申し上げた場合に、その一つは、備蓄の増強を重要な対策としてわれわれは考えております。現在民間備蓄九十日を目標に施策を進めてまいっておりまして、民間備蓄九十日の目標は近々のうちにほぼ達成できるというふうに思っております。ただ、現在のIEAの平均で申し上げますと、百四十日ぐらいの備蓄があるわけでございます。そういうことから申しまして、民間の九十日備蓄だけでは不足であるということで、現在国家備蓄三千万キロリットルというのを目指して施策を進めております。  なお、御参考までに申し上げますと、現在の国家備蓄は、タンカー備蓄という形態をとっておりまして、量的には七日分ということでございます。  それから、第二の問題は、やはり供給地域、供給源、これの多角化を図っていくことが重要なことだと思っております。先ほどちょっと触れましたけれども、ここ数年中東地域のウエートが下がり、逆に南方地域のウエートが上がってまいっております。南方地域は五十一年ごろは約一七%でございました。現在は二割ぐらいということになっておるわけでございまして、中東地域が下がり、南方地域が上がっておる。それから共産圏につきましても、五十一年当時二・七%であったものが最近では三・七%ぐらいまで上がってきておるということで、地域の多角化というのは、徐々にではございますけれども、進められてきております。私どもとしては、こういう地域の多角化ということをこれからも進めていくことが必要であるということで、あるいはメキシコ、これは江崎前通産大臣あるいは大平前総理大臣がおいでになりまして、メキシコ側といろいろ話をしていただきまして、当初の、一九八〇年で十万バレルまで供給するというメキシコ側の約束、これはすでにメキシコ側が約束を履行してきております。さらに来年以降の増量につきましても、メキシコ側のポルティーヨ大統領が、大平前総理がおいでになりましたときに、日本側の増量要請について政治的な決断と善意をもって対処するということをおっしゃっていただいているわけで、われわれとしては、今後メキシコからの原油の増量というものに期待をしているわけでございます。  また、他の地域といたしまして、中国からの輸入というものも私どもとしては期待をしております。中国からの原油の輸入は、一九七八年から長期貿易取り決めに基づきまして行われておるわけでございまして、現在までのところ、協定に従って順調に輸入が行われてきておるわけでございます。ただ、最近では中国側の原油の生産が停滞しているということ、あるいは中国側の国内需要が増大しているということなどから申しまして、今後、協定に従った増量というのにはやや困難があろうかと思いますけれども、われわれとしては、中国側とよく話し合いをして、できるだけ中国からの輸入をふやしていきたい。ただ同時に、先ほど申し上げましたように、中国の現在の原油の生産というのが停滞しておることから申しまして、中国の石油の探鉱開発そのものに協力していくことが必要だと思っておりまして、渤海の探鉱開発に日本が協力するということで、すでにプロジェクトが進行しつつある状況でございます。  そのほか、インドネシアについては、すでにいろいろプロジェクトが動いておるわけでございますけれども、インドネシアからの増量についても、われわれとしてはさらに進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  211. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 エネルギーの安全保障問題ということについては、いまの原油問題で若干お尋ねをいたしましたが、さらに突っ込んで、いわば安全保障を考える場合のわが国の置かれておる条件という意味で、次に安全保障の問題としての食糧問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  ここでは、食糧安全保障の問題について、「食糧安全保障が脅かされるケースとしては、海上輸送ルートの途絶、主要輸出国の不作、主要輸出国との外交関係の悪化、世界の人口と食糧生産との不均衡といった短期的、中・長期的なものが考えられる。こうした可能性は、目下のところ少なく、起こっても短期的、限定的と見られるが、万一の場合、食糧不足の及ぼす影響は大きい。」こういうふうに第一項で述べられておるわけでございます。  私は長く該当委員会におりましたので、これはこれとしていろいろあるわけでありますが、御案内のとおり、たとえば日本の穀物自給率一つをとってみても、残念ながら三四%台である。大半をアメリカその他の諸外国に依存をしておるという状況である。また同時に、木材一つをとりましても、アメリカ材、ソ連材あるいは南洋材、南洋材が一番多くて、アメリカ材とソ連材はそう大差はないわけでありますが、日本は木材についてもいまは自給率が非常に低下をして、約六割を超える外材輸入という中でやっていかなければならぬ、七割にも及ぶという状況にあるわけであります。  この機会に一つの説明として、食糧あるいは畜産との関連で、飼料としても関連のあります大豆とか穀物の輸入の地帯別の状況、あるいはこういった問題と関連をして第三項でいわゆる非常事態というふうな場合において自助努力というものについて触れておられますけれども、備蓄その他と関連する問題についてもひとつ御説明を願っておきたいと思うわけでございます。
  212. 古谷裕

    ○古谷説明員 お尋ねのございましたわが国の農林水産物の輸入状況につきまして、私から御説明申し上げます。  日本の農林水産物の輸入額は、全体で二百八十九億ドルという数字が昨年、一九七九年において記録されております。これは総輸入額が一千百七億ドルでございますので、全体の二六・一%という状況になっております。  先生御承知のように、農林水産物の中には林産物、水産物、畜産物その他含まれておるわけでございますが、いま御指摘のございました穀物と大豆につきましてやや詳細に申し上げますと、まず小麦でございますが、小麦については五百九十三万トン、十億九千万ドルとなっておりまして、そのうち米国が三百三十五万トン、カナダが百三十八万トンという輸入数量になっております。  それから、大豆でございますが、大豆は全体で四百十三万トン、金額では十二億七千二百万ドルということになっておりまして、そのうち米国が三百八十四万トン、中国が二十七万トンという数字でございます。  さらに、トウモロコシ、これが畜産に一番関係があるわけでございますが、一千百四十一万トン、十四億八千七百万ドルでございまして、米国が九百八十三万トン、南アフリカが八十四万トンということでございます。  その他、グレーンソルガム及び大麦がそれぞれ飼料用に使われておりますが、グレーンソルガムは五百三十六万トンで、国別に申し上げますとアルゼンチンが二百四十二万トン、米国が二百三十万トン。大麦が百五十二万トンで、カナダ八十四万トン、豪州六十七万トン。穀物全体の数量で申し上げますと、大豆を除きましては二千四百万トンの輸入というふうに申し上げていいかと思います。
  213. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私がこういう問題を総合安全保障全体の中で特に冒頭に取り上げましたのは、言うまでもなく国民の生活あるいは産業活動、こういうものを考えます場合に、一つは命の糧である食べ物の問題、あるいは同時に産業活動、庶民生活等も含めて原油というものが総合エネルギーの中で相当大きな比重を現在では占めておる。やがてこれを全体の中で五〇%程度に持っていきたいという政策意図はありましても、現実にはやはり大きな比重を占めておる。しかもこういったものについては、原油の場合はほとんど大部分を外国に頼らなければならぬ。中近東その他いま各地域のバランスを述べられましたが、いま問題になっております中東地域から相当程度仰いでおる。穀物を中心にした大豆等を含めた状況を見てくれば、項目によって違いますけれども、たとえば大豆は九一・九%アメリカ、あるいはトウモロコシにおいては八五・八%アメリカ、小麦においても五六・二%アメリカ、大体主要なものについては相当部分アメリカ依存という形になっているわけでありまして、これはいわば日本から輸出していく近代産業の製品、それとのある意味での関連におけるアメリカからの強い農産物輸出、これに日本が現実にはこたえておるといううらはらの関係でありますけれども。従来からも国際的に石油戦略あるいは食糧戦略ということが言われてまいりましたけれども、こういった石油戦略や食糧戦略という意味では、石油戦略を行使されれば日本はお手上げという現状にならざるを得ない。また現実に、いま日本の農業政策等との関連で言えば、残念ながら食糧戦略を行使される場合においては、国民生活に相当大きな影響を持ってくる。この食糧の問題については相当部分アメリカに依存をしておるという現状から言えば、日本はアメリカのいわゆる核のかさ、食糧のかさという中に置かれておるとも言えようかと思うのであります。  そういう状況の中で、一体こういうエネルギーの安全性あるいは食糧の安全性の問題をどう考えるかというのは、この場での議論としては別途の機会に譲りたいと思いますけれども、いずれにしても国民の命の糧である食糧あるいは農林水産物、そして産業や日常の国民の生活にかかわる原油問題という現状から見ますと、これは国際的な平和の環境というものが持続されることによって、初めて日本が経済の面でもあるいは産業の面でも生活の面でも生々発展していく条件を持っておる。もしこれが、小規模の場合は別として、相当大規模な不幸な事態が生ずる場合においては、たちまち重大なピンチに立つということが、いま言われたこの置かれておる条件の中でも明白だというふうに思うのであります。われわれが総合安全保障を考える場合に、いまのこの問題を抜きにして、軍事優先主義で問題を考えることができないというのが、私どものこういう問題を考える基本的な立場の一つになろうかと思っております。  そこで、私は次にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、この防衛白書「日本の防衛」、昭和五十五年八月に防衛庁からお出しになったわけでありますけれども、これはかつて中曽根さんが防衛庁長官当時に出されて、一時中断をしておりまして、坂田防衛庁長官のときに「日本の防衛昭和五十一年六月防衛庁」ということで出されておりました。この久方ぶりに出されました五十一年六月の「日本の防衛」と、最近出ております、ことに本年出されております「日本の防衛」とを見ますと、防衛の中身の性格というのが、これは国際情勢の変化に籍口しているのでありましょうけれども、相当大きく変化をしてきておると受けとめざるを得ないのであります。坂田さんはこの防衛白書を出される場合に「刊行によせて」という中で冒頭に「ようやく防衛白書ができあがった。昨年の暮には出したいと作業を進めていたが、ほぼ一年かかってしまった。いざとりかかってみると思いのほか難渋した。一つには、防衛問題を積極的に提起して国民のものにしようとする意欲よりも、世間に問題をひき起すまいとする配慮が先立つ、長年の防衛庁内にある消極的雰囲気にも原因があったように思う。」ということで前置きをしながら、この防衛白書を出す考え方について述べておられます。そして坂田さんは、同時にわが国防衛を考えるということで防衛を考える会というのをつくられて、メンバーにいろいろ検討してもらい、そういうものもお出しになっておる。この当時のわが国防衛を考えるということで出された考え方あるいはまた「日本の防衛」ということで五十一年六月に出された考え方と、いま申しましたように、その後ずっと出ておりますけれども、最近、特に本年度の「日本の防衛」を対比してまいりますと、中に書かれていることは、いざいざと言わんばかりの態勢の書き方をされておるわけであります。  この問題については、後ほどまたさらに触れるといたしまして、私が第二に聞きたいのは、この防衛問題を考える場合に、われわれは第二次世界大戦ということを想起しなければならぬと思います。もちろん第二次世界大戦の問題ばかりではありません。それは第一次世界大戦であれ、日本がかつて中国に、東南アジアに、あるいは旧名称で言えば満州にと各方面に展開をいたしました大東亜戦争というものをやはり振り返ってみなければならぬと思うわけでありまして、それは単に日本だけではなしに、国際的にも第二次世界大戦の教えるものが、こういった防衛、安全保障を考える場合の原点になければならないと私は思うのであります。  そういう立場から、まず第一にお聞きをしたいのは、第二次世界大戦において国際的に一体どれだけの死者あるいは負傷者があったのか、特に日本の場合はどれだけの戦死者あるいはまた民間を含めての死者や負傷者があったのかという点について、まず御答弁を願いたいと思います。
  214. 石崎昭

    ○石崎政府委員 第二次大戦中の戦死者、戦傷者等につきましては、防衛庁は自分で調べて数字を認定しているわけではありませんので、御参考までに手持ちの文献、資料の内容を申し上げます。  まず、世界における戦死者、戦傷者の数についてでありますが、コリアーズエンサイクロペディアという本の一九六三年版によりますと、連合国の方の死者及び行方不明者、合計約一千万でございます。それから同じく連合国の方の負傷者が約一千八百万。それから枢軸側でございますが、これの合計数、死者及び行方不明者が六百七十万、負傷者が八百二十数万。連合国、枢軸国両方合わせまして、死者及び行方不明者が約一千七百万、それから負傷者が両方合わせまして約二千七百万。以上のような数字でございます。  それから、次に日本における戦没者等について申し上げますと、これは厚生省が調べた数字でございますが、戦没者の総数が約三百十万人、その内訳は、軍人、軍属等が約二百三十万人、外地で死没した一般の日本人が約三十万人、それから内地で死没した日本人、これが約五十万人、合計してさっき申し上げました三百十万人という数字でございます。
  215. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 とにかく第二次世界大戦で亡くなった方あるいは行方不明で亡くなったのじゃないかと思われる方あるいは負傷された方、軍人であれ軍属であれ一般の方々であれ、いまお述べになった数字から見ても、やはり大きな犠牲が各国に出ておるわけであります。われわれが諸外国を訪れましても、たとえばヨーロッパで申し上げますればドイツあるいはソ連あるいはポーランドといったようなところを訪れますれば、いかに激闘が行われたか、いかに大量の人々がそういう中で亡くなったかという実態に触れることはいまでもできるわけであります。同時に日本人自身については、広島、長崎の原爆の洗礼を受ける、あるいはまた外地に出ていく人々は、北に南に祖国防衛の名において戦い、そしていま申されましたような大きな犠牲とそして損害を受けたわけであります。当時、私も戦時中はフィリピン、あるいはいまで申します中国、そういうところに足かけ五年間従軍の体験を持つわけであります。同時に、最後は本土決戦部隊ということで、あのあわただしい二十年の七月、中支から満州、北鮮を通り、潜水艦攻撃を受けながら日本海、新潟に着いて、艦載機の列車攻撃の中で福岡に行き、そこで命令をもらって九州の五島の現地中隊長ということで、長崎の原爆の惨たんたる体験をしておるわけであります。  そういう体験等を考えに入れてまいりますと、今日第二次世界大戦におけるああいう広範な戦いの中での人的被害、これが、あの最後に使われました原爆がさらに水爆の段階まで来ておる。アメリカ、ソ連あるいは英国、フランス、中国等がこういうものを保有する。しかも、こういう保有兵器というものが、前提条件としてそういうことがあってはいかぬわけですけれども、もし不幸にして行使されるということになったならば、第二次世界大戦をはるかに超える惨たんたる姿が出てくる。人類破滅の事態にまでいくということ、これは保守であれ革新であれ、また世界のいずれの国であれ認めざるを得ない冷厳な現実だと思うのであります。そういう意味では、まさに今日は、われわれ世界は一部局地紛争の中で、平和の時代に生きておると考えていいのか、あるいは核兵器の今日の重要な諸国における保有を考えてみれば、恐怖の時代に来ておると考えていいのかということは、まず防衛を考える場合に、真剣にやはり基本認識として受けとめなければならぬというふうに思うのであります。  そこで、私は戦略核兵器、こういうものがたとえば日本に最新鋭のものとして行使された場合、一体それは、今日の核兵器の水準の中で日本に対してどの程度のものを用いればいいし、またそれが行使された場合にはどういう影響になるのかという点について、第二点としてお尋ねしたいのであります。私は、別にアメリカであるとかソ連であるとか中国というものに対して、特別の意味合いを持って考えるのではありません。中国の場合は、防衛白書を見ましても、まだICBM保有という段階にいっておるかどうかは、私自身専門でありませんからわかりませんけれども、中距離弾道弾その他の段階のように承っておりますが、何といってもアメリカやソ連はいわば軍事大国であって、日本の今日の国際的な環境というのは、軍事的には二極、政治的には多極化という中で国際政治が進んでおるというふうに判断をするわけであります。たとえばアメリカからICBMあるいはソ連からICBMあるいは原子力潜水艦も射程七千キロに伸びるというふうに最大のものは承知しておりますけれども、そういうものから日本が、アメリカであれソ連であれ攻撃を受けるという場合に、一体どういう被害が、どの程度のものによって壊滅的な状態にいくのかという点について、ひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  216. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 日本に対して、アメリカまたはソ連のような超大国による全面的核攻撃があった場合はどうかという御質問というふうに理解いたしますけれども先生も御存じのとおり、米ソが相互に核攻撃をいたしますと、相互に破滅的な状態が起こるということで核抑止力が働いておりまして、しかも日本についてはアメリカの核のかさの下にありまして、かかる状況が起こることはきわめて可能性が少ないというふうに判断しております。  ただ、あえて核攻撃があった場合どうなるかという御質問だ、そういうふうに理解いたしますが、これにつきましては、水爆が開発されましたころの六〇年代初めごろの資料はいろいろ多いのでございますけれども、最近の資料というのは余りないのでございます。それで一つは、これは昨年国防総省が部外に提供した資料の中でございますけれども、日本に対してでなしに、米ソがお互いに全力をもって撃ち合った場合にどうなるか、そういう資料がございます。まずはそれでよろしければ申し上げますけれども、その場合、米国人の生存率は、と申しますよりも、端的に即死者は米国七千二百万ないし一億三千七百万、ソ連二千三百万ないし五千万。ただし、指導層はソ連の場合は防衛組織、防衛が発達しておりますので、無傷の指導者あるいは相当な施設が残るだろう、ただアメリカの場合は残るのが非常に少ないだろう、そういうふうに考えられております。  次に、日本と申しましても非常にむずかしいのでございますけれども、もう一つの参考となりますのは、もし東京が攻撃された場合ということで、これについてもわれわれは権威のある資料は持っておりません。ただ、同時に七九年に公表されましたアメリカの議会技術評価局の「核戦争の効果」という資料によりますと、人口四百三十万のデトロイトの上に二十メガトン水爆、これはいま実用化されている一番大きな水爆と考えられますが、これが一発打ち込まれた場合に、百八十四万人の死者と百三十六万人の負傷者が出るだろうというふうに言っております。これは人口四百三十万人でこのくらいでございますから、東京であればはるかに多いというふうに推定されます。
  217. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまICBMの場合は、大体一番飛ぶ距離というのは一万二千キロぐらいになっているのでしょうか。
  218. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 一万一千キロないし二千キロが最大の射程だろうと思っております。
  219. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そうすると、原子力潜水艦の場合、先ほど私は射程の一番伸びるのは七千キロというふうに申し上げましたが、大体その程度まで進んできているということでしょうか。
  220. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 アメリカのトライデント、それからソ連のSSN8、18、これはそれぞれ八千キロぐらいまで射程を有するというふうに考えられます。
  221. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そうしますと、いずれにしてもワシントン—モスクワ間は七千八百三十キロ、ワシントン—ウラジボ間は一万四百二十キロ、こういう点から見て、別に前提条件を置くわけでありませんけれども、アメリカからの場合あるいはソ連からの場合、たとえばICBMの場合あるいは原子力潜水艦は絶えず移動するわけですから、それが七千キロ、八千キロという射程行程を持つとすれば、日本はいずれにしても網の中に入るということは間違いがない。しかも、いま御説明でデトロイトを例にとられたように承知しておりますけれども、そこにおいて当てはめてみた場合に、日本は過密社会で大都市がありますから、相当な人的被害が出る。したがって、そういう点から見て、こういうものが行使されるという場合の惨禍ははかり知れないものがあるだろう。私はあえて第一次、第二次世界大戦の人的被害はどうかということを申し上げましたけれども、あの当時もずいぶんな被害が出たわけでありますけれども、今日いわゆる核戦略体制というものが核保有国によってどんどん進められていく。それが停止するところなくいくという場合は、最悪の場合、これが行使されたというときになれば、世界人類の破滅という事態を当然予測しなければならぬ。しかも、この大陸間弾道弾自身も相当な距離を飛ぶわけですけれども、現実に目標をねらって実際の誤差というものは三、四百メートル以内というふうに私は聞いておるわけでありますけれども、いわゆるICBMが目標をねらってその目標から外れることは三、四百メートル以内。これは精度がもっと高まっておるというふうに聞いておるわけですが、その点についてもいかがですか。
  222. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 これについては、公式に発表した数字というものは非常にむずかしいのでございますけれども、権威のある数字から間接的に引用された数字とか、あるいはそういうことで、御説のとおりの数字で大体間違いないと思います。しかし、これは最新式のICBMの命中精度でございます。
  223. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私が第二次世界大戦の人的被害あるいは今日現実に進んでおりますいわゆる戦略核兵器、アメリカ、ソ連の間においてはSALTI、それに続くSALTIIは、御承知のようなアフガン問題を契機に、いま米上院でこれの審議がされてないという状況に置かれておる。アメリカ大統領選挙の結果、どちらに進むのかは、大統領の決定ももちろん一つのファクターでございましょうけれども、そういう状況の中で、白書が説いておるように、日本は自衛力を増強しなければならぬ、ヨーロッパ地域においてはかくかくしかじか進んでおる、アメリカはこれから軍事力を増強していく、予算についても毎年かくかくしかじかの状況でいこう、あるいはNATO諸国に呼びかけて、NATO諸国でもさらにそういうふうにいこう、日本もこれに呼応して、さらに軍事力を増強しなければならぬというペースで、現実に日本のこの防衛白書が書かれておるわけであります。私は第二次世界大戦を体験した者として、第二次世界大戦の段階までの兵器ならば、もちろん戦争は絶対避けなければなりませんけれども、それによる被害というのはおのずから壊滅的なものでなかったでありましょう。しかし、今日お互いが、保守であれ革新であれ、前提条件として真剣に考えなければならぬことは、核兵器というものは、戦略核がどんどん進んでいく、そういう状況の中で、世界人類の永遠の生存権というものを確立するためには、まずどう考えるのかということは、政党政派を超えた人類的な問題ではないのかというふうに思うのであります。同時に、日本は世界唯一の被爆国である、これは厳然たる事実であります。戦後三十五年、まだ戦後は終わってないというのは、原爆患者についても言えるわけでありましょう。同時に、各戦線で亡くなった遺骨はいまだ十分に収拾されてない状況でありましょう。日本から離れていった、あるいは南洋諸島あるいは朝鮮、台湾、いまは台湾というのは不適当でありますけれども、そういうかってわれわれの国の手にあった人々に対する戦争被害というものに対して訴えに来られても、それに対して十分な手を打っておるのかという問題も含めて考えてまいりますと、やはり忘れられた部面というものがあるのではないか。戦後処理はいまだ日本の責任においても終わっていないというふうに思うのであります。  そういうふうに考えてまいりますと、「日本の防衛」という防衛白書を出す場合の防衛庁の原点——私の希望を率直に申し上げますれば、世界唯一の被爆国として、日本は別として、進んでいくいわゆる戦略核というものが、仮に日本に行使された場合は一体どういう姿になるのか、それが不幸にして相当規模の戦争状態において行われた場合の人的被害は一体国際的にどうなるのかということが、まず防衛白書の冒頭で記録されなければならないのではないかというふうに思うのであります。まず国民に知らせることは、米ソの軍事バランスが崩れた。いままではアメリカが圧倒的優位にあった。ところがべトナム戦争その他アメリカが苦闘し敗退をした後、国民の気持ちからいっても防衛力増強ということにスピードは進み得なかった。これはアメリカ自身の問題でありますけれども、そういう中でソ連の軍事力は進んでいった。かつては圧倒的優位にあったけれども、今日は外務省から言えば、外交青書から言えば、まだアメリカが優位である。防衛白書から言えば、大体とんとんのところに来たと言わんばかりに書いておるわけであります。そういう視点から防衛白書をとらまえるのかどうか、本当に国民の生命財産あるいはこれからの平和的な活動ということを前提に考える場合には、いま世界の軍備あるいは軍事力というものは大変なところに来ておる。これをやはり平和の方向に切りかえなければならぬというのが、防衛庁を含めた日本自身の基本的な姿勢でないのかというふうに私は思うのであります。  したがって、そういう点から、たとえば国際外交における外務省の責任あるいは防衛庁自身もアメリカと接触を持ちあるいはいろいろ国際舞台でどうするという問題についても、今後意欲を燃やしておられるようでありますけれども、私はその前に、「日本の防衛」という防衛白書を書く基本的な姿勢というものをどこに置くのか。もちろん「軍事情勢」に述べられること自身について、私どもがそれは絶対だめだと言うわけにはまいらぬでしょうけれども、まず防衛白書なら防衛白書を出す場合の基本的姿勢というものをどこに置くか。絶えず世界の平和を求める日本の立場というものを防衛の中においても原点にしながら、今日起こっておる軍事情勢はどうである、それに対して日本はどうすべきであろうか、こういう説き起こし方が本来の防衛白書のあり方でないのかというふうに私は認識しておるのであります。この点について防衛庁長官の御答弁を願いたい。
  224. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  大変広い視野からの御意見を聞かせていただきまして、拝聴いたした次第でございます。  ところで、ことしの防衛白書についていろいろ御意見があったわけでございますが、まず、私どもがことしの防衛白書をつくるに当たりましての国際情勢の認識でございますが、長々と申し上げるのもいかがかと思いますから、端的に申し上げますと、いわゆる米ソ両超大国の間のデタント、これはここ数年間大分変化があったと思います。特に昨年からのアフガンへのソ連の出兵、米ソ間の信頼関係が損なわれてきている、そういう意味では後退はあったと言わざるを得ないと思うのでございます。しかしながら、両国が最大の凶器とも言うべき核兵器を直ちに行使して大規模な戦争に入る、そういうところまではまだ来ておらない。先ほど御指摘もございましたようにSALTI、SALTIIはアメリカ国会の中でちょっとペンディングになっておりますが、引き続きまだ検討はされておるわけでございます。また最近は、ヨーロッパの諸国において、中距離の核兵器についてソ連との間に話し合いを持とう、こういう工夫、努力も行われているわけでございまして、私どもはデタントが崩れ去ったとは判断いたしておらないわけでございます。そんなような認識もございますので、国際情勢の分析、これは数年間毎年やっているわけでございます。同じように状況を見ながら分析はいたしているわけでございますが、昨年の白書に比べますと目立ちます点は、やはり中東の問題について一章掲げたという点が注目されるのではないか、さように私は考えている次第でございます。  そのようなこともございまして、せっかくの御指摘でございますが、核戦争が起こった場合の被害がどうなるか、特に日本の場合どうか、これはそういうことは起こり得ないと確信いたしておりますので、そういったことを前提としての記載はいたしておらないという次第でございます。また私どもは、平和憲法のもとにおきましても必要最小限の自衛力は持てるものと考えておりますので、防衛庁設置法、自衛隊法に基づく国の独立と安全を保つための必要最小限の防衛力をどのようにして整備していったらいいか、これは五十一年の「防衛計画の大綱」の範囲内で現在進めておるのでありますが、そういった点についての現状の記述につきまして相当のスペースを割いたということでございます。  なお、余談になりますが、国産技術の研究開発ということにも力を注いでおりますので、ことしの白書におきましては、それに対しましても相当のスペースを割いた、さように考えている次第でございます。
  225. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私はいまの大村長官の回答はわからない。私が言った、今日最も究極兵器と言われる核兵器と、これはどこの国を指すかということで政治的配慮をするということなら別だけれども、少なくとも大陸間弾道弾なりあるいは原子力潜水艦なり戦略爆撃機なり、そういうものが持っておる性能、そしてそういうものが行使される場合のいわゆる人的な被害、そういうことから核の廃絶というところに進む国民的世論の形成というものが基本的に必要なんじゃないか、まさに平和憲法の求めておる考え方もそこにあるというふうに私は考えておるわけであります。  外務省にお聞きしたいのでありますが、五十五年度版「わが外交の近況」いわゆる外交青書、これは相当分厚いものでありまして、私も目を若干通させていただいたわけでありますが、ここで気づくのは、たとえば「わが外交の基本的課題」という中で、前文を読まずにすぐ入るのはどうかと思いますけれども、十四ページの前段のところに「戦後の国際関係の基本的枠組みは重大な挑戦を受けつつあり、」こういうふうに述べながら、その次のところで「往々にして厳しい選択に直面し、時に犠牲をも覚悟しなければならない。」外交関係で「時に犠牲をも覚悟しなければならない。」という書き方というのは、少しく外交としてどうか。いわば総合安全保障あるいは防衛を考える場合には、言うまでもなく一つは外交的努力あるいは自国の平和と安全を守る場合の防衛のあり方、直接それをどうするかという問題、それと南北問題等も含めた経済的側面、いわばこの三つが平和と安全全体を考える場合の基本の柱だというふうに私は理解するわけでありますけれども、ことしの防衛白書と外交青書を見ると、足並みそろえてとにかく進軍の姿勢というのが出ているように私は思うのであります。仮に防衛関係がいまのような姿勢が大きく改まらないというふうな段階においても、外交立場というのはもっと冷静、クールな立場から、しかも先ほど申しましたように、私の言うことを基本に置いて、核の廃絶、完全軍縮への道を日本自身が外交の原点として求めて国際舞台に臨む。たとえば、いま日本は非核三原則堅持ということで、現実に政策をやっておるわけでありますけれども、いわゆる部分核停条約によって核を現実に保有しておる国、あるいは保有の潜在能力があっても、それを持ち得ない国というふうなことで、日本自身は持っていないのでありますから、核の問題については、国際舞台で、世界唯一の被爆国の立場からいっても、アメリカに気がねすることなく、またソ連に対してもその他の核保有国に対しても、粘り強く核の廃絶を進めるというのが外交のまず第一条件ではないかというふうに思うのです。この「八〇年代の日本外交を進めていくべきと考える。」ということで、以下のことが書いてありますけれども、この冒頭のところで、これは佐藤さんがよく使われた言葉ですけれども、「まず、平和に徹し、」こう書いてあるのです。「まず、平和に徹し、軍事大国にはならないというわが国の基本的立場を今後とも堅持し、」ということを書いてある。私の読み方からすれば、恐らく軍事大国というのはアメリカ、ソ連をおいてない。そうすると、それはとても考えてもおらぬし、そこまでということは日本の現状からいかないけれども、軍事大国にはならぬということは、軍事中国にはなりたい、こういうことで書いておるとも受け取れるわけであります。「軍事大国にはならない」、それならば、米ソに続くその次の軍事中国には外交関係から見てもなるべきだ、力を背景にした外交をやらなければならない、こういう立場で、八〇年代の日本外交という場合、この軍事的側面というものと、あたかも密着した形で外交をやろうとする姿勢というのが、わが国外交のこれからの進め方の基本として出ておるというふうにも受け取れるわけです。  これらの問題について、きょうは伊東さんに他の問題もあってぜひ来てもらいたいと思ったのですけれども、これは先ほど申したようなことで了承しておりますけれども、欧亜局長がおいでになっておるかと思いますが、この問題に対する答弁というのは、外務省サイドのそれぞれのセクションというものがあると思いますので、いま言った問題についてお答え願いたい。
  226. 秋山光路

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  厳しい八〇年代の国際情勢のもとで、わが国の平和と安全を確保していくためには、引き続き日米の安保体制の円滑かつ効果的な運用を図りまして、みずからも節度のある質の高い自衛力の整備に努めることが肝要かと考えております。同時に、このような努力は、世界の平和と安定に貢献していくとの積極的な外交一体となって、初めてわが国の平和と繁栄が確保できるのだと思います。今後ともこの基本的な考え方に従いまして、外交努力を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  227. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さっぱりわからない、私が尋ねたことにも直に答えていない、これはまことに困るのです。少なくとも外務省としては、外交を進めるに当たって、先ほど言った私の質問に対して直に答えてもらいたい。これはいまの答弁では納得できません。
  228. 秋山光路

    ○秋山政府委員 先生の御質問、軍事大国には日本は絶対にならない、それでは軍事中国になるのかという御質問かと理解いたしますが、こういうことは私どもは考えておりません。
  229. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 核廃絶に対する国際舞台における日本の外交的努力というものが、従来からどういうふうになされてきたのか。あるいは日本自身は、部分核停条約から言っても、潜在的には持てる力があっても、それは持たない、これは非核三原則立場から見て持たない。であればこそ核保有国に対しては強い姿勢で核の廃絶を求めていくということが国際舞台でもできるはずである。そういう問題に対して、国際舞台でどういう外交的努力をやってきたのかということについても直に答えていない。
  230. 秋山光路

    ○秋山政府委員 核軍縮につきましては、先生御案内のとおり、わが国はジュネーブにおきますところの軍縮会議等におきまして日本の立場を常に宣明して、世界の平和のために貢献していると私は確信しております。
  231. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 とにかく国際舞台で日本は経済的には世界第二位だ、こう盛んに言うのだけれども、それだけの力を持っておる。しかし、それを防衛や戦争のためというかつて犯したそういうことのために使わない。日本のとるべき外交というのは、アメリカやソ連やその他の国と違ったそういう日本の自主的立場外交というものが、先ほども申したことと関連してきちっと原点にあるはずだと私は思うのです。日米安保条約というのは、とにかくサンフランシスコで講和条約の調印をし、それが国会で批准をされた段階以降、かつての占領軍、米軍が日本に駐留するという形の中で日米安保条約が今日動いておる。そして同時に、これが六〇年の安保闘争や七〇年の改定を通じ、現実にいま動いておるわけであります。絶えず政府自身は、日米安保条約というものについて、防衛立場から、防衛白書を見ても外交青書を見ても、これを堅持していくというのが基本原則になっておる。われわれは必ずしもそういう態度をとらないのだが、一体、日米安保条約というものが双方にあることによって、日本の憲法のいわゆる制約を乗り越えて、アメリカとの軍事協力というものが国際情勢の変化の中で動いてくれば動いてくるほど、日米の安保条約を堅持する、あるいは日米軍事協力という立場からどんどん憲法解釈を推し進めていく、その要因は、日本の国民自身、日本の国内にあるというよりも、白米安保条約のプレッシャー、アメリカの強い要請というものが今日まで強く続いているのじゃないかと思うし、また今後とも続くのじゃないかというのが私の認識の中にあるわけであります。この点について、これは防衛庁になりますか、防衛庁長官からひとつお答えを願いたい。
  232. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問の趣旨が、日米安保条約に依存しながら軍備の拡張を図っていくのではないか、こういう御趣旨のお尋ねだったように思うわけでございますが、私どもといたしましては、日米安全保障条約を堅持しながら、わが国の自力で必要最小限の整備を図っているというのを基本方針といたしておるわけでございます。また日米安保条約につきましては、範囲を明確に規定しておりますので、その範囲内で進める限りにおきましては、無制限に拡大される、そういうことはないものと確信をいたしておるわけでございます。
  233. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは認識の違いというよりも、実態的に日本の憲法の制約の中で、いわゆる日本の防衛組織というものも変化をしながら今日進み、さらに今後も進もうという形勢にある。その場合に、先ほども河野委員質問との関連で言われましたけれども、いわゆる防衛問題、安全保障問題というのは防衛庁限りの問題ではない、国民全体の問題である。いわば国民理解と協力なくして日本の安全保障というものは基本的に成り立たない。若干後ほどにも触れますけれども、やはりそういう基本原則を十分踏まえながらわが国防衛をどうすべきかということを考えるべきだと思うのであります。  そこで、外務省の方は、先ほどの答弁を聞いておりますと、引き続き幾つかの質問をする気持ちがそがれるのでありますけれども、少しくお伺いをいたしたいと思うのであります。  軍事的には米ソ二極、政治的には多極化ということを私は言いましたけれども、余りアメリカの立場、それを受けた日本の立場ということに過度に立ちますと、やはり軍事的な米ソの二極構造から見て、一方の対ソの関係というのは、外交的にどうしてもアメリカの影響下に置かれやすいという点を持っておると思う。私は、主体的にはそうであってはならない。もちろん昨年末のソ連のアフガンへの軍事介入という問題は、超党派で国会でも決議されたように、これはあの決議の趣旨に沿うて強くソ連に求めなければならぬというのはわれわれ共通の意思である。しかし同時に、日本自身は、地理的な隣国ということを考えます場合には、お隣に中国がある。この中国一つ考えても、戦後ある段階まではアメリカのいわば中ソ封じ込め政策というものが強く続いていって、日本の政権を主として担当した保守党の方では、これに即応していったと私は思うのであります。しかし、われわれ革新側ばかりでなしに、保守の側にも松村謙三さんとかあるいは高碕達之助さんというふうな先覚の士があって、またそれに協力する方々もあって、激しい党内抵抗を受けながら今日の日中友好の道を開いたということであろうかと思うのであります。われわれは、社会党がこの中で一番中軸で活動したんだということをあえて言おうとは思わない。しかし、いずれにしても田中元総理が訪中をして、日中の正式のとびらを開くというのは戦後相当たってからの段階であります。そして日中平和友好条約ができるというのもその数年後であります。しかし、日中は新時代を迎えておるわけでありますが、これは戦後直ちに始まったものではない。相当期間政治的にはいわば敵対関係あるいはそれに準ずるような姿勢がとられてきたというふうに思うのであります。  そういうことも考え、今日の日ソ関係というものを将来展望して考えます場合に、やはり単にそういうものに対する先覚者に依存をするのではなしに、いろいろな形における隣国としての対ソ関係を、懸案の北方領土問題の解決も含めてどうするかということは、今後長期にわたる日本の重要な政治課題であることは間違いない。今日、軍事的にアメリカの側に立ち、ソ連をいわば仮想敵国とするような防衛や、それに符節をする外交姿勢の中からは、いわゆる北方領土の解決という道はむしろ遠ざかるというふうに見なければならないのではないか、こう思うのであります。  ソ連のアフガン侵攻に籍口いたしましてモスクワ・オリンピックをついに見送るということになりました。このことについてはそれぞれ政党間に差異があったことは御承知のとおりであります。私はこのこと自身を言おうとは思いません。しかし、その場合に私自身が感じた点では、アメリカとか日本というのは強い姿勢でモスクワをボイコットいたしましたけれども、しからば西側はどうか。アメリカとECの関係というのは日本と同様に緊密な関係にあるはずである。西ドイツはこれに呼応いたしましたけれども、フランスやイタリーやイギリスはどうであったか、こういうふうに見てまいりますと、やはりそれぞれの国の主体的な判断に基づいて、こういう問題についても行動しているということは経過が示しておるわけであります。  同時に、日ソのたとえばプロジェクトを含めた経済問題を考えてまいりましても、いわゆるソ連のアフガン問題については日本であれ、あるいは西側であれ、強い姿勢をもってこれに対するそれぞれの見解を明確にしておりますけれども、同時に、経済の問題については西ドイツであれ、フランスであれ、首脳部がみずから飛び込み、またそういうものが具体的に進められるという形勢にあることもまた事実であります。私は、日本とアメリカの関係というのは大切にしなければならぬという認識において、別に変わった認識を持っておりません。しかし同時に、それはやはり政治的にも軍事的にもアメリカの考え方を一〇〇%前提に置いて日本の対外政策防衛を考えるということでは断じてないはずであります。そういう点で、日ソの問題を考える場合に、やはり政府の最近の対外姿勢、特に日ソ関係というものについては、そういった西側の状態というものを見やりながら、アメリカに対しても、やはり言うべきことについては日米対等の立場で物を申し、またみずからの主体的条件においてこういったものの判断を具体的にやっていくべきじゃないか、こういうふうに私は考えるわけであります。その点について、ひとつお答えを願いたい。
  234. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  わが国の対ソ外交についてでございますけれども、現状が必ずしも満足すべき状態にないということは、これは認めざるを得ないわけでございますが、それがなぜそのような状況に立ち至ったかと申しますと、これは改めて申しますまでもなく、北方領土におけるソ連の軍備増強とかアフガニスタンに対する軍事介入というようなことがあったわけでございまして、わが国といたしましては、あくまでもソ連は日本の重要な隣国であるということで、ソ連との関係を重視していることには変わりはないわけでございますし、また日本といたしまして、ソ連を事改めて敵視するというようなことでもないわけでございまして、日ソ間の友好を進めるということが私どもの最大の課題の一つであるわけでございます。  ただ、残念ながらいま申し上げましたようなことで、現状は若干冷却化しているわけでございますけれども、私どもがかねがね申しておりますことは、このような現状は、これはひとえにソ連の最近の態度によるものであるので、日本といたしましては、ソ連の反省を求め、そのような原因が除去されるということがまずなければならないと考えているわけでございます。ソ連は日本との友好を重視しているということはいろいろな機会に表明されているわけでございますけれども、それに対して、わが方といたしましては、ソ連が日ソ友好関係ということを重視されるのであれば、その日ソ友好が大事であるということを言葉でおっしゃるだけでなくて、それを具体的な姿勢で示していただきたいということを申し上げている次第でございます。  そこで、わが国の対ソ外交がアメリカの影響のもとに置かれているのではないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、もちろんわが国の対ソ外交につきましては、全く自主的な判断からこれを進めているわけでございまして、まず日ソ関係と米ソ関係とは、これは客観的情勢が異なるわけでございまして、この点につきましては、私どももアメリカに対して折あるごとに申しているわけでございますが、ソ連は日本と隣国である、いま先生おっしゃったとおりでありまして、それからまた隣国であるがゆえにまたいろいろの日ソ間の問題というものがある。たとえば魚の問題一つをとりましても、日ソ間には米ソ間にないような問題がある。  それで、それぞれの国がそれぞれの国のソ連との関係におきまして、その態様に応じた対処ぶりをするということは、これはいま当然でございまして、そのような見地から、私どもといたしましては、日ソの関係を大事にするというような先ほどの基本方針に立ちまして、自主的にいろいろ考えながら進めているということでございます。  それから、北方領土問題について、今後どうするのかという御指摘もあったわけでございますが、北方領土問題に対するソ連の見解というのは、これは先生御承知のとおりでございまして、改めて詳しく申し上げることはいたしませんけれども、北方領土、これは日ソ共同宣言に明らかに、この領土問題を解決して平和条約を結ぶということが前提になっていた。それが最近になりましてソ連の方は、領土問題などというものは存在しないというようなかたい態度を示しているわけでございますけれども、このようなソ連の言い分に理由がないということは申すまでもないことでございまして、私どもといたしましては、粘り強く北方領土問題に取り組むということを基本的九姿勢といたしているわけでございます。  そう言っても、なかなか物事が動かないではないかという御指摘はあるわけでございますけれども、何しろソ連という国は大変気が長い国でございまして、私どもは中国が気が長いと申しますけれども、その中国人が、ソ連人はわれわれよりも気が長いと言って感心しているような国民でございまして、私どももソ連と話し合いをいたしますときには、気を長く持って、じっくり腰を落ちつけて対応をしなければならないのではあるまいかと考えているわけでございます。  それから、ヨーロッパの国、仏独等は首脳がみずからソ連の指導者と話をするというような御指摘がございまして、それはそのとおりでございますが、これも日ソ関係と、それから仏独のソ連との関係とが必ずしも同じでないという面があるわけでございます。その最大の要素は、日ソ間には領土問題というものがある。これがあくまでものどに刺さった骨のような関係になっておりまして、フランスやドイツがソ連と話をすると同じような雰囲気のもとにおいて日ソ間で話をするというわけになかなかまいらないという状況があるわけでございますし、また首脳外交について申しますれば、一九七三年、当時の田中総理がモスクワを訪問されましたときに、ソ連の首脳部に対する招待が出ているわけでございまして、この次はソ連の首脳が日本を訪問される順番ではなかろうか、順番としてはそういうことになるのではなかろうかと考えているわけでございます。  それから、経済問題について御質問があったわけでございますが、ソ連に対します経済措置、これも先生すでに御案内のとおりでございまして、西側諸国との協調のもとに、たとえばココムの場において協調を図るというようなこと、あるいは信用供与につきまして、政府ベースの信用供与はケース・バイ・ケースに検討するというようなことをいたしているわけでございますが、これはあくまでもソ連のアフガニスタン進駐というようなもの、これは先般の一月の国連総会の決議にも見られますとおり、世界の大多数の国がこれを認めないという、そのような姿勢を示すということが趣旨でございまして、そのようなアメリカの指示を受けながらやっているというたぐいのものではない、西側諸国の一致したソ連に対する態度を示す、そういう趣旨ということでやっているわけでございます。  以上でございます。
  235. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 欧亜局長、お仕事があるようでございますから、結構でございます。  そこで防衛三法、特に防衛、給与の問題でありますけれども防衛二法と従来言われてまいりました、それに関連する問題について、後の持ち時間の範囲内で若干お伺いをいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、戦後制定されました憲法と防衛との関係ということでは、最も重要な点は憲法第九条との関係ということになるわけでありまして、いまさら憲法第九条の条文に入るまでもなく、「日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の發動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、第二項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。國の交戦權は、これを認めない。」こういう現行憲法の第九条が存在しておることは事実であります。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕 そういう憲法第九条のもとにおいて、御案内のとおり朝鮮戦争の勃発の時期に——朝鮮戦争は二十五年六月二十五日に勃発したわけでありますが、まだ占領下でありまして、その二十五年の七月八日、警察予備隊の創設、海上保安隊の拡充というマッカーサー指令が出まして、それを受けて二十五年八月十日、警察予備隊設置令を制定公布した、ここから今日の自衛隊への第一歩が始まったわけであります。私はこれはアメリカの対日政策というものが、それまでの段階と、朝鮮戦争等が始まった前後、それ以降の対日政策との間に大きな変化が来たというのがいまの警察予備隊に対する、あるいは海上保安隊の拡充に対する二十五年七月八日のマッカーサー指令としてあらわれておるというふうに理解をするわけであります。この理解は、防衛庁側としてはどう考えておりますか。
  236. 塩田章

    ○塩田政府委員 事実関係はいま御指摘のあったとおりの経過でございます。申し上げるまでもないことでございますが、それをアメリカの対日政策の変化としてどう受けとめておるかということでございますけれども、これはまさに歴史の問題でございまして、私どもいまそれについてどう評価するということを申し上げる立場にはございませんので、御了承いただきたいと思います。
  237. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 警察予備隊がマッカーサー指令によって発足をする。いま対日政策の、戦後占領政策の大きな変更の第一歩がここにもあらわれておるというふうに私は見るわけでありますけれども、これに対する言明を避けられたわけであります。  そこで、次に入りますが、次は保安隊ということで、保安庁法の設置が二十七年五月十日に衆議院に上程をされまして、七月三十一日成立をするということで、いわゆる警察予備隊から保安隊へという形になったわけであります。これは目的条項から見ても、警察力を補うというのが警察予備隊の場合の第一条の条文の中にありますけれども、保安庁になるとそれが少し幅が広がった。しかし、これは依然として国防という範囲にまで延びていない。いわば治安維持の機能としてまず第二段の警察の補完勢力から、警察から独立をして治安維持の機関として保安隊が生まれてきたというふうに解していいわけでしょうか。
  238. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 おおむね御指摘のとおりだと思います。
  239. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 警察予備隊から保安隊、そして現行の自衛隊法、防衛庁設置法、これが二十九年の三月三十一日に国会に提出をされ、五月七日に衆議院を通過をし、六月二日に参議院を通過して、七月一日から施行ということで、そういう経過を経て防衛二法が誕生する。そして今日、幾次かの防衛二法の提案の中で改正が進められてきたわけであります。しかも、きょうの議論の中では、別の機会にまた改めてお伺いいたしたいと思いますけれども、いわゆる防衛庁設置法に基づく、あるいは自衛隊法に基づく目的のもとで、国防の基本方針あるいは第一次から始まる第四次までの防衛整備計画、これが国会の中でいろいろ論議を呼び、激しい議論の中でこれが進められてきた。  そこで、第四次までの防衛整備計画が進められた段階で、従来のペースから言えば第五次防衛計画となるべきところを、そういう形をとらずにいわゆる「防衛計画の大綱」あるいは防衛基盤の整備、あるいは第四次までの防衛計画に見合うものじゃないかという感じのするいわゆる中期業務見積もりというふうに変わったわけでありますけれども、第一次から第四次までの防衛力整備計画と、新たな変わり方をした根本的な、そういうふうに変化をした基本はどこにあったのか。これをひとつ簡潔に御答弁願いたい。
  240. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように、第四次防まで来ました後、現在の「防衛計画の大綱」という形に切りかえたわけでありますが、そのときに、そういうふうな切りかえを行いました背景として考えられたこと、これは五十二年の防衛白書にも書いてあることでございますけれども、概要を申し上げてみますと、一つには、従来の防衛力の整備においては、防衛力の整備の限界が必ずしも明確ではないではないかという問題点がありまして、それにこたえる必要があるということが考えられた。それから一つには、防衛費として装備の近代化更新、後方支援関係に多くの経費が必要となる一方、高度成長経済からの軌道修正になりまして、防衛費を大きく伸ばすということが困難となったという財政的な事情も働いておったと思います。それから当時のわが国の周辺における一種の均衡関係が成り立っておりまして、軍事力をもって現状を変更するということは困難な状況であると当時判断されたという情勢判断の問題もあったろうと思います。そういったようなことが背景にありまして、従前の四次防まで来た計画の方式を切りかえて、現在の「防衛計画の大綱」という形に変更した、そういうことであろうと思います。
  241. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 内部では防衛局長は自信を持っておられると思うのだけれども、外へ出てくると、なるべく踏み込まないようにという感じが率直に言っていたすのであります。  そこで、今日の内外情勢と見合って、われわれはそういう形をとろうとは必ずしも考えておりませんけれども、「防衛計画の大綱」見直し論あるいは中期業務見積もりの早期実施あるいは基盤整備構想の考え方はやめる、こういったことが今日までの議論の中でも出ておるわけでありますが、取りまとめて、こういった問題についての防衛庁長官としての基本的な考え方をお答え願いたいというふうに思います。
  242. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、「防衛計画の大綱」を現在見直す考えば持っておりません。そして「防衛計画の大綱」の範囲内で、部内の見積もりとしております中期業務見積もりをなるべく早く実現できるようにいたしたい。つまり防衛計画大綱で示されております線を可及的速やかに実現いたしたい。もちろんそれには財政力その他がございますので、そういった点等にらみ合わせながら着実に実現していきたい、さように考えておる次第でございます。
  243. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、時間の関係もありまして、あと幾つかの問題にしぼって御質問を申し上げたいと思います  一つは、やはり重要な基本をなすシビリアンコントロールの問題であります。このシビリアンコントロールというのは、いわば総理大臣あるいは防衛庁長官あるいは制服に対する内局、こういった制度上のシステム、同時に、実態的にどうかという問題が、やはり名実ともにシビリアンコントロールに徹し得るかどうかということが基本の問題であろうというふうに思うわけであります。防衛庁長官の本委員会における御答弁を聞いておりますと、専門家専門家ということを言われるわけであります。本来、防衛庁長官はシビリアンではありますけれども防衛全体の問題については少なくとも専門家でなければならぬのではないか。内閣総理大臣は全体的な立場ということもございますけれども防衛庁長官というのは、転々とかわるのにももちろん議論はあるかもしれませんけれども、内局の人を専門家と言う、それじゃ制服はどうなるのか、ちょっとそういう実感を先ほど本委員会における議論を聞きながら、防衛庁長官も事防衛の問題については大局的に判断のできる専門的立場というものがないことには、いかにシビリアンコントロールといっても名実ともにという形にはなりにくい、私は基本的にこういうことだと思うわけでありますが、その点、防衛庁長官どう考えるのですか。
  244. 大村襄治

    大村国務大臣 シビリアンコントロールのあり方についてお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  先ほど他の委員の御質問に対してお答えしましたとおり、シビリアンコントロールの一番のねらいは、軍事が政治に先走らないようにする。戦前のわが国に見られますように、統帥権が独立しておりまして、軍事関係が一般の政治とかかわりなく進められる、そういうことがあってはならない。これは憲法の精神からもうかがわれるわけでございます。  これを実現する手段としましては、私は二つあると思います。国会防衛問題に対するコントロールの問題が一つであります。それからもう一つ、今日防衛は一般行政の一環でございます。独立したものではございません。最高責任者内閣総理大臣であり、そのもとで総括するのが防衛庁長官の職責でございます。そういう意味におきましては、単なる軍事の専門家であってはならないということ、先生指摘のとおりだと思うわけでございます。  あと防衛庁の仕組みにつきましては、先生指摘のとおり陸海空の自衛隊はございます。またこれをそれぞれ統べますところの陸海空の幕僚長もおるわけでございます。さらにそれを統括、調整する統合幕僚会議議長もおるわけでございます。また防衛庁長官のもとに文官をもって組織する仕組みもあるわけでございまして、防衛行政の基本にかかわることは、防衛庁長官以下文官が責任を持って実施できるような仕組みに現在相なっておるわけでございます。その運営をさらに徹底させていくことにつきましては、今後とも一層努力してまいりたい、さように私は考えておるわけでございます。
  245. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 シビリアンコントロールを名実ともに確立するという立場からいけば、国会の役割りというのは非常に重要になる。ところが予算委員会における大内さんの発言等をめぐって、とにかくどこから漏れたんだろう。要するに、国会が国権の最高機関として、あるいはシビリアンコントロールを名実ともに遂行していく重要な責任立場として、防衛庁関係が、本来議論すべき問題について秘密主義を必要以上にとられたのではシビリアンコントロールはできないということになる。これはああいう問題が起こったときに、国会のシビリアンコントロールにおける重要な役割り、そして防衛庁自身が考えるような秘密との問題、これは防衛庁がいろいろな種類に分けてばんばんと判を押しておるものが果たして秘密であるのかどうかということの議論は別として、この点は国会との関係ではどういうふうにお考えですか。
  246. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  シビリアンコントロールと国会との関係についてお尋ねがございました。私どもは、防衛庁の法律や予算国会の御審議を受ける、その御審議の際に必要な資料をできるだけ提出する、これは当然の責務であると考えているわけでございます。また国会調査権に基づいていろいろ資料要求等が行われる、それに対しまして防衛庁もできるだけ協力しなければならない、これは当然でございます。一方におきまして、国の安全保障を達成するためにはどうしても外部に発表できない資料があるということは、各国を通じての同じ現象でございます。そういった部門の扱いにつきましては、やはり厳重に管理していく必要があると考えているわけでございます。だからと言って、いたずらに秘密文書の範囲を拡大して国会の御審議を意識的に妨げるとか、そういうことはいたさない考えでございますから、ただいまお尋ねの問題につきましては、私はそういう考え方を持っているということを申し上げておく次第でございます。
  247. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いわゆるシビリアンコントロールという中における内局あるいは制服関係、こういうところの対応の問題でありますけれども、かつて栗栖統幕議長の発言が大きな政治問題になって、当時の金丸防衛庁長官がこれを解任するという経緯がございました。同時に、かつて制服組の最高幹部であった人たちが、一たん防衛庁から離れて、野に下るといいますか、一般社会に出る、そういう場合の行動の問題であります。その点で、たとえば五十一年六月に出版されました「自衛隊戦わば」という本が世に出ております。四十九年に退官をした中村陸上幕僚長あるいは四十七年に退官をした内田海上幕僚長あるいは四十八年に退官をした石川航空幕僚長、いわば三幕の長が鼎談の形で「自衛隊戦わば」というのが出ておるわけであります。私はこの要点を目にしながら、いわゆる岡崎参事官発言等とも関連をして、いわゆるそういうものを生み出す背景は、いわば「自衛隊戦わば」の中で出てきておるというふうにも逆に思うのであります。たとえば防衛庁長官は否定されましたけれども、仮想敵国という問題についてこの鼎談の中では「脅威につながる軍事能力を総合して考えると、近隣諸国の陸軍の質・量・能力・地理的条件、将来の発展性といった点からみて、第一の脅威はやはりソ連陸軍であろうということになります」あるいは「ところが、いま国会では、自衛隊は〃仮想敵国〃をつくっているとかいって防衛庁をいじめる。しかし防衛庁としては、防衛立場から想定敵国を設けて図上演習なり、訓練なりは当然やるべきことなのだ。それを国会の場にあげて、防衛立場でつくっている〃想定敵国〃を定全保障でいうところの、すべての国と仲よくするということと矛盾しているといって叱るんですね。」こういうことを言ったり、あるいは北朝鮮の脅威問題というのが出ましたが、朝鮮半島の問題でこの鼎談の中では「韓国に米軍がいる限り、南北朝鮮が事を構えた場合、米軍は介入せざるを得ないと思う。そうなると、片や日本とアメリカは安保条約があり、あるいはそれから発進するかもわからない基地の貸し借り、その他の問題があるので、日本は否応なしに巻き込まれましょう」さらに「それから仮に、韓国機が板付などに退避してきて着陸する場合もあり得ましょう。あるいは韓国の飛行場が潰されて飛んでくる場合もありましょう。そうすると、これは北側の攻撃材料にもなるわけですね」あるいは「アメリカが日本を基地として韓国へ出て行く場合もありうるわけですから、その場合は当然日本は交戦国の一方になるわけです」こういう朝鮮問題の鼎談の発言を聞いておりますと、単に岡崎さんが突然のように北朝鮮の脅威という言葉を発したのではなくて、いわゆる制服組が、いまの三人はやめられましたけれども、制服組の中にある全体的な雰囲気、あるいはそれとのタイアップにおける内局の関係、こういう問題でソ連仮想敵国あるいは北朝鮮の脅威ということが出ているのじゃないかというふうに見るわけです。やはり自衛隊暴走ということは、かつて軍が犯した罪でありまして、そういうこととの関連で、いたずらに仮想敵国をつくり、またそれに事を構える姿勢を自衛隊内部においても強めていくということは、冒頭来申しております、日本が国際的には平和環境をつくることがまず基本だという点から見ても逆行すると思うし、いま言った、かつて制服の最高幹部であった者が外に出てこれは栗栖さんの場合も外に出て出した本が、本委員会ばかりでございません、ほかでも議論になりましたけれども、そういう制服、内局の関係、それから最高幹部であった者が外に出てのいわゆる言動というものについては、防衛庁自身、あるいは内閣と言ってもいいかもしれませんけれども、少なくともかつての最高幹部であったOBについては、きちっとした指導の姿勢が貫かれていいと思うのでありますけれども、その辺のところをどう考えるか、お答えを願いたいと思います。
  248. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま、退職自衛官で、かつて自衛隊の最高幹部におりました方の発言について御質問がございましたが、いずれにいたしましても、退職自衛官の発言は私人としての発言であり、防衛庁としてコメントする立場にはないと考えております。またシビリアンコントロール上の問題でもないものと考えております。  また、防衛庁が特定の国を仮想敵国と考えるようなことはしないということにつきましては、これまでたびたび申し上げてきたところでございます。  また、二十七日の安全保障委員会における岡崎参事官発言、特に朝鮮民主主義人民共和国わが国にとって潜在的脅威であるという発言は舌足らずであり、不適当であるので、今後はそういう言葉を用いないようにする、また本人に注意するということを申し上げたところでございますので、御了承願いたいと思います。
  249. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 三幕の幹部が民間に渡ったら、何かこれはいまの防衛庁長官の網の範囲内でないかのごとき答弁と私は受け取ったわけですけれども、たとえば自衛隊法でいけば、長官も御承知のように、第五十九条のところで「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする。」こういう問題がございます。私は、対国会との関係については、先ほどの大内さんとの例をとりながら、いわゆるシビリアンコントロールという重要な柱の関係においてわれわれがそういう問題について議論をする場合に、それをオープンでやるか、重要な問題については秘密会でやるかということは別にして、国会というのはシビリアンコントロールの立場からいけば、やはり重要な責任を持っておるということで、先ほどは触れましたけれども、また同時に、自衛隊の隊員もしくはそれを離れた場合でも、秘密を守る義務というのがあるわけでありまして、OBになったら何でもかんでも言っていいということにはならない。また特定の目的を持ってそういうことをしゃべりまくるということは問題であって、そこには節度がなければならぬというふうに基本的に考えるわけですけれども、再度御答弁を願いたい。
  250. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  退職自衛官の発言について先ほど申し上げましたのは、一般論として申し上げたのでございまして、ただいま御指摘のような、退職後、在官中に所掌しておった秘密事項を漏らすということになりますれば、当然その条文違反の問題として対処しなければならない、そういう問題は起こり得ると考えるわけでございます。
  251. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、こういう国会委員会の中で、出ております諸本と関連してお尋ねするのもいかがかと思うわけでありますけれども、かつて総理をやられた福田赳夫さんが監修で、与党のかつての防衛庁長官をやられたり、閣僚経験者を含め、相当数の衆参両院議員でつくっておられるメンバーの中の討議を経て「これからの日本、激動下の祖国防衛」という本が「これからの日本政策委員会編著」ということで出ておるわけです。私も興味深くこれを読ましていただいたわけですけれども、これは公式の舞台では、こういうふうなところで、どう取り上げておる、それと関連して防衛庁見解はどうかというふうにお尋ねするのは少し不適当かと思いますけれども、しかし、与党内のかつての総理あるいは防衛庁長官経験者あるいは現職の党の幹部の中にもおる人たちがつくっておるメンバーの中で出された本というのは、これは、そういうスタッフの中では、やはりそれなりの責任を持って世に問われたものだというふうに思うのですが、その中で「非核三原則という問題については」、全文は読みませんけれども、「もう一度根本的な検討を加える必要があることを提起しておきたい」というふうに結びの方で触れておるわけであります。これは再検討という背景や理由については何も触れておりませんから、必ずしもわかりませんけれども、とにかく世界唯一の被爆国であり、また日本が平和に徹するという立場からも当然守っていかなきゃならぬ非核三原則について、与党の有力なメンバーの中での討議を経て世に問うた著の中に「もう一度根本的な検討を加える必要があることを提起しておきたい」と述べておることは、相当に意味あることだと私は思い、むしろこれは重大な問題であるというふうにも逆に受けとめるわけであります。  それから、私からお聞きすると、どんどん防衛庁はそれに答弁をして先行されるということであっては困るわけでありますけれども、たとえばいま申しました本の中では、西側で、ヨーロッパで配置をしておると言われております中性子爆弾についても、中性子爆弾の採用ということについて、シカゴ大学のモートン・カブラン教授の発言を引用しながら、慎重な上にも慎重な検討を必要としようというふうなことで、中性子爆弾の採用問題についてもこの編書の中で触れておるわけであります。  私は、日本の防衛力というものが歯どめもなく進んでいくという今日の形勢と、しかも防衛白書等にも見られる、一つの国を相手にしながら内外情勢を説き、そして防衛力の増強を説いておる姿勢からいきますというと、いま申しました鉄則であるべき非核三原則についても、将来にわたってこれが堅持されるのか、あるいは情勢いかんによってはこの一角が崩れるのかという点に、政権担当の与党内からそういう声が正式の文書として出ていなければ別でありますけれども、出ておるということになると、率直に言って危惧を持たざるを得ないのであります。  また、中性子爆弾の問題についても、これが提起されておるというところにやはり問題があるというふうに思うのであります。  これらの問題について、防衛庁長官としてはっきりした考え方をひとつ述べていただきたいと思います。
  252. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  中性子爆弾は核兵器の一種であり、防衛庁としてこれを保有する考えはありません。また政府は、非核三原則を堅持していくことについては、これまでたびたび答弁しているところでございます。非核三原則を堅持することは変わりはございません。
  253. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 予定した幾つかの問題を残しましたけれども、時間が参りましたので、これで終わります。  ありがとうございました。
  254. 江藤隆美

    江藤委員長 渡部行雄君。
  255. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最初に奥野法務大臣にお伺いいたしますが、いま日本の置かれておる立場は非常に重大な時期に立ち至っていると思うわけでございます。したがって、言ってみれば軍備を増強しようとする側からすれば、まさに転換期であるというふうにとらえているのではないかと思います。そういう点で、最近憲法改正論が所々方々でかまびしくなってきているわけでございます。  そこで、奥野法相も先般来いろいろと改憲の問題について発言されておりますが、またこの間の予算委員会においても、日本の憲法はアメリカから押しつけられた憲法である、こういうことをはっきりと言われましたが、いまでもアメリカから押しつけられたと思っておられるのですかどうか、お伺いいたします。
  256. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、アメリカから押しつけられたという表現を使ったことはございません。予算委員会で申し上げたといたしますならば、日本国の憲法は占領軍の指示に基づいて制定されたものと理解しておりますと、こういうことはたびたび申し上げております。
  257. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 占領軍の指示に基づいて制定されたということは、つまり日本国の国民の合意によってできた憲法ではなくて、押しつけられた憲法であるという裏返しの言葉じゃないでしょうか。それからまた奥野法相は、だからいまみんなが自由に発言し合って、そして憲法というものを議論すべきだ、こういう言い方をしておりますが、それはやはり押しつけられた憲法だから、日本人だけでもう一度考え直すべきだ、こういうことではないでしょうか。
  258. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私の憲法論議が議論の対象になりましたのは、衆議院の法務委員会、八月の末でのことでございました。社会党の稲葉さんから、自主憲法ということがある、日本の場合に当てはめてどう考えるか、こんなお尋ねをいただいたのです。そのときに私が、国民の問から、合意の上、同じものであってもいいからもう一遍つくり直してみたい、こんな考え方が生まれてくるなら、それは好ましいと考えます、こう申し上げまして、そのときは三つ理由を挙げました。その一つに、占領軍の指示に基づいて制定されたものであると心得ているということを申し上げたわけでございました。押しつけるとか押しつけられるとかいう言葉は、私は適当でないように思っておりまして、占領軍の指示に基づいて制定されたわけでありますけれども、当時、帝国議会がございましたし、枢密院の諮詢、帝国議会への付議、そこで論議もされたわけでございますし、またその間に修正の問題につきまして占領軍と話し合いをして、幾つかは許されもし、幾つかは許されもしないででき上がったわけでもございますので、私は私なりに、占領軍の指示に基づいて制定されたと、こう表現するのが一番適切じゃないかな、こう判断をして申し上げているわけでございます。
  259. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 確かに日本は敗戦という一つの歴史的な立場から独立国へと向かってきたわけでございますから、その当初においてアメリカの指示を受けるのは、これは歴史上あらゆる例を見ても当然であります。しかし、その当時国会に全然審議権がなくて、一方的に占領軍の指示で成立させられたとするならば、これは確かに指示に基づいてということですべてをくくることができると思いますけれども国会があって、国会が審議をして、それを承認しておる。もしこれに反対できないというような状況があったならば、当時なぜ日本共産党があの憲法に反対をしたかという、しかも当時は野坂参三さんがはっきりと、わが国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険があるということを主張しておられたのです。そういう人がいる中で当時の国会は、これを可決してあの憲法を成立させた。こうなると、一体この国会の審議の権威というものはどういうふうになっていくのでしょうか。
  260. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 自主憲法について、私が理由を挙げたその一つだけ先ほど申し上げたわけでありますが、もう一つこういうことも申し上げさしていただきました。当時帝国議会がございましたけれども、そこへ案を出す、動議を出す、修正案を出す、いずれも事前に占領軍の承認がなければ出せなかったのです。同時にまた採決をする、その採決が可決であれ否決であれ、採決の前に占領軍の承認を受けなければできなかったのです。帝国議会はありましたけれども、自主的な活動は許されておりませんでしたと、こういうことも申し上げたわけでございまして、そういうこともございますから、もう一遍議論をして、国民の間に合意が生まれてくるなら、同じものであってもつくり直してみたい、こういう気持ちが生まれてくるならそれは好ましい、こういうことを答えたわけでございまして、今日の日本の国会のあり方と、当時の帝国議会とは大きく違っておったということは御理解をいただいておきたいと思います。
  261. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 確かに、いまの国会と当時の国会との違いというのは認めます。しかし、審議の余地なくして成立させられたというならば、これは私は法務大臣の言っていることを理解できますけれども国会で堂々と反対者がおり、そういう中で意見を述べ合ってこれが成立したという過程を見るならば、やはりこれは相当多数の、あるいは圧倒的多数の国民の合意があったと見るべきではないでしょうか。つまり反対した共産党以外の方々はみんなこれに合意をした。したがって、それを支持する人たちも合意をした。だから、今日これほど日本が平和憲法のもとに民主体制ができ上がっているのではないでしょうか。
  262. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 日本国憲法が占領軍の指示に基づいて制定されたものだと私は理解しておりますという言葉がお気に召さぬようでございますので、もっと率直に具体的に私なりに理解している経過を申し上げさしていただきます。  日本が敗戦をいたしまして、マッカーサー元帥が幣原総理大臣に対しまして、十月ころだったと思いますが、憲法改正を示唆したわけでございます。そこで幣原内閣では、松本国務大臣を責任者にして、憲法問題調査委員会でございましたでしょうか、そういう機構をつくって憲法改正に取り組んだわけでございました。  翌年、二月早々だったと思いますが、その改正内容毎日新聞がスクープしたわけであります。毎日新聞に出たものでございますから、それを見てマッカーサー元帥は、もう日本政府に任してはおけないということで、ホイットニー民政局長に対しまして三原則を示したわけであります。そしておまえたちで日本国憲法改正草案をつくれという指示をしたわけでございまして、翌日、ホイットニー民政局長は二十人内外の総司令部の職員を集めまして、一週間でつくれ、こういう指示をいたしまして、一週間後にそれをマッカーサー元帥に差し出して、それをホイットニー民政局長が麻布の外務大臣公邸に持って行きまして、吉田さんと松本さんに手渡したわけであります。そして返事を求められて、日本側はしばらく検討さしてくださいということで、その場は過ぎたわけでございまして、その間に松本さんの憲法改正案が総司令部に提出された。そういう草案を受けてから、また今度は補充説明を松本さんが総司令部に差し出された。一蹴されたわけでありますが、そして総司令部からの憲法改正草案に内閣が抵抗したわけでございまして、何とかして別なことにならぬかということで抵抗したわけでございましたが、最終的には強い指示がございまして、その案文、日本訳を持って関係者が総司令部へ参った。そして三月四日だったと思います。三月四日、五日と、当時の法制局第一部長であった佐藤達夫さんが向こうの人たちと議論をしながら憲法改正草案をまとめたわけでございまして、その報告を逐次受けながら、五日は閣議が続けられたわけでございました。そして三月六日に、結局向こうさんは、総司令部は、日本側の考えで案文をつくったのだ、そういう趣旨のもとで日本側でそれを発表しろ、こういうことになって、三月六日夕刻に閣議決定をして、日本側の案として公表された、こういう経過をたどっておるものでございますから、そういう意味において、私は占領軍の指示に基づいて制定されたものであると心得ておりますと、こう申し上げまして、押しつけられたとか、押しつけられないとか、そういう表現は使わないことにいたしておるわけでございます。
  263. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私はその経過を言うのではなくて、いわゆる日本の国会で承認したことは国民の合意とはならないのかどうか、国会の効力について聞いておるわけです。その点は、いかがでしょうか。
  264. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、帝国議会は存在しておりましたけれども、自主的な活動は許されていなかったということでございます、帝国議会が議決した、これはそのとおりでございまして、そういう意味で、先般、法制局長官でございましたか官房長官でございましたか、占領軍の強い影響下において帝国議会で議決したのだ、こういう言い方をされました。私もその言い方に別に反対じゃございません。同時に、私の申し上げていることも、そういうもとにおける占領軍の指示に基づいて制定されたものであると理解しているという言葉と受け取ってもらっても結構なんですと、表現の自由はひとつ認めてくださいよと、こんなことまで率直に申し上げた経過がございました。
  265. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、ずばりお聞きしますが、法相はいまの憲法について満足できない、こういうお気持ちですか。
  266. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 三十五年の間、この憲法のもとで施策が行われてきているわけでございますから、それはそれなりにわれわれは受け取っていかなければならないと思います。  ただ、自主憲法ということを聞かれた場合に、私は、国民の間に合意が生まれて、もう一遍つくり直してみようじゃないか、こういうことになってくるならば、それは好ましいと考えていると、こう申し上げているわけであります。
  267. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 つまり法相の言わんとするのは、いまもう一度憲法を見直して、国民の合意を求めるべきだ、こういうことですね。
  268. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私がどうするということよりも、自主憲法をどういうふうに考えるかと言われれば、私はこう考えますと、こう申し上げているわけでございまして、私のより希望しますことは、国会において憲法論議を深めてもらいたいな、国の運命を背負っているところだから、国の基本にかかわるような憲法ということについては絶えず十分な論議が交わされていかなければいけないんじゃないかな、こういう念願はいたしております。
  269. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうも話が非常に率直でないのに私、大変戸惑っているのですが、その経過が何であろうと、一たんこれはいいものだと認めたならば、やはりいいものとしてそれをさらに豊かなものにしていくことが非常に重要じゃないか。たとえばいまわれわれの着ている洋服にしましても、あるいは毎日のように乗っておる自動車にいたしましても、これは外国から来たものでございますが、しかし、実際に利用してみれば、日本のいわゆる和服よりは洋服の方が非常に活動しやすい、生活しやすい、そういう一つの生活体験の中からこういう選択が生まれてきたと思うのですよ。だから、すべて外国でできたものは、あるいは外国から指示されたものは悪いというような、そういう発想がどうしても私は納得できないんですが、その点はどうでしょうか。
  270. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 鈴木内閣は憲法改正を全く考えない、こう言っているわけでございますし、私も鈴木内閣の閣僚の一員でございますから、憲法改正を主張するような発言につながることは避けるべきだ、こう思っております。また同時に、憲法改正をいまやろうといたしましても、国会議員三分の二以上の同意がなければ発議できないわけでございます。  ただ、私が言いたいのは、やはり憲法論議は深めていくべきじゃないだろうかな。いま洋服のことをお話しになりました。やはり体が変わってくれば洋服はかえていかなければいけないんじゃないかな、こう思っているわけでございまして、憲法あっての国じゃなしに、国あっての憲法じゃないだろうかな、こうも思うわけでございます。日本国憲法ができましたときの国際社会のあり方あるいは日本の国際社会における地位、これも大きく変わってきているわけでございますから、やはりいまの憲法のまま、それでいけるのか、あるいはまたこういう情勢に合わせて、憲法がそのままでいいのか、これは私はやっぱり検討してしかるべきじゃないかな、こういう気持ちもありまして、自主憲法について聞かれました場合に、私は先ほど来たびたび申し上げますような考え方が国民の間から生まれてくるならば望ましいと思っております、こう答えましたし、またそういう気持ちでおるわけでございます。
  271. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、法務大臣としてどうしてもやはり現行の法律というものを守らなければならない、あるいは法律の権威を維持しなければならない。そこで、実際、憲法の権威を維持していくためには、実態と憲法の条文が合わなければ国民を説得することができない。そこで現実にはいま憲法違反のような軍備がどんどんなされてきておる、もうこれ以上日本の自衛隊の増強がなされると、どうしても憲法を改正しなければ国民を説得することはできなくなる。そこでいま一挙に自民党が勝利したこの機会に憲法改正へ持っていこう、こういう動きもあちらこちらで出ておるわけです。現実にそういうものを踏まえた際に、法務大臣の一つの立場から、もうこの辺で憲法を改正しなければ国民をどうしても説得することはできない。現に防衛庁のどんどんなし崩していく軍備増強というものが憲法に抵触してきておるという、そういう認識があって、だから正直にこの辺で憲法を見直そうじゃないか、こういう考え方を出したんじゃないでしょうか。
  272. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 自由民主党が誕生いたしましたのが昭和三十年でございます。そのときの綱領に、平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、この原理を堅持しながら自主憲法を制定したい、こう書いておるわけでございまして、自主憲法は自由民主党が誕生いたしました昭和三十年以来掲げておる綱領でございまして、私はいまになってこういうことを言っているわけじゃございませんで、やはりその考え方、それは先ほど来申し上げますような理由で望ましいと考えてまいったわけでございます。  同時にまた、第九条、解釈が食い違っている。解釈が食い違ったままで国政が運営されるということは望ましいものではない、国民立場から考えるなら、やっぱり何か合意の道が見出せぬかな、こう私は思うわけでございまして、解釈が大きく違っているということは、いろんな面において大きく関係を持ってきているわけであります。国の政治の上でいろんなところで関係を持ってきているわけでございますから、国民立場から考えれば、やっぱり皆さんでいろいろ話し合いをしながら合意の道は達成できぬだろうかな、こう思うこともまた自主憲法論につながっている、こう思っているものでございます。
  273. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、やはり奥野法相の思想というものは、いまの憲法は自主的にできたものではないから自主憲法をつくるべきである、しかも、平和憲法は九条においてその解釈が全く異なっており、この憲法体制のもとでは憲法の権威を保持することはできない、こういう御認識だと思いますが、間違いありませんか。
  274. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 自主憲法という言葉が生まれるのは、やっぱり占領軍の指示に基づいて制定されたというふうな私なりの表現、それが流れているんじゃないかなという感じはいたします。  同時にまた、憲法九条の解釈につきましても、平和主義、これがいけないんだというふうな考え方は自民党の綱領の中には出ていないわけでございまして、こういう考え方はひとつ堅持していこう、こう思っているわけでございまして、ただ解釈が食い違っているようなことは好ましくないじゃないか。これはやっぱり自衛隊は合憲、こう考えているわけでございますから、合憲と読み取れるような、疑いを持たれないような形にしたいという希望を抱いていることも事実でございます。
  275. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 自衛隊は合憲だと言われました。確かに、自衛権というものが一つの独立国の基本権としてあるという解釈に基づいてそういうことになっておるわけですが、しかし、あの条文を読む限り、いまの憲法でこれ以上自衛隊を増強することが可能でしょうか。もうそろそろ限界に来て、やはりどうしてもあの九条が邪魔になるというのが本当の気持ちじゃないでしょうか。その本当の気持ちを率直に出してください。そうでないと、せっかくあなたが望んでおる本当の対話と申しますか、本当の話し合いができませんよ。だから、その率直な気持ちを私は聞かしていただきたい。
  276. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまの憲法九条のもとで自衛隊をこれ以上増強できるとかできないとか、そういうことは私の自主憲法論とは関係がない、こう思っているわけでございます。  憲法九条の字句解釈につきましてもいろんな解釈がある。これはやっぱり憲法の制定経過をたどっていきますと、両方の解釈が生まれてきても不思議ではない、こう思っているわけであります。私は私なりに合憲というたてまえをとっているわけでございますので、第一項「國際紛争を解決する手段としては、」と書いてあること、それは侵略戦争を意味しているんだ、こう理解しているわけでございます。「前項の目的を達するため、」戦力を保持しないと書いてあるわけでありますから、侵略戦争のための戦力を保持しないのであって、自衛のために戦力を持つことを禁止しているものではない、こう私なりに字句を解釈しているわけでございます。しかし、違憲論をとっていられる方々は、また別な解釈をとっていられる。解釈が二途に出ることは、私は憲法制定の経過をたどってまいりますと、これはやむを得ないことになっているな、こう思っているわけでございます。だからこそまた解釈が食い違わないような憲法でありたいものだなと念願をしているということでございます。
  277. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 こればかりもやっておられませんが、しかし、どうもすっきりしない答弁で困っているわけですが、大体いまの憲法はアメリカから指示されたと言うけれども、すでにその前に、日本をどういう国にするかというのは、ヤルタ会談やポツダム会談で連合軍の中で話がされておると私は思うのですよ。そういう一つの経過の中から出てきており、さらにそれが日本の民主主義に結びついて、今日までようやく定着してきておるというのは、日本の軍国主義化をどう防ぐか、日本が再び侵略国家にならないようにするにはどう防ぐか、ここにすべての重点がかけられてあの憲法ができたのではないか、こういうふうに思うのです。  そこで、一体解釈が違う違うと言うけれども、解釈を違わせているのはどちらの責任でしょうか。だれでも条文の文言どおりに解釈するのが素直な解釈じゃないでしょうか。どんな文章でも悪く解釈しようとすれば、反対の立場をそこから引き出すことはできる。ですから、たとえば針の先でも細いと言う人もあれば、もっと細いのよりは太いと言う人もあるわけですよ。そういう一つの基準がなくて、裏の解釈を限りなく続けていったならば、憲法九条の問題は際限なく発展していくと思うのです。そういうものについて本当に政府が解釈をきちっとさせるならば、もっと文言ではっきりするような指導をすべきじゃないでしょうか。
  278. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 戦後三十五年経ているわけでございますし、また昭和二十七年から日本は独立を回復したわけでございました。その間に警察予備隊、保安隊、自衛隊と発展してきているわけでございます。当初、自衛のための戦争も否定するような見解政府当局から示されたこともございました。しかし、いま申し上げますように、警察予備隊、保安隊、自衛隊と発展してまいってきておるわけでございまして、これらすべて国会で多数決でそういうことに変わってきているわけでございますから、憲法解釈につきましても、憲法変遷論というような考え方もあったりしているわけでございます。しかしながら、今日、この解釈が大きく割れていることは事実でございまして、割れていることは私は国民にとって幸せなことではない、こうも思っておるわけでございまして、ぜひ国民合意の道をみんなで求める努力はすべきではないかな、こう念願しているわけでございます。
  279. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国民合意の道を求めるべきだということは、抽象的には非常にりっぱな言葉でございますが、具体的には、一方は軍備によって日本を守ろうとする、一方は非同盟中立で守ろうとする、そういう一つの、日本が平和で安全であるための考え方、そこに対立があるのですよ。その対立はただ単に人の勉強の過程でできる対立ではなくて、生活に根差した対立なんです。だから、その対立を解消しようなどということは私はできないと思うのです。そんなに完全な合意はこの資本主義の社会制度の中でできるはずがありません。だから、そこで私は、法相の実際の腹の中は、一日も早く憲法を改正したい、そういうことでひとつこの際、自民党が圧倒的な多数をとったのだからやるべきだ、こういうお腹があると思うのですよ。だから、もっと率直に、自分の思想がそこにあるならば、鈴木内閣は憲法を遵守する、擁護して遵守する、こういうふうに言っているならば、あなたの思想と鈴木総理大臣の思想とは違うと思うのです。そういう場合には、男なら潔くやめて、そして鈴木総理を批判したらいいじゃないですか。その批判は自由ですよ。しかし、自分の本当の心を隠して、大臣のいすにしがみついて、それじゃ何でも鈴木総理の言ったとおりにやりますでは、あなた自身の人生がないじゃないですか。あなたの日ごろ主張していることとやっていることとは全く違うと思うのですよ。その点はどうでしょうか。
  280. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 自由民主党という政党はいろいろな考え方を持っている人が集まっている政党でございまして、それを尊重しながらできる限り議論を徹底して、できる限り合意の道を見つけていこう、自由民主党の運営は強い反対者がありますと最後まで議論を詰める、そして大勢がこうなったから自分一人反対しておっても仕方がない、大勢に順応するというようなことで、物事が決まってきているものでございます。私は、考え方が一つでは、もうそれから進歩しないと思うのです。いろいろな考え方がある、とことん議論する、新しい考え方が生まれてくる、そこで発展していく、こう考えるわけでございまして、鈴木内閣にもいろいろな考え方の人があった方が国政の発展のためには望ましいんじゃないか、こう考えているわけでございます。政党によっては異論を許さないというような政策をとっておられるところもあろうと思いますけれども、それは好ましいことではないんじゃないかな、私はこう思っておるわけでございます。同時に、国政を論ずる場合に一〇〇%同じ考え方になる、これはむずかしいんじゃないかと私は思うのです。しかし、おれが反対だから絶対そういう方針を決めさせない、こんなことをしていますと、国としての体をなさない、国政を進めていくことができない、私はこう思うわけでございます。もちろん、憲法改正については国会議員が三分の二以上賛成しませんと発議ができません。現在はそういう態勢はありません。ありませんけれども、私は、憲法論は大いに論議をして、日本の将来を過ちないようにしていかなければならない、こう思っておるわけでございまして、三分の二の多数があっても絶対に憲法改正を考えるべきではない、これは穏当でないんじゃないかな、やはり少数もときには多数に道を譲るという姿勢がなければ、国政の円滑な発展はできないんじゃないかな、こうも思っておるわけでございまして、この辺はぜひひとつ御理解を得ておきたいと思います。
  281. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間もあれですから、あと一問で法相に対する質問は終わりますが、私の聞いていることと、あなたの答えていることは大分違うのです。私は議論するななどということは一回も言っておりません。ただ、鈴木内閣というのは、鈴木総理のもとにみんな協力し合って、そして国民統治に当たるというのが本来の姿じゃないだろうか。公務員は憲法を遵守するということを誓わせられて採用される。しかるに、その公務員のすべての長である大臣が、一方においては、この憲法は自主憲法ではない、こういうようなことを言うということは、逆に国民の側から言わせると、これは憲法を改正しろというふうに聞こえるのですよ。あなたは、自分の心の内を全然話さないで、ただ議論をし合え、自由な議論をし合え、こういうことでごまかしているけれども、本当に改正する意思がなければ何も議論をする必要はないわけです。しかも自民党は改憲政党でしょう。そうしたらなぜ自分の腹を率直に言わないのか。議論を大いにすることは結構です。またそういう社会体制を築かなければならない。だが、あなたの真の腹はどこにあるか、これを示さなければ議論の対象にならないでしまう、このことを言っているのですよ。
  282. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 当初申し上げましたように、私は鈴木内閣の一員でありますし、鈴木内閣は憲法改正を全く考えない、こう言っているわけでございますから、私の議論が憲法改正主張につながるようなことは避けなければならない、こう考えているのですと申し上げたわけでございます。しかし同時に、繰り返し申し上げますように自主憲法、それは好ましいと思っておる人間でありますと、こう率直にも答えさせていただいているわけでございます。
  283. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次は、内閣官房長官を呼んでおったのですが、きょうは国賓と接見するために……
  284. 江藤隆美

    江藤委員長 法務大臣、いいですか。
  285. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 はい、いいです。どうもありがとうございました。  そういうことで来れないというので、結局私は、防衛庁長官と外務省あるいは法制局、こう分けないで、全体的な質問を展開したいと思います。  敵を知りおのれを知れば百戦危うからずという言葉がございます。一体政府は、日本というものをどういうふうに認識しておるのか、日本の持っておる条件というものは何であるか、こういうことについて私は尋ねてみたいと思うわけです。まず国際情勢を正しくつかんで、その中における日本の持つ条件というものを検討して、そうして日一本が将来生き延びるためにはどうすることが一番賢明であるか、こういうことを考えなければならないと思うわけです。そういう点で、一体日本の持つ条件をどういうふうに考えておられるのか、防衛庁長官にお願いします。
  286. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの御質問、まことに重要な御質問でございますので、私が政府を代表してお答えするのが必ずしも適当な立場かどうかと思う次第でございますが、御指名ございましたので、私からまずお尋ねに対しましてお答え申し上げたいと思います。  日本の国がこれから存立、発展していくためにどういう点に重点を置いていくべきか、こういう趣旨のお尋ねであったと思うわけでございます。この問題は国政の基本に触れるまことに重要な問題であると考えるわけでございますが、防衛を預かる防衛庁長官立場から申し上げさせていただきますれば、国の平和と安全を確保することは、国家の存立にかかわることでありまして、国の政治が取り扱う最も重要事項の一つであることは改めて申すまでもないところではないかと考えております。このため政府は、三十二年五月の「国防の基本方針」におきまして、近隣諸国との友好協力関係を確立して、国際緊張の緩和を図る等の外交政策を第一とし、次に経済的社会的発展を図るに必要な内政諸施策を講ずることを第二の事項として掲げ、そして第三に、国力国情に応じ必要な限度において効率的な防衛努力を漸進的に整備する、これを第三の項目として挙げ、そしてまた第四に、米国との安全保障体制を基調として外部からの脅威に対処するという、四つの項目を掲げているわけでございます。そして第三の項目につきましては、五十一年に策定されました「防衛計画の大綱」に従いまして防衛力の整備を進めている、こういうことでございますので、私どもとしましては、軍事大国というようなことは全然考えておらないわけでございます。他の施策と調和を図りながら必要最小限の防衛力を保持するということで、国の存立の基本条件の一つである防衛の問題に対処してまいるという考えを持っておることを申し上げておきたいと思います。
  287. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それは日本の持つ条件ではなくて、日本がやろうとする基本的な政策だと思うのですよ。私の言っているのは。つまり、日本は土地が非常に狭いということ、そしてその上に大変多くの人口を持っておるということ、それから第三番目には資源がないということ、それから四番目には科学技術が世界的に進歩しておるということ、大きく言えば大体この四つの条件を備えているのではないか。そこで、この四つの条件から日本が将来生き延びていくにはどういう一つのサイクルを通りながら生き延びていくか、このことが当然考えられなければならないと思うのです。  そういうふうに考えると、われわれが生活するには、どうしても生活に必要な品物が必要である。しかし、資源がなければそれをつくることができない。そこで、つまり外国から資源を輸入するわけでございます。そしてその輸入された原料に対して日本の労働力を働きかけ、そしてそこに技術を加えて製品をつくる。その製品の一部を国民が生活の糧とし、そして余った分を外国に輸出する、そして金をまたそこから得て、その金でさらに貿易をやっていく。つまり言ってみれば貿易立国でいかなければならないということじゃないでしょうか。だから、このサイクルが崩されれば、日本のように自分の国に資源のないところでは全くどうすることもできなくなる。このサイクルを守るための戦略をつくることが日本の平和と安全への道だと私は思うのですが、それについて大臣の所信をお伺いいたします。
  288. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま御指摘がありました貿易でありますとかあるいは資源の問題についてでございますが、これは先ほど私が申し上げました「国防の基本方針」の第二項に該当する事項ではないかと思うわけでございます。これは直接防衛庁の担当する事項でございませんので、先ほどは詳しく申し上げなかったのでございますが、それぞれの所管省の代表の方もお見えになってきておりますので、詳しい御説明はそれらの方々にお譲りしたいと思うのでございますが、重要な事項であるということは私もよく認識しているつもりでございます。また政府全体におきましては、総合的な安全保障の仕組みをこれから考えるということで、いま御指摘の資源の問題、特にエネルギーや食糧の問題を狭い意味の防衛のほかにあわせて検討する仕組みを、現在官房長官を中心に検討が進められている、こういう状況でございます。先生指摘のように、きわめて重要な事項であるということは私も同感でございます。
  289. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで私は、貿易立国というもののあり方というものはそれではどうなのかということになってくると思うのです。それには常に輸送が円滑にいくように、こういう条件をつくらなければならない。あるいは必要な資源をどこの国からも買えるような条件をつくらなければならない。こうするには世界がまず平和であるというのが絶対的な条件だと思うのですが、それについてはどうでしょうか。
  290. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの御発言は、御説のとおりだと思います。
  291. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで今度は、その世界が平和であるための世界の平和秩序をつくり上げるための方策というものが追求されてくると思うのです。その際に私は、憲法の前文にあるように、「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼する」、こういう一つの精神というものは、やはり日本はどこまでも、どの国とも平和外交を展開する、まず敵をつくらないという最善の努力をするということが外交の前提にあり、しかも国策の前提となっていなければならないと思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  292. 大村襄治

    大村国務大臣 平和外交を推進することが国策の前提になるという御発言は、そのとおりだと思います。
  293. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、平和外交を展開するというには、いま世界の情勢というものを改めてここで分析してみる必要があると思います。それによって、その討論の中から、本当に平和を追求していく道は何かというものを考えるのが至当だと思うのです。だれも日本人である限り、日本の将来と民族の運命を考えない人はないと思うのです。だから、そういう点で軍備論者もあるいはこれを否定する側も、本当に日本が平和で安全で、しかもそれが世界の平和に寄与する道は何かということを真摯に語り合うことが大事ではないか、私はそういうふうに思うのです。  そこで、世界の情勢というのはいま一体どうなっているだろうか、こういうふうに考えますと、世界の情勢は、外務省の分析によると多極化傾向が進んでおる。ところが一方、防衛庁の分析によりますと二極構造である。こういう一つの違いがそこにあるわけです。これについてひとつ、これは最初に外務省の世界情勢の分析における考え方をお聞かせ願って、その後で防衛庁長官に外務省との考え方との関連についてお願いしたいと思います。
  294. 秋山光路

    ○秋山政府委員 ただいまの国際情勢がいかようにあるか、二極構造と見るか、もしくは多極構造と見るか、いずれかという御質問だと存じますが、確かに多元的な傾向が現在出ていることは先生御案内のとおりでございまして、従来の東西関係に加えまして、中ソの対立、非同盟の動向、それからOPECの動き等、いろいろと最近の状況は多元的な傾向を強めていると私どもは見ております。  しかし同時に、国際関係、とりわけ政治関係でございますけれども、軍事情勢及び戦略構造におきますところの基本的な枠組みとでも申しましょうか、そういうものを形成しているのは依然として米ソを中心としておるものが現在であると私どもは見ております。
  295. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  防衛庁としては、現在の世界は「米ソ両国の基本的な対立関係と両国の圧倒的な軍事的優位性から、それぞれ米ソ両国を中心とした集団安全保障体制が築きあげられ、また、このような集団安全保障体制に属さない国々も、何らかの形で両国の軍事態勢の影響を受けるに至っている。」と考えられ、軍事的には米ソの二極構造であり、今後ともこの構造は大きく変わる可能性はいまのところ小さいと考えております。  しかしながら、「世界の各国間には、領土、資源、民族、宗教、イデオロギーなどの要因をめぐり依然として根強い対立や不信が存在しており、米ソを中心とする東西の抑止機能が及ばない地域では、内戦や二国間以上にまたがる国際的な軍事紛争が往々にして発生している。」、そういった意味におきまして、政治的な面から見れば多元化あるいはそういった傾向が存在するのではないか、さように考えている次第でございます。
  296. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 政治的には多元化、軍事的には二極化という、こういう一つのことでいきますと、それではいまのイラン・イラク戦争を二極化構造の中からどういうふうに分析されますか。
  297. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 ただいま防衛庁長官から、まず第一に、軍事的に見ますと米ソは二極構造であると申しました後で、しかしながら、「世界各国間には、領土、資源、民族、宗教、イデオロギーなどの要因をめぐり依然として根強い対立や不信が存在しており、米ソを中心とする東西の抑止機能が及ばない地域では、内戦や二国間以上にまたがる国際的な軍事紛争が往々にして発生している。」まさにそのような事態の一例であるかと存じます。
  298. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いまのは全然答えになっていませんね。イランとイラクの戦争は二極化構造の中からどういうふうに説明するかと聞いているのですよ。そんなチンプンカンプンな答えをしないでください。
  299. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 もう一度説明し直させていただきますと、軍事的には米ソ二極構造でございますけれども、米ソの二極構造と申しましても、これはその中心をなすのが核の抑止力でございまして、核の抑止力によって抑止できない種類の戦争もございます。それはいま申し上げました領土であるとかあるいは民族であるとか宗教であるとか、それぞれの要素はイラン・イラク紛争にそれぞれございます。そういうものがございまして、それで、それが米ソを中心とする、たとえばヨーロッパの正面であるとか、抑止機能が非常に強く働いている場所では起こりにくいのでございますけれども、その抑止機能が強く働いていない場所でございますので起こっている、そういう御説明を申し上げたつもりでございます。
  300. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いまのイラン・イラク戦争はつまり二極化構造のらち外に起こった紛争だ、こういうふうに言っておるわけですか。
  301. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 先生の御理解どおりでございます。  ただ、わが防衛白書にはその後に文章が続いておりまして、「そしてこれらの紛争に米ソのいずれかが、直接または間接に関与するという事態もみられ、」、これはイランとイラクではございませんけれども、アフガニスタンの問題などでございます。「それが情勢を複雑にするとともに、米ソの軍事バランスや勢力消長に影響を及ぼしている。」ということで、無関係ではないのでございますが、発生に関しましては二極構造のらち外で起こった紛争でございます。
  302. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、私はやはり軍事的な面からも多極化が進んでいると見るのが至当ではないか。確かに米ソの超大国の対立が世界大戦も起こしかねない、その影響力と力を持っていることは否定できません。しかし、いま政治的な多極化というのは、それは最近なってきたものであって、戦後の十数年かそのくらいはほとんど、まあ中ソ対立以前は、片やソ連を中心とする社会主義陣営、片やアメリカを中心とする資本主義陣営、こういう一つの図式ができておったけれども、それがユーロコミュニズムとかいろいろと、今度は中ソ論争が起こる、あるいはベトナムと中国との戦いが起こる、こういうようなことから、いわゆるその二極化構造がだんだんと多元的に移っていく。またアメリカを中心とした資本主義陣営の中にも、いま内部には相当の経済戦争と言われるような摩擦、あつれきが起こっておることも事実でございます。そういうふうに考えていくと、方向としては二極化の方向ではなくて、軍事も政治に引きずられながら多極化へ流れている、だからそういう一面としてあのイラン・イラク戦争ができたととらえるのが至当ではないかと思うわけですが……。
  303. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 ただいまの先生の御見解は、国際情勢の一つの見方でございますけれども防衛庁といたしましては、先ほど長官からお述べ申し上げましたような見解をとっております。
  304. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 確かに防衛庁はそういう見解をとっているから聞いているので、白書を見ればはっきりしているのです。二極化構造の立場で、そしてソ連がどんどんと軍備を増強して、ここに国際バランスが崩れようとしておる。軍事バランスが崩れようとしておる。アメリカはどんどん低下しておる。そこで、この白書は、その穴埋めを日本がしなければならぬから軍備を増強しろ、こういう筋書きなのです。そういうことになるわけですよ、最初の出だしがそうなのだから。しかし、この情勢分析が一歩間違うと日本は大変なことになると思うのです。その辺で、私はやはり外務省と防衛庁の若干の違いがここにあるのではないかと思うのですが、外務省はいかがでしょうか。
  305. 秋山光路

    ○秋山政府委員 ただいま先生の、イラン・イラク紛争は二極構造からではなくて多元的な一つのあらわれではないかという御指摘がございましたが、その点では確かにそのとおりであると思います。しかし、先ほど防衛庁の方から御説明がありましたけれども、核の問題とか、そういう大きな戦略的な意味から申し上げますと、まだまだ米ソの東西関係というものが基本になっておるということは私ども考えております。
  306. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、なぜ私が多極化と二極化にこだわるかというのは、この世界の流れが多極化に流れていくという認識を持ったのと、二極化で対決がますます激しくなるという認識を持った場合の日本の構えが、当然そこで違ってくるからなのです。だから、この分析は最も厳密にしなければならないのじゃないか。  そこで、たとえばソ連の問題一つとりましても、外務省ではソ連はいまデタントを心から望んでいる、こういうとらえ方をしているというふうに私は受け取っております。それはなぜかというと、外務省の専門家の書いた本の中には、そういう書き方が各所に見られる。ところが防衛庁防衛白書では、もうデタントなんかは吹っ飛んでしまった、アフガニスタンの侵攻以来デタントは吹っ飛んだ、アメリカはますます対決を強めようとしておる、こういうとらえ方をしておる。これについては一体どうでしょうか、外務省と両方からお願いいたします。
  307. 秋山光路

    ○秋山政府委員 デタントの認識でございますが、確かにソ連軍のアフガン侵攻以来国際情勢にかげりが出たということは事実であります。そういう点では、私どもはデタントについて若干不安定な要素が出たものと考えております。ただ、それではデタントを米ソが全く放棄したのかと言いますと、その点はそこまではいかない。お互いに何らかの意味でやはりデタントの方向にもう一度戻ろうとするのではないかという認識もあるわけであります。
  308. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 防衛庁防衛白書におきましても、デタントが崩壊したという見方はとっておりません。ただ、国際情勢及び日本をめぐる情勢がきわめて厳しくなっているという事実を指摘いたしました上に、米ソの関係につきましては米ソ間の「軍事構造により、少なくとも東西間の全面的な軍事衝突や、それを引き起すおそれのある大規模な武力紛争は抑止されてきたといえよう。」という判断をいたしております。
  309. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで私は、ソ連の内部をもう少し緻密に分析する必要があるのではないか、いまソ連のアキレス腱となっているのは農業問題だろうと思うのです。とにかくソ連の食管赤字というのは百九十億ルーブルに上っておる。こういう一つの弱みを抱えて、なおかつソ連は、衛星国と申しますか、ワルシャワ条約機構の中の国々に対しても相当の援助をしなければならない。そこで軍備増強をどんどんやって、お互いに軍備競争をしていくと、民生面は全く置き去りにされる。そうすると、私はソ連の内部問題も非常な矛盾を抱えてくると思うのです。そういう一つの内部事情から見れば、あのブレジネフの演説その他の新聞の論説などを見てもわかるように、やはりソ連がデタントを欲しているのは真意ではないか、こういうふうに考えられるわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  310. 兵藤長雄

    ○兵藤説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、ソ連は現在国内的にも農業問題を初めといたしまして種々経済的に困難な問題を抱えているということが、ソ連の国内でも言われ、海外でも言われていることは周知の事実でございます。またアルマータにおきます先般のブレジネフ演説等でも、そういう背景から緊張緩和路線を特に強調いたしておるわけでございます。私どもも、ソ連のこういう緊張緩和路線というものが真摯なものであるということを心から期待しているわけでございます。しかし、他方、近年ソ連の軍事的能力が飛躍的に増大してきているということも事実でございますし、これがソ連の潜在的な脅威の増大というふうに受け取られているというのもまた事実でございます。またアフガニスタンへの軍事介入に関しましては、その意図について国際世論を警戒させているということも、また他方の事実であろうかと存ずる次第でございます。
  311. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 軍事的に非常に差がついてきて、ソ連の方は飛躍的に増強されて、アメリカは相対的に今度は低落しておる、こういうとらえ方ですが、何日前かのNHKのテレビで、いま地球上にある核を全部爆発させれば、地球を全滅させるだけの能力の五十倍ある、こういうことが放送されましたが、これについては防衛庁はどういうふうに分析しておりますか。
  312. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 世界を五十回破滅させるという、計算の仕方がいろいろあろうかと思いますけれども、SIPRIなどの民間研究所の数字によりますと、核爆発物が大体百三十億トンあるのではないかと言われております。これを世界人口で割ってみれば、使い方、計算の仕方によりますけれども、膨大なる核爆発物の集積であることは間違いございません。
  313. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、防衛白書は米ソの戦略ミサイルを図ではっきりと対比しておりますが、これを見ると、ソ連の方がものすごく強いように思われます。そのほか、この間の委員会でわが方の上原委員からも比較について問題が提起されましたが、私はこの比較が非常に意識的だと思うのです。もしこういう比較をして満足するような専門家だとすれば、本当に戦争を知らない人じゃないか、私はこういうふうに思うのです。なぜかと申しますと、相手の国を完全に消滅させるだけの核兵器があれば、それ以上の分はあってもなくても同じなんです。だから、そういう比較はもはや問題にならない。両方で相手をせん滅するだけの核兵器を持ってきている。だから、その全部を比較して、こっちの数が多いからこっちが強いという印象づけをしようとしても、それは全く素人のやり方ですよ。防衛白書を見てみると、そういう数量による対比しか書かれていない。戦力、戦闘力というものはそんなもので見られるものでは断じてありません。クラウゼビッツの「戦争論」というものを読んでみてもはっきりとそういう点を指摘しておるわけでございます。そういうふうに考えていきますと、私は、この白書の論文というのは本当におかしいじゃないか、こういうふうに思うのです。たとえば戦闘力というのは、そういう武器の数量よりも、問題なのは性能であり、あるいは人民との関係であり、あるいは地理の問題であり、あるいは防御に回るか攻撃に回るか、いろいろと総合的な判断をしていかないと戦闘能力の対比などというものはそう簡単にできないはずなんです。その点についてはいかがでしょうか。
  314. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 まず最初に、先ほどの発言をちょっと訂正させていただきます。  核爆薬のトン数と申し上げましたけれども、核爆発力のトン数でございます。  いまの点はまさに先生指摘のとおりでございまして、これは防衛白書を書きますときにもわれわれ常に意を用いているところでございます。それで、西側には総合的な国力の強さ、それから頼むべき友邦が多いこと、いろいろ利点がございまして、また東側にはソ連の経済問題、そういう問題がございます。他方、戦略的に申しますと、東西間の戦争ということで考えます場合、普通専門家が考えますのは、やはりどうしても東側の奇襲から始まるということで、ある程度の緒戦における不利というものは考えなければいけない、そういう問題がございます。そういうものを総合的に考えまして、いかにして東西の軍事力国民にわかりやすく説明するかということでございまして、それが防衛白書の最も苦心するところでございますけれども、それは毎年毎年発表されます白書を含めましていろいろな専門書でいろいろな表現、いろいろな言葉をもって御説明するのでありますが、基本は軍事バランスというのは数字でございまして、数字と計数をできる限り整理をいたしまして、国民の前にできるだけ詳しく発表をする、それが軍事バランスを説明するための基本的な姿勢であると存じております。
  315. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国民というのはそういう専門家じゃありませんから、この白書を見ると、確かにこれは軍事バランスが崩れつつあるというふうに受け取るでしょう。そこで、軍事バランスによってあなた方は平和を保とうとするならば、そこから当然軍備が必要だ、こういうものが引き出されてくるわけです。  そこで、私は今度は観点を変えてお伺いいたしますが、いま世界の中で一番危険な存在というもの、危険な要素というものは何でしょうか。
  316. 塩田章

    ○塩田政府委員 ちょっとお尋ねの御趣旨がよくわかりません。危険な要素というのはどういうことをお考えになってお尋ねか、ちょっと私わかりかねます。
  317. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 危険というのは戦争が起こり得る要素、たとえば日本とソ連の間にどうも戦争が起こり得る要素がある、あるいは朝鮮半島の中にある、中東の中にある、ヨーロッパの中にある、こういうふうに考えておった場合に、どこが一番危険の度があるか、こういうことですよ。
  318. 塩田章

    ○塩田政府委員 そうしますと、地域的に世界のどの地域が危険かというお尋ねかと思いますが、これは具体的になかなか申し上げにくいわけですけれども、やはりいろいろな意味での抑止力が相互に働き合っている形のところはどうしても抑止によってそういった危険は少ないであろう、その辺が、バランスが崩れておるところが危険の大きい地域になるであろう、抽象的に申し上げますとそういうことになるのではないかと思います。(渡部(行)委員「場所を具体的に言ってください」と呼ぶ)現実の問題としては、イラン、イラクの間に紛争が起こっておるわけであります。
  319. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 米ソのバランスが抑止力になっておるということが前提になっておるようですが、それじゃこのバランスがソ連の方が弱くなった場合はアメリカの方は攻めるのですか。またアメリカが弱くなったらソ連が攻めてくるのですか。その辺はどうでしょうか。
  320. 塩田章

    ○塩田政府委員 それこそそれぞれの国の基本的な国策の問題であり、それぞれの国民の平和を愛する気持ちがどういう形であらわれるかということではないかと思いますので、バランスが崩れたからどちらからどうということに直ちに結びつけて考えるのではなくて、やはりお互いに平和を求めていくという姿勢が双方にあってほしいというふうに私は思います。
  321. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 日本が武装しなければならない、軍備を増強しなければならないということは、アメリカの軍事力が相対的に低下しているからだというのが前提でしょう。それを前提にこの白書は書かれているでしょう。そうすると、アメリカの抑止力が低下するのを構わないでおくとソ連は日本に攻め入ってくる、こういうふうに当然解釈されるのじゃないでしょうか。
  322. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本が日本の防衛を考えてまいりました場合に、三十二年の「国防の基本方針」以来、日米安保体制とみずからの防衛努力という二本の柱で日本の防衛を全うしようとしてきた、これはずっと貫かれておると思います。決して最近になってアメリカの力が相対的に低下したからどうこうということではなくて、ずっと以前からの日本の国防の基本方針であったというふうに私は理解をしております。
  323. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、おかしいですね。白書では低下したからと書いてあって、そしていまのお話では、日米安保条約が柱になってきているのだから、その安保条約の延長線の上で軍備を強化していくのだ、こういう話でしょう。今度実際に五十六年度は明らかに軍備が増強されるでしょう。それはもう矛盾しているじゃないですか。
  324. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的に現在の時点に立って申し上げますと、五十一年の「防衛計画の大綱」にございますように、限定的小規模の侵攻に対しては、わが国は独自で対処するものをみずから整備する。それ以上のものに対しては、日米安保体制で排除するという基本的な考え方が示されておりますが、その基本的な考え方に基づいて、わが国の持つべき防衛力についての整備を図っておるわけでありまして、五十六年度の予算でまたお願いいたしておりますことも、その範囲の中でお願いをしておるわけであります。
  325. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから、そうなると、この白書は実態を書いてはいないというふうになるのじゃないですか。五十一年につくったその大綱をやっていくために増強するのだ。ところがこの白書は、アメリカの戦力低下によるその穴埋めとして日本が増強しなくちゃならない、これはこういう論拠になっているのじゃないですか。
  326. 大村襄治

    大村国務大臣 五十五年の防衛白書に書いてあります点は、ソ連の軍事力がここ数年間著しく増大してきている、陸海空の各戦力が。グローバルな点においても著しく増大している。そしてこのままでほっておけば、総合的な力がアメリカを近く追い抜くかもしれない。そこでアメリカもこの二、三年来自主的に軍事力の増強を図って、厳しい財政状況下におきましても、国防費の予算の増額を図るとともに、西側の諸国に同様の努力を要請しているということでございまして、アメリカの軍事力が差がついたから日本に要請してきている、そういうことは白書には書いてないわけでございます。
  327. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 防衛庁長官が、そういうことは書いてない。差がついたということは書いていませんよ。相対的にアメリカの軍事力が低下したとは書いてあるじゃないですか。そしてそれは各新聞社も皆そのように受け取っておりますよ。あれを読んだ人は皆そういうふうに読んでいるのです。だから、そう書いてないと言うなら、防衛庁長官は何を言いたいのですか。その言いたいものを率直に言ってください。
  328. 大村襄治

    大村国務大臣 相対的に低下しているというのは、かつてはこんなに開いたのがほとんど開きがなくなりそうになっている。それは相対的に低下した、こういうことだと思います。
  329. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは逆に非常にいい傾向じゃないでしょうか。力が均衡してきたということでしょう。いままではアメリカが圧倒的に強かったのが、だんだんこういうふうにソ連の方も強くなって、力が均衡して、いまでもアメリカの方がちょっと上にあるわけですから、それは大変好ましい国際状況じゃないでしょうか。
  330. 大村襄治

    大村国務大臣 私が申し上げましたのは、相対的に見て近づいてきている。物によってはソ連の方が、ICBMも一部のものにおいては量において凌駕している点もある。なればこそSALTIの交渉もできたのでありますし、SALTIIの交渉はペンディングではございますが、なお継続して行われている、こういうことだと思うのでございます。そして、このままほっておけば、ソ連のこの上昇のカーブというものはアメリカを上回る可能性がある。そこでバランスが逆転する可能性があるというので、ここ二、三年来アメリカ自身が努力を再開始している。そして西側諸国にも協力を求めている。これが現在の時点における状況だと思います。
  331. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、非常に回りくどい御説明でしたが、そういうアメリカがこのままほっておけばやがてソ連よりも下回るだろう、だからいまのうちに下回らないように日本も何とか軍備を増強しなければならぬ、こういうお話ですが、アメリカも今度大変軍備を増強するわけですね。だから、そういうことでは説明にならないと思うのです。  そこで、時間の関係もありますから先に急ぎますけれども、まず戦争というものはどういうものかということを、どういう御認識を持っておられるか、戦争についてお伺いしたいと思います。
  332. 塩田章

    ○塩田政府委員 戦争の本質はどうかという原理、科学的性格はどういうものかというお尋ねでございますが、大変むずかしい問題でございまして、どうも私も一言で申し上げにくいのですけれども、たとえば有名なクラウゼビッツなんかの言葉では、戦争は他の手段をもってする政治の延長にほかならないというような言い方もされておるようであります。ということを申し上げまして、いま一般的に私どういうふうに、それ以上戦争の本質というお尋ねに対しまして的確なお答えができかねるわけでございますが、クラウゼビッツなんかのそういう考え方も一つの見方ではあろうというふうに思います。
  333. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いまクラウゼビッツの説を引用されましたが、クラウゼビッツはこういうことを書いているのです。「戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である。」「暴力、つまり物理的暴力(というのは、国家及び法律の概念以外に、精神的暴力というものは存在しないからである)は手段であって、敵にわれわれの意志をおしつけるのが目的である。この目的に確実に到達するためには、敵の抵抗力を奪わねばならぬ。そしてこれが概念上戦争行動の本来的目標である。」こういうふうに書かれているのです。相手を圧倒して、相手を倒さなければならない宿命が戦争なんですね。自分の意思に相手を従わせなくもやならないのですよ。そうすると、その結果どういうことが起きてくるかと言いますと、これは有名な戦争科学といわれる戦争の相互作用、極限作用というものが起きてくるわけです。その極限作用をひとつ言ってみますと、まず第一の相互作用として、要点だけ申し上げますが、「すなわち、戦争は暴力行為であり、その行使にはいかなる限界もない。かくて一方の暴力は他方の暴力をよびおこし、そこから生ずる相互作用は、理論上その極限に達するまでやむことはない。これが、われわれのぶつかる第一の相互作用であり、第一の無限界性である。」そして今度第二の相互作用、「戦争は、生きた力が死物に働きかける作用ではない。それは、常に生きた力と生きた力とのあいだの衝突である。というのは、戦う二者の一方が全然受身の地位にあるとすれば、それは戦争とはいいえないからである。したがって軍事行動の究極的目標についてわれわれがのべたこと(敵の粉砕)は当然戦う双方についてあてはまらざるをえない。ここにまたしても相互作用が生ずる。私が敵を粉砕してしまわないかぎり、私はたえづ敵が私を粉砕しはせぬかということを恐れていなければならぬ。そのため私は常に不安な気持を脱することができない。私が敵の抵抗を激発させるように、敵もまた私の抵抗を激発させる。これが第二の相互作用であり、それはまた第二の無限界性を生み出す。」こうしてまた第三の相互作用、無限界性というものを言っているんです。最後のちょっぴりしたところを言ってみますと、「敵を圧倒するほどに努力を強化するかそれだけの余力がない場合には、可能なかぎりこれを強化する。しかし同じことを敵もまたするであろう。したがってまたもや相互にはりあうことになり、それは、論理上必然に極限へ向かっての努力をともなわないわけにゆかない。これが、われわれのぶつかる第三の相互作用であり、第三の無限界性である。」こういうふうにクラウゼビッツは戦争の性格について定義しているんですよ。これはあなたも知っているように、レーニンも毛沢東もヒトラーもこのクラウゼビッツの戦争科学には非常な興味を持ってこれを尊重してきたのは歴史的にも有名です。そうだとすると、いま自衛隊が敵、味方のバランス論で軍備を増強するというのは、まさに無限界性に臨んでいくということ、そちらに走っていくということは私は必然だと思うのです。その問題については一体どうなんでしょうか。
  334. 塩田章

    ○塩田政府委員 クラウゼビッツは、抽象的に考えれば、戦争におきまして、われの軍事力はすべて用いらざるを得ないということ、敵の軍事力をすべて破壊しようとせざるを得ない、したがってまた、われの軍事力を敵の軍事力よりも強化しようとせざるを得ない。いま先生がお述べになったようなことでございますが、そういうことから、戦争の無限界性ないし絶対性が導き出されるということを言っていることは、いま先生お読みになったとおりでありますが、一方別のところで、現実の世界においては、戦争が不完全な人間によって行われるものであること、戦争がただ一回の決戦によって決着がつくものではないこと、戦後のことまで考えれば、軍事力の激烈な行使は緩和されざるを得ないことなどの理由を挙げまして、結局戦争は政治の一手段であって、現実に起こる戦争は無限界性、絶対性というものではないという結論も一方でクラウゼビッツは言っているわけです。  最後に先生のおっしゃいましたそういう無限界性からいって、自衛隊においても無限界性を追求することになるではないかというお話でございますが、先ほど来申し上げておりますように、わが国防衛の構想そのものがみずからの努力によって限定、小規模な侵略に対して独力で排除し、それ以上のものに対しては日米安保体制で対処するという方針、構想を持っておるわけでございまして、そういう意味で、先生のおっしゃいますように、自衛隊もまた無限界性に向かっていくのではないかというようなことは当たらないというふうに考えるわけであります。
  335. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 あなたは大分クラウゼビッツをゆがめて解釈しておるんじゃないでしょうか。いま言ったのは、戦争は政治の一つの極限の手段であるということは確かに言っております。しかし、それにはいわゆる戦後の問題まで考えている場合もあるし、そうでない場合もある。いろいろな場合を想定して彼は言っているのです。しかし、一たん戦闘となれば、この無限界性に入っていくということなんですよ。これがクラウゼビッツの思想なんです。それをあなた否定したら、クラウゼビッツではなくなりますよ。そこで、私は、日本のいまの状態というのは、純粋な兵法の上から言うと全くなっていないというのは、こういうことを言っているのです。「戦争は実に危険な事業であって、このような危険な事業にあっては、お人好しから生まれる誤謬ほど恐るべきものはないからである。物理的暴力の行使にあたり、そこに理性が参加するのは当然であるが、そのさい、一方は、まったく無慈悲に、流血にもたじろぐことなく、この暴力を用いるとし、他方には、このような断乎さが欠けているとすれば、かならず前者が後者を圧倒するであろう。そうすると、後者もまた前者に劣らぬ暴力を用いないわけにはゆかず、こうして双方が極限まで暴力を行使するようになり、両者間の力の均衡以外には、これを制限するものは、なにもない。」ということを言っているのです。だから、私はそのことを言っているのですよ。自衛隊が戦闘状態に入った。仮に敵がやってきた。そこでアメリカ軍は今度は逃げる敵を追いかけて、敵の領内まで追いかけていく。日本はここから先は憲法違反だから、私は引き返しますよ、こうなったら一体どうなるんです。実際問題としてこんな戦争ができますか。いつでも日本には憲法の歯どめがあって、そうして常に何というか全力を戦闘に傾けるという状態にないことだけは明らかですよ。だから、みんなこれはいままでの憲法の中で軍備をやっているというのはごまかしなんです。いざ一たん緩急があれば、もう憲法は書いた条文になってしまって、実力を持つ自衛隊が行動することは抑えることができなくなる。このことをやはりはっきりと見抜いていかなければならないと思いますが、防衛庁長官いかがでしょうか。
  336. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま日米共同対処の場合に、アメリカと日本の自衛隊との共同関係についてお話がございましたけれども、その点につきましては、「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインの中に日本の自衛隊と米軍の役割りとを明確にいたしておりまして、日本に対する武力攻撃がなされた場合の基本的な考え方といたしまして、「日本は、原則として、限定的かつ小規模な侵略を独力で排除する。侵略の規模、態様等により独力で排除することが困難な場合には、米国の協力をまつて、これを排除する。」これが基本にございまして、作戦の構想といたしましては、「自衛隊は主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力の及ばない機能を補完するための作戦を実施する。」こういうふうに明記されております。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕 自衛隊はわが国の周辺海空域の範囲内で防勢作戦に主として当たる。それ以上は米軍の方で自衛隊を支援し、また米軍が自衛隊の持たない機能、及ばない機能についてこれを行うというふうになっておるわけであります。
  337. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それは書いたものはそう書いてありますよ。だけれども、一たん戦争になれば、そういう書いたものは何の規制の役割りも果たさないのじゃないか。あなた、実際の戦闘状態を想定してみてください。もしいま仮にソ連が日本に攻めてくるとすれば、どういう状況を想像できますか。ちょっとその点について具体的にお願いします。
  338. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま日米で共同作戦計画の研究をやっておりますが、特定のどこの国ということでなしに、日本にあり得べき侵略についての一定の設想を設けて研究をしております。ただ、その設けております設想の内容等につきましては、公表は差し控えさせていただきたいと思います。
  339. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから、私はシビリアンコントロールというのがでたらめだと言うのですよ。一体シビリアンコントロールというこのことは、五十四年度の防衛白書ですが、シビリアンコントロールとは「政治の軍事に対する優先又は統制、すなわち、主権の存する国民の意思によって選出された政治的代表者によって軍事を統制することを意味している。」と書いてあるのですよ。国会議員によって軍事を統制するということがシビリアンコントロールの基本なんですよ。そうでしょう。それなのに、皆さんが知っていることを国権の最高機関にいる人が知ることができないということで一体コントロールできますか。できるはずがないんです。だから、もしそのことがどうしてもわれわれのいまの審議に必要だとすれば、秘密会にしてでも明らかにしなければならないのです。もちろん議員にも守秘の義務はありますよ。そういう国の秘密に対してわれわれも守る責任と義務がある。そのことは否定しません。しかし、あなた方が知っていることを国の最高機関におる議員が知らないで済むということは、これはシビリアンコントロ−ルができるはずないじゃないですか、その点についてひとつ……。
  340. 大村襄治

    大村国務大臣 政府国会のシビリアンコントロールを十分に発揮できるよう従来から国会における御審議に際しましては誠意を持って御説明しているほか、必要な各種資料もできる限り提出してまいっており、今後ともその方針に変わりはございません。しかし、防衛上の問題は国家の安全と利益に深くかかわっているものが多く、仮に秘密会でありましてもお示しできないものもあることは御理解願いたいのでございます。
  341. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いまのシビリアンコントロールというのは、私は口先だけの、文章だけのものだと思うのです。本当にコントロールをする必要条件というものを考えると、まず国民の中に民主主義の思想が徹底していなければならない、そういう条件をつくり出さなければならないということが第一点。  第二点は、指揮命令系統の組織的なチェックができる機能を持っているということです。それは内閣の中にそういう機能があるかないかということが一番重要であります。それから三番目は、内閣総理大臣が常に軍の動きについてその情報を得る、そういう一つの状態がなければならない。ところが実際にはどうでしょうか。この間の中期業務見積もりは内閣総理大臣が知らないうちにアメリカが知っているじゃないですか。こんな状況でシビリアンコントロールができるはずないです。  それから四番目は、これは一番最初に言うべきだったんですが、国権の最高機関としての国会がやはりこれを十分コントロールし、そして一切の内容について知る権利が行使できるという状況がなければならない。  それから五番目は、管轄大臣、つまり防衛庁長官がもっと専門的な知識を持って権威ある指導、指揮ができるような状況にならなければならない。そのためには十年間に十四回も防衛庁長官がかわるようではできるはずがないんですよ。だから制服組はまるで床の間の置物を取りかえたぐらいにしか思っていません。こんな状態でどうしてあなた三軍の指揮がとれますか。そういうことを本気になっていま考えていかないと制服がひとり歩きしますよ。隊伍を組んで銃剣持って、そして赤ランプのところを堂々と歩いたときにだれがこれを規制できますか。警察じゃどうすることもできないんですよ。実力というものはそういうものなんです。だから、この点については、防衛庁長官は自分が任期を決める権限はないけれども、これは総理に聞きたいところだが、私の言ったそういう思想についてひとつお答え願いたいと思います。
  342. 大村襄治

    大村国務大臣 シビリアンコントロールの強化について貴重な御意見をお聞かせくださいましてありがとうございました。国会のシビリアンコントロールの強化につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。政府部内の強化につきましては、御指摘のとおり最高指揮官は内閣総理大臣でございますので、重要な事項については内閣総理大臣の耳に事前に入れるようにさらに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。  現在の中期業務見積もりにつきましては、防衛庁限りの見積もりでございますので、すでに五十四年に策定済みでございます。しかしながら、次の中期業務見積もりの策定、これは三年ごとでございます。来年は次の中期業務の見積もりをいたさなければならない。その場合におきましては、何らかの形で国防会議の議題とするように、現在その方法を検討中でございます。  また、防衛庁長官の任期が短過ぎて、部内をしっかり把握できないではないかという厳しい御指摘でございますが、私は任のある限り誠心誠意勉強してまいりたいと思っておりますので、お励ましのお言葉としてありがたくちょうだいしておきたいと思う次第でございます。
  343. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、このシビリアンコントロール、どうも私、方言で発音が悪いから、そこはお許しください。シビリアンコントロールのできないような状態として私は認識しておるわけです。そこで重要になってくるのは、条約と憲法の関係ですが、これはずっと前の国会でも答弁がありましたけれども、最近非常に条約優先のような主張が出ておる風潮もありますので、この辺でひとつ明確に、日米安保条約と憲法はどちらが優先するか、このことを法制局ではっきりと答えていただきたいと思います。
  344. 味村治

    ○味村政府委員 条約と憲法との優劣の関係につきましては、条約の方が憲法よりも優位に立っているんだという説と、憲法の方が条約より優位に立っているという説と両方ございます。ごく一般的に申し上げますと、従来の政府見解は、先ほどおっしゃいましたような安保条約のような二国間の条約、これは憲法の許す範囲内でしか結ぶことができないということで、条約が憲法に優先する効力を持っておるとは考えておりません。逆に申し上げますが、憲法は条約に優先するというふうに考えているわけでございます。したがいまして、わが国がアメリカなりその他の国と条約を結ぶ際にも、憲法の範囲内でしなければならない。現在の日米安全保障条約ももちろんそのような見地からされていると考えております。
  345. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 その条約の方が優先するという学説があるというお話ですが、やはりこれは国としてきちっとしておかないと、そういうものがやがて頭をもたげていく危険性があると思うのです。憲法というのは、これは釈迦に説法ですが、国の基本法でございまして、これを逸脱できる国民の権利は絶対にないと私は思うのです。したがって、どんな条約であろうと憲法に抵触する部分について締約をしたならば、これは当然無効である、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  346. 味村治

    ○味村政府委員 条約は事前または時宜によりましては事後に国会の御承認をいただくということに憲法上相なっているわけでございます。国会の方では、当然それは憲法に違反するか否かということを十分御審議の上で条約が効力を発生するものと承知いたしておりますので、そのように憲法に違反するような条約は締結される可能性はないものと存じております。
  347. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、今度は防衛庁長官にお伺いしますが、最近シーレーンを防衛しなければならないという議論が出ておるようでございますが、この石油輸送路というものは物すごい広大なものであり、大変なわけでございます。この防衛というものは憲法に違反しないでしょうか。
  348. 塩田章

    ○塩田政府委員 シーレーンの防衛が憲法に違反するかどうかという観点からの議論の場合、それが海外派兵になる場合、それが集団自衛権の行使になる場合、これは明瞭に憲法に違反であります。
  349. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ところが、今度の白書では、海上交通の安全を確保しなければならない、そういうことで、海上自衛隊を増強しておるわけですね。そうすると、海上交通の安全というには、シーレーンだけでなしにすべての輸送路ということになっていくと思うのですが、そういう表現で軍備増強をしますと、まさに憲法を逸脱したような解釈が当然まかり通るような事態になりはしないか、こういうことを非常に危惧するものでありますが、その点については一体どういうふうに考えておられるのでしょうか。
  350. 塩田章

    ○塩田政府委員 海上護衛の場合の憲法解釈につきましては、いま申し上げたとおりでございますが、実際の海上自衛隊の整備につきましては、周辺数百海里における海上作戦あるいは航路帯を設けた場合には一千海里程度の航路帯を護衛するということができるようにということを整備目標として海上自衛隊の整備を行っておるわけであります。
  351. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 現在は輸送船団の護衛はしているのですか。
  352. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在いたしておりません。
  353. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから私が言いたいのは、何もそれほど軍備を増強しなくても結構スムーズに貿易ができ、海上交通が行われているわけです。そこで問題なのは、やはりどちらにその危険性があるか。つまり日本とソ連の間に危険性がより大きいのか、アメリカとソ連の間の危険性がより大きいのか、こういうふうに見てまいりますと、私は日本とソ連の危険性というものはまさにゼロに近いじゃないか、むしろアメリカとソ連の激突する危険性の方が大きいのではないか、こういうふうに考えるわけです。そうすると、いまの日米安保条約は、日本を守るためにアメリカを拘束しているのではなくて、アメリカがソ連と対抗上日本を拘束する、その一つのきずなになっているのが日米安保条約ではないか。むしろ日本はアメリカのそういうきずなに引きずられて危険なふちへとつり込まれていく、こういうことが考えられるのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  354. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度も申し上げておりますように、私どもは、日米安保条約は、日本が侵攻を受けた場合に、日本のみずからの防衛努力とともに、それ以上の侵攻規模のものに対しまして日米で共同で対処するというものでございまして、そのように御理解いただきたいと思います。
  355. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いよいよ時間が参りましたので、最後にお伺いいたします。  私は、軍備を増強して、そうして仮想敵国をつくって、ことさらに問題を大きくしていく、こういうやり方は下の下だと思うのです。そうではなしに、なるべく敵国をつくらないように、あるいは世界の中に紛争があったら、その紛争を解決する方向でもっと自主的に日本が働きかけをすべきじゃないだろうか。しかも、この防衛白書というのは、米ソの関係については非常に詳しく述べてあるけれども、第三世界、つまり発展途上国に対する分析、日本のそれに対するこれからの働きかけ等については全く触れられていないと言って過言でありません。こういう中で、これからの日本の将来を考えたときに、私は日本は逆に非同盟中立で、そうして軍縮こそがいま日本のなす役割りではないか。SALTIIもアメリカがいまなかなか批准をしないでおるという情勢の中では、そういうものを促進させ、さらには世界の軍縮に向かって日本が主導権をとっていく、そういうふうな具体的な行動をすれば、日本は、これから第三世界からもあるいはその他の国々からも平和日本としての信頼を獲得することができる。そこで初めて貿易立国の厳然たる基盤を守ることができると私は思うのでございますが、その点を最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  356. 大村襄治

    大村国務大臣 いろいろ御意見をお述べくださったのでございますが、せっかくの御提言でございますが、私は日本の置かれている現在の実情におきましては、憲法の許す範囲内におきまして自衛のための実力を整備することが必要であり、また日米安全保障体制を効率的に運営することによって、外部からの起こり得る侵略に対処する、万々一の場合には有効に対処できる基盤的なものを整えることが防衛庁に課せられている任務であると考える次第でございます。  もちろん先生指摘の低開発国に対する援助を強化する問題、これはもう大賛成でございます。関係省の間においていま強力にこれを進めておられるのでございまして、そういった点につきましても、防衛庁としましてできる限り御協力してまいりたいと考えておるわけでございます。  また、白書の中に第三国に対する記載事項が少ないという御指摘もあったわけでございまするが、昨年の白書に比較いたしますと、ことしの白書におきましてはわざわざ中東問題に関する一節を織り込んでおるわけでございまして、先生指摘の政治の多元論、そういった点につきましても、決して目を覆うことなぐ、できる限り取り入れるように努力いたしておるわけでございます。  以上をもってお答えとさせていただきます。
  357. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  358. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 矢山有作君。
  359. 矢山有作

    ○矢山委員 大変遅くなりまして御苦労さまですが、長官、もうしばらくおつき合いをいただきます。  防衛庁長官は、九月八日の自民党の研修会の講演で、「防衛計画の大綱」を完全に達成してもなお不十分だと思うといったような発言があったというふうに聞いております。その発言一体どういう認識のもとでどういう点が不十分だというふうにおっしゃったのでしょうか。
  360. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  自民党の研修会の席上、私は「防衛計画の大綱」について概要を説明いたしまして、防衛庁としては現在のところこれを見直す考えはないということを申し上げたのでございます。その後、質問の時間におきまして、党員の中から、一九八五年ごろどうなるか、こういう質問がございましたので、大分先のことでございますから、国際情勢やその他の情勢がどうなるかわからないけれども、場合によっては見直す必要性が生ずるかもしれない、そういうことをお答えした次第でございます。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕
  361. 矢山有作

    ○矢山委員 私がお聞きしたのは、どういう点を不十分だというふうに認識をされて御発言になったかという点をお伺いしておるわけです。またその発言の背後にある認識はどういうふうであったのかと言っているわけで、これはおっしゃらぬから私の方が先申し上げますが、翌日の九日に記者会見をやっておられますね。そのときに言われておるのは、不十分だというのはやはり量的な点で不十分だと思うというふうにおっしゃったのじゃないですか。
  362. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  不十分になるかもしれないと申し上げたのでございまして、特に量的の面だけを申し上げたのではないわけでございます。いずれにいたしましても、未確定の要素が多いわけでございますので、具体的な内容まで考えて申し上げたわけではございません。
  363. 矢山有作

    ○矢山委員 その当時の御発言を全部とってみてから議論するのがこれは筋だと思いますが、それをとっておりませんので、その状態の中で申し上げますけれども、不十分な点が量的な問題にあるということになると、一つ問題ができると思うのです。  というのは、御承知のように、「防衛計画の大綱」ではいわゆる基盤的防衛力の整備ということを一つ考えておるわけでしょう。基盤的防衛力を整備していく上については、規模の点、つまり量的な面ではいま大体その水準は達成されておる、こう言われておるわけです。それで、質的な面の維持向上を図っていくんだ、こう言っているわけですね。だから、もしあなたが伝えられるように、量的な点で不十分だとおっしゃっておるんだとするなら、「防衛計画の大綱」というものはその時点でもう崩れているわけですね。そういうことになるから、私は一体その認識はどうだったのか、その点は今後「防衛計画の大綱」というものを議論する場合に非常に重要ですから伺っておるわけす。
  364. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたとおり、私は「防衛計画の大綱」を現在は見直す考えは全く持っていないということを繰り返し申し上げているわけでございます。五年先はどうかというお尋ねでございますので、いろいろな条件もあるのでどうなるかわからないけれども、見直す必要が出るかもしれないし出ないかもしれないという趣旨のことをお答えしたわけでございます。
  365. 矢山有作

    ○矢山委員 それは、このことが国会の場で問題になった後に、あなたが「防衛計画の大綱」は見直すつもりはない、こうおっしゃったわけです。それはそう言わなければならぬのですわね。量的な点で不十分だということをおっしゃったとするなら、「防衛計画の大綱」が崩れちまうんだから。崩れちまうということになると、見直しをしなければならぬということになっちゃうわけだから。そこのところをつかれるとあなたは困るから、その後に、あなたが実際に発言した点はあいまいにぼかしながら、「防衛計画の大綱」は見直すつもりはないというふうに訂正なさったんだろうと思うのです。  したがって私が申し上げたいのは、「防衛計画の大綱」の根幹に触れるようなことを不用意にしゃべって、後でそれは間違いであったんだと言って軽々しく取り消すというようなことをやめなければいけない、そういう意味で言っておるわけです。少なくとも防衛力の整備というのはきわめて重要な問題なんですから、その防衛力整備の一つの根幹になっておる「防衛計画の大綱」の基本を揺るがすような発言が軽々しくなされて、それが指摘されると軽々しくそれを取り消して見直しはしないんだ、こういったような考え方でおったのでは、われわれは防衛庁の最高責任者としてあなたを信頼することができなくなるから、そういう意味でこの点を私は指摘申し上げたわけです。わかりますか。
  366. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  繰り返して恐縮でございますが、講演会の席上私は「防衛計画の大綱」を現在見直す考えは全くないということは明白に申し上げておるわけでございます。その後、国会委員会でたびたびお尋ねがございましたが、その点は繰り返し明確に申し上げているところでございます。  ただ、自民党の研修会の席上、講演が終わりまして若干の質問の時間がありましたときに、ごく短い時間の質問が、先ほど申し上げましたように大分先のことでございましたので、将来のことはよくわからないが、変える必要が出るかもしれないし、あるいは見直さないで済むかもしれないという趣旨のことをお答えしまして、そこで時間切れになりましたので、その点記者会見等でいろいろお尋ねが出たのではないかと思いますが、繰り返しで恐縮でございますが、「防衛計画の大綱」を現在見直すという考えは全く持っていないということを繰り返し申し上げさせていただきます。
  367. 矢山有作

    ○矢山委員 繰り返し繰り返しの話になりますから、私ももう繰り返しをやめますけれどもね。私が申し上げたのは、見直すつもりはないとおっしゃるのなら、完全達成の後に量的に不十分だとか何だとか、そんなことは軽々しくおっしゃらぬ方がいい、そういう意味で申し上げたわけです。ですから、先ほども申し上げたように、あなたは少なくとも防衛庁長官なんだから、重要な防衛力の整備について誤解を生むような発言を軽々しくなさらぬように、そのことを私は御注意申し上げておるわけです。  そこで、あなたはいまこの時点で、「防衛計画の大綱」がつくられたときと現在とで国際情勢の見方に変化があると考えておられますか、どうですか。
  368. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  「防衛計画の大綱」が策定されましたのは、先生御承知のとおり昭和五十一年の秋でございます。その当時と現在と違いがあるのかないのか、こういうお尋ねの趣旨でございますが、いろいろな変化があることは事実でございますが、米ソ両超大国の間におけるいわゆるデタントの問題につきましては、特にソ連のアフガニスタン侵入以降、米ソ間に信頼関係が薄らいできている点はございますが、さればといって核使用を含めた大規模な戦争手段に訴えるというような点につきましては、依然として抑制努力が払われておると思いますので、そういう意味におきましては、大筋において変化はないものと考えております。
  369. 矢山有作

    ○矢山委員 それではこういうふうに理解したらいいわけですか。「防衛計画の大綱」をつくられた当時の国際情勢の見方と、現在今日の状態を見るときに、米ソ両超大国間のデタントについてはそれが揺らいできておる、そういうような認識だが、しかし、大綱をつくった当時の国際情勢が大きく変化をして、「防衛計画の大綱」を見直すほどのいわゆる情勢の変化はない、こういうふうにおっしゃっているわけですか。
  370. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  五十一年から五十五年の現在に至るまでのいろいろな状況を見ますと、変化がないとは申せないわけでございます。特にグローバルな点におきましても、ソ連軍の陸海空の軍事能力というのが大幅に向上してきておる。またその三分の一ないし四分の一、陸海空につきまして若干の割合の相違はあると申しますが、相当な部分を極東に配備してきておる。そういった変化はあるわけでございますが、いま先生指摘の核行便を含んでの大規模な戦争が差し迫った状態ではない、そういう判断防衛計画策定の当時におきましても考えておったのでございますが、その点におきましては変わりがない、こういう認識でございます。でありますから、一言で言いますと、いわゆる米ソ間のデタントが崩れ去ったものとは私ども考えてないわけでございます。
  371. 矢山有作

    ○矢山委員 だから、私の方があなたの答弁に対して言っているじゃありませんか。国際情勢について変化はあった。あったが、その変化は「防衛計画の大綱」を見直さなければならぬほどの変化だとは思ってないんですね。そういう御答弁なんですなと私は言っておるのですよ。そうなんでしょう。回りくどいことはいいんです。
  372. 大村襄治

    大村国務大臣 そのとおりでございます。現在「防衛計画の大綱」を見直さないというのは、先生のおっしゃるようなことも念頭に置いて申し上げておるわけでございます。
  373. 矢山有作

    ○矢山委員 そこでお聞きしたいのですが、そうすると「防衛計画の大綱」を見直すといったような国際情勢の変化というのは、大体どういうことを考えておられますか。
  374. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 「防衛計画の大綱」の見直しそのものにつきましては、防衛局長から後ほど御説明することになると存じますけれども、情勢そのものでございますが、情勢そのものにつきましては、国際情勢というのは時々刻々変転するものでございまして、防衛計画をつくりましたころに条件を考えましたりいろいろなこともございましたけれども、例示として条件を提示したこともございますけれども、まだその他の条件もございました。一言でデタントと申しましても「防衛計画の大綱」をつくりましたころのデタント、これは米ソ両国が第二撃能力ができるようになりまして、それでやっとデタントというものが成立してきた。そういう意味のデタントでございます。  ただ、現在のデタントと申しますのは、ソ連の戦力が急速に増加いたしまして、現在アメリカが同盟国と共同してこれに対処しなければいつかは非常にバランスが危なくなってくる、そういう意味のデタントでございます。したがいまして、当時の条件といまの条件とは、言葉は同じでございましても、内容は相当に変化しておるというふうに考えられます。ただ、いま長官が申し上げましたとおりに、米ソ関係というものも大幅に後退はしておりますけれども、いわゆるデタントが崩壊してしまったということではございませんで、また米ソ間の核相互抑止を中心とする現在の軍事構造によりまして、東西間の核戦争及びそれに至るような大規模な衝突が現状では抑止されておると考えておることもございます。したがって、わが国に対する差し迫った侵略の脅威が生ずる、そういう情勢に変化したとは考えておりません。いずれにしましても、とのような厳しい情勢にかんがみまして、みずからも節度のある質の高い防衛力を速やかに整備することに努力する必要があると考えております。
  375. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま先生は「防衛計画の大綱」の見直しと国際情勢の変化の関連といいますかそういうことについてのお尋ねでございましたけれども、私どもは「防衛計画の大綱」をいま見直さないことは先ほどから申し上げておりますが、将来見直すかどうかということにつきましては、いまいろいろお話しになっておりますような国際情勢の変化ということも、一つの大きな要素として考えなくちゃいけない。同時にまた、国内における諸情勢の動向ということも、やはり大きな要素として考えなくてはいけない。また同時に、いま私どもが中期業務見積もり等を実施しながら「防衛計画の大綱」の線に向かって努力をしておるわけでございますが、その達成状況といったようなことも、やはり大きな要素として考えなくちゃいけない。そういうようなことを考え合わせた場合に、将来見直す時期が来るかどうか。それはいまの時点ではいつであろうかとか、そういうことは何とも申し上げられませんけれども、考えられる要素としてはそういうことではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  376. 矢山有作

    ○矢山委員 「防衛計画の大綱」の見直しの三つの条件を挙げられたわけです。その中で一つの条件である国際情勢の変化というのは、「防衛計画の大綱」をつくった当時の国際情勢と照らし合わせて、どういう変化が起こった場合に計画大綱を見直すような変化と考えておられるかという点が一点です。
  377. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十一年当時と少なくとも現在の時点の変化をどう認識するかは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。端的に言いまして、私どもは厳しくなったというふうに表現をしておるわけでございますが、国際情勢の中でもいろんな条件が考えられますけれども、そのどれか一つをとって、あるいは幾つかをとって、それでもって大綱を見直すべきであるとかすべきでないとか、する必要がないとか、そういうふうにまだ考えておらないわけでございまして、やはり先ほど言いました三つの条件というものは総合的に考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  378. 矢山有作

    ○矢山委員 長官、私の言うのがわからぬのかね。そのことは後でもう一度聞こうと思ったのです。  だから、国際情勢についての見方が計画大綱の当時と今日とかなり変わってきておるという見方の説明はあったわけです。ところが、いまの時点で計画大綱を変えなきゃならぬということにはなってない、こうおっしゃっているわけでしょう。だから、計画大綱を変えるような国際情勢の変化というのは、どういう変化があった場合にこの計画大綱を見直さなきゃならぬと思っているのかと言っているわけです。
  379. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来幾つかのお話が出ておりますけれども、当時挙げられておりました五つの条件でありますとか、その後のいろんな、特に極東地方におきますソ連の増強でありますとか、そういうようなこと一つ一つを取り上げて、いま「防衛計画の大綱」の改正を考えなければならないというふうに考えておらないわけでございまして、そういう意味で、まだ「防衛計画の大綱」を見直すかどうかという差し迫ったような情勢の変化ではなかろうというふうに見ておるわけであります。
  380. 矢山有作

    ○矢山委員 それはあなた答弁になってないんだな。だから、具体的にどういうふうな変化があったときに見直しを必要とする国際情勢の変化と見ておられるかということを言っているわけですよ。あなたいままで説明されているでしょう。
  381. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、いま見直さなければいけないような差し迫った変化がないと判断しておりますので、お尋ねのような点は、具体的に見直さなければいけないという判断をするような情勢の変化がまだ起こっておりません段階でどういうふうなものだというふうには——ですから、仮定的な話でございまして、ちょっといまどういう場合というふうには申し上げにくいわけであります。
  382. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、申し上げにくい申し上げにくいと言っておられるけれども、この間どこかの委員会で言っているのじゃないですか。見直しをするような国際情勢の変化というのはどういうような変化なのかということで、日米安保体制の継続、これがどうなっておるかという問題。米ソ両国は核戦争、大規模な武力紛争を回避しようとする、その状態がどうなるのか。中ソ対立は本格的に解消しないと見ておるが、それがどうなっていくか。米中関係の調整が進む、この点がどうなるのか。朝鮮半島は現状で推移し大きな武力紛争は起きない、こういうふうに見ている、これがどうなって変化してくるのか。こういうものについて変化があった場合には計画の大綱を見直しをしなければならぬと思う、こういうことを言われているのじゃないですか。どうしてそれをはっきりおっしゃらぬのですか。
  383. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま防衛白書に書いてございます五つの条件をお示しになったわけでございますが、いずれもそれらの条件が、私どもはまだ差し迫った脅威を生ずるような情勢に変化はしていないと思っているわけでございます。ですから、差し迫った情勢の変化があった場合に大綱を見直すかどうかということを考えるということでございます。
  384. 矢山有作

    ○矢山委員 だから局長、あなたが頭が悪いのかわしが悪いのか知らぬけれども、私はいま差し迫った情勢の変化が起こっておるか起こっておらぬかの判断をあなたに求めているのじゃない。見直すときの変化というのはどういうものなんですかと言っているわけです。それに対してあなたは、私が先ほど言ったような五つの問題に分けて、こういう問題について変化が起こればこれは国際情勢の大きな変化だとして「防衛計画の大綱」を見直さなければならぬだろう、こう言って説明されているじゃありませんか。どうしてそのことをここで説明できないのですか。まあこんなやりとりをしておってもしようがない。そういうふうにあなたは説明されておる。その説明をされた上で、いまおっしゃったような国際情勢の変化なりそのときの国内の状況なりあるいはまた計画達成の状況なり、この三つの条件を考えて、そのときには見直さなければならぬかもしれぬ、こうおっしゃっているわけですよ。私の方から言ってあげなければならない、あなたの答弁したことを。しまうがないじゃないの。  それで、次に聞きたいのは、あなたは、「防衛計画の大綱」の見直しをする場合に、いま三つの条件を挙げられた。その三つの条件というのは、いまあなたの答弁では、どれか一つが充足されたときに計画の大綱を見直しをするというのではなしに、その三つの条件を総合的に考えて見直しをしなければならぬようなことになれば見直しをする、こういう意味ですね。
  385. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのように考えております。
  386. 矢山有作

    ○矢山委員 そこでお伺いしたいのは、この「防衛計画の大綱」の達成について関連を持ってくるのですが、現在の中期業務見積もりはいつごろを目途として達成をされるのかということです。
  387. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在の五十三中業は五十九年をめどに作成しておるものでございます。
  388. 矢山有作

    ○矢山委員 五十九年をめどに作成をしておるということは承知をしております。ところが、明年度の予算編成について大平・カーター会談等々中心にしながらアメリカの方から防衛力の増強を速やかにやれというようなことで、政府が持っておる計画と言われておるようでありますが、これは大体中期業務見積もりを指すのだというふうに理解されておるところです。その中期業務見積もりを早期に達成するために五十六年度の予算を別扱いにやって要求しているわけですから、そういう形でいった場合に、当初計画は五十九年度達成ということであるけれども、別枠予算を組んだりして早期に達成しようとする場合に一体いつを目途にして達成されようとするのか、こういうことを聞いておるわけです。
  389. 塩田章

    ○塩田政府委員 やはり五十九年度達成を目標にしておるわけでございまして、いま先生のおっしゃいましたことは、私ども早期達成ということを言っておるわけですが、それは中期業務見積もり全部を早期達成するのではなくて、主要な装備品につきまして早期に達成を図りたいということで、そういう配慮をした来年度予算案をお願いしておりますけれども、そのことは別に中期業務見積もり全部が五十九年じゃなくてもっと早くなるというものではございません。
  390. 矢山有作

    ○矢山委員 それはこれから後重要になってきますからだめ押しをしておきますが、中期業務見積もりのうち主要なものについては早期に達成したいが、全体の達成は五十九年度だ、こういうことですね。
  391. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのとおりでございます。
  392. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると「防衛計画の大綱」の達成は大体いつを目途とされておるのですか。不思議なことに、計画をつくったときには大体計画の達成時期等が一応考えられておるはずだけれども、どうもこれについては計画達成時期というものが全然考えられておらぬようなんですね。そこで、一体この大綱の達成はいつごろを目途に考えておられるのかということです。
  393. 塩田章

    ○塩田政府委員 「防衛計画の大綱」をつくりました後、いまの五十三中業が最初の中期業務見積もりでございますが、その中期業務見積もりを予定どおり五十九年度までに達成したとしましても、「防衛計画の大綱」にはまだ達しません。そこで、それではいつごろかということでございますけれども、これは五十六中業に、来年から次の中業にかかるわけでございますが、その作業をやってみないとわかりませんけれども、いまの段階で何年ごろには達するであろうとかいうことを申し上げられる段階まではまだ至っておりません。
  394. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、五十六年度中業でも達成の見込みは立たぬ、そういうふうにはっきり理解していいのですか。これは防衛庁長官から答えてくれませんか、あなたこの間ちょっと言われている面もあるから。
  395. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十六中業がまだ全然作業に入っておりませんので、五十六中業になっても達しないであろうとかあるいは達するであろうとか、そういうことを申し上げる段階でないというふうに申し上げておるわけでございます。
  396. 矢山有作

    ○矢山委員 それは無責任な話ですね。「防衛計画の大綱」をつくっておいて、そしてその達成を目標にして五十三中業をつくった、その五十三中業が達成されるのは五十九年度だ、これから五十六年度中業にかかっていくのだ、ところが五十六年度中業で達成できるのかできないのか一切わからない、こういうのでは、防衛担当の者としてはちょっと無責任じゃないかと私は思うのです。大綱をつくったらいつごろを目途に達成されなければならぬとか、達成させたいとか、そのことがなしに計画をつくって、いつやら全然わかりません、そういう無責任答弁というのはないのじゃないですか。
  397. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛計画大綱には期限が付せられていない、これは御指摘のとおりでございます。この大綱の線を目標にいたしまして、その範囲内で現在防衛庁といたしましては五十三中業を五十五年度から五十九年度にかけて進めているわけでございます。これは防衛庁限りの見積もりでございますので、毎年度の予算折衝の中で具体化しないと幾ら実現するかはわからない。まだ五十五年度予算が一年決まっただけでございまして、これから五十六年度の概算要求を私ども出したばかりである。そういう段階で、私どもといたしましては、主要装備その他これに関連を持ちます後方の整備をできるだけ早く実現したいということで努力していることは事実でございますが、まず五十六年度の予算にどれくらい盛り込まれるか、これも見なければいけませんし、また五十七、五十八、五十九にかけての予算を見ないと、いま防衛庁の計画している現在の中業自身がいつまでに実現するか、確信を持って時期を申し上げる時期ではないわけでございます。そして来年は、三年目に直すということでございますので、また来年は五十六年中業の作業にかかるわけでございます。そういったようなろアップを踏んでおりますので、時期を明確に申し上げることができませんのはまことに残念でございますが、できれば御協力を願って早く実現できるようにさせていただきたいということを念願している次第でございます。
  398. 矢山有作

    ○矢山委員 長官、それはわかるのですよ。それは予算が決まってみなければわからない、これはそのとおりです。しかし防衛庁としては、計画大綱をつくった以上は、いつ達成されてもいいのです、三十年先になっても五十年先になってもいいということではないのでしょう。少なくともあなた方が言われる現在の国際情勢を見ながら防衛力整備を急ぐという姿勢をとっておられるのだから、それならその中で防衛庁限りとして、大体計画の達成というものをいつごろの時点にしたいんだということは気持ちとしてはあるんじゃないですか。それなしに大蔵省に予算要求するのですか。いつでもよろしゅうございます、少なくても多くてもよろしゅうございますというような予算要求をやるのなら、何もねばり込んで、九・七%で別枠扱いをして予算をふんだくろうとする必要はないわけです。
  399. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま長官が申しましたように、いま来年度の予算要求を出して、先ほど私が申し上げたように、その中には早期達成ということを配慮して予算をお願いいたしております。それがどの程度つくかまだわかりませんけれども、それをまず努力しまして、引き続き五十七年度以降も早期達成に努力をして五十三中業をなるべく速やかに達成して、かねてから申し上げておりますように、「防衛計画の大綱」の水準に早く到達したいということを申し上げているわけであります。
  400. 矢山有作

    ○矢山委員 幾ら言っても時期を明示されぬというなら仕方がありません。そのように防衛庁というのは出たとこ勝負で、無責任な態度で防衛力整備に取り組んでおるのだということを反面裏づけるような形になるわけです。計画を立てた以上は、普通なら大体いつごろを目途にして達成したいというつもりで取り組んでいくというのが私は真剣な姿勢だと思います。それがないとおっしゃるのなら仕方がありません。二十年かかろうと三十年かかろうと構わぬというなら、この財政の厳しいときに別枠扱いをするというような無理な注文を財政当局になさらぬことです。そういうことをなさるのなら、少なくともいついつまでには達成させたいという気持ちがそこになければならぬはずです。もう九・七%別枠扱い、またそのときの情勢によって追加要求する、そんなことやめますか、そんな無責任な姿勢なら。
  401. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁としての希望と申しますか、ねらいを言えという趣旨のお尋ねでございます。残念ながらこの「防衛計画の大綱」に期限が付せられておりませんので、明確なお答えはいたしかねるわけでございますが、現在私どもが進めております五三中業が五十五年から五十九年、これが完全に達成されましたときには大綱の線に大分近づいてくるわけでございます。主な項目について説明せいと言われれば、見通しについては御説明する資料も用意しているわけでございます。そういう意味におきましてはだんだん近づくはずである。そういう意味で私ども五十六年度の概算要求には力こぶを入れているわけでございますので、御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  402. 矢山有作

    ○矢山委員 いま、あなたとうとうおっしゃったじゃないですか。資料を用意しておると言うんでしょう。達成を図るためにどういうふうにやっていくかという資料を用意しておると言った。それだったら、その資料をあなた出したらどうですか。
  403. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねに対しますお答えでございますが、現在進めておる中期業務見積もりが実現した場合と防衛計画の線と比較した場合にどういう姿になるか、これは全部の項目にわたってはなかなかできないわけでございますが、主な項目についてはお尋ねがあればお答えをする資料を用意している、こういう意味でございますので、お尋ねがあれば御説明させていただきたい、こう思います。
  404. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは私の質疑の時間の関係もありますから、その用意をされておる資料を出してもいいということですから、ぜひ出してください。  それだけの用意ができている。つまり五十三中業を達成したときに「防衛計画の大綱」との関係がどうなってくるのか、どの程度大綱が充足されてくるのかということもわかっているはずだから、そうなれば防衛計画大綱の達成の時期というものもおのずからわかるんじゃないですか、あなた方の気持ちとして。
  405. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま長官お答えしました資料はここにございますので、お答えさせていただきます。  中期業務見積もりが達成された場合に、規模的に「防衛計画の大綱」別表の水準にまだ達しないものを申し上げますと、海上自衛隊の陸上対潜機部隊が、大綱別表では十六個隊であるのに対しまして中業完成時には十四個隊で、二個隊まだ足らないということになります。それから対潜水上艦艇は、約六十隻と大綱になっておりますが中業が完成したときには五十八隻でございますから、二ないし三隻足らない。それから海上自衛隊の作戦用航空機約二百二十機と大綱の別表になっておりますが、中業完成時では約百八十機でございますから約四十機足らない。それから航空自衛隊について言いますと、作戦用航空機が大綱の別表では四百三十機になっておりますが、中業完成時では約三百五十機でございますから約八十機足らないということで、大綱別表の規模と比べまして、中業完成時に達しないものは以上のようなことになろうかと思いますが、それは規模的な面でございまして、防衛力の質という面につきましては、国際的な軍事技術の動向等も関連をしまして流動的な要素がございますので、何%達成とかいうふうにパーセントであらわすことはむずかしいと思います。いま申し上げたのは規模的な数量的にあらわせるものを申し上げたわけであります。
  406. 矢山有作

    ○矢山委員 それは後で資料で下さいね。
  407. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げた資料でございますれば結構でございます。
  408. 矢山有作

    ○矢山委員 そこまで「防衛計画の大綱」と五十三中業が達成されたときの状態というものが明らかにできるんなら、それを踏まえてさらに「防衛計画の大綱」をいつごろに達成したいという気持ちがあるのかということも、もうそこまで来れば言えますね。
  409. 塩田章

    ○塩田政府委員 次の五十六中業の作業に入っておりませんので、いまの段階では、いつというふうには申し上げる段階ではございません。私どもの気持ちとして、早く達成したいという気持ちがあるということだけは申し上げられますけれども、いつごろというふうには申し上げる段階ではございません。
  410. 矢山有作

    ○矢山委員 ここだけにひっかかっておっても仕方がないから先へ移りますが、ここまで話が進んできて、なおかつ防衛庁として「防衛計画の大綱」をいつまでに達成したいんだということが言えないというのは、よほど秘密主義というのか、よほど言いたくないのか何か知りませんけれども、まさにこれじゃ先ほど出ておったシビリアンコントロールも何もないですな。そのぐらいなことは、計画を自分たちでつくったんだから、それをどうやって実現さしたいということぐらいは、やはりおっしゃった方がいいですよ、論議をする上には。  そこでお聞きしたいのですが、御存じのように財政難です。その財政難のときに防衛費だけは九・七%で、さらに今後状況によったら追加要求するんだ、追加要求も認めようというようなことで別枠の扱いになっているわけです。ところが私は、こういう別枠扱いをやるということは、「防衛計画の大綱」から考えて、その大綱の線を踏み外したことになるのじゃないかという気がするんですよ。なぜかと言うと、「防衛計画の大綱」の中にこういうことを言っているでしょう。「その具体的実施に際しては、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ」行うとなっているわけです。そうすると、御承知のように大蔵当局がゼロリストなどと称するものまで発表して財政の膨張を抑えよう、緊縮財政に持っていこうとしておるこの財政難のときに、こういう別枠扱いまでやって予算を組む。いま要求しておる段階ですから、認めるかどうかわかりませんが、認めるとするなら、これは「防衛計画の大綱」の立場を踏み外すということになるのじゃないでしょうか。これは大蔵当局にも聞きたいところなんですが。
  411. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまもお話がございましたようにまだ要求の段階でございますけれども、私どもは、いま先生の御指摘の「防衛計画の大綱」を踏み外したことにはならないというふうに理解しておるところでございます。
  412. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 「防衛計画の大綱」がそのときどきの経済財政事情との調和をとってやれというふうに書いてありますけれども、ちょっと先に進み過ぎるかもしれませんが、われわれ防衛庁といたしましては「防衛計画の大綱」がなるべく早く達成されるようにという姿勢を持っております。  それから、財政事情が非常に厳しいのでシーリングの枠が低くなりそうだ、しかしながら一方において、五十五年度以前の国庫債務負担行為の歳出化あるいは油の値上がり等、当然増的経費が非常に多いので、われわれの方といたしましてはこの七・五%程度と想定されるシーリングではとても大変だということで特別の配慮を求めた。概算要求の段階ですから、先生がおっしゃいましたように、これから査定を経ませんと、経済財政事情との調和をとったかとらぬかという問題はまだ申し上げるのは早いのですけれども、少なくともシーリングの段階では、大蔵省と話し合いをいたしまして、その後で閣議の了解を得て、特別といいますか、シーリングの特別配慮をしていただいたということでございますので、いまの段階で「防衛計画の大綱」を踏み外したということはちょっと言えないのではなかろうかと思います。
  413. 矢山有作

    ○矢山委員 それは私が聞いても、あなたの方で、そうです、「防衛計画の大綱」を踏み外しましたとは言わぬでしょうね。私もまた正直にそういうふうに言うと思って聞いてないのだから。そういうふうに逃げるだろうと思って聞いていたのです。しかし、だれが見たって、これだけ財政が厳しいということが喧伝されているわけでしょう。その中で他省庁の経費は対前年度比七・五%に抑えられた。防衛庁のシーリング枠だけは九・七%認められて、その上に情勢の変化で追加を要するならそれも考慮しようということになったということは、これはだれが見たって、「防衛計画の大綱」で言っておる「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図り」という点は、防衛庁はそうでないとおっしゃっても、やはり逸脱しておるなということになりますよ。他省庁の予算のシーリングと防衛庁のを比較してごらんなさい。はっきり出てくるじゃありませんか。なぜ防衛費だけを別枠扱いにしなければならぬかということになるわけです。  そこで、私が幾らこれを言っても、そうです、踏み外しましたとは言われぬだろうから、次に移りますが、聞きたいのは、それほどまでしてなぜ防衛費の増加を図る、つまり防衛力の増強を図っていかなきゃならぬのか、その理由はなんですか、長官
  414. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  政府は、従来から「防衛計画の大綱」に留意しつつ、装備の更新、近代化等を中心に防衛力の質的改善に努めてきましたが、防衛庁としましては、最近における厳しい国際情勢にかんがみると、同大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成することが必要であると考えたのでございます。しかし、五十六年度概算要求に当たり、財政再建の観点から要求枠いわゆるシーリングが従来にない厳しいものとなることが見込まれ、一方では来年度の防衛予算において歳出化等の当然増的経費が多額に上ることとなるため、防衛庁の概算要求のあり方について特例措置を求めたものでございます。  以上のような情勢を踏まえまして、概算要求枠の決定に先立ちまして、この問題について大蔵大臣と素直な意見交換を行ったのでありますが、御承知のとおり、従来から概算要求に関する閣議了解において、各種年金の平年度化増の経費、政府開発援助経費等幾つかの経費については、その経費の性質に応じたシーリング上の特別な配慮がなされてきております。今回は、これら特例の一つとして、国際条約の実施に伴い必要とされる既国庫債務負担行為等の歳出化に係る経費についても、経費としての義務的性格がきわめて強いことに着目しまして、一部原則枠を超えて要求し得るという特別な配慮がなされることになったのでございます。  以上が経過のあらましでございます。
  415. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、これほど財政難のときに、防衛力の増強を急いで特別扱いまでさせなければならぬというその背景にあるのは、厳しい国際情勢だ、こういうことなんですね。その厳しい国際情勢というのは、防衛白書にも指摘しておりますように、極東ソ連軍の増強初め、わが国に対するソ連の潜在的脅威がふえておる、増加しておる、こういったことも含まれておるわけですね。
  416. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。そのとおりでございます。
  417. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、これと「防衛計画の大綱」との関係はどうなるかということです、いまのようなお考えと。というのは、申すまでもなしに、「防衛計画の大綱」の基盤的防衛力構想、これは、「防衛計画の大綱」で考えられておるのはいわゆる基盤的防衛力構想と言われておるものだと思いますが、それとの食い違いができてくるんじゃないでしょうか。いまのような形で国際情勢が厳しくなった、つまりソ連の潜在的脅威が増した、だからそれに対応して防衛力の強化をやっていくのだ、こういうことになれば、基盤的防衛力構想と称しておる防衛計画大綱の立場とは食い違ってくるように思いますが、いかがでしょう。
  418. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  わが国防衛は、「防衛計画の大綱」において述べておりますように、わが国みずから適切な規模の防衛力を保持するとともに、米国との安全保障体制を堅持することによってすきのない防衛体制を築き、もって侵略を未然に防止することを基本としており、限定的かつ小規模の侵略に対しては原則として独力で排除し、それ以上の侵略に対しては、米国と協力してこれを排除することといたしております。  いわゆる基盤的防衛力構想とは、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援態勢を含めて、その組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼として、平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略に対し、原則として独力で対処することができ、さらに、情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときは、円滑にこれに移行することができるよう配意された防衛力を保持しようとする考え方であり、このような考え方は現在でも変わっておらないわけでございます。
  419. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、そんな事務当局に書かせたものを読まなくたってわかるじゃありませんか。  「防衛計画の大綱」で言っておる、いわゆる俗に基盤的防衛力と言っておりますね、それは要するに、いまあなたがお読みになったように、「平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とする」防衛力整備でしょう。つまりこれを基盤的防衛力と言っているのです。それは、どういう脅威ができたからこの脅威に対応して防衛力を整備するんだという考え方とは違うでしょう。あなた方はいま、なぜこれほど防衛力整備を別枠扱いまでして急ぐのだと聞いたら、その背景にあるのは厳しい国際情勢だ、具体的に言うなら極東ソ連軍の増強その他日本に対する潜在的脅威が高まっておるという背景があるのだ、だから防衛力整備を急いでおるのだ、特別枠までとるような予算折衝をやったのだ、こう言っているのでしょう。そうすると、その考え方は相手の脅威に応じてこちらの防衛力を整えるのだという考え方でしょう。それは明らかに「防衛計画の大綱」の立場とは違いますよ。
  420. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  この大綱が策定されました当時の白書におきましても、脅威を前提としない防衛はあり得ないという趣旨のことは明記されておるわけでございます。ただ、「防衛計画の大綱」におきましては、脅威の量のみにとらわれずに、むしろ限定的、小規模の侵略に対処できるように限定的かつ小規模のものを整備する、特に質的な整備を図るというふうに書いておるわけでございまして、脅威の量がふえたからすぐそれに連動するというような構想でないことは御指摘のとおりでございます。しかし、質的な改善をできるだけ早く整備するように、先ほどのお話のように期限は明記されておりませんが、そういった趣旨のものでできておるわけでございまして、私どもは大綱の線をできるだけ早く整備するように現在努力しておる、こういうことでございますので、決して矛盾はないと思っております。
  421. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、矛盾があることを自分の答弁で示しておるじゃありませんか。「防衛計画の大綱」に言う防衛力の整備は、そのときどきの脅威の量に対応して防衛力を整備することじゃないのだとあなた自身でおっしゃっている。「防衛計画の大綱」における防衛力整備というのは、あなたのおっしゃるように、そのときどきの危機の量に対応して防衛力を整備することじゃないのですよ。だから、基盤的防衛力整備と言っている。そのときどきの危機に応じて防衛力を整備するというのは、専門用語をよく使っておられるところによると、所要防衛力整備構想です。大綱の防衛力整備の基本的な考え方とは明らかに違うのですよ。違うということをあなたの答弁の中でみずから指摘されているじゃありませんか。そんな答弁をなさっていて違いませんということにはなりませんよ。
  422. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの「防衛計画の大綱」がいわゆる基盤的防衛力という考え方でつくられていることは、先生おっしゃったわけですが、そこでできている大綱の水準にもまだ達していないわけであります。私どもは、最近における潜在的脅威の増大ということを念頭に置きながら「防衛計画の大綱」の水準の線に早く達したいということを申し上げておるわけでございまして、基盤的防衛力の考え方について、先ほど大臣から現在でもそれを変えているわけではないと申し上げたのは、そういう意味でありまして、その前提に立って、そこで決められた「防衛計画の大綱」の水準にもまだ達していない、そこで早く達したい、こういうことを申し上げておるわけであります。  なお、いまお話の出ました所要防衛力構想といいますものは、平時から限定かつ小規模を超える通常兵器による侵略に対しても、独力で有効に対処できる防衛力を整備しようという考え方でありますけれども、そのような事態に対しましては、米国と共同して対処するとしておるところでございまして、「防衛計画の大綱」において所要防衛力の構想を取り入れていないということは、そのとおりでございます。基盤的防衛力の考え方でできておりまして、それによってできておる水準にもまだ達していない、それで早く達したい、こういうことを言っておるわけであります。(「少しこんがらがってきたんじゃないの」と呼ぶ者あり)
  423. 矢山有作

    ○矢山委員 まさにいまお話が出たように、どうも少しこんがらがってきましたね。所要防衛力構想というものは、何も日米安保体制を離れて独力で対応する防衛力整備なんて、そんなことじゃないのでしょう。所要防衛力構想というのは、いままでわれわれが聞かされておるのは、そのときどきの脅威の量に応じてそれに対応するような防衛力整備なんだ。だから私どもは、いま長官のおっしゃったような、ソ連の潜在的脅威が増したから、防衛力整備を急がなければならぬのだというような考え方での防衛力整備ということは、「防衛計画の大綱」に言う基盤的防衛力の整備とは考え方が違ってきておるな、こう言っておるので、後であなた方の答弁されたのをよく読んでください。あなた方自身だって、ちょっとおれの答弁おかしいと思われますよ。  そこで、大蔵省見えたようですから、大蔵省に聞きますが、いま私が大蔵省に聞きたいのは、あなた方はゼロリストまで発表されるほど財政が厳しい、こう言っておられるときに、防衛費だけについてはシーリングにおいて別枠扱いにされたわけですね。査定はどうなるか知りませんよ。少なくともシーリングにおいて別枠扱いにされた、そのことは「防衛計画の大綱」で言っておる立場とは違うのではないか。では「防衛計画の大綱」でどんなことを言っておるかというと、防衛力整備の具体的な実施に際しては、「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ」防衛力整備をやる、こうなっておる。したがって、シーリングにおける防衛費の取り扱いは、この大綱の立場から言うと矛盾がありゃしませんか、大蔵省はどう受けとめておるのですか、こう言っておるわけです。
  424. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お答えいたします。  まず防衛費だけについてシーリングの特別枠を設けたという点でございますが、これは先生も御承知だと思いますけれども、厚生年金等の各種年金の増分につきましても同様に特別扱いをいたしておりますし、石特会計あるいはODAについても例外を設けておるわけでございます。それから防衛費について申し上げますと、今回は防衛費であるがゆえに特別扱いをしたということではございませんで、全体のシーリングが原則率が低くなっておるということの中で、以前の年に比べまして国際条約等の実施に伴って必要となる過年度の国庫債務負担行為等の歳出化が非常な大きなウエートを占めておるものですから、要求官庁としてそれを下げて削って出してこいということまでは酷であろうということから、その分が結果として防衛庁において五百五十二億の増に、例外扱いという形になったということでございまして、あくまでも義務的な経費を要求官庁において要求することさえもできないという形ではいかがかということから、これを経費の性質に着目して例外扱いとした結果防衛費が九・七%という増加額、要求枠になったということでございます。  なお、お話の中にも査定の話はどうなるかわからぬぞと言われましたけれども、まさに「防衛計画の大綱」で申しておりますのは、年々の予算を決めます際のことを述べているものと理解しておりまして、もちろん今後の査定の過程におきまして、われわれ他の経費とのバランスを考慮し、財政事情を考慮しながら適切な規模に決定してまいりたいと鋭意努力しておるところでございます。
  425. 矢山有作

    ○矢山委員 もう大蔵省答弁はいいけれども防衛費について特別扱いをしたことと「防衛計画の大綱」で私がいま続み上げたこととの関連を私は聞いたわけです。その関連というのは、「防衛計画の大綱」で示しておる点から見て少し外れているんじゃありませんか、こういうことを聞いたんでありまして、あなたの説明をいま聞いたんじゃないのです。しかし、時間がかかるからもういいです。  そこで、その次にもう一つ聞きたいんですが、これも恐らく否定するでしょうが、防衛白書を見ると、「防衛力の整備」のところで「防衛力整備には長い期間を要するため、国際情勢の急激な変化があった場合にも、すぐそれに対応して急速に防衛力を整備することは容易ではない。したがって、平素から将来のわが国防衛力のあるべき姿を検討しつつ」着実に整備を図っていく、こういうふうにおっしゃっておるんです。これも、私は先ほど申し上げたと同じように「防衛計画の大綱」に言う基盤的防衛力整備という立場から判断をした場合に、そのときどきの脅威に対応して防衛力整備をやるという考え方に変わってきておるというふうに私は理解をしておるわけです。
  426. 塩田章

    ○塩田政府委員 その点はまさに私は逆に基盤的防衛力の考え方の一つの重要な点ではないかと思います。というのは、いわゆる基盤的防衛力の考え方は、先ほども話が出ましたけれども、平時における云々ということでいろいろ書いてございますけれども、すきのない平時の警戒態勢を持ち、いわゆる限定的、小規模なものにみずから対処するということと同時に、情勢の変化に応じて新しい態勢に移行し得る態勢ということをうたっておるわけでございまして、そのためにはいろいろな機能を有しておかなくてはならないという考え方でございます。すべての面についてすきのない機能を持った態勢を考えていきたいというのがいわゆる基盤的防衛力構想の一つの柱でございまして、そういう点からいきますと、いま御指摘の点はまさにそういう考え方に基づくものであるというふうは私は思うわけであります。
  427. 矢山有作

    ○矢山委員 私どもは、今度の防衛力の増強の姿勢、それから防衛白書に示されておる防衛力整備に対する考え方、これらは従来の防衛計画大綱に言う基盤的防衛力整備という考え方から大きく転換をしてきた、そういうふうに理解しております。しかし、この点においてはあなた方の意見とかみ合わない。  そこで、次にお伺いしたいのは、これほど財政が厳しくて「防衛計画の大綱」に問題を残しながら防衛力の増強を急がなければならぬ、その背景は、やはりアメリカ側からの強力な防衛力増強に対する要請というものがあるのでしょうね。私どもそう理解せざるを得ぬのです。大平・カーター会談を中心としてその前後の日本政府とアメリカ政府関係者とのやりとりを見ていると、そういうふうに思われてならぬ。そこで私が申し上げたいのは、防衛問題というのはアメリカからとやかく言われてやる問題じゃないと思うのです。特に最近アメリカの言っていることは、中業の繰り上げどころの話じゃないので、シーリングのときに九・七%認めた、ところがこれからの情勢の変化に応じて追加要求もあり得るということについて一体どうなんだというようなことまで立ち入って、この間もコマーという国防省の次官が来ていろいろ言っているようですが、まさに内政干渉に類するようなことまでアメリカは日本の防衛力整備について口を出してきている、私どもはそう思うのです。それだけの強い圧力、そういう中でこの防衛力の整備が考えられておると私ども理解しますが、私はこの防衛問題というのはアメリカからとやかく言われてやる話じゃないと思うのです。あなた方はよく、そうじゃない、言われてやるんじゃないんだ、自主的判断だ、こう言うのですが、しかし、自主的判断だと言いながらなぜアメリカはあれだけ強力にあらゆる機会をとらえて、予算の問題に触れるようなことまで言いながら防衛力の増強を求めるか。この姿勢を見ておると、やはりアメリカの強い要請で動かされておると私どもは見ざるを得ないわけですよ。  私は、わが国防衛というのは、わが国の地形、人口、産業の分布状態、そういったわが国の実情に即して、どういう防衛力を整備したら一番効果的なのかという自主的な判断ですべきだと思うのですよ。私どもは基本的には防衛力整備というのは反対ですよ、反対ですが、やるとしてもそういうことでなければ、アメリカが要求するからその要求に合わせた軍事力整備というのじゃ、日本の防衛ということから言うならいささか間違いじゃないか、こういうふうに私は思うのですけれども、どうなんですか。
  428. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  わが国防衛わが国自身の努力によって国力、国情に応じたものでなければならない、これはまことに御説のとおりでございまして、国防の基本方針にも明記されているところでございます。と同時に、わが国が単独ですべての侵略に対処することもむずかしいわけでございますので、わが国はみずからの適切な規模の防衛力とともに米国との安全保障体制を平和と安全の基礎としており、日米安保体制の信頼性の維持及びその円滑な運用体制の整備を図ることは重要なことであると考えておるのでございます。  そこで、米国から西側自由陣営の一員としてわが国防衛力を着実かつ顕著に増強するよう希望が表明されているのは事実でございます。米国からの希望表明については、日米安保体制を堅持するとの基本的態度のもと、米国政府との間で十分の意思疎通を図りつつ、わが国自身の問題として真剣に対応していくべき問題であると考えております。政府といたしましては、現下の厳しさを増しつつある国際情勢、西欧諸国の行っている努力、日本の財政経済事情等を念頭に置きながら、わが国の自主的判断に基づき、なし得る限りの防衛努力を積み重ねていく所存であります。
  429. 矢山有作

    ○矢山委員 あなたの答弁答弁として承っておきますけれども、私どもは、日米間のわが国防衛力整備をめぐるやりとりをずっと系統づけて見ておりますと、これはやっぱりアメリカの強い要請で動かされておるというふうにしか考えられないわけです。そこはまた見解の相違ということにしておきましょう。  そこで、外務省にちょっと聞きたいのですけれども、今度の、この八月ですか出された外交青書を見て、私は従来の外交の基本的な方針というものがいささか変わってきているのじゃないかなという気がしておるのですけれども、これはどうなんでしょう。  というのは、あれを読んでみますと、ソ連の一貫した軍事力の増強を説きながら、世界の政治、軍事面での変化を述べ、米国及び西欧諸国を初めとする自由主義諸国間の一層の団結を力説し、わが外交の使命は、わが国の平和と安全を確保し、自由と民主主義という基本的な価値を守ることだと主張しておりますね。これは明確に西側の一員としての日本の立場を鮮明にしたものだと思うのですが、こういう考え方でいくと、従来、福田さんが盛んに言っておった全方位外交とかあるいはいかなる国とも敵対しないとか、そういった考え方とは多少違ってきたのかなというニュアンスを感ずるのですけれどもね。
  430. 秋山光路

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、従来の全方位外交というものと最近の青書にあらわれている主張とが変わってきたのではないかというお話でございますが、従来ともわれわれが考えておりました外交の基本というものは、先生も御存じのとおり、平和外交、軍事大国にならず、どの国とも友好親善を進めていくということには特別の変わりはありません。ただ、わが国の安全の維持というものからしまして、おのずからそこに国と国との関係は濃淡があると私は考えておりまして、そういう意味合いでわれわれと社会体制を同じくする自由主義陣営、米国を初めとする諸国との関係はおのずから緊密になってきたということだと思います。
  431. 矢山有作

    ○矢山委員 それはもちろん、日本の外交というのは日米関係を基軸にしていくということが一番基本になっておりますけれども、しかし、いずれにしても、全方位外交ということを盛んに強調されておったし、そのことはいかなる国とも敵対しないという基本的な考え方があったと思うのです。しかし、私ども外交青書を読んで感じたところでは、私がただいま言ったようにいささかこれは変わってきたなという印象を受ける、こういうことで申し上げたわけです。  そこで、ひとつお聞きしたいのですが、ソ連のアフガニスタン侵入でアメリカは対ソ制裁措置をやっていますね。西側陣営、同盟諸国にも同調を求めておるわけですが、それに対して西欧諸国の足並みというのは、必ずしもアメリカが要求しておるように、一致をしてそれに全く同調するという形ではないように聞いておるのですけれども、その点どうなんですか。
  432. 秋山光路

    ○秋山政府委員 ただいまの御質問お答え申し上げます。  それぞれの国によりまして立場等が違いますから、いろいろ濃淡のある外交方針がとられていることは事実であります。
  433. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで私は、やはりそれぞれの国は、アメリカが何と言おうと、基本的にはその国の国益というのですか、それを踏まえて、まるでアメリカに同調する、そして同一歩調をとるというのでなしに、アメリカの立場理解はしながらもやはりそれぞれの独自の立場で対ソ外交というものをやっておると思うのです。日本の場合にも、やはりそれがいまこそ非常に重要なんじゃないか。というのは、私は非常に危険だと思うのは、最近だったと思いますが、たしかアメリカがソ連に対する穀物禁輸を解いたとか解くとかいうことが言われておりますね。米ソ間というのは、そのときどきの情勢の判断によったら、日本に一一相談しなくても、米中の国交正常化に踏み出したように、わが国の頭越しにソ連との関係を修復しないという保証はないと思うのですよ。そういうことになったときに日本は一体どうするのですか、取り残されてしまって。そういうことを考えると、いかにアメリカが要求しようと、やはりわが国の独自の国益というものを踏まえての対ソ政策というものを考えていくべきだ。もっと言うなら、私は、いまこそソ連と積極的に接触していく、これが外務省の平和外交という立場じゃないかと思うのですが、それをどうも外交青書を見ると、盛んに、ソ連の脅威という言葉は使っておりませんけれども、ソ連の脅威を示唆するようなことを言っているし、何か外務省の安全保障政策企画委員会というのがつくられておる、そこでの発表された文書を見ても、やはりそういう点が強調されておるようですけれども、私はそれはむしろ日本外交のあり方としてはまずいんじゃないか。繰り返しますが、いわゆる平和外交に徹して、いまこそ対ソ関係の緊密化を図っていく努力をわが国の独自の国益という立場を踏まえて展開するというのが本来のあり方ではないかと思うわけです。
  434. 秋山光路

    ○秋山政府委員 対ソ外交方針といたしましては、友好親善を独自の立場から進めるべきではないかという御指摘は、私は全くそのとおりであると思います。ただ、先生御案内のとおり現在の日ソ間はきわめて冷えております。この関係が冷えている理由は、一に私どもはソ連側にある、こういうふうに考えておりますが、大きな隣国でありますから、われわれとしては、何とか友好の度合いを進めていきたいという念願は変わっておりません。
  435. 矢山有作

    ○矢山委員 まあ冷えておるといえば冷えておるのですね。冷えておるからほうりっ放しにするとか、冷えておるからもっと冷やそうというのではなしに、冷えておるのをさらに冷えの度合いをなくしていく、そして暖かい方向に持っていく努力というものを、私は何も日本の主張を譲れと言うのじゃないのですよ、日本独自の主張があるなら主張してもいいけれども、そうする中で、やはり接触は深めていくべきだ、そしてできるだけ関係修復に努力していくべきだ、こういう立場で申し上げたわけであります。  そこで、時間の制約がありますので、次に移ってまいりますが、一つお伺いしたいのは、防衛庁長官、これも九月八日の自民党研修会でのあなたの発言なんですが、非武装中立政策が日本の防衛力整備の上で支障になっているんではないかという質問がその参会者の中から出された。その質問に答えて長官が、社会党の——社会党のという言葉を使われたか使われぬか知りませんよ、社会党の非武装中立政策をきわめて非現実的な考え方なので絶えず反省、見直しを求めていきたいというふうに答えられたということを、私は新聞で報道されたのを見たのですが、これはどういう見解でそういう発言をなさったのかちょっとお伺いしたいのです。
  436. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  自民党の研修会で党員から社会党の非武装中立論をどう考えるかという質問が出されましたので、それに対し現実的でないと思うと答えたことがあります。その趣旨は、もともと私は、わが国憲法は自衛権を否定しておらず、必要最小限度の自衛力の保持は許されると考えております。そして最近のわが国周辺の諸情勢にかんがみますと「防衛計画の大綱」で定める防衛力を整備していかなければならないと考えておりますので、非武装中立論は現実的でないという趣旨の答えをいたしたものでございます。
  437. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで外務省にお伺いしたいのですが、これは私は実はぜひ外務大臣においでをいただいてお聞きしたかったのですが、残念ながら外務大臣が公務のために来れぬとおっしゃるので、おいでになっている外務省の方にお聞きしたいのですけれども、七八年の五月三十日に国際連合において、これは園田外務大臣だったと思うのですが演説をされておりますね。その演説に触れてお聞きしたいのです。その演説の中でこういうことを言っておられるのです。ちょっと読んでみます。   日本国憲法は、「日本国民は恒久の平和を念  願し、……平和を愛する諸国民の公正と信義に  信頼して、われらの安全と生存を保持しようと  決意した」ことを宣明し、「国権の発動たる戦  争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛  争を解決する手段として、永久にこれを放棄す  る」ことを規定しております。   人類の先覚者としての誇り高き憲法の精神に  立脚して、わが国は、他国に脅威を与えるよう  な軍事大国にならないことをその基本政策の一  つとし、国際協調をその外交政策の前提として  おります。   わが国がこのような世界史上例の少ない実験  にのりだす途を選択した背景には、第二次大戦  の体験を通じて日本国民の一人一人の心に深く  根ざした「二度とこのような戦争があつてはな  らない」という決意があります。そして、この  決意は、戦後三十余年を経た今日、日本国民の  間に深く定着しており、将来にわたってわが国  が、これに反するような行動をとることは断じ  てありません。   日本国民の恒久平和に対する強い願望と平和  に徹するという固い決意は、国連憲章が世界各  国に求めていることと正に同一であります。わ  が国は、今後の国際社会における国家の活動の  新しいあり方の先覚者たるべく、平和に徹し、  国際協調を基本とする外交努力を一層強化して  いくことを決意しております。と述べられて、その次にこういうことを言っておられます。   全面完全軍縮の達成が全世界の国々の共通の  目標であることは論をまたない処であります  が、他方、軍縮の問題が全ての国にとって、そ  の安全の確保という要請とも密接に関連した問  題であることを忘れてはなりません。現在の国  際社会においては、地域的に、また、全世界的  規模において、関係国間の力の均衡が国際の平  和と安全を維持するための支えとなつておりま  す。がしかしわれわれが、真に全面完全軍縮の  実現に向って前進するためには、この理想を一  刻たりとも忘れることなく、この理想の実現に  向つて実現可能な措置を一歩一歩積み重ねてい  くことが必要であります。こういうふうに言っておられますが、この考え方はいま否定されるお気持ちはもちろんないでしょうね。
  438. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  ただいま御引用になりました全面完全軍縮の考え方でございますが、これは、わが国としてこれを究極的な目標といたしまして、具体的には包括的核実験の禁止でございますとかあるいは核拡散防止態勢の強化でございますとか、そういったことの積み重ねの措置の早期実現ということで、拡軍縮を中心に推進してまいる、この基本姿勢は全く変更のないところでございます。
  439. 矢山有作

    ○矢山委員 防衛庁長官は、私がいま読み上げたことについてどういうふうにお考えになりますか。
  440. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  平和のため努力を行うこと、そしてまた軍縮の実現のためにわが国としましてもできる限りの努力を払うべきことは同感でございます。
  441. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで外務省、ここで理想として実現を考えておられる全面完全軍縮というのは、これは言葉をかえれば非武装ということですね。
  442. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 全面完全軍縮と申しますのは、究極の目標としてわが国もこれに対して努力をするということを表明しているわけでございまするが、先ほどまさに御引用になりました園田元大臣の演説が触れておりますように、現実の国際関係の中で一歩一歩可能な措置をとっていくということが具体的なアプローチである、かように考えております。
  443. 矢山有作

    ○矢山委員 私に対する答えとは必ずしもなっておりませんが、この全面完全軍縮を目指して、これは追求する理想ですね、それを目指して現実には一つ一つ、あなたが先ほどおっしゃった核軍縮を初めいろいろのことをやっていく、そして到達するところとして全面完全軍縮を目指しておるわけですね。そうすると、全面完全軍縮というのと非武装というのは、言葉は違うけれども同じようなものだと私は思うのです。そうなると、私どもが非武装中立を言っておるその非武装というのは、まさに世界の平和と安全を守る、わが国の平和と安全を守る上には最も現実的な理想なんです。これを追求するためにわれわれは努力をしているわけです。それを非現実的だとおっしゃったのが私ども納得いかないのです。われわれは、いま直ちにここで非武装ができるとは考えておりません。非武装というのは、世界の平和と安全、日本の平和と安全を確保するために目指すべき理想としてわれわれは努力しているわけです。また、世界の平和と安全、日本の平和と安全を守るためには、それが最も現実的なものだと思うのです。その現実的な理想に向かってわれわれは努力している。それを一概に非現実的だと言われたのでは、われわれはこれは誹謗中傷としか考えられないのです。これは少なくとも野党第一党の基本政策ですからね。そういうものを、どういうふうな考え方でおるのかということもあなたは御理解なしに、非現実的だ何だとおっしゃるのは、私はいささかおかしいんじゃないか、おかしいというか非常識なんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう。
  444. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先生のお言葉を伺っておりますと、現実的な理想であると言われておりまして、現実的なものであるという趣旨のお言葉ではなかったと拝聴したのでございます。私は、そういう意味で、やはり現実的なものではないというふうに考えておりますのでそのように申し上げたわけでございまして、それで御理解を願いたいと思います。
  445. 矢山有作

    ○矢山委員 御理解をするというわけにはいかないのですよ。私どもは実際現実の問題として、平和と安全にとって一番理想的な姿というのは、全面完全軍縮、つまり非武装でしょう。それをわれわれは追求しているのですからね。そのことの理解なしに、これは非現実的だと言うのは、いささか私は、一国の閣僚としては余りにも軽はずみな言じゃないか、もっと言うなら失礼な言葉じゃないかと思うのです。これは御理解願いたいじゃ済みませんね。
  446. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  私は理想と現実というのは対応する言葉と考えておりますので、理想的な現実というのはちょっと私には理解できないわけでございます。軍縮が平和を達成するための有力な手段である、そういう点におきましては私も理解できるわけでございますが、理想と現実とはやはり相当隔たりのある問題でございまして、ちょっと先生のお言葉のうちの理想的な現実という言葉は、私としては頭が悪いのかもしれませんがよくわからないわけでございます。そういう意味で、まことに失礼ではございますが、社会党の主張されております非武装中立論は、わが国の場合現実的でないと考えておる次第でございます。
  447. 矢山有作

    ○矢山委員 私は理想的な現実と言ったのじゃないのですよ。現実に非武装ということは、世界の平和と安全、日本の平和と安全を守る一番の確かな道じゃないか、こう言っているのです。私は、武力によって世界の平和と安全が守れる、日本の平和と安全が守れると考えていないわけです。先ほど来渡部委員の方からいろいろ言っておりましたように、こちらが武力を強化すれば相手も強化する。武力の増強は際限のないものです。それは常に緊張状態を生む。どんなことでその武力の行使がなされて、平和と安全が害されるかわからないのです。だから、平和と安全を守るためには非武装という立場が一番現実的なんだ、こう言っているのです。そう言っているのでしょう。そのところをやはり理解した上で物をおっしゃらぬといけない。少なくとも野党第一党の基本政策ですから、それを十分な理解なしに、ぽんと非現実的な政策だ、一概にこういうふうな表現をされるところにやはり問題があるのではないか、いわゆる失礼な態度じゃないか、私はこう言っているわけです。
  448. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  先生の御発言の趣旨が那辺にあるかは、いまのお話で少しわかってきたわけでございますが、繰り返して恐縮でございますが、私は、自衛のための必要最小限の実力を保持することが、起こり得る侵略を防止し、わが国の平和と独立を保つ上に役に立つと考えておりますので、基本の点の認識が違いますので、言葉だけの問題ではなくて、非武装中立論がわが国に現実的なものであるとは考えない次第でございます。せっかくの御発言に賛成することができなくてまことに残念でございますが、しかし、野党第一党がそういう御意見を持っておるということはよくわかりましたので、私の申し上げます点もひとつ参考にお聞き取り願いたいと思うわけでございます。
  449. 矢山有作

    ○矢山委員 私に言わせれば、武力を持っていれば平和と安全が守れるというあなたの考え方が非現実的だということになる。あなたから言わせれば、われわれがいまの世界情勢の中で非武装を言っているのは非現実的だ、こういうふうな言い方なんでしょう。ところが私どもの非武装というのは、現実に平和と安全を守るとしたならばこれが一番追求すべき理想だ、こう言っているわけです。だから、そこのところをお互いに理解して物を言わぬと、相手の政策は非現実的だ、こう言ってきめつけるというのは、私は国務大臣ともあろう人の言葉ではないだろう。そこら回りのだれかが言ったのなら、それはまたよくわからぬ連中が言ったのだからで済む。しかしながら、少なくとも一国の国務大臣がそういうことをおっしゃるというのはちょっとおかしいと私は思いますよ。その点を私は御注意申し上げているのです。わかりますか。  そこで、これはやりとりしたって、あなたはそういう失礼な、相手の政策を十分理解しないで軽はずみに物を言う人だということだけを浮き彫りにしておいて、そこで次にお伺いしたいのですが、国連での演説が政府のいまだ変わらぬ方針だというなら、私は、外務省はあるいは防衛庁にしても、米国の要請を受けてソ連の潜在的な脅威を強調しながら防衛力増強だ増強だと言って突っ走るのでなしに、積極的に全面完全軍縮を目指して具体的に努力すべきだと思うのです。たとえばあなた方、実現可能な措置で一つ一つやっていかなければならぬと言っておられるのに、核軍縮がある、非核武装地帯の設置がある、核実験の包括的禁止を言っておられる、爆発用核分裂性物質の生産停止を言っておられる、検証制度をつくることを言っておられる、化学兵器の生産の停止を言っておられる。もう一つ言っている。兵器輸出の禁止を言っておる、こういうことをいろいろ言っておられるのです。言うだけじゃだめなんで、これをいかに具体的に実現するために一生懸命努力するかということがなければならぬと思うのです。何か努力をやっていますか。
  450. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  すでにこの分野におきましては、部分核停条約も成立しておりますし、核兵器の不拡散条約の成立はもう申し上げるまでもないことでございますし、海底核禁条約も成立をし、日本が委員長をしております化学兵器の禁止条約の小委員会において化学兵器禁止条約の締結交渉が進んでおりますし、あるいは包括的核実験禁止は、これは地下核実験を禁止するということでございまして、検証制度の充実を要するわけでございますから、この点も日本が何回かゼミナールを東京で行って、地震の検証と地下核実験の検証との相関性も積極的に検討しておりますし、われわれとしてはできる限りのことはしているつもりでございます。
  451. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、いろいろとやって、えらい効果が大きく上がっておるような御答弁なんですが、現実を見るとまんざらそうでもない。特に今度の外交青書なりあるいはこの夏、あれは外務省につくられておる安全保障政策企画委員会ですね、そこで発表されておるものなんか見ますと、これはどうも、平和外交に徹していま国連で演説なさったことを真剣に具体的に実現する、追求を本気でやっているとは思えない。むしろ逆にソ連の軍事力がどうだ、こうだと言って、むしろ防衛庁防衛力整備をあおるような、援護射撃をするような表現だと私どもは見ているわけです。だから、そういうような外交青書に見られるような物の考え方を持つのでなしに、もっと真剣に、私はそうした問題に取り組んでいただきたいと思います。  そこで、私はやはりいま日本がやらねばならぬことは、アメリカが強く軍備の拡大を要求する、ソ連の潜在的脅威がふえた、だから軍備の拡大をやるんだ、そのためには防衛費について別枠扱いまでするんだというようなことでなくて、いわゆる軍事オンリーのことをやるのでなくて、もっと文化、経済の交流だとか経済協力だとかそういったことに一生懸命になったらいいのじゃないですか。防衛費の別枠扱いまでやって、この財政の厳しいときに防衛費をたくさん取ろうなんて苦心惨たんしないで、政府開発援助でもしっかりやるようにした方が、私は日本の平和と安全を守るのにはよっぽど役立つと思うのですよ。第一、政府の開発援助はGNPの比率で言うと〇・二三ぐらいですか、これはもうフランスに比べたって、イギリスに比べたって、西ドイツに比べたって、アメリカに比べたって、大変な少ない額ですわ。だから防衛費もふやそう、経済援助もやろうという、どっちもはこの財政難でなかなかやれぬのですから、そうしたら防衛費なんかでそれの増大のためにあくせくするのでなしに、もう少し政府開発援助でもしっかりやったらどうですか。その方がよっぽど気がきいていますよ。
  452. 秋山光路

    ○秋山政府委員 政府の開発援助、これをどんどんふやした方がよろしい、全く御指摘のとおりでありまして、外務省はその線に沿って来年の予算要求をいたしております。
  453. 矢山有作

    ○矢山委員 初めて私の言うことに同調してくれたね。しかし、言うだけではだめなんですね。やはり本気でやらねばいけませんよ。この政府開発援助をやります、やりますというのは従来も何遍も言ってきた。何遍も言ってきたけれども、さっぱりはかどらないのですからね。それで防衛費の方はどんどん伸びちゃうのだから。だから真剣にやらなければ、やります、やりますと言ったってだめなんです。  そこで、質問を移しますが、これは防衛庁に聞きたいのですが、「極東ソ連軍の増強と活動の活発化は、西太平洋における米ソの軍事バランスに影響を与えつつあり、わが国の安全保障に対しても潜在的脅威の増大であるとみられる。」こう言って、これは防衛白書に書いてある。そしてSS20に対処する政策としては、「米国の核抑止力の信頼性を高めていく必要がある」こう書いてある。米国の核抑止力の信頼性を高めるというのは、一体どういうことなんですか。
  454. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘のように、SS20の例を挙げまして、「米国の核抑止力の信頼性を高めていく必要がある」という記述をしているわけでございますが、その意味は、すでに御承知のように、日本の場合、「防衛計画の大綱」でも、それから日米の協力の指針におきましても、核の抑止力につきましては米国に依存するということをうたっておるわけでありまして、全面的に核抑止力の問題については米国に依存しておるわけでありますから、米国の核抑止力が有効に働くことがわが国にとっていまの核の脅威に対する抑止力としては必要であるということを述べたものであります。
  455. 矢山有作

    ○矢山委員 だから、必要なのはもうわかっているのですよ。そういう方針をとっておられるということも知っています。だけれども、わざわざ白書で「米国の核抑止力の信頼性を高めていく必要があろう。」というのは一体どういうことを言っているのですかということを言っているわけです。
  456. 塩田章

    ○塩田政府委員 基本的には、やはり日米の友好信頼関係を深めること、具体的には、先ほど来申し上げております日米共同対処の場合の作戦におきまして、米軍と日本の自衛隊が有機的に効果的に行動作戦を起こし得るような態勢をつくっていくということが必要なことではなかろうかというふうに考えているわけであります。
  457. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、私がなぜそういうようなことをお聞きしたかというと、ことしの七月号の「諸君」という雑誌、それに軍事科学研究会の名前で「日本が持つべき防衛力」という論文が出ているのです。それによると、核武装についての政策変更が提言されておるわけです。その場合に四つの問題が出されております。一つは独自の核武装をやる、もう一つはドイツ型で、運搬手段を日本が持ち、核弾頭をアメリカから提供してもらうという方式、三つ目はアメリカの核部隊を日本に配備するという方式、四つ目はアメリカ海空軍が随時核を持ち込むことを認める、こういうことの提言が行われておるわけです。しかも、一方わが国軍事力の現状を見ると、自衛隊の持っておる核運搬手段、核弾頭装着の可能なものが最近非常にふえておりますね。それはナイキあるいは後継のパトリオット、それから対潜、対艦、対地ミサイル、こういうもの。  そこで、こういう提言が最近なされ出したということを注目しながら、先ほどの「米国の核抑止力の信頼性を高めていく」という場合に、このどれかを、特に考えられるのは三とか四の場合でしょうけれども、そういうことを志向するような動きが防衛庁の中で出てきたのでは困る。そこで、先ほどおっしゃっておりましたから信頼をいたしますけれども、非核三原則は今後も断じて守る、こういうことをはっきりもう一度言っていただきたいのです。
  458. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  政府といたしましては、非核三原則を今後といえども守っていく考えでございます。防衛庁ももちろんこれに従う考えでございます。
  459. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは次に、徴兵制の問題についてちょっとお伺いしておきたいのですが、徴兵制に関する議員の質問が二度ほどなされているのです。最初は八月十五日政府答弁書が出ている。それからその次の答弁書は十月十四日に出ているのです。それで答弁書を読んでみましてちょっと疑義を感ずるのでお尋ねしておきたいのですが、十月十四日の答弁書においては、徴兵制の問題でこういうふうに言っているのです。「徴兵令及びこれに類する行為とは、いわゆる徴兵制度をいうものと考えられるが、一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解しており、このような徴兵制度は、憲法上許されないと考えている。」こうなっているのです。  それからその前の八月十五日に出された同問題に対する答弁書ではこうなっているのです。前のところは前のと同じなんです。念のために申し上げます。「一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している。」これは前と同じですね。「このように徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える。」こうなっているのです。  そこで、私は疑問を感ずるのは、「社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、」とありますから、もしこれが「負担すべきものとして社会的に認められる」ようになったらどうなるのですか。徴兵制をやるということなんです。これは法制局に聞きたい。
  460. 味村治

    ○味村政府委員 御指摘答弁書では、「このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、」こう言っているわけでございまして、わが憲法の秩序のもとでは、そういうような社会的に認められるようなものではない、このように申しているわけでございます。
  461. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、これは私は非常に紛らわしい感じがしたのです。「憲法秩序の下では」と、あなたがおっしゃった前段があるわけです。あるけれども、その次に続いて、いま読み上げたような文章が入っておるから、憲法秩序のもとで、もし公共の福祉に照らして、当然負担すべきものだと社会的に認められるようになったら、これは容認される、こういうことになっていくおそれがある。だから、こういうあいまいな表現というのを使われるべきではないのではないか。最初読み上げた十月十四日の答弁書なら実に明瞭なんです。余分のものを加えてしまうからおかしなことになってしまう。法制局ともあろうものが、こういう解釈上疑義を持つような答弁書というのは私はどうかと思うのです。だから、私はこう理解しておいて、それでよろしいとおっしゃっていただくならそれでいいです。  つまり八月十五日に出した答弁書は、私の理解では、十月十四日に答弁書が別にまたもう一つ出ているわけですから、この十月十四日の答弁書が政府の最終的な見解である、こういうことになるなら前の疑義は一応解消して、十月十四日の答弁書で徴兵制の問題を理解できるわけです。どうでしょう。
  462. 味村治

    ○味村政府委員 実は、先ほど先生の御指摘になりました公共の福祉に照らし当然に負担すべきものと社会的に認められるわけではない、認められないというこの理由づけは、昭和四十五年十月二十八日の衆議院内閣委員会で、前の法制局長官の高辻長官が徴兵制度をとることは憲法上許されないんだということの理由として説明したことでございまして、政府としてはずっとこのような理由によりまして徴兵制度は憲法上とれないんだということを御説明しているわけでございまして、今回の稲葉先生に対する答弁書におきましても、その従前からとっております理由をそのまま書いたわけでございます。楢崎先生に対する答弁書においては理由は書いてございませんが、これは稲葉先生の方が、理由とか条文を示せということを質問主意書の中に申されておりましたので理由を書いたわけでございまして、楢崎先生に対する答弁書の場合には、それは特に御要求されているとは受け取れませんでしたので書かなかった、ただそれだけの理由でございまして、政府立場は全然変わっておりません。
  463. 矢山有作

    ○矢山委員 十月十四日の答弁、これが政府見解だ、こういうことですね。
  464. 味村治

    ○味村政府委員 両方とも政府見解でございまして、実質において何ら変わりがないというように御理解いただければよろしいかと存じます。
  465. 矢山有作

    ○矢山委員 最後にもう一つだけまとめてお伺いしておきます。  武器などの諸物資の購入に伴う価格及び利益の算定方式について産業経理協会に諮問しておるということでありますが、この諮問の内容、それから答申時期はいつごろになるのか、そして答申が出たらこれによって改定をしていくのかどうか、その点いかがですか。
  466. 和田裕

    和田(裕)政府委員 お答えを申し上げます。  防衛庁が装備品等を調達する際の利益率の算定方法につきましては訓令がございまして、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令」というものに定められておりますが、この訓令は昭和三十七年にできたものでございまして、制定以来もうすでに二十年近くけみしておりますし、その間に、最近の事態だけを考えてみましても、オイルショックでございますとか、それに引き続きます狂乱物価、それからその期間に生じましたところの会社の財務構造の大きな変化、そういったような経済情勢の大きな変化というものがございましたようなことから、いま申し上げました訓令に定めますところの利益率の算定方式が将来とも適正なものであるか否か、あるいはまたより合理的な考え方がほかにもあり得るかどうか、こういったようなことを検討する必要があるというように考えまして、利益の概念及びその計算方式等につきまして財団法人産業経理協会に依頼したものでございます。  その結果どうするかという御質問がたしかあったかと思いますけれども、この調査研究につきましては、一応来年の三月、昭和五十六年三月に終了する予定でございまして、この結果を得ましてから庁内で慎重に検討することにいたしております。その結果、でき得る限り早く結論を出したいというふうに思っておりますけれども、現時点でいつまでに答えを出せるかということを申し上げる状態にまだなってない、こういう状況でございます。
  467. 矢山有作

    ○矢山委員 これはかねて業界から、武器などの諸物資の購入についての利益率が低いので、これを何とか改善してくれという強い要望があったと聞いているのですが、恐らくそういうことに基づいて諮問を出されて、その答申を受け改定をしよう、こういうお考えなんだろうと思います。そうなると、恐らくまたこれは利益率を上げるということになるでしょうから、防衛費というものがまたふえてくると思うのです。そうすると、そうでなくても財政難だと言っているその最中に、防衛力の強化ということで防衛費自体がふやされていく、その上にまた利益率をふやすのだということになっていくと、これは防衛費というものが非常にかさばってくる、こういうふうに思うのです。これはやるとなったら財政上も大変なことになると思いますが、これを聞いても、大蔵省はいままだ現実になっていないから言えないぐらいの答弁になるかもしれぬが、そんなことになると私は大変だと思う。そういうものが出てきて利益率が上がって購入物品の値段が上がる、防衛費がそうでなくてもふえておるのにさらにふえてくる、こうなれば一体どうなるか。そういう点でもし所感があればちょっと大蔵省から聞いておきたいのです。
  468. 畠山蕃

    ○畠山説明員 ただいままさに先生おっしゃいましたように、装備局長から答弁申し上げましたとおり、現在のところまだどういう内容のものになるかということははっきりいたしませんので、何とも申しかねる次第でございますが、もし仮に利益率が上がるとすればという仮定の問題での御質問お答えするといたしますと、その限りにおきましては、他の条件において変わりなければ、その部分において財政負担が増加するということはそのとおりだと思います。しかしながら、先生よく御存じのとおり、防衛費といたしましては、各種の装備品の数量であるとかあるいはまた原価がどうなるかといったようなことで、そのほかの各種要因の方がむしろ大きいといいますか、それらの総合的な結果として防衛費が全体としてどうなるということでございますので、利益率だけの増加がゆえに防衛費を押し上げるということには必ずしもならないのではないか。それからまた利益率自体が仮に適正妥当なものであるとすれば、それが世間並みの利益率ということであるとすれば、その部分についてはあえて問題とすべきところではないというふうに考えておる次第でございます。
  469. 矢山有作

    ○矢山委員 いろいろお伺いいたしましたが、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきます。  ただ、質疑をやってみまして、なかなか奥歯に物がはさまったような調子で十分な御回答もいただけませんし、質問者としてはきわめて不満でありますけれども、これで終わらせていただきます。御苦労さまでした。
  470. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る十一月四日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時二十九分散会