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上原委員 それはアメリカにもタカ派がいるしハト派もおりますからいろいろの
意見はある。それが民主主義なんです。だから日本だってあるわけでしょう。それを無視してはいけませんよ
防衛庁長官。
そこで、そういう
国際情勢の
認識をどうするかということが一つの前提になると私は思うのですが、
防衛問題、
安全保障ということを
考えるときに、「
防衛計画の大綱」と基盤的
防衛構想について若干
お尋ねしてみたいと思うのです。御承知のように「
防衛計画の大綱」は、この五十一年度で四次防で終わって、それ以後の
防衛計画をどう進めていくかということで一つの方向として出されてきたわけですね。そのときにいろいろ議論されたことは、多くを
指摘するまでもないわけですが、
考え方、その構想、背景としては基盤的
防衛力構想でいきたい。この中で皆さんは何を主張したかといいますと、「
国民的合意を確立するための努力」ということをまず挙げているのですね。「第一点は、
防衛のあり方に関する
国民的合意を確立したいと
考えたことである。
わが国は、これまで四次にわたる
防衛力整備計画を策定し、陸上、海上、航空各
自衛隊の整備、充実に努めて来た。しかしながら、これらの
防衛力整備計画は、その根底となる
考え方や理論が抽象的であり、計画対象期間において、戦車や艦艇や
航空機をそれぞれ何両、何隻、同機調達するかといったことを主体としていた。このため、これらの計画は、ややもすると装備の取得計画でしかないとの批判が一部に生じ、その前提となる
考え方や理論、つまり
わが国の
防衛のあり方の明示を求める声が生じた。今回の「
防衛計画の大綱」は、このような声に応えて、
防衛力を保持する意義、
防衛の態勢、各
自衛隊の体制等
わが国の
防衛のあり方について、
政府の
考えをできる限り具体的に明示しようとしたものである。」しかも、こういう方針を出そうとした一つの反省点というものも、第二点目として「
自衛隊の現状なり実態に対して、
政府部内でもある種の反省が生じてきたことである。これまでの
防衛力整備は、
安全保障問題に対する世論の分裂もあり、厳しい環境の下で行われてきた。そして、一方では「
わが国の
防衛力はどこまで大きくなるのか」といった声も一部に生じたが、他方で、
自衛隊の現状は、従来の整備目標たる「通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対し、最も有効に対応しうる効率的な」
防衛力には程遠く、「いつまでたっても所要の
防衛体制に達しない」状況が続いてきた。そして、勢い正面
防衛力の整備に重点が置かれ、補給体制や居住施設等のいわゆる後方支援部門の整備は圧迫を受けざるをえなかった。」こういうことで「今回の「
防衛計画の大綱」は、このような実情の反省に立って、
政府の責任において
自衛隊が果たすべき
防衛上の具体的任務範囲を明確にするとともに、見通しうる将来に達成可能な現実的な
防衛体制を、一定の意味をもった完結性のある形で整えようとするものである。」いろいろとらえ方はあるでしょうが、要するに平和時における
防衛力の限界というものを四次防以降は明らかにしながら、皆さんが言うところの量より質ということにより重点を置こうという一つの概念、背景があったと思う。しかも、そういう中で
防衛力整備計画はスタートしたわけですが、今日の事態を
考えてみると、この基盤的
防衛力構想の基盤というものは失われて、いつの間にか
防衛大綱と中業だけがひとり歩きしたというかっこうになっているわけですね。質への転換ではなくして、質量ともに拡大をしていくという方向に今日来ているということです。どうなんですか。
いま私が読んだのは五十二年
防白です。五十三年までは基盤的
防衛力構想というものがある程度取り入れられている。しかし、四年、五年にはそういう概念はもうほとんどないですね。先ほどやりとりしましたような
国際情勢の中で、ソ連軍だ、ソ連軍だと
脅威論だけ。今日の
政府の
考え方は、私は基盤的
防衛力構想そのものも認めるという前提には立ちませんが、それさえもなし崩しにした形での
軍事力拡大、
増強路線にいま踏み切ってしまった、こういう
認識に立たざるを得ないのですが、
長官の御
見解を聞いておきたいと思うのです。