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松沢参考人 いまの堀
先生の御
質問に対しまして、私の
考えを述べさせていただきます。
窓販、
ディーリングということが前から言われておりますし、また
銀行業務と
証券業務との接点の問題としてこれは相当古くから言われておる問題でございますが、私はまず
最初に、
都市銀行の
立場というよりもむしろ
国民経済的にこの問題をどう
考えたらいいかということの私見を申し述べさせていただきます。
御
承知のように、五十年代から大量国債発行が行われまして、私の記憶によりますと、
昭和四十年から戦後初めて国債が発行されまして、四十年から四十九年までがたしか約十兆円発行になっております。年率で、年平均一兆円ということでございましたが、五十年代に入りますと五十年から五十四年までの五カ年間で五十兆円発行になっております。年率十兆円。四十年代に比べますと五十年代の前半だけでちょうど約十倍のスピードで国債が発行されておる。こういう大量国債発行時代になります場合に、われわれとしてあるいは
国民経済的に
考えなければならないことは、大量国債発行をいかにして安定的に消化を図っていくかということがまず第一の問題でございます。
それから第二の問題は、この膨大な国債が円滑に流通して、そして適正な価格が決定されるという流通
市場の問題か一番大事な問題ではないか、かように
考えるわけでございます。
そして、まず国債の消化をさらに安定的に拡大する方法といたしまして、私
どもは、
銀行がみずから
市場に参与して、そして窓販、
ディーリングを行うべきであるということを申し上げているわけでございますが、
個人層の消化につきましては、一部の方々の御説によりますと、
日本はすでに市中消化の約二〇%を消化しておる。
アメリカにおいてもすでに二〇%ぐらい、ヨーロッパでもほぼ同じぐらいだ。そうすると、
証券会社は
昭和四十年に初めて国債が出まして今日まで十五年間、国債
市場の整備拡充に非常に大きな役割りを果たしたことは事実でございます。そして非常に懸命な努力で
個人消化を開拓したことも事実でございます。ところが、これだけ大量発行になってまいりますと、一体それだけでいいのかという問題が出てまいります。
なお、
個人消化につきましては、ここにちょっと数字があるのでございますが、
日本は国債の保有が
個人に対して約二〇%、
アメリカも二〇%でございます。それから
金融機関が六六・五、
アメリカでは
金融機関は二一・四。それからその他、と申しますのは主として機関投資家でございますが、これが
日本では一〇・八に対しまして
アメリカは五七・五。こういうことでございまして、国債保有につきまして
金融機関が非常に大きな
シェアが出ております。
これに対して、もう
一つ私
どもが
考えなければなりませんことは、もっぱら
日本と
アメリカを比較して恐縮でございますが、
個人の
金融資産がどうなっているかと申しますと、まず
日本の場合には、全体を一〇〇といたしますと、預貯金が六六・三、有価
証券が一二・四、その他保険、年金というようなもので二一・三、大体こういうふうになって百分比ができているわけでございます。つまり、
日本の場合には
個人金融資産のうち有価
証券の占める部分が一二・四ということでございます。これは
アメリカは逆でございまして、預貯金が
日本の六六・三に対しまして三八・八、有価
証券は
日本の一二・四に対しまして三七・八というふうになっておりまして、有価
証券に対する
個人金融資産の比率というものは非常に高い。その上で発行されている国債の二〇%が——ほぼ
日本も
アメリカも二〇%である。こういうことでございます。これは何を物語るかと申しますと、
アメリカの場合には、国債のほかにいろいろな債券、あるいはいろいろな株式を
個人が相当持っておるということを物語るものでございます。
日本の場合には、御
承知のように一般の
国民はほとんどが預貯金でございまして、最近のような大量国債発行下におきまして国債が非常に売れるようになった、こういうことでございます。
したがいまして、私
どもの
判断では、まだまだ
日本の
個人層は国債を保有する能力がある。これは、すでに
日本の
個人の所得が非常に増大しておるということもございますし、また
個人の
立場から見ますと、
金融資産の多様化ということを最近では皆さん
考えておられるということでございますから、十分にまだ安定消化層として
個人を
考えることは可能であるというふうにまず
考えるわけでございます。
それからもう
一つは、皆様御存じのように、わが国におきましては間接
金融の分野が非常に大きくて直接
金融の分野が少ない。これももう昔から言われているわけでございまして、やはり
日本におきましてはもう少し直接
金融の分野をふやしていかなければならぬということもかねてからの課題でございます。そういう観点から申しまして、
国民一般に債券の典型的なシンボルであります国債をなじませるということは、今後直接
金融の分野を拡大する上において非常に有効である、こういうふうに
考えるわけでございます。
それからもう
一つこの
個人層につきましては、公社債売買回転率——これはどういうことかと申しますと、現在全体で公社債の現存額、これは国債を含め、
金融債とか事業債を含めまして全体で百二十八兆ございます。この百二十八兆の公社債が一年間に売買されておりますのが五十四年度で二百二十八兆円ということでございまして、これは公社債売買回転率で申しますと九七・五と非常に高い数字でございまして、公社債が相当頻繁に売買されておるということでございます。ところが、
個人層にはまりました公社債現存額は現在、これは国債、
金融債、事業債、そういうものでございますが、それは全体で二十五兆ございまして、売買高は五十四年度で二兆二千億、つまり回転率は四・六でございまして、
個人がいかに安定層であるかということがはっきりわかります。そういうような理由から、私
どもはかねてから、窓販によりまして、
都市銀行と
地方銀行、
銀行法に言う
銀行の店舗が全国で八千店ございますから、これを通じて窓販をやることによりまして
個人層にさらに安定消化を図っていくべきではないかということを申し上げているわけでございます。
それからもう
一つの問題は流通
市場の問題でございます。この流通
市場の問題は、これも皆様御
承知かと思いますが、国債の大量発行に伴いまして流通
市場はどんどん拡大をいたしております。ただ、わが国におきましては
証券四社中心でございまして、この
証券四社で実に七一%の取り扱いが行われております。なお
証券十二社、四社を含めました
証券十二社になりますと、それだけで九一%の国債の取り扱いが集中されておるというところに流通
市場の問題があるということを私は
指摘をいたしたいと思うのでございます。
これはどういうことかと申しますと、これも
アメリカと比較して恐縮でございますが、
アメリカの場合にはバンクディーラーとノンバンクディーラー、それからその他のブローカーというものがおりまして、これが
アメリカの公社債
市場の担い手でございますが、バンクディーラーとノンバンクディーラーを合計した取り扱い
シェアが二五%にすぎません。その他はもろもろのディーラーが扱っておるわけでございまして、寡占という問題は
アメリカではございません。
それからもう
一つの問題といたしましては、国債の買いと売りでございますが、わが国の場合は扱い業者が少ないために需給の突合の機会が非常に少ない。これを
市場参入者の数をふやすことによりまして売買需給の突合の機会を増大する。こういうことによりまして公社債
市場の厚みを増し、深さを増し、適正な
価格形成につながっていくということで、私
どもは
銀行がディーラーとしてこの
市場にむしろ積極的に参加していくことが公社債
市場の育成強化につながる、こういうふうに
考えておるわけでございます。
それからなお、御
承知のように
昭和五十七年ごろからはすでに発行しております中期債の償還期が参るわけでございます。それから六十年以降になりますと、五十年の初頭に発行されました大量国債の十年利付国債の償還が始まるということでございまして、五十七年から新規発行債
プラス借りかえ債ということで、国債のボリュームは飛躍的に増大いたします。こういう状況を前にいたしまして、この問題は
銀行と
証券の
かきね争いとか、あるいは
銀行が何とかして失地を回復するとかそういう問題ではございませんで、これだけの大量国債発行が五十七年以降控えておるわけでございますから、むしろ
銀行、
証券が協力してこの大量国債をいかに安定消化を図り、流通
市場の整備拡大にみんなが積極的に参与をしていくかというふうに
考えなければならないと私
どもは
考えまして、もうすでに十年にわたりまして、この問題はそういう観点から申し上げておるわけでございます。