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竹本委員 渡辺
大蔵大臣には、戦後、財政再建の最も厳しいときに
大臣に御就任され、大変御苦労さまで、就任以来の御努力のことも新聞その他を通じて見ておりまして、大いにがんばっていただきたいと思う。口を悪くして言えば、こういう困難なときに
大蔵大臣を引き受けられるということはよほどの物好きかあるいはよほどの信念のある人でなければならないと思うのですね。
大臣の場合には強い信念を持ってこの困難に当たられるということでございまして、ぜひひとつ最後までがんばっていただきたい。そういう
意味で
二つほど要望を申し上げたい。
一つは、財政再建についてちょっと私不思議に思っているのだけれども、主体性がはっきりしない。
先ほどもゼロ
リストの資料をいただきました。予算
委員会においてもこのゼロ
リストが配られまして、大出さんが何だこれは、ということでかみつかれた。どういうことになるのかと思って私も見ておったのですけれども、この資料をもう一遍取り返してさらに改めて財政演説でもやって、それからこれを出すのが本当じゃないかという
意味だったと受け取っているのです。私はそれが本筋だと思うのです。この困難な財政再建をやるということになれば、本当にこれは命がけだ。しかも、それはゼロ
リストの
二つの資料をどことなく配っておくというようなことから財政再建のエネルギーは出てこない。本当に財政再建をやろうと思うならば、鈴木内閣はこれだけの決意をした、渡辺財政ではこれだけの構想と決意のもとに財政の再建をやろうとしておるのだ、その
一つの資料としてこれを配るということであってほしいと思うのです。
ところが、ゼロ
リストの表を配って、これを配ったけれども一体だれがどうしようというのだ。読み人知らず。私ならこれだけのことはやれない。こんなむちゃなことはできない。ゼロ
リストにはすることはできないのだ。だから、こうしようと思うという、そちらが先で、その参考資料、こういうことじゃないかと思うのです。これは内閣としては政治的判断ももちろんいろいろ要るでしょうし、特に大平さんが増税問題ではつまずかれた苦い経験もありますので、増税ということを言わないことも一応はわかりますけれども、もはやこの段階まで来て、なおかつ明確に財政再建の基本的な決意なり
方向なりということを示さないままに、何となくゼロ
リストを配って、後はどうだ、君らが
考えてみろというようなことでは、本当の
意味の財政再建はできない。要するに、われわれはこうやるんだ、鈴木内閣はこうするんだ、渡辺財政の再建はこういう基本方式だということをもうぼつぼつ打ち出してもらってもいいのではないか。
そういう前提に立ちますと、たとえば来
年度の予算編成についても、
大臣、これは大変御苦労があると思うのですけれども、国債の元利支払い等の問題あるいは地方交付税、どちらも七兆円超えておりますから、一兆五千億円くらいは国債利子の支払いがふえる。一兆円近くのものが交付税としてふえる。二兆五千億円でしょう。そして二兆円国債発行の減額をする。中身についてはまた
議論があるが、二兆円減額するということになりますと、大体
考えられる自然増収四兆五千億円としてとんとんというのか、差し引きゼロですね。そうすると、その後、来
年度一体どういう予算編成をするかということになれば、ことしは
大臣の方からも厳しい通達というか意思表示があって、七・五%以上のものを要求するなということで、各省としても従来の行きがかりにある
程度目をつぶって七・五%に抑えたものが二兆六千億あるというのでしょう。そのほかに三千億円、一方でまた七百億円くらいその他で要るから、合わせてみると、二兆六千三百億に三千七百億だから、ぴったり三兆円要る。この三兆円については財源が全然ないのでしょう。
そうなりますと、渡辺財政として、鈴木内閣としては、この三兆円はもうそんな値切って、七・五に値切った結果なおこれになったのだから、全額認めざるを得ない。そうなれば、これは増税でいくか、経費の節減、既定経費の削減でいくか、
二つに
一つしかないのだ。したがって、三兆円全部増税でいくか。あるいは半々にして一兆五千億は思い切って切る。一兆五千億は増税だ。少なくともその辺までは結論を示していただいて、その上でそれに協力をしてくれ。もしそれに協力しなければこれこそゼロ
リストだよ。こういうような行き方がぼくは順序だと思うのです。ゼロ
リストの方が先へ出て、後は
国民に
考えろということになると、極端に言えば、責任転嫁みたいなもので、
国民の方は当惑してしまう。あるいはこの間はおどかしだとか、恐喝だとかという
議論も出ましたが、いずれにしましても、真剣に財政再建をいまの段階で
考えるとなれば、もうここまで来れば三兆円の要求を半分に削るか、あるいは増税をするかということにしかならぬと思うのです。
だから、この辺で、いままでの資料とかあるいは
政府の言い方というものは、私はこうする、これ以外にはないのだという、自分の信念を吐露するというのではなくて、ゼロ
リストではこうなります、何となくこういうような零囲気をつくるというのか、あるいは増税環境をつくるというのかわかりませんが、そういう
意味で主語がない、主体性がないと思うのです。
私は、この
意味において、渡辺蔵相、もうこの辺でひとつ主体性をはっきりしてもらって、こういう線でいくのだということを、当分解散もないようですから、安心して出してもらうということが必要ではないかという点が
一つ。
それから、もう
一つの要望は、ここまで来れば増税ということも私は避けることができないと思うのですが、そうなれば、やはり今後の中期財政展望というものが必要になってくる。したがいまして、ことしの足らないやつはこれだけだというようなことだけでは困るということを、けさの新聞で見ると、経団連のどなたかも言っておったけれども、これは一応もっともだと思うのです。したがって、やはり中期財政の大きな展望を示す必要がある。
従来、収支試算というようなものが出されておりますけれども、これは一応の資料であって、どれだけ信憑性と拘束性があるかということになると、問題があります。やはり何かの拘束をするような基本的な財政計画というものが要るのではないか。ところが、いま
考えますと、いまから来年の財政計画を立てろと言ってもちょっとむずかしい。そういう
意味も含めまして、もうこの辺で改めて中期財政計画というものを
考える、また、その前提条件として、ドイツでやったような財政構造改善という
法律をつくるか方針を決めるか、そういうことは
法律によることを必ずしも必要としないと思いますが、
法律をつくってもなお結構。そこで、私は、中期展望が必要だということの上に立って、ドイツの財政構造改善法というものをぜひひとつ大蔵省でももう一遍真剣に、いままでもやられたかもしれませんが、検討してもらいたい。あのとおりのまねをしろとは申しませんけれども、なかなか参考になることが多い。
たとえば第一は、日本の補助金も大いに切ってもらわなければならぬと思うけれども、八割以上が
法律に縛られておる。その
法律を
一つ一つ直すということは大変ですから、ドイツの財政再建法では御承知のように一括改正でいっておる。それから、歳出についても、七五年くらいのときは一二%以上であったと思いますが、その歳出をだんだん減らしていって、最後のねらいは五%まで持っていく、日本は七・五%ですから、もう一押し、やはり五%くらいまでに抑えていかなければ財政再建はむずかしいだろう。国債の問題につきましても一、
先ほど来御
議論がありましたけれども、自然増収を上げて国債の償還に持っていくというようなことも
考えておるようですけれども、それも賛成だし、同時に、国債依存率も七五年に二一・二%であったものが、ことしはたしか
一三・三%くらいですね。そういうふうにして国債依存率も減らしていく。そのためには、一方で付加価値税その他の増税も
考えておる。さらに、歳出面の方も、いま申しましたように、思い切って減らすし、のみならず、その結果、収支の改善というのは、私が計算してみると、四年間で大体五兆円くらいの収支改善をやっている。日本もこの辺で前後五兆円くらいの収支改善を
考えないと、財政再建は軌道に乗らないと思うのです。
そういう
意味で、ドイツのまねをしろとは申しませんし、事情も違う。特にあの財政構造改善をやるときには、社民党は幹部の二、三人が
考えて、決めて、押し切ったのですね。ドイツでさえもあれだけの決意でなければああいう
法律は通らない。いまの日本ではそういうことはなかなかむずかしいとは思いますから、その
法律をそのまままねしてくださいとは申しませんけれども、少なくともドイツが真剣に財政再建に取り組んだあの姿、あのやり方というものはもう少し参考に取り入れてもらいたい、この
二つが要望なんです。いかがですか。