○
志賀(学)
政府委員 それでは最近の
わが国の
石油情勢につきまして、お
手元にお配りいたしました「当面の
エネルギー情勢について」という
資料に基づきまして御
説明申し上げます。
お
手元の
資料の一ページの一番下から「最近の
我が国石油情勢について」という項が始まっております。これに従って御
説明を申し上げます。
まず、
日本の
原油の
輸入状況はどうか。これはことしの四月二十一日以降、
イランとの間で
価格交渉がまとまりませんで
イランの
船積みが停止した、最近に至りましてさらに
イラクからの
輸入がストップしておる、こういう
状況であるわけでございますけれども、その中で
日本の
原油輸入がどうなっておるかということでございます。一ページ繰っていただきまして二枚目をお開きいただきますと表がございます。これが最近の
わが国の
原油の
輸入状況でございます。
真ん中に五十五年度、これは左の欄が上期、右が下期でございますけれども、現在までに上期まで判明しております。五十五年度でございますけれども、五十五年度の四−六月が六千三百四十二万キロリットル、七−九月が六千百七十一万キロリットルということで、上期合計いたしまして一億二千五百十三万キロリットルということに相なっております。これを五十四年度と比べていただきますと、これはすぐ上に書いてございますけれども、五十四年度上期に比べまして今年度上期は約九百万キロリットルぐらい減っておる、こういう
状況でございます。
パーセントにいたしまして約六・七%ぐらい減っておる、こういう
状況でございます。
この上期が減っておりますのは、
一つには
イランの問題も実はあるわけでございますけれども、ただ実際には、次に御
説明いたしますけれども、最近
国内の
石油需要が非常に停滞しておるということもございまして、
備蓄レベルが非常に上がっておるわけでございます。そんなこともございましてタンカーのスピードを落としておるということで、いわゆる
洋上備蓄と申しましょうか、そういう形での油がこのほかに実際ばかなりございます。ともあれそういうことで、昨年度の上期に比べますとかなり減っておる形になっております。
イラクの
影響でございますけれども、九月に
紛争が始まったわけでございますが、九月
積みまでは、実際上は
紛争によりまして
船積みがストップする前にほとんど
船積みが終わっております。したがいまして、今後
イラクの
影響が出てくるわけではございますけれども、いずれにいたしましても九月
積みまでは実質上積んでおるという
状況でございます。
それから次に
国内の
需給でございますけれども、これはただいまもちょっと申し上げましたけれども、全般的に申しまして
消費節約のムードが非常に浸透してきておるということ、あるいは
経済の
拡大テンポが鈍化しておる、あるいは
冷夏の
影響、このようないろいろなファクターが入りまして、
石油製品の
需要は非常に落ちついております。二ページの下の方から三ページにかけまして、
参考資料三ということで、「
石油製品販売実績」というのがございますけれども、これを一枚繰っていただきまして、この表の最後に「
燃料油計」という欄がございます。その
真ん中辺に五十五年の四月から九月までの合計が書いてございますけれども、数量で申しまして約九千七百万キロリットル、前年に対しまして八九・九%、約一割
燃料油の
需要が減っている、こういう
状況になっているわけでございます。そのように
国内の
需要が非常に停滞したということもございまして、
国内の
需給は
緩和基調に
推移しております。
その結果といたしまして、
備蓄でございますけれども、前に戻っていただいて恐縮でございますが、(2)というところの作文の終わりの方でございますが、五十五年の九月末で
備蓄レベルは百十一日ということでございます。
民間備蓄が約百四日、
国家備蓄が約七日ということになっているわけでございます。先ほど
豊永次長が、
世界的に
備蓄レベルが上がっているということを申しましたけれども、
日本につきましてもこの百十一日という
レベルはいままでにかつてない高い
水準でございます。
ところで、
国内需要の
品種別の
状況はどうかということでございますけれども、先ほどの表をごらんいただきますと、
油種別に
需要の
状況が書いてございます。上期、四月から九月という欄でごらんいただきますと、ガソリンと
ジェット燃料油を除きまして各
油種、かなり前年
水準を下回っておりますが、特に減少の大きいのはナフサ及び
C重油でございます。
C重油で申しますと、これは一枚繰った次のページの欄にございますけれども、
C重油の四月から九月までの
需要は前年に対しまして八五・五%ということで、非常に
需要が減っております。これは、この
C重油の
分野におきまして、特に
燃料節約対策あるいは
石油からの
転換というような
対策が進んでまいっているわけでございまして、もちろん電力におきます
冷夏の
影響というような特殊な
要因もございますけれども、全般的に
C重油分野におきまして脱
石油というような
対策も進んでおるというようなこともございまして、非常に減っているという
状況でございます。それからいわゆる
中間三品、
灯油、
軽油、
A重油でございますけれども、この
中間三品につきましても、
灯油においては約一割、
軽油におきましても若干というようなことで、かなり
需要が落ちついているという
状況でございます。
そこで、次に
価格でございますけれども、
石油製品の
価格を考えます場合に、やはり
基本は
原油価格がどうかというのが問題でございます。そこで、
日本の
原油輸入価格の
状況でございますけれども、
参考資料四という表がございます。これは最近の
通関CIF価格の
推移でございます。九月のところをごらんいただきますと、
ドルベースで
バレル当たり三十四・五九ドルということに相なっております。これを
円ベースに引き直しますと、
キロリットル当たり四万七千六百七十七円ということになっておるわけでございます。これをごらんいただきますとおわかりになりますように、最近の
CIF価格の
推移は、
円高の
影響もございまして、
円ベースの
価格でごらんいただきますとかなり落ちついた
推移を示しているわけでございます。
なお、
イラン政変前の五十三年十二月と比べてみますと、この表の
参考資料の一番下に書いてございますように、
ドルベースで申しますと二・五倍強、
円ベースで二・八倍強、こういうことになっております。おわかりになりますように最近落ちついているわけでございますけれども、
イラン政変前と比べますと、昨年来の
産油国におきますGSPの急速な引き上げの
影響もございまして、
円ベースで申しますと二・八倍強という高い
レベルになっているわけでございます。
なお、このような
原油の
輸入価格の
状況でございますけれども、
国内の
石油製品価格の
推移はどうかというのがその次の問題でございます。一枚繰っていただきますと、
石油製品価格の
推移がございます。
参考資料五というところに表が載っております。
まず卸売物価で見ますと、九月で二二一・五ということで、同じように
イラン政変前に比べてみますと二・四倍弱というような形になっております。
なお、卸売物価指数をごらんいただきまして、八月にちょっと上がっているわけでございますけれども、これは電力向けの
C重油についての
価格決定がさかのぼって行われたということで、それが八月以降に若干反映されたという統計技術的な問題でございまして、傾向としては五十五年六月をピークにいたしまして
石油製品の卸売物価は軟調に
推移してきております。
それから、小売物価、これは東京都区部の
資料でございますけれども、ガソリン、
灯油ともにやはり六月をピークにいたしまして軟調を続けております。これはちょっと九月までの数字しか入っておりませんで恐縮でございますが、十月の数字を申し上げますと、ガソリンでリットル
当たり百五十一円、この九月百五十三と書いてございますけれども、それに
相当するのが百五十一円でございます。なお、ガソリンにつきましてはガソリン税が大体リットル五十四円含まれておりまして、それを除いてみるとどうなるかというのがこの三角の括孤に囲まれた数字でございます。ガソリンについて五十三年の十二月当時と比べてみますと、税込みで五割アップ、税抜きで七割アップというような
状況でございます。
それから、
灯油につきましてもやはり六月をピークに軟調を続けておりまして、東京都区部で十月千五百八十円、リットルに直しますとやはり八十七円八十銭、九月のほぼ横ばいということで、
灯油につきまして私どもも非常に関心を持ってウォッチをしておるわけでございますけれども、
需要期の入り口に差しかかりました十月におきましても従来の軟調傾向を続けておるというのが現状でございます。私どもの感じといたしましては、先ほど申し上げましたように、
原油の
CIF価格が
円ベースで二・八倍というように
イラン政変前に比べて上がっているわけでございますけれども、それに対しましてこの卸売物価あるいは小売
価格の動きというのは相対的に
原油価格の
上昇率よりもやや低いという形になっているわけでございまして、そういう意味で一応
価格のパフォーマンスとしてはまあまあという感じで見ているわけでございます。
それから次に、一枚繰っていただきまして、
イラン・
イラク紛争の
影響の問題でございます。これは先ほどの次長の御
説明と苦干ダブるかもしれませんけれども、ざっと申し上げますと、
イラン、
イラクの
紛争前の
状況がどうであったかというのが
参考資料六というところにございます。大体
紛争前
イランは生産量といたしまして百五十万バレル・
パー・
デー、
輸出量として六十万から七十万バレル・
パー・
デー、これをほぼペルシャ湾経由で
輸出しておった。それに対して、
イラクは、生産量が三百五十万、
輸出量が三百二十万ないし三百三十万、このうち三分の二はペルシャ湾経由、三分の一は地中海経由、こういう形で
輸出しておったわけでございます。これにつきまして、
イラクは九月二十三日から
輸出を停止、
イランについては九月二十四日ごろから停止しているというふうに見られております。
なお、
イランについて、
日本から言えば、
イランからの
輸入は先ほど申し上げましたように四月二十一日以降ストップということになっているわけでございまして、今回の
イラン・
イラク紛争による
日本への
影響という点から申しますと、
イラクからの
輸入がとまったということになるわけでございます。
そういうことで、
イラン、
イラクの
輸出が両国ともほぼ全面的にストップしているというふうに見られているわけでございます。したがいまして、単純にこの数字で見ますと、両国の
輸出を合わせまして大体四百万バレルくらいが
世界市場から消えた、こういう形になっているわけでございます。ただ、この
イラン紛争前、多くの見方といたしまして、
世界的に見て二百万から三百万バレル・
パー・
デーぐらい
原油の
供給余剰があったというふうに見られていたわけでございます。そういったこと、あるいはサウジを初めといたします最近のOPEC
各国の増産の
状況、MEESその他の
資料から見ますと、第四・四半期で大体百五十万バレル・
パー・
デーぐらいの増産が行われるのではないかというふうに見られるわけでございますけれども、そういうことと、それから
世界的に
備蓄レベルが非常に高いというふうなことを考えあわせますと、当面
世界の
原油需給というものについては一応均衡を保ち得るというふうに判断されるわけでございます。
なお、ホルムズ海峡の航行がどうなっているかというのが非常に重大な問題でございますけれども、私どもの承知している限りでは、現在までのところ支障は生じていないというのが
状況でございます。ただ、ホルムズ海峡を通りましてペルシャ湾に入ってから、
イランが
イラン領のアブムサ島あるいはシリー島、そういった
イラン領の島から南十二海里を通れ、そういった航路指定をやっております。したがって、その
関係から、従来使っておりました航路が使えないという
状況がございまして、水深あるいは海上油田の存在などとの
関係から申しまして、三十万トン以上のいわゆるULCCクラスの航行にはやや支障があるという
状況のようでございます。ただ通常使われておりますのは二十万トンクラスのタンカーでございまして、そういった通常のタンカーの航行については問題がないというのが現状でございます。
なお、このページの一番下に書いてございますけれども、最近の
日本の
原油輸入におきますホルムズ海峡通過量というのは全
輸入量の大体七〇%程度でございます。
そこで、
イラクからの
原油の
積み出しが現在停止しているわけでございますけれども、私どもといたしまして一日も早い
紛争の平和解決というのを望んでおりますし、さらに一日も早い両国からの
輸出の再開というのを望んでいるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような
備蓄の
レベルから申しますと、不幸にして
相当程度
紛争あるいは
輸出再開までの期間が続いたとしても、
日本としては何とか
石油の
安定供給の確保というのは可能であろうというふうに見ております。大体
イラクからの
日本の
輸入量というのがDD、GG合わせまして三十九万バレル・
パー・
デーでございます。
依存度といたしまして八ないし九%ぐらいということでございますが、仮に八・五%として計算をいたしますと、三十日分の
備蓄を取り崩すことによりまして大体一年間、六十日分の
備蓄を取り崩すことによって約二年間対応可能、これは計算上の話でございますけれども、そういうようなことでございます。
なお、ホルムズ海峡が閉鎖されるというようなことは万々あり得ないというふうに思っておりますけれども、仮にホルムズ海峡が閉鎖されたということになった場合には、三十日分の
備蓄取り崩しによりまして四十日前後の対応可能、こういうことに相なるわけでございます。
なお、ただいま申し上げましたように、現在の
備蓄から申しまして、あるいは現在の
需給状況から申しまして、当面対応可能というふうに申し上げたわけでございますけれども、ただ、こういった
備蓄の上に安心しているわけにはまいらないわけでございまして、やはり長い目で見まして、
エネルギーの
安定供給確保ということをわれわれとしては強力に求めていかなければいけないというふうに思っております。
石油という面で申しますと、当面
エネルギーの
相当部分をやはり
石油に頼らざるを得ないわけでございますが、
石油の
安定供給確保という観点から申しますと、もちろん埋蔵量などから申しまして中近東の重要性というものは否定し得ないわけでございますけれども、できるだけ地域分散を図っていくということが必要である、そのために
産油国とのつながりを深めていくということが必要である、あるいは自主
開発というものを進めていくことが必要であるというふうに思っております。またさらに、長い目で見まして
代替エネルギーの
開発というものを強力に展開していくことが必要であろう。そういうことによって
日本の
エネルギー供給あるいは
経済の安定というものを確保していくことが必要であろうというふうに思っております。