○川本
委員 いま私のところへ北海道の方二人から手紙が来ておるわけです。一人の方は、名前はわかっておりますけれ
ども仮にA子さんということにして、これは北見市内の方ですけれ
ども、五十一年の秋ごろから手のしびれ、頭痛等で体調が悪く、定期健診の結果、五十二年一月二十三日に帯広監督署から振動
障害者、患者として認定された。そして
最初は連日、通院治療をしておったのですけれ
ども、その後、北見市内の病院へ転院して治療を継続してまいったわけですが、ことしの七月に入って、お医者さんから、監督署もうるさいし、症状もよくなってきておるので軽い仕事についたらどうですかということを言われた。そして、その直後の七月十九日に帯広の監督署から自宅に電話があって、軽い
労働につきなさい、北見職安に連絡してあるから行きなさいという指示を受けた。そこで七月二十二日に北見職安の
高齢者障害者等特別指導員という方のところへ行っていろいろ話をしました。振動障害の患者ですから週二回通院しなきゃいかぬ、症状が天候等で悪化したときは治療しなければいけません、こういうことですから、それを
条件として、ひとつ仕事を世話してほしいということをお話しした。ところが七月二十五日から二十八日まで何遍も職安と話し合いをしましたが、八月五日になって職安から呼び出しがあって治療の
条件、職場
環境等について話し合いをしたが、その中で特別指導員から、あなたの
条件に適合する仕事は当面ありませんから、治療して完全に治してから、いま一回、相談に来てください、こう言われたというわけです。
もう一人は、これも氏名はわかっていますが、B男さんとしておきましょう。この方は留辺蘂町の人で、民間の造材や製材業者のそま夫、集材人夫として働いてきた方ですけれ
ども、五十一年の健診で振動障害と診断され、五十一年五月九日に北見
労働基準監督署で振動病患者に認定されたわけです。その後留辺蘂町の病院で全休で連日、通院治療してきましたが、ことしの三月の初めに、お医者さんから父親を通じて——この人は三十一歳です、だから若いのです。父親を通じて、若いので仕事を探してはと言ってきたそうです。お医者さんから親に言ってきた。また本人に対してもレイノー現象がほとんどなくなったから仕事を探してはどうですかと、こう言われた。そこで、この人は五月ごろから就労する気持ちで、認定前に、病気になる前に勤めておった製材業者のところへ行って働かせてくれということを頼んだところが、その事業主は、全治をしたというお医者さんの診断書を持ってきなさい、それなら働いてもらうけれ
ども、お医者さんにかかっておる、そんな患者を使う
ような仕事はないというて断られたそうです。また、四月の中ごろに森林組合を訪問して、そして何とか森林組合で仕事をさしてくれぬかと頼んだところが、これも全治したという診断書を持ってこないことには仕事をさせられない、振動障害患者には就労させることはできません、こうはっきり言ったそうです。そうなると、もう行くところがないわけです。そこで今度はお医者さんのところへ行って、全治の診断書を書いてくれ、こう言っていったそうです。そうしたらお医者さんは、あなたはまだ全治してないのだから全治の診断書は出せません。それだったら就労はできないんや、仕事ができないんやということを話したら、一遍、
労働基準局と相談してみるとお医者さんは言われたそうですけれ
ども、そのままです。
そこで私がずっと調べてみますと、これはいろいろな問題があるわけです。宮崎県の西都市という町では、お医者さんの富田次雄さんという方が「振動病患者の就労について」と、自分の治療しておる患者十人に対して、ちゃんと文書を渡しておるのです。「振動病は、はなはだしく経過の長い疾病でありますので、ある程度症状の
改善をみた患者については好
条件の職場であれば、徐々に軽作業を許可又は、すすめることがありますが、好
条件の職業とは、寒冷の職場でないこと、雨にぬれないこと、騒音のないこと、強い筋肉の緊張を長くかけないこと、等であります。もちろん振動工具の使用は禁物です。」そういうことで軽
労働を探してください、こういうふうに十人の患者にお医者さんから、いわゆる指示書というのが渡された。
そこで、ここの
労働組合の人たちが、就労させなければいけないということで県の林政課に相談に行ったところが、初めてのことですので、そういう体制はありません。職業安定所へ行ったところが、振動病で治療中の者に就職あっせんすることはできません、治療中の者は法的に
雇用契約
関係があることになっておるので、その
ような者に就職あっせんすることは
行政上問題がある。月に二日か四日就職あっせんしてくれと言われても、雇ってくれる
ような
理解のある事業場はおまへん、こう言った。農林事務所へ行ったところが、私のところは振動病問題については無関心ではないが、策もなければ体制もない、こういうことで断られた。県の職安課へ行っても、
雇用契約のある者の就職あっせんをすることは
行政上問題がある、こういう言い方で断られておるわけです。これは大変な問題だと思うのです。
労働大臣、
昭和三十六、七年だったと思いますが、当時の農林
大臣だった河野
一郎さんが奈良県の吉野郡十津川村というところへ行った。そのとき河野さんが村の人たちを集めて、どういうことを言ったかといいますと、私は農林
大臣をしておるけれ
ども日本の農村にこんなところがあるとは知らなかった。鎮守の森があって田や畑があって部落があって川が流れているのが日本の農村だと思っておったけれ
ども、ここへ来てみたら山と川だけしかないじゃないか。山と川だけしかないところに道一本ついておるだけじゃないか。そんなところが日本の農村にあるということを農林
大臣の私は知らなかったんや。言いかえれば、あなた方は——その当時は沖繩は返還になっていなかったのですが、沖繩の人間と同じだ。あなた方、勝手に日本人だと思っておるだけで、担当の農林
大臣が、こんなところに人間が住んでおるということを知らぬのやから、あんた税金払っとっても、わしらはあんたのための
行政は全然やっとらぬ。これは、きょうはいい勉強になりました、こういう話をされた。
山村というのは山と川と道だけしかないのですよ。そんなところにしかチェーンソー使うて振動病になる
ような、いわゆる山林
労働者はいないわけです。だから軽作業と言われても、山に行って働くか、それ以外は仕事ないわけです。山仕事しなかったら、ほかに何にも仕事がないわけです。そういう実情がわかっていながら、通院で軽作業をしなさい。月に四日分の休業
補償しか出さぬで、そしてあとは仕事ができない、仕事がないということを知りながら、そういう患者をほうり出しておるのが労災保険の
現状ですよ。
ことしの二月に、これも奈良県吉野郡大塔村の方ですけれ
ども、山林
労働者の方が私のところにお見えになって、実は川本さん、ことし、うちの息子が高等学校へ入学しますねん、ところが上にもう一人、高校二年の女の子がおります。家から高校へ通学できませんからね、下宿して寮へ入れて行かねばならぬぐらいの山村ですから、その二人を寮に入れて高校卒業させ
ようと思ったら一カ月最低十一万円、一人五万五千円なければ高等学校へもやれませんねん。ところが自分の体は自分が一番
ようわかっています、お医者さんに診てもらわぬでも自分の体が白ろう病、振動病にかかっておるということぐらいは私はわかっております、この手を見てくださいと手を見せるわけです。しかし私は振動病の健診は受けませんねん、振動病の健診を受けて振動病患者やとなったら仕事はできない。通院で治療せいと言われて結局は収入が減ってしもうて子供に高等学校を退学させねばいかぬ。だから私は、この下の子供が高校を卒業して就職するまでは断じて振動病の健診は受けぬつもりですねん、こう言われた。病気が悪くなれば自分の命がなくなりますよ。いままでに全国で六人も七人も自殺しておる人がおるわけです。亡くなった人はおるけれ
ども治った人はないわけです。そういう悲惨な振動病の実態を知りながら、自分の子供を育てるために、高校を卒業させるために、あるいはお嫁にやらねばいかぬ娘、そういう子供のために親は自分の命の切り売りをして、振動病患者は山で働いておる
現状じゃないですか。
そういう状態を知りながら
労働省はいままで何をしてきたのか。いま山林
労働者は、この恐ろしい振動病という職業病と闘いながら苦労しておると私たちは思うわけです。振動病の患者であるけれ
ども労働に従事しなさい。山の中で、山村には軽
労働みたいなものはないわけですよ。そして先ほど来言う
ような、お医者さんの言う
条件に適合する
ような仕事は山村にはない。だれも仕事をさせてくれないのですから、最後には、また隠れて山へ行ってチェーンソーを使うて働いて収入を得る以外にない、
生活保護も適用してくれないのですから。そうなれば、治療を一方でしておっても、一方でチェーンソーを使っておったら、病気はいつまでたっても治りませんよ。いま、そういう大きな問題を抱えておると私は思うわけです。
労働基準法の第十九条では、いわゆる業務上負傷または疾病にかかって療養中の者を解雇してはならぬという規定がありますけれ
ども、山林
労働者とか、その他の日々
雇用、日雇いの
労働者は、大体日雇いですから、解雇の制限がしてあるから大丈夫だと思うても、そんなもの、そこと縁が切れておるわけですから、軽作業に従事させなさいと言ったって受けてくれる事業主がないわけですよ。こういう現実を
労働省はどの
ように
理解をしておるのか。そういう
労働者はどの法律で守っておるのですか。
労働基準法の十九条でも守れない、そういう
労働者いわゆる療養中の患者である
労働者の
生活を保障する法律は、いまどこにあるのですか。
労働基準
局長から答弁をしてください。