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1980-11-05 第93回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月五日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君       北村 義和君    坂本三十次君       竹内 黎一君    中山 正暉君       井上  泉君    河上 民雄君       林  保夫君    金子 満広君       中路 雅弘君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      山田 中正君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第一課長   吉野  毅君         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         法務省入国管理         局登録課長   末永 節三君         厚生省授護局庶         務課長     岸本 正裕君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 十一月一日  ILO未批准条約等批准促進に関する請願  (上原康助君紹介)(第七六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 いま全世界の最大の関心事といいますのはアメリカ大統領選挙だと思うわけですが、もう大臣も十時のニュース等お聞きになったことだと思うし、また外務省としても情報は十分承知をしておると思うわけですが、カーター大統領がどうも落選をする、それでレーガン候補が当選をするということが非常に濃厚であるというニュースを聞いたわけですが、こうしたアメリカ大統領選挙の予想される結果について大臣はどういうお考えを持たれるのか、その点まず第一番目に承りたいと思います。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 選挙最後までわかりませんので、決定しますまではちょっと見通し等御勘弁を願います。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 確かに選挙はまだ結果はどうなるかわからぬ。しかし、どうなろうと、カーターがなろうがレーガンがなろうが、日本外交方針というもの、対米関係というものに変化はあるのかないのか、その点を……。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 私はどちらが勝たれようとも、日本アメリカ友好親善という基調には変わりないというふうに思っております。  この前、レーガンさんが大統領になったら副大統領候補だというブッシュさんが来たときも、私どもその話をしたのでございます。そのときも日米関係については変わりないということをはっきり言っておりましたので、私どもとしましては、いまの友好関係を発展させていく、どちらが勝たれても私はそういうふうに考えております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 日米関係基調は変わらないかもしれぬけれども、たとえば防衛費増額、つまり軍事予算増額というのをカーター大統領よりもより強く要求をしてくるのではないか、そういう懸念がされるわけですが、そういう点についてはどうでしょう。
  8. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとき、やはり共和党の対ソ関係等につきましてもいろいろ質問したのでございますが、力の平和というようなことが言葉の中で出たことは覚えておりますが、それだからといって日米関係日本に対していろいろいまの政権よりもより多いものを要求されるかどうかというようなことも、実は話題に出たのでございます。そのときもブッシュ大統領候補は、そういうことは考えていない、いろいろある場合には十分事前に協議をするということでございまして、日本にいまより以上の要望をするとか、そういうことは考えていないというような話でございました。まだ正式に決まっておりませんのでわかりませんが、その時点ではそういう話でございました。今後も私はそういうことを期待しております。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで大臣は前にカーター大統領と会ったときに、そしてまたこの間駐日大使からそのときの防衛予算についての約束を果たせ、こういう申し入れがあったというようなことを新聞紙上で承ったわけですが、そういう約束をしたのか、そしてまたその申し入れがあったのかどうか、その辺の事実関係をお知らせ願いたいと思います。
  10. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げますが、カーターさんには五月に大平総理が行って会いまして、大平総理は防衛問題は真剣に検討する、日本がどういう役割りを果たせるか防衛問題について真剣に検討するということを言ったのでございます。また私はブラウンさんにも会いました。マンスフィールド大使にも何回も会っているわけでございますが、日本防衛力を増強していくということに対する期待の表明はございますが、具体的に数字を挙げて何%にしてくれとかどうとかいうようなそういう具体的な要求は、実はアメリカでもなかったわけでございます。抽象的な話がございました。  それに対して私は、これは常に日本国民自分考えることなんだ、国民のコンセンサスがなければできませんよ、そして自主的に考えるのだということを必ず私は言っておるわけでございまして、先生いまおっしゃったような約束とか、そういうようなことはいたしたことは全然ございません。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで私は大臣にこの前も申し上げたわけですけれどもわが国外交というものは力を背景にした外交ということではなしに、あくまでも平和な力というもの、いわゆる軍事に頼らない平和外交に徹した外交姿勢を貫いてもらいたい。アメリカカーターよりもより一層タカ派と言われるレーガン大統領が出現した場合にはいろいろな形で日本に圧力が加わってくるではないか、こう思うわけですが、そういうことに対しても毅然たる態度で臨んでいただきたい。そのことは日本アメリカとの関係だけでなしに、日本と諸外国との関係において日本平和外交というものの姿を示すためにも私は非常に大事なことだと思うわけなのですが、その点について大臣は、新聞報道によると次期も防衛予算増額というようなことを積極的に推進をしておるような報道がよくされるわけで、これは私は日本外務大臣がそんな軍事力背景にした外交努力をするというようなことはとんでもない間違いだと思うわけなので、ここでもう一度大臣外交に臨む基本姿勢というものを承っておきたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、防衛力について何か発言した場合は最小限度自衛力の増強ということは言っております。それで、これは専守防衛ということでございますし、憲法上当然個別自衛権ということでございますから、他国に脅威を与えるようなことじゃない、しかし侮りを受けるようなものではないというようなことを言っておるわけでございますが、外交につきましては、先生と全然、私は意見は一緒でございます。あくまで平和外交ということで進んでいくという考え方は変わりございません。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで日本平和外交、いわゆる民主主義というものを大事にする、人権を大事にする日本外交姿勢の点から考えて、今度の金大中氏に対する控訴審死刑判決というもの、これは私は非常に憤慨にたえない出来事であるし、それに対して高島外務次官が強い憂慮の念を表明したというような話も聞くわけでありますし、そうしてきのうの内閣委員会では、鈴木総理韓国判決文要請をしているがいまだに実現をしない、そうしてそのことは非常に残念だ、こういうことを言われておるわけですが、日本韓国に対して判決文をよこせ、こう言うのに、何で韓国がこれに応じないのか。それに応じないままに金大中氏に対して死刑判決を下し、そして日本は強い憂慮の念を表現するということだけでは、私は金大中氏の問題は解決しないと思うわけです。  この金大中氏が控訴審死刑判決された経緯と、さらにはまたこの判決文をよこせというのによこさない、これに対して大臣としてはどうお考えになるか、その点承りたい。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 第二審で死刑判決が出たということにつきまして、私どもやはり金大中氏の身柄、身辺ということについて非常に憂慮の念を深くしていることは確かでございます。今後ともこの裁判の推移というのを注視して見守り、韓国側には日本考えを十分伝えていきたいというふうに思っておるわけでございます。  そういう過程判決文の問題があるのでございますが、先般も私も直接駐日韓国大使に話しましたし、昨日も高島次官から話しておるわけでございますが、われわれとしては判決文の入手ということにつきましても、今後のことを考えれば渡してもらうことがいいじゃないかということで、やはり今後とも粘り強く、判決文を渡してもらうということにつきましては努力してまいりたいと思います。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣は、いまの韓国全斗煥政権というものを民主的な手続によって生じた政権である、いわゆる民主主義を守る政権だというふうに理解をしておるでしょうか。その点どうですか。
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 韓国の内部の問題でございますから、余り立ち入って言うのはいかがかと思いますが、憲法国民の投票にかけてこられた憲法草案というものを決めた、これから大統領選挙国会議員選挙ということが政治改革のプログラムに載っているわけでございますから、それが平静に国民の支持を得て行われていくことを期待しますし、われわれとしましてもその過程をよく見守っていくというのが現状でございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 これはアジア局長にお尋ねしたいと思うわけですが、こういう金大中氏に対する死刑判決に対して深い憂慮外務省としてはしておる。その深い憂慮というのは具体的にどういう行動を行うというおつもりであるのか、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  18. 木内昭胤

    木内政府委員 先ほど大臣も申されましたとおり、私どもとしては機会あるごとに先方の当局者関心を伝えておるわけでございます。東京では大臣から崔慶禄大使、それから事務次官も同大使に、それから韓国におきましては須之部大使以下館員がそれぞれのレベルにおきまして、この問題につきまして突き詰めて議論もし、かつ種々の私どもの希望を表明いたしておるわけでございます。  具体的にどういう行動かと申しましても、特段のこういった行為、行動といった様式ではございませんが、なるべく接触を密にしまして私ども関心を表明しておるということに尽きるかと思います。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 鈴木総理も、この判決文要請をしておるのにそれが実現をしないということは非常に残念だ、これは政治決着と絡み合う問題だからどうしても必要だ、このようにきのうも内閣委員会で言われておるわけですが、こういうわが国として必要なものを、友好国と称する韓国が拒んで今日まで日をおくらしてきて、それで死刑判決が出た。そんならまた次の大法院最高法廷があるからというようなことでおくらせておるうちに、金大中氏が死刑を執行されるというような心配はありませぬですか。  この点、大臣としてはどう——深い憂慮の念というものは、ただ心配するだけではいかぬ。おまえ、体が悪い、心配だ、心配だと言うだけではなく、お医者に診せるなり何なり対応措置というものを講じなければ、到底金大中氏は救われないですよ。大臣、どうですか。
  20. 伊東正義

    伊東国務大臣 事が韓国の国内問題でございますし司法の問題でございますので、私どもはそこは十分気をつけながら日本側意向も伝え、またいろいろなルートを通じまして実はその意向も伝えるということを、私ここで一々申し上げませんが、やっているわけでございまして、私も先生のような御心配の結果になっては、これは日韓関係から考えて、本当に私がいつも言う、ひびの入るようなことになるおそれがございますので、私どもとしましても先生と同じような心配を持っていろいろの意向を伝えておるというところでございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 これは別に食糧をそうしたことのかけ引きに使うとかいうようなことを考えるものではないですけれども韓国日本に対して、非常にいま凶作であるということから約五十万トンの食糧の提供を申し入れておる。それで十年前に貸し付けた米に対しても、これは現物で払うということになっておるけれども、もう現物で払えないからといって、安い国際価格で、金利も何もつけずに金で払う、こういうふうなことで日本政府は了解を与えて、それで五十万トンもほぼ約束をする段階に来ておるということに聞くわけですが、日本に対してはいろいろなことを要求してくる。こっちが要求したことは何も実行しない。これは私は本当に韓国のいまの全斗煥政権というものは全く日本を無視しておる、こういうふうに思わざるを得ないわけです。  これはアジア局長アジア情勢については非常に詳しいですが、こういう全斗煥体制日本は本当にいいかげんな扱いを受けておるではないか、こう思うわけですが、事務当局としてはそういうふうな心配はないですか。
  22. 伊東正義

    伊東国務大臣 私からちょっとお答え申し上げますが、実は先生がおっしゃったように、何も日本との話し合いに応じないとか、まあ全般の問題ですけれども、そういうことでなくて、たとえばこの間は北海道の長年問題になっておりましたトロールの漁業の操業の問題について済州島と両方で話し合いをつけるとか、いろいろ話し合いをできるものはやっているわけであります。  ただ、判決文の問題は、先生おっしゃったようにまだこっちに手交されていないということでございまして、韓国は隣国ですから、これにひびが入らぬようにいろいろな配慮をしながらやっているということでございまして、一方的に全然話にならぬということではない、いろいろ話をしているのでございますから、その点は先生ひとつ誤解のないようにお願いいたします。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 これは仮定の問題ですから答えないと言えばそれまでのことですけれども、今日まで判決文が来ないわけですから、判決文のおよそのめどをつけなければならぬと思うのです。判決文が来なかった場合には、そしてまた金大中死刑執行された後で判決文が来るとかというような状態になった場合には、これは一体どうなりますか。  これは本当にそういう軍事体制の中で金大中氏を抹殺をしていこうとする、それに日本も手をかしておる、いわゆる民主主義を守り、基本的人権を守る日本政府全斗煥体制に手をかした、こういうことになるわけで、これはお隣の韓国の問題というのではなしに、日本主権が侵害された結果起こった問題であり、それで金大中日本から拉致されていって向こうで捕らえられ、自由を拘束されて、そして今日の状態というものを生み出してきておるのですから、そういう点で日本国家主権にかかわる問題だ、こう私は思うわけですが、判決文をよこさぬときにはどうするのか、その点についてまで考えていなければいないで結構ですから、大臣の決意をお聞かせ願いたいと思います。
  24. 伊東正義

    伊東国務大臣 私ども判決要旨はもらっているわけでございまして、その要旨政治決着には触れていないという判断をいたしているわけでございます。ただ、判決文最後まで入手できるようにという努力を今後ともひとつやっていくということでございます。先生おっしゃったように、あの拉致事件がありましたので、韓国の国内問題でございますが、われわれはやはり重大な関心を持って見ているということでございます。  ただ、主権侵害につきましては、そういう新しい証拠が出れば別でございますが、あれはあの段階ではなかったというのが政府の見解でございますので、その点は先生と違うのでございますが、しかし拉致事件という事件はありましたので、われわれは金大中氏という人の身辺について非常に憂慮しているということでございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 きのう総理は、政治決着との絡みは問題だから、この判決文はどうしても要る、こう内閣委員会で言われたでしょう。だから、いまその要旨は私もいただいておるわけですけれども、やはり判決文は要るわけですから、その点については総理ですらそう言っておるのですから、担当の外務大臣としてはなおさらのこと、この要旨政治決着には抵触しないという認識を持つことはちょっと早計じゃないですか。やはり全文を見て、そこで政治決着に抵触するかしないかというようにお考えになるのが思慮深い大臣としては当然じゃないかと私は思うわけですけれども、この点について……。
  26. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理の御発言というのは、私おりませんでしたのでまことに申しわけありませんが、また伺ってみますが、私どもは従来、要旨政治決着とは触れないものだという判断をしているわけでございます。  ただ、判決文と言っておりますのは、判決文をもらいましても変わることはない、要旨というのは重点、大切なところを書いてあるはずでございますから、ないと思うわけでございますが、なおそれを確認するという意味判決文を渡してくれ、こういうことを言っているわけでございます。私どもは、従来どおりの考え方を持っているというのが現状でございます。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで判決文が全文来ないうちに金大中の刑の執行ということはあり得べからざることだから、その点については厳重に申し入れをしておきたい、こういうふうに思うので、その点については大臣に返事はここでもらいません。私自身そういうことをしないようにということで強く申し入れておきたいと思います。  そこで、韓国から米五十万トンを日本要求が来ておるということですが、これはどういう取り扱いになっておるのか、事務当局で御答弁願いたいと思います。
  28. 木内昭胤

    木内政府委員 例年であれば韓国の米作は五百五十万トン前後、それが三割方減収である。これはわが国において起きました冷害と同じ冷害に見舞われて、米の確保に韓国としては非常に苦慮しておるという事実は、私ども承知いたしております。この不足分の百万トン以上のもの、そのうち半分近くはアメリカを通じて確保しつつある由でございます。残りの半分につきましてわが国にこれを求めてきておることも事実でございます。現在食糧庁とも相談いたしまして、どのように対応するか結論を今後出していきたい、かように考えております。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう、五十万トンをどうこうするということはまだ別に決まってないということですか。
  30. 木内昭胤

    木内政府委員 結論は出ておりません。目下のところ年度内にどの程度物理的に積み出しができるか、その辺にもいろいろ技術的な障害もあるようでございまして、その辺も合わせまして、また来年度分としてはどのくらい手当てができるかということ、その辺の技術的な詰めをしておる段階でございます。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 最近新聞紙上では、いままで政府当局北朝鮮北朝鮮と言うたのを朝鮮民主主義人民共和国という正式国名を使い出した、ということはなしくずしにやっておるようだというような新聞論調であったわけです。しかし大臣もこの前の当外務委員会でも朝鮮民主主義人民共和国という名前を使って言われたわけですが、もうここらあたりで、朝鮮民主主義人民共和国というものが朝鮮半島に現存しておるということについての認識はしておると思うわけですが、その点どうでしょう、大臣
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国という言葉を私は使ったことは何回もございます。ずっと前の大臣からも方々で使われておるのでございまして、これは北朝鮮と言い、あるいはソ連とか西独と言っているようなことと同じ呼称でございまして、北朝鮮と言っても私はちっとも差し支えないのだと思うのでございますが、これは呼び方の問題でございまして、特に政策的な意味を持たせて発言しているという意味じゃございませんので、その点はひとつ御了承を願いたいと思うわけでございます。  ただ、北朝鮮につきましてはわが国は正式な国交がございませんので、われわれは北朝鮮とは経済的あるいは文化的な交流という面でいま考えているということが現状でございます。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 その北朝鮮というのは朝鮮民主主義人民共和国のいわゆる呼称ということで理解をして、私もこれから政府当局北朝鮮と言われることについては、それをそういう国は存在しないのだというようなことは言わないつもりですが、そこでアジア局長、前に私が質問をしたときに、これはことしの三月ですが、「北朝鮮国際法上の国家としては現段階では認めておりません。」という御答弁をなさっておるわけですが、国際法上では日本だけが認めていないだけであって、よそはずっとそれぞれの国々が認めておるというわけですが、そのことについては、今日もそのお考えには変わりないですか。
  34. 木内昭胤

    木内政府委員 わが国としましては、朝鮮半島におきましては大韓民国を唯一の国であり、かつ政府として考えておるわけでございます。アメリカその他わが国と同様の考えに立つ国も多数ございますし、また逆に北朝鮮だけを承認しておる国もございますし、双方を認めておる国もあるわけでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 あなた自身そういうふうな答弁をなされるわけですけれども、たとえばあなたの持論としては、南北両朝鮮同時国連加盟とかいうようなことを言われておるわけですが、ということは、この朝鮮民主主義人民共和国というものをわが国としてはやはりそういう国際法上では認めてないけれども、事実認識としては朝鮮民主主義人民共和国の存在を認識しておる、こういうことだと私は思うわけですが、その点は別に問題ないでしょう。  そこでお尋ねするわけですが、私はそのときに、朝鮮、つまり北朝鮮で終戦当時非常に日本人の多数の者が難渋をきわめて、そして万余にわたる死者が出て、本当に裸一貫で朝鮮から引き揚げてきた、そこでぜひ、その自分たちの親が、あるいは息子が、夫が死んだその地へ、墓参というまでいかなくとも、その地を踏んでそこで合掌だけでもさせてもらいたいという遺族の切なる願いを訴えたときに、その北朝鮮とは国の関係がないからできない、こう言うので、それからいろいろ話をしているうちに、「日本赤十字社等にお願いしてやるつもりでございます。」こういうようにアジア局長も言われ、その当時の大来外務大臣も、「具体的な件についての御提案がございましたから、これは私どもとしても赤十字等話し合いを進めてみたいと考えます。」こういうふうに言われてきたわけです。  それからいろいろと忙しいこともあったろうと思うわけですけれども、わが外務省としてはその辺の手続はもうとってくれておるだろうか、こう思いまして、私日赤に問い合わせをしたところが、日赤の方では、まだ外務当局からはその辺の要請が来てない、何も聞いておりません、こういうことであったわけです。  こういう国会答弁をなさったことを実際に行政が仕事をするのは、どれくらいかかってするものですか。大臣どうです。
  36. 木内昭胤

    木内政府委員 井上委員御指摘の問題につきましては私ども十分関心を持っておりますが、先ほど触れられましたとおり、十分に積極的に対応しておらなかったという点については、私、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。  この問題の処理につきましては、御承知のとおり北朝鮮との関係もありまして、いろいろ難渋すると思いますが、ぜひ私どもとしては、井上委員の御意見も伺いまして、できるだけこれまでと違いまして積極的に取り組みたい、かように考えております。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣どうですか、この問題について。
  38. 伊東正義

    伊東国務大臣 どこでしたか、千葉県松戸でしたか、すぐやる課というのをつくりまして市民の便宜を図っている。私はあれが行政の本筋だと思うのです。ああいうことをして市民、住民のお世話をする。私は、お約束したことあるいはこうやったらいいと思うようなことは、いろいろそれは途中で経緯はございますが、なるべく早くそういうことを実施に移す努力をするということは、行政官として当然やらなければならぬことだと思っております。  いまの点がどうなったか、私、過去のことで知りませんが、いまお話伺いましたので、これは日赤の方とアジア局も最近いろいろ相談をしているということを聞いているのでございますが、また外務省としましてはできるだけの努力はしてみます。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣アジア局長から誠意のある見解を披瀝されたわけですから、ぜひひとつそのことを実現するようにお願いをしたいと思うわけです。  そこで、厚生省にお尋ねをするわけですが、この問題について新潟県の衆議院議員の白川さんを通じて鈴木総理に私信が出されておるわけです。  つまり、全文読むと長くなりますけれども、「子供を亡くした親も老齢となり亡くなる方も多くなりました。肉親を埋めて来た朝鮮の土に座り合掌出来る日の一日も早からんことを思いますと、気があせります。私達の力には限界がございます。何卒、目的実現に御尽力賜りたく、心よりお願い申し上げます。」  これは新潟県の方が白川先生を通じて鈴木総理大臣はお手紙を差し上げた。だから普通の郵便で送ったのではないですから、ぼくも白川議員に問い合わせたところが、その手紙を受け取って渡した、こういう話ですから、すると、総理大臣が一々そのものをよるわけではないから、恐らく厚生省の方に連絡もあったのではないか、こういうように思うわけですが、どうでしょう。
  40. 岸本正裕

    ○岸本説明員 現在までのところ、まだ当方では承知いたしておりません。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 これは私は、総理にたくさん手紙が来たものを一々どうこうということにはそれはならぬと思うわけですけれども、現にこの朝鮮民主主義人民共和国で、平壌とか咸興とか元山とかいうところで何万人という日本人の死亡者があり、引き揚げ者が難渋をきわめて引き揚げてきた、そのことについては厚生省は承知しておるのか、どういうふうに実情を理解しておるのか、厚生省としての見解を承りたいと思います。
  42. 岸本正裕

    ○岸本説明員 北朝鮮地域におきまして、主としてソ連参戦後の終戦直前から非常に混乱があったということでございます。そこに住んでおられた方々が、食糧の不足でありますとか伝染病、また越冬期におきましては非常に厳しい寒気等によって非常に窮乏をきわめたという実情にあったということは十分承知しているわけでございます。それらの中で多くの方々が引き揚げる前にその地におきまして亡くなられたということも承知いたしております。  私どもといたしましては、その当時の引き揚げ者、帰還者等からいろいろと情報をお伺いする等によりまして当時の実情の把握に努めてきているわけでございます。そのほか、死没者につきましては、同胞が北朝鮮の地域に埋葬されたというようなことも伺っておりますので、その埋葬の場所等につきましてもいろいろと当時の事情の把握に努めてまいって、大分資料の整備も進んでまいっているわけでございます。  先生の御質問にもございますように、それらの方々の遺族が墓参等をいたしたいということでございますので、私どもといたしましても、これは何といたしましても相手国との円満な了解のもとに進めるのが本筋でございますけれども、日赤ルート等で何とかならないかという御趣旨で外務省の方からも努力をされるということでございますので、私どももぜひその実現ができますならば協力をしたいというふうに考えている次第でございます。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 この「三十八度線以北の主要地点死亡者概況」というのは外務省と厚生省とでつくった資料だということでありますが、大体死亡者数が約二万五千人、咸興地区だけでも八千人近くおるわけですから、遺族の気持ちというのはソ連で亡くなろうと中国であるいは南方で亡くなろうと同じことだと思うのですが、朝鮮でのこうした状態に遭った遺族に対する厚生省としての手だてというものも非常に立ちおくれておるではないか。  これは一つは運動する者が非常に弱い。私のところにもあちこち手紙が来る中で、きのうもお渡しをしたわけです。その当時十四歳の女の子が当時の難儀を自分でずっとスケッチに書いたもの、「さようなら朝鮮」という、引き揚げ船に乗った状態、それから朝鮮における難渋の一部をコピーをしてあなたにも差し上げたし、大臣にもアジア局長にも渡してくれ、こう言って私は差し上げたようなわけですが、やはり運動がないとそこに行動が起こらぬというのは普通でありましょうけれども、こうして運動が、こういう声が、非常に強いもの、切実なものがあるわけなので、その点について厚生省としてもいま一歩、それは外交関係のない国ですから、だから外務省かあるいは赤十字を通じてやっていただかなければしようがないと思うわけですが、いま一歩この問題に厚生省も力を尽くしてもらいたい、こういうふうに思うわけです。  厚生省としてはどう理解をされておるでしょう。
  44. 岸本正裕

    ○岸本説明員 ただいま申し上げましたように、厚生省といたしましてもできる限り資料の整備に努めてまいったわけでございますので、今後外務省ともよく相談し、また日赤ともよく相談をして、できるだけ実現できるように努力をしていきたいと思っております。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで大臣朝鮮民主主義人民共和国との関係は国として国交はないとして認めてないけれども、文化とか経済とかで交流は深めていく、こういうことがよく言われておるわけです。この朝鮮民主主義人民共和国に対するわが国の態度というもの、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  46. 伊東正義

    伊東国務大臣 朝鮮半島の平和、これは日本にとってもアジアの平和にとっても非常に大切なことでございます。政府としては、南北対話というものが始まったわけでございますので、あれが平和裏に行われて一つでも二つでも問題を解決していく、やがて平和的な統一ということまで目標にしているわけでございますので、そういうことを見守っている。話し合いの環境をつくっていく、お手伝いができることがあったらするというようなことで、いままでにも中国にも話し、アメリカと会談するときにも常に朝鮮半島の平和ということを話してきたわけでございます。  ただ、先生おっしゃったように北朝鮮とは国交がございませんので、わが国としましては政治的な問題は差しおきまして、経済、貿易の関係でございますとか、学術、人の交流、そういうものを積み重ねていくというのがいまの政府の態度でございます。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで私はもう一つこの機会にお尋ねしておきたいことがありますので、朝鮮問題等につきましてはまた次の機会ということにいたしたいと思います。  いま新聞紙上をにぎわしておる話題にナヒモフ号の引き揚げの問題が出ているわけですが、これについてはこの間三十一日にソ連大使から中止せよということを厳重に申し入れをされてきた。それからソ連のタス通信にも三十一日にソ連に無断で行っておる、こう言って強い抗議の論調が載っておる、こういうことで、私はそのナヒモフ号の引き揚げによってもたらす政治的な日ソ関係というものを非常に憂慮する者ですが、これについて外務省の正式見解はいままで発表されてきたとおりでしょうか。この抗議に対してどういうふうにお答えなさっておるのか、その点ひとつお答え願いたいと思います。
  48. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は、ポリャンスキー大使話し合いをしました欧亜局長が出席しておりますので、欧亜局長から報告をいたします。  日本政府の見解はこの前のとおりでございまして、十月三十一日にソ連側からまた申し入れがありましたが、これは第一回目の申し入れを敷衍しただけのものでございますので、それは受け入れられないという旨を答えまして、正式にまた反論する権利は留保するということで欧亜局長が応対いたしましたので、詳細は欧亜局長から答弁いたします。
  49. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 十月三十一日のソ連側からの申し入れでございますけれども、これは基本的にはいま大臣から申し上げましたとおり最初のソ連の申し入れ、つまり十月三日のソ連の申し入れの主張を繰り返したものでございまして、そして前回の主張を繰り返しつつ十月二十日に日本側から行いました回答を不満足とするという内容のものだったわけでございます。  幾つかの具体的な論点について御報告申し上げますと、まずソ連側は、ナヒモフ号は日本海軍によって拿捕されたものではない、これは沈没したものである、だから同艦を戦利品とみなすという日本側の主張は受け入れられないということを申したわけでございます。それに対して私の方からは、日本側の公式記録によればナヒモフ号を拿捕したということは明白な事実であるということを申したわけでございます。  それから二番目に、先方から、現在は日ソ間に戦争状態がない、そのような状況のもとにおいて同艦を戦利品とみなすという主張は不法であるし常識にも反するということを申しましたので、私の方から、ナヒモフ号が当時日本海軍によって拿捕された時点において所有権は日本側に移ったのであるから、現在日ソ間に戦争状態があるかないかということは無関係であると反論したわけであります。  それから三番目に、ソ連側の方から、一九〇五年のポーツマス条約にこの件については何も規定されていないという主張を行いましたので、私の方から、ポーツマス条約に規定されていないということ、つまり当時の帝政ロシアがこれにつき何らの要求をなさなかったということが、むしろナヒモフ号が日本に戦利品として捕獲されたということをソ連側が認めた、それは当時のロシア側が当然のこととして受け取っていたことを意味するという反論をいたしました。  それからその次に、先方から、このような外国軍艦にある財産を略奪することは許されない、そのような行為は本質的に海賊行為と余り変わらないものであるということを申しましたので、これに対し私の方から、外交的な申し出の中で海賊行為と余り変わらないというような表現をお使いになることは適当ではないのではないかということを二回にわたって申し入れた次第であります。  それから五番目に、先方の方から、現在は沈没地点は日本の領海内であるけれども沈没の時点においては公海であったということを主張の根拠の一つといたしましたので、この点につきましては私の方から、公海か領海かということは所有権の所在とは無関係である。先ほど申したとおり、拿捕の時点において所有権は日本側に移ったのであるから、その沈没の時点で公海か領海かということは無関係であると反論をした次第であります。  それからその次に、先方から、以上のような理由によって作業を即時中止するようにとの主張がございました。これに対して私の方からは、ソ連側はナヒモフ号に対して何らの権利も持っていないのだから、日本に引き揚げ中止を要求する根拠はないという反論をしたわけであります。  それから最後に、先方から、本件は日ソの善隣関係の発展にこたえるものではないという憂慮の念を表明いたしました。この点について私の方から、日ソ善隣関係の発展についてはわれわれも心配しているところであるけれども日本の国内世論については在京のソ連大使館がよく御承知のとおり、七十五年もたってからソ連がナヒモフに対する所有権を主張したということについて大多数の日本人は唐突の感情を持っているということを指摘いたしまして、いずれにせよ、今回のソ連側の申し入れについては、いま申したような理由によりこれを受け入れることはできない、ただし、追って正式に日本政府の反論を行う権利を留保するということを最後に申したわけであります。  以上が、三十一日の日ソ間の応酬の概要でございます。
  50. 井上泉

    井上(泉)委員 そうなると、ナヒモフ号は日本のものだ、これを引き揚げておるのは民間の会社で、これに資金を出しておる船舶振興会の会長の笹川良一、この金が笹川良一個人のものか振興会の金か、そのことを私は承知をしませんけれども、これがこういうものを引き揚げるに当たって外務省と打ち合わせか何かされたのでしょうか、それともそのままやったのでしょうか。
  51. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 もちろん、ソ連側から申し入れがありました後、関係者の方からいろいろ事情は伺っておりますけれども、引き揚げの前に事前に、こういうことをやるから外務省の了承をほしいとかそういうたぐいのアプローチはございませんでした。
  52. 井上泉

    井上(泉)委員 これは国有財産であるのかどうかは別としても、日本のものであるということには間違いない。日本のものであるのを一個人がこれを引き揚げをしておる、しかもそれに対して笹川良一氏はどういうことを言うたかというと、ソ連が所有権を主張すれば返還する、あるいはまた北方領土を返してもらったらこの財産は全部戻すのだとか、まことに不謹慎な言動を弄しておる、こう言わざるを得ないわけです。  こうしたことでこういう個人が、会社は日本開発会社というのでやっておるけれども、その資金は船舶振興会の会長の笹川良一が出して、そして揚がったらおれのものじゃとわがもののごとく主張する。そういうことに対して外務省としては、何ぼ引き揚げても、それに対する代償はあるいは支払うかもしれぬけれども、それをそっくりそのままおまえが取り上げることはいかんぜよ、これくらいの話はされたかどうか。
  53. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ナヒモフ号の所有権が日本側にあるということは先ほど申し上げたような理由により明確なわけでございますけれども、しからば日本側のどこにあるかという問題になるわけでございます。その点につきましては、国内のそれぞれの関係官庁の方において検討されている段階承知しているわけでございます。  外務省といたしましては、ソ連からの申し入れがあり、これに対して国際法の解釈としてソ連側に権利がないということを認定したわけでございまして、その後の国内的な処置の問題はそれぞれの国内の関係官庁の方において御検討になる、そういうことと了承いたしております。
  54. 井上泉

    井上(泉)委員 外務省は、これは日本のものだとソ連に言って、あとは国内の方で、これがどういうものに属するかということは国内法に照らしてとかというようなことを言うけれども、私は国民が納得しないと思うわけです。笹川良一氏のこういう行為を日本政府が保護してやるようじゃないか、保護してやっておるのか、あるいは笹川良一が、船舶振興会がこれで莫大な利益を得るようなことに手をかしておるではないか、こういうことを国民としては素朴に感ずるわけであります。  その点は、国内法でどうあろうとも日本国のものである。その日本国の政府のものかあるいは個人のものかといったら、こんなものが個人のものであるはずがないわけでしょう。これが戦利品ということならやはり日本国のものであって個人のものではないということは、はっきりしておるじゃないですか。その点まだ疑問があるでしょうか。
  55. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 国有財産であるかないかという点につきましては大蔵省の方で目下鋭意検討中の段階承知いたしております。
  56. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、そのような国有財産でなかった場合にはどうなるのですか。どこのもにのなるのですか。
  57. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいまの御質問は外務省としてお答えできる範囲外だと存じますので、お許しいただきたいと思います。
  58. 井上泉

    井上(泉)委員 外務省としてお答えできないと言ったって、あなたは日本国の官吏でしょう、所属が外務省だというだけでしょう。  そうすると、これが日本国のものであるということは間違いない、これはもうはっきりしていることは間違いないでしょう。だから、戦利品であるならば日本国のものであって、これを国有財産でないと位置づけるのは、そこらあたりあなたもっと勉強して対処しなければ、ソ連と話し合いをするにもできやしないじゃないですか、どうでしょう。
  59. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは私が答えても局長の答えと一緒なんですが、実はこの間閣議で、散会の前に私から、ソ連からこういう申し入れがあったから、ソ連に対して、これは拿捕したのでソ連のものではないということをはっきり返事した、あとの所有の問題、これをどう扱うかという問題は関係各省で早急に相談してもらいたいということを大臣みんなにお話ししたわけでございます。  そのときに真っ先に大蔵大臣が、まず国有財産であるかどうかおれの方で検討しているんだということの話がございましたので、実は私ども関係各省の御相談で早く決めてくださいということで、一応その結論を見ているというのが現状でございますので、いまここで先生は厳しく御追及になっているのでございますが、現実はそういうことでいま各省で検討してもらっているということでございます。
  60. 井上泉

    井上(泉)委員 それから、これはここで論議をするなにじゃないと思うのですけれども日本船舶振興会の会長として振興会の金でこれをやるとすると、これは非常に問題だと思うので、この点について調査を進めていかねばならないと思う。  それから、国有財産でないというものに対して国の権利を主張することは当を得ぬのじゃないか。国有財産でないが、これは個人のだれにも属していない財産です、ただ引き揚げた者の権利という形でこれを始末するということは非常に誤った行き方だと思うし、いまそういうふうに関係各省で話をしておるというから、決着はまだなかなかつかぬと思う。  そこで、ソ連は非常に強い姿勢で抗議を申し入れてきておる。それで笹川氏は勝手なことを言っておる。そういう中でこの財宝が、すでに一定のものが揚がってきておる。プラチナが何千万円ものものが揚がってきておるという話ですが、これがどんどん揚がってくるようなことになってきたときにはよけいに問題がこじれてくるし、それで相手方、笹川良一氏に対しても、これは国有財産だからおまえが引き揚げてもおまえに対してはその引き揚げの費用以外は払えぬぜよということを日本政府としてはきちんと筋道を立てておかなければいかぬと思う。  それと同時に、ソ連が強硬な姿勢でやってきて、これはソ連のことですから、まさか軍艦でやってきて実力で排除するというようなことはないと思うのですけれども、しかしソ連のいままでのなにから見ると、あるいはという心配もなきにしもあらずですが、そういう心配はいささかもないでしょうか。ソ連が、この引き揚げに対してもう幾らやめい言うてもやめぬから実力でこれを阻止する、こういうふうな冒険をしでかすという心配はないでしょうか。
  61. 伊東正義

    伊東国務大臣 本件は現に領海の中でございますし、私どもは、ソ連側による実力行使というようなことを全然予想はしておりませんので、そういう場合どうするとかそういうようなことはまだ一回も相談したことはございません。そういうことはあり得ないことだというふうに私ども考えております。
  62. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうふうないろいろなものを、どこかのところでまた一つ引き揚げを始めたとかいうような新聞報道もされておるわけですが、こういうものについては、国のものか、あるいは日本のものであるけれどもだれのものかわからないというようなものの取り扱いについては、私はやはりこれは事務当局で各省と話し合うということはなかなか困難だと思うわけです。  そこは大臣がこういうことについてはきちっと整理をして、そこでこれを引き揚げをする者に対しては要求があった場合にはそれを許可するとか、いわゆる許可、認可ということもなしにやっておるということを聞いておるわけですが、こういうものについては一定の取り扱いの基準というものを決めて対処するようなやり方をせなければならぬじゃないか、こういうように思うわけですか、その点大臣の御見解を承って、私の質問を終わります。
  63. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままでそういう基準をつくるとかいうことをやっておりません。これは条約の問題、国内法の問題そのときの状況によってまたいろいろ違うことがあるのだろう、沈没の原因とか、捕獲されたかとか、管轄権を放棄したのかとか、いろいろ調査もしてみなければならぬこともございますので、一概にぴしゃっと基準を決めるというのはむずかしいのだろうと私は思うわけでございますが、せっかく先生の御提案がございましたので、閣議の前にでも大臣らが集まる機会がありますから、そういうときにみんなの意見も聞いてみるということをしたいと思います。
  64. 奥田敬和

  65. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカ大統領選挙、十一時現在で代議員数五百三十八中レーガン候補が六十七、カーター候補ゼロという数字が手元に出てまいりました。いまお尋ねをして調べていただいたところによりますと、NBC予測ではレーガンが二百七十ぐらいでカーターが十五ぐらいにとどまるのではないか、そういう予測も出てまいっております。  先ほど井上議員からのお尋ねに、大臣最後まで選挙というのはわからないとおっしゃいました。なるほどそうであるに違いありませんが、大臣は申し上げるまでもなく、われわれ議員仲間は、少なくとも選挙というものを通じました経験則に照らしまして、およそこれからすればおのずと勝敗は決しているんじゃないかというふうに考えてよいと言わざるを得ません。いままで大統領選挙の最中ニュースを通じていろいろ流されてまいりました予測がどんどん出てきているわけであります。  そこで、そういうことを踏んまえて大臣にお尋ねをいたしますけれども、先ほどカ−ター政権からレーガン政権にもしかわるということがあったとしても日本の対米外交の姿勢は変わらない、このようなお話でありましたが、しかし、いかんせんレーガン候補カーター候補が大統領選挙を戦っている最中伝えられてまいりました両者間の政策の上では、大変な開きがあるわけであります。軍事面においてしかり、経済面においてしかり、人権、内政面においてしかりであります。  そういうことから、特に軍事面において、日本国民からするとどう見てもレーガン候補というのはタカ派に映っております。特に、日本に対して軍備の増強を迫るのじゃないか、わけても自主軍備を日本として持つことが好ましいと考えている候補である、わけてもわれわれが憂慮すべきは、核軍備を将来は持つことを期待している候補ではなかろうか、こういう向きも含めて、いろいろ取りざたをされてきたことも事実であります。  したがいまして、きょうこの段階外務大臣から、やはりレーガン有利、むしろもう当確というふうに見てよいこの状況で、レーガン候補日本軍事面に対して考えられてきた期待と申しますか、いろいろな物の考え方と申しますか、それについて大臣なりのコメントをまず最初に伺いたいと思います。いかがでございますか。
  66. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もいま十一時の予想を見まして、優勢ということは覆うべくもない事実だろうと思うわけでございますが、先生選挙をおやりでございますからおわかりのとおりで、最後最後まで本当にわかりませんので、決定的なことはお許しを願いたいと思うのでございます。  先ほどお答えしましたように、ブッシュさんとアレンさんがこの前来たときに、今度はどういう立場になるか、私は会いまして共和党の政策につきましていろいろ議論をしたのでございます。そのときにブッシュさんから力による平和という話が出たことは確かでございます。それから対ソ関係について、SALTIIの問題でございますとか軍備の問題でございますとか、いろいろ話が出ました。それは確かでございます。  それで私は、日本アメリカとの関係、ちょうど自動車が問題になっておりましたので自由貿易の問題それから台湾関係にいささか心配な発言がありましたのでその問題、それから日米関係、特に防衛の問題についていろいろ質問もし、議論もしたのでございます。そのときのブッシュさんの意見では、日本に対してもっともっと防衛力を増強すべしとか、そういう強い期待というようなことをする意思はないんだ、経済については自由貿易主義を守るんだというような発言がございまして、いろいろな日米間の問題については事前によく協議するということを最後に何回も繰り返して言ったというのが、あのときの話し合いの内容でございます。  私どもは防衛の問題については、いつも申し上げておりますが、自主的に、国民のコンセンサスの上に、憲法の許される範囲で、自衛権に基づく防備の整備をやっていくんだということを申し上げているとおりでございまして、たとえレーガンさんが勝つというようなことが、仮定の問題でございますが、あったにしても、日本としては主張すべきは主張し、平和外交をやっていくんだという主張を貫いていくつもりでございます。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 いま大臣の御所信のほどはお伺いできたわけでありますけれども、もしレーガン候補大統領の席につかれるという前提で考えました場合に、いま大臣がお話しになりました対ソ外交の上から言いますと、カーター政権当時と比べましてデタントということに対する状況が変わると思います。これはもう一般がそのような意味で受けとめているわけでありますが、大臣としてはこの問題に対してどのようにお考えになりますか。
  68. 伊東正義

    伊東国務大臣 当時まだ大統領につかれて正式な発言があったというようなこともないその段階ブッシュさんの副大統領候補の話でございまして、それは先生にさっき私が申し上げたとおり、ソ連に対しまして力の平和といいますか、そういうことを考えているんだという話がありました。それ以上にSALTIIの批准の問題をどうするとかそういうふうな話まで具体的にはなかったわけでございます。でございますので、私は、もしもレーガンさんが当選するというような場合に具体的にそれをどういう形であらわされるかということにつきましては、いまここでいろいろな予測をすることはこれまた適当でないと思いますので、力の平和ということの話があったということだけを申し上げておきます。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 これは新しい大統領との間で相変わらず、カーター大統領になろうと新しくレーガン大統領になろうと、日本としては毅然たる姿勢というのを意思表示する必要がどうしてもある問題であると私は思います、一つの新しい段階ですから。  そういうことからいたしますと、総理の訪米などというふうなことが二、三伝えられたという経過もございますけれども外務大臣として、アメリカ側とのいろいろな具体的な話し合いと申しますか日本の意思表示を鮮明にされるという時期は、大統領就任後適当な、しかし近い日に考えられてしかるべきだと思いますが、こういうことについての御用意はいかがなんですか。
  70. 伊東正義

    伊東国務大臣 新しい大統領ができるとすれば一月の二十日でございます。それからでございますので……。  総理の訪米というのはこの間予算委員会総理が言われただけで、あと私は具体的に総理と御相談をしておりませんのでわからぬわけでございますが、日本側考え方というものは、先生おっしゃったように新しく大統領ができればどういう時点かで、日本はこう考えていますということをはっきり言うのが適当だというふうに私は思っております。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 もしレーガン大統領ということになりますと、基本的には保護主義の立場に立つ経済政策を展開されるということがその一つの特徴でございます。日本にとって大変気がかりな問題は、カーター大統領政権下で車問題、そして電電開放の問題、さらには鉄の問題お互いの交渉を重ねてまいりました。レーガン大統領ということになった場合、この話し合いの中身について変更があり得るかどうか、従前どおりいままでとってきた経過をそのまま継承して延長していくという立場に日本はなるのか、日本側の姿勢が肝心でございますから、大臣に一言その点についてのお考えをお尋ねしたいと思います。
  72. 伊東正義

    伊東国務大臣 この前ブッシュさんが来ましたときに、自動車の問題が非常に大きく問題になっておりましたので自動車の話をしまして、レーガンさんがもし大統領になるというようなことがある場合に、保護貿易というような考え方をちらちら言われることがあるけれども、そういうことがあり得るのか、日本としては自由貿易というものは貴重なんだということを言いましたら、それはない、レーガン候補も貿易については自由貿易主義者だということをブッシュさんがはっきり私に言ったわけでございます。でございますので、レーガン氏が大統領になった場合にどういう政策をやられるのか、いまからははっきり予測はできませんが、その当時におきましては、保護貿易はとらぬ、自由貿易でやるということをブッシュさんははっきり明言をしたわけでございます。  電電とたばこがいま問題になっておるわけでございますが、これは何とか年内に決着をつけたいということで日本側は大来前外務大臣が責任者になってやっておりまして、選挙の結果事態がどうなろうとも年内にこれは片づけようということでやっている問題でございます。  それから車の問題は今月の十日にITCの報告が出るわけでございます。それに基づいてアメリカ政府がどういう措置をとりますか、これは今月中に恐らく向こうで結論が出れば、政府がいろいろ相談をして車についてこういうことをやるというようなことになると思いますが、やはりそれはそれで、その結果によって出た結論アメリカは車の問題に対策を立てるのだろうというふうに見ております。ただ、私どもはやはり自由貿易というものはどうしても守っていかなければならぬし、アメリカにもこのことは強く言うつもりでございます。  鉄の問題は、いますぐは問題になっておりませんで、トリガープライスをまた採用するかどうか。いまさしあたりはヨーロッパの鉄が問題になっているわけでございまして、いま日米間で経済問題になっていることは年内に決着をつけるものもございますし、自由貿易主義をとるということはレーガンさんが大統領になってもやるということでございましたならば、そう大きな変化はないのじゃないかというふうに私はいま予想はしております。  ただ、これはきょうの時点でございますので、御了承願います。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 きょうの時点でこれも聞かざるを得ない問題があるわけですが、大統領選挙中ずっとカーター大統領が苦慮された問題としてイランの人質解放問題がございます。イラン側からは御案内のとおり大変積極的な四条件を示して問題が提起されているわけでありますが、これに対してアメリカ側がどのように受け入れるかということに対してその成り行きが非常に注目されているさなかでの、今回の大統領選挙のきょうは投票日であります。  もしカーター大統領からレ−ガン大統領にということになりましても、大臣自身がごらんになっていて、イラン側が提示しているこの四条件における人質解放に対するアメリカ側の受けとめ方というのは、姿勢は変わらないとお考えになりますか、カーターレーガンと両者の間では非常に違うというふうに考えるべきであるとお思いになりますか、いかがですか。
  74. 伊東正義

    伊東国務大臣 あの四条件についてどう考えるかということはアメリカの問題でございまして、私がこういう場でとやかく論評する問題ではないわけでございます。レーガンさんも選挙中余り人質のことは演説しておられなかったのじゃないかという気がしますが。  あの四条件そのものはアメリカがこれをどう判断するか、すぐに回答がまだ出てないということは、あの中に即答するにはなかなかむずかしい問題も含んでいるのではなかろうかとこれは想像しているわけでございますが、大統領がもしかわられるということがあっても、少なくともイラン・イラクの紛争には介入はしないという原則ははっきりしてもらい、その原則の上に立ってあの人質の解放問題を相談されると思いますが、向こうの内部のことでございますので、いまここですぐ変わらぬと——私は変わらぬと思いますけれども、論評することはどうかと思いますので、この程度にさせていただきます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 ただその論評という問題でなくて、わが日本のとるべき立場ということでお聞きをいただきたいと思うのですが、いま大臣がおっしゃるとおり、これを考えていくのにはなかなかむずかしい条件もこの四つの中にございます。考えることがむずかしいということと同時に、行うことはさらにむずかしいということであろうと思いますが、そうなると、四つの条件それぞれについて部分的にできることとできないこととある、むずかしいことと努力すればできることとある。そうなると、人質解放について全員が一挙にということではなく、恐らくさみだれ的になるという可能性もあるということをわれわれとしては十分に予測し得る、また予測しておかなければならないのじゃないか、このようにも考えられます。そういうふうな段階を追って人質解放がなされるということになってまいりますと、日本もそれに対しての対応を対イラン政策の上で考えていくという必要が出てくるのじゃないか。こういうことに対しての御用意が一体あるのかどうか、それとも日本としては全員解放までは対イラン政策としては何にも対応しないということで臨まれるのかどうか、この辺はいかがなんですか。
  76. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままでわれわれは、全面解放がなければイランに対する経済制裁の解除はしないということでやってきたわけでございます。これはECも大部分の国が同じ考えでございます。アメリカもいままでは少なくとも全面的な解放以外は考えられぬということを言っていたわけでございまして、われわれが用意しておりますのは、全面解放になった場合に経済制裁その他の解除ということを考えていたわけでございます。  いま先生の御質問は、この四条件によってあるいは部分的ということもあり得るんじゃないかという場合にどうするかという御質問でございますが、この点は日本政府判断でやったことでございますが、ECとも協調してやったことでございますので、その場合はECその他とも十分事前に連絡をとって、余りばらばらにならぬようにということでやってまいりたいというふうに思っております。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 これについてはこれからがいよいよ具体的な問題になってまいりますから、その都度この席を通じてお尋ねを進めなければならない、それぞれがもう大変重要な、日本の命運を左右すると申し上げてもいい問題だと思います。  さて、先ほど井上議員の方から御質問のございました金大中さんの死刑判決についての問題でありますが、すでに当委員会におきましては八月十九日に第一審の起訴状をめぐりまして私自身質問をいたしました。まず最初に、その節大臣の御答弁をしていただいている点を議事録を読みまして確認をした上で、質問に入りたいと思います。  八月十九日に外務大臣からこういう御答弁をいただきました。「これは裁判の判決でそれが恐らくいろいろ出てくるわけでございます。判決をする場合には、こういう証拠、こういう証拠に基づいてこういう判決をしたということが出てくるわけなんでございまして、その段階日本における言動というものがいろいろ問題になるということであれば、これは先生のおっしゃるようなことに振り返ってくるという問題が出てくることは確かでございます。」こうおっしゃっているのです。つまり政治決着に違反するか違反しないかというのは裁判の過程全部を総じてみなければ言えないことだ、判決も含めて判決に至る審理の全過程についてそれぞれ精査をしなければならないということの意味も含めておっしゃった御答弁とわれわれは理解をしておりますが、このことは確認させていただいてよろしゅうございますね。
  78. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのときそういうことを申したとおりでございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 それで基本的なことをまずお尋ねしますが、政治決着というのは朴政権時代の日韓両政府間で合意をした中身でございます。この政治決着について、全斗煥政権がこれをやはり継承して、このことに対しては相変わらず相互間で確認をし合っているというふうに見てよいかどうか。全斗煥政権に対してもしかるべき筋を通して、このことは日本としては確認をされているということになっているかどうか、この点はどうなんでございますか。
  80. 伊東正義

    伊東国務大臣 特に改めて政治決着を持ち出して、こういうことがありますから認めてください、認むべきだというような手続はいたしておりません。しかし、前の政府がやったことでございまして当然それを包括的に承継しているという前提で、いまこちらの向こうに対する話し合いもやっているわけでございます。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど私が議事録そのものを読みながらまずお尋ねをしたことから考えまして、最近外務大臣は静観することが望ましい、この判決の中身についてとやかく荒立てて問題にするよりも静観することの方が望ましいという意味も含めての御答弁をされております。外務大臣自身が静かに見るというこの静観をお考えになるという以上は、何らかそこに一定の内々の見通しがおありになってのことだというふうにわれわれは拝察をするわけであります。  静観をした方がよい、そのことの方が好ましいと言われる由来と申しますか、そういうことによってより積極的によい状況が約束されると申しますか、こういうことが言い得るのかどうか、そのあたりをひとつお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  82. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、静かに見守っているということを言いましたので静観というふうにおとりかと思いますが、ただ見守っているだけでなくて、私としてはいろんなルートで憂慮を伝えるということを実はやっておるわけでございます。静観している方が好ましいとまで私言ったかどうか余り記憶がございませんが、静かに見守っているということを申し上げたことは確かでございます。  私はやはり憂慮しているということ、頭に置いておることが実現されるようにという希望を持って実は裁判の結果を見守っている、最終的にも何とか身辺については極刑というふうなことにならぬようにということを念じ、希望を持ちながら行動をしているということでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 何だかそのあたりになってきますと、大臣も非常におつらい気持ちとおつらい立場で物を申されているということが実にありありと答弁を通じてよくわかるわけであります。  しかしここで憂慮している、そのことに対して非常に気持ちを配っているということばかりを言い続けたところで問題の解決には恐らくならない。そしてそのことによって韓国側が、それじゃ配慮してみよう、死刑なんてことをしないようにいたしましょうというあかしはどこにも出てこないわけであります。したがいまして、国民感情からしますと、静かに見守るということが能ではない、やはり言うべきことははっきり言う、なすべきことははっきりなす、このことが民主国家として必要である、こういう認識に立つということは至極当然だと私は思うのです。  そういうことからいたしますと、これはいかがなんでしょうか。韓国の軍法会議法の第二百八十九条によりますと、その四号では「公訴事実の記載は犯罪の時日、場所と方法を明示し、事実を特定しうるようにしなければならない」こうございます。そしてまた、先日来当委員会でも何回となくこれは取り上げられておるわけでございますが、六号に「公訴状には裁判官に予断を抱かせるおそれのあるその他の物件を添付し、その内容を引用してはならない」 こうなっております。  ところで、肝心かなめの極刑である死刑、これを一たん行ってしまいますと取り返しのつく問題ではございません。事人命にかかわる問題であり、人の命は全地球よりも重いという名言が日本の最高裁判所の判決理由の中にも出されるくらい、この極刑、死刑判決するのについては根拠になる事実、適用した法条、これは明確にしなければならないというのは罪刑法定主義のたてまえからしたって当然なんですが、いま読みましたこの韓国の軍法会議法の中でも、このように決めているわけであります。  今回第二審においても第一審どおりに死刑という判決がなされたわけでありますが、この判決の根拠になっている法条は何でありますか。そうしてこの判決の根拠になっている犯罪事実は何でありますか。これを日本としては確認をされているはずだと私は思いますが、何なんですか。
  84. 木内昭胤

    木内政府委員 私ども国家保安法第一条違反というふうに了解いたしております。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 木内さん、了解いたしております、それはどういう了解なんですか。すでに当外務委員会で同じような質問を私は木内局長に対していたしました。  ところが十月十五日、局長はこのような御答弁をされているわけです。これも私は議事録に従って申し上げますが、「ただ、判決理由要旨にも指摘がございますとおり、起訴状に記載されている罪名とそれから適用法条ということから、国家保安法第一条一号のいうところの罪状が金大中氏との関係で、死刑との関係で問題になっておるものと推定いたしておるわけでございます。」あくまで推定なんですよ。  「この点につきまして非公式に韓国側当局者とも接触いたしておりますが、大体日本側の推定で間違いないというような言質はいただいております。」これは頼りないですね。このことについてはっきり断言できるという段階じゃない、推定なんです。  十月十五日以後新たに局長韓国側からこれに関しての正式な報告なり、こちらに対しての申し入れなりを受けられましたか。いかがなんです。
  86. 木内昭胤

    木内政府委員 すでにたびたび御答弁申し上げておりますとおり、韓国側から入手いたしました判決理由要旨に従いまして私ども判断いたしておるわけでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 だからあくまで推定でしょう。推定の域にとどまっているのです。これは大変なことだと言わざるを得ない。事人命を断つという死刑判決に対してそれの適用法条もよくわからない。推定の域を出ないというような裁判というのは、後にも先にも私は聞いたことがございません。  大臣どうですか。こういう裁判をあるべき裁判だというふうにお考えになりますか。民主国家としてこういう裁判というものを、一般論としてお答えいただきたいと思います、韓国の例を言うと、恐らくは裁判の内部に立ち入ることは慎むべきだとか、やれ内政干渉にわたることは言うべきでないとか、韓国の例というのはいまここでこういう形で問題にするということは好ましくないとか、いろいろおっしゃるに違いない。一般論としてお答え願いましょう。死刑判決する場合に、適用法条が確定でき得ないで推定するというふうな裁判というのは、民主国家として許されていい問題であるかどうか、一般論でお答え願います。いかがですか。
  88. 伊東正義

    伊東国務大臣 判決の場合に何条、何条というようなことで死刑判決をするということは、一般論であればそのとおりでございます。ただ、韓国の裁判でございますからとやかくわれわれが言うわけにはいかぬことでございますので、判決文の入手ということを努力しているのでございますが、一般論としては先生のおっしゃることだと思います。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 だから一般論から考えると実に考えることのできないよう裁判が展開されていった。そして、現に二審では死刑判決されているわけですから、後に残るのは御案内のとおり大法院しかない。ここは事実審理はございません。書面審理しかしない。先の見通しはまことに暗いと言わざるを得ないのですね。  大臣自身はこの成り行きについてどういうふうなお考えをお持ちですか。
  90. 伊東正義

    伊東国務大臣 成り行きにつきましては、外国の裁判でございますので私からここでどうということを申し上げかねます。  ただ、われわれとしましては、拉致事件というものがありますので、金大中氏の身辺について本当に深く憂慮している。それがわれわれの心配にならないようになるということを強く期待しているということでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 ここでもう一度この外務委員会の八月十九日の外務大臣の御答弁の中で、裁判過程全体について政治決着に反するか反しないかということは精査をする必要があるという意味を含めての御答弁があったことを再確認をして、この問題の質問をさらに先に進めます。  韓国の戒厳高等軍法会議、われわれはいわゆる第二審というふうに言っております。控訴審とも言っておりますが、この中で弁護側が申請をした証人が全部却下されて問題にされなかった。検察側だけの証人が証言をこの法廷において披瀝をしているわけでありますが、十月二十九日に、検察側の証人として出廷した元在日韓国人がございます。新聞報道によりますと、三十日に外交筋によってこの元在日韓国人の名前が確認されているということがはっきり書かれているわけであります。この確認はされていると思いますが、何という名前ですか。いかがですか。
  92. 木内昭胤

    木内政府委員 名前は私ども確認いたしておりません。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 元在日韓国人でありますから、しかも、証人席に立って証言をやった中身というのは大変重要な問題でありますので、これは確認をされていないはずはないわけであります。外務省からは法廷に常時傍聴されている人もある。したがって知らないはずはない。幾ら確認をいたしておりませんと言ったって、それは局長答弁になりませんよ。どうですか。
  94. 木内昭胤

    木内政府委員 私どもはその名前が仮名であるというふうに聞いております。それ以上のことは確認いたしておりません。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 では、新聞報道は誤報ですか。三十日にソウルの外交筋によって、元在日韓国人尹孝同氏と確認、とこう書いてありますよ。尹孝同という人の名前が具体的に浮かび出ておるわけであります。  そしてこの日の証言は、かつて同一人物であるその尹孝同氏が七七年の五月に、当時韓国中央情報部に自首して、そしてそのときにいろいろと自白をした中身と証言内容が完全に一致するのです。ここの証言の内容について、したがって、いまここでお尋ねをきちっとしておかないと、私は非常に大切な問題だと思われます。在日韓国人に関係することであり、韓民統の活動それ自身関係することであり、ひいては韓民統との関連で国家保安法違反ということが問題にされている現在の金大中氏に対する死刑判決という関係になるわけでありますから、その点からすると非常に重要なポイントにこれ自身がなると思うのです。  尹孝同氏みずからが朝鮮民主主義人民共和国に四回渡航したということが、この法廷で証言として述べられているようでありますが、この尹孝同氏が六八年五月から七七年五月までに四回渡航したという事実があるかどうか、法務省の御出席を私は求めております。お尋ねしたいと思いますが、いかがですか。
  96. 末永節三

    ○末永説明員 先生御存じのとおりに、私どもの記録でお答えする場合には、もう少し具体的な時日、たとえば何年何月ごろというふうに御指摘いただきませんとお答えできないという先例になっておりますので、御了承願いたいと思います。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 これは六八年五月から七七年五月というと、この尹孝同氏自身韓国中央情報部へ自首をしていったときなんですが、それまでの間、四回朝鮮民主主義人民共和国に渡航したとみずから言っているわけであります。これはわれわれは具体的にはわかりません。しかし大まかに言うと、こういうころにどうでしょうかということは言えるわけであります。たとえば一九七三年の春ころ、一九七六年の一月か二月ころ、一九七七年の春ころ、それぞれはどうなのですか。そして何回行ったり来たりしていますか。
  98. 末永節三

    ○末永説明員 先生から具体的な時日の御指摘がありましたので、私どもの記録によりましてお答えいたします。  尹孝同なる人物は、一九七三年五月十九日に羽田を出発いたしまして、一九七三年五月二十四日羽田に帰ってきております。それから一九七六年一月二十九日羽田を出発いたしまして、一九七六年二月二日に羽田に帰ってきております。それから一九七七年四月二十五日に羽田を出発して一九七七年五月二十八日に羽田に帰ってきておりますが、どこに行ったかという行き先については私どもは全くわかりません。  以上のとおりです。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁からすると、その間出入りしているのは四回じゃなく三回なのですね。  そして在日外国人が海外に渡航する、また入国する、その渡航先ということを日本政府としては確認をなさっているはずだと私たちは了承しますけれども、それはどうですか。再入国のときには、渡航先と違うところに行くということは、少なくとも再入国の条件からしたら違反するというかっこうになるのじゃないですか。いかがです。
  100. 末永節三

    ○末永説明員 お答えいたします。  私どもとしては確認はできません。一応の推定ができるかと思いますけれども、それは全く確認はできないわけでございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 推定ということになるとどうなのですか、これはあくまで推定という前提で考えれば。これは確認はできないとおっしゃるから、アメリカに行っているかヨーロッパに行っているかそれはわからないのですが、あくまで推定……。
  102. 末永節三

    ○末永説明員 推定というふうに申しましたけれども、一応どこに行くかということでございますが、本人自身がそこに行ったかどうかということは全く確認できません。私どもとして確認できるのは、いつ出発していつ帰ってきたかという時日だけでございます。ですから、推定というのは間違いでございます。そういうことでございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 それは実におかしい御答弁なのですが、これは本来そんなことがあってしかるべき問題ではない、そんな御答弁は。どこに行っているかくらいははっきり承知されているはずなのです。いまの御答弁のままだと、それはヨーロッパへ行っているかアメリカへ行っているかどこに行っているかわからぬ、こういうことなんですね。  もう一つ大事な証言の中で、実にこれがポイントだと思われるのは、韓民統の役職にある郭東儀氏が一九七〇年にピョンヤンに行っている、それは自分が送り込んで一年間教育を受けさせたことがあるなんというふうな証言があるようであります。郭東儀氏は一九七〇年にピョンヤンに行かれているという事実がありますかどうですか。いかがですか。
  104. 末永節三

    ○末永説明員 郭東儀なる人物につきましてわれわれの記録によりますと、出入国した事実はございません。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 ということになってくると、日本の方の出入国の記録からすると、この尹孝同氏なる人がこの法廷においてなした証言の中身というのは日本の記録と違反する、違っているということに相なるわけであります。しかも問題は、韓民統は裏では朝鮮総連と緊密な連絡をとっていたというところを中心に置いて、そしていまのような問題を裏づけとして言っているわけでありますけれども、こういうことを証言として行った韓国の法廷あるいは向こうのしかるべき筋から日本側に対しまして照会または連絡というものがこの案件についてあったかどうか。いかがですか。
  106. 木内昭胤

    木内政府委員 そのような照会があったということは承知いたしておりません。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 一九七七年の五月にもうすでにこの尹孝同氏は韓国中央情報部に自首をして、その中身でいま申し上げたと同じようなことを言っているわけでありますから、本来ならばその当時からすでにこの出国、入国の問題に対して関心を持って、政府としては成り行きに対して見きわめを持っておられたはずであると思うのですが、いまま・でこの密出入国の容疑をもって捜査をされたという経過があるのかないか。いかがですか、この点については。
  108. 木内昭胤

    木内政府委員 私どもとしましては、その問題につきましていろいろ調査したあるいは捜査したという事実は承知いたしておりません。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 それにしても今回は、この法廷の中で、事元在日韓国人なのです。日本にいた人なのです。いつ日本から出国をされたということになっているかというあたりも確かではないと言われておりますが、これは御承知ですか、韓国の法廷でこういう証人席に立つまで。いつ韓国に行っているか、どうなんですか。法務省、御存じですか。
  110. 末永節三

    ○末永説明員 私にはわかりません。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 この点については、ひとつ確かめをぜひしていただかなければならぬと思います。在日韓国人なのですから、しかもそれが重要な証言をこの裁判過程においてなしているわけでありますから、事金大中さんを判決死刑にするための証言として意味を持っているわけでありますから、そういうことからすると全く知らぬ存ぜぬでは通用しないと私は思うわけであります。  そしてさらに、これは時間の関係がありますから具体的に問いただしをするという時間的余裕をいま持ち合わせておりませんけれども、第一審のときの論告内容では、のっぺらぼうに金大中氏の罪状について、日本における活動状況をずらずらずらっと罪状として述べられております。第二審においては、第一審の論告と同じ論告であるということで実に簡単に済ませております。  裁判過程全体を通じて見るべき必要がある、このように外務大臣はおっしゃいました。それからいたしますと、さて大事なのは、再三再四先ほどからお答えになっていらっしゃることでありますけれども判決文韓国側から入手をするということがどうしても大切だ、こういうことであるかと思いますが、これはいつまでに判決文韓国からこちらとしては求めるということになるのか。  つまり、判決文日本が提出方を要求するタイムリミットというものを設ける必要がどうしても私はあると思います。なぜか。もう裁判は一刻を待ってくれません。後、大法院に行けば先の見通しが明るければ別ですけれども、全く先の見通しは真っ暗。したがいまして、それからいたしますと、やはり判決文についてはタイムリミットをきちっと設けて韓国側要請する、これがまず必要かと思われます。そしてもしそれができないという場合には、新たに外務省としては、日本政府としてはとるべき措置をとる、こういうことが段階として大事だと思われますけれども外務大臣、いかがでございますか。
  112. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままでは日を切って要請ということはいたしておりません。なるべく早くということで要請をしているわけでございますが、いま先生おっしゃった日を切るかどうかというような問題、その後の問題をどう対処するかということにつきましては、われわれはまだ相談もしておりませんし、どういうふうに考えるか。われわれは何としても判決文を手交してもらいたいと思っておりますのでそういう努力をしますが、今後の問題についてはよく検討してみます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、これは大事なことだと思いますよ。大法院判決死刑が執行されるということについて、一体時間的余裕があるのかないのか。また、それに対して思いとどまってもらえるのかどうか。そのあたりは全く真っ暗だということを前提に考えてまいりますと、今日ただいまこの段階は非常に重要だと言わざるを得ません。  そうしますと、日を限らないで判決文を出してもらうまでずるずると気長く待っている。考えたくないことでありますけれども、それは場合によれば、金大中氏に対する処刑が終わってしまってから判決文がこちらに来たのでは全然意味をなさないわけであります。そういうことから考えると、この問題というのは非常に大切だと言わざるを得ない。  大臣、どうですか、やはりこれは日を切るべきだという前向きの考え方でひとつこのことに処していただけませんか。そうしてそのことに対して、日を限ったことについて判決文が明らかにされないという限りは、次の段階は、好ましくないかもしれませんけれども日本としてはとるべき措置をとらざるを得ない。こういうこともここでは決断をしていただきたい。この点で政治家としての外務大臣に対して御所信のほどをひとつしっかりと承りたい気持ちです。  外務大臣としては、あるお考えはお持ちであるに違いないと私は思うのですよ。いろいろな外務官僚からの入れ知恵じゃなくて、大臣自身がみずからお考えになり、御所信を曲げずにひとつしっかりとこの問題に取っ組んでいただきたい。私は心からこのことを申し上げて御答弁を求めます。いかがですか。
  114. 伊東正義

    伊東国務大臣 激励をいただきましたが、私、何とか憂慮ということを伝えて、われわれの心配しているようなことがないようにするのに、一番いいのは何かということを実は考えておるわけでございまして、いま先生がおっしゃいましたのは、期限を切って、その後はどうするかということをよく考えろということでございました。これも先生の御心配は、極刑というようなことにならぬようにということを御心配されての一つの手段方法だと思うわけでございます。どれが一番いいのかということにつきましては、これは私も私なりに政治家として考えるということをやってまいりたいと思います。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 そのことについては、うやむやなことでなくて、一つのはっきりしたけじめというものをつけることは、いまこのときに大事だと思いますよ。すなわちこの問題に対して、韓国が言われることはそのとおりだとオウム返しに言うだけが外務省役割りでもなければ、日本の対韓外交ではないと私は思うのです。自主的に、あるべき姿を韓国との国交の間でつくっていかなければならない。建設的な方向で考えれば考えるほど、いまこの問題に対しては、民主日本、民主国であるという日本の立場、民主主義を大切にするという国民の熱望を受けての外務大臣役割りをぜひ果たしていただきたい。外務大臣、よろしゅうございますね。再度このことについて申し上げさせていただき、あと一言の御答弁をいただいて、私は終わりたいと思います。よろしゅうございますか。
  116. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生にお答えしたと同じことでございまして、どうやったらわれわれの希望が一番達成されるかということをよく考えてまいりたいと思います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  118. 奥田敬和

    奥田委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  119. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。中山正暉君。
  120. 中山正暉

    ○中山(正)委員 それでは、時間を四十五分間ちょうだいいたしましたので、国際情勢について、外務大臣に私の思っておりますことを申し上げ、そして御指導をいただきたい、かように考えております。  日ごろから盟友で、役所にお入りになったのも同期でいらっしゃったそうでございますが、大変御苦労をあそばしました大平総理大臣がお亡くなりになりまして、本当に惜しい人を亡くしたことに対し、まずもって心から哀悼の意を表し、そのときの官房長官として大変御努力をあそばしまして、きっと一時はむなしい思いをなさったのではないかと思いますが、その後外務大臣という役柄をお引き受けいただきまして、意欲的に御活躍いただいております外務大臣にも心から敬意を表したい、そう考える次第でございます。  そこで、外務大臣がやっと脂が乗ってきたといいますかエンジンがかかってきたときに、アメリカ大統領カーターからレーガンにかわるという新事態が起こったわけでございますが、これに対して、まず当選のお祝いを私の質問に対する答弁を通じてひとつおっしゃっていただきたいと思います。  それから、それが日米関係にこれからどういう影響を及ぼすか。ハトのカーターに対してタカのレーガンが出た、ハトのカーターでもしきりに日本に対して軍備の増強を要求しておるのですが、レーガンになったらもっとひどくなるのじゃないか、この委員会が始まる前に私にラジオのインタビューがございましてそういう質問があったわけでございますが、これからのアメリカ大統領、特に彼は二期はやらないと言っておりますし、一期の間、次の選挙を気にせずに世界のために働くという約束をいたしておるわけでございます。その点に関しまして外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  121. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  亡くなった大平総理に対しまして哀悼の気持ちをあらわしていただきましたこと、本当にありがとうございます。心からお礼申し上げます。  鈴木内閣誕生と同時に私に外務大臣をやれということでございまして、大平総理のしいた外交路線を踏襲するのだということでございます。私も外務大臣をお引き受けして、鈴木内閣の一員として日本の国益を守るということで一生懸命努力をしてまいる決意でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。  アメリカ大統領選挙の結果が大体判明しまして、カーター大統領が敗北宣言を出されたということを昼の休みに知ったのでございますが、まず、カーターさんは本当に御苦労でしたということを申し上げますし、レーガンさんは来年の一月二十日に大統領に就任されるわけでございますが、あの方はカリフォルニアの知事をやっておられましたので、アメリカの西海岸、太平洋に面し、日本とも非常にいろいろな面で関係の深い州の知事をやっておられた方でございますので、日本というものもよく知っておられると思うわけでございます。その点では非常に日本理解者でないかというふうに思っているわけでございますし、心から御当選をお祝いをするわけでございますが、世界の情勢は非常に厳しい情勢でございます。  その中で、いわゆる自由主義陣営、西側のリーダーというアメリカの立場から言えば、私は非常に国際緊張が高まっておる中での新しい大統領の責任はまた非常に重いというふうに思うわけでございますので、世界の平和のために、もう二期やらないというお話がございました、そうかもしれませんが、ひとつ本当に取り組んで、世界の平和、繁栄ということに努力をしていただきたいと心から願うわけでございます。  そこで、日本との関係でございますが、これは午前中も御質問があったのでございますが、私はレーガンさんの口から直接は聞いたのでございません、副大統領候補ブッシュさんの口から直接聞き、中国に来られたときお会いしていろいろ意見の交換をしたのでございますが、そのときに力の平和ということを言われたのがいまでも特に印象に残っているわけでございます。具体的にSALTIIの問題でございますとか、軍備をどうするというような話はなかったのでございますが、力の平和ということを強調されたことをいまでも覚えておるわけでございます。そのときに私は、日米安保の話をし、そして日本のいままでの防衛につきましての考え方、平和憲法がある、個別自衛権を持って、専守防衛ということで自衛力の強化はやっていくんだ、ただ、これは他国に脅威を与えない、侮りを受けないというような自衛力の強化をするんだという話をしたわけでございます。  そのときに、いままで以上に日本に対して防衛努力とかそういう問題についてどうかというような質問を私もしたのですが、当時ブッシュさんは、そういうことは何もいま考えていない、いろいろ日米間に問題があることを知っているが、事前に日本とよく協議をするという話でございました。  また自動車の問題も出まして、これは経済全般、自由貿易、市場の開放ということに関連した問題でございますが、共和党の政策が自由貿易に何か特別な意見があるやのようなことも言われたことがございましたので私は念を押したのでございます。自由貿易というものは大切だ、今後世界の経済にとって大切だということを念を押したときに、われわれも自由貿易は守っていくんだという話が当時あったわけでございます。  中国問題については、台湾の問題について若干、当時別な意見がありましたが、その後軌道修正をされたということを聞いておるわけでございまして、私はレーガンさんが来年一月二十日以降大統領になられましても、日米関係というものは変わりない、特に日本をアジアにおける基軸として考えているということを共和党の政権でも言っておられるわけでございますので、私は従来どおりの日米友好親善関係というものを今後ますます伸ばしていくということの姿勢については変わりないと思いますし、われわれもそういう考え方でやっていくつもりでございます。
  122. 中山正暉

    ○中山(正)委員 そこで予想されますことは、日本防衛力をふやせとかいろいろな話がありますが、私はいまの〇・九二%のGNP対比、これを一%にしようと思っても、あと二千五百億のお金が要るということでございますし、いまの日本の自衛隊の持っております装備、特に自民党の予算の復活折衝を見ておりましても、野党の方から見ると一括で金を渡してやっているからこれは軍備がどんどん大きくなるのだという話がありますが、私なんか党内で見ておりますと、防衛の予算だけが大蔵省から一発回答、そうするとこの金の中で戦車買いなさい、弾買いなさいと言うから、戦車があって弾のない自衛隊ができてしまう。弾のないのが玉にきずというのがいまの自衛隊だという話がありますが、一括してやるから飛行機買って弾がなくなる。  この間も大蔵大臣から、もし来年度の予算がゼロ査定の場合、こういう話が出ましたが、石油が三五%減る、こういう話でございます。そうすると、いまの自衛隊、月に七キロしか走る戦車の燃料を持っておりませんので、これはどういうことになるのか。有事立法はない、何もない日本。そこへ持ってきて、そういう姿。私は、だからと言って防衛力にどんどん金をかけて、二千五百億出して一%にするとかしないとかの問題、二千五百億というのはいまの日本の情勢から見て無理じゃないかと思います。  私は、実はアメリカとの安保体制というものの見直しをしたらいいんじゃないかと思っております。それはいままで片務的に、日本が沖繩にある米軍の施設なんかに対して思いやり金という、大変失礼な言葉だと思いますが、去年は三百八十億くらい出しております、ことしは四百二十億でございますか思いやり金という形でやって、そして軍備はせずに経済でアメリカに戦争をしかける。アメリカの漫画あたりにも日本の零戦からテレビが降ってきたりする漫画が出たりしているわけでございますけれども、そういうことを考えてみましても、いざというときに本当にアメリカが来るのかしらという、このごろ世間でそういう話がいろいろあるわけでございます。  ここで、いま安保条約の自動延長、自然延長で一年ごとにどうやら延ばしていっておりますが、この間の選挙で自民党がふわっとふえましたからいいですけれども、これがちょっと様子がかわると、一年の通告でアメリカとの関係が切れるということでございます。自民党がこうして比較的多数をとったときに安保条約の見直し、固定延長をする。中国とも十年の平和友好条約というのを結んでおりますが、アメリカとの安保条約の改定交渉、固定延長交渉にお入りになるような考え方がおありかどうか。新しいレーガンさんとの話に総理も行かれるそうでございます。外務大臣もすぐに行かれることになるのじゃないかと思います、一月以降。そんなふうなお考えは頭の中にお持ちでございましょうか、いかがでございましょうか。
  123. 伊東正義

    伊東国務大臣 安保条約の改定につきましては、いま外務省政府では考えていないわけでございます。先生の御心配になるように、果たして来るのか来ないのかというような御心配ということを言われたわけでございますが、安保体制というのはいままで非常に大きな働きをしてき、今後も私は働きをしてくると思うわけでございます。  その中で、あの条約は共通の危機というものに共同で対処しようということでございますので、やはり日本として共同で対処するからには、日本がみずから努力することは努力しなければいかぬ。何も狭い意味じゃないのでございますが、もっと広い意味の総合安全保障ということを考えてみましても、やはり信頼を得るということが大切なわけでございまして、日本というのは信頼に値する国なんだ、いろいろ総合的に考えてですね、そういう信頼関係を結ぶ、それをますます強くしていくことが私は大切だというふうに思うわけでございまして、みずからが努力するということを日本もよく考えなければいかぬ、そして信頼関係は保つということがいま先生のおっしゃったような心配をなくすることだと思いまして、外交面でもいわゆる平和外交に徹するといいますか、アメリカ日本関係あるいは自由主義陣営との関係、その他いろいろな体制の国々との関係等につきましても十分考慮して、そして最後日米関係の信頼関係は保っていくということを努力したいと思います。
  124. 中山正暉

    ○中山(正)委員 ぜひひとつ精神的な自由主義国家同士のきずなといいますか、何といってもいま世界には正義が二つあります。ソビエトの正義——まあ二つと言えば、共産主義の中に二つあるかもわかりません。最近、劉少奇あたりが復活してきまして、ソビエト修正主義者が中国で復活してきておりますから、私は一つに戻りつつある、毛沢東が落ちてきてレーニンが上がりつつありますから、神様はやがて一人になると思いますが、アメリカとソ連の正義というのは二つあるわけでございます。  ソ連に対して、どういうふうにこれから対処をしていかれるか。特に私は、シベリア地方のブラーツク、それからイルクーツク、ハバロフスク、ノボシビルスクという四つの都市へ自民党代表団六十人の団長として参りましたときに、向こうの連中が出てきてしきりに言うことは、あなた方は中国と尖閣列島をたな上げにして条約を結んだのだから、北方領土をたな上げにして、われわれとも平和条約ではなしに善隣修好条約を結ぼうではないかということを言いました。私はそのときに、ああ中国というのはソ連の水先案内をやっておるんだな、うまい誘導をされたところにわれわれはまり込んだのじゃないかなという思いがしたわけでございます。  私は中国との条約に反対をした男でございます。外務委員会でたた一人、福田総理大臣に手を合わせて拝まれましたけれども、私は反対をいたしました。それはこの中国、ソ連を取り囲む——つまりここに「ひよわな花、日本」という、いままでカーターの側近ナンバーワン、ブレジンスキーというポーランド出身の十九年前にアメリカ人になった男が書いております本の中に、ウラジーミル・ソロヴィヨフというソ連の学者の話を書いております。それは、「ウラジーミル・ソロヴィヨフの著書『戦争、進歩および世界史の終焉に関する三つの会話』は、超大国日本を論じている。同書は先進的な工業・技術国日本が中国と提携して、ロシアとの紛争に当たり(しかも、ロシア国内の非ロシア民族が反乱を起こし)、ついにはロシアのみか、欧州全域を席巻するという構図を描いている。現在のソ連の日本軍国主義、中国の好戦性(それにアメリカ外交)に対する反応の仕方はある程度この伝統に沿っている。」こう書いてございます。  もうこのとおりに、アメリカ日本の頭の上を通り越して中国へ行って、そして中国と日本とを結びつけました。事実を見てもそうです。日本と条約を結んだら華国鋒が歩き出しました。まず一番最初に北朝鮮へ行きました。それからルーマニアへ行きました。ユーゴスラビア、NATO四カ国へ行きました。それから、お亡くなりになる前の大平首相に会うため日本に来られました。これはいま一番新しい戦略理論で、ソ連を取り囲むいわゆるアジアの弧状地帯、つまりアジア大陸の周辺弧状地帯をきれいに一つの三日月にまとめ上げたのが、いわゆる日中、それから米中の接近でございます。地球の向こう側はカナダとソ連でありますから、きれいにソビエトが包囲された。  だからそれは、オリンピックの前にアフガニスタンに入らなければならなかったソ連の気持ちというのは、私はよくわかるのです。この世界戦略、地球単位の考え方でいけば、ソ連が取り巻かれたから、アフリカへの回廊とインド洋に向けて七百五十五隻のソ連の艦艇に対する出口をつくろうという、もう全くそのとおりでございます。それからおもしろいのは、イランが革命の起こりました後、一番最初に石油を売りましたのが北朝鮮でございます。これもおもしろいです。  そういう感覚の中で、私は福田総理に、なぜ中国との条約にただ反対をしたかというと、この戦略にはまり込むと世界が悲劇になる。だから、むしろソ連と中国と同時条約を締結をしてください、共産主義国を分けないでください、これをお願いをして私は実は反対をして、いまでもやはりそうなったなあという誇りを持っております。ですから、これからソ連に対してどういうふうな——いわゆる北方領土返還で平和条約というのはずっと通すか、それとも北方領土はそれではしょうがない、こっちへよけておいて、善隣修好条約と言われれば仕方がないなあと思われるのか、外務大臣としてこれからどっちにお考えを持っていかれるのか。  私は、自分結論を申しておきますけれども、北方領土返還で平和条約ではなくて、善隣修好、北方領土たな上げというのに入ってくると、今度は、さあ、中国さんも入りなさい、北朝鮮も入りなさい、韓国も入りなさい、台湾も入りなさい、そこに領土を持つ者がアジア安保条約をやりましょう。ヨーロッパの二の舞でございますね。領土のない者は去っていきなさい。そのとき、日本の世論が安保条約を切りましょうということになってきたら、この二つは連動してくると思います。そのときのために、私は安保条約を固定延長する必要がないかということを言っているわけでございます。  ですから、ソ連に対する対処の仕方とアメリカに対する対処の仕方は、これは離して考えられませんから、ついでにソ連に対するこれからのお手の打ち方をひとつ伺っておきたいと思います。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生の高邁な御高見は拝承いたしました。それにつきましてとやかく申しませんが、ソ連との関係でございますが、先ほど言いましたように、日米安保を中心にしました自由主義陣営の一員として、日本はそれを基礎にして、どの地域でも、どういう政権とでも、できるだけの協力、協調をしてまいりたいというのが考え方でございます。  そういう意味から言いますと、ソ連というのは重要な隣国の一つでございますので、従来も相互理解の上に立って平和友好関係を続けていこうということでやってまいったのでございますが、御承知のような北方領土に対します軍備の強化の問題がございます。北方領土そのものも問題がございます。アフガニスタンに対する軍事介入ということから、これは国連の決議がありましたように、世界の平和に対する脅威だということで、即時撤兵というようなことから西側陣営で経済措置をやりましたのは御承知のとおりでございます。  それで、いまソ連との関係が冷えておりますことは確かでございますが、これはかかって原因はソ連側の行動にあるということを私どもは言っているわけでございます。善隣友好ということもよく言われるのでございますが、それならば善隣友好に値する行動、態度をとってもらいたいということで、ソ連には日本の筋は通すということで、グロムイコさんに会ったときも話したわけでございますが、そのときにグロムイコ外相から日本に条約は渡してあるという話があったわけでございます。あれをやればすぐ善隣友好条約になるんだ、こういう話でございましたが、実は私の方からも領土問題の解決を一緒にした平和条約を渡してある、あれでやろうじゃないかということで議論をしてきたのでございますが、日本側の態度はやはり領土問題の解決ということを含んだ平和条約を一日も早く結ぶということの態度で臨みたい。経済と政治は別々じゃないかということも言われることはありますが、私は全体の立場に立ってそれは考えなければいかぬ。一つ一つ別だという議論は、私はとるべきではないという考え方でございます。
  126. 中山正暉

    ○中山(正)委員 われわれ、外交には長い見通しを持たなければいけないと思うのですが、宮本武蔵の「五輪の書」というものにも、「観見二つの目つけのことは、観の目強く見の目弱く」といっております。「観」は見えないものを見る。それから「見」というのは、ここにマイクロホンがある、そこに委員長が座っているという、見えるものを見る。剣の道でも、見えないものを見通せということを言っておりますけれども、私はその意味で申し上げているのですけれども、私は世界戦争というのはないと思っています。断言をします。フルシチョフも六一年に言っているのが、世界戦争はやらない、局地戦争はやらない、民族解放闘争を支援する、こう言っております。  最近日本が怪しくなるときはどうかというと、もし今度の全斗煥みたいな人が、そんなことはあってはいけませんが、どんとやられるようなことがあると、金大中氏がもし豚箱の中から、ちょうどバングラデシュのラーマンみたいにわーっと出てきて大統領になる。そうするとどんどん民主化される。そしてそれが暴動につながって日本に何百万という難民が逃げてくる可能性が一番ある。難民の救済に関する条約をいままで批准してこなかったのは、台湾と韓国からどんどん来るかもわからないというので批准してないわけですから、それがどんどん来たときに——自民党は日本選挙すると当選をたくさんするから、日本をだめにする方法は朝鮮半島しかないわけです、日本を崩そうと思ったら。日本の風船に対するちょうど針みたいなものです。それが韓半島でしょう。私は、ソ連が北海道へ上陸する、新潟へ上陸をするなんて、参議院の予算委員会で議論があったそうですが、そんなことはないと思っています。私は、あとあるとしたら、日本という風船にお隣の韓国から針が突きつけられるとき。  だから、このごろは総評が、金大中を救出せよ、共産党の不破書記局長が衆議院の代表質問でされた、ああいう演説があるわけでございます。こうやって共産党が支援するんだからやはり共産党かな、聞いてみると、光州で共産党の名簿の中では、金大中の中という字が中山の中じゃなくて、木曽義仲の仲という字で共産党の名簿に載っております。  これを韓国の地上軍撤退のためにアメリカが利用し始めて、韓国を何とか抜けていきたい。ラオス、ベトナム、カンボジアを抜けた。今度は日本を抜けたい。  だから、おかしなことに、フランク・チャーチという三十一歳までアメリカのCIAのメンバーだった男が、グラマン、ロッキードの問題をやりました。そしてラスベガスで浜田幸一氏がやられましたけれども、サンズホテルのリチャード・G・ダナーという男は、これはウォーターゲート事件の立て役者でございます。米議会の暗殺計画委員会報告書によると、キューバでカストロを暗殺してくれたらマフィア組織の連中にキューバのハバナのばくち場の権利を与えてやろうというので、みんなCIAのエージェントにした、その連中の前で浜田幸一さんがばくちをしたわけでございます。だから私は、浜田幸一じゃなくて、はまった幸一じゃないか、こう言っておるのでございます。  それではなぜ、いままで自民党の政府と安保条約を組んでいるのに、自民党が困るような、数が減っていくようなことをやったかというのは、対ソ戦略を中国に任して、とにかくアジアの周りを一つにするというアメリカ戦略が、ブレジンスキーが書いているとおりの戦略となり、今日まで進んできたんじゃないかと私は思うのでございますが、そんなことを言っていると時間がありませんので、現実の問題に戻ります。  というのは、現実の問題として、ゾルゲ事件関係があるとかないとかいう——ソビエトの公式記録をここに持っております。「「ゾルゲ」世界を変えた男」、ソ連が書いた本です。ソ連が書いた本で、セルゲイ・ゴリャコフ、ウラジーミル・パニゾフスキー、この人がソ連で、二十九年目に日本に帰って来た人に関係するとされるゾルゲの三十六年目の新事実、この中に伊藤律のことを書いております。  何と書いているかというと、「突然、幸運が舞いこんだ。思いがけない好機が到来したのである。憲兵隊に、匿名の男(伊藤律)がある日本人(北林トモ)」 これはアメリカ共産党員でございます。「(北林トモ)を共産主義の宣伝をしているとかで密告してきた。この日本女姓はすぐ逮捕された。恐ろしさのあまり、つくり話をでっちあげては、偶然出あったことのある人びとの名前を列挙した。そのために、新しい逮捕者がでた。このこまかい網の目にひっかかった人びとのなかに、画家宮城与徳がいた。」  この宮城与徳というのは、ソ連のGRU、いわゆる赤軍情報部から指名をされて、アメリカの共産党員の沖繩出身である宮城与徳を使え、こう言っています。そしておもしろいのは、日本で新聞の広告を出して、その新聞の広告には、浮世絵の版画のいいのがあるから譲りたいというのを出したわけです。それを見たゾルゲが宮城与徳と会うわけです。その会ったときにどうしたかというと、ドル紙幣をお互いに示し合って、その番号が一番違い、それで本人と連絡をとったわけでございます。これがその宮城与徳という絵かきでございます。これは陸軍の大将連中の肖像絵をかいていた。絵をかきながら、今度陸軍はどこへ行きますか、いつ動きますかというのを全部やっている男、その宮城与徳がいた。  「「この人は共産主義者で、政治に関心をもち、たくさんの軍人と交遊があり、外国人とも会っている……」というのであった。「宮城与徳だって?画家の?」野村は日本人リストの膨大な目録をとりだしてみた。」  野村というのは憲兵隊の指揮官でございますが、「たしかに、宮城はあやしい。他の人物にも、昼夜兼行の詳細な監視をすることにした。この監視の網に尾崎秀実がかかってきた。」  この尾崎さんは近衛文麿総理大臣のかばんを持っていた人でございます。その人のかばんの中から日本の情報が流れて、また、ばかなことに、いまの国会図書館のありますところに昔あったドイツ大使館のオットという大使が、昼飯を食いに行くときなんか、暗号文を全部机の上に出したまま、フランクフルター・ツァイトゥングの有力記者であった男に全部秘密を知られてしまったわけです。  それを逮捕しようと思って動いていたのは土肥原大将ですが、彼はこのときの指揮官でございます。外人の場合は総理大臣の許可が要りましたから、近衛文麿に逮捕状の要求に行きましたら、近衛文麿がこれを拒否しております。  まあ不思議な日本、そのころの日本もいまと同じようになかなかはっきりしない世の中だったんだなと思いますが、その伊藤律が友好という中国から帰ってきたのは、外務大臣、一体どういうふうにお受け取りになりますか。友好を長く結びましょうという国から日本のかつてスパイ……。  私は委員長にお願いをして、この次に証人喚問したいと思います。伊藤律氏、野坂参三氏、それから宮本顕治委員長にも来ていただけばいいと思うので、委員長にこのお三方の証人喚問を要求したい。  特に伊藤律氏については、ぜひお願いをしたいと思うのですが、まず、外務大臣がお答えになります前にひとつ警察の方から、伊藤律がなぜ病院でかくまわれて、あれが罪に問われないのか、その理由を伺いたいと思います。
  127. 吉野毅

    ○吉野説明員 お答えを申し上げます。  伊藤律氏につきましては、昭和二十五年の七月に、団体等規正令に基づく出頭命令に応じなかったことにより逮捕状が発せられておりますこと、それから、その後所在不明でございましたが、今度中国から帰国をいたしましたが、同氏は法律の定める手続を経ないで出国していることが認められるわけでございます。したがって、ただいまの御質問に対するお答えといたしましては、伊藤律氏について団体等規正令の適用ができるかできないか、次に、出入国管理令の適用ができるかどうかということが問題であろうかと思いますので、お答えを申し上げたいと思います。  まず団体等規正令の適用についてでございますが、同令は昭和二十七年七月に制定をされました破壊活動防止法の附則によりまして廃止をされたわけでありますが、この破防法施行前になした行為に対する団体等規正令の罰則の適用については、同じく附則によりまして、なお従前の例によるものとされておるわけでございます。  しかしながら、伊藤氏に逮捕状が発せられております被疑事実は、団体等規正令第十条第三項による出頭命令に応じなかった者に対する同令第十三条第三号違反の罪であるというふうに承知をしております。  この点につきましては、平和条約発効後におきましては、犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるものとして免訴の言い渡しをすべきものという最高裁の判例が確立をいたしております。したがいまして、伊藤氏を団体等規正令違反で処罰することはできない、このように考えております。  次に、出入国管理令の適用の問題についてでございますが、出入国管理令は昭和二十六年十一月一日に施行をされたものでございます。伊藤氏がこの二十六年十一月一日以後に出国したことが立証されれば、同令第六十条第二項及び第七十一条違反で立件することができるわけであります。  現在の出入国管理令の施行以前におきましては、連合国最高司令官の覚書及び昭和二十五年の政令第三百二十五号がいわゆる密出国を規制しておったのでありますけれども、同覚書は昭和二十六年十二月一日に廃止をされております。したがいまして、現行出入国管理令の施行以前における密出国につきましては、犯罪後の法令により刑が廃止された場合に当たるものとして免訴の言い渡しをすべきものといたします最高裁判例が確立をしておるわけでございます。したがいまして、同氏について現時点で問題になりますのは、同氏の出国か昭和二十六年十一月一日以前であるのか以降であるのか、以降でなければ現在では処罰することはできないということでございます。
  128. 中山正暉

    ○中山(正)委員 私は人を殺していませんと言えば殺していないことになるみたいな話で、私はその出入国管理令の施行される前に行っておりますから罪にはなりませんと本人が言うのをそのまま聞いて何にもしていない。これはやはり国民の間に非常な疑問がございますので、先ほども申しましたように、委員長に、伊藤律氏を、お元気でテレビにも出ていらっしゃって、私がスパイだなんてと、へへへなんて笑っておられますから、ぜひひとつ国会で、ここでお伺いをしてみたい。  これは私は、日本を売り渡したゾルゲ・スパイ組織を摘発した人ならば、何なら感謝状を差し上げてもいいと思うのです。だから各党、皆さんこれは不一致ということはないはずでございますから、ぜひひとつ伊藤律さんを呼んでいただきたいと思うのですが、外務省は、警察庁から連絡を受けて中国に何かおっしゃいましたでしょうか。
  129. 木内昭胤

    木内政府委員 伊藤律氏の件につきましては、長期間外国に滞在しておった邦人に対する便宜の供与ということで処理いたしております。本人につきましても、それから中国側につきましても、それ以上のことは聞いても語らないという状況になっておることは新聞に報道されたとおりでございます。
  130. 中山正暉

    ○中山(正)委員 何も中身を教えていただけないというのは友好なんでございましょうか、外務大臣
  131. 伊東正義

    伊東国務大臣 何とお答えしていいのか、ちょっと当惑するわけでございますが、外務省が受けたのは、望郷の念といいますか、帰国したい、病身であり、身内に会いたいという希望があって、本人に会って本人であることを確かめ、帰国の念が強いということを確かめて、普通の人と同じ取り扱いをしたということでございまして、私は、人間として、人道上の問題もありましょうし、なかなか味なことだなというふうに、新聞を見たとき考えたわけでございます。
  132. 中山正暉

    ○中山(正)委員 外務大臣、まだほかにあるのです。白鳥事件というので、人殺しをした人たちが中国にたくさんいるのです。これなんかも人道上でしょうか。もういっぱいおります。桂川、川口、川口栄子、植野、斉藤和夫、門脇、大林。もうとにかく上海へ行くための共産党の船団というのがあったわけでございます。  その上に、華国鋒氏の名前というのは本名じゃございませんで、あれは中華抗日国防先鋒隊、日本と戦争していたときの部隊の名前の中から華国鋒ととっております。本当の名前は、蘇鋳というのが本名でございます。  日本でも、共産党の不破書記長なんかは、東京都の選挙管理委員会から上田健二郎で当選証書が出ております。国会では不破哲三。これは、御承知のように、二七年、三二年テーゼを日本に与えたへ共産党の革命のやり方を教えに来たニコライ・ブハーリンという人のブハをとって不破。それから哲人スターリンの哲をとって哲。それから野坂参三は昭和六年に延安からアメリカを通じてモスクワへ亡命しまして、三二年テーゼを書くのに一緒に手伝った男でございます。三二年というと、私が生まれました昭和七年でございますが、その人を記念をして野坂参三の三だけもらって不破哲三。四分の三はロシア人の名前でございます。  それから、野坂議長も、延安にいるときは岡野進という、名前を変えておられたことは、外務大臣も上海かどこかにおられましたから御承知のとおりでございます。  そんなふうに言っておりますが、中国は覇権反対という条約を、われわれは結んでしまった。そしてこの間も東南アジアに行きましたら、これは外務大臣に大変失礼な言い方かもわかりませんが、ポル・ポト政権を支援すると言うた日本に驚きの目を持っております。なぜかと言うと、三百万人殺した方の政権をなぜ日本が支援するのだろう。英国とかオーストラリアみたいに両方ともよけて、カンボジアなんというのは黙って見ておった方が、いまの英国も黙って見ておるみたいにされたらいかがでしょうか。ポル・ポト政権支持というのは、オーストラリアや英国みたいに、外務大臣、お取り消しになるような御意向は……。  それからいまの問題でございますが、中国の覇権反対というのは、実は、覇道の裏側は王道でございます。朱元璋という紅軍の創始者、これは明の太祖でございますが、それが明の正史に賢人朱升の言葉を引用しておりますのに、「高筑牆 広積糧 不称覇」 モンゴルの騎馬による侵略に備えて高くかきねを築いて、広く食糧を積み、覇を称えず、こう言っております。  それに対して毛沢東が人民日報の中に、「深〓洞 広積糧 緩称王」 核戦争による侵略に備えて深くほこらを掘りなさい、地下道を掘りなさい、食糧を蓄えるところは同じで、そして広く食糧を積みなさい、それからゆるゆると王道を行うと書いてあります。これは裏言葉なんです。微言大義というそうでございますけれども、穏やかな言葉の裏に大きな意味を含ませる。つまり、覇権反対というのはソビエトの一国革命主義に反対をする。その一国革命主義に反対をするが、ゆっくりと世界革命、王道を行うという意味が含まれているのだそうです。  ですから、都合よく日本を取り込む、アメリカをごまかしてアメリカも取り込む、やがて日本が転がり込んでくる、韓国に暴動が起こって日本に難民が押し寄せ、治安が乱れる、そのころ北方領土からソ連軍がじわっと上陸してきてという図式。とにかく民族には戦争の仕方に癖があります。日本人は、日清、日露、太平洋、全部奇襲攻撃です。ソ連はどうかというと、必ずどさくさ紛れでございます。何かこっちで起こるとこっちから入ってくるという。  だから、このゾルゲなんかでも、祖国に裏切られたと私は思っているのですが、このゾルゲ、一生懸命に読んでみて、本当に一面すごい男だなという気がします。金も何ももらわずに、本当に思想のために命をささげた男、そういうゾルゲが言っているのは、とにかくおれのやったことは戦争の回避なんだ、だからおれは悪いと思ってない、こう言っていますが、戦争の回避なら、なぜ不可侵条約を結んでいたソ連が突然日本に攻め込んできたか。ゾルゲが死んだ後の話でございますから、ゾルゲが生き返ってきたら、ソ連を戦争で日本がドイツと一緒に攻めなかったのに、その日本を、原爆を落とした明くる日に攻めたソ連というのは、大変このゾルゲを裏切ったなという気が私はするのでございます。  時間が短いものでございますから、もういろいろ言いたいことはいっぱいあるのですが言えないので残念でございますが、先ほどのカンボジア、これはさっき言いました、アメリカが中国を中心に取り囲んだそのラインの外側を太平洋艦隊、それからコメコン体制に入ったラオス、ベトナム、カンボジア、それから親ソ連のインド、それからアフリカの北部、これはアメリカの月の輪のその外側をソ連が取り囲んだということでございます。ゲオポリティーク、地政学というのがこのごろはやっておりますが、この関係から見ると、日本はその月の輪の端にいて、アメリカが、レーガンがどうするかわかりませんけれども、共産主義の半分を当てにしていままで世界戦略を立てていた。この関係の中で、日本アメリカと中国と一緒にいく。  そういう中で、カンボジアに対するこの間の外務大臣のお考えというのは、いまでもそうだと思っていらっしゃるでしょうか、それとも、やはり英国方式で両方じっと見ているかということにならないのでしょうか。東南アジアの現場の人たちから、ちょうど外務大臣がおっしゃったときでございましたので、いろいろ言われたことがあります。
  133. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本が民主カンボジア政府を承認し、国連で代表権の維持ということをやりましたのはそのとおりでございます。これは、代表権の維持につきましては特にASEAN諸国の主張を強く支持したということでございます。  民主カンボジア政府を承認しているということは、ポル・ポト政権のやったことをそのまま承認しているという意味じゃないのです。言われるようなことを正しいとかなんとか、ちっとも思っていないのでございますが、片一方のヘン・サムリン政権というのは、ベトナム軍がカンボジアに介入をしてこれを支持しているという政府でございますので、他国の軍隊によって支持、維持された政府を承認するというわけにいかぬということで、日本は民主カンボジア政府を承認しているわけでございます。  それで、あそこのインドシナ半島での平和をどうするかということがこれは基本でございまして、今度の国連でも、代表権の維持と一緒に、ASEAN、われわれが出しました決議も圧倒的多数で通っているわけでございます。これは、あの地帯で何とか平和を、それにはカンボジア国民が自由に意思の発表のできる自由な選挙をやって、そして選ばれた政府をつくろうじゃないかということを内容にした決議でございまして、日本としましては、そういうことが早く実現されて、国民が自由意思でつくった政府というものを支持していくということをやりたいというふうに考えております。
  134. 中山正暉

    ○中山(正)委員 時間がありませんので、簡単に最後に伺っておきますが、実は、北海道の道庁の監視船が、稚内の助役まで連れまして、ソビエトへ行きましたり、いろいろと日本の国権といいますか、もう伊藤律どころか堂々といま出入国管理令とか関税法とかそんなものを全部無視したような行動がどんどん起こっております。  それからまた、この間も中央大学での五党討論会で楢崎さんとか内藤功さんと一緒だったのですが、有事立法を実は政府が用意しておると言ってかばんの中から出してこられました。これは本物だ、こうおっしゃったのです。  私はリーダーズダイジェストで読んだのですが、ミグ25で函館へ来たベレンコという人がアメリカのCIAで自白している中に、なぜあなたそんなに簡単に函館に来たんだと言ったら、自衛隊の幹部それから警察の幹部に共産党の連絡員がいてそれがどんどん連絡をしてくるものだから、私は目をつぶってでも函館の空港に来れました、こういうようなことを言っております。実に物騒なことをおっしゃる。  そして私が内藤さんに、それじゃその資料をどこで手に入れたんだと演壇の上で言いましたら、神田の古本屋で手に入れたとおっしゃいました。神田の古本屋に新しい物が売っているんだななんて大笑いしたんでございますけれども考えてみると、スパイ防止法がありません。日本みたいに軍備のしっかりしてない国はそういうスパイにどう備えるか、情報の漏洩をどうするか、そんな問題。  ですから、スパイ防止法についての外務大臣のお考え方を、短かくて結構です、最後に聞かしていただき、それから北海道の監視船問題、これについてどういうふうに対処し、どういうふうな捜査をしていらっしゃるか、簡単にお答えいただいて、ちょうど四十五分間、たった四十五分間でございます。自民党がふえても余り値打ちがないなという気がしながら、質問の時間が短かいなという不満を申し上げながら、さっき言いました伊藤律さん、これは絶対にお願いをしたいと思います。伊藤律さんの証人喚問。それから宮本さん、しきりに共産党の演説会で伊藤律問題について発言をしておられますから。それから野坂さんは実際に査問をされたところにおられた方でございますから、この方にもお話を伺いたい。お三方に国会に御出頭を願うようにひとつ証人喚問を委員長要求いたしまして、きょうの質問を終わりたいと思います。また委員長、お願いをいたします。
  135. 伊東正義

    伊東国務大臣 私への質問はスパイ防止法の関係の御質問でございます。  これは国家機密とかいう問題、どこまでどうするかというような非常にむずかしい問題がございますし、政府で何も相談したわけじゃありませんが、私の個人の考えを申し述べれば、こういう法律はよほど慎重にしないと、戦前のこともいろいろわれわれは経験がございますし、慎重に考えなければいかぬ問題だというふうに考えております。
  136. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 ただいま先生御指摘の北海道庁の漁業取り締まり船の案件でございますが、これにつきましてはサハリンに上陸した者がおるわけですが、これが出入国管理令の違反になるかどうか、つまり不法出国の構成要件とされております本邦外の地域に赴く意図を持って出国した、そういうことがあるかどうか、あるいは物品の不法輸出といった関税法違反の事実があるかどうか、こういった点を中心に、ただいま現地でございます北海道警察において鋭意捜査を進めております。捜査の結果具体的に犯罪の容疑が出てまいりますれば、当然のことではございますが、法に照らして厳正に処理をするという方針で、ただいま捜査を進めておるというところでございます。
  137. 中山正暉

    ○中山(正)委員 どうもありがとうございました。期待をいたしておりますので、ひとつ外務大臣の御健闘をお祈り申し上げます。ありがとうございました。
  138. 奥田敬和

    奥田委員長 中山君申し出の証人の件については、理事会に諮り、協議することといたします。
  139. 中山正暉

    ○中山(正)委員 どうぞよろしく。
  140. 奥田敬和

    奥田委員長 玉城栄一君。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 まず最初に、今回のアメリカ大統領選挙の結果につきましては、レーガン候補が大勝利ということが確定をいたしておるわけであります。そのことにつきまして大臣自身午前中からいろいろと御所見をお述べになっておられるわけであります。その中で、ブッシュ大統領候補とのお話し合いの中で力による平和という言葉が非常に印象的であったということを強調し、大臣自身も何回もそのことを繰り返しておっしゃっておられるわけであります。  そこでレーガン氏に対しては、現在国際的にもあるいは国内的にもいかなる政策路線をとるのだろうかという懸念と申しますか、大きな不安があることも事実であります。今後のレーガン氏の対外政策について、大臣はどのようにお感じになっておられますか、お伺いいたします。
  142. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は、午前中から申し述べましたのは、直接お会いしたのがブッシュ大統領候補であったものですから、ブッシュさんの口を通じて共和党が政権をとった場合にはどういうことかということを伺いましたので、私はそういうお答えをしたわけでございます。レーガン氏が正式に当選されまして、一月二十日以降どういう政策をやられるかということはわれわれははっきりここで述べる、そういう段階ではまだございませんので、ブッシュさんの口を通して出たことを申し上げるのが私は一番実感に合っていると思って申し上げているのでございます。  そのときに、力による平和ということを何回も言ったではないかということでございましたが、これはそのとおりでございまして、その議論をしたときに、バランス・オブ・パワーの問題で、力のバランスが崩れると困る、これはやはりちゃんとした均衡を保った、力の点でも均衡の保ったものを持っていなければいかぬという意味で、それによる平和ということで力の平和ということを主張されておったわけでございます。私は、たとえばそのブッシュさんの話を聞いておりましても、昔の冷戦構造とかそういう感じは受けませんでした。やはり東西の融和といいますか、戦争回避、平和といいますか、そういうことが基軸であるというふうに私は実感として受け取ったのでございます。  それで具体的にどういう政策ということでございますが、私は特にそのとき日本との関係について質問をしたわけでございますが、そのとき出ました言葉は、日本に対しましてより以上の防衛をしてくれ、そういうような具体的な話は何もなかったわけでございまして、アメリカ日本との関係はいろいろ重要な問題があるので、事前によく協議をするということでございました。自動車の問題も自由貿易は守っていくというようなことでございましたので、私は政権がかわりましても、少なくとも対日関係には大きな変わりはない、共和党も日本をアジアにおける基軸として考えていくということを言っておられますので、私は大きな変化はないのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。ただ、全世界的にどういう微妙な若干の変化が出るかどうか、その辺のところはいま私ども予想できませんが、日本に関する限りはそんな大きな変化はないだろうというふうに思っておるわけでございます。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点お伺いしておきたいのですが、レーガン氏はいわゆる力の論理を追求するのではないか、そういう懸念があるわけです。したがって、大臣とされては今後の米ソ関係の緊張というものは全く心配ない、懸念はないというふうなお考えなのか、その辺いかがでしょうか。
  144. 伊東正義

    伊東国務大臣 私はこの前もアメリカへ行きまして、副大統領にもマスキーさんにも言った、グロムイコさんにも言った、ブラウンさんにも言ったわけでございまして、米ソが戦争するというようなことになればこれは本当に人類の破滅のような大戦争になるわけで、世界じゅうが巻き込まれるわけでございますので、そういうことにはならぬことを日本は本当に希望するし、そういうことがあってはいかぬというような意見を言ったのでございます。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕 私はその点はだれがアメリカ大統領になられようとやはり世界の平和を何とかして保っていく、そして世界の繁栄を来すということにおいては変わりないものだと思っております。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点伺っておきたいことは、レーガン政権が誕生したときにはカーター政権よりはわが国への防衛増強という要求は強まる可能性があるのかないのか、その辺はどのような見通しを持っておられますか。
  146. 伊東正義

    伊東国務大臣 その点、私もブッシュさんにざっくばらんに意見はどうですかということを聞いたわけでございますが、ブッシュさんは、その点は特にレーガンさんが大統領になってもそういうことを日本に期待するとか要求するとか、要求という言葉は変でございますが、そういうことは考えてないということを私には明言をされたわけでございます。私は、日本考え方はきょう午前中にも申し上げましたが、やはりいまの憲法に基づいた自衛権ということで、他国には脅威を与えない、侮りを受けないという最小限の自衛力を持って、専守防衛で国は守るのだ、安保条約体制のもとでそういうことでやるんだということを、日本としては新しい政権にも伝えるということをやるべきだと思っております。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点、この問題と関連しまして、SALTIIの承認ですね、わが国としては承認されることが望ましいというお考えに立っておられるのかどうか。
  148. 伊東正義

    伊東国務大臣 この前アメリカに行きましたとき、ブラウンさんにSALTIIの承認の問題を話しました。米ソが平和友好ということでやっていく上にはそういうことをどう考えますかと言ったときに、ブラウンさんは、大統領選挙が終わればなるべく早い機会にそういうことを議会に話しかけたいという希望を持っておるのだと言っていた点から見ましても、話し合いをしたものはそれを認めていくというのが普通の国家間のことでございますから、新しい政権もその点は十分に検討され、そして取り組んでいかれると思っております。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは御要望になりますが、大臣のお考えとして、日本は主張すべき点は主張し、平和外交を貫くということを何回もおっしゃっておられるわけであります。そこで、力の平和ということと平和憲法に基づく平和外交というものとは衝突する部面が出てくると思うわけでございます。今後新しい政権との関係において決して引きずられるようなことがないように、そのことを強くお願いしておきたいのですが、いかがでしょうか。
  150. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは日本が自主的に考え防衛力の充実はやる、国民の皆さんのコンセンサスを得てやるということでございまして、片一方には日米安保条約がある、これを有効に円滑に運用していくということもございます。その面で、日本がみずからを守るという姿勢で自助努力をしていく、専守防衛ということで最小限の自衛力の充実ということで自助努力をすることは必要でございますので、いままでと考え方を一緒にしてやっていくべきだ、それを理解してもらうように向こうにも、新しい政権にも十分話すということが必要だと私は思っております。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 これから具体的にいろいろな問題が出てくると思いますが、その都度お伺いさせていただくとしまして、質問を変えます。  条約局長あるいは北米局長でも結構でありますが、後の質問にちょっと関係しますので教えていただきたいわけですが、安保条約の地位協定上、米軍への提供施設、区域内で発生した火災に対する消火義務は一体どこにあるのか。いかがでしょうか。
  152. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは地位協定の第三条に規定しておりますけれども、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」と書いてありますので、これは第一義的に米軍が消火を含めてその責任を負うというふうに考えております。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいま局長がおっしゃいました第三条に基づいて第一義的に米軍にそういう場合の消火義務があるのだというお話であります。  そこでお伺いをしておきたいのでありますが、こういう場合に日本側として施設、区域内に入って消火活動をすることができるのかどうか、いかがでしょうか。
  154. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 管理権が米軍にございますので、米軍の要請がまず前提条件でございまして、委員が頭の中に置いておられる今回の事件についても、沖繩県の知事の要請もあって事実上自衛隊が消火作業に当たったと承知しております。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 その問題は別としまして、管理権が米側にあるということで、米側の要請が前提ということになりますと、要請がないときは日本側としてはどうなるわけですか。
  156. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは地位協定の運用に関する問題でございますけれども、そういうように緊急の事態になった場合には、アメリカ側からの要請がまずあるというふうに私たちは考えておりますので、アメリカ側の要請がなくて日本側がそこへ行って消火作業を行うという事態は、普通の状態では考えられないのではないかと思います。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでお伺いしておきたいのですが、こういう基地内の火災という事例、事件はいままで何件くらいあったのか、ちょっと教えていただきたいのです。
  158. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 キャンプ・ハンセン内の火災についてだけ申し上げますと、本年の二月に二件、三月に二件、これはいずれも小規模な火災でございましたけれども、そういう事件が起きておりまして、その都度外務省アメリカ側に対して、施設、区域内の火災予防あるいは安全管理について申し入れをしております。  なお、具体的な日にち等が必要であれば申し上げますけれども、現在のところハンセン関係は四件でございます。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 私が伺っていますのは沖繩だけでなくて全国のそういう基地内の火災の発生した件数なんです。  それでは重ねてお伺いしておきますけれども、その場合の消火はどこがやったのか、沖繩だけでなくて。
  160. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 安保条約地位協定が発効いたしましてからの件数でございますと、全体の件数はここに持っておりません。ただ、一つの例として昨年東富士の演習場で火災がございましたが、これは米軍自体が消火して鎮火したというふうに聞いております。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでお伺いをしたいのですが、安保条約六条に基づく地位協定の合意議事録の三条1項に、運営し、維持し、管理するというような文言が書かれているわけですが、これはどのように解釈しておられるのか、お伺いします。
  162. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの件は三条1項の「施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」ということを指しておられるかと思いますが、これについてもちろん米軍がその管理権を持っておりますし、それぞれの施設、区域内においてその態様等については異なっておりますので、一概には言えないわけでございます。  なおそのほかに、当然アメリカ側としては、日本アメリカ軍及びアメリカの軍人としては日本の法令を尊重するというのがございますので、施設、区域の安全の確保のためには日本の法令に定められているようなことも念頭に置きながら管理を行っているというふうに了解しております。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでお伺いしておきたいのですが、いま御説明のありました三条1項で、いまおっしゃいましたようなことからしますと、基地、いわゆる提供施設内に危険な、たとえば不発弾とかそういうものがごろごろしているようなことは、この規定からいいまして当然取り除かれておくべきでしょうね。管理権等の、いまおっしゃった安全管理という問題からしましても。
  164. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 おっしゃるとおりでございまして、そのために施設、区域内で、たとえば射撃演習その他で発生した不発弾についての処理はアメリカ側が責任を持ってこれを除去するということになっております。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは一般論なんですけれども、いまおっしゃいましたアメリカ側が責任を持って除去するということがされてないということになりますと、いまの規定からいきますと、されてない状態はどういうことになりますか。
  166. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは管理者としての注意義務を怠っているということで、もしそういう事態があれば私たちとしては非常に遺憾だと思っております。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、いまおっしゃいましたとおり、管理者としての注意義務を怠っておるということであります。  そこで、火災が発生するということ自体は、この協定上はどのように考えられますか。
  168. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは射撃演習に伴うものでございますので、落下地点その他である程度の火災が発生するのは射撃演習に伴う結果的なものでございますが、米軍としては、そういう事件があった場合に、さっき私が申し上げましたハンセンの中の四つの件はいずれもそういう射撃演習の際に発火がございまして、米軍が直ちに消火に努めたということでございます。
  169. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、そういうことではなくて、それはぼやとかいろいろ火災の規模にもよりますけれども、やはりこれはさっきの不発弾の問題とあわせて管理の不注意ということも当然言えると思うのですね。いかがですか。
  170. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 全般的な問題についてすべて不注意であるかどうかということは、具体的な態様に即してお答えした方がいいと思いますが、少なくとも今回のキャンプ・ハンセン内の火事については、われわれとしてアメリカ側にすでに申し出てございますが、安全管理についてはアメリカ側が負っている責任を十分果たしてほしいということを申しております。
  171. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、いまキャンプ・ハンセンの話を引いておられますけれども、そうではなくて、一般論として伺っているわけであります。  そこで、先ほど局長もおっしゃいましたとおり、地位協定三条3項あるいは合意議事録の三条1項ですか、等々から照らして、そういう管理の不注意だとかあるいは安全管理が不注意であるというようなことについては、当然外務省としても厳重に米側に抗議される必要が一般的にあると思うのですが、いかがですか。
  172. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 やはりそういうような事態が起きることは好ましくございませんので、事態に即して外務省として施設庁と協力しながら米側と話し合いをしていくというのが一般的な姿勢でございます。
  173. 玉城栄一

    ○玉城委員 では、先ほどからお話が出ております、十月二十九日の在沖米海兵隊によるキャンプ・ハンセン演習場における実弾演習に伴う火災の発生状況並びにその原因等も含めて、詳細に御報告いただきたいと思います。
  174. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 十月二十九日にキャンプ・ハンセン演習場内の恩納岳で、十六時三十分ごろ、在沖繩米軍による射撃訓練の際により、また同じく三十日十三時五十分ごろ、同じような射撃訓練によって思納岳においてそれぞれ火災が発生したわけでございます。  火災が着弾地域外に広がったために、三十一日の午前、米軍はヘリコプター二機によって消火活動を開始しましたけれども、鎮火しなかったわけで、三十一日の午後、米側からの要請がございまして、防衛庁長官は災害派遣ということで自衛隊の飛行機を十一月一日にその地域に派遣いたしまして消火剤の散布が行われた結果、一日の十六時二十分に鎮火したというのが現状でございます。
  175. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほど、基地内における火災発生の消火義務については米軍にあるというお話があったわけですが、なぜこれは米軍は消火しなかったのですか。
  176. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど御答弁したように、米側はしたわけでございますが、結果的に能力がなくて、そこで日本側の救援を頼んできて、それで自衛隊のヘリコプターが出撃して——出撃という言葉は適当ではないかと思いますが、自衛隊のヘリコプターが救護活動を行って鎮火したということでございます。
  177. 玉城栄一

    ○玉城委員 米側が自衛隊の要請をしたのですか。
  178. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の了解するところ、現地においてアメリカ側と日本側との話し合いが行われて、形式的には沖繩県知事が防衛庁長官に要請したということでございます。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 玉城栄一

    ○玉城委員 局長、これは本来は米側が消火する義務がありますね。しかし能力がなかったから自衛隊にお願いしたということになっているわけですね。なぜ米側は消火できなかったのですか。その理由、御存じですか。能力がないということをおっしゃっていますけれども、なぜ自衛隊に要請しなければならなかったのですか。
  180. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 詳細については現在アメリカ側でも原因を調査中でございますし、私たちもその点について、まだ詳細の報告が来ておりませんが、しかし、現実の問題として、アメリカ側の持っている、あるいはアメリカ側がやろうとした消火活動にもかかわらず消火ができなかった、そこで日本側要請したというのが事実というふうに私は了解しております。
  181. 玉城栄一

    ○玉城委員 だから、なぜ米側が消火活動ができなかったかということを聞いているのです。なぜできなかったのですか、米軍は消火活動が。
  182. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 その点についてまだ私たち詳しい状況を聞いておりませんけれどもアメリカ側として最善の努力をしたにもかかわらず実際上鎮火できなかったということで、いま委員がお尋ねのなぜできなかったかという点については、もう少し現地からの報告あるいは米軍の調査を待ってお答えした方が適当じゃないかと思います。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは先ほどからお伺いしていますとおり、米軍の管理不注意といいますか、不発弾がごろごろしているわけですね。ですから、米側としては危険だからそこに消火活動に入れない、こういう状況じゃないですか。
  184. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 少なくとも私たちが現地からの報告で聞いているのは、アメリカ側としてもまず第一義的にアメリカ側が消火活動に従事したわけでございまして、そこに入れなかったというような報告には私は接しておりません。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは局長さん自身が実態を知っておられないからそういうことをおっしゃいますけれども、そういうことで自衛隊を要請をして消火活動に当たらせているわけですが、そこで、なぜそういう不発弾というようなきわめて危険なものがごろごろしているところに日本人をそういうふうに投入するのか、その辺いかがですか。
  186. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは自衛隊のヘリが上から消火剤をまいて結果的に消火をしたということでございまして、現実に日本人がその現場に入っていって地上から消火作業をしたということではございませんで、上からのヘリによる鎮火作業でございます。
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでもう一回確認しておきますが、先ほど最初の方で伺いましたとおり、この不発弾の除去ということは当然安全管理という立場から米側に責任がある、それがされていなかったという点。これは条約の趣旨に反しますね、いかがですか。
  188. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 今回の火災は不発弾と直接的に関係があるというふうには私は聞いておりません。しかし一般論として先ほどお答えしたのは、火災発生になるような不発弾をそのままにしておくということはアメリカ側は管理責任を十分に発揮していないということでございますということを先ほどお答えしたわけです。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、最初に局長がおっしゃった、そういう基地内における火災の発生についての消火義務は米軍にあるということからしますと、今回そのようなことができなかったということは、米軍はそういう義務を果たし得なかったというふうに理解していいわけですね。
  190. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もう一回申し上げますと、不発弾が原因で火事になったのかどうか、その点を含めて現在調査中でございます。  それから、米軍として消火する作業を実際にしたわけでございますけれども、結果的に米軍だけでは消火ができなかった、そこで日本側の協力を要請したというのが実態でございます。
  191. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、その消火できなかった原因ということは、これは着弾地点に不発弾がごろごろしていますと、上から水をぶっかけると消えるが、急に冷やすとこれがまた爆発するということで、米軍は消火活動ができなかったのですよ。そこに自衛隊を投入して消火活動をさせたというのが事実になっているわけですね。  ですから、米軍が基地内において発生した火災についての消火義務、これを果たしてないということは、おっしゃったところの条約の三条3項に明らかにこれは反してますね。
  192. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 実際上米軍もヘリによる消火を行ったわけでございます。しかし、どういう原因かわかりませんけれども、米軍のみの消火作業では鎮火できなかったということでございますので、その不発弾との関係云々については、先ほど来御答弁申しておりますようにもう少し私たちとしては事故の原因その他を調べて、その結果必要があればアメリカ側に申し出るなりあるいは注意を喚起するなり、すでにアメリカ側に対しては安全の保持については申し出ておりますけれども、さらにその調査の結果を見て所要の措置をとりたいと思います。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 一点これは確認しておきたいのですが、米側の要請に基づいて自衛隊が消火活動に出動したんですか。どうなんですか、その点はっきりしてください。
  194. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは現地で施設庁と米軍というものは施設の維持その他について日ごろから常時連絡をしております。今回の火災が起きた際にも沖繩の施設局からもあるいは施設庁本庁からも消火その他について申し入れをしておりまして、その間いろいろな連絡がございます。それを踏まえて状況を判断しつつ沖繩県知事から先ほど申し上げましたように防衛庁長官に消火作業の要請があったということでございます。
  195. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは県知事の要請であって、いろいろ相談ということは正式な米側の要請はあったんですか、なかったんですか、それをはっきりしてください。時間もないので、はっきり言ってください。
  196. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 それは私の方としては、施設庁がアメリカ側から話の過程の中で連絡を受けて行ったというふうに了承しております。
  197. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやいや、そういうことではなくて、いわゆる沖繩県知事名で県の要請に基づいて自衛隊が出動して米軍の基地内を消火活動したのですか、それとも米側のそういう要請があって防衛庁長官がオーケーをして出したのか、そこを聞いているわけです。
  198. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 三十一日の午後、沖繩県の知事から防衛庁長官に対して災害派遣の要請が行われた、これは先ほど申し上げたとおりでございます。その前段としては、アメリカ側とそれから沖繩の施設庁で常時連絡をしておりますので、その過程話し合いで施設庁がアメリカ側の話を受けて、これはアメリカ側だけでは消火ができない……
  199. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやいや相談の話ではなくて、米側の正式な要請があったのかなかったのか、それはどっちなんですか。正式な要請があったんですか、あって出動したんですか。
  200. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 正式の要請というお言葉がどういうことかわかりませんけれども、私たちが聞いていることは、米側から施設局に話があったわけでございまして、それが正式の要請かどうか、と呼ぶことはまた別途の問題でございまして、実際には緊密な連絡の結果起きたことでございます。
  201. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはまあ連絡とか相談とかいろいろな話がありますけれども、県の要請に基づいて自衛隊は米軍の基地内に、いまの場合消火活動ですけれども、そういう県の要請があればどんどん入って消火活動できるのですか。それとも米側の正式な要請があればできるのであって、そういうものがなければできないんですか。
  202. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは鶴見の例でもございますけれどもアメリカ側との同意があれば消火活動あるいはその他の点について施設、区域内に入って保安のために活動するということは可能でございます。
  203. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで外務省としては、今回四日にわたってキャンプ・ハンセン、そして民間地域に類焼するぐらいな大火災といいますか山火事が起きたわけですが、このことは先ほどおっしゃいました三条の3項、いわゆる公共の安全に考慮を払って行わなければならないということからしまして、どのように考えられますか。
  204. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほども答弁しましたように、米軍は公共の安全に考慮を払わなければならないということでございますので、われわれとしてはそういう点、今回の火事が必ずしも米側の考慮が十分でなかったということで、すでにアメリカ側に対して遺憾の意を表明してございます。
  205. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、先ほどからの質疑でお聞きになられた件について、大臣の御所見を伺っておきたい。  これは大臣も御案内のとおり、去る二十九日から一日の四日間にわたりまして、在沖米海兵隊の戦車砲が原因になりまして大きな山火事が起こったわけです。過去にもそういう例があったわけですが、今回は本当に初めての、最大級の百万平方メートル、民間地域にはみ出すような形で大火災が起きているわけです。先ほどから御指摘申し上げておりますとおり、基地内におけるそういう火災の発生、発生そのものが問題ですけれども、それに対する消火の義務というのは米軍にある、それができなかった。また基地内にある不発弾が処理されてなかったために、危険だから米軍は消火活動ができない、そして自衛隊が出ていった、こういう経過があるわけですね。これは明らかに条約上いろいろな点から、米側の一連の基地管理、安全管理という点には問題があるわけですね。それは先ほど遺憾である、これは条約に反するというようなことがあったわけであります。  そこで大臣、この間の参議院の委員会におきまして、安保条約の運用の問題に関係しまして、周辺地域住民の理解と支持が不可欠である、その中でも特に沖繩県においては安全管理や周辺対策を進める、積極的にそういうことをやりたいというお話等を総合しまして、こういう事態が常に起こってきますと、おっしゃることと実態とはもう全然かけ離れていきまして、御存じのとおり、きょうは地元の県議会においては基地撤去要求とか、そういうことで感情的な問題に発展してくるわけです。そこでまた、早々外務省にも抗議として来る、こういうことであります。  そこで時間がございませんので続けてお伺いしておきたいのですが、こういう事態と、もう一点は、北海道に外務省の出張所を置くのだという話等もありました。それとの関連で、これは復帰前におきましては外務省の高官が沖繩に常駐されまして、対米関係とか、現実に五三%の基地があるわけですからそういういろいろな処理がある。日常茶飯事でいろいろな問題が起きているわけですから、そういう点沖繩についてもお考えになられるおつもりがないかどうか。二点まとめてお願いします。
  206. 伊東正義

    伊東国務大臣 参議院で、施設、区域の維持上これは周辺の人々の理解がないとなかなかむずかしい問題だということを申し述べたことはそのとおりでございまして、特に沖繩では非常に密度が高いわけでございますから、いま先生がおっしゃったような問題で周辺の人が非常に不安を感ずるとか迷惑をするということにつきましては十分注意しなければならぬことでございます。安保条約あるいは地位協定というものを維持していく上からは、私は参議院で申しましたとおりの気持ちでございますから、米軍その他にもいま先生のおっしゃったこと、そういう事態を本当に最少限にするように私からもよく伝えます。  それから北海道に外務省の人が月に何回か行きまして知事の相談にあずかり、あるいは道民に国際情勢の啓蒙をするということは、これは実は北海道庁からの要請で協力するということでございまして、私の方から積極的に行ってどうするということじゃなかったのです。北海道からは要請がございますので積極的に協力しますということを申し上げているのでございますが、沖繩ではまだ実はそれは考えておらなかったわけでございます。沖繩の県庁からそういう要請も実はいままであったことはございませんので、県庁の方からそういうお気持ちでもあれば、私ども考えるにはやぶさかではございません。
  207. 奥田敬和

    奥田委員長 林保夫君。
  208. 林保夫

    ○林(保)委員 レーガン大統領の登場で、先ほど大臣のお話を伺っておりますと、一つは世界戦略と言っていいのでしょうか、力の平和というお言葉が二度、三度と出てきております。と同時に、レーガンさんは自由貿易主義者で、日本経済に対する問題はこうこうだというお話でございました。その力の平和、これを大臣はどのように御解釈になられますでしょうか。対ソ戦略の問題、SALTIIの批准の問題、そして何分巨大な国でございますので、極東あるいは中東さらには欧州の軍事、経済情勢に対して、力と言う以上はやはりそれなりの何かの力が加わってくるだろう、このようにお考えだろうと思いますが、御認識をちょっと承りたいと思います。
  209. 伊東正義

    伊東国務大臣 力の平和ということが何回もお話が出た、印象的だったということを申し上げたのでございますが、恐らくこれはソ連との関係で力のバランスということですか、そういうことに一つあらわれてくるのじゃなかろうか、これは私の予想でございますが。ブッシュさんと話しましたときには、特にSALTIIの批准をやるとかやらぬとか、そういうような具体的な話は実はなかったわけでございます。アメリカの力が衰えれば、バランスが崩れれば平和に危ないことがあるので力のバランスを保っていかなければならぬということを強調されたのでございまして、特に日本に対しましていま以上に防衛力の強化を云々というようなこと、私質問したのでございますが、特にそういうことはそのときの説明にはなかった。経済問題、防衛の問題、いろいろ問題があるが日本とは事前に十分協議しますということでございました。ブッシュさんがあの時点で言われたことを私はいまも思い出すのでございますが、一月二十日以降、レーガンさんが正式に大統領になられてどういう政策をとられるかということを予測はいたしかねますが、私はそんなに大きな変化はないだろうというふうに見ておるわけでございます。  日本としましては、アメリカとの平和友好というのが安保条約では基軸でございますので、日米の友好関係を保って世界の平和あるいは日本の平和繁栄ということに従来どおりの考え方努力していくつもりでございます。
  210. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のお言葉、反論するわけでもございませんが、大した変わりはない、こういうことでございますが、私も大変短い経験だったのですが、三月ちょっとアメリカへ参りました。当時はもうカーターさんがいま投票すれば確実に勝つ、しかしなおかえなければならぬのだ、こういうようなのがワシントンでも、特にニューヨークで激しかったと思います。これは経済界が中心だったかもしれません。  そういう期待を担って出た大統領なんでございますけれども、先ほど来承っておりますと、余り変わらない、大した変わりはない、こういうことでございますが、実を言いますと本当にそうなんでございましょうか、こういうことも聞きたいわけでありますが、私なりに考えると、かわったというそのことは、私は変わらなければおかしいんじゃないかと思うし、また変えたい国民の要望がここに突出しちゃったのが今度の選挙の結果ではないかとすら思うわけであります。  従来は人権外交と言っておりましたが、言葉をかえて言いますと、今度はどちらかというとアメリカの国権が地に落ちている、そこらの反省の上に立っての問題もあろうかと思います。また雰囲気を中心にして右顧左べんしながらやってきたカーター大統領の政治姿勢であったかと思いますけれども、これがひょっとすると実務的になるかもしれません。そしてまた先ほど大臣がおっしゃいましたように力が強く出てくる。このことがアメリカにとって、世界にとって、大臣がよく言われます国際秩序の問題についていい影響を来すのか、悪い影響を来たすのかわかりませんけれども、やはりこれは変わるし、変わらなければおかしいのじゃないかと思いますが、この点大臣の御所見をもう一度重ねて、恐縮でございますが、承りたいと思います。
  211. 伊東正義

    伊東国務大臣 今度の選挙の勝敗というのはいろいろ原因があると思うわけでございますが、民主党、共和党の中のまとまりが、挙党一致体制がとれたかどうかという問題もありましょうし、あるいはいま先生おっしゃった経済問題で、失業の問題とかインフレの問題とかについて民主党の政権のやったことがどうも十分でなかった。やはりインフレとか失業というような問題については国民大衆から批判があったかもしらぬと私は思いますし、あるいは先生最後におっしゃったバランス、力による平和の問題につきまして若干国民の中で異論があったかもしらぬ。あるいは大統領の指導性の問題でございますとか、いろいろ原因は、批判は出てくるものがあると思うのでございます。  しかし私は余り変わらないだろうということを申し上げましたのは、一つは経済問題で自由貿易のことを議論したのでございますが、このときに自由貿易は守っていくんだ、市場開放してやっていくんだということは共和党の政権になっても変わらぬということを強く主張されたのでありまして、私はそれをいまでも信じておるわけであります。そういう意味からいうと、日本アメリカとの貿易関係はまずそう変化はないんじゃないかという感じを持っておることでございます。  それから力の問題でございますが、力による平和ということはソ連とアメリカの軍備を中心にしたバランスの問題があるかと思うのでございますが、それからすぐ日本に対しまして非常に大きな期待をかけられるとか、そういうことを私は質問したのでございますが、そうしたことについては特に考えておらぬということの返事がそのときありましたので、それでは経済問題、いわゆる防衛の問題等についてそういう大きな変化はないなということを私はブッシュさんと話して感じ取ったのでございます。日本も自由主義陣営の一員として、日本として責任を持ってやることは私はいまやっておるというつもりでございますので、その点においてそう大きな変化はないのではなかろうかという感じを持ったわけでございます。  いま先生おっしゃった人権外交とかそういうことになってくれば、若干のニュアンスは出てくるかもしらぬと私も思っております。だが日本に関する限りはそう大きな変化はないんじゃないかという感じを持っておるものですから、ブッシュさんと会ったときの感想をもってお答えを申し上げている次第でございます。
  212. 林保夫

    ○林(保)委員 日本との関係でございますが、これから新しい大統領を迎えて、いわゆる大臣のおっしゃる日米基軸の外交をどういうふうに展開していかれるのか、こういう問題でございます。その中で、昨年といいますよりも特にことしの五月の大平さんの訪米に当たりまして、大臣が官房長官をしておられた当時でございますが、戦後の日米間の外交上初めて新しい言葉日本文字として出てまいりました。同盟国ということでございます。従来は友好関係とかパートナーシップとか、こういうような形で出ておりましたが、そのことと関連いたしまして、大臣のこれからの立場は変わらない、こういうことだろうと思いますけれども、五月以降その言葉を使っておる立場からいきますと、あれで日本は大丈夫なんだろうか、十分対米関係の責務を——日米安保条約の中でも同じでございますが、互助と自助という言葉がございます。いろいろなことが現在要求されておるし、さらにこれからもっともっと出てきそうな予感がいたしますが、大臣の願望はともかくといたしまして、現実の問題としてのこれからの対処につきまして日米間、特に日本との関係についてどういうことを御想定なさっておられますか、姿勢をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  213. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどからお答えを申し上げておりますように、大平総理も行きまして同盟国という言葉を使ったのでございますが、自由主義陣営の一員として責任を分担してやってまいりますということは、大平総理もずっと主張したことでございますし、われわれもそれは外交の基軸、日米安保、日米友好親善というようなことで考えておるわけでございますので、私はその立場は何も変わらぬ。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 先ほど言いましたように過大な要請をされるようなことはないだろうというふうに私は見ておりますし、実はブッシュさんともそういう話をしたのでございます。  ただ、日米関係防衛力の問題だけに限定して考えるべきではない。日本の安全保障という問題は日米安保を基軸にして考えることは当然でございますが、またもっと広く安全保障ということを考える必要がある。それにはいわゆる紛争周辺の諸国のたとえばタイでございますとかパキスタンに援助をよけい出すとか、あるいは実はNATOの関係でトルコにも出したわけでございます。そういう援助をできるだけする問題、あるいは難民の対策を考える問題、あるいは南北問題でODA、政府開発援助をよけい考えまして、そして南北問題というものをなるべく平和裏に解決していくというようなことも広い意味の安全保障である、私はこう思っておるわけでございます。  そうしたことも、いままでも日本アメリカでも相談をしたことがあるわけでございますので、狭い意味の防衛、もちろんもっと広い意味の安全保障というようなことにつきましても、従来もアメリカと相談しております。今度も共和党政権になっても日本といろいろな問題を十分に協議するということをこの間言われたわけでございまして、そういう広い意味の安全保障というようなものも相談の対象になっていくだろうというふうに私は考えます。いままでも日本としては自由主義陣営の一員としてやっていたと思うわけでございますので、そう大きな変化は日米関係ではないだろうというのが私の考え方でございます。
  214. 林保夫

    ○林(保)委員 御説のとおりだと思いますが、なお先ほど同僚委員からも問題が提起されておりました日米安全保障条約の問題に関連いたしまして、御承知のように昨日の内閣委員会で私ども民社党もいわゆる平和戦略を推進する、そしてまた憲法を守る、そしてまた財政の範囲内で、どちらかといいますとやむにやまれず賛成の立場を実は決めたような次第でございます。  これは、日米間の条約上の問題からいきますと、かなり変わった条件がまた一つ出てきた。私の党がどうこうしたということじゃなくて出てきたと思うのですが、条約上、このことなどを踏まえて、政治的にあるいは事務的に何らかの協議をなさる御用意があるかどうか、承りたいと思います。
  215. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問、あるいは私が誤解しておりましたらまた御訂正願いたいのでございますが、先生のおっしゃったような事情が新しく出てきた、そういうことに基づいて、何か安保問題について協議をするかというお話と私は承ったのでございますが、これは安保体制の円滑な運用といいますか効率的な運用といいますか、そういうことに関連してくる問題でございます。これが財政の許す範囲という、どこまで考えられるか、あるいはこれは憲法の範囲内という大きな前提があることは、先生もいまおっしゃいましたが、そのとおりでございますので、財政上の面その他でどういう形が出てきますか、恐らく予算がある程度十二月に組めればその時点でまたいろいろ協議をするような場面も出てくるのか——決まった後でですね、そういうことも想像はされますが、いま、きのうのことをもとにして、こういうスケジュールでこういう協議をしますということまでは考えておりません。
  216. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ。先ほど同僚委員大臣もそうおっしゃられたと思いますが、何か情勢が変化して、日米安保条約があるけれどもアメリカは守ってくれないのじゃないだろうかというような声まである状況である、大臣の御意思でないかもしれませんけれども。それに対して、信頼関係が大事だ、共同対処が原則なのだ、こうおっしゃいましたが、信頼関係というのは一体どういう条件で満たされるのでございましょうか。  私ども、この委員会で質問いたしまして、そして新聞などでいろいろ見ておりましても、大変な不満が向こうから出てきているように思われます。それは防衛問題ばかりではなくて、経済問題そのほかいろいろございます。しかしなお、向こうの理不尽なところもあるかと思います。一体信頼関係の回復というのは、それこそ伊東外交といたして何を目標におやりになるのか、どういう条件があるのか、お聞きしたいと思います。
  217. 伊東正義

    伊東国務大臣 大平内閣でやりましたときは、具体的にはイランの問題あるいはアフガニスタンの問題が起きまして、アメリカ、ECその他と相談をしまして、自由陣営というものはやはり、世界の秩序が破られる、あるいは平和に対する脅威が出てきたときには、共同して、協調してやるべきだということで御承知のような措置をとったのでございます。あのときも、油をとるのかあるいは法秩序、アメリカの人質というのは法秩序を破るものだということで、法秩序を守るという方をとるのかというような判断もしたわけでございますし、アフガニスタンの問題では、御承知のような経済措置あるいはオリンピックボイコットというようなことをやりまして、アメリカを中心にした西側陣営が協調していこうということをやったのは先生承知のとおりでございます。これもあのとき約束を、みんなでやろうということを誠実に守ってやるということが、やはり一つの非常に信用を高めたことでございます。  いろいろ私はあると思うのです。それは単に日米安保という枠内の問題だけではなくて、いろいろな意味で、エネルギーの問題もありましょうし、難民の問題もありましょうし、自由主義陣営の中で、あるいはサミットで相談をするとか、いろいろな相談が行われるわけでございますが、そういうところでやると言って約束したことは、これはもう誠実に履行していく。世界の平和を守るために、あるいはエネルギー問題を解決するために、あるいは南北問題の解決のためにとか、いろいろなそういう問題問題につきましていろいろ討議をする、結論が出たらそれは西側の一員として守っていくというような態度がやはり国と国との間の信頼につながるというふうに私は思っているわけでございまして、日米安保という枠内だけの問題でなく、広い意味で西側の一員としてそういう問題につきましては協調し、十分協議し、できたものは守っていくということが信頼を高めるゆえんだ、こういうように私は思っております。
  218. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、実務的な問題ですが、けさの新聞報道によりますと、外務省は五十五年度分の中国向け円借款として五百六十億円を供与すると発表した、このようにございます。これはトータルいたしますと、前年度分と合計いたしますと一千六十億円供与することになるわけです。と同時にまた、これの対象となるプロジェクトについていろいろと批判も出ていることは御承知のとおりでございます。多分これが、来る十二月三日から開かれる日中閣僚会議で確認されるものだと思いますが、その辺の事情につきまして、実務的で結構ですが、昨日御決定の円借款の内容及びこれがコンクリートになってしまったものなのか、あるいはプロジェクトの内容につきまして御説明いただきたいと思います。
  219. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先週東京で開きました第一回の日中両国の実務者会議におきまして、日本側は、本年度の円借款といたしまして、五百六十億円までの円借款を供与する意図があるという意図表明を行ったわけでございます。これは実は、昨年故大平総理大臣が北京を訪問されましたときの共同新聞発表におきまして、昨年は五百億円を供与したわけでございますが、今後の円借款の進め方といたしまして、中国側のプロジェクトの進捗状況及び日本側の財政状況等を勘案の上、毎年一回実務者会議を開いて決めるということに合意したわけでございまして、この第一回の会議を先週行ったわけでございます。  それで、この対象のプロジェクトにつきましては、昨年十二月に日本側から協力を約束いたしました六つのプロジェクトで、プロジェクト自体は変わっておりません。  ただ、今回の会議は実務者会議でございますけれども、わが方から五百六十億円までの円借款を供与する意図があるという表明をしておりますが、これが正式な両国間の合意になりますのは、交換公文を結んだ時点で正式な合意が成立するわけでございます。私どもは、できますればこの第一回の日中閣僚会議を目途といたしまして交換公文をつくる作業を進めたいと考えております。
  220. 林保夫

    ○林(保)委員 円借款供与の見返りは何かあるのでございますか。石炭あるいは原油、さらにはそのほか約束されているものがありますか。
  221. 梁井新一

    ○梁井政府委員 私どもがこの経済協力をいたします趣旨は、中国の近代化を助けまして、中国の経済の発展あるいは民生の安定を助けるということでございまして、われわれとしてこの経済協力の対価といたしまして見返りをいただくということは別に考えておりません。  ただ、中国側といたしましては、この対象、日本が協力いたします六つのプロジェクトの中に鉄道計画と港湾計画が二つございますけれども、この二つの港湾計画並びに鉄道計画は、中国が日本に石炭を輸出する場合に非常に重要な貢献をするであろうということを言っております。
  222. 林保夫

    ○林(保)委員 この機会に、十二月三日から行われます日中閣僚会議の議題、もう詰まっていると思いますので、ちょっと御報告いただきたいと思います。
  223. 木内昭胤

    木内政府委員 まだ完全に固まっておりませんけれども、先週本邦に滞在しました中国の謝北一氏との話し合いでは、一応当然のことながら国際情勢につきまして意見を交換していただき、あるいは貿易の問題、資源エネルギーの問題、投資の問題、それから経済協力、技術協力といった問題、さらには文化面その他の面での日中間の関係について、それぞれ出席の閣僚の方々の分野に応じて御討議いただくというふうに考えたいと思っております。
  224. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほどの五百六十億円の別枠になるのかとも思うのでございますが、懸案としてわれわれ大変関心が深いのは、御承知の油田の開発でございます。大平総理が中国へ行かれましたときにそういう共同開発について約束された、こういうような話も伝わっておりますし、またその後の新聞報道でもかなり具体的に話が出ておりますが、外務大臣は従来までにこういった点について中国側とお話をなさったことがありますかどうか、また今度の閣僚会議でお話しになる御用意があるかどうか、承りたいと思います。
  225. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのプロジェクトは六つのプロジェクトでございまして、先生おっしゃったのは入ってないわけでございます。でございますので、政府間ベースで外務省が油田の開発その他等現実に話したことは一回もございません。あるいは通産大臣が、そっちで石炭の問題とか油の問題とかがございますので、あるかもしれませんが、私自身はまだやっておりません。何かその他補足することがありましたら局長から補足します。
  226. 木内昭胤

    木内政府委員 五百六十億円の円借款外の問題につきましては主として通産省の方で、日本側は民間の方々が中国側とお話し合いをされておるわけでございます。最近は二十億ドル相当の輸銀による協力に加えまして、さらに内陸部の油田開発等のために十億ドル相当の追加融資ということが話題になっておりますことは、新聞紙上でも御承知のとおりかと思います。
  227. 林保夫

    ○林(保)委員 これらの通産省ベースあるいは民間ベースのそういったほぼ三十億ドルの援助協力というか融資協力、これはいつごろまでに決着をつけられるのでございましょうか。今度の閣僚会議の話題には上がるのでございましょうか。
  228. 木内昭胤

    木内政府委員 最初の二十億ドルについてはすでに話がついておりまして、残りの十億ドルが問題になるわけですが、必ずしも閣僚会議の議題ということじゃなくて、通産大臣が個別の会談で触れられるということは当然予想されることでございます。
  229. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ、これは大臣に承りたいのでございますが、新聞報道などで東シナ海大陸棚の海底油田開発について、日、米、中の開発構想がかなり進んでおるように、あるいはまた中国側がそれを希望しているような報道がなされておりますが、この点についてもし提案が出てきておればその事実、出てきてなければこういう開発方式についてどのようにお考えになっておられるのでありましょうか。
  230. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃった東シナ海の油田開発について日、米、中ということで新聞で見たことは私もありますけれども外務省に正式にこうしたい、こういう計画だというものはまだ来ておりません。でございますので、私どもとしましてはこれはまだ検討しておりませんので、そういうものがもしも具体的な案として出てくればどういうふうに取り扱うという検討をしますが、いまのところはまだ出てきておりませんので、そこまでに至っておりません。
  231. 林保夫

    ○林(保)委員 こういう問題は、最近の情報を見ましても、世界各国が注目しすでにもう開発に入っておるという状況が至るところに出ておりますので、むしろ積極的に対応を進めていただきたい。それにアメリカを加えるかどうかは別の次元でございますけれども、なお日本として油が欲しいわけでありますからやっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  大臣といたしまして今度の閣僚会議に御出席になるに当たりまして、中国にも新しい事態か出てきております、脱イデオロギーの新しい風が吹いてきたとか、いわゆる趙内閣の出現によっての開かれた中国という立場が出てきておると思いますが、これから大臣が向こうへ行かれまして先ほど来問題になっておりますような経済問題を含めましての新しい対中外交を展開していかなければならぬと思うのでございますが、どのような対中方針をこれからとられるのでございましょうか。  特に近ごろ問題になっております日、米、中の軍事同盟的な話も先ほど同僚委員からも出ておりましたが、そういった関連において中国重視の立場をどういう形でこれから、日本の場合は経済問題が主でございましょうけれども、おとりになられるか、基本的なお考えを承りたいと思います。
  232. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうへ参りますのは閣僚六人、通産、農林、経済企画庁、運輸、大蔵、みんなで行って会議を開くわけでございます。当然経済問題のほかに政治問題あるいはインドシナ半島の問題とかいろいろ出ると私は思うのでございますが、経済問題につきましては中国がいまいわゆる近代化ということを進めておるわけでございますので、日本としてはそれに協力をする。中国が繁栄をするということは、日本にとってもアジアにとっても世界の平和にとっても大切なことだという前提で、中国の近代化に協力をしていきましょうというのが日本の基本的な態度でございます。  先生その中でエネルギーのお話を一つの例としてとられたわけでございますが、中国と言いますとまず石炭、それから石油の問題ということがあると思うのでございますが、その中にいま日、米、中という、米というお話がございましたが、その問題につきましては中国がどういうふうにその辺を考えるかという問題もあると思うわけでございますから、日本だけでこういう方式がいいと決めるわけにいかぬと私は思うのです。その辺のところは、向こうへ参りまして中国の当局者ともよく相談をして方式その他は決めたらいいだろうというふうに思うわけでございます。  いま先生、東シナ海というお話ございましたが、海洋法の大陸棚の問題とか境界の問題とかいろいろまだ未解決の問題が実はあるのです。でございますから、そういうことは別にしまして、どういう方式がいいかというふうなことは中国の意向も十分聞いてからと私は思っておるわけでございますが、中国の近代化にできるだけの協力をする、ただし軍事的な協力ということは一切ない、経済的な協力をするというのが原則でございます。
  233. 林保夫

    ○林(保)委員 最後に、日ソ間の問題について若干事務的な質問を、政治的判断も加えてひとつお承りしておきたいのでございますが、けさの新聞にポリャンスキー大使が日ソ事務協議に応ずる用意があるということを言っておりましたが、これはお受けになりますか、どうですか。
  234. 伊東正義

    伊東国務大臣 けさの新聞私も見まして、恐らくどこかの新聞社の方がポリャンスキー大使に会っての話だと思うのでございますが、日本側からまず提案をすれば受けてもいいという意味のことが書いてあったわけでございます。ソ連との関係はこの前から申し上げておるとおりのことでございまして、私はやはり言うべきことは言い、通すべき筋は通すという上で考えなければならぬと思うわけでございます。あの記事は、日本側からまず言ってこい、そうしたらおれの方は受けて立つ、こういうように読める記事でございますが、その辺はいかがなものかと私は思っておるわけでございます。
  235. 林保夫

    ○林(保)委員 矢継ぎ早ですが、日ソ間の一九七六年から八〇年までの期間におけるいわゆる貿易及び支払い協定の有効期限が今年末で切れるわけですが、外務省としてはこの協定の延長、または新協定の締結、あるいはこれはもうほっておくのか、その辺の御方針を承りたいと思います。
  236. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 日ソ貿易支払い協定についてでございますけれども、現行の五カ年協定が本年末で切れるということは先生おっしゃったとおりでございます。目下その延長問題につきましてはどのように対処すべきか、政府部内で検討中ということでございます。
  237. 林保夫

    ○林(保)委員 総括して申しまして、外務省としてはソ連側に交渉の申し入れをする考えがあるのかどうか、向こうから言ってくるまでほっておくのか、この点についてはいかがでしょうか。
  238. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 その辺も含めまして検討中ということでございます。この協定は先生承知のとおり全く実務的なものであるわけでございますけれども、その辺の段取りをどうするかということを含めまして、目下検討中ということでございます。
  239. 林保夫

    ○林(保)委員 実務的ではありますけれども、影響は大変大きいので、お聞きをしておるわけであります。  これまた例年のことになりましたが、例の日ソ漁業交渉をもうやらなければならぬ時期に入ってきております。この点については外務省としてはどのようにお扱いになるお考えか。
  240. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 漁業交渉につきましては、御承知のとおり日ソ漁業協力協定に基づき設置されております日ソ漁業委員会というのがあるわけでございますが、ここでは漁業資源の検討ということが主な任務になっているわけでございます。その第三回の定例会議でございますけれども、これは今月の十七日から東京で開くということになっております。  それからもう一つの日ソ、ソ日の漁業暫定協定の延長議定書交渉、毎年年末に国会をお煩わせしている交渉でございますが、これも今月の下旬東京で開催するということにいたしております。
  241. 林保夫

    ○林(保)委員 例のアフガンへのソ連の進駐以来の対ソ経済制裁の問題は、ECとの関係をきわめて重視されて調整されながらやられたと思います。ところがその結果を見ますと、貿易統計上ではございますけれども、どうも日本だけがえらい輸出を遠慮してしまったというような実績が出ているのは御承知のことだろうと思われます。  ここにあります西欧側主要国の対ソ貿易の推移を見ますと、八〇年の一−五月、前年に比べますと、昨年ですが、アメリカの場合輸出が四千百七十万ドル減っております。輸入もアメリカは減っております。日本は輸出が三百十万ドル減っておりまして、輸入の方は一千四百二十万ドルふえております。しかしそれに比べますと、西ドイツにいたしましても、フランス、イギリス、イタリアにいたしましても、いずれもプラスになって、その数もまた大きいという実績が実は出ておるわけです。  日本とソ連との関係日本とECとの関係、その間で日本だけ何か落ち込んでいる、損をしている、こういうような数字が出ておりますが、この点についてどのようにお考えになりますか。
  242. 伊東正義

    伊東国務大臣 日ソ貿易といいましても通常貿易はそのまま続けているわけでございまして、対ソ措置としてやりましたのは、政府ベースの信用供与はケース・バイ・ケースでやりましょうということでございまして、通常貿易は窓をあけて従来のとおりやっておるわけでございます。政府ベ−スの信用供与、それから高い技術を要する商品についてはココムで統一的に世界じゅうがやっておる、これで輸出の相当厳しい制限をやっているわけでございまして、その結果が先生おっしゃったような数字になっているわけでございます。  それで、その問題は先生の指摘された問題もございますので、どういうふうに調整をとったがいいのかということにつきましては、これからECあるいはアメリカ、どこがイニシアチブをとりますか、個別に話し合いをするか、何らかの方法である程度の調整を図っていくということをやる必要があるのじゃなかろうかというふうに私は考えております。
  243. 林保夫

    ○林(保)委員 こういうデータが出てまいりますと、どうも西側陣営の結束がおかしいのじゃないだろうかという批判にもなりかねません。したがいまして対米、対EC、対ソの問題についてもしやっておられなければ大至急調整されるべきが筋じゃなかろうかと思います。  大臣は本委員会でもよく日ソ関係の改善について無原則にそれはできないのだ、やはりきちっと原則を持ってやるというふうにもおっしゃっておられます。先ほど提起いたしました対米、対ECとの交渉、どういうふうな調整をこれからおやりになるおつもりなのか、またその原則はどういう原則を持ってこれからおやりになるのか。いずれにいたしましてもこれは潜在的脅威と防衛的には言っておられますが、なおやはり隣国でございますので、その打開は常に心がけて至急にやっていかなければならない問題だろうと思います。特にレーガン大統領が登場して新しい時代が来ると私は思いますので、その辺も踏まえまして、最後大臣の御決意といいますか御信所を承っておきたいと思います。
  244. 伊東正義

    伊東国務大臣 新しい大統領ができますのは先生承知のとおり一月二十日でございます。それでどういう政策がとられるかでございますが、原則は、経済は経済で別でやっていいじゃないかというそれだけで経済の問題を考えるということじゃなくて、やはりその国との関係は政治の問題も頭に置いて総合的に見て考える必要があるのじゃないか。その政治につきまして冷たくなった原因は、ソ連との場合にはソ連の行動によるのだということがあるわけでございますので、そういうことを頭に置いて、経済だけ別にひとり歩きするということじゃないというのが私の考え方でございます。  それから、いつということでございますが、向こうでも新しい政権ができるのは一月二十日でございますから、いろいろ相談をしたりするのはそういう時期になってくるのじゃなかろうかな、それ以後じゃなかろうかなと思うわけでございますが、その辺のところ具体的にいつごろどこでどういう相談をするというまではまだ決めておりません。
  245. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。これをもって終わります。
  246. 青木正久

    ○青木委員長代理 金子満広君。
  247. 金子満広

    ○金子(満)委員 最初に、アメリカ大統領選挙の結果について若干お伺いしたいのですが、レーガン氏が大差をもって当選をした、現職との間に大差ができたのですから相当変化があったと見るのが妥当だと思うのです。選挙の結果を予想するのは非常にむずかしいことですけれども、出た結果について評価することはそれほどむずかしいことじゃないと思うのですが、伊東外務大臣、その点についてどのように結果を評価されているか、またレーガン氏の当選について、それが何を意味しているか、この辺についてひとつ所信を述べていただきたいと思うのです。
  248. 伊東正義

    伊東国務大臣 今度の選挙の結果でございますが、原因、いろいろ分析してみれば考えられる点はあると思うのでございます。民主党、共和党の中の体制がどうであったとか、選挙でございますからうまく挙党体制がとれたとかとれなかったとか、そういうこともあろうかと思いますし、いま私ども知っていますのは、いままでの中で投票率か一番低いのではないかという感じがするのでございます。そうしますと、一般の労組の人々とかあるいは黒人の関係とか、いわゆる民主党の基盤というものにおきまして投票する人が少なかったということも考えられる問題でございます。しかし何から来ているのだろう。経済問題でインフレの問題、失業の問題というのが大分問題になりました。これに対する対応の仕方がどうも不満足だった、こういう批判の結果投票しない人とか反対の投票をした人も出てきたかもしれません。人質の問題はレーガン候補選挙の演説で私は余り聞いておりません。この問題でどうということはあるいはなかったかもしれませんか、一年間人質が解放されなかったことに対する焦燥感というようなものもあったかもしれませんし、あるいは力の問題といいますか、レーガンさんは特に力による平和というようなことを強調しておられた。途中で軌道修正もあったやに見えますけれども、そういう問題について、やはり強いアメリカというような考え方の人もあったかもしらぬし、いろいろ考えられるわけでございます。  投票総数自体はそう大きく違わないでしょうけれども選挙人ということになるとあれだけの違いが出ているわけでございますので、それがどういう形になって出てくるかということにつきましては、先ほどから申し上げているとおりでございますが、日米関係についてはそんなに大きな変化はない。経済面でも自由貿易を主張しておられるということでございますし、私は特にブッシュさんに確かめたときも、防衛の問題についてはいままでとそんなに変わらない要求をする、あるいは要請をするのじゃないというようなことを言っておられましたので、日米関係については、アメリカもアジアにおける外交の基軸として日本考えるということを共和党は言っておられますし、貿易の面その他につきましても、若干の変化はあるのかもしれませんが、大きな変化はないだろうと私は考えているわけでございます。
  249. 金子満広

    ○金子(満)委員 そういう考えが一つ、その上に立ってお尋ねしたいわけですけれどもレーガンさんはタカ派として一般的には言われている人だ。そういう中で外務大臣はそう大した変化はないと言われた。大した変化はないが、変化があるということはお認めで、同じことがやられるという意味には考えておられないと思いますが、レーガン陣営がカーター陣営に対して行った政策上の問題、特に対外政策で一番大きかったのは、現政権の方が対外政策が甘い、軟弱であるという意味の宣伝は相当やったと思うのです。したがって、同盟国に対してももろと要求すべきものは要求すべきだという意味、そういう点があったと思うのです。  そこで、日本に対するアメリカの対応ですけれども、大した変化がないということでありますが、たとえば貿易、経済面について変化が出るだろうと思います。全然ないということはない。それから、日本防衛力の増強の問題について、質量ともに速度を速めろという問題、こういう点についても一定の変化は出るだろう、出なければ大統領がかわった意味が私はないと思うのですね。  だから、カーターレーガンの違いというのは、もちろん共産党と自民党ほど違ってはいないと思うのです。しかし対外政策の面での違いというのは現に選挙中も明らかになっておったわけだし、それがどういう変化を示して日本に来るか、この点についてまだ出てないということで一月の二十日ということですけれども、いままで言われていた点があるわけですから、その点を外務大臣どのようにお考えになっておられるか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  250. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生最後におっしゃったように、まだこれは出てないわけでございます。一月二十日に就任されて新しく政策が出るわけでございまして、出てみなければ本当のことはわからぬわけでございますが、私がいままで受けた印象では、若干の何かの相違というものはあるかもしれませんけれども、大きな筋においては、私はこの前ブッシュさんに質問もしたわけでございまして、何も大きな変化なんというものは考えていないということを明言をしておられたわけでございますので、私どもは期待感があるかもしれませんが、そう大きな変化はない、いままでの日米間の友好関係というものが基軸なんだからそれをお互いが守っていくという方向で、同じ方向を歩っているんですからそんなに大きな違いは私はないというふうに思っておるわけでございます。
  251. 金子満広

    ○金子(満)委員 アメリカの出方は、向こうが出てくるのですからこちらでいま考えるのは想像の域を脱しないわけですけれども、問題は、日本側の対応というのは、それは自分政府のことですから大臣自身もお答えできるだろうと思うので、次の点伺っておきたいと思うのです。  たとえば中業見積もりの前倒しの問題ですね。これをどんどんもっとスピードアップしろ、量的にも質的にも速度も速めろとか、あるいはまた日米安保条約の適用区域を拡大しろとか、集団自衛の問題とかあるいは自衛隊の海外派兵に関連する問題とか、こういう点については事は安保条約の改定あるいは憲法の改悪に通ずることですが、いままでしばしば繰り返されてきたことでありますけれども、安保条約の再改定はしない、応じない、それから憲法の改悪はしない、こういう点は外務大臣、そのように確認できますか。
  252. 伊東正義

    伊東国務大臣 相手がまだできないうちの仮定の御質問でございますけれども、私どもは、憲法改正でございますとか集団自衛権を認めるような改正でございますとか安保の双務的な問題とかそういうことば、やはり国民の皆さんがそういうことだなというコンセンサスでもあれば別でございますけれども、私はまだまだそういうものはないんだというふうに思っておりますし、従来ここで御答弁申し上げております態度は何も私は変える必要はないというふうに思っております。
  253. 金子満広

    ○金子(満)委員 それでは問題を変えまして、金大中事件に関連して若干の政府の態度をお聞きしたいのですが、御承知のように、三日に二審で一審どおり死刑判決ということになったわけですが、一審から二審の間が約二週間だと思うのですね。今度は大法院が残っているわけですけれども韓国の法律によれば、四カ月以内に結論を出さなければならない。四カ月といえば三月の三日になるわけですが、そんな悠長なことをあそこはやるはずもないし、またやろうということを考えている人はだれもないと思うのですね。諸般の事情から考えて今月いっぱいに大法院結論が出るだろうというのが大方の人たちの一致した見解だと思うのです。  さて、そうした緊迫した事態があるわけですが、これまで一審の判決の全文を韓国側要求して幾日もたってきたわけですが、現在の段階でどこまで来ているのか、韓国側が何を言ってきているのか、その現段階、その断面をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  254. 木内昭胤

    木内政府委員 すでに累次にわたりまして東京では外務大臣から、それから外務事務次官、ソウルにおきましては須之部大使以下を通じまして韓国外務部に働きかけておるわけでございます。  どういう段階かというお尋ねでございますが、現在のところ私どもは引き続き努力をしておるということ以上には申し上げられない状況に、遺憾ながらあるわけでございます。
  255. 金子満広

    ○金子(満)委員 容易な事態ではないと思うのですね。別な表現をすれば金大中氏の死刑の時期というのが刻々迫っているという中で、片方は努力努力がずっと続いて、いつでも努力なんですね。こういう段階であの手もこの手も、あのルートもこのルートも使ってはみた、しかし現実に手元に全文は来ていない、まだ努力を続けますということでありますけれども、いままで口頭でやっているのですか、それとも文書でやっているのですか。そうして口頭であろうが文書であろうが、どんな理由をつけて向こう側に、先方に要求しているのか、その理由のところをちょっと説明願いたいと思います。
  256. 木内昭胤

    木内政府委員 私どもがやっておりますのはすべて口頭でございます。理由と申しますと、これはもう韓国側もよく私ども考え方承知いたしておるわけでございまして、本委員会におきましてもたびたび答弁申し上げておりますとおり、私ども金大中事件というものが日本でスタートしておるということから、この問題について非常な関心を有しておるということに尽きるのではないかと思います。
  257. 金子満広

    ○金子(満)委員 韓国側日本側の理由をよく承知している、今度逆を返せば、承知していてよこさないのです、これは。これはなお事は重大だと私は思うのです。その承知をしているという相手側が承知の上でよこさないということは、よこす意思がない、こういうように判断できるということもあり得ると思うのですが、その点を外務省はどう考えていますか。
  258. 木内昭胤

    木内政府委員 遺憾ながら向こうがどのように判断しておるかということをまだそんたくできる段階にないということではないかと思います。
  259. 金子満広

    ○金子(満)委員 おかしな話だと思うのですね。幾日かかっているのですか、あなた方は。事は金大中氏及び数名の生命がかかっており、日本主権の問題がかかっているのです。何かその辺ののんびりムードで、いつか借金返すよというような、そういう性質じゃないと思うのです。向こう側が向こう側がと言うが、あなた飛行機で行けばすぐなんですから、電話でもすぐなんですから、問い詰めるつもりがあれば問い詰めることが私はできると思うのですね。  そこで続けて伺いたいのですが、せんだって来日していた韓国の無任所大使で咸秉春という人がおります。この人が外人記者クラブで講演をして、日本政府韓国政府金大中氏に対する判決全文の提供を求めているということについて次のように述べているのです。  こういうことは「外交慣習を無視したものであり、主権国家韓国に、法廷での判決文を外国に手渡すという例外措置を求めたもので、断固応ずることはできない」 こういうように述べているのですが、この断固応ずることはできない、主権国家韓国に対して云々というこの点は外務省は当然認められないことと思いますが、これは認められませんね。
  260. 木内昭胤

    木内政府委員 御指摘の無任所大使が東京に立ち寄りましたときに、外国人特派員協会においてそういうことを漏らしたやに私どもも新聞を通じて承知いたしております。  そのことはそれとしまして、先ほど来申し上げておりますとおり、私どもとしては韓国当局と折衝を重ねておるということは御承知のとおりかと思います。
  261. 金子満広

    ○金子(満)委員 交渉しているのはわかったのですよ。だからこういうことを、韓国の無任所大使ですから、全斗煥体制の中の責任ある立場の人だと思うのです。しかも外交官としては責任ある人ですよ。その人が日本で、しかも外人記者クラブで公式にいまのようなことを言っているわけですね。  もう一度読みます。「伝統的な外交慣習を無視したものであり、主権国家韓国に、法廷での判決文を外国に手渡すという例外措置を求めたもので、断固応ずることはできない」。断固応ずることはできないというのは日本政府に対する挑戦であり、これはこの人について言えばこの咸という無任所大使言葉から言えば完全な拒否で、もう受け入れる余地は全くないということなんですね。それでもまだ交渉しますということなんです。  つけ加えれば、報道では、こういうような判決文の提出を要求することのねらいは、日本政府の国内向けのゼスチュアだ、こういうことまで言われているのですね。  そうすると大臣韓国判決文の全文をよこせということはよもや日本の国内向けのゼスチュアでないと私は思いますよ。これは判決文を必ず出させる、取る、こういうことは一刻も早くということだと思いますが、これはどうなんですか。
  262. 伊東正義

    伊東国務大臣 私その人がどう言ったか余りよく知らぬのでございますが、ゼスチュアなんて、私はそんなことを考えてやっているわけでは毛頭ございません。ひとつそれは誤解のないようにしていただきたいと思います。  判決文につきましては、私どもとしまして何とか手交してもらうようにということの要請をしている。そういう人が演説を何かしたという後々までも私は大使にも来てもらい、話し、やっておるわけでございまして、これはそういうものは認めたということではなくて、あくまで両国間のことを思えば判決文を手交してもらいたいということを要請しているということでございます。
  263. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、咸秉春無任所大使言葉というのは認めていない、こういうことですね。
  264. 伊東正義

    伊東国務大臣 それはそのまま認めればもう要請しないということでございますが、要請しておるわけでございますから、私どもはそういうことに何も拘束されることなく、日本の立場として日韓関係考えれば手交してもらいたいということを要請しているわけでございます。
  265. 金子満広

    ○金子(満)委員 韓国の問題ですが、金大中事件について起訴状というのはもう全部発表されているわけですね。ですから、いわば刑が確定をするもちろん以前で、しかも起訴状ですから裁判にとっては入り口ですよ。入り口はもう全部発表されておる。しかし判決文があることは事実です。判決文のない判決なんというのはどだいないわけですから、そういう判決文がある。しかしその判決文韓国でいままで公表しなかった例があるかどうか、この点外務省どうですか。金大中事件以外にですよ。
  266. 木内昭胤

    木内政府委員 公表しない例はあると承知いたしております。
  267. 金子満広

    ○金子(満)委員 それはどんな事件ですか。
  268. 木内昭胤

    木内政府委員 軍法会議についてはそういう取り扱いになっておるというふうに聞いております。
  269. 金子満広

    ○金子(満)委員 韓国の法律でもこれは公表することになっているし、請求すれば出るのですね。この点は政府の方で具体的に調べて、ただ出してください、頼みますという形が交渉ではなくて、具体的に韓国の国内法も調べ、そしてそれは軍法会議法でも七十九条にもあるわけです。裁判書の謄本、抄本の請求というので「被告人その他の訴訟関係者は、費用を納入して裁判書または裁判を記載した調書の謄本または抄本の交付を請求することができる。」というのがちゃんとあるのですから、これは軍事裁判、軍事法廷だから出ない、出さないということはないわけで、この点は厳重に指摘をしてその提出を求めるべきだということを、もう一遍私は考えてもらいたいと思うのです。  そこで、政府の方は関心を持ちます、憂慮します。今度はそこにもう一つ深いがついて、深い憂慮になって、毎日深い憂慮ばかりで憂うつな状態外務省の中にあるのかどうか私は知りませんけれども、もう憂慮の繰り返しではだめだと思うのです。したがって、本来ならば先方の方から判決文の全文を日本政府の側に提示して、これしかじかであるから政治決着の見直しはしなくてもいいのです、抵触はしていないのですよということを、自信があるのなら出せばいいのです。これを出さないわけですから、期限を切ったらどうかと私は思うのです。  裁判は今度は大法院へすぐ来るのですから、期限を切らないでずるずるいつまでもいくということでなくて、ここでまず期限を切る。そして期限を切って提出を求める。それまでに提出しないときには、判決の内容が政治決着に抵触するから出せないのだという断定を日本政府はしますというぐらいの強い態度で臨むべきだ。そして期限を切るといっても無制限に向こうの方に期限をやるのではなくて、大法院がすぐ始まるわけですから、きのう二審後の初めてのまた提出要求あるいは要請をしたと思いますから、少なくとも一週間以内ぐらいの期限を切ってこの提出を求めるというようなことを考えませんか、どうですか。その点を伺いたいと思うのです。
  270. 木内昭胤

    木内政府委員 期限を切るということではなく、引き続き努力いたす所存でございます。
  271. 金子満広

    ○金子(満)委員 何で期限を切るのが困るのですか。それをちょっと答えてください。
  272. 木内昭胤

    木内政府委員 私ども判断としてはその必要がないと考えられるからでございます。
  273. 金子満広

    ○金子(満)委員 それでは判断の内容をここに出してください。これだけ国民心配しており、国際的な大問題になっているのですから。いいですか、どういう理由なんです。その判断を出してください。
  274. 伊東正義

    伊東国務大臣 私からお答え申し上げます。  午前中土井委員からも同じ御要請がございました。期限に来ないときにはどうとかということとは若干違いますが、大筋において同じ御要望といいますか、御質問があったわけでございます。  それで、判決文を求める、いろいろなことを、いま憂慮状態を伝える、こういうことを言っておりますのも、最悪の場合にならぬようにということの目的のために実は私どもはやっておるわけでございます。それでございまして、最悪の場合にならぬようにということがどうやったら達成されるのかということは十分考えなければならぬ問題でございますので、先生からお話があったことも、それは一つの考え方として慎重に考えてみます。どうやったら目的を達成するのかということを私はお答えをしたのでございまして、いろいろな方法があると思うわけでございますから、その中の一つとして、土井先生また金子先生から御要望のあったことにつきまして頭に入れまして、われわれの考えておるような目的が達成されるように努力をしてみたいと思っております。
  275. 金子満広

    ○金子(満)委員 最悪の場合を考えてということでありますが、一審も二審も死刑でありますから、最悪の事態が本当に刻一刻近づいているということは共通の認識だと私は思うのです。だから、どういう事態を最悪と大臣考えているか、その最悪の事態を防ぐためには事前に全文を取らなければ、それこそ後で来たのでは後の祭りなんですね。  だから事前に取るということを考えたときに、外務省自身がここで一定の期限を切る。いまのようにだらだら同じことを繰り返してやっているようなことでは解決はつかぬ。向こうは開き直っている発言すらしているのです。日本外交として、主権国家であるのですから、そういう意味から、政府として期限を切ってやるということを、大臣、検討しますか。
  276. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本主権国家でございますし、向こうの韓国主権国家でございますので、その間に立って非常にこれはむずかしいところがあるということでございます。いろいろ苦慮しているところでございまして、いま申し上げましたように、最悪の場合にならぬようにということをわれわれも希望し、いろいろなことを考えておるわけでございますので、いま先生がおっしゃったようなこと、土井先生から午前中伺っております。そういうようなことが一番いい方法なのか、どういう方法がいいのかというようなことを、実は時間が切迫しているということもわかります。そういうことを頭に置きましてひとつ考えてみたいというふうに思っております。
  277. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは八月の十二日の参議院の内閣委員会伊東外務大臣自身答弁されていることですが、短いから読み上げますと、「死刑というようなことが起これば、いろいろ世論の声も出てくるだろうし、いろんなむずかしい問題が起こってくるんではないかと、そして政治決着を見直ししろというような声も中には起こってくるかもしらぬと、そういう可能性も出てくるようなほどむずかしい問題なんだと、この問題は。日韓関係の間でひびが入るような問題になりかねない」こういうことを言っているわけです。死刑ということになればという前提があってですよ。  そうすると、なればというのはまだ仮定の問題ですけれども、そういう事態が、判決は二回あって、あと一回しか残っていないのです。こういう事態ですから、事は非常に重大である。そこで、もしこのままずるずるいって、判決全文は日本政府の手に来なかった、そうして死刑が今度は確定して執行されるということになると、日韓関係ひびが入るという大臣の指摘のとおりになるのかならないのか、そういうときには日本政府の対韓外交の転換あるいは見直しということに迫られると思いますが、そういうように解釈していいのですか。
  278. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま、八月十二日に私が参議院で述べたものをお読みになりましたが、私の気持ちはそのとおり、ちっとも変わっておりません。非常に憂慮すべき事態になりかねない、可能性はある、いろいろな声が出てくると、そのときも申し上げましたが、いまも同じ気持ちでございます。
  279. 金子満広

    ○金子(満)委員 時間がなくなりましたから最後にもう一度確かめて、これはぜひやらなければならぬという点で申し上げるのですが、本当に時間が切迫をしている、これは大臣も先ほどからおっしゃっているとおりだと思うのです。そして最悪の事態という言葉も使われているし、苦慮しているということもありますが、そういう中でこの判決の全文というのは、金大中氏の日本での言動は不問に付するという前提での政治決着に触れるか触れないか、抵触するかしないかという重大問題とも関連しているわけですから、期限を切ってやるということも一つの考え方として今後考えてみるということですが、ぜひこの点は外務省としても政府としても考えていただきたい。次の機会にまたこの問題はお尋ねしたいと思いますので、その辺を最後に質問をして、私のきょうのところの質問は終わりたいと思いますが、その点答えていただきたいと思います。
  280. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、われわれの考えていることの目的が達成する方法、どれがいいかということを苦慮しているわけでございますので、それを考えます場合の一つの案としてそれは頭の中へ置いて、いろいろな問題が考えられますので、どれがいいかということにつきまして慎重に考えたい。ただ時間が切迫しているということはよくわかります。
  281. 青木正久

    ○青木委員長代理 次回は、来る十二日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二分散会