○中山(正)
委員 われわれ、
外交には長い見通しを持たなければいけないと思うのですが、宮本武蔵の「五輪の書」というものにも、「観見二つの目つけのことは、観の目強く見の目弱く」といっております。「観」は見えないものを見る。それから「見」というのは、ここにマイクロホンがある、そこに
委員長が座っているという、見えるものを見る。剣の道でも、見えないものを見通せということを言っておりますけれ
ども、私はその
意味で申し上げているのですけれ
ども、私は世界戦争というのはないと思っています。断言をします。フルシチョフも六一年に言っているのが、世界戦争はやらない、局地戦争はやらない、民族解放闘争を支援する、こう言っております。
最近
日本が怪しくなるときはどうかというと、もし今度の全斗煥みたいな人が、そんなことはあってはいけませんが、どんとやられるようなことがあると、
金大中氏がもし豚箱の中から、ちょうどバングラデシュのラーマンみたいにわーっと出てきて
大統領になる。そうするとどんどん民主化される。そしてそれが暴動につながって
日本に何百万という難民が逃げてくる可能性が一番ある。難民の救済に関する条約をいままで批准してこなかったのは、台湾と
韓国からどんどん来るかもわからないというので批准してないわけですから、それがどんどん来たときに——自民党は
日本で
選挙すると当選をたくさんするから、
日本をだめにする方法は
朝鮮半島しかないわけです、
日本を崩そうと思ったら。
日本の風船に対するちょうど針みたいなものです。それが韓半島でしょう。私は、ソ連が北海道へ上陸する、新潟へ上陸をするなんて、参議院の予算
委員会で議論があったそうですが、そんなことはないと思っています。私は、あとあるとしたら、
日本という風船にお隣の
韓国から針が突きつけられるとき。
だから、このごろは総評が、
金大中を救出せよ、共産党の不破書記
局長が衆議院の代表質問でされた、ああいう演説があるわけでございます。こうやって共産党が支援するんだからやはり共産党かな、聞いてみると、光州で共産党の名簿の中では、
金大中の中という字が中山の中じゃなくて、木曽義仲の仲という字で共産党の名簿に載っております。
これを
韓国の地上軍撤退のために
アメリカが利用し始めて、
韓国を何とか抜けていきたい。ラオス、ベトナム、カンボジアを抜けた。今度は
日本を抜けたい。
だから、おかしなことに、フランク・チャーチという三十一歳まで
アメリカのCIAのメンバーだった男が、グラマン、ロッキードの問題をやりました。そしてラスベガスで浜田幸一氏がやられましたけれ
ども、サンズホテルのリチャード・G・ダナーという男は、これはウォーターゲート
事件の立て役者でございます。米議会の暗殺計画
委員会報告書によると、キューバでカストロを暗殺してくれたらマフィア組織の連中にキューバのハバナのばくち場の権利を与えてやろうというので、みんなCIAのエージェントにした、その連中の前で浜田幸一さんがばくちをしたわけでございます。だから私は、浜田幸一じゃなくて、はまった幸一じゃないか、こう言っておるのでございます。
それではなぜ、いままで自民党の
政府と安保条約を組んでいるのに、自民党が困るような、数が減っていくようなことをやったかというのは、対ソ戦略を中国に任して、とにかくアジアの周りを一つにするという
アメリカ戦略が、ブレジンスキーが書いているとおりの戦略となり、今日まで進んできたんじゃないかと私は思うのでございますが、そんなことを言っていると時間がありませんので、現実の問題に戻ります。
というのは、現実の問題として、ゾルゲ
事件に
関係があるとかないとかいう——ソビエトの公式記録をここに持っております。「「ゾルゲ」世界を変えた男」、ソ連が書いた本です。ソ連が書いた本で、セルゲイ・ゴリャコフ、ウラジーミル・パニゾフスキー、この人がソ連で、二十九年目に
日本に帰って来た人に
関係するとされるゾルゲの三十六年目の新事実、この中に伊藤律のことを書いております。
何と書いているかというと、「突然、幸運が舞いこんだ。思いがけない好機が到来したのである。憲兵隊に、匿名の男(伊藤律)がある
日本人(北林トモ)」 これは
アメリカ共産党員でございます。「(北林トモ)を共産主義の宣伝をしているとかで密告してきた。この
日本女姓はすぐ逮捕された。恐ろしさのあまり、つくり話をでっちあげては、偶然出あったことのある人びとの名前を列挙した。そのために、新しい逮捕者がでた。このこまかい網の目にひっかかった人びとのなかに、画家宮城与徳がいた。」
この宮城与徳というのは、ソ連のGRU、いわゆる赤軍情報部から指名をされて、
アメリカの共産党員の沖繩出身である宮城与徳を使え、こう言っています。そしておもしろいのは、
日本で新聞の広告を出して、その新聞の広告には、浮世絵の版画のいいのがあるから譲りたいというのを出したわけです。それを見たゾルゲが宮城与徳と会うわけです。その会ったときにどうしたかというと、ドル紙幣をお互いに示し合って、その番号が一番違い、それで本人と連絡をとったわけでございます。これがその宮城与徳という絵かきでございます。これは陸軍の大将連中の肖像絵をかいていた。絵をかきながら、今度陸軍はどこへ行きますか、いつ動きますかというのを全部やっている男、その宮城与徳がいた。
「「この人は共産主義者で、政治に
関心をもち、たくさんの軍人と交遊があり、外国人とも会っている……」というのであった。「宮城与徳だって?画家の?」野村は
日本人リストの膨大な目録をとりだしてみた。」
野村というのは憲兵隊の指揮官でございますが、「たしかに、宮城はあやしい。他の人物にも、昼夜兼行の詳細な監視をすることにした。この監視の網に尾崎秀実がかかってきた。」
この尾崎さんは近衛文麿
総理大臣のかばんを持っていた人でございます。その人のかばんの中から
日本の情報が流れて、また、ばかなことに、いまの
国会図書館のありますところに昔あったドイツ
大使館のオットという
大使が、昼飯を食いに行くときなんか、暗号文を全部机の上に出したまま、フランクフルター・ツァイトゥングの有力記者であった男に全部秘密を知られてしまったわけです。
それを逮捕しようと思って動いていたのは土肥原大将ですが、彼はこのときの指揮官でございます。外人の場合は
総理大臣の許可が要りましたから、近衛文麿に逮捕状の
要求に行きましたら、近衛文麿がこれを拒否しております。
まあ不思議な
日本、そのころの
日本もいまと同じようになかなかはっきりしない世の中だったんだなと思いますが、その伊藤律が友好という中国から帰ってきたのは、
外務大臣、一体どういうふうにお受け取りになりますか。友好を長く結びましょうという国から
日本のかつてスパイ……。
私は
委員長にお願いをして、この次に証人喚問したいと思います。伊藤律氏、野坂参三氏、それから宮本顕治
委員長にも来ていただけばいいと思うので、
委員長にこのお三方の証人喚問を
要求したい。
特に伊藤律氏については、ぜひお願いをしたいと思うのですが、まず、
外務大臣がお答えになります前にひとつ警察の方から、伊藤律がなぜ病院でかくまわれて、あれが罪に問われないのか、その理由を伺いたいと思います。