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1980-10-29 第93回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十九日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君       石井  一君    北村 義和君       小坂善太郎君    竹内 黎一君       中山 正暉君    井上  泉君       河上 民雄君    大久保直彦君       林  保夫君    金子 満広君       中路 雅弘君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務政務次官  愛知 和男君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         運輸大臣官房観         光部長     角田 達郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     池田 久克君         防衛庁経理局施         設課長     平   晃君         参  考  人         (社団法人日本         旅行業協会会         長)      兼松  学君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     小川 平二君   北村 義和君     八田 貞義君   竹内 黎一君     林  大幹君 同日  辞任         補欠選任   小川 平二君     太田 誠一君   八田 貞義君     北村 義和君   林  大幹君     竹内 黎一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 ことしの九月、本外務委員会海外視察の団、奥田委員長が団長になられたわけですが、私もその団の一員に参加して各国を訪問することができまして、その際、行く先々のところで日本在外公館の皆様に大変お世話になりました。この場所をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。  それで、その訪問した国の一つとしてタイ訪問いたしまして、カンボジア難民キャンプを視察したり、そういうこともいたしたわけですが、その際タイシティ外相を表敬訪問いたしまして、われわれの団としてシティ外相との会談をいたしました。その会談の中でシティ外相はこういうことを言っておられたわけです。ことしの国連総会におけるカンボジア代表権の問題ではポル・ポト政権代表権支持する、タイとしてはこういう立場ASEAN諸国との話し合いで進めていく。これは、われわれの訪問の前に伊東外相訪問されたそのお話し合いの中でもやはりそういうことを合意しておる。しかしこのことは、カンボジア国内で何百万という人が殺害されたというようなポル・ポト政権のそういう政策を決して支持しているものではないのだ、こういうお話があったわけであります。  さてその後、国連総会におきましてはこの代表権の問題に結論が出まして、ポル・ポト政権代表権支持するというのが非常な多数で決定されたということになったわけであります。しかし、それに関連いたしまして、わが国立場としては、この代表権支持するという立場ポル・ポト政権のやった政策支持するのかどうかというこの関連を、この場所でもう一度改めて大臣の御見解をお尋ねをいたしたいと思うのです。  ポル・ポト政権の場合には、カンボジア国民が何百万と殺害されたということが伝えられております。これは、第二次世界大戦でナチス・ドイツが何百万のユダヤ人を殺害したというようなケースも歴史の前例ではありますが、自分の国の国民をこれほど何百万と殺害したというケースはいままでに前例がないわけであります。また、その中には内藤泰子さんのように日本人であって危うく殺害される危険を受けたというふうな人もあるわけであって、こういう意味において、その政策の評価についてここでお尋ねをいたしたい、こう考える次第であります。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  私ども国連で、民主カンボジア政府代表権ASEAN諸国と一緒に支持をしたわけでございますが、これはいま先生おっしゃったように、ポル・ポト政権が過去においていろいろなことをやって非常に不幸なことがカンボジア内で行われたということを、われわれも各方面から聞かされておるわけでございますので、代表権支持した、いま民主カンボジア政府承認しているということは、ポル・ポト政権が過去において行ったことをそのまま承認するとか支持するという立場ではないわけでございます。  私どもタイに行っても言ったのでございますが、他国の軍事介入があった、その軍事介入によって支持されている政権国連代表に認めるわけにいかぬ、そういう反射的なことから、従来承認している民主カンボジア政府代表権支持するのだということを言ったわけでございまして、先生のおっしゃっているように、過去にやったことを全部容認し、支持承認しているという意味ではございません。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 私も当然そうあるだろうと思っていたわけです。  そこで、もう一つお尋ねしたいのですが、実は私、日本ベトナム友好議員連盟という超党派の議員連盟がありまして、それの代表幹事を仰せつかっているわけですが、この連盟の会長は自民党の櫻内先生がお務めになっています。最近議員連盟会議を開きまして、日本駐在ベトナムグエンザップ大使をお招きしてそのお話も聞いたわけですが、その際グエンザップ大使が言うには、ことしの国連総会ポル・ポト政権代表権支持する国が非常に数多かったですね、しかしそれらの国はいずれも、代表権支持するがその政策支持するわけではないということをちゃんと言いながら支持した。ところが日本政府国連代表はそういう批判の言い方は何もなしで、いわば全く手放しでポル・ポト政権代表権支持したというような言い方グエンザップ大使はしていたのですが、この辺は国連わが国代表態度はどういうものであったか、参考のためにちょっとお尋ねしたいと思います。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはカンボジア代表権の問題を取り上げたところで西堀国連大使が演説をしているのでございますが、わが国としては代表権支持するが、ポル・ポト政権が過去にやったことを支持承認することとは別なことだということを、西堀大使国連ではっきり演説しております。先生おっしゃったことではなくて、これははっきりやっております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 その点はわかりました。  それで、いまのことに関連しますが、これは私新聞報道で見たわけですが、今度の国連総会カンボジア代表権の決定がなされた。そのときにポル・ポト政権代表権支持したオーストラリアが、翌日に今度は政府間の関係ではポル・ポト政権承認を取り消したというようなことを新聞記事で拝見したわけです。それよりもっと時間的には早く、たとえばイギリスがやはり、国連では代表権支持しているがポル・ポト政権承認を取り消しておるというふうなことも聞いておりますが、いわゆる自由主義陣営と呼ばれる国々で、ポル・ポト政権に対する承認関係を取り消しているとかいうような国はどういう国々があるか、この機会にお聞きいたしたいと思います。
  8. 木内昭胤

    木内政府委員 現在のところ承知いたしておりますのは、高沢委員指摘の英国が昨年の十二月、それから豪州が近く承認を撤回することあり得べしという発表を十四日にいたした、それだけでございます。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 それはわかりました。  そこでもう一つまた先へ進みます。これも私新聞で拝見したことですが、タイシティ外相ですね。今度の国連総会ポル・ポト政権代表権支持するために大変な働きをされたタイ外相ですが、そのシティ外相が、しかしポル・ポト政権代表権支持はことしが精いっぱいではないか、来年になるとちょっとどうなるかわからぬというような発言をされているということを新聞記事で見ました。  この辺のところは、日本政府としてはそういう見通しをどういうふうに持っておられるか、あるいは来年はどうなるかというふうな見通しなどについて、タイ外務大臣とかASEANの国の外交当局と何らかの話し合いをされているということはあるかどうか、そういうことをお尋ねいたしたいと思うのであります。
  10. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連会議が終わりました後に、私も東京でシティ外相と会って種々話をしたのでございますが、来年の国連総会におきますカンボジア代表権がどうなるかということにつきましては、実はそのとき話し合いはしませんでした。ただ、その後国連カンボジア情勢に関する決議が通っておりますのは先生御承知のとおりでございます。来年なるべく早い時期に国際会議を開くべきではないかとか、全面的に外国軍隊は撤兵をするとか、あるいは国連監視下にあってカンボジアの人々が自由に意思発表をできるという状態で自由な選挙を行うべきだとか、カンボジア領土権独立権、自主権を確保するべきではないかというようなことを内容にしました国連決議が通ったわけでございます。来年なるべく早い機会国際会議をということを言っているわけでございまして、事務総長が努力すべしということになっているわけでございます。そういう決議が、代表権が決まりました後に圧倒的多数で通ったわけでございます。  でございますので、この国際会議がどういうふうに持たれるか、持たれないか。持たれるとすればどういう国々が参加するか、そしてどういう話し合いが行われるかというような情勢が流動的なことがございますので、いまから来年の代表権がどうなるということを予測することはむずかしいことであり、またわれわれとしましては差し控えるべきだと思いまして、国際会議決議が決まりましたので、何とかこの国際会議国連主催でうまく開けるように、日本としてもASEAN諸国と協力していくべきではないかと考えておるわけでございます。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 この事件によって大変多くの難民が生じているわけでありまして、その難民救済ということは人道上の問題としても推進しなければいかぬし、また現に進められている状況を私たちも行ってよく拝見してまいりました。  そこで難民考え方についてひとつこの機会お尋ねしたいのでありますが、カンボジアからの難民幾つ段階があると思います。たとえばまだロン・ノル政権段階、そしてカンボジア自体がアメリカの介入による戦争状態にあったというような状態のときにカンボジアからタイへ難を逃れてきた、そういう難民もあった、こう聞いていますし、その後ポル・ポト政権ができて、そのポル・ポト政権が大変な国内政策をやったわけですが、それを逃れてタイへ逃れてきたという難民もある。それからさらに昨年、今度はヘン・サムリン政権ポル・ポト政権が倒される、ベトナム軍がそこへ入る、こういう戦闘状態がまた起きて、それでまた大量の人がタイへ逃れてくるというような、難民にもそれぞれの段階があったと思います。  われわれが承ったところでは、タイ政府も、初めはポル・ポト政権段階に逃げてきた人たち難民として扱っている。ところが昨年来ベトナムカンボジアのそういう関係ができて、戦争状態の中でタイへ逃れてきた人たちは、最初は不法入国者という扱いをしたけれども、しばらくした後に不法入国者という扱いはできないということでこれもまた難民扱いをするようにした、タイ政府扱いでもそういう経過があった、こう聞いているわけであります。  そこで今度はタイに対して、あるいはまた国連難民高等弁務官事務所を通して日本としても資金を出して難民救済に当たっているわけでありますが、日本政府として、この難民というものをどういう概念でとらえているのかということをこの機会にひとつお聞きをいたしたいと思うわけでありますが、さっきのロン・ノル政権段階ポル・ポト政権段階、それから昨年からことしにかけてそういう事態の発展のあった段階、これらについて何か特別な区別をする考え方があるのかないのか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本政府といたしましてはそういうことを区別しなくて、カンボジアからタイに来ている難民ということで、区別はいたしておりません。先生のおっしゃるロン・ノル政権時代あるいはポル・ポト時代に十数万の難民が出たということを聞いておりますが、その人たちは大部分第三国に出ておると思うのです。いま残っているのは大体一万人足らず、五、六千じゃないかと言われているわけでございまして、いまは大部分ベトナム介入難民でございますが、いずれの難民にしても、日本政府としてはそういうことは一切区別はしないということでやっております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 その点は私も同感であります。  それでもう一つ難民に関してこういう問題があるわけです。これもタイでお聞きしたわけですが、タイキャンプに入ってタイのそういう救援を受けている難民の人。それからタイカンボジアとの国境近くでそういう救援物資を配布するセンターがあるわけです。そういう物資が配布されるときになると、カンボジアの領内から大勢の人がずっと来て、そういう救援物資をもらってまたカンボジアへ帰っていく、そういうふうな難民、これはやはり難民と呼ぶべきでしょうが、そういう人がかなりの数ある、こういうふうに聞いているわけです。  それからもう一つは、いわばヘン・サムリン政権のもとにおいて、いまカンボジア国内にいるカンボジアの民衆、これもいま朝日新聞の連載で盛んに伝えられておりますが、ポル・ポト政権時代にその親族、家族のほとんど七割も八割も殺されてしまった、そういう状態を経てきた人ですから、その国内にいる人もこれまた実際は難民というふうな状況じゃないのか、こう考えるわけですが、そういたしますと、それら全体も含めて日本政府としては人道上の見地から救済援助の対象に考えるべきじゃないのかと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 カンボジアの中にいる人が難民かどうか、難民の定義でございますが、被災民かもしれません。そういう内乱と言ってはなんでございますが、そういうことで災害を受けているという人でございましょうが、それも難民の範疇に入れるとしまして、タイの方に国境を越えて来ている人あるいは援助物資だけ取りに来てまたカンボジアへ帰る人、これも被災民かもしれません。それから純然たるカンボジア内にいる被災民ということに対して区別をつけるということじゃなしに、国際機関を通しまして、あるいはユニセフでございますとか赤十字でございますとかあるいは世界食糧計画とか難民高等弁務官関係とかというところを通してやっているわけでございまして、日本政府としては、どっちに厚くどっちに薄くということじゃなくて、国際機関食糧を出すとか財政援助をするとかして、国際機関がそれを取り扱うという形にしまして、そこに差別をつけるとかいうことはいま何も考えておりません。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 その点はよくわかりました。ひとつその方向でお願いをいたしたいと考えます。  それから次に、先ほどお話のありましたカンボジア問題解決国際会議といいますかあるいは政治解決といいますか、そういうことに関連してお尋ねしたいと思います。  先ほど言いました、九月にタイシティ外相とお会いしたとき、シティ外相も、カンボジア問題の解決はもう政治解決しかないのだ、ではその政治解決はどういう形になれば解決するかというある考え方を話しておられたわけですが、それをここでお伝えをいたしますと、一つは、カンボジアからベトナム軍隊撤退することだ、これがまず第一だ。それから第二には、その後カンボジア関係方面の受け入れることのできる政権ができることだ。これは恐らくいまのヘン・サムリン政権を否定する考えだと思います。しかし同時にまた、ポル・ポト政権がもう一度カンボジア支配政権に戻ることは全く考えていない。具体的に言えば第一二の政権ですね。たとえばシアヌーク氏であるとかあるいはいま何かソン・センという人がカンボジアタイ国境近くに入ってゲリラ戦をやっていると伝えられておりますが、そのソン・センという人。シアヌークとかソン・センとかいうようないわば第三のそういうふうなものができるならばこれは政治解決の道になるのじゃないかということをシティ外相は話しておられました。  もっともこれは、ここでお断りしておきますが、そのやりとりを私はそう理解したということであって、そういう前提で申し上げるわけであります。これは実現の可能性がどうかということはそれぞれ人によって判断があると思いますが、とにかく一定の政治解決についての考え方を示されたものだと思います。  この種の、カンボジア問題の政治解決はこうあるべきだ、こういうふうにいくのが望ましいというふうな、日本政府としての何かそういう構想をお持ちになっているかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も、ことしタイに行きましたときに、新聞社人たち意見を聞かれましたときに、代表権の問題は代表権の問題でやるけれども、インドシナ半島に平和をもたらすということから言えばやはり政治的な解決平和裏解決をするという方法を見つける以外にない、それには国際会議を何とかして開き、インドシナに影響力のある国々も入って国際会議をやるべきじゃないかというふうなことを私も話をし、提案したことはあったわけでございます。  その後、だんだんASEANでも相談をされまして、今度の国連決議案ができて、日本共同提案国になってそれを出したわけでございます。これが圧倒的な数で可決を見たわけでございますが、それはやはり国連世話をする、事務総長がそういう会議世話をしなさい、来年、一九八一年のなるべく早い時期にそれを開きなさいということで、どういう国が参加するかということは具体的には書いてございませんけれども、これからの問題だと思いますが、当然紛争当事国を初め、東南アジアの国々あるいは影響力を持ったほかの国もあるかもしれません、これから決めることでございますが、そういう国々が集まって会議をやる、そしていまお話のありましたシティ外相が言ったじゃないかと想像されるという外国軍隊完全撤退をする、まずその撤退という条件ができたところでカンボジア国民が自由に自分意思をあらわせるというような選挙をやるべし、そしてカンボジアの将来を託する政権をつくるということをやらなければいかぬというふうなことが骨子になっておるのでございます。それまでの間の非武装地帯の問題でございますとか難民援助の問題とかいろいろありますが、骨子はそういうことで、カンボジア領土権独立権を保障していくということを内容にした決議が行われたわけでございます。  それで、私も大体それと同じような考え方タイに行ったとき言ったのでございますが、今度国連でそういうことが決議になりましたので、国連がそれをやる。それで、三十六回の総会になりますか、来年の総会では必ずそれを報告し、またカンボジア情勢ということについての議題を必ず国連総会でやるというような、来年のことまで書いて決議ができたわけでございます。  でございますので、私どもワルトハイム総長にも国連が中心になって考えてもらいたいということを言いましたが、自由な選挙ということであれば、だれがなられるか、いま先生がお名前を出されたようなシアヌーク殿下の話も――この話はタイ中国で出ました。あるいはいまの政権がそのまま選挙で勝つのかもしらぬ、そのことはわかりません。わかりませんが、やはり自由に意思表示ができる選挙でできた政権についてはみんながそれを承認して、そしてイン、ドシナ半島に平和を来すようにする、どういう政権であろうとも、国民が自由に選んだのであればやはりそれを支持し、それと交渉し、守り立てていくことが大切でなかろうかというふうに私は思っております。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 同じ問題に関連して、これも私拝見した新聞記事ですが、日本に来ておられるインドネシア大使、サイディマン・スリョハイディプロジョ駐日大使、この方がこの二十七日に何か毎日新聞編集委員の方と単独会見をやっている。そこで語られた内容ですが、このカンボジア問題の国際会議に、一方ではベトナムやソ連、まあ他方では中国、こういうところを同じテーブルにつかせてこの会議を成功させる、こういう点について非常に見通しがある、確信があるという意味発言をされているということを、これは新聞報道であるわけですが、この種のことについてインドネシアのそういう当局とまた日本外務当局でそういう見通しのお話し合いをされたことがあるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  18. 木内昭胤

    木内政府委員 御指摘インドネシア大使の談話というものについては、近く同大使にお目にかかってその真意についていろいろお伺いしたいと思っております。  大使は、恐らく、私どもの推測では、タイプレム首相中国側とがASEAN等共同決議案に盛られました、採択されました共同決議についていろいろやりとりをするもの、そしてそれがなるべく早く結実することを期待するという希望を表明されたものと承知いたしております。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 いまの木内局長発言中国の問題が出てきたわけですが、そこでそれをもう一つお尋ねしたいのです。  私も新聞で拝見したところでは、この九月、中国で新しく趙紫陽総理が実現いたしました。この趙紫陽総理中国訪問していたニュージーランドのマル、ドーン首相と話された中でカンボジア問題に触れて、ベトナム軍カンボジアから撤退するという前提条件なしで、必ずしもそれを前提条件とせずにベトナム話し合いをする用意があるということを言われた、マル、ドーン首相がそう語ったということで新聞報道に出ました。それから、それに対して、すぐその翌日にハノイの方では、中国ベトナムと前に外務次官会談をやっていたわけですから、あの会談の再開を呼びかけるというようなことが行われたということを、これも私は新聞のニュースで見ました。そしてその経過を経て、今度タイ首相中国訪問された。その訪問の中での話し合いの結果では、中国側態度ベトナム軍がカンぼシアから撤退する、これが政治解決前提条件だというふうに語られた、こういうふうにまた新聞報道に出ております。  こういうふうな中国のこの問題に対する態度幾つかの形で伝えられているわけですが、日本政府として外交ルートでそういう問題の話し合いをされているのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  20. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問の点は、実は私中国に行きましたときに、あれは九月の三日、四日でございますが、黄華外相華国鋒主席ともカンボジア問題についての考え方意見を交換したのでございます。そのときに、いま先生のおっしゃった話は一切なかったのです。華国鋒さんとやったときは趙紫陽さんもそばにいたのでございまして、三日、四日でございますからまだ総理になる前でございますが、そういう話は一切ございませんでした。その後、先生のおっしゃったようなことをニュージーランドの総理趙紫陽さんが総理になって話したというようなことが一部新聞に出たことがございました。  それで、私国連黄華外相に会いましたときに、私が三日、四日に行ってお話ししたときはそういう話はなかったけれども中国考え方は変わったのですか、こう聞きましたら、確かにそういう話が一時あった、それで、それは中国政策の大きな変更になるので早速、ニュージーランドの首相がまだ中国の旅行をしておられるところへわざわざ北京から人が行って、あれはそうじゃないのだということで中国の考えを、あれは間違ってとられるおそれがあるのでああいう考えではありませんということで訂正をしましたというようなことを、華国鋒さんが国連で私に話したのでございます。  その後、中国の考えを、私は華国鋒さんに会って聞きましたので、確かめたりはいたしておりません。おりませんが、十二月に日中の閣僚会議がございますので、これはその後の国連決議もありますし、中国ともカンボジアの、インドシナの平和の問題につきましては当然またいろいろ意見の交換をしてまいるというつもりでおります。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 それでは今度は経済の問題になりますが、新聞報道によりますと、日本カンプチア貿易会、こういう民間の貿易団体、経済団体がカンボジアヘン・サムリン政権との間で貿易再開についての覚書を交わした、これは八月のことですね。そのあれに基づいてカンボジアからさしあたりカポックというものを輸入するとかいうふうな話が進んでいるというふうに聞いておりますが、この点は民間の話ではあるけれども日本政府の方針としては、そのことに対してこれを抑えるとか、あるいはまたそれに対して何らかの影響力を及ぼすとかいうふうなことをお考えになっているのか、民間のことだから民間のことでそれをやらせるという立場でおられるのか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
  22. 木内昭胤

    木内政府委員 高沢委員指摘の、カポックにつきまして約二十万ドルの取引があることは承知いたしております。この問題につきましては私どもタイ当局とも意見の交換はいたしておりますが、民間がやっておられるということで今後も臨みたいと思っております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 それではこれは最後のお尋ねになるわけですが、いわゆる自由主義諸国と呼ばれる国々ベトナムとの援助関係を、いま実態がどうなっているかということを実はお尋ねをいたしたいと思います。いわゆる自由主義諸国でどんな国々がどういう内容援助ベトナムに与えているのかあるいはいないのか、その辺の関係を、現状をまずお尋ねをいたしたいと思います。
  24. 伊東正義

    伊東国務大臣 援助の問題、いま木内局長の方から詳細お答えいたします。私どもの知る限りではカンボジア介入後は新規の援助はやってないというふうに承知しておりますが、詳細御説明申し上げます。  それから、先ほど私、国連黄華外相と話したんだということを申し上げたつもりだったのですが、何か華国鋒総理とも国連で会ったようなことを答弁したといま注意されたのでございますが、これは間違いでございまして、北京で会ったのが黄華外相華国鋒総理、それから国連では黄華外相と話したということでございますので、間違っていたら訂正をいたします。申しわけありませんでした。
  25. 木内昭胤

    木内政府委員 私どもで掌握しております数字、事実関係を御説明申し上げます。  ベルギーは、七九年度に財政援助に関する協定を調印いたしましたが、その後部分的に停止しておるやに聞いております。  デンマークは、すでに実施中のものを除きまして援助を停止しておる、かように承知いたしております。  フランスも、約束分のみ実施いたしておりまして、自余は自然災害に伴う人道援助というものを若干やっております。  西独は、政府援助はやっておりませんで、若干の災害援助をやっております。  イタリアは、災害援助だけでございます。  オランダも、新規援助をとめております。  スイスは、災害援助だけやっております。  英国は、新規援助をとめております。  カナダも、援助を停止いたしております。  豪州も、援助を停止いたしております。  この援助停止というのは、一昨年末から起こりましたベトナムによるカンボジア侵攻の結果の措置というふうに了解いたしております。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 いま木内局長の言われた中で意識的に落とされたのかどうかわかりませんが、たとえばスウェーデンは援助を継続してやっておる、またイギリスは約束した分は実施しておるというふうなことも私の調べたところではあるわけであります。  そういたしますと、いわゆる西側の陣営の国々でも、援助をとめたものもあるが、また援助をやっているものもある、こういう実態じゃないかと思うわけですが、日本ベトナムとの援助関係というのは、ただ単に何か恩恵的に与えてやるという性格のものではなくて、もともとあれは歴史的に日本ベトナムの旧債の処理というふうな性格もあって結ばれた協定であるわけです。そうなりますと、約束したものはやっておるという国が西側の国にもあるわけでありますから、日本としても、対ベトナムのあの四十億円の無償、百億円の有償、この援助については現在は凍結状態になっておりますが、やはりそういう立場をとられるべきではないかと私は実は思うわけです。これについては、自民党の某有力幹部も、そういう前向きの方向を出すべきだということを実は外務大臣にお申し入れになったというふうなこともお聞きいたしておりますが、その辺についてひとつ御判断をお聞きをいたしたい、こう考える次第であります。
  27. 伊東正義

    伊東国務大臣 西側陣営の中でも、ぴしゃっと一斉にそろってということでない、若干のでこぼこがあることは先生のおっしゃるとおりでございます。それで、日本としましては、ASEANの主張を支持して代表権というようなことでやったわけでございまして、また日本独自のベトナムに対する考え方もあるわけでございます。先生がおっしゃったように、確かにこれは南ベトナムにやりました旧債の償還と関連していることはそのとおりでございまして、援助を北側にやっていたときはそのお金が返ってきた、いま援助してないのでとまっているというのは、まさに関連のあることの証拠でございます。そのとおりでございます。  それで、この意図表明をしまして、五十四年に百四十億の経済協力というものをどうするかということでございますが、これはいろいろ考えがあると思います。確かに幹事長から私のところへ考えたらどうかという申し入れもございました。ございましたが、私どもは、これから行われます国際会議の模様を、行われるか行われないか、行われるとすればどういう形になるかというようなことを見ながら、インドシナ半島の平和ということを考えていく。そういうことともこれは無縁のものではない。経済だけひとり歩きというわけじゃなくて、その辺のところは慎重に考えていこうということで、いまはまだこれをすぐ行うというようなことは考えていないわけでございますが、ベトナムを含めてインドシナ半島の平和ということを考えなければならぬことはわれわれもよくわかりますので、そういうことと関連して、一環の問題として考えていきたいというふうに思っております。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 私の質問は以上で終了いたします。
  29. 奥田敬和

    奥田委員長 ただいま参考人として日本旅行業協会会長兼松学君の御出席を願いました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には、御多用中のところ本委員会に出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会は、国際情勢に関する件について調査いたしておりますが、参考人からは海外旅行問題について御意見をお聞きしたいと存じます。  なお、参考人からの御意見は質疑応答の形式でお聞きすることといたしますので、御了承願います。  それでは、質疑を続行いたします。土井たか子君。
  30. 土井たか子

    ○土井委員 まず、ただいま委員長からごあいさつがありました社団法人日本旅行業協会会長の兼松会長にお忙しい中を御出席をいただきまして、ありがとう存じました。  前回の当委員会におきまして、九月にマニラで行われました観光の国際会議において大変な一つの話題になりました日本からのいわゆる買春観光という問題を取り上げまして、これは国際親善という上から国家対国家の間で国民がお互いに信頼し合えるという状況をつくっていくということが外交上日本に対して非常に問われている大事な問題であるということも含めまして、質問を私自身がしたわけでございます。  そこで、まず兼松会長にお伺いをいたしたいと思いますが、観光旅行というのは私はいいことだと思うのです。ただ・国内の観光旅行と海外の観光旅行というのはちょっと違いがあると私自身は思うわけであります。海外に出かけます観光旅行について、いろいろ業者、業界に対しましてあるべき姿というのを会長は会長なりにお考えになっていらっしゃると思うのですが、ひとつそこの意のあるところをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 兼松学

    ○兼松参考人 お答え申し上げます。  私ども旅行業に携わる者といたしましては、日本が島国であって外国を知らないということからくる非常に大きなハンディキャップがございますので、多くの方が外国に行って、国境のある国で、また宗教が違ういろいろなところで、宗教をどう考えているか、国境、国家というものをどう考えているかということを身をもって見ていただくことは大変いいことであると思います。  同時に、私ども立場といたしまして、日本人が正しい市民としていい行動をとってくれて、両国の親善と友好の促進に立つようにということを心から念願しておりまして、そういうような趣旨で私どもは業界の経営姿勢といたしましてもこれを促進するようにということで、去る四十九年には旅行業綱領というものをつくりまして、私どもはできるだけ全体としての趣旨に適するようにということを考えておる次第でございます。もとより綱領のとおりに全部が行い得ることはなかなかむずかしいことでございますが、われわれとしては絶えずそれに向かって努力していきたいという所存でございます。  綱領の内容につきましては、もしお話があれば一部を御紹介できると思います。
  32. 土井たか子

    ○土井委員 そういうお心づもりで旅行業綱領なども用意されてその指導に当たっていらっしゃるというただいま御発言でございますが、いままでに幾たびとなく海外における日本の観光旅行団の不健全ないろいろな旅行のあり方というのが取りざたされまして、その都度運輸省とされては、いろいろ行政指導に当たるという立場から行政通達を観光業界に出されてまいっております。  観光部長さん、御出席ですね。いままでに何回こういうたぐいの通達をお出しになり、そしてそれは何年何月何日、できたらどういう中身の通達をお出しになったかも、ひとつ御説明を賜りたいと思います。
  33. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 お答えいたします。  私どもがいろいろ調べた限りにおきましては、最初の通達は四十八年の十一月でございまして、これは日本キリスト教協議会婦人委員会の委員長金子良恵さんという方から「買春問題に関する声明」というものが出されました。その中身はいわゆる韓国における日本人の観光客の不健全な行動について非難したものでございますが、その中で、いろいろな原因でそういう不健全な行動が起きているわけでございますけれども、営利主義の観光会社がそれを助長していることもその一因である、こういうような中身の声明が出されておりまして、それに対しまして観光部長から、いまは日本旅行業協会、JATAでございますが、これが当時は国際旅行業協会という名前でございまして、それを通じまして各事業者に対し、特に韓国旅行につきましての不健全な旅行を助長することのないよう警告を発しております。  それから二番目は四十九年二月二十六日付の通達でございますが、これも海外旅行の健全化のための対策ということでございまして、ここでは、旅行者一人一人が国際間の相互理解という国際観光の原点に立ち返り海外旅行を真に意義あらしめるための心構えを持つことが不可欠でありますけれども、海外旅行の大衆化時代を迎えて旅行業者においても海外旅行を取り扱う立場から健全化のための対策を積極的に講ずる必要がある、こういうようなことで、具体的な措置として、海外旅行を取り扱う際に、その行き先国の風俗、習慣、国情等、こういったことを旅行者に説明をし、マナーに十分注意するよう、これが一点。それから二点といたしまして、添乗員に対しまして研修を十分に徹底して旅行者のマナーの向上等に効果あらしめる、これが二点でございます。それから三点は、いやしくも不健全な旅行を企画したり観光誘致のための宣伝材料とする等のことは厳に慎む。さらに旅行者からの依頼にこたえるというような形をかりて不健全な行為や目に余る行動などについての便宜を図るというようなことは絶対に慎め、こういうような中身の通達でございます。  それから三番目が四十九年五月二日付の通達でございまして、これは「フィリピンにおける邦人観光客に対する行状改善方について」という件名の通達でございまして、これは外務省から特にわが省あてに御依頼のあったことを受けましてやはり当時の国際旅行業協会の会長あてに出した通達でございます。中身は、フィリピン旅行の健全化を実効あらしめるための具体的な措置を協会としても十分に講じて、その対策の徹底を図れ、こういう中身でございます。  それから四番目が、同じく四十九年八月七日付の通達でございますが、これはいままで申し上げましたように非常に不健全な旅行者の行動が取りざたされましたので、運輸省観光部それから国際旅行業協会、それから関連のあります日本航空、そういったいろいろな関係者から成る対策の打合会を開きまして具体的な健全化のための細かい対策を取りまとめたものでございまして、それを旅行業協会等に通達を発したものでございます。  それから五番目が五十一年十二月十三日付でございますが、これはいままで御説明申し上げましたものはすべて観光部長の通達でございまして、これは業務課長でございますが、この五十一年十二月十三日付の通達は、韓国の新聞記事、東亜日報という新聞記事が出まして、その中身はやはり日本人の観光客の行動について非難をしたものでございますが、それを旅行業協会に送付いたしまして、こういうような新聞記事が出たので会員の皆さんに十分注意するよう徹底してくれ、こういう趣旨の通達でございます。  それから翌年の五十二年二月十九日付の通達、これも業務課長の通達でございますが、日本人の旅行者の行動についての批判の記事が、やはり外国のいろいろなところからの批判がありましたので、業務課長から旅行業協会あてに、その具体的な例につきまして一々例を引いて、こういう例がある、行動についての批判があったからということで会員の皆様方に周知徹底するように、こういう通達の中身でございます。  それから五十四年十一月二十八日付の通達、これは観光部長の通達でございますが、「フィリピンに於ける日本人観光客の行状について」という件名でございます。これは御承知だと思いますが、当時、たしか五十四年の十一月ごろフィリピンのマルコス大統領がマニラにおいて記者会見をした際、日本の観光客の行状について関係旅行業者に注意をするというような趣旨の記者会見をされたことがございます。それを受けて日本旅行業協会の会長あてに注意方をした通達でございます。  大体以上でございます。
  34. 土井たか子

    ○土井委員 再三再四という言葉が日本にはございますけれども、これは再三再四どころの騒ぎじゃないですね。いまお答えになった限りでも、昨年に至るまで七回通達をお出しになっていらっしゃるわけですが、今回、先日二十二日に私が質問をいたしますその前日お出しになった十月二十一日の通達なるものがこれまたございます。この通達をお受けになって、会長とされましてはどのようにこの中身について対策を講ずるということをただいまお考えになっていらっしゃるか、その辺をひとつ伺わせていただきたいと思います。いかがでございますか。
  35. 兼松学

    ○兼松参考人 お答えいたします。  何回も御通達を受けるというようなことは業界としてもまことにお恥ずかしい次第でございまして、そういうことがぜひないようにということがわれわれの念願の第一でございます。  これは実は、もともとは個人的な行動が主となっての問題でございますけれども、いろいろのうわさを聞きますたびに私どもとしてはできるだけ情報を集めてそれを防ぎたいということで、この通達の前に理事会を開きまして、特に改めてそれを強調いたしました。「われわれは、国民の旅行行動の健全化を念願し、その実現に協力する。その一環として、海外旅行者のため、海外における風俗、習慣、生活様式、宗教、国民感情などについて、その知識普及に努め、国際社会における日本国民の品位維持に」努力するという綱領に基づきまして、たとえば添乗員に対する教育等につきましても、これは経営者の姿勢が大事でございまして、個々の一人一人の問題以上の問題でございますので、われわれとしては、添乗員は会社と旅客との契約履行はもちろんのこと、旅行会社として当然なすべき常識的なサービスを行うものである。会社と旅客との旅行契約は、旅行企画の際に、航空会社あるいはランドオペレーターへの予約または契約のかっこうで、航空機、ホテル、観光等が手配されておりますが、添乗員はこれらの予約を前もって確認するとともに、旅行中、その内容が予約どおりであるかどうかを監視しなければならないというようなことを初めとして申しますとともに、特に旅行中は解放感を伴うので旅の恥はかき捨てというような旅行者心理があるので、そうでなくても風俗習慣の違いから行き先国の人に不愉快な感覚を与えてしまうこともあるので、このようなことがないように団員を誘導することは添乗員の任務であって、その方法は大変むずかしいが、旅の楽しさを損なわないような形で礼儀を尽くして行わなければならない。添乗員は、ことに団員の買春行為等には絶対介入してはならない。また介入していると誤解されないよう細心の注意を払わなければならない。自由時間に何をしようと団員の自由であるけれども日本人はえてして団体で動くので目立ちやすく、現地の人のひんしゅくを買うということも言われているので、日本人のイメージダウンの防止に協力するという意味で、特に関係各位は社員に対してもこういう指導をしてもらいたい。しかし会社の姿勢が何よりも大事であるということで、こういうような本もつくりまして皆さんの教育をするほかに、私どもとしてはもし現実に会社の経営姿勢としてそういうことが行われたならば、会員として除名をするための臨時総会を開くのもやむを得ないということを決議をいたしております。  不幸にして、過去において非常に望ましからざる会員がございましてこれを除名いたしたのでございますが、現行法では登録が取り消されませんために、会員外ということでいわゆる野方図の営業をしておるというのがあることも事実でございます。ですが、私どもはこれも当局の方で法改正等を考慮していただいているということも聞いておりますので、そういうことと相まって、まず経営者の姿勢を間違いないようにするようにしなければいかぬ。また同時に、それに働く人たちにも協力してもらってりっぱな海外旅行が今後とも行われるようにいたしたい、こういう処置で私ども協会としては最善の努力をしておるつもりでございますが、同時にこれを周知するためにもポスターをつくったりスライドをつくったりいろいろなことをしております。  ただ、残念なことに最近は添乗員というものを伴うような旅行が昔に比べると大変減ってまいりました。いまハワイに行くとかそういったような近いところに行くのには、現地での簡単なごあっせんだけで、飛行機に乗るときにお世話をするだけというのがございますので、会社のやり得る範囲はだんだん狭まっておりますけれども、しかしどんな場合にも旅行業者が誤解を受けるような行動がないように、またあった場合にはわれわれとしても十分な責任があるということで、それをはっきりさせるように処置をとって、それが法的な裏づけによって十分に遂行されるような姿にしてもらいたいというふうに念願しておる次第でございます。
  36. 土井たか子

    ○土井委員 いま種々御説明をいただいたわけでございますけれども、添乗員という役割りは非常に大切だとは思います。非常に責任ある役割りだと思います。でも万事添乗員に問題があるのではなくて、やはり業者が問題なんですね。業者がどういうふうに旅行を企画するか、その企画に参画をするかというあたりが実は私は問題の一番のメルクマールではないかというふうに考えています。  そこで、先ほど会長は、不健全な旅行を企画した思わしくない業者はこの協会から除名するということをかつてしたことがあるけれども、しかし登録が取り消されないことのために相変わらず業者としての業務が行える、ここのところが何とか登録が取り消されないかというところまでお考えを進めていらっしゃるようであります。これはやはり一つは運輸省の行政の中でその問題もはっきりしていただかなければならないと思いますが、しかしこういう悪質業者と申しますか不健全な旅行を計画する業者というのを取り締まるということが片や大切であると同時に、もっと大切なことは健全な旅行が計画できるような状況をつくっていくということだと思うのです。健全な観光旅行を企画することができるような状況というものをつくっていく、そういうことが非常に大切じゃないかと私は思うのです。  先ほどいろいろ運輸省として通達をお出しになった中身について御説明を賜った中で、特に名指しで問題になっているフィリピンの問題は四十九年五月二日の通達と五十四年十一月二十八日の通達と二回ございまして、この二回が二回ともいずれも外務省からフィリピンを含め東南アジアにおける日本人観光客の行状について関係旅行業者に対する注意喚起指導方の要請があったことを受けての通達だというふうにわれわれは承知をいたしております。したがいまして、外務省もこういう事情に対して憂慮をされて、何とかこのことについて業者に対しての注意を喚起したい、でき得べくんばその中身に対して行政指導というものをばっちりやってもらいたいということをはっきり言われたためにこういうことが出てきている、こういういきさつがあるわけですが、今回十月二十一日に出されましたこの通達も含めまして、過去フィリピンということを名指しで出されました四十九年五月二日の通達、さらに五十四年十一月二十八日の通達を受けて何らかの特別の措置を業界としておやりになったということがもしございますれば、これをひとつお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  37. 兼松学

    ○兼松参考人 これは基本的な問題でございまして、業界としては毎回その通達を徹底さすように努力いたしますとともに、私は重ねて申し上げますが、族行業者として不健全な旅行を企画するようなことはさせないように、業界としての全体の意思は固めております。したがって、そういうことが、企画の段階において不健全な旅行があるとは私は信じません。  しかし旅行企画というものはだんだん自由な企画がございまして、パリへ一週間というような旅行もたくさんできておりまして、若い方はそういうので行っておられます。事フィリピンに関しましてはことに私ども注意をいたしておりまして、向こうの旅行業協会と特に懇談を持ちまして、こういった問題もあるから協力をしてもらいたい、向こう側は問題はないということを盛んに言うわけでございます。しかし私どもは火のないところには煙は立たないということもあるので御協力を得て健全化いたしたいということを切に言っておるわけでございます。  現在私どもが聞き及んでおりますところでは、やはり現地にはいろいろ望ましからざる、日本で業界を離れて向こうで勝手に活動している人や、特殊の、言葉が悪いかもしれませんが、マフィア的な方というような日本人もないわけではないようにも聞いておりまして、そういうものといろいろな問題があって今後も何とかして努力していかなければならぬということで、私どもはあらゆる機会をとらえてそういう周知をしておるのでございますが、昨日フィリピンの大使館の幹部の方から私に電話をいただきまして、どういうところでお聞き及びになったか知らないが、フィリピンの観光問題が国会で問題になっておるようだが、フィリピン政府としては全く問題がないので、必要なことがあればわれわれの方からおまえの方を応援するからというお言葉をいただいたのですが、私かたく御辞退をいたしました。私どももお志はありがたくそういうお言葉をいただくが、やはりわれわれとしては、とかくの不興は日本人の中から出てくるので、外国の御支持をいただかないでわれわれの努力によってやりますから、こう言って御辞退を申し上げたような次第でございます。  以上。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ経過についていま御説明があったのですが、さて、そういうふうな姿勢で臨まれる業界とされては、いままでに海外旅行をする方々に対していろいろ国際人としてのマナーなどを中身として織り込んだチラシを用意されて、業者を通じて配付されてきたといういきさつがございます。これはございますね。今回、このチラシについてまた新しいチラシを用意されつつあるようでございますが、これは運輸省、そのとおりだと思いますが、いかがでございますか。
  39. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 これは運輸省と日本旅行業協会と共同の名前で出しておるチラシでございまして、五十年ごろから毎年約三十万部ぐらい、旅行業者を通じて旅行者の手に渡るようにつくっておるものでございます。  その中に、いまいろいろ問題にされております不健全な行動についてそういうことのないようにという御注意をする意味で書いてある表現がございますが、読み上げてみますと、「接する人々、特に女性に対しては誤解を招くことが多いので、ぜひご注意下さい。」 こういう表現で旅行者の方々に御注意を喚起しているわけでございますが、この辺の表現につきましてもっといい表現がないかどうか、JATAと私どもの方でいまいろいろ検討を加えておるところでございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 JATAとの間でいろいろ検討を加えていらっしゃるこのチラシの中身について、大体の素案と申しますか、案というのはございますね、いかがですか。
  41. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 まだ素案というものはできておりません。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 それは本当ですか。私手元に持っておりますよ。これは案がありますね。本当に答えてください。
  43. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 それは一つの案として最初にJATAの事務当局で考えた案であると思います。それを私どもともいろいろ相談しながらJATAの幹部と議論したわけでございますけれども、その表現ではまだ適当ではないということになりまして、さらにもっと適切な表現を考えるべきである、こういうことになっておるわけでございます。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 その適切でないとおっしゃる表現の部分というのは、先ほど観光部長がお読みになった「接する人々、特に女性に対しては誤解を招くことが多いので、ぜひご注意下さい。」というその文章のところを今度は変えたいけれども、変えることに対しての現在の文案がまだ適切でないので検討を重ねている、このような趣旨だと理解してよろしゅうございますか。
  45. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 そういうことでございます。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 会長、いかがでございますか。これは、聞くところによりますと、新しい文案に対して現在のままでよいというふうなお考えを観光業界の方はお持ちになっていらっしゃるらしいというふうなこともかいま聞いたりいたしますが、会長としてはこの中身についてどのような御意見をお持ちになっていらっしゃるかをまずお伺いをして、それから中身について私は申し上げます。
  47. 兼松学

    ○兼松参考人 観光部長の御答弁のとおりでございますが、事務当局の案は私が必ずしも適当でないと申しました。ということは、これには先ほどの添乗員に訓示すると同じことが書いてございます。これは、添乗員は部内でございますからよろしいのでございますけれども、旅券を取ってその方が何をするかわからない、社用でいらっしゃるかどうかわからない方に配るチラシにそこまで書くのが業界として適当であるかどうか、表現は十分考えなければいけない。会社の用務で行く方に対して、はっきり添乗員に言うのと同じように買春に関与すると誤解されるような行動をしてはいけないなんという紙を出すことは適当でない。これは中身に対しては全く先生の仰せのとおりでございますけれども、用語はもう少し練ったものでないと失礼に当たると同時に、そういうものは結局幾ら刷って配っても現場の人が渡せなくなってしまう。現場の人が喜んでお客様に渡せるようなものを書かなければ、幾ら作文だけで満足してもそれは世の中に通用しない。私どもはもっといい文章で、しかも心に訴えるような文章はできないものかということで再検討をしている次第でございます。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 確かに、文言の上ではもっと適当な方法がありはしないかと考えることは大切なことだと思いますが、いまおっしゃったような買春という言葉はどこをどう探してもないのであります。いまある文案というのは、これは私は申し上げていいと思いますが、どういうことになっているのかというのを御参考までに申し上げておきますと、「いかがわしい異性に接することは、人間としての品位を傷つけ、あなたとあなたのご家族に大きな不幸を招くことがあります。さそいがあっても、不健全なナイトライフはさけましょう。」 こう書いてあるのです。  これは表現の上から言ったらこのままでいいかどうかというのは問題はございますけれども、現在の「接する人々、特に女性に対しては誤解を招くことが多いので、ぜひご注意下さい。」 こういう何を言っているのかよくわからないことに比べると、何を指示しているかというのはよくわかります。少なくとも注意、心得事として、業界の業者の方々の中では、健全な旅行企画というものを持っている限りはこのチラシだったらよう配らないとおっしゃる方は恐らくないだろうと私は思います。これはひとつぜひ御検討をいただきたいと思うのです。  これは「海外旅行中は事故防止に努めましょう(五五、七、一八、外務省・運輸省より)」あと項目が一から十二まであるのが半面になっておりまして、片方は「楽しい旅行のための国際人としてのマナー」こういうチラシの体裁になっております。  そして、現在のチラシには、先ほど運輸省からお答えがございましたとおり表題は運輸省と日本旅行業協会だけになっておりますが、新しいチラシ案を見ますと、また一つここに出てきた人があります。だれかといったら日本船舶振興会というのが名前を連ねて書いてあるのです。現在のチラシにないのが新しいチラシ案の中には出てきているといういきさつは、どういうわけでございますか。なぜここで船舶振興会というのが運輸省と日本旅行業協会と肩を並べて出てきているわけでありますか。
  49. 兼松学

    ○兼松参考人 お答えいたします。  私どもはいろいろな名前は全然要らないので、そういうものが入ってきているのは実はそういうものをするために運輸省が若干の補助金を下さるということで、私の聞くところでは船舶振興会の補助金が一部出ているそうでございます。一部出ているものについてはそれを書けという内示があるようでございますが、そういうことが書かれますと、実は各地方の反感を持っておる団体が場合によってはかえって配らなくなるわけでございます。それも私が再検討を願っていることの一つでございます。これはよしあしの問題ではなくて感情問題から配らない、あるいはポスターも、補助金が出ておるポスターをある府県によっては府県の組合等の関係で出せないということで、せっかくのポスターがみんな没になっております。せっかく国庫からの間接な補助をいただきながらそれが没になるのは国庫のお金もむだでございますし、私どもの費用もむだでございます。そういうことも含めて再検討いたしておるような次第でございます。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 これについてはさらに運輸省との間でひとつお詰めをいただく必要があるようでありますから、新しいチラシの中身についてはひとつわかりやすく的確に記載をしていただけるように、ここで特にそのことについて申し上げたいと思います。  さて、先ほど会長が添乗員についてのお話をされたときに、添乗員の心得と申しますか添乗員についてのいろいろな研修、そういうものの中身についておっしゃったことが、私自身の持っております文書とちょっと同じような中身でございました。その文書というのは何かといったら、JATAの方が大変苦労されております添乗員通信教育の「添乗業務教本」の中身と大体似たような御発言だったわけでございます。会長、ところが私はこれを見ておりまして、この業務教本の先ほどお読みになったことと教本自身で、ちょっと私自身ひっかかる部分があるので、なんでございますけれどもその部分をもう一度読ませていただきます。「添乗員は、団員の買春行為等には絶対介入してはならない。また介入していると誤解されないよう細心の注意をはらわなければならない。自由時間に何をしようと団員の自由であるが、日本人は団体で行動するので目立ち易く、現地の人々のひんしゅくを買うこともあるといわれる。  日本人のイメージダウンの防止に協力するという意味で、添乗員には団員をうまく誘導することが望まれる。」 こう書いてあるんですね。  この最後の部分、「うまく誘導することが望まれる。」というのは、ちょっとこれはひっかかります。こういうのを教本としていま現に使用されているということを私も承知をいたしておりますが、これはどのようにお考えになりますか。団員をうまく誘導すればイメージダウンを何とか防止することにもなるので、ひとつそこのところをうまく誘導しなさいよということを教えられているがごとくにこれは読めるわけでありますけれども、ちょっとここの点はひっかかるのですが、会長さん、いかがですか。
  51. 兼松学

    ○兼松参考人 文章が適切でない点で誤解を招いておるのかもしれませんが、趣旨はそういう趣旨ではございません。たとえば今晩いいところがないか、こう言って聞かれた場合によけいなことを言うなというような趣旨で、もっと健全な娯楽があるところへ御案内をするとか、パリで言えば、リドへいらしたらどうですかと言えばいいので、ピガルにいらっしゃい、裏通りには何がありますというようなよけいなことを言うなということでございまして、人によってはひっかかる方もあるかもしれませんけれども、非常に素直に受けてくださる方が多いのでございます。しかし先生の御指摘のような点も注意いたしまして、今度ともさらに文章を練り直しまして、次版からは先生にもひっかからないようないいものをつくりたいと思います。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 基本的には、いろいろな健全な旅行日程を業者が企画するようにひとつ御指導方をJATAの方では鋭意努力をしていただくという思想がどうしてもあるように思います。このことはよろしゅうございますか。  その中身としては、これもいろいろほかにも要因はあるでしょうけれども、観光旅行というのは安ければ安いほどいいというのが人情ではありますけれども、このところフィリピンに対して三泊四日で非常にダンピングをいたしておりまして、五万円くらいで行けるような旅行企画すらつくられているようであります。御存じのとおりにエコノミーで航空料金行き帰りで一体どれくらいかというのを見てまいりますと、これは正式には十七万六千円もかかる。パッケージツアーで参りますと、三泊四日で大体五万円近くまでダンピングされるというのは、本来考えてみると、これは大変無理な料金の組み立て方になっているのじゃないかというようなことは想像にかたくないので、恐らくその中身を見てまいりますと、現地の料金を低く見積もって契約するという行き方があるのじゃないか。したがいまして、そこの中で何とかもうけていこうとしますと、いろいろショッピングをやるとか、それからいま問題になっております買春行為でいろいろなさやかせぎをやるとかいうふうなことが業者の中にありはしないか、こういう問題であります。  したがって、そういうことも含めて適正料金の指導などもやっていただくということが必要であろうかと思われますけれども、そういうことも全部含めてひとつ健全な旅行日程を企画するように業者に対しての指導をJATAとしてはしっかりしていただきたい、はっきりしていただきたい、こういうことをわれわれとしては考えているわけでありますけれども、会長さん、いかがでございますか。
  53. 兼松学

    ○兼松参考人 御指摘のとおりまことに同感でございまして、現に公正取引委員会等でも――私どもマーケットの秩序維持ということでは努力しておりますが、旅行業者というものは航空会社、ホテルというような巨大なる会社の間にはさまれてのマージンの小さい事業でございます。それで現在世界の航空業界はこれだけの燃料高にかかわらず、乱競争の状態にございます。現にロンドンと香港の間、九十九ポンド、五万円ちょっとでロンドンから香港まで一万何千キロが走れる運賃を堂々と英国航空でも売り出しているような次第でございます。また同時に普通運賃というものは、商用や何かのために普通で行かれる方にはこのごろはむしろ一格上のと申しますか、ツーリストの上に一等との間に、クラブクラスであるとか「たちばな」だとかいろいろな名前はついておりますけれども、三クラス制をつくっておるような問題がございまして、団体運賃のお客さんというものは大体が普通運賃の半額ないし四割というのが常識の世界相場でございます。  しかしながら、ことに乱競争が参りますと、せっかく航空会社とわれわれが協定してもわれわれがお客さんから不信を買うような事実が非常にあるわけでございます。現にこの夏まで太平洋線の値上がりだということで運輸省の航空局は二回にわたって運賃の値上げをなさいました。私どももやむを得ずハワイの運賃をずいぶん高くしました。そのためにハワイのマーケットがドロップしたのでございますが、そのうちに太平洋を飛んでおります航空会社の一つがいろいろ問題を起こしまして非常に安い運賃をいただきましたところ、とめるどころか他の数社も同調いたしましたために非常に安い運賃が出てきてしまって、私ども旅行業者は消費者との間に入って非常に困っておるというのが実情でございます。  したがいまして、私どもとしても適正な料金を出したいということが第一の念願でございますので、先生の御趣旨はそのとおりと私どもも心得て努力しております。  もう一つ問題として申し上げたいのは、多くの旅行業者ではランドの手配というものと航空の手配というものは別になっております。一括のもございます。しかしランドの手配になりますと、こちらからの注文をいたします場合に、たとえば香港で四日間、ホテルはかくかくの級、たとえばオークラ、帝国級とかいう式の話をいたしまして、二人で一部屋使用の場合は幾ら、一人使用の場合は幾ら、食事は朝食幾らと詳しく書いてやりますと、結局向こうさんにも過当競争があるわけでございまして、向こうの方で下げたものを持ってこられる。そうしますと会社として、本社としてはどう考えても、仮に六十ドルが適切であるということで現場に指導いたしましても、現場の方へ向こうの出張員が来て、そう言われてもうちへ持ってくれば私を通せば五十ドルでやってやるというのが来た場合に、これをとめるということは、個々の取引まで協会が介入するということは非常に困難なことでございます。にもかかわらず、われわれとしてはいろいろ努力はいたしておりますけれども、力及ばざる点もあるということも正直に申し上げざるを得ないと思います。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 これは外務大臣が十二時にはもう御退席ですから、外務大臣に一問だけ御質問を申し上げて、せっかくの会長の御出席でございますので、いまるる御説明を賜ったことも受けて、あと一問だけ会長にさらに御質問させていただきたいと思います。  外務大臣、実はこれはほかの問題になりまして恐縮なんですが、二十七日に衆議院の安保特別委員会で問題になりまして以後、昨日も内閣委員会でこのことが取り上げられて論議の対象になっております。外務省とされては、そして外務大臣とされては、北朝鮮は潜在的脅威になるというふうにお考えになっていらっしゃいますか、いかがでございますか。
  55. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問でございますが、外務省といいますか外務大臣としては、朝鮮半島の平和ということは日本にとりましてもアジアにとっても世界にとっても本当に大切なものだということで、南北の対話ということができる環境を、何とか日本側もできることであれば協力というようなことで、中国へも何回も話したりしたようなことがございまして、基本的に朝鮮半島の平和ということを日本は本当に心から期待をしているわけでございます。  ただ、現実はなかなか厳しい状態がございまして、韓国と米国、米韓一緒になりまして、朝鮮民主主義人民共和国と韓国との関係の抑止力として米韓両軍がやっているということでございまして、韓国の人は恐らく脅威と思って考えておると思います。  その問題を日本がいまここで、それが日本にとって潜在的脅威であるかどうかというようなことは何も言わなくてもいいことじゃないか、そういうようなことを言うこと自身が、きのう官房長官も最後に言ったようでございますが、そういうものは何も国益にちっともプラスにならぬという意味のことを言ったということを私どもも承知しておりますが、私は、それでいいんだろう、南の方は北の方を脅威と思っているということは私どもも聞いておりますが、いま日本にとってそれがどうだというようなことを感じておるということを断定するというようなことは、日本の国益にとってプラス、マイナスは何もないことだというふうに考えています。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 それはいまの御答弁でいいと了承される向きもあるのかもしれませんが、実に歯切れの悪い御答弁なんですね。これは北朝鮮は潜在的脅威になるのかどうかといったら、なりません、そんなことは考えていませんと、恐らくは外務大臣のことだからお答えになるのだろうと私も予期をしていたのですが、ああでもない、こうでもないという、何だかしまいには歯切れの非常に悪い御答弁になり終わっていますが、しょせん外務大臣とされては、北朝鮮に対して潜在的脅威という認識はお持ちになっていらっしゃらないはずだと私は思いますが、そうですね。
  57. 伊東正義

    伊東国務大臣 きのうの官房長官の見解にもありますように、そういうことを断定することは国益に沿うものではない、こういうことを言っているわけでございますから、せっかく政府の統一見解ということでそういうことを官房長官が申しておるのですから、私から特にどう言わなくてもいいじゃないか。先生いま御質問になりましたが、率直に言えと言われれば、これは塩味で言えば少し塩味が薄いなという感じでございまして、もうそんなことを私は考えたことはないわけでございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 塩味が薄いなんておっしゃいますが、外務大臣、いかがですか、外務省というのはシビリアンコントロールというのを効かせるべき省でしょう。そして特にこの防衛問題については、平和外交という線でどのように進めていくかということを苦心なさる省じゃないですか。だからそういうことから言うと、政府の統一見解は統一見解として、外務大臣のお立場、政治家として外交を進める基本的な姿勢としてはこうあってほしいということからここでお答えになる御発言があってしかるべきだと私は思うのです。いかがですか。
  59. 伊東正義

    伊東国務大臣 でございますので、前段で朝鮮半島の平和ということは日本にとって、本当にこれは日本だけじゃなくアジア全部にとっても大切だということを申し上げておりまして、南北が対話で一つでも二つでも問題を片づけていくという環境づくりに日本も協力できることがあればということを申し上げたのは、これはもうもちろん平和外交ということが基礎でございますので、私どもとしましては、朝鮮半島に紛争が起きるとかそういうことのないように極力外交面でも日本ができることはやっていくという態度でございますので、それでもう十分おわかりだと思って私は申し上げたのでございまして、統一見解がありますので、統一見解で私は最後は意見を言ったということでございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、そのところは統一見解ということに縛られないで、統一見解は統一見解として、その中に外務大臣の御意見は生きている、そんなことぐらい私たちも承知をいたしております。  ただ、外務大臣というお立場でもう一歩進めてこの問題を考えるならばということが当外務委員会においては御答弁としてやはりなされなければならない、このような意味を含めて私は質問をしているので、この質問の意味も十分御承知の上での御答弁だと私は思います。もう一度御答弁を求めます。
  61. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生のおっしゃることを十分頭に置いて答弁をしているつもりでございますし、そういう態度でわれわれは朝鮮半島の問題に取り組んでいくということでございます。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 時間が十二時を過ぎましたので、これは具体的なことは追って外務大臣に次回質問として続行いたします。  さて会長、先ほど来お聞かせいただきました中身につきまして、いろいろそういう料金を計算する上での問題点というのは、きめ細かな技術論としてあるかもしれません。でもそういう中で、だからといって、経営を成り立たせていくことのためにいろいろ不健全な旅行企画に手を染めなければならない、そしてまた、そういうことでその企画に参画をするということをしなければ業者として成り立たない、そういう状況があるとするならば、それ自身が問題だと思うのです。買春観光というものを組まなければ日本の業者としては成り立たないという実情があるということが外から指摘をされている現状でございますから、ひとつそういうところをポイントを外さないように。いろいろ技術の上では細かい点はあるでしょう。しかし、そういう基本路線からひとつお考えをいただきまして、健全な旅行の企画が自主的に組めるような状況をJATAとしては指導されんことを切に望みたいと思うのですが、その点はよろしゅうございますね。
  63. 兼松学

    ○兼松参考人 旅行業協会としましては身に余る責務をいただきまして、私どももまことに身の引き締まる思いがいたしますが、私どもは常に御趣旨は体しておりますけれども、商業取引の現状と申しますものは、組まなければならないようなものをやらせるというようなことは、われわれはゆめ考えておりません。私どもは、日本の業者は買春観光などを組む必要のない適正な値段で商売できるようにということをしておりますし、念願しております。  しかしながら、韓国でもあった例でございますけれども、これはまあ水かけ論的な性格があるのですけれども日本がたたくからわれわれは安くするというのですが、たたくというんじゃなくて、向こうさんが安い値段を現場へ持ってこられるというのが実情なんで、この辺は私どもとしても大いに努力をして、そういったようなお互いに国際間に言いがかりのできるようなことはよろしくないのでございますので、今後とも両国の協会が、韓国といわずフィリピンといわずぜひ努力をいたしまして、両国の国際旅行業界の協力によりまして、そういう問題が将来にわたってできるだけ少なくなるように努力したいということをお誓い申し上げたいと思います。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 最後に、これは具体的なことがきょうのニュースに出てまいっておりますが、マニラで、日本人数人による観光売春をやっていたということで捜査を進めているというニュースが出てまいっております。小さなバーやナイトクラブに見せかけたところで、フィリピン人が請け負うような形をつくりまして、約五百人の女性をそこで雇いまして、日本からの大型観光団の相手をさせているというふうな情報をもとに捜査をしているというニュースでございます。日本人の名前も出ております。  この日本人と関係のあった旅行業者または代理店、こういう問題などについて厳しい処置をとるということを運輸省やJATAの方でお考えいただかなければならないと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  65. 兼松学

    ○兼松参考人 まことに御趣旨のとおりだと思いますので、できるだけ現行法規と規定の範囲内におきまして最善の処置をとりたいと思います。
  66. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 私ども新聞報道にある程度の情報しか得ておりませんが、あの問題につきまして、日本の旅行業者がもし関与しているような事実があるとするならば、私ども、いま先生のおっしゃったように、毅然たる態度で厳重な措置をとりたい、かように考えております。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは、会長せっかくの御出席で、まだまだお尋ねしたいこともございますが、時間の都合でお帰りになるということでもあります。私自身の質問の時間帯もございます。したがいまして、残念でありますけれどもこれでお尋ねすることを本日は終えたいと存じます。  ただ、最後に追い打ちをかけるような物の言い方に聞こえてあるいは恐縮かもしれませんが、大体海外旅行というのは、行く外国のビザの発給を受けまして、そしてそれぞれ日本人が海外に旅行するということになりますので、それぞれ発給した国は、その日本の観光客に特別の保護待遇というものを講じてくれる、そういう関係で成り立っている観光旅行でございます。したがいまして、、心安く何をやってもいい、そして特に向こうの人権侵害にわたるようなこともあえて団体を組んで異常な行動でやるということが海外からどんどん非難として聞こえてくるくらい、日本としてほっておけない問題はありません。  したがいまして、そういうことからすると、いままでに何回となくこれについては運輸省としては通達を出され、通達を受けて業界の指導にも当たられる、でもいままでどおりで、これの繰り返しをやっていたのでは、抜本的にこういう問題に対して是正することにはならない。ひとつこれを機会に思い切ってこういう問題に対して真剣に誠実に取り組んでみようというふうなお気持ちでやっていただきたい、これが切なるわれわれの気持ちでございますけれども、よろしゅうございますね。
  68. 兼松学

    ○兼松参考人 ただいまお話がございました御趣旨はまことにごもっともでございます。  ただ、ビザというものはこのごろはほとんど廃止されております。現実には、観光旅行者でビザをもらって行くのはごく近隣の国が主でございまして、ヨーロッパの西側の国は、御承知のとおり、ビザは全然要りません。それからフィリピンもタイ国も、十日とか二週間の限定された旅行ならば、帰りの航空券があればビザは不要でございます。  しかしながら、趣旨は仰せのとおりでございますので、われわれも、ビザの有無にかかわらず、御趣旨に沿うような最善の努力を今後とも続けていきたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。ありがとうございました。
  70. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、参考人にごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後三時六分開議
  71. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。大久保直彦君。
  72. 大久保直彦

    ○大久保委員 イラン・イラク紛争に関連して二、三お尋ねをいたしておきたいと思いますが、この問題の展開については大臣もいろいろと気を使われて、日本が単なるオブザーバーとしてではなく、和平実現のためには何か具体的な措置をお考えになっているやに伺っておりますけれども、その辺のところから所見を伺いたいと思います。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  イラン・イラクの問題というのは、御承知だと思うのですが、まだ非常に主張が離れているということでございまして、いま非同盟関係で、PLOでございますとかキューバとかが一つの主体になって調停をやろうかということで動きがある。片やイスラム国家を代表しましてパキスタンのハク大統領の動きもある。もう一つはオーソドックスな安保の理事会ということでの動きもあるわけでございまして、現実に調停案ができて、そして両方へ乗り込んでという段階まではまだ至っていないということは御承知のとおりでございます。これがどういうふうに動くかということでございますが、日本としては安保理で主張し、あるいはイスラム国家の代表のパキスタンに今後の努力を頼みますというふうなことをいま言ったりしている段階でございます。  もう一つ、これは非常に微妙なことでございますが、きょうイランの議会で人質問題がどういうふうに動きますか、まだ現地からも連絡がないので的確な判断はできかねるのでございますが、これの動きによって、またイランの人質解放ということになるとある動きが出てくるのではないかというふうなことも考えられ、いまいろいろな動きがあるわけでございますが、その中で日本がどういう役割りを果たしていくかということにつきましては、主張が隔たっているだけに、非同盟のインドや何かとも実はこの間話したり何かしたのですが、なかなか機をつかむのにむずかしいということで、いま検討しているというのが現状でございます。
  74. 大久保直彦

    ○大久保委員 ただいまの御答弁の中にもございました人質解放問題がいまや時間の問題と伝えられておりますけれども、この人質を解放することによって、アメリカ側からのいわゆる経済制裁の解除というものが当然行われてしかるべきであり、また経済制裁の解除の中身としまして、いわゆる人質解放の条件の中に、アメリカの武器援助が当然含まれておるのではないか、こういうことが伝えられ、また懸念の声があるわけでございますけれども、この辺について大臣はどのように考えておられますか。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 人質の解放につきましてはどういうふうに動きますか、非常に動きが出ていることは確かでございますが、いつどんな形で実現するのかということはなかなか予想のむずかしいところでございまして、アメリカ側も、いままで何回もそういうことがあったので、現実に全部の人質がたとえば第三国の飛行機に乗ってイランを出たとか、そういうことがはっきりするまでは本当に解放になったのかわからぬというようなことで、非常に慎重な態度をとっております。  でございますので、私どももいっどういう形かということを非常に注目しているところでございますが、これは仮定のお答えにもなりますが、もし全部の人質が解放になったということになりますと、いままでやっておりました経済制裁というようなことの根拠はなくなるわけでございますが、これはどういう手続でやりますか、手続の問題はいろいろあります。日本もECも協調してやったわけでございますから、手続の問題はございますが、その中でいま先生おっしゃった武器援助ということが人質解放の条件になるかならぬか、私どもも定かな条件はわかっておりません。わかっておりませんから的確な御返事をすることはむずかしいのでございますが、考えられる中に、制裁をやる前に契約があって一部お金がイランからアメリカへ払われているもので履行がされないというようなものもあるかもしらぬし、そういうものが全然なくて新規の問題として先生のおっしゃったような問題が出てくるのかどうか、これはこれからの条件次第だと私は見ているわけでございます。  いずれにしろ、この間アメリカ側に日本の意向も伝えたのでございますが、人質解放に伴う措置と、今度のイラン・イラク紛争に介入する、どっちかに加担するということとは別の問題だ、もしもアメリカがどちらかに加担をするというようなことになれば、あの地域でそれこそ世界じゅうを巻き込んだような混乱になることも予想されるおそれがございますので、第三国はイラン・イラクの紛争には介入すべきじゃない。これは日本もそうでございますし、アメリカに対しましても介入は厳に慎まなければならぬことなので、その点は日本は非常に心配して、国会でも御質問がありましたが、その模様も向こうへ伝えまして、介入しない、中立を守り抜くというようなことを日本側の意向として伝えているということでございます。
  76. 大久保直彦

    ○大久保委員 大臣がおっしゃったように、確かに武器援助によります介入の問題は、ただ単なるアメリカの介入という事態にとどまらない。その局面を拡大することになるわけでございますから、日本としてはそういう積極的な措置を継続的に行われることを重ねて強く要請をいたしておきたいと思います。  アメリカがもし経済制裁を解除した場合、わが国も昨年来イランとわが国との間での経済制裁という問題があるわけでございますけれどもわが国が解除する場合にはどういう条件が整えば経済制裁は解除されるのか、もし何か具体的なお考えがあれば伺っておきたいと思います。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 わが国がイランに制裁をやりましたときには、具体的な案を決めるときは、踏み切るときはECと十分協議をしたわけでございます。今度の解放の態様でございますが、全部が解放になるのか一部が解放になるのか、いまどちらかわからぬわけでございます。国連決議は一部じゃなくて全部の人質を解放しろということを言っているわけでございまして、経済制裁を撤廃するというときは私は全部の人質が解放されることが必要ではなかろうかと思うわけでございます。  それから、いつやるかということでございますが、これはもちろん日本の独自の判断で決めるわけでございますが、時期等につきまして事前に日本考え方をアメリカなり、イランなり、またイラク、湾岸諸国も何か日本がイランに肩入れするんじゃないかという心配をすることがあると思いますので、そういう国々にも伝える。特にECは前に相談をしたことがありますから、事前に日本の考えも伝えておくというふうなことをやって、その辺のところ日本介入するんじゃないということは関係国にはっきりしてそれからやりたいという考えでございますが、いまその解放の態様がわからぬものでございますから、いまのところはこういう場合こういう場合というように頭で考えているだけでございまして、まだ具体的に基準をつくるとか案をつくるまでには至っておりません。
  78. 大久保直彦

    ○大久保委員 わが国がECと共同して経済制裁を決定いたしました時期と現在のイランの置かれている現状とは、交戦中であるという大変大きな隔たりがあるわけでございます。こういう事態の中でわが国が経済制裁を解除するということは、いま大臣もちょっとお触れになりましたけれども、この交戦状況の中で何だか一方に加担をすることになるおそれなきにあらずという声もあるようでございますけれども、当然その点は十二分に踏んまえて解除の時期、条件等は検討される、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
  79. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま片方のイラクとは正常な貿易をやっているわけでございます。武器援助はもちろん日本はできないわけでございます。武器輸出の三原則がありますから武器はやっておりませんが、通常の貿易はやっておる。イランに対しては制裁という関係があって貿易等も新規のものはやってないという状態でございますので、今度経済制裁を解除すると言いましても、イラクに対してやっていることと同じことを実はやることになるわけでございます、正常な貿易でございますから。確かに紛争ということが新しく起こりましたので、そういう誤解を与えてはまずいことがございますから、さっき申し上げましたように、やりますときにはちゃんとイラクにもあるいは湾岸諸国にも、そのことは介入じゃないんだ、イラクに対しては正常貿易やっているのだ、イランはとめてあったがそれは人質の問題でとめてあったので人質が解放になったから普通の貿易に戻りますということをちゃんとわかってもらって、そしてやろうと思っております。
  80. 大久保直彦

    ○大久保委員 あと三つばかり伺いたいので、端的に伺いますから端的にひとつお願いしたいと思います。  十二月上旬に日中閣僚会議が予定されていると伺っておりますけれども、その準備が進められておりますのかどうか。開催時期はいつごろになるのか。またその閣僚会議においてどんなことを議題にするように御用意されておりますか、もし差し支えなければお伺いしておきたいと思います。
  81. 伊東正義

    伊東国務大臣 日中閣僚会議は、北京で三、四、五の三日間の予定で決まっております。  議題につきましてはまだはっきり両方で合意はしておりません。しておりませんが、恐らく考えられますのは一般の国際情勢、その中ではカンボジア問題でございますとかアフガニスタン問題が入ることは必定と思います。あるいはエネルギーの問題でございますとか、運輸、港湾、金融の問題とか、そういったものは当然出てくると思うのでございますが、いま議題は詰めているところでございまして、まだはっきりはしておりませんが、三、四、五日北京で行なうということは決まっております。
  82. 大久保直彦

    ○大久保委員 去る十月初旬に、中国社会科学院の招請によりまして訪中しました民間代表団に対して、姚依林副首相が尖閣列島周辺の石油開発問題に触れまして、列島の領有権をたな上げにして開発に進むべきである、日中二国だけではなくてアメリカも一緒に参画させて行ったらどうか、こういう話があったようでございますけれども、当然外務大臣も御承知だと思いますが、この点について、どんなお考えを持っておられますでしょうか。
  83. 伊東正義

    伊東国務大臣 私の方に公式にいまの話は来ておりません。しかし、そういう考えがあるということは、日本国内にもあるかもしれませんし、中国にもそういう考えがあるということはいろいろな人から聞いております。  ただ、先生がいまおっしゃいましたように、尖閣列島の問題でございますとか、大陸棚の境界、これは海洋法との関係でございますが、まだ画定もしない問題がございます。あるいは第三者を入れてというようなことは、われわれは余りまだそこまでは知らぬのでございますが、いろいろそういう問題がありまして、今後恐らく話になれば、交渉といいますか話し合いをしなければならぬと思いますが、いまの段階ではまだそこまで至っておりません。
  84. 大久保直彦

    ○大久保委員 予定されておる日中閣僚会議の議題になる可能性はあるのでしょうか。
  85. 伊東正義

    伊東国務大臣 議題は詰めておりませんから確定的なことは申し上げられませんが、日本からはその問題を持ち出す考えはいまのところございません。
  86. 大久保直彦

    ○大久保委員 金大中問題について伺います。  外務省は自民党に要請をしまして、日本全国の地方議会における金大中氏救出決議には参加しないように、こういうことを与党自民党に要請をしたやに伺っておるのですけれども、そんな事実があるのですか。
  87. 伊東正義

    伊東国務大臣 外務省から与党自民党にそういうことをお願いするとかいうことはいたしておりません。
  88. 大久保直彦

    ○大久保委員 政府・与党は一体のものだと思いますけれども、自民党が幹事長、また政調会長両氏の連名で通達を出して、このような決議には参加をしないように、こういうことをされておるようでございますけれども、与党のこういうアクションについては外務省はどういう見解をお持ちでしょうか。
  89. 木内昭胤

    木内政府委員 自民党の方でそういう通達を出されたということは、私ども承知いたしております。党の方の独自のお考えで処置されたものと考えております。
  90. 大久保直彦

    ○大久保委員 外務省がこの問題についていろいろと発言をされておる実態と与党のやっていらっしゃることとはずいぶん何か違うように拝見するのですけれども、その点は全く矛盾を感じておられませんですか。
  91. 木内昭胤

    木内政府委員 外務省としましては、この問題はなるべく静かに処理した方がいいという基本的な考え方を持っております。党の方も恐らく同じような考え方に立っての御判断じゃないかと承知いたしております。
  92. 大久保直彦

    ○大久保委員 自民党が独自の判断でやっておられるということについて、外務大臣はどういう御見解をお持ちですか。
  93. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま木内局長が申し上げましたように、私どもとしましては、なるべく静かに裁判の推移を見守る。ただ、政府として意向はいろいろなルートを通じて伝えておるわけでございます。私どもはその方がかえって最終の目的を達成する上にはいいんじゃないかという判断を実はしておるわけでございますから、党の方がなるべく静かに見守ろうということの御判断でおやりになったとすれば、私はそれで結構なことだというふうに思っております。
  94. 大久保直彦

    ○大久保委員 静かに見守ろうという御発言は非常に響きがいいのですけれども、実態は救出決議そのものをつくり上げないようにという動きにもとられますし、これは何か口でおっしゃっていることとおなかの中とは別々なのかという印象をぬぐうわけにはまいりません。  韓民統再入国問題について関連してどういう御見解をお持ちなのかを聞いて、次に移りたいと思います。
  95. 伊東正義

    伊東国務大臣 まだ正式なものが来まして法務省と正式な文書で相談し合うということじゃないのですけれども、内々の相談を受けていることは確かでございます。  ただ、問題が問題でございますので、われわれとしましては先ほど言いましたような考え方を持っておりますので、この問題についてはよほど慎重に考えなければいかぬという態度でいるわけでございます。
  96. 大久保直彦

    ○大久保委員 ナヒモフ号の問題が国際的、国内的にいろいろな関心を集めておるわけでございますけれどもわが国の船艦でも公海に沈んでいるものが多数ございまして、それを将来引き揚げるというようなことになった場合、沈んだ船の所有権について原則的な考え方を明確にしておくことが大変大事なことかと思われますので、ナヒモフ号とされている沈没船の所有権について国際法上の見解を伺っておきたいと思うわけでございますが、まずいま問題になっている沈没船がナヒモフ号であるということは確認をされましたですか。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 引き揚げをやっている会社からナヒモフ号であると確認をしたという報告はまだ来ておりません。
  98. 大久保直彦

    ○大久保委員 ほぼナヒモフ号であるということでございますか。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう推測を交えたあれじゃなくて、ナヒモフ号という確認はまだとれてないということの報告でございまして、それ以上それは、らしいとかどうとかということじゃまだないわけでございます。
  100. 大久保直彦

    ○大久保委員 外務省はソ連政府に、このナヒモフ号はわが国のものであるという見解、主張を通告したと言われておるのですけれども、それは間違いですか。
  101. 伊東正義

    伊東国務大臣 外務省がソ連に回答をしましたのは、ナヒモフ号であるということはまだ確認されてない。ただナヒモフ号であるとすればということで、その船は――日本に明治三十七、八年の海戦史があるわけでございます。これは防衛庁にあるわけでございますが、その海戦史によりますと、日本の仮装巡洋艦の佐渡丸というのが攻撃をして、そこへ乗り込んで一回拿捕をして日本の旗を立てたというようなことが海戦史に載っておるわけでございます。それで戦時国際法からいきますと、拿捕ということの瞬間にもう一切の権利が直ちに終局的に移るということが戦時国際法の通則でございますので、われわれとしましては、海戦史にもはっきり拿捕ということがある以上、これはソ連が管轄権を主張するようなものじゃないということで向こうに回答をして、これは日本のものだということを言ったわけでございまして、確認はされてないが、もしもナヒモフ号であればということで回答をしたわけです。
  102. 大久保直彦

    ○大久保委員 そのもしものナヒモフ号は、わが国の領海内に沈んでいるのですか、公海に沈んでいるのでしょうか。
  103. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  現在、日本の領海は十二海里でございますので、現在におきましてはわが国の領海の中に入って沈んでいるものでございます。
  104. 大久保直彦

    ○大久保委員 昭和二十八年の七月十七日及び二十一日の当外務委員会において、フィリピン領海内に沈没したわが国の船舶の所有権について政府から「比較的多数説の認めるところは、艦船のみならず、兵器――タンク、車両を含む兵器でございますが、それが敵対行為の結果破壊せられ、あるいは歯獲せられた場合に、これはそれをとった国、破壊した国が没収し得る」また「今日の多数説は沈んでしまった艦船でも敵対行為のために破壊を受け、または敵の圏内に入ったものは、敵があたかも戦利品と同じように没収し得るというのが通説になっております。」 このような御発言があるのですけれども、この見解に今日も変わりはないのでしょうか。
  105. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生がお読みになりましたのは、昭和二十八年八月十七日の外務委員会においての発言でございましょうか。私、実はそれは後で調べてみたいと思うのでございますが、私どもの考えでは、ちょっといまの先生が読み上げられた答弁の中で、敵の権力下に入ったものというのは、恐らく拿捕、捕獲、戦利品として取られたものという意味に解しますれば、私はそのとおりだろうと思います。しかし、ただ単に戦闘行為によって沈没させられたというようなものは、敵に所有権が移るとか敵に管轄権が移るとかいうようなものではないと思っております。  したがいまして、一般論といたしますれば、第二次大戦中に戦利品として取られたものは別といたしまして、ただ単に撃沈されたないしは沈んだという船につきましては、依然として日本側に管轄権があるものだというふうな解釈をとっております。
  106. 大久保直彦

    ○大久保委員 ちょっとよく聞いておいていただきたいのですが、「敵の圏内に入ったものは、敵があたかも戦利品と同じように没収し得るというのが通説になっております。」この点はどうなんですか。
  107. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 敵の圏内に入ったものは戦利品として没収するということでございますれば、それは戦利品として敵の権力下に入ったというふうに解されますので、それはそれなりに正しいことだと思います。
  108. 大久保直彦

    ○大久保委員 そうであるならば、ナヒモフ号は日本海海戦においてわが海軍のかかわりによって撃沈されたものでありますから、当然日本国のものになった、こういう解釈をされるのがきわめて一貫した解釈であると思いますが、大臣いかがでしょうか。
  109. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりだと思います。
  110. 大久保直彦

    ○大久保委員 そこで、この問題は日本側の主張があると同時に、ソ連側も何か意見があるやに伺っておりますけれども、モスクワ放送でもこの問題について、ナヒモフ号に立っていた日本の旗をもぎ取ったとかもぎ取らないとかなんとかいうことを報道されているようでございますけれども、この問題は将来対立していくようなことが予想されるわけでございますが、どういう処理の仕方を考えておられるのか。もうソ連との折衝の必要はない、外務省の見解を一方的に通告したことですべては終わりである、これ以上論議の発展する可能性はない、そのように思っていらっしゃるのか。そうでなければどのような事態を想定されて、どういうことをしようとされておるのか、答弁を願いたいと思います。
  111. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は条約局長からお答え申し上げますが、いままでのところは、こちら側の回答に対しましてソ連政府から何の反応もないというのが現状でございます。  これからの問題につきましては条約局長から申し上げます。
  112. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ソ連側が最初わが国に言ってまいりましたときに、ナヒモフ号という想定のもとにソ連側が言ってきたわけでございますが、沈没した軍艦というものは旗国、所属する本国以外のいかなる国の管轄権の適用も受けないのだということから、抗議と申しますか、申し入れをしてきたものだと思うのでございます。  ところが、われわれの正式な記録を調べました結果、戦時国際法上合法的な手続を踏んだ拿捕行為というものが確かにあったということで、先ほど大臣から申し上げました答えをソ連側にしたわけでございますので、ソ連側の言い分そのものに対してわれわれは反対しているわけじゃございません。  ただ、戦利品になった以上は、ソ連の所有権とか管轄権とかいうものはおよそ縁のない話になっているわけでございますので、その点についてソ連がさらに云々してくるということはないのじゃないかというふうに思っております。
  113. 大久保直彦

    ○大久保委員 いろいろな見地から考えましても、ナヒモフ号であろうとされておる船は日本国のものであることは間違いがない、私もそのように確信をいたしておりますけれども、その立場で確固たる姿勢を貫いていただきたい。  時間も参りましたので、最後に一点だけ伺いますが、先ほどのイランに対するわが国の経済制裁の解除の問題でございますが、アメリカの大統領選挙が陰に陽にこの問題に絡んでおることは衆目が認めるところでございます。そういうことであるならば、人質解放と経済制裁の解除という問題はきわめて今日的、近い将来行われるのではないか、こういう一つ見通しがあるわけでございますけれどもわが国がイランに対する経済制裁を解除する時期というものは、アメリカが選ぶであろうタイミング、また、その条件と全く無関係なものなのか、ある程度アメリカの動きというものが一つのヒントになることがあり得るのか、それを最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  114. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま御質問のようなことをアメリカの当事者は考えているかもしれません。それは予想されるところでございますが、日本が判断する場合には、時期の問題、内容の問題があるわけでございます。内容も、アメリカがたとえば十・ということをやった、日本も十やるかというようなことになりますと、これは内容が違うことがあるわけでございます。たとえばアメリカは前に武器の部品や何か売っていたということもあるだろうと思いますが、そういうようなことについてはこっちはないというようなこともございますし、あるいは一~PCの問題なんかは、特別な問題が日本にあるわけでございますから、その内容が全部一緒だというわけではございません。  それから、ヨーロッパがやっておりますのも日本と大筋においては一緒でございますが、若干細かい点では違っているというようなこともございますので、やはり日本日本で、内容については独自な日本の考えでやるということでございます。  ただ、さっき申し上げましたように、誤解のないようにちゃんとしてからやるということでございます。  それから時期の問題でございますが、私どもも、全員が解放されたということであれば、介入ととられないようなはっきりしたことを諸外国にわかってもらう、これはECも含め、湾岸も含め、わかってもらう。事前にわかってもらった上でやるということでございますので、それが何日の何時というようなことで、アメリカ、日本、ECが同じ日になるということはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに私は思いますので、その辺のところは日本の独自な考えで決定していきたい、私はこういうふうに思っています。
  115. 奥田敬和

    奥田委員長 林保夫君。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 国際情勢一般、きょうはこういうことでございますが、この機会に、大臣も御就任以来すでに三カ月経過されまして実によく動いておられる、こういう印象でございます。特に早速東南アジアあるいは中国、さらにはアメリカ、国連、そしてまた北方領土の過日の視察ということでございますが、実は私ども国民、今日の国際情勢の動きを八〇年代になってからというよりもそれ以前から大変心配しているわけでございます。この三カ月間すでにいわゆる伊東外交の形が、だんだんと出てきている、むしろそれを出してもらいたい、このようにすら私ども思うわけでございますが、三カ月間御担当なされての御感想を承りへこれから外交上どういう点を重点に大臣はお取り上げになっていくのか、この点をまずひとつ、抽象的で結構でございますから率直に承っておきたいと思います。
  117. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま伊東外交とおっしゃいましたが、そんな偉いものではございませんで、鈴木内閣の一員として、総理の旨を受けて日本の国益を守るということを念頭に置いてやっておるわけでございます。  私、東南アジア、中国、アメリカ、国連と回ったのでございますが、日本に対する期待というものが、思ったより、予想以上に世界から、特に自由主義の陣営からは強いものがあるということを痛切に感じたような次第でございます。経済大国になったということで、経済の問題でできるだけ協力ということをやっておりますが、アジアにおきましても、あるいはアメリカに行ったとき、国連に行ったときの感じで、たとえばアフリカ諸国の人々とか、これは非同盟の方が多いのでございますが、日本に対する役割りというものを非常に期待しておられる。     〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 あるいはアメリカはアメリカで、従来のアメリカ、隔絶たる世界のアメリカということよりもだんだんワン・オブ・ゼムで、われわれに対しましても責任の分担といいますか、そういうことを期待するというような話が出てくるということでございまして、日本が世界で政治的にも日本の役割りというのを期待されているのだということを痛感をしたわけでございます。それだけ世界じゅうから信頼され、期待されているということからいきまして、日本としてはどこの地域、、どこの国ということでなしに、もっと広い意味でその期待にこたえなければいかぬということを痛感した次第でございます。特に、今度安保理事会におきまして圧倒的な得票で当選したことはそのあらわれだ、こういうふうに私は思うわけでございます。  それから、これは前の大平内閣からとられた姿勢でございますが、やはり自由主義陣営の一員としての責任を果たしていくということを、特にイランの問題、アフガンの問題をめぐりまして、日本の場合においては犠牲を忍んでもということを際立って言ったわけでございまして、これは日本としてやるべきことは当然やらなければいかぬ、自由主義陣営の一員だということを念頭に十分置く必要があるということを考えさせられるのでございます。  ただ、それは何もどこに敵対行為をするという意味ではなくて、そういう考えのもとに至るところの地域において、との国ともできれば協調をしていくという態度も変わらぬということでございますが、基本的なそういう立場は大切だということを考えたわけでございます。  また東南アジアへ行きまして、日本はアジアの一員だ、アジアのことをよく考えてもらいたいということを方々で言われたのでございまして、私はアジアでしっかり平和、安定ということをやって、それを世界に及ぼしていくことも大切だということを感じたわけでございます。  また方々で環太平洋ということをよく言われました。きのうもスペインの外務大臣と会いましたら、日本は環太平洋という構想を進めておられるがこれはどういうことですか、われわれも非常に関心を持っていますと、スペインの外務大臣が環太平洋の話をされたわけでございます。環太平洋の連帯といいますか、これは二十一世紀に向けて、一内閣の問題でなく、もっと長い目で考えなければならぬ問題でございますが、この太平洋地域の国々、人々の連帯ということをもっともっと考えていく必要があるのじゃないかというふうに感じたわけでございます。  もちろん中国との関係、ソ連との関係、非常に重要な問題がございます。これらとも真剣に取り組んでいかなければいかぬと思うわけでございます。  また経済的には、御承知のようにエネルギーの問題でございますとかあるいは南北問題に関連した開発途上国の援助の問題でございますとか、経済的にやれることはもちろんやらなければならぬわけでございまして、こういうことにつきましては従来の考えをより一層広めまして、南北問題の解決、開発途上国の援助というようなことをやっていかなければならぬと考えたわけでございます。  漠然としたお答えをして恐縮でございますが、要するに日本は国際協調といいますか友好といいますか、それを基本にして、平和外交ということで徹底してやっていかなければならぬ。国連等においても憲法からきております日本の平和外交ということ、こういうことに対して世界じゅうが非常に関心を持っておりまして、平和外交を日本は進めるのだということを高く評価しているわけでございますので、そういう見地に立って今後とも鈴木内閣の一員として、世界の平和、それが日本の平和につながるのだということで、国益を守るということを大前提に、自主的に物事を考えるということを大前提にしまして外交に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  一点だけ、ただいま平和外交を進めていかれるという大臣の非常に強いお言葉をいただいたのでございますが、私は過日の委員会で、援助を出すのならそれなりの効果の上がるように、外務省としては言いにくいかもしれませんけれども、経済的影響力のほかに政治的影響力も持てるようにという御意見を申し上げたわけでございます。  そういうことと関連いたしまして、これまた民間用語で外務省用語にはなっていないかもしれませんが、安全保障上日本の安全を守るためには平和戦略の推進が大事だ、もう新聞でごらんのようにあちこちでコンセンサスになっております。過日のわが佐々木委員長と鈴木総理との話の中でも、そのことが一つの原則として確認されております。これにつきまして大臣はどのようにお考えになり、平和外交推進の上でそういう立場を踏まえてどのような点に力点を置かれてまいられるのか。一つの方法として、みずからの力をしっかりつけて、安定した勢力になるのだということもございましょう。と同時にまた、可能な限り日本の持てるものを他国に援助して、その中で平和関係を維持していくのだ、その形において戦争抑止力にもなるのだということもございましょう。と同時にまた、大臣大変積極的でございます。過般来あちこち飛んでおられますが、私は従来日本外交に余りなかったと思いますが、国際的なネコといいますか、仲介あるいは仲裁役という役割りをおとりになる決意がおありになるのかどうか、この機会にちょっと承っておきたいと思います。
  119. 伊東正義

    伊東国務大臣 平和外交に徹してやっていくという基本方針は、これはもう先生がおっしゃったとおり、私どもは拳々服膺これに取り組んでまいるつもりでございます。その中でいままでの経済的な役割りのほかに政治的な役割りもということでございまして、先生お話しになったのでございますが、私としましては、経済的なことで協力できることはもちろんでございますが、日本に期待される場合には、外国の間に立っていろいろ話し合いをするとか、そういうことにつきまして積極的に取り組んでまいりたいと思います。  十二月に日中閣僚会議がございますが、ここではカンボジアの問題、インドシナ半島の平和、これこそ東洋の平和につながるわけでございますので、この問題も大きな問題として取り上げていく。ASEAN諸国と一緒になってこれの解決に何とか日本も力をかしたいと思っておりますし、今度はアメリカに行きまして国連で、中東の問題につきましてはパレスチナ問題というのが基本じゃないかというような意見も私は言ってきたわけでございまして、可能な限り期待に背かないように政治的な外交にも取り組むつもりでございます。  安全保障の問題をちょっとおっしゃいましたが、これは狭義の安全保障のほかに広義の総合的な問題がございます。その中で外交というのは一番大きな役目をしなければいかぬと私は思っておるわけでございますし、狭義の防衛については防衛庁で一生懸命やってもらう。日米安保を中心にしまして、他国に脅威を与えない、しかし侮りは受けぬという防衛体制といいますか、専守防衛、非核三原則、個別的な自衛権というようなことをもとにして国民の皆さんの理解を得ながらこれはやる。広い意味の総合安全保障の平和外交ということについては、私どもは積極的に取り組んでいくという考え方でございます。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございます。  関連いたしましてもう一つ。先ほど申し上げました国際紛争について、日本の場合は従来比較的ただ単に声明を出す、そしてまた国連依存一本のような感じに私どもとしては受け取れたわけでございますが、ただいまパレスチナ問題、そのほか近隣の問題もいろいろございましょう。これらについて、大臣または政府代表または外務省の代表が何らかの形において紛争調停などについてこれから積極的に出ていかれる用意があるやに聞きましたが、そう受け取りまして間違いありませんか。
  121. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは日本一国でできる問題と世界の国々と共同してやらなければできない問題といろいろあると思います。いろいろあると思いますが、世界の大勢がそういうように動くというようなとき、当然日本もそれに入って一緒に機能するとか、あるいは日本が口をきいていい場合には日本が単独でやる場合もありましょうし、そういう問題につきましてはやはり積極的に日本は取り組むべきだというふうに私は思っております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほど大臣伊東外交を否定されましたけれども、やはりなお大臣の個性というものが外交に出てくるのは当然でございますし、先ほどお話しの国益を踏まえてという前提で、ぜひひとつこの上とも御敢闘をお願いしておきたいと思います。  個別の問題は、時間がございませんので、あと一つ二つお願いしたいと思います。  過般、北方領土を御視察なさいました。私どもから見ますと、長い間どうも放置されておったような感じを禁じ得ません。ほかの団体ではかなり、私どもの仲間でも毎年のようにあそこに十年近く訴えに参っておったような事実もございます。大臣は視察なさいまして、現実は大変厳しい、こういう御発言もしておられます。どのように厳しいのか、お差し支えのない範囲でひとつ。
  123. 伊東正義

    伊東国務大臣 この北方領土の問題につきましては、この間も国連でも演説をし、グロムイコ外相とも話したのでございます。また過去のいきさつから見まして、鳩山さんが行かれたときの日ソ共同宣言があった、その後田中総理が行かれて戦後の諸懸案の中には領土問題も含むのだということを、これは口頭でございましたがブレジネフ書記長との間で話し合いをされた、しかし、その後またソ連がそれを否定するというようないろいろな動きがいままであったわけでございます。  戦後三十五年たちますけれども、この問題はまだ解決を見ていない。この間グロムイコ外相と会いましても、領土の問題になりますと非常に態度がかたいということでございまして、これは今後取り組んでいく問題として非常に厳しい問題だということを身をもって感じたような次第でございます。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 その際、記者会見だと思うのでございますが、新聞報道によりますと、国論を統一して当たらなければならぬということでございましたが、どういう形の国論を統一される手法をお持ちなのか、それに対して政府としてどのような力添えをしようとなさっておられるのか、この点を承りたいと思います。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 現場に行きまして根室地方の各方面代表の方々にいろいろお話を伺ったわけでございます。もちろん市長さん、町長さん、組合長さんとかいろいろございましたが、率直に言って、三十五年やったけれどもなかなか実現しない、人によっては島よりも魚ではないかという人もある、あるいは北海道でも地域によって二島返還論を言う人も中にはあるということで、これは特に市長さんでございましたが、そういうことでは困るから、四島一括返還というのはもう国民の総意なんだ、国会でも何回も決議をされておりますので、四島一括返還という国論をしっかりしてもらいたい、人によっていろいろなことを言われるということは相手方から見れば国論が割れているのではないか、四島一括返還なんというのは一部の人ではないかというような宣伝をされることは御承知のとおりでございます。そういうことでなくて、一括返還ということが国論であり、そのとき出ましたのは、総務長官が行きましたときにも、北方領土の碑という碑をつくってもらいたいというような御意見も実は出たわけでございます。     〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  また地元の人は、政府が根室地区に対していろいろ経済的な問題でございますとか地域開発の問題でございますとか、そういう問題についてめんどうを見てもらいたい、こういう北方領土という特殊なことがあって漁業の安全操業もできないのだ、それで、たとえば水揚げが少なくなるということになると町がさびれるとかいろいろな面でマイナス面があるのだから、政府として特に根室地区の振興ということを考えてもらいたいという御意見が出ました。それが国論を統一していく上に大切なんだということがございましたので、そういう地元の人の挫折感といいますか絶望感といいますか、そういうことがあってはいかないから、政府としても十分に考える必要があると思いますということを率直に総理に申し上げたのでございます。  いろいろな手段で、時がたてばたつほど日本は四島一括返還でもう固まっているのだ、これは日本の不動の姿勢なんだということをはっきりわかるようにさせてもらいたいというのが皆さんの御要望でございましたので、それを受けて政府としても十分にその点は考えていくということが、やがて領土返還につながっていくのだというふうに私は考えているわけでございます。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のいまのお言葉の中で地方開発に援助する、こういうことでございますが、来年度予算でもうそれが目に見えてくるのでございましょうか、どのくらいの規模なのでございましょうか。
  127. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは外務省で所管する予算ではなくて、場合によっては農林水産省の予算であり、あるいは飛行場であれば運輸省の予算であり、道路であれば建設省の予算でございますので、外務省からその予算についてどうこうは申し上げることができないということは、地元でも私はそのことを率直に話してきたのでございますが、北海道開発庁がいろいろ心配をしておられる、また地元から一括してたしか百八十くらいのいろいろな要求が出ておるのでございます。でございますので、これは私総理に申し上げたのでございますが、恐らく関係各省でそのことをこれから、要求は出ておるのですからどういうふうに処置するか相談していくというのが今後でなかろうかと思います。外務省の予算ではないものですから、私が先頭になってそれをまとめるということは、所管でないものですから不可能でございますが、私は関係省庁に、こういうことがあったということを総理にまず伝えたわけでございますが、自分としては強く訴えていきたいというふうに思っております。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一点、やはり大臣の談話の中に国際世論に訴えるという項目がございますが、具体的には何を指し、どのようなことをお考えになっているのでございましょうか。
  129. 伊東正義

    伊東国務大臣 領土の問題は日ソの固有の問題であることは間違いございませんから、精力的にソ連に話しかけていくということが二国間の問題だと思います。  ただこれは、世界の世論に、そうなんだ、やっぱりそうだということで日本の主張の正当性を理解してもらうということが非常に大切なことだと私は思うわけでございまして、その意味国連で私が演説しましたのは、もちろんソ連にもはっきりわかってもらうことのほかに、日ソ間で平和条約ができてないということはソ連がまだ四島の返還をしないことが原因なんだなということを世界のみんなに知ってもらいたいということで、国連でも私は演説をしたわけでございまして、どういう場がいいかということはいますぐに具体的には御返事申すほど固まってはおりませんが、そういうことを主張するに最もふさわしいような機会をとらえて世界の人にもわかってもらうという努力をすべきだというふうに私は考えるわけでございます。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 日ソ間では、十二月二十七日でございましたか、ソ連のアフガン進駐以来、オリンピックの問題、経済の問題そのほか、どちらかというと不幸な事態が続いておるのでございますが、これはやはりいつまでも続けさせるべきじゃないと思います。またそれがソ連のねらいでもないと思いますし、日本もまたそれを願ってないと思いますが、なお大臣のおっしゃったような厳しい事態が日ソ間にあると思います。大臣はそれをどのような条件になったら両国間の本当の友好関係確立の形になるんだろうか、そしてまた、その時期はいつごろと踏んでこれから対ソ交渉を進められるのか、そういった点につきまして、抽象的で結構ですからお話を承りたいと思います。
  131. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連が日本の大きな隣国として、日ソの関係というものが外交の一つの大きな柱であるということは、先生おっしゃったとおりでございまして、日本としましては、相互理解の上に日ソ関係が円満に続くということは本当に心から望むところでございますが、いまの状態は、日ソの共同宣言で国交が回復しましてからも暖かいときもあり冷たいときもありということでございましたが、いま冷たいときであることはもう間違いございません。  われわれとしましても何とかこれを打開していくということが必要だと思うのでございますが、現状は北方領土の返還の問題があり、またそこに軍備の充実をソ連がしたということは、本当に日本の人の顔を逆なでするような感じがする。グロムイコさんにも、そのとおり逆なでするようなものだということを言ったのでございます。  もう一つは、アフガニスタンの軍事介入ということで、世界の平和に非常な脅威だ。これは世界全部といいますか、国連でそういう認識で圧倒的な多数で撤兵の決議がされたというようなことでございまして、日ソ二国間のほかにもそういう世界的な視野で考えなければならぬような問題もあるわけでございますが、これはかかって日本がやったのじゃない、ソ連側のことで冷たくなってきているということは間違いないわけでございます。  いろいろな経済的な措置をとったのでございますが、われわれとしましてはその主張は間違いじゃないと思いますので、正しいことは筋を通して主張する、何とかソ連も理解してもらいたいというふうに思うわけでございまして、たとえば、それじゃ領土問題を含んで平和条約の交渉をしようとかそういうことも一つのあらわれだと私は思うのでございますが、どういう態度でソ連側が出てくるか、われわれもソ連の新聞に出ました日ソ共同宣言の動き等もいま注視しているということでございまして、いつまでということになりますと時期は非常に申し上げかねますけれども、やはりそういう話し合いができる環境が来ることをわれわれも本当に心から期待しているというような状態でございます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 本当に御苦労なことだと思いますが、国民も大変このことに関心を持っておりますので、どうかせっかくの御尽力をぜひお願いいたしたいと思います。  時間が参りましたので、これをもって質問を終わります。ありがとうございます。
  133. 奥田敬和

    奥田委員長 中路雅弘君。
  134. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に、大臣お尋ねしたいのですが、これは今月の二十四日の参議院の安保沖繩・北方特別委員会で、アメリカのスイング戦略の展開に対応してアジア太平洋の安全に日本が大きな役割りを果たす必要性を述べられたわけですけれども、この問題自身について後からもう少し具体的にお聞きしますが、これと関連して、外務大臣がここで述べられている、日本がアジア西太平洋の安全に寄与していく上で現在の憲法が障害になっているというふうに認識しておられるのかどうか、最初にちょっとお尋ねしておきたいと思います。この中でも述べておられるのですが、もう一度確認しておきたい。
  135. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃったのは、「中東地域の平和と安定のためにアメリカが同地域における海上航行の安全等を確保するためインド洋への米軍展開を増大しておりますが、その結果、アジア西太平洋における米軍軍事力を割くことを余儀なくされております。」という客観的な事実は述べておりますが、「このような状況においてわが国としてなし得ることは、軍事大国にならず専守防衛を貫くという国民の決意に従い、あくまでも憲法の枠内で、国民の理解を得つつわが国の自衛力の整備を促進し、日米安保体制の一層円滑で効果的な運営を図っていくことであります。」こう言っておるのでございまして、日本が西太平洋の方へどこかへ行ってどうしようということを言っているわけじゃないのでございます。客観的な事実は一つある、そういうことはあるが、日本はあくまで平和憲法の枠内で、国民の理解を得ながら自衛力の整備を図って、日米安保体制の円滑な運用を図っていくんだ、こういう考えでございまして、ここで言っていることは、先生の御質問がありましたが、私ども考え方は何も他国に脅威を与えるようなことを考えているんじゃない。しかし他国から侮られるようなことじゃなくて自衛権の最小限度の整備をしようということを言っているわけでございまして、憲法が足かせになっているとかそういうことじゃないのです。日本の憲法の枠内で考えていくということを言ったわけでございまして、その点は誤解のないようにお願いします。
  136. 中路雅弘

    ○中路委員 ここにも述べておられるように「憲法の枠内で」、いまも憲法が足かせになっているわけじゃない、ここで言われている自衛力の整備の促進も憲法の枠内だということで御答弁になっているのですが、これを外務大臣にできたらちょっと見ていただきたいのです。  十月二十七日付のUSニューズ・アンド・ワールド・レポート誌のマンスフィールド駐日大使のインタビューで、記者の質問でいま外務大臣が述べられたものと同じ設問があるんです。要約しますと、太平洋における防衛ですね、日本がアジアでまたアメリカの負担を引き受けていくということについて質問があるんですが、ここでマンスフィールド駐日大使が述べているのは、日本の憲法九条ですね、訳したものをそのまま読みますと、「日本国民の間にいまだに顕著に存在する反軍国感情のようなものが障害になっている。」憲法九条が日本がアジアにおける役割りを分担していく上で障害なんだということをここで駐日大使は述べているんですね。これはいまおっしゃった大臣の所見とも私は違っているというふうに考えるわけです。  駐日大使と言えば公式の他国の政府代表ですから、それがこうした発言をされるというのは、いわば内政干渉にも等しい発言ではないかと私は思うのです。こういうことでさらにアメリカ国民や議会の対日軍事要求を結果としてあおることにつながるということになればまた大変ですし、これはきょうこれからごらんになるかもしれませんが、私がいま紹介したのは事実なんで、こうした駐日大使発言について問題はないと大臣はお考えですか。
  137. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃったのは私まだ読んでおりませんからいずれ後で拝見をいたしますが、いままで私、マンスフィールドさんなり、ブラウンさん、マスキー国務長官、いろいろな人に会いましたけれども日本の憲法を改正すべきだというような議論は私に対しては一回もございません。そういう話があったことはございません。ですから私はいまおっしゃったことをちょっとおかしいなと思いながら伺っていたのでございますが、私に対してはそういうことはなかったわけでございます。  カーター大統領が大平総理に、日本にいろいろな制約があることは知っている、こういう話がことしあったわけでございますが、それも私は憲法上の制約とかそういうふうに解しておるわけでございます。日本にそういう制約はあるんだということをアメリカの人は皆知っていて、たとえば憲法を改正してくれなんということは一回もない。憲法の範囲内で日本の自衛力の整備ということに対して期待表明があることは事実でございます。  ただ、先生のおっしゃったようなそれは内政干渉になるのじゃないかとかいうようなことでございますが、私はそういう期待表明は、日米安保という条約で、危機が日本にあるというときには共同でそれに日米で対処するということの約束の条約でございますから、日本日本を守るための努力をすることについていろいろとアメリカ側が関心を持ち、期待を表明するということは、これは何も内政干渉じゃない。しかし、それにそのまま従うかどうかということは、これは日本が自主的に判断すればいいことでございますので、そこは日本が自主的に国民の皆さんのコンセンサスを得ながらやっていく。何回も申し上げますが、そういうことでございまして、ただアメリカがいろいろと期待を表明したことをもって内政干渉だというふうには私は見ておりません。
  138. 中路雅弘

    ○中路委員 その後にこうも述べておるのです。いまの憲法九条を名指して、九条が障害だと述べた後、「こういう障害はあるけれども、しかし日本人自身非常に印象的なやり方でこれらの障害をいま克服しつつある」ということを述べているのですが、これについては肯定されますか。
  139. 伊東正義

    伊東国務大臣 どうも伺っていてよくわからぬのでございますが、マンスフィールドさんがこう言ったということがよくわからぬのでございますが、九条、これは必要最小限の自衛権ということでやっているわけでございまして、日本日本の自主的な立場で自衛権で国を守る、必要最小限の自衛権を整備するということをやっていることに対するそれは評価でございまして、どういう人がどういう評価をするということは別にしまして、われわれとしましては、憲法で認められている範囲のことで整備をしているというふうに考えております。
  140. 中路雅弘

    ○中路委員 いまのは十月二十七日付ですからまだお読みになっていないかもしれませんが、これは御存じだと思いますが、マンスフィールド大使はこれだけじゃないのですね。  三月二十七日にハワイで行われたこれはアメリカの繊維製造業者の協会の年次大会の講演ですけれども、その中で、日本のいまのアジアにおける軍事的役割りを拡大することへの制約ということで三つのことを挙げているわけです。それは、憲法、非核三原則、武器輸出三原則。講演の全文がここにありますけれども、この三つを挙げてこれを制約だと言っているのです。今度はこの制約をさらにエスカレートして障害と言明されておるわけです。駐日大使がたびたびこういう発言を各所でやっているわけなんです。  こういう点はいま内政干渉とは受け取らないという発言ですけれども政府の公式代表として駐日大使としてやっておられるわけですから、外務大臣として、こうした問題についてはやはり、こういう発言をいかなる場所でもやっていくということについてはやらないように申し入れるべきじゃないか、話をすべきじゃないかと私は考えるのですが、いかがですか。
  141. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生の御意見でございますが、制約とかいろいろな話が出たということでございますが、私もその話の実情をよく知りませんから、大使に会いまして、国会で先生からそういう質問が出ましたよということをマンスフィールドさんに紹介はしておきます。
  142. 中路雅弘

    ○中路委員 私は再度お話ししておきますけれども、これは紹介じゃなくて、鈴木内閣は憲法を守るんだということを繰り返し公式には議会で言っておられる。伊東外務大臣は改憲の議員の組織の中には加わっていない二人の閣僚の一人なんですけれども、しかしここで、印象的なやり方で障害、憲法九条を日本自身がいま克服しつつあるということまで述べているわけですから、こうした問題については、やはりこうした発言は慎む必要もありますし、会われた機会にきちっと申し入れをされる、抗議すべきだということを、私はもう一度私の考えとして要請をしておきたいと思うのです。  時間をこれで余り取ってもきょうの主題でないのであれですが、先ほど読みました参議院の安保特での発言大臣の所感の表明ですか、この中で、先ほどおっしゃったように憲法の枠内ということでおっしゃっています。日本の自衛力の整備と日米安保の一層の円滑、効果的運用の必要性を強調されているのですが、アジアでアメリカがインド洋、ペルシャ湾に作戦展開をしたこの手薄の防衛力の整備の問題について述べられているのですが、外務大臣はどういったことを、防衛力の整備を自衛隊に期待されているのか、もう少し具体的に、整備を強調されている中身ですね、お考えをお聞きしたいと思う。
  143. 伊東正義

    伊東国務大臣 狭義の防衛の問題は私がお答えするよりも防衛庁長官がお答えした方がいいと思うのでございますが、先生も御承知のように、私がアメリカへ行きましたときもいろいろ防衛の話が出ました。そのときに言いましたことが御答弁になると思うのでございますが、日本にはやはり予算的な問題がある、それは最高限はGNPの大体一%にとどめるということで、そういう制約が片っ方にありますということと、いまの財政再建状況を私いろいろ説明しました。ただ、防衛の問題については、五十一年に防衛計画大綱というものをつくってあります、まだこれに達成はいたしておりませんので、防衛計画大綱をなるべく早く達成するように努力をしていくというのが日本立場でございますと。  ただ、さっき言いましたように、財政再建もあり、毎年毎年の予算でこれは問題になるわけでございますから、日本が予算を組んだときに、いろいろアメリカ側が考えを言われるような場合には予算を見てくださいということを私は言ったわけでございます。一%という最高の歯どめがある、毎年毎年の予算の問題がある、片っ方では計画大綱がありますので、それをなるべく達成していこうということで日本は着実に努力をしていくんだということをアメリカに言ったわけで、これは自主的に日本が考えてやっていくのだ、国民的なコンセンサスが要るのだというようなことを話し合いをしたわけでございまして、それが先生のいまのお答えになるかどうかわかりませんが、私の気持ちはそういうことでございます。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 それは答えになっていないのですよ。私がお聞きしているのは、具体的にアメリカが中東地域に、海上航行の安全等を確保するためインド洋方面に米軍が展開している、その結果、アジア西太平洋における米軍事力を割くことを余儀なくされていると外務大臣は述べて、その後に、憲法の枠内ですが、だからわが国の自衛力の整備を促進しなければいけないとおっしゃっているのですね。だからこれと関連して私は、アジア西太平洋における米軍事力を割く、ここが手薄になる、それについて自衛力の整備ということを防衛庁長官じゃなくて外務大臣自身がここで強調されているから、大臣は具体的に何か中身が頭にあるだろう、たとえば海上輸送路の問題とか軍事的に言えば対潜作戦とか、例を挙げましたけれども、そうした手薄になった問題で防衛上何を期待されているのかということなんです。
  145. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的になりますと防衛の専門家の方がいいと思うのでございますが、先生御承知のように、いま予算では在日駐留米軍の経費たとえば労務者の問題でございますとかも、できるだけ、条約で許される範囲内のものを協力しようということもございますし、施設面等につきましては、あの条約で考えられるものについて日本側で負担できるものはなるべく負担をして協力しようという考えも一つございます。もう一つは、防衛計画大綱がまだまだ大分残っておるわけでございますので、そういう問題の完成に向かって努力をしていくということが、ここにある自衛力の整備ということであり、日米安保体制の円滑な運営というのは、日本がそういう自助努力をするということをアメリカ側も評価するということでこの安保体制を円滑に運用していくことじゃないか、まずみずからがいま申し上げたようなことで努力することが大変大切だ、しかしそれはあくまで憲法の枠内だというようなことをここで言ったわけでございまして、船がどうとか大砲がどうとか戦車がどうとかということになれば、これはひとつ防衛庁の専門家から聞いていただきたい、こう思うわけでございます。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 大変限られた時間なので、防衛庁も来ていただいておりますから、具体問題で一つだけいまのに関連してお聞きしたいのです。  P3Cの問題ですが、十月十三日ですか、防衛庁が五十六、七年度の海上自衛隊に導入する対潜哨戒機P3Cの第一次分三機と予定の第二次分五機を厚木航空基地に配備するということを発表になっていますが、国防会議では四十五機ということがすでに決められているわけですね。簡潔でいいのですが、今後の配備の予定ですね、厚木に今度八機の配備ということになっていますが、計画についてお答えしていただきたいと思います。
  147. 池田久克

    ○池田説明員 現在P3Cの導入予定を進めておりますが、八機について厚木基地に展開したいという意思を持っていることは事実でございまして、関係の向きとの連携を現在とっております。  また、国防会議で四十五機について決定を見たことは事実でございますが、この決定は、すでに御承知と思いますけれども、そのときどきの財政事情等によって検討するということになっておりまして、この四十五機のうち、決まりましたものは五十三年度の八機と五十五年度の十機でございます。その余につきましては現在決まっておりません。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 防衛庁は地元の市の方に説明をしておることもここではしゃべってないのですね。地元の大和市に呼ばれて説明されている中では、いまお話しのように五十五年十機分、その後見込みとして六十年六機、六十一年七機、合計十三機、六十二年七機、六十三年七機、合計十四機、いまの八機を合わすと全部で四十五機になるのですが、一応配備の計画としてこれは地元の市議会に文書で報告されているじゃないですか、その説明を。やはり地元にまで文書で出していることぐらいは国会で説明してもらわなければ困るわけです。  配備の個所ですね、予定、いまのP2J等とかえていくわけですから、当然そこが、いまP2J、S2Fですか、これが配備されているところが対象になると思いますが、配備の対象の基地はどこですか。
  149. 池田久克

    ○池田説明員 まず第一点の地元等に詳細にそういう説明をしているということでございますけれども、そのような事実はわれわれ伺っておりません。  先ほどから申し上げましたように、すでに決まっておりますものは五十三年度の八機と五十五年度の十機でございまして、四十五機から残ります分をいずれ調達することは一応決まっていると考えておりますけれども、それをどの年次にどのような調達をするかということはいまだ決まっておりません。  また、われわれは、陸上固定翼対潜機、すなわちP2Jを主体とするものが減勢してまいりますので、これを交代していこうと思っておりますけれども、たとえばその中のP2Jについて申し上げてみましても、現在八十機保有しておりますが、P3Cについては現在四十五機ということでございますので、その他についてどうするかにつきましてもまだ決まっておりません。  配置場所につきましては、先ほどから申し上げましたように、当初の八機につきまして厚木に展開することをわれわれは予定しております。その余につきましては決定しておりません。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 いま挙げた数字は、地元の市議会議員も説明されたので皆知っているのです。P3Cの性能についても全部報告されているのです。私もその市議会から聞いたのですから、こういう報告をされたというので。部屋に説明に来ていただいたときにはお話がなかったから直接地元で聞いたら、ここまで市議会は説明を受けているということなので、それは事実なんです。  いまP2Jが配備されている八一尺厚木、鹿屋、下総それから沖繩の那覇基地、これは梯団を組まなければいけませんからばらばらに配備するということはないだろうと思いますけれども、ここがP3Cの今後の配備の対象として一応考えられるということに理解していいですね。
  151. 池田久克

    ○池田説明員 P3Cにつきましては四十五機の導入を予定しております。そしてP3Cは現在ありますP2Jを初めとする陸上対潜機と交代していく予定を決めております。しかし具体的な配置等につきましては、再三申し上げましたように厚木の当初の分以外は決定しておりません。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 いや、決定しているかどうかというのではなくて、交代するとすればいまP2Jがあるところですから、その設置されている五カ所が一応対象になるだろう、そこで、いつ、どこにするかということはまだ決まっていないにしても、それが対象になるだろうということを聞いているのが一点。  そうしますと、厚木の場合にいまP2Jを初め二十機余り配備されていますから、可能性としては、いまの八機だけではなくて、場合によっては二十機程度までは将来ずっと配備される可能性もある、そういうふうに理解してもいいですね。これが二点。
  153. 池田久克

    ○池田説明員 第一点の、P2Jが現在展開されている基地が検討の対象となるかという点でございますけれども、これについては先ほども申しましたように決まっていないと申し上げるわけでありますが、もちろんP2Jが配置されていない基地に考えるということはなかなか考えにくい問題だと思っております。  厚木の将来の配備機数でございますけれども、現在は、すでに地元と現在話しております八機について決まっておりまして、それ以上のことについては決まっておりません。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 時間がなくなっているので、これから本論に入ろうと思ったのですがあれですが、あと二、三問お聞きしておきたいと思うのです。  P3Cの性能なんですが、これも私の方から説明を一度お聞きしたのでそれを話しながらお話ししますと、P2Jに比べて、もちろんコンピューターを入れるとか質的な違いは当然あるのですが、行動エリア、行動能力についても相当アップになるんじゃないか、範囲が広がるんじゃないかということでお話ししましたら、大体いまはP2Jが小笠原の手前ぐらい、いわゆるオペレーションを八時間としてそのくらいだ。四百マイルぐらいですか。それから硫黄島、六百マイルというお話がありましたけれども、これは「航空情報」「航空ジャーナル」に詳しく性能が出ているのですが、これを見ますと、最大速度、哨戒速度等ずっと書いてありますけれども、哨戒行動半径ということで、これはステーション三時間として二千四百九十二キロメートルというのが出ています。P2Jが千四百八十一キロメートルですから、これは「航空ジャーナル」と「航空情報」にも出ているわけですけれども、これで見ますと行動半径が相当広がることは事実なわけですね。  いまどういう展開をしているかということについてきょう詳しくお尋ねするのではなくて、この能力から言えば、大体東京湾で見ますとバシー海峡ぐらいまで展開できるエリアを持っている航空機だと思うのですが、いかがですか。
  155. 池田久克

    ○池田説明員 ただいま御指摘の「航空ジャーナル」等についてはわれわれも存じ上げております。先生は十分御承知と思いますけれども、この対潜哨戒機というのは飛べばいいというものではございません。ある一定の距離に進出いたしまして、大切なことはそこで何時間オンステーションするかということであります。オンステーションと申しますのは、飛び上がりまして、ソノブイ等をまきまして、捜索をいたしまして、これも一回で済むわけではございません。数回やる必要があります。そしてそれをコンピューターを使いましてようやくターゲットを探して、これを局限するのにかなり時間がかかります。そして必要な場合には必要な措置ということに結びついていくわけでありますけれども、これに相当の時間がかかります。  現在のP2Jのオペレーションでも八時間程度それにかかります。往復の飛行時間を入れれば十時間かかります。現在のP2Jでも、十時間という非常につらい飛行をやっております。P3Cにつきましても基本的には同じでありまして、われわれは標準的には十一時間の飛行を予定しておりますが、進出時間の往復で約三時間とりまして、約八時間の哨戒時間をとります。  したがいまして、これはP3Cを採用いただくときから検討いたしましたけれども、P3Cのいわば行動半径といいますか、それは約四百マイルと予定しております。そしてその地域で八時間前後の哨戒をして初めてP3Cの役に立つわけでございまして、どうも先生の御指摘の趣旨が私にはよくわかりません。  なお、この「航空ジャーナル」でも書いてございますけれども、行動半径というのは一概にそういうふうに数では言えないので、どういう哨戒時間をとるか、どういう兵装を積むか、そういうことで考えなければいけないということは本文に書いてあるように私の方は了承しております。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 これは改めて論議を時間をいただきましてしますが、いまここで質問しているのは、私は防衛庁の方に説明を聞いたので、これはいまということじゃなくて頭に有事ということがっきますけれども、海上交通保護を考えた場合に、エリアについてバシー海峡までP3Cが行動できるということはあり得ないとは言えないという言い方で説明を受けているのですが、この点はいかがですか。
  157. 池田久克

    ○池田説明員 それは大変失礼いたしました。  われわれは航路帯につきまして約一千マイルの哨戒を予定しております。しかしそれは厚木から一千マイルと申し上げているわけではありません。われわれは沖繩の基地も利用いたします。バシー海峡といいましてもかなり広いわけでございまして、大体四、五百マイルとわれわれは沖繩から予定しております。  なお、先ほど硫黄島へのP2Jの訓練に言及されまして、約六百マイルとお話がございましたが、これはあそこへ飛んでいって飛ぶということでございまして、ただいま私が御説明したのとはちょっと趣旨が違っております。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 いまとっかかりなんで、改めてもう少しこの問題を質問をすることにして一応終わりたいのですが、最後に一言だけ。  いまのこの厚木の配備の問題で、御存じのように関係の市町村、県も当然ですが、あるいは今度初めてですが、団地の自治会等でも非常に抗議、反対のあれが上がっているわけです。特に厚木の航空基地は全国でも類例のない神奈川県の内陸の軍用飛行場で、しかも人口過密の中にある飛行場ということで不適格性が強いということがいままで指摘をされ、たびたび墜落事故あるいは騒音問題も起こしているところでして、これは現地の横浜防衛施設局が大和市と四十六年の五月、四十九年十二月、四十八年十二月、三回覚書を交わしていますが、中身を見ますと、こうした配備の場合に地元の協力ということを言っていますし、整理縮小ということを覚書の中でいずれも言っているのです。こういった点からも、一方的な通告で、地元に何の相談も話もない、協議もない、配備をされる。あるいは整理縮小ということを約束しながらどんどん施設もつくっていく。そして将来もこれが配備が強化されてくれば恒久化につながってくる。神奈川県自身もたびたび申し入れているように、この軍事基地についてはジェット機の騒音中止の問題とあわせて全面的な返還を強く要求している基地でありますから、いまの配備についてやはりこうした地元の意向を十分尊重していただきたいと思いますし、まず一方的な通告で強行するということがないように、ひとつ十分協議をしていただきたい。最後にこのことだけ念を押したいのですが、いかがですか。
  159. 平晃

    ○平説明員 P3Cの配備でございますけれども、これは現在配備されておりますP2Jの減耗更新にかわる代替の配備でございまして、このP3Cの配備の必要性について地元の御理解をいただくために、配備計画あるいは性能、騒音度、またこれに伴う関連施設の整備等について地元に御説明し、あわせて文書によって御通知申し上げている次第でございます。P2Jの減耗更新ということでございますので、新たに航空機が従来よりもふえるという問題でもございません。  また、四十六年に海上自衛隊が移駐する際に、当時の将来を見越した規模として約二千名、航空機五十機という基本的な了解をいただいておりまして、この規模を上回るような増強ではないということで地元にも御理解いただけるのではないか、このように考えております。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 これで終わりますが、一言言っておきますと、いまお話にありました配備の問題でも、当面は千五百名という約束だったのです。これで五一航空隊が五百名来ると、二百五十減る分があっても千七百五十名になるのです。だから地元では、約束の当面千五百というのがこれでもう千七百五十になるではないか、いっこの当面が消えたのだというのを、私はきのうも聞いたのですが、地元ではそういう声も強く出ているのです。だから、この配備については十分地元の意向も聞き、協議もしていただきたい、再度このことを要請して終わりたいと思います。
  161. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前十一時三十分理事会、正午より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会