運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-10-22 第93回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十二日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 松本 十郎君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       太田 誠一君    北村 義和君       小坂善太郎君    坂本三十次君       竹内 黎一君    中山 正暉君       井上  泉君    大久保直彦君       林  保夫君    金子 満広君       中路 雅弘君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務政務次官  愛知 和男君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房審         議官      山田 中正君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         運輸大臣官房観         光部長     角田 達郎君  委員外出席者         警察庁刑事局国         際刑事課長   水町  治君         警察庁交通局交         通指導課長   矢部 昭治君         警察庁交通局運         転免許課長   越智 俊典君         防衛庁防衛局調         査第二課長   宝珠山 昇君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       千秋  健君         法務大臣官房参         事官      山本 達雄君         外務省北米局安         全保障課長   丹波  実君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 十月十六日  金大中氏救出の緊急措置に関する陳情書外三件  (第一四号)  朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書外四  件  (第一五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  千九百八十年の食糧援助規約の締結について承  認を求めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 私は外務委員会で質疑するのは初めてでありますし、わが党の外交問題についての権威ある先輩方々の後塵を拝しての質問でありますから、まことに幼稚な問題を論議するかもしれませんけれども、御了承願いたいと思います。  いまの日本情勢というのは、国際的にも、そしてまた国内の財政状態についても非常に危機的な様相が強いわけでありますが、私はそういう中で、わが郷土の先輩のかつての濱口雄幸先生の、あのときの国会における最初の施政方針演説を見たところ、冒頭に、わが国の外交関係は、こういうことが振り出しになっておるわけです。「先ヅ帝国外交関係ノ大体……」。ところが、日本鈴木内閣は初めての臨時国会で、外務大臣のいわゆる外交に対する方針の説明も、そしてまた、みずからの施政方針の中におきましても外交関係というものをきわめて軽視をしておる。五十年前と今日の日本とは格段の違いがあって、いま日本日本だけでは生きていけない。あらゆる世界国々との友好関係を持ってやっていかなければ、日本政治経済も立ち行かないわけですが、そういう中で伊東外務大臣は、今日の日本外交というものをどういう方向、どういう基軸において対処していくのか、そして外交内政との関係をどう位置づけておるのか。国会で不幸にしてあなたの所信表明を聞くことができなかったので、私は簡潔にひとつ所信をお聞かせ願いたいと思うのです。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま、ずっと前に亡くなられました濱口雄幸総理演説を引かれまして、外交というものをまず述べておられる、外交重要性ということを非常に強調しておられるということの御引用があったわけでございますが、今日、日本は武力で外国援助をしたりどうしたりということはできない。平和外交ということで、専守防衛ということが憲法に大きく規定をされているわけでございますので、私どももその線に沿いまして日本の安全ということを考え、あるいは世界の中での協調友好ということを考えていけば、外交というものが前にも増して非常に重要な役割りを果たさなければならぬというふうに私は考えておるわけでございます。  総理施政演説あるいは私の外交方針演説がなかったということでございますが、今度の臨時国会の性質上、外交財政演説が省かれたわけでございまして、来るべき通常国会では、私は日本外交の取り組み方、考え方を内外にはっきり伝えようというふうに思っておるわけでございます。総理演説の中でも、全体の構成との関係とか、あるいは政治に対する取り組み方、姿勢の問題でございますとか、いろいろ問題がございましてああいう構成になったわけでございますが、私は外交というものについては、先ほど述べたように非常に重要なものだ、日本として外交の果たすべき役割りは非常に大きいというふうに感じておるわけでございます。  日本外交としましては、簡単に申せば、一貫して日米安保体制ということをもとにしました日米友好関係基軸にしまして、政治経済に理念を同じくしていく西側の一員として行動していく、それが基本でございまして、地域地域によりましては政治体制の違うところももちろんございます。そういう国々ともできるだけ友好協調関係を保っていく。資源のない日本でございますから、もう平和外交世界の平和、安定なくして日本の平和はないのだということで、どの国とも努めて平和、友好協調を保っていくということが日本外交基本であろうと思います。外交というものは国民から理解をしていただかなければいかぬわけでございますし、また国民外交というのも大切でございますので、内政を十分踏まえまして外交に当たるというのがわれわれの考え方でございます。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 平和外交に徹して、資源のない日本としては諸外国友好関係を深めてやっていく、そのことは非常に結構でありますが、日本外交基軸はと言うと一、日米安保基軸としてと、俗な言葉で言えばあほうの一つ覚えのようにそのことが絶えず前段に出されて、そして後言われるのですが、日米安保基軸と言いましても、日米安保に対する考え方というものは非常に変化を来しておるのではないか、こういうふうに考えるわけです。  大平前総理が死亡の直前に言われたのですが、日本は力量が低下しておる今日のアメリカを支援し、自由な世界擁護に相応の貢献をする。そのかわりにECと連携を強化し、米ソ対決の間に相対的な自主性を確保する等の路線を志向するようにやった、大平総理の談話を聞く中で私にはそういうように思われてきたわけですが、日本外交路線を今日の段階でどう考えているのか。対米協力路線の新段階ととらえてこれを見るのか、それとも過去の対米依存一辺倒から抜け出して一定の自主性を持った平和外交推進を目指すものと評価するか、これはそれぞれこの姿勢についての評価の違いはあろうと思うわけですけれども日米友好基軸とし、安保基軸とするという従来の考え方からさらにこれは変化するというか、そういう大平前総理国際感覚といいますか、外交に対する考え方というものは、大平外交を受け継ぐあなたとしてはどう評価をして考えておられるのか。つまり新たな対米協力関係をつくり上げなければいかぬ、あるいは日本としてはアメリカの枠から離れて、そしてわずかながらでも日本としての自主外交の道を歩まなければならぬという考え方があるのではないか、そのいずれにあるのか、その点ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  あほうの一つ覚えのように、こうおっしゃいましたが、これは御批判でございますが、日米安保体制を中心にしまして日米友好関係基軸だということはもう日本外交として一貫して変わらぬという原則でございますので、私どもはそのことは強調してやまないところでございます。何か安保体制が変わったのかというお話でございますが、安保条約自身の問題は、これは変えようとか変わったとかいう考え方は私は全然持ってない、いまの安保条約でやっていくべきだ、こう思うわけでございます。  ただ、国際的な環境が若干変わってきていることはございます。一つは、アメリカ先生おっしゃいましたように昔よりも力が弱くなったということは、私は否定できない事実だろうと思うのでございます。そういう環境もございますし、またその後、これは最近の事情でございますが、ソ連軍備拡充に伴ってソ連方々で非常に影響力を行使している。端的な例がアフガニスタンの軍事介入でございますが、こうしたような環境もあるというような、周囲の環境が変わってきたことはございます。安保の運用の面でも、たとえば在日米軍の経費を条約の許せる範囲内で従来よりもよけい負担する、日本経済力がこれだけついてきましたので、ある程度在日米軍駐留費をいままでよりもよけい負担するというようなことがあったことは確かでございます。そういう若干の変更はございましたが、安保条約というものにつきましては考え方は同じでございます。  それから外交自主性の問題を先生おっしゃったのでございますが、私はアメリカへ行きましても、いろいろな期待表明されたときも、外交というものは日本国民がまず自主的に考えることなんだということをアメリカの要路の人に常に言っているところでございまして、外交はまず自主的に考えなければならぬと先生おっしゃいますことは私は全く同感でございます。  つい最近もボリビアの政権の承認ということにつきまして、黙示の承認をやって経済協力もやっていこうというふうなことを日本が決めたわけでございますが、これはアメリカや何かはまだ反対でそういう承認はしないというような状態のものもございますし、先生のおっしゃいました自主性のないということではなくて、やはり日本日本として自主性を持って外交考えていくということは当然であろう。そして平和外交を推し進めていくということが外交に対して取り組む当然の態度だというふうに思っております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 その安保評価安保そのものについては変わりはないという評価、さらにまたアメリカとの協力関係についてはこれは堅持していく、しかし一方においてやはり自主性というものを持った外交路線を進めていく、平和外交に徹していくという見解に対して、あなたは日本防衛力を強化するということを防衛庁の長官でもないのによくおっしゃるわけですが、平和外交推進を使命としているのに外務省はすぐ防衛力を強化しなければいかぬような発言をされるのを私は新聞報道で見たわけですが、そういうことはないですか、あるのですか。
  8. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのお話でございますが、防衛の問題に限って言いますと、大平総理がこの五月カーター大統領に会いまして、いろいろ向こうからも日本に対する期待表明があったときに、防衛の問題は自分の国の問題として真剣に取り組まなければならぬ問題だということを大平総理が言ったのでございます。日本人として自分の国の問題を考える場合に、当然防衛の問題と真剣に取り組むということは何省といわず大切なことではないか、私はそれはその限りそう思うのでございます。特に私ども防衛庁より一歩先に出るとかそういうふうなことは全然考えていない。国の総合安全保障という場合には、非軍事的な面では外交がうんと働かなければならぬわけでございまして、私どもはそっちで一生懸命努力をする。また憲法にあります専守防衛でございますから、日本の国が外国から侮られることなしに、ただし脅威を与えないという程度の防衛力充実ということは、これまた当然だろうという考えでございまして、私はそういう考えを持っております。  ただ、外務大臣でございますから、平和外交に一生懸命努力するということは私の役目でございますので、そういう考え外交をやっておるわけでございます。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 ここで防衛論議をすると時間も経過をするわけでありますけれども、あなたはこの前の委員会でも憲法擁護の強い姿勢を打ち出したわけですが、防衛ということは軍事力を強化することであり、軍事予算を多くつぎ込むということになるわけです。そういうふうな努力をすることが今日の日本憲法から見ても必要であるかどうか。その論議はさておくとしても、やはり外務省としては自分の与えられた任務、つまり平和外交に徹して、諸外国との間に紛争関係の起こらないような友好関係をつくり上げていく外交努力というものがまず優先をしないか、こう思うわけですけれども外務大臣どうですか。
  10. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃったように、なるべく世界紛争が起きないように、紛争が起きた場合にもそれが小規模の範囲で終わるようにというような努力、また日本がその紛争に巻き込まれないようにするというふうな努力をすることは当然外務大臣役目でございますので、東南アジアへ参りましても南西アジアを回ってもあるいは国連でも、そういう趣旨で私は行動してまいったのでございまして、極力世界で平和が保たれる。それが日本の平和、繁栄につながるのだという鉄則で、それを大原則にして行動してまいるというのが当然だと思うわけでございます。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 私ども先般物特中東諸国を回ったのですが、パキスタンに行ってもあるいはイラクへ行ってもチュニジアへ行っても、どこの国でも日本というものに対して非常な期待感を持っておるわけであります。そうして日本との友好関係を強く求めておる。その状態から考えて、日本外交というものが、もっともっとこの地域人たちとの交流を深めるような、そういう体制を強化することが必要ではないかということを私どもは痛感したわけであります。  そこで、これは前の平和の問題ですが、イランに対してアメリカが、人質を解放されるということを条件というか、そういうことを見越していろいろ肩入れをするような報道がなされておるわけですが、これは日本外交としては困ったものだ、こう私は思うわけです。アメリカ右向けと言うから日本が右向くというのではなしに、ここでこそ日本自主外交の線を、平和外交の旗を高く掲げなければいかぬと思うのですが、この動向についてはイランイラクの問題について日本がどういう立場をとるのか、明確にお答え願いたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東国務大臣 イランイラクのことを申し上げる前に、先生お回りになりまして、日本に対していろいろ期待が大きいというお話がございましたが、日本としましては開発途上国援助等に極力財政が許す限り協力するというようなことは当然やりまして、特に南北問題の解消といいますか、そういうことには努力をして、世界の多くの国々平和友好関係を結んでいかなければならぬということで努力をしてまいります。  また、実はきのうの朝国連安保理事会の非常任理事国として百四十七票のうち百四十一票というような非常に高い、かつてない投票で当選をしたわけでございますが、これも日本に対する世界期待が非常に高い、強いということを私は感じたわけで、非常に責任が重いなという感じがするわけでございます。安保理というのは世界の平和、安定に非常に力の及ぼし得るところでございますので、日本としても世界の平和、安定のために一生懸命努力してまいりたいと思うわけでございます。  それから、後段のイランイラク紛争につきまして、日本は実は再三にわたってイランイラクに対して介入をしない、中立だ、この問題が一日も早くひとつ平和的な話し合いであそこに平和が来るように、テーブルについて話し合うように、あるいは仲介を受けるようにというようなことを何度も当事国にも述べ、またイスラム会議議長国でありますパキスタンにも今後とも努力をしてもらいたい、仲介努力をしてもらいたいということも言い、あるいは国連の場でも、安保理事会でも同じことを言い、グロムイコ外相にも実は先月二十四日に会って、大国は介入すべきじゃないというようなことを私は言ったのでございまして、イランイラク紛争には介入しない、中立だということが一貫した日本態度でございます。  最近アメリカカーター大統領演説をしたということがございますが、あれは人質問題に関連があっての発言と私どもは見ておりますし、またアメリカの側からも大使館の方にそういう連絡もございます。これは人質の問題についての発言であって、アメリカとしては正式にはあのイランイラク紛争には介入しないという態度は変わらないということ、実はわれわれはそういうふうに理解もしているわけでございまして、日本は私は、どの国がどうだからどうということじゃなくて、あのイランイラク紛争に第三国は介入すべきじゃない、あくまでも平和裏に二国間の話し合いで、あるいは仲介を入れて適当な場で平和的に解決するということが大切だというふうに考えておる次第でございます。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣がそういうふうにお考えになっておるということは結構なことですが、そういうお考え方から考えていきますならば、ホルムズ海峡安全確保のために西側諸国合同艦隊をつくる、それに日本自衛隊が加入するとかというようなことが、きのうの安保委員会論議をされたというようなことを聞くわけですが、そういうことは好ましくないことじゃないですか。大臣としてはどうお考えになっていますか。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 きのうの安保委員会では、自衛隊がそこに加わるというようなことを政府が言ったのじゃ全然ございません。そういうことはあるのかどうかというような御質問があったのでございまして、共同パトロールという計画があるということは私どもも知っておりますけれども、それが具体化されたということも聞いておりません。まだ聞いておりませんし、実は日本に対しまして海上自衛隊の船を参加させてくれとか、あるいは費用の分担をしてくれとか、そういう意味の協議は一回もございません。アメリカがイニシアチブをとって相談をする場合はすると思うのでございますが、アメリカ日本軍事力がああいうところに行って働くというようなことはできないということは十分知っていることだと思いますので、そういう話はいままで一回も協議を受けたことがないわけでございまして、協議を受けて、そこに自衛艦が出ていくというようなことは、これは法律論からいきましてもできないことでございますので、われわれはそういうことは全然考えておりませんということをきのうもお答えをしたわけでございます。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 パトロールだからいいということじゃないでしょう。合同パトロールをしておって何か不審なものがあればそれをとがめるというようなことであるし、そのことは一つ戦争行為に参加することになるわけですから、そういう点については、イランイラク紛争に対して厳正中立態度を堅持して、両国のそういう状態が解決することを望んでおる日本外交としては絶対そういうことがあってはならない、こう思うわけですが、その点について大臣の決意というものを、簡単でいいですからお聞かせ願いたいと思います。
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 その点は先生と同じ考えでございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 これだけ日本の国際的な地位が高まっておる、後で大臣国連における演説等についてまた質疑いたしますが、本当に安保理事会でもあれだけの多数票を受けて、そうして大臣としては、予想外に多くの支持を受けたということはそれだけ日本の国力というか日本の存在というものが世界の中で評価されておる証拠だ、こう言われるわけですが、それにこたえるためのいまの日本外交体制というものは一体どんなものであろうか、こういうふうに考えて、いろいろ調べてみますと、まことにお粗末千万。この間中東を回ったときにも、アラビア語を言える者が何人いるかというと、たとえばサウジなんかでもほんの十二、三人の大使館の中で一人しかいない。あとは片言まじりのアラビア語しか言えない。同僚青木委員からも指摘されたわけですが、そういう状態にあるということについて、私はもう時間がありませんのでそのままずばり大蔵省にお尋ねするわけですけれども、俗に言う防衛予算をGNPの一%にする、〇・一%引き上げるということをすると一体どれだけの金が要って、それを日本外交陣を強化するために使おうとするならば、たとえば人を例にすると、外交業務を担当する者を何人ぐらいふやすことができるか。そういう計算をなさったこともあると思うのですが、大蔵省の御見解を承りたいと思います。
  18. 西垣昭

    西垣政府委員 お答え申し上げます。  御質問の御趣旨は、外交重要性を十分に認識した上で必要な予算を計上しておるか、こういうことだと思います。  第一の外交重要性の問題につきましては、現在の国際情勢から言いましても、日本の置かれております立場からいきましても、外交重要性というものはだれも否定できないと思います。私どももそれにつきましては十分な認識の上で予算あるいは定員につきまして検討をし、結論を出しているつもりでございます。  それで、御承知のように現在の財政は非常に厳しい状況にございます。公務員の定数につきましても、少しでも減らすようにという要求が非常に強いわけでございますが、その中におきまして私どもといたしましては、外交機能が低下するようなことのないように十分に外務省から実情を伺い、内容を検討させていただきまして、苦しい財政の中では精いっぱい予算定員につきまして配慮をしているつもりでございまして、今後とも十分努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうお気持ちがあられるとするならば、来年度の予算編成でどういう姿であらわれてくるのか、また外務省がどれだけのものを要求してそれがどれだけ切られたのか、私はまたそのときにお尋ねすることにしたいと思うわけですが、軍事的な面のみに防衛というものを考えておるところに問題があろうと私は思うのです。だから、日本防衛というものを平和外交に徹する、この前同僚高沢議員が言ったようないわゆる全方位外交というものが非常に大事だと私は思うのです。防衛軍事面だけで考えておるから、防衛予算だけは枠を外すだとか、外務省一般官公庁と同じような定員でこれを削減するとかいうような予算の見方をするでしょう。きのうの国会自衛隊の人員の増加の法案が通過したことはあなたも御承知だと思うわけですが、防衛というものを一体どう考えておるのか、大蔵省の御見解をひとつ承りたいと思います。
  20. 西垣昭

    西垣政府委員 国の安全保障のためには、防衛ということだけでなくて平和外交推進が大事であるという認識においては全く同感でございます。五十六年度予算につきましては、現在御要求を伺いながら査定作業を続けているわけでございまして、まだ結論を申し上げるわけにいきませんが、従来予算定員につきましてどれだけ配慮をなされてきているかということにつきまして、五十四年度、五十五年度の姿を御説明してみたいと思います。  外務省予算は、最近におきましては経済協力、特にODAの強化ということもございまして大変な伸びでございます。一般会計の伸びが五十四年度一二・六%でありますのに対しまして、外務省予算は一八・四%というふうに伸びております。それから五十五年度につきましては、一般会計が一〇・三%の伸びであるのに対しまして一八・一%というふうな伸びを示しております。  それで、この一般会計の伸びというのは、御承知のように国債が累積しておりまして、その国債の元利払いのための当然増的な国債費、それから国税三税の一定割合ということで出てまいります地方交付税が先取りになりますので、そのために非常に伸びが大きいわけですが、その他の政策経費等一般歳出ということでくくってみますと、五十四年度の伸びが一三・九%、五十五年度の伸びが五・一%ということでございまして、外務省の五十四年度一八・四%、五十五年度の一八・一%という予算の伸びはきわめて大きいということが言えるかと思います。  それから定員の問題でございますが、御承知のように定員削減ということで計画的に定員の削減を進めております。それで一律に削減を進めながら、必要なところには増員を認めるということで従来やってきているわけでございますが、その結果、四十二年度末と五十五年度末を比較してみますと、一般省庁、これは国立学校でございますとか病院、療養所を除いたものを言っておりますが、この定員が全体として六%減少しております。つまり、こういった分野におきましては、仕事は減っていないにもかかわらず人を減らしながらやっていただいているという状況でございますが、その間に外務省では二七%の定員増という結果になってきております。それから五十五年度についてそれを見ますと、総定員が七百七十人純減しておりますが、その中で外務省は八十人の増員ということで、外交につきましては相当な配慮がなされていると言ってよろしいのではないかというふうに私は思います。  それから、先ほど防衛の別枠ということをおっしゃいましたが、これは予算要求の枠の話でございまして、査定におきましては、同じように十分に検討して結論を出すということでございます。なお、予算要求の別枠という意味におきましては、外務省におきましても、ODAを中心にいたしましてかなりの別枠を認めているところでございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたが言われるようなことでありましたならば、日本外交体制というものは諸外国と比較をして遜色のない外交布陣であるはずですけれども、これは主要国の外務省定員とかあるいは外務省の事業の伸びに応じてふやしていかなければ、昭和四十二年とか五年とかいうような年と今日との十年の違いというものは、これは日本の国際的な地位というものは大変な変化を来しておるわけですから、大変な飛躍をしておるわけですから、やはりそれに相応した外交体制がなければ日本の国力を軽視をされる。日本はあれだけ平和憲法で戦争放棄をうたっておるのに防衛予算だけはどんどんふくらせていって、それで肝心の平和外交の最前線で働く外交官の定員は諸外国から見れば本当にお粗末千万ではないか、こういうことが言われるわけですが、あなたはいまの諸外国日本外交官とを比較して、数を見て、これは日本はもっとやらなければいかぬと思うのか、あるいは日本はこれでもう上等だ、いかぬときには自衛力でやるわ、戦闘力でやるわ、安保でやるわ、こういうふうにお考えになっておるでしょうか、簡単にお答え願いたいと思います。
  22. 西垣昭

    西垣政府委員 外交に携わっております在外定員の数が諸外国と比べてどうだという議論につきましては、私どももここのところずっと外務省からいろいろと資料をいただきまして検討いたしております。率直に申しまして、日本よりもはるかに多く在外定員を持っている国がかなりございます。そのことは否定できません。それから、今後充実を図らなければならぬ必要性がないとも私ども思っておりません。  ただ、私ども考えなければなりませんのは、そういった事柄も、現在日本が置かれている財政の状況でございますとか、国内所管庁とのバランスでございますとか、そういったものの中で判断をしていかなければならない。と同時に、やはり財政力ということでございますから一挙にというわけにはいきませんので、そのときそのときの許された状況のもとで何ができるかということで着実に検討を続けていくことではないかというふうに考えております。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 確かにそれは、そのときの置かれておる情勢の中でやるのはあたりまえのことです。しかし、あなたも日本国の公務員ですから、日本憲法を遵守する義務があるでしょう。日本憲法には戦争放棄の平和条項がちゃんとあるわけで、そういう中で国の全体の予算を見る場合に、あなたに言っても無理かもしれぬけれども、あなたも優秀なエリート官僚ですからいずれは局長、次官になり、あるいは自民党から公認で議員になるかもしらぬ。しかし、やはりそれだけの定見というものを持ち思想というものを身につけた大蔵官僚であってほしい、こう思うわけです。  防衛庁予算についてはかなり甘く査定をし、きのうあたりも、定員削減の一方で日本の公務員の三分の一が防衛庁関係の職員の予算だというように聞くわけですが、そういうものから比較をいたしまして、余りにも日本外交体制というものが不十分であるということを指摘せざるを得ないわけです。言いわけはいいです。これではどうもいまの日本外交体制が不十分であることは、私が資料を提供するまでもなく外務省から資料をもらっておると思うのですけれども、金があるどかないとかということは別にして、これでは日本外交体制が今日の日本の国際的地位から見ても不十分だという考え方、とらえ方をしておるかどうか、あなたも次の委員会に出なければいけないそうですから、その点だけお聞きします。
  24. 西垣昭

    西垣政府委員 日本安全保障のために平和外交推進が大事であるというふうに私ども認識しておりますことは、先ほども申し上げたとおりでございます。  それからこれも先ほど申し上げたことでございますが、外務省所管の予算の伸びは大変大きいものでございまして、防衛庁との関係におきましても外務省予算の伸びの方が大きいのです。このことは申し上げておきたいのです。  それから、定員につきましてもいかに努力しているかということでございまして、全体としての定員が七百七十名落ちている中で、外務省だけのために八十名ふやしているというのは大変なことでございます。私どもとしては相当に努力をしておるつもりでございますし、先ほどからおっしゃっておられますように、平和外交推進につきましては私どもも全く同じように認識しておりますので、今後とも努力していきたいというように思います。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 いろいろ理屈を言うには及ばぬのです。平和外交推進させていくためには金さえあればもっと出してもいいな、もっと外交体制を強化したらいいな、そういう感じを持っておるかどうか。言いわけはいいです。持っておれば持っておる、持っておらなければ持ってない、それだけお答え願いたい。
  26. 西垣昭

    西垣政府委員 外交機能の充実のためには、私ども努力したいと思っております。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 どうも御苦労でした。  そこで私は外務大臣にお尋ねするわけですが、私が前段で申しましたように、濱口雄幸総理大臣国会での最初の演説外交というものを出してやったのだけれども、御承知のように濱口雄幸は東京駅頭で刺された。そうして刺された直後に濱口雄幸は、これは男子の本懐ですという話をされた。その男子の本懐というのは何であるかというならば、その時分は日本は非常な経済危機の中にあって、どうしても日本は金解禁を断行して緊縮予算をせにゃいかぬ、行政整理をせにゃいかぬ、そういういまの日本財政状況と似通った状態にあったでしょう。一方においてロンドンにおける軍縮条約で、これ以上軍事予算をふやしたら国内の民生安定の予算がなくなるから大変だ、こういうことで、ロンドン軍縮条約と、日本のいわゆる軍縮、財政再建とに命をかけてやっておった。ところがそれをやっておったがために右翼に刺された。しかしそのことは男子の本懐、こう言って、悠然と刺されたことについての決意を言ったわけですが、私は、外務大臣が、本当に日本平和外交というものを男子の本懐として徹底的に推進していきますというぐらいの気概というものが——あるかもしれませんよ、あるかもしれませんからこういうことをお尋ねするのは御無礼かもしれませんけれども、持っておるのかどうか。防衛予算だけふやすのが日本の安全ではない、おれは外務大臣として日本外交陣を強化することによって日本の安全を守るのだ、こういう気概を持っておるのかどうか、その点ひとつ大臣のお気持ちをお聞かせ願いたいと思う。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 御質問でございますが、ひとつ結果を見ていただきたい、こう思うのでございます。私は、防衛予算をふやすことによって、それだけで日本の安全が守れるなどということは毛頭考えていないわけでございまして、安全保障というのは総合的に考えていかなければならぬ。外交防衛力、あるいは南北問題の解消とか、あるいは紛争当事国あるいは近辺の周囲の国等に対する経済援助の問題——紛争当事国と言いましたが、当事国でなくて、紛争の起きている国の周辺の国に対する援助の問題とか、広い立場に立って考えなければならぬのが国の安全保障でありまして、私ども外務省として平和外交をやるというのが役目でございます。先生からいま大蔵省に対しまして外交体制の整備につきまして御質問があったわけでございますが、そういうことを考えまして平和外交に積極的に、真剣に取り組むというのが私の気持ちでございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、日本としては自由と民主主義を守る国際外交というものを考えなければいかぬわけですが、金大中氏の問題についてこの外務委員会でこの間論議をされたときには、公判の記録を全部よこしてもらいたいと韓国に強く要求をしてやります、こう言っていた。ところが、翌日の参議院の外務委員会か何かでの、それがすべてではない、もうこれで結構じゃというような談話を私は新聞で見たわけですが、いまでもあなたは公判記録が全部欲しいとお考えになっておるかどうか、その点を伺いたい。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 足りないところがあったら政府委員に答えてもらいますが、私は何としても判決文の全文は見せてもらいたいということで努力をいたします。実はきのうも外務次官が向こうの大使にも会っております。私も近くまた大使に会って要請をしようということにしておりますが、向こうのソウルにおります日本の大使も通じ、また東京の韓国大使も通じ、いろんなルートで判決文の全文を見せてもらいたいという努力をやってまいります。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう大臣姿勢というものを実際業務を行うのは局長であろうと思うわけですが、そういう中で大臣もそういうことを、国会委員会等ではきれいな言葉といいますか、そういう発言をされるわけですけれども、裏ではもうそんなものはよこさぬでもいい、よこしてもらうと政治決着の問題までさかのぼってくるからよこさぬでもようないかというようないいかげんな取引を、これは優秀な外務官僚でありますから、どれだけ知恵を使うてやりよるかわからぬですが、そういうことはないのかどうか、ひとつアジア局長から御答弁願いたいと思います。
  32. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど大臣から御答弁されましたとおり、私どもとしては判決文の入手に引き続き努力しておりまして、昨日事務次官が在京の韓国大使に申し入れられ、それで大臣も近く大使に会っていただくということでございまして、決して事務当局としまして、先ほどの井上委員の御指摘のようなことをしているということは毛頭ございません。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 その点についてはまたこれからこめ委員会で引き続き論議をしていきたいと思うわけですけれども、なにを受け取って、それがどうも政治決着に反するようなことであった場合には、これは仮定だから答えられないというような官僚答弁ではなしに、そういうふうなことも懸念をされるから全文をもらいたい、こういうわけでしょう。だから懸念をされておるからそういうものをもらいたい、こういう要求であるということには間違いないんですか。
  34. 伊東正義

    伊東国務大臣 われわれもらっておりますのは、要旨をもらって、その要旨に明瞭に書いてございますので、友邦国のことも考慮しとか国内の活動の証拠によりとか書いてありますので、これは政治決着に違反しないということで理解をしているということでございます。その上に判決文と言っておりますのは、その理解をさらに間違いないものだとすることに判決文全文があった方がなおいいということで、判決文の入手についていま申し上げましたように、先生きれいな言葉とおっしゃいましたがそうじゃなくて、何としても見せてくれということを、近く私も大使に会いますし、努力をしてまいるつもりでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで端的にお尋ねするわけですが、金大中氏に対する死刑判決については、これはまことに遺憾千万だとお考えになっておるのか、これはやむを得ぬことだとお考えになっておるのか、その点再度承りたいと思います。
  36. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、国会で何回も申し上げたのでございますが、金大中氏という人についてはああいう拉致事件がございましたので、日本人は関心を持っておる人が多いのでございますので、金大中氏の身辺につきましては重大な関心を持っておる、また事の成り行きに憂慮しておるということを、何回も言ったことがございますので、その言葉から十分お察しいただけるんじゃないかというふうに思います。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 回りが悪いから察しにくいわけですけれども、そういうことはせられちゃ困るというのが心の中にある、こう理解をしていいでしょうか。
  38. 伊東正義

    伊東国務大臣 この裁判自体は向こうの国内の問題でございますから、余り立ち入ってこうしたいああしたいとかいろんなことを言うのは私は差し控えておるのでございますが、この前も国会で申し上げたことがあるのですが、最悪の事態にたると日本の国内でいろんな意見が出るだろう、日本と韓国は本当の隣国でございますし、長きにわたって友好関係を続けていかなければならぬという両国の関係にひびが入るということになってはこれからの日韓関係が困るから、そういう世論が強く出てくるということは日韓の外交をやっていく上に非常にむずかしい情勢になることがあり得るので、最悪の場合ということはなるべく考えたくないということを私は言っておるのでありまして、先生お察しを願いたい、このように言ったのですが、もう察していただけたのだと思うのですが、そういうことを何回も言っております。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 どういう意味か、また同僚先生に聞いて私の足らない知恵を満たしていきたいと思います。  そこで、もう時間がありませんので、いろいろ予定をしておった質問項目がほとんど外務省予算外務省のPTAみたいな質問をしてそれに時間をとられて残念ですが、国連総会における大臣の一般討論演説というものは非常に評価してよいんじゃないか。これが日本外交一つのなにでないかと思うわけです。その中で不明確なのがカンボジアの問題等について。あるいはまたアフガニスタンの方にも大臣が行かれた、そういう努力に非常に感謝するわけですが、そういうことについてはきょうは省略をいたしまして、ただ一つ次の委員会に機会がありましたら私もまた大臣見解を承りたいと思うことに、ソ連との関係における問題がある。対ソ連との関係が非常に悪い。悪い根底が領土問題にある。領土問題あるいはアフガニスタンの軍事介入の問題あるいはカンボジアの問題、ああいう問題で国際世論の中でソ連に対する風当たりが非常に強くなってきておると私は思う。ところが、日本はかつてはソ連との間に友好条約を結んでおった。昭和十六年に破棄されたわけでありますけれども、帝政ロシア時代のものまでソ連がこれはおれのものだ、こう言って持ち出してくるのでありますならば、昭和十六年の日ソの平和友好条約がまだ生きておらなければいかぬと思うわけですけれども、それは全く空文化しておる。  そこで、一九五六年だったか、鳩山総理との条約調印の際にも領土問題が懸案問題として解決されなければいかぬということが含まれておった。そういう中で今日、北方領土はもう解決済みだというソ連政治姿勢、一昨日はイズベスチヤでは五六年の共同声明を骨子とした記事が載って、そうするとソ連も多少変わったか、それで外務省は注目に値するソ連考え方だ、こういう談話を発表した。ところが翌日になると、今度はソ連は領土問題は一切済んでおる、こう言ってきておる。大臣国連で領土問題に触れた演説をされたということで、これは非常に高く評価をするわけです。しかし演説で触れただけではなしに、具体的に今日、平和外交の面からも、日本の北方領土返還についての国際世論をつくり上げていくことが、非常に大事なことではないかと私は思うわけです。ややもすれば領土問題を持ち出すとソ連を敵視しておるとかソ連をどうのこうの、こういう論評もあちこちで出てくるわけですけれども、私どもソ連との関係においても日本友好関係を深めていかなければならぬ。それについては日ソの懸案の問題である領土問題についてソ連がもっときちっとしたことをしてこなければ、領土問題は国の主権に関することであるし、いまのイランイラク紛争も原因はやはり境界線の問題、至るところの軍事衝突というのは境界線をめぐっているではないですか。それだけそれぞれの国の面目にかけて対処しなければいかぬ問題だと思うわけですが、北方領土の返還という、日本の対ソ外交だけではなしに日本外交にとって最重要と思われるこの問題に対して、大臣はこれからどういうふうな作業日程といいますか行動によってこの実現に目鼻をつけていくというお考えを持っておられるのか、その気持ちを聞かせていただいて私はきょうの質問を終わりたい、こう思っておるわけですが、どうでしょう。
  40. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  国連演説でございますが、私は日本人として当然のことを当然に言ったというつもりでおるわけでございます。ソ連に対しまして公式のああいう場所で、日本は平和条約をつくって日ソ友好をやりたいんだがその前提に解決しない領土問題があるということをソ連にも言い、国連で言うということは、世界じゅうにあれは知ってもらう、日本ソ連との間に平和条約ができないのは領土問題があるからだということを世界にも知ってもらうということで、国連で当然のことを私は言っただけでございます。  次の日、グロムイコ外相と会談をしたときにまた領土問題を私は言ったわけでございます。その際に、いま先生がお触れになりました鳩山さんが行かれて共同声明を出された、あのときに領土問題がはっきり、平和条約ができれば歯舞、色丹は引き渡す、その後の諸懸案の中には国後、択捉というものもあるんだということを、グロムイコ・松本日本全権との間で書面の交換もし、向こうからもそうだという返事がグロムイコさんの名前で来ているわけでございまして、グロムイコ外相が領土の問題は一番知っておられる。あの鳩山さんのときの共同声明を私は何回も引いて、グロムイコ外相が領土問題は一番知っておられるということで話したのでございますが、遺憾ながら満足な答えはそこからは出てこなかったわけでございます。最後に両方で今後とも日ソ友好を深めるようにひとつ努力しようということで別れたわけでございまして、あの会談がどういう意味を持つのかということを私も注意したのでございますが、先生おっしゃったようなあのときの共同声明を引いてイズベスチヤ紙が書いたわけでございます。  それで、従来はソ連側は余りあの問題に触れておりませんでしたので、何かあの共同声明に関連して変化があるかと思っておりましたら、先生おっしゃったとおり次の日、領土問題はもうないという意味のことをまた打ち消したものが出ているわけでございます。  日本ソ連との間はこの領土問題、それから北方四島に対する軍備の強化の問題もう一つはアフガンに対する軍事介入というようなことが絡まって冷たい関係になっているわけでございます。いずれをとってみてもこれはソ連側の原因というふうに私ども考えておりますので、話し合いをしていこうということであれば話し合いのできるような環境ソ連もつくるべきだ、行動でちゃんと示してもらいたいということをわれわれは言っているわけでございまして、この問題につきましては、隣の強大国のソ連ということでございまして、われわれも日ソの平和友好関係がずっと続くということは本当に期待するところでございますので、私どもはどういう手がかりでそれができるか、いまのところは従来の態度を持しながら注意深くソ連の出方も見守っているというのが現状でございます。私どもも日ソ友好ということにつきましてはもとより望むところでございますので、どうしたらそれがうまくできるか、ソ連態度を変えてもらいたいというような考え方でいま見守っている、模索しているというのが現状でございます。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 時間が来ておりますけれども、土井先生の時間を若干もらいましたので御了承願いたいと思います。  一九五一年九月に吉田全権が演説をして、「千島列島及び樺太南部は、日本降伏直後の一九四五年九月千日一方的にソ連に収容されたのであります。また、日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も終戦当時たまたま日本兵営が存在したためにソ連軍に占領されたままであります。」こういう演説をしている。これは明らかに日本の領土である。けれどもそういう戦争の結果こういうことになった。それを受けて、鳩山総理の日ソ共同宣言に発展をしてきている。そこで安保条約ができたからどうのこうのという話が出てきても、それはその後の経過であって、あくまで日本の固有の領土として、戦争が終わった今日その返還を求めるのは国民の世論であると思うわけです。  そこで私は、ソ連に約束の実行を迫ると同時に、日本ソ連と約束したことは実行していかないと、領土を返してもらえぬからあれもできないぞ、これもできないぞというけちくさいことを言っておったら、両方の話し合いができないじゃないか。あくまでも領土は絶対譲ることのできない日本基本姿勢だと思うわけですから、これを崩すような対ソ関係というものは一切成り立たないのは当然だと思うわけですけれども、しかしそれと関係ないことでは、やはり友好関係を深めていくような努力というものはするべきではないか。こういうふうに思うわけですが、その点について大臣見解を伺いたいと思います。
  42. 伊東正義

    伊東国務大臣 北方四島が日本固有の領土であるということは、国会でも何度も御決議をいただいておりますし、私は国民の総意だというふうに思いまして、今後ともひとつ息長く粘り強くあらゆる機会に主張していくということをやりたいと思っているわけでございます。  いま先生の、領土は領土、別の問題はまた別の問題で考えたらいいじゃないかというのは一つの御意見でございますが、外交の問題で約束したことを実行しないということは、確かに先生のおっしゃるとおり不信を買うことでございますから、私は、やるという約束をしたらこれはやるべきだ。ただし、やれないような約束をうまいことを言って結果において相手をだますというようなことは、これは不信を買うもとでございますので、そういうことではなしに、いま領土と別なこととおっしゃいましたが、文化の問題とか経済の問題とかいろいろあると思います。そういう問題についてどうするかということにつきましては、ケース・バイ・ケースで一つ一つ考えていくということで、新しい政府ベースの信用供与等についてはそういうことでやっておりますので、いましばらくいままでの態度は変えないで、向こうの出方も見守っていくというつもりでございます。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 残余の問題は次の機会に譲りまして、きょうはこれで終わります。ありがとうございました。
  44. 奥田敬和

  45. 土井たか子

    ○土井委員 国連世界観光機関WTOが主催をいたしました国連世界観光会議が、このたび初めて九月二十七日から二週間マニラで行われたわけでございますが、もちろん日本もこれに参加し、出席をいたしております。このマニラでの国連世界観光会議に先立ちまして、同じくマニラで観光問題の民間会議が九月の十二日から二十五日までの間、参加は十八カ国から三十人出席をされております。もちろん日本からもこの中に出席をされたわけでございますけれども、その民間会議の席で買春観光の問題が焦点になりまして、日本男性のセックスツアーについて地元のフィリピンから調査データを盛り込んだ報告書が提出され、さらに野党の有力指導者からこれに対して手厳しい批判が出たという実情がございます。  ここに御出席の外務省なり運輸省なりはもちろんこの実情について御承知おきだと思いますが、よく御存じですね。いかがですか。
  46. 木内昭胤

    ○木内政府委員 土井委員御指摘の事実は、私どもも十分承知いたしております。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 これはまことにけしからぬ話でして、私はこれについて申し上げたいことが山ほどありますが、まずよく知られているところでは、昨年五月にマニラのラマダホテルで、日本のツーリスト会社による日本人男性観光客が近くのレストランで夕食をとって、約百人が勢ぞろいして、そこでフィリピン人のホステスの中から相手を選んでホテルへ連れて帰った集団見合い事件というのがございますが、これなどは一例でありまして、こういうことが昨今あたりまえのように行われているようであります。フィリピンに行く日本人の観光客の数は毎年どんどんふえていっているわけですが、昨年あたりは約二十五万人、その九割を占める男性の行為をフィリピンにおいても昨今では手厳しく批判されているということは、これはもう御承知のとおりだと思うのです。昨年はマルコス大統領の日本人観光客が俗悪なことをやっているという発言報道されたことがございますが、市民団体も運輸省に対して抗議の声明を出される、こういうことになっております。マニラではバーやトルコぶろ、ナイトクラブが激増する中で、ホスピタリティーガールなどというふうな名称での売春婦がふえていっておりますけれども、彼女たちが受け取るのは客が払う料金のわずか一五%程度にしかすぎない、この中でさやかせぎと申しますかリベートを観光業者の方が受け取るというシステムにもなっている、こういうふうな実情がいまあるようであります。  きょうは私はその一部を持ってきたわけでありますけれども、フィリピンの国内においてもこういうことを糾弾するいろいろな新聞の紙面がいままでに数限りなくあるわけでありますが、大見出しで、「ブラスト・アット・セックス・ツアーズ」、こういう紙面すら私たちの目にすぐに入ってくるわけであります。  御存じかもしれませんけれどもアメリカにおきましても、ことしの一月三日にABCテレビがこういう問題をABCニュースマガジンという番組で取り上げました。その中で特に日本男性のこういう異常な観光集団行動というものを取り上げて問題にいたしておりまして、こういうことすらこの中で問題にされております。「ソー ジャパニーズメン ハブ ビーン ダブド ザ セックス アニマルズ オブ エイジア ウエルカムド バイ セックス マーチャンツ ノットオンリー イン バンコク バット オールソー イン タイペイ マニラ ソウル アンド ナウ サンフランシスコ」。  まことに恥ずかしいきわみでありますけれども、これは本来外務大臣もお考えになりまして、日本とフィリピンの間というのは、前の通常国会においても日比通商航海条約日本は締結をいたしました。その節は、お互いの両国民が信頼を持ち合った上に立った外交ということを答弁の中でも意に込めてわれわれも受けておりますし、やはり国と国とのあるべき姿というのはお互いが信頼の上に立つ相互理解というものを尊重し合いながらやっていかなければならない、これは何といってもABCの問題になろうと思うのですが、こういう状況がかの地において日本男性の観光旅行ということに名をかりた異常な集団行動によっていま展開されているという実情をお考えになって、どのようにお感じになりますか。
  48. 伊東正義

    伊東国務大臣 集団的にそういう行為をしているという御質問があったのですが、そういうことが相手国に与える悪い影響、あるいは対日感情といいますか対日観といいますか、そういうものに及ぼす影響等を考えますと、これは外務省としても非常に懸念をしますし、困惑するという感じでございます。  国民外交ということをよく言われますが、特に外国に行った場合は一人一人が外交官のようなものでございまして、一人の小さい行為が大きな結果を生むということはよくあるわけでございますので、昨年の暮れでございましたか昨年秋でございましたか、外務省からも運輸省の方に頼んで観光業者に注意を喚起してもらうというふうなことをやったわけでございまして、これは外交といいますか、もっと広い意味で日本人全部に対する悪い影響があることでございますので、大いに懸念をし、運輸省にもいまお願いしているところでございますが、本当に困惑しているというのが率直な感じじゃないかというような感じがします。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣まことに困ったお顔をなすって、困惑している困惑していると連発をなさるわけでありますが、運輸省の方にはもう少し早くフィリピンの方から日本人の男性のセックスツアーを中止せよという中身の抗議文が届いているはずでありますが、お受け取りになりましたか。
  50. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 お答えいたします。  フィリピンの市民団体からの抗議文書、これはことしの八月中旬ごろ、私どもの観光部の業務課長あての文書でございますが、届いてございます。  その送り主はCACPという団体でございまして、件名は、フィリピンにおける売春についての意見書というようなことで、私どもの観光部の業務課に送り届けられたわけでございますが、その中身は日本人を含む旅行者の問題、それからフィリピンに駐在しております軍隊の問題、外国企業の問題、こういう問題について述べられておりまして、そういう日本人あるいは外国企業というものからのフィリピン労働者に対する搾取の点について抗議が寄せられているわけでございますが、その文面の冒頭におきまして、先ほど先生御指摘の昨年の五月に起こりました事件、約二百人のフィリピンの女性を待機させておいてそこへ旅行者を案内したというような事件についての非難についての問題が述べられております。  それからさらに、約二十万人程度の日本人の旅行者がフィリピンを訪れ、その約九〇%が男性で、彼らのパッケージツアーの中に小健全な行動が組み込まれているというような指摘がなされておるわけでございまして、私どもことしの八月、これはいま申しました文書が参ります以前から、アジア方面に向かいます日本人の観光旅行者のマナーの健全化につきましては関係の旅行業者に十分注意をし、また健全化に努めるよう指導してきたわけでございます。  ただ、その文書の中にありました、先ほど申し上げましたフィリピンから送られてきた文書の中にありました不健全な行動があらかじめ旅行の中に組み込まれておるというような実態は、私どもまだ明確に事実として把握したことがございません。  ただ、いずれにしましても、いろいろな情報によりましてそういうような日本の観光旅行者の不健全な行動というものが相当数あるということは推測にかたくないわけでございますので、十分われわれも旅行業界の指導について遺憾のないようにやってまいりたい、かように考えております。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 運輸省としてはいつごろこの抗議文をお受け取りになったのですか。
  52. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 ことしの八月の中旬でございます。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 ことしの八月中旬からこの方、それに対して何らかの措置なり対策なりをお講じになるのが当然だと思いますが、これに対して運輸省としてどういうふうにお取り扱いをなされましたか。
  54. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 私どもといたしましては、旅行業界がこういう観光客の不健全な行動に関与しないようにすること、こういう手だてしかないわけでございまして、基本的には観光旅行者のモラルの問題だと思います。私どものできる範囲は、旅行業者がそういうような観光旅行者の不健全な行動に絶対に関与しないようにさせる、こういうことであるわけでございますが、直ちにJATAといいまして日本旅行業協会、これは海外の観光旅行を扱っている旅行業者の団体でございますが、この団体の幹部を呼びまして、これは従前から注意はし、また旅行業界といたしましてもできる範囲のことはやってきたようでございますけれども、さらにこの際徹底して、こういう不健全な行動に旅行業者として関与しないような手だてをする方策についていろいろ検討をしてくれという指示をいたした次第でございます。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 お伺いすれば何もやっていらっしゃらないに等しいわけですね。いろいろ手だてについて話し合う、検討すると、いつまで続けたってこれはどうにもならない話です。いままでだってそれをやっていらっしゃるわけでしょう。いまこういう状況の中でそのことに対して真剣に特に新たに取り組むという何らかの努力があったかどうかということを私はお伺いしたいんですが、どうなんですか。
  56. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 全般的にはただいま申し上げましたとおりでございますが、さらに数日前、いま申し上げました日本旅行業協会の会長を呼びまして、具体的に効果的だと思われる方策がないかという相談をじっくりしたわけでございます。旅行業者に対するPRとかあるいは旅客に対する健全化のPR、これは従前からやっておるわけでございます。それからさらに、もし旅客の不健全な行動に業者として関与したようなことがはっきりした場合には旅行業協会としてもこれを除名するというような申し合わせもしておるわけでございます。  それ以上にさらに具体的な手だてはないかということでいろいろ相談をしたわけでございますが、旅行業協会がもし万一関与する場合に考えられますのは、旅客を日本から行き先へ送り出す日本の旅行業者が初めから関与する場合と、それから日本の旅行業者は一応お客様を送り出して、それを受けます現地の、フィリピンならフィリピンあるいは台湾なら台湾、そういったところの現地の旅行業者がみずからの判断で送られてきた旅行者にそういう不健全な行動のあっせんをする場合も考えられます。私どもが事業者からいろいろ聞いておるところでは、どうも現地業者自身の判断によるそういう不健全な行動への関与の方が多いんではないかというような話もよく聞きますので、日本旅行業協会として、これは個々の日本の旅行業者がやったのでは効果が上がりません、これは商取引でございますから。そうではなくて、海外旅行を扱っております日本旅行業協会、そういう団体として行き先の、現地の旅行業界の方と、こういう事態を改善するためにどういう手だてがあるか、現実に向こうに行ってそれで相談をして何らかの改善策について対策を立てるように、こういう指示をし、それからJATA、日本旅行業協会の会長もその点については十分了承した、今後そういうことで早急に検討してみる、こういうことにしております。  それから、私どもとしては従来からPRその他いろいろやってきたわけでございますが、さらにこの際新たに旅行業者に対しまして通達を発しまして、もし万一こういう不健全な旅行に関与したというようなことが明らかになった場合には、運輸省観光部としてその旅行業者の名前を公表し、社会的な制裁を与える、こういうことにしたわけでございます。  それから、いろいろいま申し上げました以外に、旅行業者が関与しない、あるいは旅行者がそういう不健全な行動に走らないようにするための手だてがまだ考えればあるかもしれない、その辺のところについて日本旅行業協会としてさらに十分検討を加えて、その結果を運輸省の方に報告しろ、こういう通達を発したわけでございます。  この問題、いろいろな条件、原因が重なって起きている問題だと思いますが、私どもは私どものできる範囲で最善を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 いま通達を出したとおっしゃいましたが、いつその通達をお出しになりましたか、一番最近の通達ですね。
  58. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 十月の二十一日、きのう付でございます。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 きのうの何時ごろお出しになりましたか。
  60. 角田達郎

    ○角田(達)政府委員 きのうの一時でございます。一時に向こうの旅行業協会の専務を呼びまして通達文を渡したわけでございます。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 きょう私が当外務委員会でこの問題を取り上げて質問をするということで大急ぎで運輸省としてはそういう措置をおとりになったとしか考えようがない。場当たりもいいところだと私は言いたいですよ。真剣にこの問題をお取り上げになったというふうには私はとても思えない。すでに八月に現地からの抗議文を受けている運輸省じゃありませんか。実情に対しての調査というのも、それから時間をかけていままでかかったとは言わせませんよ。大体態度としてはふまじめだ、不誠実ですね。  私がなぜこういうことを声を荒立てて言わなければならないか、こんなことは言うまでもありません。観光旅行というのはいいことだと私は思っています。実情に対して知る、そして、さっき外務大臣がおっしゃったとおり、一人一人が外交官になったようなつもりでその国の国民といろいろな交流の場を持つ、お互いの国が信頼の上に成り立つお互いのつながりというものを大切に育てていく、そういう意味では私は観光旅行ということは大事だと思っています。でも、全世界の男性の観光客の中でこういう異常な集団行動をとる外国人があるでしょうか、私は日本人をおいてほかにないと思うのですよ。だから、かのフィリピンの国においてもこれだけたくさんの新聞が紙面にその問題を取り上げて憂慮をし抗議をし非難をし、アメリカでもテレビのニュースでこれが取り上げられる、各国でも日本の男性はということをこういう問題を通じてどのように考えているか、ひとつお考えいただきたい。  私は、そういうことを考えていくと、いろいろいま異常な集団行動を続けて恥じない、そういう日本の観光業者たちというのが買春ツアーで潤っているということを考えるにつけても、フィリピンに対してだけ申し上げますけれども、かつて日本はフィリピンに対して侵略をいたしました、いままさに新たな、形を変えた醜悪な侵略行為をやっていると受け取られても仕方がないではないですか。こういうことを考えてまいりますと、いまのような御答弁では私は納得するわけにはいかないのですよ。よろしゅうございますか。単なる通達一本を出した、業界が話し合っているからそれでいいだろう、実情は、日本の旅行業者が請け負っているのは向こうまでの話であってそれから先は向こうの業者がやっていることだからわれわれには関係ないじゃないか、そんなことで事を丸めて何とか場当たりで措置を講じたというふうに言って済む問題じゃないのです。業界同士で話をしてやってみたところで、いままでどおりの繰り返しになるじゃないですか。  ちょっと運輸省にお尋ねをいたしますけれども、運輸省のかつてのあなたと同じポジションでである観光部長さんで、いまこういう業界に行っていらっしゃる方があるでしょう。運輸省からこういう旅行業者に天下りをなすっていらっしゃる方がかなりあるんじゃないですか。JATAだって無関係とは私は言わせませんよ。そういうところで話し合え話し合えと言われるときに、運輸省として毅然とした姿勢で当たっていただきたいと幾ら言ったって、背後でそういうつながりがあるということが現実の問題として、大変ひっかかる問題として一つあると私は思うのです。通達をする場合にも、いろいろそういう話し合いの中で決められていくことも私は問題だと思うのですが、これはいままでどおりでは済まないということをひとつ申し上げたい。そうして、いろいろな実情があるでしょうが、私は改めてJATA並びに観光業界の代表の方々を証人、参考人として呼んで実情に対して問いただしをいたします。よろしいですか。運輸省として毅然とした態度でこれに臨んでいただかなければならぬ。  外務大臣、退席なさる前に私が申し上げたいのは、これは閣内でひとつ問題にしていただくべき問題だと思います。きょうは運輸大臣は御出席じゃありませんけれども、こういう事柄に対してひとつ外務大臣から運輸大臣にここでこのように問題になったことをしかとお伝えいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  62. 伊東正義

    伊東国務大臣 閣議とおっしゃいましたが、私、運輸大臣にここで土井先生から問題になりましたことは全部報告します。こういう非常にむずかしい問題でございますが、外交にも影響を及ぼし、本当にその国と日本との感情にも悪い影響を与えるということはよくわかりますので、運輸大臣にはちゃんと報告します。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 この問題について、なおかつ私は問題として取り上げなければならない論点がほかにもあるということをよく承知いたしております。しかしこれは、きょうは時間が非常に制約をされてまいりましたから別の機会に続行してまいりましよう。  そして、きょうは警察庁からも御出席をいただいてまことに申しわけないわけですけれども、実は、こういう観光旅行にやはりつけ込まれるという問題が一つあります。もうすでにこれに対しての捜査が展開をされているわけでありますけれども、かのフィリピンにおいて観光旅行団の中に加わっていく人々の中に偽造国際免許証をお金で買って帰ってくるという人たちがあるようであります。まことにこれ自身は、いまの観光旅行のあり方に対してつけ込まれる問題がこういうところにもあるわけでありまして、私はやはりいまの日本の観光旅行のあり方をそういう側面からも一つはただしていかなければならない、こういうことを考えるわけですが、これは警察庁の方御出席をいただいて恐縮ですけれども、別の機会にその実情についてもひとつ御説明を賜るようにお願いを申し上げます。よろしゅうございますか、お許しいただきたいと思います。  あと一問だけ申し上げて私はきょうは終わりにしたいと思うのですが、実は昨日、安保特が開かれまして、そこで取り上げました問題もさっき井上委員の方から御質問の中にあったようでありますが、再度私はこれを確かめておきたいと思うので、ひとつ御答弁を願います。  淺尾局長は、昨日は大変なことを私は発言されたと思っているのです。ホルムズ海峡共同パトロールする場合に、わが国が一部それに対して費用負担するということは憲法の禁じているところではない、集団自衛権に抵触をしない、したがって憲法にも抵触をしない、こういうふうな御答弁であったようであります。自由航行のための共同パトロールホルムズ海峡についての共同パトロール構想というのは当然御存じになっていてこういう御答弁であるはずだと私は思いますけれども、どんな内容というふうにこの共同パトロール構想をお考えになっていらっしゃるわけか、また掌握なすっているわけか、その辺はいかがなんですか。
  64. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 昨日の安保特での御質問に対して私の方からもお答えいたしましたように、この共同パトロール構想についてはまだ全く具体化しておりません。したがって、私たちはそれがどういう構想になるかという実態について把握している立場にございません。  ただ、方々委員会で仮定の問題として、共同パトロールというものが実施された場合に費用を日本が分担することは集団的自衛権との関連で法的に許されるかどうかという御質問がございました。当委員会での御質問に対して外務大臣の方から、その点については政府部内で検討してまた報告するということで、昨日の安保特でも同じような質問がございましたので私の方から全く仮定の問題として、共同パトロールについて費用の分担をするということは集団的自衛権の行使には抵触しないということを申し上げ、さらに重ねて、しかし本件については具体的内容が決定してないし、またその結果費用の支出の目的、態様によって当然その際において政府として態度を決定することになるだろうということを申し上げた次第でございます。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 ああいう御答弁をお出しになる場合には、具体的に共同パトロール構想というものを踏んまえた上での御答弁でなければこれは大変な間違いを犯しますよ。具体的にどういう共同パトロール構想があるかということを踏んまえての御答弁でなければならないはずです。一般論としてまず出しておいて、そしてそれに締めくくっていくというやり方というのは逆立ちをしていると私は思う。果たしてそういうあり方自身が憲法に抵触するかしないかなんていうようなことはまだ言えないのですよ、構想について把握なすっていらっしゃらないのだから。  したがいまして、昨日の御答弁というのは、これは撤回すべき御答弁だと私は思います。いかがですか。
  66. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは再三御答弁いたしておりますように、私たちとしてもこの問題について議論をする実益というものは余りないというふうに考えておりますけれども、しかし仮定の問題として法的にどうだということでございますので、それに対してお答えした次第でございまして、昨日の答弁を私としてはここで撤回する意思はございません。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 法的にどうかこうかという以前に、具体的な構想なり具体的な事実に対しての把握が全くないままで法に対しての解釈だけを先行させるということくらい、でたらめというかいいかげんというか、そういうことはないと思うのです。やはり事実に当てはめて法の解釈というものは初めて意味があるわけでありまして、まず法の解釈をしておいて、それに対して事実を当てはめていくというのはまるで逆立ちしている、こういうことを私ははっきり申し上げたい。よろしゅうございますか、局長、これはしたがって、きのうの御答弁というのは不適切です、そういうことを申し上げます。
  68. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいまの土井委員の疑問あるいはコメントについては、私としてもよく記憶にとどめておきたいと思います。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  70. 奥田敬和

    奥田委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  71. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、千九百八十年の食糧援助規約の締結について承認を求めるの件を議題とし、政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣伊東正義君。     —————————————
  72. 伊東正義

    伊東国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十年の食糧援助規約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  昭和四十六年に作成された千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦の市況の安定化、開発途上国への食糧援助等について規定しておりますが、昭和五十三年以来国連貿易開発会議(UNCTAD)主催のもとにこの協定にかわる新協定の作成交渉が行われております。この交渉において国際小麦協定を構成する二の規約のうち、小麦貿易規約についてはいまだ新しい規約が作成されるに至っておりませんが、食糧援助規約については、多くの開発途上国において食糧不足が年ごとに深刻化しており、穀物による食糧援助に対する開発途上国の要請が増大しつつあることにかんがみ、援助拡大についての合意が成立し、この新規約が本年三月ロンドンにおいて採択されました。  この規約は、本年七月一日に効力を生じたのであります。政府は、本年六月十七日にこの規約の暫定的適用宣言を行いました。  この規約は、開発途上国に対し毎年一千万トン以上の食糧を援助するという世界食糧会議の定めた目標を達成する一環として、加盟国は、年間最小拠出量として合計七百五十九万二千トンの穀物またはこれにかわる現金を開発途上国援助すること等を規定しております。  わが国は、開発途上国の食糧問題との関連における食糧援助規約の持つ重要性を十分認識し、従来の食糧援助規約にも加盟してきており、この規約の交渉においても当初から積極的に参加してまいりました。この規約を締結することは、開発途上国における慢性的な食糧不足を緩和するための国際協力に引き続き貢献する見地から有益であると認められます。  ここに、この規約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  73. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に関する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  74. 奥田敬和

    奥田委員長 国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。石原慎太郎君。
  75. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 最近私は福田元首相と招待されまして韓国に行ってまいりました。全斗煥新大統領の新しい体制下で、金大中氏の問題が改めて今後の日韓関係にとっての非常なマイナスといいましょうか、危険な要因であるということを感じて帰ってまいりました。日韓関係が両国にとって不可欠なものである限り、私たちはこの問題に冷静に対処しなくちゃならぬと思いますが、かつてこの日本から拉致されました金大中氏に対する、光州事件後の現政権の姿勢に対する非難が日本の一部に非常に激しく、政治決着の見直しであるとか原状復活等々、非常にかまびすしいようですが、こうした論議の中で、かつてのあの事件の推移に対する正確な認識が少し私は欠けているような気がしてならないのです。あの事件の重要な部分、日本に関するあの事件にかかわりある伏線といった部分についての言及が欠落しているような気がしてなりませんし、また、その伏線の部分はかなり周知の事実でもございます。これがもし、そういった論議の中で意識的に外されているならば公平ではございませんし、ある意味で、かつて統治時代に培われた韓国に対する偏見とべっ視のあらわれとさえ言えるのじゃないかという気がいたします。  かつてあの事件の直後、四十八年、四十九年の国会、この外務委員会でも私この問題について質問しましたが、どうもはっきりしないままに終わりまして、今日改めて金大中氏が裁判にかけられ、政府もこれを憂慮して見守る、日本の関心も非常に高いという状況の中で、この問題を日韓両国の今後の関係のためにもただしておくべきじゃないかと思います。  まず法務省にお伺いいたしますけれども、法務省の大事な仕事であります外国人の出入国管理、この管理局の局長と管理局の総務課長は、通例外務省のスタッフが出向して務めるというようでありますけれども、私はこれはむべなるかなと思います。それは外国人の出入国問題が、ある場合政治問題にはね返って外交関係に非常に重要な影響を与える可能性があるから、それをおもんぱかって外務省のスタッフが管理局長と総務課長を通例務めるということになっていると思いますけれども、私の認識のとおりでございましょうか。
  76. 山本達雄

    ○山本説明員 ただいまお尋ねのとおり、入国管理局の局長、総務課長と、いま一名入審課長が従来外務省から参っております。
  77. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 通例外務省からそのメンバーが来ているということは、いま言った出入国管理というものが、そういう非常に大きな問題を持つということへの配慮だと思いますけれども、いかがですか。
  78. 山本達雄

    ○山本説明員 いきさつは私必ずしも明確に存じておりませんが、当然そういう配慮はあるのだろうと思います。  なお、歴史的に見ますならば、この入国管理局は当初外務省の外局として設置されたものが、その後法務省の方に移管されたということも影響しておるかと思います。
  79. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いまの御説明で出入国管理というものは外交と切っても切れない関係にあるということはわかったと思いますが、ならば、手の届かなくなった、日本から出ていった外国人ならばともかくも、入国して日本に滞在中の外国人、これはすべてとは言いませんけれども、何か非常に問題のありそうな、そういった問題を起こす可能性のありそうな人物の去就、言動について、法務省なり外務省なり警察が、私が先ほど申しました見地からしても責任があると私は思いますけれども、この点外務大臣、いかがでしょうか。
  80. 木内昭胤

    ○木内政府委員 本邦に渡航いたします外国人につきましては、それがどのようなケースかによっていろいろ考えなければなりませんけれども、たとえばわが国として承認しておりません北朝鮮からの入国につきましては、その態様について一々検討いたしますとともに、たとえば滞日中には政治活動を行われないように念書を取るというような手続をとっておるわけでございます。  また、全然違うケースでございますけれども、本邦に入国される外国人によっては身辺警護というような問題もございまして、警察当局にいろいろ身辺の警護をお願いするということで、事前にわかっておりますケースについては、そのケースの要請に従いまして、できる範囲で注意をいたしておる次第でございます。
  81. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 その金大中事件の伏線と申しますのは、金氏の事件当時の日本の滞在のあり方と、その発端となりました日本入国、昭和四十八年一月五日、それからその後三度に及ぶ滞在期間の更新、延長と、七月十日、その間アメリカに参りまして、それから再入国し、その後の同氏の滞在のあり方、これが直接ではないにしてもかなり直接に近い間接であの事件にかかわりあると私には思われるのです。  まず、その一月五日にビザが失効して実質的にノービザで来日しました金氏を、六日に法務省は入国許可をしました。これは法務省から提出していただいた資料では、出入国管理令の十六条三項による処置、転船上陸許可、ショアパスという処置で滞在を許可したことになっておりますけれども、このいわゆる転船上陸許可というのは一般的には非常にエクステンポラリーなケースが多くて、たとえばこの間キューバのバレー団でしたか、何かの手違いでビザを持たずにやってきて、結局それを試合の期間滞在を許可したというようなケースだと思いますが、原則的に、一般的には十六条の三項という処置は暫定的というか、非常にエクステンポラリーなものと私は承知しておりますけれども、いかがでしょうか。
  82. 山本達雄

    ○山本説明員 ただいま御質問の内容の事実関係について若干誤解があるのじゃないかと思うわけですが、昭和四十八年一月五日に金大中氏が入国いたしました場合には、確かにお尋ねのとおりビザが切れておりました。そういうことで、入国適合条件にかなっていないケースとして、入管令の第十二条に定める法務大臣の特別上陸許可をしておるわけでございます。  十六条とおっしゃったのですが、そのときの在留資格は一六−三、これは入管令の四条一項十六号の三ということになるのですが、われわれはそれを省略して四−一−一六−三と呼んでおるわけですが、この四−一−一六−三という在留資格を与えたということでございます。
  83. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それでは、その十二条三号の「その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。」というこの事情は、結局、滞在目的となりました同氏の腎不全の治療と自叙伝の出版校正ということでございますか。
  84. 山本達雄

    ○山本説明員 そういうことでございます。
  85. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 しかし、扱いが十六の三というケースは、いずれにしても、滞在期間がきわめて短いのが一般例ではないのでしょうか。
  86. 山本達雄

    ○山本説明員 一六−三の滞在期間につきましては施行令で定められておりまして、三年以内で法務大臣の指定する期間ということになっております。したがいまして、三年以下の範囲で決められるわけですが、実務的には大体三十日ぐらいから三年と幅広く選択されております。
  87. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 もう一つお聞きしますけれども、この十六条の三項の中に、「当該乗員に対し、上陸期間、通過経路その他必要と認める制限を附することができる。」とありますけれども金大中氏のこの十六の三扱いの中での、その他必要と認める制限を附するという処置というものでしょうか、それはあったのでしょうか。
  88. 山本達雄

    ○山本説明員 金大中氏の場合には、そういう条件は付されておらないようでございます。
  89. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 一説には、金大中氏は赤十字の渡航証を持って日本にやってきた。ノービザであった。それから、金山元韓国大使が身元引受人になって入国をした。それが十六条の三の扱い、あるいは先ほどの十二条の三号の法務大臣の特別の処置につながったと思いますけれども、身元引受人が元の駐韓大使であるならば、当局もいろんな形で連絡をし、金山氏とも接触もとられたでしょうし、その経過の内容も御存じだと思います。  また一説には、そういった事実があったかないかをお聞きしても恐らくむだと思いますけれども、書簡なり電話で、金大中氏が来日以前、アメリカ滞在中かかわり深かったハーバード大学のライシャワー元駐日大使が時の大平外務大臣に非常に強い要請をされて、大平さんは非常に困惑されたということを仄聞もしております。  いずれにしても、この金大中氏のノービザでの、一般的に見れば異例のケースの入国というものの許可の最高責任者は法務大臣であることに間違いございませんか。
  90. 山本達雄

    ○山本説明員 間違いございません。
  91. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 そして、その三回の期限更新をしまして、その間アメリカに渡航し、また日本に戻ってこられた、こういう例は前例としてあるのでしょうか。この扱いの中では非常に異例に属する事実でございましょうか。
  92. 山本達雄

    ○山本説明員 日本に在留中に期間更新をいたしまして、再入国許可を与えるということは通常行われておることでございます。
  93. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それにしても三月九日の百八十日の期間更新と、それから三月十四日のさらにそれにプラスしての六十日間の期間延長は、お伺いしますと、アメリカへの再入国の際に、アメリカ側が、日本金大中氏を再入国するときの受け入れの保証として百八十日では足りないということでさらにそれを二カ月、六十日延長して、その上でアメリカの再入国が許可されたということのようですが、この点は、どうもアメリカの方が日本政府姿勢を参考にした上で金大中氏の再入国というものを許可している。どうもアメリカの方が日本よりしっかりしているというか甘くないというか、右から左へ物事が簡単にいかない。そういう点で厳密と言いましょうか、姿勢日本政府とかなり違うという印象を否めませんが、いずれにしてもこの入国の際に法務省は、すべての人もそうするのかもしれませんけれども、先日法務省の政府委員にいろいろ事情を聞きましたところ、法務省なりに、うたわれた入国の目的、滞在理由の病気の治療と自伝の出版校正の裏をきちっととっていらっしゃる。前田外科の診断書と、それから西巣鴨にあります光和堂という本屋の出版校正、ゲラをチェックされているようですが、これは大変結構なことだと思うのです。  しかし、その滞在中に、制限されているはずの渡航目的以外の行動を金大中氏が非常に積極的にされた。それに対してどうも法務省も外務省も法を預かる者としての対処をほとんどしなかったということになりますな。  改めて念を押してお聞きしますけれども、参事官、この金大中氏の滞在目的はあくまでも腎不全の治療と出版校正の二つだけであったはずですけれども、いかがですか。
  94. 山本達雄

    ○山本説明員 お尋ねのとおり二つだけでございます。
  95. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ですが、その滞在中に金大中氏が、法務省が承知している二つの滞在目的以外の行為を非常に熾烈にされた、政治活動を非常に活発にされたという事実は、もう周知でございます。そもそも日本政府友好関係にある当時の朴政権の打倒運動を、在留の韓国人たちを説得するだけでなくて日本の非常に多くの数の政治家、それも与党の政治家を含んで非常に熱心にされました。それに付随して幾つか有名な雑誌でのインタビューにも応じられて、その中で同じようなキャンペーンをしておられます。  余談かもしれませんけれども、私の非常に親しい与党の若い政治家も金大中氏と会いましたが、数人の話ですと、同氏が余りに自分の国の悪口を熱心に言うので、逆にいや気が差して中座したという人が数人もおられます。これに対する評価は別にしまして、そういう述懐をしている政治家がこの自民党にもたくさんおります。  さらに、日本の入国からその後再び渡米をしまして、また日本に再入国、そして事件が発生。それまで金大中氏が、うたわれている入国目的の二つ以外のことを熱心にしたことは、これはもう雑誌のインタビュー記事一つを見ても明らかなことでありますが、特に私たち、外務省に注目していただきたかったのは、渡米中に、言ってみれば反政府団体である韓民統をワシントンで金大中氏がつくった。これは私、いいとか悪いとか言っているのじゃないですよ。事実を言っているだけです。それからカリフォルニアでは、日本に次ぐ居留民団であるカリフォルニアの滞米韓国人居留民団を、反政府運動をキャンペーンすることで分裂させました。そして、八月の事件の起こった数日後、一両日後に実は日本の日比谷公会堂で反朴政権の大会を開催する準備をしておられた。これは私もポスターを見ましたし、宣伝も見ましたし、電話もいろいろなことでかかってきまして知っておりますし、これは私以外の政治家も知っておるし、とにかくこの国会、法務省、外務省と目と鼻の先の日比谷公会堂で行われるはずでありましたエベントですから、政府が知らなかったということにはこれはならない。  まあよけいなことかもしれませんけれども、何であろうと外国自分の国の悪口を熱心に言う金大中氏に自民党の国会議員が失望しあるいは反発してか、中座して帰ったというこの挿話は、私は非常に暗示的だと思います。  プルタークにも出ておりますけれども、アテネのアリステイデスが貝がら追放で不当に国外に追放されたけれども、国外にあって沈黙を守った。その廉直さが非常にアテネの人たちに反省を呼び、評価を生み、後にダリウス大王が攻めてきたあのペルシャ戦争で、かつての政敵テミストクレスと一緒になってこれを防いだという昔の話を私は印象深く思い出すわけですけれども金大中氏は、一方では外国のメディアを使い、外国政治家を使い、まあ使うという言葉は語弊があるかもしれませんけれども外国の世論で反政府運動、自分政治目的を遂げようとされた。  そのよしあしは別にしましても、彼が打倒を図っていた朴政権とほかの国との関係もありますし、それぞれ外交関係というのは特殊性がございますが、一番近くて本当に日本にとってもバイタルインタレストである、しかも複雑な政情を地政学的にも抱えている韓国と日本友好関係にあるとし、友好関係にあるその政府に対する反政府運動を、同氏が日本の法律が規制している滞在目的を逸脱して熾烈に行っていることに関して、日本政府が知ってか知らずか、それに対してどう動こうともしなかったということに、私はやはりいささか問題があるのではないかという気がせざるを得ないです。  また問題に戻りますけれども、この十六条の三というノービザの、いわば一般的には特殊のケースでは、従来発行されるべきビザというものの権威からして、同氏の滞在がその制限を逸脱しているかしていないかというチェックはより厳しくされるべきものと私は思いますけれども、その点、法務省いかがでしょうか。
  96. 山本達雄

    ○山本説明員 四−一−一六−三という在留資格を付与された者の在留活動逸脱の問題でございますが、これは法律の立て方の問題に帰するわけですが、まず一つは、一六−三という在留資格はノービザの入国者に対してのみ与えられるものではないということを申し上げておきたいと思います。ビザを持って商用活動のために入国するというような場合にありましても、その本人の希望する在留期間がたとえば六十日であるといったような場合には、ほかに付与する資格がありませんので、この一六−三という資格を与えて六十日という在留期間を指定する扱いになっております。そういう意味で、一六−三はノービザあるいは上陸不適合のケースについてのみ適用されるものではないということを申し上げたいと思います。  しからば、この一六−三については、在留活動の制限があるのかということでありますが、これも法律の立て方として、一六−三には在留活動の制限がないということになっておるわけでございます。  たとえばこの四−一−四、入管令四条一項四号、四−一−四と言うのですが、これは観光でございます。観光、これは単に物見遊山に来るという場合だけじゃなくて、親族訪問とか会議に出席するとか、そういう短期旅行者に対して与えられる資格でございますが、こういうものについては、報酬を得るような活動をしてはならないというような在留活動の制限がかかってくるわけでございますが、一六−三に関してはそういう活動の制限がないという法律の立て方になっております。
  97. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 問題をはぐらかさなくていいのですよ。十六条の三という説明が法務省から出ている資料にしきりについているものだから、私はその問題について言っているのですけれども、それでは先ほどあなたがおっしゃった十二条の第三号の「法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。」 結局それは特別の事情として要するに病気療養と出版活動ということに限ったわけでしょう。ですから私が申し上げたいのは、やはりそれ以外の行動を実際に金大中がされたわけですな。それについての法務省の見解を私は伺おうとしているわけですけれどもね。  それで、十六条の三項プラスこの十二条の三号という形で滞在を許可された金大中氏、ほかにもこういうケースがあるのかもしれませんが、その人たちが法務省からながめて、あるいは外務省からながめて、とにかく当初の制限というものを逸脱している。どうもそれが非常に好ましくない。二十四条にあるように、国益というものを損ないかねないという判断をしたときには、次の更新のときに更新を許さずに、自然に、自動的に国外に退去してもらうという措置がとれるわけですけれども、実際に日本政府はそのときに三度更新を許したわけです。許した期間、金大中氏はますます当初の目的を逸脱した政治活動に拍車をかけて、最後には恐らく当時の韓国政権にとっては非常にショッキングな、日本という一番大きな韓国人居留民団を抱えている土地で、世界最大の居留民団を真っ二つに割りかねない反政府倒閣運動、大会を画策し、準備していた。その間日本政府はそれを知ってか知らずか、当然目に届いていたでしょうけれども、これに対して何もチェックをしなかった、これは事実ですね。
  98. 山本達雄

    ○山本説明員 まず最初の御質問にお答えいたします。  特別上陸許可を与えるに際して、本人の入国目的、本件でいいますと、病気の治療と出版のためということになるわけでございますが、そういうことで上陸を許可した以上は、私どもとしては在留活動をその範囲内でやっていただきたいと考えます。しかしながら、法律の立て方から申しまして、それ以外に活動が及んでも、それを資格外の活動であるとして取り上げることができないようになっております。  それは少し詳しくなるのですが、入管令の二十四条に「退去強制」、国外退去を求める事由が掲げられております。それの二十四条の四号のイには、資格外活動をした者、読んでみますと、「当該在留資格以外の在留資格に属する者の行うべき活動をもっぱら行っていると明らかに認められる者」、このようになっておるわけでございます。したがいまして、先ほど御説明申し上げましたとおり、四−一−四、観光の資格を持って入国を許された者が報酬を得る活動をもっぱら行っておる場合にはこれに該当しまして、国外退去を求めることができるということでございますが、一六−三の場合には基本的に在留活動の制限がないことになっておりますので、この二十四条四号イというものを適用する余地はないということでございます。
  99. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 どうもちょっとおかしいですね。あなたのお話を聞いていると、先ほど金大中氏の特別の入国のケースは十六条の三よりもむしろ十二条の第三号の法務大臣の特別の許可、つまり特別の事情でしんしゃくした許可という方に重点があるというふうに言われた。ところがいまの説明ですと、つまり十六条三項に力点を置いていらっしゃる。しかしいずれにしても十二条三号ということで金大中氏が入国されたことは間違いないわけでしょう。そうすると、金大中氏の滞在資格というものは、要するにどちらが重いのですか。十二条三号の法務大臣のつまり特別の配慮というものがやはり彼の滞在というものを法的に制限しないのですか。それは特別の配慮というものは、繰り返して申しますけれども、病気の療養と執筆活動ということでしょう。それで入国されたものが、今度は十六条三項に何をしてもいいんだという解釈があるから何をしてもいいんだということになったら、法務大臣をこけにするみたいな話じゃないですか。
  100. 山本達雄

    ○山本説明員 十二条を適用して特別上陸許可を与えたわけでございますが、日本は在留資格制度をとっておりますので、上陸特別許可だけでは在留できないわけでございます。上陸許可を与えた上で在留資格を与えなければいけない。しからばどういう在留資格を与えたかと言えば、四条一項十六の三というのを与えたということでございます。そして四条一項十六号につきましては、在留資格の制限がかかっていないわけでございます。
  101. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 そうなると、金大中事件というものはかなり特異な事件ですから、こういった事件がこれから二度、三度起こる可能性は少ないし、また起こってもらっては困ると思いますけれども外務大臣にお聞きしますが、実際に私たちは非常に苦い経験をしたわけです。そして金大中事件なるものが、裁判の成り行きも絡まって、日韓関係にいろいろな暗い影を落としかねない、こういう体験を現実にしながら、入国管理令をここににわかに専門的に外務大臣に御批判をいただきたいとは思いませんけれども、私がいま質問し、法務省側の返答を聞いている限り、入れるときは法務大臣は事情をしんしゃくして、とにかくあなたが日本にいてやっていいことは、ビザもないことだから、ビザもいろいろ要するに滞在の目的と制限がありますけれども、とにかくビザもないで来た人、まあ言ってみれば、どちらが比重が多いかといったら、病気療養という人道的な見地からも、それじゃ日本の優秀な病院で治療なさいということで入れた、付随して病室かどこかで執筆活動をする、それも結構でしょう、しかしビザもないことですから、この二つが目的ですよという法務大臣の好意で入れられた。ところが、今度これに法的に資格というのですか、それを与えるときに、法務省が、次の、後から追って付帯する資格については、法務大臣の特別な配慮というものをさらに飛び越えて何をしてもいいという資格を与えてしまうということは、ちょっとこれは問題があるんじゃないですか。  まして金大中という人はやはり政治的にいろいろ複雑な関係なり重要な意味を持つ人物であるだけに、そういう法務省の措置というのは、金大中氏の韓国における政治的な意味合い、それから金大中氏が日本にもたらすかもしれない外交的ないろいろな影響というものを全く無視してしまって、それはいままでそういうケースがあったのかもしらないけれども、私はかなり軽率といいましょうか、それが慣例だと言われれば、そういった慣例をつくってきた法の体系というものを考えなくちゃいけないわけですけれども……。  それでは外務大臣にお聞きしますけれども、これは金大中氏の事件というのは現実にあったわけでありますけれども、今後も、この事件はこういう形で起こらないにしても、日本友好関係を持っているある政権に弓引く、これは政治活動ですから自由でしょう、また自由であるべきでありますが、その人が日本にやってきて、日本政府ではないにしても日本友好関係を持っている政府の倒閣運動を非常に熾烈に日本国会議員も巻き込んでやるということは、これはかなり外務省にとっては迷惑なことだと思いますけれども、いかがですか。
  102. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま御質問の入管令の問題につきましては、私はいまここですぐ批判してどうということを申し上げませんが、余りしゃくし定規に運用するなということを政府としてはよく言われることがあるわけでございますが、その辺のところは、いまその問題についてどうこうは申しませんが、日本に来られていろいろな政治運動をされるというときに、その行動が日本政府側にとりまして外交上その他で非常にマイナスになるというようなときには、外務省で入ってこられる場合にはこういうことはしてもらっちゃ困るというようなことを入国管理当局に言ってもらっていることがあるわけでございますが、そういうことでいまの問題はチェックしていく。何もそういうことをしなかった場合の行動につきましては、これはなかなか簡単にこうだときめつける手はないんじゃないかと私は思っております。
  103. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 外務大臣、非常に微妙な答弁をされましたけれども外務省としてはそういう配慮をすることが望ましいという見解だと私は思います。現に日本が国交を持たない北鮮から日本にやってくる朝鮮人の政治活動については、外務省からも強く申し入れてそれを制限することを行っているわけでございまして、それは当然私たちが友好関係にある韓国の政府に対する配慮だと思いますが、そういう日ごろの配慮がありながら、北鮮ではないにしても韓国からやってきた金大中氏が、友好関係のある朴政権に対する反政府運動を熾烈にするということに関してはどういうわけか、これはどこに最終的な責任があるかわかりませんけれども、時の政府は少なくともほとんど何もしなかった。私に言わせると、これは一種の八方美人外交と申しましょうか、ライシャワー氏からのプレッシャーがどの程度あったか私はつまびらかにいたしませんけれども、しかし火のないところにはうわさも煙も出ない、日本の得意の全方位外交というのをそのときにやったとしか言いようがない。  私はあのとき、たとえば北鮮系の朝鮮人が日本に来たとき日本での政治運動を規制すると同じような配慮というものを、非常に特殊なケースとして入国をこちらの好意で許可した金大中氏にその筋が的確なフォローをしていれば、あの厄介な不幸な事件は起こらなかったのではないかと思うのです。だからといって私は決してKCIAが日本の公権を侵して金大中氏を不法に拉致し海外に連れ去ったことが正当化されるとは絶対に申しません。しかしその以前の状況というものに対する反省といいましょうか、言及が全然なくて、政府はとにかく憂慮するという姿勢を持っておられますけれども日本の一部の言論が、これも非常に一方的に指弾するというその論調の前半に欠落している部分があると私は思わざるを得ないわけでございます。  外務大臣もよく御存じでしょうけれども、とにかく何かお祭りがあっても花火も上げられない、上げれば北鮮からこれは韓国に暴動が起こったと勘違いして南進が行われるかもしらぬという、そういう配慮をし、海岸の砂浜はとにかく村落の人たちが毎晩毎晩ゲリラが入ってこないように足跡をつけさせるために掃いて清めるとか、それに私も行きましたけれども、ゴルフ場のフェアウエーに夜間北側のヘリコプターがやってきて着陸しないようにロープを張りめぐらすとか、そこまでの配慮をしている国情の国が日本の間近にあり、そこと友好関係をうたっている日本政府にしては、この金大中氏の入国、滞在にかかわる事情に対する政府の配慮というものはちょっと私はずさんであったのではないかという気がしてならない。  その金大中氏の拉致事件が日本の主権の侵害というなら、福田恆存氏も文藝春秋に書いておられましたけれども、少なくとも当時の政府のあの措置といいましょうか、措置をほとんどしなかったという姿勢は、主権に対する軽視としか言いようがないという気が私はいたします。  いずれにしましても、私たちはこの金大中事件から多くのものを学ばなければいけませんし、これから国際情勢もどう進展するかわかりませんが、日本友好国である外国との関係を平穏に保つためにも、金大中氏のような政治的な位置を占める外国の要人の出入国に関して、またその後の配慮に対して政府がもう少し衆人が納得できるようなきめの細かい厳密な配慮をされることを望んで、私は質問を終わります。
  104. 奥田敬和

    奥田委員長 玉城栄一君。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に大臣にお伺いいたしたいのでありますが、現在のイランイラク紛争というものが何かしら長期化の様相、そういう情勢のような感じがいたすわけであります。その中で昨日の衆議院の安保特別委員会で、例のホルムズ海峡合同パトロール艦隊の費用負担という発言外務省の方でしておられ、大変びっくりしておるわけです。  そこでお伺いいたしたいことは、当然、現在のイランイラク紛争に対してわが国が政府としてどちらかにつくというようなことはないと思いますけれども、これまで軍事的な何らかのかかわり合いを持ったことがあるのかどうか、その辺をお伺いいたします。
  106. 伊東正義

    伊東国務大臣 イランイラク紛争につきましては、紛争勃発当時より一日も早く平和的に話し合いをしてもらいたいということを伝え、日本立場としては不介入中立を守るということで一貫をしております。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この前のアフガンの問題、現在のイランイラク紛争を含めまして、在日米軍基地、在沖米軍基地が大変強化されておるように私たちの目から見れば見受けられるわけであります。その中でも特に新しい奇妙な飛行機等が入ってきまして、地元の住民に大変不安を与えておるわけであります。  そこでお伺いをいたしたいのでありますが、このロッキードSR71高高度戦略偵察機、この飛行機の性能について伺いたいわけであります。防衛庁にお尋ねをいたします。
  108. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 SR71の性能について御説明いたします。  名前のとおり戦略偵察機でございまして複座でございます。前席にパイロット、後席に偵察機器の操作員が乗っております。最大の離陸重量は約七十七トンでございます。エンジンといたしましては二基積んでおりますが、一つのエンジンがアフターバーナー使用時で一万四千七百キログラムほどの推力を持っております。装備といたしましては、偵察機でございますので、光学式、赤外線式などの偵察装置を積んでいると思われます。速度は二万四千メートル高度で三マッハ以上と言われております。航続距離といたしましては、マッハ三、二万四千メートルの高度を飛行するといたしまして、無給油で四千八百キロメートルと承知しております。航続時間といたしましては、無給油でおよそ一時間半ということであります。  以上でございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 この飛行機はどういうことを目的とする飛行機になっておるわけですか。  それともう一点は、マッハ一というのは時速何キロぐらい飛ぶのですか。
  110. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 SR71は戦略偵察機でございますので、先ほど申し上げました光学式あるいは赤外線式によりまして極東地域における戦略目標等の状況を偵察しているものと承知しておりますが、詳細はわかりません。  それから、マッハについての換算はちょっとお待ちいただきたいと思います。後ほど説明させていただきます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 極東地域における戦略的な偵察をしていると思われる。これは世界でどれぐらいいるのですか。この飛行機というのは何機ぐらいいるのですか。
  112. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 SR71につきまして、米国はおよそ十機を配備していると承知いたしております。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでちょっと外務省の方に伺いたいのですが、いわゆるロッキードSR71高高度戦略偵察機ですね、これは沖繩に配備されているのですか。
  114. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちの承知しているところでは、沖繩に三機配備されております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 三機というのは間違いありませんか。
  116. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もし間違っていれば防衛庁から訂正いたしますが、私たちが持っている情報では三機ということでございますが、念のためあるいは防衛庁の方からお答えいただいた方がより正確かと思います。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 いつから配備されたのですか。時期ですね。それと、その機数。
  118. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 SR71につきましては、一九六八年七月に三機配備されていると承知しております。一時期、一九七一年ごろには四機に増勢された時期もあったようでございます。しかし一九七七年夏からは三機になっていると承知いたしております。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 その辺は私たちの調査とちょっと機数は違います。それはまた後でなにします。  一体このSR71はどこを偵察に行っているのか、その辺いかがですか。
  120. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 SR71の行動の細部については承知いたしておりませんが、わが国周辺でございますと、ときに日本海にも飛来しているようでございます。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは非常に重大な問題でありますので、いいかげんなことをおっしゃってもらっては困るのですが、それでは外務省、このSR71はどういう形で毎日飛び立っているのか、教えていただきたいと思います。
  122. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 大変申しわけございませんが、私自身どういう形で毎日飛来しているか、着陸しているかということを実は存じておりません。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 防衛施設庁どうですか。
  124. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  私どもは那覇の防衛施設局の方で、嘉手納飛行場におけるSR71の離発着状況、これを見ているところにおきましては、朝出かけて夕方帰ってくるという状況のようでございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 マッハ三・三ですから、朝出かけて夕方帰ってくるという調子ではちょっと困るのですよ。それではマッハ一というのは時速どれくらいになりますか。ちょっとそれをはっきりおっしゃっていただかないとわからぬわけですよ。
  126. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 まだちょっと計算する時間がないわけでございます。申しわけございません。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 さっき防衛施設庁の方は、朝出ていって夕方帰ってくるというのですが、マッハ三・三で相当のところまで飛んでいっているわけですね。ちょっとその辺、それでいいですか。
  128. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  先ほど防衛庁調査二課長の方で飛行時間を申し上げましたが、この飛行機は給油を受ける能力を持っておりますので、飛行機の運用方法で米軍の方はそれだけ飛ばしているのだろうと思うのです。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 関連して。  マッハの内容について防衛庁自身が答えられない、そんなばかげた話はないのです。防衛庁がこういうことに対して承知しておらずに、これはちょっと返答できませんがというのでは、返答できるまで待ちましょうよ。  委員長、休憩を要求します。
  130. 奥田敬和

    奥田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  131. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を始めて。
  132. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 マッハ一の場合で約九百八十キロメートルでございますので、マッハ三の場合には二千九百四十キロメートルということになりますが、これは高度などでいろいろ変化があろうかと思いますので、詳細は後ほどもう一度説明させていただきます。概略はこのとおりでございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま御説明ありましたとおり、大体時速三千キロですから、先ほどの朝出かけていって夕方といいますと、相当のところまでいわゆる偵察活動をしていることになりますね。先ほど日本近海に飛来していると思われるというそんないいかげんなものではなくて、その辺どうですか。
  134. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 先ほど申し上げましたように、航続距離、無給油で四千八百キロメートルでございます。今機は給油装置を持っております。また沖繩に給油機も配備してございますので、かなりなところまで飛ぶことは推測されます。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま防衛庁は、このSR71がかなりのところまで飛んでいっていることは推測されるということをおっしゃっておられますね。そこで外務省、かなりのどの辺までこれは偵察しているのですか。
  136. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま防衛庁の方がかなりという言葉を使いましたけれども、かなりという日本語は非常に不正確でございますので、私としては、それだけでどこまで行っているかということを直接お答えすることは非常にむずかしいと思います。(玉城委員「どこに行っていますか」と呼ぶ)ですから、私の方では米軍の一つ一つの飛行機がどういうパターンで行動しているかということについては把握しておりません。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはちょっと問題じゃないですか。配備されていることはちゃんとわかるわけでしょう。しかもこれは特殊な性能を持った飛行機ですね。それがいまの話のようにかなりの遠いところまで行っている。外務省としてどこに行っているかを把握していないというのはどういうことですか。
  138. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もともと沖繩を含めて日本に駐留しております米軍は、日本及び極東の安全を目的にして配備されておるので、偵察機といえども主たる目的は日本及び極東のためというふうに承知しております。ただし、一つ一つの飛行機が毎日どういう飛行パターンをとっているか、それがどこの地域まで行っているかについては、私どもとしてはそこまでは把握していないというのが先ほどの答弁でございます。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 要するにわからないわけでしょう。その飛行機がどこを偵察して回っているということはわからないということですね。
  140. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御指摘のありました一つの飛行機がどこを偵察しているか、その具体的な状況については私自身としては把握しておりません。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 在日米軍基地がどういう形で使用されているのか、その飛行機がどこを偵察しているのか把握していないというのでは、話にならぬですね。この性能からして、この速度からして、この飛行機の目的からして、中東地域も偵察しているかもしれませんね、あなたはわからないと言うのだから。どうですか。
  142. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ことしの初めの通常国会予算委員会で他の質問がございまして、そのときに中東地域までの距離が大体六千キロということでございますので、現在の四千八百キロということであれば、必ずしも中東を十分カバーできるというふうには考えておりません。  全く仮定の問題でございますが、仮に偵察機が極東の地域をはみ出して偵察しているということがあっても、その偵察機が偵察している範囲が極東及び日本地域を主たる目的にして、そのために沖繩に駐留しているということであれば、その本来の駐留目的を損なっているというふうには私自身としては考えておりません。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 二つおっしゃっていますが、四千八百キロの航続距離だから、中東までは六千キロで——先ほどちゃんと空中給油ができると御説明があったでしょう。ですから、カバーできるとは思わないということは訂正されますか。
  144. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御答弁しましたのは空中給油なしの場合でございます。空中給油ということがあればあるいはそれは可能かもしれません。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 いいかげんなことをおっしゃったら困るのですよ。六千キロとおっしゃいましたね。いろいろな状態にもよりますけれども、時速約三千キロですね。そうすると、当然これは空中給油三回ないし四回可能であるわけですから、またやっているわけですからね。  そこで伺いたいんですが、そうしますと、在沖米軍が嘉手納基地を使用して、そのSR71が中東地域を偵察活動しているということは否定はされないわけですね。
  146. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 それは再三お答えしておりますように、私としては中東地域を偵察しているかどうかそこまで確認いたしておりませんので、確認しているということを肯定しろあるいは否定せよといわれても、現在のところではお答えできかねる問題でございます。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうふうなことをおっしゃると思いまして、私実は調査をしてきました。朝方と言いましたけれども、大体十時十五分、従来二時間ないし四時間飛んでいって、それが先月、九月の初旬ごろからは大体五時間四十分ないし六時間十分、約六時間、長くなっているわけですね。  それで、この六時間にどういう地域が入るのかも調べました。たとえば一時間でありますと、SR71の偵察は、沖繩の嘉手納基地を中心としてでありますが、中国も入ります。それからモンゴル、サハリン、もちろんフィリピン、タイ。二時間になりますと、当然ソ連の東シベリアから西シベリア、それからアフガニスタンも入ってきます。もちろんインド洋全体も入りますね。それから三時間になりますと、もちろん中東地域全部偵察活動できる範囲に入ってきますね。どうですか、防衛庁の方は。
  148. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 先ほど申し上げましたように、空中給油を行うといたしましても、空中給油機の航続距離などもございますので、それとの関係で空中給油を行う場合についての行動範囲についても計算を必要といたしますので、直ちに六時間にしてそのまま足を延ばせるかというとそうはならないのではないかと思われます。そういうことで、どこまでと言うのは大変むずかしゅうございまして、私どもが監視し得ますのは、私どもの沖繩から北海道にかけて設置しておりますレーダーサイトに限られるわけでございますので、わからないわけでございます。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 よくわかってないわけですね。  そこで、この飛行機は、例の撃墜されたU2機の後継機としてアメリカが開発した飛行機だと言われておるわけであります。したがって、軍事常識上はもちろんソ連地域、中国、あの一帯も含めて偵察活動がされているということで、これは私たちの調査でも、さっき申し上げましたとおり、先月の初旬から大体毎日のように六時間内外行ってきているわけですね。そうしますと、先ほども中東地域というのは六千キロということをおっしゃいましたから、これは二時間で十分入っちゃうんですね。  そこで、これは外務省に伺いますが、わが国が基地を提供している目的はどういうように条約上はなっているのか。
  150. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まずお答えする前に、六千キロと申し上げたのは片道でございますので、往復だと一万二千キロということでございます。  それから、基地の目的、これは六条に書いてございますように、日本国の安全及び極東の安全と平和のためということでございます。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、このSR71高高度戦略偵察機のいま申し上げました中東地域等の偵察活動、これは条約上はどうなりますか。
  152. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 全体としてSR71の行動を考えた場合に、その飛行機自身が日本国及び極東の安全と平和のために使われている、しかし、たまたま一機が中東等に偵察に出かけるということになっても、これは私たちとしては安保条約違反というふうには考えておりません。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、別にこのSR71が中東地域であろうがアフガンであろうがあるいはソビエトの上空であろうが、もちろん中国の上空であろうが、軍事的な偵察活動をするということは日米安保条約上違反ではないということをおっしゃるわけですか。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  154. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 実際にそういうことが行われておるかどうか把握しておりませんので、また仮定の問題にお答えすることになって、その仮定の問題にお答えするとまたおこられるかもしれませんけれども、そういう仮定という前提に立ちましても、SR71がある特定の地域を偵察しているということ自体それが安保条約違反と直ちになるというふうには考えておりません。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、在日米軍基地はそういう世界の至るところスパイ活動をするために貸しているのですか。
  156. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは冒頭申し上げましたように、基地全体の使用目的が日本の安全及び極東の安全と平和ということが前提でございます。たまたまその基地にいる一つの飛行機あるいは一つの船がたとえば中東の方に出動するということになっても、それによって直ちに安保条約、地位協定の違反というふうには考えておりませんし、この点は従来の安保特別国会あるいはその他国会の場において政府委員あるいは政府の側からしばしば御説明しているところでございます。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 この飛行機は皆さんがおっしゃる軍隊の移動だとかそういうことではなくて、常駐してそういう偵察活動をしているわけですね。それは違反ではないわけですね。
  158. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、私は決してその飛行機がもっぱら中東のために偵察しているということを申し上げているわけではございませんで、その本来の目的というのは、やはりそこに駐留している以上極東の安全と平和及び日本の安全という第六条の目的に従って使われておるというふうに考えております。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 どうもそういうことを聞いてますますびっくりするのですが、そうするともう、いわゆるこの在日米軍基地を使用して米軍がおっしゃるところの極東の平和と安全ということとのかかわり合いでどこでも偵察活動あるいは軍事作戦活動ができるということは、安保条約上は違反ではないということをおっしゃるわけですか。
  160. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 わが国の安全あるいは極東の安全と全くかかわりなく、そのことだけのために使われているということであれば問題かと思いますが、私たちの考えでは、現在の基地の使用形態から考えまして、そういうことはあり得ないというふうに考えております。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 このことは非常に問題ですね。と言いますのは、この飛行機はエンジン調整のときに猛烈な爆音というか騒音を出す、百二十ホン。御存じのとおり地下鉄の電車の中は八十ホンなんです。猛烈な騒音で地域住民はえらい迷惑していた。一体この飛行機はどういう飛行機なんだ。最近は六時間ということで、われわれはコンパスではかった、そうすると先ほど申し上げましたとおり中東だとか中国だとかあるいはアフガンだとかソ連だとかがそういう偵察半径の中に含まれているということで、ますます不安を持っているわけであります。  それは安保条約上そういうことがあったにしても決して違反ではないということになりますと、例の極東周辺とのかかわり合いも出てくるわけです。当然中東地域あるいはあの一帯というものは極東の周辺地域の中に含まれているということになるわけですか。
  162. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  極東の周辺ということになりますと、また再び極東の周辺に関する安保国会当時の御答弁から御説明申し上げないといけないと思うのでございますけれども安保国会におきましては、極東の範囲というものはフィリピン以北云々という説明を政府側からされました。しかしながら、その極東の区域に対して武力攻撃が行われるとか、あるいはこの区域の安全が極東の周辺の地域に起こった事情のために脅威される、脅威が起こったというような場合に、米国がこれに対処するためにとることがある行動の範囲というのは、その攻撃または脅威の性質いかんにかかわるのであって、必ずしも先ほど申し上げた極東の範囲、すなわちフィリピン以北及び日本及びその周辺を含む区域ということに局限されるわけではないと従来から御説明申し上げているわけです。  したがいまして、極東の周辺ということが問題になりますのは、それは極東に対する武力攻撃ないしは極東に対する脅威が生じた場合において極東の周辺ということが問題になるわけでございまして、前通常国会におきましてもその関連におきましてペルシャ湾とかいうことが問題になったわけでございますけれども、それも実際問題としてペルシャ湾という六千キロも離れたところに起こった事態が極東に脅威を及ぼすとかないしは極東への武力攻撃というようなことは考えられない、したがって、実際問題として極東の周辺というようなことにはならないんだという御答弁を申し上げておるわけでございます。  したがって、いまの問題にいたしましても、別に現在のイランイラクの事態というものが先ほど来申し上げているその極東というものに脅威を及ぼしているという判断はないわけでございますから、極東の周辺という概念との関連においてはただいま先生が御質問になっていらっしゃることとは関係がないというふうに私は考える次第でございます。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、先ほど北米局長がおっしゃいましたいわゆるSR71機が在日米軍基地を使用して中東あるいはもっと広い地域を偵察活動するのは、おっしゃいましたところのわが国に対する武力攻撃あるいは脅威、極東に対する脅威があるということになるわけですか、あるから許されるということになるわけですか、そういう偵察活動は。
  164. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 極東の範囲あるいは極東の周辺についてはただいま条約局長から答弁したとおりでございますが、米軍の行動の範囲がそれに必ずしも限定されない場合があるわけでございまして、それは特定の場合、たとえば非常にわかりやすいのは船の場合でございますけれども、飛行機の場合も仮に極東あるいは周辺地域に脅威がなくても、その飛行機が偵察行動のために極東あるいはその周辺地域以外に出るということを安保条約は禁止はしておりません。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 限定をしていないということですが、これは常時三機、四機、一機は故障ということですが、飛び立つときに二機一緒に飛び立つ場合もあるわけですね。それで、さっき申し上げましたとおり十時十五分に行くものと十二時十分に行くものと。毎日のようにそれをやっているわけですね。それは違反ではないわけですか。
  166. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどから御答弁いたしておりますように、玉城委員が言われているごとく毎日行動しているにしても、その行動の行き先については防衛庁当局からも御答弁しておりますとおりでございまして、仮にその飛行機がもっぱら中東地域というところに出動しているということであれば、安保条約の問題が出てくるかと思いますけれども、私どもとしてはその飛行機が駐留目的のため、極東の安全と平和のために活動しているということの判断の上に立って、このSR71が沖繩に駐留している点については違反ではないということを考えておりますし、現在玉城委員が言われるように、果たして毎日その時間に中東の地域に出動しているかどうかということは、先生がそういうことをいろいろと観察されているということは記憶しておりますけれども、われわれとしては必ずしもその意見のとおりというふうには考えておりません。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 私、非常にびっくりしましたが、沖繩の米軍基地が世界の至るところ、この飛行機の性能からして、スパイ活動ができることが安保条約上違反ではない、許されているということを聞いて、もうきわめてびっくりしているわけです。これは沖繩では大問題になっておりまして、それは本当に間違いないですか。そうしますと、もう世界の至るところそういう活動は可能だということになりますね、おっしゃいましたようなことからしますと。  それと、そういう偵察活動、これは軍用機ですからね、これは軍事行動になるわけでしょう、当然軍事行動の一環になるわけじゃないですか。
  168. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 偵察機がすぐスパイかどうかということはにわかに断定できませんし、軍事行動かどうか、これは軍事行動の定義にもよりますけれども考え方基本ラインとしては、沖繩に駐留している飛行機がその本来の目的を逸脱した行為をとっていないというふうに私たちは考えております。
  169. 玉城栄一

    ○玉城委員 どうして逸脱していないというふうに考えているのですか。
  170. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 日米関係日米安保条約を軸として信頼関係に立っておりまして、仮にアメリカ側が条約あるいは協定に違反するようなことがあれば当然それは日米安保条約の根底を揺るがす問題であり、その点についてアメリカ側から、仮にそういう行動をとった場合にわが方に対して通報があるということをわれわれは確信しております。
  171. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後になるとそんなことをおっしゃるのですけれども、実際に私たちが調査して、もう何回も申し上げますけれども、マッハ三・三、それだけの性能を持った、超スピードですから当然あの一帯も含まれている、それは安保条約上違反ではない、常時そういう形で基地が使用されていることは違反ではないということをおっしゃっているものですから、これは大変なことだということで私も非常にびっくりしているわけです。再三念を押します。それでいいのですか。
  172. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来の答弁の繰り返しになりますけれども、私は決してSR71が常時そういう目的のために沖繩の基地、施設、区域を使用しているということは申し上げておりませんので、仮にたまたまSR71がある特定の目的を持って極東の区域外に出るということがあっても、それ自体をとった場合には安保条約、地位協定の違反にはならないということを再三答弁している次第でございます。
  173. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これも繰り返しになりますが、そのように使用されていたら違反にはなるわけですね。
  174. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 全く仮定の問題でございますが、常時全くその目的のために毎日行動しているということであれば、これは安保条約、地位協定の精神に反するということでございます。
  175. 玉城栄一

    ○玉城委員 毎日常時そのような状態でいることを私たちは調査して、そのように推測をしております。これはもう推測と言う以外にありません。  そこで最後に大臣にお伺いしたいのですが、いままでお聞きのとおり、こういうきわめて特殊な戦略偵察機です。これは高高度から一万平方マイルというところも写真で撮ることが可能だというようなことで、これは常識的には中東一帯あるいはずっと偵察活動をしていると言われているわけですから、その点やはりこの飛行機がどういう目的でどういうところを偵察活動をしているのかということを当然わが国としては、先ほどわからない、把握していないというお話であったのですけれども、米側に照会する、あるいは外務省自体もそのことを調査されるというお考えはありませんか。
  176. 伊東正義

    伊東国務大臣 非常にむずかしい御質問でございます。恐らくいままでも事務当局としてはそういうことを聞いたことがあると思うのですが、軍事機密というようなことでなかなか御希望のような回答は得られないというのがいままでの実情でございます。この点はどういうふうにするか、防衛庁ともよく相談をしてみたいと思います。
  177. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほど局長のお答えにもありましたとおり、これは私たちは明らかに日米安保条約違反だと思います。したがって、そういう指摘があった以上は当然外務省としてもそうであるのかないのかという実態は照会するなりあるいは独自で調査をする。われわれだって調査しているのですから。六時間もこの速度で行くと——地図もあります。当然外務省としてもそのことを調査されて御報告をしていただくということをお約束していただきたいと思うのです。
  178. 伊東正義

    伊東国務大臣 相当実現可能性のあることならお約束しますと言うのですけれども、いままでの経験からして軍事機密や何かに関係することでなかなかはっきりしたことがいままでもわかっていないということで、いままでの答弁がここであったわけですし、私も聞いたわけでありますので、どういうふうにしますか、これは防衛庁とひとつ協議します。私、本当ならお約束したいのですけれども、お約束してできないといかぬですから、ひとつ協議させてください。
  179. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 先ほどのマッハについて補足させていただきます。  二万四千メートルでマッハ三の場合約三千二百キロメートル時速になります。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 終わります。
  181. 青木正久

    青木委員長代理 渡辺朗君。
  182. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 このたび日本国連安保理事会の非常任理事国に当選いたしました。しかも、百四十一票という満票に近い票数であります。私は、この時期に日本が非常任理事国になったということは大変重要な意味があろうと思っております。これに関しましては同慶にたえないところでありますが、と同時に外務当局の方々も大変努力をされたと思います、感謝を申し上げたいと思います。  そこで、この時期にこのような重要な任務を日本が背負った。外務大臣は、これは記者会見でございましたか、世界の平和と安定のために積極的かつ建設的に貢献するという言葉を言っておられます。そこで、任期はもちろん一月一日から始まるわけでありますけれども、そのような立場に置かれたわが国としては、外務大臣、当面どのような問題に積極的かつ建設的に世界の平和と安定のために取り組むということをお考えでございましょうか。
  183. 伊東正義

    伊東国務大臣 安保理世界の平和と安定に非常に大きな機能を持っているということは、先生承知のとおりでございます。実は、私この前国連に行って演説をしましたときも、安保理の拒否権がどうも乱用されるのではないか、事実の調査権というようなことでも一国でも反対されれば調査ができないというようなことではやはり国連の権威にかかわるではないか、まず拒否権の制限、事実調査ぐらいは拒否権を行使しないようにという制限をつけるべきではないかというようなことも一般演説で申したのでございます。国連の機能ということにつきましても、私は日本が述べましたことを新しく今度は理事国になって主張し、何とか実現したい、非同盟諸国とかアメリカあたりはこれに賛成しているわけでございますので、建設的と言ったのは、一つはそのことも入っているというふうに思うわけでございます。  それから、いま国連ではカンボジア問題でございますとか、あるいはソ連のアフガニスタン介入の問題でございますとか、イランイラクは、紛争勃発はもう当然でございますが、その前からパレスチナの問題をめぐって中東和平の問題もあるということでございますので、そうした現に起きている紛争もございますし、非常に危険な地域もございます。こうしたことについて日本は積極的にひとつ取り組んで、紛争をなるべく小さくし、おさめ、紛争が起きそうなときには紛争が起きないようにするというような努力安保理事会の中でやっていくということがすぐの問題として考えられるのではないかというふうに思っております。
  184. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これからの特に外務大臣の責任は大変大きいと思います。御活躍をぜひ期待をいたします。  ところで、そのような観点から、たとえば建設的あるいは積極的な役割りをといった場合に、当面のイランイラク紛争の平和的解決のために、外務大臣大変いろいろやっておられると思いますけれども、先般イラクの特使も来られました。どのようなお話がございましたでしょうか。そこら辺、許される範囲内でもし聞かしてもらえるならばありがたいと思います。
  185. 伊東正義

    伊東国務大臣 先般イラクの大統領特使が参りまして、総理も私も通産大臣も会ったわけでございますが、特使の目的は今次の紛争に当たってイラク立場を説明する、理解してもらいたい、何も日本介入をしてもらいたいとか加担をしてもらいたいとか調停をしてもらいたいとか、そうい、うことじゃないけれども自分たちの立場をひとつ理解してもらいたい、それが日本に来た目的だということで、私に対しましては、一九七五年の協定でございますとか、その前の協定の一九一三年ですか、ずっと昔の問題でございますとか、そういう条約を引いて、主として国境問題ということでいろいろ話があったわけでございます。自分たちは何も石油が欲しいんじゃない、領土が欲しいんじゃない、前のとおりの国境にしてもらいたいんだ、それが目的なんだということで、今度の紛争におけるイラク立場の説明があったというのが私に対する説明でございます。総理に対しましては、そのほかに、全世界で平和調停とかそういうことがある場合には日本も参加してほしいというようなことがあったそうでありますが、私にはそういうことはございませんで、立場の説明でございました。  それで私は、この紛争には第三国が介入すべきではない、グロムイコさんにも話したし、日本もこの問題には介入する意思もなければ、日本中立だ、そして特にホルムズ海峡の航行の安全ということについては日本は非常に大きな関心があるので、イラクにおいてもこの問題についてはあの海峡の交通が危険でできないということにならぬように十分に注意をしてもらいたいということを強く要望し、一日も早く平和裏に解決をするように、それを期待するということを話しました。  ちょうどワルトハイム事務総長から部分停戦といいますか、何日間か停戦してあそこのシャットル・アラブ川にあります船舶を脱出させる、国連旗を掲げた船は脱出させるという提案があったときでございまして、イランイラクの承諾を条件に承諾しておりましたので、イラクもぜひこれは承諾をして部分停戦をして船舶を脱出させてもらいたいということ、それからイラクにいる在留邦人の脱出について今後とも便宜を図ってもらいたい。またIJPCにつきましては、これは単に一企業ということでなくて国も参加している企業であるので、まだ操業もしてないのだ、このIJPCについては戦闘行為のさなかであるが爆撃というものはなるべくやらないようにしてもらいたいということ、あるいはイラクの中の日本の進出企業が紛争によって操業できなくなったというような損害の補償の問題も真剣に考えてもらいたい等等の希望を述べて話し合いをしたというのが、あのときのイラクの特使との話し合いでございました。  しかし、その間から満足な回答は出ておりません。その後、ワルトハイム総長にイランは同意したけれどもイラクイラクの国旗を掲げた船でないと通さぬというようなことで否定的な返事が出るとか、IJPCがまた四度目の爆撃を受けるとかいうようなことがあったわけでございます。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕  会談の中からは成果は何も出たわけじゃないのでございますが、日本立場を不介入中立、一日も早い平和、ホルムズ海峡の安全航行というようなことを強く向こう側に伝えたということでございます。
  186. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまのイランイラク紛争の平和的解決の問題についてお聞きしたいと思いますが、その前にいま外務大臣国連の機能強化ということを言われましたので、関連いたしまして質問をさせていただきたいと思います。  国連の平和維持活動にこれから日本としては積極的に建設的に貢献していくということが先ほど外務大臣のはっきりとした意思としても言明がありました。たとえばいまのイランイラク紛争がいろいろな方法での調停が行われ、平和的に解決した、その場合に、停戦という段階が来るでありましょう。あるいはそれをまた何とかして監視したり、あるいはまた再発しないような措置を講じていくということが同時に必要になってくるであろう。いま国連の平和維持活動の中で、監視団とかいろいろな名前で呼ばれておりますが、たとえばエジプト・イスラエル紛争のときには何と言いましたかUNEFというような言葉でも呼ばれた、緊急軍という言葉でも呼ばれているこのようなものが必要になってくると思います。機能強化ということ、平和維持活動機能を国連として強化していくということになれば、それをも積極的に進めなければ片手落ちだと思います。  その点、外務大臣日本としてはそれを進めていかれるか、いま具体的にはUNEF、緊急軍の問題、あるいは監視団、こういったものも必要であるし、それはイランイラク紛争の将来のためには設置しなければならぬ。これは仮定の問題かもわかりませんけれども安保理事会の非常任理事国でありますその立場からは、どのようにお考えになりますか。
  187. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生おっしゃったように、平和維持活動として監視団あるいは維持軍というようなものが過去においてそれぞれのたびに決議があって出ておることはそのとおりでございます。まず、恐らく停戦ということが前提になると思うのでございますが、停戦監視団というのは、停戦という合意ができた場合にそれを保障していくという意味で派遣されるわけでございますが、私は安保理事会の非常任理事国として、一月から理事国になるわけでございますが、その前であっても、やはり停戦という話し合いが両方でできたということであれば、両方が希望するのであれば国連からそういう監視団が出るというようなことは当然あってしかるべきじゃないかというような感じがいたします。
  188. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、国連のプレゼンスというのはこういう紛争地帯においては大変重要な意味を持ってくると思うのです。ですから、日本が平和維持活動を行っていく、その推進役になるという意味で、いまおっしゃったような点は大切なことであろうと思いますが、もし国連がそのような決議をする、また国連日本にこのような国連プレゼンスを要請してきた場合、日本としてはどのような対応をされますか。
  189. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままでの例でも国連が監視団を出す、あるいは平和維持軍を出すというときには、国連で臨時の分担金を皆決めるわけでございまして、国連に出す分担金で監視団とか、あるいは維持軍が賄われるということになるわけでございまして、過去においてそういう分担金をずっと出して日本は協力をしておるわけでございますから、そういう形で日本が協力をするということが当然だろうというふうに思います。
  190. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これはかつての朝鮮戦争のときに形成された国連軍、ああいうものと本質的に違うわけですね。これは戦闘部隊じゃないですね。むしろ停戦と交戦国間の軍隊の撤退を確保する、あるいは監視する、こういうような監視軍になるかもわからない。そのときでも、いまおっしゃるのをお聞きいたしますと、過去においてのケースは資金の方は出したけれども、それには積極的に参加するということはなかったわけですね。これについては今後もないとお考えでございますか。条件によっては参加するというふうにお考えでございますか。
  191. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの停戦監視団、維持軍ということで過去においてやられていますが、停戦監視団というのは人が各国の軍隊から抽出されて武器を携行しないで行っているというのが大体いままでの停戦監視団でございます。それから維持軍の方は武器を携行して部隊として行っている。場合によっては戦闘行為があるかもしらぬというような形で出ているわけでございます。そういう形でいままでは出ております。  それで、この前もここで問題になったのでございますが、自衛隊法上からいえばどちらにも自衛官は出られないということでございます。憲法上の議論になれば、全然武力行使を伴わない派兵ということは憲法解釈上抵触しないということであるが、維持軍の方は憲法上はできない。法律解釈をすればもうそのとおりでございますが、私は政策として両方とも——自衛隊法上できないということになっておるわけでございますし、停戦監視という場合にも、憲法解釈上はできるということであっても、政策としてはまず自衛官が行くというようなことよりも別途何か考えられるのじゃないかというふうに私は思いますので、政策としては、憲法解釈は憲法解釈でございますが、当分そういうことは考えない方がいい。別な手段で、また人的の問題でも考える余地は自衛官でなくてもあり得ると思うわけでございますから、日本憲法は平和主義ということでやっておるわけでありますから、その辺の誤解を与えるということはなるべく避けるということで、政策としてもそういう考え方をとっていった方がいいだろうというのが私の考えでございます。
  192. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお聞きしますと、自衛隊法がある、それから憲法解釈上の問題は別として政策上やるべきではない、監視団であれ維持軍であれ、国連の平和活動の名においても派遣することはできないというふうに理解をいたしました。  この憲法との関係は別途またいろいろお尋ねさせていただきたいと思いますが、いま別途の道があるのではないかということをおっしゃいましたが、それでは具体的にどんなことをお考えでございますか。たとえば民間の医療班みたいなものを派遣するとかそういうようなことをお考えでございますか。それから資金は提供するというような考え方でございますか。
  193. 伊東正義

    伊東国務大臣 経費の問題につきましては、国連でそういう停戦の監視団、維持軍を出すときにはそれぞれ特別の分担の割り当てがあるわけでございますから、これは当然いままでも出したのでございますので、国連に分担金を出すということは従来どおりでございます。  それからいま申しました監視団の方の問題でございますが、法律上、憲法解釈上できないことはないけれども自衛隊法上はそれはできないということを申し上げまして、私は法律改正までして自衛官を停戦監視団に出すというようなこともしない方が政策としてはいいということを申し上げたわけでございまして、その場合に世界から停戦監視団の中にいろいろな、たとえば通信機材を特別出してもらいたいとか、あるいはまた医務官、シビリアンのお医者さんを国連の職員になって出してもらいたいというようなこともあるいはあるかもしれません。これはシビリアンの問題として、その場合にどういうふうに協力するかということは、必要な要請がありましたら政府でどうするかということを検討したいというふうに私は思っております。
  194. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題については、これから国連の平和維持活動、また日本のそれにおける役割りというものは非常に注目されてくると私は思います。必ずしも過去のケースが適用されない新しい局面を迎えるのではあるまいか、日本の国際的な責任も大きくなっている今日、私はそういうふうに考えます。そうした場合に何かきちっとした原則をつくっておかないといけないだろうと思うのです。ケース・バイ・ケースでというような形ではいけないだろうと思います。その辺について何か原則みたいなものをすでに持っておられますですか。平和維持活動は、これはできるし、これはやるべき、これはするべきではない、きちんとつくってございますですか。
  195. 伊東正義

    伊東国務大臣 まだそういうちゃんとした基準をつくって、これはいい、これはいけないということを決めているということはございません。そういう要請が過去において一回ありまして断ったわけでございますが、まだつくっておりません。  日本憲法があって平和外交をやるのだというのが原則でございますから、これは国連でも高く評価を受けているわけでございますので、それに疑問を持たれるような行動はやるべきじゃないというのは、これは大きな原則だと私は思います。それに基づいて具体的にどういうものをどうするかということにつきましては、基準を決めてこれをこうやるということにはまだ至っておりません。まあ、要請があるかないかの問題でございますが、そういう要請がある場合にはどうしようかというふうなことは、やはり検討はしておく問題だとは思っております。
  196. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に、イランの人質問題について二、三お聞かせいただきたいと思います。  最近の新聞その他を見ておりますところによると、人質問題の解決近しというような感じがいたします。これは国連事務総長の発言であるとか、また外務省首脳として発表もございました。人質の解放が近いと日本外務省首脳は述べておられます。また新聞によれば二番目に、アメリカイランに武器供与をすることはないとも言っておられます。さらに三番目、外務省首脳として、イラクイラン戦争に与える影響はわずかであろうということも言っておられる。これはアメリカから何か通報でもございましたか。どのような観測、どのような分析の上にこのような結論といいますか、ものが出てきたのでございましょうか。
  197. 伊東正義

    伊東国務大臣 人質の問題につきましては、アメリカ政府からもワシントンの駐米大使館に情報を伝えたものがあります。ワルトハイム事務総長がこう言ったというようなことも連絡はございます。しかしどの連絡を見ましても、決定的にこれはもう本当に近いな、こういうことがあったのだから近いな、あるいは決定したとか条件はこうだとかいうものは実はまだないわけでございます。イランの首相が向こうへ行って記者会見をしたとか、あるいはイラン国会が取り上げることになったとかいうことはあるわけでございますが、そういうものを見まして少し動き出しているなという感じはございますし、アメリカ側も動き出しているという感じを持っていることは確かでございますけれども、さればと言って、早急にこれが決定されて解放の実現を見るというまでの確信はいまだれも持っていない。大使館に来る連絡でも、もう大丈夫かと思いながらだめだったという経験が過去において何回もあるので決して楽観はできない、少し動いたかなというような感じだというのがいままでの連絡でございます。
  198. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ただ、どうも人質解放のためにいろいろな環境づくりが進んでいることは事実だと外務大臣もお認めであろうと思います。その場合に、米国の指導者の最近の発言ではどうもイラン傾斜が顕著だと思います。その中でも、たとえば米国の指導者が侵略者という言葉まで使ってイラクを非難するというのは外務大臣としてどのようにお考えになりますか。
  199. 伊東正義

    伊東国務大臣 カーター大統領でございますとかマスキー国務長官が演説をした中にそういう言葉があるということを新聞で拝見をしているわけでございますが、カーター大統領演説の後の方にきますと、イランイラクの問題について片方に加担をして介入することではないということもまたはっきり言っているわけでございます。アメリカが五十数名の人質があるという特殊事情で、その人質に関連してああいう発言をしたのだろうなというふうに私も理解はしておりますが、イランイラク紛争そのものについては、アメリカが一方に加担して、たとえばイランでございますが、一方に加担して介入したのだということではない。アメリカ自身が介入する意思はない、こう言っているわけでございますし、介入ということになれば片っ方のソ連介入ということも当然考えられますし、これは大問題でございますので、私は、アメリカの責任者が介入ではないということをはっきり言っていることを信じたいし、またそうあるべきだというふうに思っております。
  200. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 心配するのはそこなんです。介入をしないだろう、一方に加担しないであろうということを外務大臣はおっしゃいますが、戦争、紛争を起こしている当事国の一方を侵略者として非難するということは、私は明らかに中立の逸脱であろうと思います。外務大臣は先ほどから超大国が介入しないように、中立であるようにということを強く言っておられましたけれども、その大臣のお立場からしたら、最近のそのような言動は単なる人質問題解決のための修辞、レトリックとして出てきているにすぎないのか、あるいはここにやはり中立性の逸脱が出てきているのか、ここら辺ははっきりしておかないと、あいまいのままでは済まされない問題であろうと私は思います。いかがお考えでございましょうか。
  201. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は、いま先生がおっしゃいました人質の問題という特殊な問題が片っ方にあるということを頭に置いての発言だったと思うのですが、介入、不介入の問題につきましては、アメリカがはっきりと一方に介入するという政策の変更をしたというふうには私は考えておりません。
  202. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点はお確かめになり、あるいはまた外務大臣としてアメリカ側に申し入れをされる御用意はございますか。
  203. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は介入はしていないということを信じ、また政策が変わったという連絡も何も受けておりませんし、むしろ逆にアメリカ側からは、政策の変更はない、これは介入ではない旨のことを言っておりますので、日本から特に言わなくても、まあ、相手国の内政干渉の問題にもなるかもしれませんし、実は私はワシントンでもグロムイコさんにも話し、マスキーさんにもそれを連絡し、介入は絶対避けるべきだということを言ってきたのでございまして、いまここで改めて行動を起こすつもりはございませんが、日本としては中立介入しないということをまた何らかの機会にはっきり述べる、世界に対してもみんなもう一回意思を表明するというようなやり方でやった方がいいんじゃないかなという感じが私はします。
  204. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 御存じのように、イラクソ連の間には一九七二年に結ばれた友好協力条約があります。その八条とか九条を読んでみましたら、これはなかなか大変だなという感じがいたしました。そういう感じを持っているときに、けさのテレビなんかでは、イラク外務大臣アメリカの指導者の発言に対して非常に神経をとがらしているし、激しい反応を示しているように受けとめられます。そういう点で、イラクに対してソ連がてこ入れをするとかというような形でソ連介入を招きはせぬだろうか、そういう心配をするのは杞憂であろうかと思いながら、私はここに出てまいりました。外務大臣は、その点について何ら杞憂はお持ちでございませんね。
  205. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま御質問になりました、ソ連イラクとの前の条約があることを私も承知しております。それでイラク外務大臣が意見を言ったことも、私もテレビで拝見しました。先生のおっしゃるようにもしも介入ということが決まって、これは仮定のことでございますが、またソ連介入するというようなことになったら、これは本当に大乱のもとでございますから、その点は米ソ両方とも介入して云々ということは本当にやってもらいたくないし、またやるべきじゃないと強く私は思っておるわけでございます。
  206. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣のお気持ちはよくわかりますが、これは日本国民の共通して持っている心配だと思います。もちろん米ソが介入したりなんかしたら大変なことになる。しかしながら、憂慮、心配があるならば、私は、外務大臣としてぜひ、いろいろなチャンネルもございましょう、個人的にお話もされること結構でありましょう、最大限にひとつ日本国民の憂慮は米ソ両国の方にも伝えておくし、またそういう介入が出ないような措置を講じてもらいたい、これはお願いでございますが、大臣、いかがでございますか。
  207. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま具体的にどういう行動をとるということまでここでお答えはできませんが、日本国民全部の心配だということは私はよくわかりますので、どういうことをするのが一番いいかという問題がありますが、先生のいまの御発言は私は十分心にとめましてこの問題に対処してまいります。
  208. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りましたので、これにてやめます。ありがとうございました。
  209. 奥田敬和

    奥田委員長 金子満広君。
  210. 金子満広

    ○金子(満)委員 最初に、金大中氏事件に関して若干の質問をしたいと思います。  韓国の軍事裁判が金大中氏に死刑の判決を下してから一カ月余りたちますけれども、こういう中で、わが国でもそうですが、国際的にも、金大中氏を救え、殺させるな、こういう運動も起き、世論も大きくなっている。もともとこれはわが国の主権に関連する事件としても見られるわけですが、そういう中で伊東外務大臣は、先般、十月十六日でしたか、参議院の外務委員会で共産党の上田議員の質問に答えて、判決文について、全文を精査する上からも判決文を入手する努力をつづけたい、こういうように答弁されているわけですが、この判決文を入手するというのがいまどのくらいの段階に来ているのか、その点を説明していただきたいと思います。
  211. 伊東正義

    伊東国務大臣 判決文の入手につきましては、ソウルはソウルで大使を通じていまやっております。具体的には、午前に御答弁したのですが、きのう次官も駐日韓国大使に会いまして、この判決文の入手についてひとつ好意的に考えてもらいたいということを要請はしておりますし、私も近く韓国大使と会いまして、同じように、これは日韓の友好関係から考えてもそれがかえってプラスになることなんですということを言って判決文の入手に努力するつもりでございますし、今後ともこれは一生懸命になって努力をしていくことを申し上げておきます。
  212. 金子満広

    ○金子(満)委員 いままで公式に申し入れはしたのですか。そして、向こうはきょうまでのところどんな回答をしているのですか。
  213. 伊東正義

    伊東国務大臣 正式といって、文書で出したわけではございません。口頭で話をしているところでございますが、まだ向こうの回答は前進はしておらぬという実情でございます。
  214. 金子満広

    ○金子(満)委員 いろいろ聞くところによると、韓国はこういう点について、判決文を渡すというような慣例はないとか内政干渉だとかとんでもないことを言っておるわけですが、判決文全文を渡したという例は幾らもあるわけですね。たとえば早川・太刀川事件もそうであったし、それからまた、その後起きたいろいろのこともそうです。文世光事件もそうですね。これは判決文を日本に渡しています。これは日本に関連した問題だから渡すあるいは渡したということであるのなら、金大中氏事件だって関連しているのですから当然渡さなければならぬ。また全文を発表したのは、朴大統領射殺事件の金載圭の判決文は、去年の十二月に翌日はもう全文が朝鮮日報にも出ているのですから、こういう点から見て、渡さないのは不届き千万だと思うのです。こういう点でもし内政干渉だなんて言われるのだったらとんでもないことだ。  大臣、これはわが国の主権にかかわることですから、そして国会でも答弁して判決の全文を取るということですから、正々堂々とやってもらわないと困ると思うのです。そういう点でひとつ努力願いたいと思います。
  215. 伊東正義

    伊東国務大臣 最後まで最善の努力をしてみるつもりでございます。
  216. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど金子委員御指摘のとおり、早川・太刀川事件は日本人であるということから韓国側としてこちらに渡したわけでございます。  それから文世光事件の場合には、これは一般の普通の裁判であるということを申し添えておきたいと思います。  それから金載圭事件で、翌日新聞に全文が出たということは御指摘のとおりでございますが、あれは関係した被告人、七、八名だったと思いますが、その全体に対する判決要旨でありますので、念のために補足して申し上げておきたいと思います。
  217. 金子満広

    ○金子(満)委員 次に、安保条約の問題について大臣及び関係者に伺いたいと思うのです。  十月十四日、これも共産党の上田参議院議員が参議院の予算委員会質問し、その中で大臣からも答弁があったんですが、三原朝雄元防衛庁長官、自民党の安保調査会長が八月下旬の日米安保セミナーで述べたこと、一つは太平洋とインド洋とが単一の戦略的舞台に変容した今日においてはこれまでの極東地域という条約地域に関する法律的概念ではとうてい対応できないという問題、もう一つは、現行の安保条約は片務的な性格である、したがってこれを双務的なものにしなければならないという意味で安保条約の改定が必要だ、こういうことをセミナーの報告で述べられている。この点について質問したのに対し伊東外務大臣は、いまの憲法の解釈からいっても集団自衛権は認めていないので、安保条約を改定してアメリカが攻撃を受けた場合に日本がそれを助けにいくとかそういうことは全然いま考えていない、安保条約の改定は考えていない、このように答弁をされましたが、これはいまでも再確認できますね。どうですか。
  218. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は予算委員会でそのとおり答えましたし、いまでも同じでございます。
  219. 金子満広

    ○金子(満)委員 ところが、その伊東外務大臣の指揮監督下にある外務省の中ではこれと逆なことが現実にやられているという問題です。外務大臣はいま全然考えていない、こう言われましたが、外務省の中では「安保条約を新たに考える」と、まるで逆のことをやっている。しかも自民党の三原安保調査会長が安保セミナーで言ったことと全くうり二つです。  これは外務省安全保障課長の丹波さんが、「安保条約を新たに考える (安保条約の今日的意味) 昭五五、一月 丹波安全保障課長」という名前で、ただ「(私的メモ)」とそこにありますが、これは一月にも四月にも出されている。そして「取扱注意」の判も押されております。この点を見ると、これは重大なことだ。それは時期は伊東外務大臣の答弁された時期より前ですからいまは違いますと言うかどうか知りませんよ。しかし外務省の中で、しかも主管の課長が安保考えるというようなこと、考えないという大臣とは逆の方向でやっている、こういうことが実際あるわけです。私は、これは事実上安保条約を改定するという方向で一定の根回しとかあるいは環境づくりが外務省の内部でも行われていると見なければならないと思うのです。  そういう点について具体的に申し上げますが、まず丹波課長おりますね。この文書は一月から初めて出したものですか。去年はこういうものはなかったのですか。
  220. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えさせていただきたいと思います。  先ほど先生は、この文書のタイトルが「安保条約を新たに考える」——確かにそう書いてございますが、その意味合いは、安保条約を改定するという意味で新たに考えるという意味でございませんで、安保条約の意味というものが今日的にどういう意味を持っているかということを国民の皆様方にぜひ知っていただきたいという意味で書いたものでございます。  文書の性格でございますが、これはまさにここに書いてございますとおり私の全く私的なメモでございまして、これはことしの一月以前から関係の方に配付して御理解をいただいておる、そういうことで、ことしの一月の日付になっておりますのは、いろいろな新たな国際情勢の変化があったものですから新たに書き直した、そういう意味でことしの一月の日付になっております。
  221. 金子満広

    ○金子(満)委員 この文書の内容については後で申し上げます。きわめて簡単なことですから簡単に答えていただきたいと思いますが、いまも配られていると言いました。どういう範囲に配っているか、これが一つ。  それからもう一つは「取扱注意」というのがあります。なぜ取り扱いに注意するのか、それは一定のところに知られては困るから取り扱いを注意ということであるのか、その点について端的に答えていただきたいと思うのです。
  222. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  この文書の中身は、私が安保条約をめぐる諸問題につきましていろいろな方にお話を申し上げたりあるいはいろいろな会合でお話を申し上げたことをまとめまして、そのような方々に配付した、ただそれだけのことでございます。  取り扱い注意の意味は、これは外交的ないわゆる外務省の秘というものではございませんけれども、あくまでも私の私的な考えを書いたものですから、そういう意味で取り扱っていただきたい、こういう意味でございます。
  223. 金子満広

    ○金子(満)委員 具体的な内容ですけれども、その辺で話したことをメモにしたのなら何も取り扱い注意でなくたっていいじゃないですか。外務省主管課長の名前を入れて最後に括弧で私的メモと書いても、これは外務省の責任ある人の文書とだれだって見ますよ。  そこで具体的には、あなたは改定ということを言ってないと言うけれども一つ安保条約の適用区域に関連してこういうことを言っています。「わが国独力によるわが国の安全の確保(わが国領土の防衛のみならず膨大な海上輸送ルートの安全確保)は、憲法問題、核武装問題を離れても経済的に不可能である。更に重要なことは、これらの問題がたとえ解決したとしても、独力でその安全を確保しうるような日本は軍事大国化した日本以外には考えられず、」こういうように言って、いまの防衛区域だけでは不十分だ、そして独力ではできないから。言わんとするところは、集団自衛というところにまで考えがいくようになって、それを独力でやれば軍事大国以外にはないのだから。  こういう問題は、いまの安保条約考えるということだったら、考えて変えるということじゃないですか。そうして「わが国の責任ある方々考えて戴きたい」。責任ある方々とは一体だれなのか。私ども国会議員も責任ある人の一員にはなると思うのです。  そうしてそういう中でもう一つは、いま国際情勢がいろいろ変わってきた。八〇年代、九〇年代にかけて安保条約というものを考えていく。「安保条約締結後一方では日本をとりまく国際情勢が変化し、他方ではわが国における政治の座標軸にも変化が起きつつあるのである。安保条約の意味をこの座標軸の中で新たに考えることを強く要望する」というのは、現行安保条約を改定するということじゃないですか。言葉がないだけの話ですよ。こういうのは挙げれば切りがない。もう膨大な文書ですからみんな読むことはいたしませんけれども。  そして安保条約の五条、六条にも関連して、現行の安保条約は片務的なものだ、その比重はますます重くなっているから双務的なものということを考えなければならない。そういうふうにして、「今後、アメリカから見ての安保条約の問題点を考えるに当っては、この安保条約の中でのバランスの変化の問題(米国民には安保条約が増々片務的に映りつつあるという問題)を常に念頭に置くべきであろう。」 つまりそういうことを頭に置いて安保条約を見ていかなければならない、これも片務を双務に変えていくという下心です。それ以外に解釈のしょうがない。  地位協定についても、発効した六〇年当時日本のGNPはアメリカの九%だった、いまは五〇%になっているのだから、こういう点からも考えていかなければならない。「その意味では地位協定のこの枠組み自体が時の流れに遅れをとっていると言えよう。」おくれをとっているのだったらおくれを取り戻す、取り戻すためには改定する以外にないのです。ですからそういう点では、考えるという言葉でいろいろ言っているけれども示唆している方向はこういうことだ。  そこで、伊東外務大臣考えてない、こういうことをやろうとは思ってないと思うのです。どうです、これは。
  224. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は大臣で、大臣考えてないと言うのですから、外務省としてそんなことは考えておりません。
  225. 丹波実

    ○丹波説明員 先生、済みません、答弁させていただきたいと思います。  先生三点お挙げになりました。国会先生にそういうことを申し上げるのは申しわけございませんけれども、まず第一点につきましては、先生は意味を全く逆に取り違えておられると私は申し上げざるを得ません。私が第一点で申し上げておりますのは、最近日本の中で一部の方に安保条約に対する不信というものが出てきておるけれども日本は独力ではできない、やはり安保条約というものに頼って初めて軍事小国でありながら日本の国を守れるのですよということをここで議論しているわけです。それはぜひ御理解いただきたい。先生が言われたのは全く逆の意味でございます。  それから安保の片務性については確かに触れておりますけれども、ここで申し上げておりますのは、アメリカ国民の意識を解説しておりまして、その意識が正しいか正しくないかは別として、アメリカ国民はそういうふうに見ておるということを単に解説しておるわけで、この点につきましては、アメリカの行政府はもとよりアメリカの議会におきましても、だから双務的にしろという意見は全くと言っていいぐらいないわけです。かつ、日本政府もこのような考え方を持っていないことにつきましては、総理外務大臣を初め明確に申し上げてきておるところで、私自身このメモの中で、だから修正しろとか改定しろということは全く示唆しておりません。  第三点の地位協定のところにつきましては、改定などということが政治的に考えられない、そういう現実的な問題としてわれわれは提起できないということも実は明確に申し上げておるところで、長期的な観点からこの問題を考えていこうという表現はありますけれども、それはまさに国民とともにどのような道があるかということを考えていきましょうという問題提起をしているまでで、ぜひそういう御理解をしていただきたい、こういうように考えます。
  226. 金子満広

    ○金子(満)委員 丹波さん、違うのです。わが国の安全確保というのは独力ではできないからアメリカと一緒にやりましょうと書いてあるのです。いいですか。それも今度は海上輸送ルートまでの安全を確保するためには大変だから、憲法の問題とか核武装問題というものがあるけれども、これを離れても独力でやるのは経済的に不可能だ、だからアメリカと一緒にやりましょうというのでしょう。  ところが、安保の適用地域は海上輸送ルートでどこまでいきますか。無限定に書いてある。どこまでいくかというのは、最近の議論を見ればペルシャ湾までいっているじゃないですか。議論の中ではそう言っているのです。こういう中で、独力ではできないからアメリカと一緒にならなければならない、海上の輸送ルートも守らなければならぬ、そのためにはというので、自分だけでやれば軍事大国になるから、軍事大国にならないようにアメリカと一緒に、片務を双務に変えなければできないでしょう、そういうことを言っているので、改定しろとは言ってない、しろと書いたらえらいことになりますよ。だから、そういうような問題がありますよ、こういうことです。  たとえばあなたの服は小さくなりましたね、大変小さいですよと言えば、体に合うものをつくりなさいというのと同じじゃないですか。長期展望で今後ずっと先を考えていけということは、いまはたとえば地位協定の中でその枠組みでやるけれども、展望を持って考えていきなさい、これをやるわけです。アメリカ国民の世論がこうだからと、あなた北米局の中だからアメリカ側に立つかどうか知りませんよ。だけれどもアメリカ側がそうだからというのをあえてここで紹介して、これは間違いであるとは言ってない、しかもそれを肯定的に言っているところに問題がある。  あなたがそれほど堂々と言うのだったら、何も取り扱い注意の判こなんか押さないでどんどん出したらどうです。私はいままでのものを外務委員会委員の皆さんに配付してもいいと思う。それをこっそり出してやっていて、それでこういうことになれば、こうだ。この文書というのはいま改定をしろとは言ってない、確かに書いてありません。しかし、これは改定の環境づくりなんですよ。そうして根回しを始めている。  三原さんのセミナーの報告があります。全文があります。ここは改定は明確に出ているわけです、そういう方向は。しかし、これはあなたの言っていることと重なっているでしょう。だれがどういう形で、三原さんのが出てどういう討議をしたか、私は知るすべはありません。これを個人で書いたということはあなたがおっしゃっているから、あるいはそうかもしれません、そう思いますよ。だけれども安保改定という方向についてはこの二つの文書は矛盾していないのですよ。あなたがどのように強弁しようとも、そういう点は私は重大な問題だと思うのです。  少なくともあなたは一私人ではないのです。外務省の中で安全保障の問題を直接担当している課長ではないですか。それが私的メモということでこういう大事な文書を指摘されるまでは黙っているのですから。指摘されたら開き直って、あなたの言うのは逆だと言う。何が逆なんですか。こういう点をはっきりしなければ、伊東外務大臣が何と言おうとも、あなたの指揮監督下にある担当の課長が現にこれをやっているのですから。  こういう点については、あの憲法問題でよく言われるでしょう。鈴木内閣憲法の改悪はいたしません、しかし個人の何とかは自由ですとかなんとかかんとか、ああいう形のものにこれがとられたらとんでもないことだ。  こういう意味で私は外務大臣にもう一言、こういうのはあなたの考えと違うのですから、外務省とは関係ないのですから、私はないと思いますから、今後も指揮監督の上でこういうことが省内で自由にやられるということについてはどういう指導をされるか伺っておきたいと思うのです。
  227. 伊東正義

    伊東国務大臣 私の考えはさっきから申し上げているとおりであります。丹波君もここで御説明をして、先生はまだ十分な御納得はいっていないようでございますが、私いままで何回も丹波君と安保の問題を議論したことがあるのでございますけれども安保改定などということは丹波君から実は一言も聞いたことはない。丹波君は本当に優秀な部下でございますので、私は、安保改定なんということを丹波君が考えてそういうものを配っているというようなことは信じられない。そんなことは私は信じないのでございまして、今後ともそういう何か、そのものとは言いませんが、一般論でもよろしゅうございますが、中でいろいろ議論することは私はいいと思うのです。省内でいろいろな意見があっていろいろな意見を闘わすことは結構だと私は思っておりますが、そういうものがあたかも外務省の何か資料のようになって外部に出るということはまずいですから、政策が全然別なことが出ることはまずいですから、それは私の責任でちゃんとしなければならぬと思います。  それで、外務省全体の考え方としまして、いまの安保条約を改定するというようなことはいま全然考えていないということは私は繰り返し申し上げますし、誤解のないようにしていただきたいし、私は丹波君がそういうことを主張したことは一回も聞いたことはございません。また、その文書は私は見ておりませんから、まことに恐縮でございますが、彼の意見もよく聞いてみまして、そうでないということが私ははっきりすると思うわけでございますが、文書の取り扱いとかそういうことで今後とも注意してまいりたいと思います。
  228. 金子満広

    ○金子(満)委員 改定するとは言っていないですよ。ここにも改定なんて一言も書いてないのです。でもたとえば「長期的観点からのより根本的な解決については国民理解が得られる途を同時併行的に模索して行くという途しかないが、いずれにしろ是非責任ある方々のこの問題の重要性についての理解を先ず得たいところである。」 こうなっているのです。改定はしないけれども現在のままでいいとは全然言っていない。こういう問題がありますよ、考えてください、こういう点もあるのですよ、考えてください。そうするとその裏には、子供じゃないんだから、ああやはり変えなければだめだ、これははっきりしている。そういう点を私は指摘しているのです。  それから、配っているということは信じられないという大臣の言葉、そのとおりだと思うのです。信じられないと思うのです。ところが、今度は文書の取り扱いに注意してくれというのではなくて、より隠しなさいということを言うのだったら、これは取り扱いの一つですけれども、つくること自体が問題なんだから、それを内緒で配っていること自体が問題なんですよ。こういう点は、それはつくったら出るのです、幾ら隠したって本人は知っているのだから。相談すれば二人知っているのです。文書にしたら一つの人格を持ってどこまでも歩くのです。そういうようなことがやられるということを考えたときに、これは重大な問題だと私が思うのは、憲法にしても最近はだんだん——外務大臣は、私は改憲論者じゃありません、これは繰り返し言っているからいいですけれども政府・与党の中だって改憲というのは勇ましいのが相当いますよ。そして改憲しないとは言いながら、自由の意見だとか個人の発言だとかどんどん出て、エスカレートして、根回しになるのです。今度安保条約の改定という問題は余り議論にならなかった。ところが憲法の方については、政府の部内では省庁の中からこういうような文書としてまだ出ていないですね。安保については出ました。こういう点で、憲法についても安保条約についても、議論するのは自由だ、そうおっしゃるかもしれないけれども、少なくとも行政府の中で、安全保障を担当しているところで、大臣政府方針と逆なこと、またそれに背馳するようなことが現実にやられているということ自体が私は問題だと思うのです。  これは伊東さん、後でくれと言えば隣で持っているのでしょうからぜひ見てもらいたいと思うのです。改正という字は一字もありませんよ。しかし、これを改定するという地ならしがこういう中にある。こういう点は正直に物を見ればわかることです。  そこで関連して若干質問をしたいのですが、安保条約とも関連するわけですけれども、ペルシャ湾の問題です。この点はきょう質問が出たかどうか私もわかりませんが、ホルムズ海峡などをめぐって合同艦隊あるいは共同艦隊とも言われ、連合艦隊とも書いておられますが、いずれにしてもアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどで横の連絡をとりつつ云々ということがあり、日本が費用分担をすることができるかできないか。いやそれは憲法上可能であるのだ、あるいはこれこれのものならいいのだとかよくないとか、いろいろ議論がある。けさ新聞を見ますと、まだ政府の統一見解ではないということが宮澤長官からも出ていますけれども外務大臣として、費用分担をするということはできるのですか、できないのですか。
  229. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生いま御質問でありましたのは、共同パトロールということで新聞によく出ているのは私も知っていますが、これは一回も協議を受けたことはないのです。ましてや費用の問題などというのは一回も話が出たこともないことでございます。私は委員会でも、そんなみみっちい話があるはずはない、政治的にそんなことは考えられぬということで答弁したのですが、何としても、仮定の問題でも法律論をやってみろ、こういうことできのう法制局と打ち合わせた上でうちの局長が申し上げたのでございまして、これは統一見解と言ってまで、関係省全部集まってやったということではございませんが、法制局と打ち合わせた見解がございますので、官房長官もそれ自体は何も否定しているのではなくて、仮定の問題でいろいろ言ったということで、きょう何か意見を聞いたそうでございますが、きのう答弁しました担当局長が一番法制局や何かに当たっているものですから、足りないところは後で私が責任を持って答えますが、まず局長から聞いていただきたいと思うわけです。
  230. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の記憶に間違いがなければ、当委員会で中路委員から同じような質問がございまして、その際に外務大臣の方から、この点については全く仮定の問題ではあるけれども、それでは検討してみましょうということを申し上げて、実はきのうの安保特別委員会でも有馬委員から同じ質問がございました。それに対して私が申し上げたのは、全くこれは仮定の問題でございますということを前提にいたしまして、憲法で禁じられている集団的自衛権というものは国家による実力行使である。そこで費用の分担というものはその集団的自衛権には該当しない。したがって、いわゆる共同パトロールに対して日本側が費用を分担することは集団的自衛権には触れないんだということを一般的にお答えして、さらにその上で、しかしこのことについてはまだ具体的な構想が全く固まっていないので、その構想が固まったときに、支出の態様とか目的を見てもう一回考える必要があるのではないかということをきのう申し上げたわけでございます。
  231. 金子満広

    ○金子(満)委員 では終わりますが、最後に一言だけ。  国家による実力行使、つまり武力行使のことですね。自衛権というのは集団であろうと個人であろうとこれは別として、自衛権というのは国連憲章でいえば武力攻撃があったとき、それを受けたときだけなんです。だからいまアメリカもイギリスも、ペルシャ湾沿岸で武力攻撃を何も受けていないのに、武装した艦隊がパトロールするというのは威嚇でしょう。威嚇でないのだったらやる必要はない。何も漁船を持っていくのではない。大砲を積んだ船がいるわけです。つまり軍艦なんです。こういうものが威嚇している。これは明らかに干渉であり、やるべきことではない。それに日本はもちろん出さないけれども、みみっちいことは言ってこないだろうと言う。金額のことでみみっちいかどうか知りませんけれども、それはみみっちかろうがみみっちくなかろうが、そういうことに日本が費用を分担することは正しくないということを私は申し上げているのです。  この点を最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  232. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的な計画とか、こう実現したということがわかりませんので、いまやられていることがどういう性格のものかということは私はわかりませんが、恐らくホルムズ海峡の航行の安全、あるいは西太平洋からインド洋へ通ずる航行の安全を確保するという目的だと私は理解しているのですが、それが干渉とかどうとかというふうには私は考えていないわけでございます。先ほどから言いますように、イランイラクの問題は第三国は介入すべきではないということをやかましく私はいままでも言っているわけでございますので、そういうものが実現するかどうかということは私はわかりませんし、また協議とかそういうことはいままで一切ないのでございます。  先生のおっしゃったようなことも仮定の問題のお答えでございますが、そういうようなことも言ってこないだろう。政策的にそういうことは私はあり得ないというふうに思っておるわけでございます。
  233. 奥田敬和

    奥田委員長 田川誠一君。
  234. 田川誠一

    ○田川委員 日本と中国の国交回復が実現できましてもう八年になります。御承知のように不正常な時代が非常に長かったので、国交は正常化され、日中平和友好条約が締結されても、なお不正常な時代の解決できないいろいろなむずかしい問題が残されたままになっています。幾つかありますけれども、その中に戦争中中国に残された人たちの問題、もっと具体的に言えば、あの終戦のときに置き去りにされた日本人の孤児の問題、この問題もようやく解決の緒についているようでございますけれども、最近は御承知のように中国もかなり開放的になりました。ことしに入ってから自分日本人だという申し出をしている人がずいぶんふえてきているわけです。後で具体的な数字は申し上げます。そのほか、今日まで中国に残留していて日本へ帰国してきた、そういう人たち日本語の教育の問題とか就職の問題とかも一応いままで仕事を始めておりますが、どうも何かほかの問題に比べて置き去りにされているような感じがしてならないのです。特に、先ほど申し上げましたように中国の体制が開放的になったために、日本人であるということを言う中国にいる人たちが非常に多くなってきているのです。とても多くなってきている。そういう人たち、国籍のない人には国籍を与え、日本に帰りたい人は日本に帰す、帰らないまでも一目祖国を見たいという人たちに願望をかなえてやることが一つの人道問題。ベトナムの難民問題は非常に大きく扱われておりますけれども、中国に残された肝心の日本人についてどうも打つ手がなまぬるいというふうに見られてならないのです。  そこで、いろいろお聞きしたいこともありますけれども、むずかしい問題じゃありませんから外務大臣から、お考えやわかっていることだけで結構ですからお話をいただきたいのですが、まずこうした中国に残された人たちの問題について、政府が中国の政府に対してこの問題を解決することについて相談しているのでしょうか。中国政府に要請をしているのかどうかということをまずお聞きしたいのです。
  235. 木内昭胤

    ○木内政府委員 田川委員御指摘のとおり、中国が非常に開放的になっておるということは事実でございます。非常に中国側の協力を得まして、確かに細々ながらという御批判は受けるかもしれませんけれども、中国に残留しております戦時中のみなしごの方々日本への永住あるいは一時帰国が実現するように努力しておりまして、これまでは身元の判明した者に制限いたしておりましたところ、本年度からわずか六十名の枠でございますけれども、身元が必ずしも判明しなくても非常に確度の高い人々についてはこの予算範囲内で賄いまして、一時帰国、あるいは身元がはっきりして受け入れが可能になった場合には永住も実現しておるわけでございます。確かに田川委員御指摘のとおり、間口がまだ狭いという御批判は受けるわけでございますが、これを広げるために今後とも中国側と十分話を詰めてまいりたいと考えております。
  236. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの状況は局長からお答えをしたとおりでございます。確かにおっしゃる問題は国内的には外務省、厚生省あたりが中心だと思いますが、中国の政府の協力を得なければならぬことば確かでございます。  中国の政府の協力を得るという前提で、確かにこれはいままで以上に取り組んで世話してあげることが大切だと、私もお話を聞いていて感じますが、私、外務大臣になって三カ月になりますけれども、それではおまえこの問題をやったかと言われれば、まだ実際問題としては私自身も取り組んだことはないというようなことでございますし、今後ともこれは大切な問題でございますから、いま局長が言いましたが、枠をもっとふやすとか、もっと一生懸命取り組むということは必要だという感じがしますことは私も同感でございます。
  237. 田川誠一

    ○田川委員 意地悪なことは質問いたしませんし、私がわかっていることは質問いたしませんから、時間がありませんから簡潔に、お答えというよりも姿勢を示していただきたい。  木内さんがいまいろいろ説明したのはみんな知っていますし、私が質問したことにお答えになってないのです。日本政府が中国政府にこの孤児の問題を解決するために正式に申し入れをしているかしてないか、これだけなんです。してなくていいですよ。しているかしてないかをお聞きしたい。
  238. 木内昭胤

    ○木内政府委員 申し入れしてございます。
  239. 田川誠一

    ○田川委員 いつごろどういうふうにだれが、日にちはいいですから、昨年とか、国交正常化したときに大平外務大臣が行ったときに言ったとか、あるいは条約ができたときに言ったとか、その程度で結構ですから、この問題を解決するように中国との間で正式に申し入れをして相談をしたかどうかということだけお聞きしたいのです。それだから、追及するというのじゃないのです。
  240. 木内昭胤

    ○木内政府委員 いつからかと申されますと、私もちょっと正確なあれはわかりませんが、とにかくこれまで再三にわたりやりとりをしておりまして、私も六月に訪中いたしましたときに沈平アジア司長ほかアジア司の方々とこの問題について一時間以上にわたって議論したことはございます。
  241. 田川誠一

    ○田川委員 議論をしたり話し合いをしているのは要請にならないのですよ。中国に正式に申し入れたり要請をしてないはずですよ。私聞いたのです。日本政府から正式に申し入れを受けたことはありませんということを私は聞いているのです。  しかし、正式な申し入れを受けたとか受けてないとかというのは両国間にとって非常に大きな問題だと私は思うのですよ。あなた御存じでしょうけれども、第二次大戦が終わったときに、ドイツとポーランドの間でやはり同じような問題があって、これは政府間の協定をやって引き揚げ者問題を解決しているのですよ。これは人間に関する問題ですからね。あなたが申し入れたというなら、後でいいですから、どういうふうにして正式に要請をし、この問題を解決するのにどういうふうに中国政府がやってくれるかという、正式に中国政府に申し入れた証拠というとおかしいですけれども、何月何日だれがやったということを私の方に知らせてください、もしそうなら。たしかないはずです。  そして、いま伊東さんが正直におっしゃったように、こうした重要な問題はアメリカなんかは大統領がみずからいろいろなことを指示してやらせていますよ。日本の場合は総理大臣施政方針にもないし、いま伊東さん本当に正直に、おっしゃったことはないと。各大臣が、外務大臣が中国と話し合いをする場合に、中国に残留した人たちのことは一刻も早く片づけたいからひとつ協力頼むよと言った外務大臣ありますか。ないはずですよ。これは大変残念なことだと思う。私はそういうことを追及するのじゃなくて、いま申し上げたようなことで、中国の残留者に対する日本政府の取り組み方は、政府ばかりじゃない、国会もそうだと思うのですが、われわれも含めてちょっと努力が足りないと思う。最近残留者の中で日本人だという申し出が非常に多くなったのですから、これからひとつ本気でもう少し——正式に中国に要請していなければ、これからでも遅くないですよ。外務大臣は正式にこの問題を申し入れて、両国の間でできるだけ早く解決してほしい。  伊東さん、これは日本のためばかりじゃないのです。日本と中国との関係が非常に不正常な時代が長かったために、中国の人たち日本へ来たままで、おじいさん、おばあさん、お父さんが行方不明になっているという人が中国側の方にもあるのですよ。だから、これは相互に解決していかなければならない問題なんです。いかがですか。あなたはやっていないと言うのですから、あなたの外務大臣在任中になるべく速やかにこの問題を、少なくとも政府姿勢として中国に申し入れること、これはちっとも恥ずかしいことではない。ひとつこのことを私は最初にあなたに要請をしたい。
  242. 伊東正義

    伊東国務大臣 お話を伺っておりまして、これは政府だけでできることでもなく、民間にもお世話をするような機関も要ると私は思うのでございますが、まず政府としての御要望がございました。十二月には日中閣僚会議があって、私は向こうへ行きますから、そのときまでには資料を少し整えて、行ったら向こうの外務大臣にこのことは正式に出す、どの機会かは別にしまして、そういうことをやりたいと思います。
  243. 田川誠一

    ○田川委員 大変率直にお答えいただいて、大平さんの遺志を継いであなたが万端やっておられたのですから、当然なことだと思いますが、ひとつこれはぜひ実行に移していただきたい。  それから、私は先ほどは申し上げませんでしたけれども、実は民間がやっているのですよ。これまで民間が身銭を切って、あなたは御存じないかもしれませんけれども、たとえば中国、特に旧満州、東北地帯から帰ってこられた方はみんな実際にそれを知っていますから、小さいグループ、会をつくっては、何とか残留者を早く帰したい、身寄りのない人の肉親を見つけたいということで、みんな小遣いをはたいてやっているのです。そして、そういう団体が日中孤児問題連合会という会をつくってやっているのです。それから、そういう団体ばかりでなく、われわれ国会の内部でも、ごく少数ですけれども、孤児問題議員懇談会、こういうものをつくって、何とかして早く、解決を少しでも促したいということでやっているわけです。また、ついせんだっては、日中友好議員連盟、これは超党派で、あなたも役員をやっていらした友好議員連盟の秘書団が中国の東北地区へ行って、この問題は何とか解決しなければならぬ、政務の間を縫って犠牲的にひとつやろうじゃないかということで、むしろ政府よりも民間やわれわれ議員の有志の者が犠牲的にボランティアとしてやりつつあるわけです。それに比べると政府の取り組み方がどうもなまぬるいということしか見えないのですね。  そこで、いままで私どもがボランティアとしてこういう問題に取り組んでおりまして、ある程度成果はおさめているわけです。もちろん外務省でも、最近は北京の大使館が一生懸命やっておられるようです。北京の大使館に、中国の残留者の中で、私は日本人だ、親を捜してほしいと申し入れている人が千二百六十七人、そのうち四百三十人、約三割四分ぐらいが見つかっているのですよ。これは政府がやっているし、あるいは民間の人たちの協力でやられているのです。しかし実際は、中国に残っている孤児というのはもっと多いはずです。私の推定ではやはり一万人を下らないと思いますよ。最近、先ほど来たびたび申し上げましたように開放的になった。いままでは日本人だ、あるいは日本語を知っているというようなことを言うとにらまれた、いまはもうそういうことはなくなったということで、このところどっと日本人として名のりを上げる人が多くなってきているわけです。  伊東さん、私だけでもこの三カ月間に、中国に残留している、中国人みたいになってしまった孤児から百三、四十通手紙をもらっているのです。御承知のように、中国のいまの生活水準といったら、日本のお金に直すと平均一万二千円ぐらいの収入でしょう。そういう生活の中で何がしかの小遣いを払って日本へ航空便で綿々と、自分日本人だ、親はこういう名前でどこ出身だ、どういうときに生まれたのだというようなことを言ってきている人が、私一人だけでここ数カ月の間に百三十人もいるのです。そのほか、こういう問題のボランティアになっている人たちに来ているわけですが、非常に多い。  こういう帰国者の問題の中で解決しなければならぬ問題は、まず肉親を捜してやらなければならぬ。そのほか、わかった人で日本へ帰ってくる人たちの言葉の問題、就職の問題、いろいろある。ところが、もう数年前からこういう問題に取り組んでいまして、政府の間がてんでんばらばらなんですよ。厚生省援護局あるいは文部省初中局、言葉の問題、日本語教育の問題でも、政府間の連絡が譲り合いのような形でなかなかうまくいかない。それから民間の団体もたくさんありますからね。これはいま連合会ができておりますが、とにかくたくさんの団体が犠牲的な精神で運動をやっている。こういうことで能率がなかなか上がらない。  そこでひとつ外務省が中心になって音頭をとってやってもらいたいことは、各省の連絡をするような、これは機関ではなくていいのです。いま行政を簡素化する中ですから、役所をつくれということは言いません。関係省庁、外務省、厚生省、文部省あるいは労働省、この程度の役所の連絡機関を総理府かどこかへちゃんとつくって、そして肉親捜しの問題あるいは帰国した場合のいろいろな問題、こういうようなことをひとつぜひやってほしい。これはやらなければならない問題だと私は思いますし、そういう意見もずいぶん出ているわけです。むずかしい機構いじりをする必要は毛頭ありません。難民問題で総理府にそれに近いような機関があるでしょう。事務局ができてますよね。そういう程度の調整機関というものをつくれないものですか、どうですか。
  244. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理府にありますのは、あれは難民問題対策室といって、ちゃんと法令に基づいてつくってあるところでございますので、これはインドシナ難民を主にやっているわけでございますが、ああいう機構をつくるということは私はなかなか大変だと思います。ですから、事実上月に一遍集まれとか、何か定期的に関係者が集まる、だれかが音頭を取って、ということで実態を考えれば私はやれるのじゃないかという気がします。本当に連絡が悪いということは私もよくわかります。ですから、これはそういうお話を伺いましたから、関係大臣とも私、相談をしてみます。機構とかそういうことじゃなくて、何か連絡がとれることを考えていくということは必要かなと思っていま伺っていたわけでございますから、これは相談をしてみます。
  245. 田川誠一

    ○田川委員 行政簡素化が叫ばれておる折ですから、私どもも機構をつくれなんということは申し上げません。そういう事務連絡の機関というか事務連絡をぜひ総理府なり外務省が中心になってうまく調整していくように、ひとつぜひとも図っていただきたい。  いろいろありますが、もう時間がありませんからもう一つ。いま厚生省が中心になって、中国の孤児を今年度の予算で六十名ばかり日本へ連れてきて一カ月ばかり里帰りして祖国を見させる、これは大変結構な案ですね。こういうことをやるということは大変結構なことですけれども、これは先ほど言いましたように、これをやったってなかなか何年かかるか、中国に残留している人たちを連れてくるのは大変時間がかかります。この間訪中しました、各党派の議員の秘書団で編成して中国へ行って帰ってきた人たちが一生懸命やっておられる一つの案があるのです。厚生省も乗り気でおられるということですけれども、もっと能率的に中国に残留している孤児に一目祖国を見させる、そのために友好の船というようなものを仕立てて、もっと大規模に日本に一定期間、一カ月じゃなくてもいいと思うのですよ、半月でもいい、祖国を見させてそして帰す。その残留孤児のために一生懸命働いてめんどうを見た中国の親に対する感謝の気持ちもあらわした方がいいと思うのです。そういう意味で、こっちから船を仕立てておみやげを持っていってやるというような友好の船、里帰りのための友好の船というようなものをひとつ実現をしてほしいと思うのです。  まあ多少予算がかかるかもしれません。しかし伊東さん、ベトナムの孤児問題に日本が一億ドル出して強力に、二百億余のお金を出しているのです。われわれ日本人の同胞の、いわゆる難民じゃありませんけれども、親がまだ見つからない、肉親が見つからない、そういう人たちのために日本政府が一体どれだけ金出していると思いますか。二億円ですよ、毎年。その中から中国の孤児を里帰りさせようということで、今度厚生省がこれを準備しているわけでしょう。まあ船一隻くらいを借り切って中国の人たち残留孤児に祖国を見せるということは、これは親が見つからなくても肉親が見つからなくても、また仮に見つかっても、日本に永住をしないという人もかなりいるわけですから、見つからない人は一目祖国を見ればもうそれで人間として満足だという人も相当いるわけですから、そういう意味の人道的な措置というものをこうした船を実現することによって満足させることもできるわけですね。このことをひとつ伊東外務大臣、ぜひとも外務省がプッシュして、厚生省と協力してこうした友好の船を実現するように努力をしてほしいのですが、いかがなものですか。
  246. 伊東正義

    伊東国務大臣 お話を伺いながら頭で、どこの予算でどうするのかなと思って実は考えていたところでございますが、船ということになれば相当なもので、来年度の予算要求を皆出しているわけでございますし、どうしたら一番いいのかな、船が一番いいのか何が一番いいのかということをいろいろ考えなければならぬと思いますが、先生のおっしゃっている意味はよくわかりますので、どういう形になるのか私もできるだけの努力はしてみます。
  247. 田川誠一

    ○田川委員 この場での話ですから、そう思い切った答えもできないと思いますけれども、とにかくあなたがいいと思ったら、これは前進するように相談してくださいませんか。  もう時間がありませんから最後に平和部隊、いわゆる国際青年協力隊、ずっと日本もやってますね、日本やドイツは大変評判がいいのです。こういう平和部隊を中国に派遣するということ、これはやってないんですね。私はやっていると思いましたら、中国に行ってないのですよ。中国へはやってない。こういうことも残留孤児の問題を解決する一つの道でもあると思うし、そればかりでなく日本と中国との友好関係をさらに緊密にしていく理解を図っていく一つの大きな道だと思うのです。できない経済協力をやって、中国の実力に沿わないような製鉄所をつくってやって中国も困っちゃってるというふうな問題、そういう問題よりも、まずこういうところから手がけて中国との交流関係を図っていくということ、これも考えていくべき問題だと思うのですが、時間になりましたか——もう時間だそうですからそのことを私はぜひ考えていただきたい。  最後に申し上げました平和部隊の問題、これは外務省の管轄ですから、そうむずかしい問題じゃないし、あなたが決意をしようとすればできる問題だと思うのですが、いかがですか。それをお聞きしまして、私の質問を終わります。
  248. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生のおっしゃったのは青年海外協力隊の話だと思いますが、これは発展途上国といいますか相手の国が受け入れるということがはっきりした場合に出しておるわけですが、中国は、いま聞いてみたんですが恐らくまだそういう交渉をしてないんじゃないか。ということで、中国側がそういうものを受け入れるか受け入れぬかの問題が前提としてあると思いますが、これも私いま初めて伺いましたので、どういうふうになるか相談してみます。
  249. 田川誠一

    ○田川委員 いや、私は受け入れると思っているから質問したのです。だから受け入れるということであったらどうでしょうか。
  250. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も本当に、いま即答しろということでございますが、よく相談してみまして、受け入れるという前提であれば、できるだけ考えられるような方向で努力をするということでやってみます。
  251. 田川誠一

    ○田川委員 じゃ終わります。
  252. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会      ————◇—————