○和田(裕)
政府委員 短SAMについての御質問でございますので、大内
委員から質問されました幾つかの点について、お答え申し上げたいと思っております。
大内
委員は、第一に、短SAMについては全天候性がないのではないか、それが欠点ではないか、こういう点を申されております。
短SAMというのは、空中ロックオン方式と申しまして、電波によって敵機の大体の位置というものを捕捉いたしまして、そちらに向かってそのミサイルを撃ち出しまして、しかる後に、ある距離まで到達いたしますと、ジェット機の熱源にその赤外線センサーがロックオンいたします。ロックオンといいますのは、簡単に言いますと目を開くとでも言いますか、赤外線に感知いたしましてそちらの方に追尾する、こういう方式でございます。したがいまして、非常に熱線を吸収する
ような、極端に密雲があるとか、そういった
ような
状況のもとでは、若干その感知能力が落ちるという点は確かにございます。
しかしながら、この赤外線ホーミングという方式は、いまお話にも出てまいりましたサイドワインダーその他、多くの各国で使っておりますところのミサイルにおいて使われておる方式でございまして、それ自体として非常にすぐれた方式であるということもございますし、それから、
日本の天候等におきまして短SAMが実際に効果を減ずる
ような、そういった天候
状況というのはきわめて少のうございます。パーセンテージにいたしましてもごく少ないパーセンテージでございます。この辺につきましては若干秘密がございますので申し上げられませんけれ
ども、ごくわずかであるということでございます。
それから、実際の実験データで申し上げましても、実際に雲の中で撃った場合におきましても四発中三発当たっておる、こういう実験データもございますし、その他からいたしまして、全天候性が欠けておるという点につきましては、欠けているのではなくて、若干、全天候性におきましてやや足りない点があるというふうに申し上げた方が正確だと思います。
しかしながら、これは総合的に見なければいけないという問題でございまして、短SAMと比較されますところの電波ホーミングの場合には、相手の飛行機からするところのジャミング、すなわち電波妨害に対してきわめて弱うございます。短SAMの場合には、これは赤外線ホーミングでございますから、電波による妨害というのは、全くこれには感知しないということでございまして、赤外線ホーミングにつきましては全く何らの妨害もきかない、大変な特色を有しておる、こういう点がございます。
その次に大内先生が質問されました点は、白煙の問題でございます。短SAMというのは撃ち出したときから白煙の航跡を引くではないか、したがって、敵機がこれを発見いたしますと、これを簡単に回避できるではないかということを申されたと思っております。
確かに短SAMにつきましては白煙を引くことは事実でございますけれ
ども、サイドワインダーもそうでございますし、スパローもそうでございます。ナイキ、ホークその他、それから
ソ連製の多くのミサイルもそうでございますけれ
ども、ミサイルが白煙を引く
ような推薬を用いているという例は非常に多うございます。なぜそうなりますかというと、白煙を引く
ような推薬を用いた方が推力が強いという事実がございますために、推力が強い推薬を使うために白煙を引くということでございまして、短SAMを開発する段階におきましても、無煙の推薬とそれから白煙を生ずる推薬というものを比較いたしまして、その結果、白煙を引くけれ
ども推力の強い推薬が使われた方がはるかに命中性能が高い、そういう
ような
判断をいたしまして、白煙を引くところの推薬を使ったという事実がございます。
なお、白煙を引いた場合にそれを回避することができるかどうかということでございますけれ
ども、まず第一に、白煙を認めてから敵機が回避をするというまでには相当の時間がかかるわけでございます。十何秒かかるということは実験例で言われておりますけれ
ども、相当な時間がかかりますために、敵機の方が攻撃態勢にあるといった場合には、白煙を認めてもそれから完全な待避
行動をとるあるいは回避
行動をとるということがきわめて不可能である、こういう
判断をしております。
それから価格の問題についてですが、大内先生がたしかローランドのことを申されまして、ローランドについては十五億円とかいうふうに言われたかと思います。
これにつきましては議事録等を見まして正確なことを申し上げないといけない点でございますが、記憶で申し上げておりますのでもし間違っておりましたら申しわけないわけでございますが、価格につきましても国産の短SAMと比べましてほとんど変わりがない、一割
程度国産の方が高いんだというふうに私は
考えております。なおまた、その価格につきましては、
アメリカ等の議会に
アメリカの改良型のローランドの価格につきまして資料を提出しておりますけれ
ども、それとの価格で比較する限りにおきましては、むしろ国産短SAMの方が安いという結果が出ております。
それから、自爆の問題があったかと思います。
自爆作用が短SAMの場合ないではないか、ローランドの場合自爆作用があるということでございますけれ
ども、実際問題といたしまして、短SAMというのは低空から来ます敵機に対しますところの武器でございますので、短SAMのあります
ような場所まで敵機が到達する前にわが方の飛行機が対処する、それからナイキとかホークとかそういった足の長いミサイルがこれに対処するということでございまして、短SAMというのは基地防空をするあるいは師団の中枢的なところを守るということでございますので、そういった短SAMのあります上で敵、味方の飛行機が入り乱れて交戦するという
ような場合は、きわめて少ないのではないかというふうに
考えられますし、また仮にそういう場合があったところで、諸
外国ともそういった場合には一般的にはミサイルを撃たない、実際撃てない、こういうことだというふうに
考えております。
また、ローランドの場合には電波ホーミングでございますので、電波ホーミングのミサイルの場合には一般的に自爆装置をつけざるを得ない、こういう技術上の特性を有しております。短SAMの場合には、撃ちましてから一定の時間がたちますとおのずから自爆いたしますので、それが自由に飛んでいって味方の飛行機にぶつかるという
ようなことについては、そういう問題はないと思っております。
それに加えまして、短SAMの場合には、敵機を捕捉する距離がローランドに比べまして二倍ございます。したがいまして、非常に早い段階で敵、味方ということについて識別する能力を持っております。したがいまして、味方の飛行機を間違って撃つという
可能性についてはきわめて少ない、こういう事実もございます。
それから
最後に、射場についてもちょっと御質問があったかと記憶しておりますけれ
ども、国内の訓練射場につきましては、
各種の見地からいま詳細な検討を行っておりまして、必要となる時期までにはこの
整備を図りたいというふうに
考えております。
なお、もう一点つけ加えさせていただきますと、価格の問題につきましてちょっと補足させていただきますと、価格等につきましては、
長期にわたりますところの
整備それから補給といったことを
考えました場合には、輸入によりますよりも国産による方が多くの場合に非常に有利である、こういった点もございます。
以上が大内先生の御質問に対しますところの回答でございますけれ
ども、国産短SAMの場合には赤外線ホーミングでございますために、一回撃った場合にはそれを撃ち放してしまう、いわゆるファイア・アンド・フォーゲットと言っておりますけれ
ども、撃ち放し特性というのを持っております。ローランドの場合には電波ホーミングでございますので、それが当たるまでの間、射手が全部実際にそれを電波的に追っていかなければいけないということで、レーダーはその一発のミサイルのために使われてしまうということで、当たるまで非常に時間がかかる。こちらの方、相手の該位を探知した場合にはあとは撃ち放しができるということで、連射が可能になるということでございまして、その点は非常に短時間の間に多くのミサイルを撃つことができるということでございます。
そういった
ような諸点をいろいろ比較考量いたしました結果といたしまして、
日本の場合には国産短SAMの方が経費効果的により有効な武器体系であろうということで、採用した
ような次第でございます。