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1980-08-27 第92回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年八月二十七日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 熊川 次男君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    太田 誠一君       加藤 紘一君    高村 正彦君       笹山 登生君    山花 貞夫君       大野  潔君    安藤  巖君       田中伊三次君    中川 秀直君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   加藤  晶君         警察庁警備局公         安第一課長   吉野  毅君         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         文化庁文化部宗         務課長     安藤 幸男君         厚生省公衆衛生         局精神衛生課長 野崎 貞彦君         運輸省航空局監         理部監督課長  近藤 憲輔君         最高裁判所事務         総局民事局長  西山 俊彦君         最高裁判所事務         総局刑事局長  柳瀬 隆次君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 八月六日  辞任         補欠選任   大原 一三君     高村 正彦君 同月二十七日  辞任         補欠選任   白川 勝彦君     笹山 登生君 同日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     白川 勝彦君     ————————————— 七月二十五日  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所西山民事局長柳瀬刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青木正久君。
  5. 青木正久

    青木委員 大臣お忙しいところを御出席くださいまして、ありがとうございました。まだ大臣になりまして日が浅いわけでございますけれども、この間に、国民に疑惑を持たれている問題あるいは誤解されている問題等がいろいろございます。時間の関係で長くは質問できませんけれども、ポイントだけをお答え願いたいと思います。  まずDC10関係でございますけれども、去る七月二十九日にダグラス社米国証券取引委員会に対しましていわゆる最終報告書なるものを提出し、同委員会がこれを公表したことが新聞に大きく出ているわけでございます。これに関連して二、三お尋ねしたいと思います。  まず、今回の最終報告書が公表されましたいきさつについて、どういうことか御説明いただきたいと思います。
  6. 前田宏

    前田説明員 昭和五十三年の十二月のことでございますが、ダグラス社に関します海外不正支払い問題を調査しておりましたアメリカ証券取引委員会、いわゆるSECでございますけれども、そこから同社証券取引法違反容疑があるということで、管轄の連邦地裁に対しまして不正行為の差しとめ命令等を求める申し立てがなされたということが始まりでございます。  そこで、同月の十五日に連邦地裁におきましては、ダグラス社SECとの間で成立しました合意、その内容は大きく分けまして三点あるわけでございますけれども、一点は、申し立てにかかわる不正行為の差しとめ、また二点は、その申し立てに関する8K報告形式報告書の速やかな提出、また三番目は、一九六九年、つまり昭和四十四年でございますが、以降の海外不正支払いに関して同社特別調査委員会をつくってそれによる調査を実施する、そして報告書提出する、こういう三点の合意ができておったわけでございますが、その合意事項の実施を命ずる決定というものがいま申しました連邦地裁でなされたわけでございます。この決定がいわゆる同意審決と呼ばれておりまして、その決定がございました関係で、ダグラス社では同日付でいわゆる8Kレポートと言われております報告書提出したわけでございます。  これが前回公表されたものでございますけれども、そういう報告書提出しました上で、いま申しました特別調査委員会による調査というものを実施してきたわけでございます。その調査が終わりまして、それを六月二十七日付で報告書というものに取りまとめて、これを先ほど指摘のありましたように七月二十九日にSEC提出をした、そこでその提出されました報告書SECによって公表された、こういう経過をたどっておるわけでございます。そのような経過でございますので、今回の公表されました最終報告書といいますものは、前回公表されましたいわゆる8K報告書というものを補完する性質のもの、かように理解しているわけでございます。
  7. 青木正久

    青木委員 今回の最終報告書なるものを拝見いたしますと、たとえば黒幕的人物の暗躍が報ぜられているなど、前のいわゆる8K報告書指摘されなかった新しい事実が含まれているようにも思えますけれども、今回の報告書の中で日本に関する記述部分について御説明いただきたいと思います。
  8. 前田宏

    前田説明員 今回公表されましたいわゆる最終報告書の性格は先ほど申し上げましたとおりでございますので、全体的には新しいものというわけではございませんで、前の報告書を補完するという形をとっておるわけでございます。その中には前回報告書表現を若干変更した部分がございますし、また報告書体裁の上では新しい事実というふうに見られる事項も含まれておるわけでございます。  それらを一応見まして分けますと、大体四点ぐらいになるのではないかというふうに思われるわけでございます。  第一点は、いわゆる一万五千ドルの支払いというものに関するものでございまして、その要旨は、一九七〇年に日本において不成功に終わった商業機販売努力に関連をしてダグラス社が一万五千ドルを支出しておる、この金額は一人の日本政府関係者に渡されたと伝えられている、この支払いコンサルタント料として十万ドルが支払われた会社の独立の商業コンサルタント示唆に基づいてなされたと伝えられている、こういう表現のようでございます。  第二点は、前から指摘されておりました百八十万ドル、これは正確には百八十二万ドルということになるようでございますが、そのコミッション支払いに関するものでございまして、その部分の要点は、いま申しました実際には百八十二万ドル、従来百八十万ドルと言われておりましたコミッション料のことについて再調査をした結果、会社つまりダグラス社日本の一商社に対してまず百四十万ドルを支払っておる、それから、そのコミッション料標準的レベル金額である、その支払いが、後で出てくる重役株主あるいは日本当該航空会社関係者に分けられたという結論を出す根拠は見出せなかったということでございます。また、残りの四十二万ドルについては、軍用機販売に関して別の日本商社に支払われたけれども、この適正を疑う理由は見出せなかったというふうになっております。でございますから、この合計百八十二万ドルについては両方を通じて疑いはないというふうな取りまとめになっているように理解されるわけでございます。  それから第三点は、コミッション料支払い総額に額が追加さるべきだという点が指摘されておりまして、細かいことは相当長いのでありますけれども、要するに、従来指摘していた金額に二十一万三千二百二十六ドルを追加するのが相当であるという指摘であります。  それから最後に第四点が、いわゆる一機百万ドルの密約というふうに報道等で言われておるものでございますけれども、その部分に関します報告書要旨は、日本におきます約二億三百万ドルに上る商業機売り込みに関して、ダグラス社日本支社の一幹部社員が、売り込み先となるであろう航空会社の一重役兼大株主から接触を受けた。この重役株主は、一機につき百万ドルの支払いを見返りとして自分は当該航空会社によるDC10型機の購入を確実なものとし得る立場にあるというふうに言って、この百万ドルは日本政治目的に使用されるということであった。その後ダグラス社の首脳がこの重役株主に会って、日本ダグラス社を代表する日本商社ダグラス社との間での書面による契約に従って支払いが行われることを条件としてそのような支払い同意をした。当該商社は直ちに協議を遂げて、その重役株主の同席のもとに商社は彼との間で満足のいく取り決めを作成すべく努力するということが合意された。ところが、その後その商社に対する一機につき百万ドルのコミッション料を規定した書面による合意の提案がダグラス社から準備されて日本商社に送付されたけれども、その合意書案と申しますか契約書案と申しますか、そういうものは当該商社によって実行されなかったようで、結局未署名のままダグラス社の方に返却されたと伝えられている。ダグラス社は最終的に提案された合意でカバーされるはずであった七機の航空機を販売したけれども、本委員会つまりこの特別調査委員会は、この重役株主に対し、その合意書案いわゆる契約書案に従った支払いがなされたとのいかなる証拠をも見出さなかったというものでございます。  なお若干補足いたしますと、最初のいわゆる一万五千ドルの支払いに関する部分でございますが、この事実は前回のいわゆる8K報告書においても指摘されているところでございますが、その表現が若干変わっておるわけでございます。  すなわち、前回報告書におきましては、販売促進費としてコンサルタントに支払った一万五千ドルの一部が政府関係者流れ可能性があるけれども、ダグラス社としてはこの伝聞に基づく報告を確認することができなかったというふうに記載されておったわけでございますが、今回はコンサルタント示唆に基づいて一人の政府関係者に渡されたと伝えられているという表現になっておるわけでございます。  それから百八十万ドルの件は先ほど申し上げたとおりでございますし、また追加すべき二十一万三千二百二十六ドルという指摘につきましても、いずれにしても不正な支払いではなかったということが明記されておるわけでございます。  それから最後に、先ほど説明申し上げましたいわゆる一機百万ドルの件につきましては、報告書体裁の上では前回報告書には触れられていませんで、今回のいわゆる最終報告書で初めて摘示された事実、こういうふうに理解しております。
  9. 青木正久

    青木委員 ただいまの御説明の中で、いわゆる  一万五千ドルの支払いに関する部分でございますけれども、ダグラス社にその支払い示唆したと言われる商業コンサルタント、これはだれかということですけれども、新聞あたりでは前に国会証言されました郷裕弘氏のことを指すのではないかと言われておりますけれども、間違いないかどうか。また、日本政府高官とは一体だれなのか。航空行政に大きな影響力を持つ単数の人と言われておりますけれども、その氏名を特定する資料があるかどうか、お答え願いたいと思います。
  10. 前田宏

    前田説明員 お尋ねの点につきましては、結局、これまでといいますか前回いろいろと問題が起こりまして、東京地検捜査をいたしました捜査結果の内容にわたることでございますので、そういう意味合いからお答えをいたしかねる面もあるわけでございますけれども、これまでいろいろと明らかにされておった事実がございますし、ただいま御指摘のような国会での証言等もございますので、そういう点から申し上げますと、第一点のいわゆるコンサルタントといいますものは、御指摘のように郷氏を指すのではないかというふうに思われるわけでございます。  それから、第二点の日本政府関係者についてでございますけれども、これがだれであるかということは今回の最終報告書の上でも記載がされておりません。また、これまでの検察当局捜査結果によりましても、その氏名を知り得るに至っていなかった、かように承知しております。
  11. 青木正久

    青木委員 DC10一機当たりに百万ドルを支払うといういわゆる密約の問題ですけれども、そのような話し合いがなされたものを商社が署名しなかったために履行されなかったというわけでございますけれども、この話に出てまいります日本商社、これは新聞によりますと三井物産であるとされていますけれども、これで間違いないかどうか。さらに航空会社重役兼大株主、これは小佐野氏であると言われておりますけれども、この点は間違いないかどうか、お答え願いたいと思います。
  12. 前田宏

    前田説明員 この点も先ほどのことと似たようなことでございまして、すでに行われました捜査結果の内容にかかわることでございますから、そういう面からお答えしがたい点がございますけれども、ただいまのようないろいろな従来明らかになった事実もございますし、つまり、たとえば五十一年の衆議院のいわゆるロッキード特別委員会での三井物産の副社長の証言でございますとか、あるいはロッキード事件の公判におきます冒頭陳述書等によりますと、いわゆる商社というのは三井物産を指すものと言ってよいように思われますし、また、いわゆる重役株主という表現であらわされている人につきまして、小佐野氏というものがその重役株主に該当する要件を備えている方だということは言えるのではないかというふうに思います。
  13. 青木正久

    青木委員 この百万ドルの支払いに関する合意書案というものは、政府は入手しているのですか。
  14. 前田宏

    前田説明員 これは先ほど最終報告書の概要について御説明しましたとおり、ダグラス社の方に返されたということになっているわけでございます。  それを捜査当局が入手しているかどうかということになりますと、これは御案内と思いますけれども、米国との司法取り決めに基づいていろいろ資料を入手しているわけでございますが、その資料の中にあるとかないとかというような問題、また、それを内容を明らかにするかどうかというような問題になりまして、司法取り決め上は司法取り決めに基づいて引き渡された資料というものは裁判のためにのみ使われるということになっておるわけでございますので、そういう観点から、いまのお尋ねに対しましては端的にお答えがいたしかねるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  15. 青木正久

    青木委員 お答えを伺っておりますと、今回の最終報告書指摘されたことは、必ずしも新しいことばかりではないというわけでございますけれども、少なくとも一万五千ドルの支払いとかあるいは一機百万ドルの密約ということについては、国民は重大な関心を持っていると思うわけでございます。  そこに何かの犯罪容疑があれば捜査を尽くすのが当然であると思うわけでございますけれども、検察当局は、今回の最終報告書が出まして、改めて捜査をするおつもりかどうか、またその場合、前回司法取り決めに基づいて改めてアメリカ司法当局資料要求するようなことはあるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  16. 前田宏

    前田説明員 ただいまの御質問の中にもございましたように、捜査当局といたしましては、犯罪疑いがあるということでございますならば当然その捜査をするということでございまして、そのことには全く変わりはないわけでございます。  そこで、今回の最終報告書なるものが公表されましたので、検察当局におきましても、その報告書記載されている事実、先ほど来御説明申し上げているような事実につきまして、改めて捜査をする要があるかどうかという点も当然含めながら、念のための検討を行ったというふうに聞いておるわけでございます。そしてその結果といたしまして、検察当局から次のような報告を受けておるわけでございます。  すなわち、今回の最終報告書内容検討したけれども、指摘されている事項は、昨年のいわゆる日商岩井事件捜査過程において、アメリカ司法当局の協力を得て入手した米側資料あるいは日本国内関係資料関係証拠等によってすでに把握されていた事実の域を出ていない。したがって、こういう関係の事実については当時の事件処理の際にすでに検討済みである、こういう報告を受けておるわけでございます。したがいまして、今回の最終報告書記載の事実に関しまして、検察当局といたしましては改めて捜査をすることはないというふうに理解しているわけでございます。  それが結論と言えば結論でございますけれども、内容にわたって少し補足をいたしますと、先ほども御説明ありましたようないわゆる一万五千ドルの件でございますが、これは先ほども御説明しましたように、報告書表現の上で若干違っておる点がございます。しかしながら、この一万五千ドルという問題は、要するにロッキード社から、どういうルートかあるいはどういういきさつかは別といたしまして、ロッキード社から日本政府関係者に対して支払われたかどうかということでございます。また私どもにとって大事なことは、そのことが何らかの犯罪を構成するかどうか、こういうことでございますので、報告書表現上の若干の差はございますけれども、実質においては問題は一致しておるわけでございます。  そういうことでございますので、検察当局におきましては、前回報告書がありました関係で、その内容というものを十分念頭に置きながら、ロッキード社からのいわゆる一万五千ドルの流れというものについて広く捜査を尽くしたわけでございまして、その結果刑事訴追をすべき犯罪容疑は認められなかったということになっておりまして、そのことは当時の国会での御報告でも申し上げておるところでございます。  そのことは今回のいわゆる再検討と申しますか念のための検討におきましても十分見直されて、同様のことであるというふうに承知しておるわけでございます。  また一言申し添えますと、この一万五千ドルの授受というものは、報告書によりましても一九七〇年つまり昭和四十五年のことでございますから、仮に右のような金の授受というものがございましても、すでに前回捜査当時におきまして贈収賄罪等犯罪というものは公訴時効が完成しておるということになるわけでございます。  それから百八十万ドル、実際には百八十二万ドルのコミッション料支払いについてでございますが、これはいずれも当時の捜査の結果それぞれの商社に正規の手数料として入っておるということが明らかになっておりまして、この件につきまして何らの犯罪も認められなかったということでございます。この点も従来国会に御報告をしているところでございます。  それから、二十一万三千二百二十六ドルのコミッション料の追加の問題でございますが、これは先ほど申しましたように、特に不正な支払いではないということが報告書自体にも明記されておるわけでございますし、また前回捜査の当時、ダグラス社軍用機ライセンス生産に関する手数料の出入りといいますか流れにつきまして捜査を遂げ、この手数料流れに関しては何らの犯罪もなかったというふうに認められておるわけでございます。この点も御報告済みのところでございます。  最後に、いわゆる一機につき百万ドルの密約というふうに言われている点の問題でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、報告書の上では新たな事実のように見られますけれども、先ほど説明をいたしました検察当局報告によりましても、この点もすでに前回検討済みであるということでございまして、改めて捜査する要はない、またその考えはないということをはっきり言っておるわけでございます。ということは、報告書の上では新たな事実のようにとられるかもしれませんけれども、当時捜査当局つまり検察当局にとりましては了知されていた事実であり、別に今回初めてわかった事実ではないということを示しているわけでございます。  なお、さらに一言申し添えますと、この報告書、今回の最終報告書記載自体から判断いたしまして、このいわゆる密約と呼ばれておるものは契約書の成立が条件ということになっていたようでございます。そのことがはっきりしております。ところが、その条件である契約書が署名されないままに返送されたということでございますので、そういう条件が成就しないということが明らかであるわけでございます。  そういうふうに考えますと、一機につき百万ドルの支払いということの約束自体条件が整わなかったために成立しなかったというふうに見るのが相当ではないかというふうに思われますし、また、この最終報告書の上で案に書かれていたような支払いがなされたという証拠は何ら見出せなかったということもはっきり最後に書いてあるわけでございますから、そういう点からいたしましても、いわゆる密約と言われるもの自体が成立しなかったということでありますし、仮にまた、そのような交渉がなされたことに関しまして何らか贈収賄等犯罪構成要件に当たるということを想定いたしましても、その時期が一九七四年以前つまり昭和四十九年以前ということに相なるわけでございますから、公訴時効は完成しているというふうに見るのが相当であろうというふうに考えられるわけでございます。  以上申しましたように、今回の最終報告書において指摘された事項につきましては、青木委員も御指摘のとおり、新聞等にも大きく報道されましたし、また、それに伴いまして国民の御関心も深いわけでございますので、検察当局といたしましては念には念を入れて見直しといいますか検討をした、しかしその結果、先ほど来申しておりますように、当時の捜査過程で把握されており、その処理の段階で結論が出ておるということでございます。  したがって、今後改めて捜査はしないというふうに申しておるわけでございますから、第二のお尋ねでございます資料要求という点も当然のことながらその必要がないというふうに相なるもの、かように考えております。
  17. 青木正久

    青木委員 前回捜査過程検討済みで、改めて捜査をしないということでございますけれども、この問題に関連しまして大臣にお伺いしたいのです。  新聞報道によりますと、大臣は、去る八月五日の記者会見SEC資料要求する意思はないと発言されておる。また同じ記者会見で、このDC10の問題、こういう問題はもういいかげんにしてもらいたいとか、あるいは時効になっているので掘り下げてもしようがないとか、あるいはアメリカに振り回されている、日本人の言うことよりもアメリカ人を信用する空気になっているというようなニュアンスの発言をされたと新聞報道されております。大臣の言わんとするところは、もう少し時間をかけて調べなければということではないかと思いますけれども、この発言につきまして一部に誤解が生じていることも事実でございます。この際、大臣の真意をお伺いしたいと思います。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘になりましたときは、閣議後の記者会見で私が閣議報告をいたしましたその後で、記者クラブの方から、法務省では米国証券委員会から公表された資料要求をするのかというお尋ねでありました。その際に、私はいまのところ要求する考えは持っていない、こう答えたわけであります。新聞報道部分部分でございますから、御指摘のとおり、あるいは誤解を生んでいる面があるんじゃないかなと私自身も思いました。  それは、外務省では資料要求してもよいと言っているという記事があわせて載っておったからでございます。外務省で言っておられるのは公表資料のことだろうと思うのであります。公表資料要求しなくても取り寄せたらいいことでございます。私が資料要求をしないかと質問を受けましたのは、日米司法取り決めに基づく資料要求と、こう考えておるわけでございます。これはあくまでも犯罪を追及していくための資料要求でございますから、犯罪容疑がないのに資料要求すべき筋合いのものではございませんし、またできるものでもございません。そういうことで、いまのところその考えは持たない、こう答えたわけでございまして、結論的なことを先に申し上げますと、その際にも、犯罪になるかならないか、しばらくその推移を見守っていきたい、犯罪容疑があるということになれば、それは当然資料要求をしなければなりませんよと申し上げているわけでございます。  その中での話として、振り回されたくないという式の表現、どういう言葉を使ったかは正確には覚えておりませんけれども、私の頭の中にあります問題は、日本日本として自主的に検察が活動をしていける、その体制を守ってあげなければいけない、これは私の判断の基礎でございます。アメリカで公表があった、真偽も確かめないで、犯罪容疑があるかないかということもわからないで騒ぎ立てることはいかがなものだろうかなという疑問、これは私は当時そういう気持ちを持っておりました。でありますから、私のそういう考え方を理解して報道をしていただけますならば誤解は出なかったんじゃないだろうかなと、こう思っておるわけでございます。
  19. 青木正久

    青木委員 時間がなくなりましたので、あとポイントだけ二つお伺いします。  ロッキード事件の最近の公判における問題についてですけれども、去る七月九日の丸紅ルートの公判で、丸紅の伊藤元専務が松尾検事の調べに対しまして、海上自衛隊の対潜哨戒機P3Cの売り込みについても檜山社長から相談を受けたと供述したと松尾検事が証言をしております。この証言内容が問題になっておりますけれども、これはどういうことか御説明願いたいと思います。
  20. 前田宏

    前田説明員 ただいまのお尋ねお答えいたします前に、先ほどいわゆるSEC報告書の公表の問題についてのお尋ねの中で私がお答えしました中で、例の一万五千ドルの件につきましてダグラス社と申すべきところをあるいはロッキード社と言い間違ったかもしれないような気がいたしますので、その点だけを訂正さしていただきたいと思います。  ただいまの証言の問題でございますが、お尋ね証言と申しますのは、当日の公判に立ち会いました検察官あるいは松尾本人から聞きましたところによりますと、当日の証人尋問を受けました際、つまり弁護人側からの反対尋問を受けました際に、弁護人の方がその前に行われた百一回の公判におきます松尾検事の証言を取り上げまして、いろいろと問いただしがあったわけでございます。  そこで、そのやりとりの中で、伊藤さんはP3Cについても楢山さんから相談を受けたことがあるというふうに供述したことがあるけれども、そのことは調書にとらなかったということを述べております。そして、その調書にとらなかった理由につきましていろいろとやりとりがあるわけでございますが、要するに伊藤氏の供述の内容が漠然としておって、それ以上に詳しい供述もなくて、またその供述自体がいわゆるトライスターの売り込みとは関係のないことであったというために調書にはとらなかったのだという趣届の証言をしたわけでございます。  ところが、この証言につきまして当時の新聞報道の中には、調書にとらなかったのは何らかの政治的な配慮と申しますかそういうような配慮によるものではないかというような報道をしたものがあったわけでございます。しかし松尾検事の証言は、先ほど来申しましたように、弁護人との問答という形の中で行われたものでございまして、その部分部分をとらえますと、若干趣旨が不明確な点がないとは言えないわけでございますけれども、一般論といたしましても、証言というものは証言全体を見てどういうことが証言されたかというふうに判断すべきものでございまして、その一言一言について論議するというのは適当でないわけでございます。  ところで、この松尾検事の証言につきましては、松尾検事も、これは実は午前中に証言がございまして、いまのようなやりとりがあったわけでございますが、それを自分でちょっと考え直しまして、どうも不明確な点があったというようなことから、当日の午後の公判の冒頭におきまして、実は午前中の発言の中で不明確な点があったので補正をしたいということで発言をしておるわけでございます。  その発言の趣旨からいたしますと、先ほど申しましたように、調書にはとらなかった、そのとらなかった理由というのは、要するに伊藤の供述が漠然としておった、それ以上に詳しい供述もなかったし、またトライスターの問題とも関係がなかったのでとらなかったというだけのことであるというふうに理解されるわけでございます。  したがいまして、一部の報道等にありますように、何か政治的な配慮によって調書にとらなかったというようなことではございませんで、検事の常識と申しますか、要するに、不確かな供述があった場合にそれを調書化いたしますと、その表現があいまいであればあいまいであるだけに、後々それを見ます訴訟関係者等が一体これはどういうことなんだろうかと首をひねることが起こりまして、そのために要らぬ誤解とか混乱が起こるということもありますので、そういう不確かなことは調書化しないというのがたてまえでございます。そういうことが頭にありましたために、そういうことを言おうとして証言の中で答えたわけでございますが、何分にもやりとりという形で行われましたので、若干不明確な点があったということになろうかと思います。  私どもといたしましては、そのように理解しております関係で、特段の問題のある証言ではない、かように考えております。
  21. 青木正久

    青木委員 時間が参りましたので、最後に金大中問題について大臣にお伺いします。  最近、韓国で金大中氏が起訴されたことにつきまして種々論議をされております。今回の金大中氏に対する起訴によって、いわゆる政治決着を見直すべきであるとの意見が一部にありますけれども、外務当局もすでに公表しておるとおり、韓国政府によれば政治決着前のわが国における同氏の言動は起訴の対象となった訴因としての事実に含まれていないとされておりますので、今回の起訴は韓国の国内問題にすぎないという見方もできると思うのですけれども、この点につきまして大臣の御見解を簡単にお願いします。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま青木さんの方からお話しになりましたとおりに経過を私も理解しているわけでございます。  日本側からは、韓国政府に対しまして金大中氏のことについては深い関心を持っているということを申しているわけでございますし、先方からは、日本政府に対しまして、訴因にはなっていない、背景説明なんだということを特に申し入れてきているようでございます。でありますと、韓国の国内問題としてこれを見守っておるべきだ、こう存じておるところでございます。
  23. 青木正久

    青木委員 終わります。
  24. 高鳥修

    高鳥委員長 横山利秋君。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 法務大臣というのは、あなたが所信表明でも先般ここでおっしゃったように、二つの大きな仕事があるというのですね。一つは法秩序の維持ということですが、もう一つは人権ということ。さしあたりいま汚職問題にもう一つウエートがかかっておりますが、基本的には、この法秩序の維持と人権ということが非常に大事なあなたの任務だと私は思うのです。ともすれば法務大臣というのは、法秩序の維持、国家権力の行使にきわめて大きなウエートを持ちがちのものだ、そう思うのであります。それで私は累次の委員会で、法務大臣というものは、常に閣議の中でも自分が人権の守り本尊だという意識を忘れるなということを言うておるわけです。  あなたがきのう閣議の中で、保安処分、刑法の全面改正ということを突如として言い出されたその真意を私は疑いたいのであります。一体新宿のバス事件の犯人が精神異常者であったのかどうなのか、それもまだ何もわかりはしない。何かいいえさを見つけた、これは精神異常者だ、これは犯罪、これは重大だ、だから保安処分が必要だ、だから刑法の全面改正が必要だ、唐突きわまると思うのでありますが、一体どういうつもりで閣議で、記者会見でもおっしゃったか、まずそれをお伺いしたい。
  26. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 最近精神障害の疑いのある者による犯罪がかなり頻発しているようでございます。そういう疑いが新宿のバスに新聞紙、油を投げ込むというような常識的には考えられないような行動によって多数の人たちが死傷をいたしましたし、また川口におきましても若干類似の事件が起こったりしたわけでございます。  私は、国民の多くの方々は一体政府は何をしているのかと大きな憤りを持ってこの事件を考えられているのじゃないだろうかなという心配がまずございました。公益を守る立場にあります私といたしましては、無為無策で、知りません、存じませんということは許されないじゃないか、こう判断をしたわけでございます。  たまたま私が法務省に参りまして、いろんな法案がずいぶん長い間そのまま膠着状態になっている、これはやはり打開していかなければならないなという判断を持ち続けてまいったわけでございます。でございますので、この際ひとつ、この問題についての年来の法務省の考え方を閣議報告をし、同時にまた関係の皆さん方と協議を続けて打開を図っていきたい、こう判断をしたわけでございます。  この機会に、きのう閣議で申し上げました点のポイントを報告させていただきますと、昭和五十三年度を例にとりますと、精神障害者または精神障害の疑いのある者による犯罪は、刑法犯の検挙人員三十八万千七百四十二人中二千七百二十七人で、割合にして約〇・七%でございますけれども、重大な凶悪事犯で見ますと、殺人で約八・四%、千八百四十三人中百五十四人でございます。放火で見ますと約一三・九%、九百四十四人中百三十一人となっております。著しい高率を占めているわけでございます。  この種の犯罪者につきましては、現行刑法上は御承知のように心神喪失を理由に不起訴または無罪とされたりしているわけでございます。これらの人たちにつきましては、精神衛生法による措置入院の手段をとれる場合もございますけれども、その運用の実際から見てまいりますと、再犯を防止して社会の安全を保つ上では必ずしも万全を期しがたい実情にあるわけでございます。  そういうようなところから、すでに刑法改正草案の中でも保安処分ということを考えてまいってきているわけでございますので、やはりこの問題を国民の皆さんたちに考えてもらいたい。精神障害者だからといって検察当局がとやかくすることは一切ありません。犯罪を犯した場合に、しかも再犯のおそれのある場合に、心神喪失ということだけで無罪、不起訴でいままで社会にまたそのまま帰してきた。それでいいのだろうか。再犯のおそれがある、また重大な犯罪を現に犯した、その場合には、一応処分というものについても法務当局、検察当局が責任を負えるようなことを考えていかなければならないのじゃないかということでございます。もちろん、どういう犯罪を犯した場合にそういう処分が行われるのかというようないろいろなことにつきましては、私は今後各方面と十分意見の交換をしていきたい、こう考えているわけでございます。  昭和三十一年に刑法を改正しようということで作業を始めたわけでございました。昭和三十八年に法務省から法制審議会に諮問をしているわけでございます。そして昭和四十九年に刑法改正の答申をいただいているわけでございます。したがいまして、作業を開始したときから計算しますと二十四年になりますし、答申をいただいてから六年になるわけでございます。それが主としてこの保安処分をめぐりまして強い反対があって膠着状態になったままでございます。  私は、いろいろな賛否の意見を自由に持ち出して論議しながら、解決への道を求め続けていくのがお互いの努力すべき点ではないか。反対だから何が何でも論議を許さない、また、ぜひこれをやりたいからいささかも他の意見に耳をかさないで、そのまま突っ走りたい、どちらも反省をしていかなければならない、こう考えているわけでございまして、私としては、社会公益を守る立場から、いまの姿のままで放置してよいのだということでは国民の皆さん方からはお許しを得られないのじゃないだろうか、こういう判断に立って、昨日閣議で申し上げ、また記者会見でもお話をさせていただいたわけでございます。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 刑法改正が多くの国民諸君から反対をされて、そしていまあなたのおっしゃるように長年にわたってこのままになっておるのには、それだけの理由があるのですよ。長らくほうってあるからやらなければならぬというのは理由ではないと思う。そんな公式的な形式的な話というのは理由にはならないと思う。  それから、いまあなたは、犯罪を犯したから、再犯のおそれのある者は、精神障害者は、こうおっしゃるのだけれども、精神障害者はそういう犯罪を犯すおそれがあるという観念が根底にあることが重大だと私は思うのです。  厚生省にお伺いしたいのですが、精神障害者の今日の総数、それから入院しておる者、自宅療養しておる者、その比率はどんな状況ですか。時間がありませんから、あわせて聞きたいのですけれども、厚生省の立場から見た保安処分問題、刑法改正についてどうお考えになっておるか伺いたい。
  28. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 昭和五十四年度の精神障害者の総数は約百五十万人と推定されておりまして、このうち入院患者は約二〇%の三十万人余でございます。残りが在宅もしくは通院している患者というふうに考えていただいてよろしいかと思います。  それから二番目の考え方でございますが、自傷他害のおそれのある精神障害者につきましては、社会防衛上の見地から、先ほど法務大臣の方からもお話がございましたように、精神衛生法に基づきまして強制的な入院医療を行っているところでございます。また措置解除された患者さんに対しましては、保健所または精神衛生センターというようなところで相談もしくは訪問指導ということを行っており、また通院治療の必要な者に対しては適正医療の促進を図っております。  なお、多発する精神患者と犯罪ということにつきましての社会問題としては十分承知しておるところでございまして、精神衛生法の範囲内で可能な対策については、今後とも適正な対策を講じていきたい、かように考えております。(横山委員「保安処分についてはどう考えるかということです」と呼ぶ)  この種の対策につきましては、障害者の人権問題等非常に困難な問題も含んでいるということもございますので、関係省庁と合わせて、その対策の検討は十分慎重にやっていきたいというふうに考えております。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 百五十万人のうちで三十万人が入院して百二十万人が通院ないしは自宅療養しているのです。あなたの考えのように、犯罪を犯した、しかしさらに再犯のおそれがあるというかぎは一応かかっておるようには見える。おるようには見えるけれども、そのおそれがあるとは一体だれがどう判断をするのでしょう。本人ではないわけですね。  私は法務委員としてお互いにはっきりしておかなければならぬのは、犯罪を犯した、刑に服した、そうすればもう昔のように前科ではないのですよ。通常人。それが、おそれがあるということで常にマークされる。さらにさかのぼれば、これは精神障害者だから何かやるんではないかという先入観、そういうものが刑法改正によって保安処分ができたならば、全国百五十万の患者、特にその家族は常に世間からどんな目で見られるか。村八分にされる、それはもういまでもそういう傾向があるわけですね。酔っぱらいも警察からそういう傾向で見られる。いまは余りありませんけれども、私の体験では、いつも酔っぱらってぐでんぐでんになってどうしようもない、何するかわからぬ、悪酔いするやつがおる。警察は留置場へとめるよりもこれは精神病院で預かってもらった方がいいということで、精神病院はまたそういうことなら預かりましょうと言うて預かっておる例が随所にあったわけです。精神病患者だから保安処分の対象にするという根底について、あなたは少し唐突ではなかろうか。厚生省はいま、遠慮しいしい物を言っているのだけれども、ちゃんとやることはやっておる、精神衛生上の法的措置がある。あなたもそうお認めですね。  そういう点からいいますと、新宿のバス事件を突如として保安処分に結びつけ、そして突如としてそれを刑法全面改正に結びつけるというのは、法務大臣としてはいささか勇み足ではありませんか。刑法の改正というのは、私どもここで何回も何回も議論をしてきたところなんですけれども、国家百年の基礎法ですよ。新宿のバス事件でいきなり刑法全面改正が躍り出るような唐突な問題ではないですよ。その点はあなた、もう少し慎重にお考えになったらどうですか。
  30. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 横山さんのような意見もございますし、私のような意見もあるわけでございまして、自分の考えは一〇〇%正しい、相手の考え方は一〇〇%間違っているというような態度をお互いにとらないで、私は議論を積み上げながらよりよい道を求めていきたいという考え方を常に抱いておるものでございまして、考え方が一つであれば、そこに膠着していれば一つも前進を見ないのです。新しい道を求めながら国民の皆さん方が御安心されるような社会を築いていきたいという一念でございます。  横山さんがそう申しておられるということではありませんけれども、聞きようによっては、何か精神障害者は全部保安処分にしようとしているというふうに誤解を与える感じがいたします。言いようによっては、善良な国民全部を法務省は刑務所にほうり込もうとしている、こういう言い方にもなってしまうじゃないか、こんな感じがするわけであります。本当に精神障害者の中で一部の人でございます。犯罪を起こされる、その中でも特に限った犯罪に私たちは話し合いの中で決めていけばいいと思うのです。そういう人について、しかも再犯のおそれがある場合に、やはり司法当局も治療について責任を果たせるようにしたい。現在も医療刑務所などあるわけでございますけれども、そういうたぐいのものでひとつ治療の面にも一はだ脱ぐべきじゃないだろうか、こういうことで社会公益を責任を持って守る役割りをしていかなければ、いまのままでは困るのじゃないだろうかなということを最近の事件の頻発から考えておるところでございます。  私が問題を提起したから、あすそのとおりに運ぶのだというようなやぼな考え方は持っておりません。しかし、やはり皆さんに大いに議論していただかなければ膠着状態から抜け出せないじゃないか、また国民の皆さん方もいまの状態では安心できないじゃないか、こういう心配を持っているわけでございます。しかも先ほども申し上げましたように、三十一年以来ですから二十四年たっているのです。やはり時間がかかり過ぎているじゃないか。もうかたかな書きの法律で残っているのはわずかなものじゃないかなと私は思うのです。おっしゃるとおり基本的な法律です。慎重にも慎重を期さなければならないと思います。しかし、改正すべきでないのだということは、またこれも言えないことじゃないか、私はこう思っておりますので、鋭意話し合いの場に乗せていきたい。私はきのうも、協議を重ねていきたい、こう申し上げたわけでございます。私としてはこの考え方を推進したいと思っているのです、こう申し上げたわけでございまして、今日もそういう気持ちで努力をしていきたい、かように存じておるわけでございます。
  31. 横山利秋

    ○横山委員 言い合いになるのは避けたいと思うのですけれども、私が注意したいのは、刑法の全面改正があなたとして信念として必要であるならば、それらしくオーソドックスにわれわれと相談をしようじゃありませんか、こう言いたいのです。  それは精神障害者を突破口にしてはいけませんよと言うのです。百五十万の精神障害者及びその家族がどんな目で、どんな心でいまあなたを見詰めようとしているか、それを考えなければいかぬ。精神障害者というもの及びその家族というものは特別な心理状態にある。それを刑法の全面改正の突破口にしてはいけませんよ。同時に、新宿のバス事件が突破口とは導入部がおかしいじゃありませんか。実態がまだわかってやしない、真相がまだわかってやしない、犯人がどういうことでやったか、警察がまだ調査している最中です。だから、あなたは問題の入り口を間違えているのじゃないか、そういうことを私は言いたいのです。本当に刑法全面改正が必要であるならば、オーソドックスに問題提起をなさったらどうですか。精神障害者を導入部にしたことに根本的な誤りがある、道筋の誤りがある、そういうことを私は指摘したいのだ。時間の関係もございますから、その点を強く指摘をいたしまして次の問題に移ります。  東本願寺の問題でございます。  承知いたしますところによりますと、武内孝麿並びに岩本を指名手配して調査をされ、検察庁としてもやや峠に差しかかっておるような気がいたします。十数年にわたる東本願寺の紛争、この問題につきましても、私はここで四、五回質問をいたしたところでありますが、京都地検の調査状況についてまず伺いたい。
  32. 前田宏

    前田説明員 お尋ねの東本願寺の事件につきましては、当委員会におきましても再三御質疑を受けてお答えをいたしているところでございますので、内容につきまして詳しいことは申し上げる必要もないかと思いますが、それだけに複雑な事案であるわけでございます。  そこで、この前もお答え申し上げましたように、警察から事件の送付を受けました京都地検におきましては、いろいろな角度から鋭意捜査を進めてきていたわけでございます。その間におきまして処理がおくれているんじゃないかというような御意見もあったと記憶いたしておりますけれども、地検としてはそれなりに努力を続けてきたわけでございまして、ただいま御指摘になりましたように、二人の者を新たに逮捕勾留をして取り調べを行っているということでございます。その内容につきましては、まさに捜査中のことでございますからお答えは差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、そういうようなことを手がかりと申しますか一つの手段といたしまして、この事件の全体の解明について引き続き努力を重ねているところでございます。
  33. 横山利秋

    ○横山委員 何かわけのわかったようなわからぬようなお話でございますが、武内孝麿を指名手配された理由としては、約手を割った、そして融資を受けた仲立ちをして、その金のピンはねをしたということでございますか。
  34. 前田宏

    前田説明員 いわゆる被疑事実の内容は、ただいま御指摘のようなことで御理解いただいてよろしいと思います。
  35. 横山利秋

    ○横山委員 その約手は、私の承知するところによれば法主、裏方、四男暢道の自筆の署名並びに正当な印鑑が使用されておった、こういうふうに理解してよろしいですか。
  36. 前田宏

    前田説明員 事実関係の詳細はこの席でいかがかと思いますけれども、ただいま御指摘のように、大谷暢道氏から割引を依頼された手形に関しての横領ということでございます。
  37. 横山利秋

    ○横山委員 その武内克麿は、自分ばかりがトカゲのしっぽだ、いわゆる君側の奸はまだおるということを新聞でも言っておりますね。  その約手というものは正当に振り出されておるというのですけれども、そうだとすれば、その約手が振り出されたこと自身に宗教法人法に抵触をする問題が存在をしているのではないのですか。
  38. 前田宏

    前田説明員 先ほども再々お断りしておりますように、先ほどお話のございましたような手形の割引、その割引の一部の横領という形での捜査が現在進められておるわけでございます。  したがいまして、その捜査の進行に伴いましていまのような点も当然検討の対象になると思いますが、要するに、この東本願寺の事件につきましてはいろいろな問題が含まれておるわけでございます。そのことに関しまして武内氏は重要な関係人の一人であるということでございましたが、従来の捜査過程では所在が不明であるというようなこともございましたので、被疑事実も認められますところから、逮捕状をとっていわゆる指名手配をしたところ出頭が得られた。また、その取り調べに伴ってもう一名の者がやはり関係者として出てきたというようなことでございまして、先ほども一般的に抽象的に申しましたように、この事件はただいま逮捕して調べている事実だけの問題ではございませんで、このことに関連するいろいろな事実、さらには本体と申しますか告訴されているいろいろな財産に絡む問題、そういうものの解明がなされるもの、かように考えておるわけでございます。  なお、従来京都地検ではもちろん鋭意捜査を続けておったわけでございますけれども、いろいろと複雑でございますし、関係者も多数あるということでございますので、捜査体制を一層強化いたしまして、大阪の方からも検事が応援するというような体制を十分整えまして捜査に努めておるところでございます。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、もちろん、法主、裏方、四男暢道を含めた関係者の事情聴取は行われたと見てよろしいですか。
  40. 前田宏

    前田説明員 何分にも捜査の途中のことでございますし、従来からお断りしているようなことでございますので、いつ、だれを、どういうふうに調べたかというようなことは、その結果を待ちませんとこの席で申し上げるのはいかがかというふうに思いますが、捜査当局といたしましては、必要な参考人、関係者というものは当然調べて真相を明らかにするというふうに御理解を賜りたいわけでございます。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 本月、天台宗、浄土宗、曹洞宗、東西本願寺の宗務総長や執事長が集まりまして、単に真宗大谷派のみならず仏教全体、否宗教法人全体の問題であるという角度から、一体機関決定を無視して代表者が判こを押せばそれが世間をまかり通る、もし京都地検の結果がそういう結果をもたらすならば、宗教法人としてはこれは一大問題である。宗教法人法に規定されておるのは、財産、土地等の売却についてはそれぞれの宗教法人の機関決定を経なければ効果はあり得ないという明白な規定があるのにかかわらず、代表者の印鑑さえあればそれで世間は通用するということが京都地検の結果として出るならば、今後、宗教法人法はざる法で何が起こるかわからぬ、ゆゆしい問題だということを会談の結果一致をいたしたそうであります。そのことについてどうお考えですか。
  42. 前田宏

    前田説明員 ただいまの宗教法人の各派の責任者と申しますかその方々の御発言につきましては直接承知していないわけでございますけれども、いま御指摘のような問題はこの事件の中に含まれている問題でございます。そのようなことでございますので、その点も当然含めてこの捜査が行われているわけでございますので、しばらくその結果をお待ちいただきたいわけでございます。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 文部省にその点伺いますが、いまの宗教法人法がきわめて緩やかな法律であって、政府が宗教法人の内部に介入するということはなかなか許さないという法律であることは私も承知をしております。しかし、そういうような宗教法人法の中にあっても、いま私が問題提起いたしましたことは明白にあるわけであります。その点について一体文部省としてはどういう感覚、どういう措置を東本願寺の問題についてとっておられるのか。事態はもうきわめて明白な状況でございますが、行政官庁としてはどうお考えですか。
  44. 安藤巖

    安藤説明員 お答え申し上げます。  宗教法人法に基づきまして、宗教団体の宗教上の問題につきまして行政機関が調停、干渉等をすることはできないということが規定されておるわけでございますが、この真宗大谷派の問題がすでに長い期間にわたって紛争が続けられておるということは、文化庁といたしましてもきわめて遺憾であるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、直ちにこの紛争に介入するというようなことはできないわけでございますので、できるだけ関係者の努力によって解決が図られるようにということを期待しておるわけでございます。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 私の言うことに率直にお答えでないのでありますよ。要するに、宗教法人法にも明白に機関決定を経なければ財産の処分をしてはならないと決めてあるではないか、それが機関決定を経ないで代表者が勝手に印鑑を押して財産を担保にして金を借りたり売却しようとしておることが明白ではないか、その点について文部省はどうしたか、こういう意味です。
  46. 安藤巖

    安藤説明員 御指摘の点につきましては、果たして機関決定に違反して行われたのかどうかということにつきましてそれぞれの主張がございますし、にわかにどちらかと言うわけにもまいらない状態でございますので、その点につきましても、目下所轄庁である京都府に出されました申請書の問題を中心にいたしまして検討を続けておるところでございます。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 いまごろそんなことを言っておっては困りますね。もう十何年にわたる問題が、いまあなたが御説明ができないようなことでは困りますね。  刑事局長にもう一つ伺いますけれども、問題のポイントとして、代表者が信仰上の争いだとして勝手に財産を利用して金をつくって、それでいろいろなところへ使ったという信仰上の問題だという主張が一つあるわけですね。信仰上の理由でやるならば代表役員が勝手にやってもよろしい、法律上よろしいという論理が一体成り立つのかどうか。いま問題は信仰上の理由ばかりではないだろう。先ほどの武内孝麿のように自分の私腹を肥やしたという疑いがある、ピンはねをして自分が勝手にそれを使ったという疑いがあるなら、問題は二つ、つまり信仰上の理由でそういうことをやったのと、私腹を肥やしたというのと二つあるわけですけれども、しかし、信仰上の理由ということであるならば、宗教法人法の規定に違反してもよろしいという論理が成り立つかどうか、この点はどうですか。
  48. 前田宏

    前田説明員 お尋ねのように、信仰上の争いといいましても、なかなか一言で言いにくいむずかしい問題があるようでございます。  お尋ねに即して申しますと、信仰上の争いであるから何をやってもいいということにならないことは当然でございますけれども、そういうことを申しますと、本件がそういうことが問題になって刑事事件になっているわけでございますので、その刑事処分の方向づけといいますか、そういうことをこの段階で私が申し上げるようなことになっても適当でないと思いますので、そういう意味ではお答えを差し控えさせていただきたいわけでございます。  ただ御指摘のように、いろいろと財産の処分につきましては手続的な意味でも規制があるわけでございますので、そういう点が適正に行われたかどうかということ、また背任罪ということになりますと、背任の構成要件ということに当たるか当たらないかという当然の問題があるわけでございますので、そういう点が解明されませんと結論的なことは申しかねるわけでございます。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 文部省に一つ、突然ですが意見を聞きたいのですけれども、いまの宗教法人法がいろいろな理由でああいうざる法であることは御存じのとおりであります。しかし、このままで一体いいんだろうか。いま東本願寺を初め宗教法人がいろいろな週刊誌や雑誌なんかでも取りざたされておりますように、まず第一、脱税の疑いがずいぶんあるということが一つ言われておる。それからもう一つは、非常に紛争が多いということが言われておる。もう一つは、財政関係がきわめてどんぶり勘定であるということが言われておる。このままで一体宗教法人はいいんだろうか、法律はそのままでいいんだろうか。もちろん国家が宗教団体の内部に介入することは余り好ましいことではないけれども、もう少し何か考えるべき点があるのではないか。  その意味で私は、一つは、宗教法人法の中に、勝手にやったことは無効であるけれども、ただし書きがあって、それは善意の第三者に対しては無効として対抗できないということがありますね。そのただし書きを削除するということが一つ考えられる。  それからもう一つは、国家が財政に介入することばできないけれども、しかし、国家は一方では固定資産税もただにしておる。いろいろな意味で便宜を計らっておるわけですね。税金も出さなくてもよろしい。その便宜というものは、国民がかわってそれを負担しているのですから、国民に対する宗教法人の責任があると思うんだから、私は、少なくとも公認会計士の監査を必要とする。いま労働組合だって公認会計士の監査が必要なんですから、国民にかわってそういう監査をさせるということが第二番目に考えられる。  それから第三番目には、これは行政上でできると思うのですが、収益事業については適正な課税をするということが必要ではなかろうか。宗教法人がいまのままであっていいと思わないのですが、その点はどうお考えですか。
  50. 安藤巖

    安藤説明員 御指摘になりましたように、現行の宗教法人法にもいろいろと問題点があるということは承知をいたしておるわけでございます。  しかしながら、宗教法人法が施行されましてから約三十年経過するわけでございますが、昨今ようやく宗教法人法の中身が定着してきたという感も片一方にするわけでございます。いろいろと問題がございますけれども、一方におきまして、宗教法人に対する実務上の研修会とか包括法人に対する研究協議会とか、そういった事柄を通じて問題点の指摘等を行っておりますので、法改正にまでいく前にまずそういった努力をしてみたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 刑事局長にお伺いしたいのですが、大阪高検も一生懸命に応援をして詰めをしているとおっしゃる。本件については本委員会であなたが去年の年末まで、いやことしの四月までに、ただすべきところはただし、私どもの要望である円満解決の方に資するとはまあ言わないけれども、この方向もにらみながら、こう言ってずっと推移をしておるわけであります。  東本願寺についての京都地検並びに検察陣の結論は一体いつごろ出るものなのか。一時、この春には不起訴になるのではないかという情報が流れましたが、今度はトカゲのしっぽ切りになるのではないか。あいまいに問題を処理してしまって、かつて同じような事件が東本願寺に起きて、同じような結果をもたらした。問題の筋道をしっかりしないままにあいまいに残すのではないか、そういう疑問がございます。  御存じのように、東本願寺は五十の別院、一万の末寺、そして歴史と伝統のある真宗大谷派でございます。全国、北海道から沖繩の果てに至りますまで、この東本願寺の檀家、僧侶、末寺、別院。社会的な問題でございます。どういうふうに、いつごろ処理をなさろうとするのか、ひとつ伺いたいと思います。
  52. 前田宏

    前田説明員 事件の処理の時期につきましてのお尋ねでございますが、前々から、いまも御指摘のように何とか年内には解決できるであろうとか、あるいは年度内にはある程度見通しがつくであろうというようなことを申し上げたこともございます。  しかしながら率直に申しまして、捜査というものは流動的なことでございますので、なかなか思ったように予定どおりにはいかないということでございます。また率直に申しまして、従来の捜査をある時点で振り返って再検討してみたところ、なお捜査を尽くすべき点が多々残っておるということにも相なりまして、先ほど来申し上げましたように捜査体制も整備をいたしまして、力を入れてその捜査を進めておるという状況にあるわけでございます。まさしくただすべきところはただすという態度でやっていくわけでございまして、時間を切りますとその時点で逆に中途半端な処理になるということもあるわけでございますから、この席でいつまでということを申しますのはそういう意味でも適当ではないんじゃないか。ただ、従来からいろいろ御指摘も受けておりますから、そういうことも踏まえて従来以上に捜査体制も強化しているということを御理解いただきまして、速やかな処理をしたいというふうに考えていることを御理解いただきたいわけでございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 京都の府民が、東本願寺は御連枝であるから検察庁は恐らく十分なことはすまいであろう、こういう疑問を抱いておる。また、総理大臣であってもいかぬことはいかぬのだということで検察陣がとった毅然たる態度については国民が喝采をしたところであります。総理大臣が引かれたのに、御連枝だからちゅうちょしておるというようなことがあってはなりません。この点をひとつはっきり申し上げておきたいと思います。  金大中について先ほど同僚委員から質問がございました。  法務大臣に伺いたいと思いますのは、政治決着を見直すということは一体どういうことなのか。政治決着というのは、要するに日本側が、金東雲は公権力の行使をした、主権の侵害をしたと主張し、韓国側は、金東雲が公務員たるの資質と品位を欠いたから、まあ不起訴ではあるけれどもやめさせた、こういう意見の対立のままにそれをあいまいにしたこと、それからそれによって政治的に不正常だったものを正常にした、この二つが政治決着の意味だと思うのですね。  そうすると、政治決着を見直すということは、その反語として、日本政府は、金東雲を初め彼らが公権力を日本で行使して主権の侵害をしたという立場に立つ。それからもう一つは、政治的に正常だったものを間違っておったからもう一遍不正常にしよう、こういう意味に理解をしてもよろしゅうございますか。
  54. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政治決着を見直すということがだれから言われているのか知りませんし、私の所管の問題でもございません。  先ほども申し上げましたように、政治決着どおりに今後も運んでいくものだと思っておりますし、犯罪捜査の面は捜査の面として日本側では続けておるということでもございますので、そのとおり見守らせていただきたい、こう存じております。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 御存じのように、この問題が起こりましたときの法務大臣田中伊三次さんでございますね。一貫して、これは明らかに韓国情報部の影が見えるということをしばしばここでもおっしゃっておるわけです。法務大臣として常に閣議でもその意味のことを言われたし、ここでもそういうことを言われた。  公権力を韓国情報部が行使をして日本の主権を侵害したおそれ十分だと当時言われておったものですが、政治決着を見直すかもしれないということは官房長官も先般言われましたね。あなたはその点についてどうお考えなんですか。閣僚の一人ですから、法務大臣ですから、公権力を行使して日本の主権を侵害したんだ、したんだけれども、まあ政治決着としてそれを問わないということになっているわけですよ。そして金大中氏の生命をあるいは自由を守るということが法務大臣として、当時田中法務大臣は人権尊重ということについて私が言うべき立場にあると言って毅然としたわけですね。自分の所管でないということは言えませんよ。だから冒頭、私が法務大臣というものは人権ということについて最も責任があるということをわざわざ言っておるわけですから、本問題はまさに外交的な問題もあろうけれども法務大臣としての自覚と責任というものが最も必要なときだと私は思うのですが、どうなんですか。
  56. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政治決着というのは国家間の話し合いで決着がつけられた問題でございますので、私はそのとおり守られていくものだと確信をいたしておるわけでございます。したがいまして、政治決着が守られなかった場合にどうこうするというようなことは軽々に政治当局者が言うべき筋合いのものでもないように私としては考えているわけでございます。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 外務委員会でしたか問題になりましたが、刑事訴訟法について伺いますが、日本における刑事訴訟法の二百五十六条、韓国の刑事訴訟法の二百五十四条、韓国の軍法会議法における二百八十九条の違いについては前田刑事局長も御存じだと思いますね。その中で、起訴事実に関係ない背景説明なんというものは日本の刑事訴訟法には必要ない、それから軍法会議法二百八十九条は日本の刑事訴訟法と全く同一ですね、書かなくてもいいということになっておりますね。  きょう入手いたしました外務省の文書によりますと、軍法会議前に大使館が韓国側当局から説明を求めたところ「八月十六日韓国側より起訴状冒頭より「1」直前までの記述内容は、単なる背景説明であって、「1」以降の内容が訴因に当る部分である旨の最終的な公式説明を得た次第である。」単なる背景説明だから訴因ではないという説明を受けた。これが公式な外務省の説明である。ごらんになったと思うのでありますけれども、この起訴状のいわゆる背景説明なるものが、全くこの「1」以下の訴因と同じような書き方がしてありますね。しかも軍法会議法では書いてはならぬ、書かなくてもいいと日本の刑事訴訟法と同じように書いてある。  そういうことから考えますと、全くこの韓国政府説明は軍法会議法の二百八十九条違反といいますか、なめられた説明ではないか。麗々しくいわゆる背景説明の中に金大中氏が日本でやったこと、韓国にしてみればけしからぬこと、転覆活動であるということ、そういうことを長々と書いておいて、これは背景説明だという理屈は全然成り立たぬのではないか。まさにこれは、政治決着なるものは韓国の内部には何ら知らされていないのではないか。日本側に向けた政治決着の説明ではないか。日本国民の皆さん、金大中が日本でやったことについては追及しませんと言うたことは、日本側に向かったことであって、韓国内部には何ら話されていないのではないか。だから軍法会議でも、いわゆる背景説明の中で、訴因に当たるようなことをくどくどと犯罪事実のように説明しておるのではないか、そう思うのでありますが、法律上日本の刑事訴訟法二百五十六条と全く同じ内容の二百八十九条をどう解釈しますか。
  58. 前田宏

    前田説明員 御指摘のように、私どもが入手しております韓国の軍法会議法の二百八十九条でございますか、その規定がわが刑事訴訟法の二百五十六条の規定とほぼ同じであるということまではもちろん承知しておるわけでございます。  しかしながら、韓国は当然のことながら外国のことでございまして、外国の法律について、その解釈または運用の実情というものがあるわけでございます。したがいまして、そのことにつきまして、第三国といいますか外国の立場にあるわが国の法務当局といたしまして、韓国の法律の解釈はどうであるとか、あるいはその運用がいいのか悪いのかというようなことは申し上げる筋合いではないのではないか、かように考えております。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 法務大臣に伺いますが、要するに了解事項というのは、金大中氏の日本でやったことについては罪を問わないということでございますね。  ところが、韓国の国家保安法違反で、背景説明と言われておるのだけれども、私は訴因だと思っているのですが、国家保安法から言いますと、金大中氏が日本でやったことについては保安法違反だという論理が成り立つわけなんです。国家保安法違反と了解事項とどちらが優先するとあなたは思うのですか。
  60. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この問題が起こりましてから、韓国政府がわざわざ日本政府に対しまして、政治決着の点は心得ているという意味で日本における行動は訴因にはなっていない、背景説明に使っているだけなんだ、こういうことを言ってきておるということでございますので、私たちとしては、韓国政府の言っていることを信頼して見守っていきたいものだ、こう存じております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 いま国民が心配しておるのは、金大中氏が死刑になるのではないか。もちろん一審、二審、三審とございますけれども、一審で死刑になるのではないか、死刑にならなくとも重罪になるのではないか。その中に国家保安法違反というものがある、その他の法律にも関係いたしますが。もしそのときに了解事項に抵触をした判決内容があるとしたら、一体どういうことになりますか。
  62. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 さきにも申し上げましたように、二国間の約束事でございますから、そのとおり守られるんだ、こう考えておるわけでございます。  したがいまして、守られなかったらどうするかというようなことは、私は言うべきものではない。両国の関係ということも私はきわめて大切なことだ、日本の安全にとっても、またアジアの安定にとっても、日本と韓国の間にことさら摩擦をつくっていくことは避けていきたいものだな、こう考えております。しかし、金大中氏の問題については日本側としても深い関心を持っているんですよと政府としてわざわざ韓国政府に申し入れておるわけでございますので、それなりの努力も払われているものだ、かように考えておるわけであります。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんので、質問をこれで終わることにいたしますが、深い関心を持っておるということと、アメリカ政府が韓国に対して申し入れた内容と、かつて西独から韓国情報部が学生を奪い取ったときにおける西独政府のとった態度と、三つを対比をいたしますと、わが日本政府のとっておる態度の微温的なこと、歯ぎしりをかむ思いがするわけであります。  深い関心を持っているという意味がどういう意味だか私にはよくわかりませんけれども、関心どころの問題じゃないですよ。国家の主権が侵害された事件ですからね。それについて政治決着というあいまいなことをして、そしてまた今度了解事項違反になるおそれが多分にある問題について、私は一日本政府の韓国政府に対してとっておる態度に対して非常に不満と憤りを感ぜざるを得ないのであります。結果が明らかになりますが、法務大臣、あなたの責任も非常に重大でございますから、そのときにおけるあなたの行動、あなたの善処される態度を注目をして、質問を終わりたいと思います。
  64. 高鳥修

    高鳥委員長 稲葉誠一君。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 前にお二人の委員がお聞きになりましたことに関連して先に質問をして、後から本筋というと語弊がありますが入りたいと思います。  最初に、松尾邦弘検事の証言要旨として法務省からいただいたのは、七月九日ですか、伊藤さんはP3Cについても檜山さんから相談を受けたことがあると供述したことがあるが、そのことは調書にとらなかった。調書にとらなかった理由は、要するに伊藤さんの供述の内容が漠然としており、それ以上詳しい供述がなく、かつトライスターの売り込みとは関係のないことであったからである、こういうことですね。  問題は、この証言ではないわけですよ。そんなことは筋ではないのです。この松尾検事が伊藤宏を調べたときに、P3Cについて供述があった。そのときに一体松尾君はどういう態度をとったかということですね。これは恐らく非常に重要な供述だというので、そのことをすぐ特捜部長なり次席検事に報告して指揮を仰いだはずですね。仰いだのか仰がないのかということですよ。内容は問題じゃない。そのときの松尾君の措置が問題なわけですよ。どういう措置をとったのですか、松尾君は。
  66. 前田宏

    前田説明員 先ほどの御質問にもお答えいたしましたとおり、確かに伊藤氏の供述の中でP3Cについても檜山さんから相談を受けたことがあるということがあったようでございます。ただ、その後で松尾が述べておりますように、要するに漠然としておって、それ以上のことはわからないということであったようでございますので、その程度に受けとめておったというふうに承知しておるわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そんなこと聞いてない。だから、伊藤からの供述があったときに、松尾君が一体どういう態度をとったかということを聞いている。特捜部長に報告したか、次席に報告して指揮を仰いだかどうかということ。あたりまえでしょう、こういう重要な供述があれば指揮を仰ぐのが。自分の一存で決めるべき筋合いのものじゃないでしょう。松尾君はいまボンの大使館にアタッシェでいるから、わからなければ後で松尾君に聞いてごらんなさい。そこが問題なんですよ。証言内容が問題ではないのよ。筋が違いますよ、答えは。ほったらかしておいたんでしょう。いかぬじゃないですか。そういう非常に重要なことがあれば、検察官としてはどうするかということについて当然指揮を仰ぐべき筋合いのものじゃないですか。どう思います。実務上当然そうでしょうが。
  68. 前田宏

    前田説明員 稲葉委員は大変重要なことだという御認識といいますか前提に立ってそういうお尋ねでございますが、その当時、私がこの証言がありましてから松尾から聞きましたことによりましても、松尾君といたしましては、稲葉先生の御理解とは少し違っているようで、それほど重視したというふうには考えていなかったように聞いているわけであります。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはおかしいですね。P3Cの問題は当時から非常に大きな問題であって、P3Cの場合は国の費用で購入するものでしょう、トライスターの場合は民間機だ。そういうふうな話が出たならば、伊藤の内容が漠然としておるならば、なぜ松尾君はそれを漠然としただけでなくて具体的に詰めていって、そして詳しく——それ以上詳しい供述がなくてあたりまえの話じゃないか、聞かなければ詳しい供述は出てこないのだから。検事としては、その点について具体的にどういうことなのかということに的をしぼって捜査を進めるのはあたりまえじゃないですか。それをただ聞きっ放しにしていくなんて、そんなばかな話はありませんよ。  だから私は、あなたの話が、率直な話、そのときトライスターの捜査でもう手いっぱいだった、とてもP3Cまではもう手が回らない状態だったんだ、だからもう聞き流しにしてしまったのだというのなら、これはまた、いい悪いは別として了解せざるを得ないと思う。おかしいですよ、このときの松尾君のとった態度は。伊藤君からこういう話があって、別に重要な話だとは思わなかった、漠然としておった、あたりまえの話じゃないですか。それ以上の供述がなかった、あたりまえの話じゃないですか。漠然としたものを具体的に詰めていって、そして具体的な内容にしていくのが検事の仕事じゃないですか。そういうふうに思いませんか。
  70. 前田宏

    前田説明員 私の先ほどお答えでまた誤解が生じてはいけませんので申し上げますが、当時トライスターのほかにP3Cということが問題になっておりまして、東京地検としてはいわば並行的に取り組んでいたわけでございます。しかし、一人の検事が全部のことをやっているわけではございませんで、それぞれトライスターのことはトライスター、またP3CのことはP3Cということで取り組んでおったわけでございます。  そういうことで、松尾君が全部やっていたということであれば別だと思いますけれども、そういうことではないということでございますから、先ほどのようにトライスターについて精いっぱいでP3Cについては全然やらなかったからそういうふうな扱いになったのだというのは、御理解としては当を得ないものではないかというふうに思います。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それじゃP3Cは特捜部で一体だれがやっていたの。P3Cの問題については分けてやっていたというなら、そういう話か出たら、だれかがその指揮をしている特捜部長あるいは次席検事に報告するのはあたりまえじゃないですか。それが検事の仕事でしょう。それをやらないというのはおかしいじゃないですか。そんな答弁はいけませんよ。地検としてはP3Cについて全然やっていなかったじゃないですか。初めからそこへ行く的をしぼってないじゃないですか。もう人数が足りないからできないということでなかったのですか。P3Cの専属にはだれがかかっていたのか説明してください。どうして、それじゃP3Cの話が出たのにP3Cの問題について指揮をしている特捜部長なり次席に報告して指揮を仰がなかったのか、私には理解できないですよ。
  72. 前田宏

    前田説明員 具体的に何という名前の検事がどういうことをやっておったかということを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、稲葉委員に申し上げるまでもなく、すでに特捜部が特捜部だけでなく他の応援の検事も含めて取り組んでいた事件でございますから、大変大ぜいの人数の検事が取り組んでいたことは御承知のとおりであると思います。  そこで先ほどの点でございますけれども、P3Cについては何もやらなかったじゃないかということでございますが、すでにこれまでの国会でもいろいろと申し上げておりますように、その関係では参考人も相当数調べておるわけでございますし、できる限りの捜査を尽くしたということは前々から御報告申し上げているところでございまして、ただいまのような御批判は実態に即してないように私どもとしては理解しておるわけでございます。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ぼくはあなたの答えは了解できないですね。これだけのことが、伊藤からP3Cの問題について檜山から相談を受けたという話があるなら、それを突破口にして捜査をどんどん進めていくべきですよ。それを何もやらないじゃないですか。この事件、これだけじゃないですよ。  検事で山辺君がいるでしょう。山辺君が若狭を調べたときにも若狭からほかの問題が出ているでしょう。東亜国内航空の五島昇の問題が出ているでしょう。それについてだって全然捜査してないじゃないですか。こういうやり方はいかぬですよ。これはトライスターの問題で全精力を傾注していてもう手が回らなかったというなら、私は了解するというのです。しょうがないというのですよ。これはそうじゃないよ。はっきり出ているのにそれをやろうとしないのですよ。東亜国内航空の問題だって出ていたでしょう。山辺君から聞いたでしょう。若狭がそのことについてしゃべっているじゃないですか。そのことを山辺君が公判で証言しているじゃないですか。そういうことについて検察庁はもっと全面的に取り組まなければいけないですよ。人数が足りなかったらほかから持ってきても、借りてきてもやらなければいかぬですよ。  そういう点が、このP3Cや何かに対する取り組みがどうも足りませんね。ぼくはそういうように理解します。あなたの理解と違うけれども、残念だけれどもしようがないですね。これだけのことがあって、このままほったらかしておいて、あなたに言わせれば重大に考えなかったというのでしょう。だから特捜部長にも次席にも報告しなかったということに承ってよろしいのでしょう。そんなばかなことは検事としてありませんよ。松尾君というのは優秀な検事なんだからそういうことは考えられないですよ。報告しなかったのは事実ですか。それじゃ重要に考えなくて報告しなかったというように承っておきましょう。
  74. 前田宏

    前田説明員 私は、稲葉先生ほど松尾が重要視していたとは思わなかったということを申したので、全然軽視したということを申したつもりはございません。したがいまして松尾君としては、そういう供述があってそれが漠然としておって、当然ある程度の質問は繰り返したと思いますけれども、それ以上進展しなかったということでございます。  その後どういう措置をとったかということになりますと、これは捜査内容でございますし、いろいろと内部の問題でございます。したがいまして、そのことについて明確なことを申し上げるのはいかがかということではっきりしたことを申していないわけでございます。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 余り同じことをやっていてもいけませんが、どうも私には納得できませんね。だから最初からP3Cについては一生懸命やったのでしょうけれども、そこで伊藤からその話が出てくれば、この問題はもっともっと追及すべきですよ。私はそういうふうに思いますね。その点は足りないというふうに思います。  それから、さっき保安処分の問題が出ましたね。保安処分は、大臣の話を聞くと、まるで殺人、放火に限るようなことを言っておりますね。そんなことは刑法の改正草案に書いてありますか。
  76. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 改正草案につきましていろいろな意見があろうかと思います。私が承っているのでは、禁錮以上の刑を犯した場合で、こう承知しておるわけでありますけれども、そういう問題につきましても、お互いに議論を交わし合いながらよりよい道を求めていきたい。司法当局も硬直的になってはならないし、また反対する側の方々も硬直的にならないでひとつ論議をしていって、社会の皆さんたちが安心していただけるような社会をつくり上げていきたい、こういう念願でございますので、御理解願っておきたいと思います。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、刑法の改正草案にはそんなことは書いてないですよ。それは見ればわかるからね。九十七条。そんな殺人とか放火に限るとは書いてない。説明書にはちょっと書いてあります、重大犯罪と書いてあるけれども。  そこで問題は、なぜこの保安処分を法務省でやるんですか。
  78. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 犯罪を行った場合に、一般の人たちはそれぞれの刑を受ければ刑務所に収容されるわけでございます。  ところが、心神喪失ということになりますと無罪になり、そしてまた不起訴になる、社会にそのまま帰される。そういうことになりますと、従来の医療体系の中でそのまままた戻されるということになるわけでございますけれども、その経過を顧みますと、どうも先ほど来申し上げましたように、放火とか殺人とかいうことをとりますと、一〇%内外がその関係者で犯されているということでございますので、やはり司法当局もその問題について力を尽くすべきじゃないか。だから、刑務所には収容しませんよ、医療施設、保安施設に収容しますよ、そして一定期間治療について努力をしますよ、当然医学界の協力を得なければ治療はできないわけでございますから、そういう人たちの力をかりて努力をしていきたい、こういうことでございます。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 罪を犯していない人を刑務所に入れるわけにはいかないですよ。そんなことをやったら大変な騒ぎになっちゃう。  それをなぜ法務省でやるかということに問題があるわけです。何も法務省でやる必要はないじゃないですか。厚生省でやったらいいじゃないですか。医療関係、その人の病気を治すとかなんとかということが目的ならば厚生省でやればいいわけなんで、法務省でやるということは、そういう人の刑事事件を再犯するというおそれというか何というか、そういうようなものに籍口してそれをやるということになるわけですね。そんな必要はぼくはないと思うのです。厚生省でやればいいことだと思う。精神衛生法というような、みんなたくさんの法律があるんですから、法務省でやるということについてはよくわからぬ、こういうふうに私は思うわけです。  そこで問題となるのは、この場合に、非常に人権を場合によっては侵害するというふうなおそれが出てくる可能性がありますね。そういうことについてはどういうふうな配慮をするのかということが一点ですね。  それから、すでに法務省では保安処分によるこの施設を全国で二カ所ぐらい考えているようですね。その点はどういうふうにいま考えていますか。
  80. 前田宏

    前田説明員 この保安処分制度を採用いたします場合に人権の問題がありますことは当然のことでございます。  ただ、先ほど大臣からもお答えがございましたように、その問題は十分考えなければいかぬことでございますし、現にこの草案の上でも、当然のことながらこれは裁判所決定することでございますし、要件も、まあ御意見はいろいろあると思いますけれども、いろいろな条件要件が備わっているわけでございますし、その精神障害の有無、またそれによる再犯のおそれというものにつきましては、科学的な見地から、精神医学的な面からの慎重な鑑定、そういうものが当然なければ、裁判所といたしましてそういう認定はできないということでございますし、また、その期間の問題あるいは更新の問題、いろいろと手続的な面におきましても、まあ御意見は別といたしまして、人権保障の面での配慮が尽くされておるもの、かように理解しておるわけでございます。  また、第二のその施設の問題でございますが、これは矯正関係のことになりますので、私からお答えするのが適当かどうかと思いますけれども、やはりこの制度がどのような形でできますかによりまして、その収容すべき施設というものもおのずから決まってくるわけでございます。対象者が多いとなりますとそれなりの施設の数が必要でございましょうし、また、少なければ少ないなりにそれなりの対応ができるということでございますので、やはり内容いかんにかかわるということになるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまの保安処分の問題については、時間を別の機会にいただいて、そのことだけで十分論議をしたいと思いますし、きょうの私のあれではございませんからこの程度にいたしますけれども、やはりこれは法務省がやらなきゃならない理由ということは、結局その人の人権というか医療、治すとかということよりも、犯罪者として認定をして隔離をするという、そういう考え方が非常に強い姿勢になってあらわれているというふうに思いますので、これは非常に問題点があることだというふうに思うわけですね。  そこで、全体としての刑法改正について、法務大臣としてはこれはどういうふうにされるという御意見でしたか。ちょっとよくわからなかったのですが、何か日弁連の会長と会ったり何かしていろいろお話しするとかしないとかということが伝わっておりますが、その点はどういうふうなお考えですか。
  82. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 弁護士会は法秩序の改善について責任を持っておられる団体でございます。刑法の問題などにつきまして弁護士会に強い反対が従来あった、こう承っておるわけでございます。  したがいまして刑法改正にいたしましても、この種の問題を進めるに当たりましては、少なくとも弁護士会との間では隔意のない意見の交換をして対立が生ずるようなことは避けていきたい、これは私の念願でございます。そういう気持ちを持っておりますので、将来機会あるごとに話し合いをしていきたいものだな、こう存じておるところでございます。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 さっきのDC10の問題についてあなたが閣議後の記者会見で、時効にかかっているというようなことを言われたそうですね。これは法務大臣としては別にどうということはない、あたりまえの話ですよ。刑事事件に関連して、担当ですから、時効にかかっていれば時効にかかっていると言うのはあたりまえの話なんです。  それから、アメリカに振り回されないでほしいというのも、これもあたりまえの話です。だけれどもこれはむしろ、アメリカに振り回されないでほしいというけれども、この報告書を見ると、アメリカの方で事件にならないと言ったから事件にならないというふうに思ったというふうな、さっきの刑事局長のような答弁に聞こえるのですよ。そうするとやはりアメリカに振り回されているというようなことになる気がするのですが、どうもそこら辺のところよくわからない。これはちょっと細かく後で聞きますけれども。  そこで、あなたが何か言われたことで、さっき青木さんの質問には、質問がなかったので答えがなかったのでしょうけれども、新聞紙上で伝えられているのは、こういうふうなことはいいかげんにしてほしいというようなことを言ったとか言わないとかということが伝えられていますね。これはよくわかりませんが、ちょっとその点についてのあなたの真意をお聞かせ願いたい、こう思うのです。
  84. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 言葉の端々だけを取り上げられますと誤解を招くなという感じをいまも受けたわけでございます。  青木さんのときにもちょっと申し上げましたが、話の始まりは、日米司法取り決めに基づく資料要求をするかしないか、こういうことでございました。いまの段階ではする考え方は持っていないということでございまして、犯罪容疑があるということになっていないのに重ねてそういう要求をすることは、もうこれくらいにしておいてくださいよという意味合いのことで申し上げたと思います。しかし同時に、その前段で、こういう問題があってから政治資金規正法を改正して、外国からは寄付をもらうことができなくなったのですよ、それ以後はこの種の問題は起こっていないのですよと言って、いまお話しのような言葉をはさんだと思います。にもかかわらずさらにアメリカで発表があったからまた資料要求しないのかということは、もうこれくらいにしておいてくださいよという意味合いで申し上げたように記憶いたしております。しかし容疑があればしなければならないと思っていますよということも加えてお答えをしたはずでございます。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 もうさっきの刑事局長の答弁によりますと、一万五千ドルの問題で、伝えられるところによれば販売促進費一万五千ドルの一部が政府関係者流れ可能性があるが、マクダネル・ダグラス社はこの伝聞に基づく報告を確認することはできなかった、こうあるわけです。  これに対して、若干前のあれとは違うけれども、広く捜査したけれども訴追はできなかった、こういう答弁だったように聞いたのですが、そうすると、政府関係者流れたことはわかったけれども、時効によって訴追はできなかったという意味なのですか。あるいは政府関係者流れたこと自身もわからなかった、こういう意味なのですか。あるいは政府関係者というのはだれだかということが特定できたけれども、いま言ったような時効なり何なりで訴追できなかった、こういう意味なのですか。ちょっとよくわからなかったのですが。
  86. 前田宏

    前田説明員 その点先ほどお答えしたつもりでございましたけれども、要するに政府関係者流れたということが確定できなかったということでございます。  ただ、その確定できなかったといいますことの関連において、仮にそういうことがあったとしてもすでに公訴時効完成後のことであるので、そういう意味合いから検察当局としてはそこを詰めるまでの捜査をする必要がないといいますか、していない。したがって確定されていない、こういうことになっているということを申したわけでございます。
  87. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私もDC10の報告書、外務省のやつをいただきまして読んでみましたけれども、率直に言うと要領を得ないところが相当あります。これだけで確実な捜査資料になるかどうかということについては私も問題としてはあると思います。  そこで、前々から問題となっておりますロッキード問題に関連をして、大分前のことですが、昭和五十一年十一月四日の特別委員会なりあるいはその前の二日の中で、これは田中伊三次さんが委員長でしたが、元内閣官房長官二階堂進についての政府報告をいたしております。   ロッキード事件捜査経過において得られた資料、すなわち、全日空関係者及び丸紅関係者の供述、米国における嘱託証人尋問の結果等によれば、二階堂進は、昭和四十七年七月七日から同四十九年十一月十一日までの間、内閣官房長官であったものであるところ、昭和四十七年十一月初旬ころ、東京都内において全日空株式会社代表取締役社長若狭得治らより依頼を受けた丸紅株式会社取締役伊藤宏から、ロッキード社から流入したいわゆる三十ユニットの領収証に見合う三千万円の一部である現金五百万円を、全日空がL一〇一一型航空機を導入することについて尽力した謝礼の趣旨のもとに受領したと認められるが、右金員は内閣官房長官としての職務に関する対価であることが認定できないために、収賄罪の成立は認められない。 こういう政府報告が出ています。法務大臣、この報告政府報告ですが、維持されるわけですか。
  88. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 秘密会で起こった話のように私は推察しているわけでございまして、その間の経緯は余りよく存じておりませんので、刑事局長の方でお答えさしていただきたいと思います。
  89. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 議事録をごらんください。秘密会であろうと、いま私が読んだように政府報告として出ているのですから、これを維持されますか、こういうことを聞いているのです。
  90. 前田宏

    前田説明員 ただいま大臣からお答えをされましたように、その当時のいきさつは稲葉委員も十分御存じだと思いますけれども、いわゆる秘密会ということで、国会における御判断の資料ということで当時の刑事局長が若干の御説明をしたということでございます。したがいまして私どもの立場といたしましては、そのことは秘密会での御説明というふうに理解しておるわけでございますから、それ以上のことは申しかねるわけでございます。  ただ、いま稲葉委員がお読みになりましたように、その秘密会の説明等が議事録という形で出ておることは私どもは承知しております。
  91. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたの話を聞くと、秘密会は別に証拠に基づかないで適当なことを報告しても構わないのですか。
  92. 前田宏

    前田説明員 そういうようなことを申したつもりはございません。
  93. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 では、いま私が読んだこと等は議事録に載っているのですよ。昭和五十一年十一月四日の議事録に載っているのです。あるでしょう。議事録を読んでくれと言ったんですから、そこに持ってきているでしょう。なければここにあるから。これは政府報告としてこういうふうに報告して田中さんが読んでいるんだから、これは間違いですか間違いでありませんか、いまでも維持されますかと聞いている。
  94. 前田宏

    前田説明員 先ほど申し上げましたように、秘密会でありましょうとも、政府関係者として御説明をしたことがありますとすれば、そのことについて無責任な御説明をしてあるとは思えないわけでございます。  ただ手続的に申しまして、お示しの議事録等の内容は、たびたび申しておりますように秘密会で申したことでありまして、公の場で申したことではございません。そのことはいままで続いている状態でございます。そういうことを御理解いただきたいわけでございます。
  95. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはあなたとしては苦しいよ。苦しいのはわかるけれども、ぼくはそんなことを聞いていません。だって秘密会もなにもちゃんと議事録に載っているんですよ。この議事録は売っているんだ。そうでしょう。売っているんだからしょうがないじゃないですか。昭和五十一年十一月四日、議事録第九号、ロッキード問題に関する調査特別委員会、いま私が読んだようなことがちゃんと出ているんだから、これは事実だと思うのです。  そこで私がお聞きしたいのは——だって政府報告だと書いてある。田中さんも「政府報告を朗読いたします。」と言って読んでいるのですから、そうすると、内閣官房長官としての職務と総理大臣としての職務とはどういうふうに違うのですか。職務権限はどう違うのか。
  96. 前田宏

    前田説明員 ちょっとお尋ねの趣旨が理解しがたいわけでございますが、総理大臣と官房長官の権限はおのずから決まっていることでございまして、それなりの差異はあるものと考えます。
  97. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 総理大臣がもらえば職務権限があって、官房長官はそれを補佐するんじゃないのか、だから同じように考えていいのじゃないかと常識的には思うのです。官房長官の「職務に関する対価であることが認定できない」政府報告でこう言っている。だから、どういうわけで官房長官としての対価として認定できなかったかと聞いているのです。どこにひっかかっているのです。六法全書を見てごらんなさい。ひっかからなければどこにひっかからないのか。総理大臣の場合にはひっかかって、田中角榮氏は五億円もらったとひっかかっていて、ひっかかってと言うと言葉は悪いけれども起訴されて、官房長官の場合はもらったのがどうして犯罪にならないのか。総理大臣と官房長官の職務権限はどう違うのか。同じようなものじゃないのか。ただ補佐するということかしらぬけれども、それはどうなんですか。
  98. 前田宏

    前田説明員 ここで一般論を申し上げることはやはり事件との関係におきまして、現に公判中の事件に対する問題もございますので、適当でないと思うわけでございます。  それと、大変お聞き苦しいようなお答えをしておりますのも、私どもの立場といたしましては、いま御指摘のような事実の内容、これは議事録に載っているということでございますから事実でありましょうし、また無責任なことを申したわけではないということは当然のことでございますけれども、秘密会の席で御説明をしたことにとまっておりまして、公の席で申したことがないわけでございますから、そういう状態が続いている状態でそれ以上のことは申しかねるということを再々申しているわけでございます。
  99. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから政府報告書として出したことは出したのですけれども、これは間違いないわけだけれども、これは法務大臣どうなんです。政府報告書として出したのでしょう、いま私が読んだとおりに書いてあるのだもの、ここに。これは間違いないでしょう。
  100. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 刑事局長のお話を聞いておりますと、国会の側でそういうような運びにしておられるようだけれども、政府がそういう運びにしているわけのものではないという意味合いで申し上げているように理解しております。したがいまして、刑事局長が申し上げているとおりに御理解をいただきたいと思います。
  101. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこら辺のところは、それはあなた方の立場としても言いづらいことはあると思いますよ。秘密会でやったところで、国会でやったところで、政府報告書として議事録に載って、田中委員長が読んでいるのだもの、これは事実だ、これは証拠があるということをあなたは認めた。  そこで、いまの後の総理大臣と官房長官の職務権限が違うということが何か裁判の進行に影響がある、裁判の進行に影響なんかないでしょう。田中さんのあれに対して、職務権限については、あなたの方で立証しているんでしょう、もう公判で。それに対して反対が弁護側から出るかもわからぬけれども、余り深入りしちゃうから、時間の関係もあれだから……。  そこで、これについて二階堂さんが伊藤宏を相手取って損害賠償の訴えを起こしていますね。最高裁にお聞きするのですが、私のお聞きしたところでは、東京地裁の五十三年ワの三〇四〇号ですね。損害賠償一千万円。訴えの期日が五十三年四月三日。第一回の口頭弁論が五十三年六月十二日。最終の口頭弁論五十五年七月二十一日。全部で十一回やったけれども、このうち四回は当事者間で延期。二回は休止。休止というのは両方とも代理人が出てこないこと、内容は訴状と答弁書の陳述のみ、こういうふうになっている。最後の七月二十一日で休止。休止というのは三カ月たてば満了になる、取り下げになちゃう、こういうことですね。  この経過だけをお聞きしますが、いま私が読みましたことは間違いございませんか。
  102. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 いま稲葉委員が申されました経過に間違いはございません。ただ書証の提出認否が若干なされているわけでございます。五十三年の七月三十一日に第二回弁論期日が開かれまして、そこで原告から甲号証が提出されて、それに対しての認否がされております。それから次に九月二十五日第三回弁論期日が開かれまして、原告から同じく書証が提出されて認否がなされております。
  103. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、これはその間、多少書証が出たという程度ですね。そうして、これは訴えは原告が二階堂さん、被告は伊藤宏さんですが、損害賠償で一千万円、これは間違いない。その事実については伊藤宏が虚偽の陳述をした、供述をしておるということ、そのことに基づいて、これが出たというふうに思いますね、これはあたりまえの話。それに対して被告側では、虚偽ではない、真実だ、真実のことを言ったんだ、こういうふうに争っておる。こういうふうに理解してよろしいですね。
  104. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 事案の概要を簡単に申し上げますと、請求金額は一千万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日……(稲葉委員「そんなことはいいよ」と呼ぶ)よろしいですか。事案の概要といたしましてはいまお示しのようなことで、昭和四十七年十一月一日ごろ官房長官公邸において原告に現金五百万円を渡した旨事実に反する虚偽の陳述をなしたということが中心になっております。
  105. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だからそれに対して、被告伊藤の方では、虚偽ではない、真実を言ったのだ、こう言っているのでしょう。
  106. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  107. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そしてこれは非常におかしいのは、このときに二階堂さんが五十二年の五月二十四日に当法務委員会でいろいろ言っているわけですね。そういう事実はないというようなことを言っているのだけれども、そういう事実はないというようなことに余り重点を置いてないわけだ。これは豊島君が取り調べをしないうちに発表したのはけしからぬとか、同じようなことを言っているな。新聞記者に話したのはけしからぬとかそういうことが中心ですね。もう一つ何か言っていたかな。そんなようなことで、もらってないというようなことは、前提にはなっているのでしょうけれども、余りはっきりは二階堂さんは言っておられないですね。大体そういうことですね。  そうすると、大臣としてはいまの経過をずっと聞いていて、政府報告書が秘密会にしろあった。民事裁判でも伊藤の方はそうでないと言って争っている。片方は虚偽だと言う、片方は本当だと言っている、そういうことですね。そうすると政府報告を踏まえてみて、あなたとしては一体どっちの言うことが政府としては本当だというふうにとられるわけですか。大臣としてはどうなの。
  108. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 秘密会における発言がもとになってお尋ねになっているようでございますし、私も率直に申し上げて事実関係をよく知らないわけでございます。  とにかく二階堂さんはそういう事実はないと言うておられるし、いまおっしゃっているようなそういう発言をされたとして議事録に載っているというようなことでございますので、これは私がどちらが正しいと言う筋合いのものじゃないのじゃないだろうかな、こう思っております。
  109. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ぼくが言うのは、秘密会、秘密会と言うけれども、秘密会ということにあなた方逃れちゃっているわけですよ。筋が違うですよ。秘密会で全然速記も何もとらないというなら話はわかりますよ。そのときに速記もある程度あるし、その次にはちゃんと報告書が読まれて公開されているのですからね。だから政府としてはどっちが正しいかということを当然判断さるべきでしょう。まあいいや、ここは法務委員会だから、これ以上あなた方にお聞きするのもあれだと思いますから聞きませんけれども、これは予算委員会で私は問題にしますよ。いいですか、十分議事録読んでいてくださいよ。五十二年の五月二十四日は二階堂さんが三、四十分ここで質問されている。質問というか弁明というか意見というか演説というか、ぼくも聞いていましたけれども、やっておられましたね。そのときにいろいろの民事や刑事の事件やるとか言っていて、実際やったのはその次の年でしょう。約一年近くたってからやっているのですね。どうもここら辺のところがよくわからぬですね。  大臣にお聞きするけれども、二階堂さんのことをよく灰色高官と呼びますね。何かよくわからぬけれども、灰色高官とよく呼びますね。これはあなたとしてはどういうふうにお考えになりますか。灰色高官と呼ばれるのも無理はないというふうにお考えですか、あるいはそれはどうもちょっと筋違いじゃないかというふうにお考えですか。どうなんでしょうか。
  110. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務大臣の立場でお答えさせていただければ、起訴するか起訴しないかということじゃないだろうかな、こう思います。  したがいまして、司法当局の立場で言いますと灰色高官という言葉は適当でない。政治的にいろいろ御論議になること、これはまた別途の感覚で御論議になることを私は非難しようとは思いませんけれども、法務省の立場としては灰色高官というような式の表現は望ましいとは思っておりません。
  111. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、二階堂さんはこのときに、これは昭和五十二年の五月二十四日の議事録の七ページ、「野党議員の御了解をいただきまして、人権問題について国会も集中審議ぐらいする機会を持っていいと思うのですよ。余りにも弱き者の人権が軽んじられておる傾向があるということを、法務大臣自身もお認めになっていると思いますよ。マスコミの方にも行き過ぎがあるようでございます。」マスコミの話は別として、いろいろなことを言っているわけですね。野党議員の協力も得て真相を明らかにしてくれということを言っておられるのですよ。そうでしょう。政府報告書には二階堂さんは五百万もらったと書いてある。ただ、官房長官の職務権限がなかったというだけのことを書いてある。裁判をやれば、やはり片方は虚偽だと言うし、伊藤の方は本当のことを言ったのだから自分の方はそんな責任ないと言っている。野党議員の協力、御了解を得てやってくれと言うのだから、だから私は委員長に対して、ここで二階堂進さんと伊藤宏さんの御両名を当委員会に証人として喚問してお調べを願って、それで二階堂さんの人権を明らかにさせていただきたい、こういうふうに思って、お二人の証人の喚問を申請いたします。
  112. 高鳥修

    高鳥委員長 しかるべき時期に理事会で御相談いたします。
  113. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 しかるべきじゃなくて、早くやらないと二階堂さんかわいそうですよ、だってこういうふうにはっきり出ているのだからね。  そこで、まだこのことについていろいろあるのですよ。いろいろなことをぼくも聞いていますけれども、それをここで言うのはあれですからこれ以上言いませんけれどもね。この裁判はいま言ったように休止になりっ放しですね。再開するのかどうか。どうしてこれを四回も延期したり二回休止。休止というのは両方出てこないことですよ、これは御案内のとおりですね。このままいくと三カ月たつとこれは満了になっちゃうのでしょう、取り下げになっちゃうわけですね、そういうことですね。三カ月だから十月二十一日か何かで取り下げになっちゃうわけですね。恐らくここで質問が出たからというのであわててまた弁論期日指定の申し立てをすると思いますが、取り下げになっちゃうということ。甲号証は出しておるかもしれぬけれども、この裁判について原告側は全然と言っていいくらい熱意がないですね。ただ形だけやっているということじゃないですか、これは。こんな裁判のやり方はないでしょう、だれが見たってあなた、四回も延期して二回も休止するなんて。休止なんということは普通あり得ないことですよ。どっちからどういう話で休止になったのかよくわからぬけれども、いずれにしても裁判の行き方についても二階堂さん側は自分の無罪ということを、無罪というか自分がもらったんじゃないということを積極的に証明しようという熱意に非常に欠けていますよ、と私は思う。  だから、ここで二階堂さんの名誉のためにも伊藤さんにも出てきてもらって、そしてお二人から話を聞くのが国政調査権の一番大きな任務だ、私はこう思うものですから、その点についていま委員長にお願いをして、できるだけ早い機会に理事会でお取り計らいをお願いいたしたい、こういうふうにお願いしたわけです。  そこで、別のことになりますが、法務大臣というか国務大臣というか、お尋ねをしたいわけですが、自主憲法ということがよく言われますね。大臣のお考えになる自主憲法というのは、日本の場合に当てはめてどういうことを言われるのでしょうか。
  114. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務大臣としてよりも、政治家としての私の所見をお尋ねになっているのだと思いますので、率直にお答えを申し上げたいと思います。  いまの憲法は占領軍の指示に基づいて制定されたものだ、私はこう心得ております。そしてまた当時は、国会はございましたけれども、委員会に提案をいたします場合にも、委員会で採決をいたします場合にも、事前に占領軍の承認が得られなければできなかったのであります。自主的な活動はできなかったのであります。しかも、重要な規定であります憲法第九条は有力な政党間において解釈の違いがございます。  こういうものでございますから、国民の間から、自分たちでひとつ憲法をつくろうじゃないか、同じものであってもいいから、自分たちで自由な論議をしてつくろうじゃないかという気持ちが出てくることは望ましい、私はこういう感じは持っております。国民合意の中から、自主的に憲法をひとつつくり直してみようじゃないか、こういう感じが出てくるといたしますならば、それは好ましいという考え方を私は持っております。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、いまのはあなたの政治家としてのお考えですけれども、そうすると、自主憲法と言われると一体どことどこをどういうふうにするということをお考えになっていらっしゃるわけですか。
  116. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 少なくとも憲法九条のような独立を保持していくための基本的な条文についてまで有力な政党間において解釈に百八十度の違いがあるというようなことは、避けられるものなら自主憲法をつくる際には解決をしてほしいものだな、こう思います。  内容そのものよりも、私は制定の過程を振り返ってみまして、私もその当時政府の一員でございましたから、みずからが体験をしておるわけでございます。それだけに、そういう空気が国民の間から生まれてくれば望ましいことだ、そう信じているわけでございます。
  117. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、憲法改正について、そういう改正に関連をする空気が国民の間から生まれてくることが望ましい、それに関連をしてそういう空気が出ることを期待して政府としては何らかの行動を起こしたい、こういうふうなことになるわけですか。
  118. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これも私個人の考え方でございますけれども、いまの状態の中でそういう動きを政府がするということは適当でない、こう思っております。
  119. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 政府がそういうことをするのは適当でないと言うけれども、そういう空気ができてくることを望んでいるということは間違いない、こういうことですね。
  120. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政治家個人として私はそういうふうに思っておりますと、私なりの考え方を申し上げたわけであります。
  121. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまの点については非常に重要なお答えでありますし、私どもも十分検討をしてこれに対処をしていきたいと思いますので、きょうはこの問題についてはここでこれ以上質問をしないということにさせていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、またあなたの政治家個人としてというか大臣としてというかお尋ねをしたいのは、非常に選挙違反が多いですね。ことに自民党に多いということになるわけですが、では一体それはどこに原因があるかということが一つと、それからそういう選挙違反をなくすためには小選挙区制というものをしいたらいいじゃないかという声がある。小選挙区制ということについて、選挙違反との関連その他で、あなたのお考えをお聞かせ願いたい、そういうふうに思います。
  122. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御承知のように、衆議院の選挙制度は個人本位の選挙制度になっているわけでございます。  一つの選挙区におきまして一つの政党から二人以上の候補者が立候補する。したがいまして、その候補者双互の間には政策の違いがないわけであります。したがいまして、それぞれの候補者が自分の情実、因縁を深めていくということが重要な選挙運動になっていると思います。だからこそまた個人の後援会を設けまして、後援会活動というものが、個人を売り込むための努力がずいぶん重ねられていると思います。そういうことは、とかく私は選挙の法規に触れる結果になりやすいのじゃないだろうかなという心配を持っております。  同時に、いまの憲法では政党政治を頭に置いているわけでございまして、衆議院の総選挙が済みますとまず内閣総理大臣を決めるわけでございますから、それぞれの政党はそれぞれの総裁を内閣総理大臣の候補者に選ぶということがたてまえだろうと思います。また、そういうことで選挙運動をやってきていると思います。そうなりますと、やはり衆議院の選挙制度は、政党本位の選挙制度にしていくべきじゃないだろうかと考えるわけでございます。そうしますと、小選挙区制か比例代表制しかないわけでございます。  一番有権者にわかりやすいのは、どの個人を選ぶかということだと思いますから、一人一区の小選挙区制度になるのじゃないか。そうしますと、少数政党はなかなか当選者を出しにくい。そのためにはどうしても比例代表制をそこに併用をしなければいけないのじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございまして、私個人の考え方を申し上げさせていただくならば、小選挙区制に比例代表制を併用する、そうして政党本位の選挙制度をつくっていくということじゃないだろうかなと思っておるわけでございます。
  123. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたが法務大臣になられたときに最高裁の長官にお会いになられて、何かロッキード裁判、ことに田中角榮氏の裁判かな、あと五年くらいかかると一部の新聞に出ましたね、私はそんなにかからないと思っているのですが。私の考えは述べませんが、いずれにしても、そのことについて最高裁長官にお会いになって、何かロッキード裁判についての要望をお話しになったことがございますか、あるいは一般的なお話か何かされたことがございますか。
  124. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ロッキード裁判のことは、私は話さなかったように思うのです。私は、法務大臣になります前からそう思っておりましたが、法務省に参りましても一層それを痛感しているわけでございます。  たとえば選挙違反、百日裁判が法律に書いてあるけれども、国会議員の任期が終わるころになって一審の判決が出たりした例もあるわけでございますだけに、やはり何とか裁判が迅速にいかないものだろうか。ことに刑事事件になりますと、それだけ本人の人権が非常に拘束されることでございますから、どちらになるか早く決着をつけるようにすべきものじゃないだろうかな、こんな気持ちも持っているものでございますから、私は、どうも最近裁判が長くかかるように思うのだけれども、昔からこういうことなんでしょうかという質問をしたように記憶いたしております。  それに対しまして、長官はそちらの方の専門家でございますし、私は素人でございますから、教えるつもりだったのだろうと思います。昔は予審制度があったのですよ、そこでずいぶん詰めて、公判になってからわりあい円滑に進んだんですよ、こういうことをおっしゃいまして、私も、やはり何かみんなで知恵をしぼるべきだと思いますねというようなことを表敬訪問の際に言葉を交わし合った記憶はございます。
  125. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 何か一部では、それがロッキード裁判が長過ぎる、当時一部の新聞に五年くらいかかるようなことが出ていましたね。そのことに関連して、それをもっと早くというようなことであなたが最高裁長官にお話をされたように伝えられているんですね。ぼくは、そういう具体的なことについてはあなたがお話しされるわけはないと思っていたんですけれども、いまの話で大体わかりました。ただ、失礼ですけれども、あなたは裁判のことについては素人と言われるが、法務大臣が最高裁長官に会って裁判の内容とか裁判の進め方にタッチするような発言というのは問題を起こしますね。その点は十分注意をしていただきたいと思います。  そこで、まだいろいろあるのですけれども、重要なポイントの話が出てしまいましたから、あとは短くします。  いま、伊藤律氏があしたあたり帰ってくるんですか、何かそんな話が出ていますね。これに対して、一体法務省なり警察としてはどういうふうに対処されるわけですか。対処という言葉はなかなかむずかしい言葉だけれども、どういうのかな、これは。そのことについては、法務省としてか警察としてか、どっちかな。どうなんですか。
  126. 吉野毅

    ○吉野説明員 お尋ねのございました伊藤氏につきましては、昭和二十五年の七月以降所在不明でありましたところ、今般中国に滞在しておることが明らかになったわけであります。  同氏は法律の定める手続を経ないで日本を出国いたしておりますので、出入国管理令違反の疑いもございます。伊藤氏が帰国するような場合には、警察といたしましても、出国の事情など出管令違反事実の有無につきまして本人から事情を聴取しなければならないもの、そのように考えております。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは入管令のころで、すでにもうそれは廃止になっておるし、時効にかかっておるという説もありますね。まず一つ、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  128. 吉野毅

    ○吉野説明員 御指摘のとおり、現行の出管令は昭和二十六年十一月一日に施行されておるものでございます。したがいまして、伊藤氏の出国が昭和二十六年の十一月一日以降であるかどうかということを、本人の事情聴取などの所要の捜査によって明らかにすることが必要であろうというふうに考えております。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは何かその年の九月に行ったとかいう話も伝えられておるのですが、そうすると法務省としては、その伊藤氏の帰国について、これは大臣としてというか、公安調査庁を呼ぶのが本当かもわかりませんが、いずれにしても、帰国について、関心は持っておられるのですか、それとも、おれの方とは全く関係ない、こういうことなんでしょうか。そこはどうです。
  130. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いろんな法令の中には、占領終結、平和回復で消滅しているものもあるわけでございまして、日本人が日本に帰ってくるわけでございますから、法務省としては、これに対して何ら異存はないということでございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 このほかに二、三の要望みたいなことを申し上げて終わりますが、最高裁にお願いをしたいのは、国選弁護料の引き上げの問題についてですが、これは日弁連から何か要望書が出ていますがね。日弁連の人が来ておるかどうかわかりませんが、これは率直に言って、この金額一件当たり十万円以上にしてくれなんというのは、ぼくはちょっと無理だと思いますよ。これはあなた私選だって、ぼくら十万円なんか取らないですよ、そんなこと言っちゃ悪いけれども。国選弁護人で本当に熱心にやる人というのはいるだろうけれども、多いとも言えないし、それから無免許で三回くらい罰金取られて四回目に起訴されたとか、覚せい剤を自分で打ったとか、こんなのは執行猶予に決まっているんだから。弁護士がつこうがつくまいが執行猶予の事件が相当あるんですからね。特別に非常にむずかしい事件については、特別な配慮をすることは必要だと思います。  それが一つと、それから十万円は別として、どの程度値上げをしたいというふうに考えておられるのか。これは非常に熱心にやる人もありますしいろいろありますから、熱心にやる人があると言うと、やらない人もあるように聞こえてまずいけれども、その点どういうふうにお考えになっているかということについて、最高裁当局の今後の国選弁護料の値上げというか報酬の引き上げの問題についてのお考えをお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  132. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 ただいま委員から、大変実情御理解あるお話がございました。  裁判所といたしましても、国選弁護人の刑事裁判に占める重要な地位ということを十分頭に置いて、仰せになりましたような特別の複雑困難な事件などにつきましては、特別案件の報酬ということで、特に昨年、今年というふうに予算措置を講じた。また報酬の増額につきましても毎年努力をしておりまして、先ほど仰せになりました日弁連の要望も私ども拝見しておりますので、御質問の御趣旨を十分に頭に置いて努力をしたい、こう考えております。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは弁護士会の要望でもありますが、弁護士会も十万円なんて言わなければいいんだがな。こんな数字を出すから、日弁連の人が来ていて怒られるかもわからぬけれども、ちょっとこういう出し方をするとかえって逆になると私は思いますね。  別なもう一つのお願いは、これは研究してもらいたいのだけれども、いまカラカスで第六回の犯罪防止会議が開かれているでしょう。これは長島氏以下法務省のいわゆる学者グループ——学者グループという言葉は悪いけれども、大体学者の人たちが行っている。いいメンバーがずいぶん大挙して行っていますね。これは夏休みで行っているのかどうか、そんなことないでしょうけれども行っておるのです。  ここで、刑法改正の中で検討課題になっていますのは法人の犯罪能力の問題ですね。アメリカや西ドイツではすでに法人の犯罪能力というものが認められて、法人にふさわしい処罰というものが行われている。近代的になってくると法人の実在説は通常行われていますが、それで法人処罰が、たとえば営業禁止の問題だとかいろいろな形で強くなってきているわけですね。こういう問題についての研究を十分してもらいたい、こういうふうに思いますね。アメリカは特に厳しいでしょう。西ドイツもね。これはいまここで聞くわけじゃありません。非常にむずかしい問題が確かにあって、それをそのままここへ持ってくるわけにはいかないと思いますが、その点については十分研究していてもらいたい。  それからいまの国選弁護料の引き上げの問題についても、これは十分最高裁の方で大蔵当局と連絡をとって御配慮を願いたい、こういうことですね。  きょうは閉会中の審査ですからこの程度にして、あとは、臨時国会が開かれますから、臨時国会の中で予算委員会なり法務委員会で十分きょうの問題などを中心として論議をしていきたいと思うのです。  私は、法務大臣が、いい悪いは別、それからそれについての賛否は別ですが、あなたが非常にフランクにお話をしてくださるということについては、個人として非常に敬意を表します。今後もこういう態度で遠慮しないでどんどんしゃべってほしいと思いますね。ただ、ぼくの方もあなたのペースに引き込まれないように十分警戒をしながら対処していきますけれどもね。そういうことです。  きょうは質問を終わります。
  134. 高鳥修

    高鳥委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  135. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。
  136. 沖本泰幸

    ○沖本委員 午前中の先輩の御質問に引き続いて、同じような角度からになるかもわかりませんし、質問が重なるかもわかりませんが、それはそれなりの角度から御質問している、こうお受けとめいただいてお答えいただきたいと思います。また、主として大臣の御発言についての御質問が多くなると思いますが、決して言葉じりをひっかかってという意味合いではないということをお断り申し上げておきたいと思います。  それで、先ほどから御質問がありましたDC10の問題についてでありますが、要約いたしますと、大臣は、時効がかかった問題であり、掘り下げてどうこうするということ、犯罪捜査上必要があるなら資料の提供をアメリカ要求すべきだけれども、犯罪にならないのではしようがないんじゃないかというような御発言の意味というのを新聞で読んだような気がするわけですけれども、その点についての御真意をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  137. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 記者クラブの方からお尋ねを受けましたのが、私は、日米司法取り決めに基づく資料要求をするのかしないのかということであった、こう理解しているわけでございます。  日米司法取り決めに基づく資料というのは、公表されていない秘密資料、そういうものも全部ひとつ提供を受けて犯罪の追及に資していこうというものでございます。そのかわり、裁判に利用する以外にはこれを秘密にしておかなければならない、そういう取り決めにもなっているものでございます。同時に、一昨年の暮れに問題が出ましてから、昨年検察当局アメリカから提供を受けまして洗いざらい資料をひっくり返して調査をしたわけでございまして、その結果が外為法あるいは議院証言法違反というようなこと以外は容疑は見受けられなかったということを国会に御報告申し上げたことでございました。  その同じことにつきまして新たなSECからの公表があったわけでございまして、それに関連して日米司法取り決めに基づく資料要求するのかしないのか、こういうことでありますから、いまは要求する考え方は持っていない、これはあくまでも犯罪追及のための資料でございますので、犯罪容疑がなければ要求できない性格のものだ、こう判断いたしておるわけでございます。その中で時効に触れましたのは、時効になっていると犯罪の追及はできなくなるわけでございますから、自然資料要求もできない、そういう意味で申し上げたわけでございますが、その言葉にあわせまして、さらにいまは犯罪になるかならないかそういうことも含めて見きわめたいし、また犯罪容疑があるということになれば、それは当然資料要求はしなければならないと思っておりますよ、こうも答えておるわけであります。
  138. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、重ねて申し上げるようですけれども、事実上は航特委が廃止されたという形になっておるわけですから、それにかわるものは当然当委員会で追及しなければならないということになり、追及するに足る新たな事実がある、あるいは新たな証拠を持ってくるところから問題が起こってくるということになるわけでございます。  ですから、そういう折合いに大臣が、時効にかかったものはもうしょうがないじゃないかというふうな記事からわれわれ国民がうかがうと、大臣も同じような方向でもみ消しをはかっているのじゃないだろうか、あるいはこの事件を消極的に扱ってさらに問題を小さくしまうのじゃないだろうか、そういう御意図でこういう御発言があったのじゃないだろうか、こう勘ぐりたくなってくるわけですし、国民が一番気にしている汚職という問題に対し、いま航空機に関する汚職のそれぞれの問題について国民が知る権利もありますし、そういう立場に立つわけですから、当委員会等で大臣が十分その辺に対する取り組みなり御姿勢なりというものをこの際はっきりしておいていただかなければならないと考えるわけです。その点いかがでしょう。
  139. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどもちょっと触れましたけれども、私の記者クラブの皆さん方との間の懇談の一部一部だけを取り上げますと誤解を招くおそれがあるなということを私も感じているわけであります。稻葉さんでしたか、もういいかげんにということを言うたじゃないかというお話がございました。そのとおりの表現かどうか私覚えておりませんけれども、新聞に載りましたら、その上に、疑惑もういいかげんに、こういう見出しを使っておられたところがございました。私はさらさらそんなことは考えてもいませんし、申し上げてもおりません。  先ほど申し上げましたように、その話の過程で政治資金規正法の改正のことも御報告をいたしたわけでございまして、それ以後は問題は起こっていないのですよ、それを向こうで公表したからといってまた資料要求というようなことはいいかげんにしてくださいよ、こういう気持ちでございまして、恐らく全体の話を聞いていただけばそれは私は理解してくれたはずじゃないかなと思うのですけれども、しかし報道の一部を見ていますと、疑惑もいいかげんになんてああいうことを書かれたんじゃ、私がもみ消しをはかっているという沖本さんがおっしゃるような言葉、それはそういうことになってしまうのじゃないかな、こう思うわけでございまして、報道につきましてもやはり真意を報道するようにしてもらいたいな、こういう希望を持ちまして、私は二回目の記者クラブの皆さんとお会いしましたときに、色めがねを外してくださいよと申し上げました。色めがねをかけて話をするとその色にしか見えないのですよ、だから私も率直に物を言うから皆さんたちも色めがねを外して懇談してくださいよ、こう申し上げたこともあったわけでございまして、決してもみ消すとかそんな気持ちは持っておりませんし、私は、検察に対する国民の信頼を維持していくこと、これは政治に対する国民の信頼を維持する基本的な問題だ、こういうように考えておる人間でございます。
  140. 沖本泰幸

    ○沖本委員 刑事局長にお伺いいたしますが、先ほどいろいろと御説明がこの問題に関してあったわけですが、一万五千ドルなりあるいは高額なリベートの約束があった、それは成立しないままに終わったというような御報告があったわけです。  いわゆる政府高官名並びに国民が知りたいところはそのリベートの行き先なりいろいろな点にあるわけですけれども、この報告自体は、いままでの捜査あるいはこれからの事件の進展というものに対して十分な効果があったでしょうかなかったのでしょうか。高官名は伏せられたままで当局の方ではまだ関知してないのでしょうか、その辺はどうなんですか。
  141. 前田宏

    前田説明員 先ほどお尋ねにも一部お答えしたかと思いますけれども、今回のいわゆる最終報告書内容は、前回報告書表現といいますか言い回しを若干変えているところがございます。また報告書の形の上で一外形の上では前の報告書に載っていなかった事実も書かれているわけでございます。  しかしながら、先ほども申したかと思いますけれども、捜査当局検察当局でございますけれども、その立場からいたしますと、すでに前回のいわゆる日商岩井事件捜査過程アメリカから入手した資料あるいは国内で収集した資料、そういうものによりましていわば検討済みの事実であった。つまり、新しいような事実の摘示がなされておりました部分につきましても、検察当局としては特に事新しい事実とは受けとめていないというふうに報告を受けているわけでございます。  したがいまして、その当時におきまして、あらゆる限りの努力を尽くし、あらゆる資料検討いたしまして犯罪容疑は認められなかった、もちろん起訴した部分は別でございますけれども、いま言われておりますような部分につきまして犯罪容疑は認められなかったという結論が出ており、また今回改めて最終報告書が公表されたこともございましたので、念には念を入れろというような趣旨でもう一度当時の資料あるいは関係の者から事情を聞くというようなことで、部内での検討でございますけれども重ねて検討した結果、この前の結論を変えるような事実はないという最終的な判断になったということでございます。
  142. 沖本泰幸

    ○沖本委員 次に、時間の関係で金大中問題の方へ移りたいと思うのですが、警察庁の方にお伺いします。  たしかこの前の当委員会でこの問題で議論したときには、警察庁自体はまだ投げてないんだ、捜査を続行しておるというふうな御答弁があったと思うのですが、法務当局の方は、政府の決着を見ておるという大臣お答えもあったわけです。その辺に大分食い違いがあるわけなんですけれども、警察当局の方は依然としてそのままの状態で捜査を続けていらっしゃるのか、そういう形になっておるのか、決着とみなしていらっしゃるのか、その辺はどうなんですか。
  143. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政治的に決着をつけたという問題と捜査を継続していくという問題とは、これは並立している問題でございます。決着しているということは捜査を打ち切ったということではございませんので、御理解をいただいておきたいと思います。
  144. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 ただいま法務大臣の御答弁ありましたとおりでございまして、警察の立場で申しますれば、事件発生以来今日まで本件の捜査を継続してきたところでございますし、今後ともその方針には変わりはないということでございます。
  145. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、いまどういう警察庁の捜査段階なり見解でこれに臨んでいらっしゃるのか、われわれはその辺が知りたいと思うのですが、同時に法務省当局の方のお考え、両方あわせてお伺いしたいと思います。
  146. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 ただいまお尋ねの点は、現在の警察の捜査方針と申しますか、そういった点に関することかと思うわけでございますが、現在も警察といたしましては警視庁に金大中氏逮捕監禁略取事件特別捜査本部を開設いたしておりまして、捜査体制を維持いたしまして捜査をいたしておるわけでございます。  その捜査の重点と申しますのは、大分時間は経過いたしておるところではございますけれども、新たな情報の掘り起こしと裏づけ捜査、あるいはいろいろな関係者がおるわけでございまして、この関係者の洗い直し捜査あるいは過去に蓄積されました相当膨大な捜査資料もあるわけでございまして、こういった既存捜査資料の再検討とそれに対する補充捜査、こういったことに指向いたしまして真相解明のために鋭意捜査を続行中であるということでございます。
  147. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 金大中問題は当初から警察当局が担当してきておられますので、警察当局の処理にゆだねているということでございます。
  148. 沖本泰幸

    ○沖本委員 政治的な決着というものと捜査とは一緒じゃないということをお答えになりましたけれども、それじゃ、その決着がついたものをどういう形で続行していけるのかという点にあるわけです一先ほどお答えありましたけれども。  では、形だけそういう形で残しておいて、外務大臣お答えになったとおり公権力が介在したという新たな事実が出てこなければ問題をひっくり返すことはできないのだということなんですけれども、それが先ほどの質問の中に出ておりました背景の問題、いろいろ絡んでくると思うのです。そうすると、伺っておりまして非常に理解に苦しむわけですね、国民感情として。国民感情としては、白昼治安の維持が保たれておる日本の国内にいらっしゃる外国人を理不尽に拉致してしまったという事実は厳然とあるわけですから、決着ということになれば原状に返してもらうということが最大の決着になるわけで、そのことに関して日本での行動なり発言については問題にしないのだというようなことが報道されておりましたけれども、そのことについてはもう向こう方の出方を見る以外にないのだ、信頼する以外にないというふうな大臣お答えがあったわけですが、その程度でじっと見ていなければならないのかどうなのか、その辺いかがなんですか。
  149. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が答えていいのかどうか知りませんが、やはり基本的な点は金大中氏を一たんもとに戻してもらう、原状回復ということがあるんだろうと思うのでございます。それでなければ捜査はなかなかわからないじゃないかということがあるんだと思います。そのことは政治決着で解決されたんだ、こう理解しているわけでございまして、しかし当初から警察当局が担当しておった捜査は、それは続けていきますよ、それ以外の方法で努力をしていきますよという関係になっているのだ、かように理解しているわけでございます。
  150. 沖本泰幸

    ○沖本委員 決着というので似たような言葉がここ二、三日よく出ているのですけれども、ソ連の原潜が領海侵犯をしたという内容についても決着という問題が何か国民にあいまいな形で聞こえているわけですね。同じように、金大中問題も決着という言葉が国民の耳や目にはあいまいな形で映っているわけで、日本の主権というものが外国に向かってしっかりと主張できない、まるで何か弱味があるような感じを受けるわけですから、その辺はやはり国民政府政府たるところをはっきり見せていただくことが大事なことじゃないか、こう考えるわけです。その辺に法務当局としての厳然たるものを見せていただきたいと思いますけれども、これはこれ以上言ったって議論の展開だけで終わると思いますので、そういう御注文をしておきたいと思うわけです。  そこで、ひとつ飛び離れたことになりますけれども、全斗煥大統領が誕生しかかっておるわけです。朴大統領亡き後の韓国の新しい政権が誕生しかかっているということになるわけで、私たちの目というのは韓国の動きを非常に注視しておるわけですけれども、しかし、お隣の朝鮮民主主義人民共和国の方にも目は行っているわけです。アメリカ国会議員も訪ねたという事実もありますし、日本の財界の方も貿易を拡大していこうという動きもあるわけです。ですから、どちらかというと日本のあり方というのは韓国一辺倒的なものがあるわけですけれども、私たちは朝鮮半島の平和を願うのであって、緊張がより緊張していくということは何人も好まないと思うのですね。そういう面が、周囲からのそういう動きによって北朝鮮との関係が改善されていくのを政府がお待ちになっているのか。むしろ、同じような角度でお隣の国との接触を続けていきながら何らかの形で南北の平和を図っていく、緊張を解いていくために日本政府が何らかの形で寄与していくという方向に向かないものだろうかという気持ちがわいてくるわけなんです。そういうものに対して、ややもすれば北朝鮮との関係が非常にむずかしいものに映るわけですけれども、その辺大臣としての御方針はどういうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  151. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは私の所管じゃなくて、むしろ外務大臣の所管だろうと思います。  ただ、朝鮮半島の安定ということが日本の安全と密接なつながりを持っておりますし、またひいてはアジアの安定にも大きな関係があると思います。したがいまして、南と北の関係が円滑になることをみんなが望んでいるわけでございますし、また、北と南が一つになるというような努力もいろいろなされているようでございます。しかし現在のところ、北と言うと言葉が悪いのかもしれませんが、朝鮮人民共和国との関係でわが国は国交を持っていないわけでございます。国交を持っております韓国、この韓国が安定してくれること、これまた日本としては非常に重大な関心を抱かざるを得ないことでございまして、北とは関係がございませんけれども、国交はございませんけれども、南とは国交を持っておるわけでございますから、少なくとも南の政治が安定してまいりますこと、これは私も心から願っているところでございます。
  152. 沖本泰幸

    ○沖本委員 外務省の所管だけではなしに、朝鮮民主主義人民共和国の政治家をこっちに招くこともありますし、相互交流という面もありますし、いろいろな接触はないことはないわけですね。そういう点をやはり以前に従って法務省当局が厳しくお扱いになるか、いやこれから将来に向かってもう少し緩めていって、何らかの形で間を緩和していこう、そしてそういう形自体がいわゆる対等に二つの国柄を見ながらおつき合いをしている、できるだけ早く両方が手をつないで平和な朝鮮半島を築いてくださいという形の持っていき方というのはいろいろあると思うのですね。そういう面にやはり政府当局が動いていただくことが大きな力になるのじゃないか、われわれはそう期待しておるわけです。  これ以上のことをお答えは望みませんけれども、おっしゃっていただければありがたいわけですけれども、そういう点ひとつ、大臣の所信というものを御就任になってからまだ伺ってないわけです。それでいろいろ法務大臣語録が飛び出てくるものですから、そういう面に関して、その辺をもう少し開いていただけたら、こう感じておるわけです。  そこで、先ほどの刑法の全面改正についての御発言があったわけでけれども、これは新宿の事件に関して大臣が強くそれをお感じになって閣議で御発言になったというふうにさっき伺ったと思うのですけれども、それを軽々に持ち出してやってもらうといろいろ問題が大きくなってくるしということで横山さんから大分御発言があったわけですけれども、このことは前もって法務省の担当の方々からいろいろ大臣がお聞きになっていきながらあった問題なんでしょうか。ただ新宿事件に関してもろもろの資料を取り寄せて見てみると精神的な異常者の事件が非常に多い、だから心配だという点から御発言になったのかどうか、その辺いかがですか。
  153. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は法務省を担当いたしましてから事務当局からいろいろな話を聞いてまいりました。その過程の中で刑法改正、これは膠着状態のままにしておいてはいけない、ぜひ解決に努力を払っていきたい、こう感じましたし、皆さん方にもそう申し上げてまいってきております。  その事務当局から聞いておりますときに、刑法改正草案で一番強い反対のあるのがこの保安処分なんだということも聞いておりました。そうしましたら、あの新宿の事件あるいは川口の事件などが起こってまいったわけでございます。国民の皆さん方から見ますと大変な憤りを感じておられるだろうと思いますし、一体政権を担当する者は何を考えているのかということにもつながるわけでありますから、どうしても私は、政府のだれかがこれに対してこういう考え方を持っておりますということを国民の皆さんに明らかにしなければ無責任じゃないか、こう判断をするわけでございます。  そんなこともございまして、おとといの午後、私は東京を離れておりましたが、電話で事務次官に、閣議発言したいからその要旨をまとめてもらいたいということを申し上げ、そしてきのう閣議でお話をいたしました。これは私、法務省を担当いたしまして事務当局から伺って、何としてもこの膠着状態を打開していかなければ責任を果たせない、こう考え、こう申し上げてまいったわけでございます。そして刑法の改正という言葉が飛び出すのはいまのようなことから昨日になったということでございまして、保安処分だけやるのかと言う記者クラブの方でございますから、刑法改正全体の問題として、またその一環としてこのことの解決も図っていきたい、こう申し上げたわけでございます。国民の多くの方々の憤りにこたえるつもりで私は閣議報告をいたしたつもりでございます。
  154. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは法曹三者の話し合いが崩れていって、法務省当局あるいは裁判所と弁護士会との関係が非常に悪化したという時期がございました。それの悪化の中の理由の一つにこの問題もありますし、少年法の問題もありますし、もろもろの問題があったわけですけれども、それが前国会あたりから雪解けになって話し合いが持たれて非常にいい傾向だ、よかったと私たち喜んでおったわけですけれども、このことによってまた間柄が硬化してしまうのじゃないかという心配もあるわけです。  大臣は、問題を提起してみて、いろいろ議論してよりいいものができてくればそれにこしたことはないのだ、そういうお気持ちでおっしゃっておるということは理解できるわけですけれども、その辺について先ほど大臣お話がありましたけれども、日弁連と接触しながらこういう問題をやっておるということなり、こういう方向でこの問題を検討していきたいのだということでの話し合いはあったのでしょうか。新聞記事の中からいきますと、やはり法務省当局特に刑事局のいろいろなお考えというものが載っておりますし、それはいままでにしばしば問題になった点であるということが言えるわけですけれども、その辺はどういう状況になっておるのでしょうか。
  155. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日弁連と法務省とは本当に一つ心で事に当たっていかなければ物事は進んでいかないという判断をいたしております。  したがってまた、いま沖本さんがおっしゃるような疑念が起きてはいけないものですから、私も言葉も考えまして、関係者との協議を重ねという表現を使わせていただきました。しかも改正するのだとは言うておりませんで、この問題の推進を図っていきたいと考えております、こう申し上げておるわけでございます。私は、日弁連の中にいろいろな意見を持っておられる方々も大いに意見を出していただき、法務省もまた従来の考え方から一歩も出ないのだということではいけないと思うのです。やはり弾力的に話し合いをしていかなければならないと思うわけでございまして、今後本当に胸襟を開いて日弁連との間では協議を重ねていきたいものだな、こう思っております。  しかし現在の段階では前のままでございまして、日弁連は刑法改正反対、法務省はどうしても改正したい、それで話しが途切れてしまっておるわけであります。膠着状態になっておるわけであります。これはこのままではいけないのだということは、私は沖本さんにもわかっていただけるのじゃないかなと思います。私はしゃにむに一つの考え方を突っ走っていく、押しつけていく考えはさらさらございません。そんなことをしておったのじゃ国民大衆が困ってしまいます。現に精神障害者と疑われるような人たちによる凶悪な犯罪が続いているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、殺人犯と放火犯だけ取り上げますと一〇%内外がこういう人によって引き起こされている。それが心神喪失だということで無罪にする、不起訴にする、社会へそのまま野放しにする、そして精神衛生法で措置入院の道があるじゃないかというだけでは片づかないのじゃないか、またいままで片づいていないじゃないか、私はこういう判断に立っているわけでございます。
  156. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのことに関しては私も同感ではあるわけですけれども、さらに覚せい剤とかそういうものによっても突然異変を起こして自分が記憶してないのに人を殺したり傷つけたりという事件もしばしば起きておりますし、猟銃を乱射したり、突然にこれもおかしくなってやっている。最近そういうことが非常に多いわけで、ひとつ何とか社会的にこれに対応するような内容のものを考えなければならないし、いろいろとあらゆる面から対応していかなければならない、こうは考えております。  その一つとして犯罪被害補償法ができたわけですけれども、これとても新宿事件から考えていくと、来年の一月一日から施行されるわけですから、新宿で被害に遭った方は何の補償もないということにもなるわけです。そういう点からいきますと、むしろこっちの方のこういう問題の方にもっともっと力を入れて政府が動いていただかなければならないのじゃないか。これは加害者の方も問題ですけれども被害者の方も問題になるわけで、いわれなき事件にいつどこで巻き込まれるかわからないという現状が、大臣が憂えられれば憂えられる以上に起こってきているわけです。それが被害者の方が満足するような社会的な補償も救済措置も全然ないという現状にあるわけですから、閣議で御発言になるならもっとその辺も内閣でお考えになっていただきたい。伊東外務大臣がカンボジアに行ってこれはひどいとおっしゃったのですけれども、日本の国の中にもこれはひどいというのがいっぱいあるわけですから、その辺もひとつお考えになって御発言になっていただきたい、こう考えるわけです。  そこで、先ほど憲法九条についてのお考えをお述べになっていらっしゃいました。もちろん個人的な見解だということなんですけれども。いろいろ最近の新聞に出ていたことですけれども、ちょっと防衛問題なんかで防衛庁自体が行き過ぎじゃないだろうかということを宮澤官房長官が少し歯どめはおかけになったというような記事も出ておるわけですし、その点からいくと靖国神社へお越しになった、もっとも個人的な御資格でお越しになったんだろうというふうに、テレビでおっしゃっておりましたけれども伺っていたのですが、そういうことと、それから子供の教育について教科書の中にもう少し国を思うようなことを載せてもいいじゃないかという、大臣になるなりそういうことが出てきたわけです。それで靖国神社へお越しになった。それでいまの内閣を挙げて防衛問題がどんどん外へ出てきているわけですね。まるで国民はあっけにとられて見ているというのが偽らざる現状だと考えるわけです。  そうしますと、一連の大臣のいろいろな御発言は、個人的なお考えだということになりますけれども、全部その辺につながっているのじゃないだろうか。憲法九条の問題もその辺にあるのじゃないだろうか。そうすると、これから大臣法務行政なり何なりを御担当になりあるいは政府の閣僚としてどういうお考えのもとにこれからの政治を御担当になるのだろうかということが心配になってくるわけです。その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  157. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 新宿のバスの例をおとりになって、被害者のことを考えろ、こうおっしゃった。私も被害者のことを考えて、加害者の問題についてのいまの対処では心配はなくならないのではないか、こう思って発言をしているわけでございます。  同時にまた、犯罪被害者の救済法のことをおっしゃいました。私も数年前に予算委員会で自民党を代表して質問いたしますときに、加害者に救済能力がない、そういう場合には国で救済する措置をつくりなさいよということで質問申し上げたことがやっと実ってきたわけでございまして、私も沖本さんと同様に常に被害者のことを考えておるつもりでございますし、これからもそういう努力をしてまいりたい、こう思います。  なお、私の発言で、一つは教科書の言葉の問題がございました。これは閣議で総合安全保障ということに関連して発言が起こったときに私が申し上げたわけでございました。日本は戦争に負けて占領軍の政策のもとに置かれてきた。また左翼の方の強い影響も受けてきた。そういうこともあって国とか国を愛するとかいうことがタブー視されてきたきらいがあって、教科書の面においても必要以上にそういうことを欠いているのですよ、幾ら防衛力を強化しても肝心の国民が国を愛する、国を守るという気持ちがなかったら何にも役に立たないのですよ、だからやはりひとつ見直そうじゃありませんかということを申し上げたわけでございました。  そうしたら、その後に文部省の事務次官が私を訪ねてこられまして、法務大臣の言われるように教科書の中には国を守るということはどこにもありません、こうおっしゃるのです。それはいろいろせんさくしてみると、憲法の前文に「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こう書かれているのですよと言うのです。自分で自分の国を守ろうというようなことは憲法にも出てないのですよ、「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」これから始まっているものですから、どこにも国を守るというような言葉は出てこないのですよ、こうおっしゃっていまして、やはり反省しなければならないところがいろいろあるように思いますとおっしゃっておりました。  私は、防衛力を強化すればそれで国は安全になるのだとは一つも思えないのでして、また逆立ちしてそういうことをやっておりましても、国民の間に国を愛する気持ちがなかったら何の役にも立たない、こう思っておるわけでございまして、やはり国について国民が理解を持つことが先決じゃないか、こういうことでございます。とかくそういうことを言いますと何か右寄りの人間のように取り扱われてしまうのですけれども、私自身はまともなことを言うているはずじゃないかな、こう思っております。ことに日本は戦争に負けました直後に、修身と歴史と地理の授業の停止をまず命ぜられたのです。国旗も国歌も許されなかったのです。  私は、素直に日本が歩んできた道を客観的に見直して、それから今後の日本の行く道をみんな謙虚に話し合ったらいいじゃないか、こう思うのです。憲法の問題だってみんな議論し合ったらいいじゃないか。とにかく固定的に物を考えたのでは進歩はない、硬直的になったのじゃ日本の発展はない、自由に議論し合いながらみんなでよりよい道を求めていこうじゃないか、これが私の本当の気持ちでございます。何か言うとすぐにタカだとかハトだとか、右だとか左だとか決めつけてしまういまの風潮は避けたいものだな、こう思います。  靖国神社の問題につきましても私なりの考えは持っております。私は、やはり国家、社会のために一命をなげうった方々についてみんながそれなりに感謝の気持ちを持つ、またそうでなければ後に続く人たちが国家、社会のために努力してくれないじゃないか、やはり国家、社会が充実してこなければお互いの生活も充実したものは持てないじゃないか、こう思っているものでございます。しかし、これも国民合意の中でだんだんとそういう道を求めていかなければならない。だから、私は靖国神社に参拝いたしましたけれども、個人として参拝しているのですよ、早くみんなが自由な気持ちで参拝できるような合意の道をつくり上げてもらいたいものですねということも申し上げてまいっているわけでございます。国を愛すると言うとすぐ戦争につながる、こうおどしてかかるようないまの風潮、もちろん私たちは平和を維持していくために最善の配慮はしていかなければならないと思います。そのためにあらゆるものが犠牲になってはいけない。やはり国のために命をささげた人について感謝の気持ちを持つということ、それもそれなりにフランクに認めたらいいのではないだろうかな、こう考えておるものでございます。
  158. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣の御心情は声涙とともによく理解はできました。しかし先ほど稲葉先生から、余り一生懸命聞くと大臣のベースに巻き込まれるから少しでやめたのだ、こういう御発言もあったわけですけれども、大臣のお考えはお考えで、それはそれなりで結構だと思います。私たちには私たちの考えもあるわけですし、各様いろいろあるわけで、それは議論されれば非常にいいのだ。ただ、一方的に考えて押しつけるのはよくないということを大臣がおっしゃっておりました、そのことも結構だと思います。  しかし、たとえて言えば靖国神社なら靖国神社で——外国へ行けばほとんど無名戦士の墓、碑があるわけですね。そこへ宗派、思想の違いを超えて、国を守るために命を亡くした者のところへ花束をささげてくる、黙祷してくるというものはあるわけです。ところが、日本は何か靖国神社に固定されそうな状況もあるわけですから、世界じゅうの人が来て、無名戦士の墓、碑なら碑のところへ行って日本のとうとい犠牲者に頭を下げるというようなものもあっていいのではないかとも思います。ただそれが、この靖国神社がいいのか悪いのかというのは議論が分かれるところでありますから、その辺に理由があるのではないかと思いますね。  私も戦争で体の中にまだ弾が一発あります。だから、命を落とさなかったというだけのことであって、いまの年輩者の中には、同じようなことでもう二度と戦争なんかさせたくない、自分の子孫をあんな苦しいところへ、あんなひどいところへほうり込みたくないというのはみんな一様にあると思うのです。だから、いろいろな考え方に対しても、防衛問題に対しても歯どめが要るという考え方もいろいろあるわけですから、それは議論の場に乗ってきて、いろいろな形で議論されてより国民的な課題になって、国民すべてが合意できるような内容のものができ上がっていけばいいと考えておるわけです。  私が大臣にいろいろと注文をつけるのは、いろいろな公的な肩書きがついてくると、それはそれなりに評価されますから、その辺を十分ごしんしゃくになっているとは思いますけれども、十分に解釈をつけていただいて、国民がよりよく理解できていくような形でいろいろとこれから運んでもいただきたいし、一番法を守っていただくお立場にいらっしゃるわけですから、その辺を十分国民が安心して奥野法務大臣に全幅の信頼をお寄せできるようなこれからの法務行政をつかさどっていただきたいことをお願いいたしまして、終わります。  ありがとうございました。
  159. 高鳥修

    高鳥委員長 岡田正勝君。
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、先に一言申し上げておきますが、私は、人間としては大臣のような思ったことをずけずけ言われる、たくまない、そういうお人柄は非常に好きであります。これからもそれはずっと続けていただきたいと思いますが、ただ一つだけ御注意願いたいことは、奥野さんはいま大臣という最高の地位におられるわけです。昔から綸言汗のごとしという言葉がありますように、大臣のようなお立場になりますと、一たん吐いた言葉は額から出た汗と一緒でありまして、もうもとへ戻すことはできません。そういう非常に重要な立場にあるということもお考えの上で御発言をいただきたいと思うのであります。しかし人柄としては、私は、ずけずけお互いに物を言う、これがなかったら進歩も発展もないと思いますので、基本的には賛成をしております。  続いて質問に入らせていただきますが、八月十九日の夜東京の新宿で起きました、先ほど来問題となっております京王帝都バス放火事件で非常に悲惨な問題が起きたのであります。このことにつきまして以下御質問をいたしますが、大臣お答えいただきますときには特に大臣に御指名をいたしますので、あとは関係者の方から御答弁いただきたいと思います。  まずお尋ねしたいのは、その後死亡者もふえておるというようなことも承っておりますが、現在時点の被害の状況についてお聞かせいただきたいと思います。
  161. 加藤晶

    加藤説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、十九日の午後九時八分ごろ新宿区の西新宿の京王デパート前のバス停でそういう事案が起きたわけでございますが、これによります被害は、そのバス一台を全焼させたということが一つございます。そしてこの火災によりまして、その直後にこの火災のその場所で乗客三名が死亡されました。そして、そのバスの運転手を含めまして二十名が重軽傷という悲惨な事件であったわけでございますけれども、その後八月二十三日に至りまして、病院へ収容されておりました女性の方一名が死亡されるということになりましたので、この事件での死亡者は計四名というところでございます。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 このバスを運行しておりました京王帝都電鉄は、六月二十日とりあえず負傷者の治療費を全額立てかえをするということをお決めになったそうでございます。しかしながら、いろいろ取りざたされあるいは推定されるのには、同社側には事件そのものについての過失がなかったと認められているようであります。  ということになりますと、慰謝料とかあるいは遺族への補償金というような負担問題はどうなるのかなということが大変心配になってまいりますが、この問題についていかようになりますか、説明願いたいと思います。
  163. 加藤晶

    加藤説明員 この事件につきましてのバス会社側の対応に問題がなかったか、こういうことでございますけれども、現在までの捜査によりますと、特別に責任を追及すべきような事項というものはまだ発見されておらないように思います。ただ、こういう重大事案でございますので、さらにいろいろな状況、証言を集めまして、本当にそうであったかどうかということを確定するように努めておるところでございます。
  164. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは若干管轄外のことにわたるかもしれませんが、もしその場合は私の意見としてお聞き願っておきたいと思うのですけれども、こういう問題が起きたときに、いまの交通法規に照らしましても、バスの運行しているときではない、だから会社には関係ないんじゃないか、責任はないんじゃないかというような問題がいろいろ言われておるのでありますが、私はこれは大変微妙な問題じゃないかと思うのです。  なぜならば、天下の公道の上にバスの停留所というものが設置をされております。そこからお客さんは乗ってくださいということになっております。その乗る車両はこれですということになっております。そのバスが焼けたバスです。そのバスへ乗って発車まで待っておったということは、もうすでにその車両に乗り込んでいるわけですから。いまのような精神障害者が出てきて油を投げて新聞に火のついたものを投げて全焼したというのだけを見ると、会社にもどこにも関係はなさそうに見えますが、今度はこれを一歩目を転じまして、それでは、たとえば羽田空港で飛行機の中へ乗り込んでいる人あるいは成田空港で飛行機の中へ乗り込んでいる人が、飛行機がまだ出ない前にもしこういう事案があって飛行機が炎上した、そして死者が出た、重軽傷者が出たというときには一体どうなるんだろうかということを考えてみる必要があるのではないか。  いまの状況から見ますと、この亡ぐなられたとうとい犠牲者の四名の方を含め残りの十九名の重軽傷者の方々には一切何の恩典もない、恩典と言ってはおかしゅうございますが、何の補償も弁済もない。これは、私は社会正義の上からほうっておいていいことではない。私は、大臣のけさほど来からの御発言をずっと聞いていますと、やはり大臣大臣なりの正義感を持って発言を貫いておると思うのです。そういう点から考えましたら、はあ気の毒でしたねということだけで済む問題ではないのではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。管轄外だから答えませんか。
  165. 加藤晶

    加藤説明員 責任の問題でございますけれども、いまお話の中にやはり刑事責任と民事責任と二つ含まれているように思うわけでございます。それで警察といたしましては、刑事責任ですね、それのもとになる過失なり具体的な行為があったかどうかというふうなことの調査が第一でございまして、民事の方につきましては、これはおのずから別問題であろうかと思うわけでございます。  そういうことでございますので、いまおっしゃいました管理しておる場所あるいは車の中でそういうふうなことが起きた場合にどの程度責任を負うべきか、あるいは責任があるのかないのかというふうなことにつきましては、これは刑事責任がなければ純然たる民事の問題になろうかと思うわけでございまして、この点につきましては警察としてはちょっとお答えいたしかねるところでございます。
  166. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に進ましていただきます。  こういうような問題につきましては、私つくづく前国会のことを思い出すんです。通り魔殺人とかあるいは爆弾テロというようなものでゆえなき犯罪に巻き込まれた被害に対して国が補償しましょうということで、犯罪被害者給付金支給法というものがさきの国会ですでに成立したことは御存じのとおりであります。ところが、その当時私どもは過去にさかのぼってこの法律をつくってもらいたいということを言い出した、過去にさかのぼって適用してあげるべきではないのか、大した予算ではないじゃありませんかということでずいぶん言ったのでありますけれども、衆寡敵せずついにこういうことになってしまいました。来年の一月一日からの事案でなければ適用できない。しかし、もしいまこの法律が適用されているとするならば、この問題はまさにぴったりの事案であろうと私は思うのであります。このまま泣き寝入りにさすということはまことに残念でたまりません。  そこで、あるいは暴論かもわかりませんが、これは大臣お尋ねをしたいと思うのですけれども、来年一月一日から適用となっておるこの法律を、こういう問題が起こるにつれ考えたいことは、もっとこの適用の期間を遡及してあげたらどうだ。そのためには法改正が必要となりますが、法改正をやってでもこの問題を救ってあげるというようなことを考えるべきではないかというふうに思うのでありますが、大臣の率直な御意見を聞かしてください。
  167. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘になっておりますように、何らかの形において死傷者を救済しなければならない、全く同感でございます。どういう形でするのがいいのか、おっしゃるように法律を適用するのをもっと早めるのがいいのか、あるいは別途にその負担者があるのか、これはきわめなければならないと思います。しかし、何らかの形において救済すべきだという御指摘、私も同感でございまして、私なりにまた意見も述べていきたい、こう思います。
  168. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 率直な御意見ありがとうございました。  では次に進ましていただきますが、犯人の取り調べの状況について御説明を願います。
  169. 加藤晶

    加藤説明員 本件の被疑者につきまして、これはその当時市民の御協力によりまして現行犯逮捕いたしました。これを引き継ぎまして現在調べを続行しているわけでございますけれども、当初犯行を否認しておりました。しかしその後若干態度を軟化させまして、現在の段階では、被害者に申しわけない、どうしても謝りたいとか、あるいはバスの中に火のついた新聞紙を投げ込み、バケツに入っておったガソリンをその車両に流し込んで火をつけたということは間違いないというふうなことで、犯行自体につきましてはおおむね認めておる状況でございますけれども、現在までの調べの中では、その犯行に至る動機、契機というふうなものにつきましては具体的な供述はしておらないということでございます。
  170. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはあくまでも仮定の問題になりますが、新聞報道によりますと、四日前ぐらいから計画をされておった犯行のように思われるということも書いてありますが、もしこれが先ほど来から問題になっておりますような精神障害者であったとした場合はどういう刑になりますか。
  171. 加藤晶

    加藤説明員 四日前からの犯行であったかどうかということが一つ問題でございますけれども、数日前からたとえばガソリンを入れる容器を買うとかあるいはそれを移して持ち運ぶためのバケツを人のところから窃取するとか、そういう準備的な行為というものがあったことは事実でございます。ただしかし、先ほど来申し上げておりますように、果たして明確にこのバスに、しかもその当該バスにつきまして火をつけてガソリンをぶっかけて人を死傷に至らしめるというふうな犯意があったかどうか、その辺のところはまだいまのところはっきりしておらないわけでございます。  それで、仮定のということでございますけれども、この被疑者が起訴されまして被告になりました場合、精神障害者であった場合にどうなるかということでございますが、これはひとつ専門の法務省の方にお願いいたしたいと思います。
  172. 前田宏

    前田説明員 岡田委員仰せのように仮定論でございますから、一般論でしか申し上げかねるわけでございますが、精神に問題があるということで一種の精神鑑定のようなものが行われました結果、刑法上の心神喪失ということになりますと起訴できないという場合もございましょうし、またそれが裁判の過程までわかりませんで、裁判の過程でそういうことが新たに判明したということになりますと、やはり心神喪失による無罪判決ということも考えられるわけでございます。また、その心神障害の程度いかんにもよるわけでございますけれども、刑法上の心神耗弱ということになりますと刑の減軽が行われる。今度の場合にどういうことになりますかは、まだこれからのことでございますので何とも申しかねるわけでございます。
  173. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はこの点では大臣と全く意見が一緒でありまして、もうこういう無差別爆撃といいますか、とんでもない人間がおったものだ。私はこういう人は人間と思っておりません。全く許しがたい犯罪者です。こういうものをごく軽度な措置をするというようなことは絶対にあってはならぬ、社会正義の上からも許すべきでないという考えを持っておりますことを申し添えておきます。  さてそこで、この人のことを申し上げるのではありませんが、世の中には精神障害者の方がずいぶんいらっしゃると聞きます。こういう問題が突如として起こってくるわけでありますが、先ほど来の御説明を聞きましても、やはり殺人とか放火とかいう関係におきましては、非常に大きなウエートを占めておるようであります。一般の国民というのは、こういうものを新聞で見るにつけ非常な不安を持っておることは間違いないと思います。これを野放しにしていいのかどうかということですね。この問題について対策はどうであろうかということをひとつお尋ねをしたいのです。  そのときに重ねてお願いをしておきたいことは、現在、精神障害者の数が、これは程度にもよるのでありましょうが、私は全く素人でありますからどう分類するのかわかりませんが、その精神障害者の数と、それから現在どうしていらっしゃるのか、先ほど大まかに入院中の方とそうでない人とのことは言われましたけれども、入院しておる問題にいたしましても、一体国公立の病院の数とその入院者の数はどのくらいあるのか。私の想定では、恐らく余り国はこういうことに力を入れていないのじゃないか、民間の施設の方が圧倒的に多いのではないかと思いますが、その点、いわゆる私立の病院とそこに入っていらっしゃる入院患者の数、それからそれにあわせまして、病床、ベッド以外に詰め込んでおるというようなことはないかどうか、その点も教えていただきたいのであります。  それからいま一つ教えていただきたいのは、その中に、社会防衛上から精神衛生法上措置されております措置入院患者というのは、一体国公立にどのくらいおって私立の方にどのくらいおるのか、それを教えていただきたいと思うのであります。
  174. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 精神障害者の実態の把握につきましては、人権上の問題等もありましていろいろ困難な点もございますが、現在私どもでは、約百五十万人の障害者があるというふうに推計いたしております。このうち、五十四年末現在で全国の精神病院に入院しております患者は約三十万人でございます。そのうち、御指摘のございました自傷他害のおそれがあるという措置入院患者数は約五万人でございます。それに対しまして約八万の指定病床というものが用意されておるわけでございます。なお、精神障害者の対策につきましては、入院とそれからその後の通院ということで、約六十万人の方が通院医療を受けている。そのほか地域精神衛生活動の中で、デーケアとかアフターケアとかいうことでフォローを受けておるという形になっておるわけでございます。  それから国公立、民間の比率でございますが、精神病院数は現在全部で千五百余ございますが、そのうちの国公立は二百八十、民間がその残りでございます。病床数につきましては、国公立が約四万、民間の方が二十六万ぐらいになるようでございます。  細かい数字と、それから現在措置患者が国公立と民間にどういう比率で入っているか、ちょっと手元にないので、後ほどまたお答えしたいと思います。
  175. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、今度は大臣に直接お尋ねをしたいと思いますが、けさほど来論議をされており、それから昨日も御発言になった問題でありますけれども、この問題に関連をして、大臣は、保安処分を含めた刑法改正を急ぐべきであると、こういうふうにおっしゃったということを聞いておるのですが、その点もう一度、間違いはないかどうかお聞かせいただきたいと思います。
  176. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 きのう申し上げた言葉をそのとおり読ましていただきます。  この保安処分のことですけれども「この制度には一部に反対もあり、ために昭和四十九年に刑法全面改正の答申を得ながらいまだその実現を見ていないのでありますが、私としては、今後鋭意関係者との協議を進めてその実現を推進したいと考えております」と、こう申し上げました。
  177. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで重ねてお尋ねをいたしますが、この保安処分というのは、たしか法務省が準備をなさっていらっしゃる草案の中にはあると思うのです。そのままそっくりを提案をしたいな、推進したいなと思っていらっしゃるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  178. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 関係者との協議を進めるということでございますから、当然その間に話し合いをして、改めるべきものは改めるべきだと思いますが、弾力的に考えていくべきだ、こう思っております。
  179. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、協議を十分しながら改めるべきものは改めるというお言葉であり、ますから、深く追及しないことにいたします。  ただ私が非常に心配いたしますのは、この保安処分という問題を聞きますと全国民が一様にぱっと思うことは、どこかの国にありますように、ともかく権力の行使の前に邪魔になる者がおれば片っ端からひっつかまえて保安処分に処する、いつの間にか消えていくというようなことがありはしないだろうかということを非常にみんなが心配するわけでありまして、この保安処分という言葉を聞くだけでもぞっとする感じがするのであります。したがいまして、本件につきましては慎重の上にも慎重にひとつ御検討をいただきたいと思うのであります。  さて、そこで精神障害者の問題に返っていくわけでありますが、いまたとえばこのバス事件と言っては悪いのでありましょうが、ある事件があったとします。その事件を起こした人が精神障害者である、それが大きな犯罪を犯した、そういう場合は、再発するおそれがあるあるいは再犯するおそれがあるという場合には、当然これを保安処分すべきではないのでしょうかと言って非常に情熱を傾けておっしゃいましたが、気持ちとしては私は非常にわかるのです。しかし、保安処分ということについては私賛成をいたしかねます。  そこで、問題は厚生省に波及するかと思いますけれども、これはそちらでお答えいただいてもいいのですが、現在の精神衛生法上で措置患者として取り扱うということで十分対応できるのじゃないか。それを、何か承るところでは万全を期しがたいのでというお言葉があったように思います。ここらは、一体万全を期しがたいのですか。現在の精神衛生法上におけるいわゆる措置入院といいますか、そういうやり方は万全を期しがたいのかどうか、社会の要請にこたえることにならぬのかどうか、その点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  180. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 精神障害者を取り扱っております私ども精神衛生課といたしましては、精神衛生法の運用につきましては十分これをやっておるつもりでございますので、現在の措置制度というものが適正に運用されておるという限りにおいてはその医療上このような問題は起こらない、また起こらないように私どもとしても努力しなくてはいけない、かように考えております。
  181. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この問題で最後に重ねてちょっとお尋ねをしますが、もしこのバス放火事件の犯人の方がいわゆる精神障害者であったということになりまして、責任無能力者であるということになった場合、当然これは無罪になるでしょうね。あるいは悪くいっても不起訴でしょう。ということになった場合に、厚生省はこれに対してどう対応できますか。国民が一番知りたがっていることなんですよ。そういうものが再び野放しになるのかいな、それはえらいことだぞという心配があると思うのです。仮定で大変恐縮でありますが、お答えいただきたいと思います。
  182. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 仮定の御質問でございますので一般論で申し上げますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げました措置制度もしくはいろいろなところからの通報制度というものに応じて、約四千人の鑑定医がこの措置に応じておるわけでございますので、そして退院後につきましても、その退院について鑑定医が鑑定し、その後の通院医療についても万全を期しているということの法的な運用を行っているわけでございますので、そこから漏れている精神障害者というものはないはずであるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  183. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ただいまの答弁を私は信じます。ぜひともがんばっていただきたいと思います。  次の問題でありますが、山梨県東八代郡一宮町のスポーツ広場におきまして、八月二日の午後二時半ごろに梶原利行という三十六歳の男が、大勝和英さんの次男の五つになる司ちゃんという人を誘拐いたしました。四日の日にとうとう殺したらしいということでありますが、この事件発生後の捜査状況について説明をしていただきたいと思います。
  184. 加藤晶

    加藤説明員 お答えいたします。  八月二日のいまおっしゃいましたような時間に、山梨県の東八代郡一宮町におきまして発生いたしたわけでございます。一宮町に住んでおられる大勝和英さんの次男の大勝司ちゃん、当時五歳でございますが、この身のしろ金目的誘拐事件につきましては、八月十五日犯人の梶原利行を逮捕いたしまして、現在石和警察署に身柄を勾留いたしまして鋭意取り調べを進めるとともに、その裏づけ等諸般の捜査を実施しているところでございます。  その捜査の概況を申し上げます。この事件の特異性、重大性ということから、事件発生直後石和警察署に、山梨県警の刑事部長を長といたしまして、百名近い体制をもちまして特別捜査本部を設置いたしまして、被害者の無事救出を最大目標といたしまして、報道機関に対しましては報道協定の申し入れをし、その締結を得た状態で、まず身のしろ金持参の指定場所における犯人の捕捉、逮捕、それと被害者の誘拐された現場付近における聞き込み捜査、被害者及びその家族に対する怨恨等からの捜査、あるいは行きずりの者による犯行とも考えられますので、この面からの捜査、さらには電話がかかってきておりますので、この架電内容やその声からの捜査ということを基礎捜査の方針といたしまして、各面から捜査を進めてきたわけでございます。  犯人から身のしろ金を持参するようにという具体的な要求それから場所、時間の指示、これがございましたのは八月四日以降十一日までの間に合計五回あったわけでございます。しかし、その指定時間、指定場所に父親の方が現金を持参いたしましたけれども、この現金持参人のところに犯人があらわれなかった等の理由から、その段階での犯人逮捕ということは実現しなかったわけでございます。  しかし、被害者が誘拐されたと認められます現場付近における聞き込み捜査等から、八月十日に至りまして、犯人梶原利行を割り出しまして、身のしろ金目的誘拐罪によりまして逮捕状の発付を得て、同日指名手配をいたしまして、全力を挙げて追跡捜査を進めてきたところでございます。八月十五日に至りまして、東京都内のパチンコ店で遊技中の被疑者梶原利行を警視庁の警察官が発見いたしまして、職質の上逮捕して山梨県警に引致したわけでございます。  取り調べの結果、先ほどもございましたように、残念ながら被害者はすでに八月四日の夜犯人の手によって殺されまして、山梨県下の山中に埋められているということが判明いたしまして、翌十六日の午前一時二分にこの被害者の遺体を発見、確認したという状況でございます。被害者が殺害され遺棄されていた事実から、十六日になりまして、この被疑者梶原利行を殺人、死体遺棄罪によりまして再逮捕いたしまして、翌十七日には身のしろ金目的誘拐、殺人、死体遺棄によりまして検察庁に送致いたしたわけでございます。  同日勾留状が発せられまして、身柄を石和警察署に勾留いたしまして、現在に至っているわけでございますが、被疑者の梶原も、現段階では取り調べに応じて若干の供述もいたしておりますが、その自供によりますと、本人はいろいろのことで借金がかさみ、この借金の返済に充てる目的で本件身のしろ金目的誘拐を敢行したというものでございまして、だれを誘拐の対象にするか、だれを誘拐するかということにつきましては、事前に下調べをして、この具体的な大勝司ちゃんを選んだというものではないということでございまして、そういう借金苦から逃れるためにということで、だれかを誘拐しようと決意していたころに、たまたまそのスポーツ広場でひとりになりましたこの大勝司ちゃんを誘拐したというふうに述べております。現在、犯行の詳細につきましては、いろいろ事情聴取等の調べとともに、いろいろな裏づけ捜査を進めておるというところでございます。
  185. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 一部聞いたところでは、県警の手の打ち方が悪くてとうとうついに殺してしまったというようなことを伺いましたが、ただいま聞きましたところでは、身のしろ金を持ってこいという連絡があったのが八月四日ということですから、そのときにはもう亡くなっていらっしゃったわけでございますから、私はその疑問は解けました。  そこで、この犯人につきまして、これも私の聞き違いかもわかりませんが、ふだんは平常人でありましても、犯罪を犯したときにはいわゆる精神障害者であったというようなことがよくあるんですね、新聞では、あるいは実際の刑の言い渡しの上では。まことにみんなが割り切れぬものをよく感ずるのでありますが、この人も何か精神障害ということを言っているんではないかということを言われておるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  186. 加藤晶

    加藤説明員 この被疑者のいままでの性行、来歴、行動その他、それから現在取り調べをしておりまして受ける感じでは、全くそのような精神障害という疑いはないということで報告を受けておりますし、また犯行時に精神障害者であったかどうかというふうなことでございますけれども、こういう重大な犯罪を敢行するということになりますと、多少それは興奮あるいは無我夢中になるというふうな状態はあると思いますけれども、いままでの調べの状態では、いわゆる精神障害という程度にまでは至っておらないというふうに、ごく通常人の犯行であろうというふうに思われます。
  187. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかりました。とにかくこれなんかも突如として思わぬときに無差別でどこの家の子供がひっさらっていかれるかわからぬというようなことでありまして、非常に恐ろしい犯罪であると思うのであります。こういう問題について、いままでいろいろ誘拐事件というのがたくさんありますね。長年にわたっての資料というのはむずかしいと思いますが、現在までの誘拐犯人で精神障害であるということで不起訴扱いになったり無罪になったりというようなことになったケースはありませんか。それだけをお答えください。
  188. 前田宏

    前田説明員 とりあえず最近の統計資料等によりまして調べたわけでございますが、いわゆる誘拐事件につきましてはそういうお尋ねのような数は余り多くないようでございます。ただ、四十九年から五十三年までの五年間で調べましたところによりますと、いわゆる心神喪失ということで不起訴処分にしましたものが昭和五十二年と五十三年にそれぞれ一名ずつあるということがわかっております。
  189. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、元日共幹部の伊藤律氏の問題でありますが、生存が確認されてあすかあさってでもお帰りになるというようなことを漏れ聞いておるのでありますけれども、これに対しまして当局はどのように対応しようとしていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  190. 吉野毅

    ○吉野説明員 お答え申し上げます。  伊藤氏につきましては、昭和二十五年の七月当時以降所在不明になっておったものでございますが、今度中国で滞在をしておることが明らかになったわけであります。しかるに同氏につきましては、出国の際に法律の定める手続を経ないで日本を出国をいたしております。そんなところから、伊藤氏が帰国をいたしました場合には、出入国管理令法違反の事実の有無につきまして本人から事情を聴取をしなければいけないだろうというふうに考えております。
  191. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 重ねてお尋ねをいたしますが、この問題で私どもが漏れ承っておるところによりますと、出入国管理令は昭和二十六年の十一月に施行されたものでありまして、この密出国というのがこれより以前だったら適用できない。いま問題となっているのは密出国の問題だけ、いわゆる法律的に言えば出入国管理令の問題だけであると考えていいのかどうか。それでこれが二十六年の十一月以前であったらもう全然関係ないということになるのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  192. 吉野毅

    ○吉野説明員 お答えを申し上げます。  現行の出入国管理令が施行されましたのは昭和二十六年十一月一日でございますが、それ以前におきましては連合国最高司令官の覚書及び昭和二十五年の政令三百二十五号がいわゆる密出国を規制いたしておったものでありますけれども、この覚書につきましてはその後廃止をされております。また最高裁でも、廃止をされたことをもって刑訴法にいう刑の廃止があったものとして免訴の言い渡しをすべきものとする判例が確立をしておりますので、伊藤氏の出国が昭和二十六年十一月一日以前でありました場合には、同氏を処罰することはできないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、伊藤氏の出国がこの二十六年十一月一日以降であるのかそれより前であるのか、そういったことについて本人から事情聴取をするなど所要の捜査をやって明らかにする必要があろうというふうに考えております。
  193. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこらがちょっと気にかかるのですよ。「など」というのは何ですか。  私が判断いたしますところは、この団体等規正令の問題にいたしましても、これはポツダム政令の一つとして出されたものでありますが、昭和二十五年七月に治安当局が、当時法律違反といたしまして出頭を拒否したからというので伊藤氏を初め九名の逮捕状を取っていらっしゃいますね。ところが、これはいまおっしゃいましたように二十七年に廃止になっております。ということになれば、あと残るのは出入国管理令に基づく犯罪が成立するのかせぬのか、これより前か後ろかというだけであって、あなたは密出国したのはいつですかということを尋ねるだけで終わりではないかというふうに実は単純に思っているのです。「など捜査をしなければなりません」というのは何でしょうか。
  194. 吉野毅

    ○吉野説明員 お答えを申し上げます。  お答えをいたしましたとおり、本人にその出国の事情を中心にその間の事情をよく聞かせてもらうことということが中心であろうかと思いますけれども、私どもの現在承知しておる範囲では、本人がそう言っておるということでございまして、本人の言っておることが真実であるかどうかについて捜査をして明らかにする必要があろうという意味でございます。
  195. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今度は非常に小さな問題をお尋ねいたします。  八月二十四日の各新聞に載っておった問題でありますが、「裁判所は法を守ってください」とまことにショッキングな見出しであります。この人は大阪府の方でございますが、内容は、サラ金の方からお金を借りまして、借金の返済が不能になったというので大阪地裁に自己破産の申し立てをいたしました。そのときに、法律によりますと、その手続に必要なる費用というものは仮支弁をしてあげる、立てかえをしてあげるということになっておるのでありますけれども、この人の場合その立てかえ払いを拒否されまして、いたし方なくほかの方から五万円都合してきた。まことに国の態度はけしからぬというので、八万円ほどの弁償を要求して訴訟をしておるという話を聞くのであります。  ちょっと私が調べてみますると、年間約一億円ぐらいの補助金を出しておるのではないかと思うのでありますが、特に大阪、東京というところはこういう自己破産の申し立ては非常に多いわけでありまして、その点が実情がどうなのであるかということと、それからまとめてお答えをいただきたいと思いますが、破産申告、破産申し立てといいますか、これが最近の事例で何件ぐらいあるのか、そのうちで自己破産というのが何件あるのかということをひとつお答えいただきたいと思うのであります。
  196. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の事件が大阪地方裁判所で起きましたので、私どももそれをきっかけにしていろいろ調べてまいりましたが、過去三年間におきます破産申し立て件数でございますが、昭和五十二年では全国で千九百八十四件、五十三年が二千七十件、五十四年が二千三百二十一件となっております。このうち自己破産の申し立ては、昭和五十二年が八百十三件、五十三年が千百三十件、五十四年の数は不明でございます。  それで、ただいま岡田委員が御指摘になりました件でございますが、破産法百四十条によりますと、破産申立人が債権者にあらざるとき、すなわち自己破産もこれに含まれるわけでございますが、その他一定の場合に破産手続の費用は仮に国庫より支弁するということが規定されております。  そこで、先ほどの申立人は当然国庫の方で負担してもらえるものだということで申し立てをしたものだと思われますが、私どもの理解しておりますところでは、法にいうところの仮に支弁するというのは、まるまる国庫が負担して、当事者と申しますか債務者に償還を求めないという趣旨のお金ではなくて、先ほど岡田委員も御指摘になりましたように立てかえ払いの性質の金であると考えておるわけでございます。そういたしますと、破産手続には各種の公告の費用だとか通知、通達の費用だとか管財人の報酬だとかその他いろいろな費用がかかるものでございます。  それで、破産申立人が債権者の場合はもちろん予納してもらいますが、仮に債務者が申し立てをした場合でも、全部が全部無資産であるとは限られておらないわけでございます。先ほどの件数の中で自己破産の件数は申し上げましたが、その自己破産の申し立ての件数の中で、今回の大阪のようにサラ金の関係での自己破産の申し立てがどのくらいあるかとか、それからまた仮支弁をした自己破産の申し立てがどのくらいあるかということは、実数は調査しておりませんので把握しておりませんが、現在各裁判所から上がってまいります仮支弁決定というのを見ますと、年に数件から十数件という程度の件数でございまして、それから見ますと、自己破産の場合でも大多数の人は最小限の費用の予納をしていただいているというのが実情であると私どもは理解しておるわけでございます。  そういうことでございますので、申し立てを受けました裁判所としては、自己破産の場合でもとりあえずはこういう費用がかかるから、もし費用の用意があるならばそれを予納してもらいたいということを促しまして、それで当事者の方が理解して同意をしていただければ、それに応じて任意予納していただく、それによって手続を進める、こういう形になっておるわけでございます。恐らく本件の場合でも、事情はわかりませんし、この事件につきましては先ほども御指摘のように国家賠償事件という形で事件が起こっておりますものですから、事件の詳細についての説明はこの際は控えさしていただきたいと思いますが、いずれにしても本人が五万円の予納をしたということから見ると、事情は了解の上で納めていただいたものではなかろうかと考えております。そういうふうにお答えを申し上げるわけでごございます。
  197. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので意見だけ申し上げておきます。  新聞から私が知る限りにおきましては、当の御本人というのは幼い子供を二人持ちまして、御主人がギャンブル狂で、そのために金をあちこちから借りた。奥さんも知らぬうちに奥さん名義でサラ金から金を借りた。あげくの果ては夫婦仲が悪くなりまして離婚をした。離婚して奥さんが幼い子供を二人連れて生活保護の適用を受けていらっしゃるのであります。しかるに、そういう境涯にある人がなおかつ新聞公告その他手続に要ります五万円の金を出せと言われて困って、どうにも自分には金がない、何とかして立てかえてもらえぬかといってお願いをしても国に予算がないから——これは真実かどうかわかりません、これは書いてあるとおりのことですが、国に予算がないからという理由で拒否されて、いたし方なく五万円を都合をしてきて払ったということであります。私は、法の運用の上におきましてもっと考えなければならぬ面が相当あるのではないか、もしこの新聞に書いてあるとおりまさに予算が足らなくてそういう事態が起こったのだとするならば当局としても十分、十分以上に考えてもらわなければならぬ問題であると思いますので、ひとつ今後の参考にしていただきたいと思うのであります。  なお、時間がもう経過いたしましたので、最後大臣に一つだけ実は注文を申し上げておきたいと思うのであります。  SECの七月二十九日付の8Kレポートに関連いたしまして大臣発言、それはマスコミの方が余りにも短くちぎって書き過ぎたとかいろいろな誤解があるようであります。大臣の本旨とは違うということをしきりにおっしゃっていますから、私はそのことについてこれ以上申し上げようとは思いません。だがしかし、言葉の端々でありますが、時間がないので一方的になって恐縮でありますけれども、この問題はもう時効になっておるではないかという問題、時効にかかっておれば犯罪は成立しないではないかというような問題がやはり大臣のおなかの中にあるのではないかなという気がするのですよ。これは一般的に対しては私はそれでいいと思います。しかし、いやしくも政界、官界というようなところにいらっしゃる方々、特に政界にいらっしゃる方々なんかに対しましてはいささかの疑惑があってもならない。清廉潔白の立場を貫ぬかなければならぬ立場にあるのに、国民の手本にならなければならぬ立場にあるのに、かつて悪いことをしたけれども、それがばれなかったからいいじゃないか、時効になってしまったからいいじゃないか、そんなことを問う必要はないというお考えが腹の中にもしあるとするならば、私は大臣をずいぶん見損なったなという気がするのであります。そういうことだけは絶対ないように、政治家であるがゆえに、常人では考えられない時効になった問題であっても、微々たる犯罪であっても許してはならぬというのが私の考えでありますので、その点はぜひひとつ腹にしっかり入れておいていただきたいと思うのであります。  そして冒頭申し上げましたように、なるがゆえにあなたが一政治家として物を言われるのなら、これはあけっ広げでどんどん御発言なさることも結構でありますけれども、清廉潔白な政治家であってほしいという国民の願いから言うならば、時効ではないかとか、もういいではないかとかいうことが新聞に書かれるということは、綸言汗のごとし、言われたことは後ろへ戻りません。国民からいささかの不信も抱かれないように立派に大臣の役目を推進していただきたいことを希望いたしまして私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  198. 高鳥修

    高鳥委員長 安藤巖君。
  199. 安藤巖

    安藤委員 法務大臣就任以来最初の法務委員会でございますので、私も大臣の姿勢についてお尋ねしたいと思います。  具体的な話でないと話になりませんので具体的にお尋ねしますが、もうすでにきょうの午前中からこれまでいろいろ問題になってまいりましたダグラス社特別調査委員会の米証券取引委員会SEC提出した最終報告書、これが七月二十九日に公表されたことに関連しての大臣発言の問題から取り上げていきたいと思います。  いま岡田委員がおっしゃった問題については、先ほど指摘されましたようにいろいろな批判が出ておることはもう御承知のとおりだと思うのです。そこで、私も最初その問題についてお尋ねしたいのですが、私は、これから始まるものですから、意見だけを申し上げましてしまいというわけにはまいりません。  これは新聞報道ですから、これまでいろいろ言われましたように、ちょん切られたり、中だけというお話があるかもしれませんが、結局、時効になっているものを掘り下げてどうなるのか、そして犯罪にならないのだからというような趣旨の御発言をされたと思うのです。それは後から言いわけはお聞きしますが、午前中それからこれまでの御答弁によりますと、犯罪容疑を確かめもしないであれこれ言うのはどうかなということなんだとか、あるいは犯罪になるかどうか見きわめたいんだという気持ちもあってそういうことをおっしゃったのかもしれませんが、そういうことで話したんだというような御答弁だったと思うのです。そうしますと、犯罪になるかどうかを見きわめる以前あるいは犯罪容疑があるのかどうかということをお確かめになる以前の問題としてこういう発言をされたのかどうか、まず最初にお伺いします。
  200. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 昨年法務省の方で、検察側が日米司法取り決めに基づいて資料の提供も受けて十分調査した結果、最終的な結論国会で御報告申し上げておるわけでございます。それは外為法違反等の問題以外には容疑は認められない、こういう結論を御報告したわけでございまして、その後に先ごろのSECの新しい公表があったわけでございます。  当然検察当局としては、新しい公表があったわけですから、従来の自分たちの調査しているところとどういうかかわり合いになるのかは調査を続けておったわけであります。その過程において私は、記者クラブの方々が司法取り決めに基づく資料要求をするのかとおっしゃいましたから、いまは考えていない、こう申し上げたわけでございまして、けさ以来繰り返し申し上げておりますように、結論的には、容疑があるということになれば資料要求はしなければならないと考えておりますよ、こう結んでおったわけでございます。
  201. 安藤巖

    安藤委員 また後で大臣お尋ねしますけれども、私はどうも時効云々という言葉がひっかかるわけで丈が、法務省の方はどうなんですかね。犯罪の嫌疑があるとき、これは一応捜査をしてみて、犯罪の事実が把握されて、それから先ほどからいろいろ問題になっているような責任無能力かどうか、あるいは違法阻却事由があるかどうか、さらに時効なのかどうかということを判断する、これが順序ではないかと思うのですが、そうじゃないのですか。
  202. 前田宏

    前田説明員 通常の場合はそういうことであろうと思いますけれども、犯罪疑いがあるかどうかということの手がかりとなる資料自体におきまして、客観的に仮に犯罪構成要件に当たるとした事実があった場合に、その時期がもうすでに明記されておるということになりますと、これは幾ら事実を確定いたしましても、時効だということがその以前に明らかである場合には、事実の方からいかなくて時効だということで中に立ち入らないということも例外的にはあり得るわけでございます。
  203. 安藤巖

    安藤委員 例外的にはあり得るということで、その時期が公訴時効にひっかかるかどうかという問題については、その例外も含めてそういう事実を捜査によって把握しないことには、何もしないでおいて最初からそういうような事実がわかるわけがないのですから、やはり捜査を行うあるいは調査をする、その結果時期的にこれは公訴できない、公訴時効を満たしておる、こういうことになろうかと思うのです。うなずいておられるからあれだと思うのですが、どうですか。
  204. 前田宏

    前田説明員 私、いま例外というような言葉を使いましたけれども、要するにケース・バイ・ケースだということを申したかったわけでございます。  犯罪捜査を始める前の段階でいろいろな端緒になるような資料があるわけでございますが、その資料そのものから、これはもう大変古いことであるということでありますと、その古いことを幾らせんさくして事実を固めてみても、言葉は適当かどうかわかりませんけれども、益のないことであるという場合もあるわけでございますから、いずれにしてもケース・バイ・ケースでございまして、その端緒になり得る資料の中身いかんによってやり方はいろいろあるであろう、こういうことでございます。
  205. 安藤巖

    安藤委員 そこで、検察当局の方として、最終報告書に基づいて前の暫定報告書記載してあった事実との関連等々いろいろ御検討になったということですが、最終報告書に基づいての検討をして、先ほど来いろいろお聞きしているような結論をお出しになったのはいつごろですか。
  206. 前田宏

    前田説明員 ちょっと正確な日をいま記憶しておりませんが、いまから一週間ぐらい前だったような記憶でございます。
  207. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、最初にお尋ねしました、大臣最終報告書の公表に基づいて御発言になったのは八月五日です。そして先ほど大臣の御答弁にもありましたように、検察当局の方で最終報告書が公表されたことについていろいろ検討している途中だというようなことをおっしゃったですね。  だから、そういう段階において、いま刑事局長がお話しになりましたように、一応犯罪容疑があればそれは捜査をするのだ。その捜査の最初の段階で早く公訴時効にかかるものが見つかってしまって、もうそこではっきりするものもあるというようなことも含めてケース・バイ・ケースだとおっしゃったのですが、これはやはり捜査をしてみないことにはわからない問題だと思うのです。そして、いまもまだ最終報告書に対する検討の最中であった。きょうから一週間ぐらい前ですからね。結論が出たのはごく最近です。となりますと、大臣時効だから云々というふうにおっしゃったのは、一体どういうような根拠に基づいておっしゃったことになりますか。
  208. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 報告の中にもいつからいつまでの間にというようなことはそれぞれ明記されておったように思います。したがいまして、仮に犯罪になるものでありましても、その時期であれば時効にかかってしまうなということが明確なものもたくさんあるわけでございます。  問題は、資料要求をするかしないかというお尋ねでございますが、犯罪捜査上必要でなければ資料要求はできないわけでございます。日米司法取り決めはそういう性格のものでございますから、現在のところは資料要求をするという考え方は持っていない、しかし犯罪容疑があるということになれば当然資料要求はしなければならない、こう申し上げてまいったわけでございます。
  209. 安藤巖

    安藤委員 そこがどうも問題だと思うのです。  これは後でも触れますけれども、報告書の中で、たとえば午前中の質疑で明らかになりました一機百万ドルの密約の問題、この問題についてダグラス社三井物産に対して署名をして送ったというのは一九七四年なんですね。いまから六年前ですよ。その少し前に、小佐野賢治が一番要件を備えているというふうに午前中答弁があった、その小佐野賢治と思われる人といわゆる密約がなされておったと思われる節がこれを見ただけでも出てくるのです。普通の収賄罪は時効五年ですが、枉法収賄になりますと、御承知のようにこれは七年なんです。完全にひっかかりますよ。だから、そういうことからして、これは時効だというふうに捜査当局に成りかわって法務大臣がおっしゃったとすると、これは重大問題だと思うのですが、どうなんですか。
  210. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 時効だというようなことは言っておりません。時効になっておるとすれば容疑はないということになる、そうなってくると資料要求はできない、こういう関連のことでございまして、ですからそう一言だけを適当に話をされますと誤解を招くことになるんじゃないかな、こう先ほど来たびたび申し上げておるわけでございます。したがいまして、最初から最後までの話の筋をお考えいただきたい、結論にもはっきり、容疑があれば当然要求はしなければならないと考えていますよということをわざとつけ足してお話しをしているわけでございます。
  211. 安藤巖

    安藤委員 時効になればというお話をされたということですが、私は何も言葉じりをつかまえてどうこうということでなくて、最初に申し上げましたように、この問題は私があえて申し上げるまでもなく、単にアメリカ航空会社の不正の問題ではなくて、日本の政界がそういうような不正な行為によって左右されておるかどうかという非常に大きな問題なんですから、時効になるのであればという御発言だとおっしゃるのですが、なるのであれば司法取り決めによって資料要求ということをするまでのこともないのだということだといまおっしゃったのですが、時効になればということにしても、そういうことを御発言になるということは、これは重要な問題なんですよ。  先ほども刑事局長がおっしゃったように、最初からぱしっと明らかに時効だというような資料捜査の冒頭の段階で出てくる場合だって、それはケース・バイ・ケースによってあるかもしらぬけれども、やはり捜査をして証拠を確保してみなければそういうものはわからないわけですから、しかもこの最終報告書に基づいて検察当局がどうするかということを検討しておったまだ初めのころの段階じゃないかと思います。そうすると、その段階で時効になるとすれば云々ということを法務大臣がおっしゃるということは、これは重要な問題だと思うのですよ。時効だということはおっしゃらないにしても、時効云々の言葉が出てくるということは、あえて言えば、これはいままでもいろいろ問題になって慎重に発言してもらいたいのだという注文がいろいろありましたけれども、時効発言が出てくるとなると、これは時効というようなことも大いに考えられるので、そういうようなことも含めて捜査当局捜査に対処すべきだというようなことにもなって、私が危惧するのは、これは間接的ながら一種の指揮権の発動みたいなことにもなりかねないのじゃないか、こういうような問題だと私は思うのです。大臣、その辺のことをお考えにならなかったのでしょうか。
  212. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 誤解を招かないように留意してお話をしなければならない、これは当然のことだと思います。また、先ほども申し上げておりますように、検察当局に対する国民の信頼を維持していく、これは何よりも大事なことだ、こういう理解もしているわけでございます。  私はそのころに、昨年SEC資料あるいは秘密資料検察当局が洗いざらいひっくり返して調べたという実情を知らされておりました。私は、日本検察当局は大変有能だ、こう思っておるものですから、その調べたことがまた間違っておったということはないんじゃないかなという気持ちはございましたし、またしかし、あってはいけないから調査をしているということも聞かされておりました。そのさなかに起きた日米司法取り決めに基づく資料要求ということになったわけでございますから、それなら犯罪容疑が出てこないのに要求するわけにいかないなという気持ちはずっと潜在的に持っておったものですから、あるいはその部分部分を取り上げますと誤解を招く発言になっているんじゃないかな、こんなことをいま思っているところでございます。全部が時効になっているとかいうことじゃなしに、時効になっている問題もあるし、こういうことだったのじゃないかなと、私も正確に覚えておりませんけれども話の過程ではあったのじゃないかなと思います。またそういうことでなければ、犯罪容疑が出れば資料は請求しなければならぬと思いますよというようなことを言うはずはないのじゃないかな、こんな感じがするわけでございます。
  213. 安藤巖

    安藤委員 あれこれ繰り返しませんが、時効云々というようなこと、それを確認するかどうかについても、やはり犯罪捜査をしてからわかるという場合が多いと思うのですよ、資料を集めてきて時効だと。だから、そのために資料要求するということ、これは大いにあり得ることだと思うのですよ。それを時効だとすれば犯罪にならないから資料要求しない、これは逆なんですよ。資料要求をして捜査をして、そして時効だということもそれはあり得るかもしれぬ、これならわかるのですよ。だから大臣のおっしゃっていることは全く逆だと思うのですね。しかし、いま何かあいまいなことをおっしゃって、はっきりそのときの発言がどうのこうので新聞の書き方がということをおっしゃったのですが、それは新聞が全部書くということはないと思いますので、私もわかりますけれども、やはり時効発言の問題はいま私が申し上げましたような大きな問題を含んでいるということですので、注意していただきたいと思うのですよ。  それから、何度も何度も恐縮ですが、やはり同じ日の発言で、これも先ほど問題になったのですが、もうこの問題はいいかげんにしてもらいたいということですね。これはあえて私はお尋ねしません。しかし、これは先ほどから言いましたように、資料要求の請求をするかどうかという問題に関連してそういうことをおっしゃったのだということを私午前中聞いておりました。これも積極的に資料要求をして事実を解明していきたいというのが大臣の姿勢でなくちゃおかしいのじゃないですか。どうです。
  214. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 積極的に解明する点については何ら異存はないのですけれども、昨年本当に真剣に、検察庁が洗いざらい資料をひっくり返して、皆さんたちが御想像になる以上の努力を払って捜査をしたんだというその実情を私はつぶさに聞いておりますだけに、同じことを二度やって大事な問題がおろそかになってはいけないなということが私の頭の中にはあることも事実でございます。  もちろん、大事なことでありますから徹底的に調べなければいけません。しかし、徹底的に調べたのだ、その結果こういう結論になったのだということも聞かされておりますだけに、資料要求ということをそう簡単に考えるべきじゃないのじゃないかなと、こう思っているわけであります。しかし、犯罪容疑があるのにこれをほうっておくような検察であっては国民の信頼を失ってしまいます。ただ、昨年いいかげんに調べたのじゃないのだということだけはぜひ御理解をいただいておきたい、こう思います。
  215. 安藤巖

    安藤委員 その点は別としまして、何度も申し上げておりますように、最終報告の公表について検察当局は協議している真っ最中ですよ。その途中に法務大臣が、もういいかげんにしてもらいたいとか時効になれば云々、こういうことをおっしゃるというのは、これは軽率きわまりないと思うのですよ。いまそういうふうに思われませんかね。いまいろいろ言いわけをしておられるのですが。
  216. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日米司法取り決めに基づく資料要求をめぐる話であったということだけはひとつ御理解をいただいておきたいと思います。
  217. 安藤巖

    安藤委員 もちろんその前提で、検察当局が協議している真っ最中に、まだ結論も出ていないのに、そういうようなもういいかげんにしてほしいということを言われたというのは、これは重大な問題だということを私は強く申し上げておきます。本当はもっとあれですが、時間がありませんし、もっとたくさんお尋ねしたいことがあるので。  それからもう一つ、これも御発言についてですが、東京新聞の「新閣僚そこが聞きたい」というシリーズがありまして、大臣のことも一つシリーズに載っておるのです。これは七月三十日付の「航特委の廃止に私は賛成だ。」という御発言があるのですが、そういう発言をされたことはあるのですか。
  218. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 航特委問題を記者クラブでも聞かれたことがあったように思います。また、そこに出ているのでしたら、そういう事実があったのだろうと思います。
  219. 安藤巖

    安藤委員 先ほどのもういいかげん問題、それから航特委の廃止に賛成だということを言った覚えがある、これは御承知のように本院でもそれから参議院でも決議しておるのですね。それから議長の裁定まであるのです。当然御承知かと思うのですが、これを忘れてみえるのじゃないかという気もするのですよ、こういうような発言をされるところを見ると。ですから、もちろん全文は読みませんが、ポイントのところだけ一遍念のために。  これは昭和五十一年二月二十三日、全会一致をもって衆議院本会議で行った決議です。一部要旨です。これは「ロッキード問題に関する決議」です。「本院は、本問題に関するすべての疑惑を解明することが、真の日米友好にとっても重要であり、国民の要望にこたえる道であると確信する。政府においても、右の趣旨を体し、特使の派遣等を含め本問題の解明のため万全の措置を講ずべきである。」参議院本会議においては、同月二十三日、一緒の日ですね、同様な決議がなされております。  そして、五十一年四月二十一日の国会正常化に対する衆参両院議長の裁定、この第一項に「ロッキード問題に関する国会の決議の重要性にかんがみ、政府の措置は不十分であり、遺憾である。今後とも国会の決議を踏まえ真相の徹底的解明を期する。」それから四項、これは一部だけ読みますが、「国会は、ロッキード問題に関し、本件にかかわる政治的道義的責任の有無について調査する」というふうにあるのです。  それからさらに、これはダグラス、グラマン問題に関して「航空機輸入問題に関する決議」、昭和五十四年二月八日全会一致をもって次の決議を行った。全部読みませんが、要旨は「マクダネル・ダグラス社及びグラマン社の航空機輸入をめぐる問題が、我が国の国民感情に与えた影響は甚大であり、その真相の解明は徹底的かつ迅速になされなければならない。」そして、本問題に関するすべての疑惑を解明することが国民の要望にこたえる道だし、日米友好のためだということと、そして「政府においても、右の趣旨を体し、本問題の徹底的解明のため万全の措置を講ずべきである。」同月十四日に参議院においても同じ趣旨の決議がなされているのですよ。だから、こういうような決議がちゃんと行われているのですね。  そうしますと、内閣がかわったら、もうこういうような国会決議は尊重しなくともいいということになるのですか。先ほどの航空機輸入調査特別委員会の廃止に賛成だ、あるいはこの問題についてはもういいかげんにしてほしい、資料要求だとおっしゃるのですけれども、資料要求はその徹底的解明の中の重要な一つですよ。どういうようなことになるのですかね。
  220. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国会決議はよく承知しているつもりでございます。同時に、資料要求は昨年ダグラス・グラマン事件に関しまして日米司法取り決めに基づく資料要求をしたのです。全部いただいたのです。調査したのです。また新しい公表があって同じものを求めることになってはいけないわけでございまして、そういうことで検察当局としてもさらに重ねて調査をして、容疑があるかどうかということを調べておった、そういう段階における資料要求をするかどうかということについての記者クラブでの質問を私は受けての経過でございました。ですから、そのことをよく御理解くださいよ、こう申し上げておるわけでございます。  また航特委を残すか残さないかは、これは政党間でお話し合いをして決められることでございまして、衆議院においては廃止になったわけでございます。でございまして、この廃止になったことについて私は反対ではございませんので、聞かれるままに私は賛成だ、こう答えておるわけでございます。
  221. 安藤巖

    安藤委員 同じような資料要求してもつまらぬじゃないかということなんですが、同じような資料要求になるのかどうか、法務大臣、わからぬわけでしょう。わからぬのにそういうことを勝手におもんぱかっておっしゃるというのは、これは問題だと思うんですよ。  そうしますと、国会の決議はもちろん尊重する、だから、衆議院でも参議院でもこの航空機輸入疑惑問題について調査をする場合には、政府としては積極的に協力するものである、これはあたりまえの話ですが、いいですね。
  222. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 別な資料につきましては、当然疑惑が起こればしなければならない、こう思います。
  223. 安藤巖

    安藤委員 それから、七月二十八日ですから大臣就任をされてちょっとたったころですね。  新聞報道によりますと、法務大臣就任のあいさつを兼ねてお行きになったということですが、検察合同庁舎、それから地検の特捜部にもお見えになって、そして検事総長とも懇談をされた、こういうことになっておりますが、お行きになったことは間違いないですね。とすれば、そのお行きになった趣旨はどういうものでしたか。
  224. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁も法務大臣の責任に属する機関でございますから、当然その実情を私なりに理解をしておきたいということで参りました。
  225. 安藤巖

    安藤委員 新聞報道では全く異例の訪問というふうになっておるのですが、私もよく知りませんでしたけれども、十数年来のことだと言われているそうです。もちろん大臣は、検察官あるいは検事総長に対してどういうお立場にあるかということは、検察庁法に記載がございますので御承知だと思うのですが、個々の検察官に指揮監督をすることはできないわけでしょう。一般的な指揮権しかないわけです。それから検事総長に対しては、個々の事件については検事総長を通じてやる、こういうことになっておるはずですね。そいうようなお立場にある大臣が、管轄の範囲内だというふうにいまおっしゃったのですけれども、合同庁舎の方は一応問題は別として、地検の特捜部にお行きになったというのは、私どもとしてはこれは問題だと思っているのですよ。  御承知のように地検の特捜部は、いまのロッキード裁判で真実を明らかにして、被告人を刑罰に処するために一生懸命努力しているところなんです。そこへ大臣がお出かけになったというのは一体どういうことだ。そこでは検察官、検察事務官が仕事をしているのです。そこへお顔をお出しになったというのは何かの意図があって行かれたのではないのかという、これまた国民も大きな疑惑を持たざるを得ぬと思うのですがね。どうなんでしょう。
  226. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務大臣としての責任感が旺盛であれば、当然私は全体を把握しなければ責任を全うできないと思います。検察庁においても必要な予算がございますし、また必要な人員もございますし、またどういう姿において執務が行われているかということも理解して、その要請にこたえていかなければならない、こう考えているわけでございますから、私は行かなければ責任を全うできないはずじゃないか、かように考えておるものでございます。
  227. 安藤巖

    安藤委員 まあそういうふうにお答えになるだろうと思っておったのですがね。しかし、やはり大臣というお立場にあられる以上、先ほど申し上げましたような検察庁法の規定もある以上、いろいろな疑惑を国民に持たれるという行動は慎んでもらいたいというふうに思うのです。そんなものが疑惑の対象になるのはおかしいというお考えだと思うのですが、これは私ももちろんそういうようなことであれこれ言いたくはないのですよ。しかし、こういう新聞報道があるし、こういう事実もあるから私は申し上げているのです。  これはことしの六月三日のロッキード裁判で、全日空ルート公判、渡辺尚次被告、全日空副社長の検事調書の内容が明らかにされたのですね。そしてこの検事調書の中身は、いわゆる渡辺尚次被告の供述は、事件発覚直後、国会の偽証告発の動きを察知した渡辺被告が告発を食いとめるために、同社元専務の沢雄次被告を通じ奥野さんに——大臣のことですよ、国会対策を頼むことにしていたというのがあるのです。もちろん大臣はこのことを聞かれて否定をされておりますが、こういうような記事が載る。そして渡辺尚次被告の調書にそれが記載されているということになると、やはり国民としては、奥野さん大丈夫かしらん、こういう気持ちになるのですよ。だから、よけい、いやそうじゃないんだという姿勢を厳然としてとっていただく必要があると思うのです。そういうときに地検の特捜部へお行きになる、しかもロッキード事件の公判を担当しているところですよ。というのはやはり、これは李下に冠を正さずという昔から有名なことわざがあるでしょう、そういうようなこともちゃんと考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうかね。
  228. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘になりましたことについて、当時新聞記者の方からお尋ねもいただきまして、ずいぶん詳しくお答えをしたのです。よい機会でありますから、この機会に私からもう一遍答えさせていただきたいと思います。  沢雄次君は、保土ヶ谷のゴルフクラブで同じメンバーでございますので、一、二回はゴルフをしたこともある、よく知り合っている人間でございます。  それは予算委員会だったと思います。休憩になっておりまして、午後再開と言われたので私が出てまいりましたら、野党の方皆さん席に着いておられました。与党では私が一番先に行ったぐらいのことでございました。議事は何ですかと聞いたら、偽証告発の決議をするんだということでございました。それじゃ、偽証になるかならないかの話し合いを与党の予算委員であるわれわれに何も聞かされてないじゃないか、またこの席で告発の決議をするんだということも一遍も聞かされてないじゃないか、そんな運営がありますかと私は言いました。さすがに委員長も、別室で自民党の委員だけでみんなで相談をしようということになったわけです。そして相談をして、自民党が人権を一番守らなければならない政党であるにもかかわらず、人権に一番触れる偽証告発の決議を議論もしないで、どこが偽証になるかという話し合いもしないで、しかも突如委員会再開だということでその決議、これはいかにも運営がひどいじゃないかと皆さんから話が出ました。それで時間がたっていきました。それで時間がたつものですから、これ以上野党の皆さん方に待ってもらうわけにはいかない、しかし再開は認めてもらいたい、そのかわり、その委員会に自民党の議員が出席するもしないも自由にしたいという話し合いになってきたわけでございました。そんなこともございまして、ずいぶん時間がたってから再開になったわけでございますけれども、私は欠席をいたしました。  そういうことから、私は沢君が誤解をしたんじゃないかなということを新聞記者の人には答えました。またその調書も、沢君自身が述べておられることじゃなくて、副社長が述べておられる言葉のようでもございました。聞いてこられた新聞社の方でも御心配になりまして、社会部の方だけじゃなしに、政治部の方からも聞いてこられました。そしてまた、話はよくわかりましたということを言うていただきまして、必ずしも一方的に誤解されないような記事にはなっておったような感じもするわけでございますけれども、私は非常に不本意なあの当時の告発の決議に関する予算委員会の運営であったと、いまでもそう思っております。
  229. 安藤巖

    安藤委員 私が申し上げたいのは、渡辺尚次被告の調書にこういうふうに載っている、そういう供述の内容がある、それが公開の法廷で証拠調べをされてその事実が明らかになったという報道がなされているから国民はよけい心配するのです。だからその行動についても、先ほどから発言についてもという注文がありましたが、やはりよけい慎重にやられて、疑惑の解明については積極的になっていただきたいということを申し上げておるのです。だから李下に冠を正さずと、私より相当御年配の大臣にこんなことを言わなくてもいいような御行動をとっていただきたい、こういうことなんです。  それから、ダグラス社最終報告書の中の問題については、某航空会社重役兼大株主という問題については小佐野賢治が要件を備えているという御答弁がありましたので、この点はお尋ねしません。それから運輸省の方に来ていただいておりましたね。もうそのことで十分です。どうぞお帰りになっていただいて結構です。済みませんでした。  もう一つ、この報告書日本関係する部分で、午前中刑事局長からお話しになった第一の点です。一万五千ドルの支出の問題です。この問題について、一航空会社による商業用航空機の購入に影響を与える目的を持って日本政府関係者(単数)に届けられたと伝えられている。この日本政府関係者(単数)、これはだれだというふうに捜査当局は見ておられるのですか。
  230. 前田宏

    前田説明員 午前中の御質疑に際しましてもお答えしたと思いますけれども、お尋ねの単数の政府関係者でございますが、それがだれであるかということは、今回公表されました最終報告書にも記載はないわけでございます。また一方、これまで鋭意検察当局捜査をしました過程での結果によりましても、その氏名は特定するといいますか、知るに至らなかったというふうに理解しておるわけでございます。
  231. 安藤巖

    安藤委員 こうなりますと、やはり暫定報告書が出された当時からもうちゃんと捜査をして、そしてちゃんとやってきたのだというようなことで、これ以上何も犯罪容疑がないというふうに結論を出されておられるのですが、この政府当局者がだれなのかということはわからぬままでほおかむりしようとするつもりとしか思えないのですよ。  この関係についてはまあ御存じじゃないかと思うのですが、これは読売新聞のことしの八月二日付です。これは共同通信の配信になっておるのですけれども、郷裕弘氏に頼まれて一万五千ドル政府高官へ渡したのだ。そして日本マクダネル・ダグラス社の代表ボガート氏、この人にバハマ諸島のアバコ島に記者が会いに行っていろいろ話を聞いた記事が載っているわけです。このボガート氏の奥さんは日本人ですが、この人がこの記者にいろいろ話をしている過程で、あのキャビネットに云々ということを口を滑らせて、閣僚経験者である可能性示唆したという記事まで出ておるのですね。こういうようなことは全く知っておられなかったのか。そしてその当時、このダグラス社がお金を渡したという一九七〇年当時、運輸大臣、これは民間機の購入に影響力を行使できるということになると私は運輸大臣だと思うのですが、その当時運輸大臣であった人はだれか。四十五年一月十四日から四十六年七月五日まで運輸大臣だったのは橋本登美三郎、これははっきりした事実です。だから、この閣僚経験者であることを示唆したという記事があるわけですが、これに対して何も捜査しておられないというのは一体どういうことなのか。そして、これは記事によると橋本登美三郎であるという疑いが非常に濃くなってきている。そういうような点について捜査はしておられないのかどうか。
  232. 前田宏

    前田説明員 ただいま御引用の新聞報道と申しますか、インタビュー記事等も承知しておるわけでございますが、いまの点は、安藤委員の御質疑の冒頭の部分にも関係するような気がするわけでございますけれども、これはまさしく客観的にこの最終報告書また従前のいわゆる8K報告書におきましても一九七〇年ということが表示されておるわけでございます。  したがいまして、私が先ほどお答え申し上げましたように、仮に犯罪疑いがあるということを前提に置きましても、その端緒になる資料自体がもう一見明白と言ってもいいくらいに十年も前のことであるということでございますので、もちろんそれが日時が違うこともないとは言えませんから、その点も含めて、いわゆる8K報告で、今度の報告書と若干ニュアンスは違いますけれども、要するに日本政府関係者に一万五千ドルが渡った疑いがあるということが摘示されておったわけでございますから、そういう点を十分検察当局としては勘案しながら、ダグラス社からの金の流れというものを解明といいますか究明いたしまして捜査をしたわけでございます。ただ、いま申しましたように、この報告書自体また修正前の当初の報告書でも七〇年ということは変わっていないわけでございます。したがいまして、このことについて何らか犯罪疑いといいますか構成要件に当たるという事実が仮にあるといたしましても、これはまさしく時効の問題になるというふうに言わざるを得ないケースではないかと思います。
  233. 安藤巖

    安藤委員 時効云々の話は一応おくとして、仮に時効になっておったとしても、先ほどから私が衆参両院の決議それから両院議長裁定で指摘いたしましたように、政治家の政治的道義的責任、この追及の問題は厳然として残っているわけですよ。これは放置するわけにまいりません。だから、そういう点からすれば時効の問題なんか全く関係がないのです。  この関係について、もちろん当委員会においてもそれから参議院においてもあるいは当院のほかの委員会においても、いろいろ国政調査権を発動してきちっと調査するということを私ども考えておるのですが、それに対して、政治的道義的責任を追及するという点について法務大臣として協力すべきだと思うのですが、どうですか。
  234. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国会国会としていろいろな活動をおやりになる、そのことについて法務大臣がとやかく言う筋合いのものではない、こう思います。また、国会として正式に意思をお決めになって政府に申し入れられることにつきましては最大限度の尊重をしなければならない、これもそのとおりだと思います。ただ検察の立場は、犯罪にならないものについて追及していくようなことをしている余裕はないし、またそういうことをすべきものでもない、こう思っております。
  235. 安藤巖

    安藤委員 時間がありませんから指摘をするだけにとどめておきたいのですが、このDC10の問題、ダグラス社の問題は午前中にもうすでにいろいろ答弁がありましたように、ロッキードの公判の過程でも検察官の冒頭陳述あるいは若狭被告人の検事調書等々で、もう相当これはロッキードと競り合ってダグラス社が熾烈な売り込み合戦をやっておったということが出てきておるわけですね。それから日商岩井事件関係では、半谷裁判長がきちっと追及をされておられたのですが、島田メモ、この関係ではボーイング社もやはりこれに割り込んで田中角榮にお金を渡す話とか等々が出てきておるわけです。だから、これは単にロッキードの問題ばかりではなくて、ダグラス社それからボーイング社、この三社が三つどもえになって不正な工作を政界に対して行いながら飛行機の売り込み合戦をやった、こういうような事実は明らかだと思うのです。この全貌をやはり明らかにせぬことには、航空機の疑惑を国民の前に明らかにすることはできない、そしてまたこういう疑惑事件、疑獄事件の再発を防止することはできないと思うのです。だから、そういうような方向で検察当局それから大臣にこの航空機疑惑の問題について明らかにされるよう要請をしておきます。  それから保安処分の問題について、これは簡単にお尋ねしたいのですが、これまでももうすでに質疑答弁がありましたけれども、厚生省の方に来ていただいておるのですが、精神障害者の人たちを正常な社会人として社会に復帰させるには何が一番大事だというふうに考えておられるのか、そしてそれに対してどういうような体制をこれからとっていこうとしておられるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  236. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 精神障害者の適正な医療もしくは社会復帰という点の御指摘でございますが、精神衛生法に基づきまして入院医療また入院が解除されました段階における通院医療、また社会復帰に至ります段階になっての精神衛生センターもしくは保健所におきます相談事業もしくはデーケアというようないろいろなアフターケアを通じまして正常な形に戻っていくというふうに考えております。
  237. 安藤巖

    安藤委員 もう時間がありませんから結論的に大臣お尋ねしたいのですが、大臣はこれまでこの問題についてきょういろいろ御答弁になっておられたのです。しかし、いまも厚生省の方から答弁いただきましたように、やはり精神障害者の人たちが社会に復帰するには、いまいろいろ言われたような、これをもっと充実するということも必要でしょうけれども、そういう治療というものに重きを置いてやるというのが一番の道だと思うのです。それを、法務大臣のおっしゃったように、これからいろいろ議論をしていくのだとおっしゃるのですが、やはりこれは精神障害者の犠牲と人権の抑圧によって保安目的のみを達成しようとする、保安目的を優先させて精神障害者の人権を低位に置く、そういうような方向だとしか思えないわけなんです。だから、これではやはり法秩序の維持と同時に基本的人権の擁護、これは私が申し上げるまでもなく法務大臣の職責ですね、その片方だけに重点を置かれる、こういうようなことじゃないかと思うのです。だから、その辺のところはそういうようなことでないように十分配慮されるべきだと思うのです。しかも、そういうような保安目的のみを優先させるという方向で、基本的な法律である刑法の全面改悪という方向、私どもは改悪と言うのですが、という方向へ持っていかれようとするのは、これは問題だと思うのです。だから、これから日弁連といろいろ協議をしていくのだとおっしゃるのですが、そういう保安目的だけを優先するというようなことはおやめになる、そういうような考え方でない態度で行くべきだと思うのですが、いかがですか。
  238. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど岡田さんが、保安処分という言葉に一つ問題があるよという御指摘がございました。なるほどそうだなと私は傾聴しておったわけでございまして、あるいは医療刑事処分と言うた方がむしろ理解が得やすいんじゃないかなと思いました。  私は、厚生省の方の御発言を聞いておって、本当に責任を持ってくださるのだろうかどうだろうかなと思いました。犯罪を犯しましたときに社会から隔離するか隔離しないかだけのことであって、いわゆるいままで保安処分と言われておった言葉もやはり治療が重点でございます。治療が重点だけれども、社会に帰してしまって、従来再犯で大変な被害が起こっているじゃないか、一体、病院に帰して病院で本当にその人の活動について朝から晩まで見張ってくれているのだろうか、絶対に過ちを犯さないのだということが言い切れるのだろうか、非常に私は疑問に思いました。そんな病院の実態になっているのだろうかなという疑問を持ったわけでございます。  法務省が心配しておりますのは、社会から隔離して治療しなければならないのか、社会に置いたままで治療して大丈夫なのか、私はそこが根本だと思うのです。保安処分という言葉がどうも、岡田さんが指摘されたように何か特殊な観念を持たれて誤解を受けるんじゃないかな、こう私は思います。だから、私はけさ御答弁申し上げます中でも、現在も医療刑務所というものがございまして、あるいは医療刑務所にお預かりするとかというようなニュアンスの言葉も申し上げたわけでございますけれども、この辺は、御心配の向きにつきましてもいろいろ話し合いをしながら御心配のないような方法で、そして社会の秩序を守る上において法務省が責任を果たせるような体制を見出していきたい、こう考えておりますので、これからもいろいろお教えをいただきたいと思いますが、決して自由を拘束することだけを考えておるわけではございませんで、やはり治療を重点に考えておるということの御理解だけは、ぜひ心にとめておいていただきますようにお願いを申し上げておきます。
  239. 安藤巖

    安藤委員 時間がありませんから次に移りますが、これも言いっ放しになって申しわけないのですが、松尾邦弘検事の調書の問題は、これまでいろいろ出ておりますので、あえて質問をしませんが、これは丸紅の元輸送機械部長松岡博厚という人の昭和五十二年五月十八日のロッキード事件での証言によっても、P3Cについても取り調べられたという証言があるのです。となると、やはりロッキード事件の中でP3Cの問題についても検察当局は相当程度取り調べておったのではないか。それが何かの理由で、これは私の想像ですよ、途中からその問題にもう触れるなということになって、松尾邦弘検事の調書をとらなかったというようなことになってきているのではないかという危惧を抱かざるを得ないということを、言いっ放しで申しわけないですが、これはまた後でいろいろ議論します。  最後に、申しわけないのですが、もう一点だけです。  国選弁護人の報酬の増額の問題について、最高裁に一言だけお尋ねしたいのですが、いろいろ毎年引き上げられてきていることは認めます。ところが、これがなかなか低い。稲葉先生のような御意見もありますけれども、低いですが、五十五年度は五十四年度よりも何%アップされておるのか、そして来年度はそれを上回るアップ率をお考えになっておられるのかどうかということだけお尋ねして、質問を終わります。
  240. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 昭和五十四年度に比べますと昭和五十五年度の、これは地方裁判所の三開廷、実質審理ですけれども、基準額が四万九百円ということで、八・五%のアップということになります。  昭和五十六年度のアップにつきましては、ただいま概算要求を内閣の方へ送付する部内の手続をしておる段階でございますので、この数字については現段階ではお答え申し上げることをお許しいただきたいと存じます。
  241. 安藤巖

    安藤委員 終わります。
  242. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて散会いたします。     午後四時二分散会