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下条進一郎君 私は、自由民主党・自由国民
会議を代表して、ただいま議題となっております
昭和五十四年度
補正予算三案に対し賛成の意思を表明し、討論を行うものであります。
わが国経済は、
昭和四十八年秋のいわゆる第一次オイルショックを境に不況局面が長期にわたって続いてまいりましたが、数次にわたる思い切った財政による景気てこ入れと民間の
努力があり、さらに輸出も順調に伸長し、国内経済は着実に回復の基盤を固めてまいったのであります。特に五十四年に見る経済の動向はきわめて良好な姿になっております。四十九年度に実質経済成長率がマイナスに落ち込んで以来幾多の苦難を克服し、五十三年度五・六%、五十四年度実績見込みで六%と、いまや
わが国経済は安定成長路線への軟着陸を確実に実現することに成功しているのであります。
この間企業収益の改善にあわせ、雇用も国民の消費生活も順調に回復しており、主要先進国の多くがまだ混迷を脱し切れないでいる中にあって、これはひとえに国民のたゆまぬ
努力と
大平内閣を初め歴代自由民主党内閣の政策とその運営がきわめて適切に行われたことに基づくものと言えましょう。
しかしながら、最近に至り、こうした好調な国内経済の前に立ちはだかる問題は、言うまでもく、第二次オイルショックと言われるOPEC諸国による石油価格の値上げ攻勢であり、これに対応する石油の量的確保の問題であります。すでに石油値上げにより、卸売物価は五十四年に入って年率にして二けた台の高騰を続け、とどまるところを知りません。そのため、企業活動や国民生活を不安に陥れるような黄信号が目につき始めました。幸いにも、消費者物価が安定的に推移してまいっておりますが、消費者物価への波及は月を追って表面化する傾向にあります。
この際、
政府におかれましては、経済の持続的拡大を
維持するため、インフレの抑制には勇断をもって臨まれるとともに、財政金融政策の適正運営によって国民生活並びに企業活動の安定を期することを強く要望するものであります。
以下、本
補正予算に賛成の理由を申し述べます。
賛成の第一は、この
補正予算において、一兆九千九十億円もの巨額の租税印紙収入の追加が計上された点であります。
五十年度補正における三兆八千億円余の巨額の歳入不足の発生以来五十三年度補正までの租税印紙収入の計上は、毎年減額補正を余儀なくされ、減額分は毎年国債の増発で財源を充当するという苦しい状況が続いてまいりました。
しかし、ようやく、今回の
補正予算において、大量国債発行下で初めて巨額の税の自然増収を生じ、追加補正を計上でき、財政悪化のパターンを改善する手がかりができたのであります。このことは、
政府並びに国民各層の
努力の反映であり、まことに意義深いと言わざるを得ません。
賛成の第二は、当初予算において計上されている国債発行予定額十五兆二千七百億円を、本補正において一兆二千二百億円減額し、十四兆五百億円とし、国債依存率を三九・六%から三五・四%に低下させた点であります。
五十年度以降の大量国債発行は、累積国債残高を急速に高め、五十四年度末には五十七兆円台にふくれ上がり、これに伴って国債費の増高と財政の硬直化を招き、さらに国債の消化問題等々大変むずかしい問題を惹起しております。今日、国債発行量の縮減は喫緊の課題であることは申すまでもありません。こうした折に、財政再建元年と言われる五十五年度予算を待たず、本補正において財政再建が一歩前進できたことは大いに評価すべきものと存じます。今後、
政府におかれては、国債発行量の圧縮に最大の力点を置き、財政再建を着実に推進されんことを要望したいと存じます。
賛成の第三は、公共事業等予備費二千億円の減額並びに公共事業費の執行留保の措置についてであります。
卸売物価高騰の影響が漸次消費者物価に及びつつあることはさきに述べたとおりであります。今後の物価動向には十分警戒を要する状況にあります。
政府の五十四年度の公共事業の執行につきましては、五十二、五十三年度にとられた前倒し執行を改め、年度初来、自然体執行で運営され、景気に対し、中立的に対応されてきたことは周知のところであります。今回はさらに、物価上昇を財政面から刺激することのないよう、公共事業の執行に当たり、予算の五%分を当分留保することとあわせて公共事業等予備費を思い切って全額削減することとしております。
財政のかかる弾力的運営は、不安定不透明な先行きの経済動向に機動的に対応したもので、まことに時宜にかなった措置として評価するものであります。
このほか、本補正には、災害復旧等事業費食管会計繰り入れなど、当初予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった事項についてきめ細かな追加措置が講じられており、かかる
政府の措置に深く賛意を表するものであります。
以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手)