○藤田進君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、当面する諸問題、いま国民の皆さんが重大なる関心を持っておられます諸点について、総理に御質問申し上げます。
まず、
政治姿勢についてでございます。
一九八〇年代のわが国の政治、経済、社会、これらは総理の言うように大きな転換を迫られているのであります。激しい
インフレ、物価高と不況が同時に進行するいわゆる
スタグフレーションが深刻化し、第三次
資源エネルギー危機という時期を迎え、失業や倒産、地価の高騰や住宅難に加えて、
高齢化社会の中での老後の不安など、いま国民は憂慮と不安に包まれ、政治に明るい見通しと方策を求めているものと判断されるのであります。
ロッキード・グラマン汚職に続いて、昨年来の公社、公団、事業団の
不正経理や補助金の
むだ遣い、
天下り官僚の高額な退職金、大企業や大資産家の脱税など
不正事件が相次いで発生している反面、大企業と中小企業の格差はますます拡大しており、史上第二の倒産という現状であります。低成長、
財政再建に名をかりて、
大衆増税、福祉の
切り捨て、相次ぐ
公共料金の
引き上げなどで、経済、社会のあらゆる面で格差と不平等が拡大しているのであります。
総理、格差と不平等をそのままにして、国民に節度を持ったライフスタイルを説いても、国民は納得しないでありましょう。いまこそ勇断をもって格差と不平等をなくするために、大いなる発想の転換、政策の転換を図るべきだと考えます。総理の見解をお伺いいたしたい。
政治不信をなくし、政治に信頼を取り戻すことが先決であります。いま国民が八〇年代の政治に一番期待しておりますことは、清潔な
民主主義政治の回復ということではないでしょうか。KDDに見る
汚職不正経理事件を総理はどのように見られているのか。また、昨年末の総選挙で前代未聞の数億円
買収供応事件で
選挙違反に問われている千葉二区の
自民党議員のことや、いままた自衛隊の
スパイ事件など、これらの処理はトカゲのしっぽを踏んだような状態でいま処理されようとしております。国家統治諸機関は千々に乱れていると言っても決して過大ではございません。この現状認識と打開策について総理はどのように考え、矯正しようとしているのか、お伺いいたします。
私は、
汚職腐敗政治に大胆にメスを入れ、国民の
政治不信をなくし、政治に信頼を回復するために、今国会において、わが党の提案している政治家、
高級官僚の
資産公開法、
情報公開法を制定して密室の
官僚政治を改革すること、大企業の経理内容の
監査監督制度の確立、あるいは政治家の
第三者あっせん収賄罪の創設などを図るべきだと考えるのであります。
また、
金権選挙をなくすために、金のかかる選挙から金のかからない
選挙公営化を積極的に進めるべきだと考えるのであります。当面、
選挙制度については、
選挙違反の連座制の強化、
政治献金は会社、法人の献金を一切禁止し個人献金に限るなど、政府は積極的に法律改正に取り組み、
議会制民主主義の信頼を回復し、国民の
政治不信解消に努力すべきであると考えるが、
大平総理の所見を伺いたいのであります。
次に、外交、防衛、安全保障について総理にお尋ねいたします。
ソ連の
アフガニスタン軍事介入を初め、イランの
アメリカ大使館占拠事件など、いま世界は一転して新たな冷戦時代に突入していると言えるのであります。しかも、
アメリカは、ソ連、イランに対する
制裁措置の強化など力の外交を前面に押し出して、今後の中東情勢の推移によっては
軍事的対応も出てくる様相もうかがえるのであります。対米追随、安保堅持を基軸とした
わが国外交路線をとり続けてきた政府は、
アメリカの対ソ、対イランに対する
経済制裁措置への協力を求められ、
経済大国ではあるが資源小国のわが国は、資源や
エネルギーの供給を断たれる危険に直面していると言わねばなりません。いまこそわが党が主張する平和中立の政策が重要となってまいりました。総理はわが国の
安全保障対策の基本問題をどのように考えているのか、御見解を伺いたいのであります。
いま世界を緊張させているソ連の
アフガニスタン軍事介入は、平和五原則、主権、領土保全、
政治独立を原則とする国連憲章に反し、ソ連の言う
友好善隣条約、
集団自衛権をもっても合法化できるものではありません。わが党は、ソ連軍が
即時無条件に
アフガニスタンから撤退することを強く要求しているものであります。
政府は、
アメリカに追随した
対ソ経済制裁措置をとるのではなく、ソ連に対して
軍事介入の不当性を問いただし、
即時全面撤退を強く要求すべき、そのまた行動に移るべきときであります。また、さきに行われました
国連緊急特別総会の決議をもとに、ソ連の
軍事介入に不安を持つ中近東、
東南アジア諸国との友好連帯を強めるべきであると考えるのであります。わが国の姿勢を正さないで中近東に特使を送ってみたところで、今度の
中近東関係諸国の会議の結論を見ても、決して成果は上がろうはずがございません。総理の御見解を伺いたいと思います。
また、イラン問題について、
アメリカはわが国に対してイランへの
経済制裁への協力を要求してきております。しかし、わが国が独立国として外交、
経済政策を進めているのであれば、追随して一方へ加担し、わが国益を著しく損なうことのないよう配慮し、戦争に少なくとも巻き込まれることのない
自主的進路を求めるべきではないでしょうか。
イランにおける
アメリカ大使館の
人質占拠事件は、人道問題であり、遺憾なことであります。この
占拠事件は、
アメリカが
国際石油資本を通してイランの
石油資源を収奪し続け、イランの真の発展に寄与しなかったととが原因と言われております。したがって、わが国は、イランの立場を十分に理解し、イランの
経済発展に寄与するため、積極的な
経済開発、友好関係の改善を進めなければならないと思うが、
大平総理の御見解を伺いたいと思います。
次に、経済問題について伺います。
まず、国内経済問題と
経済見通しについてであります。
日本経済は、昨年春以来、内需が盛り上がりを見せ、ようやく
安定成長の軌道に乗ったかと思われたのでありますが、それはつかの間で、五十五年度は再び景気後退を迎えようとしているのであります。相次ぐ原油の
段階的値上げ、最近のサウジの突然の値上げによって、
石油価格は一バレル二十四ドルと昨年に比べて約二倍も上昇し、来年度の平均価格は三十ドルをさらに上回ろうとしているのであります。この結果、国際収支の赤字を通じて産油国へ流出するわが国の所得は、五十四年、五十五年度を合わせるとGNPの三・三%にも上るほか、
卸売物価は一五%も高騰することが危惧され、
原油値上げによる
デフレ効果と
インフレ効果は今後次第に
実体経済に浸透するものと思われるのであります。五十五年度経済は本格的な景気の下降と物価の高騰という
スタグフレーションに突入するととは必至と言わなければなりません。事実、民間機関の大方の五十五年度
経済見通しは、成長率が二ないし三%にとどまるのに対し、
消費者物価は政府目標を上回る八ないし九%上昇を見込んだ低
成長高物価型になるとしているのであります。これに対し、政府は、成長率を四・八%、
消費者物価を六%台に見込むなど、
原油値上げの悪影響を過小評価した
楽観的経済見通しにとどまっていることは、妥当を欠くと言わなければなりません。本当に来年度は五%程度の成長が確保できるのか、物価が高騰し、
スタグフレーションに陥る危険はないのか、総理の見解を具体的にお伺いいたします。
スタグフレーションを回避するには、何よりも物価の安定が最優先の課題として取り上げられなければなりません。そのためにあらゆる政策を物価安定に傾注することが必要であります。政府は、昨春以来、
金融財政両面にわたる
引き締め政策を強化してきたものの、
卸売物価は年間で一六%以上高騰するなど、物価の騰勢をとどめ切れないのが実情であります。このような状況にかかわらず、政府が五十五年度予算で多くの
公共料金値上げを決定したことは、
政府自身が物価の上昇にアクセルを踏むものと言わなければなりません。米麦を初め、国鉄、たばこ、健保等の値上げに加え、今後五〇%以上の電力、ガス料金の
引き上げを考慮するならば、来年度の
物価上昇率は政府の六・四%を大幅に超えまして、
スタグフレーションを一層悪化させることは明白であります。これを避けるためには、
政府自身が
インフレとの闘いに断固たる態度をとることであります。
そのまず第一は、
引き上げを決定した
公共料金の凍結もしくは
引き上げ率の大幅な圧縮を図ることであり、第二は、
原油値上げを口実に管理価格を悪用し、
先取り便乗値上げをしがちな企業を取り締まるために、かねてわれわれが建議申し上げている
公正取引委員会の機能の拡充強化を図ること、第三は、マネーサプライの動きに従来にも増しまして細心の注意を払い、M2の対前年比増加率を安定的に推移するよう日銀との金融政策の調整を図ること、以上三点について政府の見解を伺いたいのであります。
特に、昨日の答弁を聞いておりますと、過去一年の数字を持ち出して、
アメリカやイギリスの一〇%以上の
物価値上がり、わが国の低位な
物価値上げ指数を読み上げて、そうして今後を類推しているように思われるのでありますが、私が聞いているのは、これから先五十五年度予算の執行途上における物価、
インフレ、
スタグフレーションを心配していることをよく御承知の上で御答弁をいただきたいのであります。
次に、
国際経済関係で基本的な総理の態度をただしたいのであります。
今日の国際経済問題で世界が注目しているのは、
アメリカがイランに対する
食糧輸出禁止を中心とする
経済制裁と
アフガニスタン侵攻に伴うソ連への
経済封鎖に対し西側諸国家に同調を求めている点で、わが国にもたび重なる要請が来ているようであるが、国益を擁護しつつ
国際経済関係の調整という困難な課題に総理はどう対処するつもりか、伺いたいのであります。
特に、イランの
石油化学プロジェクトと、それから
シベリア開発への
経済援助の
取り扱い方針をどうするつもりか。さらに、イランが
原油販売代金の
ドル支払いの受け取りを拒否したことをきっかけに、世界的なドル離れと
ドル安現象が顕著になり、これと対照的に金相場が
天井知らずの暴騰を示し、通貨体制の不安と混乱が起きている現状でありますが、今後の国際通貨の行方と、異常な金相場が
世界経済に与える影響を総理はどう判断して対処しようとしているのか、具体的にお伺いいたしたい。
次は、財政問題についてお伺いいたします。
いまや、わが国の国債残高はGNPの二五%に達し、しかも今後数年間は十五兆円程度の
国債発行が避けられない状態で、残高百兆円は目前に迫っております。まさに財政は破産状態と言わねばなりません。この原因は、政府・自民党の歳出面での放漫きわまる金遣いと、歳入面において大企業と
金持ち優遇の不公正税制によってもたらされたもので、その責任は政府・与党が負わなければなりません。
財政再建が喫緊の課題であることは世論となっておりますし、昨年の総選挙で与野党を通じて
財政再建とそうしてこれが再建のための具体策を公約に掲げたことから、政権担当をしている政府・自民党がその公約をどこまで実行するかは、
政党政治と
議会制民主主義にかかわる点で国民は厳しく注目していたのであります。しかし、
財政再建元年のかけ声で始まった
予算編成も、その実態は惰性に流され、
財政改革の意欲を欠き、声の大きいところと自民党の票田と言われる圧力団体による予算の分捕り合戦が行われ、
財政再建の糸口さえ見出し得なかったことは、
予算編成終了直後の
竹下蔵相の、五十五年度予算は
財政再建元年の前の年になったと、こういう発言に端的にあらわれているのであります。
ことしの、また当面する窮迫した財政を再建するには、だれが考えても、まず第一は不要不急の予算を削減して政府の
むだ遣いをやめることであります。
しかし、歳出削減で政府が真っ先に打ち出したのは、福祉と
教育予算の
切り捨てという国民大衆に犠牲を強いるとともに生活の抑圧という、そういうやり方であったのであります。
そうした反面、防衛費については聖域扱いをして、GNPの〇・九%へのかさ上げをし、さらに
インフレ回避のための総
需要抑制策としての
公共事業費の圧縮構想も、これでは参議院選が戦えないとの突き上げに後退するなど、
財政再建の
選挙公約は吹き飛んだと言って過言ではありません。総理の反省のほどを伺いたいのであります。
低成長のもとで四兆九千億円の税の増収が見込める異例とも言うべき来年度予算で、
予算編成開始時の
国債発行二兆円削減の目算が半分の一兆円にとどまり、五十四年度補正後の
国債発行額を二千二百億円上回るに至ったことは、
財政再建を口にする資格が
大平総理にないと同時に、自民党は総選挙の公約をほごにしたと国民の目には映るのであります。
大平総理に
財政再建の決意があるかどうか、さらに、
財政再建を今後どう進めるのか、指導性をどう発揮されるのか、御答弁を願いたいのであります。
歳出節減の目玉商品のように大々的に自民党が宣伝した
行政改革についても、竜頭蛇尾に終わっております。
高度成長期からの政府・与党の
放漫財政は、二十年間に三倍以上にも達する百十一の
特殊法人をつくり、
高級官僚の天下りと行政の事業化を行い、効率的で企業的な経営をうたい文句に国会の
財政コントロールを外し、主務大臣の認可制をとってきたことは周知のとおりであります。そうしたやり方が腐敗と汚職の温床を生み、政府・与党の
政策パーティー券の大量購入を初め、
政治資金づくりに悪用され、
政治不信の批判が集中したことは御存じのとおりであります。
しかし、鳴り物入りの
特殊法人削減もわずかに十六件、しかも
大平総理自身が五十五年度に大半の
統廃合実施を指示したにもかかわらず、廃止が実現できるのは福田前内閣で決定していた三件にとどまっているのであります。五十五年度に関する限り
行政改革は見るべきものがなく、実行は五十六年度以降に延ばされ、しかも検討の結果いかんでは今後どうなるかさっぱりわからない状態であります。
参議院選挙を意識した
人気取り対策と言わなければなりません。
さらに、中長期の
行政改革継続と国民に気を持たせております国の
地方出先機関の整理等も腰砕けになる可能性が濃厚であります。八〇年代は地、方の時代、参加の時代と言われており、
わが国行政の中央集権的な機構、構造を抜本的に改め、
分権型行政を行うべきだと信じますが、そのために権限も財源も地方重視による再配分を行うべきであります。そうしたビジョンやプランなしの小手先の
行政改革は混乱を招くだけではないかと思うのであります。総理の
行政改革に対するビジョンと日程を明確にしていただきたいと思います。
財政再建の第二は、歳入面について、担税力に応じ適正な
税負担制度の確立による体質改善をすることであります。
従来、わが国の
法人税制に八十を超える企業優遇の
特別措置は御承知のとおりでありますが、しかし、その整理もまだまだ不十分であります。五十五年度予算では諸外国に比べて
税負担余地があると政府税調ですら答申していた法人税の
負担引き上げが予定されていたのにもかかわらず、途中で財界の横やりに屈して
自民党税調段階で法人税の増税は行わないことにしてしまったことは、総理も十分御承知のとおりであります。新聞等の報ずるところでは、
参議院選挙の
選挙資金集めと引きかえに増税が取りやめになったということも伝えられております。総理、その真相はどうであるのか、篤と御答弁を願いたいのであります。
法人税の増徴によって、国債減額は少なくとも三千ないし五千億円は政府予定より多くできたはずであります。
財政再建の手を緩めた上に国民の
税制不信を強めた点で五十五年度の
予算編成は最低であったと断ぜざるを得ません。総理、なぜ法人税の
引き上げを取りやめたのか、
財政再建の方針とも関連して御答弁願います。
なお、歳入体質の改善に関連して政府に確認したいのは、
一般消費税の取り扱いについてであります。
竹下蔵相は、
予算編成終了直後、五十六年度に
本格的増税が必要であると述べておりますし、また、昨年度の
医師優遇税制の手直しと今年度の
租税特別措置の改正で
一般消費税導入の準備段階を終了したといったようなニュアンスの
財政当局の発言なども聞こえてきて、国民に不安を与えているのであります。総理には、
一般消費税を再び考えることはないと明確に御答弁を願いたいし、五十六年度以降の本格増税の内容はいかなるものになるのか、答弁を求めます。
次に、
エネルギー問題についてお伺いをいたします。
総理は、
施政方針演説の中で、
エネルギー問題について
省エネルギーを強調し
代替エネルギーの開発を唱えております。すでに、イランの
アメリカ大使館人質事件に関連して、米国などの圧力によってイランからの
石油輸入を自主規制せざるを得なくなったばかりでなく、
国際石油資本からの
石油供給も減少しているのであります。しかも、
石油価格の値上げは野放しの状態であり、量、価格の両面で重大な局面を迎えているのであります。この石油の安定的な輸入は、わが国の経済と
国民生活を守る重要課題であると言わなければなりません。
したがって、私は、前段で申し述べました、わが国の
アメリカ追従の外交姿勢を転換して、平和、中立、非同盟の立場で
石油供給の安定化と多角化を図るとともに、内外の石炭、さらに液化ガスの利用拡大など、脱
石油エネルギー供給体制と
総合的省エネルギー政策をより強力に進めることが緊急課題であると考えます。同時に、これと並行して、これまで政府が怠慢であった地熱、太陽、波力発電など
自然エネルギーの利用開発、地方自治体などで行える
資源リサイクル型の
エネルギー開発など、わが国独自の
エネルギーの
研究開発を積極的計画的に推進をして
エネルギー危機を打開しなければなりません。総理の御見解を伺いたい。
この
エネルギー危機に関連して、いま国民が最も不安を感じているものに
原子力発電問題があります。
アメリカの
スリーマイル島の原発事故に見られるように、その安全性に不安があり、ことに
廃棄物処理についてはその安全な処理体制が確立されておりません。したがって、実用化を推進するにはきわめて危険が多いと言わなければなりません。私は、この際、
原子力発電については、基礎的な研究はもとより、核融合あるいは
高速増殖炉等の現在研究が進んでおりますが、安全性と効率の高い、そういった内容に転換するために国家的な努力を払い、特に新規の
原子力発電の建設は、
地域住民の不安や反対を押し切って力ずくで強行するのではなくて、安全対策が確立され、
地域住民の合意が得られることが先決であると考えます。総理の見解を伺いたいと思います。
次に、教育問題についてお伺いをいたします。
言うまでもなく、二十一世紀を展望してのわが国の未来は、次代を担う子供、青年にかかっているのであります。一方、国内の現状を見ますと、新しい科学技術の開発等によってのみわが国の
経済社会における生きる道はあるのであります。二十一世紀は、教育の果たす役割りはそのすべてであり、中心と言っても決して過言ではありません。しかるに、現状は、いわゆる学歴社会の中で、教育は一人一人の子供、青年の個性と能力を最大限に開花させるというのではなくて、どんな学歴をつけさせるのか、どんな学校に入るのかといったところに主眼が置かれてはいないでしょうか。そのため、現在求められていることは、ゆとりある行き届いた教育を保障して、より高度の教育研究を推進していくことにあるのであります。したがって、高校全入や入試制度の改革など受験地獄を解消する制度の改革を進めるとともに、
教育基本法第十条に述べられている国の責務である
教育条件の整備を徹底して行うべきだと考えるものであります。
そこで、八〇年代を迎えての政府の教育に対する基本見解を伺うとともに、具体的に次の三点について御答弁を賜りたいと思います。
その第一は、行き届いた教育のために昨年来
政治的焦点ともなりました、小中学校において四十人学級など
教職員定数の改善についてであります。国際的に立ちおくれている学級編制を、せめて一学級四十五人から四十人へという永年の国民の要求をようやくにして政府は十二年間で実施することになりました。文部省の九カ年計画ですら悠長に過ぎるものであるのに、十二年間という計画は、その趣旨からいって計画の名に値しないと言わざるを得ないのであります。十二年先は、きのうの答弁を聞きましても、就学人口が極端に減少するのであります。四十人学級はそう論議しなくても四十人以下になるかもしれない現状を迎えようとしているときに、四十人にするんだというようなふうに聞こえるのであります。政府はせめて九カ年という文部省案に短縮して実施すべきであると考えるが、その意思はあるかどうか。
第二は、私立学校に対する助成の充実についてであります。昭和四十三年度で見ても、大学の七二・三%、短大の八四%、高校の二四・二%、幼稚園五九・七%が私立であります。国立、公立のかなりの部分を私学が肩がわりしているのでありますが、国公立との格差はきわめて大きなものがあります。私立大学への
経常費補助についても、その二分の一を国が補助することを目途に昭和四十五年度から五カ年を目標に実施されてまいりましたが、十年を経過した今日も、二分の一はおろか、三〇%程度の助成にすぎないのであります。人件費を含む経常費二分の一補助を早急に実施するための計画を立てるべきであると思うのであります。また、私立高校への経常費二分の一補助の実現と幼稚園への
就園奨励費補助、
施設整備費補助の拡充を図るべきであるが、総理の見解を伺います。
次に、公立の教育施設の整備についてであります。特に高等学校は進学率九四%を超え、準義務化の段階を迎え、それに伴う公立高校の増設は深刻になっております。とりわけ、
人口急増地の
校用地取得、そして校舎の新増設については、国の二分の一
補助制度を自治体を通じて促進されるようにしなければなりません。そのために、
人口急増地にかかわる公立の小中高校の施設の整備に関する
特別措置法を立法化すべきであると思うのであります。
以上のような
教育条件の整備は、同時に、内需を拡大し、経済を福祉型に転換するものであると思いますが、総理の答弁を求めるものであります。
以上の諸点について総理から明確しかも具体的に御答弁を求めて、降壇する次第でございます。(拍手)
〔
国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕