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最高裁判所長官代理者(
西山俊彦君) ただいま書記官から
執行官に任命されました人の書簡を御披露いただきましたし、それにまつわるいろいろな問題点の御
指摘をいただきましたが、その書簡に盛られていることも、全部が事実無根であるということではないように思われます。問題点の若干は
指摘しているとおりであろうというふうに思うわけでございます。ただ、
執行官の任命基準と申しますのは、行(一)の四等級以上の者またはこれに準ずる者で試験を受けた者ということになっておりますものでございますし、それから
執行事務を担当する職種でございますので、訴訟法、
執行法の知識が十分なければならない、
裁判手続の知識を持たなければならないということで、給源がどうしても
裁判所書記官に限られるというのが
実情でございます。ところが御承知のように、
執行官は職務の
特殊性と申しますか、職業自体としては
執行というわりあいにイメージの暗いようなもの、もう少しはっきり言えば、人がむしろいやがるような仕事であるというふうなことから、なかなかなり手がないというのがこれもまた
実情でございます。
そういうことからいたしまして、特に先ほど
寺田委員も御
指摘がございましたように、
民事執行法が十月一日から変わりまして、
執行官の職責が非常に重要なものとなってきておりますことから考えまして、
裁判所といたしましてはできるだけ優秀な書記官に
執行官になってもらって
手続の円滑な進行を期したいと、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういう意味では、所長なり首席書記官というものがそういう
執行関係の経験の深い書記官に対して勧誘をするということも、これはあり得るかというふうに考えております。しかしながら、勧誘する場合に、先ほど御
指摘がありましたように、
民事執行法になったら直ちに俸給制に切りかわるであろうとか、号俸が三等級相当になるであろうとかというふうなことまで言って勧誘する所長なり首席はおらないと思いますし、そういうことがわからないような書記官というものでもないんじゃないかというふうに思われます。そういうことでございまして、勧誘して
執行官になってもらうという例はかなりあるごとはそれは間違いございません。
そうした場合に、
執行官になった場合の収入の問題でございますが、これは先ほ
ども御
指摘のようにもっぱら手数料制に従っているということでございます。その手数料制は、言いかえますれば働き高に応じて決まってくる、それからまた事件の多寡によって決まってくるということでございます。働き高の
関係で申しますと、どうしても新任の人は、ベテランの者に比べれば、
執行の迅速性という面でも欠ける面があるということで、どうしても事件のはけが少ないということがあるかと思います。それからまた、そういう新しく任命されたかどうかということの問題とは別に、健康上の理由で職務を
執行できないという事情もございます。そういうことによって低くなるという面もあるかと思われます。それから、事件数も年々多寡が生じているということも事実でございますし、それによって収入が増減するということも、これも事実でございます。しかしながら、最近の
実情を見てまいりますと、先ほど御
指摘になりました
執行官の国庫補助を受けている
程度の収入しか得られていない
執行官というのは非常に少ないというのが
実情でございます。ただ同時に、それ以上に、たとえば先ほどの四等級の人でございますと、実際の
裁判所職員として在職しておりましたときの収入につきましては、先ほどの基本給のほかに暫定手当もございますし、それから家族手当その他の手当もございます。それから、共済組合の
関係もあるというふうなことで、実際の収入はもっと多いというのが
実情であります。仮に二百二十万が基本給といたしますれば、そういう手当を加味して考えますと五百万以上になってくる、あるいは主任書記官であれば主任書記官としての加俸もあるということでございますので、五百万なり六百万なりという金額の収入が得られているわけでございますが、
執行官になった場合に直ちにそれだけの収入が得られるかということになりますと、それは先ほどから御
説明申し上げたように、いろいろな事情によって、特に新任の場合には研修も受けなければなりませんし、人のことを見習いながらやっていかなければならないということで、当分の間は収入が落ちるということが考えられるわけでございます。しかしながら、最近は事件数はここ数年来漸増の傾向にございますし、
競売の
関係にいたしましても、
競売の物件の価額が高騰しておりますものでございますから、
競売手数料というものの収入もかなりの金額になっておりまして、平均から申しますと、先ほどの在職していた場合の五百万なり六百万なりという金額をはるかに上回るような収入を得ているというのが
実情でございます。そういう点で、いろいろ個々的には低かったりあるいは仕事の面で不満をお持ちの方もあることはこれは否定いたしませんけれ
ども、全体的に見ると、かつての
執行吏時代あるいは
執行官の時代でも事件数が少なかった時代に比べれば、現在は非常に改善されておるのではなかろうかというふうに思われます。
それから、
執行法が
改正になりました際には、やはりその職責が非常に重要なものになってまいりますのは御
指摘のとおりでございまして、それに応じての待遇というものも考えなければならないということは御
指摘のとおりでございまして、この点につきましては俸給制の移行の問題も含めて、新しい
手続が施行されて、その成果を見ながら検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。