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1980-05-06 第91回国会 参議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月六日(火曜日)    午前十一時三十八分開会     —————————————    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     大鷹 淑子君      岩上 二郎君     安孫子藤吉君  四月二十五日     辞任         補欠選任      安孫子藤吉君     岩上 二郎君      大鷹 淑子君    久次米健太郎君  五月六日     辞任         補欠選任      田原 武雄君     亀長 友義君      熊谷太三郎君     増岡 康治君      鈴木 省吾君     高平 公友君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         青井 政美君     理 事                 岩上 二郎君                 片山 正英君                 北  修二君                 川村 清一君     委 員                 亀長 友義君                 高平 公友君                 降矢 敬雄君                 増岡 康治君                 三浦 八水君                 栗原 俊夫君                 村沢  牧君                 原田  立君                 河田 賢治君                 下田 京子君    衆議院議員        農林水産委員長  内海 英男君    国務大臣        農林水産大臣   武藤 嘉文君    政府委員        農林水産大臣官        房長       渡邊 五郎君        農林水産省構造        改善局長     杉山 克己君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    参考人        全国農業会議所        専務理事     池田  斉君        東京農工大学農        学部教授     梶井  功君        全日本農民組合        連合会書記長   谷本たかし君        全国町村会政務        調査会経済農林        部会長      藤森常次郎君        北海道農民連盟        書記長      溝  和成君        全国農業協同組        合中央会農政部        長        山内 偉生君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農地法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○農用地利用増進法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青井政美

    委員長青井政美君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、田原武雄君、熊谷太三郎君及び鈴木省吾君が委員辞任され、その補欠として亀長友義君、増岡康治君及び高平公友君が選任せられました。     —————————————
  3. 青井政美

    委員長青井政美君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行います。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青井政美

    委員長青井政美君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事岩上二郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 青井政美

    委員長青井政美君) 農地法の一部を改正する法律案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案及び農用地利用増進法案、以上三案を一括して議題といたします。  まず、政府から右三案の趣旨説明を順次聴取いたします。武藤農林水産大臣
  6. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 最初に、農地法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  農地法につきましては、昭和二十七年の制定以降、農業及びこれをめぐる社会経済情勢の変化に対応し、農業構造改善推進に資するよう、昭和三十七年及び四十五年の二度にわたり改正が行われて今日に至っております。  わが国農業体質を強化し、総合的な食糧自給力向上国民生活の安定を図るという農政基本目標を実現するためには、その基礎的条件として、農業構造改善推進することが一層重要となっております。このため、今回、農用地利用増進法案提出するとともに、これとあわせて、農地等に係る権利移動円滑化を図り、農業後継者育成に資するよう、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、小作料定額金納に関する規定改正であります。  最近における農地賃貸借動向を考慮し、小作料は、一定金銭で定め、かつ、授受しなければならない旨の規定につきましては、衆議院修正により、この規定を存置し、一定の場合に、小作料金銭以外のもので授受してもよいようにすることとされております。  第二は、農業後継者育成等に資するための農業生産法人要件緩和等であります。  農地を所有していない農業後継者等農業生産法人制度を活用して規模の大きな農業経営を営み得るようにするため、農業生産法人業務執行役員に係る要件を緩和し、その法人事業に必要な農作業に主として従事している当該法人の常時従事者業務執行役員の過半を占めていれば足りるものとするとともに、農地転貸禁止等例外として世帯員転貸等を行うことができることとしております。  第三は、許可権限等委譲であります。  行政事務簡素化を図る観点から、耕作目的での農地等権利移動許可等について、原則として農業委員会許可権者とする等所要許可権限委譲を行うこととしております。  以上が、本法案提案理由及びその主要な内容であります。  次に、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  最近における農業動向及び農地事情にかんがみ、農地法制整備を図ることとし、農用地利用増進法案及び農地法の一部を改正する法律案提案いたしましたが、その関連において、昭和二十六年の制度発足以来、農業生産力発展及び農業経営合理化並びに農民の地位の向上に寄与してまいりました農業委員会制度が今後果たすべき役割りは、以前にも増して重要なものになると考えます。  このため、農業委員会制度に対するこのような要請にこたえ得るよう、農業事情の実態に即しつつ、その組織体制整備して運営の一層の円滑化を図ることとし、この法律案提案いたした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農業委員会選挙による委員定数につきまして、その上限を引き下げることといたしております。  第二に、政令指定都市におきまして、現在区単位に置くこととされております農業委員会設置基準を、指定都市の市長が都道府県知事承認を受けたときは指定都市単位として置くことができる道を開くことといたしております。また、これに関連して、都道府県知事承認に係る指定都市土地改良法及び農地法を適用する場合の所要規定整備を行うことといたしております。  第三に、農業委員会都道府県農業会議との連絡・協力体制を緊密化するため、都道府県農業会議会議員は、原則として、農業委員会委員のうちから指名した者にかえて、農業委員会会長を充てることといたしております。  第四に、都道府県農業会議に、現行部会制を廃止して、常任会議員を置くこととし、法令業務及び会則で定めるその他の業務を処理するため、常任会議員会議を設けることにより、その審議が円滑かつ総合的に行われるようにいたしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  なお、政府提案に係るこの法律案につきましては、衆議院において、農業委員会選挙による委員定数上限に関する特例規定を追加する等の修正がなされております。  最後に、農用地利用増進法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  わが国農業は、国民の必要とする食糧を安定的に供給するとともに、国土と自然を保全し、活力ある地域社会の形成に資するという重要な役割りを果たしております。しかしながら、今日のわが国農業は、農産物需給の不均衡、経営規模拡大停滞等の厳しい諸問題に直面しております。  このような事態に対処して、わが国農業体質を強化し、総合的な食糧自給力向上国民生活の安定を図るという農政基本目標を実現するためには、各般の施策を総合的に推進することが必要でありますが、とりわけ、農業生産の中核となる生産性の高い農業経営をできるだけ多く育成し、このような農業経営によって農地が効率的に利用されるよう、農業構造改善推進することが緊要であります。  以上の観点から、農地流動化地域農政推進等の従来から講じてきた施策発展させ、各地域の実情に応じて農地流動化有効利用を促進する仕組みを整備するため、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、この法律案目的についてであります。  この法律案は、市町村が、農用地農業上の利用増進を図るための事業として、農用地権利移動等を円滑に進めるための利用権設定等促進事業農用地の効率的かつ総合的な利用を図るための農用地利用改善事業実施を促進する事業農作業の受委託を促進する事業等を総合的に行うことにより、農業経営改善農業生産力増進を図り、もって農業の健全な発展に寄与することを目的としております。  また、市町村が、この農用地利用増進事業を行おうとするときは、実施方針を定め、都道府県知事承認を受けることとしております。  第二は、利用権設定等促進事業についてであります。  市町村は、農用地関係権利者全員の同意を得、かつ、農業委員会の決定を経て、利用権設定等内容とする農用地利用増進計画を作成し、これを公告することにより、利用権設定等の効力が生ずることとしております。  また、この事業による利用権設定等及びこれにより成立した賃貸借等については、農地法における権利移動許可制小作地所有制限及び賃貸借法定更新規定を適用しないこととしております。  第三は、農用地利用改善事業についてであります。  市町村実施方針で定める区域地区とし、農用地に関する権利者構成員となっている団体は、作付地集団化農作業効率化農用地利用関係改善に関する措置等農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために必要な事項を内容とする農用地利用規程を定め、市町村の認定を受けることができることとしております。なお、この団体構成員農用地利用増進計画の公告により利用権を設定した場合における農業協同組合組合員資格の取り扱いにつき、農業協同組合法特例を設けております。  以上のほか、農用地利用増進事業の円滑な推進を図るため、国及び都道府県による援助、地域農業振興に関する施策実施に当たっての配慮等について定めております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  なお、政府提案に係る本法律案につきましては、衆議院において、農用地利用増進事業実施原則に関する規定を追加する等の修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
  7. 青井政美

    委員長青井政美君) 右三案は衆議院においてそれぞれ修正がなされておりますので、この際、衆議院における修正部分について、衆議院農林水産委員長内海英男君から順次説明を聴取いたします。衆議院農林水産委員長内海英男君。
  8. 内海英男

    衆議院議員内海英男君) ただいま議題となりました三法案に対する衆議院修正について、その趣旨を御説明申し上げます。  最初に、農地法の一部を改正する法律案に対する修正について申し上げます。  修正の第一点は、小作料について、政府案では、一定金銭の額で定め、かつ、授受しなければならないものとする現行法規定を廃止することとしているのを、現行法規定を存置させ、例外として、耕作者農業経営に支障を生じない範囲内において、省令で定めるところにより、農業委員会承認を受けた場合のみ、その他の方法によることを認めるものとしたことであります。  修正の第二点は、政府案では、農地等賃貸借解約等に係る許可は、原則として農業委員会が行うものとしているのを、現行法どおり都道府県知事が行うものと改めたことであります。  修正の第三点は、政府案では、国が売り渡した未墾地等の処分に係る許可は、都道府県知事が行うものとしているのを、現行法どおり農林水産大臣が行うものとするよう改めたことであります。  次に、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正について申し上げます。  修正の第一点は、政府案において、農業委員会選挙による委員定数上限を三十人としているのを、農林水産大臣が定める基準に該当する広域な市においては四十人とすることができるよう改めることとしたことであります。  修正の第二点は、政府案において、都道府県農業会議会長、副会長常任会議員のうちから選任することとなっているのを、会議員のうちから選任するものに改めるとともに、会長、副会長選任された者を常任会議員とするよう改めることとしたことであります。  修正の第三点は、政府案において、都道府県農業会議農業委員会を代表する常任会議員定数とその他の常任会議員定数を等しくするとしているのを、その他の常任会議員定数農業委員会を代表する常任会議員定数を超えないようにしなければならないものに改めることとしたことであります。  このような修正を行いましたのは、農業委員会制度のより円滑な運営に資するため、農業委員会及び都道府県農業会議組織体制の一層の整備を図る必要があるとの判断によるものであります。  次に、農用地利用増進法案に対する修正について申し上げます。  修正の第一点は、法律目的規定中、政府案では、「農用地について利用権設定等を促進する事業」を行うとしている旨の規定を、「農用地について耕作者のために利用権設定等を促進する事業」を行う旨に、また、「農業経営規模拡大」という字句を、「農業経営改善」に改めたことであります。  修正の第二点は、農用地利用増進事業実施に関する訓示規定を第三条として政府案に追加し、「農用地利用増進事業は、農用地の保有及び利用の現況及び将来の見通し、農用地を保有し、又は利用する者の農業経営に関する意向等を考慮して農用地農業上の利用増進を図るとともに、農業者又は農業に関する団体地域農業振興を図るためにする自主的な努力を助長することを旨として実施するものとする。」とした規定を設けたことであります。  修正の第三点は、政府案において、市町村は、農用地利用増進事業を行おうとするときは、実施方針を定めなければならないものとしている規定に、「事業趣旨の普及を図らなければならない」とする旨を加えたことであります。  修正の第四点は、政府案では、都道府県知事は、実施方針承認をしようとするときは、あらかじめ、「都道府県農業会議」の意見を聴かなければならないとしている規定を、「都道府県農業会議及び都道府県農業協同組合中央会」の意見を聴かなければならないとするよう改めたことであります。  修正の第五点は、政府案では、農用地利用改善事業実施する団体について、「一定区域をその地区とし、かつ、当該地区内の農用地につき権利を有する者の三分の二以上が構成員となっている団体政令で定める基準を備えるもの」としている旨の規定を、「農事組合法人その他の団体政令で定める基準を備えるものであつて、一定区域をその地区とし、かつ、当該地区内の農用地につき権利を有する者の三分の二以上が構成員となっているもの」とする旨の規定に改めたことであります。  以上が、三法案に対する修正趣旨及び内容であります。  何とぞ御賛同賜りますようお願い申し上げます。
  9. 青井政美

    委員長青井政美君) 以上をもちまして、三案の趣旨説明は終わりました。  午後一時再開することといたしまして、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ——————————    午後一時十一分開会
  10. 青井政美

    委員長青井政美君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  農地法の一部を改正する法律案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案及び農用地利用増進法案、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、参考人方々に御出席を願っておりますので、御意見を承ることといたします。  まず、参考人方々の御紹介を申し上げます。  全国農業会議所専務理事池田斉君、東京農工大学農学部教授梶井功君、全日本農民組合連合会書記長谷本たかし君、全国町村会政務調査会経済農林部会長藤森常次郎君、北海道農民連盟書記長溝和成君、全国農業協同組合中央会農政部長山内偉生君でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席を賜りましてまことにありがとうございます。本日は、農地法の一部を改正する法律案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案及び農用地利用増進法案に対する諸問題につきまして、それぞれ御専門立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の当委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。  それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。御意見をお述べ願う時間は、議事の都合上、お一人十分程度とし、その順序は、池田参考人梶井参考人谷本参考人藤森参考人溝参考人山内参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質問がありましたらお答えをお願いいたします。  それでは、池田参考人からお願いいたします。池田参考人
  11. 池田斉

    参考人池田斉君) ただいま御紹介にあずかりました農業会議所池田でございます。  農地関連法案がいよいよ参議院の農水で本日から御審議をわずらわしておるわけでございますが、私はこの三法案につきまして、あらかじめ結論を申し上げますと、賛成をする立場で御意見を、時間が制約されておりますので、簡単に申し上げたいと存じます。  その前に、非常に日本農業内外情勢の中できわめて厳しい、言うなれば袋小路に追い込まれつつあるというような段階で八〇年代の農政幕あけがこれから行われるわけでございますが、農業関係者は、国会並びに政府がどういうような形で農業の問題をこれから展開するか、深く注目し、また期待をしておると思うのでございます。そういうさなかにおきまして、過般四月二十三日に、参議院におきましても、食糧自給度向上に対する衆議院の本会議の決議が全党一致行われたということは、きわめてその意義は高いというふうに考え、立法府があのような意思表示をしたということは、これからの政府が取り上げる農政の方向づけにつきまして非常に大きな役割りを持ったのではないかというふうに考え、この機会に厚く敬意を表し、お礼を申し上げたいと思うわけでございます。  私は長い間農政団体に所属し、特に今回、三法の中の一つであります農業委員会法改正につきましてはきわめて密接な、直接の関係を持っておる者でございまして、昭和二十六年に農業委員会法制定をされまして、今日まで約三十年、時が経過しておるわけでございますが、その団体中央機関に所属をしながら今日まで来ておるような次第でございます。  今回の農地関連三法につきましては、われわれ系統はこの問題に非常に大きな関心を持ちながら、今日まで政府と対応しながら、この三法提案出までの姿の中でいろいろ要望を取りまとめつつ今日に至っておるような次第でございます。言うなれば、長年のわれわれの要望がこの三法に実を結んで提出をされておる、こういうような経過でございまして、かつて農振法の段階におきましては、政府はわれわれの意向を十分取り入れるだけの余裕を持たないで見切り発車をしたというようなことで、実は私ども政府案に反対をし、そして修正国会お願いをするというような経過がございましたが、今回は全く不離不即の関係でこの問題を推進し、われわれの要望が、少なくとも、十全ではないにしても大部分が取り入れられるという形の中におきまして法案が出されたという経過がございまして、われわれはこれに合意をいたしたという経過があるわけでございます。  そういうようなことで、衆議院ですでに審議がいろいろ行われたわけでございますが、その審議経過の中で、今日参議院の方にも配付されております修正点が、いろいろ修正をされまして修正案として出されておることは御案内のとおりでございますが、この修正案につきましても、私ども衆議院の真剣な審議の中におきまして、政府の原案というものがより時宜に適する形において充実をされるというような形でございますので、どうか、結論的にはこの修正案を中心として参議院におきましても審議の上、速やかに法案が通過されますことをひとえにお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  この法案の中にいろいろな背景なり意味を持っておることはいまさら申し上げる必要はないかと思いますけれども、やはりわが国農政が避けて通れない一つの問題は、規模経済わが国農業の中でどういうふうに現実的に実現をしていくか、この問題の挑戦なしには私は日本農業の将来の展望は持ち得ないというような観点に立っておるわけでございます。そういう意味で、今回の三法は構造政策の本格的な展開を指向するという形の中で策定がされておるというふうに理解をするものでございます。  もちろん、わが国は狭い国土の中の耕地でございますので、諸外国と裸で競争をするということはとうていこれはできない厳粛な事実でございまして、農業の保護というものはやはり十全にこれはやっていただかなければならない前提でございますけれども、それにいたしましても、このように内外情勢の厳しい中におきまして国民合意農政を取りつけるということも非常にまた大事であり、そうなりますと、やはり日本農業の中で最も近代化が、残念ながら規模経済の姿の中でおくれておる土地利用型の農業近代化、これをどうするかというむずかしい問題にわれわれは立ち向かわざるを得ないというふうに考えるわけでございます。  農業基本法農政でいろんな施策展開をされ、施設型の農業におきましては諸外国に匹敵するような農業近代化も進みましたけれども土地利用型の農業近代化だけは今日なお非常におくれておると、そして小さい規模の中で、いろいろ農業機械等も、過剰投資というようなことを含めながら、なかなか全体としてコストを下げるというような体質改善ができないのが現状でございます。このような問題をどうやって、むずかしい問題であるけれども、今後解決をしていくかというような問題に、われわれはこの三法が少なくともその姿勢を示したというところに大きな評価をすべきではないかと思うわけでございます。  高度経済成長段階におきまして、少なくとも地価が異常に高騰をする、これは農業の問題だけではなくて、農業はその被害者でございますけれども農地の地価も異常にこれが高騰し、したがって、資産的な保有という傾向もやむを得ない姿の中であるわけでございまして、そういう姿の中で七割の二種兼業、これが五割以上の土地を保有していると、この問題を、いわゆるこれから農業に精進をしようとする専業的な農家、あるいは兼業の中におきましても自分はやってみようと、こういうような方々にどうやって土地の利用の集積を図るか、非常にこれは困難なむずかしい問題ではございますけれども、その問題に挑戦をしていくということがやはり基本的に大事であるというふうに考えるわけでございます。まさに三法は、そこを志向しておるというふうに考えてよろしいのではないかというふうに考えます。  およそ規模拡大を考える場合に、一つは従来のように所有権の移転による規模拡大、これがやはり一つの常道であるということは今日も変わっていないと思います。農地法の中で、御案内のように自作農主義というものが基本的に貫いておる。これは所有権の移転ということが基本でございますけれども、今日の高地価の段階ではこれは限界がある。  したがって第二の方法は、使用収益権の移転による土地利用の集積、ここにやはり大きな焦点を据えざるを得ないと。従来、農用地利用増進は農振法の改正で行われましたけれども、これも一応の成果を上げつつありますけれども、この際、質量的にこの面の充実を図って農用地利用増進法案提案されておるわけでございまして、ここにやはり基本的な焦点を置いた形での解決に立ち向かうと、こういうこと以外に適当な方法はないというのが私の認識でございます。  第三番目は、やはり農用地規模拡大一つは、わが国国土は狭いことは狭いのでありますけれども、それにいたしましてもやはり農用地として適当な土地があるわけでございます。これの外延的な規模拡大、これも忘れてはならないと思うわけでございます。  ただ、ここでこういう問題をやる場合に、一体むずかしい問題をだれがどういう形で推進をするかと、これは総合的な姿の中でお互いに助け合って、市町村が中心になってやらなければならない仕事ではございますけれども、この推進一つの重要な役割りを持つというような意味で、農業委員会が新しい一つの任務と役割りをこれから担当すべきではないかというふうに私は考えるものでございます。そういう意味で、今回利用増進法の中で農業委員会の位置づけが行われ、また農業委員会の組織の運営につきましてもある程度の小回りのきく改善を行うというような形で新しい使命がこれに付与されておるという意味におきましては、農地関連三法の一つとして重要な役割りを持つわけでございます。  要するに、農地三法の骨格は、農業者の、これは押しつけではなくて自主的な意欲、これを呼び起こして、そして新しい農用地利用の秩序をつくる、そして農業委員会も自覚をしてその推進を図る、そういう中で意欲ある農業者育成を図る、こういうことが私はこの三法の骨格をなしておると思うわけでございます。  法案内容は、時間もございませんので、問題の御質問の中でお答えを申し上げたいと思います。  最後に、私は、農業委員会に対するいろんな批判が今日あることは十分私も承知をいたしております。しかしながら、今度の三法が生まれるということを契機に、農業委員会もひとつ気持ちをしっかり取り戻して、そして世間の期待にこたえるような、そういう姿の中で構造政策の一翼を推進する機関として今後発展をするというような方向で、私自身も中央におりまして全力を挙げてその問題に対応いたしたいというふうに考えるわけでございます。幸い来年は、この法案が通りますれば、農業委員会の全体の改選の時期でございます。したがいまして、農業委員の質の向上ということを、この三法がねらう方向でひとつ人が出てきてもらうというようなPRも十全にいたしたいというふうに考えるわけでございます。  なお、財政その他につきましては、いろいろな配慮を払っていただいていることはきわめて感謝にたえないわけでございますが、皆様も御承知のように、まだまだ系統全体といたしましては財政が不如意であり、特に市町村農業委員会、県の農業会議は不如意でございます。どうかこれらの問題も、行政に対して、立法府の方で十分この法案が満足に運用できるような方向で、この委員会系統の財政につきましても格段の御協力をひとつお願いをいたしたいということを申し上げまして、大体十分の時間が参りましたので、これで意見の開陳を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  12. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  次に、梶井参考人お願いいたします。梶井参考人
  13. 梶井功

    参考人梶井功君) 東京農工大学の梶井でございます。  私は基本的に言いまして、今回の農地関係法案に賛成するものです。衆議院修正案、これも政府案の方向をより明確にしたものというふうに受けとめております。そういう観点から意見を申し上げたいと存じます。  農地法は第一条にその目的を掲げておりますけれども、それには、最後のところにありますように、「耕作者の地位の安定と農業生産力増進とを図ることを目的とする。」というふうに法の目的をうたっております。この目的は、私は農地法制が常に堅持していなければならない眼目になる点だというふうに思っておりますけれども、この目的を最もよく実現する方法、これは時代によって違ってまいります。少なくとも昭和四十年ごろまでは、確かに農地はその耕作者みずからが所有することがこの目的を実現する方法として最も適当でした。しかし、今日の段階では、所有権にだけこだわるのではなく、営農に対する意欲と能力を持っている人に農地利用権を集中させることこそが、耕作する者の地位の安定と農業生産力増進になるように条件が変わったと言わなければならない、そう私は思っております。  その条件の変化といいますのは三つございます。一つは、農業生産力の高度化が収益性の階層差を増大させたこと。一つは、兼業の深化が耕作能力をなくした農家をふやしている。もう一つは、高地価、この問題です。これらを一々説明しておりますと時間がありませんので、以上の三つの条件変化があるということだけ指摘しておきますけれども、重要な点は、この三つの条件変化の方向というものが、もう不可逆的な方向、後戻りできないような方向だということだと思います。そして、この不可逆的な方向の認識の上で、そうした条件変化に対応しながら農業生産力増進を図ることのできるようにするための農地法制整備、これが今日の重要な課題になっているのだということではないかと思うわけです。  もちろん、農地法制整備だけで耕作者の地位を安定させ、農業生産力増進させることができるわけではありません。営農に対する意欲を持ち、能力を持って利用権を集積してがんばっていこうというふうな方々、こういう方々が将来に希望を持って営農に取り組むことができる、そういうふうにするために、私は、農産物の貿易政策、生産政策、価格政策等々、施策全般の充実というものが大事である、こういうふうに思っております。  その点で申し上げますと、いま池田参考人も触れましたけれども、今回国会で全会一致で衆参両院で食糧自給力強化に関する決議というふうなものがなされたということは、非常に重要な意味があると思います。この決議の方向に沿って私は政府施策を強化することを切に希望するとともに、また必ずそうするであろうということを期待しているものであります。  それらの施策の受け手と申しますか、生産の担い手に活動の場を保障するのが農地法制役割りでありますけれども、今日農業生産の担い手は、賃貸借を中心にして活動の場を広げつつあります。賃貸借を中心にして農地は事実動きつつあるのですけれども、その動きは残念ながら活発ではありません。条件としてはもっと賃貸借で動く条件があるにもかかわらず、いまの農地法制がその動きを妨げている、その妨げている部分を取り除く必要がある、これがいまの問題だと私は認識しております。  貸してもいいというふうに思っていらっしゃるサラリーマン農家と言われるような方々もたくさんいます。また、だれかにつくってもらわなければいかぬと、そういうふうになっている老人農家もございます。しかし、そういう方々農地が現状ではスムーズに賃貸に出てこない、ここのところに問題があります。端的に言いまして耕作権の心配があるからです。この心配を取り除く必要があるわけです。  他方で、農外資本によります投機的な農地取得を排除して、農地をスプロール的な壊廃から守っていくためには、いま農振法でやっておりますようなゾーニングを厳しくする。それと同時に、農地法による一筆一筆の移動統制、こういう管理手法というものがまだ必要だと思います。つまり、そういう点で言いますと、農地法の枠組みは残しながら、しかし、村の中での農家同士の耕作のための農地移動については、民主的な話し合いの上でもって極力自由化していく、自由にしていく、こういつた仕組み、特に耕作権を発生させないような形でもって耕作のための農地移動は自由にしていく、こういったことが必要だというのがいまの段階ではなかろうか、こういう仕組みが求められているわけです。  農用地利用増進法案農地法の一部改正案、それに農業委員会法改正案、これらは、いま求められているその仕組みをつくり出すのに必要なぎりぎりの案だというふうに私は評価しております。利用増進法案の前身であります農振法による利用増進事業、これをやったところなんかを何カ所か私ども調査しておりますけれども、その調査でもって一番感じましたことは、利用増進事業なんかの場合で言いますと、事業地区農用地区域に限定されているために現地では大変苦労しているということであります。また、たとえば賃料というふうな問題について農地法の制約を受けるというふうな点で、大変現実に合わせるのに苦労していると、そういうことであります。  利用権を設定しようという方の持っている耕地が、全部が全部農用地区域にあるというわけではありません。農振白地にもまたがっている。それを一々区別しまして、白地の農地については別途の手当てを講じてあげなければいけない。そういったことでもって事務的には大変なめんどうを係の方がやっていらっしゃる。こういった点を利用増進法案事業対象区域を広げるというふうな措置をとり、農業委員会やあるいは農協のこの事業における位置づけというふうなものを明確にすることによって非常にスムーズに事業展開できるようにしているという点を、非常に評価していいんではなかろうかというふうに見ているわけです。  利用権をいま設定しようというふうな方、あるいはしていいと考えていらっしゃる方々、そういう方と、その利用権を受けて農業経営拡大しようとしている人、あるいはしている人、この両者の関係というのは、私は昔の地主、小作関係というものとは明らかに違っているというふうに認識しております。昔は小作農といえばまさに零細貧農そのものでした。しかし、今は借入地を持っているということの方がむしろ経営的な前進というものを示す指標にすらなっているというふうに言っていいというふうに思うわけです。賃貸借というものが今日ではそういう位置づけにあるということを認識して、それを発展させる方向の農地法制整備として今回の農地関係法案というものは出されたというふうに理解しているわけです。そういう点で基本的に賛成するというものであります。  以上です。
  14. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  次に、谷本参考人お願いいたします。
  15. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 私どもは、五十年の農振法改正に際しましては、農地有効利用を促進するという点で一定の期待を持つことができたのでありますが、今回の農地三法については反対せざるを得ないということであります。特に農用地利用増進法案の反対を中心にしまして、以下若干の見解を述べさしていただきたいと存じます。  今回の農地三法の登場は、政府が進めている日本農業再編成遂行のためのものであるのは言うまでもありません。その再編成とは、外国農畜産物の輸入を拡大しながら、米などの生産が過剰状態になったとして米の大幅減反を行っていき、そして不足農産物の低コスト生産体制をつくろうとするものであります。つまり、米の転作と構造政策を結合した農業合理化の強化というところにその中心があるわけであります。  しかしながら、こうした農政が現在のところうまくいっておりません。たとえば転作の状況を見てみましても、転作の七割は集団転作だと言われておりますが、その中身のかなりの部分はみなし集団転作でしかないという状況を見ても明白だろうと思います。  なぜそうなのか、これについては、一つには転作条件が整備されていないという点もありますが、もう一つには、農用地流動化の環境条件が整備されていないというところにより大きな問題があろうと思います。たとえば高度経済成長時代に上がりました土地の価格でありますが、低成長に入りましてから小康状態を保ってまいりましたが、最近またぞろ値上がりに転ずる様相が生まれてまいりました。問題はそれだけではありません。兼業農家にとって大事な雇用の問題についても状況変化が生まれております。低成長に入りましてから、資本の雇用政策は常用雇用を減らして臨時雇用を拡大するという雇用政策に転換いたしました。さらにはまた年金問題にいたしましても、低成長に入りましてから福祉政策は低福祉に転じられたと言われているのがそれであります。  さらにまた注目しなければならないのは、農産物の価格保証の問題であります。現在一部に土地の流動化状態が見られるのでありますが、それは主として農産物価格が保証されている部分に限られております。米がそれであります。  その米価については、米価保証政策が漸時後退をするというような状況が生み出されております。昨年以降、借地でも規模拡大したいという農家は減る傾向が生まれてまいりました。生産意欲の減退、借りると転作が請け負わされる事情等々があってのことだと言われておりますが、こうした状況変化が生まれてきているのは、農地流動化の環境条件が整備されていないからというぐあいに言ってよいのではないかと思います。  さて、それではそういう中での農地三法が登場したことの持つ意味は何なのか、私はこの際、二つの点を指摘申し上げたいと存じます。  第一点は、強権的土地流動化の促進になるのではないかという点であります。農地利用増進法を見てまいりますと、農民の自主性に依拠した流動化を促すかのようであります。しかしながら、現在政府が検討を進めております転作奨励金、これがどう変わろうとしているか、そしてそれと増進法がドッキングしたときにどういう事態になってくるかを見てみれば、事態は明白であろうと思います。転作奨励金の合理化の方向は、麦、大豆以外は主として抑制をしていって、そしてまた、同時にばら転の奨励金も抑制しながら、麦、大豆などの集団転作に集中させていこうという方向であります。  他方、第三次構造改善事業を見てみますというと、一定の土地流動化の条件つきというような形になってまいっております。そして、そういう状態の中で農用地利用増進事業とこれらの補助政策が結合されるとどういうことになるのか、補助政策を手段にして農民をして転作、流動化に無理に追い込んでいく、そういう事態が出てくるのではないか。つまりペナルティー農政拡大になるのではないかという点が案じられるところであります。このような安上がりの強権的合理化政策は、農民の意欲を抑えるだけではなくて、農政の後退をもたらすというふうに見ていかなければなりません。農民の自主性に依拠する立法だとするなら、その保障条件が明確に示されてしかるべきではないかと存じます。  次に、第二の点といたしまして、自作農政を崩壊させるのではないかという点がございます。私ども農地有効利用を促進すべきだというふうに考えます。現に、季節的な借地関係で見てみますというと、畜産農家が水田裏作を借地するとか、あるいはまた、酪農家と葉たばこ耕作農家が期間借地を行うというようなことで、事実上の規模拡大を行うというような状況が生まれております。こうした状況の中では、たとえば機械の効率的利用などで生産コストを引き下げるとか、あるいはまた畜産との結合によって地力を保全するとか、また生産された生産物にしましても、すぐれた生産物を生産するというような生産形態が生まれているところであります。  しかしながら、今回の三法がねらっている規模拡大というのはこれと似て非なるものではないのかと思います。農地の集積は機械と技術を持つ者を中心に図られるでありましょう。そうして生産形態は単一生産の形態というようなことになっていくのではないかと思います。現在、請負耕作は米を中心に進んでいるのでありますが、一部にはすでに他人労働依存型の請負耕作も生まれつつあります。請負耕作は労働力の需給調節的役割りを果たしているのでありますが、技術革新などが進むもとで際限なくこれが拡大されていったらどういうことになるのでありましょう。農用地利用増進事業の将来的な帰結は、農業内に資本家的な生産のあり方を生み出す危険はありはしないのでしょうか。またさらに、農業外からは機械の導入などで、農外資本が、農業関係の資本が農業についてこれを抑えるというような状態が生まれるおそれだってあるのではないかと思います。今回の農地三法では、自作農維持主義に立つ農地法についてはできるだけ手をつけないというような姿勢が見られるのでありますが、それが本音だとするならば、耕作面積の取得について何らかの制限が加えられてしかるべきではないかと、このように考えます。  最後に、市街化区域農地小作料について若干言及させていただきます。  市街化区域農地問題でありますが、すでに衆議院に農住組合法案が出されております。この農住組合法案は二分の一以上の農地を転用するならして、残りの農地農業をやっていくというならその農業は認めていきましょうと、こういう立場に立っておるのであります。その農住組合法案とこの農地三法がドッキングした場合にどうなっていくのか、転用したが、残りの農地農業がやれないというような農家が多数出てきはしないか、これらの点についてもさらに慎重な検討が必要ではないかと思います。  次に、小作料の問題であります。残存小作地については、ことしの九月で統制小作料が撤廃されることになっております。残存小作地農地改革で解放されてしかるべきものでありました。それだけに、統制小作料が継続できないのだとするなら、耕作者に所有権を帰属させるための低利長期融資などの明確な措置が打ち出されてしかるべきではないかと存じます。  次に、通常の賃貸料の問題についてであります。現在の賃貸料の水準は、かなり大規模な農家でないと払えない状態にある地域がかなりございます。農民がやる気を起こす農政を充実して中小農家も育てるのか。それとも、中小農家を切り捨てていくのか。中小農家を育てるのだとするならば、借地料は抑制されてしかるべきではないかと思います。つまり、中小農家でも収益の範囲で払えるような借地料にどう抑制していくか、これらの問題検討がさらにされてしかるべきではないかと存じます。  以上であります。
  16. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  次に、藤森参考人お願いいたします。藤森参考人
  17. 藤森常次郎

    参考人藤森常次郎君) 私は、この三法につきまして、自分が長くやってまいりまして実践をいたしてまいりました立場から、この三法に対しては賛成をしたいと思っております。  その理由はまた申し上げますけれども、いまの農業、農村の状態をごらんになると一目でわかるように、全く長い混迷が続いております。これで農村地帯は一体どうなるだろうかという心配さえ各所で起きております。私は、最近も、全国をほとんど年間を通じて回っておりますけれども、至るところで共通して聞かれる言葉は、農業を職業として、いわゆる世業的に行っていくとしたら私一代で結構ですという声がどこでも伺われるわけなんです。そういう中で片や後継者の議論をいたしている。私は大変矛盾が多い世の中だなと思っております。  一体、なぜそういうことになったのか。これを考えてみますと、いろいろ原因はありましょうけれども、まず、何といっても、農村に定着をして安定的な農業経営ができなくなったということであると思います。それには、経済成長があれだけ急速に進んでまいりましたので、これらに作用される点も非常に多いでしょう、あるいは農政が明確を欠いていたということも私は言える点がたくさんあると思います。私は五十年間、一貫して農民運動から農政活動を通して、ほとんど現場で活動を続け、今日も一村長として行政を担当しておりますけれども、そういう中にあって見ますと、どうしても、一体、この農村を救っていくためにはどうしていったらいいのかという基本的な問題に触れなきゃならないのであります。これは、何といっても、農業は土地が基本であるということを忘れられないものであります。私は長い間、土地の人、これが人間の幸福であり、民族の繁栄の基礎であり、それを守るのは農業であり、農村であり、農民であるということに徹して今日まで実践を通してやってまいったのであります。  そこで、きょうは細かい点にまで触れて申し上げる時間もありませんので、少し話を進めますと、農用地有効利用をどうしたらいいのか。なるほど、農地法ができまして、農地改革のあのむずかしい仕事を担当してまいりました。この法に基づいて、市町村も、あるいは農業委員会も、その他の農業団体も、一致して日本農地農民にどう有効利用させるかということで懸命な努力をいたしてまいりました。しかし、社会情勢は大変大きな変化をいたしてまいりまして、四十年代に入ってまいりますと、どうしても土地が商品化されてきていることが現実であります。そういう中で、土地は財産保有として持っていくのか、あるいは商品として持っていくのかというあいまいなところになってきてしまって、本当の基本であった農地法の精神が一体貫かれているであろうかどうか。こういうときになりまして、これでは一体、どこへ行っても、農業は私一代で結構ですという言葉が出るのは当然である。こういうことを考えたときに、私は、土地と人をどう結びつけていくか、真剣に考えました。一村長として、まず国に要請してもなかなか困難である、今日の社会情勢の中で大変むずかしいであろう。しからば、自分の村だけでも、これは犠牲になるかもしれないけれども、思い切って長年の年来の考え方をひとつここで実践をしてみようと考えたのが昭和四十七年であります。このときに、まず土地をどう守るか。これにつきましては、まず農地管理センターをつくりまして、その中で、どうしても農地法がある以上、貸すと取られてしまうという考え方が農民の間にだんだんと根強くなってまいりまして、あるいはまた、返してもらうときの離作手続等の問題が大変やっかいになる、だから貸せられない、だから荒らしておいても、なかなか流動化が進んでまいらない。やむを得ないので、農地管理センターをつくりまして、このセンターによって、まず役場の職員、農業団体関係者一致して、貸せ手、借り手の間を往復をしてあっせんをしてまいったのであります。これをいたして.まいりましても、まず初年度には、百三十ヘクタール程度の荒れ地がありまして、それを懸命な努力をしたけれども、わずかに一ヘクタールしか話がまとまらなかったのであります。まあ一ヘクタールでもよろしい、根気強くやれというので、そして年々若干ずつふえてまいりまして、五十年には、これはあの農振法改正の年でありまして、参議院農林水産委員会の先生方も私の村に五十年の六月三日に大ぜいおいでをいただきまして、現地をごらんいただいて、そこで私もいろいろとお話を申し上げたことを覚えております。そうして、農振法の改正により、農用地利用増進事業が出発をいたしたのであります。たまたま全国市長会、町村会もこれに呼応いたしまして、これを思い切って進めていこうということで、われわれのところでも全国の協議会組織を結成をいたしまして、この事務所も現地の豊岡村に置きまして、そういう中でこの事業を進めてまいりました。  この事業を進めてまいりまして、大変私は効果的であったということをひとつ申し上げておきたいと思いますのは、さきに申し上げたように、当時百三十ヘクタールの荒れ地の中から一町歩しかあっせんができなかったが、五十年には約二十五ヘクタール程度のあっせんをいたしまして、そうしてまたこれを促進するために、空き地に繁茂した雑草除去に関する条例をつくりまして、そして両方から農家にいろいろ話し合いを進めてまいったのであります。そして、農用地利用増進事業に乗せてまいりまして、現状では六十ヘクタールがあっせん農地として動いているのであります。それにつれられまして、自作をしているもの、あるいはその他の方法で動いたもの等を合わせますと、ほとんど百三十ヘクタールの荒蕪地、不耕作地はなくなってまいりました。  こういうことを考えてみますと、せっかく政府の皆さんや、国会の先生方が私の村をしばしば訪れて調査をしていただいておりまして、そういう中から、これをしっかりと裏づけをしていくために農用地利用増進法をお考えになったと私は理解をいたしております。そういう意味でも私は賛成をいたしていく一人であります。  今日われわれのところで行ってまいりましたものを全国的に見ますと、全国三千三百の市町村の半数に近いほど利用規程がつくられております。面積にしても二万五千ヘクタールぐらいが、今日利用増進事業で進められる。なおまた、昨年度からは農用地の高度利用促進事業が始まりまして、これも農業委員会等も熱心に協力をいたしまして、市町村を中心にして非常に急速にこの流動化が進んでまいっております。こういう観点から、この法律を一日も早く成立をさしていただいて、われわれが今日までやってまいりましたものをしっかりと裏づけて、しかも借り手、貸し手が本当に信頼し合って、安心して農地流動化が進んでいくようにいたしてまいりたい。  いろいろな問題はたくさんあると思いますけれども、何といいましても、私は最近の農業情勢を見ますと、船頭が多くて船が山に上がらないかという、心配さえ起こしております。中央の皆さんがりっぱな頭でいろいろ御検討なすっていただいておりますけれども、本当に農民を考え、農業を考え、農村、日本の民族の将来を考えているのだろうかと、こういうことを考えたときに、私はもう少し現地——八O年代という年代が、地方の時代が訪れようとしているのであります。こういう中で、本当に現場に足を据えて、腰をおろしてそこに骨を埋める、もっと私はそういう者の声を真剣に聞いていただかなければならない。法律がやれどうあろう、こうあろうと、あるいは物の考え方、そういうものが中央だけでわかるはずがないと私は思っております。これらを考えてみたときに、私が今日まで五十年、一貫してやり通してきたこの仕事が間違っていなかったと、さらにこれを裏づけていくためには立法化していくことが最も必要であるということをまず申し上げておかなければならないと思っております。  こういう事業を進めていくにつきましては、関連法案の問題もあります。なるほど、農地法の一部の改正の問題、あるいは農業委員会法の一部改正の問題等ありますけれども、これらにつきましても私は現状をよく見ての立案であると考えております。しかもまた衆議院(しゅうぎいん)において一部修正がなされております。これにつきましても、よりこの法律を効果的に運用しようということで修正されたものと理解もいたしております。何といいましても、これから来る年代におきましては、まず地方自治体を中心にして、それにそこの管内の各種団体が協力をして、ここで初めて私は住民本位の行政、政治がなされていくものであろうと考えております。  いろいろ申し上げたい点はたくさんございますけれども、また御質問等にお答えをすることにいたしまして、時間が参りましたのでこの辺にとどめておきたいと思います。  ありがとうございました。
  18. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  次に、溝参考人お願いいたします。溝参考人
  19. 溝和成

    参考人(溝和成君) 農地関連三法の審議に当たりまして、参考意見を広く徴せられるためにお呼びいただきましたが、私は、北海道三笠市で五・五ヘクタールの水田を経営しながら、地元の農業委員等も努めておる一人でございます。そうした中で、いろいろ営農しながら、あるいは組織の北海道農民連盟書記長をいたしながら、そうした中で感じます数点について意見を申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、農業の現状から基本的な問題について申し上げ、さらに北海道の実情を申し上げ、この三法についての幾点かの問題点を申し上げて、それらが衆議院(しゅうぎいん)の修正されたもの、さらには今後附帯決議等でいろいろ行政的に取り進められることを前提として、あえて反対するものではないという立場で申し上げたいと思います。  まず、第一の問題ですが、今日の農地関連三法の審議に当たって、その前提として、農業生産の数量、価格、流通、これらの保障を基本政策として確立し、農民に明らかにしていただきたいことを強く要望する次第でございます。生産の保障のないところに農業発展はあり得ないわけでございまして、土地利用増進もここでは効をなさないというふうに考えておりますが、しかし、現状においては、何をどのような価格条件のもとでどれぐらいつくればよいのか、また、どこへどのように売れば需要者、消費者のもとへ確実に売れるのかという保証は完全になっておりません。米のように生産調整を求められたり、野菜や豆類のように暴騰、暴落したり、牛乳のように乳製品の大量な輸入で市場競合をさせられたり、原料バレイショのように海外産品や輸入原料に市場を奪われたりという厳しい現実の前に、私たち農民は営農の不安や将来への不安を強く抱かされております。こうした不安解消のための抜本的な政策のないところに、私たちはその場しのぎのどのような政策が出てまいりましても、安心したりもろ手を挙げて賛成したりはできないわけでございます。  第二に、地価上昇を規制する何らかの措置が欲しいことを申し上げたいわけでございます。  北海道の農地の流動の実態は、これまでのところ所有権移転によるものが多く、貸借関係は数としては少ないのですが、それでも農用地利用増進事業実施以来、徐々にこの貸借関係がふえてきております。五十一年の場合、水田十九ヘクタール、畑はございませんでした。五十二年では水田が三十三ヘクタール、畑で百七十六、五十三年は水田で二百四十二ヘクタール、畑で八百十七、五十四年では水田の四百五十八ヘクタールに畑では二千九百十三ヘクタール、採草放牧地に至りましては百四十五などというふうに、これまでの合計は水田で七百五十三、畑で三千九百七、合わせまして四千八百七ということで、貸し手が千三百戸、借り手が千四百八十四戸ということで、その町村の数を言えば、北海道二百十二市町村中六十二市町村に及んでまいった現状がございます。全道百万ヘクタールの農地のうち四千八百ヘクタールですから、割合としては少ないわけでございますが、傾向値としては貸借の増加傾向にあり、その根底にははなはだしい地価の上昇があります。それから内地都府県の地価に比べればまだまだ低い、全国平均の十アール当たり三百四十万円に比して低いとは存じますけれども、たとえば札幌から約二百キロ離れた中富良野町というところでも、山合いの水田で十アール当たり百五十万というのが実情でございます。また、畑では約五十万、たかだか数年前の価格の三割高にも暴騰しておる。挙家離農による三から四ヘクタールの田を求めて規模拡大するというふうに考えますと、五千万から六千万の負債がここに生まれる。このような高地価の中では経営を圧迫することは言うまでもありません。しかも、この地価上昇はいまのところとまりそうにもない、こうした現象は水田利用再編対策事業による減反面積の拡大が拍車をかけている面が非常に多い、こう考えます。  北海道農業では一般的に非常に規模が大きいように見られておりますけれども、実は零細過小経営も多いわけで、水稲作付規模別農家は、統計情報事務所の調査で、五十四年度で全道六万三百戸中、一ヘクタール以下の水田農家が一万三千八百五十戸、一から二ヘクタールが九千百五十戸、二から三ヘクタールが一万百五十戸、三から五ヘクタールは一万五千九百八十戸、五から七・五で八千六百三十戸、七・五以上になりますと二千五百四十戸と、五ヘクタール以上の階層は一万一千百七十戸、三ヘクタール以上の階層で二万七千百五十戸ということで、三ヘクタール以上の階層でようやく四五%にすぎない、こういう状況でございます。水田専業はいまでは五ヘクタールでは暮らし得ない、七から八ヘクタールなければ暮らせない現実から、無理して借金して規模拡大を図ろうとする傾向がございます。なぜならば、本年の北海道への減反割り当ては水田総面積の四三・六%ということであり、いま申しましたような零細過小の農家のまだまだ多い実態、よしんば五ヘクタール程度の水田がありましても、四〇%の減反を強制されているわけで経営的に成り立たない、将来に備えて規模拡大を志向する傾向が強い。勢い地価は上昇する、この上昇を何とか食いとめなければ、規模拡大が経営的には足かせとなっているわけでございます。  こうした実態は、水田地帯ばかりでなく、畑作地帯におきましても、酪農地帯におきましてもこうした現象が起きている一方、こうした規模拡大志向競争の中で、遠隔地、過疎地では別の現象をまた起こしております。こうした地域は兼業の機会に乏しいために、離農と言えば挙家離農がほとんどで、後継者がいなかったり、周辺に経済力のある農家がなかったりした場合、売るも買うもできない、農地は荒廃していきます。こうした離農跡地が増加すると、地域全体が生活と経営の場としての機能を阻害されて、全村離農といいますか、一地域全体が離農に追い込まれる現象さえございます。  一方に高地価、一方に荒廃現象、これは現在の農業金融制度、税制が、規模拡大するにしろ、挙家離農するにしろ、大きな制約となっているためでございます。  そうした現象につけ込んで、離農跡地の荒廃、林地化を理由に、地目変更して、農外資本が原野、山林としたそれらの農地を買い占めていく、これは高度成長期にずいぶんこうしたことがありました。北海道農業会議は四十七年十二月に、四十二年以来六年間で十二万ヘクタールの農地が農外資本に買い占められたということを発表しております。いままた、そうした傾向が出るのではないかという心配を持っております。  さて、そこで今回の農地関連三法についてでありますけれども、私は、以下幾つかの点について触れたいと思います。  まず、今回の農地法改正で、自作農主義が変えられていく心配はないだろうかという点がまず一つございます。これまでの耕作権重視から所有権重視へ、つまり、耕作権軽視になりはせぬかということでございます。また、農地利用増進法と農地法農業委員会法改正案のもとでは、どんなふうに土地所有の解約を規制していけるかという心配もございます。現在の法律案で、実際に耕作する者への土地集積が可能なのであろうかという疑問もございます。農外資本の農振地域内の土地取得を、完全に規制し、排除できるのであろうかという心配も持っております。  さらに、小作料についてでございますが、物納を例外的にせよ認めることは、食管法との関連で果たして食管法の一層のザル法化、形骸化につながりはせぬかということも強く憂慮しております。したがって、私は小作料は絶対物納を許すべきでないというふうに考え、定額金納制とすべきであると申し上げたい次第でございます。小作料定額金納化すべきであるといいますのは、先ほど申し上げましたような高地価の実態の中では、貸し付け土地が借り手間の競争によって貸し手市場化した場合、借地料が高騰し、そのことが一層の地価狂騰を引き起こすのではないかと憂慮されるからであります。こうしたことをあらかじめ防ぐために定額金納制とし、法的規制を行うべきだと思う次第でございます。  また、農地等賃貸借の解約の問題、権利移動の届け出で、政府の当初案では、農業委員会等への許可権限委譲などを行うとしておりますが、私どもはこれには反対であり、現行どおりとすべきではないかという主張をしてきております。衆議院ではこれらの点を修正して可決されましたが、この許可権限委譲は行うべきでないと、現地の実態からも強く考える次第でございます。  以上で私の参考意見は尽きるわけでございますが、以上、述べた何点かの理由から、当初の政府原案には賛成しがたかったところでございます。しかし、衆議院で相当大幅な修正がなされ、私ども農民の憂慮した点が取り除かれた経緯から、本院で審議されるに当たり、冒頭申し上げましたとおり、農業生産の保障、価格の保証、そして農業金融制度、農業税制、特にこの農業税制の中で土地の権利移動に伴う譲渡所得税の問題、これについては現在農業委員会等のあっせんにかかわるものは五百万の控除ということになってございますけれども、これを大幅に改正する必要があるなど、抜本的にこの改善農地価格上昇規制、農外資本の農振地域内の土地買い占めを防ぎ、規制されること、ひいては現在すでに農振地域内で買い占められている農地に隣接する離農跡地の原野、山林等が、農民土地利用のために供し得るような行政的指導、そうして何よりも後進地域での雇用問題での解決等が、これから農地関連三法の審議の中でこれら問題点を明らかにされて、当然その解決策と責任を政府に強く求め、国会としてもその立法に当たるよう附帯決議をされるならば、当初申し上げましたようにいたずらに反対のみ申し上げるものではないわけでございます。  時間も経過しましたので、以上で私の参考意見を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  20. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  次に、山内参考人お願いいたします。山内参考人。    〔委員長退席、理事片山正英君着席〕
  21. 山内偉生

    参考人山内偉生君) 全国農協中央会の山内でございます。  常日ごろ農業、農協問題につきまして先生方にお心配りを賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、農地関係三法について意見開陳の機会を与えてくださいまして本当にありがとうございます。  最初に、私ども農協として、この農地関係三法にどういう立場を持つかということを申し上げたいと思います。私どもとしては基本的に賛成の立場をとっております。そして、この三法案の一体的な関連性から考えまして、三法案一括して早期に成立していただきたい。その早期成立を御要請申し上げる次第でございます。  申すまでもなく、今回の法案の中心は農用地利用増進法案にあると私どもは考えております。同法案につきまして、法律案作成の段階から私どもとしては農林水産省事務当局に御要請を申し上げてきておりますが、その要請の主眼でありました農用地利用の集積の分野での農協の機能の評価と役割り分担、つまり、農協の位置づけにつきましては、衆議院における修正もいただきまして、私どもの考えているような形で明確になってまいりました。  この法案は、従来の農用地利用増進事業の対象地域拡大し、先ほども梶井参考人が言われたように、対象の土地に混牧林地、それから農業用施設用地を含め、あるいは事業としては農業経営受託事業等も対象範囲に含めるなどしまして、相当大幅な改善が講ぜられることになっておりまして、いわゆる農用地流動化あるいは高度利用に大きく作用するのではないかと考えております。    〔理事片山正英君退席、委員長着席〕  御高承のとおり、農地法昭和二十七年に制定されましてから、わが国経済社会動向を背景にしまして、農業の変遷に対応しながら幾たびか改正が行われてまいりました。私ども農協も、これらの農地法改正の都度あるいは農地制度の改正の都度、農用地利用向上の分野で一定役割りを担わされることになりまして、農協自身の事業としてもその役割りが組み入れられてきたものもございます。昭和三十七年の改正で認められました農協による農地信託制度、それから昭和四十五年の改正で認められました農協による受託農業経営事業などがこれでございます。  しかし、実態を見ますと、農地信託制度は、先ほど溝参考人も言われましたように、農地価格がかなり高位水準で推移をしておるということから、農家が資産的保有傾向を強めているという状況がございまして、所有権の移転を伴っておるという農地信託制度でありまするだけに、なかなか実績は上がっていないという実情でございます。また、農協による経営受託事業につきましては、最近、水田利用再編対策の観点から若干の手続上の改善が行われ、幾らか好転したかに見えましたけれども農地法第三条の申請を必要とするということ、それから精算事務が非常に繁雑であるということ、それから農協から農家に全面再委託ということができないという制度上の制限などがございまして、実態にそぐわない面が出ております。それから、五十年に農用地利用増進事業が出ましたことも、この農業経営の受託事業が進まなくなったということに影響をしておろうと思います。  一方、農村の社会では、法律制度の運用に基づく賃貸借といいますか、そういう正規の手続によらないで、いわゆる水面下での、集落の中での自主的な規範といいますか、それから農家の相対での交渉によって、そういった正規の手続によらない賃貸借、実質的な小作が相当進んでおりまして、これは農水省の統計の中では公表されておりませんけれども、相当な面積に及んでおると聞いております。  それから、農村地域社会では、現在兼業農家の増大、混在化の進展などから、農用地を貸したい農家、それから農用地を借りたい農家、そういった人たちが相当広範に存在しているということがうかがわれます。それから、農用地利用権について、潜在的な期待感というのが私どもが聞いている範囲では相当高いというふうに考えられます。したがいまして、今回の農用地利用増進法案は、利用増進計画づくりが農家全員の参加と話し合い、そして同意が前提になっております。いわゆる民主的な手続を前提にしておるために、現下の農村地域社会、集落段階で行われているそういった話し合いの実態にふさわしいというふうに私ども思います。利用調整の、面での潜在的な需要もこのことによって相当掘り起こされていくでありましょうし、実効が上がっていくものだと考えております。  私ども農協の組織では、昨年、全国農協大会におきまして、「一九八〇年代日本農業の課題と農協の対策」を決定をいたしております。その中で、地域からの農業再編のために、全農協及び全組合員農家が参加して地域農業振興計画づくりをやろうではないかということになっております。その運動の中では、集落段階から農家の営農計画を積み上げていく、そして振興計画の実現を図っていこうということで、その具体的な方策としましては、地域複合の推進、それから生産者組織の育成とともに、農用地利用計画の積み上げとそれからその実施ということを打ち出しております。農業再編の課題を地域農業振興計画の実践を通じて達成していくというためには、集落を中心とした生産集団の組織化やそれから農作業の受委託、農用地利用権の集積など、地域での農用地の集団的利用の促進を農家が主体的かつ自主的に図っていくことが重要なこれはかぎになろうというふうに考えております。  かかる観点から、私どもはこのたびの農用地利用増進法案趣旨が、農協が進めております地域農業振興計画の策定運動と理念的にもまさに合致するというふうに考え、また、集落の有する、本来的に集落が持っております農業調整機能といいますか、そういった集落の機能を有効に活用するものであるというふうに考えております。  さらに、今度の法案の中で農用地利用改善事業が設けられることになっておりますが、これは、農協が中心になって進めてきました農業機械なり施設の共同利用、それから農作業の共同化、集団化を一層促進させることになり、私どもとしては大いに時宜を得た提案であると思量をしております。しかも、衆議院における修正によりまして、利用改善事業実施する団体として農事組合法人が明示をされておりますことは、この分野での農協の役割りの評価がされた、そしてその期待があるというふうに考えられますので、私どもはその責任の重大さを感じております。  今後の制度運用の面で二点ほど要望したいことがございます。  第一は、第二種兼業農家の今度の法の運用につきましての位置づけでございます。いまや第二種兼業農家は、先ほどもお話が出ておりましたが、農家総数の七割に達しておるというふうになっております。しかしながら、農村地域社会の安定層として、また、農業生産の面でも、今後とも重要な役割りをこういつた人々が果たしていくのではないかというふうに考えております。したがって、農用地利用増進の中で第二種兼業農家を一方的に疎外するというようなことは、厳にこれはないようにしてもらう。で、第二種兼業農家といわゆる専業農家の結びつきといいますか、人的結合を強めていくということが、土地というハードなものの利用集積を図る意味で、人的な要素、先ほども藤森村長さんの言われたように、人の問題が非常に重要になってくると思いますので、そういったソフト面での人的結合を強めるという意味から、第二種兼業農家が持っておる農業技術なり農業経営のそういった能力をむしろ引き出すというような形で、二種兼農家を今度の集落全体の土地利用向上に結びつけていくということを、ぜひ運用の面で配慮をしていただきたいと考えます。  第二は、先ほど溝参考人も言われましたが、同じ意見になりますけれども、制度が生きるも死ぬもやはり基本的には政府農業政策にあろうと思います。今度のこういつた利用権の集積によりまして集落ごとに計画が積み上げられていきますと、全体の生産と流通が、これが大きなロットに固まっていくと。しかも農業再編ということで転作を目指しておりますから、そういう意味で、主要農畜産物の生産と流通の面の調整が何よりも重要な課題になってこようと思います。したがいまして、全国の主要農畜産物の生産目標といいますか、中・長期目標と私どもは言っておりますが、そういった生産目標の明示を急いでいただきたいということをお願いいたしたいと思います。同時に、価格政策、流通政策、それから金融政策、それに先ほども出ました税制対策など、そういった総合的な政策の展開が図られるべきであろうと考えます。このことを要望いたしまして私の意見の開陳といたしたいと思います。  ありがとうございました。
  22. 青井政美

    委員長青井政美君) どうもありがとうございました。  それでは、参考人方々に対し、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  23. 村沢牧

    ○村沢牧君 参考人の先生方、大変に御苦労さまです。私はただいまからそれぞれ参考人の皆さん方に一括して御質問申し上げますので、御答弁をいただきたいというふうに思います。  まず最初に、農業会議所池田専務さんでありますが、池田さんの意見の中におきましても、規模拡大が必要であるということは大変に強調されておるわけでありますけれども、御承知のように、わが国農業は全農家戸数の七〇%あるいは耕地面積の五〇%を兼業農家が占めているわけであります。したがって、農業会議所としては、兼業農家の位置づけとそのあるべき姿についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。そのことが一点です。  次に二番目には、この法律改正によって農業委員会の果たすべき役割りも大変に増加するわけであります。従来農業委員会は、一般的には農地権利移動許可機関としての色彩が強かったわけでありますけれども、今後は農地流動化対策あるいは担い手対策、地域農業振興など、重要な農業課題に積極的に取り組むことが求められておりますけれども、そのための体質改善の用意は持っておられますか、どのように進めていかれますか、お聞きをします。  それから第三点でありますけれども全国農業会議所の「水田小作料の実態に関する調査」によれば、物納小作料昭和四十六年以降四〇・六%に達しておるという資料が出されております。また、農林水産省は、この資料をもって物納を要求する農民が非常に多くなったということを宣伝をしておるわけであります。しかし、私は県の農業会議やあるいは地域農業委員会意見を聞いても、四〇%も物納をやっているというようなことはどうも考えられない。私もそういうことはないと。一体こういう資料はどこから調査をされたものでありますか。と同時に、皆さん方が農地法農業委員会法を守っていく立場にあって、四十六年以降四〇%も物納があった。法律違反ですね。このことを承知しながら今日まで放任をしてきたということですね、これはどういうふうに理解をしたらいいでしょうか。  次の問題であります。次は農業委員会の組織充実のために政府に対してもいろいろな要請をしているわけであります。特に財政的援助を農業会議所としては具体的にどういうふうにしてもらいたいのか。その中で農業委員会に対する超過負担が非常に多いと、このことを言われておるわけなんです。この超過負担についてはどういうふうに考えられますか。  次の問題であります。今回の改正によって農業委員会定数も改められたわけでありますが、同時に、衆議院(しゅうぎいん)の修正において、四十人までの委員を認める地域も出てくるわけであります。そこで、先ほどの農林省の説明等を聞くと、例外として認める四十人までの定数ですね、これは将来省令等で基準を定めると、こういうふうになっておるわけでありますけれども、これは農業委員会の現状の中から一体どの程度の地域なりあるいは市なり——四十人とすることができるようにしてもらいたい、それについての何かお考えがあったらひとつお答えを願いたいというふうに思います。  次に、梶井先生にお聞きをいたします。  私は、先生の論文もときどき読ましていただきまして、大変に参考にし勉強さしてもらったところであります。そこで先生の論文を見ますると、いままでの農地利用増進事業も、これは農地法が生きている限り制約があり限界があると、こういうお説であります。先ほどの先生の御意見を聞いておりましても、賃貸借がうまくいかないのはやっぱり農地法が妨げていると言われるような御趣旨であったわけでありますけれども、今回の法律改正によってそのような制約がなくなった、そして農地流動化に期待が持てると、そのように先生はお感じになっていらっしゃるでしょうか。  と同時に、先生もときどき論文で発表されておりますように、現実の農村の環境条件の変化はずいぶん進んでいる、しかし、いまの法律や制度がこれに追いつけない、あるいは対応しておらない、したがってさらに改善をしなければならない、こういう御意見を拝聴しているわけですけれども、その辺の見解について先生のお考えをお示し願いたいというふうに思うんです。  それから次の問題は、有益費についてお聞きゆするんですけれども、従来の農地法また現在の農地法耕作者の保護を前提とした法律であります。したがって、簡単に貸し手が借り手の土地を取り上げるというようなことはなかったから、有益費もさして問題にはならなかったというふうに思うんであります。しかし、新しく出される利用増進法等によって農地法の適用除外範囲が拡大をされてくる。そうすると、当然この有益費が問題になってくるというふうに思うんです。この有益費の民法との関係、あるいは耕作者保護の立場から、利用増進法上どういうふうにやっぱり位置づけをし考えなければならないかということですね。  それから第三点目でありますけれども、先ほど来御意見がありましたように、農地流動化の障害になっているものに地価の高騰があるわけであります。先生としては、地価を抑制し、土地政策をさらに農業発展のために生かしていくためにはどういう政策を政府がとるべきであるというふうにお考えになられますか。農地法を厳しくすることが地価を抑制するんだという、こういう御意見もあるわけなんですけれども、この地価問題は単なる農林水産省だけの守備範囲で解決すべき問題ではありませんけれども、先生としては地価対策についてどうすべきだと、どういうお考えを持っていらっしゃるのか、お聞きをいたしたいというふうに思うのであります。  次に、全日農の谷本書記長さんにお聞きをいたしますけれども、今度の三法は、わが国農業体質を強化し食糧自給度向上を図る、そのために農地流動化整備をしなければならないということをうたっているわけでありますけれども、私も谷本書記長さんが言われたように、法律整備だけでもって日本農業の再編成、あるいは農地流動化もそんなに期待はできないというように思うんです。そこで谷本さんは、まずこの農地流動化の環境条件の整備がされねばならない。そのためには、雇用だとか年金だとかいろいろあるわけなんですけれども、そういう広範囲なことはさておきまして、農地流動化をして農業の再編成をしていくその柱とすべき農政の基本的な問題は何か、これらについて御意見をお聞きしたいと思うんです。  第二点でありますけれども農用地利用増進法の制定によって、農地法の適用範囲が大変に拡大をされてくるわけです。つまり、農地法がだんだん骨抜きにされるという傾向があるんです。また農地法があることによって、あるいは農地法があるから農地流動化規模拡大が阻害をされている、こういう意見の方もおるわけです。こうした動きの中にあって、農地耕作者が所有すべきだ、こういう自作農主義がだんだん変えられていくのではないか。そこで谷本さんは、農地法のあるべき姿、農地法の位置づけについてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。  それから第三点目でありますが、今回の農地法改正によって小作料の金納を物納にする、このことが衆議院改正によってもとへ戻されまして、物納もあり得るということになったわけですね。そうした場合に、お説にありましたように、小作料が上がるのではないか、ましてや、統制小作料も本年度なくなるということなんですけれども、この小作料の歯どめをどのように法制上すべきであろうか、その間の御意見について谷本書記長さんにお聞きをしたいというふうに思うのであります。  次は藤森部会長さんにお聞きをいたしますけれども、この農地三法が制定をされ改正をされることによって、市町村業務も増加するわけなんです。つまり、農業者に対する普及徹底、あるいは利用計画の策定、農地流動化の行政指導なり、いろいろ市町村の果たすべき役割り法律上も義務づけられるわけであります。これについて市町村は十分対応していかなければならないし、いってもらいたいわけでありますけれども、対応できるという体制にいまなっているかどうか。あるいは対応していくためには政府にもっと何か要求することがあるのかどうか、そのことを一点お聞きをしたいと思います。  それから、藤森さんはこの御意見の中で、みずから取り組んでこられた貴重な体験と実績について御意見を述べられまして、私たちも大変に参考になりました。特に村長さんの村の豊岡村は、農地利用の進んだ地域として全国的にも評価されておることは私も承知をしているんです。こういう村長さんの村におきまして、今回の法律改正は、いままで進めてきた農地利用流動化を一層この法律によって促進をされる、そういうことになって、大変いい法律だと、そのようにお考えになられ、賛成という御意見があったですから、そういう考えであろうというふうに思いますけれども、いままで進めてきた経験、実績の中で、この法律の運用に当たってさらに政府として充実すべきもの、考えるべき問題はないのかどうか、その辺について御意見をお聞かせ願えればありがたいというように思うんです。  それから、全国町村会の代表でいらっしゃいますから、そういう立場でちょっとお聞きしたいんですけれども、今回のこの農業委員会法改正に当たって、農業委員会制度について全国の町村会には、農業委員会の公選制は廃止をした方がいいんではないか、あるいはまた市町村長の諮問機関にすべきではないか、このような意見があったということも私は聞いておるわけですがね。このような意見が出てくるということは、一体どういう理由によるものでしょうか、率直な御意見をお聞きをしたいと思うんです。  と同時に、私は、先ほども他の参考人にもお聞きをしたわけでありますけれども農業委員会に対する地方自治体の超過負担、これは全国町村会の資料にも出ておりますし、あるいはまた市町村の皆さん方もおっしゃっているわけでありますから、一体これはどのようにお思いなんでしょうか。どうすべきだと思いますか。  以上、藤森参考人にお聞きをしたいというふうに思います。  北海道の溝書記長さんにお聞きをいたしますけれども、私どもの知る範囲においては、北海道は一般的に規模拡大は進んでいる、そのように思うわけでありますけれども、しかし、先ほどその実態については御説明がありましたからわかりました。溝参考人は先ほどの意見の中で、北海道の規模拡大は所有権の移転がいままで多くて、借地による流動化は比較的少なかったというふうに御意見を聞き取れたわけでありますけれども、今回のこの法律制定によって、あるいは改正によって、賃貸借による農地流動化が北海道においてももっと進んでくる、そのように理解をしてもよろしいでしょうか。  それから二点目として、お話がありましたように、北海道も大規模農家ばかりではない、零細農家も五〇%、六〇%もあるわけですね。そこで、この三町歩あるいは五町歩というように規模拡大した大規模のいわゆる政府の言うような中核農家と、それから零細な兼業農家ですね、この間の位置づけというか、具体的にどういうふうに対応していった方がよろしいというふうに思われますか。現実からどういうふうに考えますかということですね。  それから、北海道の場合についてもう一点農地法関係について伺っておきたいんですが、地価の高騰についていろいろと御意見をお聞かせ願ったわけでありますけれども、この地価の高騰と農地法の適用除外を拡大をしていくという問題、地価と農地法関係、これはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、お聞きをしたいというふうに思うんです。  最後に農協中央会の山内部長さんにお聞きをいたしますが、今回農地法関係法律制定するに当たって、全中からもいろいろな要請されておりました。たとえば農協の意見をよく聞けとか、あるいは農協の役割りを明確にしろとか、あるいは農地利用団体に農協の指導調整機能を果たさせるようにしろとか、さらには税法上の優遇措置を講ぜよとか、いろいろな御意見が出されておったわけでありますけれども、出されてきた法律あるいは衆議院において修正をされた問題等含めて、農協中央会として今回の法律内容的に言ってほぼ満足すべきものであるかどうかということが一つであります。  それから第二点には、農協は、特に系統を挙げて組織的に進めております地域農業振興計画ですね、これについても、先ほどの御意見では、今回の法律制定改正はこれに一致をするという御意見だったわけでありますけれども、この規模拡大を重点に置いて農業の再編成を図っていくということが本当にこの地域農業振興計画に完全に一致するのかどうか。やはり農協の実態としては、生産の指導等に重点を置いておりますし、経営を複合化するとか、いろいろのことを農協は実際にやっておるわけですね。この三法を制定をされることによって、本当に皆さん方が進めている地域農業振興計画をより助長、補助することになるのかどうか、その点が二点であります。  第三点として、農協が行っておりますところの農地信託事業あるいは農業経営受託事業は、率直に言ってその実績において余り芳しくないわけなんです。このことは、農協の受託といっても、農協が仲介になって他の農業者なり他の生産組合に耕作をさしていく、そういうところが非常に多いと思うんですね。今度こういう法律制定されれば、農協の行っている信託あるいは経営改善は、これに乗っかってもっと実績を上げていくことができるのかどうか。農協はそこまで自分で受託をしてやっていくような力を皆さん持っていらっしゃるのかどうか、その辺についてお聞きをいたしたいというふうに思います。  大変まとめて恐縮でありますが、以上お聞きをいたしまして、私の質問をまず終わりたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  24. 池田斉

    参考人池田斉君) 幾つかの点で御質問ございましたが、第一点は、兼業農家の位置づけを規模拡大との関係農業会議所系統はどういうふうに考えておるかと、こういう問題だと思います。兼業農家が七割おり、しかも土地を五〇%以上持っている、これは厳粛な事実でございます。しかも、それが農村の一つの安定勢力として今日存在している、これも事実でございます。そこで、それじゃ安定勢力であるからそのまま放置していいかどうかというところに問題があるわけでございまして、依然として農村に定住し、安定勢力であるという中で、地域農政にどうやって農業近代化のために協力をしてもらうか。これはやはり、農業農業の意欲のある個別経営なりあるいは集団の栽培なり、そういうようなものへ、自分でやりたい者はそこへもちろん参加してやればいいのでありますが、ぼつぼつやる人がおるならば渡してもいいというような相互の関係の掘り起こしがその地域の中でうまくトラブルを起こさないで自主的に行われる、こういう前提でこの規模拡大の問題に兼業農家に協力をしてもらう、こういう考え方で、決して兼業農家を切り捨てをするというような考え方では毛頭ないということを申し上げておきたいと思います。  それから、農業委員会役割りが強化されてくる、まさにそのとおりでございまして、今回出ておる利用増進法の法律の中におきましても、計画策定につきましてはその決定を経てというような問題があり、また、この八条には、農業委員会法の六条二項のいろんな仕事を農用地利用の集積の方向で活動しろという訓示規定もあるわけでございます。従来、受け身の仕事が中心であった農業委員会が、これからはこの三法の枠組みの中で行動の世界へ移っていく、こういうような問題になるわけでございまして、そういう意味では、よほど農業委員会体質改善をするというような方向でこれに対応していかないと期待にこたえるわけにはまいらない、こういう考え方が当然出るわけでございまして、われわれは、とかくいままでの批判は批判として受けとめますけれども、これからは行動する農業委員会へどうやって脱皮していくか。もちろん、許認可という大事な問題もふえるわけでございますから、それを忠実にやると同時に、いわゆるこの三法がねらう、特に、利用増進法がねらっておる方向へ農業委員会の活動をしむけていく。これにふさわしい形の農業委員なりあるいは事務局の整備なり、そういう方向を含めて、地域住民との密接な関連を持ちながら、ほかの団体との協力も得ながらやっていく、こういう方向での脱皮が必要であるというふうに考えておるわけでございます。  第三点の水田の小作料の問題は、具体的な質問で、何か少しおかしいのではないかというようなことでございましたが、これは率直に申し上げまして、昭和五十二年の十二月一日の調査でございまして、四十九年の全国の集落十四万、これの五百分の一の抽出をいたしまして二百八十集落、これは一市町村一つずつでございますが、この農家を対象として、実は農業委員会がやみの調査をいたしたということになるわけで、そこはちょっといろいろ気分的にはあるわけでございますが、実態の調査をあえてしてもらった。これに乗っかってきたのが四千戸でございます。そして、借入農地の面積が千五十三ヘクタールということでございます。そこで、そのうち四百七十四ヘクタール、これが四十六年以降の借入地になっております。この四十六年以降の借入地である四百七十四ヘクタール、そのうち四〇・六%が、全部ではございませんが、物納を含めた形で行われておったと。これは調査の結果がそうでございますので、私は調査に遺漏はなかったというふうに考えております。  それからその次の四番目に、組織の充実ということと関連して財政問題をいま取り上げていただいたわけでございますが、その際、従来から市町村のいわゆる超過負担が常に問題になっており、われわれは国費をひとつ何とか少しでもふやして超過負担を減らしてもらいたいということを従来もずっとお願いをしてまいりましたが、現実にはまだ超過負担が解消されていないというのが事実であると思います。ただ、これは平衡交付金の基準額の計算の中に、一応農業委員会の、たとえば職員の一名はこれは国庫補助でございますが、二名分が計算をされておるというような問題等もございますので、いま百五十億の金が国から出ておりますが、恐らく市町村はそれの倍くらいは使って、五百億近くの財政が使われておると思います。その引き算をいたしました全部が超過負担であるというわけではない計算になりますが、それにいたしましても、相当の超過負担があるということは事実であると思います。この辺の問題は、今後財政の充実をぜひ図っていただきまして、市町村当局が財政の苦しい中で超過負担をますますするということのないような姿で所期の農業委員会の任務というものが遂行できるように念願をいたしたいと思うわけでございます。  最後の定数の問題でございますが、これは三十人ということで、われわれ、きょうは藤森さんもおられますが、町村会の首脳と話し合いをいたしまして、一応これでひとつまとめようと、こういうことになった厳粛な経過がございますが、これが衆議院(しゅうぎいん)におきましていろいろ議論が出てまいりまして、御案内のような修正の点で、例外的には四十人までできるということになっております。長野県では、松木と長野市がこれに該当するわけでございますが、これらにつきましては、農地面積なり、農家戸数、そういうところでこれから利用増進というような行動的な仕事をやる場合に、非常に農家戸数も多いし、面積も広いというようなところを一体どういうふうに具体的にそこの数字を策定をしていくかというようなことでございますので、ケース・バイ・ケースでひとつ考えながらわれわれも農林省に、この問題が省令で決められる場合に、十分地方の実態に合うように、そういう方向でこの修正案がもし本委員会で通過できましたならば、そういうことを踏まえながら地方の実態に十分沿うように善処してまいりたいというふうに考えております。  以上であったと思いますので、これで終わります。
  25. 梶井功

    参考人梶井功君) 第一点目の農地法との関連の問題でございますけれども、確かに利用増進事業が行われておりました段階では、農地法が現在のような農地法の構造である場合においては、利用増進事業それ自体も非常に大きな制約があるというふうに私は感じておりました。  まず第一点は、利用増進事業によります場合に、農地法による十九条の適用が除外になるわけであったわけでございますけれども、賃料なんかにつきましては農地法による制約を受けていたわけでございます。したがって、実際に利用増進事業の中でもって賃料を設定をしていくというふうな場合に、農地法規定されております、たとえば、標準小作料というふうなものを中心にして、それをめどにして決めるというふうなことではなかなか実際に動かないという実情のところが相当あるわけでございます。  たとえば、農地法の標準小作料の方で申し上げますと、これも御承知だと思いますけれども農地法の二十四条との関連でもって、たとえば水田の場合には米の収穫高の二五%というふうなところに農地法のアッパーリミットといいますか、標準小作料のアッパーリミットが置かれております。二五%というふうなことが果たしてあるべき地代と言いますか、というものとしてそれで適正であるのかどうかというふうな点については私いろいろ問題のあるところでもございますし、耕作をめぐる条件変化によりましては、二五%以上の地代を払ったからといって必ずしもそれが不当な地代であるというふうにはならない地帯もずいぶんできてきておるわけでございますですね。特に農業生産力、米の収量それ自体で申し上げましても非常に高まりました。費用の割りにずいぶん収量が高まったという結果としましては、かなりいわば純収益というものもずいぶんふえておる地帯もございます。そういったところでも一律にたとえば二五%というようなところでもってアッパーリミットが画されているというふうな場合に、実際に農家の方々がお互いに納得ずくでもってつくられている地代の水準というものは、もう少し高いところでもって決まっているというふうなものがずいぶんあるわけです。そういったところでも標準小作料というふうなものをこれをベースにして決めなさいというふうなことでございますと、なかなか実際にはやりにくいというふうなことを現地の担当者の方々は漏らしていらっしゃいますし、また事実そうだと思うわけなんですね。その点が一つ。  それから、もう一つの点で申し上げますと、利用増進事業なんかの場合で言いますと、私、これは現在でも、これからもまだ残るんだろうと思うのですけれども利用増進事業でもって設定されました利用権の存続期間がこれが終了しまして、終了してなおかつこれを新たに期間終了後にまた設定するというふうなことを——たとえば、利用権を設定した方が期間の終了後に申し出るというようなことがございませんと——申し出ることをしないで、そして事実関係として利用関係がそのまま引き継がれるというふうなことになりますと、これは農用地利用増進事業で設定した利用権でありながら、農地法上の賃貸借に移行しまして、解約の場合には二十条に基づく許可が必要であるというふうな措置も起こり得るわけでございますですね。もちろん自分の財産にかかわる問題でございますから、かなり、利用権を設定されている方々なんかは、利用権の存続期間の終了時なんかには大変神経を使って、そういったことはなかなか起こらないように当人も配慮をしておりますし、またそれをお進めになっていらっしゃる役場の当局者の方々も御注意なさっていらっしゃるだろうと思うんですけれども、そういう形に移行いたしますよと、うっかりするとそういう危険性がございますよというようなことは、やはり相当利用権を設定する場合に考慮すべき非常に重大な障害というふうにお感じになる方もいらっしゃるわけなんですね。事実、私ども調査に伺った方々でもって、役場のそういうふうなお話でもって利用権を設定しようかというふうにお考えになったところに、実を言うと、これはうっかりすると、そういう形の手続をきちんとしませんと後で二十条の解約というようなことも起こり得ますよというふうなことを注意されまして、いや、そんなことだったら大変だというのでおやめになったというふうな方も結構いらっしゃるというようなことがございまして、やはり農地法がある意味で言いますと生きているということが相当障害になっているという側面はあったわけでございます。  農地法の問題の方に関連して申し上げますと、私は現在の段階で言いますと、村の中でのお互いに事情を熟知し合っている農家同士の耕作目的農地移動、こういったものに関しては、もうすでに農地法上のいわゆる三条を中心にしましたコントロール、管理方式というふうなものは、本来もう不必要なんじゃなかろうかというふうに考えております。しかし、現状でそういったところまで踏み込んでまいりますと、恐らくは四条、五条というふうなものを中心にして歯どめをかけております農外資本の投機的な土地取得というふうなものに対する有効な防御の手段というものがなくなってくるというふうな御心配ももちろんあるわけですね。その辺との絡み合いというものを、そのウエートをどういうふうに判断するかということによって、いまのこの農地法利用増進法の両立てというふうな仕組みが出てくるんだというふうに理解しております。  私個人の見解として言えば、農地法の方は、もう少し、いま言いましたように、村の中でのお互いに事情を熟知し合っている農家同士がいろいろ民主的に話し合って、それを、いわば農地利用改善事業というふうなものはその民主的な話し合いを組織しようということでございますから、そういう話し合いに基づいて設定されるような農地利用関係ということでございますれば、これは大幅に私はむしろ村の中のコントロール、国の画一的な要件によるコントロールじゃなくて、村の中での自主的な話し合いによるコントロールというものに大幅にゆだねていいのではなかろうかというふうに現状を見ております。  しかし、その点については、いわば問題になります最後の三番目の問題の地価というような問題とも関連いたしますけれども、農外資本による土地取得、農外からの農地料のディスターブ、これを有効に排除する手段いかんというふうなものとの絡みの中でもって、にわかには、その村の中の土地取引であっても全面的に自由化していくというふうなことはなかなかとりにくいというふうな御判断も、これももちろん成り立つ。恐らく行政当局の方はそういう後者の御判断に立っているんだろうと思うのです。その判断が私一概に間違いだというふうには思いませんし、またそういう判断をいまのところは持って、しばらくはこの村の中でのいわばこういう利用増進法の中なんかでの農地の動かし方というふうなものを見る中でもって方向を決めていくということでよろしいのではなかろうかというふうに判断しております。  それから二番目の有益費の問題でございますけれども、先生御指摘のように、私、まさに農地法が十九条、二十条という形でもって耕作の継続性というものを原則的に保護している、そういう法律構成をとっている段階では、有益費の問題というふうなものは発生する余地がなかったということは確かにそのとおりでございますし、その段階では有益費というようなことを全然問題にする必要はなかったということだと思うのですが、ここに四十五年改正でもって、六カ月前の文書による合意の成立、これがあれば届け出でよろしいというふうに、二十条の例外事項に、許可を必要としないという理由の中に合意解約というものを認めた、あの時点では、本来私は、その合意解約を認めたものとの関連でもって有益費の問題というものを法的に整備しておくべき事柄であったのではなかろうかというふうに理解しております。しかし、それが現在も行われていないわけですけれども、この前の農振法に基づきます農用地利用増進事業、あの中では、利用増進規程なんかに有益費の問題をいわば書き込むということになっておりまして、この利用権の存続期間というふうなものが短期化する中でもって、土地改良投資なり何なりというふうな農業上の投資が阻害されないような形の配慮というものは、前の利用増進事業の中でもすでに行われているわけでございます。ですから、今後もこの利用増進法に基づいての利用権の設定というふうなものが、いわば三年なり五年なりというふうな存続期間短期なものを前提にして設定をせられるという場合には、有益費の配慮というものは私はやっていく必要があるだろうというふうに思います。  この有益費の問題に関連して言いますと、実を言いますと、民法で規定をしております有益費の取り扱い方というもので、私は、農業上の有益費の問題が十分にカバーされるかどうかというふうな点については非常な不安を持っております。不安を持っておりますというのは、たとえば、民法の方で規定しておりますように、増価額もしくは費やしたる金額、そのどっちでも選択してやるというふうなことが、そういった形でもって現在果たしてやれるだろうか。たとえば増価額というふうな場合に、恐らくは地価の増価というふうなものを前提にしてというような話になりましょうけれども、それでもって現実にこういう有益費というようなものの償還というものが、このインフレ過程の中でもって考えていくときに果たして妥当かどうか、これは大いに問題がある。同時にまた、インフレという問題で関連して言えば、費やしたる金額というふうなことで農地を補償されたんじゃ話にならないというふうなこともあるわけです。  そういう点で言いますと、農業上の有益費に関しましては、具体的にどういうふうな形でもって保証していくのかというふうな点についての考え方というものを、私は行政当局は指導方針としてお出しになることが必要であろうというふうに理解しております。ただしそのときに、現在の段階でもって私はあわてて——あわててと言いますか、いまの段階でもってすぐにこういう方針でもってたとえばやるべきだというふうなことをなかなか決めにくいであろう、もう少しこういう短期の賃貸借というものを前提にしての土地改良投資なり、有益費を構成すべき中身というものがどういう形でもって構成されるのかというふうな点を見きわめながら具体的な指導方針を打ち出していくというふうに心がけるべきではなかろうかというふうに思います。  現実にもうすでに、こういう短期の賃貸借を前提にしまして、たとえば転作がらみの問題でございますけれども、暗渠を入れるというふうな場合に、耕作者が暗渠投資をやりまして、その場合に途中でもって仮に解約というふうな事態になったときに、後をどういうふうに保証していくかというふうな点について契約例を結んだというふうな実例も出てきております。そういった実例の検討の上でもってしかるべき指導方針というものをお出しになるということがいいのではなかろうか。もう少しこれにつきましては、有益費のあり方というようなものにつきましてはなかなか画一的にいかないファクターがいっぱいある。それぞれの土地条件あるいは地域での営農の仕方というふうな問題に関連しまして、たとえば有益費の範囲をどういう範囲でやっていくべきか、あるいは償還すべき有益費としてどういうものをどういう中身でもって算定していくべきかというふうなものについてはもう少し検討を要するであろうというふうに思います。しかし、いずれにしましても、その点の手当てというものは十分にやっていく必要があろう、指導は強めていく必要があるというふうに理解しております。  三番目の、地価の高騰対策という問題でございますが、実を言いますと、私これについては名案——名案といいますか、方法はございません。地価の問題に関連しましては、私現在の段階でもって主に基本的問題にすべきファクターとして三つほどあると思っております。  一つは、これはインフレという問題であるわけですね。これももう私などから申し上げるまでもないことでございますが、土地資産というものはインフレに対して一番抵抗力がある、一番強いというのがこれはある意味で言えば常識でございます。したがって、このインフレという傾向の中では地価高騰というふうなものはインフレ経済の中では心然的であるという問題、これが一つであります。ですから、その点で言いますと、地価高騰対策いかんということはインフレ対策いかんという問題ともつながるというふうにも私言って差し支えなかろうというふうに思います。その点を、わが国の場合には御承知の過剰流動性の問題がさらに加速するというファクターがございます。  それからもう一つの問題、これが実を言いますと具体的な問題としては大変大きいかと思うんですけれども、私はこの地価高騰の問題に関連して言いますと、都市政策というふうな問題が非常に重要な役割りを果たしているというふうに思います。ただ、東京なんかの例を考えてみればすぐおわかりだと思いますが、都心部の人口はむしろ減っていっている、周辺部に人口がふくらんでいる、そういう構造を基本的に持ちながら、しかも宅地空洞化地帯というふうなものを残していく、そういう形のいわば都市政策になっているわけですね。むしろ、その点で言いますと、私はこの都心部、社会資本投資がこれだけ行われているというのは、都心部にこそ人口がたくさん住むというふうないわば都市政策、そういったところに根本的に転換していきませんと、本来的に地価の抑制というふうなものは不可能だというふうに思っているわけですが、この以上三つの問題点というのは、これはいずれも私はある意味で言うともう現在の体制の問題それ自体であるというふうに理解しておりますので、これについて、この対策を前提にした場合にはもうほとんど策はないというふうに言っていいだろうと思います。  理論的に言えば、たとえば増価税というふうなものを設定するというふうなこともあるいは考えられるわけですけれども、増価税なんかは言うはやすくして行うのは非常にむずかしいということはもう御承知のところだと思います。  じゃ、それを前提にしまして農業政策の分野で一体何ができるかということを考えますと、私はいま設定されておりますような農振法によるゾーニング規制というものを前提にしまして、四条、五条でもって転用を本当に抑えていくという措置、これが一番ベターといいますか、それぐらいしか方法はなかろうと。より踏み込んで問題にするとすれば、そういう都市での宅地化というものに伴って出てまいります代替地需要、都市周辺でもって高い地価で、宅地価格で売った方が農地を遠隔地で求めていく、それに伴って地価が非常に広範囲に高地価が波及していくこのメカニズムを何らかの形で抑えていく、この措置が必要であろうと思います。この代替地需要というふうなものが無制限に広がっていくというふうなものを抑えていくのにも、私はむしろ形式的な要件でもってそれを縛るよりは、村の中でもってこういう農地取得は望ましくないんだというものが排除できるような村のコントロール機能、こういったものを強めていくということが非常に有効なのではなかろうかというふうに思っております。その点が一つです。  それからもう一つの点は、それは制度の問題として言えば、そういう代替地需要なんかに関連して言いますと、私はたとえばかつてこの国会でも問題になりました農地管理事業団なんかがそういう売買なんかに介入しまして先買い権を行使するというようなことについては、まだ地価抑制というふうなものについては多少有効な作用を与えることができたかというふうに思うんですけれども、これも恐らく問題にはならないだろうと思いますので、理論的には考えられるけれども、実行はなかなか不可能だというふうなことになるのではなかろうかと、こう思っております。
  26. 青井政美

    委員長青井政美君) 参考人方々に申し上げます。  時間の制約もありますので、大変恐縮ですが、お答えは簡潔にお願いいたしたいと思います。
  27. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 第一点は、農業再編成の農政の基本をどこに置くべきかという御指摘でございました。  いまの農政は、米が過剰だから、したがって麦、大豆などの不足農産物に生産を転換するんだというようなところにその基本があるわけであります。で、果たして自給力を強化しようとするのかどうなのか、ここのところについては私どもははなはだ疑問を感じます。といいますのは、輸入拡大を念頭に置いての農業再編成だからであります。  私ども農民がいま直面している問題は大まかに言って二つほどございます。  一つは、減反が米だけではなくて主な農畜産物に拡大されるという中で、農業生産で働く場が漸次狭められようとしてきていること、それからもう一つは、価格は一層抑えられてきているということ、この二つが一番大きな問題になっているところであります。  こうした事情が生まれてまいっておりますのは、農業生産が過剰だからとされておるのでありますが、一つには、確かに消費の伸びが停滞してきている事情もありましょう。しかしながら、輸入がふえていることを私どもは見逃すわけにはまいりません。政府は、これまで不足するものは輸入すると言ってきたのであります。農業生産が伸びたのだとするならば、それに見合って輸入は削減されてしかるべきであります。しかしながら、それについて何ら有効な措置がとられていないというようなところに現在の大きな問題があるのではないかと思います。  したがいまして、いまの農政に私どもが一番望む基本は、輸入を抑制するということであります。輸入を抑制するためには抜本的な規制措置が必要でありますし、同時に畜産生産に見られますように、輸入依存で奇形化された農業構造のあり方を直していくというようなことも考えられていかなければならぬと思います。たとえばECの場合に、外国から輸入はするが、関税をかける、あるいはまた課徴金を取るというようなことで、国内の農産物価格水準とほぼ同一にするような努力が払われておるのでありますが、日本の場合にはそうした努力は払われていない、ここのところに大きな問題があると思います。したがいまして、たとえば食管制度を拡大して、主要穀類を国家貿易の対象にしていって輸入規制を具体的に行っていく、また、国内生産については価格保証を行うといったような農政上の措置が講じられてしかるべきではないかと思います。ともあれ、農民がやる気を起こすようなそういう農政をやるということが先決ではないかと思います。そのことが農業体質を強める基本になると思います。  次に第二の点でありますが、第二の点は、農地三法で自作農主義が変えられるのではないか、農地法をどう位置づけているのかという御指摘でございました。  自作農主義は守ってしかるべきだし、農地法は守られていくべきではないのかというふうに思います。しかしながら、実態問題として見ますというと、守れない実態というのがかなり出てきているのは否定することができません。そのような状態を生んできているのは、零細な農家が農業にいそしんでいくことができないような農政が進められてきたというところに問題があり、そしてそうした農政というのが農業全般を振わぬものにしてきたというぐあいに言ってよいと思います。したがいまして、農政の改革こそが先決である。都市流動化について言うならば、農地流動化し得るような環境条件をどう整えるかということこそが先決ではないかと思います。  最後に小作料問題についてであります。高い小作料に歯どめをかけていく措置はどうなのかという御指摘がございました。  この点については、標準小作料をどう設定するのか、この点についての行政指導が小作料抑制という点でもっと強められてしかるべきだと思います。またさらに、最近小作料が上がってきている背景の中には、米の転作奨励金、一番下のベースが四万円になっておるわけであります。この転作奨励金が小作料を引き上げているという事実、これは見逃すことができません。したがいまして、小作料を抑制していくという点でも、米の転作奨励金は転作物の価格保証に回されてしかるべきではないか、そうした措置等々が講じられてしかるべきではないかと考えます。  以上です。
  28. 藤森常次郎

    参考人藤森常次郎君) それでは簡単にお答えを申し上げます。  まず第一点の、市町村の役揚の業務がふえるではないかと、こういうこと。若干ふえますけれども、いままで四年間農地利用増進事業をやってみまして、それほど大きなものではないと思います。米の問題等と比較をすればはるかに少ないものであると。同時にまた、これを進めてまいりますときにそれだけの各集落に組合等をつくってまいりますから、ここで大体の話は終わってまいっております。この点では私ども経験から見て余り大きなものではないと。  そこで、政府に何か望むものということでありますが、私はこれに対する事務費等についても政府は財政的なことを考えるべきであると一つ申し上げたい。もっと大切なことは、指導の中で、いままで法律ができますと、とかく実施基準といいますか、末端に来たときにはがんじがらめでなかなか身動きのできないようなものが少なくないわけなんです。この改正、今度の農地利用増進法案については十分現地を調査等をして考えられたのでそういうこともないかもしれませんが、この辺は指導の中で余りむずかしくない。いまの農振法によって行われている農地利用増進事業がせっかくうまく進んでいるときでありますから、この点をひとつ注意をされたいと思っております。  それから、農地利用が進んでいるようだというお話で、そのとおりでありまして、私はさっきも申し上げたように、これが法制化してまいりますと、より貸し手、借り手は安心ができるということが現実であります。もう農家もそう言っているわけなんです。いまでも市町村が入り、知事が承認をしていますから心配はないけれども、より私は信頼感、安心感が持たれてくるんではないか。そうして集積の場合も、この間も衆議院農林水産委員会の皆さんがおいでになったときも現地を見てまた説明したわけですが、ただ一つ数字だけ申し上げておきますと、私のところの貸せ手は五百三十人が貸せ手であります。借り手の方が百十六人であります。これが大変不思議なように質問されましたが、これが本当の集積であるわけです。少しずつ出して、そうして五百三十人から出したものが百十六人で集積をされて、そこで農耕がまとまってなされていくと、こういう点では大変喜んで今日おります。これらについての財政的の措置等については、これは町村もいろいろな面で負担がかかりますから交付税措置等も考える必要があろうと、そう思っております。  それから農業委員会制度との関係でありますけれども、これは町村会の立場としてということでありまして、町村会は実は昭和三十九年に機関決定なるものがなされているわけなんです。これによりますと、超過負担もだんだん年々ふえてくるから、この辺でひとつ農業委員会制度を見直してもらいたいということが基本になっているわけであります。そういう中でそれぞれ全国の市町村意見をまとめますと、まず少数精鋭でやっていくことが必要である、こういう問題も出ております。それから選任等の問題につきましてもこれはありましたけれども、私はこの選任とかいうことがすぐとかくいま取り上げてどうこうすることより、むしろ数だけあって仕事ができるものではありませんから、やはり少数精鋭主義をとるべきである。その点でも、先ほど池田参考人からも話が出ましたとおり、四十人、三十人という問題が出ているのであります。そういうことで、数はむしろしっかりした人が適当な数でいくことの方が効果的であろうと、そういう考え方もいたしております。  これらにつきましては、まずいまの超過負担等が基本の問題になりますから、どうしても超過負担解消はやっていかなきゃならぬ。いま町村の場合に、超過負担の大きいものが農業委員会に挙げられていることも、そういう中であって、学校等の建築も大変大きかったけれども、最近はだんだん解消してまいりまして、そういう点では、いま現に委員会手当等を見ましても、末端の町村ではどんな小さい町村でもちょっと一万円程度が必要になるわけであります、月手当が。国の方からは二千円何ぼしか来ない。こういう状況ですから、この超過負担解消はどうしてもやっていかなきゃならぬし、また政府もこれはやるべきであるということ。それらを勘案してみますと、むしろしっかりと働ける者を整理をして、この大切な仕事に取り組ましていくことが必要である。  もう一つは、行政委員会であるということを私どもは忘れてならない。末端の農業委員会は行政委員会である。別な団体のものではない。そういう中ですから、これは農業委員会市町村部局の関係等におきましても、むしろ市町村の行政の枠の中の委員会として、それだけに働きやすく、働けるようなことを市町村長も考えなきゃならないし、そうしていけば私は農業委員会の運用、運営につきましても十分活動のできるものができてくる。これは中央なり、中間の県なりで何を決められてきましても、末端の町村には町村なりのそこの実情があるわけです。これに合わせてやっていくとしたら、私は農業委員会の生きる道も、働く役割りも完全にできていくであろうという考え方を持っております。
  29. 溝和成

    参考人(溝和成君) いまほど三点の御質問をいただいたかと思います。  まず第一点の、北海道においてはこの増進法によって借地がふえるか、こういう問いでございますけれども、私ども考えますところでは、非常に現在地価が高騰しておるということが一つございます。さらに、その地価が外的要因等もございまして、さらに上昇の傾向にあるという状況から、金融制度の不備あるいは離農する場合、譲渡所得税等の問題等から、やはり今後ふえる傾向にあるだろう。そういうことに対してこの増進法は、やはりそういう意味では有効に働くんではないかというふうに考えております。  第二点目の、規模拡大された大農と零細農家の定義あるいは位置づけということ、実態上の問題はどうかということでございますけれども、これにつきましては、まず北海道の実情としまして、過去十五年間に、その以前二十五万戸ほどの農家がございました。それが現在は十二万戸余りということで、言ってみますと資力を持たない、あるいは零細な農家が淘汰されたという形が言えようかと思います。この場合、北海道の水田、畑作、酪農、それぞれの業態によりまして、その傾向というものはいささかならぬ違いがございます。  概して言いますと、畑作あるいは酪農関係においては、御承知のとおり、府県に比べまして北海道の農家というのは、農地の中に、自分の所有している農地の中に住宅があるというような状況がございまして、集落的な環境にないというようなことから、酪農、畑作等については特に挙家離農という例が多い。水田地帯においては比較的平たんな土地で都市周辺という、中小の都市周辺という場合が多い。そうしたことから、必ずしも零細な農家が挙家離農したということにはなっていない。そういうことが中身としてございます。そういう状況ではございますけれども、申し上げましたように、この十五年間で約半分の農家になっておる。  そこで大規模農家と零細農家ということですけれども、これらの考え方について、私どもは、少なくもやっぱり北海道の実情からして、少なくも農家専業で、農業所得で十分生活し得る規模、それ以下のものは大規模とは言えないだろう、自立し、それのみにて生活できるもの以上——大規模とは言いがたいものもございますけれども、一応小規模から外れるものであろうというふうに考えておりまして、最近の農産物価格事情等の関係から、自立経営の、水田で言いますと少なくも七から八ヘクタールの規模を持たないと、これは最低限の自立環境にないということが言えようかと思いますし、畑作では、少なくも十五ないし二〇ヘクタールというものが自立経営上最低限の線として必要なものだというふうに考えております。  さらに地価の問題で、農振法の適用区域内と適用区域外の関係で地価の高騰ということのかかわりをお尋ねございましたけれども、やはり私ども、地価の高騰の多くの要因が農外資本によって転用される、その場合の地価の高騰というものが農地にも大きく作用してきている。こういうことを考えますときに、やはり農振地域を除外する、そういう区域をふやすということは、勢い地価の高騰を招くんではないかというふうに予想をしておりますし、現にこの適用除外地がはるかに農振地域より価格が高く権利委譲がなされているという実態もございますので、そんなふうに考えております。  以上です。
  30. 山内偉生

    参考人山内偉生君) まず第一点は、農協としての要請が多くあるけれどもというお話でございましたが、今度の衆議院修正におきまして、第一条の目的規定のところで、「農業経営改善」というふうにしていただいたということは私ども評価をしております。  それから、第三条が挿入されまして、農用地利用増進事業実施するに当たって、地域の実態といいますか、それを勘案し、農家のそういった自主的な努力というものを前提にするような響き方で第三条が入っております。これも非常に評価できるのではないかと考えております。  それから、私ども農協のかかわり合いでは、これは都道府県農業会議とともに都道府県の農協中央会の意見事業実施方針を県知事が認可するときは聞かなければならないというのが挿入されまして、都道府県農協中央会の位置づけがここでなされておるということ、大変ありがたく考えております。  それから、利用権の中に農協の行う農業経営の受託事業が含まれておりますのも大変ありがたい修正であろうと。これはもちろん——これは修正ではなくて法律そのものですね。当初原案からそういうふうに入れていただいております。  それから、修正では先ほど私、意見の中で申し上げましたが、農用地利用改善事業実施団体の規程のところに農事組合法人を表示して、明記して最初に入れていただいたということは、農協のそういった生産集団といいますか、そういう農家の組織育成の対策を評価していただいているというふうに感じております。したがって、修正をしていただいたことについては大変ありがたく感じております。  それから、二番目の農協の行う地域農業振興計画との関連でございますが、先生のおっしゃった規模拡大につきましては、この農用地利用増進法案の「目的」のところで、規模拡大を「農業経営改善」というふうに衆議院段階修正をしていただいておりますが、私どももやはり集団として、つまり集落段階での農家の集団として規模が大きくなっていくという方向であろうかというふうに考えておりまして、そういう意味で私どもの進めていこうとしております地域農業振興計画と理念的にも一致すると先ほど申し上げたわけでございます。  それから、農地信託制度、それから経営受託事業について、今後この新法が助長、これを補助する方向にあるかというお話がございましたが、農地信託制度については、かなりこれは現状の、先ほどからお話ございます農地価格の高位水準が続いております現状から見ますと、なかなか進まないのではないかと私は思います。農業経営の受託事業につきましては、力のある農協の場合は、新法の利用権の中で位置づけられておりますので、相当な集落であるいは農業経営を引き受けまして、相当広範にこれは進んでいくのではないかというふうに考えます。したがって、農業経営受託事業につきましては助長する空気が強く出てくるというふうに考えております。
  31. 原田立

    ○原田立君 いろいろと御意見お伺いいたしましたが、要点のみお伺いしたいと思います。  まず、全国農業会議所池田専務理事にお伺いしたいのでありますが、賃貸料、すなわち小作料の物納についてはどのように判断していくのか、それが一つ。  それから、残存小作地についてはどのような見解をお持ちなのか、それが二つ。    〔委員長退席、理事岩上二郎君着席〕  それから、今回の法改正に伴い、どの程度の農地流動化が期待できるとお考えになるのか、以上三点をお願いします。  それから、梶井先生にお願いしたいのでありますが、今後のわが国農業の課題及び第二穂兼業農家のあるべき姿、役割りについて、先ほどの山内参考人の方は、第二種兼業農家の位置づけについて今後真剣に考えてくれというふうな意見がありましたので、これについてのお考えをお伺いしたい。  また、池田さんと同じ質問でありますが、料、小作料に関する基本的見解。  それから、農地流動化がどう進むかに大きな課題を、期待を、今回の農地三法の改正によって期待されているわけでありますが、法改正に伴う流動化は一体どんなふうな方向で進むとお考えでございましょうか。  それから、谷本書記長さんにお伺いしたいのでありますが、物納についてどのようなお考えでしょうか。それから、これも同じく今回の法改正に伴いかなりの農地流動化を期待しているわけでありますが、流動化に関する見解はいかがでしょうか。  それから、藤森参考人にお伺いしたいのでありますが、五十年の六月のときに私お伺いしましていろいろと現地を拝見させていただきました。  そこで、この現行農用地利用増進事業等の効率的運用に対し町村議会の役割りは非常に高いものがあると思うんでありますが、今回の法改正に伴い、実効ある運用を図るための基本的条件、要望についての見解がありましたらばお伺いしたい。  それから、賃貸料に関する基本的見解及び手続の簡素化についてのお考え等をお伺いいたします。  それから、溝書記長にお伺いしたいのでありますが、今回の法案で自作農主義が変えられるんじゃないかという疑問があると、耕作権停止になるんじゃないかと、こういうふうな御指摘がございましたけれども、これについてもう少し御説明いただければと思います。  それから、山内さんにお伺いしたいのでありますが、円滑な運用あるいは効率ある運用にはどのような条件が必要と考えておられるのか、これが一つ。  それから、日本農業は大きな曲がり角に来ている、いまこそ見直しが必要だとの声が非常に高いわけでありますが、今後の日本農業に対する課題についての基本的見解はいかがでしょうか。  また、地価高騰が続く中で地価抑制対策についての見解、以上三点。  全部まとめて二、三点ずつお伺いいたしましたが、よろしくお願いします。
  32. 池田斉

    参考人池田斉君) 三点の御質問でございますが、賃貸料の問題で物納をどういうふうに考えるかと、これにつきましては、先ほど農業会議所の調査で申し上げましたが、四十六年以降は事実行為としてそれが行われておると。しかも、これはある程度従来のこの利用増進の動きの中で、やはり貸し手が、土地は耕作をしてもらうが、自分の飯米程度はひとつ自分のたんぼでできた米でもらいたいと、こういう問題が現実にありますので、余りこう野方図にやるのはどうかという意見がございまして、衆議院修正段階で、原則は金納ではあるが、農業委員会が判定した場合には物納を認めようと。まあ妥当な一つの物納へ入り込む筋道ではないかと。全部、何でも小作料はどうでもいいんだというような問題につきましては、やはりやや慎重でなければならないと思いますが、衆議院修正のような方向で、とりあえず現実に行われておると、これをいわゆる飯米程度のものを事実上認めて、貸し手が貸しやすくなるという道を開くのは当然ではないかというふうに考えます。  それから残存小作地につきましては、これはまあ事実上その当時の問題が今日まで残されておるわけでございますが、統制小作料が廃止になるというようなことと関連して、この面積も、ちょっと数字はここに持っていませんが、逐次減ってきていることは事実でございます。これは話し合いの中で、残存小作地を買い取るというような形での解消の方向が逐次進んでまいっているわけで、しかし、それにいたしましてもある程度の残存小作地が今日残っておりますが、今後やはり金融なりいろいろそういう問題を、いま七百万まで金融の措置がございますが、これらを強化して残存小作地は事実上さらに解消するというような方向でいくのが一番望ましい方向ですが、ただ、どうしても永小作権的なもので残ってしまうというようなものが最後にある程度残ると思いますが、これにつきましては、何らかのことでやはりまた立法的なことも含めて解決しなければならぬという時期が来るかと思いますけれども、当面は話し合いを進めるという中で解決をしていくと。  ただ、私どもの調査の中で、この統制小作料がなくなった場合に小作料の水準が非常に乱高下が起こってトラブルが起こるのではないか、こういう心配がありますが、これにつきましては、いまのところ標準小作料を中心にして話し合いの中でその問題はそう大きなトラブルが起こらなくて済むのではないかという見通しを持っておりますが、しかし、中にはトラブルが起こるというような場合に、農業委員会が十分これに対して対応するような問題が必要になってくるというふうに考えます。    〔理事岩上二郎君退席、委員長着席〕  それから、流動化につきましてどのくらいの期待を持てるか。非常にむずかしい問題でございますが、まあ私はやはり規模拡大論者でございますので、多々ますます弁ずということでございますが、幸い昨年高度利用事業が始まりまして八百町村がこの事業に乗せていくと。御案内のように、いわゆる奨励金を一万、二万というのを出すというような問題が一つの支えになって、農業委員会が相当活動するというようなことで、いままで二万四千ヘクタールのうち約一万ヘクタールが、五十四年度全体ではなくて、五十四年度の後半少し残したような一年足らずの間に一万ヘクタールの土地の流動が事実上行われたと。したがいまして、今度の新法が出ましてさらにそういう奨励措置が十全なかっこうで加わっていくと、農業委員会も大いにハッスルをするというようなことも含めますと、かなりのスピードで私は貸し手を掘り起こすというような問題が可能であるという農村の実態の中から考えますと、相当この問題は進むであろうし、また進めなければならないというふうに考えます。まあ何十万ヘクタール、何百万ヘクタールというような数字は申し上げませんが、相当この問題については期待をすべきであるし、またその期待にこたえるような方向でのメリットが出ることが絶対に必要である、そのための三法であるというふうに考えております。
  33. 梶井功

    参考人梶井功君) 日本農業のいまの基本的な課題は何か。それと関連しての二兼農家の位置づけという問題でございますけれども、私、端的に申し上げまして、八〇年代の日本農業の課題といいますのは、やはりこれだけ低落しております食糧自給力の低下というのをこれをいかに高めていくか、ここに最大の問題点があるというふうに理解しております。そのためには、先ほど言いましたように、農産物の貿易政策なりあるいは生産政策、価格政策、そういったものについての全般的な施策の充実というのが望まれるわけですけれども、同時に、その中でもって農業生産を主体的に担っていくたくましい主体をいかに育てていくかということも非常に重要な問題でありまして、その点に関連してこの農地三法が出されているというふうに理解しているわけですけれども、そういう中でもって二兼農家をどういうふうに位置づけるか。  実を言いますと、私、二兼農家という表現をいま実際に使って農業構造の問題を論ずることが果たして正しいのかという点については、相当疑問を持っております。疑問を持っておりますといいますのは、二兼農家というふうに一括して統計上くくられております農家の中に、さまざまなタイプがあるわけですね、いろんなタイプがございます。その中でもって私非常に大事な問題は、この二兼農家を十把一からげにして議論するのではなくて、その中でもって本当に農業生産を主体的に担ってもらわなきゃいかぬ、そういう二兼農家の方も結構いらっしゃるわけですね。現実に、二兼農家の中でもって規範的な農業従事者というふうになっておりますような、いわばそういう方がいれば中核農家であるというふうに農林省ではおっしゃっているような、そういう二兼農家の方もいらっしゃる。片や本当にもう耕作する主体がいなくて、もう土地をもてあましていらっしゃるというふうな二兼農家もいらっしゃる。私はむしろ、今日の段階でもってたくましい農業主体を育てていくという観点から重要な問題は、営農に関して意欲と能力を持っておる人、そういう人に対していかに活動の場を与えていくか、ここのところに問題があるんだというふうに理解をしております。そういう営農に意欲と能力を持っている方々は、多分数多くは専業農家と言われる方々の中にいらっしゃるでしょうし、それについては一兼農家と言われる方々の中にいらっしゃるでしょうけれども、二兼農家の中にも結構いらっしゃる。そういう方々にも十分な活動の場を与えていく、こういったことが私は必要なんではなかろうかというふうに思います。二兼農家だからだめだというふうなことではなくて、そういう二兼農家の中でも本当に意欲と能力を持っておる人には、十分な農業でもって活動をする場を与えていく。現実に、たとえば利用増進事業なんかを仕組んでいく中でもって二兼農家だから排除するということでなくて、本当に意欲と能力があれば、その人が農業でもってりっぱに活動していっていると、活動する場をむしろこういう事業の中で与えていっているという例もあるわけですね。そういった方向が大事ではなかろうか。  それから同時に、二兼農家の中でもって、たとえばこれは構造改善局の方で御用意いただきましたこの参考資料、この中にもう世帯主が六十歳以上でもって後継ぎがいないというふうな方々、この数がたとえばいまざっと計算しますと四十八万戸もいらっしゃる。六十歳以上でもって後継ぎもいないというふうな方々、こういう方々に将来とも農業生産力を担っていけるということを期待できるか、私は恐らくそれはできないだろうと思うんですね。それから同時に、二兼農家と言われる方々の中でもって営農を継続していらっしゃる中でもって、その営農継続をだれが主体的に担っているか、恐らく私は五十代、六十代というふうな方々が担っている。そういう方々がまたそのうちにリタイアというふうな段階になってくる、そういうときに一体、そのときもその二兼農家の方々には農業生産の担い手を期待できるか、私はそれはできないだろうと思うんですね。農業生産の担い手として期待できる二兼農家とできない農家と二つ現実にある。将来ともやっていける、意欲もあり能力もあるという方々には大いに活動の場を保障していこうじゃないか、そういうのが、私は実際にたとえば農地利用改善事業というふうなものを部落の中で仕組んでいく、集落の中で仕組んでいくという場合の民主的な話し合いというものが保障されればそういったこと十分に可能になっていくんだというふうに理解しております。  したがって、二兼農家というものは十把一からげにしてどうこうするんだというふうな形でもってこの位置づけを考えるべきではない。二兼農家の中の具体的なあり方、農業とのかかわりの仕方というものをにらみながら私は対処をしていくべきであるというふうに理解しております。  それから第二点の賃貸料の問題についての基本的な見解でございますけれども、私、賃貸料という問題を考えます場合に、もう決定的な事実の問題としまして農業生産力の階層間の格差というものが非常に大きくなっているということを、この現実というものを踏まえて賃貸料という問題を考える必要があるのではなかろうかというふうに思っております。昭和三十五年ごろの段階で申し上げますと、賃貸料の問題というのは、賃貸料のベースになりますたとえば純収益というふうなものは農家階層間ではほとんど差はございませんでした。せいぜいあって一番上と下でもって一〇%か二〇%程度の開きである。かなりフラットな収益関係にございます。そういう段階では、私はたとえば標準小作料制度というふうな形でもって、あるいはそういう小作料政策というふうな形でもって、土地に付属した地代というものとして賃貸料政策を考えるということでよかったと思うんですね。  しかし、今日明らかにそれは違っているわけです。どういう経営がその土地を利用するかによって土地の純収益というのは非常に違ってきている。違ってきているという点で言いますと、これは私もうそろそろ賃貸料というふうな問題に関しましては、土地の属性というふうな形でもって問題を把握するよりは、もう少し、どういう経営がそれを生み出している賃貸料であるか、負担できる地代であるか、そういった点に力点を置いて賃貸料政策というものを考え直すべき特期に来ているんではなかろうかというふうに思っております。  その点が経営の問題として関連して言えばそういうことでございますし、もう一つの問題として言えば、この賃貸料の地域差といいますか、これが非常に大きくなっているわけですね。非常に大きくなっております。一方では、賃貸料をたとえば使用貸借と同じように、もう賃貸料ゼロでもいいから預かってくれぬかというふうな形でもって、ゼロに近いような賃貸料を形成されたところもございますし、他方、相当高い賃貸料、常識的に言えば非常に高い、たとえば四俵、五俵というふうな賃貸料を形成されているというようなところが同じ水田について形成されております。それは一体どういうことかと言えば、それだけ私は現実に日本列島の中でのたとえば水田というふうなものの開きが現実に大きくなっている。賃貸料はそういう差額地代差を反映するようになってきている、そういう実態を踏まえてこれからの賃貸料という問題を考えていく必要があるのではなかろうかというふうに思っております。  その点で言いますと、先ほどもちょっと問題にしましたですけれども、たとえば二十四条なんかでもって、田にあっては収穫高の粗収益の二五%をアッパーリミットとするというふうな画一的な規定でもってやれるかどうかというふうな点は、大いに考慮の余地は一つあるだろうと思います。ただ二十四条でもって、あの場合には「不可抗力により」というふうなところにあるわけですから、平常時だったらもう少し別な判断というものをたとえば標準小作料なんかについても持てるというふうに、私は制度の運用というものを望みたいというふうに思います。  第三点は、流動化はどういう方向で進むかという問題でございますけれども、これもなかなかむずかしい問題ですが、私二つに分けて申し上げたいと思うのです。  一つは、いまこの流動化というふうなものが賃貸借というものを中心にして起こるといたしますと、出し手の層としては一体どういう層が考えられるかと言いますと、いま言いましたように、六十歳以上でもって現実にもう後継ぎもいらっしゃらないというふうな五十万戸近くの農家の方々、この方々は、ある意味で言えば私はだれかに預かってもらわなければ農地を荒廃化させてしまう危険性というものを多分に持っていらっしゃる方々だというふうに思います。それから同時にもう一つ、現在、先ほどの二兼農家を一括してはいけないという中の一つのグルーピングとしましては、もうすでに安定的な勤め先の収入によって生活が十分にやっていけて必ずしも耕作というものに意欲はお持ちになっていらっしゃらない、だれか適正な小作料で預かってくれれば預けたいというふうな方も現実に一方ではいらっしゃる。そういう方々が私は相当出し手になるであろう。特にその点で言いますと、それまでそういう勤めながらなおかつ耕作を続けるというものを支えてきておりました五十代、六十代というふうな方々の、そういう年輩のいわば農業の担い手というものがだんだん減ってくる傾向にある、リタイアとともに減ってくる。そういう点で言いますと、そういった方々がやはり土地を預けなきゃいかぬというふうな形にだんだんなっていく。出し手の層としてはその二つくらいが当面考えられるというふうに思います。  それから受け手の方といたしましては、私先ほど言いましたように、営農の意欲と能力のあるものが、これが受け手になるべきだということを申し上げましたが、いまの営農の実態から申し上げますと、営農に意欲と能力を持っている人が一人ではどうしようもないわけですね。特に農業生産というふうなものは、どうしても二人以上のパートナーを組んだ方でないと、季節的な非常に繁閑のある農業というものをこなしていくことはできません。そういうパートナーを持てるような個別経営、個別経営として持てるような方々は個別経営として私は集積していくであろう。しかし、必ずしも個別経営の中では一人しかそういう人はいないという人は、そういう条件の満たない方々がパートナーを組んだ形でもって生産単位をつくっていく、そういう形の受け手も当然出てくるであろう。ある意味で言いますと、それがはっきりしたたとえば農事組合法人というふうな形でもって共同経営体というような形をとるか、あるいは生産組織というふうな緩い形の結合というものになるかわかりませんけれども、そういうふうな組織的な形でもって受け手に回ってくるというふうな方々と、個別経営の中でもって二人パートナーを組めるというふうな方々、この二種類の受け手が農地を集積していく、生産力を高めていく、そういう形になるのではなかろうかというふうに思います。  これが量的にどの程度展開するかというふうな点につきましては、これはなかなか言えないと思いますので、その点については差し控えたいと思います。
  34. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) 第一点は、物納についてどう考えるかという御指摘でございました。  私は、物納を認めたからといって封建時代に戻るというふうには考えません。しかしながら、物納を認めるというのは、これはもういかにも不自然そのものであります。貨幣経済の中のことでありますから、賃貸料は金銭を基本とすべきことは言うまでもないと思います。  第二点は、流動化に関する見解いかんという御指摘でございました。  農地農民有効利用促進が必要であるのは論をまちません。問題は条件整備をどうするのかということにかかっておると思います。その点は先ほども申し上げたとおりであります。  そして、それとともにもう一つ問題にしていかなければならぬのは、どんな農業をつくっていくのかという問題であります。その点で、私先ほど季節的借地関係の例を申し上げましたけれども、それをもう少し立ち入って申し上げますと、たとえば私どもが知っている岩手県での一つの例であります。これは酪農家と葉たばこ耕作農家が季節問借地を行っているということであります。この場合、葉たばこは連作をきらいますから、葉たばこの収穫が終わったら酪農家にその農地を貸す。酪農家はそれを貸りて、そこで自給飼料穀物等々をつくる。野菜などもつくっておりますが、つくる。ここでは当然有機質肥料が相当大量につぎ込まれます。収穫が終わった後、今度は葉たばこ耕作者に返してやるわけであります。一方、葉たばこ耕作者は酪農家の方の農地を借りてそこで葉たばこ生産をやる。ですから、農地が通年的に利用されている。事実上の規模拡大であります。しかも、その事実上の規模拡大と同時に、地力が保全される。生産される作物はいい作物ができる。葉たばこなどの場合では、鑑定で一等級違いますというと十アール当たり何万円という開きが出てまいりますから、良質葉なのかどうかということが大変大きな問題になってくるわけでありまして、そういう点でも、法にかなった農民的な借地関係が行われているというような事実がございます。これは自作農主義を基盤とした貸借関係の促進ということであるのは言うまでもありません。  私どもが土地の流動化として必要なことは、たとえばこういうふうな土地の流動化をどんどん伸ばしていくということが必要なのではないか。そして、そういう農地流動化が進んでいるのは、農産物価格が保証されている一部農作物に限られているというような点があるのでありますから、そうした点に着目しながら農政振興を図っていくことが先ではないかと思います。  しかしながら、今回の三法の制定で見てみますというと、それとは違ったものが想定されているように思われてならぬのであります。まあ実態的に申し上げますと、米の転作と結びつけて農地流動化をどう進めるのかということが事実上中心になってまいるでありましょう。そういう状態の中で、米の減反が際限なく拡大されようとしておりますし、また、こうしたあり方を長期的に見た場合にどうなのか。農地が集積されるのは、やはり機械を持っている者、そこのところへ、ないしはまた技術を持っている者、そこへ農地が集積されるようになってまいります。そうしますと、その農地の集積の結果は他人労働依存型のそういう農業生産を生んできはしないのか。ここのところが私ども最も心配することの一つであります。  また、それと同時に、農業機械をだれが一体世話するのか。農協が世話するという場合には問題は少ないわけでありますが、たとえば資本が世話をするというような状態が出てきたらどうなるか。もう非常に安い値段で世話をしてあげます、そのかわりその他の生産資材は私のところの物を買ってください、できた農産物は私のところが引き受けましょうとかというような事態が出てきはしないのかどうか。一時期、やみ増反が行われた当時、栃木県のある地域ではそういう状態が現に出ているのであります。こういう条件が出てくるとするならば、資本の側からの農業のインテグレーション、これも進むような条件が生まれてくるのではないか。私どもが心配するのはそうした点にあるのであります。そういう点が出てまいりますと、自作農制は文字どおり壊されていくわけでありますから、そういう状態が起こらぬような歯どめというのをひとつ考えていかなければならぬし、そういう状態を引き起こすための農地流動化については、私どもは賛成することはできぬと、こういうことであります。
  35. 藤森常次郎

    参考人藤森常次郎君) 先生お尋ねで、しかも私のところを見ていただいているようですから……。  いま第一点は、これからこの法律によって取り組んでいく基本的な姿勢ということであります。  これはまあ余りむずかしく申し上げるより端的に申し上げますと、私どもの経験から見まして、ちょうど農業、工業が調和がとれましたから、兼業農家の人も就業の場がいつでも求められると、そういうことで、非常にたやすく農地が専業的農家に移ってそこの生産も上がっている。こういうことをずっと踏まえて見まして、要するに市町村がこの法律を扱っていく場合、市町村の責任体制を確立すること。どうも私も村長ですけれども、少し人頼りが多過ぎるわけなんです。だから、もう少し自主的に、自分の町、村はどうするのか、この責任体制を確立していく。これにはやはり政府が地方自治体を信頼する。この二つだと思うんです。これによってその地域に、借りる人も貸せる人も地域に住んでいるわけですから、そういう中のコンセンサスは得られていくであろう。基本は、市町村が本当に責任を持ってやる、その責任体制の確立、政府がこれを信頼してかかる、ここだと思っております。  それから、農地賃貸借料の問題でありますが、これはいま梶井さんからもお話ありましたとおり、賃貸借、私の考えていますのはやはり標準小作料、これが特にわれわれにとって必要だったということは、隣接の市町村との調整が大体よくとられております。そういう点で、この標準小作料を基本にしていまの農地利用増進事業の賃貸料も決められていっていますけれども、こういうものでこれからもいいではなかろうかと、まあそう思っております。そうして、賃貸料につきましても、これが本当に貸せ手、借り手の話の中ででき上がっていく賃貸料でなければならない。ですから、どこかから決めてきたそういうものでいくことの方が私は話がむずかしくなるだろう。したがって、いまある標準小作料を十分検討をしながらこれを守り通していくことでよかろう。  それから、手続等につきましては、これはもう論をまちません。手続の簡素化、これはもう当然でありまして、したがって、市町村が計画を立て、そうして規程をつくり、上げていったら県はどう扱うのか。いまももう知事承認でやっていますけれども、ここで余り手間をかけられたんじゃ、これは大変なことになる。ですから、これがまあ市町村のさっき言った信頼にかかわると思いますけれども、そういう簡素化は当然であると思っております。
  36. 溝和成

    参考人(溝和成君) この法改正によって自作農主義が変えられるという考え方の根拠について説明せよ、こういうことでございますけれども、私は、この一連の法改正の中で、どうもこの点については若干感じとして受けとめているというようなことがございまして、客観性に乏しい点もございますけれども、そういう感じを受ける要素として、まず解約の場合の規制が非常に緩められておる、こういうこと。それからこの契約期間が三ないし五年というふうにうたわれておる。これは、もう少し借り手が経営を安定させながら営農していく場合には、この期間については短か過ぎないか、こういう期間では、再契約ということもあり得ることは承知しながらも、解約規制の緩めとあわせて考えるときに、その辺に小作人の経営安定に問題がありはしないかと。さらに、定額金納が緩められて、標準小作料、さらには条件つきとは言いながら物納というふうに変化をしていく。この物納の場合、どういう要件を具体的にどうするのかという点について熟知していない点もございますけれども、そうした一つの問題などから、どうも小作の側にとっては非常に経営安定と結びつける要素が弱まってきておるというふうな印象をぬぐい去れない。さらに、いまほど谷本参考人の方からお話ございましたように、そういう集団にしろあるいは農事組合法人にしろ、そういう形で、個人の場合も同じですけれども、やはり農機具、ひいては肥料等生産資材、そういうことが農外資本との結びつきの大きなてこになる。そうした場合に、当然のごとく、米等、政府が直接管理するもの以外の農産物というのは、それら関連する商社との結びつき、そういう中で商流に乗っていくだろうというふうなことを考えますときに、やはりその法人あるいは生産団体、そういうものが経済的に好転し力のあるときはさして問題はなかろうと思います。しかしながら、現状においては非常に不安定な要素を予測せざるを得ない。そういう状況の中では、そうした外的資本との結びつきが、勢い名を変えてこれら生産組織、団体の中に大きく介入をするおそれはないのかと、そういう意味でございます。  さて、これらについてはそれぞれ農協あるいは農業委員会、町村等がそのチェックをするようになっておるようでございますけれども、現状農地法等に基づく違反行為といいますか、そういうものを農業委員会等がチェックする場合でも、おおよそ問題は、当該人からそれぞれ申請、申告がなされて扱っているものが大方でございまして、それらがひそかに、あるいは目立たない形で行われるものについての現状農業委員会あるいは農協、町村等のチェック機能というものが、果たして徹底した形で進められるのかどうか、その辺がよほど慎重に、しかもそつなく取り運ばれない限り、ひょっとしたらすき間に外部資本の入ってくるおそれがあるということを指して申し上げたわけで、特にこの物納の件では、衆議院段階でも大きく修正をされまして例外規定になった点で、非常に私どもはこの点は、原案から比べますと農民的な、いわゆる農地法の精神に基づいた形に戻っているとは思いますけれども、これも、例外とは言いながら、これを認めていくことによって例外例外を生むようなことになりはせぬかと大きく危惧をしているものでございます。  そうした意味で、どうも客観性に欠けているとは思いますけれども、心配な点を申し上げる次第でございます。
  37. 山内偉生

    参考人山内偉生君) 事業の円滑効率的な運用のためにどういうことがあるかという御指摘をいただいております。  まず私は、やはり、地域といいますか集落の自主性といいますか、農家の主体性を尊重することが第一の要件であろうと思います。それから第二は、町村を軸にしまして、農協とか農業委員会あるいは土地改良区、そういった関係団体が協調しながらこの事業を進めていくということがどうしても大切であろうと思います。それから三番目は、やはり手続の簡素化要望されると思います。手続が簡素化されますと相当進むと思いますが、先ほど藤森村長さんの言われたように、手続の簡素化は国が地方自治体をどう評価するかということにかかっていると思いますけれども、の立場から言っても、やはり手続は簡素化される方が望ましいと考えます。  それから、日本農業の見直しの問題で、これは非常に私にとって荷の重い御指摘でございますが、私ども系統農協は、昨年の十月に第十五回全国農協大会を開催いたしまして、そこで、「一九八〇年代日本農業の課題と農協の対策」というものを組織決定をしております。それは先ほど梶井参考人もおっしゃられましたように、国民食糧の安定供給と、それから農家の生活向上といいますか、所得の確保というものを実現するために、現在の日本農業は過剰と不足が混在をしておるという非常に複雑な厳しい状況にありますので、こういったもの、つまり、日本農業の再編といいますか、その目標に向かって地域農業振興計画を集落から積み上げていくという運動を現在展開をしつつございます。で、五十八年には、農協でも主要農畜産物について生産目標を定めまして、全国でこれに一斉に取り組んでいくということをこれから進めていくことにしておりますが、これが今度の政府の政策とどういうふうに合致していくか、この辺がかぎであろうと考えております。  三番目に、地価抑制対策への見解でございます。  これも大変問題がむずかしいわけですが、農業の世界だけでまず考えますと、農地の価格が現在高水準にございますけれども農地の所有権の移動を促進して個別経営の規標拡大につなげるという意味では、現在あります制度では農地保有合理化促進事業、この促進事業を拡充していただくということが現実的な解決方法の一つであろうかと思います。  それから、かつて、何度か国会に出されまして通りませんでした農地管理事業団的な発想、こういうものも必要になってくるのではないかというふうに考えます。  それから地価の問題、これはもう農村社会だけの問題でなくて日本全体の問題であろうと思いますが、せんだって、早稲田大学の法学部の篠崎昭次教授のお話を聞きましたら、土地問題、地価問題の根本的な解決は都市問題の解決にあるというふうな御指摘がありました。これは先ほども梶井先生も述べられておりますが、そういう意味で、地価抑制対策というのは国全体で取り組んでいただかなきやならないのではないかというふうに考えます。  以上でございます。
  38. 下田京子

    ○下田京子君 各参考人の皆さん、大変貴重な御意見ありがとうございました。  私の持ち時間は全体で三十分でございますが、お一人ずつ問題を一、二点にしぼりながらお聞きしたいと思います。  最初池田参考人にお尋ねしたいんですけれども、今回の農地三法、その基本的なねらいが、いろいろございますけれども、とにもかくにも中核的農家の育成と、そのために農地流動化ということが基本的な中心課題になっておるかと思うのです。この農地流動化政策に関しましては、御承知のように昭和三十七年、四十五年と農地法改正されましたし、それから五十年に農振法の一部改正ということもやられまして、いろいろ問題はあるけれども、一応貸し手の方の掘り起こしということが出てきまして、流動化の方向というのが見えてきているわけです。  私、第一に問題にしたいのは受け手の側でございますけれども、私も福島県内各地を回りまして、この受け手の方々がまた深刻な状態にあるんですね。特に出されておりましたのは、農地を借りたけれども、機械の効率利用等、組合をつくってやっているけれども、更新時になったら一体どうなるんだろうかなという問題であるとか、あるいはいまの生産対策や価格対策、これは非常に軽視されている。まあ言ってみれば、政府のいま進めているのは、構造的なものに非常に重点的に力を入れて流動化が自己目的化されていくんではなかろうかという不安の声も出されているわけなんです。そういう点で、借り手の問題として、どういうふうにしたらば本当に安定した農業、そして効率的な土地利用というものがなされるんだろうかという点が一つです。  それから二つ目には、農業会議所の方のいろんな御足労で、資料に載っておりますが、昭和三十五年に六百七万一千ヘクタールあった農地が、五十四年になりますと五百四十七万四千ヘクタール、実に二十年の間に約六十万ヘクタール農地がつぶれたというふうな中で、資本からの支配というものが非常に心配であるわけです。こういう点でどうして農地を守っていくか、御意見ございましたらこの二点、お聞かせください。
  39. 池田斉

    参考人池田斉君) 中核的農家育成のための農地流動化政策、まさにそのとおりがこの三法のねらいだと思います。ただ、貸し手の問題には非常にいろんな心配、小さなきめの細かい配慮があるが、借り手側の問題についていろいろまた心配が一つあるのではないかと、これはまさに御指摘のとおりだと思います。ただ、日本農政が、これからやっぱり本当に日本農業を担っていく、そういう層の、農業に精進をする、しかもそれは農業で飯を食うんだ、こういうのを基本的に、価格政策なり生産政策なり、その他いろんな面で守らないとこれはまさに意味がない、私はそういうふうに考えます。したがって、構造政策だけが先行して、それで日本農業がりっぱになるんだというふうには私も考えません。これに乗っかってくる農家こそ本当に大事にしなきゃならないわけであって、これに対する集中的な政策の支えがあってそれがさらに発展をする、この支えが絶対的に必要であるというふうに考えますので、この借り手側の問題こそ、日本農政のこれは基本につながる、今後の政策の展開につながってくるのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから第二の点は、これはまことに私どもも残念でございまして、先ほどもちょっと触れましたが、規模拡大一つの問題は、既耕地の流動化も絶対にいま必要な条件でございますが、やはり転用その他を厳しく規制をいたしましても、やはり農業外の用途にもある程度協力しなきゃならぬ。それにさらに、この資本の側が土地を手に入れるというような問題で虎視たんたんとして従来高度成長の中ではねらわれてきたというようなことが重なりまして、とにかくいま五百四十七万ヘクタールですか、そこまで六百万ヘクタールが落ちておる。したがいまして、これは既耕地につきましては、基本的にその転用等につきましては地域地域全体として守り抜くという、土地を守る運動と申しますか、これが基本であると同時に、いま一つはやはり土地の外延的拡大、これにつきまして十カ年計画がございますけれども、御案内のように、予算その他では非常に物価が上がるということでこれが遅延をしております。私は、政府におきましても、外延的な拡大、これは開墾可能地が幾らあるというような調査もすでにあるわけでございますから、一方におきましては農用地の造成問題にやはり真剣に取り組んでいただく。それらを含めまして規模拡大の問題をやって、日本農業の健全性をこれから発揮していくという方向でなければならないというふうに考えるわけで、やはり資本が土地をねらっているという問題はいつの場合にもあるわけでございますから、よほどこれは注意をしながら、その規制につきましては万全の対策を、政府はもちろんでありますが、総体として農業側が守っていくと、こういう姿勢が必要ではないかというふうに考えております。
  40. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございます。梶井参考人に次にお尋ねしたいんですが、第一は、ただいまも池田参考人にお尋ねしましたいわゆる借り手の問題について御意見ございましたら聞かしてください。  それから第二番目の問題につきましては、先ほどの貴重な意見陳述の中でもございましたけれども、現在本当に所有権移転ということになると非常にむずかしい、賃貸でいくということだと見通しが大きいというお話がありました。その賃貸で動く要因として、兼業化が非常に深化している問題、あるいは規模のことや高地価問題等、これはもう後に戻れない厳然たる事実であるというふうな御指摘も踏まえてあったわけなんですけれども、そういう状況の中で賃貸借農地規模拡大していくということなんですが、どの程度の規模拡大が想定されますでしょうかという問題なんです。たとえば、これはちょっと極端かもしれません。しかし、先ほど北海道の例なんかでもございましたが、一農家、水田ですと七、八ヘクタールは最低必要だ、こんなお話からいきますと、仮に十ヘクタールの程度の規模拡大ということになりますと、現在の農地が約五百五十万ヘクタール、とすれば、その五十五万戸の農家経営というふうなことも想定される。一方、そういう状況の中で、本当に貸し手の状況としましては、いま雇用の不安定のことやあるいは低賃金など労働条件の悪化の問題、あるいは年金一と福祉の後退、こういう問題がございますし、それから一方で借り手の側としては、低米価や減反政策、輸入問題等がございます。こういうことにどういうふうに対応されて解決の見通し等をお考えなのかという点。  以上でございます。
  41. 梶井功

    参考人梶井功君) 一番目と二番目の問題は問題がややオーバーラップする側面があろうかと思うんです。  私、借り手の農家の方々が経営的な安定性を確保していくというためには、先ほども申し上げましたように、この農地法制整備、それだけではだめであると。先ほども農産物の貿易政策あるいは生産政策、価格政策、こういった点での全般的な施策の充実、これが必要であるということを申し上げました。その中からでも、先ほども谷本参考人も指摘されておりましたですけれども、特に私は価格政策の充実という点が非常に重要であろうというふうに思います。  その点に関連して申し上げますと、私はある意味で言いますと、日本の農産物価格政策というのは分裂しているというふうに言っていいと思うんですね。分裂していると申しますのは、米とそれ以外の農産物価格政策では、非常にはっきりしたいわば政策の違いがある。で、その違いを、私は、一つは、米は一〇〇%国内自給主義だけれども、ほかの農産物は輸入依存主義である、こういう分裂した政策のもとで設定されている価格政策だから、価格政策もまた分裂している、こう理解しているわけなんですけれども、その価格政策を、この参議院(さんぎいん)でも議決されましたように、食糧自給力を強化していくという方向で生産を充実さしていくのには一体どういう価格政策であるべきかという、そういう自給力強化という観点から統一的な価格政策、政策価格体系というものを設定し直していく、こういったことが必要であろうというふうに思います。特に、先ほど過剰と不足の同居ということが山内参考人から指摘ありましたですけれども、特に不足の農産物というものの自給力を高めていくというふうに場合に、どういう価格政策を、過剰の米というふうなものとバランスとりながら持っていくか、ここのところに私は政策のいわば立て直しといいますか、それをやりませんと、せっかく農地法制整備等に進みましても、借り手としては前途に不安を抱くということになろうかと思います。切にその点の施策の充実というものを私、望みたいと、こういうふうに思っておりまして、いわば借り手の方の問題と言えば、問題はそこにかかわってくると。  それを前提にしまして、私は経営規模という問題も考えられるということだと思うんです。価格政策を考えます場合に、経営規模と無関係で価格政策というのはあり得るわけじゃないのでありまして、やはり価格政策というのは一定の経営規模というものを前提にして政策価格というものを設定される。で、その前提になる経営規模というのは一体どういうものであるべきなのか、ここのところが実を言いますと構造政策の眼目でもあるのだろうと、私はこう思います。  で、その眼目となるべき経営規模というものは一体どういうものであるかといいますと、私はそこで農業就業者が農業の場でもってフルに就業できる、そういう経営規模というものが求められていかなきゃいかぬのだと、こう思います。その経営規模といいますのは、これはもちろん技術レベルの相違によりまして、生産手段が高度化してきますとこれは当然大きくなってまいります。しかし、それは無制限であるはずはないんですね。個別経営の就業労働力が、これは恐らく今後長期的に言えば、どうありましても家族経営というものが中心になりましょう。家族経営中心になりますれば、基本的な労働力というのはせいぜい二人でございます。二人が、これが農業でもってフルに就業できるような規模、そしてなおかつその規模でもって十分に生活できるというふうに、今度は価格政策の方が裏打ちされなきゃいけない、そういう形で考えなきゃいかぬのだと、こう思います。  そうなりますと、私はたとえばそれはフルに農業で働くという場合に、単作というようなことを前提にしましたときにフルに農業で働くというのは、これは作業期間が限定されておるわけですから、これは不可能になってまいります。どうしても複数の作目を、これは生育の季節性との問題を考えますと、組み合わせていかなきゃいかぬ。組み合わせていく中でもってどういうふうな形でもって就業量を確保していけるか、フルに働けるような状態をつくり上げていくことができるか、ここのところが問題になるんだろうと思うんですね。  それは恐らく地域によってもちろん違ってまいります。北海道のような条件のところでもって複数の作物を組み合わせろというふうなことは、恐らく非常にむずかしい問題がある。たとえば家畜を組み合わせる以外にはなかなかむずかしい問題がある。そうなりますと、北海道の経営規模としては、やはり十五ヘクタールなり、二十ヘクタールなりと、北海道では当然要求されることになりましょう。しかし、府県では必ずしもそうではない。やはり二人の労働力が農業でもってフルにやっていけるというというふうな規模ということになりますれば、私はやはり三ヘクタールなり、四ヘクタールの規模でもって十分に複数の作物を組み合わせるというふうな経営の展開の中でもってやっていける条件というのがあり得る。そういうものを前提にして、今度はそういう経営が経営として成り立っていけるように、価格政策で逆に今度は裏打ちしていく、そういう措置が必要なんではなかろうかと。つまり、構造政策と価格政策というのは、ある意味で言いますと裏表になっているというふうに理解すべきであると、そう思います。
  42. 下田京子

    ○下田京子君 谷本参考人にお尋ねいたします。  第一点は、皆さんに共通でお聞きしたい借り手の問題について、やはり御意見ございましたらお聞かせください。  それから第二点目には、いろいろ問題になっておりますが、特に私はお聞きしたい点は、資本の支配から農地をいかにして守るかという点で谷本参考人からも御指摘がございました。それからまた、農地価格に対してのいろいろな問題も提起されましたが、私は逆に、そういう問題を本当に農民農民自身の問題として、実際に資本からの農地の支配を排除していく運動はどういうふうにあるべきかという点での御意見をお聞かせいただきたいと、こう思うわけなんです。  といいますのは、ちょっと具体的にお話を申し上げますと、これは福島県の会津というところの例なんですが、もう豚が土地を食ったという例があちこちで言われるぐらい、畜産経営で行き詰まって、借金抱えて農地を売りに出さなきゃならなくなった。片一方は、言ってみれば、開発事業をやりまして、その代替地を探していたということで、代替地取得というかっこうでその土地を売られたというふうな形態でどんどんどんどんもう入ってきているんですね。ですから、現行農地法でも規制できないような状況での、非常に構造的、日本の全体的な中でそういうものがもう現に生まれてきている。そういう中で、農地をどう守るか、そしてまた、とても農業としてやっていけないような十アール当たり三百万、五百万なんという大変な値段がついている状態でしょう。こういう高地価をどう抑えていくかという運動論をひとつお聞かせいただきたいと思うわけです。
  43. 谷本たかし

    参考人谷本たかし君) まず第一点の、借り手の問題でありますが、これはまあお二方も御指摘あったところであります。それ以外の問題として指摘をしたいと思いますのは、農地を借りて、この場合、減反と結びついて実際に行われるような形が多く出てくるわけですが、この場合、借り手の側は新しい機械を入れるために借金をしなきゃならぬと。それからまた、土地条件によっては土地改良もせねばならぬといった問題が出てくるし、そしてその場合の土地改良費の負担をどっちがするといったような問題等々、幾つかの問題が出てまいります。言いかえれば、借金をして新たな規模拡大された農業をやるという形になろうと思います。借金をした上に、つくる作物によっては価格が不安定であります。まあ麦などの場合には、ある程度一定の水準の価格は維持されているとはいうものの、その麦価政策も今後どのように展開されるか、まだ不明確な点が少なくない。大豆の場合でしたら、麦以上に価格は安くて、かつ不安定であるという状況があります。で、価格は上がったり下がったりと。そしてそれも低い水準の中で上がったり下がったりということになると、借金をして規模拡大をやってみたところが、果たしてそれがうまくいくのかいかないのかという不安な点がかなりあるのではないかというぐあいに思います。ですから、農地を手放すという方も大変でありましょうが、今度はそれを借りてやる方にも、そういう点で多くの問題点があるということを指摘しないわけにはまいりません。  次に、農地農民が守っていくと、それを運動論として見た場合にどうなのかという点でありますが、やはり基本になってくるのは、農民的な土地利用関係を村落を基本にしてどうつくっていくのかと、ここがやはり私は基本になると思います。  先ほど私、そういう意味で岩手の例を一つ申し上げました。そういう農民的な土地利用関係がつくられておれば、資本からの土地に対する進出についてかなり大きな抵抗力を持つであろうと思います。  またさらに、そういう状況をつくっていくのには、何といっても農政が充実されなければならぬと思います。農政が充実されれば農民はやる気を起こしてまいりますし、したがって、農業の基本的生産手段である農地をどう守るという視点も出てまいると思います。
  44. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございます。  藤森参考人にお尋ねしますが、百三十ヘクタールの荒れ地が解決されたと、大変これは私もぜひ現地をお伺いしたいなと、こう思っているところなんですが、私が調査に参りましたところは、当初六十ヘクタールの荒れ地があったので、さあ何とかせにやならぬということで、いろいろ話し合いもして、政府からも非常によくやっているというふうにおほめの言葉をいただいている地域があるんですが、それでも結果としていま現に六十ヘクタールの荒れ地は残っているということがわかったんですね。それで、いろいろ土地は流動化しているんですが、いままでいろいろやられてきた、政策上も十何種類とございますけれども、その中で一番進んでいるのが農業者年金の離農給付金の問題と、年金がらみですね、それから、やみ小作が浮上してきたという問題なんかも出ております。  そういう状況の中で、おたくの場合には本当に貸し手の方もうまくいき、また借り手の方もうまくいっているようなお話だったんですが、借り手の問題として、いま、前のお三人の方にお話を聞きましたような状況で、今後本当に安定的に進めていく上でもし何か御意見ございましたら。
  45. 藤森常次郎

    参考人藤森常次郎君) いまお尋ねの百三十ヘクタールがほとんど解消したということにつきましては、これは私がここで言ったって本当に受け取ってくれるかどうかわかりませんが、見てもらう方がいいわけなんです。というのは、さっき申し上げたように、五十年に約三十ヘクタールがまあ借り貸しをあっせん事業でやった。あっせん事業でやると同時に、村では、これで荒れ地を置いてはいけないという条例を出しました。これがあわさって、今度は自分で耕作をする人もふえてきました。こういう中で約半数、三十ヘクタールがあっせんで動いて、三十ヘクタールがみずからで耕作を始めたと、こういうことであります。  そこで、いまどうなっているかということでありますが、この間県の知事の承認をいただいた農地利用増進事業で五十八・幾つ、約六十ヘクタール、同数ぐらいのものが大体自分で耕作を始めている。こうなりますと、百二十ヘクタールぐらいは整理ができたと、もうごらんになるとわかりますが、余りありません。これはまあ若干は残っております。これはいろいろな作目の都合で残っていると思います。こういうことで、大変、私のところではまあそういう結果です。  そこで、借り手はどうかということですが、借り手は、本当に農業をやっていくという、まず人をつくらなければいかぬ。この担い手の育成を、四十七年から自立経営農業振興会をつくりまして、この会員が二百人。この二百人が真剣になって農業経営をやる。四十七年に二百人の所得目標を三百万に置いたわけなんです。この後、実態調査をやりますと、全部三百万ではありませんけれども、ある相当な程度まで目標数字に達してきている。そうなりますと、もう借りてもやっていこうという意欲が二百人がっちりできてきているわけです。じゃ、二百人だけやるかということですが、そのほかでも希望者があればどんどんやっていきますけれども、やはり私はそこに土地と人が一番大切だ。これは昔から言ってきた哲学なんだ。土地と人が離れて農業が成り立つはずもないし、自然がそこに構成されるはずもないんだ。そうしてみると、土地を大切にするのはだれなのか、人が大切にしなきゃだれが大切に守っていくのか、こういうことです。まあいまもお話ありましたように、借り手はそういうことで自信をつけたから、出てくるものは借ります。だから、五百三十人の人が貸せてもいいと。わずかずつでも、これを集めて百十六人が借り手になって進めている、こういう状況。  それからもう一つは、土地を守っていくのは農家でもあるし、やっぱりその地域の行政担当者の考え方一つだと。私は、国の農政じゃない、豊岡農政で今日までやってきたんだ。だから仮登記もほとんどありません。だから、農外の資本の侵入も十分防いできており、そのかわりゴルフ場も村営でやっております。こういうことは、やっぱりその地域地域におけるそこの地方自治体あるいは農民団体、これらが一緒になってどうするか、これはこれからの八〇年代には全くそれがなかったら、農業だけじゃない、日本の将来が危ない。  以上であります。
  46. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございます。  時間がなくなってきて恐縮なんですが、溝参考人一つだけ、農地の価格高騰の問題で、北海道でも非常に大変な実情が出されました。これに対して具体的な規制措置等含めた御意見ございましたら。
  47. 溝和成

    参考人(溝和成君) 農地の価格高騰を抑制する方策、これはいろいろ前者参考人方々からもお話ございましたように、なかなかこの決め手というものはむずかしかろうというふうに考えるわけですが、やはり農地の高騰の原因等を探ってみますときに、これは何としても農地農地としての移動による高騰という要素はきわめて少ない。やはり何らかの形で転用される、あるいは買い占めをされる、そういう状況が大方の原因で農地の高騰が進んでおるということはこれは明白でございますので、やはり土地行政といいますか、そういうものが徹底して行われる——いわゆる転用の場合に何らかの農外資本、特に小さいものでは不動産業者などがそこに必ず介在して、そこに不当かどうかはわかりませんけれども、私どもから言わせると、非常な高利を得る中で運営というか、土地が動かされていっている、そういうことが回り回って農地の高騰を引き起こしているというふうにまず一つ考えざるを得ない。したがいまして、土地価格の抑制というのは、そうした土地政策の中で、土地の流動を円滑にするということもさることながら、そこに携わるそれぞれの機関、業態、そういうものへの強い行政指導が当然国の責任で行われる必要があるだろうというふうに考えております。
  48. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございます。  最後に山内参考人、先ほどいろいろ御意見をお聞かせいただいて、最後に申されておりました二種兼農業の位置づけのことで御要望等特にございましたら、現在の政府農政等の方向も含めてお聞かせいただきたいと思うわけです。
  49. 山内偉生

    参考人山内偉生君) 二種兼農家が、先ほど来各参考人からお話ございますように、農村社会の中で安定的な構成員になっておりますし、私も参考意見で申し上げましたが、かなり高度の農業技術あるいは経営の手腕がございます。そういった意味で、しかもこの方々はやはり土地をそこに持ってずっとこれまで生活してこられた方々ですから、今度の農用地利用増進事業等を、いわゆる中核農家に土地を集積するというような短絡的な考えではなくて、そういった方々の技術も生かすような方向で、二種兼農家も含めて、集落全体がこの事業で動いていくというような方向で行政指導をしていただきたいと、そういう要望でございます。
  50. 青井政美

    委員長青井政美君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑は終わりといたします。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、皆様には、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席を賜り、大変貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会      ——————————