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国務大臣(
武藤嘉文君)
農業災害補償法の一部を改正する
法律案につきまして、提案理由を御
説明申し上げます。
現行農業災害補償制度につきましては、制度創設以来すでに三十有余年の歳月を経過しておりますが、その間に、この制度が災害対策として農業経営の安定のため多大の寄与をしてまいったことは御
承知のとおりであります。
しかしながら、果樹共済、蚕繭共済等の制度運営の
実態を見ますと、制度が農業事情の変化等の実情に即応していない面があらわれております。
政府におきましては、このような事情にかんがみ、特に果樹共済につきまして農業及び農業共済に関する学識経験者の
意見を徴してまいったほか、
関係各方面の
意見を徴して慎重に検討してまいりました結果、補償内容の充実と合理化を図ることを旨として農業災害補償制度の改正を行うこととし、この
法律案を提出した次第であります。
次に、
法律案の主な内容について御
説明申し上げます。
まず第一は、果樹共済の改善と合理化であります。
その一は、果実の
単位当たり価額の設定方法の改善であります。
現行の果実の
単位当たり価額は、果樹の種類ごと及び都道府県の区域ごとに定めておりますが、品種間、
地域間等の
価格の格差を十分反映するようこれをさらに細分して定めることができるようにすることといたしております。
その二は、共済掛金率割引制度の導入であります。
果樹
農家の被害発生の
実態等に応じて共済掛金率の割り引きを行う制度を導入することといたしております。
その三は、損害のてん補
方式の改善と合理化であります。
現行の収穫共済では、
農家単位で三割を超える被害があった場合に共済金を支払う
方式となっておりますが、損害
評価の効率化に資するため、園地
評価により収穫量を把握する
地域につきましては、被害園地のみの減収量を
農家単位で合計し、三割を超える被害があった場合に共済金を支払う
方式を導入することといたしております。
なお、共同出荷施設の
資料を利用して収穫量を把握することができる
地域につきましては、
農家単位で二割を超える被害があった場合に共済金を支払うことといたしております。
その四は、災害収入共済
方式の試験実施であります。
現行の収穫共済は、
農家ごとに収穫量が
減少した場合に、その減収量に応じて共済金を支払う
方式となっておりますが、
農家の損害の
実態に一層近づいたてん補を行うことができるようにするため、当分の間、災害により収穫量が
減少した場合に損害の額を収入の
減少額により把握して共済金を支払う
方式を実施することといたしております。
なお、以上のほか、樹体共済の共済金支払い
方式の改善、果樹共済の組合等手持ち責任の選択的拡大等所要の整備改善を行うことといたしております。
第二は、蚕繭共済の充実と合理化であります。
その一は、引受
方式の改善であります。
現行の蚕繭共済は、
農家の掃き立て箱数に応じて共済金額を定めることとなっておりますが、一箱
当たりの収繭量は
農家間で格差がございますので、
農家の
生産力に応じて共済金額を定める収繭量建制を採用することといたしております。
その二は、共済金支払い開始損害割合の引き下げであります。
現行の蚕繭共済の共済金は、
農家ごとに三割を超える被害があった場合に支払うこととなっておりますが、最近における被害発生
状況にかんがみ、二割を超える被害があった場合に支払うことといたしております。
以上のほか、蚕繭共済につきましては、共済事故を拡大することといたしております。
第三は、家畜共済の改善であります。
畜産振興の重要性及び最近における
畜産経営の
実態にかんがみ、
農家負担の軽減による加入の促進を図るため、馬及び肉豚に係る共済掛金の国庫
負担を引き上げることといたしております。
以上がこの
法律案を提出する理由及び主な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。