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参考人(
高垣節夫君) 御指名をいただきました
日本エネルギー経済研究所の
高垣でございます。
本日の議題でございます
電源開発促進税法の改正につきまして、その背景となっております世界全般の
エネルギー事情並びに
わが国の抱えておる問題点につきまして、若干、私見を述べさせていただきたいと思います。
すでによく
御存じのように、昨年以来、第二次オイルショックということで、将来の
石油供給に不安が持たれているわけでございます。したがいまして、
電源多様化に関しまして提案のような
電源開発促進税の増徴ということが議題になっておるわけでございますけれど、私の大前提としての認識によりますと、昨年来、あれほど
エネルギー問題あるいは
石油問題が騒がれてきておるわけでございますが、どうももう
一つその問題の核心が、
わが国で明らかにされていないのではないかというふうに思うわけでございます。
いろいろといまお二人の
参考人から具体的な御
意見が出ておるわけでございますが、これらの問題点を明らかにいたしますためにも、こういった世界全般の事情というものを、もう少しきわめておく必要があるのではないかと、こういうふうに思います。
どういうことかと申しますと、昨年来、たとえて申しますと、国際
エネルギー機関——IEAというような
機関がございまして、盛んに
石油の
消費節約、五%の節約ということを
日本にも要求し、他のIEA加盟国にも要求してまいったわけでございますけれど、どうもこういった権威ある国際
機関の
説明にしてみますと、
説明の要旨というものが、たとえばイラン問題に端を発し、また、イランの
石油減産ということにかこつけてのみ
説明されているわけでございますが、今日の中東産油国の諸情勢はそれほど簡単ではございませんで、イランが深刻であることは言うまでもございませんけれど、いわゆる湾岸諸国と申します中東の主要な産油国全般が将来の
石油の増産について積極的でない、意欲的でないという
状況の変化が起こっておるわけでございます。
これは、一九六〇年代から七〇年代を通じまして、ほとんど追加的な
エネルギー供給の三分の二をこの
石油に依存してまいりました先進工業国の将来にとって、きわめて深刻な問題が生じていろわけでございますが、先ほど申しましたように、国際
エネルギー機関のその後提起した問題は、単なるイランの問題であり、彼らの提示いたします
エネルギー見通しにいたしましても、OPECが将来一日当たり三千八百万バレル生産するとか、その後訂正いたしまして三千五百五十万とか、最近は三千二百万とか、きわめて中東原油の、あるいはOPECの原油生産見通しについては不確かな数字を前提にして議論しておりまして、これではわれわれが当面しております問題の本質というものが明らかでない。
中東産油国は、脱
石油化、工業化ということを日指しまして増産、増収ということで今日までまいっていたわけでございますが、残念ながら、この工業化
努力というものがうまくいかないと。イランのように工業化に
努力した国ではインフレが激しくなっておりますし、その他人口の少ない湾岸諸国におきましては、むしろ外国人労働者のはんらん云々という社会的な困難に直面し、中東産油国全般を通じまして、
石油の増産は今後恐らく望みがないというのが現状でございます。
こういうことになってまいりますと、先進工業国全体といたしまして、今後一体何によって
エネルギー供給を賄うかという深刻な問題が出ておるわけでございますが、今日に至るまで明確にそのような形で問題の提起がなされたことがない。
昨年の六月に東京サミットでこういった問題が別の形で、つまり、
石油輸入の水準を現状でとめるという形の提案があたかも唐突な提案のような形で出されて、非常に
わが国としてはこれの対策に苦慮したわけでございますけれど、ただいま申しましたような中東産油国の諸事情からいたしますと、これは
わが国にとっては非常に厳しい条件ではございましたけれど、私の考えによりますと、きわめて適切な問題提起である、このような深刻な状態を世界じゅうの人々が明確に認識して今後に対処しなければ、今後われわれの
経済は保っていけないという事情があったように思います。われわれ自身がこのような問題の深刻さというものを十分
理解して、今後にいかに対処するかというのが大前提だろうとも思う次第でございます。
この件につきまして、しかし、ただいま
検討されております
電源開発促進税も含めまして、いかにわれわれが対処するかということにつきまして、二点ばかり私の考えを述べさしていただきたい。
第一の問題は、
代替エネルギー、
石油にかわる
エネルギーを
開発促進するということは、これはもう自明の必要な事項でございますけれど、問題はこれのタイミングをどう考えるか。もう
一つは、その
中身をどう考えるか、つまり、いかに
運用するかという問題であろうと思います。
タイミングの点は比較的簡単なことでございまして、これはOPEC諸国の現在の考え方から推察いたしますと、当面、第二次オイルショックと言われておりますように、世界の景気はやや沈滞ぎみでございまして、恐らくここ二、三年あるいはもし長引けば四、五年間、つまり、一九八〇年代の前半あたりまでは現状
程度あるいはほんのわずかのOPECあるいは非OPEC産油国の
石油の追加的な生産が望めれば何とかやっていけるという状態でございますけれど、次の段階、つまり世界
経済が少しでも上向く段階に入った時期には、これは大変な
エネルギー需給の逼迫ということになるのが目に見えておるわけでございまして、その時期が一体四年後なのか、五年後なのかということでございます。
その時期に間に合うような体制で代替の
エネルギーあるいは代替の
電源というものが完成しておりませんと、いわゆる十日の菊と申しますけれど、われわれの
目的としておるところに到達しないという点が
一つあるわけでございます。そのような資格条件を持った
エネルギーは一体何であるかということについて、われわれは十分見きわめをつけた対策を進めていかなければならぬだろうということでございます。
第二の点は、その
中身の問題と申したわけでございますけれど、この点につきましては私
どもと、あるいはそのOPEC諸国の指導者
たちとの間にはかなりの見解の差があるように思います。どういうことかと申しますと、普通考えられることでございますが、ただいま申しましたように次の景気局面、つまり景気が上昇してまいりまして需給逼迫ということになりますと、恐らくOPEC諸国の期待しておりますのは、
代替エネルギーというのは
石油よりも
開発コストが高い、現在の価格をもって比較をしてすらさらに高いだろうというふうな考え方を持っております。
昨年来の非常に大幅な原油の価格の
引き上げもいろいろ構成要素がございますが、私の考えでは、依然として一九七二年価格で申しまして一バレル十ドルという水準を守る、あるいは維持するという、やや防衛的な性格を持った修正の
値上げであったというふうに思います。しかし、OPEC諸国は、もし将来、恐らく一九八〇年代後半になりましょうけれど、本当に
石油需給が、あるいは
エネルギー需給全般が逼迫してまいりますと、さらにさらに
値上げ圧力が加わってまいりまして、先ほど申しました実質価格、一九七二年価格で申しまして一バレル十ドルを維持するというのではなくて、さらに攻撃的な、
代替エネルギー開発コストに等しい値段を要求すると。
具体的に申しますと、これが恐らく実質一バレル四十ドルから五十ドルと、時折すでに新聞でそういった数字を散見いたします。五十ドルという数字が彼らの口から時折出ておるのもそのあらわれだと思いますし、いま開かれておりますOPECの長期戦略
委員会で容易にその考え方がまとまらないと言われておりますのも、ただいま申しましたような実質十ドルを維持すれば足りるという、これでも大変でございますが、やや穏健派と言われる考え方と、早期に将来を予測して
代替エネルギーの
開発コストにリンクせよという、こういう
意見の対立がその底にあるかと、私は見ておるわけでございます。
われわれが考えております
石油にかわるべき
エネルギー、あるいは
石油火力にかわるべき
電源と申しますものは、そのように進んでOPECの原油価格をつり上げる指標としての
電源であってはならぬだろうと。いわゆる
石油にかわる
エネルギー源というのはいろいろございまして、当面役に立つようなものもございましょうし、あるいは二十一世紀にかけてこれもあるいは可能かもしれないという
研究開発の段階にあるものもございましょう。
今日の段階で申しますと、そういったいろんな角度からいろんなアイデアが多方面から出ておるわけでございますけれど、OPEC諸国が腹の中で考えておりますように、行く行く
代替エネルギーを先進工業国が
開発に手を染めたならば、それは自動的にOPECの原油価格の
引き上げを正当化するようなものである。われわれは、そういった内容のものをそのとおりに進めていくというのは、非常にこれは戦略的にまずいわけでございまして、御承知のように、幸い
わが国で有力な
石油代替源あるいは
電源多様化の内容と申しますものは、恐らくこれは
原子力であり、あるいは
石炭火力であり、現在の
石油価格に比べてより安い
エネルギー源であるに違いないわけでございます。
こういったタイミングを失しないように、しかもこれ以上の
石油価格を刺激するような内容のものでないような、具体的に
経済性を保ち得るような、その計画に的をしぼった対策でなければ、われわれの本来の
目的は達せられないであろうと。いろいろ先ほどお二人の
参考人の
方々もおっしゃられましたけれど、現在出ております
電源多様化対策というものがいろいろな形で姿をあらわし、また
使途についてもいろいろ御
意見が出されたわけでございますが、私は私の
立場から見ますと、そのタイミングとその
経済性あるいはそういった二点から十分的をしぼった
運用というもの、これについて御考慮願いたいというふうに思うわけでございます。
簡単でございますが、私の
意見はこれで終わります。