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国務大臣(
竹下登君)
国会開会中に特にお許しをいただいて一連の
国際会議に
出席をしまして、
各国の
蔵相、中
銀総裁等と、当面する
世界経済の諸問題について対談することができましたこは、さきに
お礼を申し上げましたとおり、私自身にとっても大変幸せなことでありました。
そこで、まず最初が、この今次
暫定委員会の概要でございますが、
暫定委員会におきましては、
世界経済に対する共通な
認識、言ってみればインフレの高進、成長の低下、そうして御
指摘もすでにありました
産油国と
石油輸入国との間の
国際収支の大幅不均衡、いずれもこれは深刻な問題であるという点は、共通した
認識であったと私は
理解をいたした次第でございます。
そこで、先ほ
ども御
指摘がありました、
IMFがいわばそういう
産油国と非
産油国、また、なかんずく非
産油開発途上国、これらの
関係の中において
国際収支の調整あるいはファイナンスをどのようにするかということは、
お互いケース・バイ・
ケースで
努力をするとともに、今後の
課題としても、それらの三者の組み合わせをどういうふうにしていくかということについて共通の
認識であったように
理解をいたしますので、引き続き
理事会等におきまして、私はこれらが議論される中心的な
課題になるであろうというふうに考えておるところであります。
ただ、
IMFにいたしましても
世銀にいたしましても、
公的機関が果たす
役割りということはこれまたやはり補完的な
役割りであって、これがすべてではないという
認識も、また一致しておったというふうに思うわけであります。
それから、次の
議題といたしましては、
代替勘定構想というのがございまして、これは要するに、
ドルというものが
基軸通貨であるものの、これが絶えず変動をいたしますと、そこにSDRというような
構想が
一つあるわけでございますが、さらに
各国で共通した、何と申しましょうか、
各国がそこへ、
代替勘定に預託いたしますものが、共通した安定的な基準になっていくような
仕組みというものを考えるという苦心の作であったように思うのでありますが、私といたしましては、
ドルのみに頼る時代というものは、いまいっときはたとえ
ドルがかつてよりは安定したという様子が見えても、中長期的に見てそういうわけにはまいらないから、小異を捨てて大同につくべきであるという
主張をいたしました。しかし、どうも
各国とも、一体リスクはだれが負うのか、すなわち、アメリカさんおまえの方がよけい負えというのと、そうであるべきでないというようなところで、まだ合意を得なかったわけであります。
いま
一つは、また
先進国と
後進国の間で、
後進国の方は、そういう
勘定ができることよりも、もっとわれわれが
世銀等で借りられる範囲が広まればそれでいいじゃないかと、こういうような
発言もございますので、結局このことは、まあ私に一番よく
理解できる
言葉といたしましては、
日本の
国会式な
継続審議と、こういう感じになったわけでございます。そういう
言葉を使って私がそういうふうに
理解したわけでございますので、
各国の諸君が
継続審議というのがどういうふうに
理解できたかはわかりません。
それから次に、
マニラで開催されました
アジア開発銀行の第十三回の
年次総会でございますが、これは、第二次
石油ショック以後困難な状況で、
先進諸国、
開発途上国、
産油国、非
産油国、それぞれ密接な
協力が必要であること、そういうことと、これはまた
IMFとは大変さま変わりしておりますのは、いわゆる
農業開発、教育、まあ
文盲追放という
内容になるわけでございましょうが、そういう
分野での
自助努力というものを
後進国に対して名国とも共通して要請をし、そうして
先進国もこれらに対応して御
協力を申し上げようと、そういう
印象を強くした
会議でございました。
したがって、私
どもとして最も注意を払いましたのは、
日本が
出資国として第一等の地位にもございますし、そして一人
当たり国民所得等から見ても圧倒的な高水準にありますので、いたずらに
アジア太平洋地域の
開発途上国の人々に対し余り鼻についた
指導的発言をしてもならないし、その
方々の
立場に立っての
発言を
理解する
努力をしてきたというのが実態であろうというふうに思うわけであります。
それから次は、
個別会談でございますが、
ミラー財務長官とは時間も十五分ばかりでございましたが、私の方からは、双方の
通貨価値を維持するための
スワップ協定というものが今日
それなりの効果をもたらしておるという
認識についての
感謝を申し上げました。
向こうからは、非常に広範な、
自動車問題等日米経済摩擦が起こらないように、今後とも
お互いに協調していきたいという
趣旨でございました。
それから、
ドイツの
マットヘイファー大蔵大臣に対しましては、
向こうの方から、先々月でございましたか、
日本へいらっしゃいました折に、
トルコ援助の点について
日本政府に
協力を求められて、われわれのそれに対するこたえ方に対する
感謝の
言葉をいただきますと同時に、私からも、その日の午後三時に
日本銀行と
ドイツの連銀との新しく通貨安定のための
スワップ協定を結ぶという、両
中央銀行の
総裁によりますところの
同時記者会見を行う手はずが大体調ったという意味における
お礼を申し上げておきました。ただ、ちょうどそのとき
電話が入ってまいりまして、イランの
人質救出作戦の失敗というようなことが報ぜられたものでございますから、若干
しり切れトンボに終わった感はございました。
それから、次のアル・クライシさんにお会いをいたしましたのは、これは事前に
大竹審議官、佐上
財務官等サウジを訪れる
機会に幸い恵まれましたので、ぜひ
IMFの
暫定委員会等において
大蔵大臣がお会いをしたいと言っておる旨を申し上げておりましたところ、快く
朝飯会に臨んでいただきましたので、これは直接何かの御
提案がございませんかという
趣旨の御
発言があるにはありましたものの、私
どもといたしましては非常に
日本への
投資意欲というものが強いという
印象を受けておりましたので、格別具体的な問題の提示をすることは今後の問題として残したわけでございますけれ
ども、三週間以内、恐らく十日以内ぐらいでございましょうが、第三次五カ年
計画の発表をしたいので
日本においても可能な限りの、恐らくこれはいわゆる
援助じゃございませんから
技術協力等々の
分野で力を注ぐ
分野があれば検討してもらいたいと、これが本当のリサイクリングだというような
発言もございました。
そのほかは、具体的な問題につきましては、
日本銀行とSAMA、すなわち
向こうの
中央銀行との、特に
中央銀行の公式に言えば資産の
運用でございますから、わが方といたしましてはそれだけ
外貨準備がふえてくるとか、いろんなもちろんメリットはございますけれ
ども、月額五百億円を限度として国債に関する
運用を
日本銀行へ委任するというようなことがほぼ固まった段階でございましたので、そういうようなことにつきまして将来とも問題があったら手紙でもいいし
電話でもいいし、直接御
提案をいただければというような御
趣旨の
発言でございました。特に、新たなる問題を提起して、そこで物を決めようということを初めから考えておったわけではございません。
少しく饒舌にわたりましたり前後いたしましたが、以上のような
内容が、やや詳しい
内容の御
報告ではなかろうかというふうに考えております。