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1980-04-24 第91回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二十四日(木曜日)    午前十時十六分開会     —————————————    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     野口 忠夫君  四月二十三日     辞任         補欠選任      野口 忠夫君     丸谷 金保君      竹田 四郎君     小谷  守君      和田 静夫君     栗原 俊夫君      福間 知之君     松前 達郎君      鈴木 一弘君     原田  立君      渡辺  武君     河田 賢治君  四月二十四日     辞任         補欠選任      塚田十一郎君     真鍋 賢二君      中村 太郎君     金丸 三郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         世耕 政隆君     理 事                 浅野  拡君                 細川 護煕君                 矢追 秀彦君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 河本嘉久蔵君                 坂野 重信君                 嶋崎  均君                 藤井 裕久君                 藤田 正明君                 真鍋 賢二君                 小谷  守君                 片岡 勝治君                 栗原 俊夫君                 松前 達郎君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 原田  立君                 河田 賢治君                 佐藤 昭夫君                 市川 房枝君    国務大臣        大蔵大臣臨時代        理        正示啓次郎君    政府委員        経済企画庁総合        計画局審議官兼        物価局審議官   戸田 博愛君        大蔵政務次官   遠藤  要君        大蔵大臣官房審        議官       水野  繁君        大蔵省主計局次        長        吉野 良彦君        大蔵省国際金融        局次長      大場 智満君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十三日、鈴木一弘君、渡辺武君、竹田四郎君、和田静夫君、福間知之君が、また本日、塚田十一郎君、中村太郎君が委員辞任され、その補欠として原田立君、河田賢治君、小谷守君、栗原俊夫君、松前達郎君、真鍋賢二君、金丸三郎君が選任されました。     —————————————
  3. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。正示大蔵大臣臨時代理
  4. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国際通貨基金に関する部分について御説明申し上げます。  最近の世界経済情勢下において、国際通貨基金世界経済発展に応じた融資能力の拡充を図ることが必要と考えられ、このため先般その資金規模現行の約三百九十億特別引き出し権から約五百八十六億特別引き出し権へと五〇%増額することが合意されました。これに伴い、各加盟国出資額を原則として一律五〇%増額することとされ、わが国としても、世界経済発展に貢献する見地から、出資額現行の十六億五千九百万特別引き出し権から二十四億八千八百五十万特別引き出し権へと五〇%増額したいと考えております。  次に、国際復興開発銀行及び国際開発協会に関する部分について御説明申し上げます。  国際復興開発銀行は、通称世界銀行の名で知られておりますが、わが国任命理事国として、より積極的にその運営に関与するため、わが国発言権を増加させることとし、四億協定ドル追加出資を行いたいと考えております。  また、国際開発協会は、世界銀行姉妹機関として、貧困開発途上国に対し緩和された条件融資を行っておりますが、今般、本年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金を賄うための総額百二十億ドル資金補充が合意されました。わが国は、これに参加するため三千九百四十二億千六百二十二万円の追加出資を行いたいと考えております。  このため、本法律案により、以上の三機関に対する出資額増額に必要な規定を設けることとし、この法律の成立後、各機関に対し、わが国割当額を引き受ける旨の正式通告を行いたいと考えております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 丸谷金保

    丸谷金保君 この一連の国際協力の問題についてでございますが、外国から聞こえてくる話ですと、どうも先進諸国の中で日本経済援助が各般にわたっておくれておると。国際通貨基金につきましては、ボンサミットでの福田公約をパーセントではある程度達成しておりますけれど、GNP換算になりますと、やはり他の先進国よりは相当おくれておる、こういうふうな状態でございますけれど、これは一体、日本財政的に非常に苦しいというふうなことが原因なんですか、それとも他のファクターがあるのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  7. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 必要に応じまして、数字的なことは政府委員から御答弁申し上げますが、本年は、丸谷委員よく御承知のように、財政再建元年といたしまして、諸般の財政需要に対しましては厳しい斧鉞を加えておるわけでございますけれども、この国際協力関係につきましては、特に優先順位を認めまして、相当程度の予算の増額を行っておることは、後で数字的に御説明を申し上げます。したがって、財政的にも非常に苦しいときでございますけれども日本としては、日本経済力にふさわしい国際的な役割りを果たすべく今後とも一層の努力をしてまいりたい、かような考えでございます。  なお、数字については、政府委員から御説明をいたします。
  8. 大場智満

    政府委員大場智満君) ただいまの大臣の御説明に関しまして、若干数字を申し述べさせていただきたいと思いますが、わが国政府開発援助、いわゆるODAでございますが、最近年、一九七八年で見てみますと、二十二億一千五百万ドルとなっております。これを各国と比べてみますと、確かに御指摘のとおりでございまして、米国は五十六億六千四百万ドルフランスが二十七億五百万ドル西ドイツが二十四億一千八百万ドルでございまして、わが国が四位ということになっております。しかし、わが国ODAが着実に伸びていることもまた事実でございます。  次に、DAC全体のODAに占めるわが国シェアでございますけれども、これは一九七〇年が六・七%でございましたけれども、これが一九七八年には一一・一%ということで、シェアは拡大してきております。しかし、御指摘のように、量的にまだODA総額では、フランス西独等に次ぎまして第四位になっております。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 私のお尋ねしたいのは、そういう状態でおくれている理由は何であったのか、このことをお聞きしておりますので、その点についてお答え願いたいと思います。
  10. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただいままで、やはり日本は、丸谷委員が御指摘のように、財政再建元年はことしからの問題でございますのに、いままでおくれてきておったじゃないかと、こういう点については、私どもも深く反省をいたしておるわけでございまして、もう少し積極的に、こういう面で努力をすべきである、いわゆる三年間倍増計画等を打ち出しましたのもそういう点からでございまして、いわば大変申しにくいことでございますが、いままでは若干そういう方面に関心が薄かった、あるいはもっと限界を広くして、世界のこの国際協力面において活躍すべきであったという反省を込めて、ただいま申し上げたような努力をいたしておる、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 重ねてお聞きしたいのですけれど、反省を込められるのはいいんですが、反省するためには、従来のことに対する反省がなければならないと思うのです。最近、非常に外貨事情も悪くなってきているこういう状態の中で、反省を込めて、できるだけ先進国に追いつくような努力をしようと。ところが、ドルが非常に余ってドル減らし努力した時代、あの時代にどうしてもっと積極的な国際協力各種基金の支出ができなかったのか、この点がどうもわからないのでお聞きしているわけです。
  12. 大場智満

    政府委員大場智満君) 確かに、わが国国際収支黒字が高かった時代、いまこの時点で申し上げますと、高かったときということになってしまうのでございますけれども、この時期には私どもも、たとえば先ほど御指摘になりましたODAの三年倍増ということで、他国に比べまして格段の努力をしたことはお認めいただきたいと思います。  数字を申し上げまして大変恐縮でございますけれども基準年でございます昭和五十二年は、ドルベースで十四億ドルODAでございましたが、これが翌年には約二十二億ドルに達しております。これは最終年次がことしでございまして、二十八億ドルでございますから、いま二十八億ドルに向けての努力をしている最中でございますけれども、私は、やはり日本としまして、このODA三年倍増というのは、この黒字時代にかなりの努力を払ったということだと思います。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 いや、いま努力しているのはわかるのですよ。数字でも出てきておりますし、ボンサミット福田さんが約束した線にやや近づいているということで、七七年を基準にとってみても、三年間で倍増するということは、表上ではなっております。しかし、中身についてはいろいろ問題があると思います。ただ、そういう外貨事情が悪くなってきてから非常な努力をすることと、その前の事態で、外貨事情が非常によくて、いろんなことでドル減らしをしなければならないという時期になぜできなかったのか、なぜしなかったのかということが、どうもただいまの御答弁では何とも理解できないのですが、もう少しわかるように、その当時なぜできなかったのか、そうして苦しくなってきてから努力している。それはわかるのです。これに出ておりますからね。  その前にどうしてできなかったのかということが解明されませんと、今後の見方についてもどうも釈然としない面が出てくるので、まあ皆さんにそのことをお聞きしても、前の人がやったことなんでと言われればそれまでですけれど、しかし、やっぱり政府は続いているのですから、事務ベースでも、恐らくおわかりになるのじゃないか。どうしてそういう日本状態だったのかということについての反省をするなら、いまの反省でなくて、いまは努力しているのですから、前の反省がなければならない。そこのところをひとつ。
  14. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 丸谷委員の御指摘まことにごもっともでございますが、油が安いころはどんどん輸入ができまして、そして輸出が非常に盛んに行われる、黒字がたまる、こういうことであったと思うのでありますが、そのころは高度経済成長という内政的な要請にこたえて、国内におけるいろいろの拡大政策発展政策が講ぜられたことも、また御承知のとおりです。これに対しまして、最近は油の関係なんか非常に変わりまして、これを獲得するためには、やはり基本的に国際協調国際協力ということが非常に大事である、こういうことが一方で痛切に感じられておるわけでございます。  そういう先を読んで、先手先手国際協力の網を強めていくということが、非常にこれは賢明な政策であるわけでございますが、悲しいかな、やはりそのときそのときの情勢に応じまして、財政というものは手段でございますから、時の政策に引っ張られてやってまいったわけでございますが、今日私どもは、この原油の大変な暴騰というふうな苦しい試練に直面をいたしまして、とにかく遅かりしとはいえども、先ほど申し上げたような深い反省のもとに、本当国際協調国際協力の実を上げていくことこそ日本国民繁栄日本経済発展、そういうことの本当の道に通ずるものであると、こういうことがだんだんとわかってきてそういう正しい方向にいま進みつつあると、こういうふうに私は理解を申し上げておるわけでございます。
  15. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、この問題全体としてとらえますときに、私はひとつそういう意味反省をしていただきたいことの第一点は、外部の声に気を使って、外の声の大きい小さいによって日本対外援助政策が揺れ動いてきたんだと。サミットなどでわんわん言われれば、いややりましょうと、こういう姿勢になるけれど、ドルがあり余ったときでも、日本国内あるいは政府自体が、これはもう開発途上国に対する援助というふうなことは長い目で見た日本政策の上で大変大事なことだというような、しっかりした政策展望の上に立って事を処していっていない。したがって、外から強く言われればそうですかというふうな形で、何といいますか、非常にありがたみのない出資のあり方にあらゆる面でなっているんじゃなかろうかと、こういうふうに考えるんですが、そういう点についての反省はございませんですか、政府側に。
  16. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 申し上げたように、私どもとしては第一次石油ショック、第二次石油ショック、こういうことによる反省を痛いほどいたしておるわけでございます。特に資源有限、ことにエネルギーの石油からの脱却というふうなことを痛切に感じて、本当政策を転換するというか、新しい政策への出発として一九八〇年を位置づけておるということも、私はきわめて歴史的な大きな転換だと思っております。それからまた、経済は一国だけで繁栄するものじゃないのだと。一国の経済繁栄というものは、世界経済繁栄あって初めて繁栄するのだと。いわゆる世界連帯というか、協調というか、こういう認識についても、やっぱり私は最近になって初めてみんなそういうふうな関心が深くなってきたのだと思うのであります。  いま御指摘のように、低開発国等成長発展あってこそ初めて日本経済も堅実な成長発展ができるのである、こういう体験からの認識を深めることによりまして着実に経済協力を進めていく、しかも、それは自国本位開発だけじゃなくて、その国の本当の正しい成長発展につながるようなそういう協力をやっていくのだ、やっていかなければ本当意味親善関係というものは構築されないのだというふうな認識、これらのことは、やはり苦しい体験を通じまして学び取った貴重な教訓である、かように考えて、これからも政策を進めてまいりたいと考えております。
  17. 丸谷金保

    丸谷金保君 相互に補完し合いながら、世界とか人類という立場での繁栄を求めていかなきゃならぬというお答えだと思いますが、そこに経済の面だけが非常に強く出て、ですから、強く言われれば、それじゃある程度やっておかないとそれぞれうるさいし、マイナスのある面も出てくるから急いでやらなければならぬ、そういう視点が第一点。  いわゆる長期の大きな政策展望の中に、やはり開発途上国なりそういう人類とか世界というものを踏まえたもっと人道主義的な意味での国際連帯感、国際的な責任感、こういうものがいまの政府政治姿勢の中にどうも余り見当たらないんですが、そういう角度での反省というふうなことは行われておりますか、どうなんですか。
  18. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 一番大事な点を御指摘になったと思います。日本インドシナ半島等問題等について、ただいままで難民の救済等で非常に強い批判を受けたことはもう私もよく承知をいたしておりますし、日本国民全部よく御承知のことだと思います。本当にいま丸谷委員が言われましたように、経済繁栄というふうなことだけが眼目ではなくて、人類共通の幸せを増大していくという、いわば崇高な人道主義的な見地を忘れることなく国際協力を進めていくべきであるという御見解は、私も全く同感でございます。
  19. 丸谷金保

    丸谷金保君 見解はおわかりいただけると思うんですが、そういう点での政府のいままでの海外援助姿勢の中にそういうものがなかったという反省を行うということにはなりませんか、どうもそういう気が強くするんですけれど。
  20. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただ単なる物だけではなくて心の問題、あるいは物質的なものではなくて精神的な問題、経済的な問題だけではなくて人道的な問題、こういうことをわれわれは深く反省をして、これからも国際的な政策を進めてまいりたいと考えます。
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 たとえば、そういうことのあらわれが今度のDAC加盟国の中で顕著にあらわれているのは、日本海外援助の質的な問題なんです。一つは、たとえば表上の数字でこれだけやったんだということだけが強く出ます。しかし、たとえば七七年の基準で三カ年間で倍増するという当時の福田大蔵大臣公約、これも確かに表上ではある程度達成しておりますけれど、中身に入りますと、DACの十七カ国のGNPに対する協力度は、協力基金について〇・三二%、日本は〇・二三%と、非常にそういう点では、中身について言いますと本来もう少し積極的でなきゃならないのが、要するに数字の上だけで見ていくと。  それからもう一つ、たとえば政府開発援助の方にしても、利率とか期間とか、こういうような中身援助になりますと、DAC平均中身は大変これも低くて、無償率に対しては七九・九%というふうな他の国に比べて非常に条件の悪い海外援助、こういうことが行われている。したがって、受ける方では、確かに金額ではある程度そろってきたとしても、中身の点では日本という国は何てがめつい国だろうと、こういうことにつながってきている気配が非常に大きいように思うんですが、また、そういうような報道もしばしば行われます。これらについてはどうなんですか。やはりこれも冒頭申し上げましたように、確たる海外援助の、ある意味では人道的な面も含めた長期政策というものが確立していないというところに、こういう面でのおくれが出てきているのではないかと思うんですが、いかがですか。
  22. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) やはりそういう点について心が通うと申しますか、同じ出すならば、本当にほかの国に比較しても日本という国はそういう点でも十分配慮してくれておるというふうなことが、やっぱり大事なモメントであることは、私どももそう考えておるわけでございまして、これを援助条件とかグラントエレメント程度というふうな表現で言っておりますが、だんだんと反省を込めまして改善を見ておるわけでございまして、一九七八年はグラントエレメントが七五%になりました。これはいま御指摘のように、DAC平均の八九・八%よりは下回っておりますが、だんだん高くなってきた結果でございます。  また、アンタイ、いままでひもつきというふうなことで日本に非常にリターンを求めておったのを、これを六九・一%に高めまして、先進国平均の六六・一%よりもアンタイの率が高まっておると、こういうことでございますが、このグラントエレメントにつきましては、今後とも相手国自助努力を支援することの観点から、一層努力をして、欧米諸国にも遜色のないようなそういう成果を上げたいと、かように考えておるわけでございます。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、グラントエレメントの問題でございますけれど、いま七八年で比較されましたが、七六年日本は七四・九、それからDAC平均が八八・五。七七年日本が七〇・二、DAC平均が八九・三というふうに、平均値がずっと上がってきております。その中で、どうして七七年日本が逆に落ち込んだのか、これは何か特別の理由があるんですか。
  24. 大場智満

    政府委員大場智満君) ただいまの、数字で申し上げますと、一九七七年でございますか、確かにDAC平均が八九・三%であるのに対してわが国グラントエレメントは七〇・二%でございます。  理由でございますが、長期的な理由とこの年の理由と二つあるかとは思うのでございますが、この年の理由長期的な理由にもなるかもしれませんが、一つは、わが国援助がやはり借款が多いということだろうと思います。これは先ほど大臣からも御説明がありましたように、相手国自助努力を支援するという観点から、私どもはかなり借款が重視されてきている事情を認めざるを得ないと思います。それが、一つグラントエレメントに影響していると思います。  それからもう一つは、やや長い目で見た場合に、たとえばグラントエレメントが高いフランスと比べてみますと、フランスはやはり長い歴史といいますか、アフリカ諸国とのつながり等がございまして、そういった歴史的背景グラントエレメントを高まらせているという面も指摘できるかと思います。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、この種の問題でフランスフランスの方といろいろ話をしたときに、こういう点を指摘されました。私は、そのとき、率直にフランスに対しては言えるんです。あなたたちは、いままで植民地からどんどん持ってきていたじゃないか、あなたたちはそれを返すんだから当然のことをやっているので、贖罪の意味があるんだぞと、そんなのと一緒にされたら困るよと。しかし、西ドイツの場合はそういう点は余りないんですね。ですから、西ドイツと比べてどうなんですか。西ドイツはやっぱりその点で、そういうフランスのような歴史的な問題というのはないわけなんですからね。どうも答弁される場合には、一番都合のいいところの数字で逃げられるんで、もう少し全体的にひとつ。
  26. 大場智満

    政府委員大場智満君) 御指摘のように、西独の場合には先ほどの一九七七年の数字で申し上げますと、DACグラントエレメント平均八九・三%に対しまして八五・六%でございます。それから一九七八年は、DAC平均八九・八%のときに、先ほど日本は七五%と申し上げましたが、西独は八七・四%でございまして、平均よりは低いのですが、日本よりも高いという事情がございます。これは西独技術協力とか、あるいは無償援助にやはり力を入れているということでございまして、この点、私どもも今後の援助を進めるに当たりまして、この技術援助とか、あるいは無償援助の方にも力を入れていかなければならないというふうに考えております。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、第三点に入るんですが、実はたとえば旧宗主国がいろんな意味歴史的な援助を行っていくというふうなこともありますから、私はこういう数字だけでおまえのところは多いんでないか、いや達成しましたとか、こういうふうなことが本来論議の対象になるのでなくて、実際にそれらが有効に生かされているかどうか、相手国が非常にありがたいと思って受けているかどうか、そして、それを出すわが方の政治姿勢の中にも、やはり人道的な面も含めて旧宗主国とは違う意味でやっているんだということのアピール、こういう面について大変欠けているんでないかと。もっと言うべきことははっきり言って、いや、少ないけれどそれは当然でしょうということだってあるんですよ、あり得ると思うんですよ。  ところが、なぜそういう点が十分に効果しないかというと、私は第三点として人の問題があると思うんです。たとえば、通貨基金に出資していますわね。一体、人員はどれくらい出ているんですか、ここに対して日本国から。全体と、その何%ぐらい……。
  28. 大場智満

    政府委員大場智満君) 手元にありますのは、いま御審議いただいているIMFの職員数についてでございますが、現在IMFの職員は、全職員数、これは一九七九年末ですが、千四百二十一名でございます。このうち日本人は十六名でございます。確かに少のうございます。  それから世銀ですが、世銀の職員は、これは専門職員、それからその他の職員も含めまして、一九七九年四月末現在で五千六十二名でございますが、このうち日本人職員は七十一名、約一・五%ぐらいでございます。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は、海外援助の問題を論議する場合に、これが一番問題だと思うんですよ。ですから、何を相手がいま希望しているか、こういうことに対するノーハウが日本の出先ではきわめてつかみにくい。これは、ほかの場所で私指摘したこともあるんですが、日本人はタックスペイヤーの観念がない。だから税も取られるということで、出したら後は政府が適当に使うんだろうということになっちゃう。同じように、政府自体もタックスペイヤーの観念がないのじゃないですか。出すと、表はこういうふうに上がってきた、努力していると。しかし、その使い道についての執行の面にはちっとも人が入っていってないんです。そうですわね。どうなんですか、これは。
  30. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 大変丸谷先生の御体験からの貴重な御意見と私は拝聴いたしました。私もそういう点については、まあ私の体験からもそういう点を痛切に感じます。やはり税を歳入としていただいて、これを歳出として支出する場合の適正な使用方法については、国民の皆様の御関心も高まると同時に、これに当たる者の責任もますます重きを加えるわけでございますから、十分配意してまいらなきゃならぬという点については、全く同感でございます。  特に、いまお答えを申し上げたように、国際機関における日本人のもう少し活躍の場を広げると同時に、外交機関等においても貴重な国民の血税をいただいてそれを国際協力に回すというふうなときには、さっきも申し上げたように、金額のいかんよりは、それがいかに現地の国民、住民の皆様にどういうふうにアプリシエートされるか、また、将来にわたって本当に有意義にそういうプロジェクトが実を結ぶかと、こういう点についてこそこれからも十分配意をしていかなきゃならぬという御趣旨については、私は全く同感に感じ、これからも一層努力をしていかなければならぬと考えております。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 日本人がなかなか海外に出たがらないという国民感情もありますし、それと同時に、アフターケアといいますか、こういうところへ行っている職員の子弟、もう高等学校くらいになると、日本に送り返してもなかなかめんどうを見てくれるところがないとか、非常に海外へ出ている人は苦労しているんです。それで、これは何も世銀や基金の関係だけじゃないんですが、全体として言えるので、これは外務省の所管に属するかと思いますけれど、予算を握っている大蔵省としては、ここいら辺からきちっと組み直していきませんと、お金は出すけれど、せっかくきょうもこれは議論して出すことになるわけですが、生かされない形でしか出していない。  これはちょっと、いかに少なくても千四百二十一人のうち十六人とは私も思ってなかったんです。少ないだろうとは想像していましたよ。これじゃこれはどうにもならんじゃないですか、こんなことで。もう少しこれらについては具体的に、今度よけい出すんですから、何人使えというふうなことで、大蔵省に優秀な人材はたくさんいるんですから、それから国際感覚も身につきますし、どんどんそういうところへはめ込んでいくようなシステム——いまの制度ではなかなか行けませんわね。行ったらもう向こうの人になりっきりで、そこいら辺何とかもう少しいい方法を考えていくと、前向きにひとつ御答弁いただけませんか。
  32. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ちょうどいま本職の大蔵大臣もそういう会議で参っておりまして、私ピンチヒッターでございますが、機会あるごとにわれわれはそういう点を申しておるわけでございまして、先般も国際連合あたりの職員についてもう少し日本人をたくさん採用できないかというので、たしか本部からもわざわざ選考のために相当の方がおいでくださったというふうなことを私も聞いておるのであります。私も外務省の政務次官もやりまして、そういう点について、もっと国際的に日本人の活躍の場を考えるべきじゃないかというふうなことを、いろいろ機会あるごとに申しておるわけでございます。  いま御指摘の点は本当にこれから大事な点でございますから、国民の血税を出す以上はそれが本当に生かされて、また、将来にわたって長く現地住民の幸せにつながるような施設に結実をするようなそういう点について、国際機関の中に、あるいは現地に日本人の優秀な方がもっとどんどん出ていくようにという御趣旨については、微力でございまするけれども、一層これから努力をしてまいりたいと考えます。
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 それから、これはきのうの新聞で見たんですが、日銀が抱いておる既発債をオイルマネーの導入のために産油国に売り出すと。まあ具体的には、月間サウジに対して五百億円程度ですか出していくというふうなことがあるんですが、そのこと自体必ずしもどうこうということじゃないんです。  ただ、私ここで気になりますのは、「日銀が債券オペレーションの形で銀行や証券会社から長期国債を買い上げており、現在の保有残高は約九兆円」と。一年目、私質問したときには、先ほどの話と同じように一番低いときの数字しか答えてくれないんです。昨年、五十三年度末の残高が八兆円超えているのに、五十四年度残高はどうなんだと言ったら、最初九月、その次十二月に三兆幾らというふうなきわめて低い数字が出てきている。そうして、三月末はまだ整理ができていませんのでお答えできないということだったんです。ところが、お答えできないと言った次の日に、もう残高は九兆円ぐらいあるというふうなことが新聞に出るというのは、一体どういうわけなんですか。
  34. 大場智満

    政府委員大場智満君) 直接のお答えにならない面があるのでございますけれども、まず産油国のリサイクリング問題につきましては、ことし恐らく産油国に千百億ドルぐらいのオイルマネーのサープラスが生ずると思いますし、それに対応しまして先進諸国で大体六百億ドルぐらいの赤字、油の出ない開発途上国で五百億ドルぐらいの赤字が出るものと見ております。したがいまして、油の出ない開発途上国はもちろんのこと、私どもとしましても、できるだけ産油国から資金の還流を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、その際に、いろいろなチャンネルで資金が流入することが望ましいというふうに考えております。  いま御指摘のように、産油国にいたしましても国債に非常に関心のある産油国、それから株式に非常に関心のある産油国あるいはまた、両者に関心のある産油国といろいろございますものですから、私どもとしましては、そのような産油国の需要に応ずるような資産運用が行われているわけであります。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 そのことはわかっているんです。そのことじゃないよ。
  36. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただいま丸谷委員からの御質問は、前回の御質疑に関連して、日本銀行が持っておる国債についての質問について、そのときは答えずにすぐ後でというふうなことで、私ちょっと経過を知りませんので、そのときおりました政府委員からお答えを申し上げます。
  37. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) たしかあのときに私も同席いたしておりましたが、理財局長から御答弁があったように記憶をいたしております。  私、直接担当いたしておりませんのですが、恐らく理財局長といたしましては、国会の委員会での御答弁でございますので正確を期する必要があるという前提があったのだろうと思います たしか、十二月末現在での数字は集計がきちっとできているがというようなことでお答えがあったように私記憶をいたしておりますが、あの時点で、大ざっぱな概数程度は理財局長の頭の中にもあるいはあったのかと思いますけれども、恐らく正確を期するという意味で、十二月末現在のきっちりした数字を御答弁申し上げたのではないかというふうに、私なりに理解をいたしております。
  38. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は質問した方だからよく覚えているんですけれど、五十三年末が八兆円超えているんです。いまここに数字を持ってきておりませんが、八兆三千億くらいだと思います。そして、また九月期、十二月期というのは減っていくんです。しかし、年度末になりますと、国家予算の総体的な帳じりを合わしていかなけりゃならない関係で、買いオペがどうしても進むから、日銀の既発債の保有高というのは常識的にふえるんです。それで、これは国債の問題をやっているときですから、そこで五十四年末でどうなんだと聞いたんです。そうしたら、九月とか十二月の一番下がっているときの答弁しかしないんです、三兆くらいの。そして、三月はまだ数字がまとまっていませんと言うんです。  だから私は、まとまってなくても、去年がたしか八兆三千億くらいだったので、おおよそのところはおわかりになるでしょうと言ったのがおとといなんです。そのときに答えないんです。委員長もこれを聞いておいてください。そうして次の日ですよ、九兆というこういう新聞が出るんです。次の日です。それは一週間とか十日前だったら、まだまとまってないということはわかりますよ。しかし、私に答えられないと言って、次の日、ちゃんと数字が出てくる。こんな国会を軽視した話がありますか。いま、ただこういうことが出てきたので、マネーの還流に関連して申し上げておきますけれど、これはいずれまた理財局長、答弁した人からやってもらわなきゃならない。こういう答弁では、国会軽視と言われても仕方がないと思うんです。ですから、そういうことで、三兆何ぼしか出てこないから、その問題を中心にしてやろうと思った質疑ができないわけなんです。  そこで、問題はもう一つあるんですが、きょう法律説明がございましたが、この説明で見ますと、大蔵省予算の中で、予算書をずっと調べてみたんですが、事項の五十の経済協力費の中に通貨基金の分は入っておるんですね。ところが、どうも最後の第二世銀の分だけがどこに入っているかよくわからないんです。国際通貨基金補給金勘定拠出金というのが、これがあれですか。
  39. 大場智満

    政府委員大場智満君) 予算手当ての問題でございますが、まずIMFの問題について申し上げたいと思うのでございますが、今回のIMFの第七次増資に当たりましては、原則としましてSDRと自国通貨で出資払い込みすることになっております。SDRは出資額の二五%、ですから残りが……
  40. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかっている。ただ、本年度の、五十五年度の予算書の中のどこにあるかということですよ。
  41. 大場智満

    政府委員大場智満君) これは一つは五十五年度外為、少々お待ちください。
  42. 丸谷金保

    丸谷金保君 コード番号は。
  43. 大場智満

    政府委員大場智満君) まず、全体の御説明を申し上げますと……
  44. 丸谷金保

    丸谷金保君 全体はいいです、いま。部分的なもの。それから世銀の分は、国際復興開発銀行出資出資ですか。
  45. 大場智満

    政府委員大場智満君) はい、出資金に載っております。それからIMFの方は、大部分は基金通貨代用証券ということで出資いたします、世銀は別ですが。
  46. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは九でしょう。
  47. 大場智満

    政府委員大場智満君) はい。ですから、これは外為特会予算の歳出上、特段の措置は講じていないわけでございます。ですから、予算措置はとる必要はないということでやっております。
  48. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、ここで法律事項として出てきておりますわね、いまのSDRですか、要するに協定標準価格、こういう中で、ドル建ての場合は大体五十五年度予算、五十四年度中にできるから、現在のドル価格でないですね。予算なり法律案をつくるときの金額の算定の基礎になったときのドル価格は、幾らに計算しておりますか。
  49. 大場智満

    政府委員大場智満君) ドルの換算レートの場合には私ども基準レートを使っておりまして、これは予算編成前十一月までの六カ月間の円の対ドルレートの平均を使っております、換算レートにつきまして。したがいまして、二百二十五円でございます。
  50. 丸谷金保

    丸谷金保君 基準レートですから二百二十五円ですね。そうしますと、二百二十五円の基準レートに準拠してSDRの価格にプールしていくわけでしょう。そうですね。
  51. 大場智満

    政府委員大場智満君) SDRの場合には、これは外為資金に属するSDRを充てているものでございますから、外為特会予算の歳出上挙がってまいりません。そのままSDRを拠出するという形になっております。
  52. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、予算あるいはこの法案で審議している数字というのは、SDRで出しているんですか、それとも二百二十五円という標準レートでもって出しているんでしょうか、どっちなんですか。
  53. 大場智満

    政府委員大場智満君) 御審議いただいております法律ではSDR、ここでは特別引き出し権という言葉を使っておりますが、SDRで表示して御審議いただいております。
  54. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、世銀の方はドル建てですね。
  55. 大場智満

    政府委員大場智満君) 世銀の方は、大変複雑で恐縮でございますが、協定ドルというので表示しております。これは現在おおむね一協定ドルが一・二ドルになっております。  それから、第二世銀の方は、これはドルそのもの、いわゆるSDRとか協定ドルとかいうものではございませんで、ドルで表示しておりますが、御審議いただいております法律は円建てでお願いしております。
  56. 丸谷金保

    丸谷金保君 円建てでいまここへ、予算にも世銀の分は出てきておりますわね。これは実行のときには、協定ドルというふうなものに今度は換算し直して出していくわけですね。そうすると、それは現在のこの予算の中でおさまるんですか。
  57. 大場智満

    政府委員大場智満君) IMFの場合と世銀の場合、第二世銀、いずれも予算上の扱いは違いますが、一番金額の大きい第二世銀の場合には、三年間にわたって拠出すればよろしいことになっております。しかもこれは代用債券という形で行いまして、実際に引き出されるのは約十年間にわたっております。したがって、それに対応しまして予算措置を講じていくということになっております。
  58. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、レートが動く等のことで予算で足りないようなことが出た場合には債券の方からの操作でもってするということ、あるいは予備費から流用するということはあり得るんですか。大蔵の予備費だけでも三千五百億ぐらいございますわね、そういうことはないんですか。
  59. 大場智満

    政府委員大場智満君) IDAの方は円建てでございますので、為替によります過不足の問題は生じないと思いますが、その他世銀等につきまして仮に過不足ということが生じます場合には、これは国債整理基金特別会計の積算上の問題として扱っております。
  60. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、時間ですから。     —————————————
  61. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいま質疑の途中でありますが、一たん中断いたしまして、この際、昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案議題といたします。  本案につきましては、前回の委員会において質疑は尽きておりますので、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  63. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私は、日本社会党を代表して、昭和五十五年度公債発行の特例に関する法律案に反対の討論を行います。  まず、その第一の理由は、この法律案が、財政の基本法たる財政法の精神を大きく踏み外しているからであります。すなわち財政法は、原則として赤字公債の発行を認めず、建設公債のみ例外としていることを明確にしているにもかかわらず、全く無視されているからであります。  第二の理由は、今日国の財政は、この特例公債の依存度がその三分の一を占め、発行残高は実に六十兆円にも達し、政府の誤れる財政政策により国民一人当たり六十万円の借金を背負わされています。こうした財政の危機的状況を生み出しておきながら、政府はその責任の所在を明らかにせず、だれ一人として政治的、行政的責任をとっていないということです。まさに無責任政治の象徴と言えましょう。  第三は、こうした膨大な公債発行はすでにその限界をはるかに超えているため、その価格は暴落を続け、新規発行すら危ぶまれています。  第四は、この膨大な赤字財政からの脱却についての政策転換がなされていないからであります。政府は、この財政危機の要因を石油危機による経済低下としていますが、基本的には、無謀とも思われた経済の高度成長政策の強行にあったのです。すでにその当時よりこの日あらんと、わが党はその政策を厳しく批判し、政策の転換、国民の生活基盤優先の施策を要求し、警告してきたところであります。今日、なおかつこの反省がありません。  最後に、第五として、財政再建のための展望がないことを指摘しなければなりません。行政改革も、補助金の整理も、国民の生活擁護、福祉政策の推進という視点で大胆な政策がいまこそ必要であり、またチャンスであります。しかるに、高級官僚機構を温存させ、国民との接点をのみ整理統合するということは、本末転倒と言わざるを得ません。  以上、数点の理由を挙げ、反対をいたします。  以上です。
  64. 細川護煕

    ○細川護熙君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  今日のわが国経済の課題は、原油価格や各国の景気の動向等、流動的かつ不透明な国際環境のもとで、物価の安定を図るとともに、定着しつつある景気の自律的拡大基調を維持することにより、国民生活の安定と着実な経済発展のための基盤強化を図ることにあると考えます。  そのためには、わが国財政の公債依存体質を改善して、財政の対応力の回復を図ることが緊急の課題とされているのであります。  このような状況に対処して、政府は本年度予算において、歳出面では全体としての規模を厳しく抑制し、行政改革の推進を行うほか、各種施策について財源の重点的、効率的配分に努めることにより、公債発行額を前年度当初予定額より一兆円減額していることについて、私はこれを高く評価するものであります。しかしながら、歳入面における租税特別措置の整理、給与所得控除の見直し等の税負担の公平化、適正化の努力にもかかわらず、なお多額の公債発行に依存せざるを得ない状況にあります。  したがいまして、昭和五十五年度の特例措置として、引き続き特例公債を発行することにより、財政運営に必要な財源を確保し、もって国民生活と経済の安定に配意することとした政府政策判断に対し、私は、まことに必要にしてやむを得ない措置であると考え、これに賛成するものであります。  もとより、本案は、あくまでも財政法の特例措置であって、できる限り速やかに、特例公債依存の財政から脱却すべきであることは言うまでもありません。そのためには、立法、行政の両府が一体となって、その実現がなし得られるよう努力しなければなりませんが、政府においては、これまで以上に財政収支の改善に全力を尽くされるよう要請いたしまして、本案に対する賛成討論といたします。
  65. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案に対して反対の討論を行います。  わが国財政は、政府経済運営の失政を主な原因として破綻状況を呈しており、昭和五十五年度予算において十四兆を超える公債に依存せざるを得ない状態であります。わが国財政史上においても、戦争等特殊な場合を除くと、かつて例の見られない危機的な状況であります。人間で言えば、医師からがんを宣告された患者であり、会社で言えば、破産管財人が管理をしているようなものと言っても過言ではない状態であり、生きるために、会社再建のために、すべてをなげうって必死の努力をするときであります。  しかるに政府は、このような状況下で何を行ったでありましょうか。歳出の削減にしても、歳入の確保にしても、国民の目をごまかすだけのリップサービスと言ってよい、形式だけの改革でしかないのであります。いまこそ政府は、勇断を持って財政再建のために根本的な課題に取り組まなければならないのであります。  具体的に反対の理由を述べます。  第一に、財政再建に対する政府の基本姿勢に強く疑問を呈するとともに、政府はいかなる方途をもって財政再建をしていくかが、国会の審議を通しても明確になっていないことであります。わが党委員が再三要求している中期財政計画の策定さえもいまだ明確にならず、五十五年度を財政再建元年と言っておりながら、史上最大の国債を発行したり、さらに五十九年度において特例公債の発行をゼロにするという試算は出したものの、具体的な方途については全くなく、あたかも羅針盤のない船が波のまにまに揺られているようなその場限りの場当たり政策に、国民は不安に駆られているのであります。  第二には、財政再建に欠くことのできない歳出の削減、不公平税制の是正が、全くおざなりになっていることであります。補助金に至っては、件数は減らしたが予算額は増額するといった本末転倒したことを行っているのであります。また、不公平税制についても、いいかげんにお茶を濁した程度にしか行っていないのであります。  第三に、公債の管理政策の確立がなされていないことであります。毎年巨額の国債が発行されており、この国債の国民生活に与える影響は多大であるにもかかわらず、その国債管理の方法が国民の前に明らかにされず、大蔵省の一部しかその実態がわからないのであります。私も当委員会で指摘したように、国債管理にかかわる基本的な資料さえも十分に明らかにしようとしないのであります。国債の大量発行は、放置しておけば財政の破綻を招き、必ずインフレに結びつくのであります。  以上、申し上げた理由により、史上最大の特例公債の発行となる本法律案に私は強く反対し、討論を終わります。
  66. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表し、本法案に対し反対の討論を行います。  反対の理由の第一は、本法案が大企業優先の経済政策財政運営を進めるために、国債を依然大増発しようとするものである点であります。政府は、財政再建を口実に、国民への重税、公共料金引き上げ、福祉予算切り捨ての一方で、大企業課税強化の見送り、軍事費の増大などを進め、アメリカや財界の要求に応じた予算の編成と財政の運営を続けております。これでは財政の破綻が一層深刻になるばかりか、わが国経済の国民本位の再建も遠のかざるを得ません。いまこそ、従来型の経済財政政策を根本的に国民本位に転換し、国債発行は四条債、特例債を問わず、大幅な縮減を直ちに図るべきであります。  第二は、これが将来の長きにわたり、財政経済を圧迫するばかりか、国民生活破壊に拍車をかける点であります。今後政府は、大蔵大臣主導の覚書による福祉・文教予算の見直し、切り捨てや、所得税減税の実施見送りを言明したばかりか、いわゆる一般消費税等の国民向け大増税をもくろんでいます。今後十五年間で二百二十八兆円とも見られる国債の元利償還を、国民の犠牲によって進めようとしていることは明白であり、断じて認めることができないのであります。  第三は、国債の大増発と大量の累積残によって金融市場や金利政策、金融行政が大きくゆがめられ、インフレ要因も一層拡大されている点であります。政府は、国債発行の歯どめを外し、資金運用部資金など政府資金を導入してまで大増発を進めております。そして、六・一国債を中心とした市場での国債の暴落という異常の事態にあっても、国債金利の引き上げや金融機関保有国債の評価方法の変更、国債整理基金による買い支えなどの小手先の対応で事態の重大さをごまかしています。このため、中小金融機関や証券会社、証券労働者の実態はきわめて深刻なものになっております。また、クラウディングアウトの危険性や日銀買い入れ拡大の問題も出てきており、国債によるインフレ促進はいよいよ顕在化を強めています。  今こそ、国債大量発行依存の財政経済政策を転換し、国民本位の歳入歳出の見直しを進めることはもちろん、国債発行の歯どめを明確にし、計画的縮減を進め、減債制度についてもさらに改善を図るべきであります。  以上の点とともに、財政危機を招いた政府・自民党の責任を強調し、私の反対討論を終わります。
  67. 中村利次

    中村利次君 私は、民社党を代表して、昭和五十五年度の公債の特例に関する法律案に反対の討論をいたします。  私は、特例債の発行を必ずしも否定するものではありません。しかし、財政法に照らしても当然であるのみでなく、国債、特に特例公債は将来に向かっての国民の負担となり、大量の発行は民間の資金需要を圧迫し、また、財政インフレを招く懸念すらあるものでありますだけに、その発行には当然それなりの厳しい前提がなければなりません。  すなわち、抜本的な行財政改革の断行、税の不公平の徹底是正等によって、財政支出の思い切った削減や財源対策としての税制改革に実効を上げ、特例公債の発行は真にやむを得ないものとすべきであります。  しかし、政府のこれらに対する取り組みはまことに不十分というべきで、結果として大量の国債の発行を招き、現在、すでにその消化がきわめて困難になっています。  私は、本法案に反対するとともに、実効ある歳入歳出の見直しを行い、国民の合意が得られるような財政再建に対する政府の格段の努力と実行を強く求めて、私の討論を終わります。
  68. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ほかに御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  70. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条後段の規定に基づき、委員長において本案に対する可否を決します。  本案については、委員長はこれを可決すべきものと決定いたします。  浅野拡君から発言を求められておりますので、これを許します。浅野君。
  71. 浅野拡

    ○浅野拡君 私は、ただいま可決されました昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党、第二院クラブ及び新自由クラブの各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。     昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一、健全財政の早期実現を期するため、中長期財政を展望しつつ、財政収支の改善に全力を尽すとともに、速やかに特例公債偵依存の財政から脱却し得るよう努めること。  二、国債は将来の国民の負担となるので、極力国債発行額の圧縮に留意し、償還財源についても長期的な展望をふまえてその確保に努め、償還に支障のないようにすること。  三、財政支出のうち、不要不急の経費を削減するとともに、補助金行政の洗い直しを行うなど、抜本的な行財政改革を進めること。  四、財源対策としての税制改革に当たつては、負担の公平を重視し、中長期にわたる基本的展望に基づいて見直しを行うこと。  五、公共債の発行が民間の資金需要を圧迫することのないよう留意し、また、個人住宅資金、中小零細企業金融等についても記盧するとともに、財政インフレを招かないよう十分に対処すること。  六、国債の個人消化を促進するとともに、国債の発行形態の多様化、発行条件の弾力化、公社債市場の整備充実等、国債管理政策の改善に努めること。  七、財政再建に資するため、早急に財政計画の策定を図ること。   右決議する。   以上でございます。
  72. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) ただいま浅野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。     〔賛成者挙手〕
  73. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 多数と認めます。よって、浅野君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、正示大蔵大臣臨時代理から発言を求められておりますので、これを許します。正示大蔵大臣臨時代理
  74. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  75. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  77. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 引き続き、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、円相場についてお伺いをいたしますが、昨日は少し円が高くなってまいりましたが、これはどういうところに原因があるとお考えになっておりますか。  それから、先ほども質疑が出ておりましたが、オイル資金の導入、これも円相場に対する影響が私は出てくるかと思いますが、まだこれから先の問題になるかと思いますけれども、実質的にはどれくらいこういったことが影響が出るとお考えですか。また、心理的な面だけを考えておられるのか、二点についてお伺いしたいと思います。
  79. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 矢追委員も恐らくそういうお含みでいま御質問になったのだと思うのですが、実はいわゆるファンダメンタルズから申しますと、日本の円は過小評価をずっとされてきておると思うのでございます。  先般のアメリカのカーター大統領のインフレ対策におきましても、アメリカのインフレは一八%だと、しかし、日本フランスやイタリーは二五%だと、こんなことを大統領自身がおっしゃっておるのですね。しかし、消費者物価で見ると、これはアメリカは一八%はやむを得ませんが、日本は卸売物価でこそ二〇%以上の騰貴になっておりますが、消費者物価は五十四年度は五%以下と、    〔委員長退席、理事浅野拡君着席〕 それから五十五年度についても、私どもは何とかして六・四%というところにおさめたいと。  それを二五%なんて言われるのは実に心外でございますので、先般も私、アメリカのシュルツさんという、これは経済諮問委員会の委員長なんです。大統領の経済の最高の補佐者なんでございますが、その方に手紙を出しまして、日本の円の最近の状況等についても、われわれはこういう点からも、アメリカの最高責任者の御発言についても非常に遺憾の意を表したわけでございます。  そんなようなことから、私は、アメリカの金利がだんだん御承知のように天井を突いてやや下がっておるというふうな点、それからアメリカとイランとの関係におきまして、日本はヨーロッパ各国と協調して、堅実な政策をやっていこうとしておる。そこへ、いま第二に御指摘になったようなオイルダラーの取り入れ等についても明るい見通しがあると、こんなようなこと。それからさっき申し上げた、何といってもファンダメンタルズにおいて日本は堅実な経済であるというふうな評価がだんだんと私は為替市場にも行き渡りまして、今日のように円はややその行き過ぎた下落ぶりを回復しておるものというふうに判断をいたしております。  しかし、今後の円の相場の安定ということは、日本経済にとっても、物価問題にとっても非常に大事な問題でございますので、一個われわれとしては注視を怠らずさらに努力も継続してまいりたい、こんなような判断をいたしておるような次第でございます。  なお、オイルダラーの導入については、本日大蔵大臣日本銀行総裁が発表いたしましたように、サウジアラビア等から相当額を導入できることになりましたことは大変結構でございまして、今後ともわれわれはそういう堅実な資金の導入、これを図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  80. 大場智満

    政府委員大場智満君) いま大臣の御説明のとおりでございますが、若干最近の円相場の事情につきまして補足さしていただきたいと思います。  本日も、相場は大体二百四十四円台でいま進んでおります。かなり円高になってきております。最近の円高の理由は、一つは、アメリカの短期金利の下落の傾向がかなり顕著になってきたということでございます。たとえば、ユーロダラーの三カ月物で見てみますと、四月一日、今月の初めでございますけれども、二〇%でございましたが、これが昨日は一六%近く、正確に申し上げますと、十五カ十六分の十三%なのでございます。ですから、約四%強下落しております。それからまた六カ月物で見ましても、四月一日がたしか一九・五%だったと記憶しておりますが、これが昨日は一五%まで低下しております。これが、相対的にドルが弱くなる、円なりマルクなりスイス・フランが強くなる要因でございます。  それからもう一つ、最近のアメリカ、イラン関係が、    〔理事浅野拡君退席、委員長着席〕 私は、石油ということを通しまして、かなり日本に影響を与える、円をむしろ円安の方に進めるのではないかという感じを持っていたのでございますが、市場の受けとめ方は、ドルが弱くなる方に受けとめております。そういうことから、かなりドルに対しまして他通貨といいますか、マルク、スイス・フラン、円が強くなっているのが昨今でございます。  なお、先生御指摘のように、円の対ドルレートというのは、基本的には各国間のインフレ率格差、それからもう一つは、各国の経常収支の赤字、黒字、いわゆるファンダメンタルズによって決まっていく、それを一番反映して出てくるものだろうというふうに考えております。しかし、心理的な要因とか、あるいはそれぞれそのときどきの社会的、場合によっては政治的な予見が相場を動かすことも事実でございます。  若干補足させていただきました。
  81. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほどお聞きしたことに余り答弁ないんですけれども、要するに、オイルマネーの導入が円相場には影響が出るのか出ないのか、心理的な面だけなのか、あるいは実質的にも出ると考えているのか、それを答弁いただきます。
  82. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) これはもう大変大事な点でございまして、御承知のように、外貨準備高が百八十五億ドルに減ったなんということは、これはもう大変な、やっぱり本来は、日本経済全体が相当堅実なファンダメンタルズを持っておれば、信用力というものは相当あるわけでございますが、それを具体的にあらわすのがオイルマネーの導入なんでございますから、これによって日本の支払い力というものが強化されていけば、これが円に対しては大変強い立場をとるような影響を持つ、大変好影響を持つと、こういうふうに判断をいたしております。
  83. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 一説では、月五百億円限度というふうに新聞に出ておりますけれども、私は、いま大臣言われた、全然影響ないとは申しません。また、円高に行く面もあるかと思いますが、果たしてこれがどう出るのか、私もわからないから聞いておるんですけれども、もう少し綿密には、政府当局でも結構ですから、言えませんですか。
  84. 大場智満

    政府委員大場智満君) 為替相場の日々の動きを見ておりますと、確かに円の対ドルレートというのは、市場における需給により決まっているわけでございまして、仮に産油国等からわが国の公社債等を購入する場合には、長期資本の流入という形でございまして、これはドルを供給する作用を持つものでございますから、現実に市場でもって円が強くなる要因の一つに挙げられます。もちろん、いろんな要因が市場では集積されるわけでございますので、そのサイズ等によると思いますけれども、具体的に廃油国によるわが国の公社債等の取得があれば、これはドルの供給要因、したがって、円が強くなる方向に働いているわけでございます。いま大臣が御指摘になりましたように、心理的な面もまた非常に大きいと思います。  と申しますのは、現在なおわが国は経常収支の赤字がかなりの幅で続いております。私は、四半期別で見まして、今後期を追うごとに経常収支の赤字は減少していくものと見ておりますけれども、それでもなお当分の間はかなりの赤字が残るわけでございまして、したがいまして、その間私どもは、その赤字のファイナンスと、それからもう一つ、赤字から来ます円相場への影響というものを考えなければいけないと思っております。  これが去る三月二日に円防衛策をとった理由でございまして、私どもの三月二日の円防衛は二つの部分から成っておりまして、一つは、アメリカ、ドイツ、スイス等と協力して市場における介入を強化するという措置でございました。それからもう一つは、ファイナンスに対応して長期資本の流入を促進する措置をとったわけでございます。この二つのブリッジングアクションといいますか、実際に基礎的な諸条件がよくなります時期までの橋渡しといいますか、つなぎの措置としてこのような措置を打ち出して、できるだけ円相場の安定を図っているわけでございます。
  85. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、イランの問題ですが、ソ連とイランの間に経済協力協定が結ばれたということです。そうしますと、いま問題になっております経済制裁が効果が出てこないと、こういうことになりますと、日本とイランとの間には、イランも日本には全面的な供給はストップしないでC重油である程度パイプをつなぐとか、少しはありますけれども、今後このソ連等との経済協力がもし仮に大変太いパイプになってきた場合、アメリカというのはますますいら立ちをしてきて、下手をすると軍事介入というようなことも起こりかねない。大変心配しておるわけです。  そういうことになっちゃいけないんですが、それの前に経済制裁に効果がないとなってくれば、いわゆる自由主義陣営とイランとの間はかなり冷たいものになってくる。それが私は大変な影響を及ぼしてくると思うんですけれども、この問題は大臣はどう認識されておりますか。
  86. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) けさほど私どもは総理を中心にいたしまして、アメリカとイランとの関係についての閣僚会議を持ちまして、外務大臣、また、ただいま帰国中のイラン駐在大使の和田君、そういう者も交えましていろいろと相談をいたしたわけであります。  先般、ルクセンブルクへ外務大臣が参りまして、いわゆるEC九カ国外相会議、理事会と言っておりますが、そこの空気は十分知悉をし、日本の考え方も外務大臣の方々に申し伝えまして、EC九カ国とともに日本は今度の問題については、いま矢追委員が御指摘のように、この問題の平和的な解決、アメリカに対してもせっかちな武力的な手段に出るようなことのないようにやっていただきたい。また、イランに対しては、本来国際的な秩序を守るという意味において、大使館の人質事件のごときは、これはもうアメリカとイランだけの問題じゃなくて、われわれ諸外国にも非常に関係の深い問題であるから、一日も早いそういう異常事態を解消するようなことをやってくれと、これからも努力をするわけでございますが、さしあたり外交の縮小というふうなこと。  たとえば、大使館その他の公館の人員を縮小していくというふうなこと、そういうことでひとつ外交的にも、この前国連の安保理事会にいろいろ出しましたような制裁措置を含めまして、とにかくアメリカの方にも余りせっかちにやりなさんなと、われわれも一緒になってイランの反省を求めていくのだから、また、イランの方には、やっぱり誠実にわれわれの要求するところを聞いてくれ、こういうことで進もうというふうに、けさほど具体的に打ち合わせをいたしたわけでございます。  そこで、御指摘のように、いまイランは、きのうの三十五ドルの原油値上げを拒否したのは、これは純粋に経済的な問題でございまして、イランの経済制裁というふうなこととは関係ございません。この点は全然別でございますが、ただ、ECあるいは日本の動き、今後の動き等、あるいはアメリカの措置等を見て、イランが対ソ協調というか、対ソに異常に深く入っていくというふうなことが報道され、懸念されておるわけでございますけれども、そういうことのないように、別にイランの外交政策についてこちらが口ばしを差しはさむわけにはまいりませんけれども、われわれとしては、従来どおり自由主義国として自由に経済的なおつき合い、また、外交的な関係をできるだけ正常に持っていきたいと、こういうふうな方向で努力をしていこうということを、けさほど私どもとしては決めたわけでございます。  今後私は、ヨーロッパ各国と歩調をそろえまして、アメリカの自重を促し、イランの適切な対応を促進することによって、事態を悪化させないような方向へ進んでいけるのじゃないか、また、いかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  87. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がありませんので、大臣、簡単にお答えいただきたいんですけれども経済企画庁長官もおやりになっておりますので、やはり物価問題について大変頭を痛めておられると思います。私は、当委員会でも総理にも指摘をいたしましたが、日米経済摩擦等がございますが、やはりもっと積極的に日本は輸出に力を入れて、そして円のレート、円高をつくってやるのが一番これは私は物価対策になると、こう思うわけです。もちろん、ほかのいろんなこともやらなきゃなりませんけれども、その点私は、アメリカに気がねをされておるのか、ちょっといま輸出に対する力の入れ方に、民間は一生懸命やっておりますけれども政府はもうちょっとがんばってもいいのじゃないかと思うんです。  というのは、アメリカがインフレになった、これはアメリカの責任でインフレになっておるわけですよ。日本の自動車がどんどん売れる、あるいは日本の鉄がいろいろやられながらも伸びている。アメリカの場合は技術革新がおくれたわけです。これはアメリカの責任なんです。あれだけ経済では世界をリードしていたアメリカが、鉄の技術革新におくれ、自動車の技術革新におくれ、それで結局日本のがどんどん出ていく。安くていいものですから、これは出るのがあたりまえ、売れるのがあたりまえです。いまでもまだどんどん、向こうのディーラーに聞きますと、まだまだ注文はあると、こういうような状況なんですね。  だから、私は、アメリカが勝手に日本をたたくのであって、しかし日本も、まだまだ関税とかいろんな保護貿易的な面がありますから、これはできるだけアメリカに文句を言われないように努力はしなきゃいかぬと思いますが、私は気違いとまで言うとこれはまた語弊がありますけれども、かなり輸出に力を入れて円相場を、もう少し円というものを強くすることが、高くすることが一つの大きな物価対策になる、こう思うわけです。そういう意味で、やっぱり一番問題となっております輸出に力を入れてもらいたい。これに対する大臣の考え方。  もう一つは、国際収支経済見通しでも経常収支は赤字を見込んでおられますし、また、長期資本収支あるいは基礎的な収支、全部赤ということになっておりますが、これをうんと減らしてもらいたい。特に私はいま心配しておりますのは、発展途上国です。いわゆる非産油国で発展途上国、ここの経済、たとえばお隣りの韓国あるいはタイ、こういったところは大変いま経済が厳しくなっていますね。こういったところとの貿易というのがだんだんだめになってくると、やっぱり日本は大きな影響が出てくる。アメリカで、もっているようなものになってくる。こういった点で、私は非産油国の発展途上国に対するこれからの見通し、また、それに対する対応、こういった点をどう考えておられるか。  この三点、お伺いしたいと思います。
  88. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) おっしゃるとおり、いま円は、先ほども申し上げたように、非常に弱くなっておったのが、やや持ち直す気配を見せておるわけでございますけれども、これにはやっぱり基本的に貿易収支、輸出を振興していくということが大事である、これはもうまさに仰せのとおりでございます。ただ、お話のように、自動車等については特殊な事情があるにかかわらず、やはりアメリカとしてはいろいろの問題を持ち出しておられますので、これらについてはそれぞれ適切に解決をするように努力をしていくと同時に、やっぱり一国集中的な輸出ということは避けまして、グローバルに、しかも本当に喜ばれて日本の優秀な製品を買っていただく、あるいはプラント輸出が行われるというふうな点について、輸出振興の上では配意していく必要があろうかと、かように考えております。  なおまた、輸出、貿易収支以外の国際収支については、さっきもお話がございましたような長期資本の導入等によって、国際収支について健全な均衡を確保するように努力をしていくべきであるということは、御指摘のとおりかと思っております。  なお、非産油発展途上国、これはもう本当に大事な、韓国あるいはタイ等を御指摘になりましたが、これらの国々がやはり堅実な経済成長を遂げていただくということが日本にとってもきわめて重要でございますから、個別個別に適切な関係を維持し発展させるべく、われわれとしてもこれからも十分配意をして進めたいと考えております。
  89. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、時間の関係でSDRについてお伺いをしたいと思いますが、資料をいただいたわけですけれども、このSDR、第三の通貨ということで登場してきてまだ日が浅いわけですが、現状としては、現在の日本の置かれている立場というのはこの程度でいいものなのか、あるいはドルがまた不安になる可能性もありますので、もう少し配分等はあった方がいいのかなというふうに私は思いますが、その点はいかがでございますか、まずお伺いしておきます。
  90. 大場智満

    政府委員大場智満君) SDRをできるだけ使っていこうというのは、IMF初め私ども通貨当局の基本的な考え方でございますが、現実の問題として、たとえば取引通貨としてSDRが使われるということにはなかなかいかないのが現状でございます。  御高承のように、通貨の役割りといいますか、三つございまして、ニュメレールといいますか、計算単位として適当かどうか、それから取引通貨として適当かどうか、それから三番目に準備通貨、外貨準備の運用ということになりますが、準備通貨としてその通貨が適当かどうかということがあるかと思うのですが、SDRは確かに計算単位としては私はすぐれていると思います。それからまた、最後の準備通貨としてもこれは徐々にSDRを持たれる傾向が出ておりますが、取引ということになりますと、SDRがなかなか使われるような状況ではない。ただ、最近は、たとえばボンドでございますが、債券の発行のときに、たとえばスウェーデン等がやりましたが、SDR建てのボンドを発行したという例がございますし、また、いまわが国の銀行がロンドンでSDR建てのCDを発行しようとしております。  そういう意味で、SDRが徐々に使われるということは、私は大変結構なことだというふうに見ております。しかし、実際にSDR建ての預金ができるというようなところまで行くのはまだ若干時間がかかる、このように考えております。
  91. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 しかし、今後の方向として、取引通貨としてまで使われる段階へ行くのか、あるいはその前に現在の取引通貨が変わった形になっていくのか、どちらになるのか私もよくわかりませんけれども、当局としてはどういう予想をされておりますか。EC諸国だって、通貨は別でありながら共同体をつくっていきましたし、また、今後の為替相場にしてもいろんな形が考えられてくると思いますので、そういった点で果たしてどうなってくるのかわかりませんけれども、実際SDRが本格的に取引通貨まで行くのかどうか。私は相当時間もかかるし、なかなかやっぱりむずかしいのじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
  92. 大場智満

    政府委員大場智満君) SDRをできるだけ使っていこうということで最近新たな進展が見られておりますのは、IMFにおけるSDR代替勘定の討議でございます。  今回、大蔵大臣が出席しておりますIMF暫定委員会の最大の問題は、このSDR建ての債権、この場合の債権というのはクレームといいますか請求権の問題でございますが、このSDR建ての債権をどのようにつくり上げていくかということにあるわけでございます。確かにむずかしい問題ですが、現在、産油国等が保有しているドルをIMFの代替勘定に出しまして、そのかわりに産油国等はSDR建てのクレームと申しますか、債権、ボンドじゃございませんが、SDR建ての請求権を取得する、これに対しまして代替勘定は何がしかの金利を支払う、代替勘定が受け取りましたドルは米国におきまして長期の国債等に運用する、こういう仕組みでございます。  この問題をつくり上げるときに私どもが議論いたしましたのは、SDRの育成のためにこの代替勘定をつくるのか、あるいは各国通貨当局が持っているドルから、その当時は、この議論が始まりましたときはドルが弱い時期でございましたが、各国の通貨当局が持っているドルが他通貨、たとえばマルクとか円とかスイス・フランにシフトするのを防ぐためにこのSDR建ての債権を持ってもらうのかということで、かなり議論があったわけでございますが、私はその議論からしますと、現在ドルが強くなってきておりますものですから、若干当時と状況が違うわけでございますけれども、やはりSDRの育成という観点から、この問題には引き続き力を入れていかなければいけない、こういうふうに考えておりまして、できるだけSDRが各国通貨当局なり、できれば民間なりになじむような形のものにしていきたい、こういう考え方で対応しております。時間はかかると思いますが。
  93. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほどもちょっと触れましたけれども、この配分額ですね、これは数字ではふえてきておりますけれども、パーセンテージから言うとそう余り大きな変動がないように思いますが、この点は現状でいいのかどうか、あるいはこういったものの配分というのは、ただドルを保有しているのとはまた全然感じが迷いますから、特に発展途上国というふうなことも考えていかなくちゃいけませんので、その配分額というのは現状が適正なのか、また、日本としては今後どういう方向がいいのか、その点はどうお考えですか。
  94. 大場智満

    政府委員大場智満君) SDRを配分する際には、現在IMFの出資の比率に応じて配賦しております。確かに配分の際に、開発途上国に厚く配分したらどうかという考え方はございますけれども、SDRはやはり通貨の側面、通貨でございますから、IMFがこれを配分していくということになりますと、私は現在のIMFのシェア、これは確かに米国、英国等にシェアが偏っているということはあるわけでございますけれども、現在のシェアに応じて配分するのが最適ではないかというふうに判断しております。
  95. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間ですから、先ほどもお触れになりましたけれども、今回のIMFでのSDR代替勘定、これに対して一応積極的に賛成ということでいまお答えになりました育成という方に力を入れていきたいということですが、先進国、特にアメリカ、イギリス、西独フランス日本、この中ではどの国が一番SDRの育成には積極的ですか。日本なのか、西ドイツなのか、あるいはフランス——アメリカはそう積極的じゃないのじゃないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがですか。
  96. 大場智満

    政府委員大場智満君) どの国がというのは非常にむずかしいのでございますけれども、米国も最近は基軸通貨としてのドルの負担が重いというふうな観点から、できるだけSDRをドルに置きかえるような動きについてはこれは賛成しておりますし、また、マルクとか円とかスイス・フランとか、米ドル以外の通貨が基軸通貨的な役割りを担ってほしい、こういうことを米国の通貨当局が最近言い出しております。ただ、私どもからいたしますと、円がそういった役割りを担うのには、まだそこまではいっておりませんで、やや基軸通貨的な役割りを担うというのには負担が重過ぎるというふうに私ども考えております。  先ほど申し上げましたように、国際通貨として使われる場合には、計算単位、取引通貨、準備通貨という面がございまして、実際に一般の方々が、企業なり自然人が特定の通貨を使い、その結果として外貨準備にも運用されるというのが望ましい方向だろうと思うのですが、円について申し上げますと、準備通貨が先に進んでいるような感じがいたします。まだ輸出につきまして円が使われておりますのは、円建てでございますが、約二〇%でございますし、輸入についてはわずか二%でございます。それに対しまして準備通貨という面では、たとえば産油国等の通貨当局が円資産を保有するということは現在われわれとして歓迎しておるわけでございますから、どうしても準備通貨が先に進むというのが現状になっております。  そういうことで、われわれは円の準備通貨化につきましてはリラクタントでございますが、これはドイツも同じだろうと思うのですが、しかし、現実は、準備通貨化は徐々に進んでいる、こういう段階であろうと思っております。
  97. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 時間もありませんので二、三の問題を端的にお尋ねをいたしたいと思いますが、IMFの融資は、主として低所得途上国の国際収支の悪化を解決をするために融資をされるものだというふうに説明をされてきているわけでありますが、ところが一九七八年の融資額は三十七億SDR、これに対して返済の方が四十八億SDR、七九年について見ますと、融資額十八億SDRに対して返済は四十億SDRということになっているわけです。第二次石油値上げが行われた一九七九年になぜ融資よりも返済の方が多いのか、その理由は何ですか。
  98. 大場智満

    政府委員大場智満君) 七九年に返済額が多い理由の第一は、やはり第一次オイルショック、これは一九七三年の末でございまして、その後一九七四年の開発途上国の赤字が一番大きかったかと思うのでございますが、と申しますのは、一九七四年におきますオイルマネーのサープラスが、バンク・オブ・イングランドの数字ですと、たしか五百七十億ドルぐらいだと思いましたが、これに対応して各国の国際収支の赤字が生じたわけでございますので、この時期にIMFの引き出しが非常に多かったのではないか、IMFの貸し付けが多かったのではないか。それの返済期限が七九年に来ている、これが技術的な理由ではないかと思います。  それからもう一つ、現実の問題としまして、いわゆる産油国の黒字が減るにつれて非産油開発途上国なり先進諸国の赤字も、総体としての赤字もかなり減ってきているわけでございますので、貸し付けの必要性が少し薄れてきている時期になってきておる。また、それが今後借り入れの必要性が高まるわけでございますけれども、その時期になったということが言えるかと思います。  それからもう一つ、民間のバンキングシステムが非常に発達してまいりまして、昨年はたしかユーロ市場を中心とするのでございますが、銀行組織を通じますいわゆるクレジット、中長期の貸し付けがOECDの資料ですと約七百八十億ドルに達しております。それから、これもユーロ市場が中心でございますが、ボンドの発行が三百九十億ドルぐらいございます。ですから、民間の銀行組織を通じる資金の流れがきわめて大きかったために、IMFの資金が利用されないという面もあったかと思います。  それからさらに、コンディショナリティーという問題がございまして、IMFから借り入れを行う場合には、IMFが非常に条件といいますか、きつい注文を出すことがございます。ですから、油の出ない開発途上国としますと、それほどきつい条件をつけてまでIMFから借りなくてもいいじゃないかという感じが一部にあるのではないかという感じもいたしております。それと、民間バンキングシステムを通じます資金の流れがかなり容易だったものでございますから、そういった状況がこのIMFの借り入れを少なくさせている理由ではないかというふうに考えております。
  99. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 補完的融資制度というものがありますが、これについても一九七九年で見ますと、七十七億SDRの原資がありながらわずか三億SDRしか融資していない。これはなぜですか。
  100. 大場智満

    政府委員大場智満君) 確かに御指摘のとおりでございますが、やはり補完的融資制度が使われない一つ理由は、私が先ほど融れさせていただきましたけれども、ユーロ市場等民間金融組織からの借り入れが比較的容易であったということが挙げられると思います。  それからもう一つは、この補完的融資制度の金利ですけれども、これが市場金利並みとされていることがございまして、最近の金利の上昇から、やっぱりその金利の負担ということを考えまして、IMFの通常の資金利用よりもどうしてもこちらが劣後するという理由があるのではないかというふうに思っております。
  101. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 結局、いろいろ説明をされておりますけれども、補完的融資が三億SDRしか借りられなかったということは、結局、金利が高く融資条件が厳しいというこの問題が重要な要因の一つとして働いているということかと思うんです。その結果、犠牲がその国とその国の国民に向いていかざるを得ないということかと思うんですけれども、この補完的融資制度の融資条件等の制度改善について、わが国としても適切な改善を検討するという努力をされてしかるべきじゃないかと思うんですが、この点どうですか。
  102. 大場智満

    政府委員大場智満君) 御指摘のとおりでございまして、現在、これから開かれますハンブルクにおきますIMFの暫定委員会におきまして、この補完的融資制度の金利につきまして、できるだけこれを低下するような努力をしようという、わが国もそういう提案をするつもりでおりますし、そういう方向でまとまっていくのではないかというふうに考えております。  それから、もう一つのコンディショナリティーの問題でございますが、これはIMFが各国に対しましてきつい注文をつけるということで、確かに開発途上国が借りたがらないということは事実なのでございますけれども、私はきつい注文をつけますことによって、民間の金融機関開発途上国に貸しやすくなるのではないかと。IMFがきつい注文をつけている国だから恐らくその国の経済政策経済運営はうまくいくのではないかという前提で、民間のバンキングシステムからはむしろ大量の資金がその国に投入されるということでありまして、私はコンディショナリティーはどちらかといいますと、現在の厳しいまま維持した方がよろしいのではないかという感じを持っております。
  103. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 累積債務の問題について少しお尋ねをしたいと思いますが、第一次石油値上げのときには、中所得途上国の国際収支赤字のファイナンスが、主としてアメリカの銀行がオイルダラーを取り入れてメキシコ、ブラジル、韓国などを中心に融資をし、それが累積債務としてこれらの国の国際収支を圧迫しているということになっておると思うんです。  世銀の世界開発報告一九七九年版、これによりますと、中所得国の債務返還比率は八五年には危機ラインに近づき、中南米は危機ラインを突破するだろうというふうに予想をしているわけであります。この中所得途上国の国際収支の赤字に対して、今後IMFは優先的に融資することがあるのか。つまり、低所得途上国の融資を多少削減してでもこの中所得途上国に融資するということがあるのか、この点についてはどうですか。
  104. 大場智満

    政府委員大場智満君) 確かに、開発途上国の赤字は大きくなっております。一九七四年から七八年までのファイナンスの状況を見てみますと、この間に非産油開発途上国の中長期の公的債務は千八百億ドルぐらいふえております。そのほかに外貨準備がこの間に四百億ドルふえておりますから、非産油開発途上国はこの間に二千二百億ドルのファイナンスを、資金調達をしなければならなかったわけでございますが、これがおおむね民間信用を通じましてファイナンスされてきております。  しかし、今後の問題でございますが、ことしにつきましては、産油国の千百億ドル黒字に対応しまして、非産油開発途上国の経常収支の赤字は少なくとも五百億ドルぐらいというふうに見ているわけでございますが、これが来年、再来年と、どちらかといいますとふえる方向ではないかという感じがいたしております。したがいまして、ファイナンスは、ことし、来年の半ばごろまでは問題ないと思うのでございますが、その先はやや不透明というのが現状でございます。  しかし、私は、民間銀行組織を通じます資金の供給とそれからいま御指摘のIMF、世銀等を通じます公的の信用、これが補完し合いながらファイナンスをしていけば、それほど危機的な状態に陥ることはないのではないか。かなりむずかしい金融情勢にはなってまいりますが、私は円滑にファイナンスはできていくのではないかというふうに期待しておるわけでございます。それからIMF、世銀等、いま御審議願っておりますように、増資しますことによって、かなり大きなサイズの資金供給が開発途上国等にできることになりますものですから、民間信用を補うだけのサイズの公的なファイナンスというのが可能になっていくのじゃないか。両々相まちまして、非産油開発途上国のファイナンスが円滑に行われていくのではないかというふうに期待しております。
  105. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも立論が民間金融組織による援助、これとの兼ね合い、バランスによってまあまあ何とかいくんじゃないかという言われ方をしているわけですけれども、やっぱりわが国も含めて国として出資をしておるIMFが、個々のそういう途上国に対するいろんな援助融資がどううまく進むかという問題は、これはこれとして、民間組織に依存をする、このことによってどうだこうだという議論で済まされる問題ではないわけですね。そうした点で、私が言っているのは、IMFを通してのこの融資が、今後一つの重大な時期が来るんじゃないかということで、いわば一番肝心な低所得途上国、ここに対する援助が減らされて、中所得途上国に重点が変わるというようなことが起こりはしまいかというふうに思っているんですけれども、この点はどうですか。
  106. 大場智満

    政府委員大場智満君) 御指摘の低所得の開発途上国に対しましては、今度増資をお願いしておりますいわゆる第二世銀、こちらは無利息で長期資金を供給するわけでございますが、この資金を今回大幅に百二十億ドルという規模で増大するわけでございますので、こういった資金を重点的に充てていくということが可能だろうと思います。それからまた、IMFにおきましても、IMFの場合には出資に応じて貸し付けということがなされるものですから、サイズについてはそれほど大きくない場合もあり得るかとは思うのですけれども、こういった開発途上国に対してできるだけ配慮していくということが大事だろうと思います。それから、そのほかにまた、私ども先進諸国がいわゆるODAでございますか、二国間の援助の場合にこういった低所得の開発途上国に配慮していくということも肝要であろうと思っております。
  107. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも楽観的な見通しを持っておられる模様ですけれども、私は果たしてどうかという依然として疑問は残ったままですけれども、もう時間がございませんし、本日、経済企画庁長官が大蔵大臣代理として御出席をいただいております機会でありますので、最後に大臣に少しお尋ねをいたしておきたいと思います。  わが国の通貨価値を安定させる独自の努力として、わが国経済の安定的発展を図るべきは当然のことであります。ところで、現在実施をされております新経済社会七カ年計画、これは財政収支試算などの基礎となっているものでありますが、これについてはその基本が何ら従来の計画と変わっていない、経済財政の危機を一層強めるものではないか、中でも公共投資二百四十兆円などということは、どうしてもいまの経済の実態から見て実現困難な問題じゃないかということを、いろんな機会に私ども指摘をしてきたところであります。  最近、たとえば財政審議会の会長も務めておられる桜田氏が代表世話人の産業経済計画懇談会、ここも、もうこの七カ年計画は一遍御破算にしたらどうかという進言もされているわけでありますけれども、私どもはこの提案に全く賛成をしているということではありませんけれども、いまの計画ではこれはだめだという点は、この懇談会自身も同様のことを言っておられるという状況になってきていると思うんです。  現在最も必要なことは、国民生活を安定をさせるということを基本に経済計画をつくり直す、政府としても必要な見直しをやるということが必要になってきているんではないかというふうに思いますけれども、この点についての大臣の所見はどうでしょうか。
  108. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 御指摘のように、これを去年の八月に閣議決定をしたわけでございますが、その後に御案内のようなイランの問題その他が起こりまして、大変な激変をしたわけでございます。  そこで、当時予見しなかったような問題が非常に起こりまして、五十四年度の実績見込み、それから五十五年度のいま御指摘の予算の基礎になった経済見通し、これから見まして、これはもう実情に合わないという点から、部分的なフォローアップといいまして見直しをやりまして、経済成長率、卸売物価の見通し等についても若干の見直しをいたしました。しかし、最終的な、いま御指摘の二百四十兆円の公共投資とか、そういう点について、まだ根本的に見直すというところには至っておりません。  そこで、御案内のように、各方面から、こういう計画は一回根本的に見直すべきでではないかというふうな御指摘、いま佐藤委員もそういうお考えを込めての御質疑かと思います。私どもは、計画をつくったから何が何でもその計画に従ってというふうなことは毛頭考えておりません。ただ困ることは、それじゃ、一体このエネルギーの情勢はどうなっていくのか、まだ御案内のように確たる見通しもつきません。  そこで、新しい見通しをつくるような情勢が一日も早くできまして、それに即応した適切な中長期の見通し、エネルギーなんかについては、一応われわれとしては代替エネルギーの開発計画等で、昨日も本会議において御説明したようなことでやっておるわけでございますから、まあああいうことに合わして見通しをつくるべきではないかという御議論ごもっともだと思うのです。  ただ、これは経済審議会という審議会においてやっていただいて、それを政府に御提言があって、政府はそれを決定したという、政府としては、若干いま御指摘の桜田さんの財政審議会とも違いますけれども、民間の方々の御意見によってこういう見通しをつくっておるわけでございます。  政府も、もちろん、それが適当であるという判断をしてつくったわけでございます。そしてまた、御案内のような一般消費税問題というようなこともございましたので、やはり私どもとしては、一日も早く新しい事態に即応した適切な計画がつくり得るようなそういう情勢になることを心から持ち望んで、それまでは部分的な修正で進んでいくよりしようがないのじゃなかろうかというふうな判断を、いまいたしておるわけでございます。
  109. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さらにもう一点お尋ねをいたしますが、現在これは政府全体としても、中でも経済企画庁としては最重要課題と位置づけをされておる物価安定の問題、この角度から現在の財政をどう見直しをするかということが迫られておると思うんです。  私も、当委員会において三月二十八日総理にも御質問をし、また先日、竹下大蔵大臣にも同様の質問をいたしたわけでありますけれども、いわば不要不急経費の最たるもの軍事費ということで、総理の御答弁としても、大蔵大臣の御答弁としても、軍事費といえども決して聖域ではないということで、必要なものについては見直しをどんどんやるんだという見解が提示をされておるわけですけれども、とりわけ物価安定ということを政府の中でも最も中心的課題として扱っておられる経済企画庁長官として、今日の財政をどう見直すか、軍事費の問題あるいは不要不急の大型公共事業、これをどう見直すかという点について、ぜひとも積極的見地からの取り組みをぜひひとつ努力をしていただきたいというふうに思うんですが、この点の見解を伺いたいと思います。
  110. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 先般三月の十九日でございますか、総合的物価対策を関係閣僚において決定をいたしまして、閣議もこれを非常に力強くバックアップしたいと。国会にもたびたび御説明をいたし、国会の方からも御支援、御鞭撻をいただいておる。その中の一番大きな柱が財政、金融の両面から総需要を適切に管理していくと、こういうことをうたい上げておるわけでございます。  今日の物価問題、御指摘のように、一番大事な問題でございますから、これが財政や金融の面からインフレを促進するような情勢をつくり出していくということでは、これはもう本当に物価問題は解決いたしません。前の第一次石油ショックのときの先例が明らかでございます。  そこで、そういう面から、金融については公定歩合を歴史上の最高水準にまで上げて金融の引き締めが非常に強化されておる。そこで、財政についてもどうかということで、ちょうど予算が成立いたしました直後に、公共事業を中心といたしまして適切な上半期における執行について、先般来政府部内でいろいろ協議をされまして、たしか五九・五%というふうな、いままでやはり相当例のないような厳しい執行態度を打ち出されておるわけでございます。  そのほかにも御指摘のように、いままでにない金利の高騰であるとか、あるいはその他の財政需要の増加ということを見越しまして、とにかく予算の執行についてはもう相当サマーレビュー等で、ぜい肉というようなものはもう毛頭考えられないほど厳しく査定をしておるけれども、しかし、なおかつ将来の財政需要の増加に備えて何とか削れない上にも削ってそれに備えていくべきじゃないかと、こんなような空気で財政当局も非常な力を入れておられるわけでございます。  私は、そうした財政、金融両面からの適切な総需要管理体制、これを背景にいたしまして、一方では産業政策、通商産業省、農林水産省その他の産業官庁が個々の物資について、いま厳しくいわゆる生産性の向上によって原油価格の高騰あるいは外国から輸入する原材料物資の騰貴あるいは円安の影響というふうな外的要因を、それを消費者物価の方に反映させないような努力というものを個々の物資についても十分やってほしいと、こんなような態勢でいまやっております。  御指摘財政運営についても、きわめて重大な問題として、今後とも私どもは物価対策に最優先性を持たして考えていきたい、また実行していきたいと、かように考えておるわけでございます。
  111. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 済みません。いまの全般的見解はそれで結構ですけれども、公共事業費の関係はお答えになりましたが、防衛費も聖域とせずこれも見直しをするという方向について、ちょっとつけ加えてください。
  112. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 防衛費については、佐藤委員とわれわれの方と若干この考えは違いますが、私はやはり防衛についても自主的に日本が判断をいたしまして、国民の総意というものをよく見きわめつつ適切な予算の計上と実行をやっていくべきだと、こういう見地見解を持っておるわけでございますが、いますぐ防衛費をどうこうということについては、特別の意見を持っておるわけではございません。
  113. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  114. 中村利次

    中村利次君 アメリカのプライムレートが一九・五%になったということで、敏感にドル安になったようでありまして、関連して円相場が高くなってきて、きょうの前場の終わり値が幾らだったのか承知しておりませんけれども、伝えられるところによりますと、一時二百四十四円台まで円が回復をしたということで、大変にこれは歓迎すべきことだと思うんです。  同時に、私は、この間からイラン原油の輸入がストップしたということに対してかなりの関心を持っていたわけですが、日本石油に決定的に弱いというので円安になったり、あるいはいろいろなひずみが出てきておったわけでありますけれども、イラン原油の輸入がストップしたにもかかわらず、円相場にはほとんど目立った影響はなかったわけであります。このことも、原因のいかんを問わず、私は歓迎すべきことだと思っているわけです。  そこで、先ほどの大臣の御答弁の中で、イランの三十五ドルの値上げに対して、それは困りますよと言って価格の交渉を始めておるというのは、あくまでも経済ベースであるということであったわけであります。これは、いろんな方面からいろんな見方をされておるようです。アメリカはアメリカなりの解釈をしておるようでありますし、日本国内でも、アメリカ一辺倒であるとか、評論家の中でも、私はきのうかおとといか、テレビである評論家が、日本政府は全くこれはどうしようもないと、アメリカ一辺倒でエネルギー問題なんかを真剣に考えてない、国益を考えてないという、そういうことも言っておったようでありますけれども、私は、少なくともこの商業ベースでイランの値上げに対して日本が応じなかったというのは、これは決して間違っていなかった、正しかったと思いますよ。  そこで、日本は商業ベースで価上げには応じなかった。イランはどう受け取っているんでしょうか。
  115. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 御案内のように、これはアメリカとイランとの問題が起こる前からDDのこの契約というのがございまして、もう中村委員お詳しいのですが、そこにやっぱり非常に不利な契約になっておりまして、価格は売り手の方で勝手に決められるような条項になっておるわけですね。売り手市場なんです。そこで、そういうことはやむを得ないとして、しかし、非常識な値上げというものであれば受け入れないということもこれはしようがないと、そういうたてまえでございますので、日本はさらっと、おたくのおっしゃる値段はDDとしてはもういままで例のない——私の聞いたところでは、たしかリビアとアルジェリアが一番いまDDが高いのだそうです。三十四ドルだそうですね。これはもう少量のものです。しかし、このイランからの分は、これはもう日本の一一%とかなんとかというのですから相当なものであるし、それからまた、イランにとってもこれはもう大変重要なシェア日本は持っておるわけです。  そこで、そういうことはやめましょうということで、本当にコマーシャルな交渉をいたしましたのですが、不幸にして聞いていただけなかった。まあきょうは、ニュースの報道その他を総合いたしますと、向こうとしてもやむにやまれない外貨事情があったのだというようなことを言っておられるようでございます。  私は、まだもちろんイラン側がどういう感じを持っておられるかは存じませんが、イランにおかれても、日本とこれで経済関係をどうしようなんというところを考えておられるのじゃなくて、やはり原油価格がこのくらいないとイランは国家的にこれから経済計画、財政計画等が立てられないので、まあ三十五ドルということ——これもしかも二月に二・五ドル、二ドル五十セント上げたばっかりでございますから、二カ月ですぐ上げるというのは本当にちょっときついと思うのですが、そういうことであるということを向こうが漏らしたのが、やっぱり一つのわれわれとしては判断の材料ではなかろうか。  すなわち、やっぱり向こうとしても、経済的に見てやむにやまれない値上げであるから、受けてくれなかったのは非常に遺憾である、こんなような感じを持っておられるのじゃなかろうかと、推測をいたしておる次第であります。
  116. 中村利次

    中村利次君 これは、いまお答えをいただきましたように、確かにいま石油の価格は売り手市場で売り方の方が値段を決めると、OPECが決める。ところが、カラカス会議で統一価格に失敗をしたわけでありますから、石油輸出国各国が勝手に決めるような状態になっておるわけですね。特にイランの場合は、まあこれは私は日本の業界も反省をすべきだと思うのです。ですから私は、そういう意味では、官僚統制だとか政府の介入、政治的な介入というものは否定しますけれども、国益のための政府の正しい指導というものは、これはやっぱりなければ困ると思うのですよね。イランから日量五十三万バレル輸入をしておったと。そいつが完全にとまるということになりますと、業界では、商社にしても石油業界にしても、五十三万バレルはもう全く平均をして各社で扱っているわけではありませんから、これは大変な打撃を受けるところがあるわけですね。  そうなりますと、やっぱりなりふり構わずスポット買いによって商売を続けないとやっていけないという、あるいはイランのこの価格値上げが理不尽であって受け入れるべきでないんだけれども、うちの商売からすると、これはえらいこっちゃというので、そいつを受け入れることがないとは言えない。そういうことが、私はやっぱり日本がスポット市場において国際的な批判を受けたとか、あるいは今度のイラン問題を契機として、少なくとも二、三ドルぐらいはスポット価格が上がった、その一翼を日本が担っているはずなんですよ。だから、そういうことを考えますと、国益に基づいた政府の正しい指導は私はぜひとも必要である。そうして、そういう立場からいって、今度の商業ベースでのイランの三十五ドルの値上げに対して、これをやっぱり断ったというのは、私は正しかったと思う。  そこで、相手がどうこれを受け取っておって、今後どうなるのか。私は大してこれは悲観的な観測を持っておらないわけですけれども、それはおっしゃるように、去年の十一月にアメリカに対する日量七十万バレルのあれがストップしちゃうわけですから、だから、これはイランにとってはかなりの痛手であったんでしょう。そうして、まあ内部事情を私どもがとやかくあれすることもありませんけれども、その結果かどうか知らないけれども、その後毎月日本は値上げをのまされている。ですから、私はやっぱりそこには限界があるので、三十五ドルを断って、そこで価格の交渉がこれから続けられていくんでしょうけれども、これは決して間違っていないので、日本の国益を損ねてないと思いますよ。  そこで、きのうもこれは私は決算委員会で総理に質問したのですが、なかなか答えにくかったようですけれども、イランの原油には、これは非常に硫黄分の高い、日本ではたけないような迷惑千万なC重油が上乗せされているんですよ。ですから私は、原油の方は価格の問題が新たにイランの方から提起をされて、それでは困るというので結果として価格の交渉がまとまらないでイランは船積みをストップしたと、しかし、それに絡んではいても、重油の方はこれは契約は別々なんだから、向こうが輸出をして日本が引き取るのは当然であるという、そういう考え方には同調できないんです。  イラン原油の輸入が日本になかったならば、当然そういう迷惑なC重油の輸入もないわけでありますから、だから日本は、その言い分を私は言っていいと思いますよ。価格にして約十億ドル、そしてその迷惑な、日本でたけないような、そういう非常に高い硫黄分のC重油を抱き合わせで輸入していることによって、日本が東南アジアだとかオーストラリアだとか、また再輸出をして、差損をしているのが三億ドル以上になっていると言うんだから、原油を輸入するから抱き合わせで迷惑なC重油の輸入をする。原油をストップしたなら、C重油も価格交渉がまとまるまでひとつお待ちを願いたい。  できませんか、これは大臣。私は、イランにかかわる関係閣僚のお一人だから、大蔵大臣臨時代理としても、あるいは経済企画庁長官としても、時間がもう来ましたから御答弁をいただきますが、ぜひそのことを閣僚会議でまとめてください。国益を損なわないでくださいよ。
  117. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) きのう中村委員の総理に対する御質問を、私は終始拝聴しておったのです。ですから、十分伺っております。  ただ、これだけは御理解いただきたいのですよ。全部あれは、総理も申しましたように、民間の会社とイラン国有石油会社との交渉なんですね。それで、それじゃ三十五ドル、何で民間の方が断ったのかと。それについては、政府も行政指導をしたのならばこれは適当だと、そこまでおっしゃっておられるのですが、私どもは、この原油について、スポット価格が上がったとおっしゃいますが、三十五ドルを認めたら上がるのですよ。三十五ドルを認めるようなことはしたくないということは、これは政府全体としても同じ判断だと思うのです。さっき申し上げたように、現にDDでは、三十五ドルなんという価格は出ておりませんから。  しかし、民間のやっていることを一々チェックするのかとおっしゃいますと、これはまたちょっと行き過ぎなんでして、私は、民間の会社の判断が、このC重油を買うか買わぬか、それについては民間の会社も判断があると思います。しかし、そこまで譲れない一線は、三十五ドルというDD原油は買えない、これはわれわれの守るべき一線である、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  118. 中村利次

    中村利次君 まるっきりおかしい。やりたいけれども、時間がなくなっているから、しようがない。そんな、おかしい。国益を損ねているのですから、日本は明らかに。おやんなさいよ、そういう正しい指導は。円にすると、五百億以上ですよ。  もう時間ですから終わります。
  119. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、討論はないものと認め、これより直ちに採決に入ります。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  121. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 世耕政隆

    委員長世耕政隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、五月六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会      —————・—————