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政府委員(
高橋元君) 退職給与引当金が租税特別
措置という仰せがございましたが、これは法人
税法の施行令の改正で手当ていたす予定にしております。これが私
ども、なぜ租税特別
措置に当たらないということを長年申し上げておるかと申しますと、すべての法人の
所得を計算する場合の通則だという考え方であります。
ちょっと話がくどくなってお許しをいただきたいのでございますが、給料を払いますとそれが損金で
所得税の、法人税の計算に入らないのは当然だと思います。で、九月期で終わって十二月にボーナスを払うときに、九月期まで働いた人のボーナスを引当金にして十二月に払った場合には、九月期の損金にして十二月の次の期に払うまで債務に立てると。まあいわば引当金として立てる。これも当然御理解いただけると思うのです。
退職給与は、その期に働きまして、いまの日本の退職給与の
制度ですと、支給倍率が上がっていくわけでございます。したがって、勤続年数が延びた分、支給倍率が上がった分、それだけ将来その人がやめた場合に支払うべき退職金の額がふえます。ふえてしまったものはやはり賞与なり、まして当期損金におきます給与というものと性格的には同じものである。これはいろいろ議論がございますけれ
ども、
昭和四十二年に、企業会計審議会というのが大蔵省にございますが、そこで議論をしてもらいまして、これはやはり負債性の引当金相当であるという考え方であります。金を貸しまして貸し倒れの危険というのは常にあるわけでございますから、貸し倒れ引当金を立てると同じように、やはり
会社の
所得を計算する場合には、それはむしろ引かねばならないというのが企業会計上の考え方であります。そういうことで
昭和四十年の改正の際に、これを
所得税の、法人
税法の
所得計算の通則として法人
税法の中に入れたわけでございます。
したがって、いま仰せのように、法人が引き当てます退職給与引当金は
一般の負債勘定に立てておるだけで、その見合いの
資産は特定さしておりません。
昭和二十八年に
制度を設けましてからたしか三十九年までは、その四分の一を特定
預金にしておけという
制度がございました。しかし、いま先ほど御
説明を申し上げましたように、退職給与引当金はいま働いておる従業員が将来やめた場合に、退職給与規程なり労働協約に基づいて支払われるべき退職金の中でその期の勤務に起因している
部分、それを引き当てるわけでございますから、したがって、これについて特定
預金を要求する必要はないという考えでおったわけであります。
別途、いまもお示しのございますように、
昭和五十年、五十一年の構造不況時代に大変政策的な問題になりましたわけでございますが、当時、
支払い賃金確保法というのが国会で御可決をいただいたわけでございますけれ
ども、その時代に、
会社がつぶれてしまって退職給与が払ってもらえない、給料も未払いがある。こういうものについて給与と、退職給与の
支払い原資を確保させるべきだというような
法律であります。
その
法律を労働省で立案いたします際に、退職給与の
支払い原資を特定
預金にしたらどうだろう、昔のように四分の一を特定
預金にしておいたらどうだろう。少なくとも
会社がつぶれても、特定
預金見合いのものについては質権なり抵当権なりくっついているわけですから、または保証がくっついているわけですから、その分は取り立てられる、こういう
提案がありまして、いろいろ労働省で苦労をしたわけでございますけれ
ども、当時の法案の作成の経過で私
ども労働省から勉強いたしましたところでは、左前の
会社は退職給与の
支払い原資を
会社の外に出してしまう。または特定の形の
預金にして、その
預金を営業資金から切り離してしまうということになりますと、そういう運転資金がまた足りなくなりまして、その分をまた借りてこなきゃならないわけで、
支払い利子がふえてしまう。そういうことがあるために、退職給与の額をふやすことを
会社もいやがり、組合の方も要求しにくくなる。そういうことであるよりは、やはり
会社が健全に経営される場合にはいまのままの
制度でいいではないかということで、たしか退職給与の
支払い原資の確保という
制度は、ねばならないという義務規定という形で終わったわけでございます。
私
どもも、たびたび国会で、退職給与の
支払い原資の引き当てと、退職給与引当金と
名前が似ておりますので、ときどき御一緒のような御質問をいただくわけでございますが、
支払い原資を積み立てるという必要があるではないかという
お話がありまして、昨年もやりましたし、その後も労働省といろいろやりとりをしておるわけでございますけれ
ども、いまのところ、そういう
支払い原資の準備
資産というようなものを引当金
制度と一緒のものとして構成することは非常にむずかしいという現状でございます。