○
国務大臣(
藤波孝生君) ただいま議題となりました
労働安全衛生法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
わが国の建設業は国民経済の中で大きな比重を占めておりますが、最近の労働災害の発生
状況を見ますと、特に建設業において多くの労働災害が発生しており、その死傷者数は全産業の三分の一、死亡者数では半数近くを占めるという
状況となっております。また、その労働災害の
内容も、他産業と比較して大規模かつ重篤なものが多数見られるところであります。
政府としては、このような
状況にかんがみ、建設業における全般的な労働災害防止対策を進めることとし、その具体的方策につき中央労働基準審議会に検討をお願いしておりましたが、そのうち法律改正を要する事項について先般結論が得られたところであります。
政府は、その結論をもとに同審議会に改正法案要綱を諮問し、全員一致の適当である旨の答申をいただきましたので、ここに
労働安全衛生法の一部を改正する
法律案を
提出した次第であります。
次に、この
法律案の主な
内容につきまして、その概要を御
説明申し上げます。
第一は、建設工事の計画の安全性に関する事前審査制度の充実強化であります。
その一は、工事開始の日の十四日前までに労働基準監督署長に対して届け出されることになっております工事計画のうち、特に危険性が高い大規模な建設工事の計画については、より適正な事前審査を行うため、工事開始の日の三十月別までに
労働大臣に対して届け出させることとすることであります。
その二は、危険性が高い特定の建設工事につきまして、事業者が届け出を行うべき工事計画を作成する際に、工事の安全性を確保するため、安全衛生に関する一定の資格を有する者を参画させなければならないこととすることであります。
第二は、重大事故が発生した場合において新たな労働災害の発生を防止し、もって
関係労働者の安全を確保するための措置を定めることであります。
トンネル工事等を行う事業者に対して、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するため、必要な機械器具の備えつけ、訓練の実施等を行わせることとすることであります。
第三は、下請混在
作業現場における安全衛生対策の充実強化であります。
その一は、元請と下請の労働者が混在している
作業現場において、混在による労働災害の発生を防止するため、元請事業者に機械、設備等の配置を含め仕事の適切な段取りを行うようにさせることであります。
その三は、元請と下請の労働者の混在による労働災害を防止するため、一定の元方事業者に元方安全衛生管理者を選任させることとし、元方事業者の講ずべき措置のうち技術的事項について、統括安全衛生責任者の指揮のもとに、これを管理させなければならないこととすることであります。
以上、この
法律案の提案理由及びその
内容の概要を御
説明申し上げました。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
ただいま議題となりました
中小企業退職金共済法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
中小企業退職金共済法は、中小企業の労働者の福祉の増進と中小企業の振興に寄与するため、昭和三十四年に制定されたものであります。この法律に基づきまして、現在、中小企業の常用労働者を対象とする一般退職金共済制度と、建設業及び清酒製造業に期間を定めて雇用される労働者を対象とする特定業種退職金共済制度の二種類の制度が設けられております。
これらの制度に加入している事業主の数は約三十一万、加入労働者数は約三百十万人に達しており、本制度は、中小企業労働福祉対策の主要な柱の
一つとなっております。
ところで、中小企業における退職金制度の現状を見ますに、その普及
状況及び
内容は、いまだ必ずしも十分なものとは言いがたい実情にあります。このため、本制度をさらに充実強化し、中小企業にとってより魅力あるものとすることによって、その積極的な普及を図ることが要請されております。特に本制度における掛金及び退職金等の額については、昭和五十年の法律改正以降の一般の
賃金及び退職金の水準の動向に対応して改善を図る必要があるものと
考えております。
政府は、このような
観点から、本制度について所要の改善を行うこととし、先般中小企業退職金共済審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに
中小企業退職金共済法の一部を改正する
法律案を
提出した次第であります。
次に、この
法律案の
内容につきまして、概要を御
説明申し上げます。
第一は、本制度の対象となる中小企業者の範囲の拡大であります。
現行制度では、本制度の対象となる中小企業者の範囲は、その雇用する従業員の数が三百人以下であること等従業員規模によって定められておりますが、中小企業施策としての整合性を高めるため、中小企業基本法等に合わせ、これに資本金規模を加味し、本制度の対象となる事業主の範囲を拡大することとしております。
第二は、一般退職金共済制度における掛金月額の引き上げ、国庫補助の増額等による退職金給付の引き上げであります。
その一は、掛金月額の引き上げであります。
現行制度では、掛金月額の最低額は八百円、最高額は一万円となっておりますが、
賃金の上昇等に合わせ、掛金月額の最低額を千二百円、最高額を二万六千円にそれぞれ引き上げることとしております。
その三は、退職金給付に対する国庫補助の増額であります。
現行制度では、退職金給付に関し、掛金月額の最低額である八百円に対応する退職金について掛金納付月数に応じ一定率の国庫補助を行っておりますが、掛金月額の引上げに対応して、この国庫補助の対象を掛金月額千二百円に対応する退職金に引き上げることとしております。
その三は、掛金月額が増額された場合のいわゆる掛け捨て、掛け損の解消であります。
現行制度では、加入後に掛金月額を増額した場合に、被共済者が増額後二年未満で退職したときは、増額部分に対応する退職金は、その年数に応じ不支給又は掛金総額を下回る額の支給となっておりますが、このような掛け捨て、掛け損の解消を図るため、原則としてそのような場合にも掛金に相当する額を支給することとしております。
なお、これに伴い退職金給付について所要の調整を行うこととしております。
第三は、一般退職金共済制度における加入前の勤務期間の通算制度の新設であります。
現行制度では、事業主が本制度に加入した後の勤務期間のみを対象として退職金が支給されることとなっておりますが、実際の勤務期間に応じた退職金を確保できるようにするため、新規に本制度に加入する事業主が、その雇用する従業員の加入前の勤務期間について所定の過去勤務掛金を納付した場合には、十年を限度として加入前の勤務期間を加入後の掛金納付月数に通算して所定の退職金が支給されるようにすることとしております。
第四は、特定業種退職金共済制度における掛金日額の範囲の引き上げであります。
特定業種退職金共済組合が定款で定め得る掛金日額の範囲は、現行制度では「六十円以上三百円以下」となっておりますが、
賃金等の上昇に合わせて、これを「百二十円以上四百五十円以下」に引き上げることとしております。
この
法律案の主たる改正
内容は以上のとおりでありますが、この法律の附則におきましては、この法律の施行の際被共済者である者に関して、最低掛金月額までの掛金月額の引き上げについて一定の猶予期間を置くこと、本制度加入前の勤務期間を加入後の掛金納付月数に通算することができることとすること、退職金についての国庫補助の引き上げは施行日以後の期間について行うこととすること等の経過措置を定めるとともに、その他これらの改正が円滑に実施されるよう所要の経過措置を規定しております。
以上この
法律案の提案理由及びその
内容につきまして御
説明申し上げました。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。