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政府委員(
松田正君) いわゆる引き揚げの問題につきましては、御案内のとおり、戦後六百三十万に上る引揚者を
日本は迎え入れたわけでございます。ただ、その中で旧満州地区を中心にいたします地区につきましては、必ずしもすべての者が帰り得たということではございませんで、心ならずも
子供を残したりあるいは夫を残したり、あるいは母を残したりという方も多数おられるわけでございます。現在引き揚げの問題はほとんど片づいたかに見えますけれ
ども、満州地区からの問題につきましてはなお手を打つべき問題がたくさんあろうかと思います。
最近では、特に中国から引き揚げてこられる方につきまして、まず第一番目に、
日本の土地に早くなじんでいただくということが私
たちの行政の中でも重要なポイントに考えて施策を立ててきたわけでございます。
具体的に申し上げますと、一つは、帰ってまいりましたときに、現在は成田ということになりますけれ
ども、いろんな
日本の役所の仕組みだとか、どこへどう手続をするだとか、どこへ行けばどうなるかという、まずこういったようなオリエンテーションが必要でございますので、これには十分時間をかけて導いていくということがまず手初めの仕事でございます。
それから第二は、いま御指摘のとおり
言葉が通じない方がまず一〇〇%近い率であるわけでございまして、そういった
方々に早く
日本語を覚えていただくために
日本語の練習用のテキスト、カセットテープ、それからテープレコーダー、この三点を必ずそれぞれに
支給をすることにいたしております。
それから、一応定着をするために宿なりあるいは身寄りの方のところへ参るわけでございますけれ
ども、そういったところには大体平均いたしまして月に三回から四回
生活指導員を派遣をする、こういったことが主な仕事でございまして、こういった
方々の
生活の相談とか、そういった身寄りのためのいろんな指導とかいうために、都道府県の中に
関係部局によります連絡会議を設けていただきまして、常にそういった
方々の
生活状況を把握しながら、
関係機関が協力して指導に当たるという体制をそれぞれの県にとっていただいておるところでございます。
五十五年度につきましては、まず新しい施策といたしまして幾つか考えておりますけれ
ども、こういった引揚者の
方々が定着するために、私
たちはいま申し上げたようなことをいろいろやっているわけでございますけれ
ども、それでも実情に合わないようなことをやっているんじゃないかというおそれもございますので、引揚者の定着化
対策委員というものをお願いをいたしまして、これは主としてそういった方面に十分な経験のある方でございますけれ
ども、そういった
方々のお知恵を拝借しながら、定着化
対策をより有効に適切に実施をしていく、そういった
委員会を設置をする予定でございます。
それからもう一つは、やはり定着をいたしまして仕事を身につけるということが重要でございますので、職業訓練校に入りました場合に、もう一つ
言葉の問題だとか習慣の問題だとかということでちょっと足りないところがある、そういった補いをいたしますために、訓練校に協力
生活指導員というものを設ける予定にいたしております。これは八県各一校に一人ずつ現在設けるように準備を進めております。
それから、四十八年以降ここで相当な年月を経たわけでございますけれ
ども、帰ってこられました方の
生活の
実態はどうか、あるいはどういうようなシチュエーションにあるかという問題につきましてまだ実情がよくわかっておりませんので、来年は改めてこれを
調査をして定着化
対策の資料にいたしたいということで、
実態調査も予定をいたしております。
それから、先ほど申し上げました
生活指導員の訪問回数を、大体現在は三回から三・五回ぐらい平均でございますけれ
ども、これを一回
程度ふやして、さらに濃密に
生活指導ができるような体制をとりたい。それから帰還手当も若干増額をいたしたいと考えております。
以上が厚生省で実施をいたします五十五年度の新しい施策でございますけれ
ども、その他厚生省以外に、たとえば住宅の問題でありますとか、職業訓練あるいは教育の問題、それぞれ
関係省庁にお願いをいたしまして、できるだけ効率的に運営できますように都道府県の
委員会、協議会等を利用しながら定着化
対策を
強化をしていきたい、かように考えておるわけでございます。