○
国務大臣(
小渕恵三君) 御
指摘は、
明日香法を
提出するに至るまでの経緯、背景あるいは意義等についてのお尋ねかと思いますが、
〔
委員長退席、
理事茜ケ久保重光君着席〕
若干、経過を申し上げますと、
明日香村における
歴史的風土の
保存につきましては、
昭和四十五年に「
飛鳥地方における
歴史的風土および文化財の
保存等に関する方策について」
閣議決定を行いまして、
歴史的風土の
保存地区、
史跡の指定の拡大、道路、河川等の
整備、
歴史公園、
歴史資料館の設置等の
施策を講ずるとともに、
飛鳥保存財団を設立することになったわけでございます。当時、佐藤
内閣だったかと思いますが、首相みずから現地をお訪ねをされまして、
保存についての
政府としての姿勢について積極的なものが見え始めたのはその当時と記憶しております。
その後、
明日香村の
歴史的風土を
保存するために特別
措置を講じてほしいという地元からの強い要請が繰り返し行われまして、五十三年八月には、
奈良県知事、
明日香村長から総理あてに、
歴史的風土の
保存と
住民生活が両立するような方策を立てるとともに、
明日香村における
歴史的風土の
保存が国家的な意義を有するものであることを明らかにするための特別立法
措置を講じてほしいという強い
要望書が
提出されたわけでございまして、そうした背景もありました中に、有名な
高松塚の発見その他によりまして国民全体におきましてもこの
地区に対する特別な関心も寄せられてくるというようなこともございまして、そうした背景に基づきまして、
昭和五十四年の三月に、
歴史的風土審議会に「
明日香村における
歴史的風土の
保存と
地域住民の
生活との調和を図るための方策について」諮問を行いまして、その答申を得て、この
法律を
提出するに至ったわけでございまして、この
法律が
成立いたしますれば、長年にわたる地元の
要望にこたえて、
住民の
生活環境の
整備等を図るともに、
住民の
理解と
協力のもとに
明日香村における
歴史的風土の
保存が図られることになり、わが国の文化の向上、発展に大きに寄与することになり、大変意義深いことだと確信をしておるわけでございます。
お話にありましたように、大変画期的と申しますか、
委員は特別な
法律と申されておりますが、そういう感じのするものであることは事実でございまして、全国三千を超える市町村の中で一村の名前をかぶせた
法律というものは、実は一つだけ戦前にありましたが、今日、この
法律をもって嚆矢となすという
法律でございますので、大変なものだろうと認識をしております。
私も、一議員でありましたときに、この問題にかかわり合いを持ってまいりましたが、いわば
明日香地区というものをいささか勉強いたしてまいりますれば、先刻来も
茜ヶ久保委員にお答えいたしましたが、まさに六
世紀、七
世紀、八
世紀にかけてのこの
地区に文化が栄えた時代こそわが日本の最も
歴史上国としての体制を確立した時代である。京都大学の
上田教授によりますれば、倭と称号しておった日本が初めて漢書を初めとして中国その他の
歴史書に日本という国号を明らかにした時代である。文化華やかな万葉の時代を現出した時代でもありますし、また、こうして法治国家として
法律を
審議するこういう
国会の源泉をたどりますれば
飛鳥浄御原律令をもって初めとなすとも言われておりますが、その後の大宝律令とか養老律令とかというものにつながる律令国家、法治国家発祥の時代であるということになりますれば、まさに日本民族の母なる
地区である、こういう
理解ができるだろうと思うのです。したがって、そのことを守るためには私は一個人としてはいわゆる
明日香法という特別な法を制定することが望ましい、こう考えておりましたが、
総務長官になりまして事務
当局ともいろいろ相談いたしました段階で、現行ございます
古都保存法に立脚をしながら、ちょっと言葉が適切でないかもしれませんけれ
ども、親にまさる子供である、出藍の誉れのある
法律としてこの
明日香法を制定するという意義が大変あるのではないか、こう考えたわけでございます。
と同時に、恐らく戦後一時期でありますれば、国家が補助金を出してこうした一
地区を守ろうということの意欲はありましても、財政的な負担に国民全体が応じてくれるかどうかわからなかったわけでありまして、その間を
明日香村民がみずからの力と努力によって日本のかけがえのないこの文化財を保護していこうというけなげなお
気持ちをもって今日まで維持してきていただいたわけでありまして、その後、
政府、県もいささかお手伝いをいたしてまいりましたが、まさにこの時点に立って、これから失うことのできないこの遺産を国民全体が守り抜こうという
意思のもとに国の
法律としてこれを定めようということだろうと思います。したがって、目的にありますように、国、県も力を尽くし、
村当局も懸命の努力を払いまして、
村民の
生活を守り抜くと同時に、国家的な目的も達していくというこの二つの命題に対して、まことに調和ある形で今後維持していこうという意味では、この
法律は私は大変従来に見ない新しい
考え方に立った文化立法と考えてしかるべきだろうと思います。このことによって国の基本的な日本文化を守るという姿勢を明らかにするとともに、そこに現実に住まいする
明日香村民の
生活を向上維持していくということができますれば、もってこの
法律の目的が達成できるものだとかように考えておる次第でございます。