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国務大臣(大来
佐武郎君) 日米
貿易のアンバランスは数年前からやや傾向的なものになりまして、その幅の大小はありますけれども、大体
日本がかなり大幅な
輸出超過になることで、そういう意味では構造的なということも言われておるのでございますが、
一つには、特に工業製品についての生産性の上昇率が
アメリカは非常に低い、
日本はかなり高い、次々にいろんな工業製品について
日本が競争力を持つようになってきておるということが
一つあるように思います。それは為替レートを通じてある程度は調整されるわけでございますけれども、しかし為替レートは全般的な
貿易や金融の
情勢を反映いたしますから、個々の産業の競争力でだんだん
日本が強くなってきているという点が
一つ、それからもう
一つは、
日本の
貿易の地域的な構造から申しまして、中近東に対して非常に大きな入超になるわけでございます。ことに今度のように油がまた値段が倍になりましたので、
日本の輸入の大体半分は石油代だ、その石油の八割は中近東から参るわけで、中近東がそれだけ
日本からの輸入をふやしてくれれば、地域的なアンバランスにはならないんですが、それはまあ向こうの方のそんなに買う物はないということになりまして、結局
日本が経常収支のバランスを図ろうとすると、
アメリカ、ヨーロッパあるいは東南アジア等にかなり大きな
輸出超過にならないと全体のバランスがとれない。それに対して
アメリカにしてもヨーロッパにしても
日本が大きな
輸出超過を持つことには、国際収支を多角的にバランスは
考えるべきだという理屈はそれぞれわかっておると思いますけれども、現実にバイラテラルなたとえば日米間に大きなアンバランスがあると、従来もいろいろ摩擦を生じてきておるわけでございます。ですからそういう面での
貿易の対米
輸出超過というのは絶えず日米間の
貿易上の摩擦として起こってくる可能性は将来もあるだろうと思います。過去においてもいろいろあったわけでありますが、まあどうにか両方の
政府当局の努力によって余り大事に至らないでこれまで消しとめてきておるわけですし、今後もそういうことを繰り返していくことになるかとも思いますが、
一つには、
日本の輸入の中で石油が非常に大きいということ、この点に関連してやはり石油の輸入をもう少し節約すると。これは私ども
外交の
立場からいっても、中東地域に非常に大きなエネルギーの供給を依存しておるということが
外交を非常に困難なものにしておる——先ほど来の議論もございましたが、という点もあって、さらに一層石油の節約を図る。同時に石油以外のエネルギーに一日も早く転換していけるような
政策を促進すると。そのことは、もし石油のかわりに石炭をかなり輸入して使うとなると、これは輸入相手先は中東ではございませんで中国とオーストラリアと
アメリカとカナダ、これが主たる対日石炭供給源になる。それはまた日米の
貿易のアンバランスの是正、
日本の
貿易の地域的なアンバランスを緩和するということにもなりますので、これはまあ多少時間がかかる迂遠な方法ではございますが、
日本の石油節約とエネルギー源の転換というのは日米
貿易摩擦を避ける上にもできるだけ早く進めていかなければならないというように思いますが、その間はやっぱり時折
貿易上の摩擦は起こり得る。
さらにもう
一つつけ加えますと、やはり先端的な工業分野での日米間の競争が相当強くなってきておりますので、たとえばIC、通信機関係など、そういう面でございますが、これもしかし
日本としてもできるだけいろいろな面での対米輸入をふやすというようなことで、お互いに
貿易を縮めることではなくて双方に拡大することによってアンバランスを少しでも小さくするということでいかなければならないのじゃないかというふうに
考えます。
それから
最後に東京ラウンドのメリットについての
お尋ねでございましたが、先ほど来、お米の問題やら自動車、電電、いろいろ問題があることは事実でございます。ただ、たとえば
政府調達にしても、
アメリカは従来バイ・
アメリカン・アクトというものがあったわけでございますが、この東京ラウンドの
交渉でその大
部分を廃止したわけでございまして、これは
アメリカ側としても相当思い切った、
政府調達に対する海外からの供給に道を開く、門戸を開放するという意味になるわけでございまして、具体的には絶えず問題が起こるということは避けがたい、それを東京ラウンドが不十分ではございますけれどもそういう
貿易上の紛争をルールに従って
一つずつ片づけていくそのルールの枠組みを提供しているという意味のメリットがあると思います。
アクリルの問題につきましても、この前
ワシントンでアスキュー通商代表と一般的な意味で話をしまして、
アメリカの通商法の結果かえっていろいろダンピングが恣意的に適用されては困るんだということを私どもの方からも申したわけでございますが、これについてはルールがあることでもあるし、われわれ通商代表部の方にもし具体的なケースがあったら何でも
日本側から申し出てくれ、われわれもそういうことの
内容は自分たちとしてもできるだけ避けたいと思っているからという答えでございましたが、まあ相互に
貿易問題についてはいろいろな不満がある、
アメリカ側には
日本に対して、先ほどのスタンダード問題等についてもいろいろ不満があるし、
日本側もいろいろ不満があるわけでございますが、これはやっぱり
一つずつ話し合いで片づける、その話し合いで片づける
一つの枠組みが東京ラウンドではないか。それからもう
一つは、ほうっておけばすぐ個別産業の主張が出てきて輸入制限、保護主義的になりやすい条件を、東京ラウンドで
各国政府が縛られていて、安易に保護
貿易になってはいけないということをすでに頭にとめておかなきゃならない、
考えなきゃならないという意味の大きな効果もあるように思います。