○
参考人(森
芳太郎君)
日本重化学工業の森でございます。
本日、このような機会を設けていただきまして、はなはだ光栄に存じております。ありがとうございます。
それでは、
地熱開発にかかわる問題等につきまして、いまからお話をいたします。
地熱エネルギーは、非枯渇
エネルギーであること。
日本国内にその
資源が豊富に賦存しておりまして、
開発技術はすでに実用
段階にあり、さらに深部
開発等の技術
開発によりまして可採
エネルギー量の増大、
経済性の向上等が期待できること。それから燃料を使用しませんので燃焼による環境問題はございません。排出物、これは火山性の物質とか火成活動による物質が少量あるわけでございますが、問題のあるものに対してはその
対策は現在の技術で十分に可能であること。それから発電に利用いたしますと高利用率の発電が可能でありまして、
経済性も他の発電方式と十分に拮抗できます。また、立地点が山間僻地でありますので、多目的利用も含めまして地域
開発につながるというような特質がございます。この早期
開発促進策が、先生方の御支援によりまして
昭和五十五年度よりこれからスタートしょうとしているわけでございます。
その次に、
日本の
地熱資源の賦存量と可採量にちょっと触れてみたいと思いますが、賦存量につきましては、
産業技術審議会の資料によりますと、従来
地熱が
開発されております比較的浅い場所、深さで言いますと二、三キロメーターぐらいのところでございますが、火山地帯にある浅部熱水系と呼ばれているところでございますけれ
ども、そういう
地熱帯が全国で約二百カ所ほどございます。その賦存量は電力換算で約一億三千万キロワットぐらいございます。これは蒸気で発電をするということだけで一億三千万でございますが、同伴してくる熱水による熱
エネルギー量を発電換算いたしますと二千万キロワットほど別にございます。合計一億五千万キロワットぐらいございます。
いま熱水のことを申し上げましたけれ
ども、
地熱地域の中では、蒸気だけ出てまいります蒸気地域と、蒸気と一緒に熱水が同伴してまいります熱水地域と、二通りのタイプがあるわけでございますが、ほとんどが
日本の場合は熱水地域でございます。
それからさらに深い場所、大深度熱水系と呼んでおりますけれ
ども、深さで三キロメーターから五キロメーターぐらいの深いところの蒸気、熱水を取りますことにつきまして、現在、豊肥地区で実験をやり研究
開発中でございますが、これができ上がりますと、深いだけありまして温度も二百五十度から三百五十度ぐらい恐らくあるだろうと推定されておりますが、
エネルギー賦存量としまして六千万キロワット分ぐらい、これは蒸気でございますが、熱水を利用しますと六百万キロワット分ぐらいのものが上がろうと推定されます。こういうような地域は全国で約六十カ所というふうにされております。
それからもう
一つ、深層熱水というのがございますけれ
ども、火山とは直接関係はないのですが、堆積盆地、陥没地域などの深い場所に普通の地温よりも異常に温度の高い場所があるところがございまして、大体百五十度から百八十度ぐらいあるのでございますが、深さで三ないし五キロメーターぐらいのところでございますが、そこの熱
エネルギーをやはり電力換算しますと一千万キロワット分ぐらいのものがあるだろうというふうに言われております。このような場所は全国で約十カ所あるとされております。
それから高温岩体というのがございますが、これは火山の周辺の非常に温度の高い岩石の部分でありまして、地下水が回っていないところがございます。そこの熱
エネルギーを取り出そうという試みが、
日本でもアメリカでも、その他の国々でもいま実験をされておるわけでございますけれ
ども、これは二本ボーリングを掘りまして、一本の方に高圧の水を圧入いたしまして地下の岩石を人工破砕、つまり水圧で岩石を砕くわけでございますが、その破砕帯をもう一本の井戸につなげまして、水を一方から入れてやって岩石の熱
エネルギーを水に受熱させて、一方から蒸気、熱水で取り出すという、基本的な
考え方はそういう
考え方で岩体の熱
エネルギーを取り出そうとするわけでございます。これが成功しますと七千万キロワット分ぐらいの、これも非常に大きな
エネルギーが取り出せるだろうということになっておりますが、賦存量として一応七千万キロワットというふうにされておるわけでございます。
これらを集計いたしますと、大体その賦存
エネルギーといいますのは電力換算で二億八千七百万キロワット分あるだろう、
石油換算いたしますと五億七千六百万キロリッターになるわけでございますが、そういったものが
日本の国内の
地熱の
エネルギーとして賦存しているだろうというふうに言われておるわけでございます。
しかし、実際その取り出せる量はどのくらいかということになるわけでございますが、私
どものデベロッパー仲間といろいろこういうことでしばしば話し合いがあるわけでございますけれ
ども、いま国の方でも
開発の具体的なスケジュールを樹立したり、
地熱エネルギーの位置づけを明確にするというようなことで、現在その確認を国が実施しているところでございますので、その実態がやがて明らかになるだろうと思いますが、私
どもだけで大体推定された
数字を申し上げますと、浅部熱水系、比較的浅いところでございますが、約三千万キロワット分ぐらいのものは実際採取できるだろうと考えられております。このうち二千万キロワットぐらいは比較的楽に
開発が可能であるだろうと思われます。
それから大深度熱水系でございますけれ
ども、これもいま研究
開発をやっているところでございますが、これができ上がりますと、これも既存の浅部熱水系で
開発されいるところの出力が増加いたしますし、新たにそういう大深度の
開発ができるということも含めまして約三千万キロワットぐらいは可能ではないかというふうに考えられております。
そのほか、いろいろあるわけでございますが、高温岩体の、先ほど申し上げた高圧の水を使いまして人工破砕帯をつくる、つまり人工熱水系をつくるというようなことは、岩石の水圧破砕技術というのは今回の技術レベルでも相当なところにいっておりますので、意外に早く実用化されるかもしれないというふうに考えております。これでも五百万から一千万キロワット分ぐらいのものは可採量として見込めるであろうというふうに考えられております。
こういうふうに全部集計いたしますと、
日本における
地熱エネルギーの可採
エネルギー量は、合計六千から七千万キロワット分ぐらいは優にとれるはずだというふうに私
どもは考えております。
それから
開発上における問題点を若干申し上げますと、まず立地環境上の問題でございますが、私
どもがいま運転中の
地熱発電所やあるいは建設中のところの地元の皆さん方からは大変な御助力と御支援を賜っているわけでございまして、
開発反対というような声は実際私はいままで聞いたことがございません。私
ども、この仕事を非常にありがたい仕事だと思ってやっておるわけでございますけれ
ども、もっとも、
調査を始めたり
開発に入る前には地元の皆さん方にできるだけ大ぜい現在運転されている発電所をよく見ていただきまして、環境面での心配がないという御理解を十分に得られているからでもございますが、
地熱エネルギー、特に熱水の
エネルギーの多目的利用に対する期待も大きいというふうに思われます。
そういうことでございますけれ
ども、一方におきまして、
地熱エネルギー開発の最大の問題は、その賦存地域の約八〇%以上が国立公園とか国定公園等の自然公園地域内にあることでございまして、現在私
どもがやっております
地熱発電所もやはり公園地域内にありまして、できるだけそのいわゆる改変面積といいますか、利用面積を縮小する、それから地形、地物の変更、建物の形態、そういったものについては十分な注意を払ったり、それから工事が仕上がった後の緑化その他で極力そういったことに努めておるわけでございますけれ
ども、
開発行為と自然保護、景観
保全といいますか、そういったものの競合することが最大の問題でございます。これからは政府各位あるいは先生方におかれましても、この調整にはぜひともお力添えを願いたいと思います。
地熱地域で一例を申し上げますと、さっき浅部熱水系でも三千万キロワット起きるというお話をいたしましたが、いまどのぐらいその公園内で面積が要るかと申し上げますと、大体平均で一平方キロメートル当たり五万キロワットぐらいの
エネルギーがとれるわけでございます。三千万キロワットとしますと六百平方キロメートルの
開発地域が必要になります。これは正味の面積ではなくて地域全体の広さでございます。公園地内にその八割があるとしますと、四百八十平方キロメートルがそういう自然公園地内にあるということになります。国定公園、国立公園の全面積が三万一千平方キロメートルほどでございますので、これを
計算していきますと約一・五%ぐらいになるわけでございますが、三千万キロワットの国産
エネルギーを
開発利用するために公園面積の一・五%の利用を許容できるかどうかということは、公園と
エネルギー双方の価値判断によって決められるべき問題であろうと思いますが、また、公園の方といたしましても、
地熱の
開発にその一部の利用を許可するということになりますと、お話を伺いますと、いろいろな方面から利用することを要求されておられるようでございますが、一種のなだれ現象でもって許可申請が出されますと公園自体の存立に危機感を醸成するというようなことがあるかもしれません。しかし、こういう点は行政指導によって、私
どもの方の一方的な
考え方かもしれませんけれ
ども、対処できる問題ではないだろうかと思います。
また、公園での
開発に当たりましては、たとえば
地熱発電所の場合、火力や
原子力発電所と比べまして、単位容量当たりの利用面積といいますか、それが
地熱発電所の場合大き過ぎるのではないかという批判がときどきあるわけでございます。
地熱発電所は水力発電所と同じで、その場所で
エネルギーを取り出して、それで電力にする発電所でございます。火力や
原子力のように遠く外国から、
資源を
調査し、それを掘り出し、精製し、輸送し、それで使うばかりにして、そこで燃やして電力にするという発電所と違いまして、比較するのもちょっと無理なような気もいたしますし、また、
地熱発電所も水力発電所も、いずれも非枯渇
エネルギーに基づく発電所でございますので、
石油のようにあと三十年か四十年でなくなるというようなことではございませんで、人間が利用し得る限り利用できる発電所でございますので、そういった電力の量、それから時間ということを考えますと、火力とか
原子力と比較するのはこれは無理なことではないかと思います。
それからもう
一つ、その排出物の問題。先ほどちょっと触れましたけれ
ども、排出物の問題がございますが、現在
世界じゅうで運転しています
地熱発電所の総出力は約二百十万キロワットぐらいになっていると思います。この発電所、いろいろの学会あるいは研究会、国連主催のシンポジウム、そういったところで報告書がしばしば出されておるのでございますけれ
ども、私
どももアメリカやニュージーランド、イタリーなどとときどき折を見ては連絡をとり合っているのでございますが、
地熱発電所からの直接の排出物による実害が出たということはまだ一度も報告されておりません。ただ、アメリカのガイザーの
地熱発電所、これは恐らくいま八十万から九十万キロワットぐらい発電していると思いますが、この地域で出力が五十万キロワットを超した時点で硫化水素のにおいの問題がありまして、デベロッパーの方でその後の
地熱発電所には自主的に脱硫装置を取りつけております。この脱硫法はストレトフォードメソッドと申しまして、それの改良した方法でございますけれ
ども、既存の技術でございまして、また、
日本でもサンシャイン計画でこの脱硫の問題について改良が加えられ、研究
開発がいま行われているのでございますけれ
ども、この技術もすでに実用化されたものでございます。また、凝縮水中や熱水中にはいわゆる温泉、成分のようなものを含んでおるわけでございますので、たとえば砒素とか硼酸のようなものが入っております。これが排出の基準値を上回るようなときは、普通は、熱水の場合は還元井をすぐそばに掘りまして地下へ戻してやるということをしております。凝縮水もやはり還元井で戻してやるということもあるわけでございますが、この還元する先の還元層の地下水といいますのは、還元される熱温水とは同類のもので、しかも同じ起源のものでございますので、地下水の汚染ということにはならないわけでございます。それから熱水などの熱
エネルギーを多目的に利用します場合は、清水と熱交換いたしまして用いますので、これも熱交換された方の熱水はやはり還元井へ入れますが、使う方の側では問題は起こるものではございません。こういうわけで排出物については
対策が可能でありますので、国連で言うところの
地熱エネルギーは環境に対するインパクトが他と比較して最も小さいというふうにされるゆえんでございます。
そのほかに、
地熱流体を採取したり地下に還元したりするということによりまして、地下でその地下水が動くわけでございます。地下水が動きますと非常に微小な地震、微動地震が起きます。逆にそういうものをキャッチしまして、いろいろ
地熱のリザーバーといいますか、たまりぐあい、そういったものを探査する方法もございますけれ
ども、もちろん人体に感ずるような地震はまだわれわれ経験したことがございません。
世界じゅうでも還元井によって地震が起きたということは
地熱地帯ではございません。ただ、アメリカのある兵器関係の工場で、深い井戸に無理やり七十気圧以上の圧力をかけて水を圧入したときに地震が起きたという例はございますけれ
ども、
地熱地帯ではまだ確認されておりません。ただ、
地熱地帯はしばしば地震多発地帯のそういうベルト状の上にあることがございます。これは弱線と言われておりまして、地殻の弱いところでございますが、そういったところに非常にいい
地熱地帯があるわけでございます。そこでは、もともとある多発する地震と混同されたり、あるいは誤解されやすいというようなうらみがあるわけでございますが、これも元来のバックグラウンドのデータを十分にそろえておけば十分な説明ができるわけでございます。
次に、技術的な問題を若干申し上げますと、在来行われてきた浅部熱水系、比較的浅いところから蒸気、熱水をとって発電する方法の技術はすでに実用化されておるわけでございますが、やはり
開発に際しましては
石油掘削と同じようにリスクがございます。この
地熱の掘削の成功率といいますのは四五%から八五%ぐらいございまして、
石油や
天然ガスの掘削と比較しますと成功率は格段に高いものでございますが、実際、産出物の
価格、つまり
地熱の場合は蒸気、熱水、
石油や
天然ガス、そういった
価格から言いますと、蒸気井といいますのは蒸気井の代価をどう決めるかで決まってくるわけでございますが、アメリカでは化石燃料の発電所の
燃料費相当分ということで
取引がされておりますが、それを一応
参考にいたしますと、
日本の円の
価格で、五十四年、これは
原油価格CIF二十三
ドルの場合でございますが、大体その蒸気で発電をしました場合、一キロワットアワー当たり七円八十銭ということでございます。蒸気一トンで約百キロワットの電気が起きますので七百八十円ということになるわけです。
地熱の井戸一本から大体平均的に四十トンぐらいの蒸気の噴出があるようでございますので、そうしますと一本から四千キロワットの出力がとれるわけです。そういたしますと、大体その蒸気の井戸一本から一時間当たり三万円強ぐらいの値打ちの蒸気が出てくるということになります。ところが、その五十四年の時点でCIF二十三
ドルの
原油価格は一キロリッター約三
万三千円ほどでございますので、一キロリッターの
原油価格にも及ばないということになるわけでございます。こういうように、本来的に見ますと、その負担の面からリスクではむしろ
地熱の方が大きいというような
考え方もございます。したがって、その
開発の促進ということにつながりますリスク軽減の方法といいますか、方策といいますか、これは探査技術をさらに一層向上させることでございます。これは
石油も全く同じでございますけれ
ども、現在サンシャイン計画や
資源エネルギー庁で実施されておりますいろいろな試験研究
開発といいますものは一層の充実を図るべきものであるというふうに考えます。
それから
地熱の探査技術は、
石油と同様に地質とか物理、化学、それから熱力学等の分野の総合された
一つのシステムエンジニアリングでございますが、
開発者はこれに習熟し技術を確立しなければなりません。これらの技術の
一つ一つは、それぞれ学理的な分野で実証され、また確立はされておりましても、実際にこれを利用し、それから解析の技術を確立していくというようなことは、デベロッパー自体が全力を挙げて取り組まなければならない問題でございますけれ
ども、こういった技術者の養成には、国が
研究所を開放したり、テストフィールドを設けまして実験を公開したり、あるいは研修制度をつくるといったような積極的な助成活動を実施する必要があると考えます。
そのほかの問題としまして、ちょっと特記すべき問題が
一つございます。実はボーリングの問題でございます。
日本では
石油資源が非常に貧弱でございますので、ボーリングの業者といいますか、ボーリングをやっていただく会社は、帝石さんとか
石油資源開発さん、そのほか二、三ございますけれ
ども、そのほかに有力な会社というのは見当たらないわけでございます。この点、アメリカのいわゆる巨大化したオイルサービス企業群とは比較にならないほど
日本の場合は弱体であるわけでございます。したがって、
地熱資源の
開発目標とされた六十年度百万キロワット、六十五年度三百五十万キロワット、七十年度七百万キロワットを達成いたしますには、このアメリカの掘削業者、ボーリング業者を含めまして、その
関連企業群の協力を得なければならないと考えます。しかし、アメリカ自体も
石油開発でいまのところ非常に忙しいようでございますので、こちらの要求どおりの十分な協力が得られるかどうかということは
一つ問題がございます。
日本としましても、ボーリング機械の新製とかボーリング技術者の養成ということをやはり一方では図っていくことが必要でございますし、掘削技術の振興、機器類の
開発、それから井戸を掘りますとパイプを中へ入れてセメントで固定するのでございますが、これも非常にむずかしい技術でございますので、セメンティングと言っておりますが、セメンティングの技術とか、それから井戸は真っすぐ掘らないで、
地熱の井戸も傾斜掘りをやっているわけですが、傾斜掘削の技術とか、それから泥水をボーリングのとき使うわけですけれ
ども、そのマッドエンジニアリングの部門等、こういう周辺技術の育成あるいは
開発に努める必要があると考えます。
最後に、将来の
見通しについてちょっと触れさせていただきます。
先ほ
ども申し上げましたとおり、五十五年度からは先生方のいろいろな御尽力によりまして、
石油代替エネルギーの
開発及び導入に関する新しい法律が制定されるとか、在来の数倍に近い予算も実施されるとか、それから十月には新機構が設立されるといったような体制が一応整備されることになりますけれ
ども、
地熱の
開発にとってやはり宿命的な問題として公園問題が依然として現在残っているわけでございます。ぜひともこの調整を速やかに図っていただきます。これがありますと致命的な問題になりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思うわけでございます。
それから
地熱の
開発期間はどのくらいかかるかといいますと、普通出力五万キロから十万キロぐらいのもので、モデルケースとしていろいろな表がございますが、大体六年ぐらいかかるというふうに考えております。したがいまして、
開発目標の
昭和六十年百万キロワットといいますのは——現在の総発電出力が約十七万キロワット弱でございます。
日本の国内で
地熱発電所の総出力が現在十七万キロワット弱でございます。五年間に八十万キロワット以上これは
開発していかなければならないということでございます。非常にこれは苦しい、むずかしいことであると思います。その後の
開発目標の六十五年三百五十万キロワット、
昭和七十年の七百万キロワットという
開発目標がございますけれ
ども、公園問題が解決いたしまして、技術とか機器関係のソフト、ハード面が充実しさえすれば、現在でも
開発をやろうとしている企業が約十社ほどございますが、さらにアメリカ等の技術援助を受けたりなんかいたしまして、これを十分に活用いたしますとこの
数字は可能なものであると私は信じます。このときは大深度熱水系のいまいろいろ研究
開発をやっている技術が十分に駆使されるでありましょうし、また傾斜掘り技術や、それから
一つの基地で何本も複数の井戸を掘っていく、これはパイプラインの工事費の節約になるわけでございますが、それから上の方は
一つでも下へいって井戸が枝分かれしていく掘り方、マルチレグ方式という掘り方がございますが、そういったボーリングの手法、それから探査技術の向上、そういったものとともにこれらの技術は有効に利用されまして、発電出力は——いまアメリカで単機容量が十五、六万キロワットでございます。
日本ではいま五万キロワットが最大でございますけれ
ども、当然その時点では
日本で建設される
地熱発電所の単機容量は少なくとも十五万キロワット以上はあるでありましょうし、大深度熱水系の技術が完成いたしますと、
一つの
地熱発電所で二十五万キロワット以上のものが普通につくられるということになるわけでございます。しかし、こういった目標を実現しますには、軌道に乗るまでは官民一体となった相当な
努力が先ほど申し上げたように必要でございます。
参考までに、現在
世界じゅうで運転されている
地熱発電所は二百十万キロワット、そのうち
日本では十六万八千キロワット運転されております。建設中または具体的な計画を立てておるものが
世界じゅうでそのほかに二百五十万キロワットあるわけでございます。
日本では現在五万キロワットしかございません。
地熱発電所の容量をちょっと申し上げたのですけれ
ども、小さ過ぎるのではないかという御指摘がときどきございますけれ
ども、先ほど申し上げましたとおり、これからは十万キロから十五万キロワットのものが浅部熱水系の
開発でもでき上がることになりますし、大深度の熱水系では二十五万キロワット以上ということでございます。非常に利用率が高うございまして、同じ容量の水力の倍の電気が起きるわけでございまして、そういうことを考えますと、一概に小型ということは言い切れないと思います。
それから
経済性の問題でございますけれ
ども、これは水力と同じように発電原価の大部分が建設費、つまり
資本費でございます。しかも、
地熱発電所の場合にはパイプラインと井戸の償却は、パイプラインは八年、井戸が約五年でございます。そういう短期償却をやりますので、最初の八年間はデベロッパーとしては非常につらい目に遭うわけでございますけれ
ども、私
ども実際やっていまして、十年間で投下資本の回収ができればいいなというような目標を立てて実はやっておるわけでございます。最近のように
石油価格が上がりますと、ほかの新
エネルギーも同様でございますが、非常にやりやすくなる。背景は非常によくなっているわけでございます。ちなみに、大体どのぐらいの原価になるかということを申し上げますと、これは投下資金の内容とか、それからそのデベロッパー社内での償却の
計算の仕方とか、いろいろございましてあれでございますけれ
ども、大体昨年までの火力発電所の原価とほとんど同じものが得られているというふうにお考えになればいいと思います。
時間もたちましたようでございますので、以上、
地熱の問題点についていろいろお話を申し上げたのでございますが、
地熱エネルギーは何度も申し上げましたとおり、すでに技術的には浅部熱水系等では確立されていることでもありますし、
経済性もございます。さらにその
経済性をよくするということと、速やかに
開発できるというような方向でさらにその研究
開発を進める必要があると思いますし、
昭和五十五年から
開発促進の体制が整いつつありますけれ
ども、さらに一層の体制整備を図っていく必要がございます。それから環境問題では十分な
対策ができますけれ
ども、公園の問題がございます。この調整につきましては、先生方並びに政府関係各位の
方々にぜひとも早くこれの調整という問題を解決していただきたいと思います。
以上でございます。