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参考人(
力石定一君) 私の
エネルギー問題についての骨格的なお話だけさせていただきますと、まず、中近東の
石油は三十年ぐらいで枯渇すると思います。あと海底油田をどんどん目がけていくわけですが、非常にコストが高くなって価格は上昇せざるを得ないと思いますが、最後は恐らく、絶対的な枯渇の前に取り出すための
エネルギーの方がたくさんかかるという段階が来ると思います。余りむずかし過ぎて、掘ってきて持ってくるまでの投入
エネルギーの方がたくさんかかるという段階で、本当は枯渇ではないかと思うのですが、それは技術的な進歩との関係で、どこということは言えませんけれども、そういう段階に近づいていることは事実だと思います。
そこで、原子炉に力を入れているわけですが、
原子力発電は稼働率が五割ぐらいでありまして、非常にコストが高くなります。そうすると、住民が非常に抵抗しましてなかなかやれない。スリーマイルアイランド事件の前までのアメリカの原子炉メーカーに対する電力会社のキャンセルが大体二十八起こっております。原子炉メーカーは青くなっているわけですが、
石炭火力に切りかえた方がかえってコストが下がるからいい、七五%の稼働率が
石炭火力だったら維持できる、こういうふうな
考え方のようであります。住民の抵抗も少ない。それの方が経営的には安定しているというふうな
考えのようでありまして、アメリカは電力会社が三千ぐらいありまして、お互いに競争しているものですから、非効率的な経営をやりますというとアウトです。
日本のように九社独占だと、
原子力発電のような稼働率の悪いものを幾ら抱えてもあと価格でめんどう見ますけれども、向こうは競争関係がありますからなかなかそうはいかない。そこで切りかえるのがふえているのじゃないかと思います。
そうすると、あと合成燃料で対抗するということですが、サミュエルソンという
経済学者が数年前に書いておりましたが、オイルシェールについて、あれは夢物語じゃないかと言っているのです。カーターはオイルシェールやタールサンドや、あるいは
石炭液化を主要な対抗力と見ているようですが、そういう議論もありますし。というのは、かすがいっぱい出るものですから、コロラド州なんかは風光明媚なところで、かすがいっぱい出たらとてもやれない。これを片づけろということになると、コストは非常に高くなる。だから、当分これはだめじゃないかということで、結局、OPECは足元を見てどんどん値上げできるわけであります。OPECの方としてはとにかく早く売らぬ方がいいわけで、なくなった後は砂漠ですから食っていけなくなる。そこで、細く長く売ろうというのは、これは当然だと思います。ドルにかえると目減りしますし、地下に置いておく方が有利なわけですから、こうやって供給をしぼり出したわけであります。
あと砂漠しかないと食っていけないわけですが、本当は私は水素
エネルギーの輸出国にする。つまり太陽
エネルギーをレンズで集めまして、液体水素をつくって、その次の段階は液体水素の輸出国。つまり液化
天然ガスのような形で、あれは電力にもなるし、液体燃料にも使えますから、そういう形に向かってうまくスイッチしていくというのが一番自然じゃないか。ローマクラブの第二報告も、
原子力発電をサウジなんかに教えたりすると何をやるかわからぬ、危なくてしょうがないから絶対あれを教えてはいかぬ、民度の低いところへ教えてはいかぬというようなことを言っていますが、そういう状況ではないかと思います。
それで、結局、
石油供給は、第一次ショックまでは世界的に六・四%のテンポで供給を伸ばしてくれたのが半分以下に抑えてきているというふうな状況ではないかと思います。われわれはこれに調子を合わさざるを得ないわけであります。そうしますと、南の国がこれから工業化をすると、
石油供給の純増分は南の工業化のためにほとんどささげないと大変失礼なことになってくる。先進国は
エネルギー、
石油についてはゼロ成長を早く公約しなければいかぬ段階に来るのじゃないか、こういうふうに思っております。いま購入制限が話し合われておりますけれども、こういう状況は、先進国における
エネルギーゼロ成長の課題というのがかなり近くに迫ってきているというふうに思います。
そこで、
日本の
経済成長は、第一次ショックまでが
石油消費の伸び率が一二%、
経済成長率が一〇%、
弾性値が一・二であったわけです。このような
弾性値で進んでいきますと、世界の供給に足並みをそろえると大体三、四%に足並みをそろえなければならない。四%に足並みをそろえると、
経済成長率は、
弾性値が同じだとしますと三%強ぐらいで非常に低い成長になりまして、これはまた大変問題が起こるわけです。総需要抑制で成長率を抑えていきますと、輸出ドライブをどんどんやりますと、集中豪雨型の輸出だといって、ほかの国が低成長ですからぶうぶう怒ってきます。この前のときは、アメリカが国内の
天然ガスだとかあるいは
石炭に依存して、早くエンジンカントリーとして成長率を高めて世界
経済を支えたわけですが、アメリカは、もうもたぬからおれはおりますと言い出しました。低成長に入っておりまして、
石油問題で向こうは行き詰まってきている。そうすると、前のようにエンジンカントリーがいますと、集中豪雨型の輸出で外貨をかせいで高い
石油代金を払い切るわけです。そして円高をつくって物価を安定させて進むことができたわけです。その強行突破が、アメリカがこうやっておりてきますと非常にむずかしくなる。それで
値段が非常に高い。いまの
輸入の半分が
石油で、そして穀物、飼料とか、そういうものを入れますというと、六割、七割ぐらいはそういうものばかり買っている。そして、これを製品輸出でカバーするというのはバランスが非常にとりにくくなる。だから、円安がいま続いておりますけれども、前と同じように簡単に円高に返れると言っているけれども、どうも私はむずかしいのじゃないか。前のときはアメリカががんばってくれたから、そのしり馬に乗ってうまくかせいだわけですが、こうはいかなくなってきたのじゃないかと思います。
したがいまして、この点を
考えますと、どうもうまくいかない。低成長になりますと集中豪雨型の輸出ができない。そして、バランスがとれないというとスタグフレーションが続いてくることになるわけです。そこで行き詰まって、これは余りスタグフレーションを長く続けますというと
政治的に非常に問題になってきますから、何とかしなければならぬのですけれども、なかなかいい
方法は見つからない。
弾性値を下げるということがいまの
需給見通しでは出ておりますが、
昭和六十年に〇・八に下げるだとか、まあその程度の努力なんですが、これは相当低く下げないと高い成長はやれないのじゃないかというふうに思います。仮に〇・五に下げることができますと、四%の
エネルギー消費の伸び率で八%GNPを伸ばすこともできるわけです。したがって、
弾性値を下げて高い成長をやる。つまり
エネルギーを成長の割りに使わないというやり方に大幅に切りかえていかないと、
石油も買えないし、それからバランスもとれないのではないか。国内の雇用問題を
考えますと、そういうことになるわけです。だから、五、六%成長ですき間を縫っていこうという
考えがいまの戦略ですけれども、どうもそううまくいかないのじゃないか。五、六%成長というのは、結局、
石油依存度を余り下げないで、
弾性値を余り下げないで、そして低成長に追い込まれる。そして
石油をたくさん使っているわけですから、
エネルギー高価格を発火点とするインフレーションというのをずっと続けていくわけで、スタグフレーションを続けることになるわけです。
経済学者の中でも、現代
経済というのはスタグフレーションは御の字じゃないか、サミュエルソンなんかはそういう
考えなんです。デフレスパイラルとインプレスパイラルを避けていく以外にないのだから、この六〇年代というのは、クリーピングインフレーションというのは完全雇用と高成長が払わなければいかぬ代価である、こう言ってきたのです、サミュエルソンは。最近はデフレスパイラルをやって物価を安定させる、この伝家の宝刀が使えないものですから、結局、スタグフレーションというのは民主主義が払わなければいかぬ代価である。だから、インシュリンを、糖尿病はずっとインシュリンで支える以外にないのだ、こういう
考え方のようですけれども、余りそれを長くやるわけにいかない。いずれかの方向に行くと思うのです。
〔
委員長退席、理事竹内潔君着席〕
一つは、やはりデフレスパイラルで物価を暴落させて、失業を賭してやれというサッチャー路線、これが先進国全体で出てきますというと、恐らく世界不況になる。そして、世界不況の中で、結局こんなことになるのは
石油国がこんなに暴れるからで、ああいうことになるから、だからあそこを取り押さえろ、失業の前には軍事力も行使せよという形で一九三〇年代の道へ行く。すなわち、不況と
戦争の道に入っていく。こういうコースになるのではないか。そういうコースを避けたいと思えば、スタグフレーションをじわじわとある程度まで続けながら、ある一定の時点では
エネルギーに余り依存しない、ダーティー
エネルギーには依存しない
経済成長のコースへ入っていかざるを得ないのではないかと思うのです。その道をどう探求するかということです。
私は、第一次ショックの後ごろから
弾性値を下げるために五つの柱を提唱してきました。
第一は、自動車、できるだけマイカー、 マイトラックを抑えて公共輸送体系に切りかえること。そのために、自動車の飛ばっちり費用、社会的費用は、非常に高いのに安い安いと使っているのですから、これを税金という形で負担させる。そうすると、公共輸送の方へシフトしてくるのではないか、これによって
エネルギー消費をかなり下げるということです。
それから二番目は、
石油合成物質の危ないやつはやめて、もとの光合成物質、つまり太陽
エネルギーをもとにしたものに返す。たとえば、合成洗剤を天然のヤシ油をもとにした粉石けんにかえるということは、これは光合成物質にかえることであって、私は非常に結構なことではないかと思います。
石油合成物質の危ないやつをできるだけそちらに切りかえる。
三番目は、あらゆる消費財の耐用年数を数倍に延ばす。そうすると、生産の
エネルギーはがくっと落ちます。これはどうやるかといいますと、政策手段としては、もちの悪いものは、同じものでもわざと壊れやすくするとか、計画的陳腐化をいまのマーケティングではやりやすい傾向があるのですが、そういうものについては、競合製品についてもちのいいものはゼロ税率にする、そしてもちの悪いやつは一〇〇%ぐらいの課税をする。つまりヨーロッパのEC型付加価値税というのは、あれは弾力条項がありまして、
〔理事竹内潔君退席、
委員長着席〕
物によって、
エネルギーをたくさん食ったり、環境にストレスを起こす、もちが悪い、そういうようなものは非常に高い税金を取って、競合製品で高いように見えるけれども、社会的には非常にいいもの、これはゼロ税率にする。たとえば、合成洗剤は一〇〇%税金を取って粉石けんはゼロ税率にする。こういうふうな形をやれば消費パターンがずっと変わってくるのではないか。これはECのマンスホルトというもとの
委員長がローマクラブの報告を受けた後に提唱した
考えでありますが、これを私は一般消費税に対して選択的消費税という名前をつけているのですが、こういう方策をとる。
それからその次は高層ビルの建設ですが、これは地価が高いので上に上に伸ばすのですが、鉄骨とそれから空調と輸送が、
エネルギーが安いものですから安くできる。そこで高層ビルができるわけです。しかしながら、
エネルギー高価格時代においては非常に不
経済なので、地価の安いところに中層ビルをつくるようにし、そして東京には情報将校だけ集めて、情報処理部隊は集められないように持っていく。たとえばロンドンのように、パリもそうですが、都心部は高層ビルの建設を原則禁止。床面積当たりでパリでは課徴金を取って、取った課徴金で地方に事務所をつくったやつに補助金を出す、こういう追い出し税を使っていますが、こういうふうな形をやりますと、情報将校だけでしたら
一つのビルに数社入れますから、
エネルギー消費というのはぐっと下がってくるわけです。
エネルギー低価格時代におけるマンハッタン現象であって、これは抑えるべきじゃないか。これは過密対策にもなるのです。
それから最後に、われわれの消費の中で、若い人の消費よりも年寄りの消費を伸ばした方がいい。若い人は賃上げと減税で所得がふえるとすぐジェット機に乗って海外旅行へ行ったり、自動車を買ったり、使い捨てがあったりして非常に
エネルギーの誘発が高いのです。これに対して年寄りの消費というのは、賃上げと減税は関係なくて、これは年金拡大しかない。この人が買うものは老眼鏡を買いかえたり、入れ歯を入れかえたり、電子補聴器を買ったり、非常におとなしいですから、そちらを優先的に伸ばした方がいい。だから、私は大幅賃上げ、大幅減税に反対でありまして、大幅年金拡大一本にしぼれ、こういう
考えです。
こういう政策手段をいろいろな形で導入してきますというと、
弾性値は〇・五に簡単に下がると思うのです。〇・五というのは、一九二〇年代の
日本が
弾性値〇・五です。できない
数字じゃないのです。イギリスの
弾性値が〇・六であります。これはどうしてかというと、ロールスロイスのように付加価値の高いものに力を入れてコンビナートはやらなかったのです。設備が足りなくなると
日本から
輸入する。
日本が世界の公害を一切引き受けてくれるのだから
日本から買えばいい、こういうやり方をとれば
弾性値は低くなるのです。だから、〇・五、〇・六というのはそうむずかしい
数字じゃないのです。これを私は実行に移すべきじゃないか。そして、なるべくGNPとしては高い成長をやる。この高い成長をやっている間に銀行の借金を返す。そうすると、財務内容がぐっと改善されてきますれば低成長でも黒字が出るようになるわけです。いまは借金が多いから高い成長がなければ採算がとれないのですけれども、借金を返せる時代を数年間実現する。そして、それが済んだ後は
エネルギーゼロ成長で数%成長に軟着陸をする、こういう形に持っていくべきではないか。
カーターなんかも、最初の
エネルギー補佐官のデービッド・フリーマンという人がいますが、いまTVAの総裁をしていますが、
エネルギー補佐官のデービッド・フリーマンのフォード財団の報告書、これがかなり影響しているわけですけれども、こんなことを
考えています。アメリカは、四%の
エネルギー消費の伸び率で
経済成長は三・六、こういうヒストリカル・グロース・コース、これを保っている。これは
弾性値は一二でありまして、これはもうやれない。
石油に依存すると、とにかく高いですから、貿易は大赤字になってしまって、ドルが軟調でインフレでまいってしまう。国内の原子炉に依存しようとすると住民の抵抗が強くてやれない。そこで、結局、
弾性値を〇・五に下げて、
エネルギー成長は一・七%で
経済成長が三・五%、こういう方向へ行こう。
これはどうやるかというと、
一つは大型を小型にかえればいいわけです。がぶ飲みの自動車をやめる。それから二番目は、建築物の断熱効果をきっちり義務づける。それから三番目は、
エネルギーが安いから——アメリカは、国内の
石油とか
天然ガスというのは戦時
経済のときに、
原子力潜水艦に包囲されたときに使わなければいけませんから、備蓄を
考えて、戦略的に
値段を安く抑えているわけです。そうしますと、統制価格だから採算が合わないから掘らないわけで、これの方がいいという
考えです。そうすると、
石油消費はどんどん
輸入にかかってくるから、貿易はパンクしてしまうわけです。そこで、この価格を上げるとこれは使ってしまう、掘ってしまいますから。だから、出荷価格は抑えておいて、生産者価格は抑えておいて消費者価格を高くする。それで
石油を節約させる。そうしないと、相対的に世界に比べて安いからなかなか節約しないわけです。そこで、その価格差平衡税というのを取って、消費者は高く買わざるを得ない。生産者は安く抑えられている。こうやれば
エネルギー節約ができるだろう、こういう
考え方を
考えたわけです。これがうまくいけば、
弾性値が下がって比較的高い成長をやりながら、雇用を安定させながら
エネルギー問題から脱出できる、こういう
考えです。
しかし、これは十年ぐらいでだめになる。十年後にはどうするかというと、
エネルギーゼロ成長で、数%の
エネルギー成長は〇・七%で、
経済成長は三・五%、そういう成長モデルへ移行する。これは、ここまで来ると、大型から小型でもだめだから公共輸送に切りかえる。それからイギリスと同じようにコンビナートはやめて製品を海外から買う。それからノーハウとサービスで食っていく、こういうふうなモデルへ移行せざるを得ない。しかし、ここはとてもなかなかやれないわけです。第一から第二のコースへ変えるのさえむずかしい。結局、
エネルギー節約法案が骨
抜きになってしまって、総需要抑制という形で成長率を抑えることによって
石油消費を抑える以外にない、こういうところへいま巻き込まれてきているわけです。だから、本当は
省エネルギーをやればドルはこんなに不安定にならないでいけるのですけれども、なかなかこの法案が通らないわけです。というのは、生産者が
値段をもっと高くしてくれと言いますし、消費者の方はガソリンなんかは、本当に自動車が足になってしまっているものですから、
値段が高くてはとても生活が圧迫されてだめだからやれない。これに
政治家が動かされてなかなかこの法案が通らない。それから価格差平衡税も通らない。それから大型もなかなか捨てようとしない。小型を優遇して大型から高い税金を取るといったらフォルクスワーゲンやトヨタを買うばかりじゃないかとメーカーが反対するし、どうしようもないわけです。だから、しょうがないから総需要抑制でリセッションにして
石油消費を抑えている。これがいまのアメリカの姿で、おりてしまったのです。そこに基本的な問題がありまして、模索をしているのですけれども、なかなか違ったコースへ行けないということだろうと思うのです。
日本ではこういうふうなコースについてもう少し議論する必要があるのじゃないか。
エネルギー成長を世界の
石油供給その他と合わせて、
経済成長五、六%はどうしてもやらなければいかぬ、こういう結論だけやっているのですけれども、
弾性値は〇・八ぐらいに下げようというふうな、こういうふうなコースが決まってしまうのではなくて、いろいろなメニューがあって、そのメニューの中を、すぐはやれないけれども、いろいろ議論をしてみなければいかぬのじゃないか、こう思うのです。私のようなモデルをやれば、これは
弾性値は下がって比較的高い成長ができますし、そして、ほかから
エネルギー、穀物、飼料は余り買わないような方向へ持っていけば、これは輸出でがつがつかせがぬでも貿易はバランスいたしますから、そして円安もかなり防げるということにいけるのじゃないか。国内的に見ましても、
エネルギー高価格を発火点とするインフレーションというのは、
エネルギーを余り使わないわけですからだんだん鎮静をしてくるわけです。こういうふうなコースを議論する必要があるのじゃないか。その議論がどうも怠られているというふうに思います。こういう成長を、
経済成長の割りに
エネルギーを使わないという、こういうやり方を有機的成長と私、名をつけています。これはローマクラブ第二報告の
考えですけれども、あれはゼロ成長論ではなくて、数%成長しようというわけですが、そのかわり
エネルギーはゼロ成長に移行というわけです。人間の成長と同じでありまして、人間は十七歳まで身長と体重がふえたら、そこで精神的成長に移りまして大入道になりません。そのようなところへ先進国は来たのじゃないでしょうか。そういうふうな決断をするという
意味で生活様式を変えること、そして、いまのように変えさえすれば
エネルギー依存度はぐっと下がりますから、相当やっていけるというふうに思います。そういう政策手段をどのように
考えたらいいのか。たとえば予算
一つ見る場合でも、こういう点の配慮はほとんどやられておりません。たとえば大蔵省は、去年、財政需要の中で
エネルギーの誘発効果の高いものと低いものと財政需要を分けて、そして優先順位を
考えようというようなこと、
調査活動は始めていますけれども、これは
石油ショック直後にすぐ始めるべきじゃなかったかと思うのです。そういう
考え方でやるべきで、財政の、ケインズ理論のように有効需要の乗数効果ですか、そういうふうなことばかりを中心に
考えないで、もう少しそういう点を
考えたらどうなのか、こういうふうに思うのです。
そこで、いまの五つの柱について
幾つかの政策的なポイントを申し上げてみたいと思います。自動車の税金でありますが、これは運輸省の方から陸上公共輸送体系整備特別会計というのが出ておりまして、自動車の税金を上げたやつを道路に幾らつぎ込んでもこれは切りがないから公共輸送の充実に向けようという話が出ております。早くあの目的税を外すべきではないか。一九七三年、交通法というのがアメリカにできましたが、あのときガソリン税を全部道路につぎ込むという法律を、一部分は公共輸送の充実のために向けてよろしいということに改正しました、ニクソン時代にやりましたけれども。こういうことを運輸省も言い出しました。これは、いまのところ上乗せ部分を公共輸送体系整備特別会計へ向けようという
考えですが、私はそれもやるべきだと思いますが、既存のものについても、あの目的税を外して公共輸送の方へつぎ込むという形をとるべきではないか。これを国としてやる前に地域でかなり
考えられるものがある。たとえば、田舎の国鉄なんか見ますと、隣の町へ行くのに鈍行を使いますと十五分で行けるのです。ところが、一時間に一本しかないわけです、ダイヤが。そんなものですから、みんな車を使う。道路が混雑して隣の町に行くのに四十五分かかる。こういう傾向が非常に多いのです。特急と急行ばかりのダイヤだ。そういう場合は、地方自治体で話し合って標準税率を上回る超過課税が自動車はできるわけですから、それで税金を取ってしまって、この税金で自動車の保有を抑えて、それでもってダイヤを国鉄から買えばいいわけです。そうすると、国鉄がダイヤを一本でも二本でも、キャパシティーはあるのですから、ふやしてくれれば待たないから、道路から鉄道に人間が返ってくるわけです。こうやって混雑も防げる。こういうふうな、やはり公共輸送を使った方がかえって合理的なんで、いまはどうも単細胞的にやり過ぎて、かえって輸送コストを上げているのだという自覚をもっとつくり出すように持っていくことが必要なのじゃないか。そうやってやりますと、かなりこれは効くだろうと思います。
それからトラックの方も、これは英、独、仏のように、国鉄の
貨物というのはなるべくトラックを使わないように、中長距離は鉄道を使うように誘導しています。たとえば税金を中長距離は高く取るようにしている。そうすると、短距離しか使えないという形になるわけです。鉄道というのは、レール費用、安全費用、警察費用を自分で持っているのに、トラックの方は、道路を壊す費用、
事故の費用、公害の費用、警察に厄介になる費用を十分に負担しないから安いと思っているだけなんで、社会的には高いものについているのだから、そういうものはちゃんと税金を取る。
日本の税金に対して二、三倍税金が向こうは高いわけですが、そういうふうにやれば短距離トラックだけ使うようになると思うのです。ロンドンなんかは、都市内に夜も昼も大型トラックは入れない。だから、鉄道を使って小型トラックへ積みかえて持っていくというふうな形でやっていますし、それから通運会社は直行便。兼業を認めない。そして専業です。通運だけやる。こういう形をとっていますし、それから工場をつくるとすぐ引き込み線を入れて、それに対してドイツなんかは補助金を出しています。こういうことを
日本は全然やらない。だから国鉄
貨物が赤字になる。外国は、全部これは黒字であります。全
貨物輸送の三割から四割を運んでいるわけです。
日本は、いま一割しか運んでいないわけです。大赤字になっている。外国は、新幹線がないから旅客は大赤字ですけれども、
日本は、新幹線でぼろもうけしていますから、在来線の赤字をカバーして長い間とんとんを続けました。外国の場合と赤と黒が逆になっているわけです。だから、国鉄の
貨物をしっかりやれば、普通並みに黒字にすれば、例外的に旅客がとんとんに近いのだから、私は、国鉄は成長産業に変わる、こう思います。これを私はやらない手はないと思うのです。こういうふうにして、幹線部門でしっかりがんばってくれれば、過疎線の赤字なんというのは量としては大したことないのですから、抱えていけると思うのです。ですから、幹線部門の黒字転化を、トラックを抑制し、マイカー抑制によってがんばっていく。これが
省エネルギーにもつながると思います。
目新しい問題を
幾つか話してみたいのですが、たえとば、農業の問題でもそうですけれども、食管会計が非常に赤字で困っておりますけれども、稲をコンバインを使って刈り取り、米を
石油乾燥しているわけです。それでもって、あれはもう死んでしまって発芽しないものですから、まずくなってしまって、古々米で売るときは十分の一で投げ売りしているのです。あんなことをして、個々の農家はコストは下がっても、社会的にはえらい高いものについているのです。それよりも私は、はさに干して天日で、太陽
エネルギーを使って乾燥する。これは発芽する生きた米ですから、私そういうようなものを価格を優遇して、
石油乾燥したやつを価格を冷遇する、こういうふうにやるべきで、品質でいま格差をつけていますが、あれは農薬や肥料をたくさん使った危ないやつほどうまいものだから、そういう
矛盾が起こるわけです。だから、つくり方で格差をつける。それで、こういう発芽する生きた米の方は、米屋で売るときは生きた米という表示を認める。
石油乾燥したやつは死んだ米という表示をする。消費者は、おいしいから生きた米をどんどん食べる。そうすると需給調節になるわけです。だから、もう少し生物的なやり方を
考えたらどうかと思うのです。ただ、農薬や肥料をやめれば
石油はざっと減りますし、それから減反効果があるわけです。減反しておいて、つくったものはおいしいから需給調節になる。農家の人は、自分で食べるやつはそういう変なやり方をしないで、ちゃんと自分の食べるやつは別につくっています。本物で勝負しないで、にせもので消費拡大なんてやっているからうまくいかないので、本物のやつをどんどん育成するようにする。消費者も非常に本物志向が強まっていますから、その波をうまく利用して、そういうふうな農産物価格の設定の仕方をして
省エネルギーに努めるというふうなこと。
それから公共投資でもそうですが、砂防堰堤だとかダムだとか、いっぱいつくっておりますけれども、林野庁の方で余り独立採算ばかり言うものですから、杉、ヒノキにどんどんかえてしまう。そうすると、杉、ヒノキというのはぽろぽろで、針葉樹ですから保水力がないわけです、どんどん流れてしまって。それだから、すぐダムがおかしくなって、百年もつものが二十五年で埋まってしまう。それで、公共土木事業をばんばんやらなければいかぬ。あれは独立採算をやめて、広葉樹だとか、そこの自然植生なんかをまぜてやるようにすれば、これは手間はかかります。コストは上がるけれども、それは補助金で見ておけば、保水力は何倍も上がるわけです。杉なんていうのは、根っこは五年で腐ってしまって、それで流れてしまうわけです。それで、そのときまだ幼木でしょう、新しいやつは。だから山が崩れてしまう。これは自然植生だったら、あれはちゃんと根が生きていますから、土壌をがっと押さえていますからそんなに崩れないのです。だから、
経済性を
考えて近視眼的にやってしまったら社会的にえらい高い土木予算ばかり食ってしまうということになるわけです。そういうようなあたりを、もっと予算の配分についても——れは植物に保水させるのですから、太陽
エネルギーを使って保水しているわけです。セメントや鉄や、それから猛烈な
石油を使った土木事業でダムをつくったり、河川改修をやったり、砂防堰堤、そういうようなやり方よりずっといいわけです。過疎地の農家の人は、そういう手間がかかる森林の方で雇えばいいのです。いまは一生懸命砂防堰堤の方で雇っているわけですが、これはおかしいと思うのです。
石油型の雇用をふやしているわけです。だから、生物的に頭を使えば私はかなりいけるのじゃないか、こういうふうに思っています。
時間も超過いたしましたので、この辺ではしょらせていただきますけれども、太陽
エネルギーに依存するということは、
日本列島は非常に太陽
エネルギーが豊富なんで、これは植物を媒介するというバイオマスということをしきりに言われていますが、あの
石油がなる木なんというバイオマスと言っていますが、あんなことを
考える前に、もっと素直な形でやれるのではないか、こういうふうに思っています。