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井上(敦)
分科員 私は、昨年就任早々の大臣に同僚の
野間議員と一緒に米の生産調整と畜産
事業の安定対策について陳情いたしました。また、暮れには和歌山県知事を初め県議会の代表、さらに和歌山県農協中央会や紀南農協組合の代表などと一緒に大臣に、たしか十二月の二十五日であったかと思いますが、暴落を続けるミカンの窮状を訴えて四項目にわたる陳情を申し上げた次第であります。
私も昨年十二月の一日、二日、有田郡市の十二の共同選果場また若干の個選を見てまいりました。さらに田辺市の紀南農協や隣の上富田町の農協にも行ってまいりましたし、御坊市にある民間の加工工場である南海加工も見てまいりました。従来ですといい値段であった二Lあるいは三Lなど大玉は出荷しても段ボール一ケース八百円から八百五十円、経費が六百五十円から七百円、経費を差し引くと農家の手取りはキロ当たり十円前後にしかならないとか、したがってジュース向けが大量にふえました。共選によって違いがありますが、和歌山県全体でジュースに回されるのは平均一七%前後ですけれ
ども、私の回った範囲では大体三割前後が回っているという
状況でしたし、御坊の南海加工それから海南、桃山町の選果場の方はいわばパンク寸前という
状態でありました。
こういう話も聞きました。吉備町と言えば有田郡の中心の産地の
一つですが、そこの丸御共選に行ったときに、大体二L、三Lなどはキロ十五円。これに共選経費一キロ一円五十銭を引くので、農協手取りが一キロ十三円五十銭。ミカンの収穫のための働きに来ていただいている日当は一日八千円かかる。熟練者であっても一日約百五十貫であります。大体これでいきますと貫当たり約五十円の勘定になる。そうしますと、労賃を払ってしまうと全く農家の手元に残らない。結局、肥料代や薬代や諸経費、これらがいわば借金として残る。そういう点で、ジュース原料柑の最低価格の保証、その大幅引き上げを願う農家の気持ちはきわめて切実であります。
現に有田市の市の共選では、これはこの地方で一番大きい共選ですけれ
ども、生ミカンの価格低落を防ぐために、貫当たり八十円の価格保証を行って、ジュース原料柑に回す量を思い切ってふやしている。ここの役員の方は、これには相当な資金が必要であり、タコの足を食い合うようなものであるが、市場価格の暴落を防ぐためにはやむを得ない自衛措置であるというように語っておられました。
愛媛県の青果連でも同じ趣旨から、昨年年末に二回か和歌山県でも行われました緊急の出荷調整、愛媛の場合は十一月一日から十日までの分についてキロ十円、ことし一月四日以降のジュース向け出荷についてはキロ当たり五円の奨励金を出しているというように聞いております。
なお、緊急実施されたこれらの出荷調整措置の場合でも、カットされた大部分はジュース加工に回されております。
昭和五十年、和歌山県のミカン生産額は二百四億円、五十一年は二百八十二億円、五十二年が二百四十五億円、五十三年が二百二十二億円というように、その生産額が減っております。これが五十四年はどんなになるだろうか。
一方、大阪また東京市場に向けてのキロ当たり卸売価格を見てみますと、あの大暴落のあった
昭和四十七年が、東京市場で六十一円、五十年が九十二円、五十一年が百三十八円、五十二年、これが四十七年に次ぐ暴落の年と言われた年ですけれ
ども百十円、五十三年が百四十三円、五十四年は七十円、こういうように去年の例がいかにひどいものであったかということはいろいろな指標から見ても明らかであります。
これについて農協中央会の要望は、一点は国の生産調整目標の見直しであり、二点目は価格の安定対策を強化してほしい。特に原料柑のジュース用の買い上げの枠の
拡大であり、第三は、農家または団体に対する融資の償還猶予であります。四点目は、加工工場への援助でありました。
農林水産大臣は前向きに検討するというように言われておるようですがと、こう言っておりました。
また、農産物の輸入問題では、現状では和歌山県として影響は大きくない。しかし今後自由化され、大量に輸入されるならば響くだろう。特に四、五月期のものがこわい。いまこわいのはグレープフルーツジュースの輸入である。これは味と品質が類似して競合する。また、改植を進めてきたポンカン、福原オレンジ、バレンシアなどは競合する。こういうように言っておられました。
基本的には、私は、加工用原料柑の基金制度について一度見直してみる必要があるんじゃないかというように思うわけです。全国的にジュース加工を思い切ってふやす。生産工場の
能力の問題等もあるようですが、大体百万トンクラスまで伸ばしていく。市場に回る生の分については二百万前後に調整する。二つは、原料柑の暴落したときだけどっさり回すというのではなくて、良質の原料柑の安定的供給と農家収入を
確保するため保証価格をキロ当たり四十五円、このレベルまで引き上げる。三点目に、濃縮ジュースの調整
管理によってジュースの安定と市場の
拡大を図っていく。四点目には、市場
拡大の
一つとして、公費負担による学校給食の全面的な実施等々が
考えられると思います。
改植もやった、摘果も進めたし、出荷調整もやる、なお暴落する。こういう繰り返しを避けて、需給調整の最終段階の対策として、ジュース
拡大加工方式によってミカンの価格安定を図るべきではないかというように
考えるのであります。これは私の
一つの提案、検討をいただきたい要望事項であります。
さて、具体的な点を言いますと、今年度の
政府の施策の中で要望が出ておりました、価格暴落に伴う農家経営救済のための団体営及び農家に対する融資償還の猶予措置を講じてもらいたい。第二は、生ミカンの価格安定の一貫として、ジュース用ミカンの保証基準の引き上げ及び買い上げの枠
拡大について。これとの関連ですが、たとえば和歌山県の場合、二年サイクルの買い上げ枠はたしか三万八千トンであったかと思いますけれ
ども、暴落時の臨時措置として別枠を設けて緊急出動するというような策を検討いただけないのかどうか。具体的なこの三点について、大臣の見解をお伺いしたいというように思います。