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上田(卓)
分科員 長期間ということは二年ではなかろうというふうに理解をいたします。
さて、たとえば部落産業の中に食肉産業があるわけでございます。この食肉需要が伸びると大手の食肉資本が急激に進出して、零細な部落の企業者が非常に圧迫されるという現状があるわけでございます。また、屠畜場は容赦なく整理されたり切り捨てられるという状況にありますし、また特にくつとか履物、グローブ、ミット、かばん、袋物、革、そういう皮革製品の製造業も大手資本の急激な独占化と輸入攻勢によって壊滅的状況になっておるわけでございます。兵庫とか大阪、和歌山、奈良、東京、埼玉に集中する千四百のなめし業者も、革の輸入拡大の圧力を受けて経営は非常に苦しい状況にあるわけでございます。
私がこれから問題にします爬虫類の鞣製業界は全国でわずか七十の業者でありまして、従業者は家族合わせても二千人ほどである、こういう状況でございます。しかも輸入攻勢と原皮の
確保のむずかしさの中で必死の企業努力を続けておるというのが現状でございます。特に外務省国連局の小西
課長は昨年現地視察の中で、日本の皮革業界が偏見と差別の対象となっていることはまことに不幸である、欧米との歴史の差あるいは文化の差に驚く、現状改善は
政府の責任、こういうふうにおっしゃっておるわけでございます。きょうは傍聴の方々の中には爬虫類
関係の三団体の役員の方々がお見えでございまして、全日本爬虫類皮革業連合会、通称全爬連と言われておるのですが、その方々もたくさんお見えでございます。昨年の二月のNHKのテレビニュース以来、業界の皆さん方は通産なり外務、環境庁の皆さん方と実に三十数回もひざ詰め談判をいたしまして、昨年の十二月二日に一定の合意文書がつくり上げられたわけでございます。業界の方々は、この合意事項を厳重に守り、そして行政に
協力しよう、こういう態度になっておるわけでございます。同時に、国においてもこの業界の振興に全力を尽くしていただきたい、こういうことが業界の方々の切なる気持ちであるわけでございます。
そういうことと、特に屠畜あるいは鞣製皮革製品の製造を担うところのそういう方々は、何をいいましても野性動物の保護というものと運命共同体である。毎日の仕事を通じて野性動物の資源状況を一番よく知っている、熟知をされておられるわけでございまして、だからこそ最良の保護とそして過度の国際取引の禁止という、どう言いますか、いわゆるそういうことを目的にしたところの条約でありますところの通称ワシントン条約といわれておるわけでございますが、この条約については趣旨は全面的に賛成であるわけでございます。
そういう
意味で、昨年国際人権規約が
わが国の国会におきまして批准されたわけでございますが、人間にとっては国際人権規約、また同時に野性動物についてはワシントン条約がこの人権条約だと言っても私は過言ではなかろう、こういうように
考えておるわけでございます。
特にいま必要なことは、留保品目はどうだとかあるいは期限はどうするのかという消極的な姿勢ではなくて、やはり野性動物の保護と皮革業界の繁栄を可能にする積極策が私は一番大事ではないか、そのためにやはり増養殖の強力な
推進がぜひとも必要ではないか、こういうように
考えておるわけでございます。原則的に国際取引の禁止されているところの第一類の動物についても、やはり
政府の努力によりましてすべて二類にする努力がやはり必要ではないか、私はこういうように
考えておるわけであります。
熱帯の
発展途上国におけるところの増養殖
事業については、多くの困難さがあることは当然でございまして、たとえばワニの場合、生育に四年から五年かかる、こういうことでございますし、またその間先行的に投入される資金は膨大なものでございまして、零細業者の手に負えるものではないということは明らかであろう、こういうように思っておるわけでございまして、国家資金の投入というものは必然であろう、こういうように思うわけでございます。特にフランスとかイタリアにも劣らぬそういう皮革産業を育て、国際競争力を持つところの製品をつくり上げるということが一番大事じゃないか。
わが国のそういう皮革産業というものは非常に伝統的な産業でございまして、そういう欧米に劣るような状況にあるということ自身、日本の
政府が皮革産業に対して差別的な態度をとってきたゆえんではないか、こういうようにわれわれは
考えざるを得ないわけでございまして、そういう
意味で、特に増養殖
事業が完全に軌道に乗るまで責任を持って通産行政としてがんばっていただきたい、こういうように思っておりますので、その点につきましてまずお答えをいただきたい、このように思います。