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工藤(晃)
分科員 私がいま問題にしているのは、主として高架駅に伴って、階段を上がらなければいけないけれ
ども、上がれなくなったということで駅が利用できなくなったということですから、点字ブロックの例は、ここでいま取り上げているテーマにはなっていないのです。この橋上駅が——これは
運輸省から調べていただいて届けていただいたものですから間違いありません。だから、この問題に関しては、いま点字その他で若干改善があったと言うけれ
ども、全体としてこの十五年の間に四十六駅橋上にされてしまったということ
一つとってみても、大変なことになってきたということがおわかりいただけると思うのですが、私は
大臣にもひとつ具体的な例を聞いていただきたいと思うのです。
これは小平市で私が
障害者のお母さんから聞いた
一つの事実であります。御存じのように、小平市の場合は
障害者の
福祉施設が集中しております。それで、
障害者で全国からここにお住まいになる方もふえているところでありますが、そこでもこういう事実があるのだということです。これは
名前はA君としておきます。十九歳で、ポリオによる下半身麻痺の方ですが、都立の小平養護学校を卒業し、今春都立職業訓練校を卒業予定、現在職を探しているわけです。この職を探すに当たって、お母さんと
一緒に上野の職安に行くとき、どういう交通ルートをこの方はたどったかという事実であります。
本来は西武線の小川駅から乗りたいところですが、これが非常に高い階段なので利用できないということで、お母さんとA君はタクシーを利用して立川駅に出ました。立川駅もいつも都合がいいわけではなしに、三番ホームから電車が出るときには階段を上がったり下がったりしなくていいというので、三番ホームに来るときを見計らって行ったわけです。そこで結局、タクシー代二千六百円ぐらい払わなければいけなかった。それから、上野に行くのに東京駅で下車しなければいけない。東京駅の場合はエレベーターがあるのです。ただし、このエレベーターというのは、前もって東京駅に連絡して、いつごろ着きますから利用させてもらいたい、そして職員がそのとき用意して利用できるエレベーターです。ですから、結局、立川から東京駅まで行って、そして上野に行くのにはまたそこでタクシーを利用しなければならなかった。このタクシー代が千六百円ぐらいかかった。それで、上野の職安に行ったところが、やはり上野ではよく見つからないというので、
飯田橋職安に行かなければいけない。これもタクシーを利用しなければならなかった。これもやはり駅の構造の
関係なわけです。それから、
飯田橋から新宿までは、帰り道になるのですが、国電を利用されました。それは、階段はあるけれ
ども下りだけだから、上りがないのでこのルートは利用できるというので、新宿駅まで来ました。西武新宿線のエレベーター、これは事実上荷物のエレベーターみたいなものなんですが、それを利用して西武線に乗って小川駅でおりたのですが、小川駅では通行人に抱えてもらって、助けていただいてやっとおりられたというのがこの一日なわけです。
そうしますと、この間、上野、それから
飯田橋の職安へ行く交通費、さっき言ったタクシー代が約六千八百円。これは時間が経過しておりますので、私が聞きただしたのは少しは出入りがあるかもしれませんが、このくらいです。鉄道運賃が千五百六十円かかって、計八千三百六十円になったのです。もう少し細かく申し上げますと、本当は私鉄も
国鉄も、もし
介護者が同伴の場合には運賃半額ということがあるのですが、このときは利用されませんでした。というのは、こういうとき利用するといっても、何か手帳を見せてすぐ利用できるのではなしに、
福祉施設へ行って十枚つづりのをもらってこなければいけない、大変めんどうなことがあるために、このとき利用できなかった。それで八千三百六十円なんです。つまり、小川駅その他の駅が階段の構造その他で
障害者にとって利用できないために、もしこれが利用できたとするならば、さっき言った
介護者同伴で運賃半分としますと、八百八十円で済んだところが、その十倍近い八千円以上使わなければならなくなったという事実があるわけなんですね。これは駅の構造からこういうことが出ているわけなんです。
もちろん、これから仕事を探すこのA君の場合、いま池袋で仕事がありそうだ。しかし、九万円ばかりの給与で交通機関が小川駅を使えないとなると一体どうするか。それで、池袋の近くのマンションというとやはりどうしても七万、八万はかかってしまうということなんですね。これじゃ何のために就職するかわからぬ。こういうことが実は具体的な生々しい、しかも毎日のようにぶつかっている事実なんです。
そうしますと、
心身障害者対策基本法の第二十三条二項の中に、はっきり
国鉄は
障害者の経済的な
負担を
軽減するために
割引きする趣旨が入って、現にやっているわけですね。けれ
ども、実際使う上ではさっき言ったように大変不便がある。そういう基本法の中に入っている条項さえ、駅の構造がこうであるために
障害者にとっては利用できない、権利が行使できないということになっているわけなんですね。このことを深刻に
考えていただきたいわけなんです。
そういうことで、私は、もう一度
運輸省に、いま言った高架化に伴う駅の構造について、さっき点字ブロックのことを言いましたが、どういう指導をしているのか、その問題について伺いたいと思います。