○寺前
委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十五年度
予算三案につき、
政府がこれを撤回し、編成替えを求める動議についての理由及び概要を御説明いたします。
まず、動議の主文を朗読いたします。
昭和五十五年度
一般会計予算、
昭和五十五年度
特別会計予算及び
昭和五十五年度
政府関係機関予算については、
政府はこれを撤回し、左記の要綱により速やかに組み替えることを要求する。
右の動議を提出する。
動議の内容については、お手元に配付しておりますので、以下、動議提出の理由と概要を要約して申し述べます。
まず、編成替えを求める理由であります。
八〇年代に入り、日本経済は、スタグフレーションや石油危機の新たな進行など、経済危機、
国民生活破壊の一層深刻な様相を改めて示しつつあります。すなわち、昨年における景気回復は、結局大企業だけのものに終わり、雇用の
改善が立ちおくれたばかりか、第二次石油危機とともに再び物価の上昇、中小企業倒産の増勢があらわれ、また、国際収支も大幅な赤字を出すに至っています。日本のエネルギー危機は、今日、極端なメジャー依存に陥った段階で、そのメジャーからの原油供給の一方的削減で脅かされていること、日米安保条約に縛られて自主的資源外交へ進めないこと、石油にかわるエネルギーへの移行がほとんど準備されていないことなどから、今後打開の見通しも立たないありさまであります。
同時に、国家財政は破局とも言うべき深刻な危機に陥っており、
国民生活擁護と危機打開のための政策転換にも障害をつくりだしています。それだからこそ、
国民生活擁護、危機打開の政策とを、あわせて進めなければならなくなっているのであります。
しかも、深刻な財政危機のもとでも、軍事費はアメリカの圧力とわが国反動勢力の策動によって大幅に伸ばされ、自衛隊は侵略的機能を著しく強めています。
さらに、相次いで明るみに出された中央官庁と特殊法人の乱脈経理、汚職腐敗事件は、長期にわたる自民党一党支配のもとでの大企業本位の金権政治、政財官癒着の必然的な結果であり、腐敗の根を断つ行政改革への本格的着手を求める
国民的
世論が急速に強まっているのであります。(拍手)
こうして今日、一、
国民生活の擁護と経済危機、エネルギー危機の打開、二、財政の
国民本位の再建、三、日米軍事同盟の侵略的強化反対、軍事費の大幅削減、四、汚職、腐敗の一掃、政財官癒着の根本的転換の四つが差し迫った
国民的
課題となっているのであります。これらの
国民的
課題の
解決を可能にするかぎは、経済危機やエネルギー危機、財政危機、さらにはまた腐敗政治の共通した根源である大企業本位、対米従属の経済の仕組み、政財官癒着の構造に抜本的にメスを入れる民主的改革を行うことであります。
ところが、
大平内閣の
政府予算案は、経済危機、エネルギー危機や、さらに腐敗政治の根源には何ら手をつけようとはせず、これらの危機をひたすら
国民の犠牲で乗り切ろうとする財界の八〇年代構想を、忠実に持ち込むものとなっているのであります。
政府予算案は、財政再建の第一歩を踏み出すことを口実にして、社会保障制度などの全面的改悪に着手するだけでなく、一般消費税を時的に引っ込めたかわりに公共料金の値上げなどで、
国民に一般消費税がもたらすであろう負担額に近い負担を押しつけ、さらに、三年連続の所得減税見送りによる実質大増税を図るなど、
国民にとっては、文字通り三重苦
予算となっているのであります。
政治の根本的目的は民生の安定にあるのであり、憲法は、福祉の
充実を国の責務として明確に規定しているところであります。このことからして、政治を物質的に支える財政の重要な役割りが、社会的に弱い人々を守る所得再分配機能に置かれなければならないことは明らかであります。この機能は、経済危機が深まれば深まるほど、ますます重要性を増すものであり、財政危機を口実にこれをないがしろにすることは絶対に許されないものであります。
不公平税制や大企業奉仕の支出、軍事費などには手をつけず、財政破綻のツケを
国民に押しつけ、しゃにむに赤字減らしを推し進めようとする
政府予算案の方向は、何ら財政再建の名に値しないだけでなく、財政の所得再分配機能を放棄し、政治の根本理念を否定するものと言わなければなりません。
日本共産党・革新共同は、以上の理由により、
昭和五十五年度
予算三案の撤回と全面的な編成替えを求めるものであります。(拍手)
次に、編成替えの規模及び内容について、その概要を御説明いたします。
編成替えの規模については、来年度
予算を
国民生活防衛と財政再建を最優先させたものとする。財源は、不公平税制の是正、軍事費、大企業本位[の支出の削減によって確保するものとし、編成替えの規模は、歳入で二兆一千億円、歳出で一兆五千億円、合計三兆六千億円であります。したがって、
予算規模は
政府案と同程度のものとなります。
この方向のもとに、以下の事項について組み替えが必要であります。
まず、歳入関係では、第一に、国債発行額の計画的縮減を行うことであります。国債発行額は、前年度当初
予算に比べ少なくとも二兆円以上減額するものとし、また、現在、道路
整備のためだけの目的財源とされているガソリン税を一般財源化し、福祉や生活密着型公共投資にも使えるように改めます。これによって国債発行額のうちの赤字国債分を圧縮することができ、財政危機の第二段階を緩和することが可能となります。
さらに、
国民増税によらないで五カ年で赤字国債発行額をゼロにする
国民的財政再建計画を策定するものであります。
第二に、不公平税制を是正します。
法人課税では、大企業に対し、法人税率を引き上げるとともに、各種引当金、準備金の廃止または繰入限度の引き下げ、減価償却期間の
延長と特別償却の廃止、株式時価発行差益、受取配当非課税
措置や支払い配当軽課
措置の廃止などを進め、巨大企業ほど税負担が低くなっている逆累進を是正します。また、もうけ過ぎ大企業に対する会社臨時特別税を復活するものであります。
所得課税では、利子配当総合課税の三年延期を撤回し、早期実現を目指す。当面分離税率を五〇%に引き上げる。有価証券譲渡課税をあわせて実現する。給与所得控除の頭打ちを復活し、配当控除制度は廃止する。土地譲渡所得課税の緩和は撤回するなどであります。
以上の不公平税制の是正によって、来年度二兆円以上の増収を確保することができるのであります。
第三に、八千億円の所得減税を行います。
実質大幅増税を避け物価調整を図るため六千億円の所得税減税とともに、二千億円の住民税減税を行います。地方税の均等割の引き上げは撤回するものであります。また、中小企業に対する退職給与引当金繰入率の引き下げによる増税計画を中止します。第四に、公共料金の値上げの計画の凍結を行うものであります。
次に、歳出関係については、第一に、
国民福祉の
充実を図るため、
政府予算案にさらに三千五百億円追加して福祉
施策を
充実させるものとします。
その内容は、老齢福祉年金を当面
政府案に三千五百円上乗せをして二万五千円とする、遺族年金は老齢年金の八〇%とする、さらに、保育所、老人ホーム等の福祉
施設の
充実と
職員の待遇
改善などを内容としています。また、国家補償の見地に立って、被爆者援護法の制定を図るものであります。
第二に、物価対策の強化であります。
大型公共料金の値上げ計画を凍結するとともに、石油及び石油製品の不当便乗値上げと出荷制限をやめさせるために、石油需給適正化法、買い占め売り惜しみ防止法を全面的に発動させるなどであります。
第三に、大企業の不当な人減らし、首切りを規制し、雇用対策を
充実するために二千億円を追加するものであります。
第四に、生活密着型優先への公共投資の転換を図ることであります。
産業道路、特定重要港湾、大規模工業基地など大企業奉仕型公共投資を五千億円程度削減し、うち三千億円程度と今年度からの繰越分を合わせて、
国民生活密着型公共投資へ優先的に振り向けます。
公営、公団住宅は、少なくとも第三次五カ年計画の目標の完遂を目指し建設戸数を大幅にふやす。第四次五カ年計画については公共住宅建設の比重を低めるのではなく、高めるものとして策定する。関連公共
施設への
補助はさらに拡大するものであります。
第五は、
教育の豊かな発展。
政府案で対前年度比五・二%の伸びに抑えられた文教
予算は、千五百億円程度を追加するものであります。小中高等
学校の四十人学級制は十二カ年計画に引き延ばすのではなく、五カ年計画に短縮して実施するなどを内容とするものであります。
第六に、農漁業の再建を図ります。そのために
政府予算案を千五百億円増額し、農漁業の再建を進めます。
第七に、中小企業の経営危機打開を図るものであります。そのために官公需の五〇%以上を中小企業に発注するなど、きめ細かい
施策をとるものであります。
第八に、自主的エネルギー政策への転換であります。自主的、総合的エネルギー政策を確立するために、総合エネルギー公社を創設するものであります。
第九に、地方財政の確立であります。
地方交付税額を三千五百億円増額します。
第十に、民主的行政改革の
推進であります。
第十一に、軍事費の大幅削減であります。
米軍地位協定の規定にすら明白に違反している米軍基地維持費の日本側分担分を全面的に削除します。
環太平洋合同演習など日米共同作戦態勢の強化をやめるとともに、沖繩、硫黄島など新たな自衛隊基地拡張計画の中止、基地機能強化のための経費を大幅に削減します。
五カ年で総額十兆円に上る事実上の五次防計画の実施を中止し、一機百億円もするF15制空戦闘機やP3C対潜哨戒機、E2Cなどの米製最新鋭兵器の購入、バッジシステムの更新、潜水艦などの艦艇建造、機甲師団の創設を取りやめる。経済軍事化を促進する研究開発費を大幅に削減するなどの内容であります。
第十二に、大企業向けの
補助金とむだな支出の徹底削減であります。
以上、動議の内容について概要を御説明いたしました。
この動議の内容こそ、
国民の要望と期待にこたえるものであることを確信するものであります。
なお、この際、先日社公民三党に対して自民党が回答した一般会計に直接関係あるものとして、実質二百八十億円余と言われているいわゆる実質修正について申し述べます。
この実質修正は、わが党が
国民の最低限として要求して提起した組み替え動議と比べてももちろん、社公民三党の一兆二千億円の要求と比べても問題にならないものであります。憲法違反で疑惑がらみの最大の浪費である巨額の防衛費に指一本触れようとしないばかりか、所得税減税をも見送るなどの内容を見れば明らかであります。
以上、私どもの立場を御説明申し上げました。
委員各位の御賛同をお願いして、提案の
趣旨説明を終わります。(拍手)