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坂口委員 いま私の手元に社会保険診療報酬点数表がございます。これを見ますと、いろいろのことがわかるわけでございまして、いま
厚生大臣は
関連企業のそこがふえることが決して医療費を押し上げることには結びついていかないのではないか、必ずしもそうは言えないのではないか、こういうお答えでございましたけれ
ども、先ほど申しましたように、最近でございますと、コンピューター断層撮影機というのがございまして、その撮影をいたしますと、点数では千二百点ついております。非常に高価な、重装備をした機械器具であればあるほど、それに対する医療点数というのはふえているのが現状でございます。また、薬も非常に安いものは点数は低うございますが、それが高価なものになると上がっている。したがいまして、非常に高い薬をたくさんつくる製薬会社ができましたり、あるいはまたたくさんの機械器具をつくる産業がふえてまいりますと、そのことが医療費を押し上げることになっていくわけであります。
たとえば、医師が直接に行いますことに対する保険点数よりも、医師以外の人が、たとえば薬剤師でありますとか、あるいは検査技師でありますとか、あるいはレントゲン技師でありますとか、そういう人たちがやりますことにわりあい点数が高いわけです。医者がやらねばならぬ、たとえば眼底検査をやりますと十点でございますが、検査技師がたとえば尿のたん白とかを調べますだけで十点つくわけであります。あるいはまた医師が胸腔あるいは腹腔といったところの液をとるという胸腔あるいは腹腔穿刺と申しますが、針を刺して中の液体を抜くというような、こういった危険をかなり伴うようなことをいたしまして、これで大体二十点であります。それに対しまして、検査技師が血液型をちょっと耳から血をとって調べると三十点ついている。ここに非常にアンバランスがございます。また心電図の検査をいたしますと百五十点つくというふうに、非常に多いわけであります。それから心臓内注射、これは死ぬか生きるかのところだと思いますけれ
ども、そういう非常に危険を伴うことをいたしましても、これで二十点という点数であります。医師そのものが行います点数というのは比較的点数が少なくて、そうでないところにかなり多い。その多い部分というのはどうかといいますと、それは薬や機械を非常に重装備のものを使えば使うほどたくさんついている、そういうことになると思う。
医薬品の年間生産額、それから医療用具の年間生産額、
国民総医療費の年次変化というものをパーセントで調べてみますと、四十九年から五十三年まで大体パラレルに増加をいたしまして、医療用具がふえる、それから医薬品がふえるのと
国民総医療費がふえるのとはパラレルになっているわけでございます。こうしたことが言えるわけでございまして、このことを考えますと、やはりここに多くの人を吸収していくということは、必ず医療費を上げてくることに結びついてくるのではないかというふうに思っています。
その結びついてくる原因は、保険点数に私はあると思います。いま申しましたような保険点数がほかにもいろいろございまして、この中にもっと改革しなきゃならない点はたくさんあろうかと思います。私はこれを見ましていろいろ疑問に思ったのですが、たとえば耳鼻科で耳を片方治療しますと十点、両方しますと二十点になる。目も片方しますと十点、両方しますと二十点。鼻の穴を治療したいと思うと、片方十点、両方やりましても十点。鼻の穴は近いから
一つずつに勘定しなくて、耳と目は遠いから別々に勘定するのかどうか知りませんけれ
ども、そういうことがございます。また、輸血用の血液にしましても、いわゆる生血という、とりましてすぐの血液を輸血するという場合には、これは四百三十点ついております。ところが、梅毒の検査とかいろいろの血液の検査をしまして、安全にしました血液を輸血する場合には二百四十点しかついていない。しかも生血の場合には、百cc輸血するごとに四百三十点である、この安全な方は二百ccを輸血して二百四十点である、そういうふうに非常にアンバランスがあるわけであります。この辺のところに、物を使えば使うほど医療費を押し上げていくという物の考え方がこの中にある。
私が申し上げたいのは、この健康保険法が今回ここに法案が
政府から提案されておるわけでございますが、
政府の案は、初診料なりあるいはまた入院費なり、あるいはまた薬剤費なりの自己負担をふやして、それによって医療費が上昇していくのを抑えよう、こういう形になっているわけでございます。少なくともそう見えるわけであります。そのようにいたしますと、どういたしましても受診抑制というものが起こらざるを得ない。また、そのことを期待しているのかもしれません。そのことが果たして今後の医療行政のためにいいことかどうかということを考えなければならないと思うのです。
一方におきまして、
厚生省が今度、きのうの新聞でございましたか出ておりましたが、医療関係者
審議会に対しまして、医師国家試験専門
委員会というものを設けまして医師国家試験の
内容について検討をしてもらうように諮問した、こういう記事が出ています。この中に出ておりますのは、現在余りにも医療が細分化をされて、そして専門的なことは知っておるけれ
ども一般的なことについては知らないというようなことがあるので、基礎的な知識だとかプライマリーケア、初期診療と括弧してここに書いてありますが、初期診療ということで一言で言えるかどうかわかりませんけれ
ども、こういう初期診療をぜひひとつやらねばならないという
方向で検討されている。これは結構なことだと思う。結構なことでございますが、現在あります点数表というのは、とにかく重装備をした値段の高い機械器具を使えば使うほどこれは点数が上がりますぞ、そして薬を使えば使うほど上がりますぞという、そういう
内容でございまして、いわゆるプライマリーケアを中心とした医療を行うような点数になっていないわけです。
たとえば、もし仮にある医師がおりまして、かぜがはやって三十人のかぜの患者が来たといたします。そしてその患者さんの中で、十人が新患で二十人がもしも十日以内の再診だったとします。そしてその医師が、私はどうしても薬だとかそういったものは使わない、生活指導一本でいくのだ、こう言いましたときに一体どれだけになるかということになると、それは初診料が千円ずつでございますから十人で一万円、そのあとの二十人は三百三十円ずつでございますから六千六百円で、一万六千六百円という値段になる。もしもその人が、詳細については看護婦さんなり何なりを使ってもう少し指導をするということで一人雇うということになりますと、それはやっていけないという形になっているわけです。保険点数では、いわゆる生活指導とかそういうような指導をすることは、初診から二週間の間はどれくらい行ってもゼロである、それは指導料としては認めないということになっている。慢性の疾患だけに認めるということになっている。
そういった国全体の
雇用を含めた労働行政あるいはまた文部行政、それからまた
厚生省内部の行き方を見ましても、医療費を高める
方向を向いている。このことをこのままにしておいて、そして現在の健康保険法を、額が上がっていくから何とかしてこれを下げなければならないというので一部自己負担を導入するということは、ちょっと順序が逆じゃございませんか。私はそのことを言いたいわけでございますが、いかがでございますか。