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不破委員 ちょっと余りにも認識がひど過ぎると思うのですね。大体アメリカでは、そういうダブルチェックは原子力規制
委員会の中の規制局でやっているのですよ。規制局が六百三十人の部隊をもってやるでしょう。そのほかにACRSというのがあって、これがいまの
日本でいえば安全審査会に当たるのですよ。これがダブルチェックをやって、それが規制の一段階なんですね。そういうものを立地、それから建設、運転と、詳細設計まで原子力規制
委員会でやっているというところにアメリカの仕組みがあるんですよ。そういう推進側と別の、
大平さんが言われる
行政とは別の客観、公正なその審査機関にそれだけの機能を持たせるということが大事なわけです。ところが
日本の現状は、せっかく「むつ」のあの教訓がありながらそれをやられていない。一番大事な点でパートタイマーによる審査、それからその安全審査は基本設計だけ。だから「むつ」の報告では「この審査と現実的な設計との間には工学的、技術的な空隙が生まれるおそれがある。」この粗筋の設計書を見たら何とかなっているけれ
ども、実際につくってみたら空隙があってえらいことが起こりかねぬ、そういうことをちゃんと書いてあるんだが、残念ながらあの原子力安全
委員会をつくったときに生かされなかったわけですね。いまからでも遅くないので、いまアメリカがあの教訓の中からアメリカなりに到達しようとしているところを
一つの目安にして、抜本的な検討をやる必要があると私は思っているわけです。
それから、もう
一つの教訓は防災問題です。というのは、いままで企業側や
政府側の話を
伺いますと、大体原子力災害というのはないように設計してあるんだというのが常なんですね。ところが、アメリカは昔から、設計されている予想を超えた原子力災害に備えよということを、原子炉の立地についても、あるいは周りの体制についても、それからいざというときの緊急事態対策についても、これを防災の原則にしているわけですね。つまり、設計ということはすべてのことを備えられないんだから、設計の予想を超えた原子力災害が起きたときにどうするか、これがいわば国のがんばりどころだというのがアメリカの
考え方だったわけですよ。ところが、それについても今度のスリーマイルの教訓というのは、従来のやり方ではだめだということが非常にはっきりしてきたわけですね。
それで私、ここに
一つの最近そういうことで得たアメリカの文書を持ってきているのですが、これは実は、アメリカの原子力規制
委員会それから環境庁が、自治体から要望されるわけですよ、原子力災害に備えよと言うが、大体どれぐらいの範囲で備えたらいいのかと質問が出る、それに対して答えなければいけないというので、これはスリーマイルの前です、おととし発表したものですよ。この最後に表が出ているのでわかりいいのですけれ
ども、こういう表ですね。原子力発電所から十マイルの範囲は、これは放射能雲がいざというときに出て直接人間の体に危害を及ぼす危険がある。だから、防災対策を立てるときには、防災
計画地帯というのですが、第一の防災
計画地帯は十マイル範囲で、そこは人間が必ず退避できるような
計画を持たなければいかぬ。これが
最初の円ですね。外側の円は何かといいますと、これは牛だとか水道の栓がかいてありますが、これは放射能雲が直接人間の体に当たらないかもしれないが、水源地だとか食糧を汚染することによって口から放射能が体内に入ってくる危険がある。その水源と食糧についての対策を立てなければいけない地域として、これは五十マイル引いているわけです。つまり、この退避
計画が十マイルで、十六キロですよ。食糧や水源のいざという対策を立てなければいけないのが、これは五十マイルで、八十キロです。これはスリーマイル事故が起きる前に、アメリカの原子力規制
委員会と環境庁が出した数字なんですね。ところが、スリーマイルの事故が起きてから、これじゃいかぬということがだんだんわかってきた。
ここに私、もう
一つのアメリカの最近発表された文書を持っておりますが、これはアメリカの原子力規制
委員会が、原子炉をどういうところに立地するかという立地
政策に関して最近発表したレポートです。これは実は一昨年から作業が始まっていたんだが、去年の三月スリーマイル事故が起きたので、そのことを含めて去年の夏発表されたものです。これによりますと、これまで原子炉を設計して退避地点なんか考える場合、原子炉の設計の度合いといいますか、安全度の度合いに応じて退避
計画の幅を動かしていた。これじゃだめなことがわかった。やはり退避
計画を義務づけるのだったら固定的な線を引かなければいかぬというのがこの結論ですね。それでこの結論では、少なくとも十マイル、さっき言った十六キロですね、十六キロ以内の範囲、原子力発電所ができて十六キロの円周、その中からは一時そこに来た人、お客さんを含めて短時間に退避できるだけの退避
計画を必ず義務づけなければいかぬ、それからその退避
計画は、二十マイル、三十二キロについても考えなければいかぬということが書いてあるわけです。実際に原子力規制
委員会がスリーマイルの事故のときに最大限考えた退避が二十マイルだったわけですね。それが書いてある。
それから先ほど言いましたロゴビン報告、これによりますと、これはもっとその点は強くなっていて、十マイルというのは、ただ逃げる
計画ではだめだということを言い出したのです。十マイルの範囲には人口密集地帯があってはいけない、都市がその中にあってはいかぬ、そして退避
計画は十マイルよりももっと広い範囲で設定しなければいかぬということ、これが一月二十四日に発表された報告の結論ですね。
まだこういう問題はもちろん完全な結論は出ていないけれ
ども、去年からことしにかけてずっと出されたアメリカの報告書を見ますと、大体最低限十マイルの人口密集地を除いたり、退避
計画を立てる、それから二十マイルに広げる、水源や食糧問題から言うと五十マイルの範囲は防災
計画を立てなければいかぬということは、大体かなりの合意線に来ているように私は見ているのです。
これに対して、いま
日本で原子力発電所を建てるとき、一体立地の点とか防災
計画の点ではどんな
考え方に立っているのか、それからどういう指導を実際に発電所や県にしているのか、そこら辺を
伺いたいのです。