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1980-01-31 第91回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年一月三十一日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君   稻村左近四郎君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       小山 長規君    近藤 元次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    田名部匡省君       田中 龍夫君    玉沢徳一郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    藤尾 正行君       藤田 義光君    細田 吉藏君       松澤 雄藏君    村山 達雄君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    多賀谷真稔君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       岡本 富夫君    草川 昭三君       坂井 弘一君    正木 良明君       矢野 絢也君    工藤  晃君       野間 友一君    則武 真一君       林  百郎君    松本 善明君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久保田円次君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁計画         局長      園山 重道君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁自然保護         局長      藤森 昭一君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       名本 公洲君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      篠澤 公平君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    尾島  巖君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸大臣官房総         務審議官    永井  浩君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房長 小山 森也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         郵政省人事局長 林  乙也君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 寺園 成章君         労働省婦人少年         局長      森山 直弓君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         会計検査院事務         総局次長    松尾恭一郎君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         参  考  人         (日本銀行総裁)前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 一月三十一日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     玉沢徳一郎君   始関 伊平君     田名部匡省君   塩崎  潤君     浜田 幸一君   野坂 浩賢君     多賀谷真稔君   工藤  晃君     林  百郎君   庄司 幸助君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   田名部匡省君     始関 伊平君   玉沢徳一郎君     江崎 真澄君   浜田 幸一君     近藤 元次君   多賀谷真稔君     野坂 浩賢君   野間 友一君     則武 真一君 同日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     塩崎  潤君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、日本社会党を代表して、一九八〇年代の初頭に当たり、総理以下各閣僚に質問いたしたいと思います。  一九八〇年代は内外とも激動の年と言われております。最近のイランの人質事件、アフガニスタンへのソ連の軍事介入など、世界緊張緩和が大きく揺らぎ、逆流するかの感を与え、まことに憂慮すべき事態になっております。また、国際経済においても、ニクソン・ショックによるドル金交換の停止、国際通貨体制の混乱によるドル価値低下、そういう中で世界的インフレーションが高進してきました。そうして、七三年の石油ショック、七九年の第二次石油ショックと、石油価格は十倍以上の高騰を示し、これらの矛盾を持ち越しながら八〇年度を迎えたわけであります。また、国内においても、三十年にわたる自民党一党独裁のひずみと高度成長の終わりがここに告げられ、まさに政治腐敗財政破綻エネルギー不足物価高騰、地価の高騰都市集中、農業の自給率低下環境破壊教育破壊等にあらわれ、まさに高齢化社会を迎えようとしております。いわばこういう情勢を踏まえて、重要な課題について、以下総理に質問をいたしたいと思います。  まず第一に、私は、最近の非常な緊張緩和の逆行の中で一つだけ明るいニュースを聞いております。それは、三十五年にわたる分断が続いた南北朝鮮の間で、初の双方総理会談が開かれる公算の強いということであります。自主的平和統一の機運が醸成されつつある。私は、長い間不法な統治をしてきた日本国民にとってまことに喜ばしいことである、こういうように考えます。  そこで、総理施政方針において、国際外交については受け身の姿勢からいわば主体的姿勢をもって動くのだと言われておりますが、この日本にとって最も重大な関係のあります朝鮮の話し合いの問題について総理はどういう役割りをされようとしておるのか、これをまずお聞かせ願いたい。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 朝鮮半島におきまして南北当局の間で総理級会談が持たれることが合意されたことは、私ども仰せのように明るいニュースとして受けとめたわけでございます。この対話の再開が実りあるものになるように心から期待をいたしておるところでございます。  私ども朝鮮半島の問題につきましては、つとに南北の平和的な話し合いが再開されて、それが成果を生むように期待するということと、それを阻害しないような国際環境、できればそれを促進できるような国際環境の形成に努めなければならぬと存じまして、アメリカ、中国等との会談の機会におきましてはそういう方向でお話し合いをいたしておりまして、米国も中国もそれに賛意を表されておるわけでございます。今後もしんぼう強くその態度を堅持しながら、南北対話が実りあるものになるような国際環境の醸成には、日本といたしましてできるだけ配慮していかなければならないと考えております。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理中国に行かれたときにも、その南北統一のための環境づくりに努力を惜しまない、こういうことを説明された、中国賛意を表した、こう言うのですが、具体的にはどういうことをおやりになろうとしておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  6. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 南北平和統一の問題は、第一次的にはあくまで南北当局の間で行われるべきものでございまして、そのことが第一でございます。したがって、われわれが考えなければいかぬことは、それを傍らから阻害するようなことがあってはいけないということでございます。まず、南北対話進展を注視しながら、われわれは何をなすべきであるか、何をなしてはいけないか、そういった点は慎重に今後配慮していかなければならぬと思います。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 きわめて抽象的で、国民ははっきりしないと思うのですが、総理は今度の施政方針の中でも朝鮮民主主義人民共和国という言葉をお使いにならないですね。これはどういうわけで北朝鮮という言葉でおやりになっているのか。  しかも、大来外務大臣も「北朝鮮との関係につきましては、今後とも貿易経済文化等の分野における交流を漸次積み重ねてまいる考えであります。」こう言われておる。いままでありました人事というのがないのですね。これは一体どういうことで人事というのを故意におやめになったのか、ひとつあわせて御答弁を願いたい。
  8. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北朝鮮につきまして人事交流ということを特に除いたわけではございませんけれども、今回そのことが入っておりませんのは特別の理由はございません。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理大臣も特別な理由はないのですか。
  10. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 さよう心得ています。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は非常に大きな理由があるのではないかと思うのです。従来、三木総理大臣のときも「北朝鮮日本との関係についても、漸次、貿易人物文化等交流を積み重ねて、相互の理解を深めたいと考えております。」次は、宮澤外務大臣も同じく「貿易人物文化等」と言われておる。さらに、鳩山外務大臣も「貿易人物文化等」と言われておる。園田外務大臣は「貿易人物文化等」と言われ、そうして次の福田内閣外務大臣として同じく、今度は言葉をさらに敷衍されまして「貿易経済文化人的交流等」という言葉を使われました。  ところが、同じ外務大臣園田さんが大平内閣外務大臣になりました途端、これは「経済文化等」というので「人物」が消えた。「人的交流」が消えた。同じ外務大臣福田内閣から大平内閣に移って消えたのです。そうして今度も、今度は「経済」という文句が、二つでは都合が悪いと見えて三つ入れて「貿易経済文化等」と、「人物」とか「人的交流」というのが消えておる。  私は、これは大平内閣基本的政策に変化があるのではないかと思う。でありますから、故意に削ったのではありませんと言われるけれども、同じ外務大臣が「人物」と言い、さらに続いて、同じ福田内閣で「人的交流」とまで言われた。それが大平内閣に入ってきたら消えてなくなったというこの事実は、一体何を物語っているか、これを御答弁願いたい。
  12. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま大来君からもお話がございましたように、特別意識的に人的交流を差し控えるというような意図はございませんで、従来どおりの関係の積み重ねをやってまいるという方針に変わりはないわけでございます。経済等の「等」という中に当然含まれておるものとお受け取りをいただいて差し支えございません。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この「人物」という言葉からさらに一歩進んで、同じ外務大臣園田さんが「人的交流」と踏み込んだ。ところが、内閣が変わった途端、今度はそれが消えてなくなった。これはやはり金大中事件とか、そういういろいろな要素があなたの頭の中に入って、外務省としてはそれは削る、すなわち政治的レベル人物の往来は好ましくない、こう考えたのではないですか。なぜ消えたのか、これはきわめて重要な問題として私どもは受けとめておる。まず、これをお聞かせ願いたい。
  14. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申し上げましたように、人物交流が抜けましたのには特別の理由はございません。全体の姿勢といたしまして、総理中国で、南北対話が促進されるような国際環境づくり日本としても極力努力するのだということを申しておられたわけでありますし、外務省としても、現在の情勢からして南北対話が望ましい、同時に日本としても北との接触をさらに深めていくことは望ましいと考えておるわけでございまして、特別の意図があってこれを抜かしたわけではございません。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、現実に朝鮮民主主義人民共和国との交流というのは、こういうときには政治家交流が非常に大きな役割りをしますね。そうすると、日本側政治家並びに政治団体あるいはこれに類するものが招待をした場合に、ほとんど来れないのですね。これは、人的交流人事というのを別に故意に落としたのではないとするならば、むしろいまから責任ある人並びに団体招待の場合は前向きに検討する、前向きに受け入れる、こういうように考えてよろしいですか。
  16. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま申し上げましたような、特別の意味がございませんので、従来と同様と考えていただいてよろしゅうございます。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま南北朝鮮交流が、話し合いがだんだん進んでおるときですから、環境づくりというのはこれもむしろ一つの大きな条件です。朝鮮民主主義人民共和国政治家をこちらに呼んでそれを促進するということも一つ環境づくりでしょう。ですから、私は総理に、あなたが言われる環境づくりをしたいとおっしゃるならば、その環境づくりをおやりになるその一歩は、一つ政治家交流ではないか、こう言っているのですが、どうですか。
  18. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 北朝鮮につきましては、まだ国家として承認をするという手順になっておりませんので、政治家交流につきましては慎重にいたさなければならないというのが従来の態度でございます。それで、いまそれを変えるというつもりはございません。いま外務大臣もお答え申しましたとおり、従来の方針を特に意識的に変えたということでないことを、まず御了承いただきたいと思います。  それから、今後南北の間の対話進展してまいる、その進みぐあいを見ながら、先ほど申しましたように、われわれとしては何をなすべきであるかという点につきましては篤と考えていかなければならぬと考えております。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういう主体性がない外交はやらないとおっしゃっているのですよ。ですから、こういうような環境の場合になればなお一層、一歩進んで、いままでどおりよりも一層人的交流を図りたい、前向きに受け入れたい、こう御答弁なさったらどうですか。
  20. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう私どもがいまとっておる態度も、主体的に決めてやっておることでございます。積極的に果敢にやることだけが主体的外交ではないのでございまして、国益を踏まえて慎重にやってまいることはいつの場合でも必要であると考えておるわけでございます。南北朝鮮の平和的な統一の実現を目指しての対話が実りある成果を得られるということにつきましては、わが国としては非常な関心も持ち、期待も持っておるわけでございまして、そのために益になることにつきましては進んで協力しなければならぬわけでございます。その点については、この対話進展を見ながら考えさせていただきたいと思います。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、対話進展を見ながら前向きに考えたいというように理解してよろしいですか。よろしいでしょう。――首を縦に振っておられますから、うなずいておられますから……。  次にもう一つ、やはり経済あるいは貿易という言葉が盛んに出るわけですが、御存じのように朝鮮民主主義人民共和国の方もいままでの債務について清算されたようでございます。そこで、もう時間もありませんけれども、かつてLT貿易中国でやったように、少なくとも貿易代表部及びこれに準ずる機関をピョンヤンに設ける気持ちはないかどうか、これをひとつ端的にお聞かせ願いたい。これは時間をとりせんまから、やる気持ちがあるならやる、こういうふうに御答弁願いたいと思います。
  22. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 現在の段階ではまだ具体的に考えておりませんけれども、全般的な情勢の中で必要に応じて検討してまいりたいと思います。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう少しはっきりされたらどうですか。世界情勢が、デタントが崩れるのではないかという心配をしているときに、こういう非常に明るい、いわば平和の道に入っていこうとするのを、これは何も南北朝鮮統一に支障を来すわけではないし、長い間のわが国の非常な不法な統治に対するわれわれの償いでもあるのですから、早く腹を決めておやりになったらどうですか。総理、どうですか。
  24. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ざっくばらんに申しまして、北朝鮮とのおつき合いにつきまして、多賀谷さんのおっしゃることは理解できないわけじゃないのですが、御承知のように南北の間が微妙な均衡状態にございます。したがって、わが国が北朝鮮に対しましてどういう対応をしてまいるかということにつきまして、南側は非常に関心が強いわけでございます。この微妙な政治的、軍事的な状態の中で私ども北朝鮮との接触というものを考えていかなければならぬわけでございまして、そのかげんがなかなかむずかしいことは御理解をいただけるかと思うのでございます。したがいまして、そういう状況を見ながら、われわれは一歩進めてよろしいという感触も探りながら進めてきておるという経過は、御理解をいただきたいと思うのでございます。今後もこういう微妙な状況のもとにおける朝鮮半島に対する外交でございます点は、多賀谷さんにおかれましても御理解をいただきたいものと思います。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは中国のときも、御存じのように非常にむずかしい情勢にありましたでしょう。それでもあえて、先覚者もおり、LT貿易も行われ、そうしてその中国との友好の国交を回復する糸口を見つけたのですから。貿易というのはずっといっているのですから、貿易経済についてその道を開かれ、そうして輸銀等についても十分配慮するという、その姿勢が必要ではないか。どうですか、こういう機運の醸成したときに、このチャンスに踏み込むべきではないですか。どういうようなお気持ちですか。
  26. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 現状に大きな変化をもたらすことのないように、用心深く進めていかなければならぬと考えておるわけでございます。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういう受け身の姿勢ではだめです。まあまあこの問題についても、私は問題提起をしておきますから、以下同僚議員の方から専門にその追及をしてもらいたいと思いますが、ひとつ十分考えてもらいたい。次の方の答弁では、このままでは済まされない。やはりその前に、ひとつ前向き答弁を期持しております。  次に、私は、法律の一般論として、まず条約の効力について聞きたいと思います。  条約の適用される範囲のみにその効力が及ぶということは、条約適用範囲外にはその効力が及ばない、こういうように理解してよろしいですか。
  28. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生は、一般論としてとおっしゃったわけでございますが、確かにこれは一般論として論ぜざるを得ないわけでございまして、条約というものは、物によりましては全般的な適用がある場合もあり、また、その条約の目的ないしは規定等によりまして、その条約の適用範囲というものが決まっているものもある、そういうことでございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、条約の効力の範囲内に発生するということは、条約適用範囲外には及ばない、こういうように解釈していいかと、こう聞いているんです。要らないことを言わないで、そのとおり答弁してください、できるかできないか。
  30. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  もとより、ある一つの条約がございまして、その適用範囲というものが、条約の解釈として明確に規定されている場合には、当然のことながら、その適用外に適用されることはないということでございます。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、日米安保条約ですが、この安保条約はきわめて明快に書いてある。それは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」要するにこれは、日本及び極東の範囲内に効力が及ぶ、こういうように解釈すべきであると思いますが、総理、どうですか。
  32. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が条約文をお読みになりましたのは、第六条に関してのことであると思いますけれども、確かに、いまお読みになりましたような規定文になってはおりますけれども、この条約がその範囲に限られると、その適用範囲がそこで決まるということではございません。安全保障条約と申しますのは、日本国の安全及び極東の平和及び安全について、それを確保するために、日米両国がどういうことができるかということを決めたものでございまして、これは、極東という問題につきまして、安全保障条約の御論議の際にいろいろと議論が行われまして、政府の統一見解が出ていることは、先生もよく御承知のことだと思います。これは、何遍もこの国会において御議論がなされたところでございますから、安全保障条約におきます極東の範囲につきましては、私がここでちょうちょうと申し上げることは、時間の関係もございますので避けたいと思います。  そこで、ただ一点を申し上げておきますのは、この施設及び区域というものが提供されておりますが、その目的は、第六条に書いてございますように、極東の平和及び安全の確保のためと書いてございますが、これは施設及び区域を日本国が米軍の駐留に提供する使用目的を書いたものでございまして、極東の平和及び安全が脅威されるというような事態において、この施設及び区域を使用する米軍の行動範囲というものがこの極東に限られるものではないということは、従来たびたびこの国会において御答弁申し上げているところでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは従来、この安保条約が批准をされるときに、結局は岸総理大臣統一見解として、フィリピン以北及び日本の周辺と申しておるということを言っておるわけです。でありますから、少なくともこの条約の極東というのは、極東の安全及び平和以上には出ないわけでしょう。これは総理、どういうようにお考えですか。これは外務大臣総理大臣で、一局長の答える範囲外だと思う。
  34. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまの条約局長の説明のように私も考えております。すなわち、安保条約第六条は、米軍がわが国の安全及び極東の平和と安全の維持という目的のために、わが国の施設、区域を使用することを認めたものであると思うのでございます。この第六条は、わが国の施設、区域を使用する軍艦が持つ機動性をそれで奪うという性質のものと解釈すべきものとは思っておりません。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 端的に質問いたしますけれども、ペルシャ湾は極東の範囲外でしょう。
  36. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 極東の範囲外でございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま明確にお答えになりました。  そこで私は、ブラウン長官が日本に来られて、そうして一体政府に対してはどういう要請をされたのか、説明をされたのか。すなわち、このスイング作戦については十月に説明をしたと言い、総理も国会でその事実をお認めになりました。どういう内容をお聞きになったのか、それをお聞かせ願いたい。
  38. 原徹

    ○原政府委員 十月の時点でございます。ブラウン長官がスイングにつきまして、当時新聞等に報道されました関係で新聞報道に出ておりますけれども、艦隊あるいは航空部隊というものは本来機動性があるものであるということが一つと、いろいろヨーロッパの方に第七艦隊を転用するというような新聞報道があるが、機動性というものはそういうものではないので、アジアのたとえばベトナムのときには、非常に大きな部隊をヨーロッパの方からアジアの方にも転用している、要するに機動性の確保である、それは大変重要なことである。だから、これはアジアを特別差別するようなものではない、そういうような御説明があったわけでございます。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ブラウン長官はだれに話をしたのですか。だれにお話しになったのですか。――いや、あなたじゃない、ぼくは政府に聞いている。だれに話をされたのですか。局長じゃだめだ。だれに話をされたのですか。
  40. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官は最近、二回日本に来ておられまして、私が会見いたしましたのは、ブラウン長官が中国訪問の帰途、日本に寄りましたときに会いましたのですが、前回のときには私は会っておりません。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは、ブラウン国防長官はだれにお会いになったのですか。責任者と責任者が会ったのでしょう。それに控えておって傍聴しておった者が答弁するとは何事ですか。だれに話をしたのですか。だれに説明をされたのですか。
  42. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 お答えいたします。  まずお答えする前に、かつて防衛庁におきまして秘密漏洩事件がございました。これはお許しを得まして、私から発言をいたします。ぜひお許しを願いたいと思います。  この点につきましては、私も非常に残念でたまりません。この点については、現職の自衛官でございまするので、なお一層その念が深いわけでございます。私は心から国民の前におわびを申し上げる次第でございます。  そこで、この事件に対しましては、この問題が再発されませんように、十分士気の高揚を図りまして、私の責任におきまして再生の道を図りたい、かように存ずる次第でございます。  かような点から推しまして、ただいま先生の御質問でございますが、私が一月におきましてブラウン長官とお会いいたしましたときには、その問題はまだ出ておりません。したがいまして、ブラウン長官とその当時話した問題は、山下防衛庁長官の時代であったのでございます。この点を御報告申し上げる次第でございます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは内閣は継続性があるのですよ。前の防衛庁長官だったから、私はおりませんでは済まない。じゃ、総理大臣はかわってないですから……。
  44. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 去年、ことしと二回ブラウン長官が来日されておりますので、だれと会いましたか、正確には事務当局から報告させます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 久保田さん、内容を答弁してください。――だめだよ、長官に話を聞いておる。
  46. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 この点につきましては、防衛局長から答弁をいたさせます。
  47. 原徹

    ○原政府委員 先ほども申しましたように、十月の段階で新聞報道で、アメリカの方でリークがあったということにかんがみまして、ブラウン長官から御説明があったわけでございます。ブラウン長官が山下長官に、十月の時点、韓国訪問の帰途、防衛庁に寄られましたときにその話が出たわけでございます。  一つは、これはスタッフ研究の一つであるということ。それから、ヨーロッパの緊急の事態にアジアにおける部隊をヨーロッパに持っていくということが報道されているが、艦隊あるいは航空部隊というものは、本来、機動性が非常に大事なものであるので、その機動性を確保しなければならぬ。そのことは、何もアジアからヨーロッパに持っていくだけの話ではございません。アジアに何かがあれば逆のこともあるのです。たとえばベトナムのときには、ヨーロッパの非常に大きな部隊をベトナムの方に持っていった、そういうことであって、決してアジアを軽視するというようなことではないのです、そういうような御説明があったわけでございます。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは問題が二つありますね。要するに、日本に駐留をする艦隊を中東に送るという問題、しかし、アジアは軽視をしない。要するに、アメリカは二カ二分の一作戦を従来とっておった。欧州とアジア、中近東が二分の一。今日、一カ二分の一という、それは欧州、中近東が二分の一、アジアはない。そこで、まあその不安、その不安については、決してアジアを軽視したりはしませんというのが二段目の話。私が聞いておるのは、まず第一の最初の問題。日本の基地から中東へ送るという問題については、これはどういうように返事をしたのですか。これは安保条約の規定に違反する行為じゃありませんか。どうですか、これは。
  49. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国に駐留している米海兵隊その他が、極東の平和と安全に寄与していることは疑いのないところでございますが、かかる米軍部隊が、わが国から中東地域を含めまして他の地域に移動していくことは、何ら安保条約上の問題ではないということでございます。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 このペルシャ湾防衛のために日本の沖繩や基地を貸しているんじゃないんですよ。そうでしょう。日本及び極東の安全のために貸しておるんでしょう。ですから、これは明らかに、それに対してはどういう返事をされたのですか。それは結構です、じゃあひとつお使いください、ペルシャ湾へ行かれようとどこへ行かれようと結構ですというならば、これはむしろ中東の基地として沖繩がある、そういうことは許されないのです、安保条約では。先ほどお話しになりましたように、ペルシャ湾は極東の範囲じゃない、こうおっしゃるのですから。ですから、その点はきわめて明快に、総理、してもらいたい。
  51. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 条約の適用解釈の問題でございますが、私からお答え申し上げます。  ただいま外務大臣からも御説明したところで尽きていると思うのでございますけれども日本の施設、区域を使用している米軍というものは、確かに、その施設の使用提供目的からいたしまして、極東の平和及び安全に関心があるということは事実でございますけれども、それとは関係なく、この日本の駐留している部隊が単にその他の方面に移動をしていくという場合に、安保条約は何らそれについて禁じているわけでもございませんし、安保条約の違反でもないということでございます。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 冗談じゃないですよ。いまの答弁はちょっと聞き捨てならぬ。アジアや日本の安全に関心があるとは何事ですか。関心がある程度で基地を貸しているんじゃないんですよ。当然、寄与するために基地を貸しているんでしょう。――局長なんか、だめですよ、これは政治判断ですから、総理外務大臣、御答弁願いたい。
  53. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 従来も極東におります米国の艦船がインド洋地域にしばしば移動してまいる、こういう例がございまして、この移動につきましては、日本の基地におりました艦船等が移動するということは、日米安保条約に抵触しないというふうに従来から解釈になっていると承知しておるわけでございます。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、スイング作戦によってペルシャ湾防衛のために出動するという場合には、安保条約の違反になりますね。――いいよ、いいよ、政治判断を聞いているんだよ。
  55. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 条約の解釈の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  ただいま多賀谷先生は、出動というお言葉をお使いになったわけでございますが、私どもは、そのような形というものは現実にはあり得ないことではないかと思うのでございます。つまり、仮に、多賀谷先生がいま例に挙げられましたように、日本における海兵隊なら海兵隊というものがその他の方面に移動させられるということであるならば、それは安保条約におきまして何ら禁じられているところでもなく、それは差し支えないことであるというふうに考えているわけでございます。(「戦争をやっていないんだ」と呼ぶ者あり)
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま要請をされている。これは、日本及びその周辺の米軍事力が有事の際に出動する、そういうことについて説明があっているんですよ、その可能性について。いま、起きてからでは遅いのです。そのことを心配をしている。だから、出動をする、そういうことはあり得ない、それじゃ出動したらどうするのですか。それは条約解釈でよろしい。出動したらどうするのですか。
  57. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先生も御承知のように、第六条の実施に関する交換公文というのがございまして、そのときに、日本国の基地を戦闘作戦行動の基地として使用する場合には、事前協議の対象になるということになっているわけでございます。したがいまして、この安保条約におきましては、事前協議の対象となる場合は、戦闘作戦行動を日本国の基地から直接行う場合、発進するというような場合には、これは事前協議の対象となり、安保条約の規定の範囲内に入るわけでございます。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは極東の安全と平和を脅かす状態の場合です、事前協議の対象になるのは。極東とは関係のないときには、事前協議の対象とは、それはいかないですよ。事前協議の対象になる、ペルシャ湾はそういう範囲にすら入らない。極東ではないんだ。日本と極東の平和と安全とは関係がないのです。そういう場合には事前協議の対象にならないんですよ。何でも事前協議の対象になるなら、世界じゅう事前協議の対象になる。そういうようなために今日、軍事基地を貸している条約ではないのです、この条約は。それを明確にしてもらいたい。
  59. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 事前協議の対象になりませんので、移動につきましては、この安保条約の外にあるというふうに従来から解釈していると了解しております。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、私が聞いているのは、ペルシャ湾に出動する場合にはどうですか、こう聞いたら、事前協議の対象になると言うから、私は、事前協議の対象すらならないじゃないか、こう言っている。それはなぜかというと、日本の平和と極東の平和、安全とは関係ない、極東とは関係ないのだから、事前協議の対象になるものではありませんよ、そもそも事前協議の対象すらならないのです、こういうことを聞いておるわけですよ。ですから、その点について、ひとつ明快な御答弁を願いたい。
  61. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 まず、私からお答え申し上げます。  先ほど、ペルシャ湾は極東の範囲ではないではないかということで、極東の範囲ではないということを大臣から明瞭にお答えいただいたわけでございますが、それは確かにそのとおりでございます。ただ、私が先ほど多賀谷先生にもお話しいたしましたとおり、米軍の施設、区域の使用目的は、極東との関連において決められているわけでございますが、その極東における安全が脅かされたというような場合にとる米軍の行動というものは、この極東に限られるものではないということは、これは統一見解にも述べられているとおりでございます。  そこで、米軍の行動というのはいわゆる極東の範囲の外にも及び得るものであるということは、これは何もいま新しい解釈ではございませんで、この二十年来明確にしている解釈でございます。ただ、現実にペルシャ湾におきます事態が極東の平和及び安全を脅かすような事態となり得るかということになりますれば、これは現実の問題としてはあり得ないであろうと思うわけでございます。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よろしいですか。いまあり得ないであろう、要するにいまの公的な解釈としては、総理、いいですか、ペルシャ湾における紛争というのは、極東の平和と安全とは関係ないであろう、こういうように考えていいのですか、どうですか。
  63. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 条約の解釈としてはそうだと思います。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、ブラウン長官がスイングの話をされたときに、沖繩から出動をする、そうして在日米軍を中東に持っていくという話をされたときに、どういう返事をされたのですか。
  65. 原徹

    ○原政府委員 山下長官のときのことでございますので御説明いたしますが、そのスイングの説明がありましたときに、沖繩の部隊をどこへ転用するというような話は一切ございませんでした。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 中島アメリカ局長は、十二月十四日の外務委員会において、「日米安保条約に言うところの「極東」の周辺地域の中にイランというのは入っているのか、入っていないのか、」という質問の答弁で、「いまお尋ねのイランでございますけれども、日米安保条約が直接イランとの関係で概念的に何か関係があるというようなことはないというふうに理解をいたしておるわけでございます。」こういうように明快に答弁をしておるが、この答弁でよろしいでしょうか、外務大臣、もう一度確認しておきたい。
  67. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほどの御質問は、極東の地域に中東が含まれるかという御質問がございましたので、それは含まれませんと申し上げたわけでございますが、もう一つは、極東の周辺地域という問題がございまして、この周辺地域につきましては、その攻撃または脅威の性質のいかんにかかわるものであって、あらかじめ特定しておくことはできないという解釈になっております。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いよいよ混乱をしてしまいましたね。この答弁と違うじゃありませんか。ペルシャ湾は周辺地域ですか、極東の。
  69. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げたところと関連があるわけでございますが、極東の安全、平和が脅かされるというときには、米軍の行動というものはその極東の範囲に限定されるものではないということでございまして、論理的な帰結といたしましては、これは論理的な帰結でございます。極東の周辺というものからの脅威というのが行われた場合、その周辺がどこまでであるかということは、これはどこであろうと、いずれにいたしましても、極東の平和及び安全に脅威であるという事態が生じましたところが極東の周辺という観念になるわけでございます。(発言する者あり)それは論理的な結論の帰結といたしましてそういうことになるわけでございます。  ただ、いまお話しのように、そこにはおのずから限界があるということも、これは過去において答弁しておるわけでございまして、ペルシャ湾の事態が極東の平和及び安全を脅かすようなことになるかということになりますれば、現在の時点におきまして、そういうようなことは考えられない事態であると考えるわけでございます。
  70. 大出俊

    ○大出委員 これは議事進行も兼ねまして関連質問をさせていただきますが、私も長いことこの問題を論議してきた一人ですけれども、いま初めてあんな答弁を聞いた。いまの条約局長答弁は、極東の周辺、そういう解釈がある、それがどこまでかということはわからぬ。極東に脅威を及ぼす紛争が起こった、それがすなわち極東の周辺だ。そんな解釈はいままでこの二十年間、一遍もないんだ。ふざけなさんな。議事録、全部調べてみなさい。こんなことで質問ができるか。さっきの答弁は全部違うじゃないか。統一見解出しなさい。だめだ、こんな答弁、いままで一つもない。二十年こっちはやっているんだ。ふざけちゃいけない。議事録出してごらんなさい、人が笑うよ。頭のはげた高辻さんでも呼んできてごらんなさい。そんなこと言ったことはないんだ、何だいまの答弁は。
  71. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  極東の周辺という言葉は条約にはいささかも使われてないことでございまして、極東と申しますのは、安保条約に定められておりますとおり、第六条との関係におきまして日米両国が共通の関心を持ち、極東の平和及び安全に寄与するために米軍に施設及び区域を提供する、その極東とは何であるかと申しますと、これは地理的にはっきりと限定するわけではないけれども、大体におきましてフィリピン以北及び日本を含む日本の周辺である、そこには韓国及び台湾地域も含むものであるという統一見解が出されているわけでございます。  そこで、その統一見解にも述べてございますように、極東と申しますのは、そのような目的で施設、区域が提供されるわけでございますが、そこの施設及び区域を使用する米軍の行動範囲というものは、極東に対する武力攻撃が行われたとかそういうような場合に、その極東の範囲というものに限定されるものではないということだけを述べているわけでございまして、極東の範囲、周辺というのはどこになるかということについては、ただいま先生もおっしゃいましたように、従来ともその問題についてははっきりとした御答弁がなされていないわけでございます。私もまたはっきりとした御答弁は差し控えさせていただきます。と申しますのは、つまり、脅威の態様及び内容によるわけでございまして、それが極東の周辺がどこまでであるかというようなことには議論が及んでいないということでございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは大変な間違いを、いままでにない答弁をしておる。なぜかというと、ずっと話を聞いてみると、結局極東及び極東周辺に安全と平和が害されたその場合に云々という、そんなことは一回だって答弁した人はないんですよ。あくまでも平和と安全は極東に限る。ただ行動の範囲が周辺の場合がある、それはベトナムのときにはその周辺だ、こう言ったのです。違うでしょう。平和と安全が阻害されるのは周辺じゃないんですよ。あくまでも極東なんだ。ただ行動半径が、その周辺に事があるということを言っておるのですよ、いままでの周辺というのは。じゃあ全部取り消しなさい、その速記録を。そんな速記録が残ったら大変なことですよ。あなたの後の話は極東及び極東の周辺の平和と安全が脅かされる、こう拡大しておる。そうすると、論理的にいけば世界じゅうだということになるでしょう。そんな御答弁局長としては許せない。これは速記録を訂正願いたい。
  73. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま多賀谷先生がおっしゃいましたとおりでございまして、私のいまの御答弁の中で、極東及び極東の周辺が脅かされた場合というようなことは使ったつもりはないのでございますが、もし使っていたといたしましたならば、それは間違いでございます。私が申しましたのは、極東の平和及び安全ということを申し上げたつもりでございます。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはやはり統一見解で、いまの速記録を取り消してもらいたい。それは、極東の安全と平和と言いながら、その周辺も脅かされた場合というのを二段階でつけ加えておる。そうすると、行動半径だけの問題じゃないのですよ、あなたのおっしゃるのは。それは違うんだよ。いままでのだれが答弁を正式にしたのとも違う。これはもう局長答弁は取り消してください。
  75. 田村元

    田村委員長 先ほどの伊達条約局長答弁につきまして、再答弁を求めます。
  76. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。極東の周辺と申しますのは、常に極東の平和及び安全を脅かすということが判断の基準でございまして、極東の周辺そのものの安全及び平和が乱されるというようなことは、安全保障条約の関知するところではないわけでございます。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは一九六〇年の安保条約審議の際から以降ずっと真剣な審議を重ねて、その統一見解が出され、そうして確定をしてきた問題です。でありますから、一局長答弁でそれが瓦解するようなことがあってはならない。日本の安全と平和に重大な問題がありますから、私は速記録をひとつよく調べて、そうしてこの質問は後刻留保したい、かように思います。
  78. 田村元

    田村委員長 ただいまの多賀谷委員の御要望につきましては、後刻理事会において協議いたします。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、スイングという、要するに日本におります在日米軍を移動さすという問題とうらはらな問題、非常に連関のある問題が今度、それはリムパックという環太平洋の合同演習であります。すなわち、これは御存じのように日本とアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、これらが演習をする、それに参加をするという問題、これはまさに憲法が禁止をしておる集団安全保障の一翼を担うことになる集団自衛権の発動である。憲法は、国際紛争には戦争並びに武力は用いないということを言っている。でありますから、要するにアジアにおける、ことに日本におけるアメリカの艦隊がペルシャ湾に出ていく、その穴埋めに結局アメリカとオーストラリアとニュージーランドとカナダと日本、こういう形で防衛体制をしく、こういうように考えられる、その演習に参加したと思うのだが、一体総理はどういうようにお考えであるか。
  80. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 共同演習参加問題につきましては、前国会におきましても御説明申し上げてございますとおり、過去におきましてハワイにおける米軍の演習にわが自衛隊が参加いたしました延長線上の問題と考えております。すなわち、この共同演習参加を通じまして、戦術技術の訓練、向上を図ることにすぎないわけでございまして、それ以上のものとは考えていないのであります。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし現実に、アメリカとカナダはNATO条約の中に入っておる、アメリカと豪州とニュージーランドはANZUS条約の中に入っている、そうして日本とアメリカは安保条約のもとにある、日本は個別自衛権はあるが集団自衛権は持たない、そうしてそう言いながら事実はそれに参加しておる、こう組み合わさっておるじゃありませんか。これは、やはり在日米軍がペルシャ湾に行く、そのいわばあいたところを日本とカナダとニュージーランドとオーストラリア、アメリカでお互いに持とうではないか、これは軌を一にしたものだと思うのですが、どうですか。まさに一歩集団自衛権の中に入り込んだと考えられるがどうか。
  82. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 リムパックへの参加は、海上自衛隊の戦術技量の向上を図るためのものでありまして、安保条約の拡大解釈といったようなものではございません。また、集団自衛権の行使を前提とした、特定の国を防衛するというものでもございません。これに対しましては、担当政府委員から答弁をいたさせます。
  83. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 ただいまのリムパック参加につきまして、事務当局から一言補足説明させていただきます。  リムパックは、御承知のようにアメリカ第三艦隊が主催をいたしまして、ハワイ周辺海域においておおむね二年に一度程度の規模において行っております艦隊レベルにおける総合訓練でございます。  この訓練に参加を決定するに当たりましては、防衛庁といたしましては、ただいま先生御指摘のような集団的自衛権の行使につながるものではないか、あるいはわが国の憲法または基本的な防衛政策の枠を越えるものではないかどうか、慎重に検討をいたしました。  アメリカ海軍と日本海上自衛隊は、昭和三十年以来すでに八十四回共同訓練を実施しており、またハワイ派遣訓練は、護衛艦二隻、対潜哨戒機八機を昭和五十一年以来続けて実施をしておりますけれども、今回リムパックにつきましては、わが方といたしまして、よりレベルの高い訓練に参加する機会を得たいという申し入れをいたしましたところ、アメリカ側から、二年に一遍程度艦隊レベルの訓練を外国艦艇の参加を認めてやっておるので、これに参加をしてはどうか、日本だけのために艦隊レベルの訓練をやる余裕はないので、それはどうかという意向打診がございました。慎重に審議をいたし、アメリカ側に対し、このリムパックの性格、目的を十分検討いたしました。その結果、アメリカ側は、日本の特殊な立場、すなわち憲法において集団的自衛権を認められておらず、個別的自衛権の行使のみを行うことを前提として、この訓練に参加をしたいという意向を十分に理解をし、また、核攻撃訓練等わが国の政策の許容しないところの訓練ではない旨の明確な回答があり、さらにこの訓練に当たりましては、再々国会において御答弁申し上げておりますとおり、従来行っておる日米共同訓練の延長といたしましてアメリカ海軍との訓練、すなわちアメリカ海軍の最新高度の戦術技量を学び取ることを念頭に置いた訓練としてこれに参加することについて、アメリカ側の確答を得たわけでございます。  ただいま御指摘のように集団的自衛権の行使につながるかどうかということは、日米安保条約の問題で申しますると、アメリカに対し攻撃が加えられたとき、日本国としてわが国に攻撃が加えられたものと同様に考えて、この攻撃をしてきた国に対しアメリカと共同して武力を行使するということが集団的自衛権であろうかと存じます。しかしながら、今回の訓練の目的は、防衛庁設置法五条、これが防衛庁に与えられておる権限を規定した規定でございますけれども、これの二十一号「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」という規定の範囲内であるかどうか、これを検討いたしました。この「所掌事務の遂行」という所掌事務は、条理上、自衛隊法三条にいうところの任務、すなわち、わが国の独立と平和を守り、国の安全を保つため、直接間接の侵略に対しわが国を防衛すること、この任務の遂行に必要な教育訓練の範囲内であれば、防衛庁長官に与えられた権限において実施できると判断をいたしました。また、日米安保条約のような条約のない国との訓練の可能性につきましても十分法的側面の検討をいたしましたが、この点についても疑義はない、しかしながら今回の訓練はアメリカとの共同訓練の延長として実施をする、こういうことでこの参加を決定したものでございます。  この防衛問題につきましては、前回の国会でも御答弁申し上げましたけれども日本自衛隊は限られた防衛力によりまして自衛隊法三条に定められた重大な任務を果たす責務を担っております。そのためには精強でなければいけない。精強であるためには十分な訓練を行わなければいけない。憲法あるいは政策の許容する範囲内で認められる訓練はできる限りやらせていただきたい、かように考えております。集団的自衛権の行使につながるものではない、すなわち、カナダだとかあるいはオーストラリアを助けに行くための訓練ではなく、日本を守るための戦術技量を向上させるための訓練でございますので、何とぞその点につき御理解を賜りたいと存じます。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がないのに長い演説をされても困る。  大賀海幕長がリムパック参加は大変な意義があると言い、前の海幕長は、リムパック参加の政治的決断は最近のヒットだと。要するにこれは政治的な処置なんです。単なる訓練じゃないんです。それが証拠には、やはりブラウン国防長官のいわば議会における国防白書の中で次のように言っておるでしょう。ソ連に対抗するためにアメリカと西欧、日本三者による軍事力増強面での共同計画努力を強調しております。これはまさに共同計画努力の一つでしょう。でありますから、この話は全部軌を一にしているのです。ですから、結局それは単なる個別自衛権の発動ではなくて、やはり集団自衛権への一歩を踏み出そうとしている、否踏み出した、こういうように考えられても私はいたし方ないと思うのです。どうですか。これは一歩踏み出したものだ、こういうおそれが必ずある、かように思いますが、どうですか。(「政治的決断じゃないか、大臣答えなさい」と呼ぶ者あり)
  85. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま前段の御質問のブラウン長官の共同防衛計画の点についてだけ私の方から御説明いたします。(「大臣に答弁しろと言うのだ、大臣、大臣」と呼ぶ者あり)最初に共同防衛計画の御質問があったと思いますので、私から……。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政治的な判断を願っているのに事務は関係ないじゃないか。(「指名してないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  87. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 いや、御指名あったと思います。
  88. 田村元

    田村委員長 答弁しなさい。
  89. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 では御許可を得まして答弁させていただきます。  ただいまの最初の御質問の、ブラウン長官の議会における証言の共同防衛計画でございますけれども、これはブラウン長官が、各国が防衛あるいは国防力の増強に当たってはアメリカあるいは西欧諸国の行っている防衛努力を念頭に置いて行ってほしいというアメリカの願望を表明したものでございまして、別にその前提として共同対処というものは考えていないということはアメリカ側に確認しております。
  90. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 ただいまの質問に対しましては、集団自衛権の問題とは関係がございません。その点につきましては政府委員から答弁をいたさせます。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、もういい。大臣、こういう大きな問題は明確に大臣が把握しなければだめですよ。これは政治判断を要する問題であり、政治判断としては最近のヒットだと言っておるんですからね。それを事務当局に後から答えさせますということでは、われわれは承服できない。しかし、これもかなり大きな問題だと私は思うのです。
  92. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 リムパックは戦術技量の向上に非常に役立つものでございまして、集団自衛権のいまの問題とは関係はございません。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長官、私はその理由を聞いておるんです。理由を長官から答弁してください。政治的判断と言うんだから、政治的にはどういうようなあれがあって、どうだと……。
  94. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 リムパックの参加につきましては戦術技量の非常に有意義な向上でございまして、この点につきましては政府委員から特に答弁をいたさせます。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 アメリカとハワイでいままでやっておったんですから。その他の国はアメリカ艦隊ほど、性能もそれほどすぐれたものはないのです。ですから、主力艦隊はアメリカ艦隊だから、それにニュージーランドやオーストラリアやカナダまで一緒にやる必要はないのじゃないか、それは何か含みがあるんでしょう、こう聞いているんですが、答弁はただ結論だけ、理由はわからない。  そこで私は、あえてもうこれ以上質問しません。これは保留をして同僚議員に任せますが、一つ、防衛問題としては、防衛庁長官がここへ来て答弁をされておるけれども総理、今度の秘密漏洩の問題、これは外部から人が来て盗んだという話じゃないんです。自衛隊の中で起こった問題でしょう。あるいは自衛隊のOBが、しかもそれは将官、これが指導してやった事件ですね。でありますから内部においては当然責任者が出ておる。陸幕長もやめておる。しかし、これはやはり政治責任の問題ですよ。でありますから私はこの問題をゆるがせにできない。  まず第一に、本人の久保田長官はこの責任をどうお考えになるんですか、これをお聞かせ願いたい。
  96. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 今回の秘密漏洩事件につきましては、国民に大変迷惑をかけて申しわけがございません。長官といたしましては、これらの点がどこから出ておるかということを痛切に感じました。いま社会におきましても、とかく物があればいい、金があればいい、こういうふうな世評でございます。かような点から推しましたときに、私は、やはり自衛隊内におきましてもそういうふうな思潮というものが流れておるのではないかという考え方であります。かような点から推しましてその根っこしというものは教育の面に非常にあるな、私はかような点から推しまして、どうしてもこれを掘り下げるべく、全力を挙げて自衛隊が国民の信頼にこたえるように回復をしなければならない。再びこの問題が出るようなことであったならば、長官といたしましても国民に対しまして申しわけない。かような点から推しましたときには、この職にとどまりまして、いまの自衛隊の振粛を図るために全力を挙げて国民の信頼にこたえたいと思う次第でございます。
  97. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど多賀谷書記長お尋ねのリムパック参加でございますが、政治的な側面があるではないかという御指摘でございますが、先ほど防衛庁からも御説明申し上げましたとおり、この参加は個別自衛権の範囲を逸脱するものではございません。アメリカばかりではございませんで、それに参加する国々が襲われた場合に、わが国がその集団的な防衛に参加するというようなことは毛頭考えられない性質のものでありますことは御理解をいただけるものと思うのでありまして、これが日米の軍事的な同盟につながるものであるというような理解の仕方も全然根拠がないものと考えておりますることは、先ほど防衛庁長官からも御説明申し上げたとおりでございまして、政治的な判断といたしましては、従来のハワイにおける米国の海軍の演習に参加したものと性質は全然変わらないものという判断に立ちまして、参加を決定いたしましたことを御運解いただきたいと思います。  第二に、宮永事件についての責任問題でございます。  この問題は、御指摘を待つまでもなく、自衛隊ばかりでなく、政府全体にとりまして重大な深刻な事件でございまして、これについて行政上の責任、政治上の責任をどう考えるかということは、確かに大きな問題だと心得ております。ただ、当面われわれといたしましては、いま捜査当局の手によって全貌の解明が進められておりますので、この解明を待ちましていろいろな対応策を考えなければならぬと考えておりまして、行政上の責任につきましては、一部実行させていただいたわけでございます。政治上の責任につきましては、当面、この事態の解明とそして執務体制の総点検を通じまして、執務体制を確立することを通じて責任を果たしていただくことが重要だと考えまして、防衛庁長官を督励いたしまして、そういう作業を急いでおる段階でございます。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は久保田長官の答弁には全く反対ですね。物と金の風潮がいけない、私は教育をします、何ですか、これは。そうすると、いままでやめた人は何ですか。陸幕長はどうしてやめたのですか。そんな気の長い話はありませんよ。国の機密をわざわざ出したわけでしょう。それは政治的な責任をとる人がいなきゃならぬでしょう。いまから子供の教育をするような話じゃだめですよ。現実に問題が起こった。それならば責任者が出なければならぬ。政治的な責任者が出なければならぬ。政治的な責任者はあなたでしょう。私は、当然その問題は、いやいまから教育をしますなんというのなら、それはとてもあなたを一生涯防衛庁長官にするわけにいかないのですよ。そんなばかな話がありますか。私ははっきり責任をとってもらいたい。あなたどうするのですか。
  99. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 こういう重大な事件を起こしたわけでございますから、責任の所在を明らかにいたしていくことは一番大事なことだと心得ております。したがいまして、行政府におきましての責任の一部は明らかにいたしたわけでございます。政治責任の問題が残るわけでございます。私と久保田さんの責任が残るわけでございます。これにつきましてどのように考えてまいりますかは、当面、第一にこの事件の解明を急ぐということ、そしてその解明の上に立ちまして、もろもろの措置すべきことはやらなければなりませんが、同時に、部内の執務体制全体の総点検をやるということに全力を挙げていくことが一つの政治の責任だと心得ております。  全貌の解明を待ちまして、政治責任を問わなければならないものかどうかという判断をその段階でいたさなければならぬものと存じておりまして、当面は、いま申しました二つの目的に全力を傾注するのが政治責任のあり方であろうと考えております。
  100. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは全く逆じゃないですか。事件の解明をする、そうしてそのときには政治責任で長官の進退を伺う、そんな問題じゃないでしょう。間髪を入れず政治責任をはっきり明らかにすることが必要なんですよ。何もあなたは、その中をいろいろ詳細に調べる必要はない。この事件の起きたということがもうすでに政治責任を感じなければならぬのですよ。かつて幾多の大臣が責任とられたことがありますよ。事件が起こったその晩、辞表を出した事件だってあるでしょう。国家公安委員長が事件が起こったその晩にもう辞表を出した、そういう事件は、いままで処置をしてきたのですよ。今度の場合だけなぜやらないのですか。私はこれは非常に不思議だと思うのです。そうして事件の解明を待って責任をとるような、それはむしろその担当の系列にある人、直接それに携わっておる人の話です。むしろ事件の解明を待つならば、陸幕長の方が事件の解明を待って処置をすべきです。大臣の責任というのはそういう責任じゃないのですよ。事件が起きたこと自体が大臣の責任だ。それは私は全く逆だと思う。そんなことをして綱紀の粛正なんと言ったって、だれがそんなこと聞きますか。最大な責任をとらないで、何で綱紀の粛正ができますか。どうですか。
  101. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 書記長は、責任というのはやめることというように断定されておりますけれども、政治責任のとり方、政治責任は厳然としてあるわけでございます。それをどのように果たしてまいるかということがわれわれの問題でございまして、先ほど申しましたように、当面、この事態の収拾に当たるということが一つの責任のあり方だと考えておりますが、事態の全貌の解明を待ちまして、この事件がどういう事件であったかということを解明、その解明を待ちまして、重要な政治責任の問題は判断させていただきたいと存じております。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、全くいままでの内閣の処置と違った処置をとられておると思いますよ。本来ならば、担当の陸幕長ならば、事件の解明を待って責任をとるということをあらかじめ言う場合もあるでしょう。そうでなくて、いま問われておるのは政治責任が問われておる。そうすると、政治責任は知らない顔をして、むしろその行政の責任だけをとってきておるのです。むしろそういう人こそまだ解明には必要なんですよ、事件の解明には。これは逆じゃないですか、今度の政治責任のとり方は。あなたは反省がないのですか。あなたはどういう教育をして――そうしてあなたが物と金の風潮をなくする、そんな大それたことをできるわけがないでしょう。ですからこの際、政治責任をとることが教育なんです。とることがみんなえりを正すことなんですよ。そのことをお考えになりますか。それが教育ですよ。
  103. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 私は今回部下の処分をいたしたわけでございますが、この点につきましては、私自身も考えたこともございます。一緒に進退をともにするということがよいのか、またいま一つは、自衛隊の将来のために再びこういう問題を起こしてはならぬというこの岐路に立ったわけでございます。かような点から推しましたときに、やはりこのスパイ事件というものは根っこしが非常に深い、私はそう判断をいたしました。  したがいまして、これらの問題を解明するために、現在におきましてはすでに秘密保全の委員会もつくり、各自衛隊につきましてそれぞれの訓示もいたしました。やるべきものは現在とっておるわけでございます。  したがいまして、二度と再びこういう事件が発生してはならぬという、みずからがその責任を感じまして、この建設に当たっておるわけでございます。したがいまして、その職にとどまりまして、国民期待に沿いたいということが私の真意でございまするので、御理解願いたいと思うわけでございます。
  104. 大出俊

    ○大出委員 どうも、いまの御発言二回聞きましたが、まさに御反省の色なしと言わなければならぬという気がするのですよ、物と金の風潮だ、やれ教育が悪い、世の中が悪いなんて言い出すと。そうでしょう。あなた自身の問題でしょう。したがって、私の方としてはこれは見過ごせませんですよ。責任をおとりいただきたいのです。大臣にもう一つそこを答えていただいて、総理に――理事会なら理事会で相談させてくださいよ。こんなことをぬけぬけと演説ぶたれて、そうでございますとか言えませんよ。お答えください。あなた以上に反省がないじゃないですか。
  105. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほどお答えしたように、政治責任は厳然としてある、これを果たす方法として、私が先ほど申し上げたような考えでおりますということを申し上げたわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  106. 大出俊

    ○大出委員 さっきのような防衛庁長官答弁を聞いていて、この後防衛問題を議論しなければならぬこの予算委員会で審議はできないですよ。できませんよ。これはだめです。教育が悪いとか世の中が悪いとか言われて、自分はどうなんです、選挙区で演説をぶっているのじゃないのだから。こんなものじゃ審議ができない。
  107. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 宮永事件は、自衛隊にとってばかりでなく、政府にとりましてもきわめて重大な、不面目な事件でございます。これに対する責任問題は避けて通ることのできないことは、御指摘のとおりだと考えております。  行政上の責任につきましては一部実行さしていただきましたけれども、残された政治責任につきましては、この事件の解明を踏まえた上で、十分検討さしていただきたいと思います。
  108. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま総理から、その責任については避けて通れない問題である、一部の責任の処分は出したけれども、ということでありました。  今後われわれがこの防衛庁長官のところで審議を行うかどうか、これは何もわが党だけの問題じゃありません、各党とも相談をしなければならない問題だと思います。そこで私どもは、この問題は今後に残しまして質問を続けていきたい、かように思います。十分他党と相談をしてやりたい、こういうように考えます。  そこで国内政治に移るわけですが、最後に一言。  いま世界の政治情勢の中で、とかく軍拡の風潮が高まるのではないかということを私どもは率直に憂慮をしておるわけです。そういう中で、日本は平和憲法を持っておる国でありますし、そうして国の位置からいって、軍事的にも、また資源的にもきわめて小国であります。それで資源問題一つとりましても、世界紛争が日本経済に与える影響、国民経済に与える影響は甚大なものでありますから、やはり軍縮への努力というものは、この際こそ政府として忘れるべきではない、こういうように私は考えるわけです。  飛鳥田委員長が先般質問をされましたけれども、中南米がやっております非核地帯条約というようなものがすでに二十二カ国で実施をされ、二十四カ国で批准を見ておるわけです。そういう太平洋アジア地域の非核地域設定、これは国会の決議にもなっておりますし、園田外務大臣も国連で演説をしておるわけですから、ひとつぜひ御努力を願いたい。わが党もオーストラリア労働党、ニュージーランド労働党とも共同声明を出したわけですから、ひとつ御努力を願いたい。これは朝鮮民主主義人民共和国の方でも歓迎をしているという意思が伝達をされました。  そこでもう一点は、委員長が質問をされました大学における平和講座を設けたらどうか。これは、ノルウェーにおけるオスロ大学には紛争平和研究講座というのがある。それから、西ドイツにおいてもフランクフルト大学で平和紛争研究講座というのがある。同じく研究所もつくっております。スウェーデンにおけるウプサラ大学、ルント大学における平和講座並びにストックホルムの国際平和研究所は御存じのとおりであります。アメリカのコロンビア大学においても、世界秩序研究という講座がある。それから、イギリスにおいては学部まである。ブラッドフォード大学では平和研究学部という学部まである。こういう状態ですから、私は、やはりそういう機運を、平和に対する講座を設けて国民に助長する必要があろう、こういうように考えるのですが、ひとつ総理の御所見を承りたいと思います。
  109. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 第一は、軍縮についてのお尋ねでございます。  わが国は非核三原則を持っておる国でございます。この非核三原則は国連その他の場を通じまして宣明いたし、その趣旨の徹底に努力をいたしておるわけでございまして、この努力は今後とも精力的に幅広く続けていかなければならぬと考えております。  それから非核地域の設置その他、非核運動と申しますか、非核地域の設定等につきましては、米、中、ソ、そういう核保有国の理解と協力を得なければならぬわけでございますが、こういう国国も国連の場では席を同じゅういたしておりまするし、ことしの二月のジュネーブの軍縮委員会におきましては中国の参加も予定されておりますので、そういう国々が軍縮を語り合うフォーラムは幸いにできておるわけでございます。われわれといたしましても、積極的にそういう会議に参加いたしまして、非核運動の展開に努力をしてまいりたいと考えております。  第二の平和問題の講座でございますが、平和問題というのは、いろいろな学問の分野でこの問題は論議されておることと思うのでございまして、特別の講座を設けるかどうかということでございますが、これは大学の方の考えもあるでございましょうし、各大学の意向も徴しながら、文部当局において適切に対処させていきたいと思います。
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ平和への努力、被爆国でありますし、また平和憲法を持っている国でありますから、しかもかつては、五百万トンの石油があれば一年間戦争をしてみせると日本海軍は言ったわけですけれども、しかし今日は二億七千万トンの石油が入ってきておる。ですから、それだけの石油が入ってきておるわけですから、石油でもなかなか困難になれば、幾ら武器をつくっても意味をなさない。動かない兵器ということにもなる。でありますから、われわれは平和に徹底をしなければ日本国民の生活は守れない、こういうことを十分お互いに考えながらひとつ対処をしていただきたい、平和への努力をしていただきたいと思います。  そこで、国内問題について入りたいと思います。  今日、日本は、御存じのように、貿易においても生産力においても世界で一〇ないし一二%を占めておるわけですから、国際的な経済の動きを無視して日本経済を語ることはできないのですけれども、残念ながら時間が十分ございませんので、私は日本経済を中心に、それらの国際経済に触れながら展開をしていきたいと思います。  まず、石油の事情がどうなるかによって日本経済は非常に動くわけですけれども、あるいは国際通貨がどうなるかによって動くわけですけれども、しかし国際経済が不透明であり不確実であっても、総理は、国民の生活は安定さす義務があるわけです。でありますから、それについて当然総理は、国民の生活を安定して公平に平和を創造するという義務があるわけですから、そういう観点から私はお聞かせ願いたいと思います。  そこで、八〇年代と言いたいところですけれども、時間の関係で八〇年度のまず経済の見通しをお聞きいたしたいと思います。  政府は、予算をつくります際に経済の見通しをつくっております。その経済の見通しを見ますると、御存じのように、昨年、一昨年は主として内需を中心として伸びてきたわけでありますが、しかし明年度、五十五年度を見ますると、御存じのように、やや設備投資は伸びておりますけれども、あるいは石油の影響等で果たして内需が伸びるかどうか。財政の問題からしてそれ以上望むことができないというので、公共投資は横滑りになっておる。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕  そこで、結局、何で日本経済は四・八%の成長を保つか、こういうことになるわけですが、私は、消費を見ましても、果たして消費が伸びるだろうかという点については疑問を持つわけです。なぜ消費が伸びるかということに疑問を持つかと言いますと、今度の公共料金の値上げです。私どもの試算によりますと、公共料金を考えますと、まず政府が今度の国会を通じて出されております公共料金、すなわち、たばこ、あるいは郵便も出るかもしれませんし、それから今度は国鉄も出る。さらにまた保険料の値上げというのがあるわけですね。そういうものを一体どの程度に考えられておるのか。それに電力、それからガスの値上げがあります。これをどういうように見るのか。実質家計におきましては、もうすでに二年、来年度を入れますと三年連続所得税の減税がない。ですから、その分がどのぐらいになるのか。そういうことを考えると、果たして消費が伸びるだろうかと思うのですが、その点については企画庁はどういう判断であるか、お聞かせ願いたい。
  111. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  五十五年度、一九八〇年度の経済について、ただいま多賀谷委員御指摘のようないろいろ困難な情勢があることは、私も全く同感でございます。しかし、私どもはその困難を克服いたしまして、先ほど総理の責任だと仰せられたように、国民の生活を安定させ、経済を着実に向上させて雇用を確保していかなければならぬこともまた事実でございます。  そこで、仰せのとおり、来年度の経済を私どもの立てました目標のように成長させ、安定させていくためには、私は二つの大きな問題があると思っております。一つ物価、もう一つは国際収支でありますが、この二つを突破していくために、われわれは、与えられた原油の供給量という枠の中で、これを最も効率的に使うということに主眼を置いております。五%の節約を七%に上げましてすでに実行しておるのもそのためでございます。  いまお話しのような公共料金でございますが、政府の予算の中に組み込みました料金の値上げについては、極力これを抑えたわけであります。しかし、一方では財政再建、財政からのインフレを防止するということもまたきわめて重要でございまするので、最小限度のものはやむを得ないということで予算に組み込んだわけでございます。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕  それのCPIへの影響は、これは直接でございますが、私どもは〇・八%ぐらいと考えております。また、いま多賀谷委員がそれの家計への影響を具体的な数字でというお示しでございますが、これは非常にむずかしいわけでございますけれども、いろいろの前提を置きまして試算をいたしますと、予算関連で約一万八千円ぐらいのものが起こるのではないか。  それから、いま直面しておりまする電力、ガスの値上げ、これは御案内のように北海道、沖繩を除きましてはまだ申請が出たばかりでございまして、通産当局がわれわれと一緒になりましていま厳正な査定をいたしておる最中でございまするので、その影響についてはこの際は申し上げることを差し控えたいと思いますが、われわれの気持ちといたしましては、原価主義に立脚をいたしながらも、家計、物価経済の安定的成長、こういうところに対する影響を極力少なくしたい、こういう意図のもとにやっております。  なお、国民所得構成の中で一番大きないわゆる個人の消費、これが伸びるかどうかは、私はやはり一にかかって物価の安定、これが先行きインフレ的になるということでは消費は非常に伸びないわけでございますから、物価が安定するということがあらゆる条件の一番大事な条件であると考えております。
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一万八千円というのは何ですか、月ですか、年ですか。
  113. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは予算関連の年度間の負担増でございます。
  114. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから、われわれの試算を申し上げたいと思います。  それは年間で申し上げますと、われわれは、健保改正、国鉄運賃、たばこ、消費者米価、それから麦価、郵便料金、厚生年金保険料、船員保険料、国民年金保険料、国立大学受験料等を合わせまして、大体試算をいたしますと、これが年で六万二千百三円、それから、電力を五七%申請したのをそのままにいたしますと、月で二千三百五十三円、ガスが二千円、それを一年に直しますと五万二千二百三十六円、これで十一万四千三百三十九円、それに、三百万円の人が八%で三百二十四万円になりますと大体二万八千三百十円、合わせて年間十四万二千六百四十九円。そこで三千三百四万世帯、世帯に直しますとこれが四兆七千百三十一億円。そこで政府は、雇用者所得は百十八兆、こういうように見ておるのですが、そういう中で雇用者所得の伸び、それは大体八・七と見ている。しかし雇用者所得のうちで新規増がありますから、七・三と見ておる。そういう線で大体考えますと、消費者のあなた方の伸びを見ると九・七の伸びをしておるけれども、伸びだけで十一兆八千五百億、そうすると、そのうち四兆七千億はもうそれで持っていかれる。そうしてあとはいわゆる物価高です。これは直接の電力とかガスじゃなくて、関連をする物価高。一体四兆七千億も伸びから持っていって、そうして果たしてあなた方が考えておるように十一兆八千五百億の伸びがあるだろうか。これは名目で九・七ですが、これはそれほど期待できないのじゃないかと私は思うわけです。  そこで家計に及ぼす影響と、その消費者の伸びが果たして期待できるのかどうか、これをお答え願いたい。
  115. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  雇用者所得の伸びにつきましては、私どもはこれは非常に春闘その他にも影響が大きいわけでございますから、いま多賀谷委員のお挙げになりました総体としての挙げ方、これについては一つの総合的に考えて案を出しておるわけでございますけれども、これが個々にどのくらいかということについてはいろいろ慎重に考えておるわけでございます。  なお、いま仰せのように、電力、ガスが申請どおりに上げられた場合ということで試算をなすったようでございますが、われわれは、先ほど申し上げたように、これを極力物価、家計、企業に及ぼす影響その他を考えていま圧縮を図っておるときでございますから、この点についてもどの程度のわれわれの見込みに対する影響ということは申し上げかねるわけでございます。  いずれにいたしましても、国民総生産の中で、GNPの中で個人消費の占める割合は非常に大でございますから、これが萎縮しないように、経済の安定成長、物価の安定というところに主眼を置いてやっていかなければならぬことは御指摘のとおりでございます。  なお、先ほど申し上げたような国際収支その他についても十分配慮いたしながら、私どもの目標達成に全力を尽くしたいと考えております。
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、数字を挙げて私が質問しているのですけれども、企画庁は専門家ですが、数字をおっしゃらないので質問がかみ合わないのですが、では具体的に少し聞いてみましょうか。  雇用者所得は先ほどお話がありました八・七、しかし一人当たりは七・三と言いながら、税金の方は九%と見ているのはどういうわけですか、大蔵省。税金の方は九%、給与所得をよけいに見ておる。これは大蔵大臣、どうなんです。経済企画庁の方は全部を含めて雇用者所得を出しておるけれども、税金だけはよけい取りましょうというのはどうもおかしいんだが、これはどうして違うのですか。
  117. 高橋元

    ○高橋政府委員 五十五年度の給与に係る源泉所得税の収入見込みでございますが、これは経済企画庁の見通しの中に織り込まれました雇用者所得の伸び八・七%を使っております。お手元にお出ししております「五十五年度租税及び印紙収入予算の説明」の中に九%と書いてございますのは、八・七%をラウンドアップして九%と言っているわけでございます。
  118. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 八・七%を九%増と書くわけですか。これはちょっと。しかし、税金を取る側にしてはこれは大ざっぱな話ですね。これは足らなかったんじゃないですか。自然増収が足らないから無理にやったんじゃないですか。どうも私はそこの意図まで言いませんが、法人税を上げる予定が上げられないから自然増収をふやそうというので八・七を九という計算、これはずいぶん違いますよ、〇・三でも。あえて言いませんが、どうもそういうからくりがある。  大体今度の予算書というのは、総理、予算の編成過程というのは国民からは許されないですよ、あのやり方は。大蔵省原案、大蔵省を全部悪人にしているんですな。老人医療も切りましょう、児童手当も切りましょう、そうして今度は教科書の無料というのは制限をしましょう。そうして今度は、自民党はいい顔をして、ではもとへ返しましょう。  しかも今度は、調整財源というのがいままでになく多いですね。五十三年、五十四年に比べて五十五年は、財政が逼迫しておる、逼迫しておると言いながら、実は五十三年は調整財源、すなわち公共事業の調整財源も含めてその他の経費事項、官房長が持っておるのを含めても二千八百三十億、五十四年が二千五百十九億、五十五年が三千二百十二億、こういうようにやっておる。そうして、今度の予算編成過程における国民が受けたその打撃というものは非常な深刻なものがありますよ。  私は、お年寄りの医療を無料、これは当然なるものだと思ったら、今度は半数。三百三万円以上の者は有料にするというならば半数です。半数のお年寄りが有料になるのでしょう。そういうことをすると、いままでは社会保障が前進をしてきた、自分が老後になったらこうなるんだという生涯設計がこれで崩れた。これは一体どういう反省をされるのですか。それは自民党はいい顔をしたように見えるけれども、大衆はそう思っていない。自分は七十になれば医療は無料になるんだと思っておる。おばあちゃん、七十になったら無料になりますよ、息子はこう言っているのです。そうすると、今度は金を取るんだというのでしょう。  それから教科書だってそうですよ。教科書をその所得によって制限するというのは、これは大変教育にとって悪い。ぼくは産炭地という生活保護の家庭の多いところにおりますが、子供は言うのですよ。自分はお父さんに養ってもらったんじゃない、国家で養ってもらったんだ、こう言う。こういう印象を与えたらその子供はどうなりますか。私は、これは大変な大失政をした。もとへ返したらいいという問題じゃない。その与える打撃というものは、これは政治の姿勢が問われるのです。  一体、大蔵省原案なるものはどういうものなのか。そうしてみんな復活要求をして、そうして最後には自民党三役、そうして政府とで話し合って決める。(「自民党のサル芝居だ」と呼ぶ者あり)この予算の編成過程というものが、今度国民に与えた影響は甚大なものがあると思うんですよ。これについて総理はどういうようにお考えであるか、まずお聞きかせ願いたい。
  119. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 予算というものは一国の一年間の事業もくろみでございまして、仰せのように国民生活に甚大な影響を及ぼすものでございまして、全国民的ベースで多くの方の御意見も聞きながらこれを編成していかなければならぬわけでございます。  そこで編成技術でございますが、自由民主党は与党といたしまして政府を持っておるわけでございます。自由民主党と政府で、予算の編成権は政府にありますけれども、まず手順といたしまして、自民党と相談をいたしまして政府案を決めていくということになるわけでございますが、世間が寛容でございましてもし最後の成案を得るまでその過程について御関心を持っていただかなければ、それは最終案でこれが政府案でございますというて受け取っていただけるんだろうと思いますけれども、まず概算要求の段階から、国民全体の事業計画でございまするから、これがどのような手順で最終案ができるかの過程が一々マスコミを通じて報道されるということでございます。われわれは何もサル芝居をやっているわけでもございませんが、こういう過程を経ておることは、私は民主的な手続として御容認いただけるのではないかと思うのでございます。  それから第二に、この過程を通じましてどういうメリットがあるかと申しますと、ここでいろいろの問題点が提示されまして、財政当局としては、こういう問題についてはひとつ十分ことしは考え直していただけまいかという形で与党の再考を求めるということ、これに対して与党は、そうはいかないというやりとりは当然毎年あることでございまして、この過程を通じまして、国民がいまどういうことが問題になっておるか、それに対する受けとめ方ということについて論議を喚起していく契機にこれはなっておるのではないかと思うのでございます。過程はなかなか混雑をいたしておりまするけれども、私はこういう過程は、どの政党が政権をとりましても手順としていろいろな過程を経るわけでございますから、過程を一々取り上げておりますと、この案はこの段階でこうなって最終的にこうなったのはけしからぬじゃないかと言っても、それは本来予算の編成というものはそういうものでなかろうかと思うのでございまして、そういう過程を経て問題点が明らかになって、それがどういうように始末をされたかというプロセスがはっきりすることは民主主義の前進として受け取っていただきたいと思いますことと、それからそういう過程を通じて、いま問題になっておる財政再建が進められたかどうかという点につきまして吟味をしていただく契機にこれはなるのでないかという意味で、私はむだではない、やむを得ないプロセスであるというように考えております。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はその審議をする、あるいは編成の原案を出すということを言っているんじゃないのです。この国民に与えた影響は、このたびの編成過程においていろいろな福祉の切り捨てとか教育の問題とかというのは非常に深刻な影響を与えたということを言っているんです。でありますから、一体大蔵大臣はそれについてどう反省をしておるのか、こういうことをお聞かせ願いたいんですが、時間もありませんからもう総理だけで結構ですが、私は非常に残念だ、こういうように思います。  そこで、まずこの覚書というものですね。児童手当制度、老人保健医療制度、それから所得の制限、これは一体国会を拘束するんじゃありませんか。われわれこれは条件つきでこの予算を審議してもいいのですか。予算なんか条件ないでしょう。予算の附帯決議ないでしょう。法案とは違いますよ。まさにこれは予算の附帯決議、こういうものに類するでしょう、国会の受けとめ方は。それでよろしいですか。これはどうなんですか。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 予算編成の最終段階におきまして、官房長官、厚生大臣、私と党三役とが覚書を交換したということは事実でございます。これはいろいろ議論をいたしまして、やはり社会福祉全体について、特に所得制限の問題等は避けて通れない問題ではなかろうかという前提の上に立ってお互いが合意した問題を、今後の努力目標としてかたくお互いが認識をさらに確認したという意味のものでありまして、私は国会審議そのものとは関係――国会を拘束するほど私も思い上がっておりませんし、またそういう性格のものでは全くないというふうに考えております。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは予算審議全般にわたる問題ですから、後からさらに追及してもらいたいと思います。同僚議員が追及するでしょう。許されない、いままでそういうことはあり得なかった。しかもこれは与党の中の話ですな。そういう解決していない問題も含めて、いま法案として健康保険法を出しておるけれども、与党議員が大体反対の法案を出してくれておるのです。もう二年間たなざらしになって、審議をしろ審議をしろと言ったら、審議をしたら反対の審議を自民党がした、こんな不見識なことはないですよ。  そこで、私は財政に入ります。  毎年問題になります財政収支試算表について質問をしたいのですが、ことしはまた出されましたけれども、非常に問題は、税金を一七・八%ずつ五十五年度から六十年度にかけて徴収をするということになっている。年率が一七・八%ずつアップですね。そうして、そういう中で公債を、赤字公債によりますと、五十八年度約三兆一千九百億円から五十九年度がゼロになっておる。こんなに、一体三兆円の国債の発行がやめられるのかどうか。ことしは自然増収があったといってもたった一兆円でしょう。こんなものを一体国会に対してどうするのですか。しかも公債残高が百三十一兆、そうして六十年になりますと国債の発行があります、それが十二兆。これは御存じのように、国債償還の基金もありますからこれを使っておるわけでしょうが、六十三年くらいになると十八兆くらいの国債の償還費になるのですね。一体政府はどういうつもりなんですか。  私は大蔵大臣にお聞きしたいけれども、こんな国債の収支表を見せられても、一体これに対して政府はどうするんだ、このとおりやるつもりで出しておるのかどうか。やらないならばどういう計画を持っておるのか、これをお示し願いたい。
  123. 竹下登

    ○竹下国務大臣 多賀谷委員の財政収支試算についてのお尋ねでございますが、確かに毎年議論があるところでございますが、まさに財政収支試算は読んで字のごとく財政収支試算でございます。したがいまして、御指摘のような問題が当然のこととして出るわけでございますが、経済審議会企画委員会、これは今年の一月二十五日でございますが、そこで昭和六十年度経済の暫定試算における六十年度の諸指標を手がかりとしてこれを財政に投影するという考え方で、五十九年に特例公債から脱却するとして六十年における財政の姿を試算したものでありまして、したがってそれをことしで見ますと、五十五年度予算、まさにこの中間年次の計数になりますと、等率で機械的に結んでおりますので、そのような御疑問が出てくるのは当然でございます。それはその都度の歳出、歳入予定というものを示す意味にはなっていないというふうに御理解をいただいてよかろうかと思います。  したがって、多賀谷委員のおっしゃるのは、やはり中期財政計画というものをもっとちゃんとしっかりしたものを出してこそ予算審議にも資することになりはしないかという御意見のように拝察いたしておりますが、財政計画そのものにつきましてはいろいろな問題がございますが、政府といたしまして、この財政収支試算は大蔵省そのものでございますけれども、今度は政府の責任で出せるものにしなければならぬということに、西欧でも十年かかってやっとできたと言われますが、私も十年かかるとは申しませんけれども、いついつまでにきちんとしたものができますと言えるほどの自信はありませんが、いま大変な密度でこれが計画の作業に入っておるということだけは申し上げられると思います。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この試算の基礎は新経済社会七カ年計画でしょう。これは間違いありませんか。
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのとおりでございます。
  126. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、閣議決定までした七カ年計画を実行しようとすればこういうような試算になるというのだから、アウトラインとしては、枠組みとしては変わらぬじゃありませんか。どうですか、年々は変わるでしょう、どうなんですか。
  127. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、まさに七カ年計画のフォローアップに際して経済審議会の企画委員会の公表に基づいたものでございますので、この五十九年に赤字公債を脱却するという、そこで設定した六十年の姿というものに変化というものはいまのところないというふうに考えていただいてよかろうかと思います。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや私は、年度はいろいろ違うでしょうけれども、七カ年計画があり七カ年計画のもとに財政の六十年度の姿を描いたらこれだというのならそうおかしいものではない。しかし具体的に見ると、これはそんなことができますかというような情勢になっておるのでしょう。どこがおかしいのですか。七カ年計画がおかしいのなら七カ年計画を見直します、こう言えばいいじゃないですか。これじゃとてもやれませんから見直します、こう言うのか。いや、七カ年計画はなんですからこれをいまつくったのですけれども年次はいろいろあります、こう言うのか。その点をはっきりしてもらいたい。
  129. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  大変むずかしい関係になっております。すなわち、五十四年度、五十五年度は先ほど御質問のありましたようなエネルギーの関係その他から大きな狂いが出てきておるわけでございます。しかし、私どもは、七カ年計画をそれじゃこの際つくりかえるかいうことになりますと、これはどういう事態に落着をするのか、その見通しが立っておりません。いわゆる不透明でございます。流動的な状態でございます。そこで、年度年度のフォローアップというものだけを経済審議会の企画委員会が報告をいたしまして、これは過去の実績から最小限度の見直しをする、こういう考え方でございます。そういうものが近く正式に経済審議会から政府に報告があって、政府としてはそれを取り入れることにならざるを得ない、そういう事態にいまなっておるわけでございます。したがって、財政当局といたしましては、そういう暫定的な、まあわれわれ、暫定試算と言っておりますが、それを基礎にいたしまして、その他の点については一応変わりないものとしてつくりました試算であろうかと私は了解をいたしますので、多賀谷委員が御指摘のように、大変つじつまが合わぬじゃないか、全体の見通しはどうなるんだという御疑問はまことにごもっともでございますけれども、それをいま明らかにつくり変えるようなことはいたしかねますので、大変継ぎはぎのような形で出さざるを得ない事態にあることを御了解いただきたいと思っております。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わからないのは、今度も新経済社会七カ年計画を修正されておるわけですよね、五十五年度から六十年度まで。修正をされておって、これはその修正をしたものもおかしい、こういうのでは、一体何のために修正したのですか。修正しておるでしょう。しかも五十五年度だけ修正したのじゃないですよ。五十五年度から六十年度にかけて修正をしておいて、それに基づいてこれをつくっておる。一体このくらいに税金取れますかと言ったら、いや、それは取れない、それでは赤字国債はどうですかと言ったら、わからぬ、一体どこに原因があるのですか。大体各省はみんなこの七カ年計画に基づいて計画を立てておるのでしょう。道路何カ年計画、港湾何カ年計画、各省全部立てておるでしょう。二百四十兆で立てておるのでしょう。二百四十兆がこういう結果になるのですよ。それならば、各省が立てておる全部の計画がおかしいということになるのです。それならそれをちょっとストップするならストップするようにしなければならぬでしょう。全くつじつまが合いませんよ。しかも、ただこれは単なる計画じゃないのです。各省が全部計画を出しておる、そうして肝心な財政だけははっきりしませんというのじゃどうにもならぬでしょう。総理、どうするのですか、これは。
  131. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず、事実関係を先に御説明いたします。  仰せのとおり、五十四年度、五十五年度に照らしまして、まず経済の成長率、これは五・七%では高過ぎる、そこで五・五というふうに修正をしたことは事実でございます。それから卸売物価の見方、これも当初よりは若干高目に修正をしておることも事実でございます。また、例の一般消費税の関係等は、これは事実をもってすでに修正をせざるを得ない事態になっておりますから、これも修正をしたことは事実でございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、しからば五十六年度から六十年度に至ってどうなるかというその新しい事態、この計画の基礎となるべき事態というものは、いまだわれわれとしてははっきり見通すことができない、これも事実でございます。  そういう関係を踏まえてつくり上げた暫定試算でございます。したがって、この際いろいろ修正すべきではないかという御意見はあろうかと思いますが、それらをどういうふうにして新しい計画に盛り込むかという段階にはまだ至っておりませんので、暫定試算を基礎にしてつくらざるを得なかった、こういうことでございます。
  132. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、暫定試算のお話だけしているのではないのですよ。各省の計画はどうするのですか。二百四十兆の公共事業を各省全部計画しておるでしょう。これは一体どうするのですか。大蔵大臣、どうするのですか。
  133. 田中敬

    田中(敬)政府委員 ただいま企画庁長官、大蔵大臣から御説明申し上げましたとおり、今回提出いたしました財政収支試算は、経済審議会におきまして報告をされました六十年度の経済の姿というものを前提として、それを全く機械的に財政に投影する作業をしたものでございます。と申しますのは、六十年度の経済の姿といたしまして、国民所得あるいは国民総生産、あるいはその当時における国民の租税負担率、あるいは二百四十兆の公共投資目標、あるいは六十年度におきますれば社会保障移転支出というものが国民所得に対して一四・五%になる、この諸元を全部財政の姿に投影いたしてみますと、提出いたしました六十年度の姿が出てくるということでございまして、それに至りますアプローチの手段といたしましては、何らそこの中には作為的なものは入っていない、単なる機械的な計算ということでございますので、いま御質問の各公共投資等の長期計画というようなものは、おのずから二百四十兆の中に含まれておりますので、そのように運営されるとするならばいまのような姿に参る。ただしかし、年次別に見ると、たとえば来年度の国債発行額は本年度より大きくなるというような問題点を含んでおりますので、これは年々の経済、財政事情によって弾力的に運営していくものである。ただ、暫定試算を機械的に六十年の財政に投影してみると提出いたしたような姿になるということを単にお示ししたものにすぎないと存じます。
  134. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 済みません、お待たせしましたが、日銀総裁が見えておられるので、私は二点伺いたいと思います。  最近におけるドルの価値、すなわち金の高騰もその一つでありますが、いろいろ調査をしてみますと、ドルの価値が下がった分だけ石油が上がるという形がかなり続いた。ですから、ドルの価値が下がるということは石油が上がる。それはそうでしょう、ドルで持っておるのですから、産油国の方は。ドルの価値が下がった分だけは、今度は値上げで補てんしますという形になっておる。ですから、これが非常に大きな影響を受けておる。ですから、そういうものはどういうような見込みを持っておられるのかということと、国内におけるインフレ、政府は六・三%と言っておりますが、私どもはこれはとてもそんな状態ではないと考えておりますが、日銀としてはどういうお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  135. 前川春雄

    ○前川参考人 ドルの価値につきましては、いま御指摘のように、アメリカのドル自身の価値、つまりアメリカの国内のインフレ問題ということがそれに反映いたしておるわけでございます。最近の金の価格の上昇あるいは原油価格の上昇、こういう場合に、ドルの価値が下がった面が反映しているのではないかということがよく言われるわけでございますけれども、金の価格につきましては、最近は、金の価格が上がりましても、必ずしもそれがドル安に反映しておるということではございません。金は金で独自に投機的な取引の結果価格が上がっているということであろうかというふうに思います。  サウジを中心といたします原油価格の引き上げがまた今年になって行われました。また、昨年はカラカスにおけるOPECの総会で原油価格の引き上げが行われたわけでございますが、そういう原油価格の引き上げによってドルがさらに下がるというような動きは、最近は余りございません。ドルは比較的ほかの通貨に対しまして安定した状態を続けておるわけでございます。しかし、ドルの価値がこれからも維持できるかどうかということにつきましては、これはアメリカの国内におきまするインフレ対策、それの成否にかかるわけでございます。アメリカは、御承知のように、ただいまは非常に強い金融引き締め政策をいたしまして、昨年来引き締め政策を継続しておるわけでございますが、アメリカ政府は、今度の教書を見ましても、インフレ問題に対する対応をさらに続ける、いまの対応姿勢を崩さないということでございます。そういうふうな施策がもし効を奏しますならば、ドルの価値は比較的安定した推移をたどるものであろうというふうに思います。  国内の物価でございますが、物価情勢、卸売物価は昨年じゅうに一七・五%の上昇をいたしまして、年が明けましてからも、一月上旬、中旬とかなり大幅な上昇が続いておるわけでございます。これはOPECの原油価格の引き上げあるいはサウジの引き上げということが主な理由でございまするけれども、それ以外に世界的なインフレ傾向のために原油以外の一次産品の価格が上昇しておる、それが国内価格、物価に反映しておるという面がかなりございます。  消費者物価は、現在までのところは比較的落ちついた情勢でございますけれども、卸売物価の上昇が続きますると、いずれはこれが少しずつ消費者物価に反映いたしてまいることは避けられないところであろうかというふうに思っております。物価の状況を現在の時点で判断いたしましても、これから原油価格の上昇はさらに物価に反映いたしまするし、あるいは先ほど来お話が出ております公共料金の引き上げということも予定されておるわけでございますので、物価の状況につきましては十分警戒を要する段階であろうというふうに思っております。  そういう事態に対応いたしまして、日本銀行は昨年来、金融引き締め政策をとってまいりました。早目、早目に手を打ってまいったわけでございますが、そういう金融引き締め政策によりまして、物価が海外からのコスト上昇を超えて国内要因から加速される、あるいは増幅されるということを防ぐためにやってまいったわけでございます。  今後につきましても、物価状況は先ほど申し上げましたようになお十分警戒を要する段階でございますけれども日本銀行といたしましては、そういう事態に対応いたしまして、いまの金融引き締め政策は堅持いたしまして、十分対応に誤りなきを期したいというふうに考えております。
  136. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもありがとうございました。  そこで、政府にお尋ねいたしますが、まず、いま私が指摘いたしました財政収支試算というものは、これは架空のものではないのですね、経済七カ年計画に基づいた試算でありますから。ですから、当然それが問題なんですよ。ですから、私が指摘をしておるけれども、いやそれは全く無責任なという問題ではなくて、それをやろうとすればこういうことになりますということでありますから、一体それを実行するにはどうしたらいいのか、どこが悪いのか。そうして各国いろいろありますけれども経済計画をつくっておりますのは日本とフランス、しかし財政計画はない。イギリスとか西ドイツは、財政計画はつくっておるけれども経済計画はない。いろいろ国によって違うわけです。それでいま私は、やはり財政計画というものをつくって、そしてそれを常にローリング、フォローしていかなきゃならないのじゃないか、こういうように考えるわけです。これはさっき御答弁がありましたから、鋭意その方向でいってもらいたい。  そこで、企画庁長官にお尋ねいたしますが、六・四という消費者物価というものをあなたの方で出した以上は、六・四ということについてどういう自信があるのか。電力とかガスとか申請されておりますが、これにはいろいろ問題があることはわれわれでもわかる。そういう問題についてどういうようにされるつもりであるのか。また、政府自身が、最近公共料金の問題でも財政法に言う法定主義を廃止して、法定緩和の方向にいっておる。すでに国鉄しかり、たばこもそうだ、あるいは郵便もそうだ。そういうことをすれば、物価というものはだんだん上がるに決まっておるし、国会のチェック機能も失われる。財政法に何で書いてあるのかわからぬという形になる。ですから、そういう点はひとつ十分注意をしてもらいたい。一体自信があるのかどうか、どういうようにやるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  137. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 六・四%の見込みを、私どもとしましては、いま日本銀行総裁からもお話がありましたように、財政、金融、その他の物価経済政策、こういうものを総合いたしまして、ぜひともこれを達成したいという考えでございます。  そこで、まず最近の事情でございますが、五十四年度は当初四・九%という見込みを立てたことは多賀谷委員もよく御承知のとおりです。これが、いろいろ台風、長雨の影響等で蔬菜その他にも高いものが出ましたけれども、いまのところは極力これを抑えまして、また卸売物価の波及を抑えまして四・七%の実績を挙げ得る、これは経済見通しの中に五十四年度実績見込みとしてお示しをしておるわけでございます。こういう努力がやはり非常に大事であると同時に、私ども国民の方々が一体となって、インフレというのはもう国民の第一番の敵であるという観念から、最近もいろいろな事態が起こっておることも多賀谷委員御承知のとおりでありますが、この国民的な自覚をもとにいたしまして、ぜひとも物価の安定に取り組みたい。  幸い日本銀行におかれては、昨年三回にわたる公定歩合の引き上げ、金融の窓口規制あるいはまたマネーサプライを厳重に監視するというふうに、金融について十分な配慮が行われております。財政につきましても、来年度は非常に困難な中に財政再建を踏み出されたと同時に、公共事業の実行につきましては五十四年度の予算を五%保留いたしまして、これで一月から三月までの物価関係等についても、財政の面からも非常な配慮が行われたわけでございます。これから公共料金の引き上げが行われますが、これについては通産当局経済企画庁も一緒になりまして、また企業の方々、労働関係の方々等の御意見を十分配慮いたしまして、この消費者物価への影響、家計への影響、企業への影響を最小限度に食いとめながら、しかも原価をひとつ守っていく、緊要なエネルギーの確保を十分果たしていく、こういう非常にむずかしい作業をいまやっております。  私は、努力すればできるということを、五十四年度の実績から自信を持っております。政府は挙げてこの物価の安定に取り組む覚悟でございますので、国民各位の一段の御協力をお願いいたしたいと考えております。
  138. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は大体十二時までで、あとの時間は保留になっておるそうですから、もう問題点だけをお聞かせ願いたい、ごく簡単に御答弁を願いたい、こういうように思います。  そこで、いまいろいろありますけれども、労働者が一番心配をしておるのは、やはり厚生年金の六十歳の退職年金支給を六十五歳にするということであります。これは非常に大きな問題でありまして、日本ほどいわば中高年齢者に冷たい国はありません。これは、私は終身雇用制でも何でもないと思うのですよ。人生の一番大事なときに首を切っておる。そのときにはまだ子供が学校に行っておる人が三二、三%もおるというときに首を切っておる。これがなぜ終身雇用制と言われるのだろうか。そして中小企業に行かなければならぬ。ことに、大企業ほど高齢者を使わない、大企業ほど身障者を使わない。私はその統計はもう時間がないから申し上げませんが、そのしわ寄せがみんな中小企業に来ておる。こういうことは言語道断だと私は思う。  そこで、厚生大臣は六十歳から六十五歳に年齢を延長されると言うけれども、まず労働大臣は、六十歳から六十五歳までの雇用の確保ができておるのかどうか、一体いまの六十歳から六十五歳の雇用情勢というのはどういうものであるか、こういうことについて調査をしたことがあるのか。いまようやく定年制を六十にするという運動があるのに、それが今度は六十五歳になるということではとても不安でしょうがない、こういうように思うわけです。そこでひとつ御答弁を願いたい、かように思います。  それから、続いて質問しておきますから、厚生大臣にも答弁願いたい。  次に、大蔵大臣もそうですけれども、今度郵政省が個人年金というのを提案をされようとして、じゃひとつ検討するということになっておりますが、個人年金の場合は八分九厘ぐらいの利子をつけておる。なぜ厚生年金だけが六・五%とか、最近やっと七・一%になった。そこで、これは私が調べてみましたところが、大議論がありまして、いままでその厚生年金の積立金は自主運用さしてくれという要望が非常に強かった。いや、その必要はない、政府の責任において財政投融資をして国が富むから、国が、パイが大きくなるから、その分はひとつ政府がやりましょうということで低金利の運営をしてきた、こういう経緯があるわけです。国民年金になりましてから、それはどうもいかぬというのでいろいろ議論しましたが、じゃ国民年金はひとつ被保険者が掛けるときに政府も拠出しましょうということになっておりましたが、最近はそれは政府が取り崩してしまった。だから給付時だけにしか政府は出さない、こういう形になっておるわけです。  そこで、厚生大臣、六十五歳にして一体労働者が承知をするかどうか。非常な不安な状態にある。各国はいま六十五歳あるいは六十三歳の年金を六十歳にする運動が展開されておる。これはすでに社会保障審議会が調査に行って、その報告書にきわめて明快に書いておるわけです。  要するに、西ドイツ及びイギリスに参りました。そしていろいろな人に会っておるわけですね。この報告書は、社会保障審議会の事務局が調査員に命じて調査をした報告書であります。そこで、DGBでは、今日六十三歳から九〇%もらっておるけれども、それを六十歳にしたいと思います、それからTUCもこの九月から、この調査に行ったとき、一九七八年の九月の大会で六十歳に引き下げたいと思います、こういうことを言っておるわけですね。世界の大勢は日本と逆になりつつある。こういうときに一体どういうつもりで出されたのか、お聞かせを願いたいと思います。
  139. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 非常に深刻な不景気の中から徐徐に回復をしてまいりまして、雇用情勢は一般的には回復の途をたどってきておるわけでございますけれども、なおその中で、先生の御指摘のように、中高年に対しては非常に厳しい雇用情勢になっておる。そのことを非常に心配をいたしまして、職業安定所窓口等を中心にいたしまして全力を挙げて中高年の雇用対策に取り組んでおるところでございます。  特に、八〇年代はわが国にとって高齢化社会が到来をする、しかも非常に速いスピードで到来をするということが人口構造から推測ができるわけでございますから、今日いろいろな労働行政の中で中高年対策、特に高齢者対策をどう進めるかということにつきまして、従来の姿勢を思い切り前進をさせまして、取り組んでいくようにいたしておりまして、特にその中では、当面は、先生の御指摘のように、昭和六十年度までに六十歳定年を目指して全力を挙げて行政指導をしていく。  そして六十歳から六十五歳につきましては、ただ単純に六十歳までのものを六十五歳まで延長していくというわけにはいかぬ問題もございます。それは、働く意欲とか働く能力というものが六十歳までと六十五歳までと若干質を異にしてくる部分もございますから、六十歳よりも六十五歳に延長する場合には、より多様な構えをつくって雇用を確保していくというふうにしてまいらなければならない、こんなふうに考えまして、多様に雇用の仕組みを考えていくように、さらに雇用創出をし、開発をしていこう、こういう構えで取り組んでいるところでございます。  いま御指摘のございましたように、厚生省の方から厚生年金受給年齢の引き上げの話が出てまいりましたので、そういった情勢どもよく厚生省と話し合いまして、六十歳まで、さらに六十五歳までといった雇用情勢の、勤労者にとってライフサイクルがそこにすき間ができないようにあらゆる手だてを講じていくということで協議を重ねてきているところでございまして、今後とも厚生省とさらに話を煮詰めながら進んでまいりたい。そうして、勤労者一人一人の生活にとって不安のないような体制を整えるように全力を挙げて取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
  140. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 六十歳から六十五歳までの雇用情勢について全く自信がない。よその国はずっと定年が六十五なんですよ。そこで途中で切って何か特別訓練をするなんという制度じゃないんです。皆同じ仕事をしているのです。定年ないのですよ。年金をもらうときが定年なんです。ですから、その制度を変えなければだめなんですね。  そこで総理、これはきわめて重大な政治的問題ですよ。もうこれは出すということを撤回したらいいです。これは、いまの不安を見ると大変な問題です。まだ五十五歳の定年が現存しておるのです。四一%が五十五歳の定年ですよ。今度は六十五にするんだと言ってごらんなさい、一体この十年間、みんなどうしますか。そうしてまた、みんなローンを抱えて四苦八苦しているときに、今度は六十五だ、もう希望も何もなくなってしまうのですよ。私は早く、出すということをやめたらいいと思うのです。それは、いま出されているデータを見ましても、もう全くずさんきわまるものですよ。賃金は、標準報酬は八%、利子運営は六%。いまから三十年まで八%でいく自信がありますか。そういうものを出しているのです。そうしていまから二十年、三十年は大変だと言っているのです。八%いまから賃金がずっと伸びて利子は六%なんということが、考えられないことが試算表になっておる。大体が、それがこれのもとなんですよ。そうして、いままで昭和十七年から積み立てた積立金は、ピーク時からその年度に入ってくる分と収支とんとんになるのが三年か四年しかないのです。昭和十七年から今日まで積み立てて、ピークになったらその金はたった三、四年しかないのです。そういう計算をしておる。そうして六十五歳にしなければもうもてないんだ、こんなずさんな案は出すべきでないですよ。人心を動揺させますよ、これは。  総理、どうですか。もう総理の決断以外にない。騒ぎが大きくなってから撤回して、国会でたなざらしになるよりも、いまもう腹を決めて、いまの時期にはまだ十分調査をする必要がある。雇用情勢だって悪いし、六十五歳なんという定年は日本には一つもないのですから、そういう情勢を見てどうするかということが前提になって制度を変えられるべきだ。西欧も逆に動いておる。どうですか、総理総理の決断以外にないと思います。
  141. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、大変重大な問題だと思います。  政府といたしましても、高年齢化が急速に進んでおる中で、給付水準というものの向上を考え、後世代の負担も考えていく上におきましては、そのいろいろな手順を考え、政策を考えてまいらなければならぬわけでございますが、そのうちの一つといたしまして、いま年齢引き上げの問題も二十年後にはお願いしなければならぬのじゃないかというような見当をつけて今日まで考えてきてまいったのでございます。  しかし、この問題は多賀谷さんも仰せになるようになかなか深刻な問題でございますし、いろいろな角度から検討しなければならぬ問題であることは、やはり私もよく承知いたしております。自由民主党からも、きのう、関係審議会の方の答申を待ってやるべきであるという申し入れも受けたわけでございます。  したがいまして、この問題は、仰せのように早急に政府で検討をいたしまして、どのように対処をいたしますか、早急にお答えするようにいたしたいと思います。
  142. 田村元

    田村委員長 多賀谷君、厚生大臣はいかがですか。いいですか。――これにて多賀谷君の質疑は、保留分を除いて一応終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  143. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺美智雄君。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 私は最初に、政治の姿勢について御質問をしたい、かように思います。  日本経済が、島国で資源がないというこの国が世界経済大国になったという最大の原因というのは、何といっても教育の普及、それから国民の勤勉努力、知的水準の向上、それから自由主義経済体制であった。国際協調、そして安くて豊富な石油をエネルギーとして存分に使うことができた。技術革新も行われてきた。私はそう思っておるのであります。  ところが、この経済繁栄の大きな母体になったものが一つ一つ崩れ去ろうとしておる。これは非常に大変なことではないか。一つは、自由民主党も御承知のとおり過半数すれすれ。自由主義経済体制を一枚看板にしているただ一つの政党ですから、その政党もどこへ行くのやら、これは大変な事態だと私は思う。そういうような中にあって、何でそれでは自由民主党がそういう人気を失ってきたのだ。私は、自由主義回帰の気風というのはかなりあるのじゃないか。にもかかわらず、それを押さえ切れないところに問題がある。それはやっぱり惰性の政治を行っているからだと私は思うのです。これからは本当に発想の転換を図って、惰性を断ち切って迷信に挑戦をしていかなければ、その起死回生はできない、私はそういうように思っておるわけです。  この間の党内抗争というようなものも、これは大変な自民党のイメージダウンになったことは間違いない。だからといって、世論調査の結果は、その票が野党へみんな行っちゃったというところもない。結局、棄権票になる可能性が多い。政治不信ということであります。ですから、政治不信そのものは大変なことだが、国民は自民党の政策については、増税がどうだとかこうだとか言っておるけれども、全体の整合性のある政策については大変な不満を持っておるということじゃないんじゃないか。部分的にはぶつぶつは言っています。しかし、それしかないということがわかれば納得をしてくれるのじゃないか。  そこで、総理大臣はともかくもっとリーダーシップを発揮してもらいたいということなんですね。この間の派閥抗争なんというものも、結局はわがままから出た話であって、本当にあれだけの大げんかをやって分裂しない方がおかしいので、分裂する方があたりまえだと世間は思っておる。したがって、その派閥抗争を断ち切らせるためには、やはり派閥の弊害を除去する。それは選挙制度が一つなんです。これはいまなかなか答えられないでしょう。中選挙区である限りは必ず派閥ができる。その次は、派閥が何で強くなるかというと、一つは金を集めることもあるでしょうが、いまの派閥は金は余りありませんでして、代議士をまる抱えするほど金をくれる派閥なんというのは私は聞いたことがない。ということになると、結局人事なんですな、派閥のごり押し人事、そういうようなことが非常に問題だ。  それで、早い話が不適材不適所というような人事が往々にして――現内閣にはありませんよ。ありませんけれども、往々にしてそういうことが行われる。あるかないか私はよくわからぬが、総理大臣ができることは、閣僚の人事というようなものは総理大臣の専管事項なんですから、民主主義ですから派閥の意見を聞くことも結構だし、ある程度の数を勘案するのも結構だと私は思う。思うけれども、少なくとも閣僚というのは一国のそれぞれの部門を代表する国務大臣なんですね。内閣は連帯責任なんです。したがって、一閣僚の失敗を総理大臣が知らぬとはいかない。大変な問題が起きる。したがって、そういうことは本質的にも大事だし、また、派閥のしがらみで言いなりになるから、もっとがんばればもっと何でもできるのじゃないかということになって、ますます派閥が強化されるというように私は思う。  そこで、そういうようなものから、総理大臣はそれらの点はどう考えるか、その基本的な物の考え方を承りたい。
  145. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治姿勢についてのお尋ねでございます。いままで日本の繁栄、成長、発展を支えてきた条件がだんだんとなくなっていく段階において、従来の惰性にとらわれておっては何もできないではないか、ここで一つの勇気ある決断力、リーダーシップが必要でないかという第一の御要請でございます。仰せのとおりだと思います。民主政治の柱の一つは、強いリーダーシップがないと実りある成果を得られないわけでございます。そのとおりだと思いますが、これを発揮する手順というものは、革命でございませんので、相当しんぼう強い過程を経てやっていかなければならぬわけでございます。強い意志を持って粘り強く、所定の手続を踏んで実効を期するようにすべきだと思います。  第二の問題は、派閥問題に関連いたしまして、人事問題というのが一番核心にあるのではないかという御指摘でございますが、正直に申しまして私もそのように思います。したがって、人事問題が適材適所に公正に処理されるということによりまして派閥の弊害の大半はなくなるものと思うのでございまして、そういう方向に勇気を持って対処していかなければならぬものと思います。
  146. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 総理大臣もよくわかっているのですから、ともかく実行をしていただきたい。そうして、やはりこれからは各閣僚が先頭に立って率先垂範していかなければ、私はとうていこの難局は乗り切れないのじゃないかという気がするのです。また、本当に事の真相というものを国民がよく知らない。したがって内閣は、こういうことをそれぞれの部署を通してよく国民に知っていただくという努力をすることがやはり一番大切だ。日本が繁栄をした石油の問題にしても、二ドル時代があって五ドル時代まであったが、途端に十五ドルだ、二十ドルだ、いまや三十ドル。ですから、これは当然日本経済を変えてくるわけです。  私は、先ほど経済計画の話を聞いておりましたが、本当にどうなるのかわからないというのが真実じゃないか、こう思うのですね。本当に不確実の時代であって、実際一寸先はわからぬ。まして七年も先のことまでわからないというのが私は本音だと思うのですよ。ですから、正確なものをこしらえなさいと言ったってできっこないのです。しかし、一応そうありたいという願望によってつくっているようなものじゃないかとすら私は思っておる。いままで貿易もどんどん伸ばして、それによって日本の収支を賄ってきた。ところが、もうこれ以上伸ばせない。輸出、輸入はどっちも大体一千億ドルになっちゃった。黒字がたまってドル減らしをやらなければならぬ、つい一年前まで騒いだわけですね、ドル減らし、ドル減らし。ところが、今度はどうなんですか、石油の支払い代金があるんですかね。もうそういう問題にぶつかっちゃっておる。御承知のように、本当にそれは大変な問題じゃないか。  たとえば五十四年度の経常収支を見たって百十三億ドルの赤字、資本収支も百十億ドルの赤字、合計二百二十三億ドルの赤字ですね。外貨準備はいま二百億ドルしかありません。来年はやはり外貨準備を二百億ドルぐらい持ちたいんでしょう。そこへもってきて、この経済計画を見ても、すでに来年度も百六十一億ドルは赤字になると言うのですよ。それは五十五年度の経済見通しでも、経常収支が九十一億ドルの赤字、資本収支が七十億ドルの赤字、計百六十一億ドルの赤字になる。二百億ドルをどうして持っていられるのですか。どこかへ行って借りてくるほかないですね。いままで金を貸していたのが借りてこなければならない。それでなかったら二百億ドルみんな払っちゃわなければならぬ。結局、金融勘定で、銀行がユーロダラーを借りてくるか何かを借りてくるかあるいは為替銀行が輸入の延べ払いをするか何かしかないと思いますね。そうなってきますと、日本経済の国際収支そのものも非常な危機に瀕しておる。来年ぐらいは延べ払いをしたり借りてきたりしておっつけられるけれども、その次もその次も、国内的には借金政策でピンチに立った、国際収支もピンチに立つ。二、三年立つわけでしょう。どういうふうにしてこれを切り抜けていくのか、非常にむずかしい問題がある。この経済見通しも収支とんとんで計算しているけれども、一方においては来年の国際収支は百六十一億ドルも赤字になるのです。ですから、経済見通しが狂ってくるのはあたりまえですね、現実が違っているんだから。  だから、そういうことを考えた場合において、どうしたならばこの危殆を乗り切れるのか。オイルダラーが一千億ドル五十四年度中に集まったという。合計三千億ドル産油国に偏って金が集まっちゃった。結局、この金の奪い合いですね。この金を何とか利用しなかったら、ドルは下がるわ、石油は上がるわでシーソーゲームを続けるわけですから、日本としてもオイルダラーの還流方法、どういうことをして、日本にどう取り込んでいくのか、私は政府の考えを聞きたいのです。  たとえば、日本がオイルダラーを取り込むのに一番いいのは、土地を売るのが一番いいです、買ってくれないだけであって。そのかわり、そんなことを言ったら売国奴と言われるな。富士山売るよなんというのは売国奴と言われてしまう。しかし、それは持っていかれないし、安全なものだし、人の所有権になってもながめることもできるし、一番安心なんだ。ただ向こうが買ってくれないということになると、社債か株式かという話にすぐなってくるわけですね。そうすると、民族資本とか言って、ともかく多国籍はいけない、民族資本を伸ばしていけ、こう言っているわけでしょう。民族資本でがんばっていて、外国人に株を持たせないということになるね。やはり優良企業の株をうんと持ってもらうことをむしろ考えて、日本の巨大優良企業の多国籍化、こういうようなことも一つの金の還流方法になる。あるいは産油国への輸出をどういう条件でやるのか。  いずれにしても、産油国に偏って集まった金を日本に持ってこなければならぬ。日本ばかりじゃない。台湾、韓国、われわれの貿易の取引先の非産油国も大変な赤字を皆しょっているわけで、日本が輸出してもそれを支払う能力はもうすでにない。この金のめんどうも日本は見なければならない。それでなければ、日本が輸出しても金が入ってこない。ここらについて、細かい話は要りませんが、一言どういうお考えであるか、だれに聞いたらいいのかわかりませんが、一言お願いします。
  147. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  けさほども申し上げましたように、来年度の経済の一番大きな問題の一つは国際収支、そして物価である、こういうふうに申し上げたことは、そのとおり考えております。  ただいま御指摘のように、円安の効果がだんだん出てまいりまして、輸出が数量的には相当伸びておるわけでございます。しかし、輸出をどんどん伸ばして外貨をかせげばいいというかつてのいわゆる輸出ドライブ政策、これは国際摩擦を引き起こしますので、それを決してとるべきではございません。しかし一方では、一カ所、一カ国、そういうところに集中的な輸出じゃなくて、いま御指摘のようにオイルダラー、産油国等において本当に必要なプラント輸出その他については相当努力の余地がある、またその条件も整いつつある、こういうことで一層国際的な協調関係を強固にいたしながら努力していかなければならぬと私も思います。  と同時に、いま御指摘のように、むずかしい言葉で言いますと、日本経済のファンダメンタルズと言うのでございましょうか、かつての円安もいまは一服というところかと思います。これは財政、金融、経済の各般の施策がだんだんとその効果があらわれてまいりまして、日本経済に対する海外からの信用も高まりつつあるものと考えます。そこで、いま渡辺委員御指摘のように、これからは日本の企業に対する株式または社債等の方面においても、だんだんとこれに対する資本の流入ということも期待できるのじゃなかろうか。そういう点をあわせまして、私どもとしては、経常収支、それから長期資本収支、そういうものをあわせて国際収支の改善を図っていかなければならぬ。しかしいざという場合には、日本の信用に対する海外の信用度の高まりに対しましても十分これを評価していただくようなファイナンスというふうな点についても万全を期していかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  148. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 どういうことをやっていいのか、本当のところわからぬというのが真相でしょうが、しかし、いままでと同じ発想では乗り切っていけないということだけははっきりしていると思うのですね。資本市場の整備の問題にしても、金融市場の問題にしても、外国から金が入りやすいようなことをもっと考えなければならぬ、やはり国内で摩擦がありますから。  かつてレートが三百六十円の時代、三百円に下げる下げないで大騒ぎして、自民党ばかりじゃない、社会党から共産党から全部、国会こぞって円の切り上げ反対、反対をやったわけですよ、中小企業がつぶれる、何がつぶれると。そしてともかくしこたまドルを抱え込んじゃって、あのときにもっと早く思い切って切り上げをやる、それでその円の値打ちのついたところで金を買っておくというようなことをやっておけば、いまごろもっと楽でしたわな。終わったことを言っても仕方がない、自民党だけの責任ではないですから、全部で騒いだのだから。現実にアメリカは、一九七一年に金の兌換停止というものを発表したけれども、現実には二億六千三百万オンスぐらいいまでも持っていますよ。したがって、これが一バレル二ドル時代、一オンス大体三十五ドルという時代のものですから、いまはもう二十倍以上の時価評価になれば二千億ドル以上。実際は、ドルの値打ちは下がったが、その分、金の名目価値はうんと上がっているから、そこでかなり相殺される。日本はそれよりも非常に低いものしか、三十五ドル計算で九億ドルぐらいしか持っておりません。ここなんか後手を打ったのじゃないかという気がする。アメリカに気を使い過ぎたのかな、どういうことかわからぬが、やはり先の見通しというものについての決断がなかったせいじゃないか。  ところが、フランスが最近提唱して、欧州では域外に対して金の再評価をした価格で支払い手段に充てようじゃないか、完全な金復位ではありませんが、そういう動きが出てきておる。フランスの大統領等がベニスのサミットなんかで言い出すのではないかといううわさも流れておる。アメリカあたりでも、議員の間で提唱されていることが、いまのドルのデノミネーションをやったらどうだ。わかりやすく言えば、緑色のドルはもうそれきりにしておいて、ピンクの金兌換のドルでも出したらどうだという議論も出ておることも事実。恐らくやらぬという答弁をするでしょう、当分はやらぬかもしれない。しかしながら、この金再評価の動きに対して政府はどういうふうに今後対処していくのか。何とも手はない、日本に気がないですから、手はないというのか。日本経済に、再評価が現実の問題になったときにどういう影響を及ぼすのか、その辺に対する研究をしているのかしてないのか、おわかりならば一言御答弁願いたい。
  149. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど来の渡辺さんの御意見を交えての御質問でございますが、確かに、経済企画庁長官からもお答えいたしましたが、とにかくOPECにいわば所得が移行した、それをOECDの国、それから非産油開発途上国、そういうふうに分けたといたしましても、どういうふうにリサイクリングしていくかということについては、これはいままさに私ども国際金融の方から見ておりますと、毎日毎日電話やら会議で主要国が意見を交換しておる、こういう感じすらいたすくらいであります。  そこで、いま金の問題でございますが、現行IMF協定におきましては、およそ三つのことが言えます。一つは、価値基準としての金の役割りは完全に廃止されております。それから二つ目は、また増資払い込みその他IMFとの取引において、加盟国が金による支払いを義務づけられることが、旧法にはありましたが、改正されましてこれがなくなりました。それから三番目は、反面、SDRを国際通貨制度における中心的な準備資産にするとの方向がうたわれておるわけであります。したがって、金の国際通貨としての役割りは徐々に低下させていくという考え方が貫かれておる。わが国としてもこの方向を今日まで、なお将来とも支持していくわけであります。  そこで、金復位の可能性でありますが、サミットにおいて持ち出されやしないかという御懸念の御発言もございましたが、金価格の急上昇に伴いまして、金復位の可能性が強まったのではないかという意見が全くないわけではもちろんありません。しかし、金の生産が量的に限られておる上に、南アフリカ等地域的に大変偏っておりますことと、通貨当局の金保有が欧米の一部の国に偏っておること、それから最近の傾向として、大変に投機的に価格が著しく不安定であること等の理由から、金の国際通貨としての適格性には疑問がありますので、金復位の方向について国際的合意が得られる可能性は非常に乏しいではないかというふうに理解をいたしております。ただ、御指摘のございますように、そうした金復位の話が出るぐらいな状態でございますので、絶えずこれは注視していかなければならない問題であるというふうに思います。  もう一つつけ加えますと、一九七一年、ちょうど私が内閣官房長官をしておったときでございますが、固定レートがスミソニアンレートで三百八円になって、それから徐々にフロートした、あの時代における議論というものを振り返ってみますと、もっと金を買っておけばよかったのではないか。しかし現実、金を買うということそのものを、当時のアメリカがドルを基軸通貨として世界の通貨行政に対して非常に力を持っておる状態のときに売ってもらえるという状態になかったというような反省が、振り返ってみると、やはりそういう実態があったというふうに私も最近理解をいたしております。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 まあ金復位が合意される見込みはないというお話でありますから、そう理解しましょう。  次に、経済計画、財政の話をちょっと触れさせてもらいますが、先ほども財政試算というものは新経済社会七カ年計画の姿を投影したものだ。新経済社会七カ年計画というものの中身は、内需中心の経済成長をやろうとか、完全雇用を達成しよう、エネルギー制約を克服して産業構造を転換させよう、老齢化社会に備えよう、国際協調をしていこう、財政再建をやろうというのが柱だと聞いております。しかし現実の問題として、私もこの試算を見て、多賀谷議員と同じような感じを受け取っておるのですけれども、これだけの社会保障移転支出というものを認めていくということになると、また一方、公共投資を十四兆一千億円も昭和六十年に予算づけをするという姿であるとすれば、国債の償還という逃げられない問題があるわけですから、また行政の経費というものも全然上がらぬということでもなくて、多少のふくらみはこれもある程度やむを得ないということになると、どうしても現在の税収の倍ぐらいの税がなければやっていけないということになるわけですね、だれが考えたって。支出がそれだけ保証されるのなら、収入をそれだけ取らなければならぬわけですから。そうすると、その金をどこから取るのか。金を払うのがいやだということになれば支出を切るほかないのだし、支出を保証しろというのならば金を集めなければならないのだし、そんなことはわかり切った話で、国民の選択の問題だと思うのですよ。これだけの五・五%だから大した成長ではないのだよと言われれば、大した成長ではない。しかし、それがうまくいけばこれだけ金が集まるとも思われない。非常にむずかしい問題なので、私はこのどさくさ紛れでなくて、今回の予算は予算として、国会でも終わったらば、来年の予算までには本当に現実に合わして、余りかっこうをつけないで、現実に合わして一遍これは見直してみる必要がある、こういうことを申し上げておきたい、かように考えるわけであります。そうでなければ、財政再建など口で言っても、実際問題としてなかなかそう簡単にはいかないのじゃないか。所得税の問題等にいたしましても、税金上げると言ったならば大変国民から怒られたと言うのだけれども、確かに三百万円の場合の租税負担率を見れば、スウェーデンが二十六万九千円だというのに、日本は六万六千円というようなことで、イギリスの六十五万から見たならば所得税は十分の一という話ですよ。向こうの方が社会保障が充実している。そのかわり出す方も出しているのですからね。そういうことも両方私は並べて国民の前に徹底的に明らかにしていく。それでどういう選択をするかはひとつ国民が決めてくださいよというのが私は一番いいのじゃないかと思っているのですよ、実際問題として。それは国民所得に対する租税及び社会保障の負担率というものでも、日本が二八という数字なら、スウェーデンが六七とかイギリスが四七とかドイツが五〇とかで、やはり世界じゅうの負担率の四割ないし半分ですよ。ですから、こういう実態をよく知ってもらう、そういうことが私は大事であって、それがわからぬから騒ぐんだから、わかれば、これは税金を安くしろと言うならはかのものを落としますよ、ほかのものをもっと充実させろと言うなら、そのかわり負担はちょうだいしますよ。国民はイコール政府なんですからね。国民と政府は別ものだと思われたら困るわけですよ。ところが、えてして、いままでは国民と政府は別もののごとく理解をされてきておるというところに問題があるわけですから、国民と政府は同じものでございますということをもっと国民にわかりやすく、あらゆる機会に私は宣伝をしてもらいたい、こう思っておるわけであります。それと同時に、政府が国民と一緒だという以上は、やはりむだ遣いは国民の方も困るわけです。ですから、むだ遣いというものはどうしてもこれは徹底的に改革をしてもらわなきゃならぬということもあたりまえのことだと思うのです。  そこで、行政改革という問題が出てくるわけですが、行政改革は政府の政治の姿勢ですね。中には、行政改革をやると何兆円も銭が浮いて出るように錯覚を起こしている人がありますが、そんな金はどこからも出ないのですよ、これは。ともかく私はこの行政改革案というものを見て、非常に選挙後短時日の間に、短い期間でよくまとめたなと思って感心しています。しかしながら、それじゃ金が何ぼ出るのですかと言われましても、すぐに出るものじゃない。しかし、行政改革やったら来年から減税でもできるぐらいに思っている人がうんといるわけですから、こういう国民の誤解は解かなければならない。早い話が、公団、事業団というようなものの統合を十八やってみたって、せいぜい何億かの経費の節約にしかなりませんよ。出血的に大量に解雇するのだというのなら、それはプラスになりますが、そういうことはやるなというわけですから、私は、この行政改革という問題については政治の姿勢だからやらなければならないが、しかし余りまたメンツにこだわって機構いじりに堕するということも意味がないと思うのです。  私は、蚕糸事業団と糖価安定事業団と一緒にして何の御利益があるのかよくわからないのです、実際の話が。お蚕さんに砂糖でもなめさせるのか。それだったら糖価事業団と畜産事業団と一緒にして、すき焼き事業団でもつくった方が国民は喜ぶかもしらないのですよ。硫安輸出会社というものを廃止して、じゃ国費が幾ら少なくなるといったって、全然少なくならない、これは何も関係ないですね、かっこうづけですよね。だけれども、こんなことよりも、本当に行政改革をやるのだったら、たとえば、私はこの中でいいなと思っているのは定員削減、第五次定員削減、五十五年から三万七千人やる、これはぜひやってください。これは本当に効果のあるものですから、こういうことは私はぜひやってもらわなければならない。  それから、人を減らすのですから、仕事も減らしてもらわなければ困るのであって、やはり仕事減らしというもの、仕事の事務量を減らすということをもっと研究をしてもらう。それから、むだな経費を省いていくということが私は大事だと思います。  国家公務員をみんな首にしたって、医療費の補助金ぐらいなものですよ。国家公務員八十四万人全部首切ったって、せいぜい三兆五千億ぐらいでしょう。したがって、一年間の政府の医療費に対する補助金が、大体国家公務員全部の月給ぐらいですな。ですから、私は、行政改革でむだをなくすということを徹底的にやってもらうことは大賛成。ではあるが、そこから莫大な金というのはすぐには出てまいりませんということも国民に知ってもらう必要がある。やはり何といってもある程度人員整理をするのなら人の伴う人員整理をやったらいい。私は農林大臣もやったことがありまして、おまえ、じゃ何でやらなかったのだと言われますが、食糧検査員というものが一万三千人おりますが、まあ大体私は三千人ぐらいでいいんじゃないか、やり方によって、だんだんに。  というのは、いまは九、十、十一月、この三カ月間にお米がどんと集中するわけです。その三カ月間にさばけるだけの人を持っているわけですよ。三カ月間で大体さばける。仕事がそこにピークで集中するわけですから、これをずらすのですね。概算払い制度を取り入れるとか、あるいはバラ検査をやるとか、あるいは抽出検査制度にするとか、そういう時期をずらす。これが一つです。  もう一つは、いまの人はもう年取っている人がかなり多くて、五十歳以上が四割いるのですよ。五十五歳になったら私はやめてもらったらいいと思うのです。そのかわり、死ぬまで検査員やってもよろしいと、制度を変えるのです。死ぬまでやっていいよ。それは、税務署をやめた人が税理士をやっているわけですから、登記所をやめた人が代書人、司法書士をやっているのですから。それだけの能力を持っているわけですからね。きのうまでは検査員の能力があったけれども、あしたから、首になったから能力がゼロになっちゃったということはないわけですから。だから、五十五歳になったらやめて、十三万の年金をもらって、あとはどこかへお勤めになっていて、そして九、十、十一、忙しいときには、農協なりあるいは食糧事務所なりに契約で来る。  一日一俵百円でやったって大変ですよ。一日に千俵できるのですから、日当十万円になるわけですね。ところが、現在は米一俵当たり検査料は何ぼかかっているかというと、大体ピーク時に人が集まっているということから計算しますと、あとの仕事の量というものは、私はそんなに仕事はあると思ってない。役所では、ありますと言っていますよ。言っているけれども、実際は検査員がほかの仕事をそんなにやっているという話も余り聞いてない、一部あるけれども。したがって、これは一俵六百円につくわけですよ。全部の経費を入れたら一俵八百円につく。一俵六百円につくやつを一俵百円にして検査員は一日十万円の日当が入るという話だね、これは。それで三カ月勤めたら大変だから、十万では払い過ぎちゃうかしらぬな。一日十万では月に三百万も払っちゃうから、そんなに払う必要はないのでね。  ですから、お互いにいい方法がある。強制しなくとも、そういう制度を一つつくってやれば、やめる人はずいぶん出ますよ。民間で、一俵百円の検査料を払って、それは検査するしないは本人の御随意、検査基準は国が持っているのですから、検査員を検査する検査員だけ国に置けばいいのだから。  となると、食管制度の問題と関係してくる。しかし、これは食管制度をなくす必要も何にもないのでして、ちょっと直せばいい。ところが、食管制度をいじるとなると、また騒ぐ人があるものだからみんなやらない。これも迷信への挑戦なんですよ。  そういうことを繰り返して言っていけば、結構、行政整理をやるといっても、濃密な、しかもあんまり騒ぎも起きない、みんながよくなる方法も考えられる。したがって、これはひとつぜひとも御検討を願いたい。行管長官、農林大臣。
  151. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 非常に結構な御提案を賜りましてありがとうございます。  食管制度、これは農林大臣の所管でございますから農林大臣からお答え願うことにいたしまして、いま御指摘の定員関係、これは私、今後も着実に、そして確実にやっていかなくてはならないと思っております。仰せのとおり、確かに人減らしを伴わない行革は金目の物にならないということは、きょうも何かの新聞の社説でも書いておりましたが、ややもいたしますと、特殊法人の整理だけでうんと新しい節減ができるのではないかというお話でございますが、これはなかなかむずかしいものでございます。しかし、やはり財政危急のときでございますから、私どもといたしましては、少数精鋭主義で極力国家財政に寄与し得るようにがんばっておるところでございます。その意味で今回は、総理大臣が先頭に立たれまして、四本柱を打ち立てて各大臣に号令をなさいまして、わずか五十日ではございましたが、五十五年行革の第一次は一応これでできたと思います。  あとは定員管理という問題、これは本当に大切でございますから、私といたしましても、ちょうど第五次にわたりまして約十七万の定員削減を計画し、それを実施しているところでございます。もちろんその間には新規需要というものがございますが、極力抑えたいと思います。そして総計、総数は縮減できたというふうな効果をもたらしたい。そのためには、いろいろな立場におきまして、社会情勢経済情勢も変わっておりますから、やはりパターンを変えて考えたいと思うのです。いままでの行革で一番大きなものは昭和三十九年の臨調でございますが、これも大きな行革案が出されただけで、いずれも日付が入っておらないといううらみがございました。今回はそうしたものも着々と現政府で処理をいたしまして、また、その当時とは相当変わった面がございます。御指摘の米の検査員の問題に関しましては、特に配置転換等で十分に処置をしたい、かように私は思っております。
  152. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 食糧検査官の問題は、先生が大臣御在任中にいろいろおっしゃっておられたことでございまして、私どももその御意見は十分尊重しなければならないと考えております。御承知のとおり、今後より一層、バラ検査あるいは抽出検査、こういうものを強めていきたいという考え方でいるわけでございまして、これを強めてまいりますと、どういう形にいたしましても、結果的には農協あたりに相当協力をいただかなければならないということになることは当然かと思います。そうなりますと、いま先生の御指摘の検査士というものが実際に必要であるのではないかという考え方が出てくるのではなかろうかと私は考えておりますが、正直そうなってくると、いま検査には約五百億ぐらいの金がかかっておるわけでございまして、これを農協がどう負担するのか、また、もし検査士という制度をつくった場合には、農協あるいは農民がどういう形でその検査料というものを検査士に払うのか、これはいろいろあるだろうと思うのですけれども、御意見はひとつ十分前向きに検討さしていただきたいと考えております。
  153. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 検査料というのは、一俵当たり百円ぐらいのものは一升にしたら何厘にもならないようなものであって、受益者負担で何ら差し支えないと私は思っております。したがって、早速これは組合とも相談をしてもらう。たてまえは反対と言うかも知らぬけれども、この話はいい話でもあるのですよ。意外とこういうところにいいことが転がっているのですから、ひとつ御研究を願いたい。  次に、国鉄の問題です。国鉄が赤字だということですが、なかなか黒字になりそうもないのですね。ことしなども表面上は純欠損九千億などと言っておりますが、そのかわり三千億の助成をもらっているのだし、たな上げ分が二千四百億ありますから、結局は一兆五千億ですよね。実質赤字は五十四年度一兆五千億円、大変なことです。将来黒字にどんどんなるかと言ったら、私はむずかしいと思いますね。それはどうしてかというと、これは競争相手があるからですよ。自動車、船、飛行機、競争相手をぶった切ってしまえば、国鉄はまた栄えますよ。だから、競争相手にブレーキをかけるかブレーキをかけないか、この決断がないと国鉄財政の再建の問題は実際問題としてなかなか考えられない。  したがって、国鉄はいま考えておる再建の仕方の中で、六十年までに七万五千人、人を減らすということを考えていますね。十四万五千人退職しますから、それを不補充にして七万五千人は採用する。これだけ減らすのだ。これは非常にいいことだ、ぜひこれはやってもらわなければ困る。それから要するに生産性の上がらないようなことでは困るので、生産性向上というものをもっと徹底させてもらう。それから、どうしても生産性向上でカバーできないことはやめてもらう。割り切ったらいいと思うのです。それは税金は払いたくない、赤字はつくるなと言ってもできないのです。運賃値上げでカバーできるかと言ったら、国鉄なんか運賃を上げたら上げるほど能率が上がらなくなりますよ。もう限界に来てしまっているのだから。そういうものは運賃値上げでは国鉄は対応できないですね。別なことでなければ対応できない。やはり身軽になることですよ。  地方線の問題でも、それはいろいろな線がありますよ。九州の方へ行ったら百円収入を上げるのに三千八百五十五円かかっている。これは十二キロメーター、福岡県です。それから北海道にも百円の収入を上げるのに二千九百五十二円かかっている。これも百二十一キロ、これはちょっと長い線ではあるが、こういうようなやつが何十線とあるわけです。そういうような中でも短いものは十二キロとか二十キロというような盲腸線ですね。それで何十倍も経費がかかるというようなものは、やはり地元の足の便利というものは確保しなければならぬから、バスに切りかえるというような方法で、やはり身軽にしてやらなければ、そういうところで赤字をどんどんつくっておいて、そうして国鉄は黒字になりなさいよ、がんばって働くんだよと言ったって、それはとてもできる相談ではない。これもやはり打ち出してくると、一々町村長に相談するわけですよ。相談すればそれは反対と言わざるを得ない。町村長が反対と言う。議員も言う。県会議員も知事も言う。国会議員も一緒になって騒ぐということですよ。ですから、これもやはり政府の決断の問題で、一緒になって騒がせないような努力をすると同時に、やはり税金は納めたくないというのですから、経費の少なくなることはどうしたってやらなければならぬと私は思っておるのです。そのかわり、国鉄自身ももっと施設を削減したり、駅を無人化したり、いろいろな貨物の問題等がありますから、そういう自主努力をやると同時に、むだ遣いもやめてもらわなければ困るのです。  たとえば国鉄病院というものがある。国鉄病院というのは国鉄王国時代につくったのだと思うのだが、だからどこでも、専売も持っているからうちの方もというようなこと、国鉄は、一番先に持ったのだから、おれが持っているのはあたりまえだと言うかもしれぬが、医師、看護婦五千人を集めて、一般の人は診てあげませんよ、国鉄の従業員だけよと言っておるわけです。これが年間に何ぼ赤字が出るかというと、約二百億円の赤字が出る。こういうようなものは民間病院に肩がわりできないものなのか。一年に一つの病院が二百億円赤字を出すということは、この負担は大変ですよ。地方線十線ぐらいの赤字に匹敵する赤字ですね。こういうことも案外取り上げられておらないが、やはりメスを入れていかなければならない。  それから、不採算線として問題になるのは新幹線ですよ。整備新幹線をこれからやるのかやらないかはっきりわからぬが、ことし二十五億、二十五億、合計五十億調査費を出した。これはやることを前提としてやっているのでしょうが、整備新幹線をつくって、だれが一体どの程度乗るのかということは、大問題中の大問題だと私は思う、現在まで新幹線をつくったら人が減るということになっているのです。それは、たとえば博多-東京間というのを見ればわかるように、昭和四十八年に、指数で申し上げますと一〇〇人の人が乗っておった。ところが新幹線をつくったら、昭和五十年に在来線と両方合計で一四六まで上がった。鉄道一本のところが二本になるのだから上がるわけだ。ところが、それが五十一年、五十二年、どんどん下がって、いまや八三、八四。ですから、在来線一線のときよりも、二本引いたら乗る人は少なくなったということなんです。それはなぜか。その反面に飛行機の利用がうんとふえてきた。それはそうです。国会議員が博多から東京まで無料のパスを持っているわけですが、聞いてみたら、ほとんど乗っている人はないな。無料の人が乗らないのですから、金を出す人はもっと乗らないですね。お金でも、日当でもやるから国鉄に乗ってくれと言えば別ですよ。そういう状態の中で今度は整備新幹線というのは、たとえば博多から鹿児島へ行くんだ、あるいは長崎へ行く、あるいは青森から北海道ということが言われておるわけです。ところが、こういうようなものは私は大変なことになると思いますね。これは飛行機賃との関係ももちろんあるのでしょう。博多-東京間というのは、グリーン車がいま二万一千五百円、飛行機が二万円ですね。それから札幌-東京間というのは、いまグリーン車が二万二千五十円、飛行機が一万八千八行円ですね。したがって、昭和四十八年に国鉄を一〇〇利用した人がいま三八ですよ。札幌-東京間は汽車の利用というのは三分の一になっておる。ジャンボを飛ばしますと、あれは一台四百九十八人乗りで、ジャンボ二台で一列車以上になってしまうのですよ。一方において運輸省は、飛行場を広げろ、地方飛行場拡張、ジャンボ乗り入れをやっておるわけですよ。一方においては国鉄新幹線を引いて、人間の数を倍にふやすというのならいいけれども、そういう人口計画があるのですかな、ぼくは聞いたことがない。ということになると、やはり計画に無理があるのじゃないかというふうに私は思うのです。  しかも、新幹線を引いたらどれぐらい赤字になるかと運輸省が試算をした。ところが、この試算が問題ですね。全部政府がただでやってくれれば、昭和七十五年にはとんとんよりもよくなりますよというようなことを言っているのですが、とんとんじゃないんだな、それでも四千六百十五億赤字が出る。だから、政府が現行の補助率、いまやっているような方法で新幹線をつくればどれだけ赤字になるかというと、一年間に在来と新幹線、両方で一兆七千二十八億円赤字になる。その中で、北海道だとか北陸だとかありますが、北海道の場合は在来と両方で四千億円ぐらい赤字になる。北陸は在来と両方で六千億円ぐらい赤字になる、現行の補助率でやれば。それでも整備新幹線を強行して、財政再建をやりながらできるのかどうか。参議院選挙前だから余り言わない方がいいかもしれないけれども、しかし、これはそういう問題じゃない。そういう問題じゃいかない。  いずれにしても、これらの問題は経済社会の変化に相応したことを考えないと、経済はどんどんどんどん変わるんだから。ただ昔の発想だけで、おれのところは鉄道を引くことになった、ほかの方に引いたからうちの方も引いてくれというようなことだけで政治家が勤まるのなら、だれでも勤まるよ。政治家全体の責任の問題だと思いますが、それについても、その頂点に立っておる総理の所見はいかがでございましょうか。
  154. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 渡辺さん冒頭で、事実を国民に知らせるように、事実を究明して国民に知らせて、その理解の上に立たないと何事もできないということ、あわせて、執行当局が惰性によらないで勇気を持って発想の転換をやらないと、とてもこの時代に対応できないではないか。食管の問題、国鉄の現状、事実に照らした御説明を踏まえての御質問でございました。私も、あなたの事実を踏まえての御主張、大変傾聴いたしたわけでございます。また、それに対して在来の観念で、マンネリで処理しておっていいというような、そういう悠長な環境でないことももう申すまでもないことでございます。問題は、これに対してわれわれがどう事実をもってこたえるかということだろうと思います。論議よりもそういう切迫した事態になっておるようでございまして、政府として御鞭撻にこたえて鋭意努力しなければならぬと思っております。
  155. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 私は、これからの総理大臣は考えようによってはやりいいと思うのですよ、もう小細工は要らないのですから。ありのままにさらけ出しちゃえばいい。じゃ、そんなことを言うなら君かわってやれと言われたら答えを持ってこれないのだから一番楽なんですよ。じゃ、おまえかわってやってみろ、どうすればいいのだ、教えろと言われたら、実際はなかなか手がない。ですから、あたりまえのことをあたりまえにさえやればいいので、そのことをわかりやすく国民に説得して理解してもらえばいい。それだけのことですよ。ですから、あたりまえのことをあたりまえにわかりやすくやっていくというだけでいいんじゃないか。開き直ってみれば一番楽じゃないかと思うのです。また、開き直る以外にうまい手品はないのだから。ですから、私は、それは勇気を持ってやってもらう、誠心誠意やってもらうということだと思います。  次に電電公社ですが、この間も何かやみ給与とか何か言われておったが、あれは二十何年間の長い歴史のあるものだということで、一人にすればわずかなものではありますが、これは私は別にきょうは触れません。触れませんが、かなりもうかっている。すでに余剰利益を一兆四千億円も持っておる。ことしも三千億円ぐらいもうかる。じゃ、それだけうんと努力をしているか。なるほど努力もかなりしておる。しておりますが、そのかわり編み物部隊なんというのもおりまして、遊んでいる人もいるわけですよ。それでも独占企業ですから、これはもうかるのですよ。しかし、データ通信のように競争部門はやはりもうからないのですよ。しかし、電電公社全体的にはまあまあよろしい。よろしいが、しかし、ただよろしいというわけにいかぬよ。  それだけもうかっているのだから、電話利用税で政府へ三千億も納めてもらうか、そうでなければ、もう一兆四千億円余剰があればそれ以上うんと認める必要はないのじゃないかと私は思うのです。でなかったら、いま世界一高いのは何といったって遠距離通話ですから、東京都内は十円でかかるが、栃木県の方へ行くと、三キロ離れた隣の町はもうみんな遠距離通話になっちゃう、十キロ離れたところもなっちゃう。こういう遠距離通話がべらぼうに高い、東京-北海道、東京-鹿児島なんか。一カ月に二十万、三十万金を取られる代議士がざらにいる。これは考える必要がある。だったら夜間割引ももっとやるべぎだ。でなかったらば三千億円政府にいただくぞ。王手飛車とり、電電公社総裁、どっちがよろしいか。
  156. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答え申し上げます。  私ども電電公社は、御案内のように四十九年、五十年、五十一年と三年赤字が続きまして、五十一年の十一月に参議院で法案が通りまして今日まで経過しております。その結果はきわめて順調に経過しまして、平均一・五%ないし、ことしなど予定の見積もりに対して二%増収でございます。いま先生がおっしゃった一兆数千億という余剰金は現在までの余剰金の累計だと思っていますが、確かにその程度でございます。これは本当は加入者に還元すべきものである。しかし、還元するといいましても個々の人に分けるわけにいきませんので、従来二十三年間、この利益剰余金は全部建設投資の一助として外部資金にあわせて投資しております。したがってその利子の負担が軽減されるのでございます。五十五年の今日まで非常に順調に経過しておりますが、いまの料金制度を見ますると、何といいましても、世界各国に比べまして市内料金は大ざっぱに言いまして四分の一あるいは二分の一、世界各国の先進国に比べまして安い料金です。問題の遠距離料金につきましては、二倍ないし二・五倍くらい高うございます。これは誇りになりません。胸張っていばるわけにはいきません。この料金は確かにこの二、三十年の間に行われた技術革新の一番恩恵の深いところでございまして、マイクロウェーブとか同軸ケーブルとか、往年に比べれば非常にコストが安くなっておることは事実でございますので、常にこの料金を下げようと努力しておりまして、この歴史も、一時は市内料金の二百倍、その次には百二十倍、その次には百倍、現在は市内料金の七十二倍という高い料金になっております。これは皆様から非常によくしかられ、また早く下げろ下げろと言われておるところでございまして、私は機会あるごとに必ず下げるということを言明しておりますが、さらばと言いまして、まだ料金値上げをした効果も、五十三年度をもちまして三年続きの赤字を消し込んで、大蔵省の方に借りました一時借入金の六千億というものをちょうど完済したのでございまして、五十四年度からは本命の黒字が出ております。これはいまのところは建設投資の一部に投じておりますけれども、この次の料金の値上げは、また数年の後には必ず何か料金の底上げをしなければならぬという時期が来ますので、ぜひとも市内料金を少し上げて、市外料金をもっと下げるという方向でいかなければならぬと思います。  しかし、もっと早目に何か国民の皆さんにこれをお返しする方法はないかということを研究しまして、先般も郵政大臣からの御指示もございましたし、大臣も旅行中にそういう御発言をなすったように承っておりますので、とりあえず夜間の割引を早い機会にもっと幅を引き上げるというか、もっと国民の皆さんが棲んでくれるような率に画そうというのが、いまのところの精いっぱいの案でございます。また、機会あるごとに料金の問題については国民に還元すべきものであるという精神をいつも持っておりまして、ただいまのところは建設投資に投じておりますけれども、とりあえずは夜間割引というものを考えております。
  157. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 そうすると、夜間割引はいたします、近いうちにね。しかし、遠距離料金は市内料金を上げなければだめだと言うんですな。いま三千億円ももうかっているんだから、それで、おたくの方は給与も悪くないんですよ。たとえば年金なんというのは一番いいのじゃないかと私は思う。国家公務員の局長クラスのやつを調べてみたら、大体二十八年で恩給期間が八年間、共済期間二十年として、大体年額二百八十万くらいですよ。国鉄が二百七十五万くらいですよ。電電公社は三百十七万ですね。大体そこら辺に行っておる。それはそのはずだ、もうかるんだから。KDDだって、民間でやってあれだけむだ遣いをしたって、もうかって税金を納めるんだから。独占企業なんだから。KDDがもうかって、電信電話公社がもうからないわけがない。だから、もうかっているんです。もうかっているんだから、余りうるさいことは言わぬが、市外通話も市内通話をともかく上げてからなんと言うんだったら、とりあえずもうかっているのを吐き出してもらいますよ。よろしゅうございますか。
  158. 秋草篤二

    ○秋草説明員 夜間割引の方は、これは郵政大臣の認可だけでできますから、簡単とは申しませんけれども、数カ月あればできますけれども、これを実行できるのは暮れだと思います、機械をやはり直さなければなりませんから。  本料金の方は、御案内のように法定料金でございまして、国会にかけなければならぬのです。これをかけてみて、すぐまた二、三年たてば私は減収の時代が必ず来る。毎年毎年収入の額よりも支出の額の方が多いのでございますから、必ず来る。現に、五十一年度の料金値上げのときも、この料金は何年までもたせるかということは、皆各党の先生方から御質問がございました。そのときに私どもは、五十四年度までは絶対に上げませんということを申し上げたのでございます。すでに五十四年度は過ぎておりますが、私は五十五年度、五十六年度までは十分もたす、もっと一カ月でも二カ月でも持ちこたえることが加入者なり国民の皆様に奉仕することである、ますます増収に励めということを叱咜激励しておりますが、これを仮にちょっとでもいじれば、翌年すぐまた上げる作業をしなければならぬということでございまして、その精神はいつも持っておりますけれども、なかなかそう簡単にはまいらぬのでございます。
  159. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 公共企業体は大体そうなんですよ。これは板野さんにでもやってもらうか、国際電電の元社長にでも。それは、国際電電が税金を納めながら黒字なんですよ。国内の電電が、ともかくこれだけの通話量がふえてきたり何かして、またすぐに赤字になりますということは、やはり私はちょっと経営に緩みがあるのじゃないかという気がするのですよ。私はよく調べてないから、少し時間をかけて調べさせてもらいたいと思っておりますが、いずれにしても、経営の改善ということ、生産性の向上ということについては層一層がんばってもらわなくちゃ、その決意のほどは表明してもらわなくちゃ帰すわけにはいきませんよ。
  160. 秋草篤二

    ○秋草説明員 生産性の向上につきましては、私、数字をもって証明できますけれども、今後とも一層姿勢を正して、国民のために増収に励み、また節約を図って、この料金を持続する。また上げる機会もできるだけ上げ幅を少なくする。その場合には、遠距離料金は下げた上でもっと是正を図るということをお誓い申し上げて、お答えといたします。
  161. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 では、時間の関係もありますからこの程度にいたして、次に進みたいと思います。  次には医療問題。いよいよ本番、医療問題について。  私は厚生大臣もやらしていただいたことございますが、厚生省が生活の保障をしたり、健康の保障をしたりすることは、これはできないのです。やはり自分の健康は自分が守る、自分の暮らしは自分が守るというのが、これは自由社会の私は原則だと思うのです。しかし、守れない人がおるし、守ろうと思っても食品添加物にいろいろなものが入ったり公害が多かったりで守れないですから、そういうものは国が、公的機関が責任を持って排除していかなければならぬと私は思うのです。しかし、原則はどこまでも私は、自分の病気は自分であって、酒飲むんじゃないよと言うのに毎晩一升酒飲んで病気になって、アル中だから国にめんどう見ろなんて言われたって、実際は困るんだ。めんどうは見てますが、そこの場では保障はできない。医療の問題というものは非常に進んできて、そして世界の長寿国になったということも、医療が非常に役立ったことも間違いないし、いろいろな病気が治るようになったことも大変ありがたいことでございます。ではございますが、医療費の額というのがどんどん毎年ふえてきたということも事実でございます。  それで、世界どこの国でもこの問題で大変頭を痛めている、これも事実でございます。いまや日本国民所得に占める医療費の割合は五・六%、かなりなものになっておるわけです。仮に欧米並みの老齢化になったとすると、いまの状態でもすでに八・七くらいになるんです。もう大体世界一くらいの負担率になってくるわけです。ですからこれは大変な問題。不況の問題や財政難の問題と絡んでこの展望は大変だ。額が大きい。年々使われる額というのは、昭和三十年は二千三百九十一億円だった。昭和四十年には一兆円、とにかく五倍になっている、一兆一千二十四億円。四十五年には二兆五千億円、約倍。五十年には六兆四千六百億、倍。五十五年には十一兆九千九十一億円、これも約倍。大体過去の二十年の趨勢は五年ごとに倍、倍、倍、倍で来ているわけです。したがって、あと五年たったら二十何兆ということになりかねない。国民一人当たり二十万円という話です。大変な負担ですね。しかし、必要なものなら仕方がないと思う。  しかし問題は、これはいろいろ複雑な問題がある。そこで、医療費が莫大にこういうふうにふえてきて、しかも約三〇%強は国庫が持っておる。ことしも先ほど言ったように、三兆五千億円というものは医療費に対する補助金になっておる。しかも、この補助金には会計検査院は目を通してないし、だれも目を通してない。したがって、その使われ方に大変なむらがあるという大きな問題があるわけであります。  そこで、一体医療費というのはどうしてむらがあるんだろうか。参考までに申し上げますというと、一カ月の外来患者一人当たりの平均の治療費、正確に言えば一件当たりですが、一人当たりと言ってもいいです、政府管掌保険の統計を見ると、京都は昭和五十二年で一万一千十六円、大阪が一万六百七十三円、北海道が一万六百五十一円というようなことで、徳島、愛媛、福岡、香川、長崎、愛知等はみんな大体一万円ちょっとのところです。西の方が高い。低い方はどこかというと、一番低いのが沖繩の一件当たり六千九百三十四、その次は千葉県が七千四百十二円、埼玉県七千七百五十六、山形県七千八百三十四、静岡県八千十七、神奈川県八千百五十六、大体東京近郊が低いです。大体九千円ぐらいが中どころ、こういうようになっておる。  ところが、おもしろいことには、患者一人当たりの医療費の多いところには長者番付に開業医が多いですな。これはおもしろい。ともかく保険の請求に対する審査というのは支払基金というのがあって、その機関でやっておるのですが、むらが非常に多い。西高東低型医療費で、これは冬型気候と言われるのですが、西が高くて真ん中が低くて北海道にいってがんと高くなるわけです。この金はかなりの金額なんですね。お医者さん一人当たりにいたしますと、八千万円ぐらいの金を使っているわけですから。歯医者一人にすると二千七百万ぐらいの金、そのうち三割ぐらいが、国の補助金がそこを通して医療関係者のところへ流れておるわけです。  そこで、三千万円以上の医者というのはどれくらいいるかというと、「クリニックマガジン」という雑誌で、毎年毎年これを専門に取材している雑誌がある。その雑誌のものを拾ってみると、高知県などでは医師の中の六二%、つまり医者の六割以上の人が、七割控除後でも一千万円に該当する。ですから、医者の所得というのはかなり高くなってきた。それで三千万円以上の人は何人いるかといったら、約一万三百四十二人います。五千万円以上といったら三千二百四十八人、これぐらいいるわけです。三千万円というのはやはりかなりの高額所得ですよ。総理の月給の大体倍でもないが、総理の月給より多いでしょう、間違いなく。新日鉄の重役よりも多い。ですから、三千万円というのは高額所得でしょうね。超一流会社の社長だってそんなにもらっていませんから、せいぜい二千万くらいですよ、総理大臣の月給くらいですよ。ですから、やはり二千万円以上というのは高額所得に見なければならぬ。  ところが、どんどんどんどんふえて、いま一億円以上の人が三百九十三人いますね。どこにいるか、北海道に五十四、大阪四十六、愛知二十六、福岡二十三、東京十九。五千万円以上になったら三千人いるわけです。北海道が三百二十一人、愛知が二百三十六、大阪二百二十八、それから福岡が二百十一とかいる。じゃ、一ランク落として医者で三千万以上の所得の人、北海道七百三十八、大阪六百七十七、愛知六百七十二、福岡六百四十八というように大体同じところにかたまっているんですね。北海道なんというのは非常に多い。問題がある。  そうすると、そういうふうなことで医療費にいろいろなむらがある。府県別にむらがあると同時に、まじめなお医者さんもある。むちゃくちゃ、物すごくまじめで、神様みたいな人がうんといる。頭の下がるような、本当に赤ひげ先生がたくさんいる。私の支持者なんかそういう人ばかりだ。(発言する者あり)いやいや、本当だよ。  そのかわり変なのもいる。変なのも多い。それは何といったって、もう極端なこと――時間の関係で簡単に申し上げますけれども、それは総理にも知ってもらいたい。いまでもやっているんですよ。裁判をやっているのがいる。かつては日本医師会の副会長かなんかで、中医協の委員までやった人です、大阪の大将。これが、全国の平均治療費がいま言ったように一万円ぐらいだというのに、この人の昭和五十三年から五十四年三月にかけての一カ月間の平均治療費は、外来患者、外来で来る人は何ぼだと思いますか、総理大臣。これはクイズですよ。
  162. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 よく承知いたしておりません。
  163. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それはわかんないですよ。それは二倍や三倍じゃないんだから。ここ数年間、四年も五年もにわたって、二十倍とか三十倍ですから。去年は四十倍以上ですよ。外来患者一人で取っている金が、驚くなかれ四十一万七千円ですよ、保険の請求が。家族が三十三万一千円。一番最高に払った人が六十歳の男の人で、一カ月に外来で百三万円請求しているんですよ。何を治療するのですか、こういうのは。治療は病名が多いということです。病名が多くて、外来患者平均病名が十三・四個、多い人が二十二ないし二十三。どんな病気か。それはたむしだとか湿疹だとか、この辺の擦傷とかいうんじゃないんだから。みんな肝臓から腎臓から何からもう全部悪いんだから。そんな二十三もつけられて、てくてくてくてく外来患者で通えますか、普通。こういうのはけちがつけようがないというんですね。みんながこんなまねをしたら一体どういうことになるんですか。それで検査が八六・四%、全国平均は八・六ですから約十倍、片っ端から全部検査ですよ。これがいまはやり出したんだ。みんな大変はやり出した。金があるからでかい機械を買って検査、検査、検査づけ。やたらにレントゲンをかけられたりしたら患者の方がむしろ困るんですよ。こういうものは、これこそ本当にぱちっと保険を取り消したいくらいですよ。どんな学問的なことをやっているのだか知らぬが、それでやっと監査に去年着手した。この人には前から監査は絶対できない。やっと監査が始まったという程度なんです。こういうのもある。この人は松下幸之助の次ですからね、所得は、数年間大阪で。  それから国富病院なんという兵庫にあるのも、これもひどい。これもともかくいろいろなことをやって、入院してない患者を入院したことにして四億五千万円も所得を上げて、四億からごまかして、返せと言われた。五年間に四億ごまかして、返せと言って返した。保険取り消し。それはいいですよ。ところが、自分で運用しているんですから利息ができるわけですな。四億もごまかして三年も四年も持っていたら、利息が五千万とか一億とかできてしまうですよ。この利息はどうなっているのだね、厚生大臣。
  164. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いま、医療費がどんどん高まるばかりでございまして、将来の日本の医療をどうこれに対応していくか、大変いろいろの事実を御指摘になったわけであります。渡辺先生は厚生大臣として「日本の医療ここに問題あり」という大変りっぱな小冊子をお出しになりました。医療費は西高東低、そこに何かあるのではないか、考えよ、こういうことでございました。いろいろ考えてまいっておるわけでございますが、さらに一層の御指導を得たいと思うのであります。  ただ、先ほど西高東低という問題の事実をお挙げになったわけでございますが、確かに政管健保あるいは国保におきましても、一人当たりの医療費の高い県は西に多いとか、あるいはまた東は低いということは御指摘のとおりでございます。ただ、医師の高額所得者番付とこれが一致するかどうか、これはいま的確な資料を持ち合わせておりませんが、御指摘になりました資料におきましては、これは必ずしも一致しない点もあるのではなかろうか。そういう点で、確かにいろいろ問題を考えていかなければならぬけれども、しかし、現在、医師の高額所得番付との比較の問題においてはそういうことが的確に言えないのではないだろうか、こういうふうに思います。(渡辺(美)委員「利息を聞いているのだ」と呼ぶ)  利息につきましては、医務局長からお答え申し上げます。
  165. 石野清治

    ○石野政府委員 国富病院の場合の不正請求額の利子については、取っておりません。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 これもおかしな話でしょう。税金を滞納したら、正当にもうけた金でも滞納したら利息を取られるのですよ。差し押さえもされる。不正に取ってきた金を自分で貯金しておいて、利息がついたら、見つかったら元金だけ返せば利息はいただき、こういうことが世の中にあるのですかね。大体その程度なんですね。そこらから想像してもらえば、どんな問題が伏在しているかということはうんとわかる。これは普通なら没収ですよ。元金を返させるのだから、元金に対する果実は一緒に返せというのは論理上からいってあたりまえじゃないですか、こんなことは。  それから、こういう人は余り告発されてないですね。それから、刑事事件にも、詐欺罪とかで余り起訴された事実がない。これはだれに聞いたらいいのかな。法務大臣かな。法務大臣はちょっと無理かな。では、警察庁長官でいいや。警察庁長官、こういうものは新聞に発表になっても警察が調べたという例は非常に少ない。これはどういうわけですか。
  167. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質問のような事件について告発があれば捜査をいたします。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 なければ何でやるわけですか。
  169. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 告発がない場合は、この種の案件というのはちょうど税金と同じで、大体こういうのは行政機関の告発を待って司法機関が動くというのがたてまえになっております。
  170. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 まあ慣例はそうかもしらぬね。しかし、余りひどいのは、たとえば国税庁で見逃しておるやつだって、先に検察庁が捜索して起訴することもありますな。だから、必ずしもそうじゃないのです。慣例はそうかもしらぬ。しかし、非常に中身が専門的だからよくわからない、だから告発を待ってということなんだが、これに対して何で告発をしないのかと私も厚生大臣に聞いてみたんですよ。ところが、告発すると医師会が騒ぐ、騒ぐことの方がデメリットが多いから告発しない、大体そういうことらしい。私が聞いてみたらそうだった。しかし、これはいけないことであって、社会的公正の確保という点から、告発がなくとも余りにひどいものはやるべきじゃないか。  この間のやつなどは告発をもってやったわけですけれども、東京の武居という歯科医が死んだ人や何かの歯を治療して五億円の不正を働いておった。死んでる人まで治療してしまうのだから、火葬場へ行った人も治療済みだ。  それから、ごく最近の、去年の五月の診療分で、神奈川県に相模外科病院というのがありまして、これは患者一人に何ぼ請求してきたかというと、九百五十万八千七百円、一カ月に請求してきたのです。一人の入院患者の請求代金が九百五十万八千七百円。六十歳の男。これは病名は食道静脈瘤とかなんとかといろいろついている。ついているが、幾ら何でも一カ月の入院代金がちょっと多い。がんの治療したってこんなにつかないのにちょっと多いんじゃないか。調べてみたならば、薬代間違ったと言うのです。何倍ぐらいに水増ししたと思いますか。大体わかりますか。(「総理大臣に聞け」と呼ぶ者あり)まあ聞いてもわからないでしょう。仕入れ原価の二倍とか三倍というのが普通だけれども、千倍。水増し千倍。それはどういうことかというと、ミリグラムとグラムと間違ったというのだ。本当にミリグラムとグラムと間違って薬飲まされたら死んじゃいますよ、千倍飲ましたら。それがだれもわからぬで全部支払われてしまったわけですよ。それで、神糧連健保組合というのが、ひどいじゃないか、県庁でこれは払えと言って、払ってしまったというのです。だけれども、おかしいと言って突き返したら、ああ済みません、千倍に間違い、ミリグラムとグラムと間違ったのです、四百五十万直ちに返してよこした。  これは特殊な例ですが、こういうことが何十例とあるのです。時間がないから一々言えませんが、私は少し極端なやつだけを御紹介したんだけれども、こういうものというのはたくさんあると見なければならない。まじめな人もいるが、でたらめもある。  そこで、監査というのをどれぐらいやっているかと思って調べてみたら、医療機関で保険金を受け取っているのは十一万八千百十。その中で、昭和五十三年で指導を受けたのが医師と歯医者で五千五百六十七、それから監査を受けたのが四十四件。ですから、万に三つですね。監査は一万の診療所に対して三つ。そのうちで指定取り消しを受けたのは二十四件ですから万に一、これが本当の万が一というものなんです。これは公金取り扱いですよ。会計検査院も関係ない、会計検査院が検査したことないんだから。だからこういうように監査が非常に少ない。  そしておもしろいことに、監査の少ない県に先ほど言ったような高額所得者がいる。去年一年間監査を全然やらぬ県、北海道、京都、高知、徳島、愛媛、愛知。監査が非常に少ない県、大阪、兵庫、一件とか二件とか。これはわかりっこないのですよ。ですから、これは非常にむらがあるのですよ。医師の中の不公平なんですよ。まじめな医師とでたらめとの不公平なんですよ。それで医療費が足らない医療費が足らない。でたらめの方はでたらめしほうだいに取っておいて、野放しにさせておいて、それで医療費が足らぬ足らぬでは、むしろ医師会内部が問題にすべき問題じゃないか、専門家同士の集まりなんだから。保険料も上げられないということになれば中の分けっこなんだから。だから、おまえがあんなふうに薬千倍も取ってはいかぬぜとかというのは医者が言わなくちゃ、おれの分まで取っちゃったんじゃないかとか、本当の話が、それを私はやるべきだと思う。ところが、そういうことをやるどころじゃなくて文句ばかりたれているんだ、実際の話が。こういう問題については、本当に問題がある。  厚生省は最近、要するに監査をやらせるについては医官だけでやらせたってなかなか帳面の見方がわからないとかなんとか問題があるでしょう。したがって、事務官でそういうことにも詳しい、帳簿とか経理とか金の動きとかいうことにもわかる人、補助者をつくったのですね。ところがその補助者に対して――こういうふうな補助者をつくって今度は監査をさせますからと通達を出した。お手伝いさせますという通達を出したところが、今度医師会が文句を言ってきたわけですな。それで、そいつに対して厚生省はつい最近また通達の出し直しをやった。結局はそういうようなものは受け付けない、だから絶対にそんなものは拒否せよという指令通達を医師会の方が出したわけです。指導監査専門員を助けるということで保険医療事務指導官というものを設置して、それにやらせようとして通達を出したところが、各都道府県の医師会に対して日本医師会が、保険者の医療事務に対する指導が全く考慮されていないとの理由から、この医療事務指導官による指導監査は拒否すべきであるとの結論に達しました、ですから、拒否を明確にしなさい、そういう者が来たって拒否だよという通知を出した。  こんな通知を出したって関係なく行ったらいいじゃないかということになるのでありますが、ところが医師会と厚生省との間では、もし監査をするときにはあらかじめ地方の医師会長の御了解を得るという慣例になっておるのです。(「答弁しなさい」と呼ぶ者あり)いや、私は大臣やったからわかっているんだよ。そういう慣例になっている。この申し合わせば昭和三十五年につくられておる。この申し合わせばいまでも有効なんですか、どうなんですか。これは事務当局で結構ですから、医師会との申し合わせば有効なのか。
  171. 石野清治

    ○石野政府委員 三十五年の日本医師会それから日本歯科医師会との申し合わせでございますが、現在でも生きております。  その申し合わせの趣旨は、指導の徹底によりまして不正請求等の事故を極力未然に防ごう、こういう趣旨でございまして、そういう趣旨から指導を行っているわけでございますので、その廃棄は必要ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それでは私の質問に答えていないわけです。こういう拒否通知が行っていますと、事前に相談に行ったって医師会は拒否をする。医師会が拒否しているものは、監査も指導もやらないのです。事実関係だけを明らかにしてください。
  173. 石野清治

    ○石野政府委員 各県それぞれ事情がございまして画一ではございませんけれども、多くの県におきましては先生のおっしゃるとおりだと思います。
  174. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 法律から言えば、監査はしなければならないとなっているのです。おかしなものについては監査はしなければならない。ところが申し合わせによって、監査や指導をする場合はまず医師会の了解を求めて、医師会に立ち合ってもらった上でやりなさい、したがって、医師会が立ち会わなければ監査も指導もやらない、大部分そうなったのです。  そうすると、医師会の力が強くなるわけですよ。医師会がオーケーと言えばすぐ監査されてしまうし、ノーと言えば監査できない。(「どっちが法律だ」と呼ぶ者あり)本当にどっちが法律だ。これが問題なんです。これは厚生大臣だけ言ってもなかなかできない。党全体、国会全体でバックアップしなければできないのです。みんなでバックアップしなければできない。  それは、実際そういう監査をするとき、例が悪いかもしらぬが、たとえば何か不正を働いておる者がおる場合、あれは詐欺か何かやっているのじゃないか、職もないのにどうも家の中に財産がうんとできた、一応内偵して調べて聞くのに、まず詐欺団の団長のところに警察が行って、申しわけありませんがちょっと調べたいのですけれども立ち会ってくれませんか、お許し願えますかと警察庁がやるのですかね。そんなことやるわけないでしょう。そういうような不正が濃厚だという場合は、実際問題として、もう立ち会うも立ち会わないもないのですよ。こんなこと拒否する理由もないのですよ。ですから、こういうものは厳正に、いい人を何も責めるわけじゃないのですから、国民の医療を明朗にするために厳正にやるべきであって、医師会が一々反対したならば何もできないということでは困るのですよ。  それから、もう一つは法律事項もあるのです。たとえば中央医療協議会議事規則には、三分の一欠席したならば流会と書いてあるのです。診療側は三分の一以上持っていますから、気に食わなければ出てこない。出てこなければ何も決められないのですよ。法律がここで決まらなければだめだとなっているから進めない。したがって、厚生大臣は診療側とかそういうものに対しては常にびくびくしているというのは本当なんです、私もずいぶんびくびくしていたんだから。  事実関係はそうなんです。だから、こういうような問題についてはやはり高度の政治的な対処の姿勢が必要なんです。これは必ずしも、日本医師会がこんなことを言ったからといって、個人個人の医者がみんなこれと同じで騒いでいるなんということはないのですよ。そんなことは少ないのです。むしろ強制さしているのだ。だから、こういうものに対して国民の反感は強いし、私は決して厚生大臣だけを責める気もないし、役人だけを責める気もない。みんなでこういう実態を知った上で、こんな不当な、不正な要求、横暴にはみんなで対処していかなければ、役人に任せたってとてもできっこないですよ。総理大臣の所見を伺いたい。
  175. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 不正は正さなければなりません。承りますと、長い間の積弊であるようでございます。いろいろ是正にかかるにいたしましても、政府部内におきまして検討をいたしまして、実効の上がる措置を考えてまいりたいと思います。
  176. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 時間の関係もありますからこの程度にしておきますが、医療の健全化ということは、国民の財政上の問題ばかりでなくて、社会的公正の確保あるいはいろいろな面からも大変なことなんです。金額的にも莫大な金額であって、ここで一割節約されるとすれば、それは国民の負担が一兆円の金が浮く話です。ところが薬の請求は三七%、四兆以上の請求がある。実際の購入価格は三兆かそれ以下というのも事実。したがって、こういうものなどは、薬価基準に関する問題ですが、非常に大問題がありまして、これは直していかなければならない。だから、厚生大臣はもう本当に命がけでやるような仕事ばっかりなんですよ。だから、みんながバックアップをして、本当に公正な厚生省になってもらわなければならぬと思うわけでございます。  そういうふうなことで、医療費が仮に浮いたからいいというものじゃなくて、需要はもっと多いのですよ。僻地医療をどうするのだとか、やれベッド差額をなくせとか、やれ急患をもっと大切にしろとか、高度の医療をもっとやれとか、ますます需要は多いのですから、そういうでたらめをやった者をそんなふうにやっていったら、とても負担し切れるものじゃない。こういうことは外国でも、ドイツあたりでもかなり厳しいのです。日本のようにびくびくしているところは余りない。したがって、これはぜひともやっていただきたいのであります。  次にエネルギーの問題をやらしてもらいますが、このエネルギーの問題も本当に石油の安定確保をどうするのかという問題、値段の問題も大きな問題でしょう。しかし、このこと自体は、日本の力ではどうしようもないことですね。ということになれば、対策はやはり消極的な対策にならざるを得ない。やはりエネルギーの確保の問題もしっかりやってもらうが、節約できるものは何でも節約するのですよ。七%も結構。しかし、外国でみんなサマータイムというのをやっているのです。日本でもかつてやったけれども、疲れるとかいってやめちゃった。サマータイムは余り御利益がないと言う人もありますが、アメリカでもサマータイムをやろうというようなことでやっている。日本はどうですか、総理、サマータイムは余り御利益がないですか。
  177. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 サマータイムがなかなか実施に移せない原因をお話し申し上げます。  それはいろいろありますけれども、一番主なものは国際飛行場の問題でございまして、御承知のように、深夜の何時までしか飛行機はおりてはいかぬという取り決めが地元の皆さんとの間にできておったり、あるいは伊丹のように高裁で最終的な時間を決めておったり、そういう事情がございますので、それを変えるのに大変問題があるということが一つと、もしそうでなければ、こちらを変えないとすれば、逆に外国から飛んでくる飛行機の出発する時間を早めなければいかぬわけでございますから、早めるための交渉を相手国、特に国際航空運送協会といったようなものとそれぞれ交渉しなければいけません。やはりなかなか時間がかかる問題でございます。といっても、それはかかってもやるものはやった方がいいのではないかということで、この前の閣僚会議で、これをひとつ実行できるように継続的に今後進めようじゃないかということで進める手はずにしてございます。
  178. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 進めてもらえれば結構であります。  それから、もう効率的な利用ということをするためには、そういうような産業部門に対してはいろいろ助成をしたらいいのじゃないか。石炭を使ってセメントをうんとつくるというようなことを現にやっていますな。そういうものはうんと改めて助成をしてやったらいい、そう思っておるのです。それで、うんとエネルギーを消費するような冷暖房等、ぜいたくにできているようなものは、何か課税でもするとか、ブレーキをかけるようなことも、ことしは間に合わないとすれば、来年からでもいいからやるべきである。  それから代替エネルギーの促進、これは当然過ぎるほど当然でございます。長期展望として核融合、そういうようなものも当然私は進める必要があると思う。  問題は、電気料金の値上げの問題でありますが、これも原料代は仕方がないと言えば仕方がないでしょう。しかしながら、要するに定額償却をしておったものを、円高差益でもうかり過ぎたからといって、今度は定率償却に減価償却の方法を変更します、うんと一遍に経費がとれるようにしますという申請など、この際は認めるべきではない。もし仮に何分の一かを認めるとすれば、それは代替エネルギーのために努力をした原子力部門とか、石炭部門とか、水力部門とか、そういうところに対する新規投資については私はいいと思うけれども、そういうことはめんどうだからやらぬで、石油だけでやってきた連中、その連中がのうのうとして、おれたちにも余分に水増し経費を認めてくれよというようなことで申請を出しているようだ。こういうものは認めるべきではありません。これは円高のもうけ過ぎの回避の発想なのだから、そんな時代じゃないのだから、それはひとつハンディキャップをつけてもらいたい。  それから、人件費のアップでも、今度はガスとか電気会社に対してもう何十%値上げを認めてやるというときに、いい気になってやみ給与をどんどん出されたり、それはともかく、交際費とか一般の雑費とか厚生費とかをふんだんに使われたりしたんでは、国民の方もたまったものじゃないので、みんな苦しいんだから、そういう関係者だけがそれによって待遇の改善がよくなるようなことは厳に慎んでもらいたい。広告費の問題も同じで、やたらと広告を出す必要はないのであって、必要最小限度の、省エネの広告というようなものは必要だけれども、おつき合い広告をどんどん出し合っているというようなことも慎んでもらいたいし、経費の査定においては、こういうものには十分に厳格に対処するということを強く要求いたします。  一言、通産大臣の決意のほどを伺いたい。
  179. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 定率か定額かという償却の問題でございますけれども、これは昨年の三月の電気事業審議会の中間報告では、自今定率償却にしろというふうに出ておりますけれども、お話しのように、ただいま大幅な値上げのときでもございますし、必ずしもその審議会の報告どおりやるかどうかは、大変慎重を要する問題でございますから、慎重に考えたいと思っております。  また、特に原子力等の代替エネルギーに協力をした、そういう資産に対しての償却は別扱いにしたらいいじゃないかということ、まことに卓見でございますので、そういう点につきましては十分配慮してみたいとも存じます。  最後の、人件費、広告費等、こういうものは厳重にという点は、そのとおり賛成でございます。
  180. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 外務大臣、いまもう石油戦争なんですよね、これは。ソ連がアンゴラにキューバの兵を送ったり、エチオピアに行ったり、南イエメンに行ったり、アフガニスタンに来たり、私はこれはやっぱり石油戦争だと思っているんですよ。そういうキューバの兵隊が、好きや道楽でのこのこアンゴラの方まで出かけていくわけはないんだから、何か目的があって、裏でやらしておる人がおってやっておるのであって、そういう半分侵略的なものを黙認してくるからアフガニスタンの問題が出てくるわけですよ。  ですから、やっぱり侵略者は絶対にもうけがないということは、世界じゅうが一緒になって制裁しなければいかぬですよ。どんな小さな制裁でも、世界じゅうが一緒になってやらなければならぬ、私はそう思うんですよ。ヒトラーが、ともかくあっちこっち侵略しながら、一九三六年にオリンピックを開いて、みんな油断をさしておいて、その次の年には、ポーランドとかハンガリーとか、みんな攻め込んだわけですから。それと同じとは、私は申し上げませんが、しかし、侵略されたのは仕方ない、あそこらも仕方ない、こっちも仕方ないと言っているから、だんだん慢性化して広がってくるんですよ。それに対して、どういうように日本は対処するのか、どういう考えを持っているのか、一言だけお聞かせをいただいて、関連者に引き継ぎます。
  181. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘のアンゴラ、エチオピア、南イエメン等の情勢がございますが、これはソ連が軍事援助などをてこにいたしまして、機会に乗じて御指摘のようなことが、第三世界に対して勢力拡張を図る方法として行われておることは事実と思います。デタントというのが主としてヨーロッパ先進国の間で行われて、第三世界については、ある程度膨脹政策といいますか、そういうことがとられておることは、振り返ってみると、御指摘の点が当てはまるように思われるわけでございます。  こういう点で、今度のアフガニスタンにつきましては、これは単に西側先進国だけではございませんで、先ごろのイスラム会議などにもあらわれておりますが、第三世界を含む世界の多数の国が、このアフガン問題につきまして厳しい抗議をいたしておるわけでございまして、このような拡張政策が高いコストにつくということは、この際各国共同して措置をとるべきことだと考えております。
  182. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 では交代いたします。
  183. 田村元

    田村委員長 この際、浜田幸一君より関連質疑の申し出があります。渡辺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。浜田幸一君。
  184. 浜田幸一

    浜田委員 私は、今回の国会におきまして論戦を聞いておりまして、本会議場で各党の代表質問や、それに答える政府の答弁を聞いておりましてまことに残念に思ったことは、それぞれの政党が選挙戦を目当てにして、国家安全保障の問題について徹底的な議論をしていないという点でございます。(「総理答弁が悪いんだ」と呼ぶ者あり)     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕  いま社会党は、総理答弁が悪いんだと言いましたけれども、私は、社会党の質問のごときは問題にならない質問だと思っております。このことについて私は時間に制限がありますから、先に進ましていただきますが、総理、あなたはその質問にお答えする中で、ソビエトは防御の国だという言葉を使われました。ここに毎日新聞の中に一つの塚本委員が書いたものがございます。これを読み上げると時間がありませんから読み上げませんが、いままでの新聞の中ではなかなか書かなかったことをマスコミは取り上げています。ひとつ後でお読みいただいて参考にしていただきたいのですが、この中には、ソビエトは、チェコスロバキアに対しても、ハンガリーに対しても、あるいはフィンランドの問題にしても、すべて侵略国だと書いています。この点、本当にあなたが国会で答弁されたソビエトという国は侵略をしない防衛の国なのかどうか、もう一回ここで答弁してください。
  185. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は、国会でソ連が防衛的であるとか侵略的であるとかいうことを申し上げたつもりはありません。一つの特定の国が、その性格として、侵略的であるとか防衛的であるとかいうのを国会の場で断定するというようなことは穏当でございませんので、差し控えたいと思います。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、ソ連が近来軍備の増強に努めておると言われておりまするし、そのことは北方領土における配備の増強からもうかがい知ることができる客観的な事実だと思います。このことは、わが国が安全保障を考える上におきまして、潜在的な脅威であると考えざるを得ないと思っておりまするし、またアフガニスタンに対する軍事介入につきましても、いかなる角度から見ても是認できる性質のものでないことは、これはたびたび国会の場で申し上げたとおりでございます。
  186. 浜田幸一

    浜田委員 その点については、言われたことがないというのであれば、新聞紙上で間違ったことの書かれないように、ひとつ御注意をお願いします。  外務大臣に御質問申し上げます。北方領土は日本の領土ですか、どうですか、簡単に答えてください。
  187. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島は歴史的にも法的にもわが国の領土であり、サンフランシスコ条約でわが国が権利、権原及び請求権を放棄した千島列島には含まれておりません。
  188. 浜田幸一

    浜田委員 わが国の領土である北方領土にそれではなぜソビエトの軍隊が基地を持っているのですか。このことについて答えてください。
  189. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ソ連がその四つの島を実効的に支配しておるわけでございまして、その実効的な支配のもとでただいま御指摘のような行為が行われたわけでございます。
  190. 浜田幸一

    浜田委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、実効的な支配というのは侵略ではないですか。いま日本国民全体が、アフガニスタンに侵略したソビエトの軍事的な脅威に対して抗議を申しています。それはどういうことかというと、世界の平和をかき乱すために行動がとられているから危険だと言っているのです。しかし、その以前の問題として、わが領土である北方領土にソビエトが軍事基地を持っているということは、侵略以外の何物でもないと考えますが、そのことについて政府は、ソビエト政府に対してどういう抗議をしているのですか、このことについてお答えください。
  191. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北方領土につきましては、終戦当時ソ連軍が事実上進出してまいったわけでございまして、日本がおりますところを実力をもって占領したわけではございませんので、私どもはこういう場合を不法占拠と呼んでおるわけでございます。
  192. 浜田幸一

    浜田委員 私たちは、世界の平和を求める自由民主党でありまするから、多少のことはがまんをしなければならないと思いますけれども、子供たちに伝え残さなければならない領土を不法占拠されていながら、危険が伴うから物を言わずにいたのでは、国家の主権行為を守ることができない。当然われわれが仲よくしなければならないソビエトであったにしても、主張すべきものは主張し、大国の過ちというものを退けなければならない、まずそのことから始めなければ、よその国に侵略した行為に対して幾ら物を言っても、それは何にもならないと思いまするので、今後はそういう問題については、政府は声を高らかに主張するものは主張し、過ちを改めさせながら仲よくしなければならないことには仲よくするようにしていただきたい、このことを要望しておきます。これは時間がありませんので御要望だけ申し上げておきますので、お願いをします。  そこで、防衛庁長官、あなたはいまスパイ事件で非常に苦境に立っています。しかし、あなたがスパイをしたわけではないのですから、もう少し自信を持ってやっていただかなければ困ります。スパイをしたのはソビエトなんです。ただし、そのスパイ行為があったということに対する責任を問われているだけですから、あなたを首にするとかしないとかというのは総理大臣以外にできないわけですから、あなたが首を守るために物を言うのじゃなくて、国家を守るためにきちっと答弁しなさい。そうでないとこの国は守れませんよ。このことをきちっと防衛庁長官に御指摘を申し上げておきます。  そこで質問は、防衛局長、いま北海道でそういうことが起こっている。ソビエトという国は悪い国なんです。共産党はソビエトの問題について一言も触れないけれども、この間宮本委員長が行って仲よくしてきたから触れないだけの問題であって、そういうものに対して気がねする必要はない。そうでしょう。北海道に何個師団配置して、アフガン問題が起こってから自衛隊はどういう防衛努力をして防衛強化をしたか、きちっと答えてください。
  193. 原徹

    ○原政府委員 アフガン問題につきましては、大変違法な行為でございます。そういう国が北方領土を事実上占領しているということでありますから、これは私ども前々申しておりますように、潜在的脅威であるというふうに考えております。ただし、北海道には現在四個師団配置してございます。ことしの予算でその中の第七師団を機甲師団にするという処置をとっております。そういうことをいたしておりますが、北方四島におりますもの、それはおおむね一個師団弱ということでございますから、そのもの自体について特別に配置を変えるとかということはいたしておりません。しかし、問題は、北方四島だけの問題ではございませんで、アジアにおきますソ連全体、そういうものについてどう考えるかという問題でございまして、私どもは今回の問題を契機として、国民の御理解を得ながら、ますます防衛努力をしなければいけない、そういうふうに考えております。
  194. 浜田幸一

    浜田委員 過般の質問の中でも、ブラウン長官と日本の政府との話し合いの中でされたことが、あたかも間違っているようなことで議論が展開されていますけれども、これは日米安保の内容そのものについても、改めてわが党においても協議し直さなければならない問題が出てきている。それは、極東の安全についてだけ先ほど社会党の方から質問がありましたけれども、極東の安全を守っていくために、世界全体の動きを守る努力をしなければ極東の安全が守り得ないのだということを、なぜ政府はもっと的確に答弁しないのですか。このことについては、大切なことですからきちっと腹に踏まえておいてください。日米の協議事項の中に、紙に書いてあるから、それ以外の問題については行動ができないとか、行動をともにしてはならないとか、そういうことを答弁していたのでは国家の安全は保ち得ませんよ、これは。  そこで、私が申し上げておくことは、どのような形で文章に書かれていようと、国家を守るために必要な条件は、われわれ自由民主党は守っていかなければならない。国家の安全を守るために、きちっと守るべきものはやっていくということを事あるごとに鮮明にしていただかなければなりませんので、この点も御注文申し上げておきます。  時間がありませんので、私は、基本的に国会のあるべき姿で間違っていた点を指摘しておきます。  これからも論戦が行われるでありましょうが、総理、日中平和友好条約が締結されるときに、私は反対しました。それはなぜかと言えば、日中平和友好条約そのものが、実は、アメリカの世界戦略の中においてソビエトを包囲する包囲網だったのです。だからわれわれは、日中、日ソ平和友好条約の同時締結を主張したのです。しかし、いま反対している、ソビエトに対して抗議をし、あらゆることをしている人々が何を言ったかというと、すべてが、日本中国と仲よくしましょう、そして、ソビエトを包囲するそういう包囲網のアメリカ戦略に協力しましょうということを一緒にやったということを、正しく理解していないところにあります。このことには反論があるかもしれませんが、私はそう考えます。  そこで起こるべきものが起こったというのが至当であります。私は、この問題については、今後の課題として皆様方により研究をしていただき、答弁の場合は、先ほど渡辺先輩が言われたように、ありのままの姿で、ありのままのことを国民に訴えてください。テレビの前で、紙を持って答える、頭だけを下げて、予算委員会だけが済めばいいという考え方で政府の皆さん方が事を運ばれていたのでは、国家の安全保障をきちっと国民の前に約束することができません。このことは、それぞれの閣僚が信念を持って答えるように御要望申し上げます。  そして最後に、私は一点だけ総理大臣にお答えをいただきたい。  あなたが低姿勢答弁をしていることは、国民の有識者に非常に感銘を与え、また理解力を高めています。それはなぜかというと、忍耐強い総理大臣だという価値観であります。しかし、あなたも心の中で、もう少し野党が成長してくれれば国家も守りやすいなあという気持ちもあるでしょう。その場合には、遠慮なくおっしゃっていただかなければならないこともありまするので、このことについてはお願いをします。  大蔵大臣、適正負担に高福祉が与えられるということを声を大にしてあなたは答弁してください。低負担で高福祉は与えられないのです。適正負担、高福祉というものは一緒に歩き続ける、この国を幸せにすることのできる唯一の方法だということを的確にお答えをいただくようにお願いします。  それから行政管理庁長官、あなたは二百二の審議会を直ちに廃止しなさい。ようございますか。いろいろなことをやったやったと言っていますけれども、行政管理庁がやらなければいけないのは、くだらない審議会の二百二あるものをたたき切ることです。これをやめさせれば、自民党の姿勢国民が合意をしてくれると思います。  どうかひとつ、平和と空気と水はただでは買えない、このことを国民の方々に理解いただけるように、それぞれが胸を張って、もし正しい政治をやっていて、野党連合政権で倒されるならば、笑って倒されてやろうではありませんか。彼らが天下を取ったって、三日もちませんよ。  質問を終わります。(拍手)
  195. 田村元

    田村委員長 これにて渡辺君、浜田君の質疑は終了いたしました。  次に、矢野絢也君
  196. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は、公明党・国民会議を代表して、総理並びに関係大臣に、内外の重要課題について重点的にお尋ねをしたいと思います。  外交問題とか安全保障問題は非常に重要な問題になっておるわけでございますが、これは、ちょっと質問しますと大分もめそうですわ、答弁できなくなると思います。もめるのは後にしまして、いま国民が一番関心を持ち、不安に思っておる経済問題あるいは行政改革問題等について先にお尋ねをして、その後、じっくり外交、安全保障問題について伺いたいと思います。  まず最初に、KDD問題について伺いたいのでありますが、KDDから品物が贈答された。この贈答先について、衆議院あるいは参議院その他でわが党委員が追及しておるわけでございますが、その贈答先の資料を、思い出して後ほど国会に出す、こういう説明がございましたが、その後、ございません。  そこで、国家公安委員長だと思いますが、伺いたいのでありますが、その後の事情聴取はどうなっておるか。贈答先の解明はされたのか、事件の全貌はどうなっておるか等について、御報告願いたいと思います。
  197. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 現在までの捜査の概要と捜査状況でございますが、昨年の十一月十四日に、御承知のように東京税関からの告発がございまして、自来、警視庁としては、告発分につきまして鋭意捜査を進めておるわけでございます。  そこで、当時の、十二月の四日と五日でございましたけれども、KDDの本社、関係者の自宅等二十三カ所の家、宅捜索をいたしまして、大体一万点ぐらいの証拠資料を収集いたしております。自来、この収集いたしました資料の検討、同時にまた、旧社長室関係者等に対しまして、延べ数十回の事情聴取を行うというようなことで、現在は、告発分についての関税法違反事実の立証、これを目標としまして、鋭意捜査を継続いたしております。  しかし、東京税関からの告発の中には、会社自体の違反もあるのだという告発があったわけでございます。しかも、十月一日及び二日の密輸行為、あの密輸行為と同じような行為がすでに相当長期間、継続的に行われておった模様でございます。その一連の流れの中で今回も行われた、かように認められまするので、その組織性あるいは計画性、継続性、こういった立証のためには、事犯の全貌をすべて解明をしなければならない。現在、捜査は着実に進展をしておるという報告を聞いておりますけれども、全容を解明をするというのには、何しろ事件が大変複雑でございまして、相当長期間を要するのではなかろうか、かように考えております。もちろん、これは関税法違反等の問題でございますが、それ以外の事実関係につきましても、これは二課の関係の事件として別途捜査をいたしておりますけれども、これまた捜査の途中でございますので、御報告をすることは差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  198. 矢野絢也

    ○矢野委員 政界、官界に対する金品、品物の贈答、これについての事実は把握しておられますか。
  199. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいまの御質問の点につきましても二課の関係の事件として鋭意捜査を進めておりますけれども、御承知のとおり、捜査途中の事件でございますから、それが把握しておるとも把握してないとも、今後の見通しがどうなるかといったことは、いまこの段階ではちょっと差し控えさせていただきたい、かように思います。
  200. 矢野絢也

    ○矢野委員 やはり一番国民がこの問題について疑惑を持ち、怒りを感じておるわけでございまして、もう少し明快に御答弁を願いたいわけでございますが、把握しておるのですか、おらないのですか、もう一遍言ってください。中身を言えと言っているわけじゃないのですから。
  201. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 犯罪の容疑はあるということで捜査をしておる段階でございまして、ただ、それが容疑があるという断定もいまの段階ではできませんし、同時にまた、全く犯罪の容疑なしというわけにも申し上げることはできないというのが今日の実情でございます。
  202. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は、犯罪の容疑云々で聞いているのじゃないのです。政界、官界に対する贈答の事実について把握しているかどうかを聞いているのです。
  203. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいま捜査の途中でございますので、御質問の点は捜査の内容に触れると思いまするので、差し控えさせていただきたい。
  204. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは後ほどまたもう一度伺いましょう。  なぜ私がこういう問題を冒頭に伺うかと申しますと、総理が一般消費税の問題提起をされ、それと並行していわゆる公費天国、公金のむだ遣いといったことが社会的、政治的な大問題になってきたわけでございまして、一般消費税が選挙によって国民の意思として否定された。やはり財政再建のためには行政改革、さらにまたそれに伴う綱紀の粛正、これが重要な課題になっておるから、私はその一つの代表的な事例としてこのKDD問題を取り上げたわけでございます。  そこで、話が変わりますが、これに関連して行政改革の問題で、行政管理庁として、特殊法人、これは非常に乱脈経営が問題になっておる。ところが、監察権というものが余りない。この網をかぶっておるのは現在四十八法人しかない。全体の百十一法人全体にこの監察権が及ばない。さぞかし仕事がやりにくいだろうと同情しているわけなんです。  そこで、当然こういった国民の要望、公費天国を正すという立場から、行政管理庁として監察権を拡大強化したいという御要望があるやに承っております。また、現に、もうお亡くなりになりました保利先生、当時の行管長官であった保利先生が、全特殊法人に監察権を拡大することを検討したい、このように昭和四十九年にも御答弁なさっておるわけでございます。この国会に、監察権の拡大を内容とする行管庁設置法の改正、その法案を当然提出されるべきであると思いますが、いかがでございますか。
  205. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 仰せのとおりでございます。本当に、わずか四十七、八の法人にしか監察権がないということは、KDD等の問題を発生せしめたゆえんであると私は考えておりますので、したがいまして、百十一全部に及ぼすかどうかは別といたしまして、とりあえず、そうした問題法人が私はあろうと思いますから、それに対しましてはそうした線で臨みたいと私は考えておる次第であります。
  206. 矢野絢也

    ○矢野委員 確かにそのとおりで、KDDに対しても、あるいは中央競馬会の問題、こういった問題も国民の疑惑を招いておるわけでございますが、お仕事にならない。いまの法律では、四条の第六項で、「監察上の必要により、公私の団体その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができる。」協力をお願いするということであって、これでは仕事にならないですね。  そこで、どうもこの国会提出について特に通産と運輸と建設各省が反対であるというふうに私は承っておるのです。とにかく各省庁が特殊法人を所管しておる、こんなに行管庁が権限を拡大されたのではわれわれの権益が侵される、よけいな口出ししないでくれと反発をして各省庁おしなべて反対のようでございます。とりわけ特殊法人をたくさんお持ちの通産、運輸、建設、これが非常に難色を示しておられるといいますが、各大臣、通産、運輸、建設、この監察権の強化に伴う行管庁設置法の改正案、これに御賛成であるかどうか、簡単に、賛成か反対か、お答え願いたい。関係大臣だけまずお答え願いたい。
  207. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 各大臣のお答えになる前に、私からちょっと現状だけ申し上げておきたいと思いますが、私はかねておっしゃるとおりの線で全部にそうした監察を強化したいと思っております。まだ私から大臣にはお話をしておらない段階で、事務局がそこはかとなくいま調べられておるという程度であると私は思います。したがいまして、大臣それぞれまだ御承知ないかもしれません。しかし、せっかくの御質問でございますから、こうしたことを契機といたしまして私もやはり事務局同士の話をもう少し進めるとかあるいは積極的な姿勢で臨みたい、その後に大臣と私との話し合いを持ってもいいのではなかろうか、かように存じます。
  208. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私は、まだ詳細は聞いておりませんけれども、内容をよく検討いたしまして御協力申し上げたいと考えます。
  209. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 まだ事務的には御相談がございませんが、そのような傾向になったら賛成するつもりでございます。
  210. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 建設省は万全の監督をしておりますけれども、ただいまのお話は、まだ具体的な話は聞いておりませんけれども、ぜひやっていただきたい。賛成でございます。
  211. 矢野絢也

    ○矢野委員 非常にいいムードですよ、総理。特殊法人の乱脈経理あるいは公費天国、これは各省庁、いま建設大臣も一生懸命やっておるとおっしゃっていますが、現にいろんな問題が起こっていることは事実なんです。身内のことを身内が監察するといったってどうもだめなんですね。行管庁といえども同じ政府だといえば同じ理屈になりますが、それでもやはり立場として強烈にやっていらっしゃる。これは評価しているわけです。  そこで、長官、各大臣そうおっしゃっているわけですから、この国会で監察権の権限の拡大強化の法案を出す、この方針をひとつここで明確に出してください。
  212. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 各省庁間のいろいろ問題がございますから、その線で私は積極的に取り組んでいきたいと思います。(矢野委員「この国会です」と呼ぶ)この国会に出し得るように。非常にむずかしい問題がまだあるらしいです。私は出せと言ったのです、本当の話は。しかし、ここで出すと言ってもし出ないとまた後退とかなんとか言われますから、私はその線で進めるべく努力をいたします。
  213. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理、この件についてひとつ決意をお聞かせください。
  214. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 当面のわれわれの責任は、現体制で不正事件の実態の究明、その対応策を徹底してやることが第一だと思います。監督官庁がまず全力を挙げなければならぬと思います。  第二段の策として、矢野さんが言われたように、行管の権能を拡大して対応していくというのも、一つの補完的な方法だと考えます。各省庁の取りまとめをやりまして、そういう方向で善処してみたいと思います。
  215. 矢野絢也

    ○矢野委員 特にこの行政改革、経費の節減という問題は、いまもう国民から大平総理に対して強く迫られている問題なんです。これがその一つの大きな武器になるわけですね。ですから、その方向というのは大体理解したいのだけれども、この国会で出すと明確に言っていただきたい。
  216. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう方向で努力します。
  217. 矢野絢也

    ○矢野委員 この国会でお出しになさるというふうに理解をしたいと思います。  それから、また行管にお尋ねしたいのだけれども大平さんが行革をやるべきだと、最初は消極的だったんだけれども、選挙以来にわかに熱心におっしゃった。それを受けられて行管で、削減する特殊法人はどれとどれかということについて、全部の特殊法人についての実態調査を昨年の六月からですか、されています。これが削減をする法人を決める有力な資料になったというふうに私は承知しておりますが、結局その内容はわれわれにはわからないのです。その調査結果を、閣議にはお出しになったのかどうか知りませんが、この国会にお出しになるべきだと思うのです。なぜこの特殊法人が削減の対象になったか、なぜこの特殊法人が残ったのか、判断の材料というものを国会に提出されるのが行革を進める大きなてこになると思うのです。この実態調査をこの国会に資料としてお出しいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  218. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 お出しするように努力します。時間が多少かかるかもしれません。というのは、これは行革を進めるための調査で、各省庁の問題事項を調査して、そして監察をして勧告するという事項でなかったものですから、報告書がまだできておりません。そうしたものを極力早くまとめて、そして御要請におこたえしたい、かく考えます。
  219. 矢野絢也

    ○矢野委員 まさにわれわれが知りたいのは、特殊法人はこれを削るという結論ではなくして、特殊法人にこういう問題があったんだという、その問題点が知りたい。国民がそれを知りたいわけですね。ですから、いま長官がおっしゃった問題点すべてを網羅した実態調査を、速やかにこの予算委員会に御提出を願いたい。時間がかかるとおっしゃらないで、お約束願いたいと思います。御返事を願いたいと思います。
  220. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 さように取り計らうよう努力いたします。
  221. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは委員長、これはよろしく御手配願いたいと思います。  さてそこで、行政の内部でいろんなことが行われておって、何が公正で何がうそなのか、私たちにはわからないわけです。たとえば空出張、やみ手当、われわれにはわかりません。国民にはもちろんわからない。つまり関係の公務員しかわからないわけですよね、公正なのか、公正でないのか。  ところが、その人たちが自分もしくは組織の利益のために、虚偽とわかっておりながら公文書にうそを書く。たとえば空出張の場合では、虚偽の出張命令書、それに伴う虚偽の出張の領収書、それは公金で処理される、こういうことが不問に付せられる。ここに問題があると私は思うわけです。これじゃ近代国家としての行政が成り立たない。  ところが、刑法の百五十六条では、虚偽公文書作成については明確にこれが犯罪であるということが規定されておるわけですね。たとえば百五十六条を読み上げると、虚偽公文書作成、「公務員共職務ニ関シ行使ノ目的ヲ以テ虚偽ノ文書若クハ図画ヲ作り又ハ文書若クハ図画ヲ変造シタルトキハ印章、署名ノ有無ヲ区別シ前二条ノ例ニ依ル」、前二条と申しますのは、百五十五条にあるわけでございますが、これは「一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス」、こういう規定があるわけですね。  そこで、この刑法百五十六条、公務員の虚偽公文書作成が犯罪である、この意識が余りにも希薄過ぎる。たとえば個人が自分の都合で、出張もしないのに出張したとしてお金をもらったら、これは見つかって、組織ぐるみでやっつけられる、おまえはけしからぬやつじゃといって処分される。ところが、上司の命令で組織ぐるみでそのような空出張をやる、その場合は罰せられないという点に問題があるんですね。まことにこれじゃ役所の組織というのは、そういう公金を適当に使ういわば悪の相互扶助の互助会ということになってしまう。  そこで、私はこれは刑事局長にお伺いしたいのですが、いろいろこれはございます。総理府にもございましたね、環境庁ですか、二千二百万浮かされる。通産省は二百六十九万ですか、これは札幌の通産局ですね。それから同じく通産省、札幌の鉱山保安監督局で三百六十九万、国鉄じゃ千七百四十八万、鉄建公団じゃ二億七千三百万、これは空出張の金額です。  刑事局長に伺いたいのですが、こういう出張命令行為に伴って旅費の請求書あるいは出張命令書、領収書、この虚偽の作成は、刑法百五十六条の虚偽公文書作成罪に該当すると私は思いますが、いかがでございますか。
  222. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねが具体的な案件に関してのことでございますと、その案件は現在捜査の対象にもなっておるわけでございますので、その案件そのものにつきまして犯罪が成立するというような明確なことをここで申し上げるのは適当でないというふうに考えるわけでございますけれども、強いて申しますれば、一般的には、お尋ねのようなことをいたしました場合には、事案にもいろいろよると思いますし、つくった書類にもよると思いますけれども、御指摘の犯罪が成立する可能性がある、こういうふうに考えております。
  223. 矢野絢也

    ○矢野委員 一般論として犯罪が成立する、こういう御答弁でございます。当然だと思います。  それから、同じくこれは刑事局長に伺いたいのでございますが、刑事訴訟法の二百三十九条二項では、公務員が職務上犯罪行為が行われていると思料したときは告発をしなければならない、こうございますが、これは義務規定であると私は思います。「しなければならない。」しかし、訓示規定だという解釈を各省庁で出されたようでございますが、私はこれは義務規定であると思いますが、いかがでございますか。
  224. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの刑事訴訟法の規定のことでございますが、「しなければならない。」という表現が用いられておりますわけで、そういう意味では義務規定だということが言えるかと思いますが、その義務規定か訓示規定かといいますことも、あえて言いますと、ちょっと言葉のあやのような点も実はございまして、義務規定だといいましても、もう何から何まで一〇〇%絶対にしなければいかぬということでもなくて、まあそれ相応の理由があります場合にはしない場合もあるということでございましょうが、当然すべき場合にはすべきである、こういうふうに考えております。
  225. 矢野絢也

    ○矢野委員 義務規定であると私は解釈しておるのです。いまの刑事局長もそういう御答弁だと思います。  そうしますと、国家公務員法の八十二条の二で「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」には懲戒処分の対象になる、こういう意味の規定がございますが、この刑訴法二百三十九条の「告発をしなければならない。」にもかかわらずしなかったという場合は、国家公務員法の八十二条の二、いわゆる懲戒処分の対象にすべきであるという規定に該当しますかどうか、刑事局長に伺いたいと思います。
  226. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの公務員法の解釈ということになりますと、形式的なお答えかもしれませんが、実は私どもの所管でないのでございまして、むしろ所管の方からお答えしていただく方が適当かと思いますが、そういう意味でのお答えということで御理解いただきたいわけでございますけれども、先ほども申しましたように、やはり何らかの合理的な理由があってしない場合もあり得ると思いますので、そういう場合には違反にはならない、かように思いますが、当然やるべき場合にしなければ違反になるということではなかろうかと思います。
  227. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理、私がこういうめんどうな法律を持ち出しましたのは、世上公金のむだ遣いということが議論される。やみ手当だ、空出張だということで国民の税金をやみからやみに使っている、これはけしからぬという議論がされておるわけですね。これはまさにそのとおり、けしからぬ。それもけしからぬけれども、いま申し上げたたとえば虚偽公文書の作成についての無神経さ、上の命令で下がそれこそ組織ぐるみでそういう虚偽公文書をつくって平然としておる。それによって税金がむだ遣いされておるということは、これも実は問題ですよ、けしからぬことなんだけれども、その根底にある公務員の法律に対する姿勢、この方がもっと大問題だと私は思うのですよ。  なぜかなら、私が冒頭に申し上げたとおり、行政の内部で何が行われているかというのはわれわれにはわからないのですよ。公務員一人一人の、あるいはまたその組織のいま申し上げたような法律に対する厳しい姿勢というものがあって、こういう問題はおのずから行政組織のモラルというものが確保されていくわけですよね。ですから、むだ遣いはけしからぬ、当然私はそのことを申し上げているわけだけれども、いま刑事局長からもいろいろ御答弁願っておりますが、その背景には、当然公務員として拳々服膺しなければならない刑法あるいは刑事訴訟法、国家公務員法に対する認識が甘い、甘いというか平然とそれを無視しておる、ここに問題があるということを総理に御理解いただきたいと思って、しちめんどうくさい法律論をやっておるわけなんです。ところが、各省庁は、いままでのわが党委員の各委員会における質問に対して、そんなの知りませんでしたみたいな答弁なんですよ。各省庁にもう一遍聞きましょうか、そして各省庁の具体的事例について、いまの法律に照らし合わせてどういうことになるかという各大臣の御見解を承りましょうかということになるわけなんです。  ですから、私はこの問題につきましては、政府として次のような統一した見解をおまとめいただく必要があるのではないか、それを各省庁に徹底されるべきではないかと思うわけです。つまり、そういう虚偽公文書の作成というものは明らかに国家公務員法八十二条あるいはまた刑法百五十六条の規定に反することであるということが一点。それとあわせて、告発義務のことを私はお尋ねしたわけでございますが、その関係の課の人、部の人、上や下の人が知っていて知らぬ顔をするという悪い習慣がある。そういう犯罪がある場合、それを知っている場合は「告発をしなければならない。」と法律にあるのです。このことを明確に筋を通せば、命令された職員も断ることができるのです。そんなこと私できません、とてもとてもそんな恐ろしいこと、ということになるわけですね。ところがそれが明確になってないから、おまえ、こういうふうに空の出張命令をするから空の領収書をつくれ、いやですと断れない、はいというようなことになるわけです。ですから、そのような場合には告発をすべきである。虚偽公文書をつくるように命ぜられた場合には、公務員は何人といえどもこれを告発する権利を持つし、それは公務員の義務である。  第一点は、いま申し上げた公務員が虚偽の公文書をつくって公金を支出することは犯罪行為であるということ。第二点は、虚偽公文書をつくるように命ぜられたときは、公務員は何人といえどもこれを告発する権利と義務を持っておるのだ。この二点を政府の統一見解としてここでお認めいただけますか、総理
  228. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 法治国でございますから、行政は法律を基準にやってまいる、それから、予算に関連したことでございますから、予算に準拠してやっておると思うのでございますが、その場合、われわれが往々にして不注意で看過しておる面に光を当てられて、きょう御質疑があったことを私は非常に多とするわけでございます。そういった中で現実に、厳密に言うと法律違反になるのじゃないかというようなことが、あるいは官庁ぐるみで慣行としてやっておった経緯が中には相当あるんじゃないか、そういうことをいま御指摘を通じて私は感ずるわけでございます。厳密に言うとあなたの言われるとおり、きちんとやってまいらなければいかぬと思いまするし、そういう方向にわが国の行政を根っこから正していかなければならぬことと思います。  私は、不正事件あるいは不正経理問題につきまして、監督官庁それからその法人自体の自己監査を通じまして実態を掌握することをいま急いでおるわけでございまして、その中からどういう点をどのように正していかなければならぬかという準備をいたしておるところでございます。したがって、いま御指摘の点は正しい御指摘だと思いまするし、そういう方向に持っていかなければならぬと思いますので、実態把握を通じまして、そういう方向に日本の行政を末端において漸次持っていくように政府として努力してまいりますが、具体的には政府部内で相当細かく検討、用意をさせていただきたいと思います。
  229. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理の御答弁、そういう方向、つまりむだ遣いが行われないようにその方向で努力する、こうおっしゃっているわけですよ。それは当然のことだと思うのですよ。努力はしてもらわなくちゃなりませんが、いわゆる公務員みずからの自浄作用と申しますか、総理がそこでそんなに力まぬでも、公務員みずからの自浄作用として、そういうことをなくならしめることがもっと大切なんですよね。そうでしょう。また、それは大部分のまじめな公務員の気持ちでもあるわけですよ。全部が全部こんなばかなことをしているわけじゃないのです。公務員であることが肩身が狭いなんと言う人がおる。そういう方々は、私が申し上げた刑法や刑事訴訟法や国家公務員法の趣旨に忠実にやっておられるのです。私は、そういう方向で努力するというんじゃなしに、それも大切だが、政府の認識として私がいま申し上げたような統一見解を明確にここで確認を願いたい、それを各省庁、各公務員に徹底してもらいたいと要望しているのです。そういう意味の御答弁を願いたいと思うのです。
  230. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう方針に従って改善の具体的な方途を立てるように努力します。
  231. 矢野絢也

    ○矢野委員 その方向ではいけませんので、これは委員長、私が提起しておる公務員としての法律的な規範についての政府の統一見解というものをぜひここでお出しいただきたい。お願いしたいと思います。ここで明確に、公務員としてかくあるべきだという規範をお示し願いたい、そういう方向とかそういう方針じゃなしに。法律に書いてあることを私は言っているのです。
  232. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまお答え申し上げたとおりでございまして、そういう方針にのっとって改善の具体的方途を政府としては立てることにいたします。
  233. 矢野絢也

    ○矢野委員 では、そういう方針というのは、私が先ほどいろいろ読み上げた言葉どおりであると理解してよろしゅうございますか。
  234. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 さよう承知いたしております。
  235. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは、言葉をもう少し専門的に整理されて、本委員会にきちっとした政府としての文書をお出しいただきたい。私の言葉を、そういう方針という言い方でなしに、政府としての責任のある用語でお出し願いたいと思いますが、いかがですか。
  236. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 心得ました。
  237. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは委員長、これはよろしくお願いしたいと思います。  それで、会計検査院、いろいろ御努力を願ったわけでございまして、余り文句を言う気は私はしないんだけれども、会計検査院の法律によりますと、第三十三条に「会計検査院は、検査の結果国又は公社の会計事務を処理する職員に職務上の犯罪があると認めたときは、その事件を検察庁に通告しなければならない。」というふうにございますが、いろんな問題について鋭意精力的に御努力をされた、これは高く評価しておるんですよ。そういう御努力の結果を第三十三条に基づいて検察庁に通告をされましたか、いかがでございますか。
  238. 松尾恭一郎

    ○松尾会計検査院説明員 今回の不正経理事件につきましては、現在まだ通告しておりません。その理由を若干申し上げます。  今回の架空旅費支出事件、一連の事件につきましては、観念的には虚偽公文書作成あるいは行使といった犯罪、それから詐欺、背任、横領といった犯罪が考えられるわけでございますが、このうち虚偽公文書作成、同行使ということにつきましては、検査院が架空旅費支出の有無を調査する過程でおのずから関係文書について作為があったということがわかりましたので、この事実があったことについては検査院としても確認しております。  しかしながら、今回の事件に関しまして申し上げますと、関係文書の作為の事実があったということは、すでに昨年提出いたしました決算検査報告におきましてそのことを明らかにしておりまして、捜査当局におきましても十分事実を承知していると思われますので、いま改めて検察庁へ通告するということはそれほど実益がないと考えております。また、いまの段階で検査院が通告するということになりますと、個々の行為につきまして具体的に、たとえばだれがどのような行為をして幾らの被害を与えたかというところまで示さないと通告の意味がないということもございまして、私ども検査院におきましては、関係文書を作為したという事実があったことは確認しておりますが、そこまで調査を行っていないので、そのような形の通告はできかねるという事情がございます。  それから、詐欺、横領、背任といった実質的な犯罪につきましては、検査院としても、明確にそのような犯罪の事実があると認められる場合には当然通告しなければならないと考えておるところでございますが、われわれの検査はもともともっぱら、会計経理の適否を明らかにするという見地から行われておりますので、今回の場合について申しますと、検査によってはこれらの犯罪があるということを確認するまでに至っていないという事情がございます。  以上の理由によりまして、今回の事件につきましては、院法第三十三条による検察庁への通告は行っておりません。
  239. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは、刑事訴訟法二百三十九条に基づいて、会計検査院法でなくても、公務員は、職務上犯罪行為が行われていると思料したとき――思ったときということです。あなたの御答弁では、確認までとれておりませんのでできませんがと、これは院法に基づいておっしゃっていますが、刑事訴訟法二百二十九条では、別に会計検査院がそこまで犯罪の事実を固めて、それから言っていかなくてはならぬというものではないと思うのですけれども、これは刑事訴訟法二百三十九条から考えれば当然なさるべきじゃないですか。あなたも国家公務員でしょう、会計検査院は。
  240. 松尾恭一郎

    ○松尾会計検査院説明員 刑事訴訟法の解釈につきましては、ちょっと私どもは所管庁ではないので正確なことはわからないのでございますけれども、先ほど刑事局長が行政的裁量の余地があるようなことを申し上げたわけでございます。犯罪があると思料した場合には常に必ず告発しなければならないというものでなくて、こちらとしてもやはり判断の余地があるのではないかと考えております。今回の事件につきましては、検査報告におきましてすでに明らかにしておりますので、事実上告発と同じような効果があって義務を果たしていると考えている次第でございます。
  241. 矢野絢也

    ○矢野委員 刑事局長に伺いたいのですけれども、「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。」これは刑事訴訟法二百四十一条のその一。その二に、「検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。」等々の法規がございますが、いまのお話は、とにかく会計検査院として調べた結果を発表しましたから告発になっておりますみたいな意味のお話がございました。あるいはまた、事実が固まっていないからそこまでいけませんみたいなお話がございましたが、その発表をするだけで、司法当局として直ちにその告発をされたと受けとめられるのですか。単なる資料の発表でもって、告発があったと受け取られるかどうかを附いているわけです。
  242. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 組かい法律論のようなことになろうかと思いますが、いま御指摘のような方法によりました場合には、形式的には、刑訴法のいま御指摘の条文の告発というのには当たらないだろうと思いますか、検査院の方でおっしゃりたいお気持ちをそんたくいたしますと、この告発ということ自体の性格は、捜査当局に犯罪の端緒を与えるという意味がその実質的な理由であろうというふうに考えられるわけでございますので、そういう意味で、実質的には捜査の端緒が捜査当局にわかっているのだからそれ以上やるまでもないのではないかという御判断だ、こういうことではなかろうかと思います。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  243. 矢野絢也

    ○矢野委員 こういった問題、総理、細かいことを言うのは、結局、民間から見た官僚の世界というものが、国民から税金をいただいて、国民のためということでそれを使っているわけですよ。あくまでも国民のためのものでなくてはならぬ。ところが、行政改革にせよ、このやみ手当、やみ給与、空出張その他の一連の事件も、どうも役人のための役人によるという印象をぬぐい切れないわけですよ。たとえば各省庁特殊法人を減らしなさい、局を減らしなさいというようなことを総理が指示される。そうすると、各省庁どう言うかというと、一億総玉砕主義みたいな、各省一省一局だけやる、あるいは特殊法人の場合も、各省庁十持っているところは一つ整理せい、十一以上持っているところは二つ整理せいというような、何といいましょうか一億総もたれ合い、おれだけ整理の対象になるのはいやだみたいな画一主義というものが横行しているわけですよ。本当は一つの省庁で三つでも四つでも削らなくてはいかぬところは削らなくてはならぬ。また、役に立っているところは削る必要はない。ところが、一つの省庁に対して割り当て主義みたいなやり方を行政改革でなさっておる。総理もこれははなはだ不本意だろうと思うのです。こんな一省庁に一つずつだとか、特殊法人だって省庁ごとに割り当てをする。場合によっては、一つの省庁で五つ六つ特殊法人を切るくらいの勇気がなければ行政改革はできるものではないです。そういうことを見るにつけましても、結局国民のための行政改革ではなしに、役人のための役人による行政改革、この印象はぬぐい切れないのです。  そこで、先ほどから、会計検査院が御努力なさっているそのことを私は何もけちをつけるつもりはないのです。しかし、ここまでがんばってこられた会計検査院にしてなおかつ、犯罪があると判断されながら確証がありませんから告発しませんでしたみたいなかばい合い精神がある。これは決して悪口だと思わないでください、努力を評価しているのです。ほかの省庁においておやということを私は言いたいのです。ですから、相当な勇気で総理はこれに取り組まなければ、結局、言葉だけになってしまうのではないかと思うのですが、総理の感想をひとつ聞かしてください。
  244. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 官僚による官僚のための云云というお話がありましたが、だからこそ官僚の仕事に対しましては、法律、またそれに基づくいろいろな規制によりましてその行動を規制しておりまするし、予算を通じまして目的や限度をはっきりさせるということをさせておるわけでございまして、大きな筋におきまして、法治国家である、また民主国家である筋道を外しているものとは思いません。ただ、あなたが大変精細に御指摘になりましたように、その実行に当たりまして、末端におきまして大変ぞんざいなところがあるではないかということにつきましては、私は御指摘の点につきまして、よほど精細に吟味して改善の方途を講じなければならぬのではないかと考えておりますことは、先ほど申しましたとおりでございます。  第二番目の問題は、行政整理というか、行政における不正の是正という問題と行政改革の問題は、ちょっと分けて見なければいかぬと思うのでございます。いま私どもがやっておりますのは、いわば行政費の節減、効率化という角度からやっておるわけでございまして、不正の摘発というような趣旨でやっておるわけではございません。不正の是正の点につきましては、前段あなたの御注意にありましたとおりでございますが、行革につきましては、実はそれぞれの役所にいたしましても、それぞれの特殊法人にいたしましても、根拠法規を持っておりまして、それぞれの誇りを持って仕事をしておるわけでございまして、これを整理するというようなことは容易でないことは、矢野さんも御理解していただけると思うのでございます。しかし、国民的な尺度から見ますと、どうもいかにもこれは不経済じゃないか、不当に肥大化し過ぎているではないか、むだ遣いが多いじゃないかということは隠れもない事実でございますので、そういった角度から何としても行政費の節減ということは考えなければいかぬ。ところが、これに対しまして、それぞれの役所またはそれぞれの法人、それぞれ言い分があるわけでございますので、どうしてもやろうといたしますならば、画一的にある比率をお願いするというようなことにならざるを得ない場合が相当あると思うのでございますが、そんなことではとても政治の要請にこたえられないわけでございますので、精いっぱい努力をいたしまして、それが画一的にならぬようにいませっかく努力をいたしておるところでございます。  あなたを初め国会の目から見まして、大変不十分なことと思いますけれども、しかし五十五年行革というのは、これこれこれだけのことをまず仕上げました、そしてこれをわれわれは数年間に着実に実行してまいりますということをいま約束をいたしておりますので、それはそれとしてわれわれを御鞭撻いただきたいと思うのでございますが、われわれはそれで事足れりとしていないわけでございますので、行革というのは不断のわれわれの責任だという自覚でもって、毎年毎年どんなに厳しくても精力的に進めていかなければならぬ課題だと考えておりますこともあわせて御理解いただきたいと思います。
  245. 矢野絢也

    ○矢野委員 行政の不正と改革は別だという総理の御意見、これはそうだと思うのです。ただ大蔵大臣、改革と不正と二つに分けまして、この不正の方です。先ほど申し上げた法律的な立場から言えばこれは明らかに不正だ。ところが、いままで大蔵省のやり方ではむしろ不正を助長しているとでも言いましょうか、卑近な例を引きますと、残業するとその食事代というようなことになるわけでしょうけれども、一食当たり二百円、夜遅くまで仕事するのに二百円でカロリーが補給できるはずがございません。仕方がないから、三人残業したことにして六百円にして一人で召し上がるというようなことが行われているやに聞きます。これはきわめて卑近な例です。あるいはやみ手当、やみ給与の問題も、にわかに最近けしからぬ、やみだ、やみだと言われておりますが、こんなものは大蔵省は前から知っておられたのですよ。人事院勧告その他の関係で正式に認めるわけにいかぬが、各公社公団等で総裁や責任者の裁量でそういうものが行われているということは、知っていないとは言わさないですよ。にわかに最近やみだ、やみだということになったから、そうだ、そうだみたいな顔して政府も言っておられるけれども、本来ルール化すべきものはルール化しておくべきだったんだと思うのです。もうこれは十年も十五年もやみ給与、やみ手当というのは、まことにけしからぬことだけれども実績を誇っているわけです。いまさら急に始まったわけじゃない。これは労働者の当然の権利である、あるいはまた、これは仕事の性質上支払うべき性質のものであるというものをやみのままでほっておいたということにも、一つの大きな問題があると私は思うのですよ。その結果どうなるかと言えば、虚偽公文書の作成だとかいう、私が申し上げた大それたことを各省庁、公社公団がやらなくてはいかぬことになる。  これは予算の編成のときにもそういう点は十分考えて、本当にやみならこれは削るべきです。しかし、いろいろな事情から見てこれは当然だというのは、やみにしないでルール化すべきだと私は思うのです。何も行政改革というのは、必要なものにまで出すなと言っているのじゃないのです。必要なものは出すべきでしょう。必要でないものを削れと言っているのですよ。こういうことを慣例化さした背景には、大蔵省にも責任があるのじゃないでしょうか。
  246. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えいたします。  いわゆる空出張、不正経理あるいは空超勤、やみ給与、こういう問題であります。  空出張の不正経理問題につきましては、問題はやはり予算の執行の問題であります。そこで、予算の編成上の手だてだけでは、確かになかなかこれを根絶するということはできないというふうに思います。が、予算の適正な執行についてという、これは五十四年の十月六日でございますが、内閣官房長官通達が出まして、これが一つのきっかけとなって、不正経理の根絶のために予算の適正な執行が肝要であるということになりました。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、財政当局の立場としても、執行面について、さらにその趣旨の徹底に努めなければならぬというふうに考えております。  それから査定の場合の問題でございますが、いま矢野委員御指摘の感じは、私にもそれはノーと否定する気持ちはございませんが、節減、合理化に努めるとともに、その行政経費についての抑制を図ってまいります、今度の予算でございます。ただ、一般の職員旅費については、前年度に比較して原則として一〇%の削減ということにしておるわけであります。特に検査旅費でございますとか、そういうものには実態に即して一律抑制などはしなかったという意味でございます。ただいまの会計検査院の検査旅費とか、いろいろございます。  それで、この問題について、いわゆる流用の手続というのがこれは財政法に定められておるわけでありますが、そういうものも含めて実態に即した適正な執行が行われるよう、やはりこれから各省庁とも十分協議していかなきゃならぬ。せっかくそういう方針で組んだ予算でありますから、執行において協議をしていこうと思っております。  それから、いまおっしゃったやみ手当、空超勤の場合でありますが、一律支給の問題につきましては、監督官庁また公社の説明では、背後には超過勤務の実態があるということではあります。個個の具体的な超過勤務の実態の多少にかかわりなく一律にまとめて支給してきた、この点は手続的に問題があるというふうに思っております。したがって、超勤予算の査定に当たりましては過去の実績等を勘案して査定しておりまして、執行に当たっても適正に支給されるよう要請しておるところでありますが、なお一層この適正な執行を図るよう、各省庁をこの点については指導してまいりたい。  それから、やみ手当のいわゆる特殊法人のやみ賞与という問題かと思うのでありますが、これは昨年五十四年十月二十三日の閣議了解に基づいて、それが労使交渉によって決められる場合においても、その公共性にかんがみ国民の理解が得られるものとするよう、理事者並びに職員及び労働組合に対し強く要請をいたしたところでございます。
  247. 矢野絢也

    ○矢野委員 要は、ルール化すべきものはルール化してあげるべきだし、そうでないものは断固としてこれは不正として糾弾すべきである、このけじめをおつけなさるべきだということを申し上げているわけです。  それから、政府は去る十一日の閣議で、鉄道建設公団など計十三の特殊法人の削減を内定されて、年内に実施項目を詰めた中期計画に盛り込むことを了承した。その席上、首相は一部の法人を除いて五十五年度中に実施できるように強く指示されたのですね。ところが、実際実施できるのは、削減が内定している十三法人のうちせいぜい四法人、総理の威令さっぱり行われていませんな。あなた、五十五年度中に実施できるよう強く指示なさったことはりっぱだと思うのですよ、そこまでは。結果はされていない。総理としてこれはちょっとかなえの軽重を問われるのじゃないでしょうか。情けない。総理が強く指示した、そこまではかっこういいですけれども、行われていないじゃありませんか。どうですか、これは。
  248. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 仰せのとおりの結果に終わったわけでございますが、やはり統廃合等々を考えますと、その間の手続等にいろいろな問題がございます。したがいまして、行管といたしましても総理の趣旨を十分体しまして、そして統廃合決定をいたしました法人並びに所管の省庁と折衝し、また大臣諸公も非常に努力をしたのでございますが、やはり私自身が最終的にずっとながめましてやむない次第だなというふうなことで、本年度は五法人の統廃合に終わったということでございます。
  249. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理、言っちゃ失礼だけれども、なめられたものですね。五十五年度中に実施せいとおっしゃりながら、しかもだれのせりふか知らぬけれども、骨まで切るみたいな重大な決意でやるとまでおっしゃったのに、かすり傷にもなっていない。中身は後ほど申し上げます。  それから、行政監理委員の意見書というのがある。公務員一割カットというのを提言されているのですね。納税者の総意を代弁したものだとぼくは思うのです。先ほど私は各省庁の一億総心中主義みたいな画一的なやり方がだめだということを指摘しましたけれども、それこそ、公務員の一割カットこそ私は画一主義でいいと思うのです。そのくらいの決意で臨まなければ経費の節減にならないと思うのですね。  四次にわたる定数削減計画というのがありましたが、過去十二年間に十二万八千人減らす、この間、新規採用は十二万名である。実質減は八千名にとどまっておる。そして現在八十九万一千人の公務員がいらっしゃるわけですね。五十五年度から五年間で三万七千六百五人ですか、定数を削減するということなんですが、これは全体のわずか四・二%です。しかも、新規採用ということが一方であれば、本当に減るのか減らないのかわからない。日経連の調査、これは信用できるかどうか疑問があるとしても、調査によると、国家公務員一人に支払う生涯賃金、何もかも含めて一人当たり二億一千万円である、こういう計算が出ているのです。これを信用するしないは、日経連もちょっと意図的な点があるかもわからぬが、ほぼこれに近い莫大な税金がかかっていることは事実だと私は思うのです。  しかも、その公務員が、大変失礼ですけれども、まじめな方がたくさんいらっしゃると思いますけれども、どうも全力投球で国民の立場に立ってやっていると思えない方も多数いらっしゃる。あえてこれは申し上げる。こういうことを野党が言うといかぬという意見があるかもしれないけれども、私はあえて申し上げる。公務員が本当に全力投球で国民の立場に立って働いているかどうか、国民の感覚から言えばそれは疑問だという声が多い。だからこそ公務員の一割カットという行政監理委員の意見というのはきわめて私は重要な提言だと思うのですよ。しかもこれは非常に具体的ですよ。何も首切りせいと言っているわけじゃない。退職者を補充しないで新規増員を全面ストップすれば、首切りなしで三年間で一割削減が可能だ。それが無理だという場合でも、新規採用を自然に退職する方の半分に抑えれば五年間で一割削減できる、こういう提言が出ているのです。どうでしょうか、これを断固なさったら。本当の行政改革はこれしかないですよ。一人当たり二億一千万円、私は金額の大小を余り言いたくはないが、それほど莫大な金がかかっている。しかも余りまじめだと思えない公務員もおる。一生懸命国民の立場に立ってという意味ですよ。一割削減やったらどうですか、総理
  250. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 この間行政監理委員から十二月に確かにそのような提言がございました。私も内容を詳細に現在検討いたしておりますが、書記長も御承知のとおり、大体四%毎年自然にやめていくではないか、半分さえ新規採用しなかったならば、二%で五年間で一割である。九十万の一割は九万である、こういう話でございますが、私自身といたしましては、現在は御承知のとおり定員削減ということで、この五次を含めまして十七年間に、いまおっしゃったとおり正式に十六万五千人くらいの定員削減をやっております。  そこで、その定員の中で新規採用するなということになりますと、現在の公務員のあり方から考えますと、定年制がございませんから、大体五十七、八歳で肩たたきでやめさせておる。その肩たたきでやめさせておるのが四%のうちのどれだけに当たるかということを、現在私たちといたしましては検討いたしております。したがいまして、そのとおり進めば結構でございますが、もしそのとおりやろうということになりますと、今度は定員確保のために肩たたきが進まないから、四%の自然減があるかないかという問題にもなるかもしれない。そこら辺もよほど検討をして、この問題に対しましては監理委員会のお考え方というものを十分に私も尊重をしていきたい、かように思っておりますので、この場ですぐそれをやれとおっしゃいますと、そういう問題があるということもひとつお含み賜りたいと思います。
  251. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは自治大臣に伺いたいのですけれども、同じ行政監理委員の意見書によると、地方自治体の行財政改革も取り上げておる。その必要性、緊急性は国よりも地方公共団体の方が高いという指摘もされておる。確かに公費天国と言われておる実態、地方自治体も例外じゃない。労使なれ合いのやみ給与あるいは不明朗な超過手当、特殊勤務手当の支給、住民の怒りを駆り立てていますね。すべてがやみだ、すべてが不明朗だという意味じゃないけれども、そういった面が多いと思います。  しかも、地方公務員の数は現在三百万人を超えておる。四十二年以来、実に七十四万人もふえておるのです。当然この中では教育とか警察、消防関係、こういう重要な方々もふえておる。だから一概にふえたのがいかぬとは言いませんが、一般職員が二十八万七千人もふえておる。これはちょっと多過ぎやせぬかと思うのですよ。  都市経営総合研究所というところが自治大学の卒業生に対して行った調査では、職員の定数は最も忙しい時期を基準に配置されてむだが多い「こういうアンケートの調査が出ておる。民間の会社なら、こんなことをしておったら一遍に倒産ですな。地方公務員の問題についていかがお考えか、ひとつお聞かせいただきたい。
  252. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先般、大槻委員長から公務員の一割カットの御提言がございました。その中に、地方団体職員についてもより以上の厳しい態度で公務員の縮減を図るべきであるという御提言を、私は重要な御提言であるとして受けとめております。  と申しますのは、いまお話がございましたように、四十二年から十一年間で七十万七千人ふえておるのです。ただ、その中を見ますと、警察官それから学校の先生、それから消防、これだけで大体三十五万弱でございます。(矢野委員「一般職員は」と呼ぶ。)一般職は、そこで福祉関係が二十一万人ふえております。こういうようなことで、一般の行政職で言いますと八万八千人ふえています。これだって大変なふえ方です。ただ、これまた中身を見ますと、機関委任それから団体委任の事務に伴う法令関係の改廃等によってふえておるわけです。  しかし、私はこう言いましても、やはり公務員の縮減というのは、地方団体についてはいろいろな事情があるけれども、やはり地方団体理事者みずからが住民サイドに立って、このふくれ上がっておる地方公務員の縮減に努力していただかなければならぬと思います。努力していただいておる地方団体もたくさんあることは事実でございます。しかし同時に、いま言ったような中身でございますから、やはり立法の際あるいはまた予算編成の際に、地方の職員の増加を伴うような施策については住民負担のことも考えていただいて御協力を仰ぎたいという気持ちを私自身は持っております。  そこで、地方公務員の縮減につきましては、御提言がございますから、一割削減云々については、この数字については私は慎重に検討しなければなりませんけれども、ふえつつある地方公務員をできるだけ抑え、むしろ縮減させるという努力については、地方団体に努力していただくと同時に、国の各省庁の御協力も仰ぎながら今後全力を挙げてやってまいりたい、かように考えております。
  253. 矢野絢也

    ○矢野委員 国会議員は行政府に対しては、行政府はどっちかというと金を使う方という目安が強いわけですからね。立法府は納税者の立場を代弁して問題提起しなければならぬと思いますので、こういう公務員の削減の問題、私は何も公務員を目のかたきにするわけじゃない。必要な方々は優遇してあげなくちゃならぬと思うし、必要なポジションには人間もふやさなければならぬと思います。しかし、納税者の立場からいえば、余りにもむだが多過ぎるのについて、もう少し総理として定員の削減ということでリーダーシップを発揮されるべきじゃないかという意味で申し上げておるわけです。総理の御感想を伺いたいと思います。
  254. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、行政整理は結局は人員の削減に集約されてくるわけなんでございまして、そうしないと実は上がらぬわけでございまして、これに対しましては一番力を入れておるところでございますが、必ずしも御期待に沿い得ていないことは、私もよく承知をいたしておるわけでございます。これにつきましては相当な勇気をもって当たらなければならぬと思いますが、同時に、政府の国民に対するサービスという点との関連におきまして、国民の側におきましても御理解をいただかなければならぬ面が相当あるわけでございまして、そういう御理解を得ながら、減耗補充等につきまして、業務量は相当ふえてまいりましても、機械化等によりましてできるだけ対応していくように努力いたしながら、国民の理解を得ながら行政整理の一番基本になる人員の削減には一層精力的に取り組んでまいるつもりです。
  255. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は先ほど、各省庁一局削減とか特殊法人の削減について一億総心中主義、画一主義だということを申し上げた。そういうやり方よりも、時代の変遷に伴った行政のニーズの変化というのはあるわけです。もうニーズがなくなっておるものについてはその改廃を考えなくてはならないし、新たなニーズの強まっておるものについてはむしろ増強しなければならぬ。あるいはまた、許認可の問題についてもそういった点がたくさんあると思うのです。そういう画一主義的なやり方じゃなしに、実態を詳細に調べて、あくまでも国民のニーズにこたえるという形の行政改革を、これは不正の問題じゃなしに進めなければならないのに、そういう画一主義をおやりなさっておるのはおかしいじゃありませんかということをさっきから私は強調しておるのです。  それから特殊法人の問題も、時間がございませんから簡単に申し上げますけれども、やった、やったとおっしゃるけれども、実態は一つもやってない。たとえば一番国民から焦点になっている鉄建公団、何だかわけのわからぬ形で青函トンネルと上越新幹線の工事が完成した時点で他との統合等を図るですか、何だかわけのわからぬ言葉ですね。ところが、実態的に見ると、中国へあなたがいらっしゃったときに鉄道の技術協力を話し合ってきましたね。その場合、鉄建公団を使うんじゃないかという話もありますよ。そうすると、青函トンネルや上越新幹線などの工事が完了した時点で云々という、もっと先になりますよ、中国の問題で技術協力をもしさせるとするならば。させるかさせないかという問題。あるいは兵庫県の方で北神線というのでしょうか、私鉄ですね、この工事についても新年度予算に用地費十億つきましたね、大蔵大臣。その総工費五百三十三億のうち、鉄建公団が四百八十億担当しておる。この工事が完了するのは大分先ですよ。だから鉄建公団の統合等なんて言ったかて、実態は全然鉄建公団に手つけへんという方向で行政の方が、予算の方が行われているじゃありませんか。お話にならぬ。  それから、やめましたけれども、本国まる抱えというのがある。これは文部省所管のオリンピック記念青少年総合センター、ここのやっている仕事が無意味だという意味で言うんじゃないです。しかし、減らしたということにならぬでしょう。ここの人数そのままが文部省に引き継がれておる。一つも行政改革になってない。これは本国まる抱えになっただけのこと。数は減ったけれども、実態は一つも変化なし。  あるいは一番くせ者が統合というものですね。たとえば文部省所管の日本学校安全会、日本学校給食会を統合することになりましたね。二つが一つになったから一つ減った。統合した結果、予算減ってますか、大蔵大臣。減ってませんよ、二つを一つに統合したけれども。安全会、給食会合わせて去年までは十五億九千百九十七万。ことしどうか。十五億九千四十一万円、差し引きわずか百五十六万円が減っただけですよ、統合の結果。大平さん、特殊法人が一つ十月に減るんですけれども、予算から言うたら百五十六万しか減らぬです。こんなのを行政改革なんて、あなたさっき偉そうなことを言っておられたけれども、百五十六万でしょう、予算の上では。ナンセンスじゃありませんか。  たとえば、特殊法人で金融関係の仕事をやっているところがたくさんございますね。それぞれが重要な役割りを果たしていらっしゃる。そのこと自体私は否定しません。しかし、余りにも多過ぎるのじゃないでしょうか。こういったことについてもう少し国民の立場に立った統合とか合理化というのは、総理、考えられないものでしょうかね。しかも二つを一つにしましたから一つ減りましたなんという論理は、先ほど言ったように成り立たないのですよ。  それから天下りの問題。各省本省から既得の権利であるというような感じで、長という名のつくポストについて一遍つかんだら放さないみたいな、しかも各省庁のなわ張りが厳然とあって、神聖にして侵すべからざるみたいななわ張りがあります。こういう天下りとか出向の人事、こういうことについても全然メスが加えられていない。いろいろ言いたいことはたくさんある。特殊法人のポストの世襲化みたいなことが行われている、各省庁、これは既得権として。こういうことについてのメスが加えられていない。  それからまた、いやみなことを言うようですけれども、特殊法人百十一、調べますと、組合のある特殊法人と組合のない特殊法人がある。組合のある特殊法人はどっちかというと余り検討の対象にされてない、数字の上から言いますと。組合のない特殊法人がやり玉に上がっておる。まさか組合がこわいからということで矛先が鈍っているとは思いたくないし、また組合には組合の言い分もあることですから、十分それは聞いてあげなくてはならぬと思うのですが、少なくとも特殊法人の問題を見ると、組合のあるなしが非常にあなた方の心理に影響しておる。意見は十分聞いてあげなくてはならぬが、必要のないものならば、組合の意見だろうとも――組合の意見をくみながら統廃合を図っていくというのが行政改革の問題じゃないでしょうか。実態の上ではどうもその辺があなた方腰が弱いというような問題、たくさんあります。これはもう答えてもらわなくてもいいです。答えたらまた質問したくなるから……。
  256. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ちょっと一言だけ。  いろいろ御指摘でございますが、今回の行革は、私、やはり人減らしなき行革は本当に新しい経費節約にはつながらない、こういうふうに思います、簡単に割り切れば。しかし、現在の状態といたしましてはなかなかそれがむずかしいから、まず器減らしである。だから二つのものを一つにするということにおいて、管理部門等々ダブる部門を私は今後はっきりとカットしていきたいと思いますから、したがいまして、いま御指摘のいろいろな問題がございますが、実はそれを次の段階において考えたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  もちろん、じゃ法案が出ておるじゃないかとおっしゃいますが、法案が出まして実施の段階において再び私たちは査定ということができますので、それまでに一つの基準をつくってはどうだろうかと考えておりまするが、とりあえず天下りの問題に関しましては、常勤役員ですが、これは御承知のとおり昭和五十一年から昨年に至りまする間、第一次の整理として三十四名整理しました。これでは足りない。だから今回の三年間におきまして、伊東官房長官、竹下大蔵大臣、私、三名相寄りまして一つのルールをつくりまして、百二十名プラスアルファ、これは天下りを防止する意味において常勤役員の数を削減いたしました。そして民間を五割以上用いたいということにいま腐心いたしております。いろいろございましょうけれども、実は今回はまだ特殊法人はこの間の第一弾をもって終わりとしておらないということだけは申し上げておきたいと思います。
  257. 矢野絢也

    ○矢野委員 その第一弾が頼りないから、いろいろ言いたくなってくるわけですよ。この問題はもうやめておきますが、ただ総理に申し上げたいことは、財政が苦しくなった、だから行政改革だという発想は、私は間違いだと思うのです。財政が苦しかろうが苦しくなかろうが、行政改革は不断にやっていかなくてはいかぬものなんです。そうでしょう。それから私は、何も不当な首切り、これを前提にして行政改革を進めることも反対です。そのニーズというものを考えながら、また現在の公務員のあり方というものを考えながら、自然な形でなさっていくということが当然だろうと思いますが、しかしそういう方向づけあるいは枠づけというのは、これは政治のリーダーシップあるいは政府のリーダーシップでやっていかなくてはいかぬ、このことだけ申し上げておきたいと思います。  それから経済問題に移らしていただきたいと思いますが、これから経済問題、大変です。とにかく石油問題が深刻な影を落としておるわけでございますが、石油が海外で上がったのだから日本でも上がるのはしようがないみたいな論理は非常に危険な落とし穴があると思うのですよ。海外で上がった。それがいわゆるハイカラな言葉ではホームメード・インフレということにでももしもなりますと、これはもう悪循環ということになってくる。  私はこれからの経済というものを、プラス、マイナスございますが、マイナス面から言うと、一つは原油がことしはさらに上がるだろう、それによって所得の流出、これはOPECの黒字というのはわれわれの赤字ということになるわけですから、言うなれば国から国への壮大な所得移転というものが原油の値上がりによって行われる。ことしの場合も百億ドル以上あるのじゃないかと推定されますね。これは当然デフレ効果ということになる。去年で原油がほぼ倍になった。ことしもかなり上がるだろうと思われるわけですが、原油値上がりによる所得移転、それに伴うデフレ効果、これはマイナス要因でしょう。二番目のマイナス要因は、これはコストプッシュという形で日本のインフレを加速するという点がございますね。三番目には、世界経済全体がいま申し上げたようなことですから、デフレ傾向になる。そのため、いわゆる世界貿易というものも縮小する。輸出国である日本にとっても大変な打撃がある。こういうマイナスがある。それから、財政事情から見て、わが国の財政が景気刺激的な役割りを果たすことは、いままでのような大幅なことは期待できないという点も、ことしの経済を考える上で無視できませんね。  ところが、幸いなるかなプラス要因もある。昨年来民間の設備投資が非常に調子がよかった。着実にふえてきた。これからも中期的にふえるのではないかという想定が可能だと思いますね。まあこれはこれからの状況もある。それから円安によって、幸か不幸かということでしょうけれども、輸出力が高まる。これも、いい悪いは別としてプラス要因でしょう。円安というものが輸出を高める。  こういうプラス・マイナスをあれこれ考えますと、結局プラス面が出てくるかマイナス面が出てくるかは、私は物価の動向というものがそのかぎを握っておるというふうに思うわけです。もし物価が上がる、わが国がインフレになる、特にホームメード・インフレという形になった場合は、当然これは日銀当局も金融引き締めということになる。金融引き締めは、当然設備投資の減退ということを誘発しますね。あるいはまた、インフレは輸出原価の高騰という形で競争力の低下、輸出の低迷、それが逆にまた円安を長期化するという結果も、可能性としてはある。インフレが輸出原価の高騰、競争力の減退、輸出の減退、それがひいては国際収支の悪化、そして円安の長期化ということですね。こういう論理もある。あるいはまた物価の上昇、インフレが国民に貯蓄性向の高まりという心理的影響を及ぼして、貯蓄の上昇、消費の低迷という面も考えられる。  つまり、プラス要因、マイナス要因あれこれございますが、そのかぎを握っているのは物価だ。この物価が値上がりをすると、いま申し上げたプラス要因の設備投資がうまくいくのではないかという予想も、金融の引き締めその他の結果、ひっくり返ってくる。輸出が伸びるのではないかというのも、これもひっくり返ってくる。逆に円安が長期化するということになる。あるいは消費も、貯蓄性向の高まりによって、あるいはまた実質可処分所得の低下によって低まるということにもなる。ですから、この物価という問題は八〇年あるいは八一年の経済状況を見たときには、きわめて重要なポイントを担っておると私は思うのです。そこまでは総理も御異論はないだろうと思うのですよね。首を振っておられるから立たぬでもよろしい。  ところが、総理のなさっていることは、そういう認識に立ちながらも、この物価問題に対してきわめて甘い施策をとっていらっしゃる。物価が、いま申し上げたわが国のことしのプラス要因、マイナス要因を、プラスを多くするかマイナスを多くするかのかぎであるという認識でありながらも、物価に対してきわめて甘い取り組みであるという点が問題にされなければならぬと思うのですよ。  そこで、順番に聞かなければいかぬのですが、まず消費ですね。消費の問題は、政府も名目九・七ですか、実質が三・七という想定だが、この個人消費の中身を見ますと、いわゆる高所得者の消費は五十四年度を見ましても伸びているのです。いわゆる専門用語では第五分位というところですね。所得の多い方々の消費は伸びておる。しかし、所得の少ない方々の消費は果たしてそうであったか、私はそうでないと思います。また統計もそうなっておる。しかも、この所得の少ない方々に対していろんな負担がますますことしは高まる方向にありますね。  ある調査によりますと、標準家庭、四人家族の年間負担増というものは、これは総理府の五十三年度家計調査年報などから推計をした調査でございますが、厚生年金、国民年金、国立大学の授業料、郵便、国鉄運賃、たばこ、航空運賃、電気代、ガス代、米麦、それから診療代、あれこれを含めますと、ことし一年十三万円負担増になる、こういう計算が出ておるのです。  さらにまた所得減税、これは全然政府はなさっていない。五十四年度、五十五年度二カ年連続所得減税を見送られた。その結果、五十三年度に比べまして給与所得者の納税者が二百万人ふえておる。所得申告者の納税者が営業、農業、その他事業で二十三万人ふえておる。合計で二百二十四万人もふえておるということですね。さらにまた、税額でも二兆五千七百三十億円、三三%ふえておる。そのほとんどが所得税減税見送りによる増収という数値になっておるわけです。  しかも所得税減税の見送りによる実質的な増税は、たとえば五十四年度の収入が二百五十万円の方々は、仮にベースアップが八%といたしますと一万三千百円税金がふえるのですね。それから年収三百万円の方は、いままでに比べて三八%所得税がふえる。四百万円だと二二%ふえる。五百万円の場合は一九%、低所得者ほど減税見送りによる実質増税のパーセンテージがふえておるという、低所得者に対して大変きつい結果になっているのですね。しかも、先ほど申し上げたいろんな値上がり等によって、平均で言えば約十三万円負担増になる。  こういう状況で、果たして消費が政府が見ておられるようにことしふえるという判断ができるものだろうかということです。これは経企庁に伺った方がいいのでしょうか。私は、こんな公共料金の値上げとか所得減税の見送りなどでは、政府見通しのように消費はふえない、GNPの約半分以上を占めておる消費がふえなければ、ことしの日本経済は大変なことになるのではないですかということを申し上げたいからお尋ねしているのです。
  258. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいま矢野委員から段々のお話がございまして、来年度の経済に一番大事な問題がまず物価問題である、この御認識、私も全く同感でございます。そういう点からいろいろ御指摘がありましたが、この国民総生産の中で一番大きな割合を占めておりますいわゆる民間最終消費、これが一体どうなるであろうかという点についていろいろ御指摘があり、お尋ねがあったわけでありますが、まず私どもは、来年度の経済の成長は、すでに申し上げたように四・八%、ことしの六%よりは大分低目に見ておるわけであります。  そこで、民間最終消費の伸びでございますが、これはやはり五十四年度は五・五%の伸び、こういうふうに予想いたしております。それが来年度は三・七%程度に落ちる、こういうことは、いまいろいろ御指摘のあったような事情から、これを若干低目に見たわけでございます。しかしながら、経済の成長に対する寄与率、そういう点を見ますと、低くなりましても、四・八%のうち三%は国内総需要で見ておりまして、そのうちの二というものは民間最終消費でございますから、きわめて大事なファクターといいますか、部分を占めておることは御指摘のとおりでございます。  そこで、堅実な消費態度を維持しながらこういう目標を達成していくためには、何といってもやはりもとへ戻って物価を安定させることである。この物価がだんだんいわゆるホームメイド・インフレになりまして将来に対する不安を持ってまいりますと、仮に仰せのような穏やかな賃上げというふうなものが実現いたしましても、消費態度はますます引き締まってくるようなおそれがあるわけでございます。これは諸外国の例に照らしても、またわれわれの苦い第一次石油ショックのときの経験からいってもきわめて大でございますので、いま御指摘のように物価の安定、特に消費者物価、卸売物価は相当上がっておりますが、これを消費者物価に波及させないように、十一月二十七日に私どもは総合的な対策を定めまして、いま一生懸命やっております。  そこで、五十四年度は消費者物価の目標が、けさほども申し上げたように、四・九というのが四・七程度におさまる、この実績をまず確立いたしまして、そして来年度も公共料金等については、通産その他関係各省庁と一体となり、内閣を挙げて取り組むことによって、いまの目標の消費者物価安定ということを実現していきたい、これがわれわれの心組みでございます。
  259. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理、どうでしょうか。このホームメード・インフレを防がねばならない、政府のできることはいろいろあると思うのです。とりあえず電気、ガスその他公共料金の値上げを総理の決断で、断じてホームメード・インフレを抑えるのだという立場から、ことしはやめたとここで言うわけにはいきませんか。簡単で結構です。
  260. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 残念ながらそういうことはいたしかねます。
  261. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは先ほども私がるる申し上げているように、いかにこの物価の値上がりがことしの経済のキーポイントであるかということは、もう一遍ここで繰り返さなくてもいいですよね。これは恐らく私の認識と総理の認識はそう変わらないと思うのですよ。プラス要因、マイナス要因、さまざまの中で、何としてもプラス要因が強く働くように持っていかなくちゃならぬと思うのですよ、総理。そのポイントは物価です。この物価を下げるために、公共料金を一大決断でことしは見送る。特に低所得層の消費は伸び悩んでいるのです。しかも、負担が十三万円以上もふえるのです。所得減税がなかったために実質増税になっているのです。そういったことを考えれば、GNPの半分以上を支えておる消費を減退させないためにも、政府がいま一番手っ取り早くできることは公共料金を抑えるということじゃありませんか。どうしてもだめですか。もう一遍答えてください。
  262. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 事態がさらに悪化するおそれがございます。そういうことはどうしてもできません。
  263. 矢野絢也

    ○矢野委員 まあこういった問題はまた予算修正の段階でゆっくり議論させていただきましょう、予算修正のところで。よろしゅうございますか。理屈で説得してもだめなら、私たちは議席で勝負するしかない。  日銀総裁、お忙しいところをお越しいただいておるわけですけれども、原油の大幅な値上がりが物価の問題に重要な影響があることは、るる申し上げたとおりです。さらにまた、日米経済摩擦という点がこれから非常に大きな課題になると思うのですよ。これはいいか悪いかは別として、人為的、政策的に円安を円高に持っていくような政策を意図的におとりになるお考えがあるかどうか。つまり、経済摩擦を避けるためには輸出に多少のブレーキをかける、そのためには円安よりも円高の方がという理屈、そういった面から為替管理政策に何らかのお考えをお持ちなのかということ。  あるいは公定歩合について、物価値上がりの状況と見比べて――昨年は私は大変効果的な公定歩合政策をおとりになったと評価いたしております。これは大平さんががんばったのじゃないのです。卸売物価は上がったけれども、消費者物価が比較的鎮静しておるのは、これは日銀の的確な判断があったからだ。あなたは公共料金を上げるばっかり。昨年の消費者物価の鎮静は、これは日銀当局に表彰状を差し上げてもよいくらい。まあそういうわけで、ことしそういう物価動向とにらみ合わせて公定歩合をどういうふうにお考えになっておるか、もう一遍引き上げを考えられておるのかどうか。  さらにまた、通貨の供給量についての何らかの政策をおとりになるという必要があるのじゃないかと思うのですよ。公定歩合の引き上げはまた大蔵省が困るのですよ、国債の消化の面から。長期金利と短期金利の絡みとかいろいろあって、公定歩合引き上げは大蔵省は余りいい顔をしないはずです、国債をたくさんまた消化しなくちゃいかぬという面から。そういった面から、供給量の面での規制という政策判断もあり得るという気がするのですけれども、そういった点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  264. 前川春雄

    ○前川参考人 第一の点でございますが、私ども、先生おっしゃいましたように、これからの経済の運営において物価がかぎであるという点は全くそのとおりに考えております。そういう意味から申しますると、為替相場も、円安よりも円高の方が望ましいというふうに思っております。ただ、それでは、いまの相場水準に対してそれを円高にする方策があるか、あるいはそれが効果があるかという問題であろうというふうに思います。  為替相場が基本的に決まりまするのは、これはイタチごっこになりまするが、その国の物価状況が安定しておるということがその国の通貨価値を高めるゆえんであるということでございまするので、基本的にはやはり物価を安定させる、あるいは低位に維持するということが為替相場についても安定させるゆえんでございます。為替相場はいろいろ経済関係あるいは国際収支の関係の結果でございまするので、その結果のところだけを直しましてもなかなかそれが維持できないという面があることは御理解いただきたいと思います。  大幅な介入をやることによって円高を維持することができるかどうかという点でございまするが、実は昨年中かなりの円安になりました。ことに昨年の十月、十一月くらいはやや動きが行き過ぎたと私どもは判断いたしております。そういうことを対外的にも申しておるわけでございますが、二百五十円まで行ったのは行き過ぎだということを何遍も申したわけでございます。あの当時もかなりの介入をいたしまして、相場が余り安くならないように努力したわけでございまするが、しかし、市場、マーケットにおける相場の値ごろ観というのがああいうふうになりまするとなかなかとめられないということでございました。したがいまして、介入という点ではなかなか相場を円高にするということは困難であろうというふうに思います。ただ、外国為替市場におけるドルの需給を極力調節する、そういうために、あるいは資本勘定で流入を促進するようなことをする、あるいは流出を抑えるようなことをするということはできると思いますが、それもやはり限界のある問題であろうというふうに思います。  それから、公定歩合の問題につきまして、すぐこれをまた上げる意図があるかどうかという御質問でございました。  物価の問題につきまして、海外からの原油価格あるいはその他の一次産品価格が上昇いたしまする結果、それが日本物価水準を押し上げておるわけでございまするが、私ども日本銀行の立場から申しまして、そういう状態を極力国内で吸収する、しかも、国内要因によってそれを加速するあるいは増幅するということは絶対避けたい。第一次の石油危機の前後でも同じような問題がございましたので、そういう意味で昨年中早目早目に手を打ってまいったつもりでございます。これからもそういう姿勢を続けてまいりたいと思います。  ただいますぐ公定歩合について措置をするかどうかという点につきましては、現在のところはそこまで考えておりません。事態の推移、物価状況その他金融引き締めの効果の浸透状況等を慎重に見守りながらそれに対処してまいりたいと思います。しかし、物価状況は非常に深刻でございまするので、その対応については誤りなきを期したいというふうに決心しております。  第三番目の御質問の、通貨量について何か手を打つ考えがあるかということでございます。私ども四十七、八年のときの経験に照らしまして、今回は全体の通貨量を極力抑制するということを考えて、そういうふうに金融政策も運営してまいったつもりでございます。通貨量総量、銀行券ばかりでございませんで、預金の総量、預金も合わせました通貨量、いわゆるマネーサプライという言葉を使っておりますが、それの計数につきまして、前回のときはそれが二七、八%までふえてしまったわけでございまするが、今回はこれを極力抑制するということでやってまいっております。現在のところ二%あるいは一〇%ぐらいのところに抑え込んでおるわけでございまして、この問題につきましては、私どもその通貨量が過度にふえないように、むしろこれを抑制してまいるように真剣に努力しておるわけでございます。  通貨量について何か目標値のようなものをつくる意向がないかという御質問であろうというふうに思います。ただいま先進諸国では、通貨量につきまして目標値を設定いたします例が多いわけでございまするが、これにはなかなかいい面もございますし、悪い面もございます。日本銀行におきましては、目標値は設定いたしませんけれども、毎四半期ごとに予想値を発表しております。予想値に相違するような通貨量の増減がございましたときは、十分にその原因を追及いたしまして、必要ならばその対策をとってまいるというふうに考えておりまするので、目標値を設定したのと同じように重要な問題だというふうに受けとめて考えております。そういうことで、通貨量そのものが過度にふえないようにする努力はさらに続けてまいりたいというふうに思っております。
  265. 矢野絢也

    ○矢野委員 確かに、一方で日米経済摩擦、輸出ドライブの高まり、こういった面からの為替管理政策あるいは消費者物価の値上がりに対するにらみ、あわせて、ぜひこれは日銀当局にお願いしたいのですが、せっかくいま設備投資が高まりつつある、これが言うてみれば八〇年経済の生命線みたいなことになってきているわけですね。これが金融政策のオーバーキルとでも申しましょうか、この設備投資意欲に水がかかることがあってはもうそれこそ踏んだりけったりなことになってしまう。しかし一方、物価をにらまなくちゃならぬ。大変むずかしい政策選択だろうと思いますが、その点ひとつ誤りなきを期していただきたい。これは御答弁は要りません。お願いをしておきたいと思います。  そこで、次に大蔵大臣に伺いたいのですが、財政収支試算、これは毎年やっておるので私もいささかいやになっておるが、総理、またでたらめなのが出てきました。揚げ足を取られるのがいやなものだから、毎年簡単になってくるんですな。  それはいいとして、とにかくこれを見ますと、社会保障移転支出というのがございますね、大蔵大臣。これは平均一一・七%伸びるということになっておるんです。これは七カ年計画でそういうことになっておるからということでしょうけれども、ところがことしの予算を見ましたら、一一・七%どころか八・〇三%ですか、予算の上では。ということは、この財政収支試算の五十四年から六十年ですかの社会保障移転支出を一一・七%にする、しかし、五十五年度は残念ながら八・〇三でございましたということは、五十六年以降一一・七%以上にこの社会保障移転をふやさなければ目標とされておる一一・七%になりませんね、大蔵大臣。これはあたりまえの理屈ですわ。少なくともことしより来年は社会保障をふやさなければ、財政収支試算のこの七カ年計画がでたらめだということになりますね。論理的にそうでしょう。イエスかノーかだけ答えてください。論理的に申し上げているんだから論理的にそうだと言っていただけばいいんです。
  266. 竹下登

    ○竹下国務大臣 発射台を五十五年に置いて六十年を見ますと、一一・七というもので整合性がある、こういうことであります。
  267. 矢野絢也

    ○矢野委員 そうすると一一・七にされるわけですな。ところが、ことしの予算編成の段階で、老人医療の見直しとか児童手当の見直しとかあるいは教科書の無償配付を見直すとか、ろくでもないことばかり大蔵省が提案されて、結果としてそれは来年に見送ったということになっておるわけですね。これは、ことしは八・何%で、来年は一一・何%で、社会保障移転をふやさなければならないという数字になっておるのに福祉を減らす、このこと自体、大蔵大臣、矛盾だと思いませんか。
  268. 竹下登

    ○竹下国務大臣 各種制度の、わが国の社会福祉政策が先進国に比べて、その水準ではかなりのところに到達しておる。したがって、その中にわれわれの考え方として、いわゆる所得制限の思想をどうしても持ち込まなければ、なお完熟したこのものを続けていくわけにはいかないではないかという考えがあることは事実でございます。しかしながら、現実問題といたしまして、経済成長率あるいは物価上昇率等々が金額としては入ってまいりますので、総額として社会保障費が減っていくという性格のものではないというふうに考えております。
  269. 矢野絢也

    ○矢野委員 大蔵大臣、昨年の五十四年ベースの財政収支試算では、社会保障移転支出は一〇・九%というふうに見ておられたんですね。ことしは八%です。もうすでに、一年たつかたたぬのに財政収支試算で見込まれている伸び以下になっておる。だから、私は念のために、そうすると来年から一一・七になるのですかと伺えば、そうだという御答弁ですね。そうすると、これは間違いなく来年は一一・七%伸ばしていただけるのですか。
  270. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはまさに昭和六十年度の計画に対して五十五年度を発射台としてきわめて機械的に結んだものでありますので、この数字そのものが確実に明年の予算の中に上乗せさせられるものではございません。
  271. 矢野絢也

    ○矢野委員 少なくとも六十年までに毎年平均一一・七%伸ばしますとここに書いてあるのですよ、いただいたやつに。だから、たとえば来年サボると再来年もっとふやさなくちゃならぬ。来年も再来年も減らすと三年目にはもっと、それこそ一五%も二八%もふやさなくちゃならぬ。六十年までに毎年平均一一・七%、こういうことなんですから、たとえばことしサボった分来年かかってくるわけでしょう。現に、去年ベースの財政収支試算でも約束の金額、パーセンテージは少ないわけですからね。ですから、何か五十七年ぐらいに物すごい収入でもふえて、ことし、来年サボった分が五十七年ごろに一挙に、一一・七%の足らず前をたとえば一五%ぐらいにできるというような当てでも大蔵大臣あるのですか。なければ、この六十年までに平均一一・七%できないじゃないですか。これはどうでしょうか。
  272. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かにいまこの経済社会七カ年計画の今回のフォローアップによりまして、六十年度のものを変更しないまま五十五年度を発射台として考えた場合にはそういうことになりますが、現実の問題といたしましては、今後自由社会経済の中で、また国際経済に非常に影響を受けやすいわが国の状態でありますだけに、計画経済のような形でそのまま推移していくとは考えておりません。
  273. 矢野絢也

    ○矢野委員 そうすると、この財政収支試算の年平均一一・七%というのは余り信用してくれるなという意味ですな、これは。どうなんですか、大蔵大臣。これは国会に審議してくださいといって資料を出していただいているからまじめにこれを分析しているのですからね。そうすると、一一・七%年平均のやつがことしは八%だ、去年の財政収支試算によっても一〇・九%伸ばすとおっしゃっていながら、ことしは八・〇三%しか伸びていない。一体どうなっているのという疑問が出るのはあたりまえじゃありませんか。だから、それだったら財政収支試算はでたらめならでたらめと率直におっしゃい。
  274. 竹下登

    ○竹下国務大臣 でたらめであると申すわけにはまいりませんが、閣議におきまして決定された経済社会七カ年計画の終点というものを現在そのままに据え置きましての収支試算でございます。五十一年から矢野委員の御指摘でずっと今日まで出してまいっておりますが、さらに経済社会七カ年計画ができてからそれが基礎になったものの、まさにこの問題が計画どおりに進まないことも事実であります。したがって、昭和六十年経済の暫定試算というもの、間もなく答申が出て、政府で決定することになるそうでありますが、その社会保障移転の国民所得比を六十年度に一四・五%程度と見込んでおりますが、これは暫定試算における租税負担及び社会保障負担等を前提とするものであります。したがって、今後費用負担の確保を図りながら、社会保障移転の六十年度予測値に近づける努力を払っていくべきものであると思いますが、実際問題として、財政の現状からその達成はまことに容易ならざるものがある、このように考えております。
  275. 矢野絢也

    ○矢野委員 余りなれぬ文章をお読みにならぬ方がいいと思うのですよ。そんなことを言うとますますおかしくなるのでね。そうすると、この社会保障負担、要するに六十年度まで一一・何%でふやしていきたいというのは、租税負担を二六・五くらいまで上げなくてはできません、増税しなければ福祉はふやせませんということを言いたいのですか、いま読まれた文章は。どっちなんですか。
  276. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十年の計画を達成するためには、租税負担率の方は二六・五%ということを変えないこととしてフォローアップをしたものであることは事実であります。
  277. 矢野絢也

    ○矢野委員 その租税収入が得られなければ福祉は期待どおりにはいかぬとおっしゃっているわけですね。またその実態がこの財政収支試算の数値よりも低い福祉の伸びになっておる、こう理解していいのですか。増税しなければ福祉はふやさぬと開き直っていらっしゃるのですか。
  278. 竹下登

    ○竹下国務大臣 開き直っておるわけでもございません。まさに実態を素直に、正直にそのまま申し上げておるところであります。
  279. 矢野絢也

    ○矢野委員 もう一つ、今度は経企庁長官に伺いますけれども、七カ年計画で五十四年から六十年までの年平均の経済成長は一〇・六というふうに想定されておる。これは名目成長率ですね。ところが、これは見込みですけれども、五十四年は八・二、五十五年は九・四だったですね。七カ年計画のうちのもう二年が目標よりも低いわけですから、八・二と九・四、これはいずれも見込みでありますけれども、これで六十年まで年平均一〇・六というのはどないしてできるのかということ。逆に言えば、そうすると、五十五年は九・四と想定されておるが、五十六年以降一一%とか一二%という名目成長率を想定しなければ平均一〇・六になりませんな、これは当然理屈から考えても。その辺はどういう伸び率を五十六年以降は想定されているのですか。つまり、ならしで平均一〇・六にするためには、もう二年もだめでしたがなということを申し上げているのですよ。
  280. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 けさほども多賀谷委員にもお答えいたしましたように、本来ですと新しい経済社会七カ年計画というものをつくるべきであるという御主張はかねがね各党の方々からも伺っております。ところが、新しい事態というものが一体どういう事態であるのか、全くわれわれとしてはいま想定できない。こういうところから五十四年度と五十五年度、いま御指摘のこの二つの実績だけを基礎にいたしましてフォローアップ、すなわち見直しをいたした、こういうことでございますから、論理的にお詰めになりますと、六十年度に一つの目標を置いていままでの実績からいくとそういう非常に大きな矛盾が出てまいりますが、私どもとしては全体の実質の成長率を当初の五・七から五・五におろしておる、それから卸売物価の上がり方は、いままでの実績から見て三を五に上げておる、それから一般消費税の問題はこれは事実上不可能になりましたから、その点も修正しておる、そういうことで、見直しをいたしただけでございますから、いまのような点については若干の矛盾が出ておることはやむを得ないことである、かように考えております。
  281. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、私が申し上げた五十六年以降は名目成長率が何%になるのですか、そうしなければ一〇・六にならぬでしょうと、その数字を伺っているのですよ。幾らですか、名目成長率は。もう時間がありませんから簡単に答えてください。数字だけ言ってください。
  282. 白井和徳

    ○白井(和)政府委員 五十五年度をベースイヤーにいたしますと、新しい暫定試算でいきますと一一%を若干上回る程度でございます。一一・四ぐらいになります。
  283. 矢野絢也

    ○矢野委員 一一・四ですね。経企庁長官、これは一一・四ですって。そんなに自信があるのですか。自信もない数字をこんなところに何ぼ並べても、国会の審議の資料になりませんよ。それは多少の矛盾じゃないのですよ。
  284. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは六十年度の目標を変えるということは、ただいまのところ諸般の情勢からできませんので、五十四、五十五の実績をもとにいたしまして間を詰めていきますといま申し上げたような割合になっておる、こういうことでございます。
  285. 矢野絢也

    ○矢野委員 六十年度の数字、そうしたらまるで神がかり的にその数字が存在しているわけですね、変えるわけにいきませんて、どういうことなんですか。少なくとも財政収支試算の基礎になっているのでしょう、この七カ年計画というものが。私たちは財政再建を議論するためにこの資料を重要な資料として勉強しているのでしょう。その財政収支試算の前提が七カ年計画だ、その七カ年計画の六十年の数値を変えるわけにいかぬから、そこから逆算して作文しているんですということだ、早いこと言えば。そんなもので財政再建の基礎資料になるでしょうか。
  286. 白井和徳

    ○白井(和)政府委員 新経済七カ年計画は、五十三年度をベースイヤーにいたしました七カ年計画でございます。  それで先ほど大臣からお話がありましたように、実質五・五%の成長、暫定試算でそうなっております。したがいまして、五十四、五十五、その後の成長をどう見るかということでございますが、五十五年は四・八に落ちておりますが、今後実質成長は、適正成長の路線に定着すると想定いたしますと、いまの成長率は相当高目になる。したがいまして、名目成長率を一一・四ということで、名目と実質との差が大体五ぐらいだ。その五というのは、たとえば今年度を見ますと実質成長率が六%で名目成長率八%ということで、二ポイントしか差がないわけですね。これは輸入物価が非常に高騰したということで、控除項目が上がっているということが影響しているわけです。先ほど矢野委員が言われましたように、OPECに所得が移転された、そういうことでもって名目成長率と実質成長率の差が出てくるわけです。したがいまして、今後輸入物価が安定してくるということになりますと、名目成長率と実質成長率との乖離は若干高目に出るというのは、経済的に技術的に言えるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  287. 矢野絢也

    ○矢野委員 七カ年計画にいたしましても財政収支試算にいたしましても、結局、たとえば七カ年計画は国際収支がかくあるべきだ、そうさせるためには政策試算はこうあるべきだ。あるいはいま五十六年以降は一一・四%とおっしゃったけれども経済はこういうふうに持っていくべきだという現時点から積み上げていく政策判断というものがあって初めてでき上がってくる計画というのは現実性を持ってくるし、論理性を持ってくるし、またそれなら努力目標としての説得力も持ってくるのですよね。全然論理が逆になっているのです、皆さん方の場合は。  そういう問題は全部別にしておいて、六十年の数値、しかもきわめて政策的な意図がある、租税負担率だけはこの見直しのときも前のあれと変えてない、税金の負担率だけはきわめて高いところに置いて、これだけは変えないで、名目成長率を上げてみたり、卸売物価や消費者物価の見通しを変えてみたり、そういう増税意図という面については政策意図がきわめて露骨にあるけれども、もっと大事な問題についての政策判断というのは判断を停止させておる。むしろよそから出てくる要素みたいにしているというところに問題があるというのが七カ年計画の欠点ですよ、基本的に。しかもそういうものをもとにして財政収支試算をつくっている。これは結局大分遠慮した表現になっておるけれども、増税がいかに必要であるかとPRするプロパガンダの手法だということは、二年前も去年も私は申し上げたけれども、本当はことしこういうふうに財政がなっておって、来年はこの辺をこういうふうに削って、たとえばサンセットとか時限立法とかという形でここはこういうふうに消してこういうふうに財政の形をしていくのです、再来年はこういうふうに財政の形を変えるのですという積み上げ方式による財政計画というものが当然なければならぬ。むちゃくちゃなんですよ。  これは大蔵大臣、私もこの問題で毎年やっておりまして、この問題なら大蔵大臣にかわって逆に答弁してあげてもいいくらいこっちは詳しい。いいかげんに財政計画をおつくりになったらどうでしょうか。
  288. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も毎年矢野委員の議論を聞いておった一人でございます。確かに、財政計画を策定すべきであるということについて慎重に検討を重ねた結果、総理からも本会議で策定すべきものである、努力をしたいという答弁があっております。したがって、その後……(矢野委員「簡単にしてください」と呼ぶ)簡単ということでございますが、本当にこれは今度は大蔵省だけでつくる収支試算と違いますので、政府の責任でつくらなければなりませんから、政府全体の協力、各省の協力も得なければならぬというので、いろいろな試みを行って、私の見た限りにおいては、矢野委員の御指摘にこたえるためにいま猛烈に勉強していると思うのであります。ただ、猛烈に勉強しておるが、何月何日までにそれは仕上げてみせますというほどの自信が今日の段階でない、こういうふうに理解をいただきたいと思います。
  289. 矢野絢也

    ○矢野委員 二年前も私御質問したときに、個人の名前を出して恐縮ですが、長岡さんがただいま勉強中でございますと、もう二年前でした。これは一体何年勉強するつもりですか。もう二年前勉強中でございますとおっしゃって――もういい、答えを聞いたってしようがない。  また戻りますけれども、福祉の問題で老人医療の見直しとか児童手当の見直し、教科書の無償配付の見直し、この覚書、これは廃棄すると、何かもう一遍よく相談するみたいなことを総理がきょうおっしゃったように私は承っておりますが、こんなつまらぬ、くだらぬ覚書は――国民が非常に心配しておるわけですよ。来年になったら老人医療の見直しとか児童手当の見直しとか教科書無償配付の見直しが行われる、先ほどるる申し上げたとおり、所得の少ない方々にとっては大変な問題なんです。そんな不安感を与えることのないように、そういう来年見直しというような覚書は、この際、白紙撤回するというふうに明確にお答えをいただきたいと思います。これは総理
  290. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 あれは自民党と政府の間の了解でございまして、特別、国会と関係があることではございませんので、私どもの心構えでございますので、さよう御了承いただきます。
  291. 矢野絢也

    ○矢野委員 それは国会と関係ないと言ったって、政府の一定の判断が入って覚書ができているわけでしょう。大蔵省は強く要請されて、厚生大臣と相談されて、自民党も加わって覚書ができたんで、国会に関係ないから答える必要がないという態度はよくないと思うのですよ。政府がそういう方針でおるということは間違いのない事実なんだから。その方針を白紙撤回してもらいたいと言っているわけですから、これは国会を拘束するとかしないとかと聞いているわけではない。何も政府が決めようが自民党が決めようが国会は拘束されません。それはあたりまえのことですよ。そういう方針を撤回してもらいたいと申し上げているのです。
  292. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私の理解では、自由民主党と政府の間で検討いたしました結果は、成案を得たら国会で御審議をいただくことになるわけでございますので、その点はきわめてあたりまえなことではないか。政府と自民党の間では、こういう問題ばかりでなく、いろいろな問題につきまして検討をいたしておるわけで、その一つにすぎないと私は考えております。
  293. 矢野絢也

    ○矢野委員 ですから、私は公明党を代表して、大平さんは政府の代表でしょう。政府のそういう覚書じゃなしに方針があって覚書があるわけなんですから、その方針を撤回してください。これは国会の問題です。国会として、公明党として、老人医療の見直しとか児童手当の見直し、教科書の無償配付の見直しはやめてもらいたい。いままでどおりどころか金額をふやしてもらいたいということを申し上げているのですよ。この意見に対して、あなたはまるで関係がないみたいなことで回答されない。そうすると、要するにその方針はこれからも続けるということなんですね。答えてください。
  294. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 福祉政策の上からも財政政策の上からも、検討すべきものは検討せなければならぬわけでございます。矢野さんは強いそういう御意向を持っておられるということはよくわかりました。
  295. 矢野絢也

    ○矢野委員 そんなことここで聞かなくたって初めからわかっているじゃありませんか。私は、大蔵大臣が予算編成の段階で強くそういうことを各省に要望された。児童手当の見直し、老人医療の無料の見直し、教科書の無償配付の見直し、そういう政府の考え方を改めてもらいたい。改める気がなければ、改める気がないとおっしゃっていただければいいのです。これはまた数で勝負しなければいけないんだ。そうでしょう。その方針を撤回するかしないか、イエスかノーかだけ答えてください。
  296. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 福祉水準を、厳しい環境のもとでどのようにして維持、向上させていくかということにつきましては、いろいろな点から検討しなければならぬわけでございますので、その検討までしてはならぬというのは、多少無理な御注文じゃないでしょうか。
  297. 矢野絢也

    ○矢野委員 検討というよりも、老人医療とか児童手当とか教科書無償配付の条件を悪くするという意味での見直しを約束しているのですよ。単なる検討じゃない、バックさせることを、そういう方向で見直しているのです。大蔵大臣、あんな覚書破棄します、あるいはそういう方針は来年度予算編成では持ちません、持つなら持つと言ってください。どちらでもいいのです。
  298. 竹下登

    ○竹下国務大臣 予算編成の最終段階におきまして、厳しい財政事情の中に福祉水準等を将来ともに保ちながら、しかも財政再建を図っていくという重要な問題に対処するに当たって、私どもが、教科書の問題は抜いてございますが、老人医療、児童手当、そして社会保障一般について、所得制限の問題についてはお互いが真剣に取り組むと同時に、各般の審議会等に図ってわれわれの方針を実現するように努力しようという努力目標を誓い合った文章であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  299. 矢野絢也

    ○矢野委員 もう話を変えましょう。  厚生年金ですが、この支給開始年齢を六十歳から六十五歳に引き上げる、こういう厚生省の考え、これはどう考えても、官民格差という点から考えてもおかしいし、定年延長という点から考えてもおかしいですよ。  参考のために、総理ちょっと聞いてください。定年の年齢と年金支給年齢との整合の問題でいきますと、日本は定年が慣例として五十五歳、年金支給年齢は六十歳。アメリカは定年が七十歳、年金が六十五歳。イギリスは定年が六十五歳、年金が六十五歳、これはまさにドッキングしておる。アメリカの場合には、年金の方が定年よりも早い。フランスは定年が六十五歳、年金支給は六十歳からもらえる。西ドイツは定年が六十五、年金も六十五。イタリアは定年が六十五、年金をもらえるのは六十歳。こんなあほなことをやっているのは日本だけです。それをまた六十五歳まで支給の年齢を引き上げるなんて言語道断だ。大河内先生も、そういうことは許せぬ、基本年金の構想とかあるいは定年の問題についての手当てをやれとかいう審議会の構想は全然無視して給付年限だけを六十五歳にするのはけしからぬと言って大変お怒りですね。  もう時間がありませんから、総理、こういうことはやりませんとお答えを願いたい。やはりやるというのならやると言ってください。それならそれでこちらも考えがある。どうですか。
  300. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 福祉問題というのはいろいろな側面を持っておるわけでございますことは、矢野さんも、私から申し上げるまでもないと思うのでございます。いま欧米諸国と日本との比較がございましたけれども、これは年齢構成が違うわけでございますし、また社会保険料の負担も租税負担も違うことも、あなたはよく御承知のとおりでございます。一概にこれを比較するわけにいかぬと思いまするし、それからわが国だけを考えましても、給付水準をどのように持っていくか、掛金をどのように持っていくか、高年齢化がずっと進んでいく中で、どうして水準を維持していくかということを考えるには、いろいろな工夫をせねばならぬ。その工夫をみんなでやってみよう、こうしていいことをやろうとしているわけでございますので、しっかりと検討してわれわれの期待にこたえる結論を出せよ、そう何であなたは激励しないのでしょうか。
  301. 矢野絢也

    ○矢野委員 ちょっと総理、あなたの党の自民党も、厚生年金の老齢年金支給開始年限を六十歳から六十五歳に引き上げるというこの考え方には反対表明している。自民党も反対しているのを、何で私が激励しなければいけませんのか。自民党は反対していますよ、少なくともきょうの時点では。自民党も反対されているのを、なぜ矢野君、君は激励しないか。いいことをしたら激励してあげますよ。  確かに私どもは予算陳情のときに、漁船の海難遺児の問題について強く予算の要請をいたしましたね。漁船の海難遺児の育英会をつくってもらいたいということで、補助金三億五百二十七万円をつけていただきました。これは激励どころか感謝申し上げますよ。これは漁船の関係の方は大変喜んでいらっしゃる。この漁船の海難遺児の育英制度の問題、これも金額をふやしてもらいたいのです。あるいは交通遺児の問題についても、これはぜひ金額をふやしてもらいたい、これは後で一遍建設大臣に一つだけ意見を聞きたいのですけれども。  そういうわけで、いいことがあったら私は何ぼでも感謝もするし激励もします。自民党が反対しているじゃありませんか。あなたは何で激励しないかと自民党に言ってください。どうですか。
  302. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 自民党も、この問題は重大な問題だから関係審議会の答申を待って方針を決めろということを自民党としては希望するということを政府に申し入れがあったわけでございます。
  303. 矢野絢也

    ○矢野委員 建設大臣、最近高速道路で交通事故が非常に多いわけだけれども、建設省としてあるいは道路公団として――先ほど私は漁船の海難遺児の問題で感謝の言葉を申し上げた。これは三億つけていただいたのは大変よかったと思うのです。交通遺児の問題についても建設省として、特に高速道路の上での交通事故、これはやはり道路公団なり建設省が何らかそういう育英制度をおつくりになるべきじゃないかと思うのだけれども、このことだけ簡単にお答えください、次の問題がございますから。
  304. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。  いま矢野委員のおっしゃいますように、高速道路におきまする死亡事故は確かに非常に比率が多いわけでございます。私どもは、高速道路におきまする交通事故を極力防止するように、交通安全対策あるいはドライバーの啓蒙宣伝もやってきたわけでございますが、残念ながら昨年、五十四年度は百六十二名になっておるわけでございます。私ども、そういう意味では何らかの措置を講じたいと慎重に検討いたしておったところでおりまして、矢野委員の御意見にはごもっともな点があると考えております。  そこで、私どもは何らかの措置を講じようといま思っております。そこで、この実施を道路公団において直接やるということはいろいろな意味で必ずしも適当ではないと思います。そこで私どもがいま考えておりますのは、道路公団に関係のありまする、いわゆる高速道路に関係のありまする公益法人において、他の機関においてやっておられますようなこれらの措置につきまして実施をいたしたい、こういうふうに考えておりまして、何とか五十五年度から実施をしたいと思っております。ただいまの考えといたしましては、五十五年度から、たとえば道路施設協会等を通じまして育英資金等を支給するということを実施をいたしたい、努力をいたしたいと思っております。
  305. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは大平総理、激励どころか感謝を申し上げます。高速道路で交通事故がふえておる。そういった方々のお子様に対して育英会制度をおつくりいただくという建設大臣の御答弁でございますから、これは感謝します。しかし、先ほどのはちょっと遺憾ですな。私たち定年延長法を昨年強く要求して、六十歳まで定年を法律の上で伸ばしてもらいたい、保障してもらいたい。いまだにそれができておらない。そうしたら年金の方を六十五歳に引き上げてしまう。六十五歳までもらえません。そんな殺生なやり方がありますか、総理。しかも公務員の方は六十歳。何か閣僚懇談会ではこの六十歳というのは変えませんというようなえらい物々しい申し合わせをされたということですけれども、こういう官民格差を一方でほっておいて、しかも私どもが要求している定年延長はいまだに実現なさらないで、それで厚生年金の支給年限を六十五歳まで引き上げてしまうなんて、まあ本当にえげつないと申しますか、お年寄りいじめと申しますか、情けないやら、ということです。  大蔵大臣、あなたは一月十四日、外人記者クラブで講演をされましたね。なかなかりっぱな講演をされたのですけれども、わが国の防衛費を対国民総生産比、今度〇・九%ということなんだけれども、この問題について大蔵大臣は、「閣議で決めているのは、〇・九%ではなく、国力、国情に応じて――という方向である」というふうに、結局財政当局として弾力的に考えているということを示唆された、こう新聞報道では載っているのです。いずれにしても、国力、国情に応じて対GNPの防衛費は弾力的に変わっていくんだということなんですけれども、国力、国情というのはどういうことなんですか。  その前に、閣議で決めているのは〇・九ではなく、国力、国情に応じてという方向であると御発言なさったのですか。そのことと、国力、国情というのはどういう意味なんですか。
  306. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が申しておりますのは、防衛予算というものはまずGNP対比〇・九というようなもので固定すべきものではなく、あくまでも積み上げ――もとより今日、国内的にも国外的にも〇・九というのがある種の指標になっておることは十分承知いたしておりますが、あくまでもそのときの他の予算とのバランスとかいうようなものの考慮の上に立って政府自体で決めるべきものである。それが国力、国情に応じて決めるべきものということである。それは昭和五十二年の「防衛計画の大綱」というものが、オーソライズされたものとしてはそれが基礎になっておるというふうな講演をいたしました。
  307. 矢野絢也

    ○矢野委員 これは総理昭和五十一年の十一月五日に防衛力整備についての閣議決定というのがあるのですよ。「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」ところが、あなたの閣僚である大蔵大臣は、〇・九というのは閣議決定ではないのだ。あなたは閣議決定はないと言ってはりますが、閣議決定はあります。あんた、そんなむちゃ言うてはりますが、いつの間に閣議決定をひっくり返すほど竹下大蔵大臣は偉くなったんですか。これはいけませんぞ、この問題は。これは厳粛な閣議決定ですよ、一・〇を超えないものとするというのは。ところが、閣議決定じゃなくして国力、国情。国力、国情なんという理屈が通るなら、最近の大平総理答弁を聞いておりますと、何だかカーター大統領の演説とか国防総省報告というのは理解できるとか、支持できるとか、大変物騒なことをいろいろ発言なさっておる、そういったアメリカの世界戦略と連動してというのが国力、国情に応じてという論理につながってくる。あくまでもこの閣議決定である一・〇、これは超えないんだというのは非常に重要な閣議決定だから、私はことさらこの問題を持ち出しておるのです。大蔵大臣、これは重大な発言ですよ。閣議決定ではないなどというような大それたことを言ってはいけませんよ。
  308. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が申しましたのは、いわゆる五十一年の――先ほど五十二年と申し上げましたのは間違いであります、五十一年の十一月五日の国防会議の決定、そして同日の閣議決定は、国民総生産の百分の一に相当する額を超えないこととする、こうなっておるわけです。だから、一%でございます。したがって、その後の推移の中で、最近〇・九というものがあたかも決定されたかの感じでひとり歩きしておる、そのことは私は念頭にはあるけれども、実態としてはそれが絶対的なものではないという表現で講演をいたしたわけでございます。きわめて謙虚に講演をいたしました。
  309. 矢野絢也

    ○矢野委員 それじゃ大平総理、改めて確認したいのですが、この五十一年十一月五日の防衛力整備についての閣議決定は大平政権としても断固守る、こういうお考えであると理解してよろしゅうございますか。
  310. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ただいまのところ、それを変えるつもりはありません。
  311. 矢野絢也

    ○矢野委員 ただいまのところって、ちょっと気になりますね。もう一遍言ってください。
  312. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それを遵守していきたいと考えています。
  313. 矢野絢也

    ○矢野委員 ただいまのところと言うと、ひょっとしたら将来変えるかもわからぬみたいな意味があるので、将来ともに変えませんというふうに言いかえていただきたいと思う。
  314. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 何事によらず未来永劫ということはございませんので、私どもとしてはいまその方針を変えるつもりはないということでございます。
  315. 矢野絢也

    ○矢野委員 大蔵大臣の発言は、謙虚なつもりでやったんだとおっしゃっているけれども、まあいいでしょう。総理がそういうふうに守るとおっしゃっているんだから……。  それで、防衛庁長官に伺いたいのですが、あなたばかりをいじめているみたいな感じになるが、私はきょうはあなたにいま初めて聞くのだからいじめているわけじゃないのだけれども、どうも集中的に質問が行っているようですが、やはりこれは重要な問題ですから、どうしてもお尋ねせざるを得ないのです。  その前にちょっと警察庁に聞きたいのですけれども、自衛隊のスパイ事件につきまして相当以前から今回の事件を調査していたというように承っておるわけですが、こういう調査を警察で始められたきっかけはどういうことだったのですか。また、いつごろから調査を始められたんですか。これは警察の方でお答え願いたいと思います。
  316. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  昨年の春ごろから端緒を得まして内偵をしておった次第であります。
  317. 矢野絢也

    ○矢野委員 防衛庁側からの調査依頼があってお調べになったのか、あるいはそれ以外の何らかのきっかけでお調べになったのか、どちらですか。
  318. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 情報を端緒にしてやったわけでございまして、防衛庁からのものではございません。
  319. 矢野絢也

    ○矢野委員 外国からの情報が端緒だったのでしょうか。
  320. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 外国とは全然関係ございません。
  321. 矢野絢也

    ○矢野委員 今回の事件の概要について憶測等がいろいろ飛んでおるわけで、週刊雑誌にもいろいろと載っておるわけです。私どもどれが本当の事実なのかわからない。この際事件の概要について正確な御報告を願いたいのであります。  何年ごろから文書等の情報が流されていたのか、関係する人物は何人か、どのような情報が流されていたのか、情報内容の秘密のランクづけはどの程度のものか、あるいは情報を流した犯人の動機は何か等について簡潔にお答えいただければと思います。
  322. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  いま鋭意捜査中でございまして、いま御指摘のいろいろの動機を初め、情報の種類がどうであったか、あるいはその他につきましては、いま全貌解明中のため全力を尽くして捜査中ということでございます。  ただ、いまの段階で言えますことは、ソ連大使館側の武官等が一応三人出ておる。さらにまた防衛庁関係、現職の大島、香椎両氏、それに宮永元陸将補、この三人が出ておるということでございます。ソ連側のコズロフ大佐はすでに帰国しておりますので、現在日本人三人でございます。宮永元陸将補、香椎、大島、この三人につきまして取り調べ、いまおっしゃったような各種の点につきまして鋭意捜査を進めておる、こういう段階でございます。
  323. 矢野絢也

    ○矢野委員 伝えられる話によりますと、中国の情報あるいはアメリカに関する情報が流れた。これは対中国関係、対米国関係に影響が及ぶ。当然及びますね。外務省として、中国、米国に対して今回の事件で何らかの措置をされたんですか。外務大臣に伺います。
  324. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 事件が表に出ましてから早急に在米大使館を通じまして米国側に連絡いたしました。同様に中国側にも連絡いたしたわけでございますが、現在のところ米国側は、先日マンスフィールド大使からもこの問題について、日米関係に特別の影響はないという返事がございました。
  325. 矢野絢也

    ○矢野委員 防衛庁長官は事件摘発を事前に知らされていらっしゃったようでございます。しかし、私的な行事への参加、いろいろ理由があったんだろうと思いますが、それを優先された。これは少なくとも公私混同したというか、重大な責務に対する放棄と見られても仕方がないと思うのです。けさほども多賀谷書記長から御質問があったわけでございますが、私どもが、防衛庁長官、おまえやめろというようなことを言う前に、むしろこういう重大な事件を引き起こした――あなた就任してそれほど日があるわけじゃないから、あなたがやった、あるいはあなたの在任期間中に起こったというわけじゃない。そういう点ではまことに不幸な、お気の毒な感じもあるけれども、しかしこれは、昔風の言葉で言えば三軍の長であります。直接自分の在任期間中じゃない、昔からのことだけれども、かかる不祥事に対して防衛庁長官としてみずからの判断で責任をとられるということが、むしろ範を全自衛隊に示す、また昔風の言葉で恐縮だけれども、軍紀の厳粛なることを指導者が示すという意味においても、みずから責任を明らかにされることの方がいいんではないか。グンキというのは機密の軍機じゃない、軍の規律の軍紀です。そういう規律の厳粛さをみずからが責任を明らかにすることによって範をたれる。  よけいなおせっかいかもわかりませんが、あなた、これから何年防衛庁長官をなさるか知りませんが、在任中もいろいろお仕事をなさると思います。有益な、大きな貢献もなさるのだろうと思いたいのでありますけれども、これからいろいろそういう自衛隊の問題についてお仕事をなさる、貢献をなさる以上に、この問題についてみずから責任を明らかにすることによって範を示すということの方が、それこそ五年、十印防衛庁長官をおやりなさる以上の大きなお仕事になるんじゃないかという気がするんですよ。おまえけしからぬからやめろなんて、そんな品の悪いことを私は言っているわけじゃない。むしろ全自衛隊の規律、かかることを未然に防ぐという立場から、防衛庁長官、最高責任者が、これほど事が重大なんだということをみずからの進退によって明らかにすることが範をたれることになるのではないかというふうに私は思うのでありますが、これはいかがでございましょうか。
  326. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 もとより防衛庁長官としてその責任の重さは痛感しているところでありまして、今回の処分決定に当たりましては、私自身の進退問題も含めまして種々苦悩を重ねてきたわけでございます。私自身が身を退いて余人に後事を託すことも一つの選択ではありますが、二度とかかる不祥事件を絶対に起こさないよう、この際一刻も早く厳正な規律と秘密保全体制を確立しまして、もって国民の信頼を回復するためには、政治家として安易な逃避は決して許されるものではなく、苦しくとも身をとどめ、隊員とともに一致団結して揺るぎない防衛の基盤を確立するため着実な歩みを進めることこそ、この重大な時期に私に課せられた責務であると考えている次第であります。
  327. 矢野絢也

    ○矢野委員 本当のことを言いまして、こういう話題は私も余り好むところじゃないんです。むしろ私は、この問題についてはあなた以上に歴代防衛庁長官の責任が責められるべきだ、実体的にはそう思います。しかし、私は先ほど申し上げたとおり、軍の規律、かかる不祥事を二度と起こさないという、事の重要性を自衛隊全体に明らかにするためにも、あなた自身がみずからの進退を、やめるという形で責任をとることによって、それこそ自衛隊内部が粛然とえりを正して、かかることのないような改善が行われると私は思うのですよ。ですから、私がやめ、やめと言うよりも、むしろそのような御判断をなさるのが、いまあなたが言われた、かかることの二度と起こらないようなということのためにも意味があるんじゃないかと思うのですけれども、どうなんでしょうか。――まあ、よろしいです。  大平総理、これはどう思われますか。こんな話題、私は余りやりたくない。しかし、事はきわめて重大です。わが国の秘密、自衛隊の秘密がソ連に漏れる、とんでもないことだ。どうでしょうか、総理、簡単に答えてください。
  328. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 けさほども多賀谷書記長にお答え申し上げましたように、この問題につきまして、行政上、政治上の責任を回避できるとは考えておりません。政治上の責任をどうするかという問題につきましては、事重大でございますので、いま捜査が行われておりまする事件の解明の進展を待ちまして、慎重に考えなければいけない問題と考えております。
  329. 矢野絢也

    ○矢野委員 防衛庁長官、あなた、二十一日の日にこういう発言をされておりますね。米軍の秘密がソ連に漏れたなら容易ならざる事態だった、中国の情報が多かったそうだ、情勢は変わった、こういう意味の発言をされているんです、総理。これは私が勝手に言っているのじゃない。新聞にある。また、この新聞のもとになっておるあなたの発言のメモもある。これはどういうことでしょうか。アメリカの秘密がソ連に漏れたら容易ならざることだ、中国の情報が多かったそうで情勢は変わった、よかったと言う。米国の情報なら重大だけれども中国の情報なら構わないのだ、これはどういう認識ですか、防衛庁長官。どういうわけですか、これは。  私は事を穏やかに過ごしたいからこんな話題は出したくなかった。だから、軍の規律を正すためにみずから自分の進退をお決めなさるべきだということを、私は、それこそ自衛隊じゃないけれども武士の情けで言っているのです。それでもなおかつそういう態度をおとりになるなら、この問題を持ち出さざるを得ない。「米軍の秘密がソ連にもれたのなら、容易ならざる事態だった。中国情報が多かったんだそうだ。情勢は変わったよ」これはどういう意味ですか、答弁してください。
  330. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 機密の漏洩ということはいかなる事情があろうとも、ましてや国内から、さらに自衛隊の現職自衛官から漏れるということは絶対悪いことでございます。
  331. 矢野絢也

    ○矢野委員 あなたは十八日の夜に、この問題は「他人様にうんぬんされることではない。自分の進退は自分で決める」。「自分の進退は自分で決める」と十八日おっしゃった。二十一日には、米国の情報なら大変だけれども中国の情報だからよかった、こういう意味の発言をされておる。私の質問に答えてないじゃありませんか。答えてください。  こんなことで中国に対してどうするのですか、外務大臣。こういう答弁許されますか、こういう考え方が。アメリカの情報なら重大だけれども中国の情報だからよかったのだ、とんでもないことじゃありませんか。これで外務省、仕事やれますか。こんなことは許せませんよ。
  332. 田村元

    田村委員長 防衛庁長官、質問の趣旨に答えてください。
  333. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 そういうことは私といたしましても言っておりません。
  334. 矢野絢也

    ○矢野委員 長官、それは重大なことになりますよ。あなたは言っているのですよ。メモありますよ。  総理、言っていないと言っているのです、こういう重要なことについて。もしおっしゃったらどうなりますか。総理の御答弁を聞かしてください。言っているのですよ、彼は。新聞に載っておるのです。私、こんなメモも持っておりますよ。  あなたの発言のメモを持っておりますよ。こういう自衛隊の重要な問題だけに、御自分の発言にもう少し責任を持ってもらいたい。おっしゃったことを言っていないなんて、これは委員長、こんなことでは質問続けられませんよ。新聞にも載っておるじゃありませんか。
  335. 田村元

    田村委員長 防衛庁長官、この新聞記事の内容について真偽のほどをもう一回答弁してください。
  336. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 私はそういうふうなことは言っておりません。
  337. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は日まで指定して申し上げているのですよ。もしそういうことを言っておったということが立証されたら、あなたは責任とっておやめなさいますか。こんな言い方をしたくないのです。私は冒頭から、軍の規律の重大さに範をたれるという意味からもおやめなさったらどうですかということを申し上げているのですよ。なおかつそうおっしゃるから、私はこういう問題を持ち出さざるを得ない。これは重大なことですから。現に新聞に載っておることですし、私のところにあなたの発言のメモもあります。(発言する者あり)
  338. 田村元

    田村委員長 矢野君、質問をお続けください。
  339. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは長官、この二十一日のときに、要するに米国の情報は出てなかった、主として中国関係の情報だったというくだりの会見をされたことは間違いのない事実だと思うのですよね。それについてあなたは、米国が少なくて中国であってよかったという意味のことは言っていないみたいなことらしいけれども、どういう発言をなさったのですか、それをちょっとそこで説明してください。会見だったのか、懇談だったのか、あるいは雑談だったのか、あなたの立場も尊重して、その辺の事情を説明してください。私はここに新聞記事があるから申し上げているのですよ。新聞に載っておるのですよ。
  340. 田村元

    田村委員長 官房長から事実関係だけ説明したいと言っておりますから……。官房長
  341. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答え申し上げます。  二十一日に総理がオーストラリアから帰られました朝、長官が総理の私邸にお訪ねいたしまして事件の報告をいたしました。その帰った後、記者会見を求められた、その席上のことであろうと思います。
  342. 矢野絢也

    ○矢野委員 長官。
  343. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 ただいま官房長が言われたとおりに、記者会見の席におきましてもそういうふうなことは申し上げておりません。
  344. 矢野絢也

    ○矢野委員 だから、その記者会見でどういうことを言われたかということを聞いているのです。だから、中国とか米国とかという情報の問題があったのでしょう。どういう説明をされたのかということを、あなたのお立場を尊重して御説明くださいと言っているのじゃありませんか。――委員長、あなたが聞けとおっしゃるから聞いているのだが、答えてくれないじゃありませんか。
  345. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 それでは、私から記者会見の内容を申し上げたいと思いますが、かわりをもちまして、たくさんございますから、お許しを得まして読み上げさしていただきます。よろしいですか。それでは読み上げます。  昭和五十五年一月二十一日、月曜、九時に総理私邸に参り、お目にかかった。まず第一に、今回の訪問に対し御苦労さまと言うとともに、今回の秘密漏洩事件について大変申しわけない、国民に対しても申しわけないと申し上げました。このような事件が再び起こるようなことがあってはならない、全力を挙げ、毅然たる態度で事件を解明していかねばならないと申し上げるとともに、庁内において機密保持に対し委員会をつくり直ちに対処するとともに、警察当局の捜査に対し全面的に協力をいたしたいと申し上げた。総理から、私もそのように考えており、何も申し上げることはないと言われた。  話の中で国会対策の話が出た。なかなか容易でない、機密保持に対して、たとえば民社党の方でも強化するとか、特別立法するとかいうことには反対の感触であり、この点についてはなかなか困難な問題もあるので、現行制度の中においてできるだけのことをやっていかなければならないと、私の方から申し上げました。各党の御意見も立法については消極的だ。われわれもまた現行制度の中でできるだけのことを……。総理の方からは、リムパックも容易でないから、この点についてもひとつ引き締めてやってほしいとのお話がございました。  総理言葉は、特別委員会とリムパックの話だけか、こう聞かれた。そうだ。現行法制のもとでの委員会をつくり、秘密保全の処置については警察に協力し、できるだけ早く事件を解明することである。防衛問題も大変だからしっかり国会の準備をやるように言われた。これはそのまま申し上げておるわけです。  事件の内容についてのやりとりはあったか。これについては本日警察の方からも報告があるようです。私どもとしては承知していない。  防衛庁としての責任問題については出たか。一切出なかった。しかし、責任問題がないということではない。当事者の処分については、拘束中であるので、防衛庁としては尋問する機会を得た後でしかるべく処置をしなければならないと思う。  総理から、対外的な影響について心配するとかいうことは出なかったか。出なかった。  どのような秘密のものが出たのかというようなことを総理は聞かなかったか。特別には出なかった。  民社党については――これは、全部申し上げます――次官が話したのか。特別立法については私の方も考えておらない、現行制度でやるのだという話に補足した。聞くところによると、各党も秘密保護法には反対のようだった。  以上でございます。記者会見でございます。
  346. 矢野絢也

    ○矢野委員 本当に御苦労さんでございました。恐縮いたしておりますけれども……。  私が申し上げているのは、あなたが懇談の席上――あなたがいま読まれたのは記者会見のことを読まれたのだと理解しますけれども、懇談の席上、いま私が指摘しておるように、米国の秘密がソ連に漏れたのなら容易ならざる事態だ、中国情報が多かったんだそうだ、情勢は変わったんや、えらく強気に転じた御発言をなさっておる、これは事実なんですよ。ですから、これが新聞に載っておるということはもう防衛庁として御存じだと思う。  こういうことが載って、もし発言なさってないなら抗議なさいましたか。これ読んだら中国はどう思いますか、総理。大変なことを防衛庁長官は言うてくれているわと思いますよ。まず、この発言自体裏づけがありますよ。あるのですよ。裏づけがあるんだけれども、少なくとも新聞に載ったことについて抗議されましたか。そんなこと書きっぱなしで――私は中国の肩持って言うわけじゃないのですよ。日本の防衛庁として、日本外交としてこんなことでいいのかということを言いたいのです。あなたがいま読まれたのは私が指摘している問題とは全然違うことを読まれているのですから、答えになっておりません。委員長、預かってください、この問題を。
  347. 田村元

    田村委員長 矢野君、時間も参りましたので、理事会で協議することにして、この場は私がお預かりをするということで御了承いただけますか。――それではさよういたしたいと思います。
  348. 矢野絢也

    ○矢野委員 長官、ずいぶんしつこいことを申し上げて、別に個人的怨念があって言っているのじゃないことだけは御了解ください。ただ、冒頭に申し上げたとおり、この問題は自衛隊の士気にもかかわる問題でもあり、今後の問題でもあるから、あえて私は前段と後段というふうに分けて申し上げているわけで、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  委員長、あと時間は何分いただけますか。あの朗読でずいぶん時間を損している。もう一問だけ聞かしてください。  外務大臣並びに総理に聞きたいのですが、アメリカ政府筋は、アメリカが期待する日本の防衛努力向上の内容を具体的に明らかにしたのです。実はきょうの夕刊に載っております。このアメリカ政府筋の見解は、これを裏づけるように、アメリカ議会予算局が三十日に公表した八〇年代のアメリカの一般目的海軍に関する報告書の中でも強調されておる。  新聞が報ずるところのアメリカ政府筋、アメリカ議会予算局の発表によりますと、一つ、アメリカは、イラン危機、ソ連のアフガニスタン侵攻で日本を取り巻く国際環境も一変したとして、日本に対する防衛分担増の要求を強めた。もう一つ、その具体的内容として、米第七艦隊の重心がインド洋、ペルシャ湾方面に今後移動せざるを得なくなるとして、その分希薄になる日本周辺の北東アジア地域の防衛補完を日本に要求する。有事には、ソ連艦隊の太平洋進出を三海峡、宗谷、津軽、対馬で封鎖し、海上防衛体制を完備する。この三つの海峡を封鎖して海上防衛体制を完備する。中東石油のシーレーン、海上輸送路防衛の範囲を現状より拡大するなどが含まれておる。こういう内容の報告が出ているのです。  それで、まとめて聞きますが、こういった三つの海峡の封鎖という問題、こうした事実を承知しておるかどうか、あるいはこうした要請をアメリカ政府から事前に聞いておるかどうか。  二つは、承知してないとすれば、今後こういう要請があった場合、日本政府はどのように対処するつもりか。こういう重大なことが、アメリカ議会の予算局という公式機関でも公表しているのですが、日本に対して何ら事前連絡がないというのはおかしい、どうなのか。これは事実とすれば、アメリカのスイング作戦について日本を完全に組み込んだ作戦になる。なぜかならば、これは中東による緊急事態に備えるため第七艦隊がインド洋、ペルシャ湾に移動した後、手薄になる日本海を中心とする日本周辺の防衛について日本に防衛分担をより強力に求めている証拠というわけですね。  そこで、この三つの海峡は、それぞれ領海法制定のときに特に国際海峡にしたと私たちは記憶しているわけですけれども、このような国際海峡の封鎖についての要求に対して、日本としてはどういう手続で対処されるのか。  この問題に対するお答えだけで質問を終わりますが、もし不十分なら関連だけお許しいただきたいと思います。
  349. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘の件につきましては、私もブラウン報告の報道を読みまして、お話のような記述がございます。ただ、本件につきましては、米側から御指摘のような要請は来ておりません。こういう事態でございますので、どう対処するかは、私どもとしても早急に検討いたしてみたいと考えております。  国際海峡の点につきましては、私、政府委員から回答させたいと思います。
  350. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、あの三海峡はただいまのところ国際海峡となるであろうということで、と申しますのは、実は海洋法会議でまだ国際海峡という制度が確立しておりませんので、ただいま直ちに国際海峡であると断定するわけにはいかないわけでございますけれども、しかし、恐らく国際海峡になるであろうというところで、諸外国の船に航行を領海通航よりもより自由ならしめる必要が当然考えられるわけでございまして、そのことを見越しまして、あそこのただいま問題となっております三海峡には、領海を十二海里に上げることなく特定水域として公海部分を残してあるわけでございます。  したがいまして、それがただいま先生がおっしゃいました有事の際にどうであるかということになりますと、この有事というものの性格にもよりますし、そのときどきの対応にもよるのではなかろうかと思われますので、直ちにこれこれであるというお答えは差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
  351. 矢野絢也

    ○矢野委員 つまり、国際海峡であっても封鎖することもあり得る、アメリカ側の要請にこたえる可能性もあり得る、こういう御答弁であると理解してよろしゅうございますか、外務大臣
  352. 原徹

    ○原政府委員 一般的な理屈といたしまして、その三海峡がある、そして日本海から出るのにその三海峡を出なければならない、そういう事情はみんな知っているわけでございます。しかし、いまのようにアメリカからその三海峡を封鎖することの要請があったかという点については、要請はございません。  そこで考えますに、これはいずれ日本に侵略があったと仮にいたしました場合は、それは日本を守るという見地になりますが、そういう見地で物を考えますと、やはりその三海峡を含む日本周辺で共同で行動する、そういうことだろうと思います。言っていることも、私はそういうことだろうと思います。と申しますのは、その三海峡のシーコントロールを指示と書いてございますから、そして通らないようにするというような式のこと、シーコントロールでございますから、それはやはり一種の制海権と申しますか、そういうことがあって、そうすればほかの国の船を通すことは別に差し支えないわけでございますから、多分そういうようなことみたいなことを考えての記事ではないかと思いますけれども、ただいまのところはそれだけで、それについての要請があったわけではございません。
  353. 矢野絢也

    ○矢野委員 要請ではない、封鎖することもあり得るのかどうかということを聞いているのです。
  354. 原徹

    ○原政府委員 でございますから、日本が侵略を現実に受けたという場合に、やはり海上自衛隊もそうでございますけれども、三海峡を含む周辺海域でこれは行動する、その際米軍と共同対処になるわけでございましょう。そのことだろうと思います。
  355. 矢野絢也

    ○矢野委員 もう質問はやめます。意見だけ申し上げさせてください。  私が聞いているのは、アメリカが、第七艦隊がたとえば中近東その他の情勢でよそへ行った、その補完的な役割りとして日本がこの国際海峡の封鎖を要請されたときにどうするのだという意味のことを申し上げているわけで、まあお答えとしては不十分だと思います。ただ、もう時間がありませんからやめますが、この防衛問題につきましては、私の意見を申し上げて、質問を終わらしていただきたいと思います。  要するにアメリカとの友好関係がきわめて重要であることは、公明党もその認識を持っております。しかし、最近のカーター大統領の教書あるいは国防総省の報告等を見ると、非常にやはりアメリカとしての国益という立場からの戦略が述べられておる。しかし私たちは、わが国としての、わが国の平和と安全保障という立場からの防衛のあり方ということを自主的、主体的にやはり考えなければならぬ。私は何も一部のように非武装を言っているわけではないという意味でアメリカとの連帯は否定はしませんが、そういう戦略に追随するとか盲従するとかいうことのない自主的、主体的な判断を、先ほどの防衛力整備の問題とあわせ、あるいは安保条約の適用の問題とあわせ御検討を願う必要がある。この意見を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  どうも委員長、ありがとうございました。(拍手)
  356. 田村元

    田村委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大来外務大臣
  357. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほどの浜田議員の御質問に対する私の答弁の中で、第二次大戦後ソ連軍が千島列島を武力解放して南下し、さらに北方四島を不法占拠した経緯を御説明いたしました際、これら北方領土にはすでに島民の方々が居住しておられなかったかのごとき印象を一部の方に与えたかと存じますので、一言付言させていただきます。  もちろん、当時終戦のどさくさに乗じてソ連軍がこれら北方領土の不法占拠を実行するに際しましては、多くの島民の方々が言語に絶する苦難の中でこれらの諸島から強制的に退去せしめられたことは、私も承知いたしております。かかる行為が全く不法な行為であることは、先ほど申したとおりでございます。  私の言葉が足りず、一部の方々に誤解を与えないために補足させていただきます。
  358. 田村元

    田村委員長 次回は、明二月一日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会