○浅井美幸君 私は、公明党・
国民会議を代表し、先ほどの
大平総理の
アメリカ、
メキシコ、
カナダ、西ドイツの
国々を歴訪した際の
首脳会議の
報告に対し、
質問をいたします。
今回、
日米首脳会談を
中心とする
一連の
首脳会談は、
イラン、アフガニスタン問題などをめぐって緊迫した
国際情勢のもとで開かれ、その結果、
大平総理は、
国民に何ら説明することなしに、これまでの
日本外交の枠を超え、
アメリカのいわゆる
世界戦略の中に深く足を踏み入れる、重大な
政治選択を行ってしまったのであります。
わが党は、
総理の
訪米に先立って、
総理に対し、
米国の
イラン人質救出作戦は遺憾であること、軍事
行動は絶対に
米国はとるべきではない、あくまでも
平和的解決に
努力するよう
カーター大統領に強く自制を求めるべきこと、安易な
防衛力増強を
約束すべきでないとの諸点を強く申し入れ、さらに、
わが国として自主的な
立場で、言うべきことは率直かつ明確に言うべきであると主張してまいりました。
しかし、これらの中で最も重要なポイントである、軍事
行動をとるべきでないという
わが国の主張をあいまいにしたまま、
米国の
立場に全面同調し、加えて、
カーター大統領から、
防衛力の増強という過分な重荷を背負わされてきたのであります。
総理、
イランの
人質救出作戦を軍事
行動をもって行ったことは、大規模な
国際的武力
紛争につながるきわめて危険なものであることは、
総理も十二分に承知しているはずであります。
カーター大統領のこの判断、対応、
行動に、
日本やEC諸国が不安や不信を深めたのは当然であるにもかかわらず、なぜ、今回の
首脳会談において、
総理は、この軍事
行動の問題に具体的かつ明確に
言及されなかったのか。なぜ、遺憾であるとの
わが国の
立場を明らかにできなかったのか。まずこの点について答弁を求めたいのであります。
それとも、この米軍の
人質救出作戦は正当なものであったと
総理は考えておられるのかどうか。もしそう考えているならば、その根拠を明らかにしていただきたいのであります。この米軍の行為は軍事
行動とは言わないのか。
アメリカ政府は、国連憲章第五十一条に基づく自衛権の行使であるとしておりますが、これは明らかに同条項の拡大解釈にほかならないと思うのであります。
わが国政府はこれに対しいかなる
見解を持たれるのかどうかもあわせて伺いたいのであります。
大平総理、
イラン問題の
平和的解決を求めた際、
カーター大統領から、軍事力の不行使に対して明確な保証、
約束を取りつけられたのか、それとも近い将来軍事
行動の可能性があると判断されたのか、この点についても
見解を承りたいのであります。
大平総理は、
カーター大統領に対し、
イラン、アフガニスタン問題に関し、
米国と
わが国は
共存共苦であり、
日本としてはそのための
犠牲を辞さないとまで述べたのであります。
総理の言う
犠牲も辞さないとは一体何か、その具体的な中身を明らかにされたいのであります。
共存共苦とは、
米国のすべての
行動に対して全面同調することまでを
意味するのか、この点もあわせて明確にしていただきたいのであります。
総理、
カーター大統領は、依然として軍事力行使の態度をこれまで一度も否定しておりません。逆にペルシャ湾封鎖の可能性を示唆し、一方で、
イラン政府は、同湾の逆封鎖もあり得るとさえしているのであります。もしこうした事態が起こり得るとするならば、中東諸国の石油に依存せざるを得ない
わが国は、きわめて重大かつ深刻な事態を迎えるのであります。
総理は、こうした事態を想定して対策を考えておられるのか、
犠牲も辞さないとはこうした事態を指して言われたのかどうか、伺いたいのであります。
また、ペルシャ湾の封鎖は
国際法上許される行為であると考えておられるのか、あわせて
総理の所見を明らかにしていただきたいのであります。
次に、もし
米国が
イランに対し軍事
行動に出るようなことがあれば、
わが国は、
日米安保条約並びに今回の
共存共苦、
犠牲も辞さないという
大平総理の
発言からして、全面無条件にこれを支持し、
協力せざるを得ないことになると思うが、この点についての
総理の
見解を承りたいのであります。
また、真の
同盟関係とは、相手が本当に苦しんでいるときに助けるものであるとする
総理の
発言は、自主性を欠いた対米同調
外交を正当化しようとしている姿にほかなりません。
真の
友好関係、パートナーシップとは、無原則な同調、追随では断じてありません。相手が誤りを犯そうとしているときにはこれをとどめ、冷静な判断を欠いているときにはこれを戒め、苦言を呈することにあります。
大平総理、あなたはあえてこれを言わず、行わずにきたところに、最も基本的な問題があると指摘せざるを得ません。
さて、今回、
総理は、
日米関係を
同盟関係という新しい表現をなさったことであります。一体、
同盟とはいかなる定義のものなのか、
わが国と
アメリカとはどのような
同盟なのか、いつから
同盟関係に入ったのか、この際
国民の前に明らかにすべきであります。
また、従来
政府の言ってきた
日本外交のあり方としての全方位
外交は、今回の
訪米の結果変更されたと思われるのでありますが、この点についての
総理の御所見を承りたいのであります。
今回の
総理の
訪米は、
わが国外交の大きな転換となり、対米同調を一段と
世界に印象づけたと私は思うのであります。
イラン問題の推移いかんによっては、アラブ・イスラム諸国から厳しい
措置を
わが国が受けることになりかねないと懸念するものであります。
総理は、
イラン問題に対するアラブ・イスラム諸国の動向をどうとらえておられるのか、また、これら諸国との
わが国の
外交を今後どう展開されようとしているのか、ぜひ明らかにしていただきたいのであります。
総理または
外務大臣の
訪問を具体的に考えておられるのか、この点もあわせて伺っておきたいのであります。
さて、
日米首脳会談の中でわれわれが見過ごしにできない問題は、防衛問題についてであります。
カーター大統領は
総理に対し、
日本の防衛
努力を強めることを望む、新たな状況に対応するため、すでに
政府部内にある
計画を早めに達成することを検討してほしいと、
防衛力の増強を求めたのであります。これに対し
総理は、
同盟国として真剣に検討し、
努力すると確約されたそうであります。
カーター大統領の言った新たな状況に対応するためという新たな状況とは、具体的にどのような変化を指しているのか、
大統領の説明に対し、
総理はどのように
理解したのか、詳しく説明を求めるものであります。
さらに、
カーター大統領の言う、すでに
政府部内にある
計画とは、大来
外務大臣もすでに認めているように、これが
防衛庁の
中期業務見積もりであることは言うまでもありません。
総理、この中業見積もりは
防衛庁の内部
資料であり、先ほどの御答弁の中でも
参考資料であると述べられておりました。
国会にも
国防会議にもかけられていないものが突如
日米首脳会談の重要課題として取り上げられ、それについての
約束事が行われるということは一体どういうことなのか、
理解に苦しむのであり、これはきわめて重大な問題であります。
総理、このようなことであっていいのか、明確にお答えいただきたいのであります。
また、
カーター大統領のこの要請に対し
総理は、要請はわかったと述べたが、そのとおりにするとは
約束していないと強弁しておられるが、すでに
米国側は、
日本が防衛費を着実かつ顕著に増額することに合意したものと受けとめています。この
日米両国の間で、
総理の
発言の内容には食い違いが問題化しておりますが、いずれが真実なのか、明快な答弁を求めるものであります。(
拍手)
外務省の中で、
外交上の選択の幅を広げ、対米依存をより薄めて、自主
外交を進めるためにも、
防衛力増強が必要だとの
見解を示していることは、
アメリカ側の要求に
大平総理が確約をしたことを物語るのではないか、この点もあわせてお答えを願いたいのであります。
この際、
政府は、速やかに
防衛庁の
中期業務見積もりを
国会に
提出し、徹底的に論議することを強く要求するものであります。(
拍手)
そこで、仮に
中期業務見積もりなるものを繰り上げ、一年早く達成するとするならば、そのためには毎年の防衛費は幾らふえるのか、また二年早めるのにはどうなるのか、それぞれ明らかにしていただきたいのであります。
去る五日、
大平総理は、
カーター大統領の要請に対し、
日本としては五十六年度予算案で答えを出さざるを得ない、このように述べておられます。これは五十六年度予算案で防衛費を大幅に増額することを
意味するのか、もし増額するならばその財源は一体どこから捻出するのか、増税か、福祉予算の削減か、または特別な扱いを考えているのか、
総理及び大蔵大臣からこの点を明らかにしていただきたいのであります。
さらに大蔵大臣に伺いたい。今日の
わが国の厳しい
財政事情のもとで、防衛費の最大許容額は一体どの程度と考えておられるのか、具体的なめどをこの際明らかにしていただきたいのであります。
この問題で最も基本的部分が、
総理並びに自民党
政府に欠落していることを指摘したいと思います。それは、なぜ
わが国がいま防衛費を大幅にふやさなければならないのか、具体的説得力のある理由が全く
国民の前に示されておらないのであります。
防衛力増強の
必要性は一体どこにあるのか、その背景、根拠をこの際明らかにすべきであります。
また、
中期業務見積もりを正式な
計画として
国防会議にかけることは考えているのか、防衛費のGNP一%を最大限にするという
閣議了解は、今後も一切変更するつもりはないと確約できるのか、
総理の
決意のほどを伺いたいのであります。
ここで、具体的に、今後懸案になると思われる問題について二、三ただすものであります。
第一に、米軍の労務費、施設費等の大幅負担を考えているのか。また、現行の地位
協定では限界があるが、この再検討もあり得るのか。第二に、米空母の新たな
日本母港化要請があった場合、これを原則的に受け入れるのか。第三に、米軍が求めてきた宗谷、対馬、津軽の三海峡の封鎖
能力を自衛隊が保持するようにするのか。それぞれについて伺いたいのであります。
政府は、再三再四、
経済大国になっても軍事
大国にはならないと明言してまいりました。現状の
わが国は、すでに
世界でも有数な防衛予算を持つに至っております。これをさらに大幅に増加させようというのが自民党
政府の考えであり、
世界や
アジア諸国が
わが国の
防衛力の強化に警戒的な
注目をしているのであります。
そこで、軍事
大国とは一体何か、その定義を
総理はここに示すべきであります。また、
防衛力は
わが国の憲法上いかなる制約、限界があるのか、この際明らかにしていただきたいのであります。
さて、次に、
メキシコのロペス
大統領との
会談において、
大平総理は、八二年までに日量三十万バレルの原油供給を求めたのに対し、明確な
約束を取りつけることができなかったのであります。この点について、
総理はいかなる
見解と評価をしているのか。
情勢の判断を誤ったのではないかと言われております。また、
メキシコは原油供給に見合う
協力を求めていると言われているのでありますが、その用意はあるのかどうかもあわせて明らかにしていただきたいのであります。
最後に、ベネチア・サミットに対する
大平総理の基本的な方針、西ドイツ
首脳との
会談でどのような
話し合いがなされたのか、あわせて答弁を求めるものであります。
わが国は、言うまでもなく、
平和憲法の精神にのっとり、あくまでも
世界の平和と安定に寄与するため、武力によらず平和的手段を総動員してこの難局に処さなければなりません。その
立場から見ると、今日ほど
わが国の
外交に重い責任がかかっていることはありません。
政府の賢明なる対応を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕