○中路雅弘君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表しまして、
防衛庁設置法等の一部を
改正する
法律案について質問をいたします。
この防衛法の
改正は、自衛隊二千三百三十一人、予備自衛官二千人の増員、潜水艦隊、補給本部の新設及び曹長の新設を
内容としています。
これらの防衛法の
改正は、対米従属、違憲、国民弾圧の自衛隊の増強を推し進めることを目的としたもので、断じて容認できません。
私が第一に指摘したい重大問題は、大平
内閣の今日の自衛隊増強政策は、中東、ペルシャ湾を焦点に力の政策を推進しようとするカーター新戦略の対日防衛分担要求に従って、日本をアメリカの危険な世界干渉戦略に深く巻き込むものだという点であります。
カーター戦略に追随したかかる自衛隊増強路線は、日本の平和と安全のみならず、世界の平和と安全を脅かすものとならざるを得ません。
去る一月末のブラウン国防
報告では、ヨーロッパでアメリカが戦争を起こしたとき日本は直ちに三海峡封鎖を行うよう要求しているけれども、これこそまさにアメリカの戦略に巻き込まれる自衛隊の危険な実態を端的に示すものであります。
総理、このような恐るべき実相を包み隠さず国民の前に明らかにすべきだと考えますが、明確な答弁を求めます。
第二に重大な問題は、日本が現にアメリカ第七艦隊の中東出動の拠点となり、緊急投入部隊の発進基地にされる計画と相まって、一昨年十一月取り決められた「日米防衛協力のための指針」のもとで、陸海空の米軍と自衛隊の共同演習はかってなく強化され、アメリカ海兵隊の大規模な上陸演習フォートレスゲールやリムパック五カ国合同演習への自衛隊参加などに見られるように、日米共同作戦態勢が本格的に進められていることであります。
今回のこの
改正案は、この危険な日米共同作戦態勢強化の一環をなすものであり、特に潜水艦隊の新設は、潜水隊群の統一司令部を置き、指揮、運用の効率化を図ろうとするものであります。それは、アメリカの補完戦力として海上自衛隊の対潜能力を強化し、対潜水艦作戦や三海峡封鎖、広大な海上兵たん線、補給路の防衛分担の拡大を目的とするものであることは明白であります。なぜなら、アメリカはそのために海上自衛隊の対潜能力の向上をかねてから強く求めてきており、
政府はその要請にこたえて、潜水艦の増強やP3C対潜哨戒機の導入、機雷敷設能力強化に最大の力を注いできたのであります。潜水艦隊の新編成計画は、自衛隊の対米従属機能をますます強化するものだと思うのでありますが、
政府の見解を求めます。
第三に重視している問題は、第七艦隊を補完する実戦部隊として自衛隊を強化するための実地訓練がいよいよ強められてきていることであります。
政府は、太平洋五カ国合同演習、リムパック80への自衛隊参加の目的について、戦術技量向上のためとか、特定のシナリオはないとか、しきりに弁明してきました。しかし、主催国アメリカの当事者であるワイズナー米太平洋統合軍司令官は、すでに昨年二月の上院軍事
委員会における軍事態勢
報告の中で、太平洋の演習の同盟国軍の連合参加は、われわれ同盟国が地球の安全と安定の
負担を分担するための準備であり、太平洋軍内で起こり得るさまざまの偶発事態に対処する態勢を確立するためであると演習の位置づけを明確に述べているのであります。
総理、あなたは、こうした証言にもかかわらず、今回の演習への自衛隊参加を、自衛隊法の定める戦技訓練であると言い張るつもりかどうか、明確な答弁を求めます。(
拍手)
また、この点で重大なのは、自衛隊の艦艇がアメリカ空母を護衛する輪型陣その他の陣型に加わっていたことであります。わが党の追及に対し、
政府は、輪型陣は組むが統一の指揮官はいないとか、事前に調整するなどと言ってきましたが、これは全くのごまかしであります。自衛隊を含む参加部隊が、調整官と呼ばれる米軍司令官を事実上の統一指揮官として作戦訓練を行ったことは、多くの報道が明らかにしているところであります。
また、演習
実施の過程で予期せざる対抗部隊や天候、潮流などの事態が発生した場合、統一指揮官がいなくてどうして連合の艦隊行動がとれるでしょうか。
現に、昨年一月、わが党訪米調査団がアメリカ国防総省代表と会見した際、統一司令部を持たない共同作戦があり得るか、そういう例があったら知りたいとただしたのに対し、私は知らないとはっきり答えているのです。これでも統一指揮官は存在せず、調整官だけだなどと言うつもりですか。明確に答えていただきたいと思います。
さらに、
政府は、今回のリムパック演習の具体的
内容や想定について、アメリカが公表してはならないと言っているとの理由で公表を拒否してきましたが、それは国民には明らかにできない演習をやってきたからではないですか。私は、
政府自身が口にしているシビリアンコントロールからいっても、国権の最高機関である国会に演習
内容を具体的に明らかにすることは当然のことだと考えますが、総理の見解を伺います。あわせて防衛庁長官に対し、その
内容について
説明を求めるものであります。
第四に私が重大視せざるを得ないのは、今回の防衛法
改正による日米共同作戦態勢強化と結びついて、二隻目の米空母の母港化計画が進行しているとの問題であります。
アメリカ国防当局は、このほど、第七艦隊に所属する二隻目の空母の新母港として横須賀が最適であるとの結論に達したと報道されています。すでに、こうした話がアメリカ側からあったのかどうか、まず伺いたいと思います。
現在、米空母ミッドウェーの外国における母港化は横須賀だけであるにもかかわらず、さらに新しい空母の母港化にするとすれば、それは日本国民、日本全土が一層深くアメリカの危険な世界戦略に巻き込まれるのであります。米空母の横須賀母港化は地元神奈川県当局も反対の意向であり、横須賀はもとより、それ以外の候補地にも絶対に受け入れるべきでないと考えますが、
政府の見解をお伺いしたいと思います。
あわせて、当初両三年とされていたが、すでに七年にわたって居座っているミッドウェーの母港
承認の撤回を強く求めるものであります。総理の見解をお伺いしたいと思います。
第五は、在日米軍基地
経費の日本側
負担を増額しようとする問題であります。
政府は、すでに一昨年、在日米軍を維持することに伴うすべての
経費は、日本国に
負担をかけないで合衆国が
負担すると明記した在日米軍地位
協定第二十四条の規定や従来の
政府見解も覆して、アメリカ
政府の要求に積極的にこたえ、新規施設の建設費
負担ばかりか、日本人基地従業員の労務費の一部
負担まで行うようになったことは、絶対に許すことはできません。
すでに、
昭和五十五年度予算で在日米軍駐留
経費約千五百億円を計上している上に、さらに、日米地位
協定さえも完全に空文化するこのような不当な費用分担の増額要求を受け入れるつもりなのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。(
拍手)
最後に、大来外相は訪米で、アメリカ側の軍事力増強の強い要求に対し、積極的に対応する姿勢を明確に打ち出したと報道されていますが、これはきわめて重大であります。
防衛力の増強をアメリカ側に約束した中身とは一体どんな
内容のものか、明らかにしていただきたいと思います。
結局、アメリカ側が要求してきていることは、七七年の米会計検査院
報告で、同盟国は防衛
経費のより公平な分担を引き受けるべきである、これを日本に適用することは理由があると述べているように、アメリカとGNP比同率の軍事費の大幅増額への方向を求めてきているのではないですか、はっきりとお答えいただきたいと思います。
最近のストックホルム国際研究所の年報によると、過去十年間の世界軍事支出の伸びが年率一%であるのに対し、何と日本は約六%と実に六倍の勢いで増大しており、世界第六位の軍事費に達しているとされています。
総理にお聞きしますが、今後ますます軍事費を増大させ、GNP一%を超えることもやむを得ないと考えているのかどうか、明確な見解を示していただきたいと思います。(
拍手)
終わりに、
日本共産党・
革新共同は、自衛隊の増強、日米共同作戦の強化に反対し、日米安保条約の廃棄、軍事ブロックの解消、自主独立、非同盟中立への国政の転換を強く要求し、その実現のために全力を尽くす決意を述べて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕