○永江一仁君 私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま
議題となりました
昭和五十五
年度地方財政計画並びに
地方交付税法の一部を
改正する
法律案について、
総理大臣並びに
関係各
大臣に対して
質問をいたします。
地方財政計画によりますと、
昭和五十五
年度においては二兆五百五十億円の
財源不足が見込まれており、しかも、本来五十六
年度において使用すべきである五十四
年度交付税自然増収分を差し引けば、
昭和五十五
年度地方財源不足額は、実に二兆七千億円にも達しようとするものであります。
全国三千三百に及ぶ
地方自治体は、
昭和五十
年度から連続して六年間もの深刻な
財政危機に見舞われることとなったのであり、このような事態となった
基本的原因は、経済の構造的変化を背景とした低成長
時代を迎えたにもかかわらず、それに対応する国、
地方に共通する
財政計画の
策定を怠り、
自主財源の少ない
地方に多大の借金
財政を強いてきたことにあります。これをいたずらに放置し続けてきた
政府・自民党の
責任は、まことに重大だと言わなければなりません。(
拍手)
ちなみに、今回の
財源不足額二兆五百五十億円は、
地方交付税の
増額一兆二百五十億円と
建設地方債の
増発一兆三百億円で賄うという、過去五年間と全く同じパターンであり、依然として数字の小手先操作でつじつまを合わせ、現状を糊塗しているにすぎません。
地方交付税法六条の三第二項には、
地方財政が引き続き
財源不足となれば、
地方行財政制度の抜本
改革もしくは
地方交付税率を引き上げるよう義務づけております。これは、
地方財政を将来ともに安定させる恒久的
措置の必要性を認めたものであり、今回の
政府案のように、一時しのぎの策だけで事足れりというのでは、明らかに条文を歪曲解釈したものと言わざるを得ません。(
拍手)すでに破綻に瀕した
地方財政好転のため、
自治省がかねて主張していたような
地方交付税率の四〇%への引き上げは、焦眉の急であると思うのでありますが、まず、これに対する
総理の御見解をお尋ねしたいのであります。
しかも、この二兆五百五十億円という
不足額にも問題があるわけでありまして、
昭和五十四
年度、昨年十月の時点での
地方財政収支試算による
昭和五十五
年度の
財源不足額は、三兆七千九百億円と
政府みずから見込んでいたのでありますから、一兆七千三百五十億円が圧縮されたわけであります。
国の
予算編成の苦しさはわからぬものではありませんが、何ら
地方の声を聞かず、
大蔵大臣と
自治大臣との
協議のみによって
地方団体の予算
規模が圧縮されるのは、
地方自治そのものを踏みにじる姿と言わなければなりません。(
拍手)
財源不足額を一方的に圧縮する過程において、
自治大臣はどのように
地方の声をくみ取る
努力をしてきたのか、お答えいただきたいのであります。
また、この
財政収支試算によりますと、
昭和五十四
年度時点において、すでに二十五兆九千億円に達している
地方債残高が、六十
年度においては、何と五三%増の三十九兆六千億円にも上っており、しかも、これに不可避となっております
財源対策債を加えますならば、残高はさらに膨大なものとなることは論をまちません。これでは、
地方自治体に対して、いたずらに建設
事業費を
中心とした
地方債を押しつけ、後
年度のツケをさらに過大なものとして
地方財政を圧迫することは必至であり、まさに本末転倒の議論であると言わざるを得ないのであります。(
拍手)列島改造予算と言われた四十八
年度のように、たっぷり
公共事業をつけたものの、結局は一三%もの使い残しを出した前例があることを、この際特に想起すべきであります。
大蔵大臣、あなたはこの
地方財政収支試算において、
地方自治体がこれを遂行していくに可能なだけの
地方債を消化する能力があると本当に
考えておられるのかどうか。また、仮に順調に消化ができるとしても、
起債がどんどん認められるからといって、安易に建設
事業を進めた場合に、その償還あるいは建築物の維持管理などの面について、いわゆるランニングコストとして
財政の将来に禍根を残すことは必至であると
考えますが、この点についての
大臣の御見解をお尋ねしたいのであります。(
拍手)
また、
地方債資金を円滑に消化できるようにするためにも、
地方からの要望の強い公営
企業金融公庫を
地方団体金融公庫に改組し、安定的かつ良質な資金を供給すべきであると思うのでありますが、これに対して
自治大臣はどう
考えておられるのか、お教え願いたいのであります。
次の問題は、この
地方財政収支試算は、国、
地方の税源
配分の割合には変更がないことを前提として試算されたものでありますが、その場その場の応急
措置を今後五年間にもわたって続けていくという、
地方財政の現状を見捨てた後ろ向きの
措置にすぎないと言わざるを得ないのであります。なぜなら、今日、税金の取り立てにおいて、国が七割、
地方三割にしておきながら、仕事は
地方に七割、国が三割という実態を放置したままでは、
地方自治への将来の展望は全く開かれないばかりか、
地方財政危機を打開する何らの手がかりも得られないものと断ぜざるを得ないからであります。
地方財政の中期的見通しは、まず
地方行財政制度の抜本
改革にあるべきであり、この際、所得税、専売納付金などを
中心に、国と
地方との
配分割合を少なくとも五〇対五〇とするよう、
地方自主税源の強化を図るべきであると
考えるのでありますが、
総理の真摯な御
答弁を要求するものであります。(
拍手)
八〇年代は
地方の
時代と言われております。高度成長優先、産業優先の立場から行われてきた極度な
中央集権体制への反省が生まれ、これからは
分権と自治を
確立し、独自性と主体性を生かした地域社会の建設を行っていかなければならない、そういう機運が出てきたのであります。
大平
総理、あなたは、表面的にはこれらの動きに便乗して、口では田園都市構想を唱え、地域社会の魅力ある発展を政策の重要な柱の一つとされております。しかし、
地方の
時代と言いながら、この
地方財政計画を見る限り、
財政面では何らの裏づけもされておらず、地域の
要請に何らこたえ得るものでないことを指摘せざるを得ません。
政府は、五十五
年度予算において
補助金の
整理合理化を
検討され、その成果を声高にアピールされておりますが、ここでお願いしたいことは、
補助金の
整理合理化は
財政再建に必要不可欠な見直しであることはもちろんでありますが、何よりもまず、
自治体の物別陳情合戦に拍車をかけ、
事務手続を複雑にし、過大な超過
負担により
自治体財政を圧迫するとともに、自主的な
行政運営をも大きく
阻害することとなっている
補助金行政の弊害を断ち切ることこそを最大のねらいとしなければなりません。(
拍手)
翻って、来
年度政府が実施しようとする
補助金の
整理合理化案を見るに、額の少ないことはもちろん、この視点からの
改革案は皆無であるとしか言いようがないのであります。
大平
総理にお尋ねいたします。
民社党は、従来から、自治の成長を
阻害し、
中央依存の風潮を助長し、国による画一的な
行政を
地方自治体に強要している国庫
補助金のうち、少なくとも普通建設
事業費にかかわる
補助負担金分を第二
交付税として
地方に一括交付すべきであると主張しておりますが、これについての
総理の御見解をお伺いしたいのであります。
次に、
地方超過
負担の問題についてであります。
御
承知のように、
補助単価が実施単価より低い単価差、基準面積が実態に比較して低い数量差、あるいは対象範囲が実際に比較して限定されている対象差などのため、
地方自治体は国庫
補助負担額以上の
経費負担を負い、本来ならあり得るはずのない過大な超過
負担を強いられております。
地方超過
負担の解消のために、五十五
年度においてどういう
措置をとられるおつもりなのか、
自治大臣にお伺いしたいのであります。
この問題について、具体的に一、二お尋ねいたしますが、今日、幼稚園
教育というものがほとんど
義務教育化している現状から、その
経費も
巨額となって、
地方財政を圧迫しております。そこで、学園数、園児数及び
学級数を測定単位とする費目の新設、園舎の建設費等の
事業費補正により、
経費の
充実強化を図ってほしいという悲鳴に似た叫びが各
地方自治体から上がっておりますが、いかがお
考えでありますか、お聞かせいただきたいのであります。
現状においては
義務教育にあらずというだけでは納得できないのでありまして、
国民の実体感と制度のずれを埋めることこそが、
国民にこたえる政治であると言わなければなりません。
さらに、もう一点は、同一市域内における人口移動による人口急増地域、すなわち同じ市におけるドーナツ化現象による小中学校の
義務教育施設の新設のため、その用地費を初め膨大な費用を要し、それが
地方財政を圧迫する大きな要因となっております。現状においては市町村全体での人口増しか認められておりませんが、よりきめの細かい考察が必要であると
考えますが、いかがお
考えであるか、お答え願いたいのであります。
最後に、
地方自治体における
行政改革についてお尋ねいたします。
現在、国、
地方を通ずる
行政改革の断行が緊急の課題となっております。特に公務の能率化と公務員の綱紀粛正が強く叫ばれている中で、
住民の目を隠れて支給される
地方自治体のやみ給与が、昨年夏、千葉県銚子市で発覚したのをきっかけに、根拠のない超勤手当、常識外れの特別昇給、架空の研修費など、さまざまなからくりが各地の
地方自治体で次々と明るみに出ております。また
自治省が昨年末に
調査されました汚職事件
調査によりますと、
昭和五十三
年度において、
自治体汚職が百三十二
団体で発覚、その
関係職員が二百八十八人にも及び、
団体、件数、
関係職員ともに前
年度を上回り、職員数では約四分の一も
増加をしております。まことに憂慮すべき事態であり、
地方自治体自身もえりを正して
行財政の
改革に取り組んでいかなければならないのでありますが、このような
自治体に対してどのような指導をされていくおつもりなのか、
自治大臣のお
考えを明らかにされたいのであります。
以上、五十五
年度地方財政に関する幾つかの問題につき
質問をいたしましたが、
関係諸
大臣の明確なる御
答弁を期待いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕