○田中(美)
委員 こういう状態というのが全部とは言いません。しかし、こういう
人権侵害が行われているということです。
いろいろな障害が出ているわけですけれ
ども、こういう障害というのはそう簡単に取り戻せないのですね。運動障害
一つ取り戻せない。ですから、これを放置しておくということはまさに犯罪的行為じゃないかと私は思うわけです。やっている人たち、またそこに預けている人たちに責任が全くないとは言いません。しかし、こういうことが行われているということを見て見ないふりをしてほうっておくということ、これも国や自治体の犯罪的行為ではないかというふうにさえ私は思うわけです。ある小児科の医師が、こういう状態を見まして、十年後にこの罰はわれわれ大人の社会が受けるだろうと言っているわけです。これはどのように受けるかということはいろいろな御意見があると思いますけれ
ども、まともな人間でない、非常に人間
関係のつくれないような人間がたくさんになるということ、社会が大きな罰を受けるだろうということをある医者が言っているわけです。私は必ずしもオーバーではないのではないかというふうに思います。
よく、人はこういうふうに言う人もいます。わずかの期間だからいいじゃないか、ほんのちょっとの間だからいいじゃないか、こういうふうに言う人もいますけれ
ども、特におっぱいを飲んでいる子供ですね、乳児の一日というものは大人の一カ月に相当するのだ、こういうふうに言う人もいるわけです。動物は、ネコとか犬とかこういうのは母胎の中である程度脳ができ上がってから生まれてくるわけです。ですから、いわゆる飼育という形でただおっぱいを飲ませておけば、ネコや犬でも固定しておけば運動機能障害も起きるでしょうけれ
ども、一応脳は一人前で生まれてきているわけですから、動物的に栄養を与え寝せておけば大きくなっていくわけです。
しかし、人間の子供は脳が未成熟で生まれてくるというところに特徴があるというふうに医者から聞いたわけです。だからこそ、環境や広い
意味での教育というものが行われれば、ネコや犬とは違って未成熟な脳が非常に大きなものを吸収してすばらしい、動物とは違ったまさにわれわれの未来と言えるような子供が育っていくのだというふうに思います。ですから、三歳までの教育が人生を決定するなどというようなことを、それだけではないと思いますけれ
ども、そういうことを言うくらい三歳までの教育というのは大事な問題だと思う。そのときにこういう状態に置かれているということは、取り返しのつかない状態を起こしている、単なる
人権侵害だけでなくて取り返しのつかない、社会の大切なわれわれの未来というものを傷つけているのではないかというふうに私は思います。
先日、TBSのテレポート6という、六時から三十分番組でやっているのですが、厚生省の方たちはごらんになったというふうに私は聞いているのですが、何回か連続して、四回くらいやられているようです。これがベビーホテルの問題を扱っているのです。私はこれを見ました。その中の
一つに、ナオちゃんという男の子が出てくるのですね。両親も出てくるわけです。これはわずか三カ月ベビーホテルに預けただけでナオちゃんが御飯を食べなくなった、御飯を食べないという状態が出てきたので、これはそのままほっとけば死んじゃうわけですから、みんなが気がついた、親も気がついたわけですね。
両親はどういうことをしているかというと、夫婦だけで学生相手の食堂を始めたわけなんです。ですから、人を雇ってやるということでは成り立たないのですね。経営者は夫ですけれ
ども、妻も同じくらいの比重でやっているわけですから、奥さんが食堂から離れるわけにはいかないわけです。初めは、仕方がないのでお店の裏の小さな部屋のところに寝かせておいたわけですね。しかし、それでは見ることができないわけです。お店が立て込んできたりなんかすると全然おしめもかえてやれないという状態になるものですから、保育所にも預かってもらえないということで、この人は電話帳を繰って、さっき私が言いました電話帳を繰って、自分のうちになるたけ近いところでベビーホテルを見つけて、そこに預けたわけです。わずか三カ月で物も言わない、御飯も食べなくなったというので両親はあわてまして、これは大変だというので都立の児童相談センターに相談に行ったわけですね。いま週二回そこに通っている。そして、保健所からのお世話でぜひという形で特別に区の保育所にいま入れてもらっている。ですから、四日保育所に通って、二日この児童センターで治療のようなことをしているわけなんですね。
いま二歳になっていますけれ
ども、まだ
言葉が出ないし十カ月ぐらいの発達だ、こういうふうに言われているわけです。もう一人の子供は健全に育っているわけですけれ
ども、このナオちゃんは三カ月でそうなっているのですね。というのは、結局ナオちゃんの三カ月というのは大人の七年に相当したのじゃないか。乳児の一日というのは大人の一カ月なんだというので計算しますと、まさに七年間にいうものがそのベビーホテルの中の環境によってこういうふうになったのではないか。いまやっと笑うようになって、かわいい顔して笑っているのがテレビに映っていました。本当に、何と表現していいかわかりませんけれ
ども、自閉症児になるということを盛んに保育
関係者が言っていますけれ
ども、まさにその実証をテレビで見せてもらったように感じたわけです。ここにお父さんもお母さんも出てきて、お母さんは、外に全然出さずにいたからこれからはできるだけ外で遊ばしてやりたいと言って、お店の休みのときには両親で公園などへ連れていって走らしているようなテレビが映っていましたけれ
ども、お父さんは、ベビーホテルに預けてから、それまでは少しずつ大きくなり何か少しずつ外界の物を覚えていくという状態があったけれ
ども、ぴたっとそれがとまった、何か覚えることがとまった、むしろ後退したようにさえ感じたということをテレビの中で言っていました。
どういうベビーホテルだったかということは十分にわからないのですけれ
ども、親の言うことでは、一日じゅうテレビの前に寝かせたままにして一度も外に出していないというわけですから、こういう状態ほどひどかったかどうかはわかりませんけれ
ども、悪い
言葉を使えば幽閉されるような状態でナオちゃんがいたわけです。大人だって、よく刑務所なんかに入りますと、幽閉されて何かちょっと病気になりますよね。そういう状態にあったのじゃないか。中がどんなになっているか見たくても、玄関で子供を渡したきりで、保育室がどうなっているのか両親には見せないわけなんですね。これはテレビにも出ていましたけれ
ども、プロデューサーが中を見せてくれと言っても、いま忙しいからとかという声が
流れていました。私も手分けしてずいぶんやりましたけれ
ども、中を見せないところが非常に多いのですね。ということは、見せられないのじゃないかというふうに私は思うのです。
こういうところに、ひどいのは生まれてから五歳まで全部預けているのがあるのですね。ときどきうちへ連れてくる、ときどきどっかへ親が連れていく。だから、実際にはそこに預けっぱなしというところもあるのです。ですから、養護施設も兼ねている、保育所を兼ねている、託児所を兼ねている、ホテル、宿屋、旅館を兼ねているというようなものになっているわけです。
こういうところに長くいた子供というのは、もう不思議なほどみんな体が小さいのですね。いまの子供は大きいと私たちは思っていたわけですが、小さいのです。これはやはり医者の
言葉ですけれ
ども、愛情飢餓、人間と接しないわけですから、愛情飢餓で成長ホルモンがとまるんだということを医者が言っている。もう実に恐ろしいことだと思います。
こういうひどいところでなくても、ちょっと中くらいというか、
国会議員などが相当相談員になっているなどというようなところも、見せていただいたのではきれいで、日当たりもよくてりっぱだそうです。見に行ってもらったのですけれ
ども、そしてその話を聞いたのですけれ
ども、ガラスのつい立てで個室をつくっていて、ガラス越しに中で問題が起きていないかというのを見ているだけなんですね。ですから、人間と人間との接触というのは非常に薄いわけです。全くしないわけではないでしょうけれ
ども、非常に薄い。だから、見かけが非常にきれいでこれは一流に近いところだと言われるところも、こういうふうに人間と人間との接触というのがないわけですね。ですから、きれいなところで飼育している、まあ悪い
言葉で言えばそういう感じになっているわけです。これはもうまさに
人権侵害を超えた大きな社会問題だというふうに思います。こういう状態です。
切りがありませんけれ
ども、もう
一つ私が驚きましたのは、これは事実あった話で、あるベビーホテルの経営者に聞いてきた話なんですけれ
ども、渋谷の高層ビルの十二階にベビーホテルがあったというのですね。十二階のベビーホテルですから、恐らくそんなにきたないところではないんだと思うのです。しかし、その何階か下で火事があったというのですね。消防署が駆けつけたところが、その近所の人に、あそこの十二階に赤ん坊が何十人かいるんだと聞いて、消防士がびっくりしたというのです。そのときは、幸いそこの上まで火が行かずに消しとめられたので問題は起きなかったわけですけれ
ども、ここは、消防署の方がこういうことが起きると大変だからという御注意をしたところが、ベビーホテルをやめたそうです。どこか別のところに移ったのかもわかりませんけれ
ども、おやめになった。だから、やめるのも簡単だけれ
どもつくるのも簡単という感じです。
それからまた、消防法違反の建物や何かでやっているというところもあるというふうに聞いているわけです。やはりTBSのテレビ、テレポート6でばっと映ったのを見ますと、マンションの二階、三階、四階とずっと看板が出ているわけですね。そうすると、そこに赤ちゃんが何人もいて、それで保母さんが五十人に四人なんというほど極端でないにしても、もし火事のときに、赤ん坊は自分ひとりで歩けない、歩けるにしてもよちよちの子供がいるわけですから、一体どうやって逃げるのか。一体、消防署としては火事のときにどうやって生命の安全を守ることができるのか。これは消防庁の方にお聞きしたいと思います。