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1980-05-07 第91回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月七日(水曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 木村武千代君    理事 中村  靖君 理事 保岡 興治君    理事 山崎武三郎君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君    理事 中村 正雄君       熊川 次男君    白川 勝彦君       田中伊三次君    下平 正一君       楯 兼次郎君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    木下 元二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務大臣官房審         議官      三宅 和助君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   漆間 英治君         警察庁警備局警         備課長     依田 智治君         大蔵省主税局税         制第三課長   鈴木 達郎君         大蔵省国際金融         局国際機構課長 大須 敏生君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 細川  恒君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      山梨 晃一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  柳瀬 隆次君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 五月二日  法務局、更生保護官署及び入国管理官署職員の  増員に関する請願飯田忠雄紹介)(第五一二  一号)  借地上建物賃借人保護に関する請願奥野誠  亮君紹介)(第五二四三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 木村武千代

    木村委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所柳瀬刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 木村武千代

    木村委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。
  5. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 一九五九年の十二月十四日に日朝両国帰還協定によって第一次船が出航して今日まで二十年余りたっております。九万三千余名の在日朝鮮人方々北朝鮮帰還しました。その中に、日本国籍を有する男女が六千六百七十一名、そのうち女子が四千八十二名、日本国籍保有日本人妻は千八百二十八名おります。  帰還協定第六条第六項には「朝鮮側は、帰還者が乗船した以後の輸送及び食事、宿泊費等一切の費用を負担し、医療上の服務を無償で提供する。また帰還後の生活安定のため、その住宅、職業、就学等すべての条件を保障する。」とうたわれており、また北朝鮮及び朝鮮総連の人たちも、二、三年すれば里帰りができると当時は宣伝しておりました。その上、日本政府閣議が動機となりまして、日本赤十字社のあっせんで行われた事業でありましたから、十万になろうとする人々が新天地を求めて帰還していったわけであります。ところが二十年後の今日の現状は、その大半が音信不通、消息不明で生死の別さえわからず、また便りある人々も望郷の訴えを絶えずなされているというふうに聞いておりますが、たった一人の人も里帰りは実現しておらない現状であります。  こういう現状の中で、法務省当局にお聞きするわけでありますが、日本人妻等日本国籍のまま北朝鮮に渡った者についてのリストはできているのかどうか、まずお伺いいたします。
  6. 小杉照夫

    小杉政府委員 ただいま先生指摘リスト作成済みでございます。ただこのリストは、機会あるごとに内容の再点検、補正等を行っておりますので、現状において文字どおり完全なものとは言えませんが、一応作成したリストはございます。  この資料によりますと、先ほど先生が御指摘になりましたように、日本国籍のまま北朝鮮に渡った方の総数は男女合計で六千六百七十一名、そのうち女性は四千八十二名おるわけでございます。この女子数字独身女性あるいは子供等をも含んだ数字でございまして、昭和五十二年当時、たしか当委員会だったと思いますが、私の前任者が、いわゆる日本人妻と推定される数字といたしまして約千八百余名の数字を申し上げたわけでございますが、この数字を基礎といたしまして、先ほど申しましたリストに即して再点検いたしました結果、現時点でいわゆる日本人妻と推定される者の数は千八百二十八名ということに相なっております。
  7. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 その日本人妻里帰りの事実はあるのかないのか、まずお伺いします。
  8. 小杉照夫

    小杉政府委員 今日まで里帰りという形で日本に帰られた例は一件もないというふうに承知いたしております。
  9. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 だとしますと、日本人妻出国時における出国手続というのはどのようになっているのか、お伺いします。
  10. 小杉照夫

    小杉政府委員 日本人妻と言われる人々、これはやはり日本国民でございますので、普通の日本国民出国と全く同様に日本旅券の発給を受けて、出入港でその旅券を呈示いたしまして、これに入国審査官から出国の証印を受けて出国するという、通常の日本人と全く同様の手続によるわけでございます。
  11. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 北朝鮮から帰国した日本人妻国籍はどうなっているのか、お聞きします。
  12. 貞家克己

    貞家政府委員 お尋ねの日本人妻でございますが、これは何らかの事情によりまして日本国籍を離脱するという日本国籍離脱の届け出がない以上、日本国籍を喪失する理由はございませんので、引き続き日本国籍を保持しているというふうに私ども考えております。
  13. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 法務大臣、こういう日本人妻現状でありますが、こういう現状をどのように大臣としてお受けとめになっていらっしゃるか、まずお伺いします。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまここでお話のございましたような状態であることをよく承知いたしておりまして、肉親方々の心情をお察しいたす次第でございます。これは何とかしなければならぬと考えておる次第でございます。
  15. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 いま何とかしなくちゃいけないというふうに考えているというお言葉でありました。  政府とすれば、この打開策で何か別な方法考えているのかどうか、考えているとすればどういう方法考えているのか、まずお伺いしましょう。
  16. 三宅和助

    三宅政府委員 本件につきましては、人道的な見地から非常に重要な問題であるという認識から、先般も官房長官のところで外務法務当局が集まりましていろいろと今後のしかるべきとるべき措置を協議したわけでございますが、一つ方法といたしまして、第三国、と申しますのは日本国交関係がないということもございまして、しかるべき第三国を通じて一層の解決策努力したいということで現在努力中でございます。  また第二に、北朝鮮を訪問するしかるべき人に依頼いたしまして、何とか日本赤十字北朝鮮赤十字との間の連絡がとれる、そうすることによって糸口を少しでも早く見出したいということで現在鋭意努力中でございます。
  17. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 北朝鮮との関係において国交がない、国交がないところに交渉をするということはきわめてむずかしい問題であるということもまた私どももわかっております。  しかし、これを国交がないからといって綿々として放置することも、またきわめて事態解決をおくらすだけでありますし、第三国等方法を通じていろいろ考えているという御意見でありました。政府として、この問題について閣議決定をして取り組むという御意思法務大臣にあるのかないのか、つまり閣議に提案するという意思があるのかないのか、まずお伺いいたします。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この問題は国交に関する事柄でございますし、また人道上の問題でもございますので、政府全体の問題として所管省外務省とも引き続き十分に協議をいたしながら対処してまいりたいと考えております。
  19. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 法務省といたしますと、北朝鮮からの入国を認めております。また在日朝鮮人北朝鮮からの再入国を認めているのでありますから、日本人妻里帰りを認めないのであれば北朝鮮との往来を制限すべきではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御指摘のとおり、わが国政府北朝鮮との往来を認めているのは、わが国の主権に基づく判断によりまして、人道的見地に立ってまたわが国の国益をも考慮して往来を認めておるのでありまして、問題解決のためにはこれを規制もしくは制限するよりは、むしろ北朝鮮当局に対して人道的な措置をとるよう要請していくのがよりよい方法ではないであろうかというふうにただいま考えておる次第でございます。
  21. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 外務省にお聞きしますけれども、いわゆる北朝鮮日本人妻の問題について、安否調査里帰り依頼等がなされていると聞いておりますが、その現状はどのようになっているのかお伺いします。
  22. 三宅和助

    三宅政府委員 政府といたしましては、本件人道的な観点から先ほど申しましたように重大な関心を持っておりまして、家族から依頼がある場合には日本赤十字を通じまして北朝鮮赤十字安否調査及び里帰り依頼を行っているというのが実情でございます。  安否調査は現在まで十四回にわたりまして二百十名について行っております。また、里帰り依頼につきましては五十三年九月に六名について行っております。これに対しまして、残念ながら北朝鮮側から何らの回答にも接していないというのが実情でございます。
  23. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 なぜ北朝鮮側は何らの回答もしないのであるか、何か原因があるのか。  こういう肉親の者が長年久しく待ち望んで、本人の声を聞きたい、手紙を見たいというのは、まさに人道上の大問題であろうかなと思います。しかし、これに対して北望鮮側の方はからに閉じこもって一切の応答をしないということについて、何か原因があるのか、どこが問題であるのか、どういうぐあいに外務省とするとお考えなのか、何かまた打つ手はありはしないかと思うわけでありますが、その辺の感触をお聞きいたします。
  24. 三宅和助

    三宅政府委員 実は私たちも、いかなる理由回答もしないのかということで判断に苦しんでいるわけでございますが、一つ参考例といたしまして、日赤がいろいろな国際会議の場で北朝鮮赤十字の人に本件を取り上げますと、先方の言い方は常に、彼らはりっぱな朝鮮公民として処遇され、全くその心配はないというようなことでございまして、現在りっぱにやっているので何らそういう問題はないんだという一点張りでございます。  ただ私たちといたしましても、そのことだけではもちろん満足できないわけでございまして、訪朝するしかるべき人、それからさらにいろいろな場を通じまして理由を聞いているわけでございます。しかしその答えはいつも同じでございまして、さらに一層本件についての調査をいたしたいと考えておりまして、現在も努力中でございます。
  25. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 北朝鮮に行かれた山口淑子先生日本人妻の数名の者と会ったという新聞に投稿なさった記事を私は読みました。  きわめて元気でやっている、したがって心配は要らぬ、そういうふうな趣旨であったかなというふうに思うわけでございますが、元気であろうとなかろうと、それ自体は本質的に何らかかわり合いはないんじゃないかと私は思うわけであります。元気であればあるほど一目見たいというのがまた人情の常でありますし、元気でない人もいるんじゃないかなと思うのもまた当然であります。  したがって、元気であるから心配要らぬからいいよというのは答えにならないんじゃないかなというふうに思います。山口淑子先生のあの新聞の投稿を読みまして、ちょっとおかしいんじゃないかなというふうに私は感じました。これは元気だったらなお会いたいわけでありますし、したがって、北朝鮮側からの回答が元気だから心配要らぬよ、北朝鮮へ行かれた議員の先生方が聞けば、数名の元気な方々を会わせて、これだから大丈夫だよというのは、この問題の解決とおよそ関係のない態度ではないかなというふうに思うわけです。  したがって、わが国態度としても、これがけしからぬけしからぬと言うだけでは相手の態度をかたくするだけだろうと思うし、さればといって、言わなければ言わないでまた事態解決をおくらすだけである、一体どういう方法をとったならば問題の解決に一番近道なのかなと思うわけであります。国交がないから日本赤十字社を通じてやる以外に手がない。しかし、日本赤十字社を通じて北朝鮮赤十字社手紙を送っても一片の返事すらもらえない。憶測するに、この里帰り運動というのが何か政治的に利用されるんじゃないか、したがって、これにうっかり乗ると北朝鮮側は大変なことになるから黙っていようというふうに思っているのかな、あれやこれやいろいろな憶測をせざるを得ないわけであります。  しかし、問題はやはり人道上の重大問題でありますし、幾多の先生方国会でこの問題について質問をなさってこられました。そして政府の方を督励し、また政府を督励する以外に実はこの問題の解決策が見当たらなかったから、それは当然であったと思いますが、日本人のたくさんの方々がその安否心配し、年老いてそしてあの世に去っていかれる方々も多数いらっしゃるわけでありますし、この辺の問題の解決について外務省としても、何が決め手なのか、どういうぐあいにすればいいと思っているのか、その辺のところをお聞かせいただければありがたいと思います。
  26. 三宅和助

    三宅政府委員 いま先生指摘のとおり、私たちとしても心配要らないというだけではもちろん満足できないわけでございまして、いまおっしゃるように、心配が要らないならばそれはそれとして、少なくとも文通できるというところから始めたいし、何とかして日本赤十字北朝鮮赤十字との間のコンタクトができるということをいま鋭意考えておりまして、すでに申し上げましたように、新たに第三国を通じまして本件を全く人道的見地からひとつ問題を取り上げてもらいたいということで現在努力中でございます。  いま先生決め手は何かとおっしゃいましたけれども、実は私たちいろいろな手を使って最大限努力をする。最大限努力の中には、日赤というものだけではなしに、要するに北朝鮮国交関係のある第三国を通じ本件を真剣に取り上げたいということで現在努力中でございます。
  27. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 終わります。
  28. 木村武千代

  29. 横山利秋

    横山委員 この国会におきましては、本会議予算委員会及び当委員会を初め各委員会政治家関係いたしますさまざまな問題が議論をされましたが、その中心をなしますものは、何といってもKDD事件税理士会に関する問題でございました。  新聞の伝えるところによりますと、政府側としては、検察陣としては、KDD事件並びに税理士法に関する問題についておおむねその事件に関する全貌を把握し、そしてまた、その結果についても大局的にはもう山を越えたかのごとく報道されているわけであります。随時の本会議委員会におきまして、それぞれ時宜に応じて国会への報告なり答弁がされましたが、いよいよ国会も終局に近づきまして、この際当法務委員会におきまして、法務省としてまずKDD事件について今日までの状況結論について御報告を願いたいと存じます。
  30. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いわゆるKDD事件につきましては、昨年の十一月に東京税関から関税法違反等告発がございまして、警視庁東京地検とが協力いたしまして捜査を続けてきたところでございます。  もう御案内のところでございますが、去る二月には警視庁におきまして佐藤社長室長、これを業務横領で逮捕し、その後東京地検で取り調べを行いまして三月十五日に公判請求をしております。それから三月十八日には警視庁におきまして、いま申しました佐藤とそれからKDDの前社長室次長西本という人、また郵政省の電気通信監理官であった人、また電気通信参事官であった人、これらの人を贈収賄で逮捕いたしまして捜査を行いました結果、四月八日に佐藤につきましては贈賄、松井、日高の両名につきましては収賄ということで公判請求をいたしております。さらに四月五日にはまた警視庁におきましてKDDの板野元社長業務横領ということで逮捕いたしまして、東京地検と協力して捜査を遂げました結果、四月二十六日に同人を業務横領ということで東京地裁に起訴しておるわけでございます。  いま横山委員から、大体山を越えたように思われるがという御指摘もございました。率直に申しましてそういうような感じもするわけでございますが、まだ最終の整理と申しますか捜査の終結には至っていないわけでございます。具体的に申しますと、関税法違反事件また処分保留のままで釈放されました西本次長という人の処分が未了でございます。その他、いろいろとこれまで御論議がございました問題、いろいろな疑惑と申しますかそういう問題につきましても、警視庁また東京地検におきまして、相当な期間にわたりまたあらゆる角度から検討、捜査を進めてきたところでございます。その点につきまして、いま申しましたようにまだ最終的な報告には接していないわけでございますので御報告を申し上げる段階でございませんが、先ほど申しましたように、おおむね山を越えたというような見方と申しますか大体当たっているのではないかと考えている次第でございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 KDD事件については、膨大なKDD関税法違反はさることながら、それがどういうふうに使われたかという疑惑の中で、政治家特に大臣経験者を含めた政治家にかなり広範に品物なりいろいろとみやげが渡っているのではないかという疑惑はどうしても払拭されないわけでありますが、政治家関係についての御報告はいただけますか。
  32. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のございましたように、いわゆる政官界工作というような言葉で言われたことがいろいろとあるわけでございます。その中には、いろいろと具体的に種々の委員会等で御指摘を受けた点もございます。したがいまして、警視庁あるいは東京地検におきましては、それらの点も十分踏まえながら捜査をしたというふうに考えておるわけでございます。  その内容につきましては、まだ最終的な報告を受けておりませんので、現段階では具体的にはまだ申し上げる段階でございませんけれども、いろいろな御指摘のありました点、これはもちろん捜査という刑事事件としての扱いでございますので、それなりの限界もあるわけでございますけれども、その中で最大限努力はしたものと考えておりますが、具体的な犯罪容疑につきましてはいまのところ聞いていないわけでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 全貌報告は受けていない、いまのところ刑事事件としての犯罪容疑については報告を受けていないということになりますと、国民全般の中では、大山鳴動してネズミ一匹といいますか、KDD内部関税法違反業務横領だとかいろいろな金が使われたけれども、一番最後に出てくるべきものが出てこないで終わってしまうということについては、法律上の問題はさはさりながら、国民理解と信頼を検察陣がなかなか受けられないのではないか。もちろん検察陣としてはいろいろ法律上の問題ではあろうけれども政治上の倫理といいますかあるいはまた国民常識といいますか、そういうことについての説得力が非常に乏しい結果になった。大臣、聞いておみえになりますか、大臣に質問しようと思っているのですけれども。  要するに大臣、いまの刑事局長お話を要約すれば、大体峠は越えた、最終報告は受けていないけれども政治家に関する犯罪容疑ということは報告を受けていない、容疑はどうも乏しいようだというお話であります。私がそれについていま言いかけておりますのは、法律上の問題ももちろんさはさりながら、国民全般の中でこのKDD事件の結果としては釈然としないものが残る、そういう点については大臣はどうお考えになりますか。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 まだ、いわゆるKDD事件については私の方に最終的な報告を受けておりませんので、何とも申し上げかねる次第であります。
  35. 横山利秋

    横山委員 そうおっしゃればそうでありますけれども、お互いに政治家でございますから、いまの刑事局長報告を聞けば私ならずともだれでも、これで山を越えた、政治家の中からは犯罪容疑が出てくる可能性は乏しいということを判断せざるを得ないのでありますが、大臣、私の判断は間違っておるとあなたはお考えになっているのですか。
  36. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 間違っておるということを私は申し上げかねるのでありますが、すべて終わったという報告は私どもも受けておりませんということを申し上げておる次第であります。
  37. 横山利秋

    横山委員 これとあわせて、いわゆる税政連献金に関する問題でございます。  KDDとはやや性格を異にしておる問題でありますが、国民の中ではやはり、これがマスコミを通じてあるいは国会を通じていろいろ議論されたということもございまして、角度や問題の所在は多少違うけれども非常に関心が多いわけでありますが、これもまた新聞の伝うるところによれば一つの峠を越して、そして結論が大筋として出ておるという報道がされておりますが、いわゆる税政連献金事件についての今日までの状況の御報告結論についてひとつ伺いたいと思います。
  38. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いわゆる税政連事件につきましては昨年末に告発がございました。逆告発を含めまして三回告発があったわけでございます。  その後、東京地検におきましては鋭意捜査を続けてきたところでございまして、新聞等によりますと何か消極的な結論が出るように報道されたものもあることは承知しておるわけでございます。しかしながら、この点はまだ捜査中というのが正しい理解だと思います。したがいまして、現段階でどういう方向に向くかということにつきまして申し上げる状態ではないというふうに御理解をいただきたいわけでございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 KDDと違ってこの御報告はちょっと抽象的なんでございますけれども、まだ捜査中とおっしゃるのでありますが、私が承知いたしましたところによりますと、税理士会幹部全国にわたって約五、六十名調査を受け、そしてその中でも約七、八名が入院し、あるいはまたそのうち数名が精神的にも非常な圧迫を受けて、何か伝うるところによりますと自殺をも口走っておる、こういう話を私は聞いておるわけでありますが、KDDの問題と違いましてこの問題は、いわゆる税理士内部告発、そして証拠の収集もあなたの方としてはわりあいにスムーズにいっているのではないか、こういうふうに私は見ておるわけであります。  私ども国会でこの法案の審議をいたしました状況からいたしましても、KDDと違いましてかなり私どももその内容がよくわかるわけです。したがって捜査がむずかしいとかそういう問題ではなくて、事態というものはきわめて明白であって、問題はその判断の問題、それが一体贈収賄になるかならぬかという法律判断の問題に尽きるので、事実関係としては事理明白であり、調べなければならぬということもそんなにない。いわんや、そうではあるのにあなたの方は全国にわたって六十名もいろいろ呼んで話を聞かれる。こういう事態はきわめて明白の中で何が一体、この問題がいまおっしゃるようになお捜査中だとか結論がついていないという意味がよく私にはわからないのでありますが、改めてその詳細を承りたい。
  40. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまも申し上げましたように、捜査中というふうに御理解を賜りたいわけでございますが、いま横山委員は、事実関係は明白でむしろ法律判断の問題ではないかという御意見、御指摘があったわけでございます。  しかしながら私ども理解しております限りでは、事実関係も相当複雑であるというふうに考えております。と申しますのは、具体的の事件でございますしまだ処分も決まっていないという段階でございますから余り立ち入ったことは申しかねるわけでございますけれども、やはり金が授受されたという時期等の関係もございまして、その金の趣旨なりまた特に当事者の認識の問題なりいろいろとあるわけでございます。そういう意味におきまして、ただ金が流れたからというだけで直ちに贈収賄ということにもならないわけでございますから、そういう意味での事実関係というものはやはり複雑であり、それぞれの当事者からいろいろと事情を聞かなければ確定していかないような事案であるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、そういう事実関係につきまして関係者も相当多数に上る、先ほども指摘を受けましたように相当な数の人につきまして事情を聴取した、なお若干残っておるというようなことでございます。したがいまして、事実関係についてもまず整理をしそれをまとめる、その上に立っての法律判断でございまして、私の理解しておりますところでは、事実関係の整理といいますか取りまとめがおおむねできかかってきているというような段階ではないか、かように考えているわけでございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 法律案がもうすでに衆参両院を通過いたしておるわけでありますが、私は国会を通過いたしました法律案というものを点検をしてみまして、今回の改正は税理士の職域の拡大にそんなになっておらぬという判断一つ。それから職業の整備合理化、こういうことであって、何かこの法律が通ると非常に税理士がもうかったりあるいは国税庁が非常に権力を持ったり、そういう角度の、いろいろ誤解やいろいろなものはありますが、率直にこの通過いたしました法律案をしさいに改めて検討してまいりますと、そんな大それた改正ではなくて、税理士の職業というものをどう整備したか、どうやり方を合理化したかということに尽きると思うのでありますが、法務省や大蔵省はそうお考えになっていませんか。きょうは法改正の関係者はおらぬか。法務省はどうですか。
  42. 前田宏

    前田(宏)政府委員 法案のことでいろいろ金が授受されたというふうなとらえ方もされておるわけでありまして、その点がこの事件内容にも関係してくることでございますから、それについて具体的に申し上げるのもいかがかと思いますけれども、御指摘のような理解も十分あり得るんじゃないかと思います。
  43. 横山利秋

    横山委員 贈収賄罪というものは、刑事局長どうお考えになりますか。金銭的利益、物質的利益を得んがために贈収賄を行うという観点が一番わかりやすい話でありますが、その金銭的利益、物質的利益というものが全然ない、なくても単なる請託といいますかそういうことで贈収賄が成り立つというのでしょうか。
  44. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、直接的な利益といいますか財産上の利益というものが関係してまいります場合には、より一層贈収賄の疑いということが明らかになると思いますけれども、そういうような直接的なものじゃなくても、間接的に広い意味での財産上の利益があるというような場合もあると思いますし、いろいろの頼み事というものは必ずしも金銭に限らないわけでございますから、いろいろな頼み事についてそれの謝礼ということで金品等が贈られるということになりますと、贈収賄の成立する余地もないわけではないというふうに思います。
  45. 横山利秋

    横山委員 議論の分かれるところでございますけれども、それは押し問答しても仕方がないと思います。  ただ私が思いますのに、ロッキードからグラマン、ダグラス、KDDあるいはこの種の問題を通じて、必ずだれかが自殺をするという傾向が最近非常にいつもつきまとっておるわけであります。それは、自殺をした人の心理なり何なりをいろいろ考えてみるのですけれども、やはり検察陣調査方法にも一つ問題が残るのではなかろうか。検察陣としても、一番大事な証拠を持っておるとおぼしき人が自殺をするということは決して検察の仕事にプラスになるわけではないわけでありますが、そういう自殺者が出ないように捜査調査の中で配慮ができないものであろうか。単にあなた方ばかりじゃありません、それはマスコミにも多少の責任はございますけれども、そういう傾向がこのごろ必ずある。そのために捜査が一時停とんをする。そう考えますと、検察陣の責任ではないとは言いながら、やはりそのことが常につきまとう問題であるとするならば、何か考えられるべき点があるのではないか。  私が先ほど言いました税理士も約六十名くらいが全国調査をされる、その中で七名が入院をする。その中で現に、私も伝え聞いた話ではありますけれども、もう自殺をしたい、こう言っておられる人もあるというのでありますが、この税政連の献金問題につきましても、再び三たび同じような自殺事件が惹起をいたしますならば決してこの問題の解明にプラスではない、常にそれがつきまといますと、検察陣捜査調査のあり方にもどこか配慮が足らない点があるのではないかと私は考えますが、その点はいかがですか。
  46. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のように、最近この種の事件につきまして関係者の方が自殺というような不幸な事態が起きておることはまことに遺憾であると思いますし、またお気の毒という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、そういう感じを強くするわけでございます。確かに御指摘のとおり、そういうことになりますと捜査の遂行にも支障を生じますし、また御本人を含めた関係者の方々にも大変問題が起こるということでございまして、そういうことはできる限り最大限防止しなければならないというふうに考えるわけでございます。  ただ、その場合にどうやったらそういうことが防げるかということになりますと、具体的な名案というものも特に持ち合わせがないようなことでございますが、捜査当局といたしましては、そういう関係者の方々を取り調べるという場合に十分その取り調べの条件等につきまして配意をする、またそれが外部に公にならないように配慮するというようなこと、これは前々から考えてきておるところでございまして、今後ともさらに一層努力をしなければならないというふうに考えております。ただ先ほどもちょっと御指摘がございましたように、新聞報道等の問題も相当大きな要素ではないかというふうにも考えられるわけでございますが、それにつきましても捜査当局の立場で配意しなければならぬ点があるというふうに考えております。
  47. 横山利秋

    横山委員 ともあれ、罪となるようなことを実行した人間については、当然そういうような捜査を受ける受忍義務はあるわけです。しかし罪とならない、その人はシロであるにかかわらず、一般のあなた方に付与されておる権限によって調査をすることについて、一般国民としても多少の受忍義務はあることはお互いに認めるところであります。  しかしながら、その調査捜査がきわめて峻烈であって、結果的に最後にその人は罪にならない、シロであったという場合におけるその人の不名誉といいますか、それはぬぐうことのできない問題がございます。後でまた別の事件でそれに触れようと思っておるわけでありますが、そういう状況の中で最も悲しむべきことは自殺をする。その人が全部罪をかぶって自殺をしたのか、あるいは自分がシロであるにかかわらずこういうことになって、くやしさの余り自殺をして一矢報いるという気持ちになったのかわかりませんけれども、常に自殺者があるということについて検察陣としても、捜査上の支障を来す問題でもございますから、また再びこの種の問題が出ないように最大の配慮をするべきだと私は思うのであります。  そこで税政連事件、いまお話によれば捜査中でまだ十分な報告ができないとおっしゃるのでありますが、やはり国民としては、参議院選挙の前でございます、これがずるずるといつまでもはっきりしないままに推移いたしますならば、税理士会全般においても内部に大変な動揺を招く問題でもございますし、国民の疑問にこたえるためにもなるべく速やかな結論がつけられることが望ましいわけであります。しかもなおかつ、われわれ、党はいろいろありますけれども国会議員が告発をされ疑いをかけられておる不名誉な問題でもございます。一体いつごろこの問題についての決着をなさるおつもりでありますか、伺いたいのであります。
  48. 前田宏

    前田(宏)政府委員 何分にも捜査のことでございますので、いつまでというふうな明確な日を切ってのお答えができないわけでございますけれども、先ほど来お話のございましたように、国民方々の御関心にもこたえ、また、いろいろな面でただいまおっしゃいましたようないろいろな問題もあるわけでございますので、最大限早く処理をするように努めたいと考えております。
  49. 横山利秋

    横山委員 最大限早くというのは、参議院選挙前に決着をなさるおつもりでありますか後になるわけですか。
  50. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、捜査のことでございますから、選挙をにらんでその前がいいとか後がいいとかいうようなことは本来捜査としては関係のないことであると思いますけれども、いまのような御意見等も十分踏まえまして、そのような御趣旨に反しないような処理をすべきものと、かように考えております。
  51. 横山利秋

    横山委員 次の問題に移りますが、先般メモをお渡しいたしておきました成田空港における反対運動の際の飯島桂子に関する事案であります。  本人は、一九七八年三月二十六日成田空港における反対運動の際とった行動について、兇器準備集合等被告事件で起訴され、現在東京地裁で公判中であります。検察官は、本人が救護班員であることを認めながら、共同加害目的を持ち、かつ火炎びん使用並びに公務に対する暴行等の共同意思を有していたと主張し、被告側は、救護班として闘争行動には参加せず無関係であり、専心救急医療活動に従事していたと主張し、法廷におきます検事弁護人尋問においても、証人の警察官の答弁は、逮捕手続書の内容を追及されますと、当日の事実関係についてきわめてあいまいであります。本人が闘争行動に参加していたとの確証を挙げることができず、逮捕の際は無抵抗であったことなど被告の主張の正しさを立証されておる状況にあります。  そもそも救護活動については国際的な理念が確立しているのでありまして、事件の当日の成田の雰囲気はきわめて険悪であったことはだれしも承知しておりますが、そのために警察官が関係者とおぼしき人々すべてにわたり一網打尽に逮捕し起訴したことが、今日次第に明らかになりつつある事件でございます。  被告は教職にあったために、心情的には成田闘争の意義を理解しながらも救護班としての活動をしていたものでありますが、起訴と同時に懲戒免職となり、自来この一年有余にわたって拘置されかつ社会的にはマスコミの材料となり、家庭的にも非常な打撃を受けておる事案でございます。この点についてお調べになりましたか。
  52. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御質問の事件につきましては、現在東京地方裁判所において公判が係属中でございます。  いまいろいろとお話がございましたけれども、必ずしもそのようでない点もあるように理解しておるわけでございます。何分にも公判中でございまして立証の途中であるということでございますから、その内容について申し上げるのは適当でないというふうに思いますけれども、私どもが聞いておりますところでは、ただいまの救護活動というようなお話も、弁護人側の主張によって初めて出てきたことであるようでございます。犯罪の成否ということはやはり裁判所の公正な判断によって決められることでございまして、先ほど来申しておりますように公判係属中でございますので、御指摘の点はそれなりに検察庁の方にも伝えておいたわけでございますけれども、それに対して特にここで申し上げるようなことはまだないわけでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 ここに起訴状がございます。公訴事実の要旨を申し上げますと「被告人は、ほか多数の者と共謀のうえ 第一 昭和五三年三月二六日」云々「多数の警察官らの生命・身体に対し、共同して危害を加える目的をもつて、前記多数の者とともに多数の火炎びん・鉄パイプ・石塊などの兇器を準備して集合し 第二 前記日時・場所において、前記任務に従事中の前記警察官らに対し、鉄パイプで殴打し、多数の石塊・火炎びんを投げつけるなどの暴行を加え、もつて火災びんを使用して右警察官らの生命・身体に危険を生じさせるとともに、同警察官らの職務の執行を妨害し、その際前記暴行により別表記載のとおり、警察官内海敏博ほか二二名に各傷害を負わせ」となっておるわけであります。  ところが、あなたもお読みになったと思うのだけれども、法廷における証言で、女姓ですよ、二十二歳かそこいらのこの女性が、この起訴状に相当する集団と一緒におり、そして一緒に警察官に暴行を加えた事実関係はないということが検事の反対尋問でも明らかになっているわけです。そして私の承知する限りにおいては、この公訴事実は千編一律にその辺におった人は全部同文のものなんです。つかまえたときの状況を見ますと、この女性がその集団の中におったというのではなくして、赤十字の記章のある帽子をかぶって救護に関する品物を持っておって、抵抗もしないで逮捕されたという関係の事実が克明に法廷の中で明らかになっておるわけであります。  だから、この逮捕は明らかに不当ではないかということを私どもは痛感せざるを得ないのであります。救護班ということは現に逮捕した警察官が認めておるわけです。救護班というものは、いかなる場合であろうと、戦争はもちろんでございますけれども、いろいろなデモやなんかでもあるわけです。けがをした人を助けるためにちゃんと標識も持っておって救護しておる人間を十把一からげにつかまえて、そして私の承知したところによりますと、この公訴事実はほかの乱暴あるいは抵抗した人間とまるきり同じであって、この飯島桂子に関する事実関係というものは公訴事実の中に何も書いてないわけですね。まああの当時の混乱の中で警察官が少し感情的になったことはわからぬではないけれども、これは余りにもめちゃくちゃなやり方ではないか、私は調べれば調べるほどそういうふうに感ずるわけであります。そもそも救護班であったとしたら、そして救護をしておったとしたら、これは一体どうなんでしょうか。
  54. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、当該被告人に対します公訴事実は先ほどお読み上げになったようなことでございますが、いまも仰せの中にありましたように、多数の人たちと一緒にそういう行動をしたという事実として起訴しておるわけでございます。  したがいまして、この被告人本人が具体的にどういうことをしたかということは、必ずしも起訴状の上では明確ではございませんが、「ほか多数の者と共謀のうえ」ということが前文といいますかあるわけでございます。そういうようなことで、いわば集団的な兇器準備集合また集団的な警察官に対する暴行傷害というとらえ方がされておるわけでございます。  したがいまして、公判で、いま横山委員の御指摘のような主張なり立証が被告・弁護人側の方からいろいろとなされておることは承知しておりますけれども、検察官側といたしましては、公訴事実のような、ほか多数の者と一緒になってのこういう事実というものは認定し得る証拠を一応そろえておるというふうに聞いておるわけでございます。それ以上具体的に、こういう場合にはどうなるかああなるかということになりますと、現に裁判が進められている過程でございまして、私どもの立場でそのことについて申し上げるのは適当でないというふうに思うわけでございます。  ただあえて申しますと、救護的な分野を担当しておりましても、それによって、そういう兇器準備集合なり集団的な暴行なりを助ける、そういう余地もあり得るわけでございますので、一概に犯罪にならないというわけにもまいらないのではないかというふうに思います。
  55. 横山利秋

    横山委員 それはちょっとおかしくはないですか。三里塚へ行ったということが、まさかあなたがおっしゃるように兇器を持って準備集合しということにはならないと私は思う。三里塚へ行った、しかも救護班として行ったということを兇器を準備して集合したというふうに画一的に断定なさっているわけじゃないと思うのです。  それから、三里塚へこの女性が行った、そして救護班になった。救護班としてその集団と離れておったのでは救護はできないから、仮に集団の後ろからついていったとしましょうか。それで警官に暴行を加える目的であったと推論することもやはりおかしいと思う。  それから、現実に法廷の中における検事並びに弁護人の尋問によれば、ここにありますところの、彼女がそこで火炎びんを使用し投げつけ、石塊をもって暴行を加え、そういうような事実関係の立証ができておりません。できておらないということは、本人が救護班活動をやっておったからということなんだ。警察官も彼女が救護班であることを現認をしておるわけなんだ。  そうしますと、とにかくその辺におるやつは全部つかまえてしまえ、そして罪状はわからないから、ここに書いてあるような公訴事実ならだれにでも適用できると、その辺におったやつ全部にこれを適用して、事実関係の立証もできないままに法廷に送っておる。そのために本人は学校は首を切られ、家庭はマスコミにたたかれる、そういうのでは余りにひどいじゃありませんかね。  あなたの方はいまになって、調べていくうちにどうもこれはかっこう悪いぞ、公訴事実も少し変えなければならぬなというようなことになっておるということは、私は不見識もはなはだしいと思うのであります。公訴した以上は何とかして罪にしてもらわなければいかぬというような感じがしてならないのでありますが、これは調べていったら事実関係が違っておる、現場の警察官のやり方が少しおかしいということに当然なるべきだと思うのであります。警察庁お見えになりますが、何か御答弁ありますか。
  56. 依田智治

    ○依田説明員 お答えいたします。  この飯島さんにつきましては、いわゆる二年前の開港警備ですね、三月二十六日の午後、当日は大体三里塚第一公園で極左暴力集団等が約八千人くらい集まり、また別の最も過激なグループと思われるグループ千五百人が反対側の菱田小学校跡地、ここに集まったわけでございますが、それが三つに分かれて、星華学園の方に七百くらいの赤ヘルメット集団が行ったわけでございます。それが東峰地区で規制する警察官等に火炎びん、投石等をやる、その一部は空港内に突入して警察官等にも傷害を与えた、こういうような事案で、二時過ぎに、出動していた警察官が、現場付近で赤ヘルメットをかぶり、ヤッケを着ており軍手をはめて、しかもその軍手には石油のにおいがするというような状況で、兇器準備集合、火炎びん法違反というような罪名で検挙したわけでございまして、その後検察庁等でいろいろ調べた結果、いま先生お読み上げいただいたような起訴事実で起訴になって現在公判中ということでございまして、現場の警察官は、当時の状況等からこの女性が明らかにそのような罪名に当たるという確信を持って逮捕したというように聞いております。
  57. 横山利秋

    横山委員 あなたは法廷の記録をお読みになっているのですかね。現場の逮捕した警察官がしどろもどろになって、いや私が見たわけではないとか話が違うとか、そういうふうにしどろもどろになっておる法廷記録をあなたはお読みになって言っているのですか。話がどうも違うのですね。法廷記録を読まないで、確信を持って事実関係を認めたなんて言ったって、法廷記録を読んだらそんなことを言えるはずないですよ。お読みになっているのですか、なっていないのですか。
  58. 依田智治

    ○依田説明員 逮捕した警察官は、要するに現場で火炎びん、投石等に遭い、それを追跡し、そしてその集団とまさに同じような赤ヘルメット、ヤッケ等を着た女性を、これが何か若干他の方からも追跡されていたような状況もあったということで、その集団の一員として検挙したというように聞いておるわけでありまして、法廷においてもそれは自分の見たままを証言しておるというように承知しております。  そういうことで、警察官は逮捕した際にはまさにその罪名に当たる罪を犯したに足る相当の理由があったということを認めて検挙したというように聞いておりまして、法廷においても若干しどろもどろと言われればそういう状況もなきにしもあらずでございますが、少なくとも警察官は、その現場でそういう罪名に当たる罪を犯した人間であるという点については確信を持っていたというように聞いておるのでございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 あなたの方がしどろもどろになっておる。いいですか。この起訴事実は、彼女が警察官に対して「鉄パイプで殴打し、多数の石塊・火炎びんを投げつけるなどの暴行を加え、もって火炎びんを使用して右警察官らの生命・身体に危険を生じさせるとともに、同警察官らの職務の執行を妨害し、」その暴行により警察官ら二十二名に傷害を負わせと書いてある。  これらの事実関係について法廷で何らの具体的証言をできずに、自分は向こうから来たやつを追っていった、そうしたらこっちの方に女の子がおった、それで赤ヘルメットをかぶっている、そのとき彼女は赤十字の記章をつけておったのですよ、それをパクっちゃったというだけあって、ここに何ら彼女の起訴事実に関する事実関係を警察官は法廷で証言することができないじゃありませんか。それをあなたは知っているのでしょう。     〔委員長退席、中村(靖)委員長代理着席〕 だから、私はいま成田の全般の問題を議論しているのではないのだけれども、中にはこういうことが行われたことは、その当時の記録が新聞にありますが、警察官、機動隊もかなり激高して「この状況を写真に撮った一人に「なぐるぞ」「殺すぞ」とどなった。「連行する法的根拠を示せ」「捜索令状はあるか」などの抗議に私服警官が「文句があるなら公判で言え。バカヤロウ」「お前らに見せる必要はない」などの暴言を吐いて、一人を乗用車で連行した」等々のことは容易に想像される雰囲気であったと私は思う。  そういう零囲気の中で、飯島桂子という救護班で救護活動をしていた学校の先生がパクられて起訴になって、学校を首になって、家庭の悲劇になってという痛ましい犠牲がある。法廷ではすべてそれらの事実を立証することができない状況になっておる、気の毒じゃないかと私は言っているわけであります。あなた方がやられたことがすべて正しいとは思えぬでしょう、法廷でその事実を立証することができないのですから。もう公判も終わり近くになっておるのだけれども、少し考えたらどうか。この種のことについては、あの混乱の中にあって間違いも行き違いも時にはあったろう、それについての反省も少しはしたらどうだと私は言っているのでございます。  まあ公判中の問題でありますから、いまあなた方にこれ以上言っても仕方がないけれども、これは明らかに誤認逮捕ですよ。これは間違いです。そしてこれは火炎びんを投げつけに行ったんじゃないですよ。救護に行ったんですよ。救護に行ったからと言ったって、もちろんその女性は成田空港について反対の意識は持っておったと私は思うのであります。そういう意識を持つことが違法ではないのですからね。成田に行くことが違法じゃないのです。救護班でやることが違法じゃないのですから、けが人を助けるのが違法じゃないのですから。そういうことまで十把一からげにやったあの事件について、少しは反省をなさらなければいかぬじゃないですか、こう言っておるわけであります。どうですか、お二人それぞれ御意見がありますか。
  60. 依田智治

    ○依田説明員 警察の方としましては、警備実施に当たりましては、どのような過激な警備実施の場合におきましても警備実施の適正を期し、世論の支持を得てやるというようなこと、それから警察官にも相手側にもけが人は出ないようにということでやっておるわけでございます。  しかし、相手側が物すごい過激な行動に出てきたというような状況の中においては、場合によるとやむを得ずけが人が出るようなことになるわけでありますが、救護班という場合でも、やはり違法行為があれば検挙するということは、今後とも私の方としてはそういう方針でいきたい。しかし、先ほど申し上げました警備の基本方針というものは今後とも貫いて適正な警備をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  61. 横山利秋

    横山委員 私の言ったことは何もちっとも、カワズに小便みたいだね、あなたは。  私の言ったことについて何ら反論ができないので、それでもう救護班であろうと悪いことをやった者はしょっ引く。それはもちろんそうですよ。悪いことをやれば、救護班が火炎びんを投げつければ、それはしょっ引いてもいいだろう。けれども、そういう事実がないじゃないの。そういう事実を指摘することができないじゃないの。起訴事実が違うじゃないの。法廷でしどろもどろになっているじゃないの。あなた自身だって、ここで私に対して、いや横山委員の言うのは違う、こういう事実が現にあったんだと、何ら開陳できないじゃないの。  私は警察官のあの努力を多としておる一人ですよ。一人だけれども、ああいう混乱の中であっても、無辜の者をしょっ引いてはいかぬ、無辜の者の人生を破壊してはいかぬ、そういう感情的にやったいろんなことについて、こういう間違いがあれば少しは反省をすべきだ、こう言っているのです。あそこで警察官もけがを負って大変な迷惑をかけたということについては、私は国民の一人として感謝するにやぶさかではない。やぶさかではないけれども、それなら何をやってもいいということではいけませんよというのです。こういうような全くの救護班を、救護班であろうと何であろうとやってしまって、その一人の女性の人生を破壊してしまうというようなことをやって、一片の同情もないじゃないの。それが、いや違う、こういう事実があったんだから、これはどうしたって私のやったことは間違いないという反証があるなら、ここで言ってごらんよ。法廷記録をかざして、こういうふうに本人があるいは事実関係があるということがあったら言ってごらんよ。  別にここは法廷じゃないから、私はこれ以上言わないけれども、少し謙虚さが足らないんじゃないの。まあこれ以上言ってもなんでございますから、私の言わんとしたことはよくおわかりだと思いますけれども、十分ひとつ注意をしてもらいたいし、それから法務省としても、法廷におけるありようについて、事実関係を含めて、起訴をしたから何が何でもということでもないでしょうから、十分考えてもらいたいと希望しておきます。  それから、次は民事局にちょっとお伺いしたいのでありますが、先般の民法のときに、私はちょっとうっかりしておって、後で地元なり方々で説明をしておってなるほどなと思うことがございました。それは、被相続者が死亡後相続が長年月にわたって行われてない現状を改善する方法はないかという点であります。  おかしな話ですが、名古屋のある税務署長に会いましたら、お父さんが死んで二十五年相続をしておらぬというのであります。あなた税務署長じゃないか、相続税はどうしたのと言ったら、相続税は国税庁としては別に差し支えない、本人が相続してなくたって、死んだら民法による割り当てで取ってしまうのだから、登記がどうなろうとこうなっておろうと国税庁としては関係ない、こう言って税務署長が笑っておるわけであります。私の知り合いの本屋さんも、この間聞いたら、お父さんが死んで十年になるけれども、まだ何も相続手続をしておらぬ。聞いてみますと、農家においては実にそれが多いらしいですね。それで、お父さんの名前と息子の名前を通称を同じにしてしまうということも古い農家ではあるという話であります。本人同士、家族同士はそれでいいのですけれども、しかしながら都市の真ん中でその土地が共同登記になっているような場合だとか、あるいは町内でいろいろなことがありまして判こをもらうときに、これは容易ならざる混乱、めんどうな手続というものがあるわけであります。  そこで、私はきょう大蔵省と民事局に、これはこのまま放置しておいてはいかぬのではないか、何か一の、相続が長年月にわたって行われていない現状を改善する誘導路をつくる方法はないのかということを考えたわけであります。税務署長は、自分の所管じゃないから、一定期間内に相続をしたら、二年なり三年なりにやったら登録税はただにする、その後でやったら高くするとかいうようなことができないものかと言って、冗談のように意見を言っておったわけでありますが、事前にお話をしておきましたから、何か知恵を出してもらいたいと思うのでありますが、被相続者が死亡した後相続が長年月にわたって放置されておる現状の改善策について、主税局と民事局の御意見を伺いたいと思うのであります。
  62. 貞家克己

    貞家政府委員 被相続人が死亡いたしました場合に、なるべく速やかに登記簿に相続関係を反映させることが取引の明確化等の点から申しまして望ましいことは申すまでもないところでございます。これがおくれることによりまして手続的にいろいろ不便、不都合が生ずることは当然でございます。  ただ現在、相続の登記がいわゆる対抗要件としての意味を持たないというようなところから、とかくこれが長年月にわたりまして放置されるという現象が見られるわけでございます。ただ、登記をするということにつきまして、私ども法務省の立場からこれを強制するということはもちろんできないわけでございます。しかしながら、これがなるべく速やかに登記されるということが望ましいわけでございまして、今回の民法の改正に関連いたしまして、いろいろ法律知識について国民の各位に認識を深めていただきたいという点が多々ございますので、その一環といたしまして、私どもは実は日本司法書士会連合会とも内々話し合いを進めておりまして、国民の間にそういった相続に関する登記を速やかにするということについての必要性、利便性というものにつきましての理解を深めるための活動をしていただくというようなことを話し合っているわけでございまして、司法書士という国民に密着した立場にあります方々の活動ということは、私どもは非常に有意義であって望ましい方策であると思うわけでございまして、私どもといたしましてできる限りの協力をいたしたいと思っている次第でございます。  私ども考えておりますのは以上のような方策でございます。
  63. 鈴木達郎

    ○鈴木説明員 大蔵省といたしましても、真正な権利者が表示されるということが望ましいとはもちろん思っているわけでございます。  しかしながら、それに登録免許税等を活用することにつきましては、いま民事局長からもお話がございましたように、現在の不動産登記制度の基本的なあり方が、特にいま相続登記については何ら義務づけもしていない状況でありますので、税によってペナルティーを課して半強制的に誘導するということは、税の仕組みから申しましてもいかがかと考えているわけでございまして、民事局長お話にございましたような国民の認識を司法書士会との話し合い等によって高めていただくということが先決ではないかと考えております。
  64. 横山利秋

    横山委員 司法書士がPRすれば何とかうまくいく、そんな簡単なものじゃないですよ。全くそれでは、せっかく御検討をお願いしておいたのにかかわらず手がないということじゃお粗末だと私は思うのであります。  私の言うような誘導路をつくる、二年なり三年なりに相続をきちんとすれば恩典がある、それを過ぎたら恩典がなくなって、税金が少し重くなるというようなやり方は、いま主税局からおっしゃったが、そういうような誘導路をつくるやり方というのはなきにしもあらずです。申告でもそうですよ。一年にしなければならぬとかあるいは家をつくったら一年以内に申告しなければならぬとか、そういうようなやり方というのは税法の中で幾らでもあるんですから、この相続の場合が絶対に税の公平を欠くということにはならぬと私は思うのであります。  大蔵省の税務署長の言うことが一番素朴だったのですけれども、登録免許税がどうなろうと私の方は民法によって、だれが幾らもらっておるか知らぬ、そんなものはそれでお母さんは三分の一だ、あとは子供が平等にもらったということにしてやってしまう。もっとも本人たちが合意をして持ってくればそれでよろしい。そしてそれが結果として最後に法律上の登記をしたとすれば、そのときはまたそのときだ、こういうことで税務署がどんどんばちばちやってしまっておるのに、法務省はそれが最終的に確定するまでは私の方は知らぬ、PRしてなるべく早くやってもらうようにするということは、税務署と法務局との関係が少し法務局側がたるんでおるんじゃないんですか、もっと方法があるわけじゃないんですか。  だから大蔵省と法務省とよく相談をされまして、登録免許税についての改正をひとつ考えたらどうですか。そういうことはお考えになりませんか。私は親切に言っておるので、そうしないといつまでたっても、二十五年間もお父さんが死んでも相続しておらぬ、そういうばかげたことが現にまかり通っておるのですから、民事局として何かいい知恵を出したらどうですか。必要な法律改正を相談してやったらどうですか。
  65. 貞家克己

    貞家政府委員 相続に関する登記はいわゆる所有権移転の登記でございまして、権利に関する登記でございますので、不動産登記のたてまえ上これを強制するということはできないことは御承知のことと思うわけでございます。  ただ現実にいろいろ不便がございまして、土地改良による換地処分でございますとか土地区画整理法による換地処分の場合にもいろいろ不便、不都合が生ずることは事実でございます。この点につきましては、私どもまず国民理解を深めるための努力ということを第一番にいたしたいと考えておりますが、なお、これをいかなる方法によってそれがさらに励行されるようにするかという点につきましては、関係当局とも十分協議をいたしましてよりよい方策を探求いたしたい、かように考えている次第でございます。
  66. 横山利秋

    横山委員 両省とも私が強制的にやれと言っているわけではないのですよ。なるべく早くそれが行われるように誘導路をつくってやれ、ある時期まで、少なくとも相続でありますから一家親族の相談もあるだろうから、それが一人がごねればいつまでたっても片づきやせぬ、しかし二年なり三年なりにせぬとみんなが損をするよという誘導路をつくってやって、そして二年なり三年なりの間に相続した者は登録免許税がわりあいに安い、それを超したら高くなるよということがどうしていかぬのですか。そうすることによって一定の期間内に家族、親族が相談をしてやるように誘導路をつくれという話でありますから、私は最も建設的にしかも法務省や国税庁のお手助けをしておるつもりで言っておるわけなんでありますが、法務大臣、私の話わかりますね。どうですか。あなたひとつ采配を振ってやってくださいよ。
  67. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 重要な問題でありますし、これは長年の問題だと思います。検討して対処いたしたいと思います。
  68. 横山利秋

    横山委員 法務大臣お話はいつも簡単にして明瞭で、どっち向きかようわからぬのですけれども、あなたが後で議事録を読んでみて非常に重要な問題であるからよく検討させるというふうに承ってよろしゅうございますか。いいですね。それじゃ大蔵省いいですね。法務大臣の綸言汗のごとしですよ。いいですね。頭を下げました。  それじゃ次に移ります。  次は金の問題であります。時間がございませんので、私は問題提起をひとつ読み上げますから、後で個別に伺います。  ここのところ、国際金価格が世界的なインフレ傾向及びドルに対する信認低下に加え、イランの対米関係やソ連軍のアフガニスタン侵攻など国際政治の緊張感を反映して、本年一月には一オンス八百五十ドルという歴史上にもかつて例のない異常な高値をつけ、その話題は国際政治経済にまつわる関心事として広く国際社会に及び、また世界諸国の政策当局関係者等にも強い衝撃を与えている。  金価格に反映される各国の通貨の価値は、またその国の政治的経済的な安全度をはかるバロメーターでもありますが、右のような今日的現象は金がペーパーマネー不信の時期における適切な価値保蔵とみなされるに至った象徴的な出来事であったわけであります。     〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着席〕  一九七八年四月のIMF第二次協定発効以来、IMFの枠内では金の廃貨を規定してはみたものの、現実的には金はやはり商品であるとともに通貨としての側面を持ち、そのことはこれまでも世界各国が通貨用の金を容易に手放そうとしない姿勢にもうかがえたのでありますが、本年一月に至り米通貨当局がついに金準備の放出を中止すると発表し、米国の金価格冷却政策の失敗を公認したこと、あるいはまた本年二月フランスのバール首相が、金を是が非でも世界通貨制度から外そうとする試みは失敗した、どの国も準備資産としての金を放棄しようとはしないだろうと演説したことなどで、より鮮明になったと申せます。  しかも、本年ベニスで開かれる先進国首脳会議でフランスが提案を用意したと伝えられる四大通貨圏構想とは、実に金をニュメレールとするものだとも言われており、こうした動きのほかにも、SDRを再び何らかの形で金に関連させようとする考えが強まってきている模様であります。つまり、国際政治社会では再び古くて新しい金問題が論議されようとしており、世界通貨としての金が見直されようとしているのであります。  翻ってわが国状況を見ると、わが国における金談議は、輸入を自由化してから八年、輸出入ともほぼ全面的に自由化して以来まる二年を経たにもかかわらず、いまだに無秩序に出没する私設金市場のトラブル問題あるいはまた金流通機構の整備等を話題とせざるを得ないありさまで、このため法務委員会、商工委員会等を通した国会審議はこの三年間ですでに十数回も繰り返されたところでありますが、政策当局からは、いまだもって具体的な行政対策が示されぬことはもとより一向に満足な回答は得られず、はなはだ寒心にたえざるところであります。  わが国でも、数年前より金選好は一般大衆に徐々に浸透し、民間の金保有は約五百トンとも推定され、今後とも国民の金投資はふえるものと考えられます。大蔵省がまとめた昭和五十四年度上半期四月−九月までの金需給調査によると、輸入を含めた金の供給量は前年同期よりも減少しているにもかかわらず需要量は大幅にふえるという、単純計算ではやや矛盾した結果を統計しています。これは、金価格の大幅な上昇及び価格変動に伴って売り買いが頻繁に行われ、その結果が統計上に大幅な需要増となってあらわれたものと判断され、引き続きこうした傾向が盛んになるものと予想されております。  しかるに、わが国の流通業界の実態は、こうした流通量の拡大に対し全く受け入れ体制に欠けるのであります。それどころか、わが国の流通システムはいまだに一部大手地金問屋の支配下に置かれた売り一方の市場で、これらの業者はまた買い取りにはきわめて消極的であり、売買価格においても業者側がそれぞれ恣意的に決めて提示する価格にゆだねるほかはなく、公正円滑な取引などは一向に省みられておりません。こうしたことが一方では今日、ネズミ講、マルチ商法に続く社会問題となった金のブラックマーケットを生み、法的な字義の解釈を別にして、わかりやすく言えば金の先物業者ともいうべき法的規制外のまことにインチキな悪徳業者を続出させた一つの背景でもあります。  問題は、政府考えとして、こうした国内情勢をいつまで放置しておくかということであります。民間業者にすべてをゆだねて、消費者保護をも含めた自然な正常化を待つ時期はもうすでに過ぎたという政治判断が必要だと存じています。  私がこれから質問いたします基本的な物の考え方をいま言ったわけであります。そこで、この私の基本的な考えに立って、二、三お伺いをいたしたいと思います。  工業材料としての金と外国為替上の政策としての金、また犠牲者を保護する立場における金、政府内部で金の取り扱いというものがばらばらなんであります。先ほど申し上げたような趣旨から言いますと、きょうおいでを願いました大蔵省から通産省から資源エネルギー庁からあるいは警察庁、法務省が、金に関する一般的な総合的な協議機関を持つ必要があるのではないか、もうそういう時期にあるのではないかというのが私の提案の一つでありますが、これはどなたがお答えになりましょうか。恐らくそういうことを御相談なさっていないと思うのですが、どなたかから御答弁をお願いします。
  69. 山梨晃一

    ○山梨説明員 お答えさせていただきます。  先生おっしゃいましたように、確かに金にはいろいろな側面がございまして、政府内部でばらばらだという表現は、私どもちょっとそうは理解していないのでございますけれども、私ども資源エネルギー庁といたしましては、確かに物資としての金を所管しているわけでございます。ほかの側面というのもございますが、必ずしもばらばらで行政をやってきたわけではございませんで、必要に応じまして各関係課、通産省の中の関係課というのも多々ございますけれども、それぞれの関係課並びに大蔵省その他の関係省庁とも情報交換をしておりますし、今後とも十分連絡をとって協議していくような体制で臨みたいというふうに考えております。
  70. 横山利秋

    横山委員 それはそれぞれの所管があるから、それぞれの所管に伴って金問題を扱っているのだというお気持ちだとは思うのでありますが、工業材料としての金の立場、外国為替上の政策としての金の立場、警察の被害者保護としての立場、そういうものが、いまや内外ともに問題が山積してきた。  こういう点から考えますと、それぞれの所管は所管としても、これから日本が金についてどういうような基本的な政策を持つかということをまず一遍考えて、その立場から、警察は警察あるいは大蔵省は大蔵省、通産省は通産省としてやっておくことがいまや必要な時期ではないかというのが私の趣旨でございますよ。どうですか。重ねて御意見を伺います。
  71. 山梨晃一

    ○山梨説明員 私の方で全部お答えできることかどうかわかりませんが、実は確かに世の中の情勢が急変しているということは私どもも存じているわけでございまして、金の流通機構というものを整備していくべく、先ほど先生から、金というのは一部大手業者の独占体系下にあって売り一方であるというようなお話がございましたけれども、昨年の末には社団法人を設立して、売り買いとも現実に取り扱うような業者を登録していくというようなことを現実にやっておりまして、現在までにすでに百九業者が登録店として、そういう店として登録されているという事実もございますし、実は金の流通問題に対して今後どうあるべきかを関係者の間で議論していくということで、今年度百二十数万円の予算もちょうだいしているわけでございまして、今後ともそういう努力はしてまいりたいと考えているわけでございます。
  72. 横山利秋

    横山委員 百二十数万円なんてみみっちい話ですね。  大蔵省に伺いますが、金はIMF保有通貨から外されたこと、つまり国家間の決済手段からは外されたことで、逆に政府間でも自由な通貨としての役割りを復活しておると思いませんか。加えて、IMFは本来国家会計間の問題であって、広く国際的に見た民間人社会における得失つまり民族的得失という点では、金の通貨的性格とこれをめぐる積極的行政価値というものは無視できなくなっておると私は思うのであります。この点では、外交上金を廃貨に追い込んだアメリカにもたてまえと本音、理念と現実があるのではありますまいか。  わが国は、アメリカ協力外交の立場から言って、金についてはむしろ積極的政策を慎んでいる面があると思うのでありますが、これは損ではありませんか。いろいろな論文を見たわけでありますが、本来ならば、日本経済が発展する過程でもっと金を保有する、そういうようなことについて考えるべきではないか、そう思いますが、大蔵省はどうですか。
  73. 大須敏生

    ○大須説明員 お答え申し上げます。  金を対外準備の一環といたしましていわゆる準備資産として非常に重視しているという現実があるということでございます。それは全く先生の御指摘のとおりでございまして、私どももそういう現実は十分心得て対処しているつもりでございます。ただ、国際通貨の中心的な存在として金を今後とも使っていくかどうか、こういう点につきましては、私どもこれは一九六〇年代から長いこと議論しているわけでございますけれども、金につきましては、第一に非常に生産量が限られておるというような問題がある。かつまた一部の国に生産量が非常に極端に偏在しておるという問題がございます。それから現実に金の保有というものが米国あるいはヨーロッパの欧米先進国に極端に偏っておるという問題もございます。それから、ただいま御指摘もございましたように、一月に一オンス八百五十ドルというような高値をつけたり、それが現在五百十数ドルにまで落ちておるとか、価格が投機的な要因によって変動しやすいというような問題もございまして、そこで国際通貨として金が今後とも中心的なものになるかどうかということにつきましては、非常に国際的な合意というものが得られにくいのではないかというような考え方でございまして、先生からも御指摘がございましたように、IMFの現在の協定ではSDRを中心的な準備資産に育てていくという方向がうたわれているわけでございますので、私どもも、そのIMF協定、これは国際的な合意の一つの姿でございますので、これに従いまして運用していきたい、かように考えているわけでございます。
  74. 横山利秋

    横山委員 法制局からおいでを願いましたが、先般当委員会で同僚委員から質問がありました商品取引所法第八条について、長い間それでやってきたけれども、この際一遍検討しなければならぬということをおっしゃっておったわけでありますが、その点はどうなりましたか。
  75. 味村治

    ○味村政府委員 この問題につきましては、その後検討いたしました結果、商品取引所法第八条は指定商品以外の物品を取引する市場類似施設と申しますかそういうものには適用することは困難であろうという結論に達しました。
  76. 横山利秋

    横山委員 適用困難ということは、要するに金の問題について商品取引所法八条を援用して取り締まり処分をすることは困難だ、こういうことでございますね。  それならば一体どうしたらいいのですか。いまの金に関するいろいろなブラックマーケットや諸問題について法律改正を必要とするという結論ではないのですか。
  77. 細川恒

    ○細川説明員 御指摘の点でございますが、商品取引所法の八条と金の悪質取引との関係につきましては、われわれ、このような関係者の契約約款から見ます限り、八条の適用ということは形式的にもなかなかむずかしいものであるということをかねて御答弁申し上げてきたわけでございます。  加えまして、しからば今回八条の解釈を明確化いたしたという時点に立ちましてどのような対策をとるかという御指摘でございますが、いままで私どもがやってまいりました対策、すなわち通産省といたしましては啓蒙普及に努めるということ及び現物の金の流通機構の整備ということの二点を推し進めたいというふうに考えておりまして、今後もその二点を中心にした対策を講じてまいるつもりでございます。
  78. 横山利秋

    横山委員 それは法改正を含むのですか。
  79. 細川恒

    ○細川説明員 その点につきましては、先ほど鉱業課長の方がお答えをいたしたことでございますが、昨年の末に資源エネルギー庁が許可をいたしました社団法人日本金地金流通協会が、先ほども触れておりましたけれども、登録制というもの、協会事業としての登録制でございますが、それをしいておりますので、その効果をまず見たいというのがわれわれの考え方でございます。
  80. 横山利秋

    横山委員 協会としての登録制ということは何ら法律的根拠を持たない。あれは公益法人でございますね。公益法人ではあるけれども、協会独自で行う登録制でありますから、登録をしていなくたって自由に商売ができる。そうですね。どうしてそんな迂遠な方法が効果をもたらすでしょうか。私はよくわからないのです。  流通協会については後で質問いたしますけれども、やにわに資源エネルギー庁かあるいは通産省のお声がかりでおつくりになって、商社筋もあっち向いたりこっち向いたりしてなかなか加入をしない。順次これから加入をしていくかもしれませんがね。一刀両断とは言いませんけれども、もう少し決然たる態度があってしかるべきではありませんか。いわんや、いまここで商品取引所法八条は解釈として金に及ばないということを明言されたからには、そんな迂遠な方法で効果があらわれると思いますか、自信があるなら言ってください。
  81. 細川恒

    ○細川説明員 社団法人金地金流通協会によります登録制は、御指摘のように強制的な措置ではございませんから、その点では限界があることは私ども重々承知をいたしておりますが、社団法人としての協会が登録制をしくことによりまして、社団法人自身が自信を持って推薦のできる店というものを、識別効果といいますか他のものと明らかに区別することができるわけでございますから、そのような意味におきまして、まず法律までいきなり出なくても、その効果があらわれるのをわれわれは期待しておるという実態でございます。
  82. 横山利秋

    横山委員 残念ですが、それでは満足できませんね。そういうことで一体どの程度効果が上がるのか。私はいろいろな法律もつくってみました。たとえばいまのような話は庶民金融業、サラ金でございますね。サラ金のやり方がそれとやや同じようなことであったのですけれども、一向効果が十分にあらわれない。登録している店で売買をしてくれ、そのほかの店は余り信用できませんよということですな。それは余り効果がありませんよ。一歩進めて商品取引所法の改正によるべきだと私は思います。  刑事局長にお伺いしますけれども、金の取引というものは、利息や預かり金の取り締まり法規を援用して少し厳しくする方法はありませんか。
  83. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ねの利息、預かり金の法規とおっしゃいましたのはいわゆる出資法のことであろうかと思いますが、そうなりますと、これは御案内のとおり大蔵省と私どもの共管という形で理解されておるところでございますので、私から申し上げるのは果たして適当かどうかと思いますが、あの法律で言っております出資あるいは預かり金の定義といいますか性格という面からいたしますと、いま問題になっている金の取引というものは直ちには当てはまってこないのではないかと思うわけでございます。  この金の取引をめぐって被害者があるという御指摘があるわけでございますが、そういう被害者、これが犯罪的な要素を持ちます場合おおむね詐欺ということになるわけでございまして、そういう場合には、従来から検察当局といたしましても警察と十分連絡をいたしまして検挙もし処罰もするという体制をとっておるわけでございますが、先ほどの出資法の適用ということは、いまの形では無理じゃないかというふうに考えております。
  84. 横山利秋

    横山委員 各方面の伝える報道によりますと、香港の商品取引所の金市場のオープンが早ければ六月、遅くとも八月から立ち会いが開催されると伝えられております。この問題をオーソドックスに議論いたしますと大変時間がかかりますから、私の心配していることだけを申し上げた方がいいと思うのでありますが、国内市場では先物取引はいかぬ、香港市場ならいい、こういうことになるわけでしょうね。  そうすると、香港市場の代理店を日本へ置いて代理契約をしているところは香港市場とつないで先物取引をやってもよろしい、こういう結果になるのでしょうか。香港における取引所に会員申し込みが二百社殺到しておるとか、香港から日本の商品取引所の幹部に努力をしてもらいたいとか、そういうことが各方面に殺到しておるわけでありますが、香港の金取引所の開設が、いま日本のわれわれが直面しておる問題に、法律上でもあるいは現実の被害者問題でも、どういう結果を及ぼすと予想されていますか。
  85. 細川恒

    ○細川説明員 香港の金の上場ということにつきましては、先ほど御説明がございましたように、本年の夏しかるべき時期から上場されるというふうに私ども理解をいたしておりますが、まず法律的には、現行の私ども所管をいたしております商品取引所法では、御指摘のような点の規制は及ばないものというふうに理解をいたしております。  他方、香港の金の上場に伴いまして、外国の業者がいわばわが国で営業活動を行う場合に、一般的な意味での商品の取引に関心を持つ層に食い入るということによりまして、あるいは現在わが国内で金の悪質取引が行われておる、それと同様な、類似的なことによります被害が出るのではないかという懸念を持つ向きがございますし、私どももそういう観点につきましては重大な関心を持っておるところでございます。
  86. 横山利秋

    横山委員 重大な関心を持っておると言うのなら、重大な対策の説明をするのがあたりまえのことじゃないですか。
  87. 細川恒

    ○細川説明員 先ほど申し上げましたように、金の上場につきましてはまだ未上場でございます。いろいろな懸念なり考えることは可能でございますが、実態がどのような形で動いていくかということにつきましては、今後の推移を十分に見たいと思っております。  なお、外国といいますか香港政庁との間では、そのような懸念を踏まえまして、しかるべき連絡をとっておるところでございます。
  88. 横山利秋

    横山委員 よくわかりませんな。重大な関心を持ち、重大な心配をしておると言いながら、どんなことが起こるだろうか注意しておるということでは、私どもはああそうですか、結構でございますというわけにはまいりませんね。  想像ができる問題は、いま国内では金の先物をやってはいかぬ、しかしながら商品取引所法八条は及ばないとここで明言をなさる。それなら、これは一体どうなるんだね。金の先物は商品取引所法八条は及ばないと言うんだから、国内で勝手にやってもいいということになってしまうのですか。それから、香港の市場とつないで日本で外国人ないしは日本人の商社が代理店契約をして、そして金の先物を香港とつなぐならやってもいいということに現行法制下なるのですか。被害者が出た場合に、国内では警察が駆け回って被害者救済ができるけれども、香港では調査が及ばないからそれはお手上げですわということになるのですか。そういう疑問が続出しているわけですよ。  私の手元にある新聞なんですけれども、商品先物取引国際化対策委員会で検討した外国企業の商品先物取引にかかわる国内での活動について、実質上何らの制約がないことが研究の結果明らかになった。これは膨大なものですけれども結論としては外国企業が商品先物取引でいまの法制下では国内で何をやってもいい、こういうことに結論がなったというので心配をしておるわけですね。あなたのいまの答弁は、私の質問や疑惑や不安や対策に何ら答えておらないということはちょっとおかしいと思うのですが、ここで言えぬことがあるのかね。いま言ったのでは困るからちょっと待ってくれというのかね。何か案があるのかね。
  89. 細川恒

    ○細川説明員 わが国の商品取引業界におきまして国際化問題という形で検討がなされてきたことは、いま御発言ございましたとおりでございます。必ずしも消費者の保護という観点だけかどうかということについてはいろいろ議論があろうかと思いますが、いろいろな角度から検討がなされておることは、事実われわれも承知をいたしておるわけでございます。  なお、香港との関係でございますが、香港政庁に対しまして、わが国の現在の金の悪質取引業者の実態等につきまして、すでに在外公館を通じまして意見交換をいたし、先方に対してそういうわが国の実態というものを踏まえた上で、香港政庁でやれる限りのことを金の上場を前にいたしましてやってもらいたいということをすでに要望いたしておりますし、わが国といたしましては、先ほど申し上げましたように、懸念はわれわれ十分に持っておりますが、上場が行われた暁にどのような実態になるかという実態を踏まえた上で、現実的な対処をいたしたいというふうに考えております。
  90. 横山利秋

    横山委員 ぱっとしませんな。  そこで、私は古くして新しい問題を言うわけでありますが、どうしてもあなたの方は金の取引所を日本でつくることに消極的なんですかね。香港でやっておる、日本では金の取引所ができぬから、いまあなたの方の流通協会でひとつPRしてまじめにやらせるようにするぐらいでは基本的な解決にならぬと思うのでありますが、この際、香港でも事実上そこでやってしまうんだったら日本でも金の取引所をつくったらどうなんですか。これは実需家やあるいは取引所関係者、いろいろな意見の違いはあるだろう。あるだろうけれども、香港ならずとも現実にいろいろなところで金の取引がオーソドックスに行われるとしたならば、日本で金の取引所をきちんとして、直接取引所機構によって、私が冒頭申し上げたように、単に消費者保護の問題ばかりじゃないですよ、金の国際的通貨として事実上復活をしておる現状やら工業用やら、いろいろな総合的施策が一貫してできるように取引所をつくったらどうなんですか。
  91. 細川恒

    ○細川説明員 金の市場といいますか金の取引に対しまして私どもどのように考えているかということを申し上げたいと思います。  まず、いま先生指摘の点でございますが、香港には確かに先物市場という形で近く上場が行われることになっておりますが、御存じのように、アメリカの先物取引を除きますと、世界の金取引の主流はいまだ現物が主であるというふうに私ども理解をしておるところでございます。それに続きまして、わが国の商品取引所法は御存じのように当業者主義をとっておるところでございまして、まずその生産流通に携わる者も含めました意見を十分に徴する必要があると考えております。その点につきましては、一昨年であったと記憶いたしておりますが、関係者が検討いたしました結果、時期尚早であるという結論を出しておるところでございます。  それから御質疑の途中で御発言のございました、八条を改正して商取法の中に取り込むべきではないかという御意見がございましたが、この点につきましては、商品取引所法が商品の価格の形成及び売買その他の取引を公正にするとともに商品の生産及び流通を円滑にすることを目的としておるというところでございまして、いわば現在の経済犯的な行為であります金の悪質取引の取り締まり規定を本法の中に取り込むというのは、商取法の目的からして果たして適当かどうかという慎重な検討をしなければならないというふうに考えております。
  92. 横山利秋

    横山委員 金の問題は、被害者の問題といい国際的な問題といい、まだまだこれから話題や問題は増大するばかりであって、鎮静はしないと私は思うのですよ。いま何回もこの委員会を含めて各委員会で金問題で被害者の問題を中心にして議論をされましたが、いまや被害者の問題だけではなくなっておる。しかも、その被害も国際的になる、こういう心配がされるわけであります。  この際、いろいろ被害の問題の点について整理をいたしますと、たとえば一つのケースとして、投資または財産保全として金地金を買うつもりで業者に支払い代金を渡すときに、現物一キロの資金があれば十キロ程度の金が買えると言葉巧みに延べ取引を売りつけられあるいは買いつけられ、その後相場の値下がりにより損が発生し追い証を請求され、損が増加してきたので取引をやめざるを得なくなった。この場合に追い証を拒否すれば反対売買させられ、差損と手数料を要求される。ケースの二番としては、現物の金地金の取引でないことは了知しつつも、安全な投資として延べ取引の説明を受け参加した後、追い証で損を増加させられる。必ず差損が生じる価格操作により連続的に追い証を受け、取れるだけ取られ、あるいは両建て等商品取引の手口で損害を多くさせられる。取引を終了し、残金、返還金があっても返還を渋られあるいは倒産、不渡り、支払い不能で逃げられる。ケースの第三番目として、保証金、証拠金を預託した途端に連絡がなくなるというまさに詐欺の手口。こういうような被害者となる者は、当初金に関心のある歯医者だとか贈与の脱税手段と考えるような高額所得者を相手としておったのだが、最近は資金余裕のない家庭婦人などのほか、銀行、サラ金などから借り入れさせてまで巻き込ませているという状況になっておるわけであります。  このような被害は、いまここにある人の例証を出そうと思うのでありますが、もう時間がなくなりましたから御紹介するのを避けたいと思うのでありますが、この私の陳情を受けました熊谷ミネという人の記録を読みますと、まことに言語道断といいますか、こういうことが白昼堂々と行われておる、しかも今後もこういうようなやり方が増加するということが容易に想像されるわけであります。  そこで、私はもう一度冒頭に申し上げました立場に立って言うわけでありますが、警察の方もこのごろは非常にこの問題に関心を持たれて、先般の当委員会の記録によりますとかなりの検挙件数を上げておられる。しかし、警察がそういうどろぼうなり詐欺や悪質業者を追い回すだけでは百年河清を待つような感じがしてならぬ。そうなりますと、どうしても金に関する関係機関が総合的に金に関する方針について政府の施策なり関連いたします諸問題について協議機関を持って遺憾なきを期することが必要ではないかと痛感をされるわけであります。それぞれの役所は自分のことだけしかよう言いませんので、法務大臣、ひとつこの点についてあなたの政治力を発揮することはいかがですか。
  93. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 法務省といたしましては、この問題につきましては、主管庁の方針が決まりますればこれに協力してまいりたいと思っております。
  94. 横山利秋

    横山委員 とすると、私の申し上げておる意味において主管庁というのはどこになるのですか。総合的な金について、自分が机と腰かけを用意してコーヒーとケーキを用意してさあ来てください、全般的に一遍相談いたしますという主管庁は一体どこですか。
  95. 山梨晃一

    ○山梨説明員 最初から先生おっしゃっておりますように、金というのはいろいろな側面がございますので、確かに主管庁という解釈が非常にむずかしいところもございますけれども、物としての金という側面からとらえました金というのが一番わかりやすさもございまして、私の方で答えるのが適当かという感じがいたしまして参りましたのですが、何度も同じ回答になるかもしれませんけれども、いままでいろいろな委員会で取り上げられたこの問題について、私ども通産省といたしましては当面二つの対策をとっていきたい。一つはPR、要するに特に金は現物の取引が世界の国際的な通例になっておりますので、一般消費者は現物取引をどこまでもやるようにしていってほしいというPRを今後とも一層強化していきたいというのが第一点であり、第二点といたしまして現物流通の機構を整備していきたい。  この第二点につきましては、先ほども申し上げましたように私どもの方で社団法人を発足させまして、現在までに百九の登録店を認可しまして、この登録店におきましては、先生最初に、いまの流通システムというのは大手の一部の業者の売り一方であるとか買い取りに対してはきわめて消極的であるとか、価格については恣意的に決めているというような御発言がございましたけれども、そういう事実は私どもは聞いておりません。こういう登録店におきましては、売り買いいずれについても責任を持ってやれる業者を業界の方で十分審査しまして登録しているということをさせておりますし、価格につきましても、前日の国際価格、ロンドンとか香港とかといったような国際価格を参考にいたしまして、それから後はそのときの為替相場ですか、円にその相場を直しまして若干手数料を加えて売り買いの価格を決めているということで、毎日の価格というものは大手業者が大手新聞に毎日掲載しているというようなかっこうで、私どももときどきチェックしているわけでございますけれども、恣意的に決めているというようなことも私の方では一応ないものだというふうに考えているわけでございます。  当面そのような二つの対策で臨んでいきたいと考えているわけでございますが、一、二の委員会で私どもの長官等がお答えしておりますが、もしこういう対策で不十分であるという事態がはっきりした段階で、次の対策をとることはまたその段階になってから考えたいというふうに答弁してきているわけでございます。
  96. 横山利秋

    横山委員 法務大臣が主管庁から協力要請があればいかようにでも協力するとおっしゃっておるわけです。  私がいろいろ申し上げたように、それぞれの所管のところでどんなに一生懸命やっておっても、問題はさらに増幅しておる状況にある。しかも香港で金市場がいよいよオープンするという新しい事態になった。金の見直しが国際的にも行われておって、大蔵省の御意見は私とちょっと違うわけでありますが、それでも事実上の国際通貨としての金の見直しが徐々に始まっておるのではないかという点を私は指摘しておるわけであります。  いずれにしても、この際、いまの流通協会に一生懸命やらせるから少し待ってくれというお話は大変遺憾千万だと私は思います。各省がそれぞれもう一回金問題を見直して、主管庁を中心にして国際的なあるいは国内的な各種の金に関する問題について一遍座を設けて討議をされ協議を継続されるように希望をいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  97. 木村武千代

    木村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  98. 木村武千代

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
  99. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 初めにKDD事件についてお伺いします。  午前中法務省の方からお話がありまして、KDD事件につきましては一つの山を越えたという感想を述べておられましたが、第一線で捜査しておられます警察庁の方にお伺いいたしますが、この山を越えたという問題越えたかどうかという問題と、そのKDD事件について一番国民が注目をしている政界工作の実態、いままで会社内部の業務横領それから郵政省との間における贈収賄という点についての公訴の提起があったわけですけれども国民が一番注目している政界関係についての捜査、これはどうなっているのか、この点についてお伺いします。
  100. 漆間英治

    ○漆間説明員 これまで逮捕、勾留中でございました佐藤社長室長が四月二十六日、それから板野元社長が四月二十八日、それぞれ保釈の申請がなされまして、四月三十日にこれが認められて二人とも保釈になりました。  したがいまして、いわゆるKDD事件の重要な内容を知っていると思われる二人が釈放になったわけでございますので、捜査は大筋において終了の方向に向かいつつある。先ほど法務省の方からは山を越したというような御発言があるやに伺いましたが、そういう意味では山場を越して終了の方向に向かいつつあるというように私どもも感じております。  しかしながら、なおこれまでの捜査結果に対する補充捜査であるとかまだ捜査未了の部分がございますので、それに対する捜査は継続しておる段階でございます。  それから、お尋ねの政界工作についてメスが入らないではないかという趣旨の御質問でございますけれども、この点につきましてもたびたび国会でも取り上げられ、それからマスコミ等でもいろいろと報道されたということを重々承知しまして、警視庁といたしましても、この政界に流れた金の中に刑事責任を問うべき事実があるかということで鋭意捜査をいたしたわけでありますが、これはまだ全部捜査を終了しているわけではありませんから確言はできませんけれども、これまでのところ、この政界に流れた金の中で証拠上刑事責任を問うべき事実があったというような報告は受けておりません。
  101. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いま言われました未了部分の問題ですが、これは関税法違反それから業務横領問題についての未了部分を言われるのか、あるいは政界工作について政界との関係における贈収賄問題が問題になるわけですけれども、その関係においてなお捜査すべき点があるということかどうかお伺いします。
  102. 漆間英治

    ○漆間説明員 この席でもたびたびお答え申し上げたかと存じますけれども、この事件に関しましては、五十一年以降いわゆる税務上の交際費と称せられる、五十八億円余に上るというように記憶いたしておりますが、その五十八億円に上る交際費の使途を解明して、その中に刑事責任を問うべき事実があるかどうかということを重点に警視庁はやってまいったわけであります。  その五十八億円の交際費の使途の解明につきましてはほぼ九分どおり進んでおりますけれども、なおまだ残余の部分について未解明の部分がある、そういう意味においてまだ未了の部分があるということを申し上げたわけでありまして、この未解明の部分にかかわりまして今後刑事責任を問うべき事実が出てくれば、それに対しては内容に応じた対処を図っていくことは当然のことでございますけれども、これは今後のことでありますので、全部終わってからでないと申し上げられない、そういうことでございます。
  103. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ということは、この金の流れ、五十八億円の使途についてまだ解明されていない部分が一部ある、それでそれも今後解明していく、そしてまた政界関係に関する違法行為、そうしたものがあるかどうか、これからさらに捜査を進めていくということに伺ってよろしいですか。
  104. 漆間英治

    ○漆間説明員 基本的には御質問のとおりでございますけれども、先ほども冒頭に申し上げましたように、この事件について重要な内容を知っていると思われる二人がすでに釈放になっているわけでありますから、捜査はそれなりにとり得る措置に限界があるというように感じております。したがいまして、どの程度解明できるかという点につきましてははっきり申し上げられないのが残念でございます。
  105. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 昨年の十一月二十六日の衆議院の逓信委員会それからことしの二月十八日の予算委員会で、古池会長兼社長——当時社長ですけれども、彼は、KDDのいわゆる交際費につきまして、この二つをあわせて見ますと、五十一年度から五十二年度、五十三年度それから五十四年度の上期の中身を説明しているわけです。  たとえば五十三年度の交際費につきましては二十二億三千八百万円、そしてその内訳、旅費・交通費が三億七千万円、広告宣伝費が七千万円、それから交際費の中のもう一つ細かい内訳の交際費がさらに一億四千二百万円、その他の雑費、打ち合わせ懇談経費という名目のものが約七億円、そしてさらにその他の雑費というのが九億円、これは各年度ごとにこの内訳で説明しているのですが、この二月十八日の予算委員会のときに、九億余万円に対する内容について質問があって、古池会長は、詳しい資料が捜査当局に押収されているので細かいことは明らかにできないという答えをしているわけです。  警察は資料を押収しておられるわけですから、この中身が、古池会長の国会における発言によれば、その資料を見ればわかるということになるわけですけれども、この各年度の交際費、大きな意味の交際費、そしてまた雑費の九億円、こうしたものの中身については捜査が進んでいるのでしょうか。
  106. 漆間英治

    ○漆間説明員 先ほど冒頭にも申し上げましたように、五十一年四月から五十四年九月までの三年半のKDDの税務上の交際費が総計で五十八億余円、一千四百万円ということですが、その総計五十八億円に上る交際費の使途を解明して、その中に刑事責任を問うべき事実があるかないかということを基本として捜査を進めてまいったわけでありますから、当然その傍らでその五十八億の使途についてそれぞれ解明をしてきているわけであります。  そのほぼ九分通りが終了したというのはそういう意味でございまして、あとまだ残っている分がありますから、全体像としてはまだはっきりいたしませんが、やがてこの五十八億の使途の全容がわかりますれば、大筋につきましては適当な機会に国会にも御報告申し上げたいというふうに考えております。いまのところまだ残余の未解明の部分がございますので、その作業を待ってそのような措置考えたいと考えております。
  107. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうしますと、政界への金の流れとして、いままで商品券代あるいは物品を贈答した、その物品を購入した代金あるいは慶弔費あるいはパーティー券、こうしたものの購入あるいは接待というような問題がいろいろ出てきているわけですけれども、これらの金が政界に流れているということについても解明は進んでいるわけですか。
  108. 漆間英治

    ○漆間説明員 ですから、先ほど申し上げましたように、その五十八億円余のうちのまだ一部を残しておりますので、全容の解明には至っておりませんが、その中にはそういう政界に流れた金も含まれていることは事実でございます。  そういう点も含めまして、その全容の解明に成功いたしますれば、その総額のうちで、どのようなところにどのような金が流れたのかという大筋の御報告は申し上げたいということを先ほど申し上げたわけでございます。
  109. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、政界に対していま言ったようなものについての金の流れというものは、全部ではないにしても、もう九分通り明らかになっておる、政界への流れも大体明らかになっているということですけれども、まだそれらが贈収賄に結びつくかどうか、この点についての結論を出していないというような趣旨に伺うのですけれども、この贈収賄との関係においてまだ結論が出せない、これはどういう判断に基づくのでしょうか。
  110. 漆間英治

    ○漆間説明員 先ほど申し上げましたように、五十八億円余に上る交際費の使途を解明して、その中に刑事責任があるかどうかということで捜査を進めてまいりまして、証拠上刑事責任があると認められる事柄につきましては、それぞれその場その場で適切な対応を図ってきたわけであります。今後もその方針であることは当然であります。  先ほども御答弁申し上げましたように、政界工作に関連をして、これまで警視庁が解明した金の流れの中で証拠上刑事責任を問うべき事実があったという報告は受けておりませんと先ほど申し上げました。もう一回確認いたしておきます。
  111. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、ちょっとくどいようですけれども、私もちょっとぴんとこないのですけれども、結局政界に対する金の流れの中で犯罪に結びつくということについての報告がない。  そうすると、いまの段階ではまだ結びついていないということになるでしょうけれども、その結びつかないというようにいま判断されている根拠というのはわからないわけですか。
  112. 漆間英治

    ○漆間説明員 これは先ほど来申し上げておりますように、全容の解明に成功しているわけではございませんので、現在までの段階ということでありますが、これまでに解明したような例の中で、たとえば一部の政治家にパーティー券が幾らか行っているとか、そういうような事柄について把握していることもあるわけでございますけれども、そのようなパーティー券の性格なりあるいはそれが授受されるに至った経緯なり職務関係なり、そういうものを総合して賄賂性のある金品が政治家に流れたというような事実を証拠上確認するに至らなかったという点で、刑事責任を問うべき事実がなかったというふうに申し上げておるわけでございます。
  113. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いろいろな証拠物がKDDから押収されていて、そして古池会長は、捜査当局にこの資料が押収されているので、政界に渡った金の中身について、その資料がないために国会では答えられないという答弁をしているわけですけれども、そうした押収物というのは、政界に対する贈収賄が成り立たないというふうなことになれば還付されるわけでしょうか。そして、それはいつごろになるわけでしょうか。
  114. 漆間英治

    ○漆間説明員 それは今後の捜査の終了を待ってみませんと、まだちょっと判断できません。
  115. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっと戻りますけれども、服部元郵政大臣の問題が国会でもまた新聞などでも大きな問題として書かれておりましたけれども、この服部郵政大臣に対する金の流れの問題これについてはどういうふうになっているのでしょうか。
  116. 漆間英治

    ○漆間説明員 ただいまの御指摘の問題につきましては、国会等でも質問があり、あるいはまたマスコミ等でもいろいろ報道されたことは重々承知の上で警視庁でも捜査に当たってまいりました。  しかし先ほど申し上げましたように、これまでのところ、証拠上政治家の中で刑事責任を問うべき事実があったと認定するに足る証拠はなかったわけでありますから、そういう意味で、服部大臣に対してどのような容疑があったかというような具体的な事柄については答弁がしにくうございますので、そういう全体的な答弁の中で御理解をいただきたいというふうに存じます。
  117. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 捜査はどうなんですか。一応もう山を越して終結に向かうという感じがわれわれは聞いていて強いわけですけれども、この未了部分の捜査というものは、いままでの日程などからの対比で、これはもういつごろには終わるのだということが一応言えるのではないでしょうか。
  118. 漆間英治

    ○漆間説明員 先ほど述べましたように、五十八億円余に上る交際費のほとんどを解明できておるわけでございますから、あと未了分の捜査には幾らも日はかからないと思います。できるだけ早期に内容を解明して、その中で大筋の金の流れにつきましては国会に適当な機会に御報告申し上げたいというふうに考えている次第でございます。
  119. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 では法務省の方にお伺いします。  警察の捜査法務省もこれに関与しておられるわけですけれども、この最終的な処理というのは実務上どういうふうに扱うことになるわけでしょうか。
  120. 前田宏

    前田(宏)政府委員 このKDD事件は、御案内のとおり警視庁東京地検とが共同してと申しますか緊密な連絡をとりながら捜査を続けてきたところでございます。でございますが、一応主体的には警視庁の方でおやりになって、ある程度まとまったものは検察庁に送られてくる、こういう形をとってきておったわけでございます。したがいまして、従来処理しましたものも、そういう形できておったわけでございます。  いま警察庁の方から御説明がございましたように、若干残っておるということでございますので、その関係で検察庁に送られてくるものがあれば、またそれなりの処理をするということになるわけでございますが、いまもお話のございましたように、また私どもも検察庁を通じて聞いております段階では、現在までのところ御指摘のような問題について具体的な容疑があるということは聞いていないわけでございます。
  121. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 大臣の所見を伺いたいと思うのですけれども、このKDD問題につきまして政治家が発言をしていることが最初からいろいろあるわけです。  たとえば、これは新聞で見たのですけれども、板野元社長が逮捕されたのが予算の成立後であったということは、予算成立を懸念する、総理大臣KDD問題で心配をされた発言があったということ。あるいはKDD事件というのは政界には波及しないんだということを早くから言っていた人もある。それから浜田前代議士、これはこの前出ましたサンデー毎日あるいは毎日新聞などを見ますと、九十人もの与野党議員の罪が問われなかったのは指揮権発動だ、もちろん法務大臣が検事総長に対してどうしろということを言われたことはないわけですけれども。ですから、こうした指揮権発動だというのは、実際上政治的な動きがあってそれでとまったのだ、こういうことを言っているのだろうと思うのですけれども、そういう中で、そしてまた一方国民が政界工作の問題について非常に注目をしている。官界につきましては外国旅行などの便宜を図ったということで一部収賄として起訴されたわけですけれども、それに類するような事実がいろいろ指摘されながら政界には全く及ばなかった。このまま終わるというようなことになれば、これはやはり国民としては非常に納得できないものを感じるのだと思うわけです。  そういう意味で、私は、このKDDの政界工作にかかわる捜査結果というものについては、やはり法務大臣の裁断で国民にわかり得るような発表がなされるべきであるというふうに考えております。そしてまたKDDとしても、国会で金の流れなどについて具体的に明らかにするということをすでに述べているわけですけれども、それが捜査資料が押収されていて具体的な中身が言えないということですから、贈収賄罪が成り立たないという結論を出すならば、それらの資料というものは出して早く返して、そしてまたKDDの方で進んでこの金の流れを明らかにするということが必要であろうと思うわけです。  そういう意味で、このKDD問題に対して、国民にどうしてこういうことになったのかということを法務大臣としては明らかにする必要があると思いますし、また捜査当局が全部細かいことまで発表すれば別ですけれどもKDDがそのことを明らかにするために、捜査の終わった捜査資料というものは早くKDDに返すということをやらなければならないと思うのですけれども、いまの二つの点についての見解を伺いたいと思います。
  122. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この件につきまして、いままでの経過を柴田さんから事務当局にただいま十分御質疑があったわけであります。私はまだ、先ほど事務当局が御報告いたしておりますように終局いたしておりませんので、詳細な報告は受けておらないわけであります。  しかし、あなたのお話の中に一つありました、この事件についていわゆる指揮権の発動というふうなことをしたのではないかというお尋ねがありましたけれども、私は絶対にそういうことを今日までいたしておりませんし、現にまだ捜査中であるといまここで事務当局も申し上げておるとおりでありますので、その経過を待つより仕方ないのであります。  私はかねがね申し上げておりますように、検察当局を十分に信頼をいたしておりますので、本件捜査の推移につきましては十分正当な行動をとるに違いない、こう思って全幅の信頼を置いておりますので、まだ最終報告を受けておりません今日の段階においては、とかくのことを申し上げることを御遠慮いたした方がいいと思っております。
  123. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 このKDDの政界工作、国会はもちろん犯罪捜査をするところではありませんが、やはり政治の腐敗をなくしていくという意味において、政界工作の中身を明らかにしていくということは当然必要でありますので、その時期はともかくといたしまして、捜査結果について公表されること、そしてまたKDDがみずから進んで明らかにするということを言っているわけですから、それができるように捜収資料の還付などについて積極的にやっていただくことを要望しておきたいと思います。以上でKDD関係は終わります。  次に最高裁判所の方にお伺いいたしますが、憲法記念日に当たりまして服部長官が談話を発表されました。この談話の後で新聞記者などの質問にもいろいろ答えて所見を述べられたようでありますが、ここで服部長官は、「適正迅速な裁判の実現に更に努力を重ね、国民の負託にこたえる決意であります。」こうおっしゃっているわけです。  これはもちろん当然のことでありますし、公正で国民の納得のいく裁判、結果においても手続においても公正で適正でなくてはならないし、またその裁判が迅速に行われるということは、公正な結果と公正な手続によって国民の裁判に対する納得を得、信頼を得るための保障でありますし、当然迅速な裁判がなされなければならないと思うわけです。ただ、迅速ということだけが目的になって公正な裁判、公正な手続が無視される、こういうことになってはならないと思うわけです。  そこで、記者の質問に対するお答えの中にあるようですが、裁判の渋滞問題がかつてより非常に改善された、こういうことを述べておられるのですけれども、きょうは刑事局長だけしかいらっしゃいませんので、刑事事件について具体的にはこの渋滞問題の改善ということはどのようになっているか、まずお伺いします。
  124. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 憲法記念日に記者会見の席上で長官が具体的にどのようなお話をなされたかにつきましては、私同席しておりましたわけではございませんので、その詳細は承知しておりませんが、ただいま仰せになられました刑事事件関係について申し上げますと、係属二年を超える長期未済事件は、高裁及び地裁ともに最近では、昭和四十七、八年当時が最もその数が多かったわけでございますが、そのころに比べますと、高裁ではその数が三分の一以下に、また地裁でもほぼ二分の一程度に減少しております。また刑事事件全体の平均審理期間について見ましても、たとえば地裁の刑事通常第一審終局事件の平均審理期間は、昭和四十八年当時に六・六カ月でありましたものが、昭和五十三年には四・七カ月に短縮されております。  長官は、ただいま申し上げましたような実情を踏まえられて、必ずしも満足できる状態とは言えないけれども、かつての時代よりも訴訟の渋滞が改善されてきており、全般的にはいい方向に向かっていると思うというように記者の皆さんに御説明なさったのではないかと考えます。
  125. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 本来、訴訟の遅延をなくするためには裁判官が不足しているので、これを大量に増員しなければならないということが言われておりましたし、これは臨司の意見でもやはりそう言われているわけです。  ところが、裁判官の大量増員という問題はこれは解決ができないので、いままで下級裁判所に対する督励やあるいは訴訟手続の合理化ということが中心になってきたように思うのですけれども、この点、訴訟促進のために最高裁判所がどういうことをいままでやってこられたか概略お伺いします。
  126. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 ただいま仰せのように、結局は訴訟を主宰する裁判官あるいは受訴裁判所が、迅速な裁判というものは裁判の命であるということを十分に自覚して事件についての合理的な工夫を図りつつ訴訟を進める、と同時に、現在の訴訟構造におきましては検察官あるいは弁護人、当事者の協力が不可欠でもございますので、当事者の御理解、納得を得つつ適正なそして迅速な裁判に向けて努力をするということであろうかと思います。  最高裁判所といたしましては、いろいろな会同、協議会等の機会に各地の裁判官のそういった御工夫、御体験などを交換し合って、迅速適正な裁判への目標に向けての相互研さんと申しますか、その機会を設けるなどして努力をしてきておるところでございます。
  127. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 訴訟の促進を至上目的とする、そういうことも間々見るわけで、そういう中で法律や裁判手続の慣行も、われわれから見ればこれが無視されて、当事者の権利が制限されているのじゃないか、権利の行使を不可能にしているのじゃないか、こういうような疑念を持つ事例も現実の裁判では見られるわけです。  たとえば、これは訴追の申し立てをされた東京地裁八王子支部での公選法違反の裁判を見てみますと、この訴追申立書の中に書いてあるのを幾つか見てみますと、いろいろあるわけです。たとえば被告人、弁護人のいないところで証拠調べとしての証人尋問調書を朗読したというようなこと、あるいは期日の変更申請を正規の疎明をつけて出しているのにこれを却下して証拠調べを行ったとか、あるいは被告人を退廷させて証拠調べ決定をしたとか、あるいは被告人、弁護人不在のままで検察官の証人調べを行ったとか、そうしたやり方。  それから今度は訴訟手続の問題でも、たとえば裁判官が交代して弁論手続を更新するわけですけれども、その更新手続の前に準備手続を行っているとか、あるいはその更新手続の中で公訴事実に対する意見を述べる意見陳述の時間を制限するとか、異議申し立てをすると退廷命令が出て申し立てができなかった、あるいは異議申し立ては許されたけれども理由を述べることが許されなかった、それから期日の指定なんかで、弁護人がほかの法廷があって出頭できないということをすでに話をして、これがわかっているのに期日の指定をした。これは評価はちょっと抜きますけれども。それから弁護人の都合を聞かないで何回も期日指定を行ったとか、それから弁護側の立証計画と相反して被告人質問を命令するとか、そして結局弁護側の反証が許されなかったとか、あるいは忌避申し立て、そういうことで忌避申し立てになったりするわけですけれども、その申し立て理由の陳述の時間を五分間に制限するとか、訴追の申立書以外にも、その後の公判では最終弁論を一人五分間に制限する命令をするとか、こういうふうにして訴訟の方は非常に積極的に進行しているけれども、実際上の裁判としてやれないようなそういうやり方、こういうことがこの訴追申立書からもうかがわれるわけですけれども、そういう訴訟の進行、これは訴訟指揮に属することですけれども、そういう訴訟指揮をやる裁判所があるということは御存じですか。
  128. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 ただいま八王子支部の事件ということで特定して仰せになりましたが、私どもとしては、その事件があり訴訟進行の過程で紛議があったということは承知しております。
  129. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それからもう一つ、やはりこれは公職選挙法違反事件東京地裁事件ですけれども、訴訟促進には非常になるわけでしょうけれども、やられた事例を見てみますと、検察官が同意をされた証拠書類を弁護人が朗読するわけですけれども、たくさんの資料たとえば国会の議事録などがあって相当の時間がかかるという場合に、弁護人の朗読時間を十五分に制限して、そして十五分が過ぎるとこれで要旨の告知は終わったものとみなす、こういうことがある。そしてそれに対して異議の申し立てをすると、今度はその証拠決定を取り消す、こういうことがある。それから、証人が呼び出しを受けた日に出れない事情があって出れないということを言うと、その次のときは直ちに勾引をする。そして弁護人の立証計画と別に被告人本人尋問をやって、そして留保中の証人や証拠を却下する。検察官には事前に連絡しておいて論告の準備をさせる、そして弁護人もその次に弁論をやれと。それから弁護人が証拠調べを請求すると、請求自体を許可しないということをやっております。そして弁論準備、弁護人が予定していない日に言われるので、その先の期日にやってくれということを言っても、それは許されないで、しかも弁論時間も一人二十分に制限される、そして十五分たつとあと五分でまとめろと。弁護人は一時間ぐらいの弁論を予定していたようですから、それじゃまとまらない、途中で弁論が打ち切られる、そういうことがあるわけですけれども、こういうことがあった裁判事例は知っておられますか。
  130. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 東京地裁本庁の事件ということでございますが、その詳細については承知しておりますぜん。
  131. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これもいろいろ問題があった事件であるわけですけれども、こうした事例を見てみますと、訴訟促進それ自体が自己目的になっているように見られます。特に二つとも公選法の戸別訪問の問題で、下級裁判所がすでに憲法違反だという判断をしている憲法上の論議のある事件であって、その合憲か違憲かというような判断をしなければならない、そういう事件でもあるわけです。  最高裁判所は、いままで訴訟の渋滞もあって、それでいろいろな機会に訴訟促進ということを強調されてきたわけですけれども、そしてまた、そういう中で、多くの事件は期日の問題で協力をするとかこういうことで、刑事事件においては弁護人などもいろいろ協力してきているわけですけれども、そういう中で、弁護人から見ても、公正な裁判を進める上においてはのんべんだらりと裁判をやってはいけないし、迅速な裁判が望ましいし、そして真相の把握がちゃんとできるような十分な審理がされて、そして迅速な裁判が進められるということをみんな望むわけです。そういう中で裁判所が迅速自体を目的化してきますと、これは正しい裁判に結びつかないわけで、それ自体国民を納得させるような裁判にはならない。司法の権威ということも落ちてしまうということになるわけです。  要は、公正な裁判、真相をしっかりと見きわめて、正しい結論に到達していく。そういう中でも、やはり手続的にも法律に従い、また法律のないところは当事者の協議あるいは慣行というものを尊重して進めていく。そういう中で迅速でなければならないわけですけれども、迅速化ということを余り一方的に強調しますと、場合によっては裁判所自体がそれこそ迅速自体を至上目的にして、適正な裁判あるいは裁判手続というものを無視していく、こういう事例として私は二つの事例を挙げたわけです。現在の段階においては訴訟の遅延問題も改善されてきているということをいま具体的にお聞きしたわけですけれども、こういう段階において迅速ということは、迅速自体を至上目的としちゃいけない、そして裁判の権威を高める、そういうことが裁判所の問題として強調さるべきではないか。迅速が至上目的になっちゃいけない。どこまでもやはり適正な裁判、適正な手続ということでなくちゃならない。現在の段階は、——特にもう迅速ということを言わなくてもいいんじゃないか、それくらいみんなで協力して進んでいる、こういうふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  132. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 裁判のあるべき姿について御高見を拝聴いたしましたが、やはり適正と迅速、この二つがともに裁判の目標として大切なものであるということは仰せのとおりであると思います。迅速だけが自己目的化するというようなことはとるべきでないというふうに存じます。長官の談話の中にも適正迅速な裁判の実現ということでございますので、私どもとしては適正かつ迅速ということを常に念頭に置いて裁判を進めていかなければならないというふうに思います。
  133. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その適正迅速ということは当然ですけれども、迅速だけを中心にしてしまって適正さが忘れられるような訴訟の進行が裁判官によって行われるということを憂えて、特に迅速を自己目的化することのないような配慮をお願いしたいと思うわけです。  それから裁判の公開の問題ですけれども、これは言うまでもなく憲法八十二条で公開裁判の原則がうたわれているわけです。公開というためには、やはり国民が傍聴できるということがありますし、あるいは傍聴した国民が必要なものを自分で忘れないようにメモをとるというようなこともまた必要になってくると思うわけです。  さきの八王子支部の裁判官の場合、この法廷の問題で、この裁判官になられる前は三十一回の法廷が続いて傍聴席が六十四あるところであったわけです。そしてその法廷には毎回二十名から四十名ぐらいの傍聴人が普通来ていたということです。ところが裁判官がかわって今度は傍聴席が十六しかない小さい法廷に変更される。そうすると、二十人から四十人ぐらい傍聴人が来る事件ですから傍聴席に入れないという問題が起きますし、訴追申立書によりますと、この法廷が変わったのは一応裁判官会議で開廷日が決められるという関係もあったようですけれども、そういう傍聴人が十六人の傍聴席しかなくてせっかく裁判所に来ても入れないというような事態をなくするために、大きな法廷を使用するということも裁判所の中では可能であろうと思うわけです。この事件で、法廷が変わってそして傍聴人が入れなくなったというようなこの事実は知っておられますか。
  134. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 使用法廷につきまして、従来傍聴席の数が約六十であった法廷から、これは合議法廷として使われておる法廷のようでございますが、傍聴席の数が十六である単独法廷に変更されたというように承知しております。
  135. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この問題は後で意見を申し上げます。  もう一つ、法廷におけるメモを禁止するという問題ですが、幾つか新聞でも拝見いたしました。裁判が公開される場合に傍聴する人がメモをとるということは、これは自然であろうと思うわけです。せっかく裁判所まで来たわけですから、裁判の実態をしっかりと見たい、そして記憶にも残したい、今後のあるいは勉強のためにメモをとりたいという気持ちはあると思うわけです。まして新聞記者の皆さんは報道することが任務ですから、このメモをとるということは当然だと思うわけです。  そういう意味から見まして、メモをとるというのは、新聞記者の皆さんはもちろん傍聴人自体においてもやはりやりたいと思われることだと思うのですけれども、このメモをとることを禁止する理由はどういう場合にあるのでしょうか。
  136. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 傍聴人のメモの関係でございますが、現在の実務の体制といたしましては、一般の傍聴人のメモにつきましては原則として禁止する、例外的に、特別の必要性が認められしかも弊害もないという場合に限って許可をするという運用であると思います。  この関係で若干詳しく申し述べたいと思いますが、憲法の八十二条一項は裁判の公開を保障しておるわけでございますが、ここにいう公開とは、公判期日における手続について一般の傍聴を許すということでございまして、それ以上のものではない。したがいまして、メモをとることが当然に傍聴人の権利であるとまでは考えることはできないと存じます。  したがいまして、法廷における傍聴人のメモをどう取り扱うかということにつきましては、裁判所の裁量つまり法廷警察権に任されているというふうに見るべきであると存じますが、ただいま御質問の、傍聴人にそれではメモを許した場合にどのような弊害があるかという点についてでございます。  第一に、傍聴席でメモをとっておりますと、証人等は何の目的でメモをとるのかと不安を覚えるなど心理的な影響を受けて自由には証言できなくなるおそれがあろう。ことに、メモが法廷外で証人批判等の目的で使用されることが予想されるような場合には、そのおそれは非常に現実的なものになろうかと存じます。実体的真実の発見、先ほど適正な裁判と仰せられましたが、そういう観点からも好ましくないことは言うまでもございません。また、傍聴人が法廷外で被告人、証人等の名誉棄損あるいは証人威迫などの目的で傍聴の結果を悪用するおそれがあるということはこれは一概に否定できないものでございますが、メモを許可することはこのような悪用をさらに助長することになりはしないかというふうなことがメモを許した場合の弊害として考えられると思います。  また、メモの必要性という見地から見ますと、傍聴人がメモを必要とするという理由は一般的には乏しいのではないかというように考えられます。また、裁判の手続について詳細に知りたいという必要がある場合には、事件確定後は何人に対しても刑訴法五十三条によりまして訴訟記録の閲覧が認められておりますので、その手続を利用していただけば足りるのではないかと存じます。  これは一般に傍聴人のメモについて申し上げたわけでございますけれども、この考え方は報道機関についても、一般的な理論としては報道機関も傍聴人であることに変わりがないわけで、その意味ではメモ禁止の規制に服することになろうかと思いますけれども、実際の問題としては、報道の公共性、報道機関が悪用する危険はないということを考慮いたしまして、裁判所におきましては、事前にかつ包括的にメモを許可するというのが一般的な運用であるというように存じます。
  137. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっと私は考え方がやはり逆立ちしていると思うのです。  報道機関の場合は許可をしても問題ないということで、許可をしているということですけれども、一般の人の場合もそのメモをとることによって悪用をするというような人間というのはやはり例外であるわけで、一般の人たちはやはり裁判を傍聴に来たらしっかりと見ていこう、そしてまた自分のその裁判についての記憶も正しくしっかりしたものにしようということで、メモをとりたいと思うのが普通であろうと思うわけです。それから、証人がメモによって証言をしにくいというようなことを言われるわけですけれども、たとえば報道機関の人たちはそういう場合でもメモをとられるわけで、そんなことはちょっと考えられないわけです。メモをとったから、とらなかったからによって証言が左右されるというのは、それは特殊な例外であって、特殊な例外の場合に禁止するということはあっても、やはり一般の人はメモをとることができて、そしてとって悪用するおそれがある、そういう場合にのみ禁止をする、そっちの方が例外にならなければならないというふうに思うわけです。  局長はいろいろ詳しく言われましたけれども、どうもそれらの理由というのは、実際の一般の裁判の場合において納得のできない理由であると思うわけです。そこで、公開の裁判ということを書いてあるだけでメモのことまで書いてない、そこまで含まれないというような理解まで言われましたけれども、実際上裁判を公開して一般の人たちが裁判を傍聴できるということは、その審理の妨害をしない、そして悪い影響を与えない、そういう場合においては当然メモをとってもしかるべきだというように思うわけです。一般の国民と遊離した考え方ではないかというように私は思います。  そういう意味で、先ほど言いましたこの法廷の問題にしても、実際上四十人ぐらいの人たちが来て十六名の法廷では入れないというような場合においては、できるだけ傍聴に来た人を——傍聴人が審理の妨害をするというような場合はもちろん別ですけれども、先ほど挙げました事例においては、いままで傍聴人が審理を妨害したというような事実もなかった。そういう中で傍聴人が実際上締め出されるような法廷に変更するというような問題にしても、それからメモをとるというような、これも特殊例外の場合はあっても、一般的には裁判の進行に妨害のあることはないというような場合において、これらは当然認めるべきではないかというように考えますし、そういう意味におきまして、傍聴人がある場合はその傍聴人をできるだけ法廷に吸収するというようなために法廷の使用の問題、あるいはメモの問題について、いままでの裁判所考え方、こうした問題について、やはり私は根本的に考え直さなくちゃならない。  そういう意味で、何が国民のための裁判所かということを念頭に置かれて、法廷の使用の問題も、あるいはメモを許可するかしないかの問題にしても訴訟指揮権の問題になっているわけですけれども、この訴訟指揮権が悪用されて、裁判所国民のための裁判所にならないというふうな事態考えてみました場合に、この傍聴人を吸収するための法廷の使用の問題あるいはメモを一律に禁止するというような考え方、そうした問題は考え方を改めてやはり立法上の解決、こういうことを図るべきであるというように考えておりますが、御意見をお伺いします。
  138. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 メモの問題と使用法廷の問題、二つの問題でございますが、使用法廷につきましては、御案内のとおり毎司法年度の当初においてあらかじめ開廷日あるいは使用法廷を裁判官会議において決めるということになっておりまして、それを尊重しつつ各裁判所において使用すべき法廷を訴訟指揮権に基づいて決めていく、こういう運用になっておりますので、これはちょっと立法にはなじまないのではないかというように思います。  また、メモの関係につきましては、先ほど実務の大体の状況はこうであるというふうに御説明を申し上げました。また、報道機関に対する関係でのメモについては事前に包括的に許可をして運用し、報道の自由といいますか取材の自由といいますか、これを尊重する立場で従来裁判所は進めてまいりましたし、今後もそのような考え方でおりますので、これまた法あるいは最高裁規則でメモについて特に条項を設けるというようなことは現段階においては適当でないのではないか。ことに立法の問題につきましては最高裁としてちょっと立場がやや違うかと思いますので、一般的な考え方としてはただいま申し上げたような考え方でございます。
  139. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 非常にかたくなな考え方だと思うのですが、これはやはり公開の裁判ということで国民が裁判の実態を知って、そして国民の親しみの持てる裁判所でなくちゃならないということも含まれていると思うのですが、そういうものに対して、入れてもいい傍聴人を入れないとか、あるいはメモをとって実際上何も悪くないのにこれが一律に禁止されるとか、そういうことではますます国民と遊離していく裁判所になっていくというように考えますし、過去の私の経験から考えてみましても、傍聴人が多いときはあいているときは大きな法廷に移してもらうとか、いろいろなことでやってきておりましたし、そしてまたメモの問題についても、私が弁護士をやっていたころなんか、そんなことで問題が起きるというようなことは実際上なかった。  それが最近になってそういう問題が起きてくるということを考えてみました場合に、裁判所の発言はいま言われたとおりですけれども、やはりこういうような問題について裁判所としても、立法の問題法律改正ということになればこれは国会の問題になるわけですけれども、やはり規則も立法の中の一つになるわけですし、そういうことについていま国民裁判所に対する期待が高まっている。これは長官の談話にもあるわけですけれども、そういう中で、さらにそうした国民と乖離するような考え方をなくしていく、そのための裁判所としての努力をしなければならないということを要望して終わりたいと思います。
  140. 木村武千代

    木村委員長 次回は、明後九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十分散会