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貞家政府委員 夫婦
財産制をいかにするかという問題につきましても、
法制審議会でもまたその他の
研究者あるいは
一般の方々の間からも非常に
議論がされた点でございます。
共有制ということが、漠然と
考えますと非常に
実態に即しているというふうに
考えられますところから、これを支持する、これを実現させたいというような
意見が非常に多いわけでございますが、ただ法制的にこれを
検討いたしますと、共有制それから別産制、非常に一長一短でございまして、共有制は確かに婚姻の
実態に合っているという点は大きなメリットでありますし、またそれによって妻の
財産的な地位がより高くなるというような点があるわけでございますが、法制的に見ますと、対第三者の
関係それから債務の負担の
関係、非常にいろいろ問題がありまして、これを解決するのは法技術的な問題が非常にいろいろ生じてくるわけでございます。一方、別産制は第三者との間において
法律関係がきわめて簡明でありまして、単純明快と申しますかそういうような利点を持っているわけでございます。
そこで、諸外国の例もこれはしさいに
検討いたしたわけでございますけれ
ども、非常に多くの条文を必要とするようでございます。それだけの手当てをしませんと、これが
一般第三者との
関係で非常に問題を起こすということだろうと思うのでございますが、そういった点もございます。
それで、一方
わが国におきまして夫婦
財産契約というようなもの、これは現実に可能でございますけれ
ども、
財産契約の件数というのは明治三十一年以来きわめて少ない、微々たるものでございます。
そういった状況も
考えざるを得ないと思うのでありますけれ
ども、今回は、夫婦
財産制について非常に複雑煩瑣な組み立てを新たにつくるよりは、むしろ
配偶者の
相続分の引き上げという
方法あるいは
寄与分の新設という端的な
方法によって実質的な
配偶者の地位の改善を図った方がより実際的であろう。たとえばドイツなどの例によりましても、これは複雑な夫婦
財産制をつくっておりますけれ
ども、
相続の際にはその清算にかえて
相続分を修正するというような仕組みをとっているわけでございまして、やはり簡単な
制度の方が利用しやすいという点もございますので、今回はそれに手をつけることなくして、端的に先ほど申し上げましたような
方法によって改善を図ろうということにいたしたわけでございます。もちろん、この問題は夫婦間の婚姻の問題並びに
相続の問題にも影響する基本的な問題でございますから、十分将来におきましてもこれを
研究していきたいというふうに
考えております。