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栗田委員 つまり市役所などの窓口では妻が世帯主として届ければ認められているということですね。ところが、実際には職場ではそうなっていないという例がたくさん出ておりまして、しかも年を経るごとに最近は女性を世帯主と考えるまた主な家計
維持者と考えるということにむしろ以前より抵抗が出てきている
傾向があるわけです。
たとえば静岡県の清水市役所の例なんですけれども、夫が年間七十万くらいしか所得がなくて、本人だけが
国民健康保険に加入していたそうです。妻は夫よりはるかに所得が多かったので、
子供二人を社会保険の扶養家族としていたそうでございます。ところが、最近夫の収入が多少ふえて年間百四十万ぐらいになったのだけれども、まだ妻の方がはるかに多い。そして、いままでも妻が
子供を扶養家族にしていたのでそのままにしていたら、だんなさんの収入も多少ふえたのだから、
子供一人でも国保の扶養家族に分けてそっちへ入れろということでしきりに言われているというような例がありまして、これなどは、いままでそうしているのだし、いまでも生計の中心は自分なのだからそのままでいいじゃないかと言っても大変抵抗が多いということで、
子供二人を扶養家族にしているということに必死になっている、こういう
状態が出てきております。
それから、公務員である妻、夫が民間会社にいるという例ですけれども、やはり妻の方が非常に給与が多い。毎年
子供を扶養家族にしたいと申し出ているのですけれども、数年間拒否され続けてきたという例があります。やっと最近認められたけれども、その認めるためには民生
委員が所得その他の
調査に入ったという例がありまして、これはもう妻が世帯主であるという申告をするとかしないとかという簡単な問題ではなくて、いろいろな
調査をされ、抵抗の中でやっと認められたという例も出ているわけです。
それから、これは静岡銀行の例なんですけれども、御主人が職場をやめて失業をしまして、奥さんが家族手当の申請をしたわけです。ところがだめだというわけです。それでその奥さんは、だめならそのだめだということを
文書でよこしてほしいということを言いましたところが、それを支店長が人事部部次長に請求したというその
文書があります。こういう
文書でございます。
「甲賀ひろ子より家手申請の件 人事部部次長どの 五十二年八月三十日 島田東支店長」の名前で出ているのですが、「甲賀邦夫退職により(甲賀ひろ子申請によれば失業中)健保被扶養者及扶養家族移動届によりそれぞれの申請がありました。
結論的には、当行
規定ではいずれも許可
対象にならないことは了解しましたが、その却下
理由を
文書にてほしいとの申入れあり、一応申請書をお送りします。」こういう
文書が出されました。
ところが、その人事部部次長はこんなものを
文書で答えるわけにいかぬというので返してよこして、返してよこした
文書がそのまま甲賀ひろ子さんのところに来たということで手に入ったのですけれども、これなどは、夫が失業中ですから全く収入がないわけです。奥さんは銀行に働いていてかなりの安定した収入を持っているから、
子供を健康保険の被扶養者にしたい、それから扶養家族の移動届を出したい、夫から妻へ移動したいということを申請したけれどもなかなかだめで、却下されたという例でございます。これは後でさんざんもめたあげくにやっと扶養家族を認められたということですけれども、こういう実態があるわけでございますね。
それから、はっきりと世帯主という名前で妻が
権利を行使することを阻まれている例がございます。これは第一勧業銀行の例なんですけれども「厚生
対策について」という中で「住宅資金貸付
制度制度の
内容(1)借入資格」として「原則としてつぎの要件をみたす世帯主が
対象となります。」はっきり書かれております。この「要件をみたす」という要件というのは「従業員財形預金に加入していること。」とか「他に本人名義の土地・
建物を所有していないこと。」とか「勤続三年以上」であることというのが要件でありまして、つまりこの世帯主の考え方というのは、完全に男性に限られているわけですね。
これはなぜかといいますと、数年前にこれが
改正されて世帯主という言葉が入ったそうですけれども、これを入れておかないと女でも住宅資金を貸し付けてほしいと言ってきてもめてしょうがないから、だから世帯主という言葉を入れたのだ、こう言ってこれを入れているそうです。
そうなりますと、さっき自治省がお答えになった考え方とはかなりずれていて、女性はもう世帯主ではあり得ない、夫が失業中であろうとも世帯主ではあり得ない。それから住宅資金の貸し付けなどは世帯主が
対象となりますといった場合にはもう男性に限る、こういうふうになっております。実際には
運用の面では非常にこの世帯主という言葉は狭く使われて、しかも働く女性がさまざまな
権利を行使したり、経済的な
制度を活用するというときに障害になっていると思うのですけれども、この例について銀行局の
関係の方、どうお考えになるかちょっと伺いたいと思います。