○横山
委員 大変同感だと私は思います。
ところが、最近における法の支配というものが国家権力の維持——法を運用するものは
政府であり、
政府即法の支配、そしてそれは即国家権力の維持というふうにともすれば
考えられがちなことだと思うのであります。あなたがおっしゃいますように、
国民の基本的権利を守り、社会主義を達成するための法の支配という理念が常に確立されなければならぬと私は思うのであります。
ここに、初代の三淵
長官の就任直後の
国民へのあいさつの中に「
裁判所は
国民の権利を擁護し、防衛し、正義と衡平とを実現するところであって、封建時代のように、圧制
政府の手先になって、
国民を弾圧・迫害するところではない」「民主的憲法の下にあっては、
国民が真に
国民の
裁判所として信頼されるようにならねば
裁判所の使命は達成できない」また「
国民が信用・信頼する
裁判所にするには、
裁判所自らが良い
裁判所、良い
裁判を為さねばならない」こういう新憲法下の
裁判所の使命と役割りを強調されておるのでありまして、私はまことに同感だと思うのであります。
服部
長官は「法の支配の実現を使命とする
裁判所の役割」と単に言われておるのでありますが、こいねがわくは、いま
事務総長から恐らくそういう
趣旨だと敷衍されたように、社会正義、
国民の基本的権利というものが
裁判所の法の支配の真の目的であるという点が、百尺竿頭一歩を進めてこの新年のあいさつの中に高く表示をされていただきたかったということを私は感ずるわけであります。
なぜそういうことを言うかというと、歴代の
長官のごあいさつをずっと目を通すわけでありますが、一番顕著なものは田中耕太郎氏の
最高裁長官の就任のときのあいさつであります。この時代は朝鮮戦争があったというバックグランドがあるわけでありまして、松川
事件、三鷹
事件の労働
裁判等いろいろな問題が発生をしておった時期であります。「法の威信を蹂躙し司法の権威を傷つけるものであるから、
裁判官は法廷の秩序維持に全力を注げ」 「従来の如き訴訟指揮では訴訟促進は達成されない。第一審を強化して上訴権の乱用を防止するために、
裁判所全体が自己本位の
考え方を捨てて
裁判の充実強化に当れ」等々、全くタカ派の
裁判所長官の
立場を遺憾なく発揮されておるわけであり、いみじくも、松川
事件がどうなったかあるいは三鷹
事件がどうなったかということと相呼応して反省いたしますときに、この田中
長官のタカ派的意識というものがどういう結果をもたらしたかということがいま
考えあわせられるべきだと私は
考えざるを得ないわけであります。
そこで、あなたは遠慮しいしい、立法府に対しての注文やそういう
意味で言っているのではない、部内の
裁判官に対する訓示なんだ、こうおっしゃいましたけれ
ども、それでは、このように社会的紛争が多岐にわたる、国際紛争、国際的規模の犯罪が発生する、したがって既存の
法律知識や運用に対する技術の研究を深めるだけでは足りないぞ、新しい時代に適切に対処するための不断の研さんを怠るな、こういうことはまことにごもっともではございますが、いま
裁判所の機能なり
裁判官の切磋琢磨の実態というものは、これに即応して行われておるかどうか。その点について、私はきわめて不安に感じておるわけであります。
裁判官はそれぞれ独立した
立場にある。それをもう一遍教育するとか、ただ言葉でこうしなければいかぬぞと言っておるだけで、一体本当にいいのであろうか。もちろん私の望むところは、こんなタカ派的な、後へ戻れと言っているわけではありません。弁護人抜き
裁判はもっともだから、おまえらみんな賛成しろというような後ろ向きのことで言っているわけではありません。この二つの
指摘に即応する
裁判所、
司法行政内部における、教養を高め切磋琢磨していくという具体的な
やり方が実際に行われているかどうか、そういう点に不安を感ずるのでありますが、いかがでございますか。