○木島
委員 私は、日本社会党を代表して、本安に対し反対の
討論をいたします。
今回の
直轄移管について、その理由としては
文部省は二つのことを言っているかと思います。
その
一つは、
行政改革であり、
一つは、
社会教育に対する国民の要求が
変化をし、情勢が
変化をしていることに即応するためだというのが今回の提案の理由であろうと思います。
その第一の
行政改革というのは、先ほどからお話がございますように
簡素化、効率化がなされるか否か。
簡素化の中にはもちろん費用の
節減がありますけれ
ども、そしていままでの御
答弁では、たとえば
役員の報酬だけでも五、六千万円違うというお話がある。まさに五、六千万円も大変大きな金でありましょうけれ
ども、一方においてはたとえば収入もまた減のものもある。このために支出をしなければならなかったものも、すでにそのために使っておる金もあるということを考えれば、果たして
経費の
節減であるか否かということも大変に疑問であります。ただ、
役員の報酬が五、六千万円浮くからそれだけでもって、それで
経費の
節約だというようにはならないことはもう言わなくたってわかっていることであります。同時に、
行政改革、
簡素化というのは
法人の数が少なくなって——
法人が多い多いと今日問題になっておりますけれ
ども、しからば、それらをすべて各省の
直轄にしたならばそれで
行政が
簡素化され、行革ができるかということになると、そうはならないと思う。むしろ逆に中央の権限を地方に移譲し分散していくときに、あるいは民間なら民間に権限等をあわせて持っていくというものがなければならないだろう。
簡素化という中にはそういうものがあるんだろう。逆にそれを上から下にだんだんと権限と機構というものをおろしながら
簡素化していく。これが筋だと思う。ところが、逆に現在あるところの
特殊法人を各省に持ち上げていくということになれば、これは実質的な
中身の上では
簡素化と逆行するものだと私は思うのです。そして住民が求めるそのニーズに対するサービスというものがより効率的でなければならないということでありましょう。その場合、しからば
社会教育の
施設というものを
文部省の
直轄にするということが住民サービスをより高めるか否かに問題があると思うのであります。それが皆さんが今回提案されておるところの第二の理由である
社会教育の社会的な
変化に応ずるところのことが、今回
直轄にすることがいいんだということと絡んでまいります。
先ほど関連
質問で申しましたように、このことは経緯から見て明らかに
行政改革から押しつけられた。
文部省はそれをどう避けるか長年にわたって努力をされてきたところであります。だのに、今回押しつけられて、先ほど申したとおり痛めつけられて、無理やりに押し込められて、その犠牲になっておる
文部省が、この方がいいんだ、いいんだなんて勝手な理屈を言っておるけれ
ども、それは後からつけた、まさに今回の行為の
合理化理論でしかないと思うのです。
たとえばいろいろな事業のことをおっしゃいました。先ほどの
栗田さんの
質問でも、なかなかわからぬで
判断に困るとおっしゃったけれ
ども、そうなんです。あたりまえなんです。多少とも
社会教育の本質を知っておるならば、そんな具体的なことを明確に出せるわけはない。たとえば
青少年の指導者を養成するというそういうことが
一つあった。しかし、そんなものはこれを
直轄にされなくたってやろうとするならばやれる。いまの
社会教育局の中でもってやろうとすればやれるのであって、その場所をどこにするかだけである。その仕事をこの
直轄にしたところの
センターにさせるか。元来そのことを業務とするところの
社会教育局がやればいいことであって、無理した理屈である。
私は、そのようなことをあえていい、いいと言っておることは、
愛知当時の
文部大臣が、もう繰り返しませんけれ
ども、
社会教育というものは自主的、自発的がいいと言ったことが統制をする道につながらないのか。文教
委員会はよく与野党の間においてのイデオロギーのときには不毛の論争のみが続いておると言われてきたところの
委員会でありますけれ
ども、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それは世間から言われておるが、しかし、それは一体何かということを突き詰めれば、集約すれば、学校教育におけるところの、
教育基本法第十条におけるところの不当の支配か否かということが
中心の問題であったと思う。そういう統制か否か——統制だと私は言っているのじゃありませんよ。否かどうかが、まさに世間からは文教
委員会というものはその論争の場所であった、イデオロギーの論争の場であったと言われた。とするなら、もし元来
社会教育というものは自発的、自主的なものであるとするならば、それを
直轄にするのがいいんだと考えるところに、学校教育に続いて
社会教育が、
直轄することによって統制をし、そして
基本法十条に言うところの不当の支配につながるその幕あけであるのではないか、それをいいと言うならば。だから私は先ほど関連
質問でもって、そこは明確にしろと言ったゆえんであります。これが第二点であります。
そして、先ほどお話がございますように、ここに勤めておるところの職員の待遇は低下します。本俸だけでも平均して一二%下がる。言うなれば、
行政改革にならない措置、ただ
文部省の
特殊法人を
一つ減らすというその形だけでもって労働者が犠牲になる、そしていままで利用されたところの先ほどの婦人教育会館の例のごとくなお制約を受けてくる、そういういろいろなことを考えますときに、われわれはこの
法案に対してはどうしても賛成することはできません。われわれは行革に賛成しないわけではない。けれ
ども、逆に
社会教育というものを危険な道に追い込むその
出発である危険を私は特に心配するがゆえにこの
法案に対し反対をするものであります。
以上をもって
討論を終わります。(拍手)