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1980-04-08 第91回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 井上 普方君    理事 関谷 勝嗣君 理事 野田  毅君    理事 渡辺 秀央君 理事 金子 みつ君    理事 松浦 利尚君 理事 中川 嘉美君    理事 岩佐 恵美君 理事 中野 寛成君       小澤  潔君    亀井 善之君       岸田 文武君    工藤  巖君       牧野 隆守君    小野 信一君       武部  文君    長田 武士君       宮地 正介君    藤原ひろ子君       塩田  晋君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 劒持 浩裕君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  佐野 国臣君         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       芝田  博君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 細川  恒君         特別委員会第二         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 四月一日  公共料金値上げ中止に関する請願高沢寅男  君紹介)(第三一八三号)  同(渡辺貢紹介)(第三二五九号)  家庭用灯油安定供給及びインフレ狂乱物価の  未然防止に関する請願渡辺貢紹介)(第三  二五八号) 四月三日  物価高騰反対等に関する請願藤原ひろ子君紹  介)(第三二七七号)  公共料金及び物価値上げ反対に関する請願(渡  辺貢紹介)(第三四〇八号)  同(中路雅弘紹介)(第三四〇九号)  物価値上げ抑制等に関する請願野坂浩賢君紹  介)(第三四一〇号) 四月七日  公共料金値上げ抑制に関する請願井出一太  郎君紹介)(第三五二三号)  同(小沢貞孝紹介)(第三五二四号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三五二五号)  同(倉石忠雄紹介)(第三五二六号)  同(小坂善太郎紹介)(第三五二七号)  同(清水勇紹介)(第三五二八号)  同(下平正一紹介)(第三五二九号)  同(中島衛紹介)(第三五三〇号)  同(中村茂紹介)(第三五三一号)  同(羽田孜紹介)(第三五三二号)  同(林百郎君紹介)(第三五三三号)  同(宮下創平紹介)(第三五三四号)  公共料金値上げ抑制等に関する請願外三件  (池田克也紹介)(第三六五五号)  同(長田武士紹介)(第三六五六号)  同(木内良明紹介)(第三六五七号)  同(北側義一紹介)(第三六五八号)  同外一件(柴田弘紹介)(第三六五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 井上普方

    井上委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野信一君。
  3. 小野信一

    小野委員 最初に、大臣の所見をお伺いします。  物価に対する現状認識と今後の見通し並びに対策、基本的な点でよろしゅうございますから、まずお聞きいたします。
  4. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御案内のように、内外の情勢、きわめて物価に対して厳しいものが山積しておる、こういう状況かと存じます。特に、きょうの閣議あたりでも、一方では野菜はおかげさまでだんだん落ちついておるのでございますけれども国際関係が、御案内のように、アメリカ、イラン関係等、また厳しい情勢を加えておる。これが日本に対する原油供給等にどういうふうな影響を持ってくるか、大きな懸念材料だと思います。そこでまた円安の傾向、これは最近ますます事態は深刻になっておりまして、そんなようなところから、大変厳しいものがあるわけでございます。  一方では、われわれがこの間決定いたしました総合物価対策の中の金融関係は、公定歩合史上最高までの引き上げをするというようなことがありましたが、財政の、特に上半期の公共事業等の執行につきまして、予算の成立を待って各省庁で相談をしておったわけでございますが、けさの閣議では大体六〇%程度をめどにして、公共事業等施行に関する連絡会議を至急に設けまして、具体的に詰めていこう、こういうことが決まりました。これで財政金融両方で抑制的な、また適切な総需要管理体制が大きく固まった、またこれはもう当然なことなんですが、早く固めなければならなかった、それがやっとできたということでございまして、非常に厳しい情勢でございますが、総力を挙げて、物価の一日も早い安定に向かって短期決戦型の取り組みを展開していかなければならぬ、こういうふうな認識を持って、きょうたまたまこの委員会をお開きになったわけでございますが、私どもとしては、これはもう総力戦体制でございますので、国会の皆さん方からもいろいろ適切なる御意見を拝聴しながらやっていきたい。いまのところ、やはり卸売物価は相当上がるということは外的要因から避けられない。できることならば、それを消費者物価に極力波及を食いとめていく、こういう従来の政策をさらに一層強化して展開していきたいと思っております。また追い追いお答えを申し上げますが、基本的な考え方はそういうことでございます。
  5. 小野信一

    小野委員 局長にお尋ねします。  消費者物価動向を見ますと、十分御承知のように、五十四年の十月、前年同月対比で四・二%、順次上昇いたしまして、一月に六・六%となっております。したがって、この上昇はいつごろまで続く見通しなのか、そして、いつごろを頂点と考えて、いつごろ物価は鎮静する、あるいはさせなければならない、こう考えておるのか、経済企画庁の考えを聞きます。
  6. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 一月につきまして六・六%でございまして、二月に八・〇%というのが全国数字でございます。一番新しい東京数字は七・二%でございます。  そこで内容を見ますと、野菜が異常に高かったということもありまして、季節商品消費者物価を押し上げる寄与度が非常に高くなっておりまして、三月でございますと、東京の七・二のうち、季節商品だけで上がっている部分が二・二%あるということでございまして、季節商品を除く総合で見ますと、前年同月比は五・四%、全体の寄与度は五・〇%ということでございまして、現状におきましては、いわゆる基調としての物価、すなわち季節商品を除く総合のところで見てみますと、卸売物価からの影響は、一部石油とか木材とかそれから革製品、そういうところに出てきておりますが、全体としてはそういう状況にございます。  そこで、今後の問題、すなわち五十五年度に入ってからの問題といたしましては、卸売物価影響が引き続き出てまいりますことや、電気料金ガス料金値上げ等影響もありますので、上昇率は増加していくだろうというふうに思います。一方、季節商品につきましては、この三月の季節商品、すなわち野菜中心とするかなり高い水準というのは、年度に入りまして漸次是正されていくであろうというふうに考えておりますので、季節商品の方の上昇率は下がっていく、季節商品を除く総合の方では上がっていくという形をとっていくのではないかと思っておりますが、その全体の姿については、私どもとして五十五年度六・四%というふうに平均的なものを想定しているわけでございまして、ある時期にどうなるかということまでの推測は申し上げるのはなかなか困難でございますが、年度の後半から漸次その上昇率が鈍化していくという姿は私どもとしては一応想定をいたしております。
  7. 小野信一

    小野委員 年度物価水準が五十四年度平均物価水準を上回る分、すなわちわれわれ通常げたと言いますけれども、これを四月以降どの程度に見ておりますか。
  8. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 げた通常の形で、総合指数全体で見てまいりますと、三%をちょっと超すのじゃなかろうかと思います。ただ、先ほどから申し上げておりますように、本年の三月の水準を見ますと、非常に野菜が高い、昨年に比べて六五%も高い状況にありますので、こういう姿がこのまま続いていくと見るということは非常に問題が多いのではないか。現に野菜等価格について値下がりが始まっておるわけでございますから、そういう高値是正は当然あるわけでございます。そういうことで、私どもとしては、季節商品については、げたという考え方が、特にことしのような場合にはとり得ないのではないか。そこで季節商品を除いて見ますと、一般商品サービス公共料金等で約二%程度のものが実質的なげたとして考えていいのではないかと思っております。
  9. 小野信一

    小野委員 五十五年度予算関係する公共料金、これの値上げによる消費者物価の押し上げは、政府の資料によりますと〇・八%、それからその他の電気ガス等公共料金を加えて計算しますと二・五五%、そのうちの電気料金だけの波及効果が一%、こう計算しますと三・五五%、それから、いま御答弁をいただきましたげたの二%を加えますと、これだけで幾らになりますか、約五%を超えるわけですけれども、そうなりますと、政府の言うことしの消費者物価見通し六・四%というのはかなり無理な数字になるように思えてなりませんけれども、改めて、これに対する見通しをお聞きいたします。
  10. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 数字に即してちょっと申し上げますと、いまおっしゃった公共料金が仮に二・五五%であるということになりますと、その前提には、五十四年度値上がりした公共料金影響が一部入っていると思います。それが〇・二五程度あるのではなかろうかと思いますので、それは差し引かなければならないということが一つございます。  それから、電気料金の間接的な影響を一・〇%というふうにおっしゃっておられますが、これは仮に産業連関表をとってみた場合には、一部言われておりますのは、電気については直接効果とほぼ同じ程度ということでございますが、ガスについてはほとんどないということも言われておりますから、産業連関表で言っても一・〇%というのは少し多いと思いますし、それから、間接的影響についてはそのときどきの情勢によって非常に変わるわけでございまして、電気料金が上がった場合の省エネルギー効果、さらには、それを内部努力で吸収する合理化努力生産性向上努力、そういうものもありますし、そのときの需給関係もありますので、一斉にすべての電気料金値上げ影響が瞬時に各分野に及んでいって出てくる影響という、いわばフィクションとも思われるような形で計算されているものがそのまま出てくると見るのは問題があるのではないか。われわれとしては総合物価対策等でも、そういう便乗値上げ、さらにはコスト転嫁についても極力吸収していくような方向で対策をとっておるわけでございますので、これをそのまま乗せていくということについては問題があると思います。そういう意味でございますので、六・四%との関係から言いますと非常に厳しい情勢であるとは思いますけれども、ただいまおっしゃったような形での数字的な結果にはならないのではないかというように考えております。
  11. 小野信一

    小野委員 電気ガス料金値上げによって起こる直接あるいは間接波及効果を最も低く見まして一・一、それから、卸売物価原材料波及効果が非常に製品価格に転嫁しておる、それから円安による物価騰貴輸入品を通しての物価騰貴を〇・五と見ますと、前月対比で四月が二%上昇するのじゃないか、こう言われております。この数字をもとにしますと、年率三〇%を超すのじゃないか、こういう予測が出ておりますけれども、これに対する考え方はいかがですか。
  12. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 四月の卸売物価についての御指摘かと思いますが、確かに、電気料金ガス料金関係で一・一%というのは直接的影響として出ると思います。そのように最近の円安影響輸入品価格が上がるというのも加わっていますのと、卸売物価原材料からの波及が進むという面もありますので、四月の卸売物価についてはかなり上昇することが想定されます。  そこで、いまおっしゃった年率三〇%ということなんですが、われわれは年率卸売物価を議論することは非常に危険だなという気がいたしておりますのは、四月にたとえば電気が上がるということが出てきた場合に、毎月電気が上がるわけじゃございませんので、四月に上がれば直接影響は一点でございますから、そのときの状況から言うと、やはり季節的調整をしたもので年率を考えていかなければならないというふうに思っております。そういう点はございますが、四月の卸売物価が相当上昇するであろうということはいま委員のおっしゃったとおりでございます。
  13. 小野信一

    小野委員 五十四年度消費者物価、これの見通しは四・七%だったんですけれども季節商品を除いた消費者物価指数は五・四%、これを加えますと七・二%の上昇率になっておりますけれども、それはそう判断してよろしゅうございますか。
  14. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 いまおっしゃった数字は三月時点東京都の数字でございます。それはおっしゃっておるとおりでございます。ただ、われわれが物価見通しで想定しておりますのは年度平均でございますので、平均ということになりますと四月から三月までの全体の数字平均していくということになりますので、三月につきまして、東京が出ております関係東京についての年度平均を申し上げますと四・五%であります。
  15. 小野信一

    小野委員 いまやりとりしてみましたけれども、現在、政府消費者物価抑制のために物価問題に関する関係閣僚会議をつくりまして当面の物価対策を発表しました。しかし、振り返ってみますと、昨年の一月のイランの政変に始まって、OPECの数次にわたる原油値上げ、それからそれに伴う国際収支急転悪化円相場の急速な下落、輸入価格上昇、これに伴ってまた卸売物価上昇、そして物価を取り巻く情勢が非常に悪化しておりました。ところが、五十四年度中は幸いにも、卸売物価は急上昇しましたけれども小売物価が落ちついておった。われわれは卸売物価が急上昇しておるうちに対策をとらなければ、必ずこれは消費者物価にはね返るから対策をとるべきだということを提案し、あるいは警告してまいりましたけれども、この対策がとられませんでした。したがって、お聞きしたいことは、一年間卸売物価上昇したけれども、なぜそれが小売物価にはね返らなかったのか、その原因をお尋ねします。
  16. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 最初の御質問でございますが、卸売物価上昇を始めるころに対策をとるべきだという点につきましてはまさにおっしゃるとおりでございまして、私どもとしては、昨年の二月二十六日にいわゆる第一次総合物価対策というものを決定しております。それは、問題意識としては、その当時からどうも円高が従来のような形では進まないのではないかという懸念があったのと、それからOPEC原油価格引き上げがあったこと、さらに、その当時すでに海外一次産品価格にやや上昇動きが見られておりました。そういうこともありましたので八項目対策をそのとき採択したわけでございます。その考え方は、当時建設資材等中心としての価格上昇がありましたので、それに対する対応をどうするか、それからカルテルがまだ大分残っておりましたので、カルテルについては早急に整理するというようなこと、さらに、石油製品についての値上げ監視をその当時から始めております、またマネーサプライについての取り扱いも厳正に扱う、そういうようなことを含めまして八項目対策をとったわけでございます。同時に、四月に日本銀行が公定歩合の第一回の引き上げを行ったわけでございます。その当時の卸売物価状況を申し上げますと、二月時点ではまだ前年同月に対してマイナス〇・九、三月でも〇・一%ぐらい、消費者物価については二%台という上昇であったわけですが、その卸売物価影響がかなりこれから問題であるということで総合対策をわりに早くとったということを申し上げておきたいと思います。  それから、それでは五十四年からの卸売物価上昇消費者物価波及するのが遅かったということにつきましては、まず卸売物価の中でそういう動きがあったわけでございまして、現在の段階でも卸売物価が二月に二一・四%でございますが、完成品については五%台の上昇で推移してきているということがございますので、消費者物価についてもそういうような影響が出てきているということでございます。その理由は、一つは生産性向上が行われてきたということもございますし、一方、賃金の決定が非常にモデレートなもので来ましたので、賃金コスト影響が少なかったということがコスト面であるかと思います。それから、全体としての国内需給が緩和をしていたということもあり、それからマネーサプライ上昇率が早くからコントロールされていたということ、そしてまた、企業消費者の非常に冷静かつ落ちついた対応があったというようなことがございまして、前回とはきわめて異なった状況のもとで消費者物価が推移してきたということではないかと思います。
  17. 小野信一

    小野委員 二月の二十六日の物価対策、そのとおりだと思いますけれども、実際、卸売物価上昇率は七月から急激になりましたね。二月から始めた対策が具体的にその効果を示さず、七月に八・三、八月以降は前年同月比で一〇%以上、特に一月に一九・三という、二〇%になんなんとする大幅な卸売物価上昇を来しておるわけですけれども、その二月二十六日の対策が実を結ばなかったと判断されるのですけれども、どういう御感想をお持ちですか。
  18. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 いまおっしゃった一〇%を超えたのは八月でございますが、そのころまでの卸売物価上昇背景となる輸入物価について見ますと、輸入物価は、われわれが二月ごろに当面していた事態よりさらに進んでまいりまして、原油値上げというのが一月から実施されるということの上に、また四月から上乗せして値上げが行われたということがございますし、それから非鉄金属木材、その他についての海外物価も異常に上昇してまいりました。その上に、円安もさらに進展をするということで、もっぱらその時点での動きとしては、輸入品価格上昇が大きかったということでございまして、私どもとしては、そういう輸入品価格上昇影響が非常に抑制された形で末端に波及していくようなことを考えた対策をとってきたわけでございますので、先生もおっしゃったように、卸売物価が上がった割りには消費者物価が上がらなかったということの背景としては、重要な物資についての価格について、政府が早くから監視をしてきているということの影響、さらには、そのマネーサプライについてのコントロールを十分しているというようなこと、また、日銀が公定歩合を早く上げているというようなことなども、そういう点については寄与しているのではないかというふうに考えるわけです。
  19. 小野信一

    小野委員 今回の物価上昇原油値上がり中心とした卸売物価へのはね返り、これを考えてみましても、第一次オイルショックのときと同じようなことを感ずるのですけれども第一次オイルショックのときの物価上昇狂乱物価と、今回の消費者物価卸売物価を含めました急上昇とは、どの点で同じなものを持ち、どの点で異なる点を持っておるのか、その比較をお聞きいたします。
  20. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 前回のときと比較いたしますと、輸入品価格が上がったということはほぼ同様でございます。中身は違うのでございます。前回石油が非常に大きく上がっておりますが、今回は前ほど上がってないということはありますが、輸入物価全体として見ますと、四十九年のときは、四月に前年同月比が七四・一八%ということ、現状で五十五年の二月は八三・五%でございますから、輸入物価上昇はほぼ同じじゃないかと思います。しかし、卸売物価について見ますと、四十九年の二月でピークになっておりますが、前年比三七・〇%、今回が二一・四%で、卸売物価は多少違いはありますが、相当上昇しているという点は似ていると思います。  そこで、中身を見ますと、素原材料は、前回七〇・九%、今回七二・二%で、ほぼ同じでございます。しかし、消費財が、前回二四・七%で、今回が六・四%、ここで大きく違ってきております。そういうことでございますと同時に、消費者物価の方も、前回は二六・三%というのが、今回は二月で全国で八・〇%、その辺に大きな違いが出てきております。  この違いが出てきておりますのは、先ほどもちょっと申し上げたところと関係いたしますが、前回は、石油ショックが起こる前からすでに物価上昇が非常に大きかった。消費者物価も四十八年の夏ごろには一〇%台になっておりました。そういうことで、石油ショックが加わって値上がりが加速されたということがございます。それと、同じ輸入品でも、食糧関係輸入品価格前回はかなり上昇していた点もございます。  そういうことに対しまして、物価の環境を非常に大きく左右いたします要素を見てまいりますと、賃金前回は三二%上昇、今回は六%程度、それからマネーサプライが、前回は二七%台までいったのが、今回は一〇ないし一一%ということがございます。それから、何といっても非常に大きく違っておりますのは、前回は買い急ぎなり売り惜しみなりということが、消費者段階企業段階であったことが、非常に物価値上げを大きくしたわけですが、今回は消費者企業も、先ほど申し上げましたように、非常に冷静に対応しているということが非常に大きな原因になっているのではないかと思います。
  21. 小野信一

    小野委員 四十八、九年の狂乱物価、この要因は、当時は石油価格高騰あるいは世界的な農産物の不作、こういう外的要因が主なる原因だ、こう言われておりました。当時の福田総理は、新価格体制への移行だという発言をしたことを記憶しております。しかし、その後の分析をいたしてみますと、いま局長が言うように、四十八年の十月、十一月のオイルショック以前からすでに卸売物価が急上昇し、景気は後退し、こういうものに大きな原因があって、その前の三年間はマネーサプライの増加がオイルの高騰に拍車をかけて、あれだけのインフレーションを起こし、その後のスタグフレーションを呼び起こしたのだ、こういう説がありますけれども、これはそう考えてよろしゅうございますか。
  22. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 先ほども申し上げましたが、外的要因に加えまして全体の国内経済情勢においてマネーサプライが非常に多かったとか、それから四十七年ごろからすでに景気上昇過程にありましたので、値上がりが、もう四十八年の初めには卸売物価も一一%台になり、それから消費者物価も、若干おくれておりますが、一〇%台になりということで推移してまいりました。そこに大きな石油値上げが加わったというようなことがございますので、そういう外的要因と全体の国内経済情勢両方からこういうような物価上昇が起こったものだと思っております。
  23. 小野信一

    小野委員 はっきりお聞きしますけれども、そうなりますと、オイルショック、原油高騰によってインフレーションなりスタグフレーションが起こったのではなくて、明らかに、その前の経済政策の失敗が、そのときの高騰なりスタグフレーションを呼び起こしたのだ、そう考えてよろしゅうございますか。
  24. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 当時の情勢は、やはり経済的な要請もあったと思うのでございますが、円の評価について客観情勢が非常に変わってきたわけでございますので、全体として景気を盛り上げていこうということが財政政策金融政策にも影響してきたわけでございます。  そういう情勢の中で大きな石油値上げが起こったということでございますので、いわば両方影響が出てきたと私、申し上げましたが、それが国内政策が失敗であったからというふうに断定することはできないと思うのでございます。やはりそのときどきの情勢でそういう必要があって起きたわけでございますが、いずれにいたしましても、かなり国内の需給が逼迫している段階外的要因が出てきたということで物価上昇が急激に起こったということでございますので、いわば原油価格等の大きな影響が起きた時期が悪かったということも言えるのではないかと思います。
  25. 小野信一

    小野委員 先ほど局長の答弁を聞いておりますと、第一次オイルショックと今回の物価上昇との政策的な違いは、マネーサプライの増加率を非常に抑えておる、こういうことだと聞きました。そこから逆に考えてみますと、第一次オイルショックのときの経済政策の失敗を今回二度と繰り返さないためにそれを実行しているんだと考えられるわけです。したがって、もし四十六年から四十八年までの間のマネーサプライの増加率を三〇%じゃなくて現在のように一〇%に抑えていたとすれば、少なくとも原油価格高騰による物価上昇はあったとしても、あれほどの狂乱物価を呼び起こさなくてもよかったのではないかという判断が出てくるわけです。したがって、私は外的要因による物価上昇については認めますけれども、それ以上の、数倍の物価上昇を呼び起こしたのは明らかにマネーサプライの増加率の抑止がなかったことに原因があるのじゃないか。経済政策の失敗が少なくとも狂乱物価を呼び起こした基本的な要因ではなかったのかということを感ずるのですけれども、いかがですか。
  26. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 四十七年の初めごろの状況を見ますと、むしろ景気を促進すべきであるという一般的な要請が強かったわけでございまして、四月ごろに公共事業の施行促進もしておりますし、金利も四・四%台ということで非常に低金利だった。そういう状況でございますから、景気を拡大していこうということについてのコンセンサスはその当時は得られていたと思うのでございます。そういうところにそういう経済拡大のいろいろなひずみというのが出てきたわけでございまして、そこにまた外的要因も加わったということなんですが、そういう事態マネーサプライをもう少し抑制的にしておいた方がよかったのではないかという、そういう反省は、考え方金融当局にも十分あると思います。  そういうことから、今回は非常に早めにマネーサプライの管理に取り組んできているわけでございますが、何遍も申し上げますが、そういう前からの経済情勢の推移から見て、前回がそういうマネーサプライ水準で来ていたことについては、それなりの理由があるわけでございますので、ただその水準自体が物価との関係で言うとやや好ましくない水準であったかもしれないということはあるかと思いますが、いずれにしてもマネーサプライ物価との関係というのはきわめて大きなものであるという認識がそのときに一般的に強くとられるようになった。今回早目の物価対策ということでマネーサプライが一番先に取り上げられたということではないかと思います。したがって、マネーサプライ物価というものがこれほどまでに密接に関係するということについては、第一次石油危機のときに非常に強く政策当局にも認識をされたということではないかと思います。
  27. 小野信一

    小野委員 四十年代の前半、福田さんが安定成長ということを言うときに、成長率が高まると物価が加速する、したがってなるべく控え目の安定成長を目指すべきであるという国民のコンセンサスがあったと思うのです。したがって、これを逆説的に言いますと、成長率を低くすると物価が下がる、こういう前提がここにもやはりあったと思うのです。  ところが四十八年のオイルショック、特に五十年から五十一年のスタグフレーションと言われる場合には、非常に物価高騰するにもかかわらず成長率が下落するという通称スタグフレーションが起こったわけですけれども、これはどういう原因に説明されるわけですか。
  28. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 確かに第一次石油ショックの以前は、物価と成長についていまおっしゃったような動きがあったと思います。前回のショック以来、どうも物価が上がりますと需要面では個人消費はすぐ減ってしまう、将来の貯蓄ということに対応して消費を減らす。それから投資する側も将来の見通しが立ちにくいものですから投資を抑えるということがある。ですから非常に物価上昇する場合にはむしろ総需要が減っていくということが出てくるということについて、これは国際的にもそういう認識が出てきております。したがって、サミットを何回もやっておりますが、その過程でも物価上昇、すなわちインフレというのは雇用をふやすというものではなくてむしろ雇用を減らすものであるということがサミットの宣言の中でも言われてきております。そういう意味で、やはり物価を抑えることが経済の安定成長につながるという認識がいまでは国際的に共通の認識ではないかと思います。
  29. 小野信一

    小野委員 マネーサプライが非常に物価の動向に左右するということは第一次オイルショックのときに学んだ貴重な経験だと思うのです。問題は、あの当時三〇%を超えるマネーサプライの増加率を示した。しかし今回は一〇%から一一%のマネーサプライの増加率。そうしますと、逆に今度は景気を減速させる要素になりはしないか。したがって、景気を保ちながら物価上昇を抑えるという場合に、マネーサプライの増加率をどの程度に抑えるかという原則みたいなもの、あるいはその判断基準が必要になってくると思うのですけれども、現在一〇%から一一%に抑えている根拠といいますか、これに対する考え方をお聞きいたします。
  30. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 だんだんお話を伺っておって、前回の経験と今回の新しい事態、これを対比しながら非常に真剣にお考えをいただいていることはよくわかるわけです。  マネーサプライ、これはやはり金融政策効果というものがそこに出てくる、こう思うのですね。前回と今回の違いは、やはり同じように公定歩合を最高のところまで引き上げたのですが、そのタイミングが非常に違っておった、先ほど来御説明しておるとおりだと思うのですね。こういう事態になりまして、いま御指摘のようにマネーサプライがきわめて堅実な歩みを続けておる、だから経済の成長に見合ったマネーサプライの適正なる増加、テンポといいますか、そういうものが幾らかということになりますとこれはなかなかむずかしい問題でございます。日本銀行では成長通貨、こういうふうなことも言っておるようで、経済の成長に——しかしその成長は堅実なものでなければならぬということが一つあると思うのですね。何といいますか、経済の成長が非常にギャロッピングである、それに対応したマネーサプライということになるとこれはもう適正なものと言えなくなってくるわけでございますから、先ほど小野委員最初の御質問にお答えしたように、金融財政、この二つの目玉がそろって堅実な経済の歩みを確保する基盤を形成しておる、私はこう申し上げたわけです。  そこで、きょう決まりました財政運営の基本的な態度、これは抑制的とか総需要の適切なる管理体制、こういうふうな表現で申し上げておるわけでございますが、それと公定歩合史上最高に持っていったタイミングが私はまあまあいまのところ、これはもういろいろな国会の御議論等に対応して財政金融当局としても大体タイミングよくやっておる、こう御判断をいただいていいと思うのですが、前回はそうでない点がございましたので、これがわれわれにとっては非常に貴重な教訓になっておる、こう判断をしておるわけでございます。  そこで、これからの経済に対して一体どういうのが適正かということになりますと、これはやはり相当機動的、弾力的に考えていかなければならぬと思うのです。たとえば金融の引き締めの度合いあるいは財政の抑制的な運営の度合い、そういうものをにらみながら持っていくわけでございますけれども、それにしても私は、マネーサプライ状況というものはそんなに大きく拡大するようなことは堅実なる経済の成長という点からいうとこれは余り考えられない、そこにはやはり大体いまのような状況が堅実な経済の成長の上に適切なものではないか、こんなような判断でございまして、いま一体どのくらいのサプライの率がいいかということについては情勢を見ながら考えていくのですけれども、大きく狂うようなことはないのじゃなかろうか、そんなような感じでございます。
  31. 小野信一

    小野委員 いま金融財政の両立が物価の鎮静を果たす最も重要な役割りである、ポイントであるというような話を聞きましたけれども、私は財政の進出が遅かったのではないか。金融政策一本で進んできたために財政の出番が非常におくれたのだ、それが今回の物価上昇に大きく作用したのではないか。あるいは逆に考えますと、金融政策だけでは現在の物価上昇というものを抑え切れなかったのじゃないか、それが過去の経験からいって金融政策だけで抑えられるのだという判断で財政の進出といいますか、財政の出番がおくれたのではないかという考え方がありますけれども大臣いかがですか。
  32. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これはいろいろ見方があると思いますが、予算が国会で御審議中に公定歩合引き上げたということさえも、前例がない、それをあえてやった。本年になってから二回目、しかもそれが史上最高のところまでやった。さて予算が成立いたしましていよいよ実行の段階になって、相当これも早目に、去年より大体率で六・七ですか、それから金額で言うと四・三くらい切り込むのです、前年度より。絶対額で四千数百億ということになると思いますが、相当これは財政としても当初から一兆円の国債減額に踏み切っておりますし、これがなかなか十分ではないじゃないかという御議論もありましたが、私は財政はいまのような低い姿勢でスタートいたしまして、だんだんと国債の消化ということについては非常な努力をしておるわけでございますから、これも実効的にできるだけ抑制をするという心構えは私は皆持っておると思うのです。そういうふうなことからいいますと、いま小野委員が御指摘になったように、どうも出番が遅いじゃないかとおっしゃいますけれども、わりあいよく出てきておると思うのですよ。余り国会で御審議中にこのくらい減らすと言うと、それでは予算を減額しなさい、こうやられるとまたこれは政府はもうぐうの音もないわけでございますのでね。国会は最高の機関ですから。そこで一応われわれとしては経済の成長、物価の安定というようなものをにらみ合わせて、五十五年度予算としてこれぐらいのものが最良のものとしてお願いしておる。しかし四、五、六の物価情勢というのは非常に注意を要しますのでこの際思い切ってこうしたい、そういうわけでございますから、一応私はできる限りタイミングよく財政も出ておる、こんなふうにお考えをいただいていいんじゃないかと思います。これからは、いろいろ国会で御議論のあった点に十分配意をしながら財政の運営にも心がけていこう、こんなように考えております。
  33. 小野信一

    小野委員 物価が鎮静する一つのポイントは、円安円高に転換するそのときが一つのポイントじゃないかという気がします。現在輸出が好調でありますから当然いつかは円高にならなければならないはずだと私は予想するのですけれども、企画庁の方では円安円高に変わる時期というものをいつごろに見ておるのか。見ておるということは、要するにどういう条件がそろうとそれが転換するものなのか。今回それが当たる当たらないは別にして、常識的にあるいは経済学的に考えて、円安円高に変わる条件というものはどういうものが出てきたときになるものなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  34. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは非常にむずかしい。円レートの見通しということになりますとこれはもう神様だけが御存じということになるのかもしれませんが、われわれとしては、一応いわゆる経済のファンダメンタルズというふうな表現を言っておりますので、そこには物価国際収支、それから一番大事なのはやっぱり日本が本当にインフレ抑制に対するかたい決意で政策を実行していくかどうか、これを判断するいろんな判断の材料があると思うのです。その意味で、春闘がどうおさまるかというようなこともこれは大変重要な要素になってくると思います。そんなようなことがだんだん固まってまいりまして、先ほど来御議論のあった卸売物価、これは原油なんかがどうしても上がるものですから、私は五十四年度卸売物価も相当これは上がることはやむを得ない、しかし消費者物価についてはこうだ。同じく五十五年度については卸売物価の上げ幅は相当前年に比べてよくなるけれども、それでも上がり方はこれはもう相当のものである、しかし消費者物価はこうだというふうなことを皆さんに内外から理解をされるということが大事だと思っています。そういう意味で、けさの財政の実行、予算の実行というようなことも、相当これは関心を呼んでおったと思うのですが、それが具体的に決まったというようなことも大いにあずかってこれから円レートの推移に影響があるものと考えております。  ただ当面一番困るのは金利差なんですね。アメリカが御案内のように公定歩合を上げなかったけれども、プライムレートというのが相当高くなっておる。それに資本の移動が行われるわけでございます。しかしアメリカの方も、その金利の高い状況に対して国内でそれじゃ経済は非常にスムーズに回転しておるかといいますと、これは相当フリクションが出ておるようでございますね。その辺からやはりアメリカでも金利はもうすでに天井じゃないか、あるいは若干これから下降傾向じゃなかろうかというふうな見方もいろいろあるようです。もう一つはやはり国際情勢だと思うんですね。日本なんかは本当にアメリカの外交政策なんかに大きく影響を受けるわけでございまして、諸外国、程度は違ってもみんなその影響を受けておるわけです。そこでやはりこの国際情勢が落ちつくというふうな関係も必要である。  いろいろございますが、私は結論的に申して、日本の物価といまおっしゃった円レートというのは確かに大きな関係がありますから、物価の鎮静と円レートの安定というのは大体時を同じゅうしてだんだん進んでいくんじゃなかろうか。その短期決戦の局面を大体この四月、五月、そして若干六月ぐらいをめどにしてわれわれはここでひとつ大きく展望を開きたい、こんなような気持ちでいま努力をしておりますが、しかし円レートは依然として安いというふうな事態で、心中非常にみんな憂慮の念を持っておりますが、さりとてこれをいま日本が追っかけて金利を引き上げるというようなことはまたなかなか問題でございます。できればオイルダラー等をできるだけ日本に取り入れるような施策、そして外貨準備高が若干減っても日本の経済というのは外国から十分そういう資力を取り入れる力があるのだというふうなことをやはり実行で示していく必要がある、こういうようなことを考えております。
  35. 小野信一

    小野委員 国内問題の要因に入りますけれども、いま国民の関心の的になっているのに、土地の高騰があります。国土庁の方は国土利用計画法の規制区域指定、すなわちこれは地価の凍結でありますけれども、これをやろうとしません。もちろん法律には、投機の対象になったときにこれを発動するということになっておりますけれども、しかし年率二〇%も上昇いたしますと、投機の対象にはならないにしても、それに近い感じを持っておるわけです。  それで、この問題は建設委員会の方で詳しくは質問しますけれども経済企画庁の方として土地の高騰を抑えなければ、やはり物価に対して非常に悪い影響を及ぼすだろう。特に景気に対する影響が出てまいります。したがって経済企画庁の方として、国土庁に対する国土利用計画法の規制、地価の凍結に対して、これを両者で協議して早急に発動するような御意思がないものなのかどうか、お伺いします。
  36. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これはこの間、閣議で公示地価の報告が国土庁長官から行われたわけでございますが、そのときにわれわれは早速取り上げまして、いま小野委員が言われたようなことも含めて土地問題に関する閣僚懇談会を早急に設けて、しかも全国の状態について、いろいろありますけれども、二十四ぐらいの特別調査地区というものを指定いたしまして、そこの状況を常に把握しながら対策をとっていきたい、こういうことで決まりました。  地価高騰ということは、非常に物価に対していわゆるインフレ心理、これを刺激することはおっしゃるとおりです。やはり地価が安定しておらないと物価の安定ということは、口で幾ら言っても地価が上がっていくじゃないか、どうするのだというふうなところから、一般のインフレ心理というものに与える影響はきわめて重大である、おっしゃるとおりだと思います。  そこで、何とかしてこの原因を適切に把握しながら対策を適切に講じていく必要がある。おっしゃるように国土利用計画法でぴしゃっと抑えるということも、いわゆる投機的な騰貴の場合ならこれは一時的にやむを得ない緊急の措置だという御議論もあると思うのですが、いまのところはそういうのじゃなくて、実際に宅地を中心として需要と供給の関係が非常にアンバランスだというふうなことも言われるわけでございますので、地価をぴしゃっと抑えるよりは供給面の対策を考えていくべきだという議論も非常に強くあるわけであります。一般にいわゆる中堅の比較的若い方々が本当に苦労して、マイホームを何とかつくりたいということでローンを借りる、貯蓄をする、そしていざ買いたいと思ったら宅地がなかなか入らぬ、ここに大きな原因があるのじゃないか、だから宅地の供給ということについて何とか対策を考えなければいかぬ、こういう御議論は非常にもっともだと私は思うのですが、そういう供給面に対する対策を同時にやりながら、一方で安定を図っていくということでないと、これはぴしゃっと抑えて土地取引なんかほとんど行われないということになったら、これはまた大変なことになると思うのですね。いま申し上げたような堅実な方々の希望というものを全く絶ってしまうようなことになる。  そこで、いま国土庁では各方面、関係各省庁と寄り寄り協議をして、どうするかということを考えております。しかしこれはわれわれが申し上げたとおり、国会の方でも議員の諸先生方もいろいろお考えがあると思いますので、やはり供給面をこういうふうにして打開しながら地価の安定を図るという総合的な対策、これをひとつ至急に私ども一生懸命に知恵のないところを出し合って考えてまいりますので、建設委員会あるいは物価対策委員会のお力を十分ひとつかりて対策を講じていきたい、かように考えます。
  37. 小野信一

    小野委員 確かに土地の高騰は需給のアンバランスによって起こる、こう判断されてはおりますけれども、起こる最大の理由は中間業者が土地を転がすことです。もし供給する側と受ける側が直接結びつくような、少なくともその間に一業者が入って転売されるような土地であると、現在のような急上昇高騰はないのです。ところが三回も四回も中間業者を渡っていくものですから、最後には実際の供給のアンバランス以上の大きな価格差、上昇になってあらわれております。したがって、この中間業者の土地転がしをどう抑えるかが最大の焦点だと私は思います。それも結局最後は需要、供給のアンバランスだと言われればそうかもしれませんけれども、これを抑えることが最大の要因だと思いますので、十分御配慮のほどをお願いいたします。  次は、やはり政府の資料を見ますと、インフレを見越した在庫投資が昨年より非常にふえておる。政府統計でも、昨年の民間在庫投資は前年度の二倍に達しております。恐らくことしに入ってもその傾向があるのじゃないかと思いますけれども、在庫投資についてどのような調査をお持ちなのか、お聞きいたします。
  38. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 先生のいわゆる仮需というふうなものがどういう状況になっているかという姿をとらえるのは、大変むずかしゅうございます。ただ国民経済計算、所得統計で十−十二月の数字、在庫投資がふえておりますのは、これは経済の拡大に応じてその分在庫をふやしているという状況であって、計数的には伸び率等で出しますから大きく出ておりますけれども、形としてはそう異常なものではない、経済の伸びに応じたふえ方ではないか、こういうように考えているわけでございます。問題は、ことしに入りまして二月、三月ごろにそれがあったというような状況でございますが、そこらあたりについて私たちが厳密に調査をいたしました結果、実のところ判明はいたしません。判明はいたしませんが、きわめて一部の業種については毎年の出荷よりは少し多い面があったかなという感触を得ております。しかしその程度でございまして、経済全体の色合いを変えるようなものにはなっていないのじゃないか、こういう判断をいたしているわけでございます。
  39. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほどの土地転がしとか在庫の積み増しとか、その辺に相当警戒をするものがあるという御指摘でございますが、そこを締めるのが金融で、金利が非常に上がっていってそういう方面に金利の負担を高くしていけば、やはり思惑とかということに相当役立つ、そういう判断をわれわれはいたしております。一部にそういうあれがありましても、結局金利負担のことを考えてやはり切りかえるというふうな傾向をわれわれとしては重く見ているわけであります。やはりムード的にそこのところをぐっと締めていく。  それから土地については、この間の総合物価対策でも監視体制を強めていく。いやしくもそういうふうなものが出てくれば、これはやはり若干投機的な動きというふうなことで、最後には国会でおつくりいただいた国土利用計画法がございますのでこれを背後に控えて、伝家の宝刀だからなかなか抜かないけれども、抜くという可能性も秘めてやっておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  40. 小野信一

    小野委員 当面の物価対策を見ましても、七項目並んでおりまして、各項目の実態の把握に努め、細かく調査監視いたします、こうなっておるのですけれども、これだけでは物価は下がらないように思われるのです。そこで、インフレ心理、インフレ期待を抑えるためには在庫を厳密に調査して、あるいは報告させて、これを公表することがかなり大きな心理作用を及ぼすのじゃないか、こう思いますので、その点をひとつお願いしておきます。  それから、金融で締めましても、金利が高くなりましても、それをコストに上乗せするという製品がこのごろ多くなりまして、マーケット機構が完全に動いていれば大臣の言うようになると思いますけれども、管理価格という要素の方が非常に強いので金利すなわちコストアップという形になっていまして、必ずしも大臣が言うような作用を及ぼさないというところに問題があるのではないか、そう思いますが、大臣、いかがですか。
  41. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 おっしゃるとおり、最後のこれを決めるのは最終消費者ですね。実はきのうも大阪で物価問題懇談会をいたしまして、主婦の方々あるいはモニターの方々からいろいろお話を聞きますと、先取りで値上げをする、一部にこういうところが出ますと消費者から非常に強い反撃を受けるというんですね。やはりそういうところがしっかりしないと、第一回のときのような、先ほどお話があったトイレットペーパー騒ぎのようなことになると、これはもう本当にインフレに対する備えは崩れてしまうわけです。そこのところをしっかりして、本当に賢明な消費者としての守りを固めていただくということが非常に大事なことだと思うのです。それで、私はいつも申し上げるのですが、金融措置で負担を高めてもそれがどんどん転嫁されて、最後にはみんなそれを気前よく買うようじゃ、これはインフレに対して無抵抗ですからね。私はやはり、ドイツの第一次大戦後のインフレから来る恐怖心、これがドイツ国民を今日のようにインフレに対してがっちり守っておる一番のあれだと思うのですね。日本国民も第一次石油ショックのときの苦い体験をいま非常によくかみしめて賢明に対処しておられますので、そういう強いインフレ嫌悪症、インフレに対する防衛の心構えというものをしっかり植えつけていくことが、私をして言わしめれば、一部の自分の私利私欲のためにインフレに乗じようというようなやり方に対しては国民が総反撃を加える。かずのこ戦法。まあかずのこ、かずのこと言うなと大分しかられていますが、あれは違うよ、あれは特殊なものだからできたんで、必要なものはなかなかできないぞとおっしゃる、それはわかります。わかりますけれども、基本的にはあの戦法で対抗していかないといかぬ、そう思います。
  42. 小野信一

    小野委員 終わります。
  43. 井上普方

    井上委員長 宮地正介君。
  44. 宮地正介

    ○宮地委員 初めに、きのう、きょうの急激な円安の問題と国民経済に与える影響について大臣の所見を伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、金子(み)委員長代理着席〕  昨日は円安が二百六十円台をクリアいたしまして、さらに本日夜中の二時ごろですか、カーター米大統領のいわゆるイランとの外交断絶の発表後に、東京外国為替市場における円売りが大変に進みまして円が暴落いたしまして、一時は二百六十四円という大変な円安になったわけでございます。五十二年の九月三十日以来の円安を記録した、いまこうした大変な事態が起きてきているわけでございますが、これが日本経済に与える影響、一つは卸売物価に相当な悪影響になってくるのではないか。また、逆にこの円安傾向が続いてまいりますと輸出にドライブがかかりまして、五十五年度予算景気については内需志向型につくられているわけでございますが、これが再び過去の景気浮揚策の中心であったいわゆる輸出志向型に逆転するおそれがある。さらに、それが特に日米間あるいはヨーロッパとの貿易摩擦、こうしたような大変な、政府の予期していない方向に進んでまいりますと、私たちが一番懸念いたしますことは、それが悪質な不況下の物価高、スタグフレーション、こうした方向に日本経済が引きずり回されていくということで、それは国民生活への大きな打撃になってくるわけでございます。まずそうした背景をお考えの上、今回のこうした急激な円安傾向に対して政府としてどういう見解をお持ちか伺っておきたいと思います。
  45. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お述べになったことがもういま私どもの心にかかっておる懸念の一つ一つを御指摘になった。けさ閣議でもアメリカのイランとの外交関係断絶というふうな非常に悲しい報告がございまして、これの影響がどう出てくるか今後の推移を見なければなりませんけれども、私どもとしては何とかアメリカを初めとする友好国と緊密な連絡の上に事態の平和的解決を一日も早く実現してほしい、こういうことを申し合わしたような次第でございます。  そこで、そういう情勢も一つ入りましてドル高円安ということが如実に出てきておるわけでございます。ただ、日本の国内市場の動きには若干特殊な問題もあるようでございまして、輸入為替手当てというふうなものが殺倒した。いまのところ、日本銀行でも大蔵省でも円の実勢レートは非常に過小評価をされておるのじゃないかというふうな見方を一方でやっておるものでございますが、それじゃその過小評価を適正なる評価にしてもらうための努力というものは一体どうすればいいのかということになってくると、また問題は振り出しに戻りまして、とにかく国内物価を早く鎮静しなければいかぬよとかあるいは苦干違った見方でございますが、外貨準備、これなんかをこの際、できるだけ手当てを十分にしておく必要がある、そんなようなことから、中近東諸国へ近く大蔵省から特使を派遣して、オイルダラーを日本にリサイクルさせるような備えをする、これなんかは非常に適切なものであります。そういうわけで、宮地委員の御指摘になったようなことが本当に今日、私どもにとって非常な懸念材料でございます。しかし、私どもは一縷のあれとしては、先ほどもちょっとお答え申し上げたように、国内における経済の動きというものについては、金利ももうこれ以上上げるというふうなことは果たしていいことか、また経済に対してどういう影響があるか、アメリカ自身にもこれは相当問題が出てきておることも聞いております。また、日本としてもそれじゃいまどうするか、直ちにアメリカの後を追って公定歩合をさらに引き上げるなんということは、ちょっとこれは実際的でないのじゃなかろうか。財政の、予算の実行率をきょう決めたばかりでございますので、それらの影響等も見計らって、まず今後の物価安定にめどをつけることを、先般決めました総合対策として一日も早くその効果を上げるように努力したいということでこれからも進んでいきたいと存じておるわけでございます。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣も御存じのように、円相場が一%変化が起きますと大体〇・一%卸売物価引き上げる、これは経済の常識なんですね。ですから、たとえば先月二百四十八円前後であった相場が二百六十円を超えますと、少なくとも〇・五%ぐらい卸売物価がこの一月足らずで上がってくるわけであります。そうなりますと私たち一番心配しますのは、特に原油値上げ円安によって、年率換算にすると、この四月には卸売物価は三〇%を超えるのじゃないか。こうした大変な直撃になっておる。こうなりますと当然原材料値上がりに火をつけてくるわけですね。いま大臣財政金融政策の面からお話しになりましたが、たとえば原材料値上げ、特にこうした原油あるいは円安の急激な変化に伴って、あの昭和四十九年のときに起きたような狂乱物価、あのときの便乗値上げ、売り惜しみ、買い占めといった悪徳商法が横行してはならない。あるいは、国民生活を守るために生活二法というものもあるわけですね。大臣は、四月から六月が特に五十五年度の中の物価の正念場の月であると再三言っておりますね。私は、タイミングのよい時期をとらえてこの生活二法の発動は十分前向きに検討すべきではないか、こう思うわけでございますが、大臣のこの点についてのお考えを伺っておきたいと思います。
  47. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは大変大事な問題でございますが、いまおっしゃられたように円のレートは確かに予想外に下がっておるわけでございますが、一方、原油価格についてはまださらに引き上げようというような動きも外国の方に一部にはあるわけでございます。しかし幸いなことには、そのほかのロイター商品相場なんかに見ると、一時、アフガン問題を中心にして国際的な緊張関係が出てきた、それで相当上がったのがいまだんだん鎮静しておる、こういうこともございます。結論的に需要、供給の関係から見るとどうなんだ。原油でも需要よりは供給がいまのところかえって潤沢でございますから、国内でも国際的に見ても需給関係は若干緩んでおる、あるいは極端に言いますと一部だぶつき関係になっておる。そういうときのこれからの国際的、国内的な需給見通し、こういう点から言いますと、一方では、省エネルギーあるいは代替エネルギーの開発というふうなことを強力に展開していけば、需給関係から来る物価の先行きについては、われわれとしてはそう悲観しなくてもいいんじゃないか、こんなようなことを考えます。  そこで、宮地委員よく御承知のように、例の石油需給適正化法とか生活二法とか、これは全部、基本的には、需要と供給がうまくマッチしない、どうも供給が不足で不安に陥る、そこで需給適正化法をつくりあるいは買占め売惜しみの防止法あるいは標準価格の設定、こういうことを、あのときには必要に直面して国会がお決めいただいた、こう判断をしておるわけです。そういう点がいまのところは幸いにして、需給関係からはそういうふうなことはまあまあ必要ないんじゃないかという判断をしておることが一つ。  それから、そういう需給関係にあるにかかわらず、いまのところ、国内では若干、公共料金引き上げあるいは卸売物価波及というような点から、売り惜しみ、買いだめ的な一部の傾向があるから、それに対して便乗値上げ監視を強化するとか、あるいは構造不況業種に対して適切な手を打つとか、あるいは料金引き下げができるものについては引き下げをじゃんじゃんやらすとか、いろいろな総合対策を打ち出しておるわけでございますから、やはりここでは、競争原理、それがすなわち生産性向上という問題になるわけであります、競争原理のメリットをフルに享受していくような体制が必要じゃないか。そうすると、ここで生活二法を発動するよりは、市場機構、競争原理によるメリットをフルに享受できるように努力をしていく、これでとにかくこの危機をしのいでいくように全力を挙げるということの方が本筋じゃないか、そんなような感じを持っております。     〔金子(み)委員長代理退席、委員長着席〕 しかも一方では、地価等については、これは特別の対策も講じていかなきゃならぬ、こんなようなことで当分われわれとしてはやっていきたいという判断でございます。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 たとえば、これは朝日新聞のいわゆる全国の世論調査ですね、このデータによりましても、いま国民の皆さん、最大の社会問題、また政治に求めているものは何かと言うと、やはり物価に対する不安、これの解決の見通しというか、そういうものを政治的に何とかやってもらえないか。特に、これによりましても、もう半数以上の期待と、また、物価の不安に対する切実な希望を持っているわけですね。それに対して、結果的には、総理府の統計によりましても一月には実質収入がマイナスになっています。これは、四日に総理府統計局が発表したことし一月の家計調査の報告によりましても、サラリーマン世帯の実質収入というのは二十五万九千五百円、前年同月に比べて名目では確かに五・三%の増加であった。しかし、消費者物価上昇は一月は前年同月比で六・六%、こういうものを差し引きますと、実質で一・二%の所得がマイナスになっている。そういう中で、国民は家計を切り詰める。その中でやはり最初に切り詰める予定費目は娯楽だとかそうした雑費ですね、四五%。言うならいわゆる八〇年代の余暇の活用の時代とか、やはり生きがいを与えていく、地方に田園都市構想などによって豊かな緑、豊かな田園をつくって、生きがいのある場を与えていくと大平内閣が言っても、現実は大変厳しいわけです、国民の生活は。そうした実質的な収入がマイナスになったり、物価の不安に対して、確かに七項目総合対策を十九日に発表になって努力していることは敬意を表しますけれども、国民の生活の実感からとらえる物価不安というのは、本当にもっと切実な問題なんですね。大臣は、生活二法についてはまだもう少し待って、自由競争の経済原理をやはり生かした方がいいんではないかと、大分慎重な対応をされておりますけれども、やはり現実的に地価の高騰、あるいは最近は建築資材の高騰、あるいは、たとえば魚にいたしましても、最近はマグロ、エビ、イカ、こういうものの入荷がふえてもいまだに高騰している。まして先ごろの道漁連のああしたかずのこ事件、こういうものを見ていますと、国民は、政府は何をやっているんだ、われわれの物価の不安に対してどこまで切実に受けとめておるのか、確かにインフレ抑制のために財政金融政策で総需要管理をして、公共事業の発注の抑制をしたり、あるいは公定歩合引き上げをやっていますと言いましても、やはり国民の身近な生活からとらえる生活実感というものはもっと深刻なんですね。ですから、私はこの生活二法、もちろん自由主義経済の国でございますから、これは自由経済、競争原理が働いていくことは最高に望ましいことです。しかし、その働かないところにまた問題もあるわけなんですね。理論は十分理解できますけれども、現実の国民が物価の不安に抱いているそのものと国民の生活の間において、その自由競争原理が動かない部分も商品によってあるわけなんですね。それをやはりきめ細かに総点検をして、そうした疑いの強いものについては、本当に国民生活安定法等の発動などというものも十分やるぞ、そうした前向きの姿勢がなければやはり国民の期待にはこたえられないと私は思うのです。その点についてもう一度確認をしておきたいと思います。
  49. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 おっしゃるように、総理府の調査で、勤労者家計というものが非常に苦しいという、これは実際の統計の示すところであります。にもかかわりませず、日本の勤労者の家計は非常に堅実に対処していっておられるわけでありまして、これはアメリカなんかと比べると顕著な違いがあるのですね。アメリカはいままだ、景気はいつ頭を打つか、これからリセッションが来るなんて言われながら、若干景気が強含みに推移しておるのは、貯蓄をどんどん引っ張り出してやる、あるいはローンもどんどんやる、そこでカーターさんはローンの利子率を高めるとか、いろいろ対策を講じておられるわけですが、私どもは、日本国民はいろいろ苦しんでおられますけれども、ここはとにかくインフレに陥っては大変だということと同時に、賃上げというよりは全体の雇用をふやすということも忘れちゃいかぬ、そんなような配慮があることは、実に日本国民のこの事態に対するりっぱな対処態度だ、こういうふうに評価をするわけでございます。  いま宮地委員は、そういうことを言っても、物価の安定についてなかなか国民の信頼をかち得るに足らぬじゃないか、だから、法律に訴えても強権を発動してやるということもやらなければいかぬのじゃないか、こう言われるわけでございますが、私どもは、その法律はちゃんと与えていただいているんですが、しかし、これをすぐだんびらを振り回すということについては慎重でなければならぬ。私どもは、さっきの国土利用計画法にいたしましても、国民生活安定法あるいは買占め売惜しみ防止法にいたしましても、国会がわれわれに与えていただいておるということは、これはもう事実でございますから、こういうものをいただいておるわれわれとしては、しかしすぐそれに訴えるということじゃなくて、国民の皆さんのぎりぎりの努力というものにこたえるような対策をやることによって実態的に消費者物価を安定させる、このことを非常に大事だと考えておるわけでございます。幸い五十四年度目標を大体達成できた、五十五年度についてもいま努力して——野菜なんか、けさ農林水産大臣が報告いたしましたが、やはりああいう対策で一応改善の跡があるということをお認めいただければ、これから、いろいろ問題はありましょうけれども、われわれの全力を挙げての努力が実を結ぶというふうに、私どもとしてはそれを念頭に置いて一生懸命やっていきたい、後ろにちゃんとした法律も与えていただいている、こういうことで御理解をいただきたいと思っております。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 やはり物価の最大の大目付は経済企画庁でありますし、大臣に課せられた今日の日本経済の中における立場というものは非常に重要でございます。どうかタイミングのよい、また国民の生活を物価から守るために国民の声に耳を傾けて全力で対応されんことを強く要望しておきたいと思います。  さて、次に、時間も限られておりますので、私は、最近の牛乳の問題について、公取委員長も来られましたので、少しお伺いをしておきたいと思います。  牛乳というのは、これは国民の健康を保持するため非常に重要な、生活の必需品的になっているわけでございますが、最近、牛乳を客寄せの目玉商品として全国各地で連日のように特売価格で販売をしておる。それが、たとえば乳業メーカーから仕入れている千ccの紙容器の牛乳が、百八十六円四十銭前後をはるかに下回りまして、ひどいのになりますと、百二十円から百五十円で販売されておる。ときには目玉商品として百円、こうした乱売の傾向も非常に顕著になっている、こういうことが言われているわけでございます。  きょうは時間も限られておりますので、結論から申し上げますが、公取委員長に私はまずお伺いしておきたいのですが、こうした牛乳をスーパー等において、たとえば独禁法による牛乳の特殊指定、この実施については公取委員長としてはどういうふうに検討され、また考えておられるか。たとえばこういう牛乳の特殊指定というものを実施することによりまして、不当廉売の禁止、あるいは差別対価の禁止とか、あるいは優越地位の利用の禁止とか、ただいま申し上げましたような顧客誘引の禁止、スーパー等において牛乳を目玉商品として利用することの禁止、こうした問題について、公取に対してもいろいろと苦情なり相談も来ていると思いますが、まずこの点についてはどのように検討され、現在どういう見解をお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  51. 橋口收

    ○橋口政府委員 御質問がございましたのは、不当廉売一般の問題と申しますよりは、牛乳に関しての不当廉売の問題が中心であったと思います。この問題につきましては数年前から、主としてスーパー等におきまして牛乳を目玉商品として廉価販売をする、その廉価性が仕入れ原価を下回っているのではないかということにつきまして、主として牛乳の専売店の方から公取に対しまして具体的な陳情なりあるいは具体的な事件についての申告があったわけでございまして、これは、先生御承知のように、毎年大変な件数に上っておるわけでございます。のみならず、公取に対する申告の件数等は、一昨年に比べますと昨年の方が約五割ぐらいふえてきておるわけでございます。率直に申しまして、私どもといたしましては、牛乳の問題につきましては頭も痛めておりますし、また手もやいておるところでございますが、しかし具体的な申告がございました場合には、公正取引委員会の審査部の中にございます申告係の方におきまして、具体的な件数、事件につきましては処理をいたしておるところでございます。  ただ、いまお話がございましたように、牛乳の問題につきましては、そういう具体的な案件に対する処理等の問題だけではなくて、取引の形態そのものに対して何らかの規制を加えるような内容を伴う特殊指定をしたらどうか、こういう御意見でございまして、また、業界の方からもそういう御希望というものはかねがね承っておるところでございます。われわれといたしましても、特殊指定をすることが可能かどうかということについてまず検討をいたしておるわけでございまして、特殊指定の問題につきましては、御承知のように、かつて一般的に不当廉売についての特殊指定をしたいということで、昭和四十八年に公正取引委員会としてはある種の案をつくったことはございますけれども、この問題につきましては、本来不当でない廉価販売であればこれは一般消費者の利益になるということで、消費者団体を中心とする反対の声が強くて、この案につきましては一応たな上げになっておるわけでございます。  したがいまして、具体的な商品、ケースにつきましての特殊指定が可能かという問題が次にあるわけでございまして、それの具体的な商品、ケースとしましては、確かに牛乳が一つの大きな課題であるというふうに考えられるわけでございます。ただ、特殊指定をいたします場合には、商品の特性とかあるいは取引の形態等につきまして相当程度調査をする必要もございますし、何よりも取引の形態なり状態によりまして、一般的に公正競争阻害性があるかどうかということが一つの要件になるわけでございますから、実際に仕入れ原価よりも安い価格で販売しているという事実だけで直ちに独禁法違反というふうに決めつけるわけにもまいらないわけでございますから、審査部の方でいたしておりますのは、具体的なケースについていわば注意を喚起しておるわけでございまして、その注意を喚起しましたケースにつきまして、おおむねこちらの指導に従っておるところでございまして、当面はそういう具体的なケースにつきまして大変な事務量になるわけでございますけれども、しかし、一般の消費者の立場なり、あるいは牛乳専売店の利益ということも考えまして、そういう行政上の配慮をいたしておるところでございます。  特殊指定一般の問題につきましては、従来検討をいたしておりますが、まだ成案を得るところまで至っておりません。ただ、そうは申しましても、牛乳問題というものが依然として問題として解消しておらないわけでございますし、私どもの方の事務量というものも大変な量に上っておるわけでございますから、何らかの方法によりまして、こういう問題が少しでも解決する道があればいいなと思って現在模索しつつあるというのが現状であろうかと思います。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 公取委員会の方でも牛乳に関する不当廉売措置の件数、皆さんの方のデータをいただきましても五十三年度では申告件数二百八件、警告等の措置件数は百七十四件。五十四年度については三百八十四の申告件数に対して二百九十八の警告の措置、そうした件数で非常に大変な数があるわけですね。このいわゆる牛乳の特殊指定について、たとえば暫定的に期限を限って実施に移す、こういうような考え方は検討できないかどうか、この点についてはいかがでしょう。
  53. 橋口收

    ○橋口政府委員 特殊指定の内容の問題と扱いの問題とあろうかと思いますが、時限的にやったらどうかというのは新しい御提案でございまして、これは検討いたしてみたいと思います。ただ、先ほど来お話の中にもございましたように、牛乳の不当廉売というのはいろいろな局面なりあるいは角度を持っているわけでございまして、一つはスーパー等が目玉商品としておとり販売に使うという問題もございます。したがいまして、こういう問題につきましては、不当廉売そのものの問題ではなくて、表示の問題ということもあろうかと思います。そういう点につきましても工夫の余地があろうかと思いますし、たとえば近く公示をすることにいたしております不動産につきましてのおとり販売の表示の禁止の措置があるわけでございまして、これは不動産につきまして特に緊要性が高いということで取り上げた問題でございますけれども、しかし、不動産のみでなくて、商品一般につきましてもおとり販売について規定をしてほしいという声があるわけでございます。したがいまして、そういう問題の一環としていま取り組みつつあるわけでございますから、牛乳問題もそういう問題の中で処理できる部分もあるのではないかと思うわけでございまして、それだけですべて問題が解決するかと言えば、必ずしもそうとは思いませんが、そういう方角でしばらく努力をいたしてみたいと思っております。いま先生がおっしゃいましたずばり不当廉売の特殊指定というのはなかなかむずかしいんじゃないかということを率直な感じとして持っているところでございます。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 農林水産省にちょっと伺っておきたいのですが、特に最近、牛乳の家庭配達について、やはり妊産婦だとか乳幼児あるいは寝たきり老人、病人、こうしたところに対する宅配、これは社会的にも大変重要な役割りを果たしている、私はこう理解しているわけでございます。特に宅配牛乳の消費の拡大の問題と、この流通合理化に何らかの形で大幅の国庫の助成措置、特に国庫補助というものを検討していくべきではないか、こう思うわけでございますが、この点について農林水産省の御見解を伺っておきたいと思います。
  55. 芝田博

    ○芝田説明員 先生御指摘の宅配と申しますか、牛乳専売店によります戸別配達というものは、牛乳の安定的な消費の拡大にとって非常に重要な役割りを占めている、われわれそういうふうに認識しているわけでございまして、消費拡大の一環としても宅配の維持と申しますか、これを非常に重要なことと考えて種々の対策を講じているものでございます。  御指摘ございました妊産婦牛乳、それからそのほかに類似のものといたしまして幼稚園牛乳、老人牛乳等につきましては政府の助成、具体的には畜産振興事業団の助成とそれから生産者及び販売業者また処理メーカー三者から拠出されまして設立されましたところの全国牛乳普及協会からの助成、そういうものを合わせましてそれぞれ値引き販売と申しますか、たとえば五十五円程度通常価格の牛乳、二百CCでございますが、妊産婦牛乳の場合には、両者の助成を合わせまして三十五円程度消費者に供給するというような助成事業を五十四年度から開始したわけでございます。そしてその大きな担い手といたしまして、学校給食のようにメーカーダイレクトよりは、販売店の方々の活躍によってこれを推進する。基本的にはそういう立場をとっておりまして、妊産婦牛乳、幼稚園牛乳、老人牛乳、老人ホームにおける集団飲用でございますが、そのようなものを五十四年度に推進してまいりました。残念ながら五十四年度では少し事業の開始がおくれまして所期のとおりの成果を上げていないわけでございますが、五十五年度におきましても引き続きましてこれを推進してまいりたいと考えておるわけでございます。  ただ、先生御指摘のもう一点の、そのような牛乳専売店の助成対策という点についてでございますが、これにつきましても五十四年度までに種々の助成を行っておりますが、大きく分けましてハードウエアの面とソフトウエアの面とございまして、ハードウエアといたしましては牛乳の共同保管配送施設、ミルクデポと呼ばれておるものでございます。これの設置に対する助成を行っております。あと経営の合理化という観点からモデル地域における牛乳販売店の合理化の手法、マニュアルの作成に対する助成、コンサルタントによる牛乳販売店経営の指導に対する助成というソフトウエアの面の助成も行っておるわけでございます。五十五年度におきましても、引き続きましてこの共同保管配送施設の設置とそれから牛乳販売店の経営指導に対して助成を行っていく予定でございますが、ただ先生の御指摘のように、この点につきましては事業といたしましてなかなか困難もございます。特にハードウエアでございます共同保管配送施設の設置の助成は、協同組合をつくってもらって共同施設としての利用を前提としておるわけでございますが、その協同組合というものの設置がなかなかむずかしいということで、実は予算上予定している個所をなかなか消化できないままに来ているという点が問題でございまして、その点で予算額といたしましては五十五年度少し減っておるわけでございますが、われわれとしましては、この事業のPRに努めましてそのような共同化の意識というものを高めまして、要望が強まってくればまたこれを拡充をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ大幅な国庫助成を検討していただけないか。要望が強まってからというのでなくして、現在牛乳の需給関係も非常に需要と供給のバランスが崩れておるわけです。そういう点でやはり消費の拡大あるいは流通の合理化には、国民の健康保持という立場から私は積極的に取り組んでいくべきではないかということで、どうか大幅な国庫助成といいますか、もう少し力を入れていただきたい、このことを要望しておきたいと思いますが、これについて一言見解を伺っておきたいと思います。  時間もありませんので、あわせて飲用乳価の決定をするについてルール化をもっと積極的に推進していくべきではないか、こう思うのですが、この点についても伺っておきたいと思います。
  57. 芝田博

    ○芝田説明員 御要望の点でございますが、第一点につきましては、われわれといたしましてもこの牛乳販売店の育成ということに今後とも努力してまいりたいと思っております。ただ中小企業に対する助成といたしまして非常に類似のものとの横並び等ございまして、にわかに国庫からの大幅助成という点についてはいろいろむずかしい点もございますが、基本的にはこのような重要な販売店の経営の合理化、それによる安定的な消費の拡大という点についてさらに努力を続けてまいりたいと思います。  第二点の飲用乳価決定のルール化と申しますか、その点についてでございますが、これは非常に重要な問題でございまして、御存じのとおり以前は国のかなりの行政指導というふうなものが加わって事実上指導的に価格を決定しておったわけでございますが、これにつきましては非常に消費者の方からの反発もあり、いろいろな問題があるということから、現在は飲用乳の価格の決定は業者間の自主的な交渉ということに任されておるわけでございます。そのために非常に長い時間がかかってなかなか決まらないというようなことがございまして、そのルール化は強く関係者から要望されておるわけでございますが、実はこれにつきましてルールを定めるという点につきましてはわれわれも種々検討しておりますが、やはりカルテル行為的なものの助長のような面を持つことになりまして、常に独禁法との問題が非常に問題になってくるという点で非常にむずかしいことがございますので、公正取引委員会とも連絡をとりながら検討しておりますが、さらに検討の時間をかしていただきたいと思う次第でございます。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 この牛乳問題で大臣に所見を最後に一言だけ伺っておきたいのですが、やはりわが国の酪農乳業界の当面の最大課題は牛乳の需給均衡ですね。これをどう維持していくかという問題であろうと思うのです。やはりこの牛乳という問題は国民の健康を保持するために非常に大事な飲用水だと私は思うのですね。それだけにやはり特に宅配牛乳、これは小売——臨時雇いを入れましても大体三人くらいですね。二万軒あると言われておるのですけれども、大体六万人の方がタッチをしておる。こういう方々がやはり最近のいろんな大スーパーの進出の中でいろいろと、先ほど大臣がおっしゃった自由競争の原理を非常に打ち破ったような形の目玉商品だとか不当廉売ですね、そうした中で中小零細の牛乳小売販売店の生きる道が非常に閉ざされてきておるわけですね。しかし国民の健康を守るという立場からは非常に重要な中小企業としての大きな経営の立場を与えられていると思うのですね。しかし牛乳それ自体は需給のバランスが非常に崩れている。値崩れも起きる。場合によっては生産者段階から横流しをされているようなそういう疑いもあるという情報も多々あるわけですね。やはり健全な形で牛乳の小売店の育成それから国民の健康の保持、こういった問題の均衡を保っていくことは非常に大事な問題である、こういうことでいま公取委員長あるいは農林水産省の当局の方々にそうした健全な発展をしていくために努力いただきたい、こういう強い要請をしたわけでございますが、特に大臣としてこの点についてどうお考えになるか、伺っておきたいと思います。
  59. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 牛乳につきましては、いま宮地委員が言われたように、これは国民健康保持の上から大変大事な関係を持っておるというふうに考えます。やはり日本では宅配というのですか、配達の制度、これが大変大事な役目をいままで果たしてきたことも御指摘のとおりだと思うのですね。だんだんスーパーその他も進出いたしまして、消費者のいろいろ賢明な選択というふうなこともございまして、そこに若干のフリクションというか、大きな変動の状況もあるわけでございますが、いま公取委員長なり農林水産省の担当者からお答えを申し上げたように、堅実な酪農産業、そしてまた国民の消費の着実な発展、これをにらみ合わせながらわれわれとしても一層安定的にこうしたものが今後進んでいくことを心から希望します。いろいろ流通機構の問題等についてもわれわれも重大な関心を持っておりますが、日本のよい慣行から出てきておるもの、これも非常に大事なものでございますから、そういう点についても十分配慮をしながら健全な育成を図っていきたい、かように考えます。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、金の先物取引の問題について少しテーマを移してまいりたいと思います。農林水産省の方はお帰りくださって結構です。  最近、いわゆる金の先物取引という名のもとにいろいろブラックマーケットにうごめく詐欺師といいますか、そういうようなことで消費者の間でも金の先物取引に対して全国的に大変な被害が目立ってきているわけでございますが、まずこの被害の状況について、警察庁来ていると思いますので、簡単に御報告いただきたいと思います。
  61. 佐野国臣

    ○佐野説明員 被害の状況でございますが、昭和五十二年、五十三年当時は私ども承知しておりますのはそれぞれ一件程度でございましたが、昨年になりまして相当急激に被害ないしは検挙状況が伸びてございます。  具体的に申し上げますと、昨年の場合ですと十二都府県で十四業者を詐欺の容疑で検挙いたしてございますむこのほかにも新潟では二業者を詐欺の疑いで捜索しておるという状況でございまして、この過程におきまして、逮捕した被疑者は三十五人、それから任意取り調べ対象者は二十人という状況でございまして、いずれも適用罪名は詐欺罪ということでございます。なお事件に関連いたしまして警察が承知してございます被害者は、現在までの捜査では約六百人、被害額がおおむね十七億程度ということでございます。  以上、取りまとめ御報告申し上げます。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 たとえば、これは悪徳商法被害者対策委員会に寄せられた訴えをもとにしまして、その会がまとめた金先物取引業者ワースト十七、こういうことでそのデータによりますと、これは皆さん御存じのように堺次夫さんという方が会長をしてやっておるわけでございますが、たとえば新潟県の地域で被害のあった、これは新潟県に本社のある関係でございますが、件数にして、これは訴え件数がAランクになるわけですが三十二件、金額にいたしますと二億四千三百九十八万円、大変な金額になるわけでございます。また、あるBという会社は訴え件数が十八件で、これは名古屋にあるようでございますが、中京地区ですね。これは三億五千五百十四万円。Cという会社は、訴え件数が十七件で、被害総額が約二億四百三十二万円、これは石川県、北陸を一円とした岐阜地域が非常に多いわけでございます。また九州に参りましても、Eというある会社は十四件、金額にしましても七千七十一万、これは福岡県に本社があるようでございますが、主な被害地域は九州、山口、ひどいのは新潟、山形、長野、愛媛、こういう全国的に非常に大きな金の取引をめぐる被害の実態がどんどんここのところ出てきているわけですね。  それで、つい先ごろも盛岡で大損を苦にして自殺をするという大変に事件が深刻になってきているわけでございますが、これについてやはり国民の間で、どうも政府の野放し行政に対しての厳しいいわゆる批判が高まってきておりまして、あすはこの国会内で撲滅大会を予定しているということで、この悪徳商法の民間の対策委員会が立ち上がってそうした運動に乗り出していることで、全くこの点についてはわれわれも敬意を表するわけでございますが、政府は何をやっているのだ、こういう怒りの声もやはり日増しに高まっているわけでございます。  これに関係して、まず法務省と通産省にこの問題についてどのように取り組んでおられるのか、その点についての経過を伺っておきたいと思います。
  63. 根來泰周

    根來説明員 ただいま警察庁の方からお話がありましたように、私どもの方は犯罪取り締まり、あるいはその事件の処理という観点からこういう事件に関与しておるわけでございますが、現行法で許される限りの法律によりまして、警察当局と協力いたしまして事件の処理を行っているところでございます。
  64. 細川恒

    ○細川説明員 通産省は、大きく分けますと二つの柱で対策を推進しておるわけでございます。一つは啓蒙普及というたぐいでございます。もう一つは現物流通機構の整備ということでございますが、もう少し詳しく御説明をいたしたいと思います。  まず前者の方でございますが、一般大衆の金に対します関心が強まっているにもかかわりませず、金の取引に関する知識が不足しているということにどうも起因しているところが大きいというふうにも考えておりまして、そういう観点から国民に対する地道な啓蒙普及、PR活動によって被害の防止に努めるということが重要であると考えてきておるわけでございますが、そういう観点から地方公共団体の消費者行政担当者あるいは蓄財に関心を有する人々と接触する機会が大きいと見られます銀行とか証券会社といった諸機関、さらに農村地域にも被害者が見られるということから農業協同組合、また金地金を実際に扱います金地金販売店等の関係者に対しまして、悪質な金取引による被害の防止のための説明会を各地域ごとに昨年行ってまいりまして、注意を喚起するとともに、これら関係者に対して被害防止のための協力の依頼を行ってきたわけでございます。さらに当省発行の刊行物等によりまして、一般消費者に対する注意喚起も随時行ってきているわけでございます。  第二の点でございますが、被害を受けた人々の間には、金の現物購入を意図したにもかかわらず被害をこうむったという場合も多く見られますために、一般消費者が信頼できる店で金の現物を売買することができるように、昨年末に金地金の流通機構の整備に努め、昨年末にその金地金流通協会を設立したわけでございます。この事業の効果が上がることを期待しておるわけでございますが、事業の中にも登録事業というのをこの協会の事業にいたしておるわけでございまして、悪質な業者と真っ当な業者のいわゆる両者を分ける識別効果というものが早急にあらわれることを期待いたしておるわけでございます。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 特にこのいわゆる金の先物取引というものについて、結果的には詐欺とか横領とか背任という形で検挙しているようでありますけれども、やはり商品取引所法の第八条の解釈について、どうも法務省と内閣法制局の間に若干の食い違いがあるように見受けられるわけでございます。やはり商品取引所法の範畴で、これには罰則規定もあって、第八条の一項違反になれば、三年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金、または併科、二項違反であれば、一年以下の懲役もしくは五十万円以下の罰金、または併科ということになっているわけですね。確かに詐欺の方が重いというあれもありますが、いわゆる金の先物取引、この先物取引であるかどうかという非常にむずかしい面も多々あるわけでございますが、なぜ内閣法制局と法務省の間に解釈において食い違いがあるのか、これは非常に素朴な国民の立場から見ますと大きな疑義を感じるわけですね。きょうは内閣法制局を呼んでおりませんが、この点について私は調整する必要があるのじゃないか、こう思うわけですが、法務省としてはどうお考えですか。
  66. 根來泰周

    根來説明員 御指摘のように、内閣法制局のかつての御意見として第八条の解釈が示され、また私ども検察庁におきまして、具体的に札幌の検察庁でございますが、具体的事件を処理する際に、商品取引所法第八条第二項の事件につきましてこれは犯罪にならないという趣旨で不起訴にいたしたことがございます。もっともこの事件は詐欺で起訴しておりますけれども、商品取引所法第八条の事件といたしましては罪とならないということで不起訴にいたしております。  私どもの解釈でございますけれども、商品取引所法は、同法二条二項に定める商品について、その価格の形成及び取引の公正を確保するとともに生産及び流通の円滑化を図ることを目的として、これは第一条に書いておるわけでございますが、その先物取引を商品取引所の開設する商品市場に集中して行わせるために、同法八条において「商品市場に類似する施設」の開設を禁止したものである。したがって、ここで言う「類似する施設」というのは、同法第二条二項に定める商品の先物取引をするために開設された施設であって、同条三項に定める商品市場に類似するものに限られるというふうに解釈するのが妥当であろう。したがいまして、同法二条二項に金が掲げられていない以上、金の先物取引に関して同法八条一項を適用することは困難であろう、こういう見解で札幌地検では不起訴にしておるわけでございます。この見解が正しいかどうかということは御批判のあるところだと思いますが、現在、法制局あるいは通産省と解釈についていろいろ協議をいたしているところでございます。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 ネズミ講のときもそうでございましたが、最近は公務員を退職した方々に非常に被害が多いという状況のようですね。非常に賢い公務員の皆さんがなぜ退職金をこんな金にだまされるのか、私も不思議でならないのですけれども、いずれにしても全国的に大変な被害者が出ておるわけでございます。  経済企画庁の国民生活局長さん、お帰りになって御苦労さまでございますが、国民生活センターとしてネズミ講のときと同じように少しわかりやすく、先ほど来からお話がありましたが、金というとどうも非常に大変な通力があるようでございまして国民にはなかなかわかりにくい、この危険性について金の先物取引というものに対するPR、これだけ多くの被害者が続出しているわけですから、やはりこの際積極的に対応すべきではないか、こう思いますが、この点について伺っておきたいと思います。
  68. 小金芳弘

    ○小金政府委員 国民生活センターがいままで金の先物取引に関連して行っております啓発活動は昨年テレビとラジオと刊行物等を通じましてやっておるわけでございますが、その主体は、要するに被害が発生しておるという実情とどういうふうにしてそういう被害に立ち至るかという経緯と、それから正しい取引というものに対する情報と先物取引というものを素人がやった場合にどういう危険があるのかということについて周知させるということを重点にしてやっておるところでございます。もちろんこの広報活動は今後とも力を入れてやってまいりたいと思っております。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣に最後に。最近のこうした悪質な業者による、特にそうした被害者の続出ということで、全国的に北海道から九州まで金の先物取引という問題で大変にだまされているわけですね。どういう手だてでだましているかということは本当は大臣にゆっくり御説明すると、大臣もこれは大変だということでおわかりになると思うのですが、大臣、これは昨年の十一月九日の朝日ジャーナルにがっちりと堺次夫さんという方が書いておりますので、後で読んでいただきたい。このやり方はもう明らかにだましにかかって計画的にやっておるのですね。それにまた国民の方々も多大な被害をこうむっている。ネズミ講についても当物価対策特別委員会に小委員会を設置して議員立法であれだけの法案を与野党合意の中で成立さした、私は物特委員会の大きな成果であったと思うのですね。そういうような事例を見ておりましても、今回の金の先物取引にまつわる大変な被害の状況を見ておりまして議員立法をつくるかどうか、これは一つの大きな課題といたしまして、少なくとも被害者をこれ以上出さないための政府としての対応を、特に消費者保護という立場から経済企画庁は積極的に取り組んでいただきたい。連絡会議もたまに持たれた経緯が過去にあるようでございますが、むしろ積極的に関係省庁の連絡会議を開いていただいて、この被害撲滅のために経済企画庁としてのできるだけの努力をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  特に、いま申し上げました商品取引所法の所管は通産省でございますけれども、実際つかまえていくと詐欺だとか横領だとか背任ということで、所管が法務省の方に行ったり警察の方に行ってしまう。通産省としてもいろいろ法解釈にお考えをお持ちでしょうけれども、まずこうした被害者をできるだけ最小限に食いとめる、さらにそれに伴ってのそうした悪質な業者に対しては現在の法的措置でどうしても逃れられるのであれば何らかの対応をやっていかなければいかぬ、こういうふうに思うわけでございます。大臣に最後に所見を伺って終わりにしたいと思います。
  70. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 この問題は予算委員会でも取り上げられていろいろ御議論があったようでございます。先ほど法務省、警察それから通産省からお答えがありましたように、国会の御質問等も大きな刺激になりまして、いま通産省も具体的な対策について、業者の登録制ですかそういうようなこともあわせていろいろ考えておられるようでございます。若干時間がかかっておりますが、ひとつ関係省庁でできるだけ早く対策を講じていただくと同時に、いまお示しのように被害者をこれ以上ふやさぬように処置が非常に大事だ。私どもは啓蒙宣伝といいますかこういうことをひとつ十分やりまして、消費者の方々に過ちなきを期していくような施策については一層力を入れてやっていきたいと考えます。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 環境庁、厚生省の方々には、時間が参りまして質問の機会がございませんで、大変失礼いたしました。  時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  72. 井上普方

    井上委員長 本会議終了後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後四時四分開議
  73. 井上普方

    井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岩佐恵美君。
  74. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず石油の問題につきましてきょうはお伺いしたいと思いますけれども、こういう「ペトロリアム・エコノミスト 日本語版」という雑誌がございます。これでアメリカ系のメジャー五社の利益、七九年一年間、つまり去年一年間で百十一億七千百万ドル、二百四十円換算で円に直しますと二兆六千八百十億円にも上る、これは前年に比較して六九%増の大幅な利益を上げている、こういう報告があります。この利益はあの一九七四年のパニックのときの四五%増である、こういうことになっているわけです。さらに問題なのは、このメジャー五社の利益がアメリカ国内よりも海外で大幅に伸ばしている、そういう実態があることでございます。  たとえば、エクソンは国内では昨年よりも三%増であるけれども海外石油ガスでは六七%、あるいはガルフは国内四二%に対して海外では一一九%、つまり二倍以上、そしてモービルは国内では三九%、海外では一三二%、二・三二倍、それからソーカルが国内では三八%、海外では七八%、そしてテキサコは国内で六六%、これはアメリカ国内ですね、海外では一四六%、つまり二・四六倍、このような膨大な利益を上げているわけです。この事実についてどうとらえられ、また日本としてどう対処していかれるつもりなのか、このことについてまず冒頭お伺いしたいと思います。
  75. 志賀学

    ○志賀政府委員 ただいま先生から御指摘ございました数字につきましては私どもも承知しております。増益状況といたしましては、いま先生御指摘がございましたように、各社の発表によりましても、アメリカ国内よりも海外での市場で収益を上げておるというふうなことが述べられていることも承知しております。この海外の市場の問題でございますけれども、たとえばエクソンでございましたか、彼らのレポートを読んでみますと、主としてヨーロッパ市場での収益というようなことがコメントしてあるというふうに理解しております。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては日本に対する原油安定供給の確保というのが第一というふうに考えておるわけでございまして、メジャーに対しましては従来からわが国に対する安定供給の確保の要請ということを機会がございますごとに要請をしておるところでございます。
  76. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 モービルという会社がございますけれども、これは外資系の会社ですが、このモービルの昨年の決算が出ているわけです。このモービルの五十四年度決算によりますと、純利益が五十三年の五十八億一千百万円から百八億一千七百万円、つまり五十億円、約倍近く、八六%もふえている。モービル自身がこれについて、モービルの広報部が出しているこういう資料がございますけれども、これを読んでも、「当期利益が前期に比べ増大した主要因として、製品販売価格上昇をあげることができる」、こういうふうな指摘をしているわけですね。私ども国民が石油製品価格高で大変苦しんでいる一方で、先ほど申し上げたように海外の大手石油会社はもうけている、さらに国内のこういうモービル等の会社がもうけている、これでは踏んだりけったりなわけですね。この点について、事実関係、そしてこれをどう考えられるのか、伺いたいと思います。  特にモービルの場合は前年に比べて販売量が若干減少しているのですね。それにもかかわらずこういうふうに利益がふえている。これはもうとんでもない事態だ。つまり国内での製品値上げが異常に行われた、つまり通産省が、あるいは政府値上げを野放しにした結果こういうことが起こったのじゃないかというふうにすら思えるわけで、その点について経済企画庁、そして通産省の考え方を伺いたい、こういうふうに思います。
  77. 志賀学

    ○志賀政府委員 モービルの五十四年度の決算状況でございますけれども、経常利益で二百六億円、五十三年度に比べましてかなりよくなっているという状況でございます。いずれにいたしましても、私ども従来から仕切り価格引き上げに対しましては厳重に便乗値上げのないようにチェックをしておるわけでございます。モービルにつきましても、そういう便乗値上げというようなことはないというふうに理解をしておりますが、一般的に申しまして、石油業界の五十四年度の収支予想でございますけれども、実は五十三年度にガソリンが過当競争によりまして、価格が非常に低落いたしました。それの回復が五十四年度に行われまして、その結果、石油産業全体といたしまして、五十三年度に比べますと、そういう面で収益状況がかなり好転しておる。その中で、外資系が比較的いいわけでございますけれども、外資系の場合に言えますのは、やはりガソリンのウエートがほかの民族系その他に比べまして非常に高い、こういったようなことも五十四年度の外資系の各社の収支状況に非常に影響したというふうに考えております。
  78. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 ただいま石油部長から御説明があったとおりでございまして、昨年来のOPEC原油価格高騰関係いたします国内石油製品価格への反映につきましては、元売りの段階で仕切り価格をチェックをいたしまして、不当な値上げが行われないような形で従来ともしているわけでございます。そういうことでございますから、その面から利益が過当に出るということはないわけでございます。  一方、五十二年、円高が非常に進行した時期におきまして、石油需給もかなり緩和をしたということから、一部の商品についての価格低迷があったということの反映が、いまおっしゃったようにガソリン等にあらわれてきているわけでございます。そういう低水準からの回復が一部の商品に見られたということと相まって収益の改善が出てきているということでございまして、そういう意味では、昨年来のOPEC値上げ影響についての価格監視というものの効果といいますか、それは価格にコストが反映するという形においては十分行われてきているということではないかと思います。
  79. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 具体的な細かいことでちょっとお伺いしますけれども、一昨年の十二月から昨年十一月までの原油値上がり幅、これは時間がありませんので、私の方で試算をしているので申し上げますけれども、七八年十二月CIF十三ドル六十九セント、これは百九十六円五十四銭換算で、一キロリットル当り一万六千九百二十五円、それが十一月にはCIFが二十四ドル三十七セント、二百三十八円四十八銭の換算で三万六千五百五十七円、約二万円、一万九千六百三十二円の値上げになっているというふうに承知をいたしているわけですが、この点、ちょっと通産省の方で確認していただきたいと思いますが、大体よろしゅうございますか。
  80. 志賀学

    ○志賀政府委員 いまおっしゃいましたのは、通関統計の数字でございますね。(岩佐委員「そうです」と呼ぶ)さようでございます。
  81. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この間の同じ時期の値上げにつきまして、一次から六次の石油製品値上げがあったわけですけれども、各社別の一覧表をつくってみたわけですね。そうしますと、ガソリンの値上げ幅が大体三万一千円から三万四千円になっているわけですね。原油値上がりが二万円ですから、明らかに一万一千円から一万四千円の便乗があるのではないか。それから、あと中間留分という形で出ているわけでございますが、これも見てみると、二万一千円から二万八千円の値上げになっていて、やはりその原油値上げとその差額がかなり出ているわけです。先ほどから、便乗値上げはございませんというような答弁があるわけですけれども、実際には、こういう数字からは便乗としか思えない実態が出てきているわけですね。この点について、実際どうなのかということを伺いたいと思うわけです。それから、モービルについて、先ほどちょっと何か、ことしだけすごくもうけたということではないようで、ことしというか、五十四年は八十八億円、八割の配当になっておるようですけれども、その前の年は四十四億円の配当、その前年は六十六億円の配当ということで、去年ががくんと減っているとかいうのじゃなくて、六十六億、四十四億、そして八十八億。やっぱりことしは相当製品の値上げがあったからよかったんだというふうなことで、去年に比べて悪いんじゃなくて、去年、一昨年と比べてもかなり五十四年はいいんだという話になると思うんですが、この二つの点について。一つはちょっと、一次から六次の事実関係でございますけれども物価局というか経企庁の方から伺いたいと思いますし、後の点についても、先ほどの答弁との関連であわせてお答えいただきたいと思います。
  82. 志賀学

    ○志賀政府委員 通関統計のCIFの上昇製品価格との関係でございますけれども、これはCIFに響いてまいりますのが、たとえば値上げの通告時期がいつであったかといったことであるとか、あるいはプレミアムの問題であるとか、いろいろな側面がございまして、CIFの値上がり製品価格値上げ額というものを直ちに比較するというのは、なかなかむずかしいところがあると思っております。  それから、原油価格が上がりますと、それに関連いたしまして、たとえば燃費であるとか、あるいはそういった調達資金がふえますから、それによる金利の増加であるとか、そういったいろいろな関連した費用がふえるわけでございます。そういったことを十分チェックをいたしまして、私どもとしては便乗値上げが行われないように監督をし、指導をしてきておるところでございます。  それから、モービルにつきまして申しますと、確かに経常利益で申しますと、四十七年度以降ずっとながめてみますと、かなり出入りがございまして、必ずしもそれほど大きな利益を上げてない時期もございます。ただ、いずれにいたしましても、私ども、外資系の各社に対しまして、先ほど申し上げましたように安定供給を要請をしておるわけでございますけれども、外資系におきまして、どの市場に原油をどういう形で配分していくかということを考えていきます場合に、歴史的な関係であるとか、そういった側面を重視して、従来日本市場に対して比較的供給を続けてきているわけでございますけれども、メジャー自身の原油の取り扱い量というのが、最近産油国との関係におきまして非常に縮小してきておることも事実でございます。それに関連いたしまして、やはり経済的な側面というものを、各メジャーにおきまして重視をする方向というのが出てきておる。私どもといたしましては、そういう側面も考えていかざるを得ないというのが実情だろうと思っております。
  83. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 第一次から第六次までの値上げのことでお話があったわけですが、その過程で、先ほどもちょっとこちらから御説明したわけですが、ガソリンについての価格の是正が行われているということは、他の全体の油種との関連で価格上昇が大きく出ているということでございまして、昨年来のOPEC上昇を反映したそれぞれの油種についての価格の配分というのは、ほぼ全油種同額の値上げということで今日まで推移してきているのではないかと思います。一部灯油等について他の油種よりも下回る価格決定も行われた時期もありますけれども、概して言えばそういう状況ではなかったかと思います。
  84. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私がいま数字を使って申し上げたことについて、本当に元売り仕切り価格がきちんと出てきていたり、あるいは原価が公開されればこの議論というのはもっと突っ込んでできると思うのですけれども、私どもがわかっている限りでは通関統計のCIFしかわからない。それが六回値上げが行われた最後の十一月の時点値上げのものが大体一カ月ないしは二カ月たって出てくるということで、その間のタイムラグをとって、ではそれが製品に一体どういうふうにはね返っているかという計算をすると、どう考えてもガソリンは一万一千円から一万四千円の大幅な値上げがあるし、また灯油についても同じように一万円内外の便乗値上げがあるというふうにしか思えないわけですね。それでモービルのこういう非常に率直に、企業としてもうかったのは製品販売価格を上げることができたからと、こう堂々と言っているわけですから、ここのところはやはり厳しく政府としては見ていっていただきたいというふうに思うわけです。  次に、昨年の原油の輸入量について、総量として一昨年より三、四%くらいふえているというふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  85. 志賀学

    ○志賀政府委員 暦年の数字がちょっと手元にございませんので申しわけございませんけれども年度ベースの見込みといたしまして五十四年度で見ますと、昨年五十三年度よりも恐らく若干上回るという感じでございまして、歴年ベースで目の子であれしますと、大体四%弱くらいふえるかなという感じでございます。
  86. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 灯油について販売量を去年の六月からずっと見てみますと、六月が前年比販売量が一〇六・五、これは多少多いんですが、七月が九七・二、八月が一〇六・六、九月が一〇一・〇、十月、需要期に入ってから九三・七、十一月が九九・二、十二月が八五・二、一月が九五・四と需要期に入って灯油の販売量がずっと減ってきているわけですね。ガソリンについて見てもかなり販売量が減っているというような現象があると思います。  一方、灯油の在庫について見ると、昨年秋からずっと在庫量がふえています。たとえば十月で見ると一〇七%、十一月も同じ、十二月が一一九・九%、一月が一二五・三、二月が一三二・五、これは政府が備蓄を、生産をしろということで指導した結果これだけ製品がふえているのだと言えば一つの成果とも言えるかもしれないのですが、一方、私ども国民が値上げによって買い切れなかった、寒いけれどもがまんしたという面がこの数字にあらわれてきていると思うのですね。ここから私はおかしいなということを一つ思っているわけです。  それは、従来ならこんなふうに量がだぶつくと価格は下がるわけなんです。それが下がっていない。しかも六回の値上げというのがこれだけ量がだぶつきながらちゃんと実行されている。ほとんど各社とも実現している。こういう点で非常におかしいなという気を持っています。量の締めつけあるいは売り惜しみ、このことについて本当になかったのかどうかですね。この点について経済企画庁の方から伺いたいと思います。つかんでおられたかどうかですね。
  87. 志賀学

    ○志賀政府委員 灯油につきましての販売状況あるいは在庫の状況は先生から御指摘があったとおりでございます。これにつきまして売り惜しみが行われていなかったのかということでございますけれども、私ども便乗値上げが行われませんように通産局あるいは自治体にお願いをいたしまして十分な指導監督をしておるわけでございますけれども、あわせまして、そういう売り惜しみというようなことが行われてはこれまた大変でございますので、そういう面につきましても十分指導をしておるところでございます。  それで最近の、私どもあるいは通産局に対します消費者からの苦情の状況から判断いたしまして売り惜しみが行われておる、灯油が手に入らなくて困っておるというようなお話は最近ございません。したがいまして、そういう面から申しましても売り惜しみが行われておるということはないというふうに思っております。  それで販売状況が、販売の水準が、確かに需要期に入りましても前年水準を下回って推移をしてきたわけでございますが、二月はちょっと前年水準を上回っておりますが、十月以降一月まで前年水準を下回っておりますけれども、やはりこれは一つには暖冬の影響というのがあっただろうと思っております。同時に節約ムードが浸透してきたというところにも原因があるのではないかというふうに思っております。
  88. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 私どもも昨年来、この灯油の需給について特に関心を持っていろいろな対策その他をとってきているわけでございますが、地方団体から個別に伺っているところで、特に北海道につきまして非常に問題があるかなというふうに最初考えていたのですが、需要期に入りましてほとんどの月におきまして希望どおり販売店で購入できるということが、毎月の集計に際してそういう形で北海道庁の方でもまとめてきておられますので、そういう状況につきましては逐一報告を受けてまいったわけでございます。そういうことで売り惜しみということはなかったのではないかというふうに判断しております。
  89. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私が入手しました資料があるのです。これはある県が責任を持って調べた資料で、昨年の七月から十二月までの間の調査結果をあらわしたものでございますけれども、これで見るとすべての調査地区において灯油、軽油、A重油について入荷量を制限されている、つまり元売りからの締めつけがあるんだ、そういう実態が明らかになっているわけですね。しかもこの資料について見てみるとこれは当然経済企画庁に報告されている資料ではないかというふうに思われる資料なんです。私はこれは大変重大なことだというふうに思っているのです。国民の立場に立って、先ほど同僚委員からも質問がありましたけれども国民生活安定緊急措置法あるいは生活関連物資等の買占め及び売惜しみ防止法あるいは石油需給適正化法、こういうものを国民生活を守る上で発動しなければならないんじゃないか、こういう要求が非常に高まってきたわけですね。政府としても何らかの調査をされていたんだろうと思います、こういう法律に基づいて。その結果の調査の一つのデータだろうと思うのですが、これがこれで見る限りにおいては七月から十二月まで歴然と元売りから締めつけられていたというような、入荷量を制限されていたというような事実が明らかになっている、このことについて一体本当に知らないのかどうかということを伺いたいのと、それから、こういう販売制限というのがあったからこそ、私が先ほど申し上げるように量がだぶついている中で六回もの値上げがすんなりいって価格の暴落がなかったということがあったんだなと得心できるような資料であるというふうに思うので、その二点についてお伺いをしたいというふうに思います。
  90. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 昨年から石油関係の流通に非常に大きな変化が起きまして、特に業転物というふうな取引形態がすっかり影をひそめたわけでございます。そういうことになりますと、元売りから未端のスタンド、それから小売商店に行く流れが変わってまいりますから、そういう意味では流通形態が変わる過程で非常に摩擦現象が起きて十分に石油の量が従来のように確保できないところも出てきたわけでございますが、そういう中で一部の店におきまして十分な従来のような量を入手できなかったということがあったことは事実だろうと思います。そういうことでございますので、それがまた末端の需要者にまで影響して、新しく居を構えたような人とかそれから転勤してきたような人に対しての需要がやや円滑を欠くという面もあったりいたしましたので、通産省の方で個別対策を非常にきめ細かくやられたわけでございます。地方公共団体もそれに協力してやっていただいておるわけです。そういうことでそういう効果が出て全体として、もちろんその背景には節約ということもあったと思いますが、この需要期中の需給というのは円滑に推移することができたのではないかというふうに思っております。そこでどうも石油といいますのはもともと量が多くあれば安くなるし量が足りなければ上がるというようなことについての非常に限界的な数量が問題になるところが大きいわけでございますが、そういうこともありますので、政府全体としてともかく供給量を確保するということに全力を挙げてきたわけで、そういうことがありました関係で心配されていたような便乗値上げ的なことが比較的少なく済んできているのではないかと思います。その過程で値上げの方はOPEC上昇を反映して上がってきておりますが、その過程で通産省が大もとでチェックをしたということが全体の価格形成に当たって不当な行為が行われなかった、そういう一つの大きな原因になっているのではないかと思っています。
  91. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、いかがでございましょうか、私先ほどからメジャーのもうけ、そして国内ではモービル等が決算が出ているのでわかっている限りそういう国内石油会社のこの期におけるもうけ、それからまた便乗というふうに思われるようなそういう資産、そして量がだぶついているにもかかわらず価格がなぜ下がらないか、そういう原因について公共的な機関ですらこういう締めつけの調査がきちっとやられている、そういうようなことをずっと総合するとやはり十分物価対策がこれらから見て行われてきたというふうにはどうしても思えないわけですね。たとえばこういう調査がないならば別ですけれども調査があるわけですね、厳然として。これは見たか見ないかということはちょっとお答えがないのでわかりませんけれども、いずれにしろ見てないはずがない、政府に報告されているものですから。こういうことからも、わかっていてしかも国民の目にはなかなか触れにくい。この資料を入手するにも大変私ども苦労しているわけでございますが、そういう中で私はいままでの物価対策についてどうも十分であったというふうには思われないわけですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  92. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど来通産省及び私の方からお答えをしたように、まずメジャーの問題はこれはやはり原油全体としてのシェアは非常に低下しておることは岩佐委員も御承知のとおりですが、大変有利なことだけはがっちり握って低い原油で確保しておる、それが利益につながっておる面も相当あるんじゃないか。われわれとしては大きな政策としてメジャーに対する依存度がどんどん低下することはやむを得ないということで、DD、GGに切りかえてやっておることもこれもまた岩佐委員御承知のとおりですね。そういう政策で非常に努力をしてとにかく必要量を確保してきたということは、私はこれは通産当局は大変よくやられたように思うのです。  さて問題は、国内においていわゆる元売りの仕切り価格がどういうふうに末端にまでよく守られておったか、これに適応した消費者価格が実現しておったかという点についていま疑問を呈されたわけですね。やはりこういうときはもう本当にいろいろの情報をわれわれも努めて入手するように、努力しておりますが、場合によったら岩佐委員御入手のその資料をひとつはっきりとこういうところはどうなんだというふうに出していただくような必要も私は感ずるので、これからやはり末端に対するわれわれの情報の提供、末端からの情報の入手、そういう点に遺憾なきを期してそういう疑惑といいますか不信感のないような行政をやっていく必要がある。ただ全体として需要供給が、供給が若干上回るような状態であるという事実に立脚をして考えていきますと、私はまあ大体において需要供給の関係から言うと日本の石油の消費行政というものはいままで比較的うまくいっておるんじゃないかと思いますが、中にもしそういう点についてわれわれの知らないような状況がありましたら、これはもう進んで御提供いただいて事実の解明をする必要がある、こういうふうな印象を先ほど来持っておるわけであります。
  93. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この問題については私は情報というものが国民に知らされない、政府自身が知っていて知らされてない部分というのがあるんではないか、そういうことについて非常に一つ不安を持っているということであって、恐らく十分政府自身が御存じな資料なんではないかというふうに思っているわけです。  それから、私も長年灯油の問題では消費者側から運動をしてきました。そういう中で在庫がある一定量ふえると必ず値崩れを起こす、そういういままでの関係というのがあるわけですね。それはもう勘みたいなもので、業界もわかるし、また長年運動をやっている消費者側にもわかるというものがあるわけですね。そういう感じからいって、やはり七九年から八〇年にかけての灯油の事態というのは大変異常だったのではないか。やはり量のだぶつきがあって暖冬であるにもかかわらず価格が下がらなかった、これはやはりおかしい、そういうふうに思うわけです。  それの一つの指摘として、私十二月六日の当委員会で申し上げましたけれども、昨年実績主義という、そういう量のいわゆる系列を促進するような締めつけ、そういうことが行われているのではないか、この点について指摘をしたわけでございますが、公正取引委員会の独占禁止法研究会から三月七七日付で「流通系列化に関する独占禁止法の取扱い」という研究会の報告が出ております。この中で「流通系列化のデメリット」という指摘があって、たとえば「販売業者間の競争の制限によって価格が硬直化し、また、価格水準の維持・引上げが容易になる」、それから消費者の側からのデメリットを次のように指摘することができるということで幾つか指摘していますが、たとえば「価格が硬直化し、また、価格が競争的水準により高く維持される」それから「流通系列化による超過利潤が系列内部に留保され、消費者に還元されにくい」こういう指摘があります。さらに「流通系列化は、多くの場合、製造段階における寡占体制の維持・強化のための手段となっており、また、製造業者と販売業者との間の支配・従属関係を前提としているといえる。」こういう正しい指摘というか、私はこれ読んでなるほどというふうに思ったわけですが、こういう公取自身が独禁研の場で研究をしているこのことについては、前回委員会でもちょっとこういう一端が紹介されたわけですが、今後この問題について公正取引委員会としてどういうふうに取り組んでいかれるのかということを伺いたいと思いますし、また先ほど私が紹介したある県の系列支配の締めつけの実態の調査でございますけれども、こういう調査等についても、私は当然公正取引委員会が行ってしかるべき種類の調査でもあると思いますので、今後こういう問題についてどう取り組んでいかれるのか、その二点について伺いたいと思います。
  94. 橋口收

    ○橋口政府委員 第一の問題でございますが、三月十七日に独占禁止法研究会から「流通系列化に関する独占禁止法上の取扱い」と題する研究会の報告書をちょうだいしたわけでございます。これは、いま先生がお読みになりましたように、流通系列化のメリットとデメリットとを評価をいたしまして、競争政策の立場からデメリットがより大きいという評価を示しておるわけでございます。ただ、これは研究会から公正取引委員会に対する報告でございますから、直ちに行政方針となるものではございませんが、しかしわれわれに対する一つの指針でもございますし、またガイドラインでもございますから、この研究の成果を踏まえまして行政を展開していきたいというふうに考えております。  流通問題につきましては、御承知のように一九八〇年代における競争政策上の最大の課題としていま本格的に取り組んでおるところでございますが、十数品目の品目を選びまして、その流通の実態につきまして調査をいたしておるところでございますが、その中に石油も一つ入っておるわけでございます。石油につきましては、何分にも膨大で複雑な業界でございますから、調査をいたしますには相当の時間の経過も必要でございますから、まず二段階に分けまして、輸入、精製、元売りの上部段階と申しますか、そういうものにつきましての調査をいたしまして、これにつきましてはおよその調査の結果が出ておるわけでございますが、ただ、まだ外に向かって公表するほどの念査を経たものではございませんが、大体調査を終わっておるところでございます。  ただ、問題はそれから先でございまして、卸、小売の段階がどうなっているか。いまおっしゃいましたような流通系列化の問題は、単に上流の段階だけの調査では不十分でございまして、それが中流、下流と下がりまして、どういう系列化の実態が生じているか、それに伴っておっしゃるような弊害があるかどうか、これは今後の調査でございまして、ことしから本格的に取り組むことにいたしております。  第二の問題としまして、昨年の十月、十一月ごろ系列による締めつけがあったかどうか。原油事情等から見て製品が過剰になっているにもかかわらず値段が下がらなかったじゃないかというような御指摘でございますが、この問題につきましては、昨年の秋は主として灯油の抱き合わせ販売につきましての申告が一般の消費者からきておるわけでございまして、これは前回の第一次石油ショックのときは百件を超える件数の申告があったわけでございますけれども、今度は大体数件の申告でございまして、これも大体お米とか家電製品との抱き合わせでございますが、こちらから注意いたしまして問題は一応解消いたしております。それから同時に系列の影響等がございまして、系列外のものが品物が不足になりましたときは締め出しを受ける、過剰になりましたときはむしろ押しつけられる、いわゆる業転玉が妖怪のごとく石油業界を排回するという事態が一昨年の秋ごろにはあったわけでございまして、そのときは確かにガソリン価格等は大幅に下がっております。一リッター八十円台のガソリンが出て不当廉売として取り締まりを行うべきだという申告もございまして、われわれも必要な措置をとったこともございますけれども、昨年になりましてから一転いたしまして、むしろ末端におきます商業協同組合におけるカルテル行為等がございまして、これは四件摘発をいたしまして課徴金をすでにちょうだいいたしております。したがいまして、問題は元売り、卸、小売の商品の流れる過程におきまして、おっしゃるような力の優越的地位の乱用によって系列外に対して差別的な取り扱いをするかどうかという問題でございまして、これにつきましては制度的、組織的、継続的にそういう取り扱いをするということになりますとこれは問題でございますけれども、しかしやはり商売でございますから、従来のいろんな経緯もございます。したがいまして、競争政策の立場から一概に一方的に適当でないというように決めつけることもなかなかむずかしい面があるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましてはやはり石油業界全体の構造を把握することが必要だということで、輸入、元売りの段階から末端までの調査をいまやりつつあるわけでございまして、この調査の結果がまとまりますと、石油業界の持つ問題点、われわれもある程度の問題の把握というものには迫りつつあるわけでございますけれども、しかし末端までとらえて石油業界全体としてどういうところに問題があって、どういうところを直せば問題が解消するかということにつきましては、もう少し時間をかしていただきたいと思っているわけでございます。大体一年程度たちますればおよその見当がつくのじゃないか、こういう段取りでいま調査を進めておるところでございます。
  95. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間がありませんので最後に、また四月から石油製品が六千円から七千円の値上げをするというような事態になっています。私は気になる資料がちょっと手に入っているわけですが、業界筋で五十四年度石油製品の販売量が、ガソリンは対前年比で九五・九、灯油が九一、軽油が一〇一・一、A重油が九五・一、B重油が八三・二、C重油が八七、特に灯油については日石が一〇〇%であるだけで、出光八八%、共石九一%、三菱石油が九二%、丸善七八%、大協九六%、昭石八四%、シェル九〇%、こういうふうに昨年に比べて販売実績が非常に悪いわけですね。こういう中で、量が売れないからもっと価格を上げないとどうしても採算とれない、だから思い切って高価格にするんだ、そういうような石油業界の姿勢があるというふうに聞いているわけです。  この石油の問題は、外国が上がるから仕方がないということで野放しにしておけばますます大変な事態になるというふうに思いますので、最後に大臣からその辺を具体的にどうされるかということを、先ほどからもときどきでは伺っておりますけれども、総括的にお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  96. 志賀学

    ○志賀政府委員 最初に私から、四月に予定されております仕切り価格引き上げの実情についてちょっと申し上げさせていただきます。  現在元売り各社におきまして四月上旬に仕切り価格引き上げをする、すでにやったところもございますし、これから予定をしておるというところもあるように承知しておりますけれども、現在そういう動きがございます。  今回の元売り仕切り価格引き上げ背景でございますけれども要因でございますけれども、これは前回の仕切り価格引き上げ、これが一月にございました。これは大体大まかに申しまして昨年の十二月末までの産油国側のGSPの引き上げに見合うものとして行われたわけでございますけれども、その後ことしの一月、二月にかけまして御案内のように非常に多数の国が引き上げを行っております。たとえばサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、イランあるいはインドネシア、中国、ほとんどの産油国におきまして二ドルないし多いところでございますと六ドルというようなGSPの引き上げが行われております。また、一方におきまして、金利が最近非常に上がっておるというようなこともございます。あるいは円ルートが、円が安くなってきておるというようなこともございます。そういったような最近におきますコスト上昇要因、これを踏まえまして、元売り各社におきまして四月の上旬に仕切り価格引き上げを行おう、こういうことでございます。  ただ、私どもといたしまして、各社に対しましては、先ほども申し上げましたように各社ごとに原油価格引き上げあるいはそれに関連いたします諸経費の上昇あるいは円レート、そういった本当に必要なコストアップ要因を超えて便乗値上げが行われてはいけないということで、この辺につきましては私どもとして十分各社から実情を聴取いたしまして、便乗値上げが行われることがないように指導しておるところでございます。
  97. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 岩佐委員が御指摘のようなメジャーの膨大な利益、これをまず第一に御指摘になったわけですね。私もこれはもうかねがねそういうことを聞いて、アメリカではそういうことがよくまかり通るのだなという感じを非常に強く持つのです。日本ではいま通産当局が行政指導をして、そしてそれを非常にわれわれとしては厳しく監視体制を張っておることは御承知のとおりです。そしてまた公取委員会も非常に厳重に問題を把握してそれに対処しておる。  それから金利負担ですね。買いだめ、売り惜しみをやるというのは、金利なんかが非常に安ければこれはやっていいのかもしれませんが、相当の負担になるだろう。金利倉敷ですね。そんなようなことから、それはできないような条件を日本としては相当強く打ち出しておるわけでございますね。  それから最後はやはり税ですよ。これは日本がこんなようなことがあって原油高でインフレが外国からどんどん日本を襲っておる、それに立ち向かうために国民は総力を挙げてこのインフレ防止に当たっておるのだ。そのときに、この石油を種にしてこんな暴利をむさぼるようなことが、これは税務調査でもすぐわかりますからね。そんなことになったら、これは石油会社は表を歩けない、そういうことにもなると思いますから、これからも総力戦を展開してひとついまのようなことのないようにやっていきたいと思いますので、ひとつ御協力をお願いしたい。
  98. 井上普方

    井上委員長 次に、中野寛成君。
  99. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 昨日は長官にわざわざ大阪までお出ましをいただきまして、いろいろ御視察をいただきましたり、そしてまた現地の声を具体的にお聞きをいただいたようでございまして、御苦労さまでございました。  質問に入ります前に、御感想を、いかがであったか、お聞かせをいただければと思います。
  100. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 実は大阪へ行くのに、例の新幹線のケーブルが切れましてね、八時間余り延着をしてしまったわけでございまして、大変忘れられない経験をしたわけでございますが、参りまして、早朝から知事さんや市長さんと御一緒に、まず消費生活センターあるいは大阪市営公設市場あるいはスーパー、そういうところをつぶさに拝見をいたしまして、大変、やっぱりさすがに大阪だなという感じを持ちました。とにかく経済の問題について真剣に取り組んでおられる、このやり方をひとつわれわれは十分参考にさせていただいて、この物価問題に取り組んでいかなければならぬ、こう思って、午後の物価問題懇談会に出席をいたしましたら、これはまた消費者団体、モニターの方々あるいは経済団体、地方公共団体の代表、きわめて熱心に、もう全部の方からいろいろお教えをいただいたわけでございまして、私は本当にありがたかったという感謝の気持ちでいっぱいです。今後ともひとつ、こうして中央と地方が一体になりまして、この物価の正念場と言われ危機と言われるこの状況を切り抜けていくために総力戦をひとつぜひ皆さんとともにやっていきたい、こういう感じを持っております。
  101. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ありがとうございました。  それでは質問に入りたいと思いますが、事前に質問の内容について通告といいますか申し上げていない部分で恐縮ですが先にお尋ねをしたいわけであります。  それは、昨日来報道されております内容の最も大きな私どもの心配の種は円安の問題でございます。この問題につきましては、私は、その見通し対策、そのようなものについて、経企庁なりまたは経済当局が強気の発言または少々楽観論とも見える発言、人の受けとめ方によっていろいろあろうと思います。私は、少々強気の発言をされるということについて、それほど批判を持つものではありません。やはり景気の問題も物価の問題も、これは心理的要件がきわめて大きいと思うからであります。しかし、それが、あくまでも対策を前提として、具体的対策を持ちながら、しかし国民の心理を安定させるために強気の発言をしていくということならば、それは結構だと思います。また、許されると思います。しかし、それが本物の楽観論であったとしたならば、これはやはりゆゆしい問題だと思います。そういう意味で私どもは、今日までとってこられた経企庁なり日銀なりの態度、往々にして私どもはいかにも楽観論だなという印象を受けたりしてまいりましたけれども、それが決して楽観論ではなくて、あくまでも心理的効果をも十二分に勘案された上での一つの対策としての御発言であったことを期待をしたい、こう思うわけであります。  さて、そこで、円安要因でありますけれども、いろいろあると思います。国際収支の悪化の問題、日本の財政の悪化の問題、物価上昇、そして国際金利の差、こういうことがいろいろ挙げられるであろうと思いますが、これらのことにつきまして、どのように今日考え、そして今後の見通しを持っておられますか、お聞きをしたいと思います。  もう一度申し上げますが、私どもの方でとりあえず考えます円安要因として、国際収支の悪化、そして現在の日本の財政の悪化、これが三月現在で五十七兆円の累積公債があるわけでありますが、もっと悪くなるのではないかという心配がやはり円安原因になっていないか。また物価上昇につきましても、六・四%の本年度見通し、果たして大丈夫か、こういう心配があるでありましょう。たとえば二月の消費者物価年率七%を超す、卸売物価も二一・四%を超すということであれば、これは当然の心配の種であります。そして国際的な金利の差も、たとえばアメリカのプライムレート二〇%以上だというようなことを見ますときに、これは一つの円とドルに対する魅力の違い、評価の違い、このようなものがやはり円安原因になるということもまた十分考えられるわけであります。これが一挙に起こったというよりも、ある意味では時期をずらしながら順番に起こってくる、その都度円安が進んでいくというようなこともあったと思いますが、このことについてどのように御判断をなされておりますか、お聞きをしたいと思います。
  102. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いまお挙げになった要因がそれぞれ非常に重要な要因だと思います。そのほかに強いて言いますと、原油のこれからの状態、価格及び量、こんなようなことも一つあろうかと思いますが、まず国際収支につきましては、いま現に数量的に輸出は相当伸びてきておるわけで、これからの将来への見通しとしても私どもは貿易収支あるいは経常収支等を相当これは改善するということを自信を持って申し上げられるわけであります。  それから、財政状態につきましては、いまのような構造的な問題もございますけれども、とりあえず、けさ閣議でいよいよ五十五年度の公共事業の執行を六割程度、これはやはり対前年度に比べると、率においても金額においても相当の抑え込みをやっております。いずれ具体的にどういうものをどういうふうにやるかということが出てまいりますが、必要欠くべからざる緊急のものはもちろん実行いたしますけれども金融財政がバランスをとって相当抑制的に行われる、これが適切なる総需要の管理である、こういうふうに考えてそういう政策をとったわけでございます。  それから物価については卸売と消費者物価、中野委員も御承知のように、日本の卸売物価というのは原油とかそういうものがみんな入っておりまして、これがアメリカや西ドイツと非常に違う点でございますので、私はここにひとつPRの必要があるということをしみじみ感じております。  それから国際金利差、これは非常に重要な要素でありますが、これも日本はアメリカなんかを追っかけて国際的な金利引き上げ競争を展開するということは私は避けていくべきだ、こういうことを考えるのであります。  そこで、われわれが直接担当する物価問題、これに関係して一言申し上げると、カーターさんのインフレ対策でアメリカは一八%、日本なんかはその他の国も含めて二五%、こう言われたので私はショックを受けたのですよ。ところが御自分のところは消費者物価で日本は卸売物価で、しかもその卸売物価が申し上げたようにアメリカなんかと構造、構成が違うのですね。そういうことをひとつこの際よく理解をしてほしいということで、私どもも機会あるごとにやっておりますが、さらに努力をしていって、そして日本の経済の実態いわゆるファンダメンタルズについて内外の理解を十分得るような努力を必要とするんじゃなかろうか、こんなようなことを考えまして、一方では大蔵省は中近東いわゆるOPEC諸国にオイルダラー等の導入ということで努力すると言っておりますが、私どもとしては、経済のファンダメンタルズに対する内外の理解を一層十分徹底していただくような、そういう努力をさらにやっていきたい、こういうふうに考えております。
  103. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いまの長官の御答弁と相通ずると思いますけれども、やはり最近の円相場動きに対して日銀の考え方も、わが国の経常収支の赤字幅がわずかながらも減少しつつあるということ、物価上昇率も消費者物価等を基準にとれば国際的な見方の中で低いのではないかという主張、それから日本の輸出競争力は大変強くて、いまも長官おっしゃいましたが、経常収支の赤字はことし後半に入れば急速に縮小するだろうという見方で見ておられるわけでありますが、いまの長官の御答弁を含めまして、たとえば輸出の伸びでございますが、先般来の自動車の問題のように、やはり各国々とも現在の経済状態の中で必死であります。そういうことで、これも決して楽観論は許されないのではないか、十分な対応策というものを講じませんと、輸出の伸びにせっかく期待をしておっても相手側の方で大変な抵抗を示してくるということになりますと、やはりこれについての心配要因というのは残るのではないかということと、もう一つは、たとえば企業の操業率等もすでに九〇%を超しまして、そしていわゆる弾力性がなくなってくる。これは輸出の問題だけではありません。むしろ逆に、輸出の問題というよりも物価の寄与の中における吸収力の問題になりますけれども、しかしいろいろなことがその中から実は派生的に考えられるのではないかと心配もするわけであります。そのようなこと等についてどのようにお考えになられますか。
  104. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ごもっともでございます。私も、輸出がいまのところ現実に伸びておる、数量的には特に著しいという事実を指摘いたしましたのですが、それがまさにいま自動車問題等に象徴されるようにいろいろ国際的な問題になっておることもまた事実ですから、これらに対しては十分配慮をしながらこれからの経済を運営していかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。アメリカなんかはそういうわけで身にしみて日本の経済の強さ、これは日本の経営者も、それから勤労者の方も力を合わせて経済をここに強くやっておられるのでありまして、私はやはりファンダメンタルズの中の非常な強みは、たとえば生産性はどんどん上げておりながら賃金上昇率を大局的、良識的にいままで決めてこられたというふうな経営者、労働組合のすぐれた英知、これに対して心から敬意を表しておるので、そういうようなことも国際的に十分理解をしてもらいたいという気持ちをもって先ほどのようなことを申し上げたのですが、さて、これからの日本の輸出の問題等については、これは本当に十分注意をいたしませんと、御承知のようにかつてもう苦い経験があるわけでございます。そこで、先ほど大蔵省がいまOPEC諸国その他にオイルダラーの導入について努力しておると言われましたが、やはりああいう諸国に経済協力の形あるいはその他で本当に喜んでいただけるようなプラント輸出、こういうことをやはりもっともっとやっていく必要もあるんじゃなかろうか。これはグローバルな、もう非常に多角的に、一国集中主義ではなくて、各国との間に本当に喜ばれるような通商政策を展開していかなければならぬということはしみじみ感じて、及ばずながらそういう努力をやっていくつもりでございます。
  105. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そこで、いまの最後の長官の御答弁の部分にも関連すると思いますが、オイルマネーの導入ですか、流入をできるだけ促すということに関連してですけれども、たとえば資本取引を見ましても米国のTB、例の財務省証券ですか、これの取得の動きがここ数日特に目立っているわけですね。毎日一億ドル程度の資本流出が続いている、こういう見方もあるわけであります。一方、米国の高金利のあおりでオイルマネーなどがわが国の債券や株式を買う動きが影をひそめて、資本の流出分がそのまま円安ドル高要因になるということを招いている、このように私どもも思うわけであります。加えて政府、日銀の介入資金となります外貨準備高も二百億ドルを大きく割り込んで百八十五億ドル程度、こういう状態で円のじり安が続き、これに日銀の介入で対応していったとすれば外貨準備はさらに減少するおそれが強いわけでありますが、今後どういう新たな円安防止策を講じるかということは、やはり国民にとって、また日本の経済人にとっても大変関心の高い問題ではないか、こう思います。まとめてお尋ねをいたしますが、そのことについてどうお考えになられますか。  それから、その資金流出の抑制策としてですけれども、いろいろなことが提案もされ報道もされております。たとえば外為銀行などの有力な資金運用先となっている先ほど申し上げた米国財務省証券の取得禁止というふうな強い措置、とれるかとれないかは大変むずかしい問題でしょうが、しかしこれからの情勢の悪化等を考え、またいまもうすでに最悪の状態に落ち込んでいると思いますが、こういうことも、本当はその実行といいますか、発動するかどうかは別にいたしまして常に一つの検討の材料となっていなければならない、このようにも思うわけでありますが、この辺につきまして御検討なさっておられますかどうか。  それから、資本流入促進策として先ほど来の話がございますが、オイルマネーの流入を促す必要もあると思うわけでありますが、しかしこれとても、いわゆるオイルマネーも対象は物からドルへと報道されるぐらいにここ最近は米国の金利が非常に高いということからオイルマネーがそっちへ流れていく、日本の方へ意図的に取り込もうとしてもなかなかむずかしいということもあると思うわけでありますが、これらの事態に対してどのような検討と対応をなさっておられますか、また今後のお考えについてお聞きをしたいと思います。
  106. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず、外貨準備が相当減ったという事実がございまして、ああいうことに対してわれわれとしては案外重要性を痛切に感じないということはやはり間違いであって、そういう意味から外貨準備というものについて不安がないんだというふうなことをまずはっきり示していく必要があると思うのです。そういう意味からも大蔵省がいま中東諸国のオイルダラーの流入促進を具体的にやろうという姿勢は私は非常にいいことだ、こう思っています。また、日本銀行がアメリカ、西ドイツ、スイスと国際協力関係を前提にいたしましていわゆるスワップ協定等をやっておる、これもまさにそういう意味において非常に適切な措置である、こう評価をしておるわけでございます。  それから今度は逆に、たとえばTB取得について制限を設けるというふうなお考えをお示しになりましたが、これは技術的な問題は大蔵省あたりがやるべきことでございましょうが、御案内のように先般の国会でこの外国為替管理法は原則自由ということに改めていただきまして、それがいまややっと動き出したときでございますので、基本的にこの流れを変えるということはいかがであろうか、こう私は思うわけでございますが、しかし技術的な面においてはいろいろときめ細かく配慮していく必要があるであろう。  そういうわけで、あらゆる力を、あらゆる努力を総合いたしまして、いま円は過当に低く評価されておる、したがってそれを適正に評価をしていただくような努力をやっていく必要がある。  いまお話しの資本の流入を促進するということも、やはりこれは日本に対して信頼がなければ入ってまいりませんから、そういう意味でやっていく必要があるんだと私は考えております。  金利等について日本としては余りここで無理をすることなく諸外国と協調して、金利の引き上げ競争なんかはできるだけ回避していくということは、やはり日本経済、また国際経済のためにも必要なことではなかろうか。これはアメリカあたりも十分心しておられるんじゃないかと思いますが、今後の動きを注意して見たいと思います。  大体以上のようなことで、余り私としても妙案があるわけじゃございませんけれども、とにかく事実をもっとよく、諸外国はもとより国内の国民の皆様にもわかっていただくようなことを、まあ外国為替の問題、円レートの問題なんというのは国民に余り縁のないことじゃないかというふうにお考えになる方もあるかもしれませんが、実はこの円レートが下がればすぐ輸入物価が上がってわれわれの日常生活に非常にぴんぴん響いているんだというふうな感覚でこれから対処していく必要があるということを痛切に感じております。
  107. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 はしなくも長官が一番最後に何か本音をおっしゃられたような気がするわけであります。先ほど来いろいろと経済論議、財政論議をやりましても、これといって妙案が出てくるというわけにはなかなかいかない。これは恐らくいまの日本の経済が抱えた本当のジレンマだろうと思います。しかし、これは決してほっておいてはならないわけでありまして、こういうときだからこそ政府の強力な、そしてまた的確な見通しとリーダーシップが必要であろうと思います。大いに御検討を、また御研究を期待したいわけでありますが、一つ先ほどお尋ねしましたものの中で、御答弁もございましたが、外貨準備の心配をなくすためにこのオイルマネーの導入等をやはり考えなければいけない、これは私も当然だと思います。そして、ここに対する期待感というのは政府のお考えとしてはかなり強いんではないでしょうか。そして、これはある意味ではその数少ない妙案の中の一つではないかと私は先般来感じているわけでありますけれども、しかしこれは先ほど御指摘を申し上げましたように、現在の金利差その他を考えますとなかなかむずかしい。よほど理解を求める。しかし、理解を求めるといったって、むしろそのオイルマネーを持っている方が将来のことをやはり一番心配している。資源はオイルしかないということ等から考えれば、大変慎重にその運用を図ろうとしているだけに、単なる理解を深めるだけではこれはむずかしいと思います。ですから、より具体的な提案というものがなされなければならぬだろうと思うのですが、これは必ずしも経企庁長官だけがお考えになる問題ではありませんけれども、本来直接の御担当は別かもしれませんけれども、しかし政府としてこれは前向きに真剣に考えなければいけない課題だと思いますので、あえてお尋ねをさせていただきたいと思うわけであります。
  108. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 中野委員御承知のように、西ドイツがまずこれで相当効果を上げておるようですね。それで、西ドイツは御承知のように金利は、公定歩合もアメリカのこの前のインフレ対策以後上げていない。それでも西ドイツからはやはり産油国に対していろいろ働きかけましてああいうふうに成果を上げておられるということは、大変われわれとしても他山の石として参考になる。インフレ率が非常に高いアメリカ、インフレ率がまだわりあいと落ちついておる日本、そこのところが非常にわれわれは有利だと思うのですがね。金利なんというものは、いまは高くてもまた反動で下げなければならぬこともありますので、やはり長期に安定しておるということが非常にいいことでございますから、産油国へ出かけて大蔵省なんかの連中は、よくそこのところを相手国の担当者と話し合って、どういう条件でオイルダラーを導入できるか、具体的に検討していけば、知恵はあるのじゃなかろうか、私はこういうふうに考えておるのです。  そういう意味でも、われわれとしてはとにかくアメリカと日本を比べたらファンダメンタルズはいろいろの点で日本の方がすぐれておるという確信があるものですからこういうことを申し上げられるので、一つ一つ照らし合わせたら、どうも日本は魅力ないよと言われるようじゃこれは困るのですが、おかげさまで、たびたび申し上げるように、労使の関係も、それから物価関係も、卸売は上がっても消費者で安定しておる、これは賢明なる消費者の非常な力なんでございますから、そういうことをよく徹底をして、その上でオイルダラーの資本の導入というふうなことをもっともっと努力をしていかなきゃならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。
  109. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 経済規模その他国力を含めまして、それはアメリカが世界一の国であることは事実ですが、しかし同時に、そういうことを持ちながらも、そしてたとえば石油の使用状況等を見ても、私どもの目から見れば明らかにアメリカの方がはるかにむだ遣いをしている。そういうことも、いまの長官が御指摘になられたことの一つでしょうけれども、そういうことを感じながらも、しかしそれをカムフラージュしながら、そして国際戦略の中で、たとえば欧米の首脳会議等を日本を端っこに置いておいて先にやったりとかいろいろなことを講じながら、日本を悪者にしていくという戦略が往々にしてとられる。もしくはまた、日本とヨーロッパが協力しようといたしましても、それは結局アメリカの大変個性の強いといいますか、私どもに言わせていただくならば、あくどいような経済政策というものがそれをやらせるということにつながっているのではないか。アメリカにしてやられるというようなことがないように、やはりわれわれとしては十二分な注意が必要だということを思うわけでありまして、私は大変国民を御信頼いただく長官の態度はりっぱかと思いますけれども、しかし、そのことが政府の責任回避になっては、これは大臣決してそのおつもりでおっしゃっているのではないと思いますが、しかし、そういうことになったとしたら大変であります。私は、国民の皆さんに御協力をいただくのはいただく、しかし政府のしっかりした態度というものがやはり示されなければ、こう思うわけであります。  ちなみに、先般この「通産ジャーナル」という雑誌を拝見しておりましたら、これは通産省の大臣官房企画室でやられたのですか、「国民意識にみる八〇年代」というアンケートを出しておられました。これを見ておりますと、大変抽象論ですが、八〇年代の暮らしについてということで、個人の暮らし向きが今後十年間でどうなるかということでアンケートをとりますと、現状維持もしくは悪くなるという回答が七割。しかし、逆に日本の経済はどうなるかといいますと、少々国民の側の方も楽観論が出てくるようでございますけれども、自分の暮らしの方は苦しくなる、日本の経済は何とかなるんじゃないか、そこのところに私はある意味では日本人らしさというか、そういうものがあらわれているような気もいたします。しかし、その内容を見ますと、結局国民の皆さんが不安に思っておられるものの要因として、石油供給不安が九〇%、そして物価不安が八五%、こういうふうに出ているわけですね。まさにいま私どもがこの委員会で最も心配をしていることが国民の皆さんの心配の意識の中に、不安感の中にそのまま出ているわけであります。  特に注目すべきことは、国民の皆さんが心配するその最大の要因の中にエネルギーの問題を入れてきたということですね。これは先ほど来長官もお答えのように、卸売物価にしたって、原油の分が入っているとかとお答えになられますし、また先般来の電気ガス料金の問題にしたって、石油の問題がくっついてくる。そのくらいに国民の皆さんの意識というものがエネルギーの問題に大変関心が強くなってきた、こう言えるだろうと思います。この通産ビジョンの中にも「経済大国の国際的貢献」というのがございますが、その次に「資源小国の克服」とこうある。やはりこれからのエネルギー対策が大変重要な課題である。また物価の中でもそのことが言える。  こう考えますときに、私どもはやはり石油安定供給を当面図りながら、しかし、将来のエネルギー対策として、石油にかわる代替エネルギーの開発等とこれは真剣に取り組まなければならぬと思うわけです。  ただ問題は、これからのエネルギーの見通し等をいろいろな機関が試算をされておられますけれども、しかし、これから十年計画でいきますと、たとえば石油見通し政府見通しを前提に置いたとしても、原子力発電所が現在の十八、九基ですから、十年間で約三十五、六基に持っていかなければいけない、そうしないと足りない。原子力発電所のリードタイム、計画から十五年間ですね。しかし、いま新規に計画されているものはごくわずかしかない。これを考えますと、結局、石油のなお一層の供給を図って補いをするのか、または省エネルギーを現在の計画どころではない、現在の省エネルギー計画でやっておったら、十年でそうなるという先ほど来御指摘を申し上げた内容ですから、それをより一層強いものにしていくのが大変重要な課題だと思うわけです。このようなことについて国民の不安に対してどうこたえるか、いかがお考えでございましょうか。
  110. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 大変重要な点を御指摘になったわけであります。まずわれわれは少ない資源を大切にして節約をして、そして能率を上げていく、これが当面の努力目標ですから、省エネルギーの努力をもっともっと強化していくということはまず第一です。それから代替エネルギーの開発に向かって、いまお話しのような原子力、石炭、液化天然かるというふうな点を、これは何としても国民の御理解を得ながら進めていかなければならぬということを痛切に感じます。  それで一つ感じたことは、実はいま中国から余秋里さんという副総理が来ておられまして、先般、私、懇談の機会があったのです。それで、中国は石炭なり石油を安定した価格で日本に出していただくということが日本経済のこれから非常に大事な点ですよ、こう申し上げたところが、余秋里さんは、私は「紅旗」というあの自動車は使いません、こうおっしゃるのですよ。あれが中国要人の乗用車になっているそうですが、あれは油を食います、こうおっしゃるのですね。だから、日本の油を余り消費しない車を使っています。これで私もぴしゃっと一つ教えられたような感じがいたしまして、非常に感銘深かったのですが、石油をひとつください、石炭をひとつ供給してください、こう言う私どもに対して、私は「紅旗」は使いません、日本のいわゆる燃費の少ない車を使っています。身をもって教えられたような感じがいたします。  そこで、本当に真剣に、いま申し上げたエネルギーの節約、代替エネルギーの開発、これに超党派でひとつ御努力をしていただいて、新しい展望を開くべき一九八〇年代、これがまさにわれわれが直面しておる時代だと思うのですね。アメリカなんかを見ましても、やはりそういう点で若干の遅滞があったために自動車問題なんか起こっておるんじゃないか、これは日本に対してある意味ではアメリカはエネルギーに恵まれておったものだから。やはり日本の方がエネルギーの制約を受けておったものだから、小型の能率のいい自動車を先にやったというふうな点を考えても、これから先へ先へとそういうふうな大事なことはやっていく必要が非常に緊要である、こういうふうに考えます。  また、先ほどちょっと申し落としましたが、西ドイツと日本と比べますと消費者物価の方は確かに西ドイツは日本よりもっと落ちついておるわけですが、そのかわり雇用の関係とか経済の成長率では日本の方がやはり西ドイツよりもすぐれておるという、こういう点をやはりファンダメンタルズとしては、私は内外の理解を一層深めていかなければならぬ、こう思っております。
  111. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後に、日本経済新聞に書かれておりましたが、その雇用の問題なんですね。果たしてこれから物価と雇用、その対策を考えますと、これは相反するもので大変むずかしいわけであります。  しかし、たとえば、その新聞の報道から見ますと、「昨年八月から、企業倒産は増勢に転じており、十−十二月は毎月、危機ラインとされる千五百件(負債一千万円以上)を上回った。この結果、五十四年中の倒産件数は一万六千件台へ乗せ、五十二年に次ぐ史上二位の高水準となった。」「今年にはいってからも倒産件数は引き続き多く、すでに二月で七カ連続して前年同月を上回っている。この調子でいくと、今年の倒産件数は例年と違って四月以降も高原状態を続け、年間累計で五十二年を抜く恐れもあるという。  倒産増加の理由は大きくいって、原材料高騰を十分に製品価格へ転稼できないでいることと金融機関の選別融資の強化。」こう書かれております。  こうなってきますと、いよいよ大変苦しい選択を迫られている、こういうことになるわけでありますが、しかし、国民にとって物価高と同時にこの雇用の問題というのは大変深刻です。今日までいろんな政府見通し、そして計画等々を拝見をいたしますと、すべて雇用については実は比較的安定しているという報道がなされていると思うわけですね。私それを見まして、雇用が安定しているという前提で物価対策を講じていって、それは果たして雇用対策にも物価対策にもなるのかという心配を持つわけです。このようなことについての兼ね合わせば大変むずかしゅうございますが、いかがお考えでございましょう。
  112. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まさにその点を五十五年度の経済運営の場合に非常に重要視したわけでございます。物価問題は非常に大きなウエートを占めております。したがって、当面物価安定に全力を注ぐわけでございますけれども、雇用問題を解決するための経済の堅実な成長ということを忘れてはいかぬということで、五十五年度の経済見通し四・八というときに、民間からは、最初はえらい経済企画庁は高いぞという御批判があったのですが、その後もうどんどん経済企画庁見通しどおりに民間の方は修正、これは上の方へ修正される動きがございまして、そのかわり物価の方はどうも経済企画庁見通しは低いのじゃないか、これはまだ御信認を得ていないようですが、われわれの努力はこれからだと思っております。  そこで、雇用関係数字的に申し上げても、失業率なんかやはりだんだん、徐々でございますが改善しておるわけです。一方では倒産がふえておることは御指摘のとおりです。これはやはり一種の経済摩擦現象とでもいいましょうか、いろいろ海外からの要因で大きな変動が行われておるときにこういう現象も起こるわけでございましょうが、しかしこれに対しては私どもはもちろん放置できないわけであります。いま申し上げたように物価対策でいろいろ御迷惑をかけるわけでございますけれども、中小企業、零細企業というふうな面においては財政または財政投融資計画も最重点事項として政府関係機関の融資あるいは税制の面でできる限りの対処策を講じて、日本の経済の中で非常に重要な役割りを果たしておられる中小企業、零細企業の方々にも、堅実な経営で、競争原理によって合理化を進め生産性を高めていただくという努力は、中野先生の御所属になる皆さんからもいろいろ御指摘をいただいたのですが、もう限界だ、これ以上生産性向上なんというのはむずかしいというふうなお話もいただきますが、やはりあきらめてはいかぬので、お互いの努力をさらに強めてこの危機を乗り切っていかなければならぬ。しかし、それに対して政府としてもできる限りの助成策といいますか、お力になるような政策はやっていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。
  113. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これで終わりますが、私はいまの雇用の問題も決して楽観を許さない。たとえそれが小さなものであっても件数がふえていく。そしてまた、現在の国際経済の状態からいけばそれがだんだん拡大をされていく。そういう中で雇用の心配が出てくる。また物価対策も急激に進めなければなりませんが、急激になればなるほどやはり景気後退の心配は大変大きくなるわけであります。選択の幅は大変狭い、これはよくおっしゃられますが、しかし、その中で最大の注意を払ってやっていただくことがスタグフレーションを防ぐことにつながるであろうと思います。一見安定しているように見えても、今日ほどスタグフレーションの危機、一たん足を踏み外しますと谷底へ落ち込んでしまうその危機というものは、このくらい大きいときはないのではないかという危惧の念も持つわけであります。長期的な見通し、グローバルな十二分な御判断と対応策を講じられて国民の期待におこたえいただきたい、このように思います。  終わります。ありがとうございました。
  114. 井上普方

    井上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会