○
福田参考人 福田でございます。
ただいままで四人の各
電力会社の社長さんから
説明がございまして、それぞれの方が、まことに心苦しいということを言っておられるわけでありますが、まことに同感でございます。私は、総評の生活局を担当いたしまして約八年間になりますが、その間、四十九年、五十一年、それから五十三年には
円高差益の問題でこの
電力問題に取り組んでまいりました。また、私
どもの地方組織は、各九
電力に対しましてもずっといろいろな要求を出し、行動をやってまいりました。これらをやりながら、国会にも一、二度
参考人で
陳述したことがございますけれ
ども、各
電力会社の責任者の口から、まことに心苦しいと言いながら、
説明の中身というものは全く各
電力会社が苦しいという話だけであって、
電力会社が持っておる社会的責任といいますか、そういうことが全然出てこないというのはまことに遺憾だと思うわけであります。
と申しますのは、たとえば、まず今回の
値上げの
申請内容一つとってみても、各
電力会社がそれぞれ八
電力の
平均で六四%からの
値上げを
申請をしておられる、これは一体
物価にどれくらいの
影響を与えるのか。私
どもの
消費者団体の中でこれを綿密に試算をいたしてみますと、電気とガスと両方足してでありますが、直接と間接を加えまして約三%という数字がはじき出されてまいっております。あるいはまた、家計に及ぼす
影響についても、標準家庭の使用量で五十三
年度時点ぐらいのところで計算してみても、年間五万一千円から五万四千円ぐらいのものが出てくる。これはもう少し使用量がふえておりますので、さらにこれ以上のものが出てくるかと思うわけであります。
政府は
物価の六・四%と言っておられるけれ
ども、そのうちの半分がもう電気とガスで上がってしまう。しかも四月から国鉄を初め郵便とかがもう軒並み控えているわけであります。こういうところは、この社会的責任の面からいっても、一体どのように各
電力会社は考えておられるのか、あるいはまた家計への
影響力をどういうふうに見ておられるのかということであります。
各地でいま私
どもも盛んにこれに対する批判を重ねておりますが、特に、各地で言われておることは、最近は
産業界の
方々からも言われておるのでありますけれ
ども、
電力会社はツケを
国民なり産業に回せばいいけれ
ども、ツケを回せないものはどうするのか、家計はもうツケの回しようがございませんし、また、大
企業のようにこのツケを
価格に転嫁できるところはいいけれ
ども、
価格に転嫁できないところは一体どうするのか、そういう社会的責任というものを各
電力会社は全然感じていないのではないかということなのであります。
それから、私は過去三回、今回の四回目でつくづく感ずることは、もはやこの
電気事業法に規定をした原価主義というものはもう
破綻ではないか、あの原価主義によってツケを
国民なり
産業界に回している、そういうやり方ではどうにもならなくなったのではないかということであります。もう政治的に何とかしなければいかぬという声が政府や自民党の中からも起こっているとお聞きしております。それから、この原価主義そのものがもう
破綻をしてきたし、この九
電力体制というものがもう構造的に成り立たなくなったのではないか。これを、私が今回も含めまして過去四回にわたって取り組んできての感想として最初に申し上げるわけであります。
そこで、今回の
申請についてでございますが、先ほど各
電力会社の社長からそれぞれ、今回の
値上げの最大原因は
燃料費であるということを言っておられるわけであります。現に
値上げの約八割強は
燃料費の引き上げであろうと思いますが、ところが、
燃料費について、一体幾らで
東京電力は買っておるのか、各
電力は買っておられるのか一回として公表がなく、これでは私
どもは算定のしようがないわけであります。新聞で、どこかマスコミにちょっと出たような記事をもって算定をしておるわけでありますが、それによれば、CIF
価格で東電は一バレル三十七・一ドルだと言っておられる。しかし、これに対しまして、私が役員をしている消団連は、
ミナス原油で二十九ドルという査定をいたしております。また、私
どもも計画に参加いたしました社会党では、
平均三十ドル、ミナスで三十二ドルというものが出てくる、そういたしますと、この東電の
価格は全体の
平均だろうと思いますけれ
ども、この三十七ドルというのはえらい高過ぎるのではないか、あるいはもっと高いのもあるようでありますが、一体これはどういうことなのか。この
燃料費の公開をしてもらわないと計算のしようがわれわれにはないわけです。そういうものは一切公開をしないでおって困った困ったとおっしゃっても困るということでございます。
それからもう一つ、今回の
申請に当たって私は大変残念なのは、六十何%という途方もない
大幅値上げでございますから、何としても福祉世帯といいますか生活保護世帯などは
維持するという声が一声出なかったかということであります。こういうことは政府がやるべきだとおっしゃるのかもしれませんが、そうではなくて、たとえば国鉄、私鉄は障害者、施設収容者に五割引きをしている、民間である航空運賃は障害者に対して二五%の割引をしている、あるいは郵便
料金は障害者定期刊行物に対して第三種の特別扱いをしているし、公営地下鉄、バス
料金等も老人等に対して無料をやっている。そういう形で公営、私営を問わず他の公共
料金は軒並み福祉
料金を
採用しているわけであります。これは政府がやっておるわけではございません。そういう面から言うならば、今回の
値上げに際しては、
電力会社の口から、そういう困っておられる
方々に対しては福祉
料金を
採用してここ一、二年なりは据え置くという言葉の一つが出るべきであったと思うわけであります。こういう点は、社会的責任を感ずるとおっしゃるならば、私はきわめて遺憾であるということを申し上げたいのであります。
次に査定の問題でございますが、今回の査定に
当たりまして一番問題のところは、まず何といっても
燃料費の問題でありまして、これに対しましては少なくとも、政府の八十
年度の経済
見通しの基礎となっている
原油価格は一バレル三十一ドルであります。また、
為替レートは二百三十七円で計算をしておる、これによってひとつ計算をしていただきたいということでございます。
それから
修繕費なり
減価償却についてでございますが、これらにつきまして、五十一年の査定の際に、その後査定の結果がどうなったかということにつきまして私
どもの内部でいろいろ
調査したわけでございますが、たとえば五十一年の時点での査定と、その後に
円高が若干あったということの原因はあろうかと思いますが、五十三年末までの実績をとらえてみますと、
燃料費で三千六百五十四億円余っているわけであります。その金を
修繕費に千六十七億、
資本費に千三百九十八億向けているわけであります。そういう形で、実はこの
燃料費で三千六百億から過去三カ年間で出た黒字を
修繕費なり
資本費に積み重ねているということでこの操作がされているわけでございますが、そういうふうにするならば、今回、この例から見ても
修繕費は思い切って減額をしてもらいたい。ここのところは、過去の実績というのは水増しでございますから、
燃料費で余分が出たものを
修繕費に回したわけですから、実績にとらわれずに減額をしていただきたい。
それから、
減価償却については、これはみんなが苦しい最中でありますから、従来どおり定額方式としていただきたい。
それからさらに、事業報酬につきましても、レートベースを基礎にいたしまして報酬率八%というふうにかかってくるわけでありますが、このレートベースの基礎になっている
資本費のところが大変高くなって出るわけでありまして、
資本費が高くなって出れば、この八%を掛けるから必然的に報酬率も高いという計算の方法が大変問題があるのではないか、ここのところを見直し、報酬率についても八%以下にひとつ切り下げてもらいたい。あるいはまた七・五なり七%
程度でいいのではないかということであります。また、株式
配当についても八%以下に当然すべきであるということでございます。
以上のような点を査定の
基本として政府の方で
実施をいただきたい。
次に
料金問題等で申し上げておきたいのは、まず家庭用の三段階制でありますが、五十一年にナショナルミニマムを百二十キロワットアワーをとっているのでありますが、百二十というのはもうすでにナショナルミニマムの
限界を超えております。百四十ないし百五十をとるべきであろうということでございます。
それからまた、
全国の
電気料金の差が
全国ばらばらである。現在、最高と最低では二二%の差がございます。電気の明るさは一緒なのに、何で
電気料金が違うのか、これは各地で
国民が一番疑問に思っていることでございます。したがって、今回まず家庭用なり公共福祉ぐらいの
電力から、ひとつこの地域差をなくしてもらいたいということでございます。まず家庭用から地域差を解消する方向をとっていただきたい。さらにまた家庭用
電力については、上げ幅をひとつ縮めてもらいたい。このやり方はいろいろ技術的にもあるわけでございますけれ
ども、現在、費用の面から言いましても、家庭用
電力の
料金は過大であると思うわけでございます。
以上のことを申し上げておきたいと思います。
次に
エネルギー政策の問題、後ほど
向坂先生御専門でお話があると思いますが、私
どもの立場を簡単に申し上げたいと思うわけであります。
やはり、これからの
電気料金問題、
料金問題にかかわらず
エネルギー政策にかかわるものであろうと思います。その際、電気そのものは大変高価な
エネルギーであるし、ロスが非常に多い。六〇%以上の電気のロスを持っているわけであります。したがって、
エネルギーについては、できるだけ
国民の生活の場である地域に視点を置いた
エネルギーの確保をすべきであるし、そしてまた、先ほど各社長がおっしゃられたように太陽熱なり風力、火力、
地熱、小水力等の
エネルギー開発についても、これから格段に
努力をすべきであります。
それと同時に、
原子力発電についてでありますが、先ほど
原子力発電の
強化の方向が大分言われているようでありますが、私
どもはこの
原子力発電についてはきわめて疑問でございまして、詳しくは申し上げませんが、ここ三、四年をかけて現在の
原子力発電を根本的に見直し、そしてその結論が出るまで新増設や既存
設備の運転を一時中止をする、原発モラトリアムを
実施すべきであると思うわけであります。
さらにまた、
電気事業を
開発して、公営
電気事業者がみずから生産をしている電気、これは全発電施設の約一・七%
程度あると考えておりますが、これを地域住民に売れるようにすべきではないかということ。
さらにまた、
石炭の見直しでございますが、国内炭の拡大生産によって
石炭産業が自立発展できるような
石炭政策を根本的に再検討をして、少なくとも国内炭については二千万トン体制をぜひ復元をしてもらいたいということでございます。
以上が
エネルギー問題についてでございますが、その際、特に大口
電力につきましての
省エネルギーを促進すると同時に、夏に労働者の夏季休暇とあわせまして、ここで最高
電力を引き下げる、負荷率を高めるような政策をとってもらいたい。私
どもも、夏には工場の方も休んでいただきたいし、労働者も夏季休暇をとるということによって、あの最高時のところを全部
国民的な運動をしたらどうだろう。そうやることによって電気の
設備を必要としないわけでありまして、私
どもの計算では、八〇%の負荷率であるならば
原子力発電は要らないという結果が出てまいります。そういうような具体的な提唱をこれからわれわれも運動としてやっていきたいと思います。政府並びに各会社の方も、この問題は共通問題でありますから、ぜひ一緒にやっていただきたいと思うわけでございます。
それから、先ほどの査定の際に一つだけ落としましたが、労働条件の問題に労働組合の立場からぜひお願いをしておきたいのは、北海道
電力の査定が、人件費が五・五%と伝えられているわけでありますが、いままで、過去の
電気料金は実は春闘時ではなかったのでありまして、余りこのことはなかったのですが、この春闘の最中に五・五%と言われると、
電力というのは最も賃金に
影響が——
電力の賃金が高いわけでございまして、この点は、賃金というのは労使交渉によって行われるものでございますので、このことを通じて賃金
抑制を行うようなことのないように、ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。
さらに、
料金決定問題につきまして、最後になりますが、これからの
料金決定方法、それから
値上げ幅等につきまして申し上げておきたいと思うわけでございます。
私
どもは、こういうような地域独占の
公益事業で最も大切なことは
料金決定の方法だと思うわけであります。
国民に最も切実な地域独占は電気と水だと思うわけでありまして、その
電気料金について、官製公聴会をやり、そして一方的に通産省が査定をするというのはどうしても解せないわけであります。しかも、官製公聴会といい、きわめて形骸化されているわけでございまして、結果がどう反映しているかわからないし、しかも旅費が一つも出ない。たとえば
東京電力にしても、各県の遠いところから来ていても、金を出すわけでもなければ、結果がどうなっているかわからぬということでは、これは全くやる方もやりがいがなくなってしまう。こういう形式的な官製公聴会のあり方を根本的に改めて、いま民間公聴会が大変盛んでありますが、このやりとりができますから、これはわれわれは大変結構なことだと思います。
基本的に、地域独占の
公益事業の
料金決定はどうあるべきか、これを考えてもらいたいということでございます。
それから、今回の
料金の上げ幅について私
どもの見解を申し上げます。
値上げ幅はぜひ半分以下にしてもらいたい。それから、いま北海道で三四・二三%という査定がされました。これは二月一日であります。北海道で三四%。電気が一番高いところでありますが、ここで三四%で、ほかの
電力を五〇%とかなんとかということになりますと、これはどう見ても
国民的に納得できないということであります。しかも、政治的に動くならば政治的にやってもらわなければ困るわけでありまして、私
どもは、少なくとも
値上げ幅を半分
程度以下にしていただきたい。特に、家庭用については三〇%以下にぜひともお願いをしたい。それと福祉
料金を導入していただきたい。それと同時に、九
電力体制を含めての見直し
委員会というものを提唱しておきたい。これは政府の場でもお願いしたい。できますならば、国会におきましても——九
電力体制は、もう構造的な
破綻の段階に来ていると思うわけでありまして、したがって
料金決定問題を含めまして九
電力の見直し
委員会を国会の中でもぜひつくっていただきたい。この際根本的な見直し体制をとっていただくようにお願いしたい。
若干時間が超過して大変失礼いたしました。よろしくお願いしたいと思います。