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武藤国務大臣 私
ども、この間
国会の
決議もいただきまして、最近の
アメリカの
対ソ穀物輸出停止の問題なり、あるいはFAOの二〇〇〇年の姿を想定してのある程度の、非公式ではございますが、試算なりを見ておりますと、やはり今後できる限り
国内の
自給力を高めていく必要があることは当然であると思っております。できる限り努力をしていかなければならないわけでございますけれ
ども、その
自給力という
意味において、結果的に常に
自給率といいますか、
現実にいま
お話しのように一〇〇%はいかないにしても、相当高いものまでつくっていくかどうかということになりますと、片っ方において、
食生活を強制できれば別でございますが、先ほどの
お話のように、なかなか強制ができないということになりますと、たとえば、
日本の場合には一番
自給率が達成できておるのは米でございます。
米中心の
食生活に
変化をしていくことができれば、これは大変にありがたいわけで、たとえば、米と野菜と果実と、あとは
国内でできる
動物性たん白質は、
国内でできる
範囲の
養鶏、
養豚の、どちらかといえば
自給率の高い肉を
中心として、ブロイラーあるいは豚肉を
中心とする。こういう姿でいけば、私は必ずしも一〇〇%に近いものが不可能ではないと思うのでございます。
しかし、今度、そうなってまいりますと、これはそのものずばりは確かに
自給率は高いのでございますけれ
ども、それを
生産するために必要な
飼料というものになりますと、いまほとんど一〇〇%と言っていいくらい、特に
養豚、
養鶏の場合には
飼料穀物を供給しておられるわけでございます。確かに一部はそれ以外のものもございますけれ
ども、相当高い、一〇〇%近い形の
飼料穀物が提供されておる。そしてまた、それは一〇〇%と言っていいくらい
輸入に依存しておる。そうすると、結局
自給率を総合的に
考えてまいりますと、
穀物自給率の面を見ますと、非常に低いものでございますから、今度、総体的な
総合自給率ということになってくると、結果的に落ちざるを得ないというのが
現実の姿でございまして、ですから、たとえば豚とか鶏も、昔のように豚は残飯を食べさせるとか、あるいは鶏には貝がらを削って食べさせるとか、何かそういう姿にもう一度戻っていくということを前提にするならば、その
自給率を高めていくということは必ずしも不可能ではないと思うのでございますけれ
ども、そういう姿になってくると、今度は
自給率と言っても
数量は非常に落ちていくわけでございます。
数量が落ちていく中で、果たしてそれでは
国民の
食生活に対応できる量が提供できるかというと、今度はそちらの方が不可能になってくるということでございますので、なかなか
——飼料穀物を
国内で
自給できるようなことが何かできるならば、私はまた非常に変わってくると思うのでございます。その点がいま
現実の問題として非常にむずかしい。
もう
一つは、経済的な負担の問題で、たとえばトウモロコシでも、あるいはいま私
ども非常にまた
皆様方も非常に注目していただいておる
飼料米、こういうものがいまの
飼料穀物に品質的にはかわり得ると言われておるわけであります。ただ、コスト的な面であるとかいろいろな面で制約があるわけでございまして、そういうものが幾ら高くてもいいのだという
国民的な
合意がもし得られるとすれば、私は
自給率は非常に高くすることは不可能ではないと思っておるわけでございます。その辺が、
国民の
合意がなかなか得られないものでございますから、いまのところ
穀物自給率が非常に低いために、結果的に
総合自給率も非常に低くなってきている、こういう判断でございまして、なかなかむずかしいのでございますが、しかしそうは言うものの、
万が一緊急事態が発生するということも
考えられないわけではございませんので、この間のああいう
国会決議もありまして、それを踏まえて、私
どもは
緊急事態の場合にそれじゃどうするのだ。先ほどの
お話で、
農業生産というのは急にそれじゃより多くのものを
生産しようと思っても、非常にタームが長いものでございますから、そう簡単に普通の
工業製品のようにどんどん大量
生産するわけにはいかないわけでございます。そこで、そういう場合に備えて、潜在的な
可能耕地面積と申しますか、そういうものをいかに確保していくかということ、それから今度それを耕作するだけの潜在的な
労働力をどう確保していくかという問題も、緊急の場合を踏まえれば必要であろう、こういう
議論が従来は正直に言って余りなかったわけでございまして、私
どもいまこれからそういう
議論を、
国会決議もございましたので、やっていくという
段階でございまして、まだその辺の
数字も詰まっていないわけでございますけれ
ども、当然私
どもそういう
考え方でこれから進めていかなければならない。
そうすると、今後やはりこれが、一体
水田利用再編対策を進めていく上にも、どういう形で
耕地面積を確保しながら進めていくかということも、
一つの大きな
考え方を入れてまいりますと、従来以上に多少変わった
考え方で対処していかなければならないことも私は出てくるのじゃないかと思っておりますし、あるいは二種兼その他の問題にいたしましても、ただ単純に二種兼はもう要らないのではなくて、やはり
一つの
潜在農業労働力としてそういうものをどう確保していくかということも非常に大切な問題であると思いますし、これからの
農政を
議論していく場合には、この緊急の場合を想定いたしますと、いままで以上に相当変わった
議論も必要であり、ある程度
方向づけも多少いままでとは少し修正していかなければならない
方向も出てくるのではないか、こう
考えておるわけでございます。