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1980-05-13 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十三日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君    理事 稲富 稜人君       菊池福治郎君    久野 忠治君       近藤 元次君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    玉沢徳一郎君       西田  司君    福島 譲二君       保利 耕輔君    渡辺 省一君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       新村 源雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    中林 佳子君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省構造         改善局次長   岡本 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 股野 景親君         大蔵省関税局輸         入課長     中島  潔君         大蔵省理財局国         有財産第二課長 松原 幹夫君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     廣瀬 定康君         自治省財政局地         方債課長    持永 堯民君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     野坂 浩賢君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     日野 市朗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村源雄君。
  3. 新村源雄

    新村(源)委員 まず最初に、今国会において衆参両院特別決議によりまして、食糧自給力強化に関する決議がされたわけでございます。したがって、食糧自給力強化ということになりますと、農林水産省が直接担当される省でございまして、その情勢を受けてどういうように具体的に対応を始められたか、その点についてお伺いします。
  4. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生からもいろいろ前にも御指摘があったわけでございますけれども、何といっても、国民食糧を安定的に国内的にも確保してまいりますことが、国政とりわけ農政の基本でなければならないと考えております。このために、国内生産可能なものは極力国内生産で賄うことを旨として、現在農業生産の再編成を推進しつつ、これを通じまして総合的な食糧自給力向上を図っていこうと考えておる次第であります。  こういう考え方に基づきまして、実は昭和六十五年を目標年次といたします新しい農産物長期需給見通しを、現在農政審議会等にお諮りして策定しつつありますが、とりわけ、ただいま先生指摘ございましたように、衆参両議院の本会議におきまして食糧自給力強化に関する決議がなされました。この趣旨を踏まえまして、食糧安全保障体制を強化する観点から、単に平常の場合の自給率だけではなしに、不測事態が生じた場合に、短期的には備蓄で対応してまいりますが、それが若干長くなった場合、長期に及んだ場合に、まず国内生産力を発揮してどのような栄養水準が確保できるか、また、その際の自給率がどうなるか等について検討を行っております。  農林水産省の現段階における試算によりますと、不測事態が生じまして食糧輸入量が現状の二分の一ないし三分の二になったと想定した場合に、昭和三十年代の二千三百カロリー台の栄養水準を維持するため、米、麦、芋を中心生産を展開するといたしますと、穀物自給率は五、六割程度になりますし、また、昭和四十年代前半の二千四百カロリー台の栄養水準を維持するように生産力を発揮すれば、穀物自給率は六、七割程度になる、こういうふうに一応試算をしておりますが、ただいまこの試算につきまして農政審議会の御意見も伺いつつ検討しておりますけれども、こういうような状態を片方で想定いたしまして、そういう場合に、具体的にいまの各農産物生産体制というものをどういう形で切りかえていくことがいいのか、また、そのための必要な条件は何だ、こういうことを一歩突っ込んで、実は現在いろいろ転作をやったり、また、農業基盤整備等事業を行っているわけでありますけれども、こういう観点を頭に置きながら、転作目標の策定、また、土地基盤事業整備推進等にいろいろ措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  5. 新村源雄

    新村(源)委員 そうしますと、かねてから昭和六十五年長期見通し自給体制について農政審議会諮問をしていた項に、新たにそういう不測事態が出た場合の国内自給体制はどうあるべきか、こういうことを改めて諮問をされたということですか。
  6. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 六十五年度見通しは、一応現在の状況で推移してまいりますと各農産物がそれぞれどのような自給率になるかということになるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたのは、そういう自然の状況といいましても新たに目標は設けていくわけでありますけれども、しかし、先ほど申しましたように、輸入が減った場合にそれをどの程度国内生産で切りかえてカバーできるか、こういうことで一歩踏み込んで考えているわけであります。  実は、この食糧自給という考えでございますけれども、たとえば、私たち経済生活が豊かになってまいりますと、当然国内生産できても外国物がいい、たとえば自動車なんかでも、国内でトヨタ、日産、りっぱな会社があってりっぱな自動車をつくっているわけでありますが、それでも外国の車を買ってみたいとか、そういう気持ちが出てきて外車の輸入がふえるということもあるわけでありますので、ある程度いわゆる奢侈品に属するような形で輸入がふえるものはわれわれそう気を使う必要はない、こう思うわけでありますが、やはり食糧自給にとって一番大事なことは、何か不測事態が生じた場合に最低限の国民のカロリーを確保できるかということが、まさに安全保障的な観点から大事なわけでございますので、六十五年度見通しとしては、ある程度自然的な状況における自給率がどうなるかという議論と、片一方で、何かあったとき、そういう事態の場合どうだということで、二段に分けて検討を進めておる、こういうことでございます。
  7. 新村源雄

    新村(源)委員 そういたしますと、農政審議会からの答申というのは二本になって出てくるわけですね。正常な場合はどうであるか、あるいは不測の場合はどうであるか、こういう二本になって出てくるわけでございますけれども、しかし、農林省として農政を進める場合には、やはりいずれかをとっていかなければいかぬと思うのです。ことに、農業生産というのは、一朝一夕にその目標に到達できるものではなくて、かなり長年月をかけてそしてそういう目標に到達をするという性格のものでございますから、答申は二本に出てくるけれども、どっちの政策を、諮問中心にして農政を進めようとするのか。
  8. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 国内自給率向上が望ましいということにつきましては、まさに私たちとしてはその方向で考えておりますので、六十五年の見通しの中でも、できるだけ自給力を高める方向努力を通じたその施策の延長線上に各農産物についての自給率のめどを考えているわけでございますが、しかし、そういうのと、いま申しましたように、不測事態輸入を半分に切らなければならない、もしくは三分の一を減らさなければならないという状況のときに、なおかつ国内農業生産力をどういうふうに転換していけばどの程度までの自給率が達成できるのかということは、これはちょっと違った問題でございますが、しかし、そういうことで切りかえができる、いわば平常時の状況と、無理がかかりますけれども強引に農業生産を展開してどこまでいけるかということと、その両方のことが必要でございまして、やはり平常の場合には無理をしないが、無理をかければここまではいくんですよという、可能性といいますか、そういう状況というものは常に考えながら、平常時においてもしかるべき施策を講じてまいる、こういうことではないかと思うわけであります。
  9. 新村源雄

    新村(源)委員 そうしますと、平常時というものを中心にしながらも、そういう不測の場合が起きた場合は直ちに転換できるような体制をあわせて進めていく、こういうことですか。
  10. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 そういうことであると思います。
  11. 新村源雄

    新村(源)委員 そうしますと、いままでのように外国農産物に大幅に依存をしてきた、そしてそれが中心になって米の転作等も行っていかなければならぬ、こういうことが、ただ単一な道でそういう方向が出てきておるわけですね。しかし、今度はそういう不測事態を加えながら、配慮をしながらやっていかなければならぬということは、生産調整等においてもある程度いままでの路線から変わった方向に向けなければならぬ、こういうように思うわけです。この点についてはどうですか。
  12. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 これまでのように、たとえば飼料用穀物についても、何でもかんでも外国からの輸入に頼ってしまうという方向を続けてまいりますと、一たん不測事態が起こって輸入を抑えなければならないときに、日本の畜産は壊滅的な状況になるわけでございますから、したがって、国内飼料生産をふやしていく。また小麦等についても同じことでございますけれどもふやしていくわけでありますが、しかし、同時に、先生御案内のように、いわゆる国内価格国際価格の差が相当ある農作物もございますから、したがって、それを一挙にすべて国内生産費を無視して自給体制を上げていこうということに急激にいたしますと、これは相当な財政負担、ひいては国民の皆さんの負担にはね返ってくるわけでございます。ですから、方向としては自給力を上げる方向努力してまいりますけれども、しかし、それを急にアップするということになると、いろいろな負担がかかりますから、したがって、それは有事の場合には切りかえるんだという条件をつくっていけばいいわけでございまして、その辺の両方の考慮のバランスをいかにうまく賢明にとっていくかということではないかというふうに私どもは考えております。
  13. 新村源雄

    新村(源)委員 私も、消費者にはできるだけ安い食糧を安定的に供給するというのが生産者立場である、こういうように考えていますし、また一面消費者も、生産者経営生活まで破壊されるというような価格については、これはやはり政府がそういうものの国民的なコンセンサスをどう進めていくかということが、私は政策の重要な課題であるというように思っております。  それともう一つは、いま不測の場合に対してどうするか、こういうことですね。要するに食糧安全保障ということでしょう。いま新聞で盛んに、恐らくきょうの本会議におきましてもかなり論議を呼ぶと思うのですが、防衛力増強の問題がありますね。これもやはり国民の安全の立場でそういうものを進めようとしている。食糧もそういうことで、国民の命を守る、生活を守るという意味における安全を進めていこうとしている。そういう面からのいわゆる財政負担というのは、ただ単に消費者に安いものを供給するためには外国農畜産物と比較すれば高いからという面だけでは片づけていかれないのではないか、そこに新たな決意と発想が必要ではないか、私はこういうように考えるのですが、この点についてはどうですか。
  14. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘のとおりに、有事の場合に相当な食糧外国から輸入しなければならない。そのためのいわゆる船団護衛が必要だから、その船団護衛のためにある程度海上自衛力を持たなければならない。これは私は一つ議論だと思いますが、しかし、同時に、有事の場合に外国からの食糧輸入に頼る割合を減らしていくということは、そのために必要な船団護衛力を理論的に考えれば減らしてもいいということになるわけでございますので、そういう意味では、国内自給力を高めるための経費海上自衛力を増大する経費とある程度関係を持つ、相関関係だ、こういうふうに考えていいと思うわけであります。したがって、そういう意味で、国内食糧自給力を高めるための経費というものはそれは相当の財政負担を行ってもいい、こういうふうに私は考えますが、同時に、先生の御指摘もあったように、なかなか金のかかることでもございます。私、これは個人的に試算をしてみたのでありますが、たとえば国内生産者について、麦についていま一俵一万円前後でございますが、一万円前後を保障し、そして国内消費者に、いま輸入で一俵四千円ぐらいのようでありますから値段を保障する。そうすると、その差額六千円は国が財政負担しよう。すなわち、国内生産者には従来どおり生産費を保障して、国内消費者には現在どおり消費価格を保障しよう。差額財政負担しよう。あらゆる農産物についての差額は国で見るのだ、財政負担するのだ。こういうことで計算してみますと、非常に粗っぽい計算でございますが、五兆円の補助金がないとそれができない。これは計算の上でありますが、こういうふうにかかるわけであります。したがって、生産者には経費を保障し、消費者には安い価格農産物価格を保障していくようなことを急遽全面的にいたしますと、大変な財政負担になりますから、その負担との絡みで、慎重にしかし前向きにいろいろなことをしていかなければならない、こういうふうに思っているわけであります。
  15. 新村源雄

    新村(源)委員 この問題は防衛論議にまで発展しそうな傾向でありますが、時間的な余裕がございません。ただいま申し上げましたように、単純な、たとえば二万円するものを六千円で供給するから幾ら国費がかかるのだというような論議ではなくて、国民食糧の安全、そういうものを守るという意味で、国が積極的に国内自給力をどう高めていくのだ、それにはある程度財政負担もやむを得ないのだ、こういう基本的な考え方に立ってこれからの農政の見直しをしてもらいたい、こういうことが私の要望なんですよ。そういう点については、基本的には次官、御理解できますか。
  16. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 たびたび申し上げておりますように、食糧自給力向上はぜひしなければならない課題でございますから、そのための財政負担については、私たちも積極的に取り組んでまいらなければならない、こういうふうに思うわけであります。しかし、これと並行して、いま小麦値段の場合を申し上げましたけれども、国内生産効率を上げるということも、これは同時に国内自給力を高めるための非常に大きな要素でございますから、農業生産合理化効率化ということについても生産者方々の御努力をお願いいたしたいし、また、ある意味では、有事の場合の食糧自給力を高めるために、ある程度消費者方々にも諸外国よりも若干高い農産物価格で消費していただくという面も場合によってはお願いしなければならない。国も生産者消費者三位一体になって初めて、食糧国内自給力向上ということが可能になるのではないか。決して財政負担を避けることではございませんが、しかし、三位一体努力がこの際どうしても必要ではないか、かように考えるわけであります。
  17. 新村源雄

    新村(源)委員 この問題は、農政審議会答申等を見まして、さらにまた論議を深めてまいりたいと思っております。  次に、先般ジェトロから昭和五十四年度の農林水産物輸入状況が発表されておるわけであります。     〔委員長退席片岡委員長代理着席〕 これによりますと、去年は一挙に三五%の増になってきている。しかも、これは去年円安その他の関係等がありまして金額的には必ずしも数量とマッチしないわけですけれども、数量においても、トウモロコシにおいては八・三%、小麦においては六・五%、牛肉が二九・二%、豚肉が二七・四%というように、国内食糧が過剰な状態になっている。ことに豚肉なんかが生産者自主調整までやらなければならなくなってきている、こういうときに、二七・四%もの実質的な輸入が増高しているということについては、農林省の怠慢に通ずるのではないか。全くこういうものは放任している。安ければ幾らでも買ってこいという姿勢がこの数字にあらわれてきているのではないかというように思うのですが、これについてはどうですか。
  18. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 豚肉輸入につきましては、昭和五十四年の対前年比の数量は二七、八%の増ということになっております。御承知のように、豚肉輸入につきましては自由化されておりまして、政府がこれを直接規制するということは困難でございますが、御承知のように、差額関税制度によりまして一定の価格以下の輸入豚肉が入らないような措置を講じておるところでございます。五十四年の輸入量がふえておりますのは、五十四年の前半におきまして加工原料用豚肉輸入が急増したためでございまして、九月以降豚肉価格が低落をいたしましたのに対処いたしまして、生産者団体の方から輸入業者及び加工団体に対しまして、国産豚肉をできるだけ使うようにという要請をいたしましたところ、それを受けまして、民間べースによる自主的な輸入抑制措置が講ぜられたのでございます。その効果もありまして、五十四年十二月以降は輸入量が大幅に減少をいたしておりまして、本年に入りまして一月から三月までの間の輸入量の対前年同期比は約六五%、三五%の減ということに相なっておるわけでございます。  豚肉輸入が、差額関税制度があるにもかかわらず入ってまいっておるのはどういうわけかということでございますが、輸入豚肉は、その相当部分加工原料用として使われます。加工原料用として見た場合に、輸入豚肉品質あるいは規格が加工適性ですぐれておる。さらに、需要に応じた特定部位、たとえばロースならロースという部位を選択的に購入できるという利点があるように思われるわけでございます。そうしたことから、やはり国内産の豚肉がそういった輸入品に対して競争力を持つということを今後の対策として考えてまいらなければならないということで、生産者団体とも御相談をしながら、品質向上という問題に積極的に取り組んでおるところでございます。また、特定部位を選択的に購入できるような流通の仕組みというものも考えていかなければならぬ。御存じだと存じますが、部分肉センターを目下建設中でございまして、部位ごとに取引ができるマーケットをつくって、そういう加工品需要に応じてできるだけ国産品が使われるようにする、そういう措置を講じておるところでございます。
  19. 新村源雄

    新村(源)委員 ただいま畜産局長から説明のあったとおりで、やはり適正な指導をすれば抑制することができるということを実質的に証明しておるわけでしょう。それがとことんまで追い込まれてからようやく立ち上がる、いつも政策が後追いになる、そのことによって養豚農家の多くが大変な犠牲を強いられておるということですので、この教訓を生かして、こういうことのないように特に強く要求をいたしておきます。  それから、どうも農産物輸入経過をずっと見ておりますと、全体的に国内需給関係というのを度外視して、国内生産というものを見ないで、一たん実績ができたものはそのままの実績が大体踏襲されて年々高まってきている、そういう傾向が長い経過の中で見受けられるわけです。こういう点については、ここでいま豚肉で申し上げましたけれども、もう少し農畜産物全体について国内生産状況というものを正しく把握をして、そしてそれに対する不足分輸入してくる、こういうような輸入の原則に立ち返らなかったならば、いつでも外国農畜産物圧迫によって国内生産が抑制されてくる。こういうことでは、先ほど次官のおっしゃっていましたような国内農業を育てるどころではなくて、このままの状態ではだんだん追い込まれていく、こういうように指摘せざるを得ないわけですが、こういう点について、次官どうですか、そういうようにやっていだだけませんか。
  20. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘のとおり、農産物貿易自由化、この問題は非常に慎重に取り組まなければならない問題でございまして、これを安易に行いますと、わが国農業生産農業経済の安定に重大な影響を及ぼしますので、慎重の上にも慎重に行ってきたつもりでございます。決して勇み足などはすべきじゃないし、いろいろ外国からの要請があっても、これに対してはできるだけ慎重に対処してまいったつもりでございますし、特にわが国農業の基幹をなす作物、地域的に重要な作物等については、輸入割り当て制度で非常に限定をしていくということでなければならないかと思います。ただ、いろいろな経過ですでに自由化されたものがございますので、これについては、御説のとおり、まず国内需給を見て足りない分を輸入すべきだという御議論でございますが、自由化になったものについてそういう形で措置していくのがなかなか困難な面もございます。そこで、私たちといたしましては、自由化されたものにつきましては、一応当方の国内の事情についても輸出国に対して十分に説明いたしまして、秩序ある輸出をしてもらいたいという話をしてございますし、また同時に、ただいま畜産局長から御説明いたしましたように、たとえば豚肉等につきまして、まず輸入に頼る前に国内生産品でこれに充てられるものは国内産品を充ててくれ、こういうことで国内的な、これも表立ってできることではございませんが、いろいろ業界が話し合いをしているのをサポートするというようなことだとか、また関税割り当てなど関税制度の適切な運用、こういったいろいろなことを踏まえて、あわせて何とか輸入によって国内需給バランスが乱れて国内生産者に不利益が生じないように善処してまいったつもりでございます。同時に、何といっても、自由化したものにつきましては、国際的にある程度競争力を持っていかないと、そういう措置に限度がございますから、やはり生産合理化品質向上等についてもしかるべき措置を講じて、体制づくりを進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 新村源雄

    新村(源)委員 次に、私は連休中、国会報告等酪農主産地を駆け足でございますけれども回ってまいりまして、どこの農協に行っても、一体牛乳をどうやって生産調整をするかということが生産者団体並びに生産者の非常に大きな悩みで、中には、いままで酪農に積極的な投資等をやってきたんだけれども、こういう状況ではとてもやっていけないから経営の転換を図ろう、こういう深刻な相談を受けたわけです。さらにまた、きょうの農業新聞を見ますと、農業信用保証協会昭和五十四年度には三千四百件に上る代位弁済を行っている。しかもその額が二十七億円、こういうことを言っているのです。そしてまた、その対象農家がほとんど畜産農家である。こういうことからいって、先ほど申し上げました豚肉価格あるいは三年連続乳価の据え置き、こういうものにかかわる畜産農家経営圧迫というのはこういう方面でもきわめて顕著に出てきているわけです。  そこで、ことしはもうすでに乳価の据え置きが決まり、あるいはまた限度数量までも据え置かれるという状況の中で、一体農林水産省は、この畜産酪農の危機を、本当にことしじゅうにいまの不正常な市場状況というものを整理できる具体的な方法はあるのかないのか、どういうようにやっておられるか、この点についてお伺いします。
  22. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 確かに酪農関係は、生乳の需給関係が厳しい状況にあるために、非常に苦しい状況に置かれておるというふうに存じます。これは、生乳の需給の中で飲用牛乳の消費は伸びておるのでございますけれども、生産の伸びがさらにこれを上回るということで、乳製品にその余った分が仕向けられる。したがって、乳製品の生産が大幅にふえて、その在庫が大量なものになってきておる、こういう状況にあるわけであります。したがって、今後の酪農を健全に発展させるためには、需要に見合った生産を進める必要がある。牛乳はまだまだ消費は伸びるということでございますけれども、しかし、その伸びを上回ってさらに生産を続けるということになりますれば需給の不均衡をもたらすということでございますので、需要の伸びに見合った生産の伸びを進めていくということが重要であると考えておる次第でございます。  生産者団体におかれましても、そうした事態を十分受けとめていただきまして、自主的に計画生産を進める、特に全国的にそういう体制を五十四年度からとっておるわけでございまして、五十五年度も引き続きそういう計画生産を進めるということで方針を固めておるわけでございます。一方、消費の伸びにつきましても、できるだけ消費拡大の努力をすることによって需要の確保を図るという措置も同時に進めておるわけであります。これまでの酪農の伸びは、生産数量として見た場合には対前年比七ないし八%という非常に大幅な伸びでございまして、飲用牛乳の伸びが四ないし五%の伸びでございまして、確かにその生産の伸びを需要の伸びに抑えるということは非常に厳しい事態でございますが、これを切り抜けていくことが酪農の健全な発展を図るゆえんであるということで、そういう基本的な考え方のもとで、酪農生産者並びに生産者団体に対しては十分その方針で対処するよう要請をしておりますし、生産者並びに生産者団体におかれましても、そうした事態を切り抜ける御努力をしていくということで現在対処をしておるところで、これをさらに進めていくというふうに考えておるわけでございます。
  23. 新村源雄

    新村(源)委員 局長のお話を聞いていると、乳製品市況がこういう非常に商品のだぶつきが見えてきたのは、市乳の伸びを上回って生産が伸びた、したがってそれが加工に回ったために乳製品市況が非常に悪化してきた、こういう意味のことを言っておられるわけですね。ところが、そうではなくて、乳製品過剰が伝えられた昭和五十二年度から五十二、五十四年度と、ずっと引き続いて乳製品は依然として増加基調でもって輸入をされてきている。しかも、この乳糖、カゼイン、こういう本来は工業用として輸入されるものの中からこれを調製をして調製脱粉、こういうものをつくる。あるいは、ココア調製品の中からは、わずかに一〇%がココアであって、九〇%が脱粉である。あるいは、調製油脂の中では七〇%のバターが含まれている。こういうことが全く野放しになって、そして乳製品市況をさらにそういうものから圧迫を加えてきている。こういうことには全然触れていないのですが、局長、これはどうなんですか。
  24. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 乳製品の輸入の抑制につきましては、最近の生乳需給事情にかんがみまして、バター、脱脂粉乳等につきましての畜産振興事業団による輸入は停止をいたしております。また、他のIQ品目につきましても、極力輸入の割り当てを抑えまして、輸入の抑制に努めておるところでございます。  ただいま五十二年、三年、四年の乳製品の輸入のお話がございましたが、確かに五十二、五十三年とふえてきておりますが、五十四年におきましては、乳製品の輸入は対前年比生乳換算で九九・一%と頭打ちになっておるわけでございます。  輸入の内容について見ますと、輸入の大部分、数字的に申し上げますと、えさ用の脱脂粉乳が三一・二%、それからナチュラルチーズが四四・三%、この二品目で七五%を占めるということで、脱脂粉乳につきましては、畜産経営の安定ということで安いえさ用の脱粉の割り当てを行っておるところでございます。また、ナチュラルチーズにつきましては、できるだけこれは国産に切りかえていくという方針を進めていきたいと考えておりますけれども、現在のところ、残念ながら輸入にかわるほどの生産効率的に進められるという状況にないわけでございます。  ただいま乳糖、カゼインのお話が出ましたけれども、乳糖、カゼインは国内生産がないということで自由化されている品目でございます。しかし、それが国内の乳製品と競合するように使われるということにつきましては確かに問題でございまして、その実態を調べてまいっております。これまでの調査で見ますと、乳糖、カゼインで一般食品用に使われているのが約三〇%、その中で合成脱粉というのはどれほど使われているかということでございますが、これはまだ十分実態がわからない面がございますが、私どもが承知しておるのはそれほど大きな数字ではないと考えております。しかし、そうしたものがあるということにつきましては、これは問題視をしていかなければならないということで、さらにその調査を進めていくことにいたしております。  それから、調製食用脂あるいはココア調製品のお話がございましたが、これらもいずれも自由化品目でございます。ココア調製品につきましては、需要者団体が自主的な自粛をいたしておりまして、その自粛の線は、年度によって多少の上下はございますが、おおむね守られております。今後もその自主的な措置が続けられるよう指導をしてまいりたいと考えております。それから、調製食用脂につきましても、そのユーザーに対しまして、できるだけ国産品を使うよう要請をいたしておりまして、五十四年におきましては対前年比若干減少をしておるということでございます。  これらにつきましては、今後の動向を見きわめつつ、所要の措置、対策を検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  25. 新村源雄

    新村(源)委員 このココア調製品あるいは調製油脂というのは、本来は、バター、脱粉というのは事業団が一元的に輸入をして、国内の加工原料乳から生産される乳製品とのバランスをとっていく、こういうことになっているのでしょう。そうしたら、このココア調製品の中から脱粉が出てきたりバターが出てくるということは、これはどこかの機関で必ず抑えることができるはずなんです。局長、そうではないですか。そのために関税率もそれぞれ引き下げてあるわけでしょう。  そういう点について、自由化品目であるけれども、しかしそれは脱粉とかバターとかというそういう用途に使わないということで自由化にし、関税も安くなっている。これに対して規制の方法がないというのですか。
  26. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 ココア調製品あるいは調製食用脂は、それぞれ成分についての規定がございます。これは国際的な関税の品目についての協議等が基本になっておるというふうに承知をいたしておるわけでございまして、ある程度乳製品あるいは相当部分乳製品が加わっておる場合にあっても、それは調製食用品として位置づけられる。そのことから、それについて自由化されている場合には輸入がされるという実態にあるわけでございます。  しかし、その含有割合等につきましては、現下の需給事情、また今後の酪農の健全な発展を図るという見地から、何らかとり得る措置があるのかどうか。これは、国際的な品目分類というのがございますので、いま大蔵省の関税当局その他関係方面と協議をして検討をしておるところでございます。
  27. 新村源雄

    新村(源)委員 農林大臣は、岐阜県の関市において、このココア調製品の輸入抑制をしたい、こういう発言をされておることは新聞報道で明らかになっておるわけです。  これに関連をして、いま畜産局長のおっしゃいましたように、混入率その他について大蔵省と協議をしている、こういうことですが、これもきのうの農業新聞でございますけれども、いまもココア調製品のココア混入率というものは明らかになっていない。ココア調製品とはココアを含むもの、これが条約上の解釈範囲になっている、こういうことで、きわめてあいまいである。したがって、これを三〇%を四〇%にするという解釈も生まれるし、あるいは一〇%以内でもいいという解釈が生まれる、こういうように言っておるわけですが、いま大蔵省とどういうような考え方で協議を進めておりますか。あわせて調製食用油脂についてもお答えをいただきたい。
  28. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 ココア調製品につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、民間の自主的な輸入自粛措置を講じておるところでございまして、輸入量が大幅にふえてきておるという実態にはないわけでございます。したがって、当面の措置としては、その自粛措置が遵守されるように要請をするということを基本として、その推移を見守りつつ所要の対策を検討するという考えでおるわけでございます。  ココア調製品というのは、国際的に特殊な品目のようでございまして、ココアが入っておるものにつきまして、ココア調製品の場合にはココアを含んでおればいい、含むものをいう。どのくらい含むものをいうかということになりますと、ごくわずかでもいいというふうにも受け取られるわけでございます。現在の運用基準におきましては、ココアが一〇%以内というふうに承知をいたしております。これを引き上げるようにする、逆に言えば乳製品の割合を引き下げるということにつきましては、先ほど申し上げました輸入の動向を見きわめつつ検討してまいるということにいたしておるわけでございます。
  29. 新村源雄

    新村(源)委員 輸入の動向を見きわめるということは、業界にいまの酪農の現状を理解していただいて、こういうことに協力をされるというような状態を見きわめるということなんですか。それとも、ただ単に入ってくる状態を見きわめてということですか。
  30. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 民間の自粛措置が守られているかどうか、今後も守られるかどうか、それを見きわめつつということでございます。
  31. 新村源雄

    新村(源)委員 そうすれば、そういうことも含めて農林水産大臣の、輸入を抑制したい、こういうことをそういう中で実現をしていきたい、こういうように理解をしてよろしゅうございますか。
  32. 犬伏孝治

    犬伏政府委員 輸入がふえることを抑制するということでございますので、お話のとおりでございます。
  33. 新村源雄

    新村(源)委員 大蔵省からも来てもらっているわけですが、大蔵省として、この問題について農林水産省とこれから協議を進められるわけですが、その中で、やはり何といってもこういう問題が起きてきたのは国内酪農が非常に混乱をしておる、こういうようなことを基本的に踏んまえて協議を進めていかれるかどうか、大蔵省の御意見を伺いたい。
  34. 中島潔

    ○中島説明員 私ども関税当局がこの問題にかかわるのは、輸入される商品がどこに分類されるかという点であろうかと思うわけでございますが、先ほど農林省の方からもお話がありましたように、商品の分類というものは一応国際条約で決まっておりまして、その国際条約につきまして各国で統一的な解釈をいたしているわけでございます。私ども、関税率表なりあるいはそういう国際的な統一解釈に従って分類を行っているわけでございますけれども、国内におきましていま問題になっております調製食用脂あるいはココア調製品といったようなものが、乳製品に関する一元制度とか割り当て制度と関連がございますので、そういう点を勘案しながら分類をしているというのが実情でございます。  調製食用脂につきまして申し上げますと、関税率表上バターと調製食用脂と両方あるわけでございますが、バターというのは、一応国際的な統一解釈で天然バターをいうというようにされておるわけでございます。いま問題になっております、バターに植物油、ココナツ油であるとか大豆油であるといったようなものをまぜてきますと、これは調製食用脂に分類されるというのが現在の取り扱いになっているわけでございますが、バターは一元輸入品目、それから調製食用脂は自由化品目というようなことがございますので、バターにこういう植物油をまぜてきても、バターの特性が失われないという程度のものであればこれはバターに分類する、バターの特性が失われる程度に混合されていればこれは調製食用脂に分類している、こういうのが現状になっているわけでございますが、いろいろ問題もございますので、こういうようなバターとほかの油をまぜてきたものを今後どう扱っていくか、国際的な条約の解釈の問題でもございますけれども、関係省庁と協議しながら検討をしていきたいというように考えておるわけでございます。  なお、ココア調製品につきましては、先ほどからお話が出ておりましたけれども、条約上ココアを含むものはココア調製品に分類するということになっておりまして、それの統一解釈によりますと、ココアの含有割合のいかんにかかわらずと、こういうことになっておりますので、この点につきまして、現在の扱いを今後続けるかどうか、必要であれば検討をしたいというふうに考えておりますけれども、こういう含有割合のいかんにかかわらずというような解釈がございますので、分類の変更というようなことについてはおのずから一定の限界があるのではないかというように考えております。
  35. 新村源雄

    新村(源)委員 ココア調製品あるいは調製食用油脂あるいはカゼイン、乳糖、こういうものにつきましては、先ほど局長のおっしゃったように、業界の協力度合いを見ながら、機を失せず対策をひとつ打ち出していただきたい。  それともう一つ、脱脂粉乳の事業団にかかわるものとして、学給用というのがありますね。自由化したものはなかなか手がつかない。しかし、せめて学給用なりあるいは飼料用なり、政府考え方である程度自由にできるもの、こういうものでやはり国内需給関係の調整をとっていくべきじゃないか。輸入輸入で、安いからといってそのままストレートでどんどん入れてくる、そういうことではなくて、政府の権限で調整できるところで調整をする、こういう姿勢がいま必要でないかと思うのです。  そこで、私は、少なくとも学給用の、生乳換算にして七万七千トン程度ですが、このくらいはまず国内の脱粉を使う、こういうようにぜひやってもらいたいのですが、次官、どういうお考えですか。
  36. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生の御指摘は十分よくわかりますし、いま国内酪農の最大の課題は、いかにして国内的に需要を増大していくか、こういうことだと思いますので、輸入乳製品、酪農製品ができるだけ国内需要の拡大に妨げにならないような措置を講じていく必要があると思うわけであります。  ただ、局長がたびたび繰り返し申しておりますように、自由化品目についての一つの限定がございますから、これはこれなりに対処することも考えなければなりませんが、同時に、いわゆる一元輸入をしておりますものにつきましても、率直に申しますと、先ほども私お話しいたしましたように、値段の問題がございますので、国産脱脂粉乳と輸入脱脂粉乳の差はきわめて大きい。したがって、輸入脱脂粉乳を国産脱脂粉乳にかえる場合の費用の負担をどうするかという問題、これは非常に大きな問題でございまして、この問題絡みで、実は学校給食用の脱脂粉乳の輸入につきましても、また飼料用の脱脂粉乳につきましても、対処していかなければならない、こういうことであると思います。
  37. 新村源雄

    新村(源)委員 この問題について御意見を申し上げておきますが、これは、日本酪農の現状というのは先進国から見ればかなりおくれている。これを何とか取り戻すために、補給金暫定措置法というものをやって、そしてまた脱粉の価格というものを一定の価格に抑えているわけでしょう。高いというのは、補給金の出し方が足りないから高いのですよ。補給金をもっとそういう実態に合わせるだけ出せば、さっきから次官が何回もおっしゃっているように、高いということにはならぬです。もしそれ以外に高いということであれば、加工流通経費、こういうことになるので、そういう点のメスをもっと徹底的に入れて、なぜ高いか、本当に生産の現場で高いのかどういうのかというのをもっと徹底的に究明していく必要があるのではないか、こういうように思います。これはまたこれから、いろいろ農林水産統計、これを見ながら適時またお伺いをし、意見を具申をしていきたいと思います。  次に、時間がございませんが、韓国漁船の北海道近海における操業の問題についてお伺いしますが、これはもう昭和四十一年から十五年間も北海道の近海で、しかも、干トンから二千トン級の大型漁船がオッタートロールという底びき網を引っ張って、しかも中数隻という船団を組んで操業をしているわけです。このために、もういままで北海道を初めとする漁業団体あるいは沿岸の市町村の切なる要請が相次いで起こっているわけです。しかし、いまだに解決のめどというのはほとんどついていない。北海道ではもうこれ以上しんぼうできない、こういうことで、五月の八日に緊急漁民大会を開いて、緊急の事態であるという宣言までしているわけです。それとあわせて、漁具被害につきましても、すでに七億一千万も出ている。こういう点について、これから韓国との調整をどういうように進めようとしているか、お伺いしたい。
  38. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 北海道沖の韓国漁船操業問題につきましては、従来から各種レベルで当方と向こう側と話を進めておりますし、御案内のように、日韓水産庁会談を三度も行って努力してまいりました。最近また四月九日から十一日まで、外務省も含めて日韓実務者協議を行い、わが方の要求について十分に内容の説明もし、わが方の立場の理解を求めてまいりましたし、また実務者間でございますから、向こう側は向こう側のいろんな言い分がございまして、お互い率直に意見の交換をして、双方の立場についてはある程度理解をした、こういう段階でございます。  したがいまして、これからは相互の理解に基づいて、さらに具体的にどう解決するかということについて実は早急に話を進めてまいりたい、こういうことで、大臣からも担当者に話をいましている状況でございます。
  39. 新村源雄

    新村(源)委員 この問題は、北海道沿岸漁業にとっては死活の問題に追い込まれておりまして、場所によっては、もうおれたちは漁師をやめなければならぬのじゃないか、集落ごとにやめなければならぬのじゃないかというぐらい深刻な状況に追い込まれているわけです。私も多少韓国の事情等を見てみますと、非常に厳しい交渉であるということはわかるわけです。しかし、そういう中でも、お互いに誠意をもって話し合えば必ず打開の道がある。その打開の道を一刻も早く実現できるように、農林省、それから外務省からきょう出席をいただいておったわけですが、御答弁をいただく時間がなかったので、ひとつ農林水産省とともに、問題が早期に解決できるように全力を挙げていただきたいことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  40. 片岡清一

    片岡委員長代理 野坂浩賢君。
  41. 野坂浩賢

    野坂委員 きょうは大臣が法案審議の関係で参議院の方においでになったということでありますので、政務次官近藤さんを中心に、農林省の首脳部に対して、農地問題にしぼって質問をしたい、こういうふうに思います。  私は、質問というよりも問題を提起して、愛情のある農政をいかに進めてきたか、どうすれば足らざる点が補完できるか、そういう点を中心議論を進めてまいりたい、こういうふうに思います。  まず最初に、土地改良の十カ年計画、長期計画というのがございますが、これについては予算総額は十三兆円と承知しております。あと二年間で終わらんとしておるわけでありますが、この進捗の状況を、金額と面積で明らかにしてもらいたい。
  42. 岡本克己

    ○岡本政府委員 長期計画でございますが、いま先生お話しの、昭和四十八年から五十七年までの十カ年を予定いたしまして、予備費を含めまして十三兆の長期計画が立てられております。  現在までの進捗でございますが、事業費ベースで申し上げますと、予備費を含めまして十三兆に対しましておおむね六九・五%の進捗になろうかと思います。五十五年度末でございますが。五十五年度予算を執行いたしますと六九・五%が見込めるのではなかろうか、このように思います。  それから、面積ベースのお話がございましたが、面積につきましては、たとえば圃場整備でございますとか農用地開発でございますとか、算出の基礎といたしまして、たとえば農地開発につきましては七十万ヘクタールの開発を予定しているというようなことかございますが、いまの事業費ベースに比べまして、四十九年、五十年のインフレ等もございまして、必ずしも進捗率がよくない。個々の事業によって若干違いますが、四〇から四二%ぐらいの進捗じゃなかろうか、このように判断しております。
  43. 野坂浩賢

    野坂委員 金額のベースでは六九・五だ。しかし、農民の立場に立てば、金額よりも基盤整備事業、圃場整備事業がどれだけ進んだか、この方が非常に関心が高いわけであります。いま、次長からお話をいただきましたように、面積の進捗状況というのは約四〇%、百二十万ヘクタールに対して四十七・七万ヘクタール、こういうことになっておるわけであります。あと二年であります。そうすれば、この面積については若干変更するということになりますか。変更しないのか、その点はどうですか。
  44. 岡本克己

    ○岡本政府委員 先ほど申し上げました面積でございますが、確かにいま先生が御指摘のように、積算の基礎としてそういうものがございます。しかしながら、一般に長期計画につきましては、事業費というものを目標に年度の予算を執行しておりますので、いま直ちに面積が達成できないから、それのことだけによりまして長期計画を変更しなければならないとは考えておりません。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 野坂浩賢

    野坂委員 農林省としては、面積は関係ない、金額でいくのだ。百二十万ヘクタールに対して四〇%しかできていない。あとの六〇%は二年間でできるという可能性はない。五十五年度末ということになれば、すでに八年間経過しておる。そうすれば、五〇%弱しか面積としては完成をしないということになりますが、それで事成れり、こういうふうに農林省は考えておるわけですか。
  46. 岡本克己

    ○岡本政府委員 もちろん、事足りると考えておるわけではございません。ベースとなっております面積の達成が望ましいことはもう申し上げるまでもないことでございますが、それだけのために長期計画をただいま直ちに変更するということは考えてないと申し上げたわけでございます。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 できなかった場合はどうしますか。
  48. 岡本克己

    ○岡本政府委員 現在のままで参りますと、先生指摘のように一率直な話が達成は困難と思います。全般の食糧需給見通し等もいま検討されております。そういうものと絡めまして、地方の実態、進捗状況の実態等も調べまして、調査につきましては今後取りかかってまいりたい、このように考えております。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 達成は困難であるということは認める、しかし、いまは変更はしない、と。いつ変更しますか。そして、どういう計画の中でこれを達成しようとしますか。もしあなたがお答えできなかったら、政務次官から政治的に御答弁をいただきたい。
  50. 岡本克己

    ○岡本政府委員 具体的にいつどのように変更するかというお尋ねにつきましては、現在、これは五十七年度までという計画に一応なっております。あと期間もわずかでございます。そういう中で、調査をいたしまして、変更するかどうか、そういう検討も含めまして作業にかかってみたい、このように考えておるところでございます。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 一応十分検討して、農民の期待にこたえるような土地改良計画の完遂を要求しておきます。  次に、約五十万ヘクタールの基盤整備事業、圃場整備事業を行ったわけでありますが、この中で、地図上では赤線、青線と呼んでおりますが、赤線は農道、青線は水路、こういうことになっております。この赤線、青線の基盤整備をする、いわゆる従前の面積と完了後の面積はどういう状況になっておりますか、数字があれば具体的に示してもらいたい。
  52. 岡本克己

    ○岡本政府委員 土地改良一般と、その中で、特に圃場整備がいま先生指摘の事柄に関係することが多いと思いますが、圃場整備につきまして、事業開始前と完了後の、いまの青線、赤線の面積、それが具体的にどのような数字で動いておるかということにつきまして、完了地区全部を拾い出してどうなっておるという数字を拾ったことはございません。したがいまして、具体的に数字で申し上げるのは非常にむずかしいわけでございますが、一般的には、旧赤線、青線を機能交換いたしまして新しい道路、水路ができる、その場合に、面積は増加の傾向にあるのは事実でございます。
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 増加にあるという傾向は認める、と。  委員長にこの際お願いしておきますが、できるだけ速やかに、工事開始前の面積と工事後の面積についてこの委員会に農林省から報告をさせてもらいたい。資料要求をしておきますので、よろしくお願いいたします。よろしゅうございますね。――それでは、委員長の了解をいただきましたので、農林省は手続をとって、その資料を提出していただきたい。  次に、大蔵省はおいでになっておりますか。――大蔵省にお尋ねをいたしますが、いままで、赤線なり青線、農道なりあるいは水路の用途廃止というものが行われます。赤線、青線の場合は、行政財産として建設省が管理をしておりますが、用途廃止をいたしますと、必然的に普通財産というふうに移管をされまして、所管は大蔵省になる、こういうことになってまいりますね。そういたしますと、その用途廃止というのは、言うなれば農地が宅地化をして団地化をされる、そして家が建っていく。その場合には、普通財産として大蔵省、各県にありますところの財務部がこれを売り払う、こういうことになっております。そのときの売り払いの金額というものは、大体どの程度、時価相場でお売りになるのか、そしてそのお売りになった金はどこに収入として入ってくるのか、その辺を明確にしてもらいたい。
  54. 松原幹夫

    ○松原説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、法定外公共物が管理者である建設省によって用途廃止をされました場合には、一般的には大蔵省へ引き継がれるということになっております。  大蔵省に引き継がれた普通財産は、原則といたしまして、こういった法定外公共物につきましては、細長くて単独では利用することが非常に困難だということでございますので、その隣接地の所有者等から買い受けの申請等がございますれば、予決令の九十九条に従いまして縁故随契ということで、その買い受け申請をした者に売り払うということになっております。その際の対価でございますが、財政法の九条によりまして、国有財産は適正な対価なくしては売り払うことができないということになっておりますので、原則として時価売り払いということになっております。
  55. 野坂浩賢

    野坂委員 収入はどこに入るのですか。
  56. 松原幹夫

    ○松原説明員 大蔵省に入ります。
  57. 野坂浩賢

    野坂委員 用途廃止以前は農民の土地であったものが、無償で国の方に引き取られて、そしてその土地は大蔵省が時価で売って、国庫の収入になる、こういうことになります。言うなれば、ただで取って、農民から、隣接からまた金を取る、こういう段取りになるわけであります。おわかりですね、政務次官。これが農民に対する農政一つのあり方、これはもうはっきりしております。  そこで、いま五十万ヘクタールの中で、構造改善局の次長さんは、増加の傾向にありますということをおっしゃった。これは次官によくわかるように、あなたよくわかっておると思いますが、汽車の中で書いてきたのですが、従前の農道と水路は大体こういうことだったのです。それが機能交換というかっこうで、農道がこういうふうにふくれるわけですね。なぜふくれるかというと、耕運機等が入っておった農道では、基盤整備すると入りにくい。大型機械が入ってくるから、これは大体倍になってくるわけですね。水路も、いまや上田といいますか乾田にしなければならぬわけでありますから、用水路と排水路というものができてくる。そういうことです。これによって面積は大体倍加しております。総圃場整備事業の赤線、青線の面積は一割を占める、これがいまや常識になっておるわけであります。  私が調査をすると大体そういうことになっておりますが、具体的に申し上げますと、たとえばわが県の八東町というところにもありますけれども、基盤整備事業を十七町九反、約十八町やる。その中で従前の面積は、赤線、青線の面積は一万一千九百二十二平米、改定する面積は二万八千九百三十何平米、約一町七反歩当たり面積がふえておる。大体これが全国的な一つの姿勢であります、はっきり申し上げておきますが。そういたしますと、これはただ単なる機能交換というかっこうで振りかえられておる、いわゆるただ取りを政府はやっておる。これが将来十年もたって宅地化をしていきますと、大蔵省はがっぽり金もうけをする、こういうことになるわけです。これについては機能交換が、農道が二メーターなら二メーター、これは結構ですね。四メーターになる。用水路は一メーター半のものが三メーターになる、こういうことになります。その場合には機能交換として、それだけは機能ですけれども、それだけのふえた面積だけは国が買い入れたらどうか。たとえば五十三条とか五十四条とかそういう問題を出されると思いますか、換地の計画の場合でも、二割未満で換地をやると書いてありますね。それ以上のものは金額で清算すると書いてありますね。したがって、愛情ある農地に対する行政としては、国の土地になるわけですから、それぞれ多くなったものについては、同等以上になったその余分のものについては国が買うべきではないか、こういう議論であります。それについては近藤さんはどうお考えですか。
  58. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生の御指摘の趣旨、私も理解できると思います。ただ、都市の区画整理事業なんかにつきましても、区画整理事業内部でたとえば公園をつくるというような場合にも、それぞれある程度減歩をしていただきまして、まとめて公園をつくって、その区域内のいろいろなことに使って公共の用に供しているわけでございますので、必ずしもそれと類似というわけではございませんが、やはり先生おっしゃった青線、赤線につきましても、これは御指摘がございましたように、道路の拡幅をするとか、また河川を広げるということが、まさに土地改良区の事業そのもの全体の効率アップになる、こういうことであると考えれば、ある程度それぞれ地域内の方々の減歩でその面積に充てるということも、事業全体の効率アップのためには必要なことではないか、こういうふうに考えますので、その点について、直接国に買い上げてもらうというのもなかなか簡単ではないような気がいたします。ただ、たとえば道路が広くなったのが、そこを当然走るべき県道の一環であるとか、そういう区域外の公共の施設といいますか、そういったものとの関連を持っている場合には、これはまた別の配慮がなされてしかるべきだと思いますけれども、区域内のことに限ってのお話ですと、いま申しましたような、都市の内部の区画整理事業で公園用地をお互いの減歩で提供していただくような形になるのではないか、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。
  59. 野坂浩賢

    野坂委員 国のものになりますね。そこを通るものはそこの受益者だけではありません。一般の人たちも通っていきます。それは国のものだからであります。だから、一般の交通にも使われておるというのが現状でありますね。百歩譲って、農道も受益者が皆つくるわけですね。農道だけの場合は適正価格で買い入れるということになっているわけですね。なぜこれだけはいかぬのかということになります。  だから、私たちは無理を言っているわけじゃない。二メーターのものは機能交換として当然提供すべきだ。しかし、それよりも倍になったものは、それだけのものは――今日土地がどんな値段がしているのか。東京都は一坪何百万円、何千万円するという。それをただで取るということではなしに十分その辺については――愛情ある農政というのは一体どうなっているのか、それをやるとおっしゃっているのですから、それについてはある程度のものは見なければならぬじゃないか、国の所有権になるわけですから。それについて、減歩でやむを得ぬじゃないか。農道だったらちゃんと買収費というものが設定され、用地費というもので進められている、こういう現状なんですから、それらについては、当然換地の問題にしても二割未満、多くなった場合は清算をするということになっているわけです。それと同じ理屈でそのような方向をとる、これは当然ではないかと私は思うのですね。弱い農民は余り知らぬから、何でも取って、それは機能交換だ、いままで問題がなかったというようなことでは、もう農家の皆さんだってこの点については十分考慮してもらわなければならぬというふうに思っているわけですから、それについては改めて検討すべき事項だと私は思いますが、政務次官、十分検討して対応してもらいたい。たとえば愛知県では、それらの機能交換の余分といいますか、二メーターが四メーターになった場合、二メーター分については愛知県がそれを補償して金を払っているという事実がありますね。地方自治体でもやっておるわけです、それは県の所有になるわけですから。それについては国も十分配慮して、農家の皆さん方が納得のできるような措置にしてもらいたい、こう私は提案をします。十分御検討いただけますか。
  60. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生指摘の趣旨は、私再々申しておりますようによくわかりますし、これはその地域全体のいろいろな効率向上になることでございますので、その分について国が補償するというような措置を早急にとることにはいろいろ問題があるとは思います。ただ、先生指摘のように、程度の問題もあるかもしれませんし、先ほど申しましたように、これが地域外の県道だとかその他のものとの関係になる場合には、これは別途また取り扱いができるわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題につきましては、ひとつ私も少し勉強させていただいて検討をいたしたい、かように考えております。
  61. 野坂浩賢

    野坂委員 政務次官中心にして、この取り扱いについては、十分研究をし前向きに検討するということを約束をしていただけますね。いいですね。
  62. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 私も不勉強でございますので、少し慎重に検討させていただきます。
  63. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、十分御検討をいただくように、そして農民の期待にこたえていただくように要望しておきます。  次に、自治省の方はおいでですか。――土地改良をやる場合、土地改良法の九十一条「都道府県営土地改良事業の分担金等」という項でありますが、これらについて土地改良をやる場合、起債、地方債というものは認めるというふうな通達が、五十五年四月五日、自治省の事務次官名で通達がされておりますね。そのとおりですね。
  64. 持永堯民

    ○持永説明員 お答えします。  ただいま御指摘の九十一条の負担金は、都道府県営事業の場合の市町村負担金かと存じますけれども、これにつきましては、起債の対象にするということで通知をいたしております。
  65. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。  起債の対象になるわけでありますが、間違ったら指摘をしていただければ結構ですが、たとえば県営事業は、国の補助率は四五%、県の補助率は二七・五%、受益者負担は二七・五%、こういうしことになっておりますね。そうですね、次長さん。そうすると、この受益者負担分の二七・五%を、町村が議決をすればそのうちの一部を負担することができる、こう法律に書いてあります。二七・五%のうち一五%を負担するという議決をする。地方財政というのはいまや逼迫をし窮迫をしているのが実情であります。そうすると、それは何としても起債で負担をしていきたい、二十年なり二十五年間で支払っていきたい、そして将来交付税というかっこうで処理をしていきたい、こういうことが町村の方針として出るのは当然であります。残った分の一二・五%は農林漁業金融公庫から借りる、こういうことになりますね。その場合に、土地改良区の申請によって一二・五%を借りることが可能なのかどうか、次長にお尋ねをしたい。大蔵省、自治省はもういいです。
  66. 岡本克己

    ○岡本政府委員 土地改良法上、市町村負担をする場合、その残余につきましては、県は三条資格者あるいは県の指定する者、そういう者に直接賦課することになっております。したがいまして、県から土地改良区のルートというのは、市町村ルートをやる場合には消えてしまうわけであります。それはできないことになっております。
  67. 野坂浩賢

    野坂委員 できないわけですね。二本立てはいけません、一本でいきますということですね。町村が出した場合は町村がやる。具体的には、農協が借りて、三条の農家の皆さんに農協から転貸資金として貸す、こういうことになるわけですか。
  68. 岡本克己

    ○岡本政府委員 いまの農協転貸の事例でございますが、事例としては確かにございます。しかし、それが一般かとおっしゃられますと、一般にすべてそうしておるというわけではございません。
  69. 野坂浩賢

    野坂委員 それではどういうことになるのですか。
  70. 岡本克己

    ○岡本政府委員 個々の農家につきまして、一応公庫融資の道が閉ざされているというかっこうになると思います。
  71. 野坂浩賢

    野坂委員 転貸融資の道が閉ざされれば、どうやって土地改良をやるのですか。便法として農協からの転貸資金でやる以外にないじゃないですか。農家の皆さんは金を持っていないのです。道が閉ざされるということになれば、どうやって土地改良の受益者負担をやるのですか。大体二七・五のうち一〇%程度を町村が持つということなのです。あとの一七・五%は、閉ざされたらどうやるのですか。農林省は金を貸してくれますか。
  72. 岡本克己

    ○岡本政府委員 すべての事業の地区で農協転貸の事例がそういうふうになっているかということにつきましては、私は実態をすべて細かく調査したわけではございませんが、すべてがそうなっているわけでもないのじゃなかろうか、こういうお答えを申し上げたわけでございます。  実態の解決といたしましては、いま先生指摘のような、市町村負担の残余につきまして、個々の農家が個々に処理するのも大変でございますので、代表を決めまして、農協転貸で処理しておるような事例もたくさんあるように聞いております。
  73. 野坂浩賢

    野坂委員 たくさんある、それが通例だということなんですよ。それは代表者を決めるということになれば、土地改良事業をやっておるわけですから、土地改良区の理事長だ。土地改良区というのは、土地改良法でごらんになるように、徴収権を持っているわけですから農協よりも強いですよ。そうすれば、その方が農林漁業金融公庫は安泰でしょう。大蔵省としてもその方が安泰だ。必ずそれは取ってくれる。農協の場合は焦げつきがある場合だってあり得る。それならば、残余のものは土地改良区からの申請によって貸した方がいいじゃないですか。
  74. 岡本克己

    ○岡本政府委員 先ほど御説明いたしましたように、ルートといたしましては、県から市町村へというルート、あるいは県から直接土地改良区へというルート、三条資格者へというルート、あるいは土地改良区と三条資格者を併用するルート、この四つしかないわけでございまして、これは法定されておりますので、それ以外に県から市町村へ一方で賦課する、残りを土地改良区に賦課するというふうにはできないことになっております。
  75. 野坂浩賢

    野坂委員 町村が全額受益者負担分を肩がわりするということは不可能です。それは近藤政務次官も次長さんもよく御認識のとおりです。それが地方財政の実態です。一〇%ようやく議決をして、いままでは土地改良区が金を全額借りますね、その借りたものについて、その償還の期間にいわゆる単独庁費でこれを補てんをするというのが例であります。そうしなければこの法律がじゃまになってできなかった。ところが、先ほどお話があったように、自治省は起債としてこの一〇%は認めるのです。ちゃんと言ったでしょう。いまお聞きになったでしょう。これは認めるのです。認めるというと、これは政府の方針です、そして認めて、これは将来交付税で町村財政に影響なく消化をすることができるのです。そういう特権が今度の自治省通達で明らかになってきた。いいですね。そうすれば、町村はいままでのやり方から起債方式に変えるのは、健全財政確保のために当然だと思うでしょう。わかりますね、近藤さん。そうなってくると、何としても、その一〇%はあるがあとの一七・五%は土地改良区でやれ。ほかのところから借りることはできぬわけですよ。制度金融は農林漁業金融公庫しかない。それだったら、借りるところは大多数農協の転貸資金である。代表者をつくれ、これはちゃんとあるじゃないか。農協が借りて又貸しをする、転貸をするということになれば、農協はただではできませんよ。手数料をいただかなければならない、それだけは農民負担になる、こういう矛盾が出てくるということであります。それをどう直すかというのが、私が冒頭にあなた方に確認をしたように、愛情ある農政というのは一体どういうことなんだということになる。こういう矛盾をなくさなければならない。もし矛盾があるとすれば、法律を改正をして二本立てでやった方が、むしろ地方財政の健全化を図ることができるというのが一点。もう一つは、余分な金を払わなくてもよろしい、こういう事情になってくるわけであります。だから、それらについては十分御検討いただいて、これらの改正をして、スムーズにやれることが望ましいと私は考えるが、政務次官はどうお考えですか。  委員長、時間を経過する分だけは延ばしてください。
  76. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いろいろ御指摘がございましたので、先生のお話しの趣旨を私も理解できる面もございますので、土地改良事業全体の負担の問題の中で、ひとつ御趣旨を踏まえて少し検討させていただきたいと思います。
  77. 野坂浩賢

    野坂委員 私の意見は賛成できる、したがって、法律改正を含めて検討する、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  78. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御指摘の点につきましては、十分私も理解をいたしますので、必要な場合には法律改正を含めて検討させていただきたいと思います。
  79. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。  時間はまだ相当ございますが、おおむね私の質問の要旨は終わりました。  私は、最後に政務次官にお尋ねをしておきたいと思いますが、昨夜私は農村の青年、農協の営農指導員、そういう皆さんと二時間にわたって討論をしました。その中で、若い営農指導員が立ち上がって、今日の減反事情、今日の農業の実態、まさに農業は崩壊せんとしておる。この諸物価高騰の中で、ことしの米価の展望もきわめて厳しいと考えていかなければならない。その場合に、私どもは農家の経営指導をするに当たって、農家から一致して質問がある。その質問は、一体何をつくったらいいのか教えてくれ、その一点にしぼられて、私たちは立ち往生する。せっかく先生がおいでですから、この際何をつくったらいいのかということを明言してもらいたい、こう言って責められました。いまの大豆とかあるいはまた麦とか、戦略作物といいますか特定作物の場合は、補助金なり奨励金なりというものがある。しかし、これだけでは引き合わぬと思う。だから、何をつくったらいいのか。それで、御答弁に当たって、北海道から鹿児島、沖繩まで適地適産でやります、一概には答えられません、こういう御答弁があることを予測をしますので、私は鳥取県の出身であります。近藤政務次官も次長さんも十分そういう点は掌握されておると思いますので、わが県では何をつくったら引き合いますか、農家は。そのことを端的にお尋ねをします。具体的な品目を挙げて指摘をしてもらいたい。そうすれば、あなたのところの意見を皆さんに言って、そのものに対して全精力を挙げて、これから営農に全力を挙げたい、こういうふうに考えますので、御教示を賜りたいと思います。
  80. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生、私も農林水産政務次官としていろいろな会合に呼ばれてまいりますと、先生の御指摘と全く同じ質問を随時受けて、生産調整はわかったから、それでは政務次官、何をつくれと言うんだ、こういうことになりますが、そういうときには、これまた先生お話しございましたように、北海道から沖繩まで日本のいろいろ環境がございますから、気候、風土、土壌、地形、いろいろな条件の違いに応じてまさに適地適作でおつくりいただきたい、こういうことを申しておったのでありますが、もう答弁を先に取られてしまって、鳥取県どうだ、こういうお話でございますが、実は私も山形県でございますので、鳥取県の事情についてはつまびらかにしませんので、これもどうも毎度毎度検討で恐縮でございますけれども、鳥取県について少し私も勉強させていただいて、また先生と御相談いたしたいと思います。  ただ、一つだけ御理解賜りたいと思いますのは、私はこれも言っておるわけでありますが、絶対的な不足時代の農政、すなわち米を中心として絶対的に日本における食糧が足りなかった時代の農政の場合には、国がこれをつくれ、また政治家がこれをつくれと言ってつくってもある程度、絶対に不足時代でありますから、間に合ったわけでありますけれども、いまや少なくとも総体的な過剰時代の農政の場合には、たとえば国なり政治家がこれをつくれと言って皆さんがその生産に集中されるということは、即その裏ではそのものが過剰になる、こういう状況でございますから、なかなか一概にここはこうだぞという形でつくれというわけにいかない、そういう客観的な状況の違いがあると思うわけであります。むしろ総体的にいろいろなものが余っているわけでありますから、逆にみんながつくらないものを探していただいてつくっていただくということでないといかぬので、これもある農業団体、青年の会合で私申したのでありますが、たとえば東芝の社長さんが通産政務次官に向かって、政務次官わが社何をつくりますかというやつはないのです。東芝、日立、みんな黙って人がつくらないものをねらってつくっていってそれで売り上げを伸ばす、そういうことだと思います。だから、そこは個々の農家の方々に自分の一番得意なものを考えていただいて、全体的にこのものが余っておっても自分のものだけは売れるというようなものもあるはずでございますので、そういう態度も、私はそういう要素もお考えいただいて、これからの生産体制に取り組んでいただくということではないか、かように思うわけであります。  いずれにいたしましても、鳥取県につきましては、少し時間をいただいて勉強いたします。それでまた御相談いたします。
  81. 野坂浩賢

    野坂委員 御懇篤なお話をいただきました。人がつくらぬものをつくれ。いわゆる農林省が推奨しないものをつくれ、裏を返せばそういうことになるわけであります。そういうことになるのですと。だから、農家の皆さんが農政不信にならないようにわれわれは責任を持って進めていくためには、何としても価格の保証というものが大前提になるということを、政務次官なり首脳部の皆さんに申し上げておきたいと思うのであります。米の場合にしても、あるいは牛の場合にしても、乳の場合にしても、豚の場合にしても、物価は高騰するという現況の中で据え置かれたということについては、農家の皆さんは農政不信を駆り立てるという要素になります。したがって、主要な農畜産物につきましては価格の保証をして、農業だけで食える農業というものを樹立するために、政務次官以下皆さんの御努力をお願いをしたいと思います。  まだ若干の時間がありますから、私はこの際、予算委員会でも問題にいたしましたし、あるいはこの農林委員会の席上でも問題になりましたいわゆるえさ米、われわれはえさ稲と呼んでおりますが、それらについて、農林省は十一県の実験農場ですでにそれらの実験が行われております。よく承知をしております。いまの圃場整備の議論でおわかりのように、圃場整備は水田を更生をいたします。いわゆる稲をつくるのであります。それをいわゆる米麦一貫体系といいますかあるいは田畑輪換といいますか、そういう姿で、一つ一つのいわゆる農地というものが利用され、効率を高めていかなければならぬ。それは私たちもよくわかるわけであります。しかし、湿地帯につくるものはない。県の方に行って聞きますと、ハト麦をつくったらどうかというような話があります。これは薬用でありますから限界があります。いまは、先ほども同僚議員から質問がありましたように、二千万トンのいわゆるえさというものがアメリカを初めとして外国から輸入をされておるというのが厳然たる事実であります。その輸入をできるだけ抑えていくために、一番つくりやすいし、食糧が不足になった場合には直ちにいまの稲に切りかえることのできる、えさ米というかえさ稲というものをつくる。それはわずかに皆さん方の中でつくれというものとそれは問題があるというのはどこに争点があるかと言えば、米は一トン当たり三十八万円で買っておる、えさ米は三万円にしかならぬじゃないか、経営としては非常に問題がある、こういうふうな指摘がその論争の中心であります。それならば一体どうするか。それならば、麦や大豆と同じように、特定作物ということに指定して奨励金を出せば、それなりに農家の皆さんは喜々としてつくる、こういう可能性は増大しておるというのが今日の状況であります。五百キロないし五百二十キロしかとれない普通の米。えさ米は一トンないし一トン二百から買える。それなれば、民間でも十分に検討させて、委託費を出してその研究事業の成果をあらしめて、一方それらの補助金というものについて、奨励金というものも特定作物に入れて善処するという方向になれば、これは今日の貿易収支の赤字の実情、外貨の赤字ということの解消にもつながる。アメリカがそれに対して介入をし、文句を言われるということも承知の上であります。しかし、あくまでも日本の農政を守るために、日本の自主性を高めていくために、われわれはそれをすべきではないかというふうに私は思います。近藤さんも山形県の出身でありますから同じような意見だと思いますが、それについて近藤政務次官は推進をする用意ありや否や、この際伺っておきたい、こう思います。
  82. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先日も農林水産委員会で豊岡村に参りまして、荒らしづくりというものを静岡県でやっておるということで、私大変驚いたわけでございますが、私たちのような東北ではとてもそんな余裕がなくて、みんな一生懸命米をつくっているし、米ができなければほかにつくっているわけであります。水田再編対策の最大の問題は、農家の方々に、荒らしづくりといいますか、土地をもっと積極的に一〇〇%有効に使うというお気持ちをどうも薄らげさせてしまった面が一部にあるので、私たち常に考えなければなりませんことは、日本は狭い国土でございますから、その狭い国土の中の農地をできるだけ一〇〇%有効に、最高生産性で利用するということが、日本の農政の根本でなければなりませんし、それがまさに食糧自給力を上げるためにもどうしても必要である、こういうふうに考えるわけであります。  そういうふうに考えてまいりますと、反当収量で考えますと、将来についてはまだいろいろ品種改良その他の要素がございますが、少なくとも現段階では、米と麦、その他飼料穀物を比較いたしましても、反当収量は米が一番高いわけでございます。したがって、そういう意味で、米をつくってまず主食を確保して、そしてさらに余裕があればそれを飼料作物として飼料に供するということは十分にその合理的な対策ではないか、こういうふうに私は考えているわけであります。したがいまして、この委員会でもたびたび与野党の先生方からこの問題について御指摘ございましたし、大臣も、また私も、農林水産省も、基本的にはえさ米についていろいろ検討を進めて、これによって自給力を達成する、また場合によっては、先ほども有事の場合、不測の場合の自給率についてお話しいたしましたけれども、そういう場合に、ある程度麦の輸入が減った場合に米の消費でそれを補っていくということも当然考えなければならないわけでございます。ただ、これも御指摘ございましたけれども、最大の問題は、何といってもその場合の財政負担の問題でございまして、これに対しては財政当局も非常に抵抗を示しておりますし、これを広く進めてまいりますための最大の問題は、できるだけ財政負担を多くしない形で、なおかつえさ米に切りかえていただいた方の収入を確保していく、こういうことだと思いますが、その点については、これも今国会で御審議いただきました農地三法の改正等を通じて、まさに集積の利益で、少なくとも一経営体当たりの農家収入をふやしていくということ、これも並行して推進していかなければならぬ。いろいろな条件の整備を一つ一つすることによって、技術の問題も、また経営の問題も、また価格の問題も、そういった各般の問題を具体的に解決し積み上げることによって、いま先生指摘のような、いわゆる米の生産調整をえさ米で行っていっていろいろな目的に総合的に合うようなことにしてまいりたい。そのための措置検討については十分積極的に取り組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。
  83. 野坂浩賢

    野坂委員 話はよくわかりませんね。非常に歯切れが悪いですね。  政務次官に申し上げておきますが、財政負担をしないでえさ稲で十分農家経営が賄えるというのは現状ではできません。それは農林省で意見の対立があるように、米は二十八万円で買い、その飼料の場合は三万円だからであります。だから、それは奨励金その他で負担をしていかなければ経営安定というものはできない、こういうことを農林省内部で言われておるわけです。これから研究してもらうのは結構であります。しかし、この間も大臣といろいろ討論いたしましたが、いまの土地の利用率というのは一体どういう状況にあるのだろうか。昭和三十年代では一二六%もあった。二十年代では一三五%が実情であった。いまは一〇二・三%まで落ちた。裏作はないということが現状なんであります。それなれば、土地の利用効率を引き上げていくためには何を裏作につくるのか。農民が期待し、酪農あるいは肉牛の生産をやるために自家飼料でやりたいという意欲はある。しかしなかなか引き合わない。それが愛情ある農政で、どうやって奨励金を出すかということにかかってくるわけです。そのかかってくる場合に、当面いまやっておる財政負担が問題があるでしょうけれども、政務次官、たとえばいまの水田利用再編対策の費用は三千三十四億円ですよ。米を外国輸出をすれば、百万トン輸出しても千六百億円で済むのです。半額で終わるんですよ。どんどん米をつくらして外国に出せば、それだけ負担をすれば、いまのようにインドネシアや韓国その他に送られる。あるいはKRですか、ああいう援助物資にしても、七カ国に対してはそれだけの金額を補償すれば、千六百億で済む。しかし現在三千三十四億円をやっておるのです。こういう矛盾もあるのです。それはアメリカの圧力だ、だからなかなか思うようにできない。それなれば、われわれの国内の中でえさ稲をつくって、飼料をできるだけとめて、自給飼料対策というものをやるというのは農政上の重大問題だ。だから、当面特定作物に入れて、これを推奨し推進し研究して進めるということは、農政の基本にも触れる問題ではないのか、こういうことを私は申し上げておるわけです。特定作物として指定するように現地を歩いてみて結論を下したいと農林大臣は私にお答えになりました。そのような方向で早急に特定作物として指定されるように要望しておきますが、その点については十分前向きに御検討いただけますか。
  84. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生財政負担を全くなくしたいということを私は申し上げているわけじゃございませんで、財政負担を多くしないような形でならないか、こういうことを実は申し上げているわけであります。御指摘のとおり三千億を超えるものを水田再編対策費として使っておるわけでございますが、これの使い方ではないかというお話でございますので、この趣旨も十分にわかります。ただ、いま申しましたいろいろな問題、率直に申しますれば流通機構の問題もこれまたございまして、こういう問題もきちっと整備しておきませんと、これまた、いまの大事な食管制度全体に不測の混乱を生じかねないという面もございますので、その点は御趣旨を踏まえて、私たちも繰り返し申しますように、国土の生産を上げるためには稲作が一番だと思っておりますし、また、日本の国土、これだけ広い水田があるということが、たとえば日本の地下水その他のいろいろな土壌の維持のためにもはかり知れない役割りを担っているわけでございますから、それを踏まえながら、総合的な施策については十分慎重に、しかし前向きに取り組んでまいりたい、かように考えております。
  85. 野坂浩賢

    野坂委員 前向きに検討するということでありますから、少なくとも善処していただける、こういうことを信じて疑いません。  この際申し上げておきますが、いまお話がありましたように、食糧管理法に抵触するのではなかろうかということでありますが、食糧管理法の第二条には、「本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、大麦、裸麦、小麦其ノ他政令ヲ以テ定ムル食糧ヲ謂フ」ということで、えさ米いわゆるえさ稲というものはこの主要食糧の中に入っていないということを申し上げておきたいと思うのであります。  私は、以上質問をしてまいりましたが、たとえば農地の補償の問題、赤線、青線に対する態度、そして農家の皆さんがいまの九十一条では問題があって土地改良区で借りられない、こういうジンクス、矛盾というものを露呈をしたわけでありますから、それについては早急に法律の改正も含めて問題点を解明して、農民の利益になるような措置をとるよう検討をするというお話をいただきましたので、これについて満腔の敬意を表します。これから早期に実現をしていただき、そして土地改良十カ年計画が、金額だけではなしに面積もスムーズに進めていただくように、農林省全体が一致して進められるように心から期待し、希望して私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  86. 内海英男

  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 連作障害対策について政府に見解を求めます。  私は、日本農業の基本となる農地の問題について、現状を憂い、将来をおもんぱかって、昭和五十年以来しばしば政府の見解を伺ってきましたが、その主なものを挙げますと、昭和五十年十二月十七日農薬禍問題等について、昭和五十二年三月二十四日有機農業及び堆肥センター設置について、昭和五十三年四月二十日農薬行政の基本問題等について、それぞれ農林大臣並びに関係当局に見解を求め、さらに昭和五十四年四月十一日食品衛生監視行政に関する質問主意書を提出し、昭和五十四年四月十八日農薬行政に関する質問主意書を政府に提出しました。それぞれ総理から四月二十日、四月二十七日答弁書を得たわけでございますが、これらの経緯を踏まえて改めてあえて政府の見解を本日求めるものであります。  最初にお伺いするのは、日本における農地の土壌の肥培管理の現状はどうかということについて、政府から説明を求めます。
  88. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 土壌の管理状況についてのお尋ねでございますが、米生産費調査で見てみますと、昭和五十三年の堆厩肥などの有機物の施用量でございますが、これは十三年前の昭和四十年と比較いたしますと四割ないし五割程度減っておる、こういう状況でございます。  他方また、化学肥料の施用量の方はどうかと申しますと、同じ期間に二割ないし三割程度増加をしておるということでございます。ただ、最近になりますとこの化学肥料の増加の傾向もやや停滞的な姿を呈しております。  以上でございます。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、日本農業はこのままでよいのかということについてお伺いしますが、言うまでもなく、農業経営する上において農家が単位面積当たりの増産を望むことは、時代と所とを問わず農民の健全な意欲であり切実な願望であります。狭い耕地からより多くの生産を上げなければ生きていくことのできない農業の零細性、これに加えて土壌栄養の実学に乏しい行政指導は、農民に農業の根本は土壌にあることを忘れさせてしまったと言っても過言でありません。多くの農民は、施した肥料の効果と農薬の毒性だけに頼って、土壌を肥沃にする努力を怠り、土壌酷使の略奪農法を続けてきたのであります。長年月にわたるこの反復によって、土壌は老朽化して植生は不良となり、農作物は害虫害菌の侵襲に対する抵抗力を失い、逐年病虫害は多発蔓延の一途をたどり、とどまるところを知らない状況です。その上、過去に例を見なかった原因不明の奇病が台頭して、農作物品質と収量は低下し、農家経済は肥料代に加えて農薬代の負担が年々重くなり、これが経費の膨張は、農業経営経済性に致命的な打撃を与えておるのであります。  すなわち、若干の例を挙げますと、一、水稲のいもち病、窒息病、根腐れ病、その他病虫害の多発と秋落ち現象、倒伏等による減収と品質の低下の問題。二、果樹類の異常落葉落果、立ち枯れ病、その他病虫害蔓延と隔年結果による品質低下と減収の問題。三、蔬菜類の病虫害多発と連作障害による品質低下と減収の問題。四、サトウキビの産量低下と糖分歩どまりの減退問題。五、茶葉の病虫害多発、品質低下と減収の問題。六、たばこの病害多発と品質低下と減収の問題等々、挙げれば数たくさんございますけれども、いずれも現代農業が直面している深刻な問題であります。  農業生産性の永続的繁栄を図ろうとするならば、農民も技術者も慣行農法の欠陥を謙虚に反省してその改善対策に立ち上がるとともに、政府当局としては、土地生産力高度発揮への指導義務が全うされなければならないと考えます。  言うまでもなく農業の最も重要な資本は地力であり、農業とは農民の労働を通じて地力を生み出す産業であります。  以上、概括的に申し上げてみましたが、今後どのように農地の肥培管理を指導していくのか、政府の対処方針をお伺いしたいのであります。
  90. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生からお話ございましたように、地力といいますものは非常に大事でございます。先ほど申し上げましたように、農地の肥培管理の現状から見ますと、有機物等の施用が減少しておるという事態になっておるわけでございます。したがいまして、農林水産省といたしましては、この減少要因に労働力不足というような問題が一つあるわけでございますので、やはり共同作業なり請負作業というようなこと等によりまして堆厩肥等の生産供給をする、そういう集団づくりをやるということがまず一つ大事ではないか。それから、第二点といたしましては、稲わらなりあるいはパーク、木皮でございますが、こういう有機物資源、これを活用した堆厩肥等の施用というものを増加させるために必要な堆肥舎なり、あるいはこれを散布いたしますマニュアスプレッダーのような機械の導入等に対して助成をする。それから第三点としては、最近単一経営的になっております。畜産農家畜産農家、耕種農家は耕種農家というような姿にだんだんなってまいっておりますので、やはり耕種農家が畜産農家と連携を深めるというようなこと等によりまして、厩肥の増投というようなことを進めていくということで、こういう面につきまして種々の補助事業等を仕組んでおるわけでございます。こういう面につきまして、さらに地力対策を強化していきたいというふうに思っております。  それから、先ほど現状で申し上げましたように、化学肥料の方が相当ふえてきておるわけでございます。化学肥料もやはりこの狭い耕地で土地生産性を上げるという面では非常にプラスになるわけでございますけれども、やはりこれは有機物等の増投、施用というものとバランスのとれた形での化学肥料の適正な施用というのが必要である、かように考えるわけでございます。従来からも、施肥基準その他にのっとりまして、それを遵守した形で化学肥料の投入等を指導してまいったわけでございますが、今後ともさらに一層適正な施用の徹底を図っていきたいというふうに考えております。  その他、先生がいろいろ例を挙げられたわけでございますが、農薬等につきましても、過度の施用にわたらないよう、この面につきましても指導をしてまいりたい、かように思っております。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は、本日の本論である連作障害対策の質問に入る前に、有機農業等について数点の政府見解を求めますが、最初に申し上げておきたいのは、私は有機農業は当然必要であるということについては言うまでもないが、しかし有機農業だけでは万能ではない、すなわち有機農業にさらに必要な土壌対策を講ずることが必要であると主張するものであります。このことを前提として質問するわけですが、私の認識では、有機農業ということが生まれたのは、たしか昭和四十六年十月ごろ、近代農法のもたらした諸弊害を憂え、環境破壊を伴わず地力を維持、培養しつつ、健康的で味のよい食物を生産する農法を探究し、その確立に資することを志す人々が推進母体となって、あるべき姿の農法を簡潔に表現する呼び名として有機農業という言葉が選ばれたと認識しておりますが、有機農業とは何か、その由来と、また、有機農業の哲学はどのように政府は認識していられるかなどについて、この際、見解を伺っておきます。
  92. 松山良三

    ○松山政府委員 有機農業という言葉は、ヨーロッパでオーガニック・ガードニング・アンド・ファーミングというような言葉がございまして、それから出てきたというふうに記憶しております。わが国におきましては有機農業の明確な定義づけはなされておりませんけれども、一般的には、原則として有機質によって土壌を肥沃にすることを土台とする農業、そういうふうに理解されております。  農業は、本来自然の生態系を有効に活用して営むものでございますので、有機物の施用と自然の仕組みを最大限に利用するということは農業の基本であろうと思います。ただ、先ほどから先生もおっしゃったように、狭い耕地で反収を上げるということになりますと、いま申し上げたような土づくりを基本としながら、肥料を適切に合理的に施用するということが同時に必要であろうと考えます。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 有機農業の現状と問題点については、政府はどう考えておられますか。
  94. 松山良三

    ○松山政府委員 先ほど有機農業の一般的の考え方を申し上げたわけでありますけれども、わが国におきまして有機農業の現状はどのようなものかということでありますが、有機農業をどのように定義づけするかということが明確でございませんので、そういうこともございまして詳しい調査を行っておりません。しかし、幾つかの事例を調べてみますると、有機物を施用して全く化学肥料、農薬を施用しないものから、できるだけ有機物を施用してあとできるだけ合理的な肥料、農薬の施用に至るまで、非常に幅が広いものがございます。また、参加する農家の数も、栽培面積、生産量、そういったものが小さいものが多いようであります。  それから、生産される生産物につきましては、そういうことでございますので、品質が必ずしも一定しないということのほか、生産費が高くつくということがあるようでございます。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 有機農業農法といいますか、この農法についていま若干の見解を述べられましたけれども、政府としてはどう評価をしておられるか、この機会に率直にひとつ御意見を改めて伺っておきたいと思います。
  96. 松山良三

    ○松山政府委員 先ほど申しましたように、農業そのものが自然生態系を有効に活用して営まれる産業でございますので、有機物の施用によりまして自然の仕組みを最大限に利用する、また生産の基本でございます土壌を肥沃にする、地力を維持、培養するということが農業の基本でありますから、そういう面では基本的に非常に評価され得るというふうに考えております。ただ、先ほどから申し上げましたように、狭い耕地でできるだけの収量を上げるという観点から申しますと、そういった有機物を施用して土づくりをしながら、同時にそれと並行しまして合理的な肥料、農薬を施用することによって、生産性もまた同時に上げるということが必要であろうと考えております。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今後有機農業については政府はどう指導していくのか。すなわち先ほど松山技術審議官から答弁がございましたが、幾つかの事例はある。詳しい調査はしていない。必要性は認め評価はしている。品質が一定していないし、高くつくという問題があるということでいろいろおっしゃいました。また一面、幅が広い、こういったこともおっしゃいましたけれども、それらを含めて、今後有機農業というものについては、将来を展望して政府はどうあるべきか、またどう指導していくか、その対処方針についてお伺いしておきます。
  98. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いまも松山審議官また二瓶農蚕園芸局長からもお答えしたわけでございますが、日本の農業の中で化学肥料や化学農薬に依存している割合が近年非常に高くなってまいっておるわけでございます。これは高度経済成長期と申しますか、日本の食糧生産を急速に拡大していかなければならない、そのために限られた狭小な土地の反当たりの生産性をどう高めていくか。また片方では、農業から労働力が少なくなっておりますから、そういう意味で省力化のために農薬を大量に散布して防除するというようなこと。生産性を高める、省力化、いろいろな形で、従来よりも化学薬品に依存する度合いが大変高くなってまいったと思うわけであります。  しかし、そのことが弊害をもたらさなかったわけではないので、たとえば化学肥料をたくさん使うことによって土地がかれてくる、やせてくるという問題もございますし、また、できてきた農作物の味が均一化してくるとか本来の味を必ずしも維持していないというような問題もございまして、そこからいろいろな反省も生まれているというのが、これも先生からいろいろな御指摘があったとおりであると思うわけであります。  したがいまして、これからの農業は、従来の伝統的な農業の方法、農業手法のいい面と、片方では、これからますます農作業における近代化、合理化、省力化が望まれる面もございますから、その面とどのようにバランスしていくかということだと思うのでございます。  私たちは、そういう全体としての農業対策の中で、これから量ではなしに質を求める消費者の方もふえていらっしゃいますので、非常に労力がかかる有機的な肥料等にウエートを置きながら、大量生産合理化農法ではできないような固有の味を持った農作物を好まれる方に対しては、そういう形で供給する面も片方で講じながら、しかし、同時に、それですべての農業ができるわけではございませんから、従来どおりのある程度合理化、省力化方式で進める。しかしそれについても、過度の化学肥料、化学農薬に頼る手法を漸次変えながら、たとえば病虫害対策にいたしましても、むしろ農薬によるよりも植物そのものの力を強めていくという形で、病虫害に対してもある程度の抵抗力をつけるような面も加えていく。そういうことで、有機農業で非常に古来の味を持った農作物を助長する一方、大量消費の時代でございますからそういう面もあわせ持って、しかし、過度の化学肥料、化学農薬の依存についてはある程度是正も含めていく、そういう形の施策を同時に進めていかなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの件について政務次官から丁重な答弁がございましたが、この機会でございますので、大臣官房の松山技術審議官、補足的につけ加えるところがあれば答弁を求めます。
  100. 松山良三

    ○松山政府委員 基本的に政務次官のおっしゃったとおりでございます。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、これも本題に入る前に、現代農業の盲点となっている点について改めて指摘をし、政府の答弁を求めるものです。  科学は万能ではない。しかしながら、慣行農法の欠陥を指摘する場合、事地力増進の把握に関してはほとんど非科学的であると私は断定せざるを得ないのです。すなわち、農業を専業とする農民が、農作物を育成するに当たって基本常識とも言えることを、全部とは言わないが、ほとんど知らないのであります。たとえば、一、自己の経営する農地土壌の反応、すなわちPHを知らない。二、土壌反応と農作物への影響、三、土壌反応と肥効の関係、四、土壌反応による植物の選択、五、土壌反応の適正な矯正法、六、土壌有害物質の有無、七、土壌有害物質の鎮圧法、八、土壌成分の状態、九、土壌成分の還元法、十、土壌に応じた施肥の適量、十一、肥料分施の原則、十二、施肥弊害の時期、十三、要素と病虫害の関係、十四、連作障害の対策、十五、果樹類の隔年結果、異常落葉落果の対策などを知らないのであります。知らないと言っては失礼な点もありますが、的確にこれを末端は知ってはいないということも事実であります。     〔委員長退席片岡委員長代理着席〕  私は、日本農業の将来を展望するとき、これらの問題は避けて通れない問題であると考えるわけでありますが、このことについては政府はどう考えていられるか、これも本論に入る前に見解をお伺いしておきたいと思うのであります。
  102. 松山良三

    ○松山政府委員 現在の農業は、進歩をしました科学に大きく依存をいたしております。すべての科学技術に共通したことでございますけれども、科学技術にはプラスの面とマイナスの面がございます。これを肥料、農薬にたとえて申し上げますと、プラスの面といたしましては、肥料の施用によって反収の増ができる、あるいは農薬の施用によって防除が効果的にできる、そういうことがプラスの面でありますが、逆にマイナスの面といいますと、いま申し上げました肥料、農薬が非常に簡便に使用できるという観点から、ややもすれば過剰施用になりがちでありますので、そのことによって環境の汚染あるいは食品の汚染等が起こりやすい、そういうことがマイナスの面であります。  したがって、科学技術を大いに活用するという観点からは、いま申し上げましたマイナスの面をできるだけ抑制しながら、プラスの面を効果的に上げるということが大切であろうと思います。そういう観点から申しますならば、先ほど来地力の問題が出ておりましたけれども、地力の維持増進をしてよい土をつくる、そのことによって健康な作物が育つ土壌をつくり、それと同時に適切な肥料、農薬の施用ということが行われることが必要であろうと思います。  先ほど先生から、最近の農家の一部は基本的な技術を知らないのではなかろうかということで詳細な御指摘があったわけでありますが、地力増進につきましては、農家の方は、何百年、何代と続いた農家でございますので、従来から体験的に有機物を施用することが地力の維持増強につながるということを知っております。ただ、最近は労働力不足によって若干それを怠ったということはあろうかと思いますけれども、基本的にそういうことを考えておると思います。  また、先ほど来いろいろ御指摘の、土壌の反応あるいは反応に応じた施肥、土壌改良あるいは品種の選択等をなおざりにしているのではなかろうかということでございますが、本当に意欲のある農家はそういうことを考えながら農業をやっていると思います。また、そういう農家、その他の全般の農家につきまして指導するという観点から、普及所ごとに土壌診断施設というものを設けておりますので、その診断結果を有効適切に活用しながら農家を指導し、先ほどおっしゃったような事柄も適切に指導が行われているというのが現状であると思います。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 現代農業の盲点となっている点についてただいまはお伺いしましたが、さらにこれに関連して、農薬乱用の弊害ということについても、この機会にお伺いしておきたいと思います。  農作物に発生する害虫、害菌を抹殺するため、劇毒物が本格的に農業に応用されだして約三十三年になるわけであります。それ以前は薬剤師以上の有資格者でなければ、その取り扱いを厳しく禁止していた劇毒物に、農薬という穏やかな名称がつけられて、ほとんど無制限にその施用が奨励され出したのであります。くしくもNHKで明十四日の朝六時半の「明るい農村」で「追跡・幻の農薬」と題して放映することが二、三日前から予告されております。朝「明るい農村」を私よく見ておりますが、明朝もこの放映に対して見るつもりでおりますけれども、私がここに質問を通告するときと同じくしてこういった問題が出てきたものですから、私も実は不思議なものを感じております。この内容を端的に申しますと、まだほんの一部の解説が出ただけでございますけれども、使用禁止の農薬を、農民はどこから入手するのか知らないが、現に使っておるという内容のようであります、これは明朝見なければわかりませんけれども。私は恐らくこういったことがあちこちにあるということはかねがね聞いておりますし、過去何回となく政府の見解をただしてきたときにもたくさんの投書なり電話を受けております。またぞろこういったことが後を絶たないかと思っておりましたが、最近はその傾向がますます強くなってきたと言うのです。それは免疫性が強くなったものですから、どうしても低毒性ではなくて強い農薬を農民は使うということにならざるを得ない、かように思うわけです。技術会議の皆さん方が果たして御存じであるかどうか私はわかりませんが、これはゆゆしい問題であります。国民の将来の健康、子孫の繁栄、いろいろなことを考えたときに、こういったことの取り締まりまたはこういった問題に対して十分な対策を講じなければ、将来国民に大きな禍根を残す、私はかように思ってざんきにたえません。この問題はきょうは本命ではございませんので、次回にこういった問題については農林水産大臣を迎えて私は見解をさらにただす考えでおりますので、この問題については留保しておきます。  農薬の乱用は、農薬に強い害虫、害菌が生き残る結果となりまして、それらはさらに抵抗性を強めて繁殖し、被害は逐年増大し、農薬は低毒性から猛毒性へとエスカレートしていったのであります。たとえば、普通物で人畜無害とされていたかつてのDDTは、その使用以前は抵抗性を持っている害虫は十種類未満であったのが、二十年間に二百五十種が抵抗性を持つようになってきております。そのため農薬の使用量も年々膨張してとどまるところを知らないのであります。本員が五十年以来さきに指摘したとおりでございまして、毎年大量に施用されてきた農薬は土中に蓄積してきて、有機塩素系は三年から二十年、有機水銀系は半永久的に毒性を発揮して、土壌中の有効微生物を激減させ、あるいは生態系を破壊して植物の正常な生育を阻害するとともに、植物体内に吸収残留して、ついには食品公害を生み出すに至ったのであります。  そこで、私は、農薬乱用の弊害ということについては過去にしばしば政府の見解をただしてまいりましたけれども、こういったことを踏まえて、改めて政府の認識というものについてお伺いをする次第であります。
  104. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生御案内のとおり、わが国は夏季高温多湿のモンスーン地帯にあるわけでございます。したがいまして、農作物の病害虫の種類もきわめて多いわけでございます。また、それによります被害も大きいということでございますので、農薬の使用そのものはやはり避けられないのではないか、こう思っております。しかしながら、農薬の安易な使用ということは好ましくないわけでございます。したがいまして、病害虫防除という角度から見まして必要最小限の使用にとどめるという考えのもとに、適正使用ということの指導を行っているわけでございます。  なおまた、農薬というものでなくて病害虫の発生を未然に回避、低減する手段はないかということでございますが、こちらにつきましては、いろいろ天敵の利用なり、あるいは品種改良、輪作体系の導入というような栽培方法の改善によります総合的な防除、これもあわせて推進をしておるところでございまして、農薬乱用の弊害といいますものにつきましては、これはそういうことのないように十分徹底を図っていきたい、かように考えております。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、環境と生物の関係についてもこの機会にお伺いをしておきたいと思います。  生物は、動植物を問わず、自然の不良条件や外敵の侵襲に対し、その防御手段として本能的に抵抗力を備えています。そして生物は、肉眼で見ることのできない細菌をも含めて、その相対的バランスの上に共存しているものであります。また生物は、原因のいかんを問わず一たん抵抗力を弱めると、きわめて容易に外敵の侵襲にじゅうりんされてしまうことは周知のとおりであります。こういったことは後の本論の問題に大変関係があるものですから、その前に政府の見解をただしていくわけでございますので、当局は私の質問を十分聞いた上で後での質問に答えてもらいたい、かように思うわけでございます。  さらに、真夏の水田に発生するいもち病を観察するとき、皆さんも十分経験があると思いますけれども、狭いあぜ道を境にして、右側はいもち病の重患にかかっていても、左側はその徴候さえもなくきわめて健康に生育している稲を見かけることがあられたと思います。これは、いもち病の伝染経路は、前年の被害わらや種もみなどの組織の中で菌糸の状態で越年し、気温が摂氏二十二度ないし二十三度内外、湿度が九〇%以上になると活動を始め、無風の夜、菌糸から胞子が出て空中に浮遊し、これが稲本体に接着して水滴を得て発芽し、稲の生体に侵入して被害を与えるのであります。また、皆さん方も経験あると思いますけれども、土用も近づいて、生理交代期も過ぎていよいよ出穂期を迎えたころの朝の水田というものは、昔は、風がない限り露を含んだクモの巣が一面にかかっておったわけであります。朝、見ますと、露を含んで、たれたように稲と稲の間にいっぱいに白くクモの巣がかかっておりまして、朝日に輝いて、きらきらときれいであったわけであります。ということは、それだけクモがたくさんいたという証拠であります。これが稲の害虫であるウンカ類を捕食していたのであります。ところが、農薬の散布によって死滅し、このような光景が最近見られなくなってしまったことはまことに残念で、大変な問題であると私はかねがね指摘をしているわけであります。すなわち、ウンカや二化メイ虫の天敵であるクモ類は、世代交代が遅く、全く全滅したと言えるのであります。  このような環境と生物の関係についてはたくさん例があるわけでありますけれども、こういった点については、農薬の乱用とあわせて、ただいまも答弁いただきましたが、政府はどう認識をし、把握しておられるか、この辺の認識の程度について私はこの際改めて伺っておきたい、かように考える次第であります。
  106. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農薬が環境なり生物に及ぼす影響についてどのように認識しているかというお尋ねでございます。  先ほども申し上げましたように、農薬は、わが国農業生産という角度を考えますというと、やはりどうしても欠かすことのできない生産資材であるというふうに考えますけれども、不適切な使用によりまして環境等に好ましくない結果を与えるおそれがあるわけでございます。したがいまして、現在農薬取締法という法律があるわけでございますが、この法律に基づきまして農薬は登録制度をしいております。この登録をするに当たりまして、安全性の確認というものを十分やっていくという措置を考えておるわけでございまして、急性毒性なり慢性毒性なり発がん性なり、そういう角度の毒性試験というものを相当時間もかけて、慢性毒性などは相当時間がかかりますが、大事なことでございますのでこういう面の試験も十分やりますし、さらに水質との関係も出てまいりますので、魚毒性の関係、こういうものを、コイなりあるいはミジンコ等を使って調べる、あるいは残留性の関係も調べるというようなことをやっております。必要に応じまして、蚕なりあるいは野鳥に対する、そういう有用動物に対する影響試験等もやりまして、安全性の確認ということを十分やったものを登録をするという措置をとっております。  それからもう一つは、農薬の安全使用基準といいますものをつくりまして、いろいろな残留の問題もございますので、そういう安全使用基準というものをつくって、収穫する幾日か前まででなければ使用してはならぬとか、そういうようなものもきめ細かく規定をいたしております。そういうことで、この使用方法等につきまして、十分これを守らせるということをやっております。  今後とも、そういう面の指導の徹底を図りまして、環境等に及ぼす影響というものを極力回避をするように十分努めてまいりたい、かように考えております。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 二瓶農蚕園芸局長から答弁がございましたが、従来からたびたび本員の質問に対してお答えになっているようなことから余り前進はないわけでございます。残念でなりません。  しかし、この農薬問題については、先ほど申しましたように、改めて根本的な問題から政府の見解をただす考えでおりますので、きょうは留保しておきますが、以上、本論に入る前に、前提となる問題について政府の見解を求めてまいりました。  次に、連作障害の現状についてお伺いします。  本員が聞くところでは、おおむね蔬菜団地などの連作地帯は八〇%が産地崩壊の現状にあるとも言われ、そしてその被害状況は、病害によるもの七〇%、生理障害によるもの二〇%、線虫によるものが六%となっているように私は認識しておりますけれども、政府の方ではどのようにこういった現状を把握しておられますか、お答えをいただきたいのであります。  すなわち、このように連作障害というものは現代農業の発展を阻害する要因となっておりまして、農家にとっては実に頭の痛い問題であります。これについての現状を政府はどう把握しているか、お答えをいただきたい。
  108. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 湛水をして栽培をいたします水田のほか、一般の畑におきましてはたくさんの作物を栽培しているわけでございますが、その作物によりましては連作をできないということがございまして、これは畑作物生産の基本的な問題として、古くて新しい問題としていろいろと対策を講じているわけでございます。  畑作がだんだんと近代化、集約化してまいりますと、従来の粗放な畑作に比べますと、さらにこういったような問題が顕著に出てくる、それを克服することによって畑作農業が進展をしてまいる、こういう状況かと思います。  最近、こういう状況の中で、生産技術上連作の問題が非常に重要であるということは私どもも十分認識をしているわけでございまして、生産技術の対策上、諸種の施策を講じているわけでございますが、そういったようなことは、将来ともさらに畑作農業を進展するということになりますと、この問題はますます重要になってまいろうかと思いますので、こういったような技術開発等についても鋭意努力をしているところでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 連作障害の作物については、過去の経験から、九州等においては輪作転換の目安として、連作を忌む作物を次のような分類で掲げております。一-二年間休栽を要するものとしては、陸稲、バレイショ、大豆、小豆、ソラマメ、落花生、ホウレンソウ、ネギ、除虫菊、キュウリなど、五年以上休栽を要するものとしては、トマト、トウガラシ、タバコ、マクワウリ、メロン、サトイモ、インゲン、大根、タマネギ、ニンジンなど、三年ないし五年間休栽を要するものとしては、エンドウ、スイカ、ナス、ゴボウ、亜麻、結球白菜、薬用ニンジンなど、こういうふうに認識しておりますけれども、いま言ったもので、技術会議の方で公式に検討して発表しているものを若干述べていただきたいと思います。
  110. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 作物の連作をどのくらいまでできるのか、また、連作障害が出てきた場合にどれくらい休栽をするとその障害がなくなるのか、こういった点については、先ほどもお話し申し上げましたように、この連作問題が畑作の生産技術としては基本的な問題でございますので、従来いろいろと研究もされておりますし、また実際に、各地の農家でいろいろなことわざ等もございまして、いろいろ言われております。先生ただいま御指摘なさいましたようなことは大体そういうことではないかと思いますが、これは土地なりあるいは栽培法等いろいろな条件によって違いますので、明確に何年たてばどうなるということを一般的に申し上げることはできないと思います。またそれぞれの対策等も講じているわけでございますので、そういう状況ではないかと思います。  一般に申し上げますと、非常に連作できるもの、あるいは年数にある程度の目安があるもの、あるいは一遍つくると半永久的につくられないもの等がございます。一般に作物たくさんあるわけでございますが、マメ科とかナス科、ヒルガオ科、キク科、こういったようなものには一般に連作に弱いものが多うございます。アブラナ科、ユリ科、セリ科、こういったようなものには比較的連作に強いものがございます。それから、根の深いものは一般に根の浅いものに比べまして連作障害が多く出るようでございます。そのほか、作物の組み合わせによりまして、ある作物が二年なり三年なりだめだということになりまして別なものをつくりましても、その後でつくるものによりまして共通の病害が出てくるといったようなことがありまして、実態はかなり複雑ではないかと思います。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 技術会議の方にさらにお伺いしますが、植物の分析で証明される元素について、これも基本的な問題としてお伺いするわけでございます。  すなわち、植物は根から水を、葉から炭酸ガスを吸収し、太陽のエネルギーを用して光合成を行い、炭水化物を生成し、さらにブドウ糖からでん粉及びたん白質を造成するとともに、これらの物質を分解するときに発生するエネルギーによって成長を遂げるものでありますが、植物体中には数千種を数える酵素、すなわちエンチュームが存在し、体内におけるこれらの諸作用の調整をつかさどっているものであります。このことは十分御承知であると思いますけれども、記録にとどめるためにあえて申し上げました。  そこで、いま申し上げました植物の分析で証明される元素については、何種類あって、その主なものはどんなものであるか。私は承知しておりますけれども、政府の考えを的確に知るために答弁をあえて求める次第であります。
  112. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 植物体を構成しております元素につきましては、最近もなお研究が進められておりますので、必ずしも学界でも定説があるというようにはなっていないようでございますが、現在の段階でほぼこういうことではないかということになっているものはございます。それから、私どもの立場から言いまして、ただ単に植物が生育をしていればいいということではございませんで、農業生産を上げていくために必須のもの、こういつたようなものもございますので、学界なりあるいは科学者が検討している場合と、私どもが農業生産を進めていく場合にこれはどうしても必要だといったようなものとの違い等もございますので、これで科学的に間違いないということを申し上げることは大変むずかしいわけでございますが、大体常識的に現在考えられているものといたしましては、主な元素が二十七種類ございます。そのうちでどうしても必要で、なおかつこれは植物体内に多量に必要であるといったようなものが、水素、炭素、酸素、窒素、カリ、カルシウム、マグネシウム、燐、硫黄、こういったようなものがございます。そのほかに、それほど多くなくても必要であると言われているものが、塩素、硼素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン等がございます。そのほかに、主な構成要素といたしまして十一ほどの元素がございます。そのほか、最近の分析法の進歩によりまして、従来余り発見されていなかったもので出ているものもございますので、全部合わせますと大体四十種類を超えるような元素があると言われております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま技術会議から答弁がございましたが、今後の日本農業を展開していく上に植物と元素の問題、これを解明していかなければ根本的な農業の改革にはならないという意味で、このことは必ず将来大きな問題になるということを指摘して、私は次の問題に入ってまいります。  連作障害の原因としてどんなことがあるかということでお伺いしますが、私の方から、私のブレーンで検討している内容の若干を申し上げてみますが、一つは、跡地に残された作物根が後作に悪影響を及ぼすから。二つには、連作をすると土の物理性に悪影響を及ぼすから。三つには、作物の分泌物が残され、これを好む有害菌が繁殖するから。四つに、右三点に関連して有害線虫、有害菌が繁殖するから。そういうようなことが一般に原因として言われております。そして、障害現象が土壌感染病原菌、土壌線虫が主役であるため、農薬による殺虫殺菌法を唯一の対策としているが、実効が上がらず、連作障害は複合した原因によるため、完全対策はむずかしいというのが現状とされておりますけれども、私の農法でいけば、連作障害は絶対に起こらないという方法を私は開発しておりますが、政府は、この連作障害の原因としてはどういうふうに思っていられるか、私が言ったことで事足りればそのとおり、つけ加えることがあればつけ加えるということで、簡潔で結構ですから、お答えいただきたいと思う。
  114. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 連作障害の原因はいろいろございますが、先生指摘のような原因がかなりの部分を占めていると思います。  それに対する対策でございますが、いろいろとございまして、場所によりますとほとんど連作障害が起こらないで、あるいは、ある状況のもとでは連作障害が起こらないという状況もあることは承知しておりますけれども、そうでない場面も非常に多いということでございますので、私どもはその原因の究明あるいは対策を検討している、こういうことでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 行政指導の中では、連作障害の最大原因は病害であるということから、土壌消毒の徹底とか、機械の共同利用と熱湯消毒、泥水拡散防止のための側溝づくり、収穫残渣物の除去などを対策として指導されておるようでありますが、遺憾ながら、現在の段階では決め手になっていないというふうに私は思うのですけれども、この点についての認識はどうでしょうか。
  116. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 先ほどから申し上げておりますように、連作の障害というのはなかなか複雑な要素を持っておりますので、一つで完全に対策を講ぜられるというものはなかなかむずかしいということでございますので、いろいろな対策を組み合わせてやっていかなくてはいけないというように考えているわけでございます。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は、いま農家がやっている土壌消毒では解決できない、また現に解決していないわけです、ということを指摘するわけですが、病害菌を土壌消毒で抹殺してしまうということは、有効な微生物までも抹殺するわけでございまして、いわば邪魔者は消せということになっておるわけでございます。  そこで、連作障害とは、一口に言うと生理障害である、かように私は申し上げたいのでございます。そこで、生理障害の原因を知って対策を立てていかない限り解決にはならない、かように思うわけです。土壌消毒も一時的には効果はありますが、これを続けると効果がないばかりか、前よりもひどくなって被害が大きくなり、いままでなかった病害まで出てくるようになることは周知の事実であります。土壌消毒といっても完全殺菌は不可能であります。中途半端な殺菌消毒をやりますと、前よりも悪くなるというのは、病害菌を抑えていた微生物が消毒によって死滅するからであります。土壌消毒では大体害菌の半数が死に、半数が生き残る程度と言われております。つまり、土壌消毒というものは結果的にはハチの巣をつついたようなことになるわけです。病菌があればそれを殺菌し、害虫が出ればそれを殺虫する、それ自体、あたりまえのように考えられていますが、それと同時に、有用な菌も役に立つ虫までも殺してしまうことは、自然のサイクルを破壊し、やがて人類の生命まで危険にさらすことになってしまいます。そういう意味で、私は、現在農家が農協または指導員の指導をよく受けてやっております土壌消毒ということ、これについては大変疑問がある、こう思っているのですけれども、この点については技術会議はどういうように考えておられますか、お答えいただきたい。
  118. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 現に起こっております連作障害を除去するということになりますと、どうしても対症療法が必要でございますので、それは最小限やらざるを得ないということではないかと思いますが、それだけでは根本的な対策にならないということも先生指摘のとおりでございます。品種改良の問題ですとか、あるいは作物の効果的な組み合わせの問題ですとか、地力の問題ですとか、いろんな根本的な対策を常に背景にしながら、対症療法をしていくというのが基本ではないかというように考えます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 技術会議にさらにお伺いしますが、連作障害はなぜ発生するのか、輪作をするとなぜ障害が解消するのか、この両者の因果関係に重要な対策のかぎが隠されておるわけであります。しかし、対策といえばもっぱら土壌消毒の繰り返しで、この方法では農薬の毒性が土中の有効微生物群の生態系を破壊するので、ただいまも申し上げましたように、かえって後で悪い結果を招くことはすでに農家の常識とさえなっています。連作障害は昔からあった。われわれの先祖は何とかして解決しようとさまざまな苦心をしたに違いない。しかし、結果的にはむずかしく、輪作転換以外に連作障害を切り抜ける妙案はなかったようなことをわれわれはずっと見てきております。  では、なぜ連作障害は輪作や休栽によって解消するのでありましょうか。その点は技術会議は全国の農民にどのように説明をされますか、お答えをいただきたい。
  120. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 一口で申し上げますと、先ほど先生から御指摘いただいた連作障害の原因が、輪作をやりますとある期間あくといったようなことがございまして、その原因が解消する、あるいはその原因では後の作目が被害を受けない、いろいろこういうことがございまして、輪作が効果的であるということではないかと思います。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その程度政府答弁をおっしゃっておっていいのですか。後でこの会議録を見て専門家がどう嘆くか、私は本当に心配にたえませんけれども、一応政府の答弁として承っておきます。  それでは、私から申し上げますが、連作をするとなぜ障害が出るのか、輪作をするとそれほど病害に冒されないのか。ここらあたりになぞがあるわけでございますが、こういった輪作や休栽によって解消するという問題について若干申し上げますと、われわれがグループで検討している中には、地球の起源から見て、土というものはもともと岩石の風化した破砕粒子の集団と有機物質の集合体であることは間違いありません。その有機物質の集合体である土は、一秒も休むことなく化学的風化作用を受けております。すなわち、空気中に含まれる二酸化炭素が雨水に溶けて炭酸となり、大気中の酸素も土の粒子に働きかけて鉱物成分を酸化し溶解するわけです。また、この酸化作用に土壌微生物群の働きがあるわけであります。この自然界の風化作用の産物が、鉱物成分の溶解した土壌溶液でありまして、無機栄養として植物の健全発育に絶対不可欠なものである。この風化作用が輪作や休栽の行われている期間中に、鉱物質の特殊成分を土壌に蓄積させ、植物の要求を満たす条件ができるため、連作障害は解消されるのであります。  連作を忌む特定作物は、先ほどいろいろ答弁をいただきましたが、土壌溶液の中の特殊成分を生理的習性によって吸収する。したがって、連作をすると前作の影響を受け、無機栄養不足の弱い体質の植物に育つ。そのひ弱な植物環境が害虫、害菌の繁殖に好適な生活環境となるのが連作障害であります。  そこで、無機栄養不足の弱い植物根に寄生生活を始めた微生物は、その猛烈な繁殖力によって次第に根の組織を変え、変形崩壊させて、根の機能を破壊してしまう。連作障害による根こぶ病というのがこの類に属するわけでございますが、時間の関係で全部申し上げることはできませんけれども、記録にとどめるためにも、以上申し上げました。  そこで、結論的には、植物は、連作障害を含めて、菌がいるから病害にかかるのではなく、菌に負ける体質だから病害に冒されるのであると私たちは認識しておりますけれども、その点技術会議はどうですか。
  122. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 連作の問題に限らず、作物生産の場合には、土と作物と気象その他の環境、こういったようなものが渾然一体となって、その結果としての生産が生するわけでございます。そういうことから言いますと、そういう生態系を健全にしていくということが最も基本的な作物生産のあり方であろうと思います。  そういったような意味で、土の点に関して申し上げますと、ただいま先生からいろいろ御説明いただいたようなことが基本であろうかと思いますけれども、現実の生産は、経営上いろいろな努力を重ねて生産をより一層高めていきたい、そういうことでございますので、どうしてもそこでいろんな障害が出てまいります。それを克服していくということが技術的な対策ではなかろうかというように考えております。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この病害多発の原因についても政府の見解をただしておきますが、私は先ほど病害多発の原因は生理障害と申しましたが、連作をするとそれがひどくなるわけでございます。つまり、根本の土壌が栄養失調であるのに、それに偏った栄養の三要素をやるため、作物の健康を維持する栄養のバランスが崩れて、病害菌をはね返すだけの力が農作物に欠けるため病害にひどくやられる、ここに大きな一つの問題を指摘しなければなりませんが、この点について技術会議はどういうふうに検討しておられますか。
  124. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 大変技術的になって恐縮でございますが、作物生産という全体の体系を考えますと、自然の持っているいろいろな機能、制約、こういったようなものと、私どもが生産を上げていくためのいろいろな努力、これの緊張関係の中で生産が成り立っているということだろうと思います。  そういったような意味から言いますと、どうしてもある技術をやりますとマイナスの面も出てまいります。いま御指摘の点は、その一つの現象ではないかと思いますが、そういったような点につきまして、私どもがいろいろな対策を講じて生産を上げていく、こういうことではないかと思います。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一つの原因としては、現行の窒素、燐酸、カリの三要素農法では、どう考えても非合理であり、栄養偏重の略奪農法であることが指摘されねばなりません。病虫害多発の最大原因はここにあると言っても過言ではありません。すなわち、作物を育てる大地には、先ほども話がありましたように、窒素、燐酸、カリのほかに、石灰、苦土、硫黄、鉄、マンガン、銅、亜鉛、硼素、モリブデン、珪素、ナトリウム、塩素、沃素、ゲルマニウムなど、ほんの微量であってもこれがなければ作物が健康に育たない成分になっているわけです。もちろん、堆肥や厩肥などの有機質についても必要なことは先ほど申し上げたとおりです。そういった意味で、現在の農法は化学肥料に頼ってまいりました。また、有機質の農法も、それが最近は全国各地で叫ばれつつあるというものの、昔から見るとだんだんすたれております、そういったことから、いわば有機質の上にさらに土壌を改良するため農作物をつくるたびに作物本来が要求する成分、いわゆる養分を求める、それをもとに返さないから、窒素、燐酸、カリを使っただけでは、結局、本来作物が欲するものがないために連作障害が起きるわけでございまして、私たちは、これをいわゆる略奪農法による地力喪失という一大欠陥である、かように指摘しておるわけです。  したがって、これに対するところの必要な、いま申し上げたような養分を土地に返してやれば連作障害は起きない。また、現に全国数百カ所でこういった試験栽培を試験的にやってもらっておりますけれども、全部連作障害は起きていないわけであります。こういったことを自信を持って農民に勧めて、日本農業の明るい展望のために、政府は大いに検討して示していく、かような態度が必要ではないかと私は思いますけれども、この点については、政府はどうお考えですか。
  126. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先ほど先生から有機農業の御指摘がございましたし、ただいま連作についていろいろ御指摘、御提案があったわけでございますが、私たち、いわゆる農業というのは、あくまでも、自然の生態系の中で成長してきた植物を、この生態系が持っておる一つの論理といいますか、そういう仕組みの中で成長させることが、健全な成長を促進し、そして豊かな果実を生むことになる、かように考えるわけであります。  したがいまして、最近の農業がいろいろ化学的なものを使ったのも、いろいろな条件の中である程度やむを得なかったわけもございますけれども、しかし、いま改めて御指摘がございますように、これからもう一回、有機農業というか、伝統的な手法についても返る面も確かにございますし、また、連作障害につきましても、これもその植物植物の栽培について十分な配慮をして、障害が起こらぬような措置を講じていかなければならない。障害の原因につきましては、いろいろ検討を進めておりますけれども、まだなかなかきちっとした原因を突きとめているばかりではございませんが、ともかく、なぜこういうことが起こるかについて、土壌における微生物学的なまた理化学的な特性等についてできるだけ科学的な解明を行い、また同時に、対策としての地力の維持向上及び土壌病害抑止を中心とした畑作管理方式の開発、そういったことに必要な試験研究をこれからもより一層推進してまいりたい、かように考えております。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、まとめを申し上げて質問を終わることにいたしますが、いろいろ申し上げてまいりましたように、私の体験、また私の農法の研究からいけば、いかなる作物であっても永久に連作障害は起きないということを私は体験として持っておるわけであります。公開の席で堂々と私は申し上げるわけですから、長年研究した結果を私は自信を持って申し上げるわけでございますので、ひとつ政府も耳を傾けて、十分考えていただきたいと思うのです。  そこで、いまいろいろ申し上げてきましたように、いろいろな原因がございますけれども、連作障害というのが解決すると、農家は大変助かるわけです。それは、いわゆる略奪農法で土壌の成分を喪失してからと申しましたが、また、作物が土壌から吸収したものを窒素、燐酸、カリ以外にいろいろあるわけですから、そういった作物の欲するものを土地に還元してやる。すなわち、持ち逃げした栄養を土地に戻せば連作障害は起こりません。私たち検討している農法では、植物が土壌からどんなものをどれぐらい持ち逃げしていったかということを知って、正しくもとの土に戻すことにしております。それによって、連作障害を未然に防ぎ、不可能とされていた連作が可能になったわけです。  そういったことで、結論は、連作障害にかかる植物が土壌から持ち去る特殊成分としての無機栄養の質量を知り、それを土壌に還元して、連作以前の土壌環境を維持すればよいわけであります。これを私たちは還元不滅の原理、こういうふうに言っておりますが、そういったものを含めたものを土地に与えればいいわけです。そのような特殊肥料を用いることによって、永久に連作障害は起こらない。公害のない豊かな農業を目指して、私のグループでは全国に、先ほど申しましたように試験実施をしております。健康な大地に育った健康な作物をつくる。農林水産省もよく検討して、農民の生活安定と日本人の健康を取り戻し、民族の生命を健全にし、希望の持てる明るい農村建設のために努力すべきである、かように思うわけです。  本日、私があえて長時間かけてこういったことをるる、いままでの長い間の研究成果を記録にもとどめ、今後大方の諸賢の検討に資するためにあえて申し上げてまいったわけでございまして、この問題については、今後数回となく政府の見解をただしながら、日本の明るい将来の農業展望に対して、根本的な農地の土壌改良のために私は挺身してまいる、かような決意でおるわけです。  そういった意味で、最後に、有機農法だけでは連作障害は解消しない。では、政府は他に、絶対連作障害は起こらないという確信があるのかどうか。私がいろいろ申し上げた以外に、絶対に連作障害は起こらないという確信を持った指導を農民にしておるのか、この点を伺いたい。また、こういった連作障害に対する抜本対策を最後にお伺いして、私の質問を終わることにいたします。
  128. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 瀬野先生から大変貴重な御意見を承りまして、連作障害につきましても、先生の御研究であれば起こらない、こういうお話でございますので、そういうこともぜひひとつ参考にさせていただきまして、従来ともいろいろな角度から、この問題については各種の研究試験機関で検討しておりますが、さらに進めてまいりまして、先生指摘のように、明るい農業を農家の方々にやっていただけるような、そういう条件整備に今後とも一層努力をしてまいりたい、かように考えております。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  130. 片岡清一

    片岡委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十分休憩      ――――◇―――――     午後四時四十九分開議
  131. 片岡清一

    片岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川利三郎君。
  132. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 五月十日付の朝日新聞の地元秋田版を拝見いたしますと、「ほ場整備事業費が“蒸発”」ということで、秋田県能代市の浅内黒岡土地改良区の中でお金が蒸発した問題が出ているわけです。ちょっとその前段を読みますと、「能代市浅内の浅内黒岡土地改良区(渡辺健四郎理事長、組合員百二人)が、五十一年度まで四年間にわたって行ったほ場整備事業で、国や県から交付された補助金の一部約六十万円が、同改良区理事の個人名義で銀行に預金されたうえ、その後今年三月までの間に五回にわたり計約四十八万円が引き出されていたことがわかった。しかも、だれが引き出したのか分からず、引き出された金の使途も不明。このほど開かれた同改良区の総会で明るみに出たもので、改良区の役員らは「詳しく調査するが、不正はないはず」といっているが、組合員たちは「公金の扱いが全くズサン」と真相究明に乗り出す構え。」こういうふうな大きい見出しというか記事が出ておるわけであります。  これはいま読みましたとおり、真相が明らかにされたのは三月二十三日に行われた改良区の総会であったわけでありますが、あれから一カ月半たっているのですね。  そこでお伺いしたいことは、秋田県から国に対してこの事態について報告があったかどうかということですね。
  133. 岡本克己

    ○岡本政府委員 お答えいたします。  本件につきまして報告はございませんでした。
  134. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 こういう国のお金も入っているお金が蒸発して、現在警察でも捜査の構えだということも書いてあるわけでありますが、こういう問題については、国の補助金も絡んでいるわけでありますので、即刻連絡するなり、報告があってしかるべきだと私は思いますが、そういうやり方になっておらないですか。
  135. 岡本克己

    ○岡本政府委員 本件につきまして、私ども承知いたしましたのは昨日のことでございまして、報告はございませんでした。一般的には、県の土地改良関係の指導検査という範疇に属するもので、そこで問題がございましても、県で処理していただくというのが一般のルールでございます。特段の問題がございましたら、こちらからも適切な指導をすべきではなかろうか、このように思っております。
  136. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、こういう警察も捜査しようという、しかもお金が蒸発してどれがどうかわからないという問題、これは内部でやればいいことであって、別段なことはない、こういう理解なんですか。
  137. 岡本克己

    ○岡本政府委員 新聞記事で見ます限りにおきましては、ほっておいていいものかどうか、まだ判断に迷っているわけでございますが、事情につきましては私どもも十分調査いたしまして、しかるべき適切な助言なり措置なりはとりたい、このように考えております。
  138. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 しかも、この問題の発端として、「余剰金隠しの疑いも」という別段の記事があるわけでありますが、これを拝見いたしますと、なぜ個人名義でこの公金が預金されたかといいますと、「この際、同改良区の指導、監督に当たっていた県山本農林事務所の担当職員から「予算が余るのは好ましくない。換地の際に登記手数料が必要になるから、理事の個人名義で預金しておくように」」、そういう指示があったというのですね。私、参考のためにその当時の理事長を呼びまして、御本人からそういう指示があったかどうかはっきり聞いたのです。そしたら、その指示があって、この方の名前は私、伏せておきますけれども、その現場に居合わせたのはそこの土地改良区の職員だとかその他の方もおりまして、県からはまだ御本人以外に随行してきている方もおったわけでありますね。  こういう問題について、余剰金が出たから予算が余って困るのだ、だから理事個人の名前で預金しておくように、こういう措置が一般的にやられているのかどうか、私非常に懸念するわけでありまして、事業の成否よりも金を余さずに使ってしまえというような、こういうやり方というのは非常に問題だと思うのですが、どうですか。
  139. 岡本克己

    ○岡本政府委員 一般に、土地改良区の経理処理でございますものですから、当然組織的にやらるべき性格のものだ、そのように考えております。個人名義による処理等が適当とは考えておりません。  本件につきましては、五十一年、相当前のことでございますし、そういう指示があったかどうかにつきまして私どもまだ的確に把握はいたしておりませんが、現在、県に私どもが聞き合わせたところでは、そういう指示はなかった、このようにお聞きしております。
  140. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それは後で問題になるところだと思いますが、私もずっとこの問題の経緯を昭和四十年代から覚えているわけでありますが、ここではやはり土地改良区の民主的運営が欠落しているわけですね。つまり、いろいろな不満なんかがありましてもごり押しして、換地だとか土地改良そのものを一方的に押しつけたというところからいろいろな不満が内向して、常々問題が起こっておった。そういう中でいまの問題が起こった一つの要因もあると思うのです。そういう点で、国の補助金の管理、さらに土地改良区事業の正常な実施という問題について、何かそういう派閥的なボス的なやり方の中で、絶えずそういう問題をはらみながら推移してきている、こういうことなんですね。一般的にこういう問題がほかにもあるかどうかということと、この問題についてはやはり国も早急にひとつ調査してきちんと指導すべきだ、この点についてお伺いしたいと思うのです。
  141. 岡本克己

    ○岡本政府委員 われわれといたしましても、いま御指摘ございました件につきまして、十分調査いたしまして、必要があればしかるべき適切な指導をいたしたい、このように考えております。
  142. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、きょうの本論であります漁業の問題についてお伺いしたいのですが、今日の深刻な漁業危機の要因の一つに、あれこれの理由もあると思うのですけれども、やはり沿岸水域を開発の名によってどんどん埋め立てていく、こういう問題があると思うのですね、したがって、これをどう規制していくのかということが今日の漁業危機打開のやはり大きい目盛りになると私は思うのですけれども、この点について、冒頭、次官からひとつ御見解を聞かしていただきたいと思うのです。
  143. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 埋め立て石油備蓄基地の建設などの開発行為につきましては、御指摘のように、いろいろ水産業の振興等の問題がございますので、これは調和のとれた形で推進されなければならない、かように考えております。したがいまして、こういった埋め立て石油備蓄基地の建設につきましては、地元漁業者の十分な理解、納得を得て行われること、さらには、事業実施に伴う漁場の埋め立て等による水産資源への影響等については、十分な事前の調査検討が行われること、さらに、こうした水産資源への影響等に対する対策が十分講ぜられるように、こういったことが必要であると考えております。  したがいまして、水産庁としては、開発行為が実施される場合、以上のような認識に立ちまして、水産業の振興上できるだけ支障のないように、必要に応じ関係者と連絡調整を図ってまいりたい、かように考えております。
  144. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の故郷の秋田では、秋田湾地区開発計画がいま進行されようとしておるわけでありまして、県が出した第二次素案のあらましを見ましても、たとえば用地の造成というところでは、この秋田湾の開発だけで二千ヘクタールの埋立地、しかもこれを、農地、住宅地などの転用を避けるために全部海を埋め立てるのだ、こういう位置づけですね。そうかと思えば、最近、男鹿半島のつけ根の方にある船川というところですが、ここでは石油備蓄構想というものが新たに出されようとしておるのですね。さらに能代というところに参りますと、ここでは石炭火力の立地をしようとしておりまして、これは東北電力が六十万キロワットを三基つくるというのです。順調にいけば五十九年から工事着手するのだ、そのために六万トン岸壁を早急につくらなければならない、そしてその火力の立地のために海面を百十ヘクタール埋め立てる、その隣には灰捨て場を同じく百十ヘクタール埋め立てる、こういうぐあいなんですね。その分だけ漁業権がなくなっていくのですね。つまり、秋田湾開発といい、いま計画されている石油備蓄構想といい、石炭火力立地といい、こういうことになれば、そのために漁業権がなくなっていくし、漁場そのものが狭められていくことは間違いないわけでありまして、あなたが幾ら口先で調和のとれたやり方だと言っても、漁民が犠牲になる一方だと思うのですけれども、この点に対して水産庁長官の御所見をいただきたいと思うのです。
  145. 今村宣夫

    ○今村政府委員 地域の開発の場合におきます水産関係について、私たちが考えております方針につきましては、ただいま政務次官から申し上げたとおりでございますが、従来も私たちは、そういう地域開発につきましては漁民の十分な納得を得てこれを行う必要がありますし、漁業権の喪失等に伴います補償問題等につきましても十分話し合いをし、それがまとまって事業が実施されるということにつきまして、いろいろと関係方面等との話合いを推進する、あるいはまた話し合いがまとまるように、漁民の立場から私たちはいろいろ意見を申し上げてきたと思います。いまからもそういう問題につきましては、ただいま政務次官が申し上げたような基本的な考え方に立ちまして、個々具体的なケースに即しましてそういう話し合いが十分円滑に行われて事業が実施されるように、私たちとしては努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  146. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 何か当たりさわりのないようなことであれですけれども、きょうは通産省は来ていらっしゃると思うのです。いまの能代の石炭火力立地の問題でありますが、地元では、七月の電調審に間に合わせるためにということで、それが合い言葉のようにやられているわけであります。ところが、それならば実施主体である東北電力が当然自分みずからがつくるべき環境影響評価ですか、アセスメントを義務づけられておると思うのでありますが、この点はどうですか。
  147. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 現在、通産省は、電源立地に際しては省議決定による環境審査を事業者にしていただくことになっているわけでございますけれども、先生指摘のとおり、そのように指導しておるところでございます。
  148. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、私が問題なのは、七月の電調審に間に合わせる、電調審にかけてすぐやらなければならないと言っていながら、それに付帯して事前に当然出てこなければならない、住民の判断材料であるところの環境影響評価、これを出してこないのだね。何か東北電力のやり方を見ていますと、自分のやることをやらないで、いかにもそれが既成事実であるかのようなかっこうで、さあ、これはやらないと大変だということで、どんどんリーフレットを出したりして宣伝にこれ努めているんですね。これは順序が全くあべこべだと思うのですが、こういうのは黙って放置しておれるのですかね。これはやはり指導すべきじゃないですか。判断材料も何も出さないでとにかくそういうやり方をしているということについての御見解をいただきたいと思うのですね。
  149. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 私どもとしましては、電気事業者が行う環境影響評価書というものをまだ提出していただいてないので、残念ながらその内容について申し上げられないのでございますが、出てきました暁には地元に縦覧する、あるいは説明会を開催する等いたしまして、御理解をいただくように努めるよう指導してまいりたいと思います。
  150. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうでしょう。私が問題なのはそういうやり方ですね。しかも、最近何を言っているかといいますと、七月の電調審に間に合わないかもわからない、こういうことを県や能代市や東北電力が言うているわけですね。そして暗にその責任が、自分方のやることをやっていないという自己批判を含めたものではなくて、漁民や市民が無理解だ、そういうふうに描き出そうとしている面が見られるわけですね。その一方で、たとえば石炭火力立地を予想した六万トン岸壁、そのための北防波堤なんという工事はどんどん進められているわけですね。それが現状でありますので、これでは地元民に理解してくださいといったところでなかなかそうならないじゃないかと思って、私、この点を率直に心配しているわけでありまして、これについて通産省としてはどう考えますか。
  151. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 私どもといたしましては、電気事業者が作成いたします環境影響評価書に従って環境審査をするわけでございますけれども、事業者が環境影響評価書を提出してまいりました時点で、地元に縦覧してよく説明をしていくよう指導してまいりたいと思います。
  152. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それはさっきの説明でわかりましたよ。私が聞いているのは、そういうやり方をされていることについて、あなた方として指導する必要があるのではないかということです。そういうことは困る。順序が逆でしょう。だから、そういうことではないように、自分に義務づけられた環境影響評価書をちゃんと出して、その住民の判断材料が出たら、その中で住民の納得なり理解が得られるようにするのが順序から言えば筋だと思うのですね。その点が一つ。  後で一括して答えていただきたいのですが、もう一つは、肝心の能代市の議会の状況を見ますと、能代市議会の中には、つまり市民代表だ、調査特別委員会というものをつくっているけれども、何も結論を出していないのですよ。これはいいのか悪いのか、この調査のための特別委員会をつくって検討しているわけでありますが、何ら結論を出していない、ゴーのサインを出しておらないのですね。  そこで、これは仮定の話でありますが、万一市の議会がこれをだめだという結論を出した際には、これまでの投資、大変な金額を公共投資でやっているわけでありますが、これは一体どうなるのですか、そこら辺についての御見解をお聞きしたいと思うのです。
  153. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 先生指摘の全体の問題については、港湾計画の中、すなわち県等でいろいろ審議が行われることになるかと思いますが、電源立地に関しましては、先ほどのお答えを繰り返すようでございますが、環境影響評価書が出てきました段階におきまして、地元の理解を得るような縦覧、説明会を開いていきたいと思います。  私どもとしましては、従来そのように努力してまいりましたし、今度も極力そのような方向で指導してまいりたいと思います。
  154. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 秋田の言葉で悪いけれども、川の中でへをひったという言葉があるのです。非常に下品な言葉ですが、何かわかったようなわからないような、ぴりっとした返事じゃないですね。そういうことの中で、秋田に限らず全国の海がどんどんやられてきている。その点について、私、水産庁長官さんがいらっしゃるわけですからお聞きしたいわけですが、全般的に日本の海がこういう開発という名前でどんどんやられて、いまもどれだけやられているかということをここで一々数字を挙げてやるまでもなく、これは大変な状況になっているわけです。しかし、この沿岸水域は、本当にきめ細かく手をかけるならば、それ自体どこでも発展するような潜在力を持っているのだというのがわれわれの認識でありますけれども、そのために、全国的にこういう埋め立てがどんどん野放しになるようなことじゃ困るから、当面五年間ぐらいは埋め立てをやめて、その間、いままで海は汚されてきたわけでありますから、それをきれいにしていくとか、大きな漁場の整備、開発をやるとか、そういう面で漁民優先の漁場利用制度を考えていく、こういうことをわれわれは政策的にも提起しているわけでありますが、長官の考えはどうですか。
  155. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日本の沿岸の海は非常に生産性の高い漁場が多いわけでございますが、一方、先生指摘のように、埋め立てその他によりましてそういう漁場が荒らされているということもまことに事実でございます。そこで、五年なら五年そういう埋め立てをやめて、その間に海をきれいにするということを長官として考えたらどうかというお話でございますが、やはりこれは、地元の開発という問題と漁場の保全という問題をどういうふうに調和をさせていくかという、きわめてむずかしい問題でございますが、私たちとしましては、先ほど申し上げましたように、そういう開発を行います場合には、よく地元の漁民の方々と話し合いをして、その合意を得て実施をしてもらいたい、また、そういうふうに努力をいたしたいと思っております。同時にまた、そういう生産性の高い漁場をどういうふうに開発していくかということにつきましては、これは申し上げるまでもございませんが、水産庁として、沿岸振興という観点から、予算その他におきまして必ずしも十分でないという御指摘があるいはあるかもしれませんけれども、私たちとしましてはできる限りの努力を払っているのでございまして、今後とも一層の努力を傾注してまいりたいと考えておる次第でございます。
  156. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省、よろしゅうございます。どうぞお帰りください。  いまの御答弁を聞いても、埋め立ての問題、開発の問題と漁業を発展させる問題をどのように調和させていくかというところに苦心点があるのだという言い方ですね。これは公害の経済協力条項のあれと同じで、これは調和できないのだ。つまり、調和調和と言いながら、実態としては、ずっと漁民が漁場を奪われ、生活の場を奪われてきたという歴史があるのです。こういうことで、自分たちとしてはできるだけやったと言うけれども、やはり一回ぐらいは政府に対して強力に五年間これをやめてくれというぐらいにやらないと、水産庁という名前は返上しなければならないと私は思う。歴史的な事実から言っても、いまやはりそういう点を堂々と言うべき時期だ。じゃないと、いま二百海里でやられ、いろいろな面でやられているわけで、沿岸水域を守るということが非常に大事な国民課題になっているわけでありまして、この点については、近藤政務次官からひとつ責任ある御答弁を一言いただきたいと思うのです。
  157. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま水産庁長官から答弁いたしましたように、日本の沿岸海域二百海里内は、資源的にも潜在力、生産性に非常に富む地域でございますから、これをフルに活用いたしまして、必要な水産資源、たん白質の供給を図っていかなければならない、かように考えているわけであります。しかし、同時に、産業の要請として、また国民生活に必須な工場の立地、いま御指摘の火力発電所を含めるそういう発電所の建設、こういったことも大事なことでございますので、まさに、たびたび申しておりますように、こういう産業的な要請と片方で資源保護、水産資源の開発、こういったものの調和、これを図っていかなければならないわけでございますので、個々の事例に即しまして、できるだけそういう環境破壊的な要素を少なくするような万全の措置を講ずると同時に、どうしてもある程度の影響を与える場合には、これに対して十全の補償を行う、こういう措置をあわせて行うべきものである、かように考えております。
  158. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 じゃ、それに関連して、今度地元のイカ釣りの零細漁民の問題でお伺いしたいわけでありますが、主に能代、その北の八森それから岩館、つまり全体として秋田県の北部漁協に所属する漁民の問題であります。  現況を若干申し上げますと、どこでもいま漁民は大変なわけでありますが、この点については、「地元のイカ釣り漁船は、五トン未満の小型船を含めて約四十隻。このうち九・九トン船は八森、岩館漁港で二十六隻(県水産課調べ)。五十一年の豊漁に刺激され、「せっかくの好漁場を放っておく手はない」と、数千万円をかけて高性能のFRP(強化プラスチック船)を新造した漁民も多い。いずれも漁業近代化資金などの融資を受けたが、新造したとたんに水揚げ量は減少する一方。借金返済もままならない状態。」そういう中で、「ついに昨年、北部いかつり組合(五十人)は県や水産庁に「返済期間の繰り延べと利子補給の救済策を」と陳情を余儀なくされる事態にまで追い込まれた。いかつり組合の加賀谷鉄男組合長(五二一)は「九・九トンのFRPを新造した人は年間六、七百万円を返済しなければならない。しかし、燃料代のかかり増しで年間四、五百万円の経費増となっているうえ、水揚げ不振が続き、このままでは借金返済どころか、逆に赤字が雪ダルマ式に増えるばかり。これといった見通しも立たず、この先一体どうなるのか」と不安をつのらせている。」という、これは地元の新聞記事です。  そこで、現地のいろいろな状況を見ますと、やはりいま大きい船は減船の問題だとか、そのため政府が補償するというような問題があります。しかし、小さいながらも、これを切り抜けていくためには減船することも考えなければならないというところまで追い込められているわけです。だけれども、漁民はやめるわけにもいかないから、何か切りかえる方法はないかとか、転換の方法はないかとか、そういうことで、減船を従来零細な皆さんがやる場合は共補償です、お互いに補償し合う、そういうかっこうでやられておったわけでありますが、やはり零細だからといって、国が全然見向きもしないで、お互いに相互扶助させるというようなことは余りにも情がなさ過ぎると私は思うのですね。そういう点で、国がしかるべき御援助方を何とかできないものだろうか、こういうことをどこへ行っても聞かれるのでありまして、この点について長官から何らかの方途としてひとつ引き出すものがあれば非常にありがたいと思うわけです。
  159. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカ釣り漁業の経営問題でございますが、昨年の半ば以降魚価が低迷をいたしておりますし、また同時に石油価格の高騰ということがございまして、その経営は非常に苦しい状況にあるということは私も十分承知をいたしておるわけでございます。  そこで、先生指摘のように減船という問題が出てくるわけですが、これは私としましては、やはり業界全体でどういうふうに取り組んでいくかということがまずベースになりませんと、国が減船減船と言って対処をするということでは、なかなか物事が進まないのではないかと思います。いま全漁連等におきまして、このむずかしい漁業環境の中でどういうふうに対処していくかということにつきまして、対策本部を設ける等によりましていろいろ検討をいたしておるわけでございますが、そこにおきましても、漁業の種類に応じましてどういう構造対策をしていくのか、それに対応してどういうふうな対策が必要であるのかということを検討をいたしておるわけでございますが、従来の考え方から言いますと、国が二百海里を引いたあるいは相手に引かれたということに伴いまして、要するに、漁業者の責めに帰すことができない、責めに帰すと言うのは表現が必ずしも適当ではございませんが、そういう対外的な状況によりまして減船をせざるを得ないということに対しまして交付金を交付をいたしておるわけでございまして、従来一般的な減船問題につきまして交付金を交付した例はないわけでございます。したがいまして、恐らくこれはそういう減船につきまして交付金を交付するということは非常にむずかしい問題であると私は思いますが、業界としてどういうふうにその問題に取り組んでいくのかよく話し合っていただいて、それについてのどういう対策が必要であるかということにつきましては、業界とも十分話し合ってまいりたいというふうに考えております。
  160. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 国が減船減船といって、つまり二百海里問題なんかで補償をしたのはそういう対外要因だとおっしゃるわけだ。考えてみるとそれはもう大企業の船なんだね、どっちかと言えばね。私は、対外要因と言うならば、やはりいま沿岸の水域にいる漁民の皆さんも二百海里というその影響のしわ寄せを受けていらっしゃる。これは対外要因ですね。全然除外されているわけじゃないのですね。あるいは石油の高騰だって漁民みずからの責めに帰すべきことではないと思うのですね。あるいは資材がどんどん値上がりするということだって、これもいわば対外要因ですよ、外国でなくとも。あるいは埋め立てられるということもありましょうし、そういう自分の努力以外の、何ぼがんばってもそういう外側の要因の中でいま全体としてやられているのですよね。あなたはそれを業界全体の位置づけでと言うけれども、業界なんといったって、この人方の業界は業界なんて言えるしろものではないのです。九・九トンぐらいですからね。皆さんから見ればごみやくずみたいなものかもわかりませんですね。しかしそれなりに生きておる。それなりに零細である人方の漁獲量というものは、日本の総水揚げのやっぱり相当なウエートを占めているわけでありますから、そういう点でひとつこの点は考える余地が――今後ひとつどこかで考えていただかなければ、私は国がその音頭をとれという意味ではありませんけれども、そういう問題については聞く耳を持つかどうかということを私は再度お答え願いたいと思うのです。
  161. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカ釣り関係の団体は、確かに先生指摘のようにたくさんな漁業者を抱えておるものですから、なかなかまとまりにくい団体であることは御指摘のとおりでございます。そういうことで、どういう対応をするかということは非常にむずかしい問題を抱えておるわけでございますが、私たちとしましては、御存じのように、石油問題についてはひとつ低利融資の金によって対処をしていきたい。それから、同時に、こういう石油の高騰といいますか、何とかとにかく安定した状況になることを私たちとしてこいねがっておるわけでございますが、石油価格はもう一回もとに戻るということはなかなか考えにくいと思います。そうしますと、どうしても省エネルギーの形の漁業構造といいますか、そういう形に持っていかなければいかぬ。これにつきましては、いろいろな手段方法がございましょうが、私たちとしましても、研究会を開きましていろいろと検討いたしておるわけでございまして、やはり業界全体としてそういう形に持っていっていただく必要があると思います。  それから、同時に、あわせて経営対策としましては、漁業経営維持安定資金等の活用によりましてこれに対処してまいりたいと思っております。  今後、さらにまた、それを越えて業界としてどういう構造問題に取り組んでいくかということにつきましては、業界のその取り組み方あるいは業界の意向等につきまして、十分私どもはその意見を聞いてまいりたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、こういう場合に減船の交付金を出せるかどうかということになりますと、重ねて申し上げて恐縮でございますが、なかなかむずかしい問題を含んでおるということを、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  162. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまのお話は、まあ業界として位置づければ話し合いもできる、こういうことを言いながら、一方ではむずかしい、こうおっしゃっているわけですね。そこら辺がやっぱり納得できない大きい要因だと私は思うのですね。だれに聞いても、何かわかったようなわからないような言い方になるわけですね、あなたのおっしゃることは。どっちなんだということを後で一緒にもう一回返事してください。  それから、確かにいま経営の問題がそういう状況でありまして、昨年あたりは漁業近代化資金だとか、経営維持安定資金、あるいは燃油対策の特別資金、いろいろお世話になったんですね。その点は非常に漁民の皆さん方は感謝していらっしゃるんですね。しかし、いまの業界の苦しさということを見ますならば、もう小手先ではどうにもならない。つまり対外要因なんですね。外国だけでなく、外国よりもむしろいろんなそういう石油だとか漁獲減少だとか資材だとか、そういう問題なんですから。だから、皆さんおっしゃるには、一つ一つ挙げるのもめんどうくさいけれどもという言い方で、何としたらわれわれは経営できるんだ、いまは何ぼ苦しくてもいいからひとつそのやり方を教えてくれないかと言うのですよ。どんな努力もするから、どうしたら成り立つのか教えてくれと言うんですね。そのために国のお役人さんもひとつ来て指導ぐらいはしてくれてもいいじゃないか、こういう言い方なんですね。何としたら成り立つのですか、あなたにちょっと逆説的にお伺いするわけでありますが、ちょっと大事な勘どころというかな、そこを教えてください。
  163. 今村宣夫

    ○今村政府委員 なかなかむずかしい問題でございますが、この前の石油高騰のときには非常に苦境に立ったのでございますが、急激に石油が上がりましたものですから、そこで魚価も余りおくれないでそれにくっついて上がっていったわけでございます。今度はわりあい期間をかけて石油が上がっていくという状態でございますから、魚価がなかなかそれについていかないという問題があるわけです。と同時に、イカの資源問題がなかなかむずかしい問題になっておりますが、私は、漁家の方々に魚が目の前にあるのをとることを控えるということはなかなかむずかしいことだと思いますが、たとえばニュージーランドへの合弁船の出漁その他を見てみましても、もう少し漁獲努力といいますか、全体的に魚価と見合うような形に何とか持っていけないものかという感じがいたします。しかし、それはなかなかむずかしい問題でございます。妙薬があるわけではございませんで、やはりここはいろいろと合理化努力、あるいはまた国としてもできる限りの努力を払いながら、この難局を乗り切っていく以外に方法はないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  164. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういう石油を値上げしたということだって、自然発生的にそうなったのじゃなくて、一応、自民党なり政府施策政策そのものによって来るそういう問題の責任も相当あるわけですね。しかし、いまお答えを聞きますと、施策はないというのだな。何としたらいいのかというのに、ないというのだな。あとはおまえさんたち合理化すればいいなんというのは、これは政治というものではないじゃないですかな。あなたお役人だから、政治とは関係ないと言うかもわからないけれども、そういうものじゃないと思うのですね。  そこで、いま御答弁で、はっきりわかったことは、国にはそういう問題に対する施策がないということを正直に告白したという点は私は評価するのですけれども、燃油対策のあれにしても、イカ釣りの漁民の方に、九・九トンの小さい人に聞いても、一晩出漁すれば油代が十万円かかるというのですね。電気の球が、電球ですね、電球をつけなければいかぬですが、三個壊れるというのですよ。一個が大体三千何ぼするから大体九千円、一万円ぐらいかかる。氷代が一万一千円かかるというのですね。乗組員が大体九・九トンで三人乗るわけですから、一人手間賃が五千円だそうですよ、あそこら辺は。だから一万五千円かかるというのだな。それを補うためには何としても一晩で百箱以上揚げなければ全然採算がとれないけれども、いまは行ったってとれるかどうか全然わからないというものですから、不安で出られないというのが実態なんですね。そうして、借金は年間五百万も六百万も払わなければいかぬ。これは明らかに政治の問題として解決する以外に、漁民の皆さん何とか合理化しなさいなんと言ったって、やれる問題じゃないです。やれることとやれないこととあるでしょう。もう人力の限界を通り越しているわけでありますから、そこで私は先ほど来くどくど申し上げているわけであります。  そこで、さしあたっては、皆さんからのいろいろな経営維持安定資金だとか、いろいろな金融対策はやっていただいておりますけれども、何としてもまず政府ができることと言えば、やはりそれの償還延期だとか繰り延べだとか、利子補給だとか金利の引き下げだとか、担保条件の緩和だとか手続の簡素化だとか、こういうことぐらいは私はできるだろうと思うのですね。しかし、それでさえももうこういう規則だから何ともならないなんというようなことであるならば、これは、私は、非常に遺憾どころじゃない、漁民を殺すものだ、結果的にそうならざるを得ないと思うのですね。そういう点について、これらの資金対策について、ひとつ全体的にもう少し枠を拡大するとかも含めて、御考慮されておるのかどうか、また新たにひとつ検討することをお約束できるのか、この点について、まず近藤政務次官からお伺いしたいと思うのです。
  165. 今村宣夫

    ○今村政府委員 燃油資金でございますが、これはこの間予算を通していただきまして五百億を用意いたしておりますから、できるだけ早くこれを流すということに心がけてまいりたいと思います。  同時にまた、それが円滑に融資をされますように、融資に当たりましていろいろの障害が起きますれば、これは県ともよく相談をしまして、その金が円滑に流れるように最善の努力をいたしたいと思っております。  それから、経営維持安定資金の融資につきましても、同様にそれぞれの県あるいは漁業種類の実態に応じまして、その早急かつ適正な融資につきましては十分考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  166. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 まだまだ時間があると思ったら、もう五分前だという通知がいま来ましたけれども、それでは資源の有効利用についてちょっとお伺いをしたいと思いますが、秋田沖は、漁民の皆さんに言わせれば日本一の魚の豊庫だというのですよ、しかもイワシだとかサバだとかホッケだとかね。ところが、私はせんだって県の水産課に行ったのですが、そういうものがたくさんありながら、網にかかれば投げているというのだな。ぶん投げている。そしてまた、そこへ通りかかっても、その魚をよけて船は行くというのだね。その投棄量はどれだけあるかということを聞いたら、年間にして恐らく二千五百トンから五千トンあるだろうと言っているのですね。秋田でですよ。なぜ投げなければならないのか。そういう資源の有効利用ということですね。こういうことは、秋田だけじゃない、聞きますと、全国的にこうだというのですね。これはどうですか。
  167. 今村宣夫

    ○今村政府委員 お話の多獲性魚の有効利用の問題でございますが、私たちとしましては、これをできるだけ有効に利用する必要があるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、いまサンマ、サバ、イワシを生のままで食べるということになりますと、いまとれておるイワシは、十歳以上の方が一週間に四回イワシを食べてもらわぬといかぬというような形になるわけでございまして、やはりこれを有効利用いたしますためには、どうしても加工をした形で食卓に供するということを考えなければならない、こういうことでございまして、冷凍、すり身の技術の開発でございますとか、あるいはまた冷凍施設、原料転換施設等の整備でございますとか、あるいは水産加工施設の融通でございますとか、あるいはそういう多獲性魚を原料とします練り製品でございますとか、新しいタイプの加工食品の普及、定着というふうなことにつきまして鋭意努力をいたしておるところでございます。
  168. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり流通の問題で、そういうものをとっても、イワシを売るよりもタイ一匹売った方がもうけがあるからね。これは日本の魚の位置づけがそうだからそうなるので、ソビエトなんかわざわざ日本へイワシをとりにきているわけですよね。こういう事態を考えるならば、いままでの水産行政そのものを根本的に考え直すべきだと思うのですね。何をやっても総合的に発展していくようなそういう位置づけこそ大事だし、同時に、時間がないから全部しゃべってしまいますが、私の方の先ほど言った能代の北部漁協では、フィッシュ・スティックというものをつくって、いま学校給食を含めて大変評判がよくて、どんどん発展しているわけですね。これを学校給食以外にやろうじゃないかと、組合長さんなんか張り切っているわけですね。こういうものをどんどん伸ばすべきである。そういう芽を、せっかく皆さんが地域でこういうふうな研究をして開発したわけですから、そういうものを伸ばしていただけるような準備をお考えになっていただけるかどうか。  それから、いま大変不況というか、そういう魚の状況、漁村を取り巻く状況がございますので、救漁土木ですね、つまり災害のときに救農土木工事というのをやりますけれども、私は、せんだっての秋田県の集中豪雨の中でも、もう川からどっとごみが流れてくると、全部海岸に集中するのですね。まして、そうでなくてもヘドロだとかごみがたくさんどこの海に行ってもあるわけでありまして、そういうもののしゅんせつをしたり、耕うんをしたり、高度な技術がなくても幾らでも自治体へ行けば仕事があるというのだよ。ただ、自治体に持ち出しするだけの金がないと言っているのですね。そういうことをやっていただけるならば非常に助かるというのですね。しかも、海もきれいになるというのですね。ですから、私は特別枠の公共事業として、その地域のそういう人々を、たとえば九・九トンにも三人の乗組員を使うわけでありますね。八、九、十というのは暇なんですよ、休漁期みたいになっていますから。そういうときにすぐ使うとか、そういう手だてをぜひとも考えるべきじゃないか。同時に、政府が音頭をとって減船したりあるいは休漁した乗組員対策としても、彼らはそれなりの専門家ですから、彼らに二百海里の監視員やらせるとか取り締まりやらしてもいいですし、あるいは漁港整備、漁場の整備やらせるとか、この際休漁土木という問題についてやはり真剣に考える必要あると思うけれども、いま申し上げた、以上の点についての御回答を承りまして、私の質問を終わります。
  169. 今村宣夫

    ○今村政府委員 第一点の多獲性魚について、いまお話しのような芽を伸ばすべきでないかというお話は、まことにごもっともなお話でございまして、私たちとしましても、そういう方向努力をいたしておるところでございます。  第二点の、閑漁期にたとえば漁港整備事業のような土木事業に漁業者が従事できるようにすべきではないかということでございますが、漁港事業にもいろいろございまして、高度に漁港技術というものを要するところもございますし、あるいはそういうことでない部分もございます。したがいまして、そういう工事の実施に際しまして、漁業者の方に働いていただけるそういう部分につきましては、当然にそういうことを考えていきたいと思います。ただ、漁港の建築の地域と漁業者の地域がうまくかみ合わなければいけませんので、そういう点についても実態に即しまして考えていく必要があるかと思います。  また、清掃等をやる場合に、そういう漁業者に働いていただくというようなことを考えたらどうかということでございますが、私たちとしましても、漁場環境の整備ということにつきましては十分意を用いてまいらなければなりませんので、そういう事業の円滑な実施につきましては、都道府県を指導してまいりたいと思いますが、そういう場合に漁業者の方々に働いていただけることができますならば、それはそれとして非常にいいことだと思いますから、そういうケースにつきましても検討してまいりたいと思っております。
  170. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間がないので、これでおしまいにします。
  171. 片岡清一

    片岡委員長代理 次回は、明十四日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会