○芳賀
委員 最後に、
農用地利用増進法ですが、これはこことここを削ればいいというような
内容のものでないですから、私として十分に
検討した結果に基づいて、特に重要な問題点を六点指摘して、これに対して
政府の責任ある
答弁を求めたいと思います。
それは、いまから五年前に、農振法改正において、今度のこの増進法の基礎をなすものが一応できておるわけです。しかも、その際には、社会党が
中心になって五点にわたる修正を行って、当時の
政府案は
農業委員会と市町村が二元行政をやるような
方向を目指しておったので、それは問題があるということで、やはり
農地法とか
農業委員会制度との密接な連携あるいは有機的な運営ができるようにする等、それから
農地法の番人である
農業委員会を余り無視することも望ましくないということで、そこに重点を置いて、まあその中には開発規制の問題も当然入っていますが、五点の修正をして
衆議院を通して、当時安倍
農林大臣でありましたが、修正案の関係で私も一緒に行きまして、参議院の農林
委員会においてその修正部分の
趣旨説明をやった経過もあるわけです。だから、そういう関係もあるので、これを全部だめとか粉砕なんというばかなことはこの法案
審議で言う必要もないが、しかし、問題になる点があるわけです。
その前に、
一つは、この利用増進法によって、零細な、耕作する
意思のない、二種兼主体の所有者の
農地を活用する
意味において、利用権とか所有権の移転という形でその
地域における耕作地の権利上の集積をして、そして、非常に過小な経営をやっているけれども、
農地が賃借であってもその経営に加わることができればぜひやりたいという熱意のある農家もいるわけですから、相互の
農業上の立場というものを考慮してやっていかなければ、
法律ができましたと頭から押しつけても、これは絶対に強権的にできる仕掛けのものではないですからね。ただ、いま
政府が過剰
対策という形で米の減反、転作をどんどん進めてきておるわけですね。だから、
政府の水田利用再編成の
政策の志向するところとこの利用増進
政策とは、必ずしもその目的において合致しないところがあると思うのですよ。この
地域というのは、二種兼のほとんど多いところのもうつくりたくない人と、つくって意欲的にやりたいという人の相互の条件が整わないところへ——やめたいと言ったってやめるわけにいかぬですからね。北海道、東北なんかは、貸し借りの関係から言うと、貸し手が少なくて借り手が多いというような場合もある。東海等においては、先日の静岡県の豊岡村の視察から見ても、借り手一に対して貸し手五倍というような状態ですから、
地域的に見ると、この制度が有効に働く要素を持った
地域もあるし、これができても適合しない
地域もここで当然出るわけですよ。だから、全国一律にやれるかというとこれはできないわけですから、そこにやはり
地域の自主的な選択性という問題が当然出てくると思うが、これを余り強硬に進めて、水田の場合は今度の制度を通じてそこは優先的に米をつくらせるようにする、そうじゃなければ飯米の
確保ができないということで、こういう
地域は減反の転作の手抜きをして、北海道、東北等の
農業専業地帯に対して今後ますます厳しい減反
政策を押しつけるということになるのではないかという危惧は、これは全国的にみんな持っておるわけですね。その面においては、この二つの
政策というのは二律背反する点が確かにあるわけですよ。だから、減反
政策を今後進める場合においては、今度の増進
地域というものはどういう位置づけをするかということをはっきりしておかなければならぬと思うのです。しかも、昨年十一月に五十五年度の転作の方針が決まったときも、その前の鈴木善幸さんの場合も公務員に対する呼びかけがあるのです。あなたもやったのですよ。公務員諸君が零細であっても水田を耕作している場合には、公務員は率先して減反
政策に
協力してもらいたい、もう切々たる呼びかけを、あなたがそう言ったかわからぬけれども、資料にはちゃんと書いてあるわけだから、表現は切々たるものなんですよ。これらの諸君は全部二種
兼業農家の中に分類されておるわけですからね。そういう人が、この機会に
農地を提供します、耕作者の判断で自由に何でもつくってくれと言うならいいのだけれども、必ず水田をつくって、そこからうちの
食糧米を出してくれなければ困るなんということを、その公務員諸君とかあるいは安定的な民間のサラリーマン諸君が言うようなことであれば、これは
専業地帯の減反が進んでいくということになるのです。このけじめを一体
農林大臣としては、大方針としてどういう調整をするかという点が
一つ。
それから次に、
内容に入りますが、この目的がわからないのですよ。一体だれのためにこれをやるかということが何回読んでみても全然わからないでしょう。この精神というもの、
農地制度の一環であるということになれば、これは当然
農地法の目的を援用しなければならぬと思うのですよ。その場合には、先ほど言いましたとおり、
農地法の現在の
法律の目的にも耕作者のためにというのは三カ所も出ておるわけですからね。少なくとも
農地の利用権の設定とか所有権の移転の設定をしてそれを促進させるということが目的であれば、これはだれのためにやるかということにならなければいかぬですよ。まさか所有者のためとは考えていないでしょうが、耕作者のためにやるのであれば、その点をやはり
法律の目的に明確にする必要がある。
もう
一つ、きょうで六日質疑が続いておりますが、同僚の皆さんの
質問を聞いても、第二種
兼業地帯において、特定の農家が規模
拡大をしてそして自立的な
農業を経営するということになれば、場合によっては、ごく零細な
農業経営というものを、第二種
兼業なら主業である俸給生活者とか他
産業従事者が
農業というものを補完的にして、そこから自家用米とかあるいは
所得を補完して生計を維持する、そういうことで
農地を握っておるわけですから、その規模
拡大のために零細な二種兼
農地というものを集積するということになれば、これは二種兼農家の切り捨てにつながるのではないか、そういう疑念を持った
質問が共通しているわけです。だから、こういうような点はやはり
法律にわざわざ規模
拡大なんと書くのはおかしいのですよ。貸し手が出て放置しておけないから、だれかがそれを借りて耕作したいという場合は、特定の者でなくて不特定な者であっても、その
地域の中で貸し手と借り手がなければ増進事業は成立しないのだから、わざわざ
法律に規模
拡大なんということを書かぬでも、これが進めば、つくらない者が出ればだれかがよけいつくらなければならぬということで、結果的にはその耕作を熱心にやっている人のところに耕作
農地がだんだん集まって、自然的にこれは規模
拡大の形になるということになるので、この点はちょっと危険があるのですよ。逆に考える場合が出てくるですからね。こういう点は立法技術から見ても慎重にやってもらいたいと思うのです。
第二点は、この
法律は全く
無味乾燥なんですよ。
法律自体が手続法みたいなものだから味わいがあるということにはならぬかもしれぬけれども、このくらい味もそっけもない
法律はないですよ。こんなものなら、
農地法の中に改正で幅を広げればいいのであって、わざわざこれを取り出して
農用地利用増進法なんという改名をつけてやる以上は、もうちょっと農民と血の通った、
地域全体の中からこれが有機的に動けるような味つけをしてもらわなければならぬ。そういう
意味で、私は、この法案にはないが、やはり特に目的と並んで、この
法律というものは十分な
地域の
農業社会の上に立って実態を踏まえて、この
日本の狭小な国土の中で、
農用地が足らぬ、これを
農地法の精神に基づいて高度に
農地として
農用地として活用しなければならぬというのは、単に
農業従事者だけでなくて、その
地域全体の人たちがこれを考えて
協力してもらわなければならぬわけですから、そういう点についてはやはり
法律上特段の配慮が必要でなかったかということを指摘しておきます。
それから次に、第三条第一項に実施方針のいわゆる
基本方針がうたってありますが、これは
国会で
法律だけ決めて、さあできたと言って動けるものじゃないですね。目的に沿った
法律が成立した場合は、その目的や
趣旨が那辺にあるかということを、十分その
地域においても、市町村にしても、
農業委員会にしても、あるいは関係の農協とか
農業団体にしても、あるいは農民組織においても、この
趣旨が是であるとするならば、十分にその事前の普及徹底というものをやって、間違いのない
理解の上に立って、自発性の上に立って、それではこの方針というものを、増進計画とか増進規程というものをみんなでつくってやろうじゃないかということになると思うのですよ。前段の
趣旨の普及徹底ということをおろそかにすることはできないじゃないかという点が欠けていますから、これを指摘しておきます。
それからもう
一つは、方針を策定する場合には、これは市町村の場合であっても都道府県知事の承認を求めなければならぬということになっているのですね。承認が必要である。知事が承認する場合には事前に当該都道府県の
農業会議の意見を聞かなければならぬ、これは当然だと思うのですよ。それじゃ
農業会議だけの意見を聞けばいいかというと、そうでないと思うのです。
〔山崎(平)
委員長代理退席、
委員長着席〕
もう
一つ、農民の自主的な経済組織あるいは
生産活動をやっている
農業協同組合というものがある。協同組合においても、全部の農協がやっているわけじゃありませんが、この
農地制度の問題とか、あるいは共同化の問題とか、受託経営の問題とか、信託事業とか、それぞれこの制度に沿って農協が拘束を受けないでやっておるわけですから、そういう場合には、やはり
農業会議は当然ですが、農協としても、この間の全中常務の山口巌参考人の意見を聞いても、相当意欲的な意見を述べていますから、やはりその場合には、都道府県の
農業協同組合、全部の連合会というと大変ですから、
中心をなす農協中央会などにはあわせて意見を聞く必要があるのではないか。意見を聞いたり、
協力できるということにすれば、やはり市町村でも一生懸命でやると思うわけです。地方だってやりやすいようにするというのが大事ですから。
その次は、これは実は五年前にも問題にしたわけです。
地域において利用増進計画を立てる、利用規程をつくるという場合、やはり
地域の集団の上に立って全員同意で決めなければならぬ。全員同意で決めた場合においては、利用権の設定であってもあるいはそれに伴う所有権の移動の場合であっても、全員がそうしましょうという、あるいは当事者個々の間においてまず話がついて、
地域全体でそうしましょうということに、まず全員同意で決めなければならぬ。決めたものは、
農業委員会の正規の決定が必要である。一件一件
農業委員会に届けるというのではなくて、その
地域の全員同意の形で利用権等の設定ができた場合には、
農業委員会がそれを審査して決定する。
法律上の決定が行われた場合は、それを基礎にして市町村が公告をする。公告をもって利用権あるいは所有権の設定、移転等についてはそれで
法律上決まり。だから、それは一人一人が登記所へ行かなくとも、町村の責任で登記諸般は行いますということになっておるわけですからして、その
中心になるのは「団体」と書いてあるのですよ。政令で定める基準に合致したあるいは定款、規程を持った団体ですから。何が何だかわからぬでしょう。これは五年前の宿題だったのです、団体とは何ぞやということをはっきりしたらいいんじゃないかと言って。今度は法文の中には
農業協同組合法第七十二条に基づく農事組合法人というのが後段に出てくるわけです。これは組合法人でありますけれども、やはり
地域においてそういう法人が形成されれば、抽象的な団体よりも、これはきちっと
昭和四十五年の
法律でできたものですから、そういうものはちゃんと例示的に名前を載せて、農事組合法人とかその他政令あるいは省令で定めるこれこれの団体ということであれば、できてない名前を並べるわけにいかぬですから、そういうことはちゃんとやらぬと、一体どういう集団でどういう名前をつけてやるかということにもなるわけですからして、やはり
地域共同社会における
生産活動ということになれば、いろいろ批判があっても
農業協同組合組織というものを度外視してはできないと思うのですね。そういう点と、今度は新たに
農地保有
合理化法人もこの制度の中に登場するわけでありますし、あるいは
農業協同組合の経営受託事業等についてもこの制度の一環をなすということになるので、この辺は、そうなんだという
答弁はあると思いますが、その前にその
法律の策定に当たってちゃんと勉強して、そのぐらいのことはやってもらって当然じゃないかという点であります。
以上、重要な点だけを述べたわけですが、問題を言えば、この
地域の
合理化計画に加盟した、参加した土地所有者の場合、いままでは自分で耕作しておるからして、
農業協同組合にとってはこれは大事な正組合員。農協法というのは定義で農民とは何ぞやということが書いてあるわけだから、土地を持っておっても、経営もしない、耕作もしないという者は農民でなくなるわけですよ。農民でない者は土地だけ所有しても農協の正組合員にはなれないわけです。何ぼがんばってもなれぬわけだ。ただし準組合員の資格で十分利用してくださいということになっておるが、この
農地法の一部改正の場合には、これに該当する正組合員については農民資格を失ってもなお従来どおり正組合員についての扱いをする。農事組合法人の組合員の場合にもそのようにするということになっておるので、この辺も厳密に言えば整理する必要があるのですよ。土地だけ持って飯米を持ってこいなんていばっている正組合員ばかりどんどんできてしまうと、
農業というものは従来の使命を忘れて——七割は二種
兼業です。都会では九割が二種
兼業ですから、本百姓というものがいない状態の中でこういう特例を設ければ、本当の農民である組合員というものが疎外されるというような心配が出るわけですから、これは絶対いかぬというわけではないが、こういう点についても、
法律が通ればいいんだというわけにはいかぬと思います。
幾多ありますけれども、問題点として私から指摘いたしますが、これに対しての
大臣の総括的な考えと、各関係
局長から率直な見解を聞いて私の
質問を終わりたいと思います。